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ダイナベクター DV-3000G, DV-8050, DV-15B, DV-505

ダイナベクターのコントロールアンプDV3000G、パワーアンプDV8050、カートリッジDV15B、トーンアームDV505の広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

ダイナベクター

ビクター UA-7045

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックのDD型フォノモーターであるTT−101と、本来は組み合わせて使うべく開発された、スタティックバランス型のトーンアームである。デザインは、オーソドックスに機能を優先しており、特別にデザイン的に処理された印象が少ない点が、かえってこのアームの魅力である。回転軸受の上部の同軸上にあるインサイドフォースキャンセラー、ロック可能なアームレスト、アームリフターなど機能は標準的である。

ビクター UA-7045

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ビクターのトーンアームとして、一つの高水準に達した初の製品だと思う。スタティックバランス型で、回転部は独特なジンバルサポートで、高感度を実現、かつ、共振の害を押えこんでいる。7045は、35cmタイプのコンベンショナルなモデルだ。不安定なレコードのソリ、偏心に対しての追従もよく、トーンバランスも妥当である。

ビクター UA-7045

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 軽量級から重量級までカートリッジの適合範囲が比較的広いことは、ユニバーサル・タイプとして陶然ながら良い点だ。ごく中庸の音質で、カートリッジの音のちがいをわりあいによく鳴らし分ける。高さ調整やインサイドフォースキャンセラーのメカニズムなど、よく考えられている。上部で安定で音がよく、扱いやすい。価格からみると割安という印象。

オルトフォン RMG212

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 最近の性能が向上したトーンアームでも、SPU/Gが、やや特殊なカートリッジだけに、充分の性能が引出せるとは限らない。このモデルは、完全に専用アームとしての存在に魅力のポイントがあり、優雅に弧を描くS字アームの曲線、音質など、SPU/Gファンには欠かせない魅力をもつトーンアームである。

オーディオテクニカ AT-1501II

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 現在市販されている、この種のトーンアームとしては、異例に長期間の製品寿命を誇る製品である。基本型は、放送業務用のターンテーブルがステレオ化された時代に業務用のステレオトーンアームとして開発されたために、アーム基部からアンプをつなぐ、専用コードはなかったが、後になって改良され現在のようになっている。付属機構は、目的からいって何もなく、安定した音と長期間にわたる性能維持が狙いの製品である。

グレース G-545F

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カートリッジ、トーンアームでは、もっとも長い伝統をもつグレースの代表製品となると、やはり最新モデルではなく、G−545Fをあげなくてはならない。たしかに、高価格化しているトーンアームのなかでは、目立たぬ存在であるが、信頼性、安定度、仕上げなど、他を寄せつけぬ完成度の高さが感じられる。

SME 3009/S2 Improved

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 最近では、オーディオ製品の性能が止まるところを知らぬように向上し、次々に最新技術を導入したモデルが登場しているが、趣味的な面から考えると、実用性が前面に押し出されてきたために、直ぐに使える性能が高いものが多く、当面は使う予定はないが、手もとに置いて眺めるだけで楽しいという製品は皆無に等しい。この点では、SMEのトーンアームは、例外的な存在であり、デザイン、性能、機能、精度を含めて抜群である。

フィデリティ・リサーチ FR-64

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

最近の国産品には珍しく、重量級でコンプライアンスの低いMC系のカートリッジに焦点を合わせた設計が貴重でもあり嬉しくもある。ステンレス製の64Sは、私の試聴したものは多少カン高い傾向の音だった。その後改良されて音のニュアンスが変っているという話を聞いたが、現時点では64の方を推す次第。

オルトフォン RMG212

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 RMG309では長すぎて使えないという場合に、309ほど重厚ではないがSPU系のカートリッジの良さを抽き出すのに貴重な製品。かなり以前に製造中止になっていたが、一昨年、来日したオルトフォンの営業担当者に,私から再生産を要請したのがきっかけになって再発売されたといういきさつがある。

グレース G-714

 瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

かつてグラド社が、銃床用のウォルナットから削り出したアームを作っていた。それを最初に輸入したのがグレースで、おそろくあのウッドの暖かい感触を、現代の軽針圧時代に蘇らせたいという熱意がこれを生んだのだろう。軽針圧カートリッジに合わせてあるらしいが、トレースする姿はなかなか魅力的だ。

