ヤマハ NS-650

岩崎千明

スイングジャーナル 10月号(1972年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 ヤマハから3種のブックシェルフ型システムが出たのは、さきにプレイヤーYP700を紹介した直後である。5カ月を経てこの欄に再び、ヤマハの製品として登場するわけだが、この5カ月間の経過期間に、このNS650は、すっかり評判を得て注目すべき製品になってしまった。
 最近のブックシェルフ型システムはその高級の主力製品が3万円台に多く集中している。その数多い中でもヤマハNS650の評価は、きわめて高く、はるか高価格のスピーカー・システムに劣らぬ質の高さは、改めていうまでもない。
 3万円台のシステムの中でも、ひときわ小型で目立ち難い存在だが、ひとたびその音に接すと、ヤマハが今日プレイヤーやアンプやスピーカーなどコンポーネントを通してオーディオに対して、真正面から取組んでいることを如実に知ることができるというものだ。
 現在、市場にあるあらゆる国産ブックシェルフ・スピーカーの中でも、このヤマハNS650に匹敵すべき製品は、おそらく5指を出まい。逆にいえば価格をぬきにしても、このスピーカーから出る高品質のサウンドと肩を並べるものが4つしかないというわけだ。
 ところが、このNS650は決して奇をこらしたメリットや、メカニズムはいっさいない。見た眼にはプレーンなシステムであって、ここで云々するほどの特長もなく、ごくありふれた構成の25センチ・ウーハー、12センチ・スコーカー、ドーム・ダイヤフラム・トゥイーターという3ウェイである。
 このスピーカーを試聴のため鳴らそうとしたとき、たまたま手元にあったレコード1枚にヨーロッパ録音の、キース・ジャレットのソロ・アルバムがあった。一聴してヨーロッパの最新録音を思わすカッチリと引き緊ったピアノ・タッチと、豊かな鳴り響きは最近の優秀録音盤の中でも、ひときは輝いたものと思うのだがこのサウンドをヤマハのNS650は文字通り実にみずみずしく、水のしたたるような新鮮で生々しい音に再現してくれた。
 たまたま日本ビクターの誇る最新技術である倍速カッティング盤と原盤の聴き比べをしてみたが、そのかく然たる遠いをはっきりと響きわける能力は、まさに本来歴史あるピアノ・メーカーで作られた本格派システムということを語るに十分だ。
 高域のサウンド・エレメントのパターンの細かいディテイルの違いを、くっきりと表現し、指先のキーにふれる様をその響きの中に見事に再現してくれる。日本ビクター・カッティング盤の優秀性がはからずも試聴中のヤマハNS650によって証明され得たひとこまであった。
 こうしたくっきりした音の立ち上りというものは、決して従来のスピーカー測定技術では判然とは出てきにくい。これは耳で認められる以外に適確な判断はなし得ない。それだけに、この再生の際の立ち上りの良さは、ややもすると、ないがしろにされやすい。それというのは、この立ち上りの良さを追求すれば、どうしてもスピーカー・ユニットのマグネットを強化せねばならず、しかもそれが確められるまでするには、かなりの強力を余儀なくされ、勢い製造上のコスト・アップにつながる。さらにブックシェルフ型のように小型化に沿った上で低域レンジをのばすことに四苦八苦の国産システムは、マグネットの強化が低域拡大と相反することにつながりかねない。
 このへんの事情もあって、マグネット強化というスピーーカー高品質化の大きな根本的条件をよけてしまうことになりやすい。
 ヤマハのシステムを聴くと、こうした真の高級化への道を、正攻法によって取り組んでいることを知らされるのである。ひとまわり小型なのに拘らず3万3千円という価格は、このシステムのもうひとつのウィーク・ポイントでもある能率の低いことと共に大きなマイナスには違いない。
 しかし、真の高品質サウンドの再生を望むものにとって、それは、補って余りある小さな代償と考えるべきではないだろうか。

パイオニア SX-717

パイオニアのレシーバーSX717の広告
(スイングジャーナル 1972年10月号掲載)

TDK SD

TDKのカセットテープSDの広告
(スイングジャーナル 1972年10月号掲載)

ティアック A-250, A-350

ティアックのカセットデッキA250、A350の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

A350

エクセル ES-70EX

エクセルのカートリッジES70EXの広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

ES70EX

テクニクス RS-275CU, RS-276U, RS-279U, RS-262CU, RS-263U, RT

テクニクスのカセットデッキRS275CU、RS276U、RS279U、RS262CU、RS263U、カセットテープRTの広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

RS275CU

フィデリティ・リサーチ

フィデリティ・リサーチの広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

FR

ダイヤトーン DA-Q100

ダイヤトーンの4チャンネルデコーダーDA-Q100の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

DA-Q100

Lo-D HA-660

Lo-DのプリメインアンプHA660の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

HA660-1

ソニー PS-2500, PS-2400, PS-2300A

ソニーのアナログプレーヤーPS2500、PS2400、PS2300Aの広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

PS2500

ナガオカ 0.5mil DIAMONDSTYLUS, MUKU

ナガオカの交換針0.5mil DIAMONDSTYLUS、MUKUの広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

Nagaoka

マイクロ MR-711

マイクロのアナログプレーヤーMR711の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

MR711

パイオニア CT-4040

パイオニアのカセットデッキCT4040の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

CT4040

ソニー TC-9400A

ソニーのオープンリールデッキTC9400Aの広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

TC9400A

ソニー TA-1150

ソニーのプリメインアンプTA1150の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

TA1150

シュアー M91ED

シュアーのカートリッジM91EDの広告(輸入元:バルコム)
(ステレオ 1972年10月号掲載)

Shure

パイオニア SA-80

パイオニアのプリメインアンプSA80の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

SA80

デンオン VS-170, VS-270, TUA-300, TUA-400, MTP-701, MTP-702

デンオンのスピーカーシステムVS170、VS270、レシーバーTUA300、TUA400、アナログプレーヤーMTP701、MTP702の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

Denon

富士フィルム FG, FM, FM, FC

富士フィルムのオープンリールテープFG、FM、カセットテープFM、FCの広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

Fuji

ソニー HF

ソニーのカセットテープHFの広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

HF

アコースティックリサーチ AR-3a, AR-6, AR-LST, AR-Amp

アコースティックリサーチのスピーカーシステムAR3a、AR6、AR-LST、プリメインアンプAR-Ampの広告(輸入元:フォスター電機)
(ステレオ 1972年10月号掲載)

AR

コロムビア PMA-300

コロムビアのプリメインアンプPMA300の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

PMA300

EMT 930st, TSD15, 929, K+H OY MONITOR, スチューダー B62

EMTのアナログプレーヤー930st、カートリッジTSD15、トーンアーム929、K+HのスピーカーシステムOY MONITOR、スチューダーのオープンリールデッキB62の広告(輸入元:河村電気研究所)
(ステレオ 1972年10月号掲載)

EMT

テクニクス RS-715U, RS-1030U, RS-1080U, RT-17SG, RP-10

テクニクスのオープンリールデッキRS715U、RS1030U、RS1080U、オープンリールテープRT17SG、リールRP10の広告
(ステレオ 1972年10月号掲載)

RS1030U

メモレックス CHROMIUM DIOXIDE

メモレックスのカセットテープCHROMIUM DIOXIDEの広告(輸入元:パイオニア)
(ステレオ 1972年10月号掲載)

Memorex