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JBL L65 Jubal

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 旧型のL101に代るべき製品だが、低音はより明るく弾み、しかも高音は格段にレインジが拡張され、従来のJBLからみると別もののように繊細な高音を聴かせる。したがってクラシックのオーケストラものでも、一応こなせるようになった。L101と比べると、中音の品位は少し落ちるのでポピュラー系には中域の多少の粗さも明るさ、華やかさといった長所として生かせるが、クラシックの弦を主体に聴くには、アンプやカートリッジに、中~高域のややウェットな、滑らかで緻密なタイプを組み合わせる必要がある。音量をしぼっても細かな音が失われないし、ハイパワーにもきわめて強いのがJBLの良いところだが、このL65は音量を上げても音像がばかげてふくらむようなことのない点がことに好ましい。ブロック一段程度の台に乗せた方が音の抜けがよく、左右に思い切り拡げて設置して定位を確保したい。背面は壁に近づける。レベルセットは中音を-1、高音を0とした。タンノイ等と同様長期間馴らし運転しないと音の鋭さがとれないので注意。

採点:94点

ダルクィスト DQ10

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 低音から高音までの音のこまかな起伏を塗りつぶしてしまうような、良くいえば細かな欠点もくるみ込んでしまうような、そして艶消しの感じの乾いた質感。オーケストラのレコードで総体のバランスに注意して聴いても、ピアノの音でもヴォーカルでも、大掴みなところのバランスは問題なくまとまっているのだが、例えば楽器の演奏にともなう附帯雑音──たとえば弦合奏のざわめくような、楽器の周囲に漂うような雰囲気感──までも塗りつぶしてしまう感じで、たとえばアンバーとンやバルバラのレコードで、ほかのスピーカーでは聴きとれる唇の湿った感じが出てきにくいし、どこか音の鮮度が落ちたようでいわゆるインティメイトな雰囲気が出にくい。まるで歌手が向うを向いて唱っているみたいだ。細かいことをいえば全域の中で低音域の質感が少し落ちる感じだが、そういうことより、すべてを無難にまとめたような作り方が私には全く魅力の欠けた音にしか思えない。いわば高級なイージーリスニング用には悪くないかもしれない。能率は低い方だ。

採点:82点

モーダウント・ショート MS737

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 中~高音域にほどよい艶の乗った滑らかな品の良い音質だ。同じイギリス製品の中で比較すると、スペンドールBCIIのやや細身の自然さと、セレッション・ディットン66の味わいの濃さとの、ほぼ中間的存在といえそうだ。弦合奏、合唱、あるいはヴォーカルに良い面をみて、ことに女性の声(アン・バートン、バルバラ)など暖かく湿った唇を思わせ、滑らかでやさしく品が良い。音量を絞っても、キーソニックほど抑え込んだ感じでなくむしろ解き放たれたといいたいような自由で、派手やかな明るい音を響かせる。弱点といえば、これはイギリス系に共通の性格だがハイはワーに弱く、実演に近い音量に上げてゆくと骨張ってやかましくなる。あくまでも中程度以下の音量で美しさを楽しむスピーカーだ。低くとも台に乗せた方が音離れがよくなる。背面を壁にぴったりつけても低音がダブつくようなことがない。全域にわたってキメ細かくコントロールさせた秀作スピーカーといえる。

採点:91点

アリソン Allison:One

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 雑草を刈りとり間引きして上品に整理した感じのARと対照的に、雑草もまつわりつくが自然の勢いにまかせた元気のいい音といえようか。少しぐらい粗くとも大掴みなバランスの良さで開放的に音を鳴り響かせるという感じである。中~低音の土台がしっかりしていて、オーケストラやピアノの低音域が豊かに鳴るし、コンボジャズのバスドラムやベースのファンダメンタルも実感的に聴こえる。中~高音域は、ARやKLHよりは延びている印象。ただシンバルやスネアドラムで、切れ味はそんなに悪くないがトゥイーターだけが離れて鳴るという感じがわずかながらある。全域を通して、音の品位は必ずしも高級とはいいにくいが、音をむやみに抑えこんでいないところがこのスピーカーの長所といえそうだ。カートリッジはシュアー、エンパイア系がアリソンのこの性格を生かすと思う。音像定位は形状から想像するより良いが、どちらかといえば部屋の長手方向の壁面に、左右に広く(3メートル以上)離して設置するのがよいと思う。

採点:82点

アコースティックリサーチ AR-10π

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 出力計をにらみながら、ピアノや管弦楽のフォルティシモの一瞬でしばしば100ワットを越すくらいまでパワーを上げてみる。ピアノが眼前で鳴るくらいの音量にしたときでも危なげのない安定な鳴り方。ソフトな肌ざわりを失わないバランスの良さ。とても気持ちの良い音だ。ピアノの実体感、スケールの大きさ、あるいは管弦楽のことに中~低音楽器群の音のふくらみや腰の強さの描写力は素晴らしい。反面、アルゲリッチのタッチの鋭さとか、弦合奏にともなう一種ざわめくような雰囲気、またはチェンバロの繊細な響きという面になると、たとえばスペンドールでは音の余韻が空気の中に溶け込んでゆくように消えてゆくのに対して、ARはそれを鋭い刃物で断ち切るようで、音量を絞ればなおのこと音の冴えや艶を失う。あくまでも柔らかなタッチの上等な音だ。50センチの標準台にインシュレーターを開始横位置にセット。背面を壁から離し、コントロールはLOWを4π、MIDを-3dB、HIGHを0dBにセットした。