フィデリティ・リサーチ FR-54

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カートリッジの自重や針圧の多少やコンプライアンスなどに対して、幅広い適応力をもっている割には調整が簡単で、音質もとび抜けて素晴らしいわけではないが安定しているので、一時はカートリッジのテスト用として常用アームの一本だった。いまや価格も安い部類なのでベストバイに推薦できる。

オルトフォン RMG309

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SPU(GおよびA)タイプのカートリッジを、最もオルトフォンらしく鳴らしたければ、やはりRMG309を第一に奨めたい。個人的には不必要に長いアームは嫌いなのだが、プレーヤーボードをできるだけ堅固に、共振をおさえて組み上げれば、しっかりと根を張ったように安定な、重量感と厚みのある渋い音質が満喫できる。こういう充実感のある音を、国産のアームで菊子とができないのは何ともふしぎなことだ。

オーディオクラフト AC-300C

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 調整が正しく行われれば、レコードの音溝に針先が吸いつくようなトレーシングで、スクラッチノイズさえ減少し、共振のよくおさえられた滑らかな音質を楽しめるが、一点支持オイルダンプの基本動作を理解しない人が多いのか、調整ミスのまま真価を発揮させずに使っている人を意外に多く見かける。従って無条件に奨めてよいかどうか迷うのだが、私自身が最も信頼し愛用している主力アームの一本である。

グレース G-545F

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 5万円、6万円という高価なアームが、いつのまにか珍しくなくなってしまった現在、必要かつ十分な性能を保ちながらこの価格を維持しているというのは貴重な存在で、こういうのをほんとうのベストバイというのだと思う。こまかな改良が加えられているとはいえ、基本的には設計当初の精神を受け継ぐロングセラーである点も安心だ。ただ、ヘッドシェルのコネクターがこのメーカーだけ左右逆なので、使用上注意が必要だ。

テクニクス EPA-100

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トレースは素晴らしくスムーズ。カートリッジのコンプライアンスに応じて低域特性をコントロールできる可変ダンピングのアイデアは秀抜である。全体によくこなれた構造で、動作は繊細でありながら脆弱なところがなく、使い手に安心感を与える。ただこの価格ならデザインをもう一段リファインして欲しい。

SME 3009 S/2 Improved

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トレーシングの安定さ、アーム自体の音質の良さ、感度の良さ……等、データ的にはSME以上の製品もいまならもう珍しくないが、漆黒の盤面をトレースしてゆくのを眺めるだけでも、いかにも良い音楽が聴こえてきそうな気分にさせるアーム、というのは、SMEを除いてそうザラにないだろう。

ダイナベクター DV-505

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 振動工学の専門家のプロデュースになるもので、こりにこったユニークでオリジナリティに溢れた注目すべき製品てある。数々の新しい機構・構造は、トーンアームの分野では従来見られなかった独創的なもの。機械好きにはたまらない魅力をもつ。外観からして従来のものとは全く違う。音はがっしりと締り感度高し。

フィデリティ・リサーチ FR-64

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ダイナミックバランス型のトーンアームで、そのシリーズ製品には、ステンレス材を使用したFR64Sがある。このFR64は、一般的なアルミニュウム材を使用しているところが異なるだけで、その他はFR64Sとほとんど変わらない。やはり緻密なクラフツマンシップが感じられる優秀なトーンアームである。

グレース G-714

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ピックアップの専門メーカー・グレースのユニークなウッドアームである。こうした趣味的製品は大いに歓迎すべきであろう。専用のシェルだから、ユニヴァーサルとはいえ、使いよいとはいえない。しかし、そうした点を補って余りあるのがウッドの感触と、オイルダンプによる安定した低域の再生の魅力である。

オルトフォン RMG309

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンの伝統的な仕上げ技術が光る信頼性の高いダイナミックバランス型アームで、シンプルな構造が外観にも表われ、いかにもトーンアームらしい暖かみのある製品。どこか、材質仕上げに一味違う雰囲気をもっているのはさすがである。アンチスケートもリフターもない。Gシェルをつけるべきである。

