Category Archives: 井上卓也 - Page 43

サンスイ TU-D607

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来AU607には専用チューナーはなく、上級機AU707用のTU707を共用していたが、このモデルは新製品AU−D607のペアチューナーとして開発されている。
 外観はTU707と同等だがダイアル面の通常ではメーターのある位置に信号強度、ダイアル回転方向と同調点表示、それに受信周波数をデジタル表示するディスプレイが備わったのが目立つ特長である。
 主な特長は、同調選局中はOFFとなり放送局に同調するとツマミに触れていても動作する独自の自動ON−OFFクォーツロック、新開発パイロットキヤンセラー付PLL・MPX部、AMステレオ放送の方式を開発したサンスイらしい優れた音質をもつAMチューナー部などがある。

ビクター Zero-5

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新発売のZERO5は、型番からもわかるように、ビクター最初のトゥイータ一にリボン型ユニットを採用したユニークな製品であり、完全密閉型シリーズと将来は2本の柱となるべき新シリーズの誕生である。
 ウーファーは、30cm口径の新開発アルファーコーンを採用したバスレフ用の設計であり、広帯域を受け持つスコーカーは、フェノリックコーンと金属ドームの複合型構造を採用したメカニカル2ウェイ的動作をする10cmコーン型である。トゥイーターは、ダイナフラット方式という高分子化合物薄膜上にボイスコイルを取り付けた、マッチングトランス不要のリボン型で、ダイアフラム前面には左右方向に広がるショートホーンが組み合わせてある。ネットワークは、モニター用システムS3000での成果を導入した低歪率設計であり、エンクロージュアは、リアルウッド使用でオイルフィニッシュされたバスレフ型である。
 ZERO5は、活気のある低音をベースにソリッドで引き締まった中高域と、独特のステレオフォニックな空間の拡がりを聴かせる高域が巧みにバランスを保ち、SXシリーズとは異なった爽やかな音をもつ。

マランツ St-8

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 FM専用の高級チューナーにオシロスコープを採用するのはマランツの♯10B以来♯20、♯150と続く伝統であるが、今回の新シリーズのセパレート型アンプ、プリメインアンプ用に開発されたモデルがこのSt8である。これも伝統的なジャイロタッチチューニングツマミは、クォーツロックスイッチを兼用し、同調点で指を離せば以後は水晶精度で同調点はロックされる。デュアルゲートMOS型FETと5連バリコン使用のフロントエンド、リニアフェイズLCフィルターとSAWフィルターを併用するIF増幅部は更に独特のアンチバーディーフィルターを加え、帯域幅は2段切替、PLLパイロットキヤンセラー、パラメトリックミューティング回路、多用途のオシロスコープなどが特長だ。なお、ジュニアタイプに同様にスコープ内蔵の♯2110がある。

ダイヤトーン DS-70C

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 さきに発売された40cmハニカムコーン型ウーファー採用のDS90Cのジュニアタイプとして開発され、現代の標準型フロアシステムとして考えられる大きさのシステムである。33cmハニカムコーン型ウーファー、12cm口径コーン型スコーカー、4cm口径コーン型トゥイーターの3ウェイ構成だ。
 3ウェイらしく中域が充実し、スッキリとしたシャープな高域、ハニカムコーン独得な反応の早い豊かに響く低域が充分にコントロールされバランスしている。

ダイヤトーン DS-35BMKII

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ベストセラースピーカーシステムとして高い評価を受けているDS35Bのグレイドアップ・モデルである。MKIIモデルであるだけに基本的な3ウェイのユニット構成は同様だが、各ユニットともに完全に新設計のユニットが採用されているのはユニットの型番からも明瞭である。
 新開発30cmウーファーは真空成形方式の新しいコーンとダイヤトーン独自の鉄・ニッケル合金製のFNリング使用の低歪磁気回路、さらに肉厚を充分にとった新設計の八角ダイキャストフレームを採用している。10cmコーン型スコーカーは、DS35B以来の独特な透明プラスチックエッジをもつコーン型で振動系は新設計のタイプだ。トゥイーターは、口径3cmのドーム型である。
 このシステムは、従来のDS35Bと比較して中高域の独得のキャラクターが一段と低く抑えられ洗練されたため、聴感上でのfレンジが滑らかで、かつ充分に広く、各ユニットはスムーズにつながり、システムとしての完成度は非常に高い。また、レベルコントロールが高音、中音ともに4段切替となったため、部屋とのマッチングの調整もより容易になったのが見逃せない。

