Category Archives: アキュフェーズ - Page 3

アキュフェーズ P-400

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 B級A級切替のできるパワーアンプで、8Ω負荷時にそれぞれ200W、50Wのパワーを引き出せる。また、モノーラル接続では、ほぼ倍のパワーとなる。ピークホールドの可能なメーターの精度は高く読みとりやすい。ステレオ両チャンネルが電源から独立し、MOS・FET使用のDCアンプという、アキュフェーズとしてはP260とともにより新しい設計のセカンドジェネレーション・アンプと見ることができるものだ。

音質の絶対評価:9.5

アキュフェーズ P-300X

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 姉妹機P300Sのリファイン・モデルと見ることもできるが、内容は別物だし、デザインイメージもフェイス・リフトされている。4Ω負荷で200W+200Wが保証されている。8Ω負荷では150W。あらゆる点で、P300シリーズを土台にしただけあって、充分信頼性の高いものだし、物理特性も、よくリファインされている。モノ接続が簡単にできて8Ωで400Wとなる。メーターはピーク、ピークホールドで見やすい。

音質の絶対評価:9

アキュフェーズ P-260

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 アキュフェーズらしいといえばいえるが、あまり重厚なデザインではない。MOS・FETを使ったDCアンプで、A級、B級の切替ができる現代アンプ。B級130W、A級30Wというパワーは、単体パワーアンプとしては標準的で使いやすい。出力直読、ピークホールドのできるメーターを備えているが、照明色調ともに、本格派というよりはデザイン的である。それも、少々センスが安っぽいのが惜しまれる。

音質の絶対評価:7

アキュフェーズ C-240

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ボリュウムとバランス・コントロールだけが回転式で、あとはすべて、プッシュ式という新鮮なアイデアで登場した高級プリアンプ。C230という弟分でもこのデザインを踏襲していることからみても、アキュフェーズのプリアンプの代表的な顔として、今後もこのマスクが続くだろう。コンピューター・エイジにはふさわしいとはいえるだろうが、それだけに、反面、音楽表現に連る心情性は希薄な印象。しかし中味は凄い。

音質の絶対評価:8.5

アキュフェーズ C-7

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 RET入力完全対称型プッシュプルA級DC構成のヘッドアンプ。聴感上でのf特は最新アンプにありがちなワイドレンジ志向ではなく、ナチュラルな帯域バランスが特長。MC20IIでは、整然とした凝縮した緻密な音が聴かれ真面目な表現が目立つ。ロッシーニは、少し表情に硬さがあり、ドボルザークは、整理された音が少し遠くに広がる。峰純子は重い低域と穏やかな丁寧な歌い方となり音質は少しソフトにまとまる。
 DL305にすると、音色は暖色系で柔らかくスムーズでキメ細かさが出てくる。ロッシーニは気軽に楽しめ、ドボルザークは少しスケールが小さくキレイにまとまる。キャラクターは少なく手堅く音を美しく聴かせる点が特長で、長時間聴いても疲れない音質。

アキュフェーズ T-104

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ほんらいは、コントロールアンプC−240、パワーアンプP−400とマッチド・ペアでデザインされた製品。三台をタテに積んでもよいが、横一列に並べたときの美しさは独特だ。だがそういう生い立ちを別としても、アナログ感覚を残したディジタル・メモリー・チューニング、リモートコントロール精度の高いメーター類などは信頼性が高い。そしてそのことよりもなおいっそう、最近の同社の製品に共通の美しい滑らかな音質が魅力だ。

アキュフェーズ P-300X

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 この社の第一世代の製品ともいえるC−200、P−300、そして小改良型のC−200S、P−300Sのシリーズに関しては、音質の点でいまひとつ賛成できかねたが、C−240、P−400に代表される第二世代以後の製品は、明らかに何かがふっ切れて、このメーカーならではの細心に磨き上げた美しい滑らかな音質がひとつの個性となってきた。P−300Xは、そこにほんの僅か力感が増して、C−200Xと組合わせた音の魅力はなかなかのものだ。

