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エアータイト ATM-1

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円未満の価格帯のパワーアンプ26機種のパーソナルテスト」より

ナチュラルな帯域バランスと、適度にタイトでクリアーに立つ音像定位、ややアナログディスク的にまとまる音場感が特徴である。2系統の入力は、フロントパネル側が鮮度感が高く、いわゆる管球アンプらしさを要求する向きにはリアパネル入力がふさわしいだろう。カンターテ・ドミノは、アナログディスク的に適度にコントラストをつけて聴かせ、木管楽器独特の硬質さとまろやかさの対比も、らしく聴かせる。

音質:80
魅力度:85

エアータイト ATM-1

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 詳細は割愛するが、当然の帰結とでもいうべきオーディオのスペシャリティメーカーの誕生と、その第一弾製品の登場だ。簡単にいえば、旧某社の営業担当と技術系担当者が『音を出す測定器ではなく、音楽を楽しみ、使い込むに従い愛着のわいてくる製品開発』を会社設立の目的として発足したA&M社の開発による、管球タイプのステレオパワーアンプがATM1であり、エアータイトがそのブランドネームだ。
 ATM1は、管球タイプパワーアンプの最大のポイントである出力トランスには、放送局用や防衛庁規格のトランスをつくる技術力と実績を誇るタムラ製作所の製品を採用している。定インダクタンス型で、トランスの特性を左右するアンバランスのDC電流が10mAと大きく、トランスの実損失が最低限の0・25dBのタイプだ。
 電源部の電源トランスや、リップルを減らすためのチョークコイルは、構造的にウナリの出ることが不可避ともいえるもので、この振動がオーディオ信号を変調し、音質劣化の原因となるものだが、ここでは、余裕のある1ランク上のタイプを採用し対処している。シャーシは一部に銅メッキ処理がされ、前面のパネル部分は、8mmアルミ押出し材のアルマイト・ヘアーライン仕上げで、シャーシはメタリック塗装4段階重ね塗り仕上げ、ツマミもアルミ削り出し製である。
 回路構成は、いわゆるリーク・ミュラード型といわれる方式のようで、初段の電圧増幅は、左右チャンネル共通の12AX7採用、位相反転12AU7、終段6CA7のUL接続、整流用に2本の5AR4使用というのが大きな特徴である。整流管か半導体ダイオードかは、音質上でも興味のある注目のポイントだ。その他、使用部品は、ソケット類にラックス製とシンチ製、半固定VRに密閉型大型巻線型、無酸素銅配線材も採用する。音に影響のあるプリント基板の排除も特徴のひとつ。機能面では、フロントパネルとバックパネルに2系統の入力端子があり、フロントのCDダイレクト端子は、最短距離で初段に信号を送る。完成品は100時間のエージングを行い、再び最終調整をするという、管球タイプのポイントを押えた品質管理が実施されており、その価格対性能・音質は非常に高いものであるといえる。
 CDを使いパワーアンプ特集の試聴に準じ、単体で聴く。基本的に、特定のキャラクターを排除し、ナチュラルな音を志向した方向の音だ。帯域バランスは適度の広さで、帯域内の音色変化やエネルギー的なアンバランスが少ない。丹念に減点法で欠点を抑えて作られた印象が強く、その意味では信頼感が高いが、音楽的な表現力では、キャラククーの少なさ色付けの少なさが、やや物足りなさに通じる。タンノイ系や英国系全域ユニットと組み合わせたいパワーアンプだ。