Category Archives: 海外ブランド - Page 93

JBL LE8T

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 20センチ型のユニットとしては特筆すべきハイパワーに耐え、ことにジャズ、ヴォーカルに充実した力強い音を聴かせる名作。ただし国産のエンクロージュアではこなしにくい。

アルテック 755E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 パンケーキの愛称どおり、眺めても実に可愛らしく楽しい。大きめの位相反転型エンクロージュアに収めると、独特の厚みのある、よく練れたバランスの良い音を聴かせる。

マッキントッシュ C26

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 C28よりも回路構成も音質も、こちらの方が優れていると思う。デザインも、C28の対称型にくらべて、こちらの方が簡潔だし洗練されていると私には思える。

セレッション Ditton 66, ギャラクトロン MK16, MK160, シネコ MK2002

セレッションのスピーカーシステムDitton 66、ギャラクトロンのコントロールアンプMK16、パワーアンプMK160、シネコのアナログプレーヤーMK2002の広告(輸入元:成川商会)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

narikawa

ADC XLM/II

ADCのカートリッジXLM/IIの広告(輸入元:BSRジャパン)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

XLM

シャウブロレンツ D360SD

シャウブロレンツのスピーカーシステムD360SDの広告(輸入元:J&G)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

シャウブロレンツ

スコッチ CL

スコッチのカセットテープCLの広告
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

Scotch

オルトフォン type225, type335, type445

オルトフォンのスピーカーシステムtype225、type335、type445の広告(輸入元:オーディオニックス)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

type445

ピカリング XV15

ピカリングのカートリッジXV15の広告(輸入元:東志)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

XV15

ディスクウォッシャー DII

ディスクウォッシャーのレコードクリーナーDIIの広告(輸入元:RFエンタープライゼス)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

discwasher

アルテック DIG MKII

アルテックのスピーカーシステムDIG MKIIの広告(輸入元:エレクトリ)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

アルテック

エレクトロ・アクースティック STS455E, STS155-17

エレクトロ・アクースティックのカートリッジSTS455E、STS155-17の広告(輸入元:エレクトリ)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

エラック

アルテック DIG MKII

岩崎千明

スイングジャーナル 3月号(1975年2月発行)
「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より

 アルテックのシステムは、本来、シアター・サウンドとしての名声があまりに大きいため、その家庭用システムの多数の傑作も名品も、どうも業務用にくらべると影がうすい。それは決してキャリアとしても他社に僅かたりともひけをとるどころではないのに。つまり、それだけ業務用音響システムのメーカーとしての「アルテック」の名が偉大なせいだろう。
 だから、アルテックの名を知り、その製品に対して憧れを持つマニアの多くは、アルテックの大型システムを揃えることをもって、アルテック・ファンになることが多い。そうなればなるほど、ますますアルテックは若いファンにとって、雲の上の存在とならざるを得なかった。
「ディグ」の日本市場でのデビューと、その価値は、実はこの点にある。
「ディグ」のデビューによって、初めて日本のアルテック・ファンは、すくなくとも若い層は、自分の手近にアルテックを意識できるようになったといってもいい過ぎでない。
「ディグは」小さいにもかかわらず、安いのにかかわらず、まぎれもなく、アルテックの真髄を、そのままもっとも純粋な形で秘めている。アルテックの良さを凝縮した形で実現化したといった方が、よりはっきりする。
「アルテックの良さ」というのは、一体何なのであろうか。アルテックにあって、他にないもの、それは何か。
 アルテックは、良いにつけ、悪いにつけ、シアター・サウンドのアルテックといわれる。シアター・サウンドというのは何か。映画産業に密着した米国ハイファイ再生のあり方は、どこに特点があるのだろうか。
 もっとも端的にいえば、映画の主体は「会話」なのだ。映画にとって、音楽は欠くことができないし、実況音も、リアル感が大切だ。しかし、より以上に重要なのは、人の声をいかに生々しく、すべての聴衆に伝えるか、という点にかかっている、といえるのではなかろうか。
 だから、アルテックのシステムは、すべて人の声、つまり中声域が他のあらゆるシステムよりも重要視され、大切にされる。それらは絶対的な要求なのだ。だからこそアルテックのシステムが、音楽において、中音域、メロディーライン、ソロ、つまりあらゆる音楽のジャンルにおいて、共通的にもっとも大切な中心的主成分の再生にこの上なく、威力を発揮するのだ。
 音楽を作るのも、聴くのも、また人間であるから……。
「ディグ」の良さは、アルテックの真価を、この価格の中に収めた、という点にある。きわめて高能率なのは、アルテックのすべての劇場内システムと何等変らないし、そのサウンドの暖か味ある素直さ、しかも、ここぞというときの力強さ、迫力はこのクラスのスピーカー・システム中、随一といっても良かろう。
 その上、システムとしての「ディグ」は、マークIIになってますます豪華さと貫禄とを大きくプラスした。
「ディグ」の使いやすさの大きな支えは、高能率にある。平均的ブックシェルフが谷くらべて3dB以上は楽に高い高能率特性は、逆にいえば、アンプの出力は半分でも、同じ迫力を得られることになる。システム全体として考えれば、総価格で50%も低くても、同じサウンドを得られるという点で、良さは2乗的に効いてくる。
 つまり割安な上、質的な良さも要求したい、この頃の若い欲張りファンにとって、「ディグ」こそ、まさしくうってつけのシステムなのだ。
 アンプのグレード・アップを考えるファンにとっても、「ディグ」はスピーカーにもう一度、視線をうながすことを教えてくれよう。パワーをより大きくすることよりも、システムをもうひとそろえ加えて、2重に楽しみながら、世界の一流ブランド「アルテック・オーナー」への望みもかなえてくれる夢。これは「ディグ」だけの魅力だ。

