Category Archives: 国内ブランド - Page 96

ダイヤトーン DS-35B

 菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

ダイヤトーンらしい、明晰な再生音に、かなりのスケールの大きさが加わって、余裕のある再生音を楽しめる。低音が充実して、豊麗でありながら、中高域の明瞭さを、いささかもマスクしていない。音像の明確な、しかも、位相差による空気感をもよく再現する優秀なもの。やや無機的な響きがなくもないが──。

パイオニア CS-616

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 2ウェイ型のCS−516と、3ウェイ型のこのCS−616の、いずれを選ぶかとなると、一般的には聴感上のバランス感からCS−516が選ばれるだろう。しかし、中域のレベルを少し下げたときのCS−616は、さすがに3ウェイらしく、中域が充実し、明らかに1ランク上の音を聴かせる。

ヤマハ TC-800GL

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 とかくカセットデッキのデザインは類型的になりがちで、現在では、いわゆるコンポーネント型が主流を占めている。カセットデッキをシステムのなかに固定することは、デッキ本来のマイクを使う録音を重視すれば、好ましいことではない。この800GLは、タイプライターのような独得な形態と電池でも動作する特長を活かし、バーサタイルに使えるのが最大の魅力である。これで、ブレンドマイクがあれば、もっと楽しいはずだ。

トリオ KA-7700D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのプリメインアンプの中での上級機種で、お家芸の左右独立電源、DCアンプの新機種である。艶ののった力のある再生音は、従来のやや弾力性の勝った音を一段と引き締め充実した実感を与えることになった。スピーカーを十分コントロールするといった感じで甘く鳴らさない。引き締めるのである。

オンキョー M-6

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オンキョーの異端児的存在のスヒーcarで、実に積極的な表現力をもったもの。31cm口径のウーファーを基にした2ウェイだが、2ウェイらしい音の張り出しが魅力である。どちらかといえば、ジャズ、ポピュラー系のレコード再生に向いている。これに端正さと繊細さがプラスされればオール・マイティだが──。

ダイヤトーン DIATONE F1

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 思い切りのよい独特なデザインを採用したスピーカーシステムである。しかし、構成面はオーソドックスなコーン型ユニットを使う2ウェイ方式であり、高能率なシステムである。音色は明るく伸びやかであり、スケールも十分にある。とくに、しなやかで反応が速いトゥイーターは、見事な音を聴かせてくれる。

ソニー TC-4300SD

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ソニーのコンポーネント型デッキは、このところ新機種に置き換えられている。この4300SDは新しい製品ではないが、予想外に良いデッキが少ない中級機の価格帯では、現在でも目立つ存在である。性能、機能、音質、操作性などとくに優れた特長があるわけではないが、オーバーオールのバランスがよく、長期間の使用でも安定して働く点は、カセットデッキがメカニズムを中心としているだけに大きな長所といわなければならぬ。

パイオニア CS-516

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のパイオニアのサウンドイメージを完全に覆した新鮮な音をもつ製品である。表現は線がシャープで鋭角的であり、細部にこだわらず、割り切ったストレートさは、いわば未完成な爽やかさである。オーディオは、とかく密室的になりやすいが、このシステムの明るい外向性の音は、健康そのものである。

パイオニア SA-8900II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 これは、中堅のアンプとして内容、外観共に、大変充実した製品である。パワーも十分だし、音質の力感はやはり8800IIを上廻る。滑らかな肌ざわりは人間の本能的快感をくすぐる、独特な弾力性をもっていて心地よい。機能も、使い勝手も、よく練られていて、プリメインアンプとしての代表的な存在。

アントレー EC-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産の新しいメーカーで、デビューしたての製品である。発電方式はMC型で、音質は、外国製カートリッジのようなニュアンスをもったバランスのよいもの。物理特性の誇示だけが表へ出てこないで、音楽に必要なバランスコントロールがおこなわれている。ただ、デザインや仕上りが内容に追いつかず物足りない。

パイオニア SA-8800II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パイオニアのアンプとしては中級製品の下ぐらいで、かなり普及層を意識したものだろう。しかし、内容は立派に中堅アンプとして通用する。音の肌ざわりのよさは、同社のすべてのアンプに共通する美点だが、個のアンプにも強くそれを感じる。デザインも堂に入っていて、きれいな仕上りである。

ヤマハ NS-L225

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 3ウェイ構成のNS−L325を2ウェイ構成としたシステムだが、トゥイーターはコーン型とドーム型の特徴を備えた、やや特殊なユニットに変更されている。低域は量感が豊かであり、高域もクリアーで、音の鮮度はL325に勝り、滑らかでよくコントロールされた帯域バランスが、この製品の特長である。

ビクター KD-2

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 生録用にもコンポーネント用にも使えるだけの十分な性能を持つポータブルデッキである。モールド製の外装は機能優先でラフ仕上げだが、室外の使用でかなり乱暴に使っても上部であり、傷がついてもさして気にならないのばこの種のデッキとしてかえって好ましい点である。とくに生録向きであり、2種に使いわけられるノイズリダクションは、バイノーラルには、ぜひ使いたい機能である。

オーディオクラフト AC-10E

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオクラフトのシェルつきカートリッジで、発電方式はMM型である。このカートリッジの音は、国産には珍しい味わいをもっていて、いたずらに周波数レンジの広さの誇示が感じられず、充実したサウンドである。高域に肉付があり、無機的な音の多い国産品の中では、ユニークな存在としてあげられる。

