井上卓也
ステレオサウンド 81号(1986年12月発行)
「BEST PRODUCTS WINTER ’87 話題の新製品を徹底解剖する」より
デンオンが、米国CETEC GAUSS社の協力を得て、トップランクのスピーカーシステムSC2000の開発をはじめてから、すでにかなりの歳月が経過している。
SC2000の開発にあたっては、ユニット製造メーカーであり、システムの開発を手がけていなかったガウス社に、サンプル的なシステム開発を依頼し、同軸2ウェイ方式、3ウェイ方式について試作をしたという。これらを充分に時間をかけてデンオンで試聴を行ない、ガウスのユニットの特徴を把握した後に、同軸2ウェイ方式に的を絞り、デンオンのスピーカーシステムとして開発をするという、約2年間にわたる部分的な検討の積重ねにより製品化された、デジタルプログラムソース時代に相応しいスピーカーシステムである。
コンピューターデザインにより設計された、独特のカーブにつくられたハイフレケンシーユニット用のホーンは、低域ユニットの取付部であるフレームからかなり前方に突出しており、同じ同軸2ウェイユニットのタンノイはもとより、アルテックのユニットと比較しても、かなり異なった印象を受ける。
ダイアフラム口径は、50mm(約2インチ)で、アルテック系やJBL系の口径45mm(1・75インチ)より1サイズ大きな、現行のプレッシャードライバーとしては特殊サイズである。一時期にはデンオンが開発したαボロンのダイアフラムも検討されたようであるが、現在は、ガウス・オリジナルのアルミ系軽合金製に戻っている。
ウーファーは、特殊処理を施したマルチコルゲーション入りのペーパーコーンを使い、エッジワイズ・ボイスコイル、コルゲーションエッジのほか、サスペンション系が、ガウス独自のダブルスパイダーサスペンション方式であり、コーンの裏面は、白色のダンピング材で処理されている。
磁気回路のマグネットは、ウーファーがφ190mm・t19m、トゥイーターにφ155m・t19mmの大型ストロンチュウム・フェライト磁石採用である。
エンクロージュアは、長方形の木製パイプダクトをもったバスレフ型で、ポート形状は、ガウスのサジェッションによるもののようである。数多くの試聴と計測データーから選出されたエンクロージュアは、ユニットの突出したホーンによる制約が大きいようで、バッフルボードは、側板から一段奥に引っ込んだ位置にあり、周囲を額縁状のエッジで囲んだクラシカルな設計だ。
エンクロージュアは、バッフル板と、裏板に15mm厚の高密度パーティクルボードを2枚貼合わせ構造とした材料を使い、天板、底板と側板には、デンオン・エンクロージュアの伝統的手法ともいえる、両面にウォールナット柾目つき板貼りの31mm厚高密度パーティクルボードが採用された約160ℓの内部容積をもつバスレフ型である。なお、エンクロージュアのフロントバッフル面に、連続可変型アッテネーターをもつネットワークは、デンオンで設計・開発を行なった、伝達特性を重視したタイプである。
SC2000は、デンオンの試聴室は金属製の市販のスピーカースタンドが使用されていたが、今回の試聴では、ユニットの中心を耳の高さに合わせる目的で、オンキョーのAS5001スタンドを併用した。
まずは、一般的に通例となっているサランネットを外し、ヤマハCDX1000ダイレクト接続のカウンターポイントSA4で音を出す。帯域バランスは、厚みのある穏やかな低域をベースにした安定度のあるナチュラルなバランスで、ハイエンドはスローダウンしたタイプだ。ガウス・オリジナルシステムの印象よりは、ガウスらしいボッテリとしたエネルギッシュな独特のキャラクターがほとんど姿を消し、音の粒子も細かくなり、スムーズで、かなりデンオンのシステムらしいイメージに調整してあるようだ。
同軸ユニットの特徴である定位のクリアーさはさすがに見事で、ワンポイント録音の、インパルのマーラー第4番の第4楽章の冒頭で、ソプラノが歌いながら首を振るところが、目で見るように明瞭に聴き取れる。音像はかなり立体的に小さくまとまり、音場感は素直にサラッと拡がる。
プログラムソースとの対応はおだやかで、各種の音楽を聴いても安心して聴けるフトコロの探さは、同時に聴いた国内製品のCOTY選定モデルの何れにもない独特の味わいである。ドライブアンプを変えてみると、穏やかだが、適確にキャラクターの違いを音にして聴かせる。さすがに、モニターの血はかくせないものだ。サランネットをつけると少し甘い音になるが、アッテネーターで調整可能な範囲である。
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