内容外観ともにガッツあるシステム
 キミのシステムに偉大な道を拓く点、グレード・アップにおける「ディグ」の価値は大きいが、ここでは「ディグ」を中心とした組合せを考えてみよう。
 アンプはコスト・パーフォーマンスの点で、今や、ナンバー・ワンといわれるパイオニアの新型SA8800だ。ハイ・パワーとはいわないが、まず家庭用としてこれ以上の必要のないパワーの威力、それをスッキリと素直なサウンドにまとめた傑作が8800だ。
 パネルの豪華さという点でも、8800は文句ない。やや大型の、いや味なく、品の良ささえただようフロント・ルック。ズッシリと重量感あるたたずまい。
「ディグ」とも一脈相通ずる良さがSA8800に感じられるのは誰しも同じではなかろうか。
 チューナーには、これもハイ・コスト・パーフォーマンスのかたまりのようなTX8800。
 もし、キミにゆとりがあればSA8800の代りにひとランク上の、最新型8900もいい。チューナーは同クラスのTX8900でも、8800でも外観は大差ない。
 プレイヤーとしては、同じパイオニアからおなじみ、PL1200もあることだが、今回はビクターの新型JL−B31を使ってみよう。ハウリングに強いのもいい。
 カートリッジもこのプレイヤーにはひとまず優良品と
いえるものがついている。
 デザイン的にも、また使用感も一段と向上したアームは、仲々の出来だ。このアームをより生かすカートリッジとして、スタントンを加えるのも楽しさをぐんと拡大してくれる。600EEあたりは価格・品質は抜群だ。
 出ッとしてマニアライクなオープン・リールの新型、ソニーTC4660を推めようか。

JBL LE175DLH

岩崎千明

ステレオ別冊「ステレオのすべて ’75」(1974年冬発行)
「オーディオ製品紹介 1975」より

 JBLのオリジナル、もっとも初期からシステムとして構成されたその名も001。2ウェイの高音用として指定されたのが175DLH。ウーファーは130A、4cm径の金属ダイアフラムのユニットと約20cmのホーンはその前面に設けられたパンチングメタルを5枚、すき間をあけて重ねて作られた音響拡散器とによって、開口部における音響反射がおさえられるとともに90度の広角に高音エネルギーを拡散して、家庭用としてこの上なく理想的な高音輻射を実現している。パンチングメタルの間につめられたフェルト状吸音材によりJBLの他の高音用よりやや繊細なサウンドでこれが好みを左右する。