採点:88点

セレッション Ditton 66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 イギリスの製品の中では総じて温かく穏やかな音をねらうのがセレッションの特徴だが、66は中でも豊かで厚みのある、スケールの大きい音を聴かせる。リークやタンノイの硬質な艶は持っていないし、スペンドールBCIIの自然なワイドレンジよりももう少し意識的にふくらみをつけた音だから、ちょっと聴くとシャープさに欠けた、おっとりした音に聴こえるが、管弦楽曲やオペラをわりあいに音量を上げて鳴らしたときの、少しのやかましさもなくそれでいて音の実体感豊かな、身体を包みこむような快い響きは、ほかに類似のスピーカーがちょっと思い浮かばない独特の世界だ。決して鋭敏なタイプでないが柔らかい響きの中にも適度の解像力を保ち、抑えこんだ感じが少しもないのにあばれるのでなくほどよい色づけで、これがイギリス人のいうグッドリプロダクションかと納得させられるような練り上げられたレコードの世界を展開する。ただ、国内プレスに多い乾いた音のレコードでは、この良さは聴きとりにくいかもしれない。

採点:94点

タンノイ New 12″ Lancaster

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 タンノイに限ったことではないが。、中~高域に英国系の振動板を持ったスピーカーは、数ヵ月鳴らしこまないと、どこかトゲの生えたような鋭さの取れない音を鳴らす。この製品もそうだったので、トランジスターアンプをやめて、ラックスのSQ38FDIIとオルトフォンのSPU-GT/Eを組み合わせてみたら、弦や声の金属的な響きが一応抑えられた。にもかかわらず本質的な性格として、中音域がやや薄手であると同時に高音の倍音領域の高い方に細い刺が残っていることが、特徴というよりはやや弱点として、少し音にクセをつけすぎるように思える。あるいはそれが特徴のある個性というところまで仕上っていないといった方が正しいかもしれない。以前の12インチにもこの傾向はあったが、基本的には同じ線のようだ。エンクロージュアのサイズがもうひとまわり大きくないと、たとえばピアノでも、もうひと息スケール感が出にくい。低音の一部で少々ふくらみすぎる音を置き方などでうまくおさえないと気になりそうだ。

採点:82点

フェログラフ S1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 過去多くの機会に私は紹介したが、今回の試聴では、初期のものからみると音の傾向が少し変っている。以前の製品では、中域を抑えすぎるほど抑制して、低音と高音の両端をやや強調するという、イギリスの製品に多いバランスで聴かせたが、今回聴いたものは、高・低両端をむしろ抑えて中域をかなり(といってもイギリス製にしては)張り出させて、総体にやや硬い傾向の音質になっていた。中程度の音量で鳴らす限り、音域全体に緻密さが増して、以前のようにやや上澄みが強調される感じあるいは高域にこなれない鋭さのあったところが改善され、クリアーでしっとりした印象が出てきた。ところが反面、左右に思い切り広げて設置したとき、たとえばソロイストが中央におそろしいシャープさで定位する、あの薄気味悪いくらいの雰囲気が一歩後退したところが私には少し残念だ。とはいってもこの製品の鮮鋭な雰囲気描写と解像力のよさは、やはり特筆の部類に入ると思う。背面は壁から離して設置し、解像力の優れたカートリッジを組み合わせる。

採点:91点

QUAD ESL

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 いろいろな機会に何度もとり上げられて、今さら何も言うことはなさそうに思えるのだが、実のところこのスピーカーは、アンプやカートリッジやレコードの録音が新しくなるにつれて潜在的に持っていながら評価されにくかった本質を少しずつ我々の前に現わしてくるようなところがあって、それを見抜けなかったことを恥じなければならないにしてもしかし、周辺機器の進歩ということをつくづく考えさせられる。総体的な印象は、本誌22号でのテストリポート(199ページ参照)や、『別冊1975コンポーネントの世界』でのシンポジウム(71ページ以降)で発言したことで尽くしているので、ここでは使いこなしの面について多少の補足をするが、第一に、二つのスピーカーと聴取位置の選び方。かなり近寄って、スピーカーの面が耳を向くように位置すると、すばらしく鮮度の高いクリアーな現実感が得られる。第二に、背面の空間を十分にあけて置くこと。ピアノの実音までの音量は鳴らせないが、大出力の安定なアンプが必要だ。

採点:95点

キャバス Sampan Leger

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 張りつめたような華やかな音を聴かせる。中音域のやや上の、基音から倍音の領域にまたがるあたりの音域に、ほかのスピーカー(あるいはほかの国という方がたたしいかもしれないが)では聴くことのできない音の明るさがあって、それがたとえば弦合奏などで私の感覚ではわずかにきついとさえ思えるが、反面、バスーンのような木管楽器の倍音に独特のふくらみと艶をつけて魅力的に仕上げるあたり、妙に惹きつけられるところのある音だ。この音を特色として生かすも欠点とするも、使いこなし次第といえる。たとえばアンプやカートリッジに、硬質でしっかりした音よりも柔らかなニュアンスのあるものを組み合わせた方が良いと思う。台は20~30センチがよさそうだ。背面を壁に寄せた方が音のバランス上では低音の量感が補われると思ったが、いろいろやってみると、壁から多少離した方が音のパースペクティブがよく出るので、その状態でアンプの方で低音を補う方がよかった。

