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ガウス・オプトニカ CP-3820

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 個々のサウンドのクォリティはかなり高いと思う。音のエネルギーの提示も、無理がなく、このましい。低い方の音も、適度にふくらむようなことなく、くっきりしまって、力を充分に感じさせる。❸のレコードでのバルツァのはった声が硬くならないあたりに、このスピーカーの実力のほどがしのばれるというべきかもしれない。ただ、音像は、いくぶん大きめだ。もし、音の風格というようなことでいうと、もう一歩みがきあげが必要のようだ。このスピーカーシステムの魅力ともいうべき独特の迫力を殺さず、全体としてのまとまりのよさを獲得するためには、使い手のそれなりの努力が必要だろう。また、その努力のかいがあるスピーカーシステムでもある。中域のはった、エネルギー感にみちた、このスピーカーシステムのきかせる音は、ちょっとほかではあじわえない、その意味では独自のものだ。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

ガウス・オプトニカ CP-3820

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ウーファーに関しては、JBLよりもガウスのほうがずっといい、という説が一部に流れている。たとえばベースのピッチカートで、音のこもる感じが少ない。歯切れがよくしかも量感がある。しかしその量感は、ガッツとか力という感じの、わかりやすい量感だ。それはおそらく、最近の、スタジオで創られるポップミュージックの低音を快く再生する音色なのだろう。反面、ポップス系でも、ウッドベースのナチュラルな胴のうなり、あるいはクラシックの、オーケストラの中でベース群の唱う感じ、を求めてみると、ここにはエレガントでしなやかな反応を望みたくなる。少なくとも私にはガウスの音からは、クラシックの音が想像しにくい。トゥイーターの領域ではいっそうそう。ハイエンドが伸びていないせいばかりでなく、トゥイーター自体の音色がやや個性が強く、弦のユニゾンのあのエレガントに漂う音を鳴らせない。ポピュラーの金管やパーカッションにはけっこう効果的であることはわかる。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:8
質感:8
スケール感:9
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:9
音の魅力度:7
組合せ:普通
設置・調整:普通

ガウス・オプトニカ CP-3820

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 アメリカ・ガウスのユニットをオプトニカがまとめあげた日米合作製品。ヘビーデューティのウーファーとコンプレッション・ドライバーの2ウェイ2ユニット構成で、4面仕上げのバスレフ型エンクロージュアでの大型重量級システムだ。ガウスの強力なユニットで2ウェイとなると、先入観としては少々ナローレンジでガンガン迫ってくるような、押しつけがましい音を想像されるかもしれないが、実際は全く違う。確かに、いかようにも迫力ある再生は可能という力強さと、大音量再生の安定性はもっているが、その音は決して荒々しくもないし大味でもないのである。このスピーカーが最も苦手と思われるヴァイオリン・ソロにおいてすら、自然で美しい弦の魅力が聴かれたし、ピアノの細かいタッチの妙もよく再現された。周波数レンジの点では、比較すればともかくも、決してこれで高域の不満が出ることはないし、ジャズやロックの再生は他の追従を許さないといってよい鮮烈さと力感がある。欲をいえば高音と低音の柔軟さだ。

総合採点:9