JBL 075

岩崎千明

ステレオ別冊「ステレオのすべて ’75」(1974年冬発行)
「オーディオ製品紹介 1975」より

 JBLの初期から高名とどろくホーン型高音用が075。リングラジェーターと称しホーンのスロートでごく狭くした上でドーナツ状にして拡散を図ったが、設計の意図と違ってリング状のホーンの開口は、全体として約10cmのホーン開口と同じことになってしまって、せっかく鮮鋭な高エネルギーながら拡散特性はあまり良いとはいえず、高音用としての大きな利点を損なったともいえる。しかし73年になって、プロ用にこの075の拡散特性を大改良した角型開口の2405が発売され、さらにコンシューマー用としても、まったく同じ構造の077なる名器の075改良型がでることになるJBLブランドにふさわしい製品だ。

アルテック 604E

岩崎千明

ステレオ別冊「ステレオのすべて ’75」(1974年冬発行)
「オーディオ製品紹介 1975」より

 アルテックのスピーカーを代表するモニター用15インチ(38cm)2ウェイ型。当時アルテックにいたミスターJ・B・ランシングが1946年に発売したホーン型高音用を大型ウーファーと同軸上に組み合わせた2ウェイ・スピーカーを、具体化して製品としたのがアルテックの600シリーズで、601の12インチ型と603簡易型及び604の15インチがある。38cmウーファーは強力型515と同じ。そのウーファーを貫通して高音用ユニットのマグネットを貫通して高音用ホーンが設けられており、外観から想像できぬほどのホーン有効長を得た本格的な2ウェイ。力に満ちた迫力と、比類ないステレオ定位、音像の確かさは秀逸。

アルテック 605B

岩崎千明

ステレオ別冊「ステレオのすべて ’75」(1974年冬発行)
「オーディオ製品紹介 1975」より

 業務用としてスタジオでの監視用モニターにもっとも広く活躍する604Eを基とし、家庭用ハイファイ用にリファインされたのが605B。ウーファーが604Eの515同等に対し416A同等となっている展が最大の相違点で外観上は604Eのやや高域に偏し引締った音に対し、格段に優れてフラットな特性と聴きやすいサウンドを得ており、類まれな高品質の2ウェイとなった。製品としては604と同時期から存在するが604のかげに日本ではその良さを充分に認識されることがなかったのは痛恨事であったが、最近「クレッセンド」が認められつつある。

JBL D130

岩崎千明

ステレオ別冊「ステレオのすべて ’75」(1974年冬発行)
「オーディオ製品紹介 1975」より

 JBLスピーカーの優秀性を端的に代表するユニットが38cmフルレンジD130。比類ない高エネルギーと能率の高さが、今日ではおろそかにされがちな音響変換器の本来持たねばならぬ素質の良さを、強烈な形で使う者に知らせてくれる。8000Hz上の高域はかなり低減するが帯域内でのバランスの良さ、特に200ないし80Hzのいわゆる中音域の充実感はこれを知ると手放せなくなろう。このユニットが日本のファンに好評な理由は、まずフルレンジとして高音をやや強めた状態で愛用され、あとから高音用ユニットを追加することにより、JBLオリジナルに近い2ウェイ・システムに高められるという利点にある。

アルテック 419-8B

岩崎千明

ステレオ別冊「ステレオのすべて ’75」(1974年冬発行)
「オーディオ製品紹介 1975」より

 JBLの大型フルレンジの38cmがD130なら、アルテックの38cmは420A、30cmが419得非である。JBLのシングルコーンに対してアルテックは2つのコーンをつないだ形の変形ダブルコーンで、倍フレックスと呼ばれる。バイBiは2つの意味。センターのアルミドームが高域ラジエーターとして有効なのはJBLと似ている。再生音域が充分広いとはいえぬがややソフトな耳当りの良い朗々たるサウンド。はっきりして定位の優れたステレオ感。いかなる用い方にも応じ得る素質のよさに裏付けされたハイファイ全般への広範な酔うとに広く推められるべき極上のコストパフォーマンスの優秀ユニットだ。

