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ヤマハ NS-1000M, ビクター Zero-5 Fine

黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 スピーカーで音の世界めぐりをしてきて、最後に日本のスピーカーを2機種きいた。そこでまず感じたのは、ともかくこれは大人の音だということであった。充分に熟した音であり、かたよりがないということである。立派だと思った。どの国出身のレコードでも、つつがなく対応した。ヤマハのNS1000MとビクターのZER05FINEでは、価格の差があるので、そのクォリティについては一概にはいえないとしても、おのれの個性をおさえて、それぞれの方法でさまざまな音楽に歩みよろうとしている姿勢が感じられた。大人の音を感じたのは、おそらく、そのためである。
 とりわけ、ヤマハのNS1000Mは、立派であった。それぞれに性格のちがう音楽のうちの力を、しっかりと示した。ただ、たとえば、マーティ・バリンの歌の、粋でしゃれた感じをこのましく示したかというと、かならずしもそうはいえなかった。さまざまな面で、はきり、くっきり示しはしたが、独特のひびきのあじをきわだたせたとはいいがたかった。したがって、このマーティ・バリンだけを例にとれば、JBLのL112とか、あるいはボーズの301MUSIC MONITORの方がこのましかったということになる。ビクターのZER05FINEについても、同じようなことがいえる。
 こうやって考えてくると、ヤマハのNS1000Mにしろ、ビクターのZER05FINEにしろ、日本出身のレコードでそのもちあじを特に発揮したわけではないから、外国のスピーカーたちとちがって、お国訛りがないということになる。お国訛りというのは、いってみれば一種の癖であるから、ない方がこのましいと、基本的にはいえる。ただ、場合によっては、そういうスピーカーの癖が、レコードの癖と一致して、えもいわれぬ魅力となることもなくはない。シーメンスのBADENのきかせたニナ・ハーゲンやクラフトワークのレコードの音がそうであり、エリプソンの1303Xがきかせたヴェロニク・サンソンのレコードの音がそうである。
 癖があるのがいいのかどうか、とても一概にはいいきれない。同じ価格帯で比較したら、日本のスピーカーの多くは、平均点で、外国産のスピーカーを大きくひきはなすにちがいない。さしずめ、日本のスピーカーは3割バッターといたところである。そこへいくと、外国のスピーカーの多くは、ねらったところにきたらホームランにする長距離打者といるであろう。
 ただ、この場合、ききてであるかぼくが日本人であるために、日本のスピーカーのお国訛りが感じとれないとういこともあるかもしれないので、はっきりしたことはいいにくいところがあるが、日本のスピーカーは、ドイツのシーメンスのBADENをドイツ的というような意味で日本的とはいいにくいように思うが、どうであろうか。
 くりかえして書くが、、ヤマハとビクターのスピーカーは、大滝詠一やブレッド&バターのレコードもこのましくきかせたが、それと同じようにハーブ・アルバートやマーティ・バリンのレコードもこのましくきかせた。その意味で安心してつかえるスピーカーではあるが、きらりとひかる個性にいくぶん欠けるといえなくもないようである。

ビクター Zero-5Fine

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 意欲的な開発姿勢もさることながら、よくまとまった個性的スピーカー。コーン型ウーファー、ドーム型スコーカー、リボン型トゥイーターという組合せがユニークだし、帯域バランスを、質的にもよく統一した技術が光る。30cmウーファーがベースだけに、低音の豊かな支え、よのびたワイドレンジのスケール感が魅力。許容入力も余裕たっぷりで、かなりの大音量再生も可能であるから、音楽の表現力も大きい。

