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サンスイ SP-L150

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

十分に伸びた高域と中域のエネルギー感が特徴の、目立たない正統派。

サンスイ SP-L150

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 DS30Bと同じ価格なので、どうしても比較の対象になる。全体の鳴り方は、ダイヤトーンよりも軽快で、入力に対する反応が敏捷だ。中〜高域が張り出し気味のところはDS30Bとかなり似ている。というよりもこの作り方が、国産のスピーカーには一般的だ。ダイヤトーンの場合には本誌標準の、約50センチの高めの台で、背面を壁からかなり離す方がよかったが、サンスイの場合には、まず標準台では低域が不足して、そのまま背面を壁につけてもまだ少々物足りなかったので、20センチほどの低い台で背面を壁につけるようにしてちょうどよかった。このことからも低域の特性はDS30Bとかなり違うことがわかるが、たとえばキングズ・シンガーズのコーラスのバランスの音域で、DS30Bがブレストの音がやや人工的に重く聴こえたのに対して、L150の音は自然で軽やかによく動く。高域は、30Bのところでももうひと息ハイエンドの延びが欲しいと書いたが、L150のハイエンドはよく延びて爽やかで自然によくひろがり、したがって楽器のデリケートなニュアンスをよく再現する。アンプの組合せでは、トリオ7300Dのような味の濃い音よりも、ヤマハCA2000のようなさらりとした音の方がよく生かすと感じた。カートリッジはしたがって455EやVMS20E/IIよりはエンパイア系統の方がよく合った。

サンスイ SP-L150

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶しめったピッチカート。もう少しくっきりひびいてもいい。
❷ひびきがふくらみぎみなので、くっきりしない。
❸音色的な対比がもうひとつすっきり示されるべきだろう。
❹第1ヴァイオリンのひびきがかさかさしがちだ。
❺ひびきに一応の力はあるが、高い音が刺激的になる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、いくぶん大きめである。
❷音色的な対比を示すものの、もう少しキメ細やかでもいいだろう。
❸響きが重くなっていないところはいいが、多少硬めだ。
❹もう少ししなやかさがあるとさらに効果的だろう。
❺鮮明ではあるが、柔らかさが望まれる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声にもう少しまろやかさがあるといいのだが。
❷接近感を強調ぎみに示す。表情はかなりオーバーだ。
❸クラリネットの音色がロザリンデの声におさえぎみである。
❹はった声は、かたくなり、金属的になる傾向がある。
❺もう少しさまざまな響きのとけあい方がしめされるといい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声がいくぶん強調気味になる。
❷声量をおとしたところから、言葉が鮮明さを欠くようになる。
❸残響をひきずっていないところは好ましいのだが……。
❹各パートの織りなす綾がもうひとつすっきりしない。
❺一応ののびは示されるものの、しなやかさがほしい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的対比が充分について、かなり効果的である。
❷くまどりがいくぶんきつすぎるための不都合がなくもない。
❸響きは浮遊するものの、キメがいくぶん粗い。
❹もう少し前後のへだたりがくっきり示されるといいのだが。
❺音のしのびこみは自然だが、ピークはきつい音になる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶もう少し響きに透明感がほしい。広がりもいま一歩だ。
❷中央からきこえるが、音像ははじめからひろがりぎみだ。
❸広がりがたりないので、効果ということで、ものたりない。
❹響きの輝きをよく示し、全体の流れの中でのアクセントたりえている。
❺うめこまれずに、くっきりと示されている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターの響きの特徴をよく示していて効果的だ。
❷ここで求められている効果は充分に示す。
❸響きが乾いているので、さわやかな印象を与える。
❹ドラムスの切れの鋭さはなかなかいい。言葉のたち方もいい。
❺言葉すっきりとたって、あいまいさがない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶一応の力感は示すものの、スケールの豊かさがほしい。
❷なまなましくはあるが、部分拡大的になっている。
❸音が消える時の尻尾がもし少しはっきり示されてもいいだろう。
❹シャープに反応して、一応の効果はあげる。
❺音色的には充分だが、音像的には多少問題がある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶はなやかな響きをきかせはするが、力感はもうひとつだ。
❷つっこみは鋭い。ただいくぶん硬質にすぎる。
❸響きの極端なクローズ・アップを明確に示す。
❹後へのひきがさらに鮮明なら、よりはえただろう。
❺めりはりはくっきりつけま。さらにシャープでもいい。