JBL L16 Decade

菅野沖彦

スイングジャーナル 12月号(1974年11月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 JBLがL26ディケイドという普及型のスピーカー・システムを出したのは、そう古い記憶ではない。今は値上りしてしまったが、発売当初は7万円ぐらいで買えたので、大きな人気を呼んだ。たしかこの欄でも私が採I)上げたと思うが、普及型ながら、まぎれもないJBLのクォリティをもった優れたスピーカーであった。アメリカでも好評であったらしく、今度、このディケイド・シリーズを上下に拡大し、L16、L36というニュー・フェイスが登場したのである。このシリーズの開発は、私の知る限りでも、かなり長い時間をかけており、ロスのカシタス・アヴェニューにあるJBL本社の試聴室には、そのプロト・タイプが前から置いてあった。昨年の春、同社を訪れた時にも、それを聴かせてもらって、その発売を楽しみにしていたものである。この1〜2年、小型ブックシェルフ・スピーカー・システムはヨーロッパ・メーカーから続々と優れたものが発売され、世界中で好評を得たというバック・グラウンドが、JBLにも、ディケイド・シリーズの拡大を考えさせる刺戟になったことは疑いない。ヘコー、ブラウンなどの製品が、同社の試聴室にあって、L16のプロト・タイプとの比較試聴に使われていたことからも、こうした事情がわかろうというものだ。
 この秋になって、ようやく輸入発売されたL16を試聴してみて、さすがにJBL! という感概を改めてもったほど、この小さな〝ジャイアンツ〟は私を魅了してしまったのである。27×49×26cmという小さなエンクロージャーに収められたこの2ウェイのコーン・スピーカー・システムの音は、とても外観から想像できないスケールの大きさと、本格的なJBLクォリティーを備えているものであって、JBL製品の成功作といってよいと思う。JBLといえども、稀れには失敗作と思える製品を発売してしまうこともあるが、そのほとんどは、最高級のJBLシステムに通じる音の質感をもっていることは見事というほかはない。ほとんどのスピーカー・メーカーからの製品は、同シリーズといえども、全く異質な音を出してみたり、ましてや、発売時期に2〜3年と隔りのあるものや、使用ユニットやエンクロージャーのサイズが違ってしまえば同質のサウンドを聴かせてくれるものはないといってよい。スピーカーというものの赦しさをそのたびに感じさせられるものである。しかし、JBLは、コーンの2ウェイからホーンを使った3ウェイに至る多くのバリエーションが見事に同質のサウンドで貫かれているということは驚異といってよいくらいである。明るく、解像力に富み、屈託のない鳴り方は音楽の生命感や現実感を見事に浮彫りにして聞かせてくれる。濁りのないシャープな音は、時にあまりにも鋭利で使いこなしの難しさに通じるが、使用者が、自分の理想音を得る場合の素材としては、これほど優れた正確なものはないと思えるのが、私のJBL観である。可能性というものをこれほど強く感じさせてくれるスピーカーは他にはない。ほとんどの所で聞くJBLスピーカーの音は、その可能性を発揮していないといってもよいので、一部ではJBLスピーカーが誤解されているようにも思えるのである。
 さて、このL16は、20cm口径のウーハーと3・6cm口径のコーン・ツイーターの2ウェイで、ウーハーは新設計のものだが.ツイーターはL26、L36、L100、4311モニターに共通のダイレクト・ラジエーターである。エンクロージャーはバスレフ型だ。JBLのユニット群は同社がスピーカー・ユニット製造の長年の歴史から得た貴重なノーハウと、確固たる信念にもとずいた、磁気回路、振動系の設計製造法によっているため、新しいシステムを出した時にも、全く別物のようなサウンドにならないといってよいだろう。それでもなお、ユニットの組合せ、エンクロージャーの違いによって、そのまとまりに出来、不出来が生じることもあるのだから、スピーカーというものは難しい。L16は、前にも書いたように、きわめて幸運?なまとまりが得られたシステムとなった。許容入力は連続で35W、音庄レベルは75dB(入力1Vで4・57mに置ける測定値)だが、ドライブするアンプは、50W×2ぐらいのパワーは欲しい。こんな小さなシステムでありながら、プリ・アンプやパワー・アンプのクォリティーを完全に識別させるほどの実力をもっているからである。

