シュアーのV15 TypeII、M75E Type2、M44-5の広告(輸入元:バルコム)
(スイングジャーナル 1969年6月号掲載)
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シュアー M44-5
JBL Lancer 77
岩崎千明
スイングジャーナル 5月号(1969年4月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より
アメリカ人は、JBLとかジムランといういい方をしない。ランシングと呼んでいる。James B Lansingの略だから当然で、このランシングスピーカーは米国の相当なマニアにとっても「高価な豪華品」を意味している。
さてこのJ・B・ランシング社にランサーという名をつけたシステムが出たのは確か5年前である。
ランサーという名からは、本来の語意の槍騎兵にふさわしいマスートなセンスをうかがわれるが、さらにこの名からシリーズに賭けた意欲をも知ることができよう。
この時期を境にしてJBLはスピーカー・メーカーから規模も狙いもぐんと拡大した大型メーカーとして生れ変ったようだ。ランサーには、おなじみLE8Tを主体にし、パッシブ・ラジエター(ドローン・コーン)で低域を素直にのばした比較的普及価格のランサー44があるが、その一段とハイ・クォリティーの製品がランサー77である。
さらにその上にパワー・アンプつきのランサー99や、このシリーズ最高級のランサー101がある。
ARスピーカーの爆発的人気を意識して作られたこのランサーのシリーズの特長は「広い帯域特性と、素直な音色バランス」にある。ハイファイ技術のきわめて高度に達した今日では、広帯域特性はひとつの最低条件ともなっている。しかし、ランシング・スピーカーの最大の特長は、あくまでもその高能率と分解能のずばぬけた優秀性とにあり、これがいかなる楽器の音をも鮮やかに再現する基本的な底力としてこの社のスピーカーの他にない特長であり、ポイントでもあった。そして、この優秀性を基本的には損なうことなく、広いレンジを得たのが、ランサー・シリーズなのである。
こういう点を考えると、ランサー・シリーズの中でも、もっともランサーらしい優秀性をそなえている製品はランサー77である。
ランサー77は、JBLだけでなく米国製としても珍らしい10インチ25センチ・ウーファーが主力となっているが、この10インチ・ウーファーLE10Aはブックシェルフ型ランサー77のために設計されたのに相違ない。つまり本来のシステムとしての優秀性を確保すべく、広帯域ウーファーとして作られたものだ。当初はLE30Aという口径3インチのドーム・ラジエター・タイプのトゥイーターと組み合せて発表されたが、高域の鮮かさと指向特性とを改善する意味もあってか、いまは小口径のLE20Aとの組合せでランサー77として発表されている。
この一見なんの変哲もないLE20Aからたたき出されるシンバルの音はまったく紙質のコーンから出てるとは思えない。このシンバルのブラッシの余韻やすみきった超高音はいわゆる周波数域だけでなく、優れた指向特性の所産でもある。
そして、この超高音特性に加えてLE10Aにパッシブ・ラジエターを加えて超低域特性をスッキリと素直に伸ばしている点で、ランサー・シリーズ中でも広帯域特性という点でずばぬけた製品だ。加えて、中音域のややおとなしいひかえめなバランスはJBLスピーカーには珍らしいほどである。しかもひとたびブラスのソロに接するや輝かしいタッチをくっきりと再現しフルバンドの咆哮にはスケールの大きな音場を鮮烈に再現してくれる点は、JBLならではといえよう。
93、500円という価格はブックシェルフタイプとしてたしかにかなり高価なものには違いない。しかしこの音に接したなら多くの市場製品の中でも抜群のコスト/パーフォーマンスを得るに違いない優秀システムがこのランサー77なのである。
シュアー M75E Type2, V15 TypeII
アコースティックリサーチ AR-4x
瀬川冬樹
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より
何ともいえない暖かみのある、やわらかい音質で、たとえばNo.3、14、25などから切替えると、高域が急に無くなったように見えることがあるが、単独にしばらく聴き込んでみると、柔らかい中にもかなり高い方までよくのびた特性が感じられる。とくにヴォーカルやムードでは、すばらしい雰囲気を再現した。面と向かって肩ひじ張って聴くというより、素敵なデザートを楽しむようなゆったりした気持で聴き流していたくなるような、またそんな目的のためにちょっと欲しくなるようなスピーカーだった。
テスト番号No.36[特選]
JBL Lancer 77
瀬川冬樹
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より
もしも、レベルコントロールがあるとしたら、中高域をもう少し抑えたい感じだが、とにかくすばらしいスピーカーであった。くっきりと澄んでいて、楽器の音に余分な音が全然まつわりつかない。明るく、抜けがよく、しかも軽い。相当なハイパワーでも、また絞り込んでもこの特徴がほとんど変わらない。これで室内楽の微妙な陰影がもう一段美しく再生されれば文句ないが……。どちらかといえば硬い方の音質だから、No.1の系統の音の好きな人には好まれないかも知れない。
テスト番号No.25[特選]
タンノイ IIILZ MKII
瀬川冬樹
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より
