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(別冊FM fan 30号掲載)
Category Archives: 国内ブランド - Page 34
マイクロ SX-8000
SAEC CX-8003 TypeII, CX-5006A
オーディオクラフト AC-3000MC
パイオニア PC-70MC
テクニクス SL-DL1
ソニー TC-FX7, ST-JX5, MDR-FM7
Lo-D HT-500
マイクロ SX-8000
菅野沖彦
別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より
概要 これは一般にはSX8000といっているが、各ブロックによって全部型番が違う。いわゆるターンテーブルと、駆動モーター部分、それからバキュームポンプの三つの部分からなるスリー・イン・ワンとでもいうか、セパレート型だ。非常にユニークで、強烈な重量を誇るターンテーブルシステムにバキュームポンプでエアを送って、ごくわずかだがフロートさせて軸受けベアリングの摩擦抵抗をなくし、SNをよくすると同時に、寿命を延ばすという方法をとっている。そしてモーターでこのターンテーブルを糸ドライブするという、超マニアックな製品だ。いかにも専門メーカーでなければ作れないし、また相当なマニアでなければ使わないものだ。
実際に使ってみて、これは重量でがっちり固めて、それこそクッション類だのというものは一切使わない。全部リジツトに固めていくという方針だから、地上何メートルからかコンクリートを打ち込んで、そういう所において聴くというのが本来だろう。床がグラグラというような建物の中に入れて聴くのは意味がない。
音質 これは評価が大変難しい。非常にいい面とそうでない面とが相反していたように私は思う。全くブラインドホールド的に、構造だのなんだのを抜きにして、音として評価した場合のことを言うと──まず、ベースの音が不思議な、ブーミングではないが、どこかプログラムソースの音がゆがめられたというと語弊があるけれども、逆相成分を含んだ響きになった。もしこれがソースそのものだとするならば、これはソースの音を正直に出したということになる。今回聴いた十六機種中、ほかのはこういうベースの音にはならなかった。
それから、強烈なベースのピチカートがいささかも振られることがない。極端にいうと、これ以外のプレイヤーでは何となくベース自身の支柱がぐらついているような感じの音がする。しかしこれは、ベースの支柱はあくまでがっちりしていて、そこでもって非常に強烈なはじく力で弦だけが震えている。そういうエネルギッシュなベースのはじき音は秀逸だった。クラシックのオーケストラを聴いてみても、非常に透明ですっきりとした、俗にいう抜けのよい音ということだろうが、とにかく明快で、透明であくまで底の澄んだ湖を見るがごとき透明感で、実に独特の魅力を持っていた。とにかくプレゼンスはいいし、分離もいいし品位の高い音ということは間違いない。各楽器の音像が大きくならないし、非常に定位が明快。結局、あくまでこの機械の持っているオーソドックスな、徹底的に物理特性を攻めていったという性格にふさわしい、精巧無比な音である。
これだけのシステムで、徹底的に重量だけで攻めているから、いわゆるフローティングとかクッションとかによるハウリング対策は何も考えられてない。それだけに使い場所と使いこなしによって、ハウリングの悪影響を受ける場合があるかもしれない。
現実に今回も鉄筋コンクリートの中でテストをしたわけだけれども、相当にハウリングが起きた。しかし、ラスクを下に敷くことによって見事に止まった。したがって、これは対策を施せばハウリングがとれるということで、そのへん注意された方がいい。
パイオニア Exclusive P3
菅野沖彦
別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より
概要 このプレイヤーはパイオニアの高級ブランド、エクスクルーシブで出ているプレイヤーの最高級のもので、同社のプレイヤーに対する永年の技術を投入して作り上げたプレイヤーということになっている。確かに相当な力作であって、プレイヤーとしての備えるべき条件をがっちり守って作られたという、非常にオーソドックスなプレイヤーだ。
