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ソニー TA-E86

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

独特の構造を採用した、伸びやかな音をもつソニーの魅力的な製品。

ソニー TA-E86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のバランスという面では音域内での過不足もことさら指摘しにくいし、質感も滑らかで耳ざわりの悪い音を鳴らさない。ウォームな音の中にも現代的な反応の鋭さもある。ただ、アメリンクの独唱で、声自体がやや張り出す反面、伴奏のピアノはむしろ音像がことさら後に引いて、タッチも暗い感じがするというように、コントラストが強く聴こえた。また、「SIDE BY SIDE3」のベーゼンドルファーの音の丸みと艶が不十分で、打音がどこか輪郭だけのように聴こえる。MCヘッドアンプの音は、MC20に対しては切れ込みは良くなるが素気なくなる傾向。DL103Sでは解像力はトランスより良くなるが骨ばる傾向で、どちらかといえば乾いた音と聴きとれた。

ソニー TA-E86 + TA-N86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 名作と謳われたプリメインアンプTA1120の頃から、ソニーのソリッドステート・アンプの音には、本質的にかなり冷徹というか、やや無機質的な、整ってはいるがどこか突き放した冷たさを私は感じていて好きになれなかった。新しい製品になるにつれて、それもごく最近になって、かなり大幅に変身を試みはじめたようで、中でもこの86シリーズは、とてもバランスがよく滑らかで柔らかな肌ざわりを持っていて、一聴した印象では少し前までのソニー製品とは思えないほどだ。だが、柔らかいといっても決して女性的な弱腰の音ではなく、むしろ一見柔らかな音の中に、意外にコントラストのきつい芯の強さがくるみこまれていると感じとれる。そのことは、たとえばシェフィールドのレコードで、一見ウォームな丸みのある、しかし現代ふうの反応の鋭い音でリズムセクションのきちんと整った中から、テルマ・ヒューストンの声がぐっと張り出してきこえるという一例からも聴きとれた。