瀬川冬樹
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
FMチューナーの開発では、我国で最も古くからの経歴を持つ春日二郎氏をチーフとするアキュフェーズの作品だけあって、動作の安定なこと、全く安心しきって使える製品。意匠的には少々古めかしさを感じさせるが、それもいまや一種の風格といってよいだけのキャリアが、逆にユーザーに信頼感を与える。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
FMチューナーの開発では、我国で最も古くからの経歴を持つ春日二郎氏をチーフとするアキュフェーズの作品だけあって、動作の安定なこと、全く安心しきって使える製品。意匠的には少々古めかしさを感じさせるが、それもいまや一種の風格といってよいだけのキャリアが、逆にユーザーに信頼感を与える。
岩崎千明
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より
アキュフェーズのブランド名でケンソニックからスタートして、もはや数年の月日がたつ。ケンソニックの名は伝統の深からざるオーディオ業界にあってもなおもっとも日が浅い。それだけに、一流ブランドとしての成り立ち、あるいは信頼を勝ちとるための努力はなみのものではなかったろう。
それにしても僅かな期間に世界的に高い製品評価と高級メーカーとしての信頼とを得たのは十分にうなずける根拠を容易に求められる。そのひとつは高級機種のみを限定して製造することであり、その二は一応発表した製品は決して競合すべき新型を出さず、また中止もしないということだ。
この一流品たる資格の基本条件たる二つの点を当事者たるメーカーが製品発表の事前にはっきりと明言しているというケースは、めったにあるものではないがアキュフェーズの場合がこれだ。高級製品メーカーとしての見識と誇りの高さとを知らされ、それが信頼への深いきずなとしてユーザーとメーカーとを結びつけている。
プリアンプC200と共に最初に発表したパワーアンプP300こそケンソニックの名を世界に知らしめた最初のアンプであり、その時にペアーとなるべきチューナーとして出たのがT100である。
この三機種こそ、アキュフェーズブランドの名を代表するべき3つの象徴といってもさしつかえなかろう。しかしこの後のハイパワー時代の急激な拡大に伴ってパワーアンプはさらに、2倍のパワーアップを図った国産初と思われる300Wの大出力を秘めたモノーラルパワーアンプ、M60となった。そこでP300に代ってM60がアキュフェーズ・ブランドの旗頭となったのだ。M60は、300Wのハイパワーながら、その価格28万円を考えると、今日はっきり国際的な市場を視点としてもなお価格的に妥当なものであろう。
日本製アンプが、日本国内市場でごく割高なる価格をつけられた海外製アンプと競争でき得るとても、当事国では日本製アンプが、あまりに高価になり過ぎる例が多い中でアキュフェーズ製品はすべて価格的に国際市場のどこにおいても十分に納得でき得る価格であるという点は、見逃せない大きな特徴であり、この点こそがアキュフェーズ製品が国際的な意味からも優秀製品であることの、もっとも大きな理由だ。
ケンソニックの中核がかつてはトリオの主脳陣であったことはよく知られており、さればチューナーの文字通り開発者としてアキュフェーズのチューナーもまた大いに期待できる製品だ。その期待は海外の評価が早くも、T100デビュー早々に、「FMチューナーのロールス・ロイス」という賛辞で示された。アンプ同様、豪華な仕様と風格とはその底知れぬ深い完成度を感じさせ、そのまま製品の高い品質への信頼感へもっとも大きな支えとなっているからだ。
岩崎千明
サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より
ケンソニックは、トリオのトップクラスの技術者がグループを作って始めた新進メーカーだ。高級品を選んで作るという姿勢がとても好ましく、いかにもハイファイメーカーとしての基本姿勢そのものをメーカーの体臭として感じとれる。最新に作った製品P−300を始め、すべてのパワーアンプ、プリアンプがすべて海外市場で最高の賛辞を受けた実力ぶりも高く評価できる。特に日本での高級アンプが、価格的にベラボーな高価格が多かった2年前の初期から、他社とは違って実質的価格を打ち出しており、これがまたハッタリのない実力を感じさせるゆえんだ。それというのも、ケンソニックは当初から海外市場を大きなマーケットとしてこそ成り立つことを考えていたためであろう。価格的に、日本市場で極端な割高な海外製品の価格を相手とせず、その本国での価格、つまり実質価格を相手として、ケンソニックのすべての製品価格の基準としている。この辺が内容にふさわしく、海外ライバル製品に対してはるかに割安で、高級製品としても高い商品価値をそなえている理由だ。
