ラックス 5C50

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 新しいラボラトリー・リファレンスシリーズの音自体、ややクールな傾向だが、ことに5C50の音にその傾向が強く、弦やヴォーカルにはやや冷徹な感じになりがちだが、あとから発売された5E70(トーンコントロールユニット)と組み合わせてバランス的に補正を加えると、音に適度の厚みも出てきて、本来の解像力の良さ、引締って質の高い音質が生きてくる。デザイン的にはレバースイッチの表現がやや大仰だと思うが。

ビクター QL-7R

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 コンプリートなプレーヤーシステムにビクターが水晶制御のDD型フォノモーターを採用した最初の製品であり、ユーザー側からみても、かなり魅力的なモデルである。充実した中域をベースとしてナチュラルなバランスの良さをもち、安定した音の良いプレーヤーシステムとして完成度が高い製品である。

アルテック Model 19

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 周波数特性のワイド化と、ユニットやエンクロージュアの無駄な共鳴音や夾雑音の類をできるかぎり抑ええ込むというのが新しいスピーカーの一般的な作り方だが、アルテックの新型は、周波数特性こそ従来の同社製品からは考えられないほど広帯域化しながら、キャビネットやホーンの共鳴音も適度に残してあって、それが何ともいえず暖かくふくよかな魅力ある音に聴こえ、新型であってもどこか懐かしさのようなものを感じさせる一因だろう。

トリオ KT-9700

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 FMチューナーでは、キャリアを誇るトリオのトップモデルである。さすがにこのモデルのもつ性能は、FMチューナーのトップランクにあり、機能面を標準的に抑えたため、このコストで開発できたと思われる。内部のコンストラクション見ても、同価格帯の機種と比較して、はるかに充実したものがあり、音質面でも放送局側の送り出しプログラムソースのクォリティの差が、明確に感じとれるのは性能の裏付けである。

テクニクス SU-8075 (75A)

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ハイレベル入力以後をDCアンプ化したプリメインアンプとして登場し、注目を集めたSU8080に続いて、今回、同一構想にもとづいて開発されたジュニアタイプのモデル、SU8075が発表された。
 パワーアンプのDCアンプ化は、最近のアンプの目立った動向であるが、テクニクスでは早くから、複雑な音楽波形を完全に増幅するためにはDCアンプが非常に優れていることに着目し、その開発に成功するとともに、さらに一歩進んで、トーンコントロール回路を使用しないときには、パワーアンプのゲインを増してチューナーやAUX入力をダイレクトにDCアンプ化したパワーアンプに導く方法により、ハイゲイン入力以後をDCアンプとしている。
 また、従来のアンプでの、ハイレベル入力からのSN比とフォノ入力からのSN比を同一にする目的で、SU8080では、88dBのSN比を得ることに成功しているが、今回もM47Lという超ローノイズトランジスターをこのモデル用に開発し、イコライザー初段に採用し、やはり88dBのSN比を得ている。このイコライザー段には、NFループを利用して超低域をカットするサブソニックフィルターがある。
 トーンコントロール回路は、ボリュウム内部にスイッチを機構をもち、機械的中点、つまりフラットの位置でコンデンサーと抵抗などのトーンコントロール素子を完全に切り離し、周波数特性をフラットにできる。
 パワーアンプ部は、スピーカー端子にDC電圧が発生するDCドリフトを抑えるため初段にワンパッケージのデュアルトランジスター差動増幅をもつDC構成で、62W×2の出力があり、万一ハイレベル入力に接続したチューナーなどから直流分が洩れた場合にスピーカーを保護する目的で、カットオフ2Hzの直流カットスイッチがフロントパネルにある。なお、電源部は左右チャンネル共通で、電界コンデンサーは10、000μF×2である。

ティアック A-7400RX

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 A7400を基本モデルとし、それにdbxシステムを内蔵したのがRXモデルである。2トラック・2チャンネルデッキとしての7400は、ティアックの長年のキャリアで磨いたメカニズムの正統的なデッキであって、もちろん3ヘッド、3モーターの本格派。dbxは、2トラ38cmで本来の偉力を発揮する。