アキュフェーズ E-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プリメインタイプの最高機をねらって、著名ブランドがそれぞれに全力投球している中にあって、発売後すでに3年近くを経過しながら、E303の魅力は少しも衰えていない。特別のメカマニアではなく、音楽を鑑賞する立場から必要な出力や機能を過不足なく備えていて、どの機能も誠実に動作する。ことにクラシックの愛好家なら、その音の磨き上げた美しさ、質の高さ、十分の満足をおぼえるだろう。操作の感触も第一級である。

アキュフェーズ M-100

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 500W? へえ、ほんとに出るのかな。500W出した音って、どんな凄い音がするのかな……と、まず思うだろう。
 いかにもその期待に正確にそして誠実に答えるかのように、M100には、8Ω負荷の際のピーク出力を数字で表示するディジタル・パワーディスプレイがついている。そして、鳴らしはじめのあいだは、つい、耳よりも目がそちらの方に気をとられてしまう。刻々と移り変わる数字に目をうばわれていると、ふと、音を全然聴いていないことに気づいて愕然とさせられる。
 そして、おそらく誰もが、このアンプの音質を虚心に聴き分けることのできるようになるためには、パワーディスプレイの存在の珍しさが、意識の中から消え去ってからでなくてはダメだと思う。それくらい、このディスプレイは楽しい。
 出力のディスプレイは、次の4レンジに読みとりを切り換えられる。
  0・001W〜0・999W
  0・001W〜9・99W
  0・1W〜99・9W
  1W〜999W
 ごく絞った音量で鳴らしているときは、0・001Wのレンジで十分だ。過程で、静かに音楽鑑賞をするときの出力は、ちょっと拍子抜けするほど小さいことが読みとれる。0・001W近辺でけっこう大きな音が鳴らせることがわかる。
 しかし、たとえばコンボ・ジャズの録音の良いレコードを、あたかも目の前で演奏しているかのような実感で味わおうとすると、出力は、途端に、10W、50W、100W……と大きく動きはじめる。あ、と思った瞬間に、インジケーターの数字は200を軽く越えて、350、400、450……と指示する。500Wという数字から恐るべき音量を期待していると、軽く裏切られる。それは当然なのだ。私たちはつい最近まで、200Wから400Wのアンプを日頃常用したりテストしたりしてきて、実演に近い音量に上げたときには、200Wの出力がすでにものたりないことを体験している。500Wといったって、それは、200Wにくらべて3dB強、最大音量に余裕が出来ただけの話、なのだから。そういいう意味では、こんにち、すでに500Wどころか、1kWでも2kWでも、もし安定度と音質の良さの保証がありさえすれば、いますぐにでも欲しいのだ。
 単にハイパワーというだけなら、すでに実験機、試作機を含めて、私たちは体験しているし、PA用のアンプでは、音質は少々犠牲にしてでも、トータル数kWないし数十kWという出力はいまや日常の話になっている。けれど、過程で音楽をふつうに鑑賞するときの平均音量は、むしろ1W以下、ピアニシモでも0・001Wよりもさらに下、などというのがふつうだ。そういう極小出力で、十分に質の高い、滑らかな歪の少い、透明度の高く魅力的な音質を確保しながら、一方でどこまで高出力を出せるかというのが、これからの本当のハイパワーアンプのあり方だ。アキュフェイズM100は、そ命題に本気で応えた、本当の音楽鑑賞用のハイパワーアンプだといえる。
 そのことは、次のような比較ではっきり聴きとれる。
