サンスイのスピーカーシステムSL5、レシーバーQR500、アナログプレーヤーSR1050の広告
(スイングジャーナル 1971年8月号掲載)
Category Archives: プレーヤーシステム - Page 20
サンスイ SL-5, QR-500, SR-1050
サンスイ SR-1050, SR-2050, SR-4050
レンコ L-75
パイオニア PL-31E, PL-25E
デュアル 1219
パイオニア PL-41W
パイオニア PL-41W, PL-41D
テクニクス SL-100W, SP-10
デュアル 1219
マイクロ MR-611
菅野沖彦
スイングジャーナル 6月号(1971年5月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
マイクロ精機がディスクのプレイバック・システムの専門メーカーであることはいうまでもない。しかも、専門メーカーとしては珍しく、カートリッジやトーン・アーム、フォノ・モーターという各パーツを自社の製品で固めたプレイヤー・システムを発売している。どういうわけか、グレースやオーディオ・テクニカ、そしてFRなどではプレイヤー・システムを発売していないのである。マイクロ精機のこの特色は、同社が音屋と機械屋の両方をバランスさせることに長年努力していることの証左であり、同社の意欲と熱意のほどが伺いしれる。マイクロが製造しているこれらのパーツ、システムはきわめて多く、他社ブランドの製品、輸出などを含めると、その豊かな経験が比較的新しい同社の歴史をうめるに価いするものであることがわかるだろう。大変堅実で、頑固なほど真面目な製品づくりは、ややもすれば洗練された感覚に欠ける嫌いがあり、熱意と努力とはうらはらに、もう一つすっきりしない仕上センスに私は今まで不満をいだいて来た。プレイヤー・システムはディスク・レコードへの音楽的な憧憬の心情と密接に連るものであるだけに、そのデザインや素材や加工がかもしだす味わいはオーディオ・ファンにはきわめて重要なもののように思える。したがって、個々のパーツの性能もさることながら、システムとしてまとまったものは、その雰囲気──機械美の本質を失わないデザインとメカニズムの感触、スムースネスなどにメーカー製らしいプロフェッショナルな手腕とセンスが滲み出ていなければならないと思うのだ。カートリッジ、アーム、モーター、プレイヤー、ケースをバラバラに買ってきて素人が組み立てたものと大差のないアピアランスでは困るのである。したがって、本来ならばシステムに使われているモーターなどは、それ自体がプレイヤー・ケースと一体のデザインであってしかるべきで、モーター単体として、デザインされたものをケースに取付けるという(残念ながら現代では全てのプレイヤーがそういうものばかりなのが不可思議)のでは能がない。単体としてもシステムとしても共用できるという都合から来ていることはわかるが、もう一つその枠や概念を破ったものが出てもよい。話しがやや脱線したが、今度、マイクロが発売したMR611は、従来私が持っていた不満を大巾に取り除いてくれた好製品だ。まず、その雰囲気はマニアの部屋におくにふさわしいものだという感じがもて
る。8極ヒステリシス・シンクロナス・モーター、堅実なスタティックバランスのトーン・アーム、バリアブル・フラックスの新設計のカートリッジによって構成されたこのプレイヤー・システムはローズウッド特有の重厚な化粧板によって装われている。実際に使ってみると、カートリッジは切れ込みのよい水準以上の性能を示すし、ターンテーブルも大変スムースで安定している。なによりもよいことはハウリング・マージンが大きくとれていることで、さすがにプレイヤー・システム作りの経験の豊かさが生きていると思った。他の某高級プレイヤー・システムより約6dbレベルを上げられる。せまい部屋で、大音量でジャズを聴きたい我々にとって、これは実に有難いことなのである。ワーンというハウリングに至らなくてもハウリング気味の状態が、いかに再生音を混濁させていることか。このMR611で再生すると途端に音がすっきりすると同時に低域のしまった安定感が快よかった。細い点では、アームの高さ調整機構がワンタッチで確実なことやヘッドシェルが小型ながらきわめて強度の高いこと、ストレイ・キャパシティの小さい出力コードの採用などいずれも実質的なパーフォーマンスの向上に役立つ配慮ががなされているし、付属品を入れるパーツ・ボックスも設けられている。アクリル製のダストカバーを演奏中に、その自らの重みで落下させても針飛びはなく、補強のきいたしっかりしたウッド・ベースとゴム脚の防振効果のバランスが見事である。なにかいいことずくめのようだが、先にもふれた仕上げの感覚ではもっと要求したい点もなくはない。例えばターンテーブルのラバー・マットの質感やパターンにはもっと高級感がほしい、あちらこちらにやたら入っているマイクロのブランドはいかにもパーツの寄せ集めを感じさせる。もしそうでないとしたら、一つの製品にブランド・マークが都合8つもついているのは選挙運動じゃあるまいし、あまり趣味のよいものではない。このこと自体はたいしたことではないがそういう感覚が実はオーディオ機器の本質や、マニアの趣向のデリカシーには重要な意味を持つものなのだ。メーカーも自負する〝高級マニュアル・レコード・プレイヤー〟であるだけに小言の一つもいいたくなったのである。
しかし、このMR611にはマイクロ精機の商品感覚に一つの飛躍が感じられ、その実質の優秀性と共に大きな満足感を得ることが出来たものであることを使用感想記の結論としたい。
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