アドヴェント ADVENT2

岩崎千明

スイングジャーナル 10月号(1974年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 白い小さな現代的な姿のシステムが、広いけれど数多いパーツがその空間の多くを占めるSJ試聴室の正面にちょこんと据えられると、ひどくスッキリと目立つ。ただ、左右に2本置かれているだけでたいへんしゃれたたたずまいである。
 白いシステムの、後側に嫌み上げられたたくさんのシステムが、やたらに大きく感じられ、ぶっきらぼうなくらいに実用むきだしの体裁にみえる。
 アドヴェントIIの四隅をほんの少々丸みを持たせた小さな箱がこの上なくまっ白であるのは、それが塗装ではなくプラスチックのためだ。プラスチックの箱というと、これはまたただプラスチックというだけで価値も見映えもおそまつな感じを受けてしまいがちなものだが、このアドヴェントIIにおいては、プラスチックといわなければそう気がつかないほどに品のある仕上げだ。まっ白なので、塗装でないとすれば素材の色だろうし、その素材としては常識的に塩化ビニール・プラスチックにきまっているのに、そう見えないのは、その表面がきめ細かい艶消し仕上げだからだ。もっともそれだけではなく、板との2重張りの箱は工作上も現代工芸的イメージだ。さらにそれを決定的にするのは、この小さな箱に収められた20cmウーファーとドーム型の2ウェイ・システムのサウンドであろう。
 とてもこの大きさが信じられない程の太くゆったりした低音の響き、それとバランスよく釣合って鮮かに輝くような高音のタッチだ。
 この快く豊かなエネルギーが、聴き手をつつむとき、それは姿態通りの現代的なセンスに満ちたシステム。単にスマートなデザインというのではなく、しゃれた雰囲気がぴったりの小型システムなのだ。
 この一見、いかにも現代ヨーロッパ調のイキなシステムは、かくのごとく、サウンドの上でも、西独製の新進ブランドのスピーカー・システムを思わせるにもかかわらず、なんと米国製のスピーカーなのである。
 アドヴェントは、すでにこの4年間米国の新しいブックシェルフ・システムの名として、コンシュマー・レポート誌において絶賛され、BestBuy(最高のお買い物)に選ばれて以来先輩格のARやKLHに並ぶロング・ベストセラーを続けているシステムだ。このアドヴェントはARやKLH同様、米国スピーカーの中にあって、生粋のイースト・コースト派で、いわゆる品がよくて万人向けの優等生的サウンドのシステムだが、その中でもアドヴェントは高音に鮮かさを加えている点と、価格的にもっとも安い点で、いかにも現代的だ。
 アドヴェントには「レギュラー・アドヴェント」と「スモーラー・アドヴェント」のただ2機種のみしかなかったが、この新しいシステムが「アドヴェントII(ジュニア)」として登場してからはまだ間もない。つまり、アドヴェント・システム中の新顔なのだ。
 この数少ない製品から「品種をやたら増やすことのないメーカーの姿勢」が感じられるが、アドヴェントIIは、それなりの理由があって加えられた新製品だ。
 それなりの理由とはなにか。それをこの現代的デザインの白く小さな姿が物語り、コンチネンタル・サウンドを思わすこの響きがそれを示そう。
 アドヴェントIIは、明らかに従来のアドヴェントの、今までの米国製スピーカーから突き抜けた企画で創られた「新しいシステム」なのである。
 このシステムが、西独でもなければ、英国でもないし、北欧でもなくアメリカから生れた、という点に、大きな意義があるというのである。
 アドヴェントはすでに、米国市場において大成功を収めているが、アドヴェントIIのデビューによって、アドヴェントの新たなるファンが大いに増えることは間違いなかろう。アドヴェントが狙うファンは、ヨーロッパ製システムを予定していた、センスフルな若者なのだから。それはちょうど、クルマでいえば、ワーゲンを買おうとしていた若者ともいえるし、ありきたりのアメリカの良識にあき足らない感覚を満たすに違いない。そして、日本市場でもまったく同じ意味でアドヴェントIIは、大いにファンを獲得するに違いない。アメリカと違うのは、このアドヴェントIIによって日本市場で初めてアドヴェントが本格的に腰を据えるだろうという点である。