ビクター Zero-5

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ひびきの質は、むしろ重めだ。そのためにひびきの輪郭は、くっきりと示される。そのくっきりと示される輪郭が、おしだされるように示される傾向がある。❷のレコードでの強打されるピアノの音、あるいは❸のレコードでの低音弦の動きのあいまいさのない提示は、このスピーカーのもちあじが発揮されたためのものといえよう。ただ、❶のレコードでは、ききてとしては、どうしても音場感の面でひろがりがほしいところだが、その点での提示では、このスピーカーは、あまり得意でないようだ。それで、いくぶん全体におしつまったというか、せせこましいきこえ方がする。同じことは、❸のレコードについてもいえて、オーケストラのひびきがもう少しひろびろと示されてもよさそうだが、そうはならない。しかし、個々の音の基本エネルギーは、このランクのスピーカーとしては、せいいっぱい示そうとしている。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

ビクター Zero-5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 独特のトゥイーターの音色を、やや意識させる傾向に強調してあって、たとえばブルックナーの交響曲でも、また逆にベラフォンテの古い実況録音盤のような場合でも、つまりかなり傾向の異なるプログラムソースのいずれの場合でも、一種キラキラした固有の音色が聴きとれる。たとえばシンバルはシンシンというような感じ、そして弦の場合でもヴァイオリンの上音でときたまシリンというような感じのやや金属性の音がつきまとう。トゥイーターレベルを0から−3までのあいだで調整すると、この傾向はいくぶんおさえることはできるが、エラックの新型のような中〜高域のきつめのカートリッジでは、どうもうまくない。中音域以下では、たとえばキングズ・シンガーズのバリトン、バスの声域で、置き方をよく調整しないと、やや風呂場的響きに近くなりやすい。総じて味つけの濃い、わりあい個性の強いスピーカーだと思った。

総合採点:7

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:6
質感:6
スケール感:7
ステレオエフェクト:6
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:5
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:普通

ビクター Zero-5

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 30cmコーンスピーカーをウーファーとして、スコーカーに10cmコーン、トゥイーターにはリボン型を配した3ユニット構成の3ウェイシステムである。エンクロージュアは、ブックシェルフタイプのバスレフ型だ。なかなかよくまとまった、明るい音色をもったシステムである。ヴァイオリンで、トゥイーターの高音域が、やや異質なキャラクターを鳴らしたが、これは、大方の音楽でハイエンドの味つけとして生きる場合が多く欠点とはいえないとも思う。バランスがよくとれているし、各ユニットの音色も、ほんのり甘美で、暖かく、音楽を無機的に冷たくすることが決してない。編成の大きなオーケストラのトゥッティも、テクスチュアもよく緻密に再現するし、プレゼンスの豊かな、ソノリティに量感もある。ジャズも、かなりのハイレベル再生でも安定し迫力も満たされるし、個々の楽器の特質や、演奏表現もまず、不足はない。これで、音楽の品位に負けなければ文句なしだが、この甘美な音色はどちらかというとポピュラー系向きだ。

総合採点:8

ビクター Zero-7, Zero-5

ビクターのスピーカーシステムZero7、Zero5の広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

Zero7

ビクター Zero-5

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新発売のZERO5は、型番からもわかるように、ビクター最初のトゥイータ一にリボン型ユニットを採用したユニークな製品であり、完全密閉型シリーズと将来は2本の柱となるべき新シリーズの誕生である。
 ウーファーは、30cm口径の新開発アルファーコーンを採用したバスレフ用の設計であり、広帯域を受け持つスコーカーは、フェノリックコーンと金属ドームの複合型構造を採用したメカニカル2ウェイ的動作をする10cmコーン型である。トゥイーターは、ダイナフラット方式という高分子化合物薄膜上にボイスコイルを取り付けた、マッチングトランス不要のリボン型で、ダイアフラム前面には左右方向に広がるショートホーンが組み合わせてある。ネットワークは、モニター用システムS3000での成果を導入した低歪率設計であり、エンクロージュアは、リアルウッド使用でオイルフィニッシュされたバスレフ型である。
 ZERO5は、活気のある低音をベースにソリッドで引き締まった中高域と、独特のステレオフォニックな空間の拡がりを聴かせる高域が巧みにバランスを保ち、SXシリーズとは異なった爽やかな音をもつ。