井上卓也
ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より
パワーアンプ的な感覚のパワフルなプリアンプとして定評の高いC7のリフレッシュモデル。独特の線が太く彫りの深い音は、いちだんと細くシャープに変り、現代のプリアンプらしいソノリティを身につけたようだ。コントラストの弱い音のプリアンプが主流を占めている現在では、この少し古典的な音の魅力は計り知れない。
井上卓也
ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より
パワーアンプ的な感覚のパワフルなプリアンプとして定評の高いC7のリフレッシュモデル。独特の線が太く彫りの深い音は、いちだんと細くシャープに変り、現代のプリアンプらしいソノリティを身につけたようだ。コントラストの弱い音のプリアンプが主流を占めている現在では、この少し古典的な音の魅力は計り知れない。
井上卓也
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より
優れたオーディオコンポーネントは、基本的な設計思想が根底をなすことを如実に示した、異例に設計・開発ポリシーが際立ったプリアンプである。現代の主なプログラムソースであるCDにおいて、そのプレーヤーの定格出力は2Vと高く、さらに出力電圧の高いモデルが多くなっている。こうした現状の中、プリアンプは平均的な再生音量において、単に入力信号を減衰させるアクティヴなアッテネーターとして動作しているにすぎない。これがプリアンプ不要論となり、バッシヴ型アッテネ一夕一に魅力を感じるオーディオファイルが多くなっている。これは、高級プリアンプが高価格にならざるを得ない点から生じた、経済的な要因だけではないであろう。
とくに、音質最優先設計で付属機能を最低限としたプリアンプでは、プリアンプを使う最大のメリットである高SN比が保たれる特徴を承知していても、なおかつ残る疑問だ。
エクスクルーシヴC7では、機能を省いた簡潔なプリアンプを基本とし、単なる音質重視ではなく、ステレオならではの左右チャンネルの伝送誤差をゼロとする設計思想に基づいて設計・開発された点が見事である。幾何学的左右対称はもとより、機械的、熱的、磁界的な左右対称性を求めながら、信号伝送はアンバランス優先とし、バランスは入出力ともにトランス対応とする設計は明解である。同時に企画・開発されたAVコントローラーを併用すれば、リモートコントロールが可能となるシステムプランも卓越している。
内部の配線処理はコネクターを全廃し、すべて1ヵ所ごとにネジで配線を固定し、接続する手法を採用。異例ともいえる入念な処理だ。筐体関係の仕上げや精度も非常に高く、音の傾向とデザインがマッチしていることは高級機ならではの格調の高さであろう。正統派らしく色づけが少なくニュートラルな音をもつが、その力強い表現力はプリアンプ的な印象というよりは、パワーアンプ的なものがあり、これが本機ならではの独自の魅力となっている。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」(1993年3月発行)
「ハイエンドアンプでProject K2 S9500を堪能する」より
このアンプは、入出力信号系は不平衡型がメインで、平衡型にはすべてトランスで変換する設計であるため、結線はすべて不平衡で行なう。各アンプの設置場所は標準位置である。
信号を加えた最初の音は、小さくまとまった、ひっそりした音で、それなりにまとまった音を聴かせる。
数分間ほど経過すると、中低域の量感が加わり、全体に柔らかく、おとなしい音となり、中高域の見通しがよくなる。
時間的にはゆっくりしたテンポでウォームアップは進み、聴感上で不足した部分が徐々に埋められていくように内容が濃く、充実していく変り方で、従来とは少し異なったウォームアップの傾向であり、最近のトップランクのアンプにみられるタイプだ。
ウォームアップは素直なタイプで、ゆるやかではあるが一定の方向に進み、音の細部が少し見通せる音になるのは、おおよそ1時間は必要だ。その後は音場感的な情報量が増し、奥行き方向のパースペクティヴがナチュラルに感じられるようになると、ほぼ2時間は過ぎていることになる。
S9500は、音場感的な再生能力は抜群で、とくに奥行き方向の拡がりの見事さは、これならではの魅力であるが、逆に言えば、アンプの音場感的な再生能力をチェックするためには、最適なスピーカーシステムであろう。
低域は柔らかく、音の芯の甘さは残るが、アンプとスピーカー間はほどよくコントロールされているようで、かなりしなやかな低域の表情を聴かせる。
中域以上も素直な音をもつため、このアンプ専用に部屋とスピーカーのセッティングを行なえば、スピーカー後の壁を超えてタップリと拡がるプレゼンスの良さと、しなやかで力感にほどよく裏付けされたナチュラルな音を手にすることができよう。
