テクニクスのアナログプレーヤーSL1100の広告
(スイングジャーナル 1972年3月号掲載)
Category Archives: テクニクス/ナショナル - Page 12
テクニクス SL-1100
テクニクス SL-1100
菅野沖彦
スイングジャーナル 2月号(1972年1月発行)
「SJ選定新製品」より
テクニクスがSP10というダイレクト・ドライヴ・ターンテーブルを発売したことはオーディオ界に強い刺戟を与えた。低速回転の直流サーボ・モーターを使い高精度の仕上加工によるメカニズムとのコンビネインョンは本物を見分ける人たちの間で、またたくうちに評価が高まったのであった。しかも、世界中どこをさがしても、この種のターンテーブルはなく、まさに世界水準を上回る製品といっても過言ではなかろう。時を経ずして、各社からも続々とこのタイプの新製品が発売され、高級ターンテーブルはダイレクト・ドライヴ(DD)という観さえ呈するに至った。そして今回、試用した新製品SL1100は、このSP10の開発を基礎として、これをプレーヤー・システムとして完成したものだ。そのユニークな発想と随所に見られるアイデアやマニア好みの心情を把えたメカニズムは、このところ調子を上げているテクニクスの開発力と意欲を充分に見せつけているようで小気味よい。
このプレーヤー・システムの特長は全体を完全に一つのユニットとして総合的に設計したことであって、ターンテーブル、アーム、プレーヤー・ベースという三つの部分をパラバラに設計しておいて、互いにつなぎ合せて一つの製品にしたといったイメージは完全に消えた製品なのだ。
プレーヤー・ベースにダイカストを使ったというのもユニークであるが、従釆の木製ベースになじんだファンに、どういう受け取られ方をするかは極めて興味深いところだろう。私としては、一方において同社のねらった重厚感やユニット感覚に共感をおぼえながら、他方、なんとなく冷く、硬い、あまりにもよそよそしい感触にも抵抗を感じているというのが偽りのないところなのであるが、このダイカスト製のプレーヤー・ベースは構造的にも機能的にも、きわめてよく練られた設計で、ショック吸収のインシュレーターを内蔵し、アーム交換パネルと、将来イクォライザー・アンプを内蔵したい人の遊びパネルがビスどめをされているというこりようも泣かせるところ。SL1100はトーン・アームつきでSL110はトーン・アームなしという仕様になっているが、SL1100のトーン・アームは、やはり、ダイカストをベースに、パイプ・アームとの組合せで完成したものだ。ユニークな直読式針圧印加装置は大変セットしやすく、インサイドフォース・キャンセラーもついてはいるが扱いはきわめてシンプルだ。無骨なスタイリングとは全く無線のスムースな動作で、まだじっくり使ったわけではないが音質もなかなかよさそうだ。トーン・アームによる音質への影響は想像より大きいもので、その低域特性が全体のバランスに与える印象やトレーシング・スタビリティは軽視できないものだと思う。35cmアルミ・ダイカスト製のターンテーブルのテーパード・エッジはディスク・レコードの取扱い上の配慮もよくできているし、ダイナミック・バランスもよくとれている。かなりの高級ターンテーブルでも、動力機構をオフにして手で早回しをしてみると、全体にブルブルと振動がくるものが少くない。ふだん我が愛車のホイール・バランスに神経質なだけに、こんなところを妙に気にしてしまう癖がある。しかし、やたらにカタログ表示のワウ・フラッターの数値を気に.するぐらいなら、まだ、こんなことでもしてみたほうがましではなかろうか。横道にそれたが、とにかく、このターンテーブル、SP10をはるかに下回るローコストでまとめられていながら性能的には大差のない水準を確保していることがわかる。ダイカスト・ベースに直接針を下してボリュームを上げてみても、その振動の少さがよくわかる。すでに記した内蔵インシュレータ」もよく働き、外部振動にも強く安定したトレーシングが得られた。
こう書いてくると、この製品、いうところがないように感じられるかもしれない。たしかに、その物理的な動作面では、高い水準を確保していて、ディスク・レコード再生に充分満足のいく機能を示してくれる優秀製品だし、はじめに述べたように設計者のマニア気質がよく出た心憎い配慮にもニタッと笑いたくなるのだが、ここまでくると、もう一つ欲が出るのが人情であろう。モダーンなメカニズムを象徴するデザインも個性的でよいが、音楽を演奏するものとして、直接手に触れるものとして、もう一つ人間的な暖み、ふくよかさがあったならどんなにかすばらしいことだろう。プッシュ式のスイッチを指でタッチした時の感触や、スイッチの動作振動が金属ベースに共鳴して聞える薄っぺらな音は意外に輿をそがれるものだったのである。従来のプレーヤー・システムの概念を1歩も2歩も前進させた優秀なこの新製品の登場はその性能の高さとともに強く印象に残った。
