井上卓也
ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より
スピーカーシステムは、中口径フルレンジユニットをベースとするべきだとの考え方に立ったとしても、超低域から20kHzを超す広帯域のディジタルプログラムソースを再生するためには、フルレンジユニットの高域もしくは低域を、トゥイーターもしくはサブウーファーを組み合わせ、広帯域再生化を考えなければならないであろう。
静電型のフルレンジユニットをベースとすれば、サブウーファーを追加して比較的に容易にシステムプランが成り立つが、音量的な制約は基本的に残り、特性面では一歩を譲るが、やはり、ダイナミック型ユニットの魅力は捨てがたいものがあるようだ。
このタイプのフルレンジユニットは、基本的に設計時期が古く、アナログ時代に開発されたユニットの生き残ったものが主流で、少なくとも、現代の最新のテクノロジーにより開発されたものは非常に少ないのが現状だ。
非常に数の少ない最新設計のフルレンジ型ユニットのなかで注目したい製品が、静電型に匹敵する過渡応答に優れた特徴を持ちながら、ダイナミックレンジを一段と向上させ、柔らかい振動板により、振動の最初から全帯域を分割振動で動作させる、BWT(ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー)である。
基本構想は、かつてのヤマハ/NSスピーカーと共通性があるが、特殊な薄膜材料に直接ボイスコイルを取り付けた振動系は、人間の耳の構造を範として設計されたとのことで、約20cmの口径で80Hz〜32kHzをカバーするという異例の超広帯域ユニットだ。
この独マンガー研究所が30年の歳月をかけて完成させたユニットに、プロセッシング・プレッシャー・コントロールアンプが駆動するアクティヴ型ウーファーを加えたシステムが、スイスのアクースティックラボ/ステラ・エレガンスである。
ナチュラルで色付けがなく、ストレスフリーな音は、最新フルレンジ型ならではの独自の魅力がある。
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