TV電波などの外乱には、パワーアンプにやや弱い面があるようで、高域の伸び切った感じや、上下方向の音場感で高さを聴きたいむきには、少し不満を残すが、この試聴室の条件の厳しさでのことであり、一般的には問題ではなかろう。
安定型で茫洋と鳴りやすいスピーカーを、柔らかく、豊かな音ながらほどよくシェイプアップし、いかにも2ウェイ型ならではの爽やかさ、鮮度感の高さを持つ音として聴かせるが、内面的にはストレートに押し出す強靭なエネルギーをもっているようで、時折グイッと押し切るようなダイレクトな表現が感じられることがある。平衡入出力では、ややナローレンジの管球アンプ的な音に変り、油絵的な陰影の深さは別な味だ。
井上卓也
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より
現在のオーディオアンプでは、最先端のエレクトロニクスの成果である優れた性能をもつ信号増幅系のアンプ設計が最大のポイントとされているが、振動に弱いCDプレーヤーの例からみてもわかるように、メカニズム的に高度な内容を備えた筐体構造が必須の条件として要求されることになる。いかに優れた性能をもつアンプであっても、筐体構造に問題があれば、アンプ本来の性能が発揮できず、結果として良い音質も望めぬことは明白な事実である。この意味から、現代のアンプは、エレクトロニクスとメカニズムが表裏一体となったメカトロニクスの産物と考えるべきであろう。
コントロールアンプの筐体構造に、パワーアンプ的な考え方を導入して開発されている点が、エクスクルーシヴC7の最も魅力的なところである。筐体構造は、重量級軽合金ダイキャスト製のメカニカルベースを中核にし、筐体内部を上下に2分割、下側に電源系と音量調整、入力切替などの制御系を、上側に機械的にも電気的にも対称構造のデュアルモノーラル構成とした、左右チャンネルの信号増幅系アンプが収納されており、フロントパネル側に左右チャンネル用2個とコントロール系用1個の電源トランスが置かれている。この構造を採用した理由は、ステレオ信号を完全に対称条件で増幅することが本機の最大のポイントとなっているからだ。完全対称のアンプ系を機械的・振動的に対称の位置に置き、かつ磁気的にも同条件とする目的によるものであり、電源のフィルターコンデンサーも、+用−用の箔の巻き方を逆方向としているのは、完全対称に対する徹底したこだわりの現われとして注目したい。
C7は、パワーアンプの音の表現に使われるスピーカーを引き締め、余裕をもって鳴らすドライブ能力が最大の魅力だ。コントロールアンプでスピーカーの鳴り方が一変するのは聴き手を驚かすに違いない。
井上卓也
ステレオサウンド 100号(1991年9月発行)
「エキサイティングコンポーネント」より
パイオニアの最高級オーディオコンポーネントEXCLUSIVEシリーズは、昭和49年に市場に導入されて以来、アナログプレーヤー、チューナー、コントロールアンプ、パワーアンプ、そしてスピーカーシステムなどのラインナップを揃え、それぞれのモデルが各時代のトップモデルとして話題を呼び注目を集めてきた、いわばパイオニア・オーディオの象徴であり、マイルストーシともいうべきシリーズである。その最新モデルとして、昨年の『全日本オーディオフェア』で、その存在が明らかになったコントロールアンプEXCLUSIVE・C7がついに発売されることになった。
設計の基本構想は、左右2チャンネルの信号系で成り立つステレオアンプのステレオ伝送誤差をゼロとすることである。この考え方は、ステレオアンプとしては常識的なものと考えられやすいが、各種の条件を交えて現実の商品として実現することは、予想外に至難な技である。
左右が独立したステレオ信号を入力し、そのままの姿・形で増幅し出力することができれば、左右の信号に伝送差がないことになるが、この簡単明瞭なことを実現するための条件は数多く存在する。左右チャンネルの条件の対称性が重要な要素となるが、電気的、機械的な対称性をはじめ、磁気的、熱的な対称性などの視覚的には確認し難い条件までクリアーしなければならない。
まず、コントロールアンプのベースとなる筐体構造は、いわゆるデュアルモノーラルコンストラクションと呼ばれている設計であるが、一般的に採用されているデュアルモノ風な設計ではなく、本機はかなり本格的な徹底したデュアルモノーラルコンストラクション設計で、左右チャンネルの対称性は限界的なレベルに到達している。
従来の木製ケースに収めたクラシカルなEXCLUSIVEのデザインイメージは完全に一新され、現代のオーディオアンプに相応しい装いを備えた新EXCLUSIVEのデザインは、視覚的にも対称性のあるシンプルなパネルレイアウトを特徴とする。中でも、重量級パワーアンプに匹敵する14mm板厚のアルミ製フロントパネルは、重量級コントロールアンプともいえる独特の迫力を備えている。