ケンソニックの最新製品はM60と呼ばれる300ワットのモノラルアンプだ。1台28万円、従ってステレオで56万円となるが、300Wのステレオ用となると製品は海外製を見わたしても多くない。マッキントッシュMC2300を始めSAEの2500、マランツ510など250ワット・ステレオが多い。国内製品でもラックスのM6000が唯一で、山水BA5000も250ワット・ステレオだ。M60は、だから300ワットのステレオ用でも、これでももっとも低価格アンプということになる。M60はこうした大出力なのに、驚くほど静かな音が特長だ。静かといっても、一たんボリュームを上げるとフォルテでは床を鳴らし、家をゆるがせるだけのすごいエネルギーを出せるのは、もちろんだ。しかし普段は、これで300ワットかと思うほど静かなのである。とても自然でその音はナイーブですらある。ちょっと女性的なほどだ。しかし、その芯はむろんケンソニックのすべてのアンプのように、ガッチリした力強い筋金入りで、それはここぞというときにのみ、頭をもたげるのだ。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
音のバランスの作り方は、大掴みにはマッキントッシュ志向といえ、アンプの音質としては必ずしも新しい方向とはいいにくいが、円やかで聴きやすい独特の充実感がある。
菅野沖彦
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
150W×2の国産ハイ・パワーアンプの先駆的存在。厚みと暖かさを持ったタッチは音楽を快く響く。特に弾力性に富んだ低音は魅力的である。
岩崎千明
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
プリメインとしては、このクラスより下も上も作らないという姿勢がまずなによりも好感がもてる。セパレートに比べてややソフトだが、パワーと内部の高級品らしさが魅力。
岩崎千明
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
アキュフェーズのチューナーということで世界にまかり通るというもの。ロールスロイス級と外誌で讃えられたその質は、国産チューナーの中でも群を抜くクォリティと再生音。
岩崎千明
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
高級チューナーにもっとも腕をみせるであろうという期待は、このT101という実質的製品により実現され、このクラスで抜群の製品として完成度も高く質的魅力もいっぱい。
岩崎千明
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
日本市場に数あるハイパワーアンプの仲で価格まで考慮した上で、世界市場にまかり通り得るごく僅かな製品の最右翼がこのアンプ。引きしまったサウンド、力強くパワー感十分。
菅野沖彦
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
100ワット×2の出力を持つアンプだが、透明で滑らかな音質は品位が高い。適度に甘美な魅力を特長としている。2個のレベル・メーターを配したデザインもマニア好みだ。
岩崎千明
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
ケンソニックはパワーアンプの方が有名になりすぎて、おとなしいパネルデザインのプリはどうも影がうすい。全段Aクラスの非常に正攻法的な回路で完全さをつくされている。
岩崎千明
スイングジャーナル 7月号(1974年6月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
商品として完成されたE202をSJ試聴室の机の上に置いて秘かに舌を巻いた。
E202との初顔合せはすでに数10ヶ月前のプロト・タイプであった。すでに、その時見せつけられた高性能振りと、力に溢れるサウンドにおいて、言うべき言葉も無かった程に感服してしまったのだが、その外面的デザイン、特に仕上げの話に集中した。
「このアンプが20万前後だとすれば、20万円という少なからざる投資をする側の期待は、おそらく絶大なものであろうし、この外観上、パネル・デザインではなく表面の仕上げの不完全さからだけで幾分不満を抱いてしまうのではなかろうか。しかも購買者との最初の出合いはおそらく外観のみで、多くの面がユーザーの内側に入りこむことなく、決断を迫られるに違いない」
ところでこの言葉は実は数ヶ月前に某社の高額アンプを示された時にもやはりメーカーの担当者に語ったと記憶する。日本のオーディオ・メーカーは、今までコスト・パフォーマンスという面を中心的に、あらゆる面を推進してきたため、高額コンポーネントで完備していなければならないはずの真の「高級感」、「豪華なフィーリング」高級投資者に向けるべき感覚やその満足感をよく知らないのではなかろうか。