まずベースが非常に重く、しかも剛性の高いものであって、全体のムードは非常にソフトなファニチャーライクなものになっているけれども、中身は相当たくましいものだ。トーンアームは軽くオイルダンプを施した、少し実効長の長めのトーンアームで、これもなかなかシンプルで、かつオーソドックスなもの。もちろんモーターはDDだけれども、考え方としては重量と剛性というものを追求していって作り上げたマニュアルプレイヤー。ハイクラスマニアにとっては非常に魅力のある製品だと思う。
音質 実際にこのプレイヤーでまず感じることは、ターンテーブルにレコードを置いて針を下ろした時に出てくるノイズが大変に静かだ。つまりSN比がいいということだ。そして、非常にエネルギーバランスが妥当で、各楽器の質感をよく出してくれる。少し感覚的に音の評価をすると、適度に温かい音、それでいて透明感がある。透明感のある音というのはともすると冷たくなりがちだけれども、それが冷たくならないのだ。もう少し細かくいうと、例えばピアノの音なんかは十分にピアノらしい輝きを持っていながら、決して鉄のハンマーでたたいているといった感じではない。それからベースがよくはずむ。リンリンデックのところでも触れたが、この場合は上へはずむ感じが出てくる。楽器の音色感とエネルギー感が非常に自然だ。その代わり低音は重量級の割にはそれほどたくましく、馬力のある音ではない。もちろん決して弱々しくはない。「ダイアローグ」を聴くと、バスドラムの締まり具合とふくらみ具合のバランスが非常にいい。芯がはっきり締まっていて、しかもその回りにつきまとう楽器のブーミングとステージの床に共振しているそのブーミングが非常によく出ているが、このへんのバランスの大変にいいということが、このプレイヤーの性格を示しているのではないかと思う。ベースの弦による音色の変化、これも非常によく出ている。それから、ブラシワークはちょっと細みで硬質になる。ブラシによるシンバルとか、ハイハットの音、あるいはスネアをブラシすると、やや細みだ。もう少し豊かさが出てもいいな、という感じがしたけれども、問題になるほどではないと思う。むしろ透明感とか繊細さというふうな感じで、リアリティーがあるように聴こえた。いかにも日本のち密な製品という感じがする。
オーケストラを聴いても、全体に大変響きのバランスがよく、特に低音楽器群の響きはとても好ましいと思った。ここでも締まりとふくらみがほどよいバランス。つまり基音と倍音のバランスが非常にうまく出てくるといっていい。ホール感も大変にプレゼンスがよく、抜けもよくて全体的に濁りの少ない品位の高い音という感じだ。こういうとベタボメになってしまうけれども、中域の豊かさがもう少し充実してくれば、これは文句のつけどころがない。
ラックス PD555
菅野沖彦
別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より
概要 これはターンテーブルシステムであって、アームはついていない。アームレスの他の機種と同じく、アームはクラフトのAC3000MC、カートリッジはオルトフォンMC20MKIIで試聴した。このターンテーブルシステムは非常に凝っていて、一番の特徴はバキュームによって完全にレコードをターンテーブルのゴムシート面に吸着させてしまうことだ。ゴムシートを介してターンテーブルとレコードが一体化してしまうというほど強力に吸引してしまう。これによってレコードそのものの不安定な、複雑な振動を完全にダンプしようというもの。形も非常にユニークで、かなり横長なもの。アームを二本取り付けて聴けるという利点がある。思い切った設計のターンテーブルシステムということがいえる。ハード的な雰囲気とソフト的な雰囲気を巧みに取り入れ、ハードにも片寄らず、ソフトにも片寄らない仕上げとなっているが、それが逆に何となく中途半端なイメージを作り出しているということにもつながるのではないかと思う。
バキュームポンプが付属しており、リモートでもってスイッチを押してスタートすると、これがパチッと吸着される。しかも気圧計まで付いている。吸着するという効果は大変大きいと思う。その効果の程度が果たして、音という感覚評価の対象としてどうなってくるかというところは微妙な問題だ。ビクターのTT801システムが比較的軽く吸引しているのに対して、こちらは本当に、完全に吸着しているというところに大きな違いがある。従って、バキュームポンプを使って吸引、吸着システムを採用しているものとしては、こちらは徹底的。ビクターはそのへんをうまくコントロールしているということになる。徹底している方からすれば向こうは中途半端だということになるし、向こうからすれば、徹底させるといろいろな問題が出てくる、ということで判断は非常に難しい。
