Tag Archives: LS400

トリオ LS-400

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 前号でとりあげたLS300と、長所も弱点も共通の性格を持っている。まず低音域の量感が豊かだ。こういう量感は、最近のイギリスのスピーカーの一部に聴きとれるひとつの傾向で、一般に多くのスピーカーとは逆に置き方のくふうで低音を抑えないと、かえって低音の締りが悪く全域の音をふくらませることがあるので注意がいる。LS300のときも中音、高音のレベルセットがわりあい難しかったが、400のレベルコントロールもやや微妙な点があって、とくに中音域のレベルセットが難しい。言いかえれば、ウーファーの柔らかい鳴り方に対して中音域の特性又は音色に不連続の性質があるのか、中音を抑えると音がひっこんでしまうし上げすぎると出しゃばった圧迫感が出てくるのでこの辺がクリティカルだ。試聴では中音をわずかに抑え高音を逆に上げ気味に調整し、あとはトーンコントロールで補整するのがよかった。なおこの製品に限り量産に入ったものを追加試聴したが、生産途上で改良の手が加えられているらしく、中音域がかなり改善されていた。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆☆

トリオ LS-400

岩崎千明

スイングジャーナル 5月号(1973年4月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 この数ヶ月、雑誌の広告におけるトリオの紙面はスピーカー・システムの眼を奪うような予告をクローズ・アップしてきた。その話題のスピーカー・システムが遂に登場した。LS400である。
 30cmウーハーと、12cmスコーカーに流行のソフト・ドームを配した3ウェイのブックシェルフ型システムで、その点からはオーソドックスな、ごくありきたりの最新型システム以上のものではない。ただ、このシステムの唯一の特長は、予告広告においてすでに宣伝されているとおり、ランバーコアと呼ぷ前面バッフル板で、細い角棒をならべて構成した新しいバッフル板にある。従来、使われているホモゲンの硬質型であるチップボードや合板のもつ生産性、均一性と、マニアの間でいわれる高い天然木の単板との、両方の特長を合せ待った新材料の採用が大きな特長をなしている。
 この種の板は、すでにカウンターの材料などを中心に建築材料としてはありふれたものだが、これを音響材料としたところに着眼の艮さを感じる。
 皮肉な見方をすれば、最近の異常な材木の値上りが招いた、苦肉の策ととられるかもしれない。しかし、このようなマイナスの原因もプラスの方向へ導くきっかけにしている努力を大いに買いたいのである。
 ランバーコアは、単板の良さに均質性と量産性を加えた現実の形として納得のいく材料であることは、まぎれもない事実だからだ。
 この種の新材料は、しかし、今までにスピーカー・ボックスとして少なくとも一度も使われたことがなかっただけにこれをいかすことは、また大きな試みと努力の積重ねを経ずしては達せられるわけはないであろう。
 それを裏づけるようなことが、このスピーカーの完成間近にさえも開発途上でおきたという。それは補強棧の形と位置を、従来の常識から変えた形を行ったときに、中音の大きな変化として経験されたと聞く。これを私に教えてくれた開発担当者のN氏は、彼自身がテナーを吹く熱烈なジャズ・ファンであった。もっともこれは、かなりあとになって、私自身が偶然にも知ったことである。そのジャズ・ファンとしての耳が、中音の変化を敏感に感じとって、どの方向に試作スピーカーの音の作り方を決定するかに大きな役割を果したことに間違いない。
 このLS400、担当者自身が熱心なジャズ・ファンであるためなのか、スイング・ジャーナル試聴室でトリオのスピーカー・システムにかつてなかったほど朗々とより鳴り、ソロのアドリブの実にリアルな音像再生は、今まで私がトリオのスピーカー・システムに対して抱いていたイメージを一変させた。品が良く、特にクラシックの繊細な再現は得意だが、ジャズのような激しい迫力の再生は苦手のはずであった前のトリオのサウンドのイメージは、LS400によって、私の脳の中から吹きとんでしまった。
 付言するならば、このLS400をかくも立派に鳴らしたのは、これもトリオの新型アンプであるハイ・アタックの最上位機種KA8004であった。KA8004は、市場に出て以来数ヶ月、その評価も上乗で、ここに改めてふれるまでもないが、力強いサウンドに、驚威的広域と、繊細な解像力とを合わせ持って、現在市場にあるアンプの中でも5指に入る優秀機種だ。
 このKA8004で、高解像力の再現を確めたあと、SJ試聴室の新鋭機マッキントッシュの300/300ワットMC2300につなぎ換えたLS400はさらに重低域の迫力と、温みとをそのサウンドにプラスしたのであった。

ティアック LS-30, LS-80, LS-360, LS-400

ティアックのスピーカーシステムLS30、LS80、LS360、LS400の広告
(スイングジャーナル 1970年4月号掲載)

LS400

ティアック LS-400

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 全体に音の抜けの悪さが目立ち、こもり気味で冴えない。また、周波数レンジも広い感じではなくオーケストラの多彩な音色を十分再現してくれるとはいい難い。どこといって大きな欠点はないのだが、どうもパッとしないシステムだ。バランスもかなりまとまっていると思うし、再生音の質も解像力に不満があるが、そんなに荒っぽくも粗くもない。つかみにくい音で評価に苦しむ。穏やかではあるが濁りがあって抜けきれない製品。