ルボックス HS77MKIV

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スイスのルボックスは、高級テープレコーダーの専門メーカーとして高い評価を得ている。スチューダーのコンシュマーヴァージョンである。このHSシリーズは、基本的には4トラックデッキとしての長い洗練の期間を持って誕生した2トラック・2チャンネルデッキで、MK4はそのピークにある最新モデル。

デンオン DH-610S

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンオンの定評ある2トラック・2チャンネルステレオ・オープンリールデッキは、同社の放送機器の長年のキャリアから生れたもので、プロ機の厳しい試練の中で磨き抜かれたものだ。これは、710シリーズをコンシュマー用のトップ機種とすれば、中堅機ということになるが、実質的には同等の性能。

ウーヘル 4200 Report Stereo IC

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 長い歴史を持つ機械で、同じメカニズムを少しずつ洗練し現在に至った信頼度の高いポータブル・オープンリールデッキである。プロ機として設計されているが、価格もこなれているのでアマチュアにも手がとどく実用価値の高い製品だ。4スピードで、上は19cm/s、下は実に2.4cm/sという遅いものまである。

ラックス T-110

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 大分長い間わが家でも聴いていたチューナーで、音質もいいし、見た目の美しさは、ラジオを聴く楽しさを助長させてくれるものだ。薄型のすっきりとしたデザインのFM専用チューナーである。このぐらいのデザインになると、必ずしもアンプと同じデザインでなくても、置いていて気にならないのが面白い。フロントエンド・5連バリコン、IF段・8素子のセラミックフィルター使用。同調もとりやすい。

タンノイ Eaton

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 言うまでもなく旧IIILZの新版だが、音はかなり大幅に変わった。IIILZが中〜高域にウェイトを置いて、反面重低音が出にくかったのに対して、Eatonでは高域をやや抑えて低音は位相反転の助けをかりて量感を出しているので、聴感上のバランスが良くなっている。新シリーズの中では、やや甘口にできている。

セクエラ Model 1

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 見るだけでも楽しい最高価格のチューナーである。趣味性の強いエンジニアが、やりたいことをやってつくり上げると、こういうものが出来ることになるのだろう。この価格で、一つか二つしかないFMステレオ音楽を聴くのは全く非現実的だが、こうした夢のある製品をあげずにはおれないのである。

ヤマハ NS-690II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 名作とか名器といった表現をやたらに使うのは嫌いだが、NS690IIにはこの賛辞を呈するに少しもためらう必要がない。マークIIでない方には、優しく繊細な良さがあったが、II型ではいっそう逞しさを加え、音楽のジャンルに選り好みの少ない、バランスのとれたスピーカーシステムに成長したと思う。

サンスイ TU-707

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 サンスイの新シリーズ、707プリメインアンプは私の大好きなアンプの一つだが、これとペアで使うとなると、同じデザインイメージのチューナーが必要となる。その意味で、TU707をあけだのだが、その解説を書くには、正直なところ、このチューナーを使っていない。メーカーを信頼するのみ。

トリオ LS-505

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 過去一シリーズごとに暗中模索していた印象のトリオも、LS505で新生面を切り開いたと思う。真面目なとりくみかたがそのまま音に出てしまったような印象はあるにしても、基本から洗い直したという真剣さが、音のクォリティの良さとして聴きとれる。これを土台とした今後の新製品がいっそう期待できる。

オンキョー M-6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 M6の鳴らす弾力的でスケールの豊かな低音は、これまでのオンキョー製品のイメージを挽回したばかりでなく、各メーカーからライバル視されるに至ったことをみても、国産スピーカーのひとつのステップを記したといってよいだろう。次の展開では、音域全体に音の品位を一層向上することがテーマだと思う。

