Tag Archives: CS3000

パイオニア CS-3000A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 以前のモデルCS3000を岡、菅野両氏と試聴した際(本誌23号)には、中音と高音の良さに対して低音がよくないという点で3人の意見が一致していた。そういう感想を持ったのは私たちばかりでないらしく、あれから間もなくウーファーのユニットの設計を変えたCS3000Aになった。中音や高音のユニットは以前のままらしく、23号でも指摘した、良い意味で金属質の光沢を持った特有の音色は相変らずで、私はそれを、ガット弦さえも金属弦に変えたような響き方だが、それは必ずしも不快な音でないばかりか一種の爽快感さえあると表現した。ところで低音だが、改善されて欲しいと期待を抱いたにもかかわらず残念ながら今回の低音も前回の音と本質的には変っていない。全体に重く、中音にかぶってピアノのタッチやバリトンの低音領域を鈍く太い音像で表現する。軽く、明るく弾みのある生き生きした表情で鳴ってくれれば、中~高音域の魅力をもっと生かすことができるだろうにどうにも惜しい。レベルセットは前回と同じくスイッチ切替の中音をc、高音をeのポジションにセットしたときがまあまあのバランスだった。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆

パイオニア CS-3000

パイオニアのスピーカーシステムCS3000の広告
(スイングジャーナル 1972年3月号掲載)

CS3000

パイオニア CS-3000

菅野沖彦

スイングジャーナル 1月号(1971年12月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 CS3000というスピーカー。実にぜいたくな製品だ。そして、それは、ただぜいたくだけではない。随所に新しい試みが見られ、いかにもスピーカーの専門メーカーとしての遊びが余裕たっぷりに感じられる。遊びというのは表現が悪いかもしれないが、実はオーナィオ製品にもっとも大切な要素だと私は思っている。CS3000の遊びについて、目についたところを拾ってみよう。まず外側から。ローズウッド・フィニッシュのエンクロージュアーは実に見事な仕上げだ。たたいてみればわかるが、その強固なこと、木工技術のち密なこと、見るからに風格が滲みでている。前面グリルの生地がいい。安っぼいサランのイメージはまったくなくなり、感触のよいクロスのもつ重味が味わえる。これを取はずしてみると、そのフックがまた実にこった代物。マジック・テープなどでペッたんこというのとはわけがちがう。グリルをはずすと、3ウェイの全ユニットはバッフル前面に突出している。周囲がフレイムでけられディフレクションの影響を受けることはまったくない。いかにも優れた指向性をもっていそうなユニットを十分生かした箱作りだ。もちろんバッフル前面も美しいフィニッシュ。まず目につくのが、異様な星形のデュフィーザーをもったドーム・ツィーターと、かなり大型のドーム・スコーカーである。よくよく見ると、このミッド、ハイ・レンジ用のユニットはただものではない。特にそのスコーカーのつくりのこっていること。形状としては前面にイクォライザーをもったドームであるが、引きもののフレームがいかにもマニア好みの遊びに溢れていていい。ドーム・ラジエーターの周囲になにやら変った針金がでていて接着剤がべたべたついている。根元はビニールかゴム質の制動機らしきものがかぶせられていて、これがドームのサスペンションだ。円形ドームの接線上に、このワイアーが5ヶ所でサポートされているわけで、従来よく使われているダンパーの類とは全くちがう。つまり、ワイヤー・サポートというわけで、従来のダンパーのように面ではないから、ダンパー自体が音のエネルギーをラジエイ卜することがないし、ヒステリシスのないフリー・サスペンジョンというわけだ。当然、ダイアフラムは高いコンプライアンスで吊られているから、リニアリティがよくセンシティヴなレスポンスが得られそうだ。それにしても、このユニットは大量生産でどんどん作れるものではなさそうで、いかにも、高級品としての手造りを余議なくさせられそうだ。一個一個丹念に組まれ、かつ、調整されなくてはなるまい。ドームの直径は75ポール、材質は50μのジュラルミンだ。スコーカーとしては口径が大きいが、できるだけ低いところまでカバーしてウーハーの負担を軽くしようという狙いだろう。クロスオーバーは700Hzにとられている。マグネットは同社の30cmウーハーPW30と同じものだというから、この振動系には十分なドライヴが期待できるだろう。ウーハーは、30cmのハイ・コンプライアンス型で、エッジには発泡ウレタンを使用している。温度変化や経時変化に優れた特性をもった新しい材質だというが、この点はそこまで使ってみたわけではないから不明。コーン紙の中ほどにリング状にダンプ材が張りつけられているが、このあたりはいろいろカット・アンド・トライで苦労をした跡のように感じられる。そしてエンクロージュアー内部がまたこっていて補強と定在波防止板兼用という厚い穴あき板が内部を二分している。このメリット、ディメリットはどうなのか、少々疑問も感じないわけではないが、設計者としてはあえてこれだけのことをする理由を認めた上でのことにちがいない。
 音質はすばらしく澄んだ明るい中高域が印象的で、その美しさは特筆してよい。歪感のない。まるで大輪のダリアのように華薦で魅力的なのである。指向性のよいことも無類でステレオフォニックなプレゼンスが実によく生きる。ただし、どうしてもウーハーとの音色的なバランスについての不満に触れないわけにはいかない。完全密閉のエアサスペンション・タイプ特有の重厚な低音の音質とそののびは優れているが、この中高域は、大型エンタロージュアーの、のびのびとした低音とつなげてみたい衝動にかられたのである。特に、入力をしぼった時のローレベルでのリニアリティが、中高域に比してウーハーが明らかにダルである。これは、このシステムに限ったことではなく、この形式のシステムに共通した特質というべきものだろう。しかし、スピーカーのパイオニアという面目を見せつけられた力作で、同社のオーディオ魂が感じられて久し振りに爽快な気分であった。

パイオニア CS-3000

パイオニアのスピーカーシステムCS3000の広告
(スイングジャーナル 1971年12月号掲載)

CS3000

パイオニア CS-3000

パイオニアのスピーカーシステムCS3000の広告
(スイングジャーナル 1971年11月号掲載)

CS3000