パイオニアのコントロールアンプQC80、パワーアンプQM80の広告
(スイングジャーナル 1972年3月号掲載)
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パイオニア QC-80, QM-80
ラックスキット A-3300, A-33, A-3500
JBL SG520, SE400S, SE460
岩崎千明
スイングジャーナル 11月号(1971年10月発行)
「supreme equipment 世界の名器を探る」より
71年の看板商品だったアクエリアス・シリーズが評判の割に1型、4型を除き、宇宙的デザインの主要高級品2、3が本国で思わしくないとかの噂。世界のJBLも近頃はその威光にかげりが見えたとか、ささやかれている。
これを吹き飛ばすかのようにプロフェショナル・シリーズが日本にもお目見えして、またまた話題を呼びそうだ。米本国のプロの分野で大手を振って幅をきかせているアルテックと並び、JBLが最近勢いを急進しているという。
今やJBLはスピーカーだけでなくアンプを中心として音響設備に大々的に乗り出しているのである。
JBLがアンプを作り出したのは、自社のスピーカーももっとも理想的に鳴らすという、はっきりした目的を持っている。当り前だがメーカーとしてこれほどはっきりした姿勢を、製品に持たせたことはそれまでにはなかった。JBLが「バラゴン」というステレオの3ウェイのホーン・ロード・システムを発売したときと同時に「エナージァイザ」という変った呼び方で発表したパワー・アンプが、パラゴンのドライブ用だ。スピーカー・システムの後側には、専用の格納スペースさえ設けられている。
このアンプにつけられる名称通り、スピーカーの音響エネルギーの供給用という目的が、はっきりと出ているし、それがJBLの姿勢そのものなのである。この「エナージァイザ」にはパラゴン用とするときの低音上昇のための専用イコライザー・ボードが内蔵されていた。
このエナージァイザはSE400として独立したステレオ用パワー・アンプの形で発売されたが、それと同時に発売されたのがSG520プリ・アンプでグラフィック・コントロ−ラーという名称をつけられた。スライド型のコントロールと、プッシュ・ボタンの切換という当時まったく新鮮なデザインに対して名づけられた。ステレオ・ブームの始まろうとする61年のことである。その翌年には早くもSG520は米国内西海岸のグッド・デザイン製品に選ばれ、品質、デザインとも、ずばぬけた高性能を認められたのは当然であった。
この当時は真空管アンプで圧到的に他を圧していたハーマン・カードン社のサイテイション・シリーズがトランジスタ・ライズされた製品を発表し、今はなきアコーステック・ラボラトリのアコースティック・アンプが好評のもとにスタートした。しかし、現在、そのいずれもが数年前に姿を消し、ハーマン・カードン社もこのトランジスタ・アンプの失敗が原因で大きく後退を余儀なくされマイナーに引下ってしまった。トランジスタ・ライズに早くからふみ切って成功したのはJBLアンプだけなのである。これは実に偉大な技術的成果であり、メーカーの姿勢の正しさをも示すといえるであろう。
かつて初期のSE400を実測してみたことがあった。ステレオ用として同時にフルパワーな出したとき、それはあらゆる周波数で60/60ワットを示した。規格の上ではなんと40/40ワットのアンプがである。現在はSE460としてさらに大きくパワーアップされている。
この直後、私はSG520と、SE400を組み合せて手元におき、毎日のように愛用し、リスニング・ルームのメインとして活躍しているのはいうまでもない。
永年使用してみてはっきり知らされたことは、61年に発表したSG520は10年を経た今日といえとも、これに匹敵する美しく華麗なステレオ・サウンドを持ったトランジスタ型のアンプを知らない。10年たった今においてまさに世界の名器といわれも大きな理由であろう。メーカーのすぢ金をこれほどはっきりと感じさせるアンプはめったにないであろうし、それは10年に渡って何ら変ってはいないのである。
ソニー TAE-8450 + TAN-8550
菅野沖彦