 比較の対象として、同じアキュフェイズのステレオ・パワーアンプの最高級機P400(200W+200W)を、もう一方に、M100より一歩先んじて発表されたマッキントッシュの同じく500Wアンプ(ただしこちらはステレオ構成)MC2500をそれぞれ用意した。プリアンプは、アキュフェイズのC240、マッキントッシュC29、それにマーク・レヴィンソンML7。これらを交互に組み代えて、音を比較する。
 まずアキュフェイズどうし。プリはC240に固定して、P400とM100(×2)の比較──。
 M100のディスプレイで、ピーク出力で50ないし80W、つまりP400の最大出力を十分に下廻る余裕のあるところで音量をほぼ同大にして比較してみるが、たとえば交響曲のトゥッティや、ピアノ独奏の最強音のところで、M100の悠然とどこまでもよく伸びる音を一旦耳にしてしまうと、P400の音が、どことなくピークで飽和しているような、音の伸びがどこかで停まってしまうあるいは抑えられてしまうかのような、印象として聴きとれる。そしてピアノの打鍵音の実体感が、M100の方が優れている。引締って、くっきりと形造られ、しかも硬質でなく十分弾力的だ。
 次にもう少し小さなパワー、M100のディスプレイがピークでも5〜6Wまでしか示さないような、ごく日常的な音量で比較してみる。それでも、M100の質の高さはすぐに聴き分けられる。音に何となくゆとりがある。私自身でも何度か例えとしてあげた話のくりかえしになるが、大型乗用車をぐっと絞って走らせたような力の余裕、底力、を感じさせる。
 ただ、P400にも良いところはある。弦のこまやかな合奏などのところで、いっそう繊細だ。それはM100よりもう少し女性的な表現といえないこともない。悪くいえば線が細いといえるのかもしれないが、裏がえしてみればいっそうナイーヴな表現をするともいえる。
 このまま(つまりプリアンプがC240のまま)、パワーアンプだけ、マッキントッシュMC2500にしてみる。音の性格が、アキュフェイズとはまるで反対だから、組合せとしてはベストとはいえないが、一応、同条件でのパワーアンプどうしの比較にはなる。
 たとえばピアノ・ソロ。M100よりも彫りが深く、一音一音のタッチがくっきりと際立つ。そして強打音での伸びがM100よりも力強い。ピアニストの指の力が増したような、ことにP400と比較すると、女性ピアニストと男性ピアニスト、ぐらいの差がつく。差のあることはわかるが、必ずしもどちらが良いかは速断できない。MC2500のほうが、少し元気すぎるともいえなくないが、しかしP400は逆に控えめすぎるともいえる。となると、M100がちょうどよいのか──。これはどうも、C240との相性の問題もありそうで、ピアノ独奏に関しては、案外、C200XとM100あたりの組合せがよいのかもしれないと思った。残念ながらC200Xを用意していなかったので、確認はできなかった。
 ところでMC2500だが、ピアノではともかく、交響曲では首をかしげた。使ったレコードは、アムステルダム・コンセルトヘボウだったが、それが、アメリカ系のたとえばシカゴ交響楽団とまではいいすぎかもしれないにしても、ちょっと、ヨーロッパの音にしては抑制と渋味が不足している、あるいは、明るすぎる音に仕上って聴こえる。
 このあと、プリアンプをレヴィンソンML7に変えて同じく3台のパワーアンプの比較をした。プリアンプの変ったことによって、組み合わせた結果の音の味わいは変ったが、パワーアンプ相互の音のニュアンスの差は、前記の印象と大筋において違わなかった。
 プリアンプをマッキントッシュC29に変えての試聴では、MC2500の音がぐんとピントが合って、音の色調が当然とはいえ、よく揃い、マッキントッシュの新しい世代のサウンドに、ちょっと感心させられた。反面、アキュフェイズのパワーアンプに対しては、マッキントッシュの華麗、アキュフェイズのナイーヴ、互いの個性が殺し合って、これは明らかにミスマッチだった。