テクニクス RS-275CU
テクニクス SL-1100
テクニクス RS-275CU, RT
テクニクス SL-1100
テクニクス SB-30, SB-50, SB-100, SB-300, SB-310, SB-400, SB-500, SB-600, SB-700, SU-3100, SU-3400, SU-3600, SU-50A, ST-3100, ST-3400, ST-3600, SL-30, SL-40, EPC-205C, EPC-260C, EPC-280C
テクニクス RS-262U, RS-270U, RS-275U, RS-715U, RS-720U, RS-732U, RS-736U, RS-74OU
テクニクス SB-300, SB-500, SU-3100, SU-3400, SU-3600, ST-3100, ST-3400, ST-3600, SL-40, SL-100W, EPC-205C, EPC-260C
テクニクス RS-262U, RS-270U, RS-275U, RS-715U, RS-720U, RS-732U, RS-736U, RS-740U
テクニクス EPC-205C
菅野沖彦
スイングジャーナル 10月号(1971年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
すべてのオーディオ機器は、今や、趣味嗜好の対象として考えられている。中でも、カートリッジは、ユニバーサル・トーン・アームが普及して、シェルの交換が当然のことになり、あれこれと取換えて再生するという使われ方が定着しているのを見ても、嗜好品としての色彩が濃い事がわかるだろう。本来的にはカートリッジの振動系というのは、アームを支点として動作するものなのだから、アームと一体となって設計されるべきだし、使われるべきものなのである。それが、このような使われ方が一般化したことの理由は、一つに、いろいろな音のするカートリッジがあることによる。それらは、それぞれに正しい設計、周倒な製造がなされながら、個性的な音質をもっていることによるといえるだろう。現在市場にあるカートリッジの変換方法、つまり、レコード溝の振動を拾いあげて電気エネルギーに変える方法にも実に多種多様のものがある。MM型、MC型、IM型、MI型などのマグネチック系の多くのヴァリエインョンに加えて、光電型や静電型、圧電型などがそれである。そして、これらの変換方式のちがいが音質に差をもたらすと考えられたり、あるいは、変換方式のちがいそのものは音質には影響がなく、それぞれの変換方式のちがいによって生じる振動系のちがいが音質をかえると考えられたりしている。私はカートリッジの専門家ではないから断定的なことはいえないが、その両方だという気が体験的にもする。そして、さらに、その両方だけのファクターではなく他にも無数のファクターが集積されて、音質を決定していると思うし、使用材料の物性面まで考えたら、ちがうカートリッジがちがう音を出すことは当然だと思うし、その音のちがいを楽しんで悪い理由は見つからない。とはいうものの、エネルギー変換器としてのカートリッジの理論の追求や、その現実化の理想については明解な目標と手段とがあるわけで、ただ闇雲に、こんな音が出来ましたというのではお話しにならない。現在のカートリッジの改善のポイントは、振動系を軽量化しながら剛性を保つこと、振動系が理論通りに動作する構造を追求することにより機械的歪を減らすこと、電気的、磁気的な変換歪を最少にすることなどに置かれ、各メーカーが、その構造上、材質上、製造上の改善に一生懸命努力をしているのである。