採点:85点

ワーフェデール Kingsdale 3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 フロアにじかに置き、次にブロック1個分上げて、さらに2個にしてもまだ音がこもって抜けが悪い。ついに50センチの台に乗せて、さらにインシュレーターを噛ませて、おまけにEMTのカートリッジとマークレビンソンLNP2/ヤマハBIのシャープな音で引締めて、まあ納得のゆくバランスになった。イギリスの音の長所も短所も合わせ持った音とはいえ、たとえばバルバラのシャンソンなど、瑞々しい艶で唇のぬれたような感じまで出てくるが、ピアノは弱腰というか上澄みだけというか、実体感の薄い音だし、オーケストラも大編成は無理で、しかしバロックや室内楽など、ややひっこむ感じながら一種独特の柔らかい雰囲気を出す。しかし一般的にいえばそういう特徴を生かすには相当に手間のかかるスピーカーというべきで、いい素質を持ってはいるが、正面切って音楽を鑑賞するのでなく、一家団らんの場で、気にならない音を鳴らしておくというような目的に使うのがせいぜいかと思う。

採点:76点

デッカ London Enclosure

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 小型のスピーカーの割に、オルガンのペダル音、バスドラム、ベースの低音などで、意外なほど低音のファンダメンタルがよく延びているように聴こえる。もちろんそういう音を出すスピーカーはほかにもたくさんあったが、この大きさにしては、という印象が強い。ただしこのときは、ゆかから約15センチほどの低い台で、背面を固い壁に近づけて置いた。トーンコントロールで多少の補正も加えている。しかしそうやっても、ファンダメンタルの出ないスピーカーではこうはいかない。ところで全体の感じだが、イギリスのスピーカーが概して中~高音域に強調感のある作り方が多いことを頭に置いて聴いてみても、どうもやかましさすれすれのところでこしらえてあるように思われ、ことにパワーに弱く、音量を上げると総体にキャンつくので、平均80dB以下ぐらいの音でひっそり鳴らさないとだめのようだ。面白半分にデッカMKVのカートリッジで、デッカ録音のレコードをかけてみたら、当然とはいえ、個性が強いながら楽しい音がした。

採点:82点

リーク 2060

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 中音域の上の方から高音域にかけて、鈍い金属の光で隈どったような特有の線の細い光沢感がある。あるいは彫りの深い目鼻立ちのことさら強調されたような音ともいえ、そういう特徴に惹かれもする反面、部分的には辟易かもしれない。いわば好き嫌い分かれる音質かもしれない。高音域に線の細い艶が乗るのはイギリスのスピーカーに概して共通の特色だが、リークの音はその中でもやや硬質の艶が目立つ。それが良い面に働いた場合、たとえばピアノでUL6よりもスケール感が出るし、またBCIIよりも現実感があるオーケストラの斉奏では、硬質の光沢が彫りの深い立体的な構築を聴かせる。オルトフォンVMSやB&Oの4000等、音の柔らかな系統のカートリッジの方が、短所を抑えてくれる。また、あまりパワーを上げないときの方がいい。ハイパワーでは音のキャンつく傾向が出てくるし、スクラッチノイズを部分的に強調するクセがあり、決して万能型ではないが長所の多いスピーカーだと思う。台はブロック1~2個程度がよさそう。

採点:88点

ブラウン L715

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 たとえばリークの音に艶があるという印象が、ブラウンと並べて聴くとリークがどこか湿っぽく聴こえる。そのくらい独特の艶があって当然これはドイツのスピーカーが昔から持っている特徴だが、そのドイツの音という枠の中では、従来の製品より全音域でのバランスがより自然に、音域ごとの強調感や欠落感が少なく、たいへんみごとにコントロールされた製品であることを感じる。ステレオの音像の定位やひろがりや奥行きも、明確に再現する。この独特の艶は、弦合奏にもピアノにも、われわれの耳にはときとして過剰気味に思える場合があるが、そこに一種の透明な──といっても空気の透明というより上等の硬質なクリスタルガラスの光沢のような──感覚が生じ、鳴っている音楽の鮮度を上げるような働きをする。むろんそれはこの製品に限った話ではないが、エンクロージュアの大きさからいっても、本もののスケール感を望むのは無理で、あくまでも虚構の枠の中での話だが、高め(50センチ)の台、左右に広げる方がよかった。

採点:94点

セレッション UL6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 外形の小さいこと、それに価格を頭に置いて聴くと、小型らしからぬ低音の厚みやスケールの豊かなことに驚いてしまう。といってもたとえばアルゲリッチの新しい録音(36号120ページ)を鳴らすと、グランドピアノの実体感を鳴らすのはとても無理なことがわかる。が、その点を割引いても、十分広い全音域に亘って上品な艶と品位を保って、イギリス製品にありがちの中域の薄手なところも感じられず、みごとなバランスで聴き惚れさせる。あまり神経質でないところがいい。しかしそれでいて、トーンコントロールでハイを上げるとおもしろいほど敏感に反応するし、カートリッジやアンプの音色の違いにも正確に応える。私個人の聴き方からすると、EMTのような解像力の鋭いカートリッジや、そういう傾向のアンプでドライブする方がいっそう音が生きてくる。大きさから考えても、ピアノの再生能力から考えてもサブ(セカンド)スピーカー的な存在だが、しかしそれではもったいないと思える程度のクォリティを示す。