 さきほどのピークパワー・ディスプレイの数字は、ホールドタイムが0・5秒、3秒、30分に切り換えられる。そしてホールドしているあいだにも、より大きなピークが入ってくれば、即座に応答して表示する。0・5秒では刻々と変化する出力上下の幅がいかに大きいかを直感的に読みとれる。3秒になると、もう少しゆっくりと、考えるヒマを与えてくれる。30分のホールドは、レコード片面を通して、最も大きな出力を表示してくれる。この機能はすばらしく便利で、前述のように、つい音を聴くことを忘れさせるほど、最初のうちは見とれてしまう。
 いったい、どこまでの出力が出せるものかと、ハイパワー限界のテストをしてみた。こういうテストは、もしもクラシックで、ピーク500Wを出そうとしたら、ふつうの部屋ではとても耐えられない音量になってしまう。むしろ、最近の録音の良いジャズやフュージョンの、むしろマイナー・レーベル(たとえばオーディオ・ラボやシェフィールドなど)のほうが、一瞬のピーク出力が制限されずにそのままカッティングされている。いいかえれば、音量感の上ではむしろ意外なところで、出力の表示は数百Wを軽くオーバーシュートして、びっくりさせられる。
 ともかく、今回の本誌試聴室の場合では、640Wまでを記録した。これ以上の音量は、私にはちょっと耐えられないが、アンプのほうは、もう少し余裕がありそうに思えた。500Wの出力は、十二分に保証されていると判断できた。
 しかし、M100の本領は、むしろ、そういういパワーを楽々と出せる力を保持しながら、日常的な、たとえば1W以下というような小出力のところで、十分に質の高い音質を供給するという面にあるのではないかと思われる。
 そのことは、試聴を一旦終えたあとからむしろ気づかされた。
 というのは、かなり時間をかけてテストしたにもかかわらず、C240+M100(×2)の音は、聴き手を疲れさせるどころか、久々に聴いた質の高い、滑らかな美しい音に、どこか軽い酔い心地に似た快ささえ感じさせるものだから、テストを終えてもすぐにスイッチを切る気持になれずに、そのまま、音量を落として、いろいろなレコードを、ポカンと楽しんでいた。
 その頃になると、もう、パワーディスプレイの存在もほとんど気にならなくなっている。500Wに挑戦する気も、もうなくなっている。ただ、自分の気にいった音量で、レコードを楽しむ気分になっている。
 そうしてみて気がついたことは、このアンプが、0・001Wの最小レンジでもときどきローレベルの表示がスケールアウトするほどの小さな出力で聴き続けてなお、数ある内外のパワーアンプの中でも、十分に印象に残るだけの上質な美しい魅力ある音質を持っている、ということだった。夜更けてどことなくひっそりした気配の漂いはじめた試聴室の中で、M100は実にひっそりと美しい音を聴かせた。まるで、さっきの640Wのあの音の伸びがウソだったように。しかも、この試聴室は都心にあって、実際にはビルの外の自動車の騒音が、かすかに部屋に聴こえてくるような環境であるにもかかわらず、あの夜の音が、妙にひっそりとした印象で耳の底で鳴っている。
 モノーラル構成2台で100万円、というのは、決してささやかとはいえない。2台の重量の合計が83kg。そのことよりも、10W近辺まで純A級で動作するという回路構成から、消費電力は無信号時でも250W(2台だから500W!)と、無視できない価である。ピーク出力時では、仮に一瞬であっても、8Ω負荷500W出力で840W(×2)を消費するから、それ相当の覚悟をしないと、なかなか自分のラインにはとりこみにくい。しかし、冷却ファンなしでも、発熱は想像よりずっと少ない。ファンを追加もできる構造だが、家庭用としては不必要ということだし、ファンなしで済むということは、無用の機械雑音に悩まされずに済むということで、神経質な愛好家にも歓迎されることだろう。

