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トリオ KP-7300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 質実剛健という表現を使いたくなる製品で、実用に徹した、いささか素気ない武骨な印象が損をしているが、ターンテーブルとアームおよびキャビネットという主要パーツを音質重視で検討したというだけあって、うわついたところのない再生音はこの価格で出色。好みのカートリッジを加えた方が良さがわかると思う。

トリオ KP-7300

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオから新しく発表されたプレーヤーシステムは、比較的にローコストなモデルだが、プレーヤーシステムの基本であるプレーヤーベースをはじめ、トルクの大きなダイレクトドライブ用モーター、重量級のターンテーブルの採用などに代表される、使用部品を充分に検討して開発されたオーソドックスな製品である。
 プレーヤーペースは、プレーヤーシステムの性能を向上させるための重要な部分であるが、ここでは、骨組みとして、石綿を加えて高圧成形したコンクリート一種であるMC材を使用している。この材料は、吸水率、含水率が低く、剛性が高い特長をもち、外部振動に強いシステムとすることに大きく役立っている。また、ベースの底板部分は、1・6mm厚の鉄板を使用しているのも、この部分の共振を抑えるための配慮である。また、ダストカバーは、スピーカーからの音のエネルギーを大量に受ける上面の肉厚を厚くし、各コーナーの内側は、三角形の肉もりを施して剛性を上げ、材料には振動減衰率が大きいアクリル材を使用するなどして機械的な強度の高いカバーとしている。また、プレーヤーシステムの幾何学的中心に重心がないと、高い周波数と低い周波数の2つの共振点が出来ることになり、防振性の上で大きなマイナスになるとの見解から、ダストカバーの開閉時にも、総合的な重心の移動を極小にできるような、カバーの重心分布が考えられているとのことである。
 ターンテーブルは、最大トルク1・1kg・cmの20極・30スロットDCサーボモーターで、ダイレクトに駆動されるが、ターンテーブル自体は、直径33cm、重量2・6kgのアルミ合金ダイキャスト製で、ゴムシートを含む慣性質量は、440kg・㎠と、このクラスの製品としてはかなり大きな値を得ている。なお、ゴムシートは、肉厚が6mmあり、ターンテーブルの分割共振を抑えているとのことだ。
 トーンアームは、S字型のスタティックバランス型で、パイプ部分は、直径10mm、肉厚1mmのアルミパイプを硬質アルマイト仕上げし、パイプのネックは、真鍮材で作った充分な長さのパイプで固定してある。ヘッドシェルは、アルミダイキャスト製で、フィンガー部分も一体成型として強度を高めたタイプである。
 付属カートリッジは、デュアルマグネットタイプのMM型で、音の傾向としては帯域が広く、とくにパルシブな音が多いジャズ、ロック系の音楽に適した、ガチッとした音をもっているとのことである。
 なお、プレーヤーベース部分のインシュレーターは、再生音、耐ハウリングの両面から検討された新開発のタイプで、上下方向の防振はもとより、横方向および回転軸の動きを制動する特長があるデュアルサスペンション方式である。ストロボスコープは、付属の小型円板をターンテーブルのスピンドルに入れて使うタイプである。