トリオ KT-8300

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 2年前にKT9700に使用されたパルスカウント検波方式を採用したKA8300のペアチューナーである。パルスカウント方式の特長を活かすためIF段は第1IF10・7MHz、第2IF1・96MHzのダブルコンバート方式を採用。FM専用5連バリコンとデュアルゲートMOS型FET使用でサーボロック付のフロントエンド、IF帯域幅2段切替、パイロットキャンセラー付MPX部などに特長がある。

ラックス T-4

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 同調ツマミが正確な同調点で機械的にロックされるアキュタッチ機構を備えたAM・FMチューナー。同調の精度と安定度を向上するラックス独自のCLL方式同調システム、IF帯域幅2段切替、オペレーショナルアンプ使用のオーディオ部などを備えている。アキュタッチ機構のフィーリングも格段に改善され、受信性能、音質は充分に高級機に匹敵するものがある。

ダイヤトーン DS-401

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 本格的なブックシェルフ型が要求される価格帯に投入された久し振りのダイヤトーンの新製品である。エンクロージュアはバッフル20mmその他17mmの板厚をもつ高密度パーチクルボード製の完全密閉型のアコースティック・エアサスペンション方式で、容積は約54立の適度な外形寸法をもつ。
 ウーファーは、アルミニュウムの薄箔で作った蜂の巣状パターンをもつハニカムコアの両面をGFRPのスキンでサンドイッチしたハニカム構造体使用の30cm型だ。きわめて強固で軽量なコーン材料の特長で固有振動が少なく完全密閉型に相応しいユニットで、磁気回路にはFNリング使用の低歪磁気回路を採用している。スコーカーは10cm口径の強力磁気回路採用のコーン型、トゥイーターも優れた高域特性をもつ4cm口径のコーン型で、完全な3ウェイ・コーン型システムとしているのが特長である。
 このシステムは、独特なハニカムコーン使用のウーファーを採用しているためか、完全密閉型としては低域の音色が明るく緻密で解像力が優れている。各ユニットの音色的なつながりもスムーズで充実したクォリティの高い音を聴かせる。

デンオン TU-630

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 PMA630のFM専用ペアチューナー。5連バリコンと新開発デュアルゲートMOS型FET使用のサーボロック付フロントエンド、帯域2段切替のIF増幅、新FM検波用IC採用、パイロットキャンセラー付新IC使用のMPX部の他、パーソナル使用のために3W+3Wのパワーアンプを内蔵した点が最大の特長で、机の上に載せたミニスピーカーなどは充分以上にドライブできるのが魅力である。

テクニクス SB-E500

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トップランク製品SB20000の設計方針を踏襲し、ユニット構成を4ウェイ化した新製品である。エンクロージュアはバスレフ型で、内部には直径75mmボイスコイル採用の38cm型ウーファーと専用のバックキャビティをもつ25cmミッドバスユニットが組み込んである。ホーン型の中高域は直径60mmチタンダイアフラム使用のドライバーユニットとテーパードフレアーラジアルホーンの組み合わせ、トゥイーターはボライド振動板のホーン型である。

ヤマハ T-4

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 既に同等のクラスにT3が発売されているが、新製品T4では、画期的なユニレゾナンスフィルター、高性能オーディオ専用MPX・IC、DC・NFB・PLL・MPX回路、トラッキング型パイロット信号キャンセル回路、AUTO・DX回路などを採用し、チューナー内部で発生する諸歪の新測定法による解析、解決をするなど、高価格帯のチューナーの水準を抜いた新製品ならではの内容をもつ製品である。AM部では低雑音ループアンテナを新開発し採用しているため、AM放送のクォリティが格段に高いのが見逃せない点だ。

ソニー SS-5GX

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

小型ブックシェルフシステムと、いわゆるミニスピーカーの中間に位置する製品である。13cmウーファーと2・5cmソフトドーム型トゥイーターの2ウェイ構成で、小型スピーカーの弱点でもあるDレンジ不足を解決するためにボイスコイルの発熱を背面の放熱板に瞬間的に伝達するヒートパイプの採用が大きな特長だ。音質的には小型システムとしてはバランスが優れ、かつダイナミックでクォリティの高い音を持つ製品として注目に値するものがある。

パイオニア F-8800X

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 A8800Xのペアチューナーとして開発されたモデルである。低価格で高性能を目標としたためSN比で利点のあるバリコン使用のフロントエンドを採用し、選局は一般的な同調ツマミによるタイプとなっている。機能は標準型で、PLLシンセサイザー方式ほどの華やかさはないが、安定度、信頼性の高さが特長である。

