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パイオニア Exclusive P10

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 P3のジュニア版として開発されたマニュアル機だ。ターンテーブルは2・8kgの低圧鋳造製で防振材付。アームは、インテグレートシェル付の直線型と、S字型にパイプの交換が可能である。音は緻密でスケールが大きく、高価格製品が多くなった高級機のなかの標準モデルといってよい。

パイオニア Exclusive P10

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/全体的な印象は、大掴みにはP3と似たところがある。たとえば低音の土台のしっかりしていること。中〜高域域で、ことさらに解像力のよさを誇示するようなきわどい音を鳴らすようなことがなく、安定感のある大人っぽい雰囲気の音を聴かせる点、など。少なくとも、今回テストしていない20万円前後のクラスと比較すれば、やはりこれは相当に水準の高い音を聴かせる製品といってよい。
 しかし、ここにP3というおそろしく出来栄えの良い兄貴があると、ついそちらと比較してしまう。P10のあとにP3を聴くよりも、P3のあとにP10を聴くほうが、その音の差はよくわかる。たとえば、音の品位。P3よりも楽器の質が1ランク下がった印象になる。P3よりも音が少し乾いて、少し響きが不足し、P3で聴いているときの、ついそのまま楽しんでしまいたくなるほどの楽しい雰囲気が、何となく半減した感じになる。ひとつひとつの要素は「ほんの少しずつ」であっても、その集積では、P3と想像以上の差になって聴こえる。23万円という価格の開きを考えたとき、この差をどう評価するか、ここは個人差の問題といえるが、もし私が選択をせまられれば、どんな無理をしてもあと23万円、借金してでも作ってP3の魅力を買う。
●デザイン・操作性/一見したところは似ていても、P3の蓋のガラスはプラスチックになり、スタート・ストップと速度切替スイッチがターンテーブル周囲の飾りリング上に移る。蓋の軽いのはかえって使いやすいが、スイッチは操作性・感触ともP3にやや及ばない。モーターのトルクも違うし、アームも似ているが全く違う。P3独特のインシュレーションが省略されている点も、音質の違う要因ではないだろうか。並べてみると、大きさもひと廻り小さく、P3より軽快、逆にいえば重厚さが後退している。

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(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

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