採点:91点

JBL 375 + 2397(組合せ)

岩崎千明

スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 ’76(1975年秋発行)
「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ25選」より

●組合せ意図、試聴感
 使い慣れたJBLをシステムとして生かすべく考えたのがこの2397ホーンと375ユニットの中高音用を組込んだシステムだ。52年発行の米国のあるオーディオ文献に掲載してあったウェスターン・エレクトリック社無響室の写真で、技術者の横に置いてあるスピーカー・システムが眼に止った。この、小型フロアー型とも思えるシステムに、大きさといい、形状といい、JBLの木製ラジアル中高音用ホーン2397をそっくりの高音ユニットが使われているではないか!
 これを見付けたのは7月中旬の、長い入院生活の退屈さまぎれのひとときだったが、そのときすでに、我が家では1年半ほど使用していた2397の、原型を発見した気分でいささか得意であった。
 さて、2397ホーンと2328アダプターとのアセンブリーに、ドライバー・ユニットの375またはそのプロ版2440を組み合わせた高音用ユニットは、それ以外のJBLの高音用ユニットに較べて、格段の品の良さと、音の繊細感が素晴らしく、パワフル一点張りのJBL中高音用ホーンとは何か違ったスッキリした音なのが、この上なく大きな魅力だ。そして、このユニットの魅力をフルに活かしてやろうと考えたのがこのJBLの強力型ユニットを用いたスピーカー・システムだ。
 我が家で7年来も付き合っているバックロード・ホーン型エンクロージャー、ハークネスの中に収めたD130とはまた違って、もっともマニアにとって手近な形の低音用ユニットを考えると、平面バッフルに取り付けた最新型モデル136Aウーハーがある。これは従来のウーハー130Aより、ずっとf0を下げた点で、家庭用としてはロー・エンドをはるかに拡大できるユニットだ。低音用ユニットとのクロスオーバーとしてJBLのネットワークには、LX5またはそのプロ用の3110がある。この木製ホーンは、一応カット・オフ周波数が500Hz、使用クロスオーバーとして800Hzを指定されるが、375という強力ユニットと、家庭用として、アンプから送りこむパワーを、それほどの大きさにすることはないという前提のもとに、その音響エネルギーの中域でのレベル・ダウンを予測すれば、500Hzを選ぶこともできる。
 こうした変速用クロスオーバーでの使い方は、色々な問題点もないわけではないが、その創り出される音色バランスからは意外なほどに、おとなしいサウンド・クォリティーが得られるので、ぜひ試聴されることを強く望む。木製ホーンは決して問題点を悪い形では現わさない。
 さて、136Aは、中域でやや控え目ながら、ロー・エンドはずっと伸びて、平面バッフルでも至近距離では実にゆとりある深く豊かな重低音を楽しませてくれる。こうした高級なシステムを、フルに発揮するのに、JBLのディーラーであるサンスイの高級アンプは、JBLのアンプなき今、欠かすことはできまい。BA1000は、ブラック・パネルのハイ・パワー、BA5000、BA3000とはまた異った家庭用の広帯域再生に迫力あるクリアーなサウンドを発揮してくれる。プリアンプのCA3000はフル・アクセサリーで、ハードな魅力のカタマリだ。この、サンスイのアンプを組み合わせた本コンポーネントは、高級マニアも充分納得するだろう。プレイヤーでは、トーレンスTD125MKIIとピカリングXUV4500Qの組合せが極めつけだ。

●グレード・アップとバリエーション
──JBLの新製品ユニット136Aと375+2397をネットワーク3110でつなぎ、サンスイCA3000+BA1000でドライブ、次にこれをマルチ駆動、チャンネル・フィルターにサンスイCD10を用い、アンプではサイテーション16を低域用に、375+2397をさきほどのBA1000でドライブいたしましたが、結果としてはいかがでしたでしょう。
岩崎 マルチ駆動とする前に、まずやりたいことは、ここでは試みませんでしたが、ユニットをエンクロージャーに収めたいですね。これがまず第1のグレード・アップですね。これは自作でもけっこうです。実は、JBLの4350に、あるいは4340というプロ・ユースのマルチ駆動用システムに刺激を受け、触発されまして、これはマニアの間でもチャンネル・アンプを使ってみようとする気運が高まってきたと思います。これを実際に試してみるのも意義のあることではないかと思います。また、理論的に考えてみた場合、ネットワークの持つL成分、C成分というものを、無視して考えられない面がないわけでなく、とりわけインダクタンスを持つコイルにおける直流抵抗分がスピーカーのボイスコイルに直列に入ることを考えた時、それがたとえごくわずかでも、ゼロではない限り、なんらかの形で影響が出てくるということも考えられますね。確かに理論上、わずかでもダンピングの面で理想状態より悪くなってしまう。そのあるかなしの、ごくわずかの問題点であっても、たとえ神経質と言われようと取り除く方向で努力するのが世のマニアの常なんでしょうね。理想に一歩でも近付こうとする努力がマルチ・アンプ・システムなんですね。さらに言うなら、自分だけの、オリジナルなシステムを究極に求めるならば、自分の嗜好をより完全な形で求めようとするのは当然だと思うんです。それを端的に表現できるのがマルチ・チャンネル・システムだと思うんです。クロスオーバー周波数をはじめ、レベル調整でも、ネットワークに付随する減衰量のあらかじめ指定された点以上に、自由に、1dB、0・1dBといったわずかの変化量さえ可変できるし、またクロスオーバー付近でのスロープ特性も6dB、あるいは12dBと、自由に選べます。すなわち、あらゆる意味で、良い音というものを判断できる耳があり、自身があるならばある程度完全に近い形をとりうる方式だといえますね。
──低域に使用していただきましたサイテーション16に関してはいかがでしょうか。
岩崎 このモデル16というアンプは、力強さ、エネルギー面におきまして、海外製アンプの中ではとりわけ質の高い強力な製品で、とても150W+150Wとは思えない、それ以上のものを感じさせてくれますね。回路的に見ますとこれは左右を完全に分離した独立電源を用いておりまして、超低域におけるクロストークを排斥することで、再生音場に対するマイナス面を除去しよう、という試みがされています。またLEDによるパワー表示はどうも日本人の好みとは異るようですが、しかしピーク表示という意味に関してはこれほど正確なものはないわけで、性能的にはメーター指示よりはるかに上回るものを持っており、ハイパワーアンプにはさわしい方式だと思いますね。