音質 音は総合的にいって、なかなか品位の高いいい音だ。打楽器を聴いても、ベースのピッチカートを聴いても、大変に締まっていて、かつ響きが殺されていない。これは吸着するターンテーブルの質、あるいはターンテーブルベースの構造によるものだと思う。だからこの部分がうまくいっていないと、音が死んでしまったり、音が吸着しすぎてダンプしすぎてしまう、というような音になるだろうと思うが、ここまで強力に吸着して、しかもそんなに響きが失われないということはターンテーブル並びにターンテーブルベースの振動モードが好ましい状態にあるということだと思う。輝やかしい音色でありながら硬くならず、そしてよくダンプされながら急激に減衰するというようなこともなく、楽器の楽器らしい音のはずみがよく出ている。エネルギーの帯域バランスもよくとれていて、ステレオフォニックな音場の再現感もなかなかナチュラルだ。よく音が前に出てくるし、左右の広がりも非常に豊かだ。個々の音についてはどこといって欠陥は出ていない。注文をつけるとするならば、オーケストラの低音楽器群での豊かさが少し物足りないのと弦楽器の高い方の部分がやや華やぐ傾向にあるということだ。しかし、楽器の音色の鳴らし分けその他は非常にいい線いっており、音質的にはこのプレイヤーはかなりのものだ。
ラスク P-6, I-5040MKII
黒田恭一
別冊FM fan 31号(1981年6月発行)
「ちょっと気になるコンポパーツ18 インサイドレポート」より
ラスクとは何か。ラスクを作っているユニチカ株式会社の説明によれば、「吸音と遮音、そして吸振に圧倒的な威力を発揮する全く新しい特殊金属」ということになる。そのラスクをどのように使うか。方法はいくつかある。まずスピーカー内部に挿入する吸音材、整音材、補強材としての使い方があり、プレイヤーのインシュレーターとしての使い方があり、さらにスピーカーのインシュレーターとしての使い方や音場補正用のパーティションとしての使い方などがある。
いずれにしろ、当たり前のことであるが、ラスクは直接音を出さない。この直接音を出さないものをいかに意識するかが難しい。コンポーネントの中での例えばプレイヤー部分のフォノモーターやアームに対する意識とカートリッジに対する意識では微妙に違わないか。
エクスクルーシヴのP3というプレイヤーを使っているが、ちょっと疑問に思えたところがあったので、アームをオーディオクラフトのAC4000リミテッドに替えた。音が変わった。目を見張るばかりの変化であった。むろん好ましい歓迎すべき変化であった。いくぶんきつくなりがちであった音がしなやかになった。
そういうことがあるのはわかっていても、しかし、より直接的に音が変わる、例えばカートリッジとか、あるいはスピーカーなどに対する意識の仕方と、アームやフォノモーターに対する意識の仕方とが全く同じとはいいがたい。その面でラスクは当然カートリッジやスピーカーよりアームやフォノモーターに近い。
しかもラスクはオーディオの世界への新参者である。うさんくさげに思われるのはやむを得ないことと言うべきである。オーディオ雑誌の広告ページでのみラスクを知っていたときには、なんだこれはといった感じで、とてもそこでうたわれている効用を信じるわけにはいかなかった。
一聴は百読にしかずとでも言うべきか。試みに自分の部屋で使ってみて、びっくり仰天した。それまで胸の中でもやもやしていた疑いの気持ちは、実際に聴いてみて、一掃された。カートリッジを替えたとき、あるいはスピーカーを替えたときとは明らかに違う、しかし基本的な違いが、ラスクを使う以前と以後とではあった。
ただ、ラスクをスピーカー内部に挿入する使い方については、友人たちの言葉を信じればなかなか効果的ということであるが、自分では実際に行ったことがないのでなんともいえない。それに念のために書き添えておきたいが、ラスクの効果は部屋の条件などによって大変に違うようである。非常に効果的な場合もあり、そうでもないこともあるようである。使ってみようとお考えになったとしても、いきなり買ってしまうのは危険かもしれない。できることなら実験的に試用した後に購入するかどうかを決められることをおすすめしたい。