アキュフェーズ C-200X

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 高級アンプメーカー、ケンソニック社のデビュー作品としてC−200は生れた。第2世代としてC−200Sとなり、このC−200Xは第3世代にあたる。原形を踏襲しながら、パネルデザインもリファインされているが、内容的にも一新されたアンプである。きわめて高品位のコントロールアンプで、その滑らかで、豊潤なサウンドは第一級のものだと思う。品位、信頼性の点で、現在の国産製品の最高度のものだろう。

アキュフェーズ AC-1, AC-2, C-7

アキュフェーズのカートリッジAC1、AC2、ヘッドアンプC7の広告
(オーディオアクセサリー 21号掲載)

AC2

アキュフェーズ E-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 まず一聴して、とてもきれいで滑らかな音という印象を与える。これは最近のアキュフェーズのアンプに一貫した特徴ともいえ、一部には、この音を美しすぎ、あるいはその美しさがやや人工的と評する人もいる。どちらかといえばややウェット型の、中~高域に特徴を感じさせる音だが、基本的な音の質が練り上げられ、緻密な音に支えられると、この音色はひとつの特徴として立派に生きてくる。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS30/IIでのベートーヴェン第九(ヨッフム)のプレイバックでは、第四楽章のコーラスとオーケストラの音の溶け合い、ハーモニーがたいへん美しく、テノールも金属的な響きにならずに滑らか。トゥッティの部分での奥行きの深さがよく再現され、各楽器のバランスも良好。「サンチェスの子供たち」でも、中域から低域にかけての支えのしっかりしているわりに、ローエンドをひきずることがなく、切れこみがよく、いくぶんウェットだが十分楽しめる音を聴かせる。エムパイア4000DIIIでも音がウェットになる傾向はあり、この組合せに関してはもっと乾いた音をよしとする人もあるだろう。エラック794Eで傷んだレコードをトレースすると、軽いヒリつきぎみのノイズがまつわりつく傾向があるが、全体としては美しく聴かせるタイプで、古いレコードのプレイバックも安心してできる。
 内蔵のMCヘッドアンプにも、本機の基本的な性格に共通した、独特の音の艶、鮮度の高さがあり、中~高域がくっきりと艶やかにきわ立ってくる。そこを支える低音の力もしっかりしているために、音がうわついたりすることなく、バランスもよいことで楽しませる。オルトフォンMC30のえもいわれぬ魅力をたいへん美しく聴かせてくれる点、プリメインのMCポジションとしては随一といえるかもしれない。デンオンDL303ではノイズはいっそう減少し、アンプ自体がいくぶん女性的な音を聴かせるにもかかわらず、意外といえるほど音の支えがしっかりし、303の弱点である、時として細くなりがちな音をほどよく整える。したがって、外附のトランスその他は、ノイズレベルがほとんど耳につかないところまで改善されるというメリット以外には、必ずしも必要はないといえるほどだ。
●スピーカーへの適応性 アルテック620Bカスタムを、相当程度まで魅力的に鳴らすことができ、このことからも、いろいろなスピーカーの魅力を抽き出し、生かすタイプのアンプということができる。
●ファンクションおよび操作性 MM/MC切替え、インプット切替えおよびスピーカー切替えはすべて、ミューティングスイッチが約1秒のタイムラグで動作するため、ボリュウムを上げたままで切替えても、ノイズは全く出さない。フォノ聴取時チューナーからの音洩れも全くない。
●総合的に いわゆる高級プリメインアンプの名作が数多くある中でも、きわ立って音の魅力を美しく抽き出すタイプで、たいへん好感をもった。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:小
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):3
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):2+
5. TUNERの音洩れ:なし
6. ヘッドフォン端子での音質:3
7. スピーカーの特性を生かすか:2+
8. ファンクションスイッチのフィーリング:3
9. ACプラグの極性による音の差:小

アキュフェーズ C-200X, P-300X

アキュフェーズのコントロールアンプC200X、パワーアンプP300Xの広告
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

C200X

アキュフェーズ C-230

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

デジタル表示チューナーT103、パワーアンプピ260とコンビとなるコントロールアンプ。オリジナル全増幅段対称型プッシュプル駆動、A級DC方式に新しくDCサーボ方式が導入された。

アキュフェーズ P-400

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

シンセサイザーチューナーT104、コントロールアンプC240とラインナップを組む製品。パワーMOS型FET、全増幅段対称型プッシュプル駆動、DCサーボ方式採用。純A級に切替使用可能。

アキュフェーズ P-400

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

シンセサイザーチューナーT104、コントロールアンプC240とラインナップを組む製品。パワーMOS型FET、全増幅段対称型プッシュプル駆動、DCサーボ方式。純A級に切替使用可能。

アキュフェーズ AC-1

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 高級アンプメーカーとしてユニークな存在であるアキュフェーズ初のMC型カートリッジである。
 発電方式は巻枠に磁性体を使う伝統的な方式で、カンチレバーは、西独製アルミ・マグネシウム合金パイプ全長の約60%にベリリウムの芯を入れた二重構造。ダンパーは、2種類のダンパーを同軸に使うダンプド・ダンパー方式。磁気回路はサマリウムコバルト磁石採用で、パーマロイ材に0・035mmの銅線を一層巻としたインピーダンス4Ωのコイルにより0・2mVの出力を得ている。カートリッジボディは、強度的に弱い例が多く見られるが、ここではアルミダイキャスト採用で内部損失と剛性の高さを併せもつ設計。別売にMCヘッドアンプが用意されている。
 MCヘッドアンプ使用で、全帯域にシャープに焦点のあった、細やかでクォリティが高く、彫りの深い音だ。