エレクトロ・アクースティック STS155-17

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 輸入カートリッジで8700円というウソのような価格。むろんこういう廉価版だけに、音に繊細さや品位を高望みしても無理だが、国産ではなかなか得がたいヴァイタリティある線の太い、大づかみなバランスの良い鳴り方は、もっと注目を集めていい特徴。ローコストプレーヤーに加えてみると面白い。

アルテック A7-500-8

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 個人の住宅で、びっくりするほどおとなしい音に飼い馴らしている愛好家の例を知らないわけではないが、私個人は、特性も音質も外観も仕上げも含めて、狭い室内で至近距離で眺め・聴く製品とは思いにくい。反面、小ホール等公共の場所で鳴らしたときの、朗々と明るく気持よく響く質の高い音質は、他のスピーカーで代替できない優れたアルテックの特徴だと思う。もちろんそういう長所を自宅で生かしてみようと試みるのはご自由だ。

オーディオテクニカ AT-3M

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いまや数少ないモノーラルLP専用のカートリッジとして貴重な存在。針先がステレオの音溝を傷めないよう水平垂直、360度方向にコンプライアンスを持っているので、ステレオレコードをモノ再生するにもいい。音質も音楽性に富む優秀なもの。SP用の交換針に差しかえられる点も点も周到な配慮だ。

ダイヤトーン 2S-305

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 一年に一度は、郡山の三菱電機の研究所で新製品を試聴させてもらうが、比較のために鳴らす2S305が、いつでも、どんな新製品よりも申し訳ないが良く聴こえて、そのたびに305の優秀であることを再認識させられる。個人的な好みでいえば、一般市販はしていないがこれの改良型であるNHK現用のAS3002モニターの音の方がもっと上だと思うが、市販品としては2S305しか入手できない。

テクニクス EPC-100C

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 モノ時代からMMカートリッジの研究を続けてきたテクニクスが、いわば集大成の形で世に問う高精度のMM型。実に歪感の少ないクリアーな音。トレーシングも全く安定。交換針を完全にボディにネジ止めし、ヘッドシェルと一体化するという理想的な構造の実現で、従来のMMの枠を大きく超えた高品位の音質だ。

デッカ Mark V/ee

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デッカのVL型は、1958年のステレオ発売以前からの長い歴史を持っているが、その基本を変えずに少しずつ軽針圧化してMKVに至っている。eeモデルの音は、独特の線の細い、しかし脆弱さのない芯のかっちりした艶のある音が、一種の華やかさをともなって鳴るところが他におよそ類のない特長。

セレッション Ditton 66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 仕事先に常備してあるので聴く機会が多いが、聴けば聴くほど惚れ込んでいる。はじめのうちはオペラやシンフォニーのスケール感や響きの自然さに最も長所を発揮すると感じていたが、最近ではポピュラーやロックまでも含めて、本来の性格である穏やかで素直な響きが好みに合いさえすれば、音楽の種類を限定する必要なく、くつろいだ気分で楽しませてくれる優秀なスピーカーだという実感を次第に強めている。

JBL L26

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 気づいた限りでも少なくとも三回のマイナーチェンジをしているが、いま出廻っている製品は見ちがえるほど質の高い滑らかな音質になり、従来無理とされていたクラシックの弦でも、傾向としては硬質ながらバランス的には十分聴ける音になっている。がL26の本領はやはりジャズ、ポピュラーで、ことにベースの音の弾みなど、ちょっと代替品を思いつかないくらいこのクラスではズバ抜けている。

デンオン SC-107

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ブックシェルフにしては大型のせいか鳴り方にゆとりがあり、肉づきの豊かでよく弾む音を聴かせる。パワーにも強いため弱音から強音までダイナミックレンジも広い。ただSC104にも同じ傾向があるが、管弦楽のトゥッティで中〜高域が他の音域より張り出す傾向がわずかにあって(これは国産スピーカーの大半に共通の弱点)、弦の再生にはもうひと息だが、ジャズの再生にはそれがかえってヴィヴィッドな魅力になっている。