Category Archives: 海外ブランド - Page 68

アルテック 620A Monitor

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アルテックはアメリカの代表的なスピーカーメーカーであるが、その作品中、ながい伝統に輝く傑作が、38cm口径のコアキシャル同軸型ユニットである。604、605シリーズと呼ばれ、世界中の録音スタジオのモニターとして大きな信頼に支えられてきた。これは、そのユニットを最新のテクノロジーでリファインした604−8Gというユニットをバスレフのフロアー型エンクロージュアに収めたプレイバック・スタンダードである。

タンノイ Arden

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 タンノイが、新しい経営体制に入って発表したシリーズの最上級モデルが、このアーデンである。38cmウーファーの同軸型コアキシャル・ユニットは、タンノイの歴史的、伝統的傑作ユニットをリファインしたもので、スピーカーのサラブレッドと呼ぶにふさわしい。往年のタンノイのようなクラシックな雰囲気は消えたが、これはこれで高く評価できる。癖はずっと少なく、おだやかでありながらタンノイの風格がある。

AKG P8ES

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 AKGのカートリッジは、最近になってから開発された現在のシリーズが第二世代の製品である。このモデルは、AKGの最高級製品であり、現代的な高い性能をもつが、とくにヴォーカルでの、ナチュラルで、エレクトロニクスの介在を感じさせないような、濡れた、みずみずしさはかけがえのない魅力である。

QUAD ESL

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 エレクトロ・スタティック型で、このシステムほど、実用的に、高く、長く評価され続けているものもあるまい。3ウェイ構成のコンデンサー・ユニットを、きわめてユニークで美しい仕上げのエンクロージュアにおさめ、見るからに音の繊細さが彷彿とするような魅力あるものだ。このシステムで聴く弦の美しさは無類であり、スタティックな控え目な嗜好を持つ趣味人には、これをもってベストとするといっても過言ではあるまい。

オルトフォン SPU-G/E

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 本来は業務用システムのプレイバック用に開発されたモデル。シェルと一体型で、AとGにわけられているのはこの背景を物語っている。本機がベースの改良モデルが常に存在しても未だ現役として充分の実力をもっているのは珍しい例で、今後いつまで残るかが、SPUファンとしては心配のたねである。

スペンドール BCII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スペンドールは、イギリスのスピーカー専門メーカーだが、このBCIIは、シリーズ中の中堅に位置するものだ。しかし、音の美しさでは、ベストといってよく、スペンドール社自身の意識外の自然発生的な傑作ともいえる。無論、同社のスピーカー技術は世界最高水準といえるが、それよりも、この美しい音を聴くと、その感覚の素晴らしさが強く感じられずにはおくまい。みずみずしい音である。3ウェイのバランスは完璧である。

ピカリング XSV/3000

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 モノーラル時代以来の古きカートリッジメーカーであるピカリングの製品は、CD−4方式対応型のXUV/4500Qで非常に高い評価を得たが、このXSV/3000は、レギュラーなステレオ用に開発されたトップモデルである。洗練され現代的になったとはいえ、腰が強くクッキリと粒立つピカリング伝統の音は、このモデルも充分に受け継いでおり、直線的に表現する独特の魅力は、他では求められない素晴らしさがある。

B&W DM4/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 イギリスのB&W社の存在は地味だが、それは、その外観にも音にも滲み出している。つまり、渋味のある、じっくりと聴き込むほどに滋味の味わえるといった音である。DM70やDM6などの大型システムから、この4のようなコンパクトなものまで、一貫したポリシーをもっているが、他社製品との価格比較の上からすると、断然、生彩を放つのが、このシステムだ。クラシック・ファンにはとくに推めたい家庭用のさりげない優秀品。

セレッション UL6

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカーの音をどうしたら、人の感覚に美しく響かせることが出来るかをよく心得たセレッションらしい傑作だ。スピーカー作りのキャリアのベテランが、家庭で音楽を聴くという目的を十二分に知りつくして作り上げたコンパクトながら、堂々とした音の再生も可能なシステム。品位の高い音の風格が感じられる。

QUAD FM3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 チューナー単体としての物理特性や音質で比較すれば、もはや国産各社が内容的にいっそう充実した製品を作り出しているが、プリの33、パワーの303や405の存在が貴重であるとすれば、それと組み合わせるのに、やはり見た目にも同じ兄弟のFM3を使いたくなるのは人情というものだろう。

シュアー V15 TypeIII

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ステレオ初期以来、シュアーのカートリッジは、つねにその時代のオーディオファンの支持を得てきたが、とくに、このV15TYPEIIIほど数多くの愛用者をもつカートリッジは他にあるまい。パフォーマンスから考えても、発売時点でこそ、ラミネート型のポールピースの採用は注目を集めたが、現時点では、さらに優れた製品が存在しているはずである。それでも標準カートリッジ的に使われるのは信頼性の高さ、音の魅力であろう。

セクエラ Model 1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカーならJBLの4350A、アンプならマークレビンソンのLNP2LやSAE2500、あるいはスレッショールド800A、そしてプレーヤーはEMT950等々、現代の最先端をゆく最高クラスの製品には、どこか狂気をはらんだ物凄さが感じられる。チューナーではむろんセクエラだ。