アキュフェーズ C-240, P-400

アキュフェーズのコントロールアンプC240、パワーアンプP400の広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

P400

アキュフェーズ C-240, P-400

菅野沖彦

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか 最新セパレートアンプ32機種のテストリポート」より

 キメの細かいスムースな音は、きわめて洗練された品位の高いものだ。暖かい肌ざわりをもっているし艶のある、粘りのある音は、美音といってよい次元にまで高められている。しかし、反面、素直さ、自然さの面で少々不満がある。荒さは荒さとして聴きたい。

アキュフェーズ E-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 アキュフェーズ初期の音から、新シリーズは少し方向転換したという印象を受けた。セパレートのC240+P400などを聴いても、明らかに音の傾向を変えた、というより、アキュフェーズとしてより完成度の高い音を打ち出し始めたと思う。それがE303にも共通していえる。たとえば、弱音にいたるまで音がとても滑らかで、艶というとオーバーかもしれないが、いかにも滑らかな質感を保ったまま弱音まできれいに表現する。本質的に音が磨かれてきれいなため、パワーを絞って聴くと一見ひ弱な感じさえする。しかし折んょウを上げてゆくと、あるいはダイナミックスの大きな部分になると、音が限りなくどこまでもよく伸び、十分に力のあるアンプだということを思わせる。
 マランツPm8の音のイメージがまだ消えないうちに、このE303を聴くと、Pm8ではプリメインという先入的イメージの枠を意識しなくてすむのに対して、E303は「まてよ、これはプリメインの音かな」とかすかに意識させる。言いかえるとPm8よりややスケールの小さいところがある。しかし、そのスケールが小さいということが、このE303の場合は必ずしも悪い方向には働かず、むしろひとつの完結した世界をつくっているといえる。Pm8ではプリメインの枠を踏み出しかねない音が一部にあったが、E303はこの上に同社のセパレートがあるためかどうか、プリメインの枠は意識した上で、その中で極限まで音を練り上げようというつくり方が感じられた。たとえば、「ザ・ダイアログ」でドラムスやベースの音像、スケール感が、セパレートアンプと比べると心もち小づくりになる。あるいはそれが、このアンプ自体がもっているよく磨かれた美しさのため、一層そう聴こえるのかもしれない。これがクラシック、中でも弦合奏などになると、独得の光沢のある透明感を感じさせる美しい音として意識させられるのだろう。
 内蔵MCヘッドアンプのクォリティの高さは特筆すべきで、オルトフォンMC30が十分に使える。Pm8では「一応」という条件がつくが、本機のヘッドアンプは、単体としてみても第一級ではないだろうか。
 総じて、プリメインアンプとしての要点をつかんでよくまとまっている製品で、たいへん好感がもてた。

最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その14)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より