エレクトロボイス SP8

岩崎千明

ステレオサウンド 32号(1974年9月発行)
「AUDIO MY HANIECRAFT C・Wホーンシステムの制作と試聴記(下)」より

 エレクトロボイスのユニットの中でも、もっとも小さな8インチ口径のフルレンジユニットで、価格もJBL♯2110とほぼ匹敵する。
 同社の数あるユニットの中でも、非常に使い易いということ、いわゆるエネルギー感の強い、音量の充実感がある、という良さが感じられる。このユニットの場合、いわゆるモノーラル時代の基準にしては非常にレンジの広いものだったのだが、今日それを聴いてみると、ハイエンドにおいてそれほどレンジが広いというわけではない。ただハイエンドにおける僅かな強調だと知らされるのだが、それによって非常にバランスが良い印象だ。
 もともとこのユニットは、バスレフ型などのエンクロージュアを使うべきだろうが、現在のブックシェルフシステムと較べると、それはバスレフ型にしろ密閉型にしろかなり大型であるはずである。このユニットのもうひとつの特徴は、エッジにあり、今日におけるフォームラバーを用いたフリーエッジとも違うし、コルゲーション・エッジのひとつだが、それにしてはf0がかなり低くなるべき構造を持っている。それが、このバックロードホーンにより、的確なロードがかかってコーン自体バタつきという心配がなくなったことがあげられる。低音を上げてみても、コーンの動きをみると無理な振動をしていない。つまり、SP8Bの良さは、音量を上げても充分に確認でき得たそうしたことからも高域から低域までレンジも広く、バランスの良さも充分だ。あるいはJBL♯2115よりもかえってSP8美非の方が潤いのある音という感じを受け、一般の音楽ファンにはより多くの良さを認めるのではないだろうか。2115のような、フラットレスポンスというのではなくて、音楽的バランスという点では大変嬉しい。加えてエネルギー感が強く、ユニットの出し得る低音をホーンロードによってさらに強調している。特にJBL♯2110のようにやや中低域に豊かさがあるというわけでなく、しかも2110と同じような、高い音量を期待できる。つまり広い部屋でガンガン鳴らすことができ、その状態でもバランスが非常に良く、低音の力強さとアタックの見事さが得られる。これは、やはりユニット自体の基本条件、たとえば、マグネット中心の駆動系と振動系の関連性、コルゲーション・エッジによって得られたバランスの良い帯域、それぞれがバックロードホーンによって効果を高めているといえよう。
 実は、このSP8B自体の良さをバックロードホーンによって僕自身も大いに見直した訳で、このユニットはこんなに良かったかなと改めて知ったのだった。このユニットの場合、クラシック、特にオーケストラものを聴いても豊かさもあり、しかも音の分解能も適当にあり、バロックを聴けばその繊細感もでる。中音のあざやかさもうるおいもたっぷり感じられる。ロックを聴けば、フェンダーベースの持つ力に満ちた低音の響きなども充分出してくれる。つまり万能な、誰にでも奨められるユニットだ。ただここに得られた音をさらに良くしようということは難しい。というのは、このシステムはSP8Bによって完成されてしまったといえ、トゥイーターを加えたからさらに良くなることはまず考えない方がよい。

