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JBL 375 + 2397(組合せ)

岩崎千明

スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 ’76(1975年秋発行)
「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ25選」より

●組合せ意図、試聴感
 使い慣れたJBLをシステムとして生かすべく考えたのがこの2397ホーンと375ユニットの中高音用を組込んだシステムだ。52年発行の米国のあるオーディオ文献に掲載してあったウェスターン・エレクトリック社無響室の写真で、技術者の横に置いてあるスピーカー・システムが眼に止った。この、小型フロアー型とも思えるシステムに、大きさといい、形状といい、JBLの木製ラジアル中高音用ホーン2397をそっくりの高音ユニットが使われているではないか!
 これを見付けたのは7月中旬の、長い入院生活の退屈さまぎれのひとときだったが、そのときすでに、我が家では1年半ほど使用していた2397の、原型を発見した気分でいささか得意であった。
 さて、2397ホーンと2328アダプターとのアセンブリーに、ドライバー・ユニットの375またはそのプロ版2440を組み合わせた高音用ユニットは、それ以外のJBLの高音用ユニットに較べて、格段の品の良さと、音の繊細感が素晴らしく、パワフル一点張りのJBL中高音用ホーンとは何か違ったスッキリした音なのが、この上なく大きな魅力だ。そして、このユニットの魅力をフルに活かしてやろうと考えたのがこのJBLの強力型ユニットを用いたスピーカー・システムだ。
 我が家で7年来も付き合っているバックロード・ホーン型エンクロージャー、ハークネスの中に収めたD130とはまた違って、もっともマニアにとって手近な形の低音用ユニットを考えると、平面バッフルに取り付けた最新型モデル136Aウーハーがある。これは従来のウーハー130Aより、ずっとf0を下げた点で、家庭用としてはロー・エンドをはるかに拡大できるユニットだ。低音用ユニットとのクロスオーバーとしてJBLのネットワークには、LX5またはそのプロ用の3110がある。この木製ホーンは、一応カット・オフ周波数が500Hz、使用クロスオーバーとして800Hzを指定されるが、375という強力ユニットと、家庭用として、アンプから送りこむパワーを、それほどの大きさにすることはないという前提のもとに、その音響エネルギーの中域でのレベル・ダウンを予測すれば、500Hzを選ぶこともできる。
 こうした変速用クロスオーバーでの使い方は、色々な問題点もないわけではないが、その創り出される音色バランスからは意外なほどに、おとなしいサウンド・クォリティーが得られるので、ぜひ試聴されることを強く望む。木製ホーンは決して問題点を悪い形では現わさない。
 さて、136Aは、中域でやや控え目ながら、ロー・エンドはずっと伸びて、平面バッフルでも至近距離では実にゆとりある深く豊かな重低音を楽しませてくれる。こうした高級なシステムを、フルに発揮するのに、JBLのディーラーであるサンスイの高級アンプは、JBLのアンプなき今、欠かすことはできまい。BA1000は、ブラック・パネルのハイ・パワー、BA5000、BA3000とはまた異った家庭用の広帯域再生に迫力あるクリアーなサウンドを発揮してくれる。プリアンプのCA3000はフル・アクセサリーで、ハードな魅力のカタマリだ。この、サンスイのアンプを組み合わせた本コンポーネントは、高級マニアも充分納得するだろう。プレイヤーでは、トーレンスTD125MKIIとピカリングXUV4500Qの組合せが極めつけだ。

●グレード・アップとバリエーション
──JBLの新製品ユニット136Aと375+2397をネットワーク3110でつなぎ、サンスイCA3000+BA1000でドライブ、次にこれをマルチ駆動、チャンネル・フィルターにサンスイCD10を用い、アンプではサイテーション16を低域用に、375+2397をさきほどのBA1000でドライブいたしましたが、結果としてはいかがでしたでしょう。
岩崎 マルチ駆動とする前に、まずやりたいことは、ここでは試みませんでしたが、ユニットをエンクロージャーに収めたいですね。これがまず第1のグレード・アップですね。これは自作でもけっこうです。実は、JBLの4350に、あるいは4340というプロ・ユースのマルチ駆動用システムに刺激を受け、触発されまして、これはマニアの間でもチャンネル・アンプを使ってみようとする気運が高まってきたと思います。これを実際に試してみるのも意義のあることではないかと思います。また、理論的に考えてみた場合、ネットワークの持つL成分、C成分というものを、無視して考えられない面がないわけでなく、とりわけインダクタンスを持つコイルにおける直流抵抗分がスピーカーのボイスコイルに直列に入ることを考えた時、それがたとえごくわずかでも、ゼロではない限り、なんらかの形で影響が出てくるということも考えられますね。確かに理論上、わずかでもダンピングの面で理想状態より悪くなってしまう。そのあるかなしの、ごくわずかの問題点であっても、たとえ神経質と言われようと取り除く方向で努力するのが世のマニアの常なんでしょうね。理想に一歩でも近付こうとする努力がマルチ・アンプ・システムなんですね。さらに言うなら、自分だけの、オリジナルなシステムを究極に求めるならば、自分の嗜好をより完全な形で求めようとするのは当然だと思うんです。それを端的に表現できるのがマルチ・チャンネル・システムだと思うんです。クロスオーバー周波数をはじめ、レベル調整でも、ネットワークに付随する減衰量のあらかじめ指定された点以上に、自由に、1dB、0・1dBといったわずかの変化量さえ可変できるし、またクロスオーバー付近でのスロープ特性も6dB、あるいは12dBと、自由に選べます。すなわち、あらゆる意味で、良い音というものを判断できる耳があり、自身があるならばある程度完全に近い形をとりうる方式だといえますね。
──低域に使用していただきましたサイテーション16に関してはいかがでしょうか。
岩崎 このモデル16というアンプは、力強さ、エネルギー面におきまして、海外製アンプの中ではとりわけ質の高い強力な製品で、とても150W+150Wとは思えない、それ以上のものを感じさせてくれますね。回路的に見ますとこれは左右を完全に分離した独立電源を用いておりまして、超低域におけるクロストークを排斥することで、再生音場に対するマイナス面を除去しよう、という試みがされています。またLEDによるパワー表示はどうも日本人の好みとは異るようですが、しかしピーク表示という意味に関してはこれほど正確なものはないわけで、性能的にはメーター指示よりはるかに上回るものを持っており、ハイパワーアンプにはさわしい方式だと思いますね。

JBL 2397

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 薄く魅力的なプロポーションをした木製ホーンである。金属ホーン固有の鳴きがないため音が素直なのがよい。それだけに、逆にドライバーユニットには優れたものが必要だ。

JBL 2397

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 実にいい形をしている。ほかがすべて鋳物製なのに、これだけは木製という点もうれしい。スロートアダプターの併用で、♯2440や♯2420、♯2410と組合せて使う。

JBL 2397

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 JBLの比較的新しいワイドアングルの木製ホーンは、家庭用として使い得る大きさと音で、今やかなりのファンが持つという金属ホーンと違って、鋭さが少ないのも魅力。