オルトフォン RMG212

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 RMG309では長すぎて使えないという場合に、309ほど重厚ではないがSPU系のカートリッジの良さを抽き出すのに貴重な製品。かなり以前に製造中止になっていたが、一昨年、来日したオルトフォンの営業担当者に,私から再生産を要請したのがきっかけになって再発売されたといういきさつがある。

オルトフォン RMG309

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SPU(GおよびA)タイプのカートリッジを、最もオルトフォンらしく鳴らしたければ、やはりRMG309を第一に奨めたい。個人的には不必要に長いアームは嫌いなのだが、プレーヤーボードをできるだけ堅固に、共振をおさえて組み上げれば、しっかりと根を張ったように安定な、重量感と厚みのある渋い音質が満喫できる。こういう充実感のある音を、国産のアームで菊子とができないのは何ともふしぎなことだ。

SME 3009 S/2 Improved

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トレーシングの安定さ、アーム自体の音質の良さ、感度の良さ……等、データ的にはSME以上の製品もいまならもう珍しくないが、漆黒の盤面をトレースしてゆくのを眺めるだけでも、いかにも良い音楽が聴こえてきそうな気分にさせるアーム、というのは、SMEを除いてそうザラにないだろう。

トーレンス TD125MKIIAB

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

あまりにも起動が遅くトルクが弱く、操作上のフィーリングが自分の手に合わなくてついに手離してしまったが、音質という意味ではほんとうに惜しい思いをした製品。素晴らしく安定感のある音。艶のある余韻の美しさ。音楽の表情を実によく生かすクリアーな音質。残念ながら国産DDでこういう音をまだ聴けない。

ステラボックス SP-7(S-19-38)

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スイスのステラボックスは、ナグラと並んで超精密度のメカニズムをもつ高級プロ用ポータブルデッキメーカーで、その製品は、放送、映画関係のプロに絶対の信頼性をもたれている。4スピードで76cm/secまで可能で、アダプターにより10号リールまで使える。長年のリファインが見事な水準に達した感がある。

ガラード 401

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ワウ・フラッターなど、最近の国産DDと比較すると極めて悪いかに(数値上は)みえる。キャビネットの質量をできるだけ増して、取付けに工夫しないとゴロも出る。けれど、このモーターは音がいい。悠然とかまえて、しかも音の輪郭の明瞭で余韻が美しい。こういうところに、データで表せないふしぎさがある。

EMT XSD15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 TSDでさえ、勝手なアダプターを作って適当なアームやトランスと組み合わせてかえって誤解をまき散らしているというのに、SMEと互換性を持たせたXSDなど作るものだから、心ない人の非難をいっそう浴びる結果になってしまった。EMTに惚れ込んだ一人として、こうした見当外れの誤解はとても残念だ。

EMT TSD15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ずいぶん誤解されているらしいので愛用者のひとりとしてぜとひも弁護したいが、だいたいTSD15というのは、EMTのスタジオプレーヤー930または928stのパーツの一部、みたいな存在で、本当は、プレーヤー内蔵のヘッドアンプを通したライン送りの音になったものを評価すべきものなのだ。

ピカリング XUV/4500Q

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かつてモノ時代の名門だったピカリングは、永いこと、チェンジャー用のローコストモデルの生産に力を入れて高級品に見向きもしなかったが、久々に放った4500Qは、4ch用だがむしろふつうのステレオの再生に、尖鋭かつ鮮烈な音の魅力を聴かせるクリーンヒットで、ピカリング健在なりの認識を改めた。

オルトフォン SPU-GT/E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 馴染み深い割には、本当に使いこなしている人が意外に少ないのではないか。第一に、頑丈な重量級のアームで、3gまたは以上の針圧をかけることが必要だ。軽量アームでは、針圧だけかけてもトレース不良でビリつきが起る。最新の良いヘッドアンプが入手できれば、トランス内蔵でない方も使ってみたい。

AKG P8ES

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 PU4までのAKGのカートリッジは、設計がAKG、製造がアメリカ・グラドという混血だったが、P6、7、8の新シリーズでは、構造も音質も一新された。P7Eのクリアーでキリッと粒立ちの良い音も魅力だが、大型装置なら、より自然で誇張感のないP8ESの方がいっそう優れていることが聴きとれる。

オルトフォン SPU-A/E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 Aシェル入りのSPUは、Gタイプとは少しニュアンスの異なる、より緻密で無駄のない、少し古めかしいが暖かく厚みのある表現が貴重だ。できればRMA309のような専用アームが欲しいが、無理であればFR64なども一応使える。適性針圧にはややバラつきがあるが、概して3g以上かけた方がいい。

ゴールドリング G900SE

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 とても耳当りの良いソフトなバランスに仕上っていて、品の良い、おだやかな音ですべての音楽を表現する。音の余韻の響きが美しい。華やかさとか輝きといった要素のないかわりに、やさしさ、しなやかさがあって、弦の室内楽などには、他に得がたい独自の世界を展開して聴かせる。針圧の変化には敏感なほう。