アルテック 403A

岩崎千明

ステレオサウンド 32号(1974年9月発行)
「AUDIO MY HANIECRAFT C・Wホーンシステムの制作と試聴記(下)」より

 アルテックの中でも特に手頃な価格のこのユニットは、ここに集められたユニットの中でも一番安い、ユニットの後にトランスをつけるための台座がついていることからも、本気になってハイファイを志向する人からは敬遠されがちなユニットで、多分、多用途に向けて作られたスピーカーということができる。
 アルテックの他のスピーカーにもいえる良さ、大きなメリットとは、やはりうまいバランスにある。このユニットでもそれは充分感じられるのだが、そのうまいバランスをバックロードホーンによってさらに拡大しようと期待すべきかどうか、それに先だって感じさせてしまう。
 ただ、ここでつかっているユニットは合計4本、ユニットだけで約二万円を費やしてしまうのだが、アルテックのブランドが持つ信頼感やあこがれう満たすことを考えると、この価格は驚異的に安いわけだ。その意味では、最初にエンクロージュアを作って、なにはともあれという折、手頃なユニットだといえよう。
 このユニットの外観と価格からは、そう多くのものを期待する人はおそらく少ないに違いない。ところが実際にエンクロージュアに取付けて聴くと、一瞬うなってしまう。やはりアルテックというのは、音楽を非常によく知り、しかも中音の量感が──量感という言葉からはどうしても低音のイメージを持ってしまうのだが、この場合には中音のそれが──よく出る。これはJBLの♯2110などと相通じる量感ともいえようか。ただ、力という点でアルテックの方に、もう少し力強さが欲しい。力強さとは、たとえば打楽器の立上り、各楽器の分離、コーラスの分離などについて、もう少し力があったらもっと分離が良くなったのではないか。あるいは、コーラスのハーモニーが良く出るが、そのコーラスの一人一人の唄を細かく聴こうとすると、それらがぼやかされる物足りなさを感じてしまう。つまり、音の力強さとは、全体の力を意味するのではなく、音のひとつひとつに対する立上りの良さで発揮される。そういった意味での力強さが欲しい。特に中音域に対して、高域は、このユニット自体が持つ好ましい、いわゆる〝ウェル・バランス〟が2個のユニットを使用したことにより、かなり弱められてしまったようだ。聴感上、8kHzから10kHzぐらいまでやや強めながらダラ下りになる周波数特性をもつこのユニットを2個使ったことで、音のバランスはさらに低い方に移ってしまって、高域が欠如してしまったといったほうがぴったりする。低域においては確実にエネルギーの増強が感じられる。これはユニットをマルチ化した場合での周波数特性、指向特性、出力エネルギー特性といったものが影響したのだろう。
 そういった意味から、やはりこのスピーカーはトゥイーターを追加することにより、全体のクォリティをかなり改善することが期待できる。
 ただ、アルテックにはパンケーキと呼ばれている20cmフルレンジユニット755Eがあることを思うと、音のクォリティ、周波数帯域のバランスなども、こちらの方がより良い結果が得られるに違いない。

JBL 2115

岩崎千明

ステレオサウンド 32号(1974年9月発行)
「AUDIO MY HANIECRAFT C・Wホーンシステムの制作と試聴記(下)」より

 JBLのLE8T相当プロフェッショナルユニット♯2115は、業務用8インチ・トランスデューサーとしてポータブルモニターなどに使われている広帯域シングルドライバーだ。
 音の傾向として、現代のハイファイスピーカーの志向する多くのものをもち、ここで試聴した六機種の中では、もっもとフラットレスポンスを感じさせるユニットだ。リニア・エフシェンシーとJBLでうたっている、音圧に対して非常に動作範囲が広く、さらにハイプレッシャーのユニットには違いないのだが、能率を多少犠牲にしてもリニアに動作する範囲が拡大されている。
 そういった意味からは、ホーン型エンクロージュアに必ずしも合っているわけではなく、つまり、他の方式、バスレフ型や密閉型のほうがかえってこのユニットを活かすはずであろうが、しかし、実際にここで使ってみるとバスレフ型や密閉型の大型フロアタイプにしたのとは違った力強さが特に低音の迫力に感じられる。その意味ではもっとも成功度の高かったユニットだ。
 ただ、ここで聴きいった他のユニットに較べ、能率がやや低めで、アンプの出力は必要とする。このユニットの特長は、フラットレスポンスなのだが、もうひとつJBLらしさは、やはり人間の声の音域での充実感であろう。この声の漁期に関して、周波数でいうと200Hzからおよそ1200Hzあたりまでの音域に関して、非常に豊かな感じをもっている。それが低音の力強さ、しかも質の良さに支えられ、豊かさを盛り上げている。
 このユニットは、フルレンジとして完成度が高いのが何よりも魅力で、あえて高域用ユニットを補うという必要はあまりなく、かえってこのままの状態の方が、このユニットの持ち味を出せる。LE8Tと較べた場合、ぐっと高い方までレンジがのび、エネルギーも強められているので、高域に物足りなさを感じる場合にはトーンコントロールの操作で十分であろう。
 ジャズなどを聴いてみると、かなりソロのエネルギーが大きく、ジャズのいわゆる醍醐味も十分。クラシックの弦楽器のファンダメンタルが、ちょうど声の漁期にあたり、実に豊かに出てくれる。いわゆる高い音の繊細な感じというのも充分に秘めながらも、しかも豊かな響きをもつ。
 ジャズにしても唄やソロが単に迫ってくるというよりも、むしろ節度を保って前に出てくる。つまり、品の良い音という点でJBLのユニットの中でもはっきりそれを感じられる。
 片チャンネルに2本のユニットを使ったことにより、あるいは高域のエネルギーが少々物足りないと感じる場合もあるかもしれないが、アンプのトーンコントロールによってやや高域を上げるだけで、自然なバランスを得られるのはユニットの質の良さによるものだ。ユニットを片側1本での場合はそのままのバランスで充分いける。
 この選ばれたいくつかのユニットの中で、周波数レンジの広さもさることながら、音自体のクォリティの高さが特に感じられ、広く誰にでも、どんな種類の音楽を聴く人にも、このユニットは奨められる。いわゆるユニバーサルな傾向をもつシステムとして完成度も高い。