ソニー SS-G9

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 一昨年末に発売されたソニーSS−G7は、本格的なフロアー型スピーカーシステムとして、性能、音質の優れた点が高く評価され、ソニーのスピーカーシステムのイメージを一新させることに成功した。今回、商品化されたSS−G9は、SS−G7の設計ポリシーを一段と発展させた、4ウェイ構成の大型システムである。
 ユニット構・成は、SS−G7に中低域用ユニットを加えたようなオーソドックスな4ウェイで、各便用ユニットは、現在のソニーのトップモデルらしく、SS−G7に使用されているユニットとは明らかに1ランク以上異なった、単体ユニットとしても発売できるような高性能型が採用してある。従来からも高度な性能を要求するスピーカーシステムでは、各ユニットごとの受持帯域のバランス上で4ウェイ構成に必然性があるといわれており、かつてのエレクトロボイス・パトリシアン800や現在のJBL♯4343、4350などの名作といわれる製品の数は多い。
 SS−G9の低音ユニットは、SS−G7のウーファーと同系統の強力なアルニコ系磁石を使う38cm型で特徴的な独特な形状のフレームが目立つ。音楽再生上で重要な帯域を受け持つ中低域には、ウーファーを小型化したような20cm型が使われ、中高域には口径8cmのソニー独自のバランスドライブ型、高域にはチタン箔一体深絞りの振動板を使った3・5cm口径のバランスドライブユニットが組み合わせてある。
 エンクロージュアは厚さ25mm高密度パーチクルボード製の160立の容積をもつバスレフ型で、フロントパネルには、表面に凹凸溝をつけたAGボードを使用し、バッフル面での音の拡散性が優れ、各ユニットは音源位置を前後左右で一致させるプラムインライン方式の配置。クロスオーバー用ネットワークは、L、Cともに共振を抑えるためSBMCで成形されており、内部の配線材は無酸素銅リッツ線使用である。
 SS−G9は、各ユニットが直接放射型で統一されているため、音色的なつながりが大変にスムーズで、結果として色付けのない極めて自然な音を聴かせる。音のクォリティは高く、ワイドレンジで、しかもダイナミックな音をもち、フロアー型らしいリアリティと実体感がある。

ソニー TA-P7F, ST-P7J

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソニーの超小型コンポーネントは、PRECISEコンポと名付けられ、プレーヤーシステムPS−P7Xを含めてシリーズを形成することになる。
 プリメインアンプTA−P7Fは、50W+50Wの出力をもつ。ヒートパイプを使ったパワー段、パルス型電源、入力及びテープスイッチをソリッドステートスイッチ使用でリモートコントロール化、MCカートリッジ使用可能な高利得イコライザー、ピーク出力表示灯、小型スピーカーの低域補正用の2段切替アコースティックコンペンセーター、ラウドネススイッチ付などの多くの特長をもつ。FMステレオ/AMチューナーST−P7Jは、クリスタルロック・デジタル周波数シンセサイザー方式で、アップとダウンの自動選局、AM/FM局ランダムプリセットメモリー8局、プリセットした局をその局順に約3・5秒間隔で自動的に呼び出すメモリースキャンなどが可能である。MOS型FETを使うRF増幅、4段相当バリキャップ使用のFM純電子同調フロントエンド、ユニフェイズフィルターとIC使用のIF増幅、リードリレー使用のミューティング5ステップ信号強度表示などの特長がある。