それというのも今や世界を席巻しつつある日本のアンプ、といえどもその国の最高級製品、例えばマッキントッシュ、マランツをはじめ米国における新らしいメーカーの諸高級商品の持っている、高級品のみの具える「フィーリング」を体得せんと意図した事が今までに無かったためか。
ところが、である。今日、こうして目の前にある商品となったE202は、パネル・デザイン、外観と、何ら変わるところが無いにもかかわらず、まったくパーフェクトに完成されていたのだ。例えば、プロト・タイプでは安っぽさの残っていたメーターとそのグリルの成型について言えば、商品ではいかにも高級VU計のフィーリングそのもので、やや小型とはいえ、プロフェッショナル用のイメージをはっきりと感じさせる。ツマミひとつにしても、一見さりげないのに、指で触れてその感触の良さ、動きのスムーズさに底知れぬ信頼感さえ指先から感じ取れるのだ。つまりすべての面で高級商品のみの持っている豪華なフィーリングが満ちみちて、それが外観の上にもにじみ溢れているのである。
国内メーカー製品も、ついに海外高級アンプにも負けないだけの豪華なセンスを秘めるに至ったかと、じっくりと見入ってしまったのだ。
たまたま手元に量産第1号と称する大手ステレオ専門メーカーの20万近いといわれるプリ・メインアンプの新製品が参上した。このメーカーの商品企画の腕は抜群と定評あるのだから当然だが、このP社製にもE202に較べ得るだけの豪華で重厚な高額商品でなければ出てこないたたずまいを感じさせて、いよいよ日本製アンプが、量だけでなく質においても名実共に世界一になる日も遠くないのを感じさせたのは感激的ですらあった。
その感激の真只中でのE202のSJ社の試聴が僅かなりともマイナスとされるような点がある訳がない。新着の「ザ・クルセイダース」のライブの力に満ちた明快なサウンドは試聴室に爆発し、分厚いコンクリート壁を隔てた編集諸氏の面々から「もう少し音を絞ってくれまいか」と陳情されたほどであった。
そのサウンドに関してとやかくは言うまい。ただ伝えておかねばならないのは、すでにケンソニックの最高製品として発表されているC200、P300との組合せと切換えてもその迫力一杯のジャズ・サウンドは、信じ難いことにはE202においても殆んど変らない、という事実だ。ごくごく低レベルの歌において、E202に明快さが加わるという以外には。
市販高級アンプの続出する此頃だが、今までの製品とはっきり次元を異にする、世界を目ざした超豪華アンプということになると、残念ながらこれだというものは滅多にない。しかし、ケンソニックE202こそは、そういう意味で、世界に誇り得る、海外においてもその良さをはっきりと認め得るプリ・メイン型アンプのベストと言っても良い。
菅野沖彦
ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より
このアンプの実力は世界の一流品だ。魅力ある製品として取り上げた事を前提としてケチをつければ、デザインがモダンでもクラシックでも、オーソドックスでも前衛的でもないし、趣味としても高い品位には至っていないのが玉にキズといったところ。片チャンネルで150ワットのハイパワーながら、ローレベルでのリニアリティのよさが、きわめて高級品の音質を実現していて、使って大満足のアンプの一つである。
岩崎千明
ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より
わが家において常用的に使い出した最初のハイパワー(一応100W以上)アンプがアキュフェーズだ。力強く明晰で曇りかげりのないサウンドが、あるいはあまりにもすべてをさらけ出しにしえぐり出してしまうといえるが、それを許せるのは生々しい暖かみさえある中声域の充実感だ。A級を全段に採用したプリの良さもあろうが、マランツ16と替え、2505と替えて、もっとも歪みの少なさを感じさせるのは最新技術の裏づけか。
岩崎千明
スイングジャーナル 5月号(1974年4月発行)
「AUDIO IN ACTION」より
●アンプはパワーが大きいほど立上り特性がよくなるのだ! だからジャズには……
アンプの出力は大きいほど良いか? はたまた、必要性のないただただぜいたくなのか?
そうした論争や、論説はいいたいやつにいわせておけ。オレは今日も午前中いっぱい200ワット出力のアンプをレベル計がピクンピクンといっぱいに振り切れるほどの、ドラムの響きに身をまかせ切っていた。
一度でもいい。キミも、大出力論争をやっているひまに、ほんのひとときを100ワット級のアンプで鳴らす空間にその身をさらされてみろ。一度でもハイ・パワー・アンプの洗礼を受けたが最後、ジャズを愛し、断ち切れないほどのファンなら、だれだって必ずやその虜になるぞ。必要ない、なんてうそぶいていたのは、実は、望んでも達せられないための、やっかみ半分のやつ当りだっていのうを、ひそかに思い当るに違いない。