特選機種の中では、このスピーカーが最もクセが強く、ずいぶん考えたのだが、何よりも音の素性の良さが、ただものではないので、あえて推した。相当にムラ気のある製品らしく、四日間を通じて、その日によって三重丸と□の間を行ったり来たりする。休憩時など、立会いの編集氏がパチパチ切替えているのを隣室で聴いていると、中に二つ三つ、ハッとするほど美しい再生するスピーカーがあって、No.14もそういう製品のひとつだった。中低音の音質から想像して、キャビネットをもっと上等なものに作りかえたら(経験上だが、どうもこの音は安もののベニアの音だ)、総体的にすばらしいシステムになると思う。わたくしの採点で、室内楽に三重丸をつけた唯一のスピーカーである。
テスト番号No.14[特選]
テレフンケン TX-60
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
明るく抜けて、のびのびとした音、それでいて、こくのある重厚味もあり、興味深いシステムだ。決してクオリティの高い音ではないが、切れ込みのよい明解な音がする。音楽的な音といってよい。Fレンジは決して広い方ではなさそうで、再生音場のスケールも小さい。ジャズにはそうした物理特性面での貧困が目立ち、迫力に欠けたが、やはり、まとまりのよさで聴かされてしまう。小憎らしいほどに巧みな、音まとめの妙だ。
JBL Lancer 44
瀬川冬樹
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より
中域が張り出す傾向が、多少硬めであるが、総体には音の質がなかなか良く、楽器のひとつひとつの音像がくっきりと浮き彫りにされる印象である。音量の大小にかかわらず、音色がほとんど変わらない点は見事である。弱音の解像力もなかなか良い。中域から高域にかけての独特の音色には、好き嫌いがありそうだ。
テスト番号No.3[特選]
アコースティックリサーチ AR-3a
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
このスピーカーは、まずバランスが申し分なく、次に音色が艶やかで滑らかだ。聴き馴れたレコードの感じな情報は全て再生され、余計な音は出てこないという印象で、端正なイメージである。オーケストラの迫力、ジャズのガッツがもう一つ物足りないが、室内楽やヴォーカルのキメの細かさ、柔らかさは大変品位が高く魅力的であった。やや抜けの悪いのが不満といえばいえなくもないが、暴れのない点では比類がない。
トリオ・ボザーク B-313
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
大変キャラクターの濃いスピーカーだ。重く厚い低域、引き締まった控え目な中音、高質の高音、それらが一つとなって再生する音はマッシヴで重厚な安定感がある。しかし、私の好みからすると、いかにも明るさと軽やかさが即し、デリカシーとニュアンスの再現に難がある。全体にダンプされ過ぎた感じで、特に中音域のふくよかさ、陰影といった点で不満があった。シェリー・マンのブラッシングのピアニッシモはどこかへ消えた。
アコースティックリサーチ AR-5
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
クオリティは引き締った音で品位は高いが、抜けが悪く低音の上のほうからかぶり気味でこもる。バランスはよくとれていて、プログラム・ソースのシェイプがくずれることはない。低い能率でもあるし、かなりハイ・パワーでドライヴすると抜けの悪さもカヴァーされてくる。また、高域のエネルギー不足感じられ、質が良いだけに残念な気がした。使用条件をととのえれば、まだまだ高い性能を発揮するようにも思える。
JBL Lancer 77
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
私にはもっともぴったりきたシステムで、今回の試聴器中では最右翼に置きたいもの。明るく、よく抜けながら、音質が安っぽくなく解像力も優れている。プレゼンスも豊かでオーケストラのかもし出す音響空間もよく再現された。バランスの点でも中域がやや強い感じはあるがよくまとまっている。しかし、ジャズの再生で、中音が平板な感じで深みが足りないのが不満として感じられた。ピアノの打音の立上がりもよく大変好ましい音であった。
アルテック Lido
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
全体のバランスはよくとれているが、ややハイ不足で、どこか位相歪みのような不自然な部分(中低域)があり、音がのびきらない。しかし、締まったソリッドな音色は印象的で、ピアノなどの衝撃音には腰の強い引きしまった再生音が得られた。こうした傾向はジャズの再生により好適で、オン・セットのリアルなベースの再現は大変鮮やか。音像のイメージも明解である。どちらかというと全体に平均した周波数分布をもつソースでアラがでる。
JBL Lancer 44
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
大変力強い音質だが、少々気になる響きが中域につきまとう。また、ごく低いほうののびもやや、ふやけた感じで不満だった。しかし、中音域あたりのマッシヴなクオリティは強固な音のイメージをもち、非常に聴きごたえのある音である。オーケストラは迫力のある再現だが、やや、きめが荒く、室内楽ではそれがやや仇となる。ジャズではガッツのある再生音が効果的だが、やっぱり、のびと抜けの点ではもう一つ不満が残った。
タンノイ IIILZ MKII
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