JBL 2110

岩崎千明

ステレオサウンド 32号(1974年9月発行)
「AUDIO MY HANIECRAFT C・Wホーンシステムの制作と試聴記(下)」より

 このJBL♯2110に対しては、僕自身も期待の程度がもっともも高かったわけ。原型のオリジナルユニットD208のプロ用としても、また38cmのD130の直系の20cmユニットという点からも。
 JBLには、ここで作ったバックロードホーンとほぼ同じような構造をもつプロフェッショナルシステムとして、容積において約4倍近い♯4520というシステムがあり、それに38cmゆにっとをつけたじょうたいとあまりにも似ているので、このシステムには大きな期待をかけたわけだ。
 このユニットのもっている傾向というのは、200Hzを中心としてサウンドのバランスの上で明らかにレベルが高い点だ。この辺は、声のファンダメンタルにあたり、声とか楽器のファンダメンタルが非常にアピールされる結果を促し、それ以下の低域エネルギーで、ホーンが効いてくるのでホーンロードによる力強い低音をささえている。
 200Hzから800Hzぐらいまでの中低域から低域にかけての音は、いかなる音楽においても最も重要な帯域として、いわゆる豊かさの基となる。その充実感が非常によく出て、どんな曲を聴いても、いかにも音楽が鳴っているなという実感がある。ただ、このユニットは、原形の開発時期が非常に古く、オリジナルはJBLユニットの中でもD130と並ぶ歴史的なユニットだけに、高域に関しては必ずしもレンジが充分とはいえない。
 聴いてみると、高域はおそらく3kHzあたりから落ちているし7kHzまでやっと出てる程度で、それ以上はかなり急激に落ちているようだ。したがって現代の再生音楽の水準を満足させんがためには、どうしても高域用のユニットを追加せざるを得ないといってもよい。
 トゥイーターをどう選ぶべきかは、この場合幾通りもの考え方ができ、残された楽しみも豊富といえよう。このシステムのまでの完成度は、70点、あるいはそれ以下といいたいかも知れぬ。といっても、こうした音域バランスだけで判断するのは実に危険だ。このシステムの中低域の音の質の良さは、今回集まったユニットの中でも特に群を抜いている。だから70点というのは、そういった良さを無視した上での話であって、その中低域の良さを高く買えば満点にもなり得る魅力を持っている。しかし、2115に較べて誰にでも推めるというわけにはいくまい。楽器の音をなるべつ間近に再生したい方々の期待には充分満足させてくれるのは事実なのだが。
 トゥイーターを追加して中音域から高音を補う場合、そのトゥイーターにどういうものを選ぶか、そのクロスオーバーをどの辺にもたせるか、具体的にはいろいろな方法がある。しかし、それによって完成されたシステムは、市販のあらゆるシステムの中でもめったにあるまい。無論ブックシェルフタイプでは到底得られっこないだろう。
 今後へのグレードアップという余力を残して、さらに現在の段階においても充分な魅力を持っているという点で、非常にマニア向きな、自作をいとわずに自分の手でシステムを作ろうとする人にとっては大変興味深い上、後々までの楽しみも大きく秘めたるシステムといえる。今回集められたユニットの中で、一番ユニットの本領を発揮した。