ハイ・パワー・アンプから繰り出されるこの上なく衝撃的なパルスは、現代に息吹く若者にとってあるいは麻薬の世界にも例えられるのかも知れない。一度覚えたそのアタックの切れ込みのすざまじさは、絶対に忘れられっこない経験として耳を通してキミの大脳にガキッと刻み込まれてしまうのだ。もうそれを消そうと思ったって薄れることすらできやしない。それどころか、口でけなし、あんなのはだめな音と、どんなに思い込ませようと努力したところで、逆にますます強く求めたくなってくるあこがれにも近い感情を内側でたぎらせてしまうだけだろう。
恋の対象を初めて見かけたとき、それは少しも変りやしない。だから、ジャズ喫茶でスピーカーの前には、すべての環境から遮断されたマニアックなファンが少なからず、首をうなだれてサウンドにひたり切っているのだ。
スピーカーは、例え小さくても良い、そのすぐ前で座ろう。プレイヤーは今までのでもいい、カートリッジの質さえある水準以上なら。
ステレオの心臓はアンプだ。電気信号に変えてエネルギー増幅する、それがアンプの真髄。だから、アンプはきのうのより大きくしてみよう。2倍じゃなまぬるい。4倍も6倍も、いや10倍の出力のアンプなら一層結構、大きければ大きいほどいいのだ。それがたとえ借り物であっても、仮の姿でも、いつかはキミの所有になるはずだ。
大出力のよさを身をもって知ったならば、もう逃れられっこないのだから。良さが判ればキミのステレオの次の標的として、大出力アンプは、大きくキミの前にほかの目標を圧して立ちふさがるだろう。キミはそれに向かって猛進するだけだ。100ワット/100ワットのジャンボ・アンプに向かって。
ソニー TEA-8250
後から鳴らしたFETアンプのおかげでソニーのハイパワー・アンプはスッカリ形が薄れてしまった。けれど、1120のデビューのときの音そのものの感激がこのハイパワー・アンプ8250でもう一度思い出された。「あくまで透明」なサウンド。それは非情といわれるほどで、アタックの鋭さは正宗の一光にも似る。以前より低域の豊かさが一段と加わっているのは、単なもハイパワーのなせる所だけではないかも。
ソニー TA-8650
20種にあまもハイパワー・アンプを並べたこの夜のSJ試聴室。編集F氏Sくんを含め、むろんこのオレも一番期待したのがソニーのこのFETアンプだ。球の良さをそのまま石で実現したといういい方は、気に喰わないというより本当にして良いのかという半信半疑からだ。
その不安も、まったくふっとんでしまつたのだ。なるほど確かにハイパワー管球アンプの音だ。このFETアンプ8650に最も近いのは、なんと米国オーディオリサーチ社管球アンプだったから。
低域の迫力の力強い響き、プリアンプのような超低域までフラットだが力強さがもうちょっと、なんていうのがFETアンプではうそみたいに直ってしまう。中声域から高域の力に満ちた立ち上りの良さプラス華麗さも、石のアンプのソッ気なさとは全然違う。
こうしてまたしてもソニーは、アンプにおいて1120以来の伝統よろしくオーディオ界のトップに出た、といい切ってよかろう。製品が出たら、まっさきにオレ買おう。
オンキョー Integra A-711
711はなんと20万を越す名実ともに一番高価なインテグレイテッド・アンプだ。しかし、音を聴けばそれが当然だと納得もいこう。ローレベルでの繊細さと、ハイパワー・アンプ独特の限りない迫力とを見事に融合させて合わせ持っている数少ないアンプだ。音の特長は、……ないといってよい。ない、つまり無色、これこそアンプメーカーの最終目標だろう。オンキョーのアンプがずっと追いつづけた目標は、このアンプではっきりと捉えられていよう。
オーディオリサーチ SP-3 + Dual75
かつてマランツ社で真空管アンプを設計してたっていう技術スタッフが集まって興したのがこのメーカー。だからトランジスタ・アンプ万能の今日、その栄光と誇りはますます燃えさかり、このどでかいアンプを作らなければならなくなったのだろうか。なにしろ75/75ワットという実効出力にも拘らず、200ワットクラスの石のアンプとくらべても一歩もひけをとらず、それどころかサウンドの密度の濃さは、どうやら石のアンプでは比すべくもない、と溜息をつかせる。
SAE Mark 1M + IV C
ロス周辺の新興エレクトロニクス・メーカーと初め軽く受けとっていたが、どうしてどうしてこの4年の中に、オーディオ界ではもっとも成功を収めたアンプ・メーカーだ。それだけに製品の完成度の高さと漉さは、抜群だ。プリIMと接続した状態で端正で品のよいサウンド。数あるトランジスタ製品中ベストの音色をはっきりと知らせたあたり、実力のほどをもう一度思い知らされろ。個性的でスッキリしたデザインはサウンドにも感じられる。
Lo-D HMA-2000
やっぱり日本産業界切っての大物「日立」、やることが違う。というのがこのアンプのすべてだ。果しなくパワーを上げていくと、遂に突如、ひどくなまってくるのに慣らされた耳に、このアンプは不思議なくらい底知れずのパワー感がある。つまり音が冴えなくなる、という限界がないのだ。それはテクニクスに似てもっと耳あたりのよいサウンドの質そのもののせいといえる。日立のオーディオ界における新らたる実力だ。