ビクター A-M1H, T-M1H

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 今年の話題のひとつに、超小型サイズのコンポーネントが各社から競って発売されたことがあげられるが、ビクターでは既に昭和41年に超小型のマイクロ・アンプ、チューナー♯103シリーズを商品化し、その後も♯200シリーズの一段と高級なセパレート型アンプを発売して数多くの愛用者を獲得した実績がある。
 今回発売されたマイクロコンポーネントは、従来の経験を活かし現代的にアレンジした高次元の高密度設計によるものである。アンプはセパレート型ではなくプリメイン構成としサブ操作系をヒンジ付サブパネル内部に収納し、メイン操作系は全てフェザータッチのプッシュボタンとしたユニークなパネルフェイスをもち、なお、シルバー仕上げの横型デザインとブラック仕上げの縦型デザインの2種類を用意し、あらゆる使用条件にも適合できるように企画されている点が特長である。
 プリメインアンプA−M1Hは横型タイプで、フロントパネルには5段切替の音量調整、入力切替、テープスイッチとパワースイッチがあり、サブパネル内部に一般型の音量調整、トーンコントロール、バランス調整、ラウドネス、SP切替とヘッドフォンジャックがある。回路構成は、ICLイコライザー段とトーンコントロール付ICL・DCパワーアンプの2ブロックで出力は50W+50W、電源部はDクラスのスイッチング型である。
 FMチューナーT−M1Hは、マニュアル同調と5局のプリセット選局、さらにデジタル時計付である。角型の表示窓内部には、信号強度を5段表示、ステレオ表示受信周波数と時間を表示するディスプレイがある。構成は水晶発振器を基準入力とするPLLシンセサイザー方式のフロントエンドと入力追尾方式PTL検波方式を採用し、MPX部以降はDCアンプ構成。本機の特長は、停電時にも内蔵の電池がプリセット受信周波数、時間をメモリーバックアップし、さらにメモリーバックアップ用電源アダプター端子をもつことだ。

ステート・オブ・ジ・アート選定にあたって

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「Hi-Fiコンポーネントにおける《第1回STATE OF THE ART賞》選定」より

 今回は、本誌はじめての企画であるTHE STATE OF THE ARTである。この選択にあたっては、文字が意味する、本来は芸術ではないものが芸術の領域に到達したもの、として、これをオーディオ製品にあてはめて考えなければならないことになる。
 何をもって芸術の領域に到達したと解釈するかは、少しでも基準点を移動させ拡大解釈をすれば、対象となるべきオーディオ製品の範囲はたちまち膨大なものとなり、収拾のつかないことにもなりかねない。それに、私自身は、かねてからオーディオ製品はマスプロダクト、マスセールのプロセスを前提とした工業製品だと思っているだけに、THE STATE OF THE ARTという文字自体の持っている意味と、現実のオーディオ製品とのギャップの大きさに、選択する以前から面はゆい気持にかられた次第である。
 しかし、実際に選択をすることになった以上は、独断と偏見に満ちた勝手な解釈として、現代の技術と素材を基盤として、従来だれしも到達できなかったグレイドにまで向上した基本性能を備え、オーディオの高級品にふさわしいオリジナリティのある、限定したコンセプトをもって開発され、かつ、いたずらにデザイン的でなく、機能美のある完成度の高いデザインと仕上げをもったものとすれば、現実のオーディオ製品に選択すべき対象は、ある程度は存在することになる。
 現在のオーディオ製品は、マスプロダクトという量産効果を極度に利用して、はじめて商品としてリーゾナブルな価格で販売されているために、生産をする製品の数量の大小が最終の価格決定に大きく影響を与え、同程度の仕様、デザインを備えた製品でも、予定生産量が少なければ、1ランク上の価格帯に置かざるをえなくなることになる。
 また、同程度の生産予定量をもつ製品間でも、技術的な基本性能重視型と機能重視型、さらにデザインや仕上重視型では、趣味のオーディオ製品として眺めれば、どのポイントに魅力を感じるかによって、商品性や価値感は大幅に変わることになる。したがって、選択の対象となる製品では、当然特定のコンセプトで開発されているだけに、生産量は少なく、量産効果も期待できないために、その価格も飛躍的に高くならざるをえなくなり、とても容易に誰でも入手できるような価格の製品では存在しえないことになる。
 具体的にジャンル別でいえば、スピーカーシステムなら大型フロアーシステム、アンプなら高級セパレート型アンプ、カートリッジならオリジナルな発電系をもち、精密加工を施したものとなり、必然的にMC型が対象となることになる。
 今回は、THE STATE OF THE ARTの第1回でもあるために、個人的には可能なかぎり多くの製品をノミネートする方針で選択をはじめると、国内製品では最新モデルか、もしくは少なくとも昭和48年のオイルショック以前に企画された予想外に古いモデルに分かれるようであり、海外製品では最新モデルが少なく、2〜3年以前、または歴史的にもいえる古いモデルが多いようである。
 結果として、THE STATE OF THE ARTとして選択されたリスト、及びノミネートされたリストを眺めると、選択基準はかなり個人差が激しく、予期せざる製品がリストにのぼってきた事実は、次回以後で選択のルールをある程度修正をする必要があることを物語っているようで読者諸氏の批判をあおぎたいところである。