大変ソリッドでしまった音である。軽やかさや繊細さという点で、室内楽のデリカシーをもったソースには欲をいう余地はあるが、このまとまりとクオリティの高さは立派である。かなり品位の高いスピーカーだと思う。オーケストラとジャズにもっとも安定した再生を聴かせ危なげない。欲をいうと高域の解像力というかデリカシーというか、そうしたキメの細かさが加わって欲しいとこで、そうなれば文句なしのシステムである。
アコースティックリサーチ AR-3a
瀬川冬樹
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より
これだけはあらかじめAR3aと知らされていたが、かりに名前を伏せてあったとしても、この特徴ある音は、容易に聴き分けがつく。全体にやわらかくソフトフォーカスで、キリッとしたところが少ない。従ってポピュラー系の音楽を雰囲気的に楽しむにはよいが、クラシックでも室内楽やピアノなどの細かな陰影までを感じとろうというには無理がある。しかし、どんなレコードをかけても、楽器も声もすべてそれらしく、異質な音が少しもしない点、立派なものだ。全域にわたって、非常に質の良いなめらかな音を聴かせてくれる。このスピーカーは、小音量で鳴らすよりも、あるていどパワーを入れてやる方が、良い音質になる。
テスト番号No.1[特選]
アルテック BF419 Malaga
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
クオリティは大変高い音だと思う。締まっていて硬軟合わせもった緻密で腰のしっかりした音だ。しかし、高低域がのび切らず、レンジの狭さがなんとしても気になる。オーケストラの中でのオーボエなどのソロでは魅せられるほど素晴らしい音を聴かせてくれているのに、テュッティになるとバランスせずスケールがくずれる。ただし、ジャズにはマッシヴな中域がものをいって充実した再現が得られ迫力ある安定した再生音が得られた。驚異的な高能率。
サンスイ SP-LE8T
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
解像力が大変よく、マッシヴで抜けのよい音はスケール感もある。ただし、高域ののびと繊細さにもう一つ不満があって、広い帯域のソースでは不満がでる。オーケストラの高域がまとまった響きとなって、浮き立たないし、高いハーモニックは十分に出きらない。パーカッシヴなソースには効果的で、ジャズには大変ぴったりしたキャラクターをもっていた。シンバルの打音もリアルだし、ガッツのある充実した中音域は力量感が豊かだ。
ADC 303A
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
低域が豊かに盛り上がり、量感はあるが、高域に冴えたのびがない。つまり、毛色の変った音色をもっている。どこか、ガサついた音で、さわやかさ、丸味、暖かさなどの快感が感じられない音で、どのレコードも味気のない再生音となるのが不思議であった。エコーとキャラコンでかなり個性的に仕上げられたポピュラー・レコードだけしか満足のゆくものではなかったという他はない。
アコースティックリサーチ AR-4x
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
全体のバランスはよくとれたシステム。中域に鳴きがあり、ちょっとカーカーといった響きが気になるが、上下へののびはよく、素直である。ピアノのパルス、声楽の暖かさ、柔らかみといった点に、多少の不満が感じられたけれど、他のレコードでは平均して水準以上の再生音が聴けた。大きなスケールの迫力ある音とはいえないが、質のよい音色とオーソドックスなバランスを兼備したシステムである。
アコースティックリサーチ AR-5
瀬川冬樹
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より
どんなソースも一応ソツの無さで、採点上では推選になったが、個人的には疑問の多いスピーカーだ。とくに、音量の大小によって音のバランス──それも周波数特性上のバランスというよりも、各楽器の音色や音量差や距離感がガラリと変わるのは、不思議だ。とくに、絞り込んだときの音は貧相である。しかし、音量を相当上げて聴くと、朗々と豊かな音になるのだから始末が悪い。ハイパワーの好きな人にという前提つきで。
テスト番号No.21[推選]
アルテック Lido
瀬川冬樹
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より
能率のあまり良い方でなく、しかも周波数レインジもあまり広い方ではないという音で、切替え比較では、ラフな聴き方をされると損な製品という点では、No.2にちょっとにているが、音の品位は相当に高く、これなら室内楽でもじっくり聴き込める。そして、どんなソースでもイヤな音を決して出さない。はったりも何も無い音だから、レコード音楽に長いこと親しんだ人でないと、見過ごしそうな音だと思うが、ともかく良い製品だ。
テスト番号No.16[推選]
テレフンケン TE-200
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
表情豊かというか、個性的といおうか、快適な音が印象的。適度に油の乗った充実感があり、長く聴いていると耳について気になりそうな音色が、こういう試聴では効果をあげる。つまり、巧みな音づくりなのである。華麗な音色、人為的なバランスがどんなソースにもそれなりの効果をあげるから不思議である。中高域の硬さ、レンジの狭さが不満として残るが、極めて印象的なスピーカー・システムであった。
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