ビクター UA-7045

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックのDD型フォノモーターであるTT−101と、本来は組み合わせて使うべく開発された、スタティックバランス型のトーンアームである。デザインは、オーソドックスに機能を優先しており、特別にデザイン的に処理された印象が少ない点が、かえってこのアームの魅力である。回転軸受の上部の同軸上にあるインサイドフォースキャンセラー、ロック可能なアームレスト、アームリフターなど機能は標準的である。

ビクター TT-101

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 高級フォノモーターのトップをきって登場したこのモデルは、リジッドなプレーヤベースとUA−7045アームを組み合わせたシステムとしての音の良さで注目を集めた製品である。ディジタル表示の回転数、1Hzステップの微調整機能など、最新の水晶制御フォノモーターらしいアクセサリーが大変に楽しい。

ビクター SX-55

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターのブックシェルフ型は、主流を占めるラインナップに完全密閉型のエンクロージュアを採用している点に特長がある。
 今回発表されたSX55は最近のこの種のシステムがバスレフ型エンクロージュアを採用する傾向に反し、完全密閉型の特徴を活かしながら、より音色を明るくする方向で開発されている。ユニット構成は、上級モデルのSX7/5と同様に、3ウェイ方式であり、30cm型ウーファーには、SX7と同様にコニカルドームが付いたコーンを採用しているのが目立つ。スコーカーとトゥイーターは、ソフトドーム型で、このタイプの利点である指向特性が優れ、音が緻密であることを活かしながら、明るく、伸びやかな音とするために、振動板材質をはじめユニット全般にわたり再検討が加えられているようだ。なお、スコーカー、トゥイーターともに、振動板の保護を兼ねた、放射状に置かれたフィン型のディフューザーが採用されている。また、発表されたインピーダンスが4Ωであることは、実際の使用では見かけ上の出力音圧レベルを上げるために効果的と思われる。
 聴感上での能率は予測したようにかなり高く、音に一種の精気を感じさせている。各ユニットのつながりはスムーズで、完全密閉型らしい厚みのある低域をベースとして、緻密さがありスッキリと抜ける中音、高音がクォリティの高さを感じさせる。効果優先型の音でないのが好ましい。

ビクター JP-S7

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 実物を前にするとかなり大きいという感じだが、グラフィックイコライザーを組みこんだプリとしては、複雑な機能を巧みに処理して、とても美しいアンプに仕上がっている。ややにぎやかな感じの音なので、同傾向のパワーアンプやスピーカーとの組合せは避けた方がいい。基本を捨てず地道に改良を加えたい佳作。

オーディオテクニカ AT-3M

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオテクニカのモノーラル専用カートリッジで、モノーラル用のカートリッジが少ない現在、貴重な存在なので取上げた。オーソドックスなMM型で、ステレオカートリッジのモノーラルレコード再生では得られない安定した音質が得られる。モノーラルレコード愛好者は是非一個揃えられるとよい。

フィデリティ・リサーチ FR-1MK3

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 繊細で細やかな音をもち、いかにも鉄芯がないMC型らしいカートリッジだったFR−1E以来、改良がくわえられるたびに、音の密度が濃くなっているのがわかる。おだやかで完成度が高く、風格のある音と思われやすいが、最新のヘッドアンプとの組合せでは、中域のエネルギーが強く、ダイナミックで鋭角的な音を聴かせ、このカートリッジがもっているパフォーマンスの奥深さを感じることができよう。趣味性の濃い製品だ。

サンスイ CA-2000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 新発売のAU607や707での開発の成果がとり入れられたようで、音の品位も高く、きめ細やかで艶も魅力も適度にあり、音質面ではなかなか優秀。ただトーンやフィルターをONにしたときの音をもう少し向上させることが課題だが、この価格の単体プリとしては、かなり注目してよい出来栄えだ。

デンオン DL-103S

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 DL−103をベースに近代カートリッジらしい広帯域化をはかったこのモデルは、当初はネガティブな評価もあったが、ディスク側、アンプ、スピーカーなどクォリティが上昇するにつれて、本来の性能の高さが発揮されるようになった。いわゆるスタンダードカートリッジとしての信頼性の高さは、DL−103ゆずりで製品の安定度は抜群である。優れたヘッドアンプと組み合わせると、いかにも広帯域型で鮮度が高い音である。

ヤマハ C-I

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 見た目も大きさも、持ちあげたときの重量感も、コントロールアンプという枠をはみ出して、プリメインアンプではないかと思わせるほどだが、およそ考えられるかぎりの特作機能をパネル一杯に並べたにもかかわらず、造形処理の巧みさで、試作品的な不消化なところが全くないし、音質にもそれは言えるようによく練り上げられた製品。BI以外のパワーアンプと組み合わせてみると、オリジナルの組合せとは別のニュアンスもある。

パイオニア PC-1000/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ベリリウムカンチレバーで話題を呼んだ製品。きわめてクリアーな再生音を特長とする。透明な、明確な音像の輪郭がすがすがしい。しかし反面、暗い陰影のニュアンスを明るく、厳格なきつい線で再現してしまう嫌いもある。これは、このカートリッジの個性であるから、音の好み、音楽の特質に合わせて使いこなすと、抜群の解像力をもったリアリティ豊かな音の世界が拡がる。あいまいさが全くないのだ。

グレース F-8L’10

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カートリッジ、トーンアームの老舗としての伝統を誇るグレースの象徴としての役割を果してきた、F−8L発売10周年を期して発売された珍しい製品である。これを意味して型番の末尾に10がつけられているが、さすがに現代カートリッジらしく、多くのF8シリーズとは一線を画した反応が速く、鮮度が高い音をもっている。とかく高価になりがちのカートリッジのなかでは、その価格もリーゾナブルであり信頼度も十分に高い。