フェイズリニア 700B
そっけないくらいの実用的ハイパワー・アンプ。350/350ワットで700ドル台、日本でも40万円台と類のないハイCPのスーパー・アンプだ。今度バネルレイアウトを一新して、マランツ500そっくりのレベルメーターを配し、左右の把手のゴージャスな巨大さは、700ワットという巨人ぶりを外観にのぞかせたグッドデザイン。音はそっけないはどさっぱり、すっきりしているが、底ぬけのハイパワーぶりは低音の迫力にいやおうなしに感じられる。
マランツ Model 500
今日マランツ社には創始者のMr.ソウル・マランツはいない。しかし、マランツのソウルは今もなおマランツの全製品に息吹いている。それをはっきりしたサウンドだけで聴くものに説得してくれるのが、モデル500だ。250/250ワットのアンプながら、それはもっと底知れぬ力を感じさせるし、モデル15直系の、音楽的な中声域の充実された華麗なサウンドはちょっと例がない。しかも現代のアンプにふさわしい豪華さを具え、この上なく超広帯域だ。
ダイナコ Stereo400
なにしろ安い。アチラで600ドル、日本でも30万円で200/200ワットのジャンボぶり。すでに普及価格の高級アンプで定評あるダイナコの製品だけに前評判も高く、それらの期待に充分応じてくれる性能とサウンド。高音域のおとなしい感じもいわゆるウォーム・トーン(暖かい音質)というダイナコ伝統のマニア好み。うるさいヒトほど惚れ込んでしまう、うまい音だ。ボリュームを上げて行くと、分厚い低音の確かさにも一度惚れ直す。
ダイヤトーン DA-P100 + DA-A100
ダイヤトーンのプリアンプの端正なたたずまいは、なにかマランツをうんと品よくしたといいたくなるような優雅さをただよわす。管球アンプを思わすパワー・アンプのゴツイ形態は、いかにもパワー・アンプだ。それはひとつの目的、エネルギー増幅の実体をそのまま形に表わした、とでもいえようか。このコンビネーションのサウンドはまた実に品のよいサウンドで、いかなるスピーカーをもこの上なく朗々と鳴らす。まさに、アンプはスピーカーを鳴らすためにある、ということをもう一度教えてくれるアンプといえそうだ。
100/100ワットと今や、やや小ぶりながらひとまわり上のパワーのアンプとくらべても聴き劣りしないのは充実した中声域にあるのか、あるいはその構成の無理なく単純化された回路にあるのか。あまりワイド・レンジを意識させないのに、深々と豊かな低域、すき透るように冴えた高域、なぜか手放せなくなるサウンドだ。
パイオニア Exclusive C3 + Exclusive M3
ズラリ並んだ国産アンプ中、スッキリとした仕上げ、にじみ出てくる豪華な高級感、加えて優雅な品の良さ。やはりパイオニアの看板製品にふさわしく、もっとも優れたデザインといえる。
このデザインは、サウンドにもはっきりと出て、品の良さと底知れぬ迫力とを同時に味わせてくれろ。やや繊細な音のひとつぷひとつぶながら全体にはゆったりとしたサウンドはこうした超高級アンプならではで、さらに加えて「パイオニア」らしいともいえようか。このM3にさらにAクラス動作50W+50WのアンプM4が加えられるという。A級アンプというところに期待と限りない魅力を感じさせる。待ち遠しい。
アムクロン DC-300A
ギラギラした独特のヘアライン仕上げのパネルは、いかにも米国製高級趣味といえようか。でもこのアンプの実力は、その製品名の示す通り、ラボラトリ・ユースにあり、直流から数100万ヘルツという超広帯域ぶり。ガッチリと引き締って、この上なく冷徹なサウンドが、なまじっかの妥協を許さない性能を示していも。米国でのハイパワー化のトリガーともなったこのDC300、今日でもずばぬけた実力で、マニアならマニアほど欲しくなりそう。
マッキントッシュ MC2300
ここでとやかくいうまい。SJ試聴室のスタンダード・アンプというより今やあらゆるアンプがハイパワー・アンプとしての最終目標とするのがこの2300なのだから。サウンドの管球的なのもつきつめれば、出力トランスにあり、このアンプのあらゆる特長となっているサウンドに対する賛否もここに集約されるが、誰もが説得させられてしまう性能とサウンドに正面切ってケチをつけるやつはいまい。
サンスイ AU-9500
黒くてデッカクて、やけに重いアンプ。山水の9500は75・75ワットっていうけれど、どうしてどうして、100/100ワットのアンプと互角以上にその力強い馬力をいや応なしに確かめさせてくれる。,
ECMのすざましいばかりのドラムは、このアンプの13万なんぼというのが信じられないはどに力いっぱい響いてくれる。SJオーディオ編集者のすべてが認めるこのジャズ向き実力はハイパワ一時代、まだまだ当分ゆるぎそうもない。
テクニクス SU-10000 + SE-10000
以前、SJ試聴室での試聴では保護回路の敏感すぎから、実力を知るに到らなかった10000番シリーズ、今宵はガッチリとたんのうさせてもらった。さすが……である。