アルテック Belair(組合せ)

岩崎千明

スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 ’76(1975年秋発行)
「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ25選」より

●組合せ意図、試聴感
 おそらくこれを見たマニアは、誰しもむしょうに欲しくなってしまうだろう。マニアとしての熱が高ければ高いほどに。マイクロの新型ターンテーブルDDX1000だ。
 いずれ新たに本誌をはじめ、多くの誌面を賑わすに違いないこの、ユニークなターンテーブルは、従来のプレイヤーの概念をまったく変えてしまった。
 手段と目的とを、豪華な形でこれほどまでに見事に結合した製品は、オーディオ界全般を考えてみても滅多にあるまい。まさにプロフェッショナルな現場で活躍する、カッターレース用のターンテーブルを、そのまま切り取ってきたとでもいえようか。プロフェッショナルな豪華さを、これほどまでに徹底的に意識して追求したターンテーブルは、他にあるまい。
 このマイクロのDDX1000を入り口に置いて、このコンポはスタートした。だから、メカニカルでプロフェッショナルなフィーリングを、コンポ全体に置こうと意識して、モニター的スピーカーを選び、マニア的マランツを選んだのだ。それも、プリアンプ、パワーアンプと確立した、セパレート型アンプだ。♯3200と♯140の組合せがそれである。
 さて、アルテックのベルエアは、すでにデビュー以来数ヶ月、しかし、商品の絶対数が足りず、よって日本市場での需要に応じ切れず、ディーラーはその対処に弱っているとか。ブックシェルフ型とはいえ、サウンドの上でも、またグリルを外した外観上にもモニター的な雰囲気をぷんぷんと生じる、オリジナル・アルテックの2ウェイ・システムの新製品なのである。
 このアルテック・ベルエアを思い切り鳴らしてくれるアンプに同じ米国西海岸(ウェスト・コースト)の、今や全米きっての強力きわまるアンプ・メーカー、マランツが登場するのは少しの不思議はないだろう。♯3200は、例の大好評の♯3600をベースとした、ジュニア型ともいえるプリアンプで、それとコンビネーションになるべき♯140は、先頃発売されたプリメイン・アンプ♯1150のパワー部を独立させたものともいえる、ジュニア型のパワーアンプだ。ともにデビュー早々で、特に日本市場の高いレベルのファンを意識した商品であろう。
 パワーアンプは、深いブルーに輝く大型VU計をパネルに備えて、みた目にもマニア・ライクだ。
 期待した通り、サウンドはマランツの共通的特長の力強いエネルギー感の溢れるものだ。それは70W+70W以上のパワー感をもってベルエアを、文字通りガンガンと鳴らしてくれた。ベルエアはそれ自体、朗々と鳴ってくれるシステムだが、その期待をさらに高めさせたのがこのマランツのサウンドだろう。ややもすると響きすぎのベルエアの低域は、マランツの力によって内容を充実した味を濃くしたといえそうだ。緻密なサウンドとなったこのベルエアのサウンドの響きは置き場所を選ぶこともなくなっただろう。
 プレイヤーのハウリングの少なさは構造上の特質としてアピールされるが、ベルエア-マランツによって得られる十分にしてパワフルな低域も、このシステムの低域の素晴らしさを一段と高める大きなファクターといえるし、試聴に使用したレコードをも申し分ない状態で再生できた。