 ずっと以前の本誌、たしか9号あたりであったか、読者の質問にこたえて、マッキントッシュとQUADについて、一方を百万五を費やして語り尽くそうという大河小説の手法に、他方をあるギリギリの枠の中で表現する短詩に例えて説明したことがあった。
 けれどこんにちのマッキントッシュは、決して大河小説のアンプではなくなっている。その点ではいまならむしろ、マーク・レビンソンであり、GASのゴジラであろう。そうした物量投入型のアンプにくらべると、マッキントッシュC29+MC2205は、これまほどの昨日と出力を持ったアンプとしては、なんとコンパクトに、凝縮したまとまりをみせていることだろう。決してマッキントッシュ自体が変ったのではなく、周囲の状況のほうがむしろ変化したのには違いないにしても、C29+MC2205は、その音もデザインも寸法その他も含めて、むしろQUADの作る簡潔、かつ完結した世界に近くなっているのではないか。というよりも、QUADをもしもアメリカ人が企画すれば、ちょうどイギリスという国の広さをそのまま、アメリカの広さにスケールを拡大したような形で、マッキントッシュのサイズと機能になってしまうのではないだろうか。そう思わせるほど近ごろ大がかりな大きなアンプに馴らされはじめた目に、新しいマッキントッシュは、近ごろのアメリカのしゃれたコンパクトカーのように小じんまりと映ってみえる。
     *
 ところで、音の豊かさという点で、もうひとつのアンプについて書くのを危うく忘れるところだった。それは、イギリスの新しいメーカー、オースチンの、管球式パワーアンプTVA1の存在だ。
 管球式のアンプが、マランツ7を最後に我が家のラインから姿を消してすでに久しい。その後何度か、管球アンプの新型を聴く機会はあったにしても、レビンソンは別格としても出来のよいトランジスターの新しいアンプたちにくらべて、あえて管球式に戻りたいと思わせるような音には全くお目にかからなかった。わたくし自身は、もうおそらく半永久的に管球に別れを告げたつもりでいた。
 そういうつもりで聴いたにもかかわらず、TVA1の音は、わたくしをすっかりとりこにしてしまった。久しく耳にしえなかったまさにたっぷりと潤いのある豊かな響き。そして滑らかで上質のコクのある味わい。水分をたっぷり含んで十分に熟した果実のような、香り高いその音を、TVA1以外のどのアンプが鳴らしうるか……。
 仮にそういう良い面があったにしても、出力トランスを搭載した管球式パワーアンプは、トランジスターの新型に比較すれば概して、音の微妙な解像力の点で聴き劣りすることが多い。そういう面からみれば、TVA1の音は、レビンソンのように切れこんではくれない。それは当然かもしれないが、しかし、おおかたの管球式の、あの何となく伸びきらない、どこかで物が詰まっているかのような音と比較すると、はるかに見通しがよく、音の細部の見通しがはっきりしている。
 中音域ぜんたいに十分に肉づきのよい厚みがある。かつてのわたくしならその厚みすら嫌ったかもしれないが。
 TVA1は、プリアンプに最初なにげなく、アキュフェーズのC240を組合わせた。しかしあとからいろいろと試みるかぎり、結局わたくしは知らず知らずのうちに、ほとんど最良の組合せを作っていたらしい。あとでレビンソンその他のプリとの組合せをいくつか試みたにもかかわらず、右に書いたTVA1の良さは、C240が最もよく生かした。というよりもその音の半分はC240の良さでもあったのだろう。例えばLNPではもう少し潤いが減って硬質の音に鳴ることからもそれはいえる。が、そういう違いをかなりはっきりと聴かせるということから、TVA1が、十分にコクのある音を聴かせながらもプリアンプの音色のちがいを素直に反映させるアンプであることもわかる。
 今回の試聴では、この弟分にあたるTVA10というのも聴いた。さすがに小柄であるだけに、兄貴の豊かさには及ばないにしても、大局的にはよく似た傾向の音を楽しませる。オースチン。この新ブランドは、近ごろの掘り出しものといえそうだ。

最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その19)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より