なんとも高品質な迫力と、分解能の良さに改めて10000番の良さを確めた。一式95万と高価なのだからあたりまえといえなくもないが、金にあかして揃えられるマニアなら、やはり手元にぜひおきたくなるだろう。物足りないくらいの自然さは最終的なレベルといえるだろう。
スタックス
A級150/150ワットというそのメリットよりもスタックスの製品というところにこのアンプの意義も意味も、また魅力も、すべてがある。世界でもっとも早くからスタテック・イクイプメントコンデンサー・カートリッジ、コンデンサー・・スピーカーをファンに提供し続けてきたスタックス。数々の幻の名器を生んできたメーカーの志向がアンプの特長の根底にずっしりとある。サウンドは、それこそまさにコンデンサースピーカーのそれだ。加えてローエンドの底なしの力強さに惹き込まれて時間の経つのも忘れさせるワンダフルな機器だ。(発売時期末定)
ラックス CL350 + M-150
309のパワーアンプを独立させたのがM150。75/75ワットというパワーもそれを物語る。アンプの高級ファンをガッチリと把握している企画と音作りのうまさはM150でもっとも端的にはっきりと現われている。しぶいが落ちついた品のよいその外観と音。加えてソフトながらいかにも広帯域をと力強さにも感じさせるサウンド。物足りないといわれるかも知れないが、しかし飽きのこない親しさもまた大きな魅力なのだ。
ESS/BOSE
日本にはこれから入ってくるだろうと予想される話題のスーパー・アンプ2種。ハイル・ドライバーで一躍注目されてるESSのモデル500。みるからどでかくゴツい力強さを外にまでみなぎらせて、早く聴きたいアンプだ。
もうひとつはペンダゴン型ボックスのスピーカーで有名なボーズのアンプだ。これは品のよいスマートな個性で粧おいをされた豪華大型。インテグラル・システム100/100ワットで200ドルと安いのが早くも出てきおったぞ。
アキュフェーズ C-200 + P-300
国内製品では実力ナンバーワンを目されているのが、ケンソニックのP300だ。このところ目白押しの国内ハイパワー・アンプ。なんてったって世界市場を意識して企画され、価格を設定されたというところにこのケンソニックのすべての製品の特長と意義がある。つまりケンソニックのアンプは実力を世界に問うた姿勢で作られているわけで、逆にいえば世界のマニアに誇れる高性能を内に秘めてもってことになる。
事実、このアンプをマッキンと較べ、マランツと比べても、一長一短、ブラインドで聴かせれば、どちらに軍配が上がるか率は半々。透明度の高さ、中域の緻密さにおいて特にすぐれ、高域の明るさと、低域の豊かさにおいて聴く者を魅了してしまう。
プリアンプC200のこの上なくナチュラルな音に、P300の良さはますます高められて国産ハイパワー・アンプの大いなる誇りを持つものにじっくりと味わしてくれる。
かくいうこのオレも、P300、C200のスイッチを入れない日はなく、メイン・システム、ハークネスはP300のスピーカー端子にガッチリと固定され、ひんばんに変っていたアンプが変わる気配もない。
岩崎千明
スイングジャーナル 4月号(1974年3月発行)
「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より
ケンソニックP-300が我家で鳴り出してから、すでに数週間になるが、音といい、外観といい、その風格たるやそこに居並ぶ数多いアンプと隔然たる違いをみせて、いままでにないサウンド・スペースを創り出している。
まず、従来の国産品のイメージを打破って、国際級のオーディオ製品を作り出したケンソニックに、なにはともあれ拍手を送ろう。この数年、国産オーディオ製品の質的向上が著しく進んで、誰しもが世界市場における日本製品の品質の高さは認めるこの頃である。しかし(ここに又しても「しかし」が入る)日本製品の高品質は、その価格にくらべてという前置きが必らず入るのである。「この価格ランクの製品においては」最高なのである。このクラスという前置なしの、最高級では決してなかった。高いレベルのオーディオ・マニアを十分満足するようなそういう真の意味での高級オーディオ製品は高品質の高級品の多い日本製にも残念ながらない。いや、いままではなかった。
口惜しくも、また残念であったこの日本製オーディオ製品の現状を過去形にしてしまったのが、とりもなおさず今回のケンソニックの新製品なのである。