●グレード・アップとバリエーション
──「ミンガス・アット・カーネギー・ホール」がすごくごきげんに鳴っていて、私達にしてもかなり楽しめたと思うんです。
岩崎 そうですね。でも、このベルエアというかなりの高能力スピーカーを持ってしても、なお♯140というマランツの70W+70Wのパワーアンプではドライブしきれない面がありました。どうしてももっとパワーが欲しいなと思いましたので、さらにパワー・アップを図るべく、同じくマランツの♯240を追加することで良好な成果がえられたと思います。♯240はメーターの付いていないタイプですがメーター付きの♯250と同規格製品です。予算とかデザイン、すなわち好みに合わせてどちらかを選べばいいと思いますが、ここでは実質一本やりで♯240としました。
──歴然と差が出ましたね。
岩崎 音の力強さが格段に違いますね。パワーの差だけではない、音のエネルギーそのもののグレード・アップだと思いますね。しかし、価格以上のものは得られていることの証拠に、音の出方そのものの、リアリティまでさらに一段と加わってきたと思うんです。本来はソウルフルな、黒い音楽を楽しもうということでプランをスタートさせたわけですが、パワーアンプを♯240に替えることで、さらに忠実度の高い、プレゼンスに富んだ、ジャズの熱演をより一層リアルにとらえることができましたね。
──そうですね。まさに狙い通りといったところでしょうか。加えて音そのものを一段と研ぎすまされたものにしようというお考えのようですが。
岩崎 音の輪郭をクリアーにし、エッジをとぎすますという意味ではカートリッジでのグレードを上げてみました。最初に用いたグレースのF9Lを最近発売されたピカリングのXUV4500Qにかえてみようと思いました。この他にも海外製品ではスタントン681EEE、エンパイアなど、いろいろ考えられるわけですが、現代的なサウンドを非常に広帯域で、しかも技術の新しさも感じるXUV4500Qを用いました。これは、この場合非常に成功したと思いましたね。一般に、このピカリングのカートリッジは、音がはね上ると言われていますが、決してそんなことはなく、確かにスタントンの方が落ち着いた音がしますが、XUV4500Qでは一聴してレンジの広さを感じさせる、フラット・レスポンスで、高域での解像力は抜きんでていますね。現代アメリカのハイファイ技術の最先端を行く、良さというものが各部にびっしりとうずめつくされているといった感じがしますね。
──そうですね。レコードの録音の良さがまさに明解に表現されているといった感じのサウンドのようですね。
岩崎 たとえばここで聴くキース・ジャレットにしましても、その透徹したサウンドが一段と透徹してくると申しますか、どちらかといえば、録音の良いレコードほどその真価を発揮するシステムだと思うし、またカートリッジをピカリングにすることでその傾向がさらに強まったと思うんです。音のメカニズムというものを、ずっと深くつきつめて考えていった場合、どうしてもこうしたシステムを組むことが私には必然性を持ったものに感じられますね。

JBL LE8T(組合せ)

岩崎千明

スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 ’76(1975年秋発行)
「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ25選」より

●組合せ意図、試聴感
 JBL大型システム・パラゴンを聴くようになってから、至近距離できくマルチウェイのシステムの持つ「ステレオ音像の不自然さ」がやたら気になるこの頃だ。ほんの、ちょっと顔を左右にふっただけで、その正面の音像はスッと位置を変える。それだけならまだよくて、音域が変わるにつれて、その音像は大幅に移動してまるで躍るように動き廻る。首をふらなければそうしたことはほとんど意識されずにすむかも知れないが、逆に気になり出したら、頭を動かさなくても気になり出す。
 こうした現象を避けるために、永い間、ラジアル・ホーンとか、放射レンズつきの中高ユニットとの2ウェイで通してきたが、むろんスピーカーの振動板の構成がシンプルなほど有利になるので、シングル・コーンのフルレンジ型ひとつのシステムを用いることがもっともオーソドックスな解決法であり、理想的なテクニックでもあるといえよう。
 だから、ここではぐっと後戻りの印象を受けるかも知れぬがLE8Tを用いることにした。もうひとつ考えられるのにアルテックの755Eパンケーキと呼ばれる永く愛されている755Eが考えられる。
 LE8Tのプロ・シリーズ2115は、それはハイエンドの拡大という点で一挙向上してはいるが、聴きやすさとか音楽としてのバランスの点でLE8Tの方が、かえっていいくらいといえそうで、ここでは予算が限られたこともこともあってユニットを購入して平面バッフルに取付けて用いることとする。21mmのベニア合板を2つに切って90×90cmの板の中心からやや下にずらした所に17cmの穴をあけて用いる。
 さてLE8Tを鳴らすのに最初一般的なリスナーの便利さを考えてレシーバーを用いるつもりだった。
 しかし、ちょうど出たばかりのヤマハCA−X1という普及価格のアンプを見、それを試聴してみてこれを採用した。今までのヤマハのアンプのようなジッとおさえた控え目な鳴り方ではなくて、スピーカーを朗々と鳴り響かせてくれるのが驚きであり、嬉しい限りだった。効果的にCA−X1の採用は大成功だったといってよかろう。決してこのX1はパワー競争の所産ではないので、あり余るパワーとはいえないにしろ、LE8Tというさして大きくないスピーカーをガンガン鳴らすには不足はまったく感じさせることはない。それどころかゆとりも感じるので、低音コントロールを2ステップほど上げて、平面バッフルによる低域の不足を補うことさえできる。つまりLE8Tを90×90cmという平面バッフルできくにはこの程度の補正は必要である。
 プレイヤーのヤマハYP511は白い木目でなく、落ち着いた雰囲気で高級感も十分で、新型の多い中にあってもまずお買徳。ヤマハの例によってカートリッジのシュアー製も大きなプラス・アルファだろう。
 さてこのCA−X1にはコンビとなるべきチューナーもあり、こちらもまた大変に優れたクォリティーで、価格からはどうしても信じられぬほどだ。

