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デンオン DA-307

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

やや甘さはあるが耳ざわりな音を完全にコントロールした製品。

デンオン DA-307

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンの新製品は、ダイナミック・ダンピング方式を採用した、スリムなユニバーサル型トーンアームである。
 ダイナミック・ダンピング方式は、簡単にいえば、トーンアームの軸受を中心として、従来は、後のバランス用ウェイトとその軸であるアームの後部をゴムなどのクッションを介してフレキシブルに結合したのと逆に、ヘッドシェルを拭くんだ、アームの前の部分を、回転軸受に近い部分で、フレキシブル結合した方式と考えてよい。
 この方式の採用により、カートリッジの針先コンプライアンスとトーンアーム自体の等価質量で決まる低域共振を効果的にダンプすることができ、レコードの音溝にたいする追従能力が一段と向上している。したがって、オイルダンピング型アームのような追従性不良による低域の混変調歪や一点支持のための使いにくさ、オイル漏れがないというメリットがあり、さらに、プレーヤーキャビネットなどから伝わりやすい振動からカートリッジを保護でき、ハウリングにも強いために、使用するカートリッジの性能を充分に引出し、大音量再生が可能になったとのことである。
 軸受部は、ピボットベアリングとミニアチュアベアリングを採用した高精度、高感度設計で、感度は、水平、垂直ともに0・025g以下である。
 バランス用ウェイトは、太い筒型の後部アームの内部を移動するタイプで、針圧目盛は0・1gステップ、1回転が2・5gになっており、適合カートリッジ自重範囲は、5〜10gである。
 付属するヘッドシェル、PCL−5は、自重約6gのマグネシュウム合金ダイキャスト製で、DL−103を付け、針圧2・5gのときの、アームの等価質量は、20gと発表されている。
 付属機構は、オイルダンプタイプのアームリフターと、マグネチックコントロール方式のインサイドフォースキャンセラーがある。このインサイドフォースキャンセラーは、無接触方式であり、かつ、レコード位置によるインサイドフォースの変化にも対応することができる。また、アームのバランス調整時などでは、インサイドフォースのキャンセル量をコントロールするツマミを引出せば、完全にフリーの状態とすることができる。このタイプは、無接触型のため、クリティカルなカートリッジを使用中にでも、インサイドフォースのキャンセル量を演奏中に細かく調整できるメリットがある。
 このトーンアームは、パールトーンに仕上げてあるが、この仕上げが、従来のデンオンのアームにくらべても、格段に優れており、大変に素晴らしいできである。実用上では、各部の動きは滑らかであるが、独得なメカニズムをもっているために、シェルを交換したときや、アームのバランス調整をするときなどでは、何とはなく、グニャグニャして最初は少し使い難いようだ。