ケンソニックの新製品、パワー・アンプP-300およびプリ・アンプC-200は、それ自体きわめて優れた製品であることは間違いないがその示す優秀さというよりも、この製品が市場に送り出されたことの真の意味、その価値は、日本製品の立場を世界のトップ・ランクに引き上げというただこのひとつの点にあるといえる。価格23万円なりのパワー・アンプP-300、C-200は16万5千円と、ともに従来の国産品の水準から見るとかなり高い。かなり高いこの価格以上のものが、かつてないわけではなく、テクニクスのプリ・アンプ、パワー・アンプの超高級製品10000番シリーズの45万円、50万円合せて95万円という製品がケンソニックに先立つこと1年余りで存在しているが、あまり私も含めマニアでも身近に接する機会が少くないような気もする。しかし、ケンソニックの場合は、企画段階から海外市場をも強く意識したプラニングがされ、諸仕様が作られた上、海外への前宣伝までもすでに手を打たれたと聞く。いまこうして実際に製品を手にしても、前宣伝のごとく商品として、価値の高さを、確かさをケンソニック新製品にみるのである。
ケンソニックの優秀性は、まずなによりも単なる日本市場ということではなしに、こうした世界市場を意識した上での、つまり世界の超高級製品を相手とした上での高級アンプとして企画した製品という点にあるといえよう。これはとりもなおさず、世界の一流品と肩を並べることを意識した製品であり、こういう姿勢から作られたオーディオ製品は少なくとも日本ではケンソニック以前にはない。
その自負とプライドとがまず製品のデザインにはっきりとうかがえる。なんのてらいもハッタリもないきわめてオーソドックなパネルながら、そのパネル表面とツマミの仕上の中に豪華さというにいわれる格調高さとが浸みでている。ハッタリがないだけに、それはとり立てる特長もないが、かたわらにおいて接すると、その良さ、持つことの満足感がしみじみと感じられる、という類いの風格だ。
ハイ・パワーの高級アンプに求めるもの、それに対して期待するものはいかなるものにも増してこうした「満足感」であろう。今までの国産品では一流の海外高級品と肩を並べるだけのこの種の満足感、それをそばに置くだけで、それを自分のものにするだけでかもし出されるこうした満足感を備えている製品はかつてなかったのである。もう1つオーディオにおいて最も技術進歩が著しい分野がアンプであろう。トランジスタの開発、それに伴う回路技術が追いかけっこで日進月歩。新しい素子の開発によってきのうの新製品が数ヶ月を経ずして魅力が薄らぎ始める。それがアンプの持つ1つの宿命である。高級品においては、それだけ挑戦に耐える絶対的なものが備わっていなければならない。
「満足感」という言葉はケンソニックの大きな特長としてはじめから標榜している言葉だが、それはサウンドにおいてもっとも感じられるであろう。ゆったりと落ちついて力をみせずに、しかし、ここぞというとき底知れぬパワーを発揮する、という感じの響き方だ。なんの不安もなく、まったく信頼しきってスイッチを入れボリュームを上げられるアンプ、これがケンソニックのP-300でありC-200である。
P-300の音は、ひと口でいうと静かなときは静かだが、いったん音が出はじめると、これはもう底知れずに力強いという感じだ。底知れぬといういい方のアンプはサンスイのAU-9500で味わって以来のものだが、ケンソニックの場合は、もっと素直なおとなしさを感じさせ、力のこもった芯の強さを知らされる。ちょっと聴くと明るい輝きと受けとれるが、実は、これは立上りのすばらしく良いことに起因するハイ・パワー独特のサウンドで、音色はどちらかというとマッキントッシュのトランジスタ・アンプと共通の、ずっしりと落ちついたサウンドだ。
このパワー・アンプに配するプリ・アンプC-200は、これまたソフトなくらいに暖かみを感じさせるサウンドが最近のトランジスタ・アンプになれた耳には真空管プリ・アンプと共通の良さと知らされる。つまりそれはケンソニックのセパレート・アンプと同傾向の迫力と輝きとを兼ねそなえているので、これを生かすことが上手な使い方といえよう。となると、真にハイクオリティーの高級オーディオ製品ならなんでもよいといえよう。
そこでまず第1に考えられるのは、過去の管球アンプ用として作られた最高のスピーカー・システムとカートリッジであろう。現実に我家でP-300を接いだことによってこの数年来のメイン・システムJBLハークネスは輝きと迫力とを格段と増したことを報告しよう。つまりP-300が我家の目下主力アンプとなって存在するわけだ。しかしまた優れたアンプが常にそうであるように、バスレフ構造のベロナに組入れたD130+075もいままでにない信じられないほどに朗々と鳴響いたし、なんと12年前に作られたAR2もいままでにないくらいに素直な張りをもった鳴り方でいまさらながらびっくりした。こうしたことを身をもって試したあとでスピーカーとして数多いなかから、ただ1つを選び出そうというのは所詮無理とは思いつつ厳しく選んだのが次のシステムだ。
JBLはプロ・シリーズのバックロード・ホーンの4530、ユニットはいわずと知れたD130(又は130Aウーファーでもよいが)ネットワークはプロ用3115といわず一般用のルX5を用いてホーンは375ユニット・プラス509/500のホーン・プラス・デュフユーザー。つまり2ウェイのシステムだ。もしバックロード・ホーンがなければ自作でもよい。いや、平面バッフルだって、それなりのバックロード・ホーンにない低域から中域にかけて立上りの良さが抜群だ。