●グレード・アップとバリエーション
──おもに「ドラム・セッション」のレコードなどを聴かせていただいたわけですが。
岩崎 そうですね。音の定位というものをここで少し考えてみたわけで、シングル・コーン一発という形をとってみようと思い、LE8Tを一本、平面バッフル仕様としましたが、どうも低域の伸びが不足しがちで、「ドラム・セッション」での、あのオンな感じのドラムの音が間近に、力となって量感をともなって出てこないんです。どうも箱がないとね。そこで、グレードアップの第一としてはこのLE8TをサンスイSP−LE8Tの箱に収めるという作業ですね。もちろん低域をアンプでブーストしてやるという手もあることはありますが。
──次に、音の解像力という点ではいかがですか。あのシンバルの音をよりリアルにとらえるにはどうすればいいでしょうか。
岩崎 その点では、YP511付属のカートリッジでは、音が平均的になりすぎて、力となって出てくる部分に物足りなさを感じますね。音にメリハリをつけ、さらに解像力をも増すという面で、私はオーディオテクニカのAT15Saに魅力を感じました。これを使う方向でいけばいいでしょう。またもう一つの方向としてMC型のカートリッジを使うということで、この場合、出力電圧の少なさという面でハンディがあるわけですが、高出力型MC型もありますので、オンライフOMC38−15Bなどは非常に一音一音をくっきりと浮き出させ、しかも力強さも持っていますね。その点、デリケートさとは違う意味での細やかな表現も可能としてくれる素晴らしい製品だと思います。サテンのM117というカートリッジも似たようなタイプですしね。ただ音の傾向としては以上あげたカートリッジは、それぞれ異った性格を持ったものだけに、できれば何かの機会を得て、聴き較べ、自らの感覚にそった選択をしてほしいですね。
──この「ドラム・セッション」における生々しいリアリティーを持った音は確かに素晴らしいものだと思いますが例えばバリエーションとして、もっとボーカルなら強いとか、やわらかな味を持ったとかいう、別の良さをそれに付け加えたい時にはどうしたらいいでしょう
か。
岩崎 リアルな音像再現という点で、ヤマハCA−X1は抜群の偉力を発揮しますが、たとえば、もっと生の演奏の持っているやわらかい雰囲気を狙う場合、最近話題となっているFETを使用したパワー部を持つアンプの使用は有効だと思いますね。その意味ではソニーTA4650、日立Lo−DのHA500Fが考えられますが、結果、HA500Fでは中域のやわらかみが良く出てきて、ボーカルでは品の良い──たとえばアニタ・オディの声がそれほどやわらかくて品がいいとも思えないんですが(笑)──響きの良い豊かな声が聴かれますね。これはもう、それだけで大変な魅力ですね。また、ソニーTA4650では、CA−X1とHA500Fの中間をゆくというか、両方の良さをうまく兼ねそなえたものを持っていましたね。「ドラム・セッション」でのタイコの皮の張り具合がゆるむこともなく、しかもサックスやトランペットなど、管の再生にもやわらかな丸みを帯びた、それでいてリアルな音で楽しめましたね。

スペンドール BCII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 明るく豊かに屈託のない鳴り方。むろんそれは新しいモニター系の、帯域を広くフラットに作るという方向での、しかも明らかにイギリスの音質の範疇での話だが。このスピーカーの音のバランスは、ひとつのスタンダードな尺度としてもさしつかえないほど見事である。これをたとえばジョーダン・ワッツのTLSと比べると、より温かく中域が豊かで、解き放たれたような広がりで鳴る。むろんTLSの抑制を利かせた鳴り方も一方の対照として魅力的だが。BCIIは、低生きてもあまり音を締めない作り方だが、しかしダブつくわけでなく解像力も良い。新しいプログラムソースのダイナミックな音にも正確に反応する。いかにも音の鮮度が良く、イギリス製の中ではむしろ積極的に語りかけるような親密感を鳴らすところが魅力といえる。アンプやカートリッジもグレイドの高い、緻密な音の製品を組み合わせること。専用のスタンドを借用する方がいい。左右に十分にひろげてセッティングするのが良さを引き出すコツといえようか。

グッドマン Achromat 400

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 久しく鳴りをひそめていたグッドマンだが、むかし愛用したスピーカーだけに、待ちこがれた感じで鳴らした。結論をいえば、イギリスのひと世代前の、キラキラ光る細い金属線のような高音と、やや手綱をゆるめて鳴らす低音のあいだにはさまれてむしろ抑えた感じの中音という、例のイギリス・トーンが鳴ってきて、もう少し現代ふうのフラットネスを期待していた耳には、ちょっとがっかりという感じだった。しかしそれがイギリスの地酒というか地方色であることを頭において聴きこんでゆくと、ひろがりと奥行きのよく出る音場感。ヴァイオリンのハイポジションに特有の光沢と輝きが聴きとれる点。かつてのグッドマンの持っていた、渋さにくるまれた高域の独特の華やかさが、やはり世代が変っても鳴ってくるところがおもしろい。こういうクセの強い音を聴き馴れない人には理解されにくい音かもしれないが、うまく鳴らしてゆくと、これでなくては鳴らない味が、私には一種の魅力である。専用のスタンドがなかなか合理的でよく考えられている。