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 少し脱線したが、国産アンプの中で、いまふれたトリオは、価格とのかねあいという上で評価されるべき製品といえるのに対して、さきのデンオン、そして最後にふれるアキュフェーズなどは、価格の割には……といった注釈なしに受け入れることのできる、現在最高水準をゆく音、といってよいと思う。
 アキュフェーズのC240、P400、T104の新シリーズは、昨年秋からことしにかけて、順次発表された。C240は、わりあい早い時期から試聴の機会にめぐまれたが、この音は、ほんとうに久々にわたくしをわくわくさせる素晴らしい出来ばえだった。LNP2Lがわたくしの最近最も永いあいだの常用かつ標準機だが、C240の音は、それと比較してどうこうというよりも、LNPとはまた別の路線上で、ひとつの完成度に到達したみごとな音質だといえる。LNPの音は、どこまでも切れこんでゆく解像力のよさ、芯のしっかりした、一音一音をくっきりと浮かび上らせる,それでいながら音どうしが十分に溶け合い、響き合い、立体感と奥行きを感じさせる。
 C240の音は、LNPよりもいくぶんウェットだ。そこはいかにも日本のアンプだ。そしてLNPのようにどこまでもこまかく音を解像してゆくというよりも、複雑にからみあい響き合い溶け合う音を、できるかぎり滑らかに、ことさらに音の芯を感じさせずに、自然に展開させてゆく。その音のウェットさゆえに、そしてまたLNP2LやM6の透明感のある解像力と比較するといくぶん曇りを感じさせる点に、ネガティヴな意見を言う人があるが、私はむしろそこを含めて、音のマッスとしての響きの滑らかさを好む。一見見通しがよくないようだが、よく聴くと細かな音は十分に過不足なく解像され、音のマッスの中にきれいにならんでいる。パワーアンプにオースチンのTVA1を組合わせたときの音の良さについてはすでに書いたが、本来のP400がこれに加わってみると、C240の音には意外にシャープな面もあることが聴きとれて興味深い。あるいはP400のほうに音のシャープネスが強調されていてそれをC240がうまく中和するのかとも思えるが、いずれにしてもこの組合せから得られるとても滑らかでありながらよく切れ込み、そしてよく溶け合い響き合う音の快さは、近来類のない質の高い音だと思う。このところアキュフェーズの音には、個人的にかなりシビれているものだから、ついアバタもエクボになっているかもしれないが、しかしデンオンといいアキュフェーズといい、これ以前までの各機種は、これほどまでに完成度の高い、説得力ある音を鳴らしはしなかったことを思うと、今回の新型の、ともに水準の高さがいっそう際立った快挙に思えてくる。

アキュフェーズ T-103, T-104

アキュフェーズのチューナーT103、T104の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

T103

アキュフェーズ T-104

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 豪華なローズウッドキャビネットに収まった、デジタル型らしくないデザインをもち、高級機らしい雰囲気を備えたモデルだ。
 選局は、プッシュボタン操作の4局のプリセット同調、アキュフェーズ独自に開発した手動のパルスチューニングの2系統でおこない、切替なしで任意に選局できる。メモリーは、内蔵のニッカド電池でバックアップされ、電源スイッチを切っても約一年間はメモリーを保持できる。
 2個の大型メーターは、マルチパス兼変調度計と新IHF法によるdBf目盛付信号強度計である。パルスチューニングツマミを回転すると100kHzステップでデジタルディスプレイの指示は変わり、ピップトーンがピッピッとその変化を知らせ、同調点では同調表示ランプが点灯する。機能面では、IF帯域帽2段切替、ディマースイッチ、メーター切替の他5mの範囲で使えるリモート選局スイッチが特長である。
 マニュアル選局もピップトーンを備えるためフィーリングは通常の横行ダイアルに匹敵するものがあり、ミューティング動作もほぼノイズレスで快適。局間雑音チェックではノイズ分布がナチュラルで、受信チェック時の音質も今回試聴したチューナーのなかでトップランクである。

アキュフェーズ C-240

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全面的にパネル面の操作をプッシュボタンスイッチでコントロールする非常にユニークなデザインをもつ、アキュフェーズの第2世代を意味する高級コントロールアンプで、アキュフェーズの技術の集大成として完成されたのがC240である。内容的にはMCカートリッジ用ヘッドアンプ、A級ピュアコンプリメンタリー方式のヘッドフォンアンプを備えたトータルゲイン86dBのハイゲインコントロールセンターである。
 機能面では周波数特性可変機能が充実し、カートリッジ高域特性を調整するHFトリミング、高音・低音各2段に湾曲点切替可能な8ステップトーンコントロール、3段切替型ラウドネスコントロール、17Hz・12dB/octのサブソニックフィルターなどがある。パネル面は回転ツマミ4個、レバースイッチ1個、プッシュボタンスイッチが実に57個というユニークな構成が採用され、機能別に配置されている。プッシュボタンスイッチ独特の不要なポジションを飛び越して任意のポジションが選択できるフィーリングは、このタイプの最大の魅力だ。とくに、入力セレクターは電子制御のリレーを使うリモート切替型で、音質や耐久性を左右するプッシュスイッチやリレーは全て2回路並列使用で安定度を向上している。回路面はアキュフェーズオリジナルの全増幅段プッシュプル駆動をA級DC方式構成とした特長があり、MCヘッドアンプはモジュール化し安定度を向上している。