今は、P3の下にプレイヤーのインシュレーターとして使い、 JBLの4343の下にスピーカーのインシュレーターとして使い、さらにふたつのスピーカーの周辺でパーティションとして使っている。なお、partition とは、ついたて、仕切り、障害をいう言葉である。
インシュレーターとして使うのと、パーティションとして使うのでは、その効果が必ずしも同じではないように思う。自分の体験をもとにいえば(こういうことはできるだけ正直に書こうとしたら自分の体験をもとにいうよりない)、まずインシュレーターとして使い、ついでパーティションとして使った。
最初にプレイヤー用インシュレーターとしてのラスクをP3の下に置いた。それまで気づかずにいたノイズが消えたような感じになった。音がすっきりきれいになった。このラスクの効用については、一度FMfanの一九八一年第十六号に書いたことがあるが、そのときには「それまで汗で黄ばんでいたのを知らずに着ていた白い地のワイシャツを漂白剤を溶かした水につけたようなものとでも言うべきであろうか」といったような言い方であった。
プレイヤー用のインシュレーターにしろ、スピーカー用のインシュレーターにしろ、ともかくインシュレーターとして使ったときには、音の漂白作用としての効果が絶大である。同じレコードをかけて、ラスクのインシュレーターを使う前と後とでは、音の静けさという点で誰の耳にもわかる違いがある。さっきまで聴いていたレコードを、ラスクのインシュレーターを置いてから聴き直すと、これがあのレコードかと思えるほどである。
そのことを確認した後に、パーティションとして使った。このパーティションとして使った効果については、FMfan一九八一年第十六号でこう書いた。「ひびきは、横にも、奥にも、ごく自然に広がった。定位の良さには、目を見張らないではいられなかった。もっとも、そういうきこえ方には、覚えがあった。そのときのきこえ方は、良賓な同軸型スピーカーの聴かせる音場感と、どこか似ていた」
ラスクをパーティションとして使い始めてから、おかしなことがあった。オーディオに全く不案内な友人にレコードを聴かせたときのことである。彼は目を丸くして、その中央のスピーカーが一番いいと言った。彼のいう中央のスピーカーとはふたつのスピーカーの真ん中におかれたラスクのパーティションのことであった。
ユニチカで出している「ラスク読本」というパンフレットには、「『ラスク』パーティションは、使い方も至って簡単。必要な場所、設置に最適な場所を選んで立てるだけでOKです」とある。この言い方は必ずしも正しくない。なぜなら、「使い方」が「至って簡単」とは言いがたいからである。「設置に最適な場所」を探すのがなかなか難しい。
スピーカーの両横のパーティションの角度によって、音のきこえ方は微妙に変わる。また、スピーカー前面と一列に並ぶように置いた中央のパーティションも前後の位置の決め方が難しい。つまりラスクのパーティションは、使い手に、いささかの使う上での努力を求めるということである。
しかしながらラスクのインシュレーターもパーティションも、少なくともぼくにとっては、ラスクならではの効果で、なくてはならないものになっている。ラスクを使わないコンポーネントなんて──と、コマーシャルの真似のようなことを言ってみたくなったりする。
フォステクス GZ2000, FW800
ソニー PS-X9
菅野沖彦
別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より
概要 このプレイヤーシステムはいうならば、EMTのプロフェッショナルのプレイヤーシステムのコンセプトを受け継いだもの、といっていいように思う。それはどういうことかというと、まず第一にイコライザーアンプを内蔵している。全体にかなり剛性の高いしっかりした構造でまとめ上げていて、実際に放送局などで使うための便利さというものも十分に考えられている。起動トルクが大変大きくてすぐ立ち上がる。それから実際にターンテーブル周囲にはマーキングがあって頭出しがきちんとできるなど、細かい配慮も行われている。そういう意味でEMT930、927を範として開発されたプレイヤーシステムと考えてもいいと思う。見るからにしっかりした出来で、精度も高いし、いかにも業務用機器のイメージがあって、いわゆるウオームなファニチャーライクな仕上げではないけれども、これはそれなりの次元に達したプレイヤーだ。