ESS amt-1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 低音から高音までの音の自然さ、バランスのよさで、今号掲載分の中ではスペンドールと比肩できる良いスピーカーだと思った。ただ、そういう良さを出すには、使いこなしに多少の工夫が必要だ。まず配置の面では背面をなるべく固い壁につける方がいい。これで低音の土台が非常にしっかりしてくる。レベルコントロールは〝NORM〟が良かった(BRIGHTとSOFTポジションあり)。限られたスペースでいろいろな曲についての詳細は書けないが要するに、すべての楽器に対して品位の高い、な滑らかで繊細な、適度に、艶も乗った美しい音色で、これは価格に対して相当にグレイドの高い掘り出し物だと思った。艶という点では、ヨーロッパ系の濡れたようなみずみずしさには及ばないが、しかしアメリカの製品としてはきわめて夜広っぱ的な清潔な響きの美しさを持っている。解像力もよい。この音を生かすには、アンプやカートリッジに、かなり緻密な音を組み合わせるべきだ。たとえばエンパイア4000やEMT。そしてマークレビンソン系のアンプ。

JBL L36 Decade

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 鮮烈、というとオーバーかもしれないが、たとえばあれほど鮮明な鳴り方をするヤマハ1000Mが、これとくらべるとおとなしく聴こえるといえば、まず全体の感じを大掴みに説明できる。必ずしも極上の品位とはいいにくいが、この一種新鮮な鳴り方はやはり魅力で、とくにポピュラー系では、音像をくっきりと隈どって、低音弦の弾力的な鳴り方に支えられて、むろんナマとは違う作られた魅力であるにしても、音離れのいい、腰のくだけない力の強い音を聴かせる。クラシック系をどこまで鳴らせるか挑戦してみようと、レベルコントロールの中音(プレゼンス)を-2に、高音(ブリリアンス)を-1にしぼった。これでも鮮鋭さは失われないが、これ以上絞っては、音のバランスもJBLの魅力も失われてしまう。高い台に乗せてアンプで低音をやふ増強してみると、量感が確実に増す。スクラッチノイズの質からみても中~高域の質感は決して上等ではないが、ともかくまとまりの良さでつい聴かされてしまう。クセも強いが妙に魅力的な音。

ジョーダン・ワッツ Jupiter TLS

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 抑制の利いた端正な鳴り方。低音から高音まで、でしゃばらず、しかし独特の魅力的な渋い光沢で聴かせる。周波数レインジも相当に広く、明らかにイギリスの新しい、フラットネスとワイドレンジを目ざした作り方だ。箱鳴りを完璧なまでに抑えてパワーを上げても低音をやや増強しても、低音楽器の音階が明瞭で、オルガンのペダルトーンも、ファンダメンタルが気持よく聴ける。あらゆる音に、イギリス紳士のような節度があって、しかしそこによく練り上げられた周到なバランスが作り上げられ、オーケストラからソロものまで、さらにジャズ系まで、ほどよい張りと明瞭度の高い自然な響きをともなって、こころよく聴き込むことができ、テストであることをつい忘れさせる。ハードな現代のプログラムもけっこうこなせるだけの力を持っているし、カートリッジやアンプもEMT、マークレビンソンといった緻密で新鮮な傾向がよく合う。壁にぴったりつける方がよさそうだ。バルバラのインティメイトな声が忘れがたい。

ラウザー Auditorium Acousta

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 少し古い世代の製品で、独特の持ち味で聴かせるスピーカーだから、現代のモニター系を聴くような尺度とは正反対の聴き方をしないと、良さが理解しにくい。とくにこの製品は、正面と背面とに音を分散放射するタイプだから、部屋の音響条件や置き方の変化によって大幅に音色やステレオ効果が変化する。今回の試聴では必ずしも最適の配置ができたとはいいにくいが、それでも、ことにヴォーカルやコーラスの場合に、一種独特の温かみをともなって、多少の古めかしさはありながら品の良い響きで不思議に幸福感のようなものにひたることができる。オーケストラも、あまりパワーを上げずに、トーンコントロール等でうまく補整すると、端正な、音を分析するよりも全体にくるみこんでしまうような、滑らかで品の良い響きで聴き惚れさせる。古い録音、小編成の曲、渋い曲に向いている。反面、新録音のスケールやダイナミックス、或いは解像力の良さなどを鳴らすだけの力はない。アンプ、カートリッジもそういうカテゴリーから選ぶとよい。

KLH Classic Four

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 AR・MSTのところでも、アメリカ東海岸の製品がハイを落して作ることを書いたが、同じボストン生まれのKLHのこの新型が、偶然そのことを説明してくれる。というのは、端子板のところにトゥイーターのレベル切換スイッチがついているがこの製品ではそれが二点切換えで、一方にNORMALの表示がある。問題はもう一方のポジションで、そこには何と、FLATと書いてあるではないか! つまり彼らの耳には、フラット即ノーマルではなく、ボストンの彼らの耳、ないしは東海岸のかなり多くの人たちの耳には、フラットよりもやや高音を落しかげんにセットした音が「ノーマル」に聴こえるという事情を、この製品が物語ってくれる。私はFLATのポジションで聴いた。モデル5や6のやや乾いたしかし暖かい音色をこの新型も受け継いでいるが、どういうわけか、音のバランスでは6型が、総体的な響きの良さでは5型の方が、それぞれ完成度が高いように、私には思えた。カートリッジでは、シュアーやエンパイアが良さを引き出す。