アンプの基盤であるシャーシは、筐体を上下に2分割したアルミダイキャスト製の重量級ベースであり、下側はボリュウムコントロールや入力切替スイッチなどをリモートコントロールする各種の制御回路用スペースで、上側は基本的に厚いアルミ材で左右に2分割された左右チャンネル用アンプと電源部用スペースにあてられている。
ここで基本的にと表現した理由は、フロントパネルの近くに3個配置されている電源トランスの中央の1個が、ボリュウムや切替スイッチをコントロールする制御系用電源トランスであるからである。ちなみに、この制御系用トランスも当然のことながら左右チャンネル独立の巻線を備えており、左右感の干渉を避けた設計だ。
左右チャンネルのアンプ、電源系のレイアウトは、基板上のアンプの部品配置、内部配線に至るまで対称性が追求されており、レイアウト的に左右の対称性を欠く部分は、フロントパネルのボリュウムコントロールと入力切替スイッチ関係の部品のみであろう。
C7で新しくテーマとなった磁気フラックス分布の対称性の確保は、発生源となる電源トランスに新開発の低漏洩磁束電源トランス採用で、フラックス分布を左右均一にすると共に、予想以上に問題となる電源用電解コンデンサーに+側と−側で巻方向を逆にし、ケースを絶縁しグラウンド電位に落とすコンプリメンタリーペアコンデンサーを開発した点に注目すべきである。
アンプ系の構成は、必要最少限の構成とし、MM専用の利得35・5dBのフォノイコライザー段の出力と、CD、チューナーなどのハイレベル入力を受ける利得0dBのバッファー段の出力にボリュウムコントロールがあり、さらに利得0dBのバッファー段と、利得16・5dBの低出力インピーダンス設計のフラットアンプがあり、この段のバランス入力部の+と−を使いアブソリュートフェイズ切替としている。
アンプとしての基本構成は、不平衡設計であるが、平衡入出力には、トランスが入力系と出力系に設けられスイッチ切替で対応する設計である。なおキャノン端子の接続は、3番ホットの仕様である。
バッファーを含むアンプは、新開発のアルミベースの基板に集積化されているハイブリッドICで、熟的な安定度の向上と外部ノイズに対するシールド効果に優れた特徴がある。
振動モードの対称性では、音圧や床振動などの外部振動に対してはアルミダイキャストシャーシで対処し、電源トランスやコンデンサーなどの内部振動には、基板支持部分のダンピング材でフローティング構造とし、加わった振動を適度に減衰させ左右チャンネルのモードを揃えている。
ボリュウムコントロールは、信号が直接通る経路であるため、アンプの死活を分ける最も重要なポイントとして、その選択にはさまざまな配慮がなされるが、C7ではフロントパネルのボリュウムコントロール用ツマミの位置を検出し、ステッピングモーターと電気的に絶縁されたカップラーで駆動するステップ型アッテネーターで音量調整を行なっている。ステッピングモーター用ジェネレーターは、ボリュウム位置が固定している場合には出力が止まる設計で、この部分の音質への影響を避けている。
入力切替スイッチも、リモートコントロール動作で、PHONO、チューナー、5系統のAUX入力、2系統のテープ入出力および2系統のバランス入力は、ホット側をノンショートステップ型、グラウンド側をショートステップ型のモータードライブによるロータリースイッチで切替えており、多系統の入力を接続して使うステレオコントロールアンプで問題となる、接続機器からのグラウンドを経由するノイズや、空間からの外来ノイズの混入を防ぐ設計である。
その他、アンプ内部の配線の引き回しによる相互干渉や数多くのノイズ発生源は、厳重な内部シールドが施されており、ハンドメイドを特徴とするEXCLUSIVEならではの入念な作り込みが見受けられ、その徹底したノイズ対策は世界的なレベルで見ても従来の概念を超えたオーバーリファレンス的な領域に到達している点は特筆に値する見事な成果である。
まず、平衡入力で使う。力強く、密度が濃く質感に優れた低域ベースの安定感のある音と、やや奥に広がるプレゼンスが特徴である。帯域バランスは程よく両エンドを整えた長時間聴いているのに相応しいタイプといえる。
入力を不平衡に替えるとナチュラルに伸びたレスポンスとなり、鮮度感が向上し、音場感も一段と広がり、音像定位も前に出るようになる。
出力も不平衡とすると低域レスポンスは一段と伸び、柔らかく十分に伸びた深々と鳴る低音に支えられた素直な音は素晴らしい。音場感情報は豊かで音像は小さくまとまり、浮き上がったような定位感だ。プログラムソースには的確に反応を示し、録音の違いをサラッと引き出して聴かせる。素直なアンプではあるが、パワーアンプに対する働きかけは予想以上に積極的で、スピーカーはパワーアンプの駆動力が向上したように鳴り万が一変する。これは数少ない異例な経験である。
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