座鬼太鼓座
❶かなり前にはりだしている。ひきがたりない。
❷脂っぽさがないのはいいが、響きのキメが粗い。
❸ききとれる。しかし不必要に誇張はしていない。
❹消え方が充分に伝わっているとはいえない。
❺きわめて効果的にくっきりとききとれる。

サンスイ SP-L150

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 Lシリーズ中では、中間位置にあるシステムである。性質は、シリーズ3モデル中ではもっともマイルドで、潜在的なクォリティの高さがトータルの音を支持しているような大人っぽさが特長である。音色は明るく、適度に厚みがありニューミュージックからクラシックにいたる幅広いジャンルに反応を示す。

サンスイ SP-L250, SP-L150, SP-L100

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイのスピーカーシリーズにはLMシリーズ、JBLのモニターユニットを使ったモニターシリーズをはじめ、10万円をこした価格帯で注目されたGシリーズなど、かなりバリエーションが多いが、これに加えて、新しくるシリーズの3機種が発売されることになり、一段と製品群としての厚味が増加した。
 Lシリーズは、各社の製品がもっとも激しく競合する価格帯に投入されたシリーズであり、構成面からみればLMやGシリーズと比較して個性が少なく、オーソドックスな手法により開発されている点が、返って特長といえよう。ユニット構成は各モデルともにコーン型ユニットを使う2ウェイ方式であり、エンクロージュアはバスレフ型で角型のパイプダクトを採用している。
 ウーファーはコーンに西独クルトミューラー製のパルプを使い、エッジには方向性がなく、内部損失が多い発泡樹脂を熱成型したロールエッジを採用している。ボイスコイルは超偏平リボン線を使いエッジワイズ巻きとしたショートボイスコイル型で、巻幅が狭いため大振幅にも磁気回路内で余裕ある動作が可能で、歪が少なく能率が高い特長があり、ボビンは強度が高く音の伝播速度が速い耐熱性樹脂製であり、ボイスコイル部分以外のボビン部分には強度を高めるために同じ材質を使ったシートで補強がしてある。磁気回路はセンターポールに銅キャップを使用し、中央には通気用の穴が貫通している。マグネットはフェライト磁石で、L250の30cmユニットには外径156mm、L150の25cmユニットには外径145mm、 L100の20cmユニットには外径120mmの大型なタイプが採用されている。各ユニットともに駆動部分のボイスコイルとコーン氏との結合が強固であるため、ウーファーとしてはかなり高域特性が伸びた、いわばフルレンジタイプであり、トゥイーターとのクロスオーバー周波数の選択の幅が広い特長がある。
 トゥイーターはコーン型であるが、ウーファーと同様にワイドレンジタイプで高域限界は50kHzと発表されている。振動板はコーンとセンターキャップを一体成型して特殊な樹脂溶液の含浸処理をし強化してある。ボイスコイルはボビンに耐熱性樹脂シート採用で剛性が高く、高域特性を向上するためにメリットがあり、コーン紙との接着は新開発の特殊接着剤を使用している。
 磁気回路は、L250/150が外径90mm、L100が外径80mmのフェライト磁石を使用し、16、000ガウス以上の磁束密度を得て磁気回路を完全に飽和させ、ボイスコイルに流れる電流により発生する電流歪を防ぎ、音圧レベルと高域特性をも改善している。また、磁気回路の空隙をなくすためにプラスチック材を使い振幅が大きくなるf0付近の第3次高調波歪を改善している。フレームはダイキャスト製である。
 クロスオーバーネットワークは、コイルはダンピングと能率の劣化を防止するために、線径の太い線と大型ラミネートEI型コアが使ってある。エンクロージュアは、バッフル版が共振が少ない三層構造パーチクルボード、他の部分は比重が大きいパーチクルボードで、結合は三方止めとし、エンクロージュア全体を一体化している。
 Lシリーズのシステムは、かなり反応が早く、伸び伸びと音を出し、そのクォリティがもっともローコストなL100でも充分に高く、聴く音楽のキャラクターにより、高級機、普及機といった区別なく使いわけられることが特長である。スピーカーシステムの理論どおりに中域にもっとも密度があるのは20cmウーファー使用のL100であり、スケール感が大きいのは30cmウーファー使用のL250で、さしてシステムとしてのキャラクターが変わらず充分に基本をおさえ、巧みにコントロールされている。何れのモデルを選択してもかなり使い込める点は、このLシリーズの魅力である。