オーディオクラフト AC-300C

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 AC300のリファインされたタイプがこのAC300Cである。オイルダンプの安定したトレーシングとダンピングにより、カートリッジの低域を素直に再生し、力のある再生音が得られ、金属的共振感は除去される。音のいいトーンアームなのだ。AC300と基本的には同じだが、こちらのほうが機能が豊富。

フィデリティ・リサーチ FR-64S

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フィデリティ・リサーチのトーンアームには、緻密なクラフツマンシップがあって、われわれを裏切ることがない。これはステンレス材を使った高級なダイナミックバランス型で、スプリングによる針圧印可機構も精巧をきわめている。サブウェイトを使えば広い適応性をもち、高感度と押えのバランスは見事だ。

テクニクス EPA-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 おそろしくこったトーンアームである。少々こり過ぎて、ダンピングコントロールなどは、一般にどこまで使いこなせるかが不安でもある。しかし、ここまで精巧に作られたトーンアームを持ち、使う喜びは、また格別であろう。デザイン的には私個人の好みとはいえないが、見るからにエンジニアの情熱と、仕上げの緻密さが納得できるであろう。ユーザーのほうも、作者と同じようなこり性の人であるべき製品。

テクニクス SP-10MK2 + EPA-100 + SH-10B3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 モーターが回転すればメカニカルな振動を発生する。それがターンテーブルに伝われば、ピックアップがそれを拾ってスピーカーからゴロゴロと雑音が出る……。古いフォノモーターではそれが常識だったから、駆動モーターのシャフトとターンテーブルのあいだにゴムタイヤのような緩衝材を介していわゆるリムドライブにしたり、弾力のあるベルトによってベルトドライブしたりして、モーターの振動がターンテーブルに伝わらないような工夫をした。松下電器が、駆動モーターをターンテーブルに直結させるダイレクトドライブの構想を発表したころは、まだそういう古いフォノモーターの概念が支配していた時代だった。
 しかし実際に市販されたSP10は、そんな心配を吹き飛ばしたばかりでなく、回転を正確に保ち回転ムラを極減させることが、いかに音質を向上させるかを教えてくれた。それ以後、日本の発明になるDDターンテーブルが世界のプレーヤー界を席巻していったいきさつは周知のとおり。
 SP10は、たしかに性能は優れていたが、デザインや仕上げや操作性という面からは、必ずしも良い点をつけられなかった。アルミニウムダイキャストを研磨したフレームは、非常に手間のかかる工作をしているにもかかわらず製品の品位にブレーキをかけている。ON−OFFのスイッチの形状や感触がよくない。速度微調ツマミの形状や位置やフリクションが不適当で知らないうちに動いていしまう。ゴムシートのパターンがよくない……。
 改良型のSP10MkIIで、クォーツロックのおかげで微調ツマミは姿を消した。ON−OFFのスイッチの形は変らないが感触や信頼性が向上した。ターンテーブルやゴムシートの形がよくなった。性能については問題ないし、トルクが強く、スタート、ストップの歯切れの良い点もうれしい。少なくとも特性面では一流品の名を冠するのに少しも危げがない。
 ただ、MKIIになってもダイキャストフレームの形をそのまま受け継いだことは、個人的には賛成しかねる。レコードというオーガニックな感じのする素材と、この角ばってメタリックなフレームの形状にも質感にも、心理的に、いや実際に手のひらで触れてみても、馴染みにくい。
 この点は、あとから発売された専用のキャビネットSH10B3の、やわらかな肌ざわりのおかげでいくらかは救われた。このケースは素材も仕上げもなかなかのものだ。
 新型アームEPA100。制動量を可変型にしたアイデア、軸受部分の精度と各部の素材の選び方などすべてユニークだが、それにも増して仕上げの良さと、むろん性能の良さを評価したい。部分的にはデザインの未消化なところがないとはいえないが、ユニバーサルタイプの精密アームとして、SMEの影響から脱して独自の構想をみごとに有機的にまとめあげた優れたアームといえる。このアームがMKIIになり、SP10がMKIIIになるころには、どこからも文句のつけようのない真の一流品に成長するのではないだろうか。