もし、高域ののびにせっかくの市費-200+P-300の特長がうすれるというのなら1μFのコンデンサーを通してのみで075をつないだ3ウェイもよかろう。カートリッジにはオルトフォンSPU-GT。もしMM型がよいのならM15Eスーパーこそ絶対だ。
菅野沖彦
スイングジャーナル 11月号(1973年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
アンプのハイ・パワー化の時代といわれる中で、質量共にバランスした本格的な100ワット以上(片チャンネル)のアンプとなると外国製品に頼らざるを得なかった。今月の選定新製品としで選んだケンソニックの新しい製品、プリ・アンプ C200、パワー・アンプ P300は、国産ハイ・パワー・アンプの夜明けを告げるに充分なクォリティとパワーをもった第一級のセパレート・アンプである。C200はコントロール・アンプとしての機能を豊かに備えているし、その音質の透明な美しさは特筆すべきなのだが、こっちのほうは後で再びふれるとして、まず、そのパワー・アンプP300のほうから述べることにしよう。このパワー・アンプは片チャンネル150ワット(8?)の連続実効出力をもつもので、現時点では国産のモースト・パワフルなアンプである。ピュア・コン直結という最新回路を採用しているが、特に注目すべきは出力段にトリプル・プッシュプル方式を使っていること、全段は2電源方式プッシュプル駆動となっていることである。広いダイナミック・レンジや優れた位相特性を得ることができ、しかも安定した動作の得られるという理由をメーカーはあげている。ハイ・パワー・アンプのエネルギー供給源ともいえる肝心の電源部もさすがに余裕のある設計で、大きなパワー・トランスと4000μF×2の大容量コンデンサーが使われ、瞬間的なピークやハイ・パワー連続動作にも充分な安定を計っている。
大型メーターをアクセントとしたパネル・フェイスをみても、いかにも、このアンプの実力を象徴しているようで、多くの国産アンプ中で、この雰囲気は一次元高いところにあるように感じる。決してオリジナリティやひらめきのあるセンサブルなデザインとはいえないが、デザインの姿勢、使われているマテリアルや仕上げの高級性が、誠実に高級品のイメージを横溢させていて好ましい。
パワー・メーターは0dB、−10dB、−20dBの感度切換をもち、適度なダンピングで動く指針は、VUとピーク・メーターの中間ぐらいの動きを見せ、実用上アンプのピーク動作を読みとるには好適なもの。いたずらに華美なメーター・デザインの流行からすると、この地味な照明色や、フレームのデザインはいかにも高級品にふさわしい飽きのこない落着きをもっていて好ましい。
附属回路として、50%、25%のパワーに制限出来る切換式のパワー・リミッター、17Hz以下、24KHz以上を18dB/octでカットすることによって聴感に大きな影響を与えることなく可聴帯以外ノイズを防ぐバンドパス・フィルター、4組のスピーカー接続可能の切換式のスピーカー・セレクターなどを備え、このクラスのアンプの使用者の便を充分考えてつくられている。
実際に使ってみたこのアンプの実力は予想以上のものであった。アルテックのA7やJBLの4320などの大型システムを力感と繊細で緻密な解像力、そして柔かく透明感をもった魅力的な音で鳴らしたし、また、小型のブックシェルフにも低能率を補ってハイ・パワーの実力を発揮、朗々と鳴らしてくれた。音の品位の高さは近来のアンプにないもので、特にハイ・パワー・アンプにあり勝ちなキメの荒さ、高音域のヒステリックなとげとげしさといったものはよく制御され、美しいソノリティをもっている。
C200はデザイン的にはP300にやや劣り、少々寄せ集めのデザインの散漫さが気になるし、すっきりとしたまとまりに欠ける。しかし、やはり、使ってあるマテリアルや仕上げからくる高級感は滲み出ている。全段直結で、しかも完全プッシュプル動作をもつイコライザー回路はユニークな高級回路として注目されるだろう。コントロール・アンプにふさわしい豊富な機能、そしてP300との組合わせにおける質の高い再生音は、世界の一級品に勝るとも劣らない。これだけのパワフルなアンプでありながら、残留ノイズの少なさ、綜合的なS/Nの大きさは抜群で、まさに静寂の中から大音響が立上がる音離れの気持よさを味わうことが出来る。このアンプのロー・レベルでの音のキメの細かさや透明感の魅力は、このノイズの少なさが、少なからず役立っていそうだ。国際商品としての視野でみてこのアンプ(特にパワー・アンプ)の値打ちは高い。あとはどれだけの酷使に耐えるタフネスと安定性をもっているかを時間をかけて確めるだけである。
春日仲一、春日二郎、出原眞澄らにより、東京都大田区南雪谷(春日二郎氏の自宅)に、ケンソニック株式会社として創立。その後、横浜市緑区に移転。
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