ここにご紹介する松下電器のテクニクス205Cという新しい製品は、最も新しい技術で振動系を改良した注目すべき新製品である。その特長のいくつかをあげてみると、まず、振動系の主要部分であるカンチレバーが飛躍的に軽量化され、しかも高い強度が維持されていることだ。材質にチタンを使って、これを直径0・35ミリ、20ミクロン厚のパイプ状カンチレバーに圧延加工し、これに0・4ミリグラムという実効質量の軽いソリッド・ダイアモンド・チップを取りつけ、振動系のナチュラルが、きわめて広い周波帯域を平担にカバーし、精巧無比な加工技術で支点とダンパーを構成し、小さな機械インピーダンスでトレース能力を確保、きわめて忠実な波形ピックアップをおこなう。そして、これに直結されるマグネット振動子には高エネルギーの白金コバルト磁石を使い、この優れた振動系の特質をさらに高めている。ワイヤー・サポートにより支点は明確にされ、リニアリティとトランジェントに高い特性を得ている。製品は、全機種に実測の特性表がつけられるというから、カートリッジのようにデリケートな構造をもつ製品に心配されるムラの不安がない。このように、205Cのフューチャーは、テクニクスの高い設計技術と、材質そのものの開発、優れた加工技術が結集したもので、マニアなら一度は使ってみたい気持になるだろう。在来のテクニクス200Cの繊細きわまりないデリカシーと高い品位の再生音に加えて、強靭さと豊かさが加わった音質は最高級カートリッジといってよいすばらしいもので、一段とスケールが大きくなった。歪が少いことは一聴してわかるし、パルスに対するトランジェントのよさは実にクリアーな響きを聴かせてくれた。特性を追求するとこうなるのかもしれないが、私としては、もう一つ熱っぽいガッツのある体温のある音がほしい。それは歪によるものだと技術者はいうかもしれない。しかし私はそうは思わない。それは、たくまずして滲み出る体質のようなものである。この205Cで再生した本田竹彦のトリオの世界はあまりにも美しく透明過ぎた。やや硬質に過ぎた。冷かった。しかし、これはきわめて欲張った話しであって、現時点で最高のカートリッジとして205Cを賛えたい。
テクニクス RS-262U, RS-270U, RS-275U, RS-715U, RS-720U, RS-732U, RS-736U, RS-740U
テクニクス SB-100, SB-300, SB-500, SU-3100, SU-3400, SU-3404, SU-3600, ST-3100, ST-3400, ST-3600, SL-30, SL-40, SH-1010, SH-3400
テクニクス SU-3404
岩崎千明
電波科学 10月号(1971年9月発行)
「電波科学テストルーム」より
4チャンネル用と銘うった市販アンプは’71年8月未現在では、市場にそう多くはない。
さて、テクニクスSU3404は、パワーアンプは2系統つまりステレオ用のみで、4チャンネル用としてはもう一組のパワーアンプを必要とする。
だが、しかし、というこのことばはあまり好きではないのだが、テクニクスSSU3404は、4チャンネル用と、はっきり受けとって然るべき長所を実に明確に具えている。というのは44チャンネル用としてのボリウムコントロールと、実に効果的で高品質のデコーダを内蔵している点にある。
ボリウムコントロールだけについていえば、トリオの、新シリーズアンプも同様の特長を持っているのだが、デコーダは内蔵していない。
4チャンネルへの変換用デコーダは、山水もトリオも単独形で製品化しており、これは他社でも大体それにならっているようだ。
テクニクスSU3404のデコーダ回路は、これら独立形デコーダと品質の上では対等のものであるし、音質にしぼれば、市販製品中でもベストのものといい得る。このことは、もっと大きい声でいうべきだし、このテクニクスSU3404の4チャンネル用アンプとしての価値を大いに高めている点でもある。
SU3404のパネル面の右下にあるMODEつまみ、これがデコーダ回路である。2CHステレオ、マトリクスA、マトリクスB、ディスクリート4CHの4段スイッチに集約された、この見かけの上ではちっぽけな部分は、どうして、どうして中々の本格派だし、中味の濃い高性能ぶりを発揮する
ステレオから4チャンネル変換の、いわゆる2−2−4方式という、もっとも手ごわい再生における音場の自然さ、SU3404の再生品位はこの自然感という点で、市販デコーダの中でもおそらく最高のものだ。
しかし、考えてみれば当然かも知れない。テクニクスが、すでに発表したデコーダ、たしかSH3400という製品として独立したアダプタは、いかなるエンコーダ(録音側変換装置)にも、応じ得られるように細心の配慮がなされている点において、他を圧倒している優秀機器だ。
その音場の自然な再生ぶりは、耳の良いマニアであればあるほど不自然でなくひずみの少ないのにほれ込んで、4チャンネル否定派だったその立場を変えたくなるほどであったのだ。
さらにつけ加えるなら左右のステレオの合成信号の位相角に対してのいたれりつくせりの配慮が、これほどまでに十分になされている点にもマニアの心理をよく知りつくした設計を思い知らされるのだ。
音が悪かろうはずがない。
