瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
最初に発表された800Aが、あまりに手がかかって採算がとれないという理由で製造中止になってしまったことを残念に思う。というのはそれがかなり良い音のパワーアンプだったからで、国産でいえばラックス5M21やヤマハB3のような、決してハメを外さない慎重に練り上げられた、たいへん滑らかで美しい、そしてアメリカのアンプにしては静的な感じさえする音を聴かせた。400Aも基本的にはその方向をそのまま受け継いでいる。くわしくは単体の項をご参照頂きたいが、それをNS10と組合せると、本質的にこのメーカーの持っている真面目さがかなり際立ってくる。どこか禁欲的な雰囲気さえ感じさせるよそよそしいほどの慎重さ。粗っぽい音を全く感じさせない滑らかな、そしていくぶん冷たい肌ざわり。しかし音量を上げるとかなりの充実感も力もあって、やはり国産とはひと味違う。ここにもう少しヴァイタリティや音の表情の自在さが増してくるとさらに素晴らしい。
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