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ソニー TA-ER1

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 超広帯域型バランスアンプユニットをベースに、不平衡型入力も特殊回路で平衡受けとする独自な設計が異例だ。音量調整はリモコン対応で、この部分の機構はメカマニア泣かせの魅力がある。色づけが皆無で素直に伸びやかな音を聴かせながら、表情に豊かさがあることが嬉しい。高い技術力を基盤に程よく音楽性を備えた名作である。

ソニー TA-ER1

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 TA−ER1プリアンプは、独立電源部をもつバランス優先設計の超広帯域・超高SN比が特徴の、現代最先端のプリアンプだ。バランス入力端子と高平衡度バランスアンプを直結し、入力信号を直ちに差動合成する考え方は、ノイズ打ち消し効果が高く、通常120dBの信号伝送系SN比を170dBに高めているという。また、信号ロスを低減するため、入力インピーダンスは4MΩと異例に高い。加えて、不平衡入力の平衡アンプによる増幅、ホット/シールド切替を同時に行なうパラレルスイッチ機能、リモコン可能な真鍮削出し筐体収納のコンダクティヴプラスチック・アッテネーターの採用などが特徴。出力段はMOSダイレクトSEPP方式で、駆動能力の安定化と強化が特徴だ。
 MM/MC対応フォノEQは、MC用に昇圧トランスを搭載。リモコンボリュウムは超音波セラミックモーター駆動で、停止時には制御系的にもメカニズム的にもすべて解除状態となる。

ソニー TA-ER1 + TA-NR10(JBL S9500との組合せ)

井上卓也

ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」(1993年3月発行)
「ハイエンドアンプでProject K2 S9500を堪能する」より

 超広帯域設計で平衡入出力をメインとするプリアンプと、平衡入力部はトランス変換とするパワーアンプの組合せで、設置場所は標準位置、結線はすべて平衡型である。
 充分以上のプリヒートをしたアンプに信号を加えて、音を聴く。表情が固く、全体にやや細身の音であるが、ほぼ15分も経過すれば、反応は穏やかではあるが、おおよそウォームアップ後の音が予測できるような音の姿、形となる。その後、ややソフト型、ややシャープ型と小さな変化はするが、基本的に熱的な安定度は高いようで大きく音質、音色を崩すような変化は示さぬ点が好ましく、ほぼ30〜40分間ほどで、まずまずの音となり、1時間ほどで平均的に使えるようになるのは、むしろウォームアップが速いタイプである。
 S9500は、量感タップリにほどよく芯のある低域を聴かせ中域以上は明解で、これはホーン型ドライバーユニットならではのエネルギー感のあるストレートな音である。
 低域は、定格パワーから考えればグイッと押し出す独特なパワー感があるが、バランス的には、わずかに引き締め、少しタイトにして、ほどよくエネルギー感を前に押し出す、明解かつ質的に高い音を望みたい。
 しかしこれは、部屋の音響的処理で容易にコントロールできる範囲であり、スピーカーシステム自体でもクリアーできるが、もっとも簡単な方法としては、スピーカーケーブルを変えることが考えられる。
 本質的には、高域がスッキリと伸びきり、音に透明感が加われば、低域もほどよくソリッドで、かつ表現力も一段と豊かになるはずだ。今回の試聴では、プリアンプがTV電波の影響を受け、高域に少しベール感があり、これがクリアーされれば本来の音となるだろう。しかし、今回聴いた各アンプとも影響の大小はあるが、共通の問題点で、平均的な使用条件では、一段と優れた結果が得られることと理解していただきたい。
 この組合せは、S9500をほどよく引き締め、音の精度感が高く、情報量豊かに聴くためには好適な組合せであり、とくにJBLプロフェッショナルモニター的音を好む向きには、かなり面白い選択であろう。
 プリアンプの音量変化範囲切替は、1種のキャラクターコントロールとしても使用可能で、平均的レベルでの音量で再生中でも、変化範囲の少ない方に切り替えると安定度、力感は少し抑えられるが、音のディテールの見通しのよさ、活き活きした表情などの非常に魅力的な部分が加わるようだ。

ソニー TA-ER1

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より

 CDプレーヤーは、定格出力が他のチューナーやカセットデッキなどの機器と比べて2Vと非常に高いため、CD初期からバッシヴ型のボリュウムコントロールを使い、ダイレクトにパワーアンプと接続する使い方が注目されてきた。感覚的にも増幅系であるアンプを信号が通らないため、信号劣化が少なく、結果としての音質が優れているように思える。
 これに対して、より良く音楽を聴くためにはコントロールアンプが必要だと考える人も多い。しかし、単純に音質のみにポイントを置けば、アンプで増幅すれば当然、歪みの増加は避けられないことを知るだけに、鮮度最優先的なパワーダイレクトの音よりも、ほどよく調和のとれた一種の熟成された音楽が楽しめる点がコントロールアンプの魅力であると、心情的に納得せざるを得ないのが現実であろう。
 パワーダイレクトと比べ、コントロールアンプを使う方が音質が良くなることを実証すべく、それに挑戦して開発した製品がこのTA−ER1である。
 徹底した入出力系のグラウンドの処理にポイントを置き、直径50mm、最大肉厚9・5mmの黄銅くり抜きハウジングを採用した高音質アッテネーター、2MΩの異例に高い入力インピーダンスをもつバランスアンプをアンバランス/バランス入力ともに使う独自の手法、出力段でのMOSダイレクトSEPPによる平衡出力で4Ωの低インピーダンス、そして直線性の向上などが相乗的に効果を発揮し、測定値はもとより、聴感上でも非常に高いSN此が得られることが、素晴らしい本機の魅力である。
 MC/MM対応のフォノイコライザー、超高級ヘッドフォン対応のリアパネル独立端子、夜間などの小音量時に高音質を保つ2段切替音量調整を備える。
 最終製品ではないが、パワーダイレクトと比較して聴感上でのSN比、音場感情報量が圧倒的に優れ、柔らかく、芯があり、深々と鳴るナチュラルな音は、従来の超高級機の枠を超えた見事な成果である。