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パイオニア CS-R30

岩崎千明

スイングジャーナル 2月号(1973年1月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より

 日本の代表的スピーカー・メーカーとしての実績こそ、その本来のキャリアーであり肩書きでもあるパイオニアはその名誉と誇りを賭けて、この一年間強力な布陣をガッチリと固めた。
 そのピークに位置するのがCS3000であり、そのピラミッド型の需要層に対して分厚い中腹を狙うのがRシリーズと名付けられた新シリーズである。
 しかもこのRシリーズ、狙いを若いジャズ、ロック・フアンに合わせた点も注目せねばならぬ所だ。
 スピーカー・メーカーとしての貫禄をシステムのワイド・ヴァリエーション化という強力な手段で見せることに積極的姿勢をとったパイオニアの、新らたに獲得されるべき若いファンのためのスピーカーは、Rシリーズという名の通りに、まったくイメージを異にしたニュー・サウンドである。
 パイオニアのシステムに共通する技術は、まず第1にARのアコースティック・サスペンジョンに匹敵する「密閉箱と、超低f0(エフゼロ)ウーファーの組合せ」、第2には、ドームラジエターに代表される中高域の超ワイド指向性だ。
 Rシリーズにおいては、この2つの技術は大きく転換した。転換ではなく、前進というべきか。第1の密閉箱は、チューンド・ダクト型と呼ばれる変形バスレフレックス型になり、米JBLのランサー・シリーズと同じ方式となった。これによって、従来の低域限界は一段と重低域にまで拡大され、深々とした低音は、たっぷりとエネルギーを満たして、音のスケールを加えることになった。
 Rシリーズのもうひとつの特長はブックシェルフながら中音、高音にホーンを採用することを一応の前提とし、しかも指向性の点でも十分な配慮をしている。
 というのはホーンの唯一の欠点である指向性を、マルチセラー・ホーンによって大幅に改善した中音用を用いたR70。高音用はホーン開口を極小化して高域までも指向性を改善している。
 つまり、Rシリーズの狙うものは、国産サウンドからの脱皮であり、今後増えるに違いない脱国産ミュージックのファンのためのサウンドなのだ。
 ジャズやロックの強烈なエネルギーを、楽器のサウンドそのものを生々しい形で再現しようと志ざす若い音楽ファン、オーディオ・マニアのサウンド指向が、従来の国産スピーカーの頭脳的サウンド・パターン、品の良い繊細な音作りと路線と異にするものであり、それをはっきりと意鼓したポジションにRシリーズの存在意義があるのだ。
 CS−R70がずばり、これに応えるシステムとしてそびえ立つピークであればR50はその隣りに位置する副峰であり、そのために中音ホーンこそ用いていないが、コーン型としR70より品をよく従来の音作りに近いながらRシリーズと呼ばれるにふさわしい音を意識したサウンド・パターンである。
 さらに、R70と対称的位置に接しているのがR30である。
 R30はR70直系の音作りで、聴きやすさはやや小型ながら一段とポピュラー向きともいえる。
 つまり、若い初級的ジャズ・ファンにとってはRシリーズ中もっとも抵抗なく受け入れられるもので、しかも、従来のあらゆるパイオニアのシステムにもまして、迫力と鮮麗さとを加えていることを知るべきだ。
 しばしば「ジャズ向き」という呼び方に区別されるスピーカーを聴くと、その多くは、高音にぎらぎらときらめく独特のサウンドがそのままではクラシック音楽を聴くには耐えられないのが普通だ。むろん、こうしたスピーカーが決して「優れた」スピーカーでもなければ、誰にも推められるものでもないのはいうまでもない。
 しかし、パイオニアの創ったRシリーズのシステムは、さすがにこうした負い目は探しても見当らぬ。特にR30は、Rシリーズ中、もっとも買いやすい価格でしかも初歩的マニアにもその良さを知ってもらえるのは嬉しい。クラシックにも適応性を示すR50の良さにもまして、また本格的なエネルギー再現派のR70にもまして、R30が推められる第一の理由はこの辺にあるといえよう。

パイオニア CS-R30, CS-R50, CS-R70

パイオニアのスピーカーシステムCS-R30、CS-R50、CS-R70の広告
(ステレオ 1972年12月号掲載)

cs-r50

パイオニア CS-R30, CS-R50, CS-R70

パイオニアのスピーカーシステムCS-R30、CS-R50、CS-R70の広告
(スイングジャーナル 1972年8月号掲載)

パイオニア CS-X1, CS-E45, CS-R30, CS-R50, CS-R70

パイオニアのスピーカーシステムCS-X1、CS-E45、CS-R30、CS-R50、CS-R70の広告
(スイングジャーナル 1972年7月号掲載)

CS-X1