スイングジャーナル 11月号(1974年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
今年のオーディオ界の大きな論題の一つとして特筆すべきものといえば、FETパワー・アンプの実用化ということであろう。すでに、この新しい素子、V-FETについては多くの機会に紹介されている。従来のトランジスタとは異なった動作特性をもつV-FETが、かなりの高出力アンプの出力段に使えるようになって、その音質がいろいろうわさされているようだ。たしかに、この新しい素子によるアンプの音は、独自の音質をもっていて、従来のトランジスタ・アンプとはちがう。しかし、率直にいって、私には、その音のどれだけの部分が、V-FETそのものによるものなのかはわからない。アンプの音質や音色を左右するファクターはあまりに多く、ただ単純にFETアンプの音はこうだというような断定をする勇気はないのである。ただ、いえることは、私が今まで聞いて来た多数のトランジスタ・アンプ群とはちがった音の質感(タッチとクォリティ)をもっていて、大きく音質のカテゴリー別の地図を描くことが、可能だという程度である。この新製品を紹介するに当っては、先入観をもたずに、実際の音に接してみる努力をしたつもりだが、やはり新鮮な魅力を持った音というのが第一印象であった。
TAE8450プリ・アンプと、TAN8550パワー・アンプは、当然ペアーで使われることを考えてデザインされたものだとは思うけれど、それぞれ、セパレート・アンプとして独立した機能と価値をもった製品である プリ・アンプのTAE8450は実に多機能なコントローラーで、一見したところ、その操作部分の複雑多岐なことに驚ろかされる。いずれもあって便利なものばかりだが、よほど馴れないと、一つ一つ見ながらでないと操作出来ない。無意識にコントロールするようになるには大変な熟練がいりそうだ。オプティカル・ピーク・プログラム・メーター(PPN)と称されるライト・ビームのピーク・メーターは中でも本器の大きな特長であろう。これはパワー・アンプ8550のほうにもついているから、二台一緒に使うと壮観である。このメーターはプログラムのピーク値を指示できるだけではなく、その値をホールドして示してもくれるという素晴らしいもの。またスイッチでVUに切換えても使える。各種コントロール機能についてふれているスペースはないが、全て確実な動作と効果のあるものが完備している。それよりも、このプリ・アンプの音質の純度の高さは高く評価できるもので、特性的には全く不満がないといってよい。音像の解像度、セパレーション、プレゼンスなど全て満足すべき高い品位をもつ。ただ、パネルのハードなイメージのためかも知れないが、座右において使いこもうという魅力には一つ欠けるというのが正直な感想だ。このことはパワー・アンプの8550についてもいえると思う。100W×2の余裕ある大出力で、ゲインも高いにも拘わらず残留ノイズの少さ、ローレベルからのリニアリティのよさ、暖みのある音の肌ざわりもあって、きわめて高度な水準にあるパワー・アンプだと思う。しかし、もう一つ音の生命感、力感というものが物足りない。素晴らしいなあと感心するのだが、もう一つ、ふるいつきたくなるような魅力に欠けるのである。こういうことは純技術的な立場からすれば理解できないかもしれないが、根拠のないことと片づけられるかもしれない。しかし、現実に多くのアンプの中に魅力の要素の有無がはっきりある以上、使い手としては、魅力を待ったものに惹かれるのは致し方あるまい。しかも、それが、私が録音し得たと思っている魅力のファクターをよく出してくれるものと、そうでないものとがあるという現実の前には、考え込まざるを得ないのである。微視的な見方をすると、このパワー・アンプ、中高域(400Hz以上)はウォームで豊かだ。私見としては、低域の力強さの点でもう一つといったところ。全体に今一つベールをはいだ冴えが欲しい。しかし、これはもの凄く高い次元での欲張った話であって、この二つのアンプが世界的水準で最高のものであり、その設計のバックグラウンドから製品の仕上りにまで、オーディオ・マニアの気質分析と技術の高さが横溢している。
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