Tag Archives: KSA100

クレル KSA-100MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

(マッキントッシュ XRT18での試聴)
 MKIIになって一味、あの魅力は失ったとはいえ、クレルのアンプというのはマッキントッシュの対極にあって高い次元の音をもっていると思うので組み合わせてみた。これは意外にJBL4344を鳴らしたときよりも生き生きとしてくる。XRT18のグラマラスな肉体を引き締めて、しかも、スピーカーのきめの細かくしなやかな高域にマッチして思わぬ美音にうっとりさせられた。このスピーカーのほうがアンプを高く評価することになるだろう。

クレル KSA-100MKII

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

(ビクター Zero-L10での試聴)
 素直なレスポンスと安定感のある鳴り方が特徴。低域は適度に柔らかさもあり、響きが豊かに加わり、安定感のあるプレゼンスは充分に楽しめそうな音だ。音場感はゆったりと拡がり、音像はやや大きく、スピーカーの奥にスンナリと立つタイプだ。良い意味で、スピーカーのアグレッシブな特徴を適度にカバーし、4ウェイらしい音で聴かせるこのアンプの力量は、注目に値するものだ。プログラムソースでは、モーツァルトとヴォーカリーズが雰囲気良し。

クレル KSA-100MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 あのきめの細かい、なんとも清々しく、しかも充実した力感に支えられたKSA100の魅力がMKIIになって失われてしまったと感じられる。もちろん、その特色は残っていて、線が細い緻密な解像力をもちながら響きは澄んでいて豊かであり、並のアンプとは一桁も二桁も違う。しかし、あの魅力が一つ薄らいだことは否定できないのである。一歩間違うと危険なぎりぎりの線で踏み止まっていたあの魅力が、安全圏に入り込んでしまったという感じである。つくづく難しいものだと思う。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:9.0

クレル KSA-100MKII

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 柔らかく適度に質感が優れた低域をベースとした、穏やかで、アダルト好みの音をもつアンプだ。基本的には、悪条件下でも水準の高い音が聴かれそうな安定した完成度の高い音ではあるが、しなやかさ、反応の速さ、ナチュラルさなどでは、未完成だったが旧型の方に魅力があったようだ。プログラムソースとの対応は、安定感があり、素直に反応を示すが、これは質感の高い低域に負うところ大といえよう。表情に少し曖昧さが残るが、セッティングで容易に解決できる範囲である。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:9.4

マークレビンソン ML-7L + クレル KSA-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 この組合せは、どちらのアンプの持味も強調されるといった感じであった。いずれも素晴らしいアンプだから、その結果の音が悪かろうはずはないのだが、一つの音として決っているとはいえない。つまり、KSA100のあの魅力的な高域は、さらに強調され、ML7Lの彫琢の深い厳格な音の陰影も、より隈取りが濃くなるといった印象だ。このように絶妙なバランスとはいえないが、客観的には、実に立派な音としかいえない。

クレル PAM-2 + KSA-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 KSA50のところでメモした〝クラルテ〟の魅力は、このパワーアンプも同じ。それにここでは同じクレルのプリとの組合せだけに、一段とその魅力は冴える。オーケストラのテクスチュアは、餅肌のような、しっとりと滑らかで、ふくよかだ。ちょっと聴きにはやや細身で、線の細さを感じるほどデリカシーをもった音ながら底力も十分。ヴォーカル、ピアノの音色の機微も鮮かに鳴らし分ける。ジャズも過不足なし。

カウンターポイント SA-1 + クレル KSA-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 この優れたパワーアンプとの組合せは、正直にいって、どちらの良さも十分発揮されないもので、KSA100の高域の美しさも出てこないし、かといって、SA1らしい暖かい自然音の魅力ともいえない音になる。したがって、マーラーでは、オーケストラの帯域レンジに不満があるし、かといって、ロマンティックな表現に合った質感も不十分。ヴォーカルも、どこか把みどころのないもので、ジャズにはレンジの狭さがそのまま出てくる。

クレル PAM-2 + KSA-100

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新セパレートアンプ44機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★★
 生気にとんだ音をきかせてくれる。⑤のレコードでのフラウト・トラヴェルソのひびきの独自のかすれをこれほどなまなましく示した例は他にはなかった。また②のレコードでは音楽の流れのスピード感もよく示して見事であった。スレッショルドには感じとれなかったひびきのあたたかさがここにはあった。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★★★
 ④のレコードでは6人の歌い手のそれぞれの顔がみえるようななまなましさを示した。③のレコードでのベースの音が過度にふくらむのをおさえていたのは、このアンプの性能によるとみるべきであろう。①のレコードでも大編成のオーケストラならではのひびきの多彩さをあじわえた。
JBL・4343Bへの対応度:★★★
 ひびきの量感の提示ということでいえば、この組合せできけたものが今回の試聴でのベストであった。その一方で、⑤のレコードでのフラウト・トラヴェルソのフォルテとピアノでの音色の微妙な変化にも、ほぼ完璧に対応していた。ほれぼれときいた。見事の一語につきる。

試聴レコード
①「マーラー/交響曲第6番」
レーグナー/ベルリン放送管弦楽団[ドイツ・シャルプラッテンET4017-18]
第1楽章を使用
②「ザ・ダイアローグ」
猪俣猛 (ds)、荒川康男(b)[オーディオラボALJ3359]
「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」を使用
③ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
④「キングズ・シンガーズ/フレンチ・コレクション」
キングズ・シンガーズ[ビクターVIC2164]
A面2曲目使用
⑤「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア-アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用