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テクニクス SP-10MK2+EPA-100+SH-10B3

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 声のきめこまかさなど、思わず耳をさばだててしまうほどだ。音像は幾分大きめだが、それとても過剰ということではない。リズムの切れの鋭さ、あるいはアタックの強さなども見事に示す。

●デンオンDL103Sで聴く
 ひびきは大変にみずみずしい。声とオーケストラのバランスなど、いささかの不自然さもない。はった声が、硬くなったり、薄くなったりすることなく、自然にその力を感じさせる。

●シュアーV15/IVで聴く
 ピッチカートの誇張のないひびきと、ホルンによるふくらみのあるひびきの対比など、実に見事だ。このカートリッジのよさが十全にいかされたという印象だ。すっきりしていて、力感の提示も充分だ。

テクニクス SP-10MK2 + EPA-100 + SH-10B3

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より
 見事なプレーヤーシステムというべきだろう。それぞれのカートリッジのチャーミング・ポイントを、無理なく、自然に、ひきだしている。このカートリッジには、こういうところもあったのかといったようなこと(たとえば、シュアーV15タイプIVできけた弦楽器のひびきのなめらかさなど)も、思ったりした。
 余分なひびきがまといついてしまうとか、どこかで誇張されるというのは、とりもなおさず、そのプレーヤーシステムに、無理、背のびがあるからだろうが、そういうところをまったく感じさせないプレーヤーシステムだった。ひとことでいってしまえば、それだけプレーヤーシステムとして安定しているからということになるだろう。
 今回試聴したプレーヤーシステムの中で、きわだってすぐれていた。ただ、もし、これで、低い方の音が、もう一歩ふみこんできて、積極的にその力感を示せば、本当にいうことがないのだが、その点で、多少上品にすぎたかなと思わなくもない。このみがきあげられた、よごれのないひびきは、実に魅力的だったということにいささかのためらいもない。

テクニクス EPA-100

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トレースは素晴らしくスムーズ。カートリッジのコンプライアンスに応じて低域特性をコントロールできる可変ダンピングのアイデアは秀抜である。全体によくこなれた構造で、動作は繊細でありながら脆弱なところがなく、使い手に安心感を与える。ただこの価格ならデザインをもう一段リファインして欲しい。

テクニクス EPA-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 おそろしくこったトーンアームである。少々こり過ぎて、ダンピングコントロールなどは、一般にどこまで使いこなせるかが不安でもある。しかし、ここまで精巧に作られたトーンアームを持ち、使う喜びは、また格別であろう。デザイン的には私個人の好みとはいえないが、見るからにエンジニアの情熱と、仕上げの緻密さが納得できるであろう。ユーザーのほうも、作者と同じようなこり性の人であるべき製品。

テクニクス SP-10MK2 + EPA-100 + SH-10B3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 モーターが回転すればメカニカルな振動を発生する。それがターンテーブルに伝われば、ピックアップがそれを拾ってスピーカーからゴロゴロと雑音が出る……。古いフォノモーターではそれが常識だったから、駆動モーターのシャフトとターンテーブルのあいだにゴムタイヤのような緩衝材を介していわゆるリムドライブにしたり、弾力のあるベルトによってベルトドライブしたりして、モーターの振動がターンテーブルに伝わらないような工夫をした。松下電器が、駆動モーターをターンテーブルに直結させるダイレクトドライブの構想を発表したころは、まだそういう古いフォノモーターの概念が支配していた時代だった。
 しかし実際に市販されたSP10は、そんな心配を吹き飛ばしたばかりでなく、回転を正確に保ち回転ムラを極減させることが、いかに音質を向上させるかを教えてくれた。それ以後、日本の発明になるDDターンテーブルが世界のプレーヤー界を席巻していったいきさつは周知のとおり。
 SP10は、たしかに性能は優れていたが、デザインや仕上げや操作性という面からは、必ずしも良い点をつけられなかった。アルミニウムダイキャストを研磨したフレームは、非常に手間のかかる工作をしているにもかかわらず製品の品位にブレーキをかけている。ON−OFFのスイッチの形状や感触がよくない。速度微調ツマミの形状や位置やフリクションが不適当で知らないうちに動いていしまう。ゴムシートのパターンがよくない……。
 改良型のSP10MkIIで、クォーツロックのおかげで微調ツマミは姿を消した。ON−OFFのスイッチの形は変らないが感触や信頼性が向上した。ターンテーブルやゴムシートの形がよくなった。性能については問題ないし、トルクが強く、スタート、ストップの歯切れの良い点もうれしい。少なくとも特性面では一流品の名を冠するのに少しも危げがない。
 ただ、MKIIになってもダイキャストフレームの形をそのまま受け継いだことは、個人的には賛成しかねる。レコードというオーガニックな感じのする素材と、この角ばってメタリックなフレームの形状にも質感にも、心理的に、いや実際に手のひらで触れてみても、馴染みにくい。
 この点は、あとから発売された専用のキャビネットSH10B3の、やわらかな肌ざわりのおかげでいくらかは救われた。このケースは素材も仕上げもなかなかのものだ。
 新型アームEPA100。制動量を可変型にしたアイデア、軸受部分の精度と各部の素材の選び方などすべてユニークだが、それにも増して仕上げの良さと、むろん性能の良さを評価したい。部分的にはデザインの未消化なところがないとはいえないが、ユニバーサルタイプの精密アームとして、SMEの影響から脱して独自の構想をみごとに有機的にまとめあげた優れたアームといえる。このアームがMKIIになり、SP10がMKIIIになるころには、どこからも文句のつけようのない真の一流品に成長するのではないだろうか。

テクニクス EPA-100

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスの新しいユニバーサル型トーンアームは、可変ダイナミックダンピング方式という大変にユニークなメソッドを採用した、精密級の精度と仕上げをもつ高性能アームである。
 軸受構造は、ほぼ矩形の内輪と外輪を組み合わせたジンバル方式が採用され、高感度化を実現する目的で、摩擦係数が小さい、スーパーフィニッシュ・ルビーボールを5個使うベアリングを4個組み込み、共振制御式としては初動感度5mgという値を誇っている。
 パイプ部は、チタンで、アルミとくらべて質量を85%減少でき、内部損失が大きく共振が少ないメリットがある。さらに、この材料は特殊窒化法により硬化処理がおこなわれ、機械的強度を約1・6倍に高めて、軽実効質量トーンアームとしている。なお、ヘッドシェルは、粘弾性剤で防振し、無共振化したタイプで、オーバーバング調整のカーソル機構を備えている。
 本機の最大の特徴である制動可変型ダイナミックダンピング機構は、従来不可能であった使用カートリッジのコンプライアンスの変化による、トーンアームの低域共振周波数の変化に対応する制動を、任意にコントロールすることができる。これにより、各種の高性能カートリッジを、もっとも適した条件で使用することができる。つまり、ユニバーサルアームの本来の意味での発展型ということができる。実際のメカニズムは、後部のウェイトの内部に組み込まれた可動ウェイトをシリコンオイルダンプのスプリングと2個のマグネットという2組のダンピング機構で浮動保持し、アームの低域共振を制動するタイプで、共振制動周波数はセレクターにより選択可能である。なお、セレクター目盛は使用カートリッジのコンプライアンスにより決まることになる。