これは本来は、おそらくXL55プロのカートリッジが付いてくるものだと思うが、今回はそれが付いてこなかったので、ほかのものと共通のオルトフォンMC20MKIIを使ってイコライザーをジャンプして聴いた。
音質 実際の音だが、一番の問題点はやや響きが押えられすぎるという感じがすること。特に低音にそれがあり、全体にプログラムソースそのものに入っている音の伸びやかさみたいなものまでが吸収されるという感じがする。楽器そのものというのは大体ブーミングを利用して出来上がっているもので、当然再生系においてブーミングが加わるということはよくないことだけれども、その再生系においてあまりブーミングが加わらないように一生懸命固めていくと、どういうわけだか楽器そのもののプログラムソースに入っているブーミーな音色感をも硬くしていってしまう。そういう問題があるように思う。このプレイヤーにはそれが出ているように思う。従って、生きたナマの楽器の質感が出てこないということ。非常に端正に全部ガチッとした音像でまとまってはいるが、楽器そのものの生き生きとした性格がどこかへ押し込められてしまう。抑制される、そういう傾向を持っている。ベースなどは詰まり気味で、はじいた余韻が十分伸び切らない、減衰が早いという感じがする。それからピアノも中低域のフワッとした肉付きと雰囲気というものが出なくて、何か押し込められて、立ち上がりだけが鋭くパチッと立ち上がってくるということで、やや即物的なものになってしまう。俗に言えば、少し鋭いというか、つまり豊潤な響きのニュアンスというのがよく出てこない。言い方を変えれば、少々節制がききすぎてる。しかし、聴いてみると、どれもきちんと出てくるものだから、頭の中での自分のイメージのレファレンスを変えると、これはなかなかしっかりしたいいプレイヤーだともいえる。ところが自分の感受性で音楽として受け取った場合には不満が出てくる。いうならば優等生的な音といっていいかもしれない。そういうところがこのプレイヤーの良さでもあるし、悪さでもある。楽しい音は聴けないが、正確な音は聴けそうだというところか。
フィデリティ・リサーチ FR-7, FR-7f, XF-1
ダイヤトーン DS-37B
ノリタケ NC-02, Ceramic Base
ケンウッド L-07D
菅野沖彦
別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より
概要 このプレイヤーシステムは完全にアームまで一体となったもので、カートリッジレスである。このケンウッド、つまりトリオの作ったプレイヤーシステムは、非常に力作だ。このプレイヤーの思想というのは、できるだけ剛性と重量でがっちり固めていって、そして異種共振を持った材料を組み合わせることによって、共振点を互いにずらし、プレイヤーとして必要な良い共振モードを作り出そうということ。つまり特定の周波数に大きな共振が出ないような形にしていこうという、リンリンデックとかトーレンスのフローティングマウントシステムとは反対の考え方だ。日本の高級プレイヤーシステムに対する最近の考え方の主流を占めているものだ。そのために非常に凝った構造となっている。アームそのものにもう少し望みたいところもあるが、これは力作というにふさわしいプレイヤーだ。各部の構造、仕上げともに非常にしっかりとしており、精度も高い。アームの高さ調整などもギアでもって回転させる方式でスムーズに行える。その結果、必然的にできたデザインというのは非常にメカメカしいものになって、少々レコードを聴くというムードからはかけ離れてしまった。私自身も大変に良いプレイヤーだと思って、かなりの期間使ってみたが、もうひとつ愛着が持てない。力作であるということを十分認めながらも、デザインには注文をつけたいと思う。
音質 音質面について、ちょっと細かくレポートしていくと、高音域がやや華やぐ傾向にある。やや硬く、輝きがつく感じがあるが、しかしそれほどきつくはない。低音に関してはなかなか妥当なエネルギーバランスで、楽器のそれぞれの個性的質感をよく出している。例えばベースなどは決してゴリゴリとしたベースにはならないし、ドスンドスンというような、ただただワンノートベースのような重い響きにならない。ベースの響きは非常によく出てきている。はずみもあるし、弦楽器らしい柔軟性もよく出ている。なかなか解像力の優れたプレイヤーだけれども、かといって決して猛々しい音ではない。どちらかというと妥当な、むしろおとなしい音といってもいいかと思う。