フォステクス FT50D

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 フォステクスのドーム型トゥイーターのなかでトップランクに位置づけされる製品である。振動板には口径20mmの深絞り成型をしたグラスファイバーと熱硬化性樹脂5層構造のドームに、軽合金タンジェンシャルエッジを組み合わせ、1・5kHz以上で使える広帯域型としている。磁気回路はアルニコ系の鋳造マグネットを採用し、出力音圧レベル93dBを得ているため、組み合わせるユニットは、16〜20cmのフルレンジユニットや、30cmクラスのウーファーまで選択可能だ。

フォステクス FT30D

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 布をベースとし、これに特殊な制動材を塗布した振動板を採用したソフトドーム型のトゥイーターである。振動板口径は25mmと、ほぼ標準的な寸法をもっているために、再生周波数帯域、出力音圧レベル、許容入力などの特性面で優れた結果を得やすい特長がある。振動板の裏面にはミクロングラスファイバーなどを使った制動材が採用され、振動板の共振をダンプしている。また、磁気回路にもFT10Dとの価格差から考えられる以上の大型磁石を使い出力音圧レベル90dBを得ている。

テクニクス EAS-10TH1000

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 リボン型トゥイーターの変形と考えてよいユニットである。振動板は高耐熱性のポリイミドフィルム面にアルミを蒸着し、エッチングをしたボイスコイルを採用し、音響的には振動板中央に突出したヒレ状のイコライザーで左右二分割されている。磁気回路は1・3kgの鋳造磁石を使った独特なプッシュプル型でイコライザー部分をN極とすれば、振動板両側がS極となっている。ボイスコイルが蒸着型で8Ωのインピーダンスとしているためマッチングトランスは不用である。

フォステクス FT10D

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 ローコストのトゥイーターユニットとしては珍しい、10kHz以上の周波数特性や指向周波数特性の向上を目的として開発されたドーム型の製品である。一般に振動板は直径が小さいほど、高い周波数帯で諸特性の向上をはかれる利点があるが、逆に、クロスオーバー周波数の制約や許容入力が大きくとれない問題がある。FT10Dは直径1・6cmの振動板を使ったドーム型で、3kHz以上で使用できるため、10cm口径程度の小口径ウーファーと2ウェイ構成で使用するのが相応しい。

テクニクス EAS-10KH501

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 ダイアフラムは、チタンの両面にボロンを生成させた新材料を使用したユニークなドーム型ユニットで、10KH50の高級モデルである。ダイアフラムと一体成形したエッジは、新形状ローンビック型で、ボイスコイルはアルミボビンと耐熱処理をした銅クラッドアルミ線で、最大許容入力は1・5kHz、18dB/octのネットワーク使用時に100Wと発表されている。磁気回路の総磁束は10KH50と同じ値だが、磁束密度では18、000ガウスと一段と強力になっている。

エレクトロボイス T350

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 T35のデラックスモデルである。ホーンはT35よりひとまわり大型化されたエレクトロボイス独自のディフラクション型である。また、イコライザーにユニークな構造のソノフェイズ型を採用しスムーズな高域特性を得ているのも同社のトゥイーターの特長である。ダイアフラムはフェノリックダイアフラムで、ボイスコイルはボビンを使わず直接ダイアフラムにエポキシ系接着剤で固定してある。磁気回路の磁石は重量453gのアルニコV型で、T35より3dB高能率である。

テクニクス EAS-10KH50

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 ダイアフラムにチタン箔を採用したドーム型トゥイーターで再生周波数帯域の下限が700Hzと発表されているように、かなりワイドレンジ型であるのが特長である。ダイアフラムのエッジはロールエッジで、ボイスコイルボビンはアルミ、コイルは耐熱処理のアルミ線を使用している。磁気回路は大形鋳造マグネット使用の内磁型で磁束密度は16、700ガウスと強く、出力音圧レベルも95dBと高い。30cm口径までの専用ウーファーと2ウェイ構成にできるのがユニットの魅力。

フォステクス FT500

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 フォステクス製品中でただ一機種のコーン型トゥイーターである。口径4・5cmのコーンには、超高弾性無機質繊維シリコンカーバイトを配合したコーン紙とドーム型センターキャップを組み合わせた構造を採用し、低いクロスオーバー周波数で使える広帯域のトゥイーターだ。磁気回路はフェライトマグネット使用で、マグネット重量は70g、出力音圧レベル90dBを得ているため、小口径ウーファーとの2ウェイ構成やフルレンジ型ユニットの高域用に手軽に使える製品である。