この優れた変換回路と基本的に同じものが、SU3404のアダプタとして内蔵されているのである。
SU3404が4チャンネル用と銘うったことに対して、十分にその価値を認めたいのは、実にこのアダプタにあるのだ。
このデコーダ回路は、マトリクスAにより2−2−4方式の変換回路となるが、これがテクニクスのみのきわめて自然なプレゼンスが得られる。さらにマトリクスBにより現在、市販されているマトリクス4チャンネルレコードやFMステレオ放送を4チャンネルとして復元してくれる。さらにディスクリート44チャンネルのポジションではディスクリート4チャンネルのテープや8トラックマガジン用として用いられる。
SU3404は私のリスニングルームにはかなり早い時期こお眼見えした。つまりSU3404と同時にである。それは市場にSU3400が発売される直前であった。
この両者のアンプは外観上からもちょっと見別けがつかないくらいよく似ていたが、音質の点でも、使ってみた所でも全然変ることがない。
それもそのはずで、SU3404は、ステレオ用のSU3400を4チャンネル化した製品なのである。
テクニクスSU3404を聞いて、私はこのアンプを居間にあるエレクトロボイスの新形スピーカシステムエアリーズに接続して使うことに決めた。
それは、テクニクスSU3404の音が、実に品がよく、ふくよかな豊かさに満ちていたからだった。
エアリーズも豊かな音ののぴを感じさせるスピーカであったから、この良さを発揮するにはSU3404が多くの意味でマッチするであろうと考えたからであった。
このエアリーズは、エレクトロボイスの伝統をよく表わして低音の豊潤な響きが国産品にない、つやとなめらかさを実に感じさせるが、それにしてもSU3404でドライブしたときに、このふくよかさは一段と増して、スピーカの箱がひとまわりも、ふたまわりも大きくなったような感じさえしたのだ。
いくら音量を上げても、音のりんかくのくずれることのないのは、見かけによらずSU3404の出力が非常に大きいためだろう。35W/35Wという規格は、おそらくゆとりを十分持っているに違いなく、ハイパワーのまま何時間も鳴らし続けてもびくともしなかったのには、他社の製品でにがい思いをしたことのある私にとっては、実に嬉しかったことを特筆したい。
それでいて、ローレベルの音に対してもクリティカルな反応を示し、ピアニシモでも音は少しもボヤけることがないのは、低レベルでの低ひずみ特性の良さをも物語る。
その音はちょっと聞くと、ややソフトタッチで品が良いけれど、力強さが物足りないのでは……と懸念するが、フォルテのときにも、ジャズのソロの強烈さを堂々と再現してくれるのには驚いた。SU3404にも注文をつけたくなるような点がないわけでもない。
それはプリセットと称するボリウムコントロールのまわりの2重つまみだ。カメラのシボリにおけるプリセットからとったのだと思われるこの機構は、ただ単に見ばえのための飾りでしかない。便利さというよりも、高級品としてのメリットを考えてのメカニズムであろう。使ってみて、プタセットの良さは、いささか納得し難い。
それからスイッチだJBLアンプのスイッチそっくりのやわらかいタッチの切れ味は、中々の魅力ではあるが、しかしこのスイッチのパネルのカットが角形であるのはなんとなく、パネル面の感じをどぎつくさせているように思う。若者向きということを強く意識したパネルデザインということであれば、もっと他のやり方があったのではという気がする。しかしこの角形の穴は、テクニクスSU3404だけのものであるし、デザインの個性という点ではひとつのポイントになっていることは認めよう。
テクニクス SU-3400
岩崎千明
スイングジャーナル 9月号(1971年8月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
テクニクスSU3404、エレクトロボイス社のエアリーズ、エンパイヤ999VE着装デュアル1019──これが8月初め現在の、もっと詳しく言うならば、5月連休以後の私の居間におけるリスニング用システムだ。このシステムで、テレビの音楽番組からカセットでとった自家製ジャス・テープから、むろんお気に入りのジャズの新譜と、生活に溶け込んだあらゆる音楽を楽しんでいるわけだ。
この居間兼食堂は私の生活の場だ。JBLハークネスを置いたリスニング・ルームとはまた違った意味で私にとってこの上なく音楽と結びつきの濃い部屋であり、ここでの装置への要求は、たとえ根本的に同じであっても、リスニング・ルームにおける場合とは少々ニュアンスの違うものだ。その最大のポイントは、「聴きやすい再生」を何にもまして望んでいる点だ.