解像力が非常に明快なものだから、よくこのプレイヤーはガチッとした音というように評価されている場合が多いのではないかと思うが、それは見た目からもきているのではないだろうか。実際には音としてはそんなに硬い音ではないと私は思っている。ある意味ではエネルギーバランスとしては、レファレンス的なバランスを持っている。つまり標準的なバランスを持っているといってもいいのではないか。オーケストラを聴いてみても、管の音色の鳴らし分け、あるいは弦楽器の質感の鳴らし分けもなかなかよく、自然だ。トゥッティでのエネルギーバランスも非常によくとれていると思う。音場感、プレゼンス、ステレオフォニックな広がりとか奥行き、あるいは空間の再現、このへんもまずまずだ。飛び抜けてハッとするような次元は越えていないけれども、高級プレイヤーとしてはまず十分な再現能力を持つものではないかと思う。多くのプレイヤーは見た目と音の印象が非常に似ているけれども、このプレイヤーだけは見た目は少々ごつくてメカメカしすぎるが、音は標準的な、妥当なエネルギーバランスをもっているといえる。
ティアック V-3RX, V-5RX
マランツ Tt1000L
菅野沖彦
別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より
概要 このプレイヤーの最もユニークなところはまずその仕上げ、デザインだ。プレイヤーボードは、重量のある金属をガラスでサンドイッチしている。これは大変にユニークだし、ガラスの性格が音響特性上好ましいという考え方から使ったものと思われる。ターンテーブルボードとしてガラスを使っているということは、いろんな点で利点はあると思う。つまりガラスのいいところは、こういう高級機に使った場合、絶対汚れない。はげないし、アカがついてもふけばすぐ元通りになる。マッキントッシュのアンプのパネルのように、いつまでも新鮮さを保つという点からも大変にいいことだ。それから比重が重いということも、ターンテーブルのボードに採用された理由ではないかと思う。そのために、全体に非常に派手なルックスになっている。色も非常にユニークな塗装と金メッキでゴージャスな感じのモデルだ。これはアームレスのターンテーブルシステムなので、AC3000MCとオルトフォンのMC20MKIIを付けてテストした。高級プレイヤーとして非常に個性的な製品であるだけに、好みが分かれるかもしれないが、私にはなかなか力の入った力作と思えた。
マニュアルプレイヤーとして非常によくできたものと思う。
音質 音質は低音に関してはなかなか締まった音がする。ただ少々硬いという感じがつきまとう。中低域から上に関しては、その低音の硬さに対して少し締まりがない。そのへんの音色の変化のために、音楽がやや不自然になるところもある。例えばピアノの音などはややヤセ気味になる。中低域がしっかり、ふっくらしないということで、特にミドルC近辺のメロディーを奏でるあたりの音が少々ヤセ気味になるために、高域の輝きが少し目立ち、華麗な音になるということだ。こういう効果は曲によっては非常に生きてくると思うのだが、もう少しピアノの肉づきが出て、ふっくらした方が望ましいと思う。
「ダイヤローグ」のバスドラムの音はなかなか締まっていてブーミーな音は全く出てこない。カッチリと締まった音が出てくるし、それから高域もブラッシングのハイハット、あるいはスネアーの音が決してキンキンととげとげしくならないところもこのプレイヤーのいいところだと思う。ベースがそれに比して、少し弱々しい感じがする。強じんなはじく音が、俗にいうパッチリ決まらない。このクラスのターンテーブル、プレイヤーシステムになると、非常に重量級のものが多いので、大振幅のベースなんかは非常に力強くはじく感じが出てくるものだ。総合的にいって、確かにこれ以下のものと比べれば、そういうはじく感じが出ているとは思うけれども、このクラスの中で比べると少し物足りない。オーケストラを聴いた時にも、管楽器の空間における浮遊するようなヌケが、もうひとつ悪い。このへんが透明感を持ってこないと、音の品位という点で物足りない。ステレオフォニックな音場感というのはなかなか豊かでよく広がっていて、そう大きな不満はなかった。
全体の印象としては、外観とよくマッチした音色、つまりなかなか華麗な音でダブついたところがなく非常に締まっている。


















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