エアリーズというスピーカーについては、すでに7月号のこの欄で紹介ずみだが、音楽の持つ情感とか雰囲気を良く伝えてくれる点だ。私の好きなシステム・コンポーネントであるが、これらの、その特長をもっとも発揮してくれるアンプ、それがこの部屋での愛器「テクニクスSU3404」だ。
このSU3404は、クォードフォニック用の2チャンネル──4チャンネル変換用のアダプターを組み込まれたものであって、その母型ともいえるのが2チャンネル・ステレオ・アンプSU3400である。
SU3400は、一口に言うならば、老練なハイ・レベルのマニアから、若いオーディオ・ファンまでを対象とした高品質のプリ・メイン・アンプだ。老練なマニアは、このアンプを聴き込んで行くに従ってますます気に入るだろう。長く聴いても飽きのこないすなおさ、長時間聴き込んでも疲れることのない音に惚れこむに違いない。そして若いファンは、このアンプの迫力とゆとりに満ちた重低音、味、どぎつさのないしかし澄んだ輝きにも似た高音の冴えにたまらぬ魅力を感じるに違いない。
私自身にしても、ここに触れたそれらの特長は最初きいたときからまいってしまった。特にエアリーズを接いだときの重低音のゆるがすような響きは、エレクトロボイスが狙うこのシステムの最大ポイントを他の国産アンプには見られないくらいフルに引出している。このアンプSU3404は収まるべきスペースに収めたままになってしまった。
テクニクスのアンプ群は50A、また以前この欄で紹介したSU3600、さらにこの3400とデザインが一作ごとに一新されている。逆にいえば、デザインのポリシーが定まっていないことを指摘できるのだが、ただこれは外観上のことであって、中味に関しては決してデザインにおけるほど一貫していないわけではない。50Aのすなおさと品の良いクオリティはSU3600の一聴派手なサウンドにおいても基調となっているし、さらに3400シリーズになってこの基調の上に加え50Aに近い音色をとり戻したといい得る。
つまり、テクニクス・アンプはひとつのサウンド・ポリシーの上に築かれたアンプなのである。3400になって外観的にメカニカルな面を強め若いファンを意識したデザインに格段と近づいたが、サウンドそのものは外観とは異なり前作3600より一層完成度の高い製品となった。
それは、35ワット/35ワットというハイパワーと、テクニクス直系のサウンド、さらに伝統の全段直結アンプという盛りだくさんのメリットを59、000円の価格でまとめあげ得たという点にある。
この価格はコンポーネント・システムを狙う層にとっては製品レベルともっとも買いやすい価格とを示すものだし、他社のアンプもこのラインに目白押しにあるし、消費者側からみれば選択の幅のひろいクラスなのである。毎月のように新型アンプが市場に送り出されるがSU3400はこの中心にあって、ナショナルというステレオの老舗の良識を示す夜明けの星の如き存在となるにちがいない。
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