プレーヤーシステムの最近のブログ記事

ソニー PS-4300

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岩崎千明


週刊FM No.10(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 かつてサーボモーターで圧倒的勝利を収めたソニーがクオーツロック以来、昔の実績をとり戻さんと強力なプレイヤーをデビューさせた。PS4300はDDモーターをベースにしたフルオートマチック・プレイヤーだ。現代的な高級プレイヤーの条件ともいえる軽針圧はもはや平均的な人間の指先の感覚では扱い切れずこの数年、各社からの新型の中心はフルオート全盛となった。ソニーお得意のエレクトロニクスによるサーボがゆきとどいていて、操作ボタンさえ触れるだけのワンタッチ・エレクトロ・スウィッチ。もっともこの羽根タッチそのものが必ずしも良いことばかりではなくて、かえって動作の不確実さを招きかねないのは皮肉。ボード上面でなくケースの前に位置させて誤タッチを避けているのだが、馴れないうちはそれでも操作させる意志がなくても触れてしまうのは赤い小さなランプがちらちらとつくせいかしら。この辺が狙ってるはずのイメージをぶちこわしてるのでは......。動作はまず満点に近い正確さ。ストップさせてから実際動作にちょっと間がありすぎる気がするが、手で直接アームを動かしてもメカとしては何ら差支えない点はいい。できれば5万台ともなったら、4万円と違い実用性能本位1点ばりでなく明らかな高級感が欲しいけど無理かな。アームはまあまあ、カートリッジは使いやすいがこれも価格帯相応の程度。

デュアル CS721

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

オートマチック機構の積重ねが生んだ優れた性能の高性能機。

マイクロ DD-7

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

プレーヤーの基本性能を正統的に追求した中級機。

ソニー PS-X6

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

プレーヤーの基本性能の徹底的追求から生まれた普及機。

ダイヤトーン DP-EC2

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

電子コントロールの便利さとマニュアルのよさが一致した実用機。

デンオン DP-6700

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

高性能と安定性、妥当な音質のバランスをもった使いよい高級機。

トリオ KP-7700

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

デザインは高級な重厚感に欠けるが内容の充実した優秀機。

サンスイ SR-929

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

レコード愛好家の心情を満たす重厚なデザインが魅力。

マイクロ DQX-500

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

独創的なコンセプションによる最新設計の注目機。

テクニクス SL-1300MK2

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

機能性と基本性能がよく練られた実用性の高いプレーヤー。

ヤマハ YP-D9

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

音楽重視の設計と地味ながら使いよいデザインの落着きをもつ中級機。

B&O Beogram 4002

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

プレーヤーデザインの常識を破る前衛的美しさに溢れた個性的製品。

ビクター QL-A7

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菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

外観、内容ともに高品質、高性能の価値の高い中級機。
瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「読者の質問に沿って目的別のベストバイを選ぶより

 オートプレーヤー(およびオートチェンジャー)が、長いあいだ日本に定着しにくかったのは、たとえば数年前までのオートプレーヤーの性能が、神経質で潔癖症の多い日本人のマニアにはなっとくのゆかないものであったこと、また、レコードの価格の安くないために、やや貴重品扱いされていたLPを、オートプレイで寿命を縮めることが嫌われた、などが大きな理由だろう。
 その枠を破ったのはテクニクスSL1300だ。DDモーターを搭載したターンテーブル。アームも1グラム級の針圧で動作する。それに、いわゆるオルトフォン/SMEタイプのプラグイン式ヘッドシェル交換型であったこともよかった。オートプレーヤーが日本のオーディオマニアのあいだで好まれなかったもうひとつの理由の中に、欧米の製品がカートリッジの交換がかなり不自由であったこともあげられる。SL1300は、つまりそれらすべての虚をついていた。オートが必要なら性能は多少犠牲になる。性能本位ならマニュアルタイプ、という固定観念は、この製品によって払拭された。
 性能や機能を犠牲にしないオートプレーヤーとして、こんにちの国産機の中から、ダイヤトーンDP−EC1MKIIおよびEC3、テクニクスSL1300MK2の3機種をまずあげよう。いずれも軽針圧カートリッジを不安なく使うことができる。とくにEC1MKIIの電子制御によるアームのマニュアルコントロールはうまくできている。
 B&O♯4002は、カートリッジが固定でターンテーブルがベルトドライブであるなど、性能面機能面でマニアには不満だろうが、形の美しさと操作の滑らかさで傑出している。形は少々武骨だがデュアル♯1249のオートチェンジャーの動作は信頼がおける。テクニクスSL1650はメカは立派だが外観その他にもうひとつこなれないところがある。テクニクスのローコスト機なら、むしろSL1301の方ができばえが良い。
 フルオートでなくオートアップおよびオートリターンのみの製品の中では、ビクターのQL−A7が性能を犠牲にしない良さで、またパイオニアXL1350が、よくぞここまで小型化したという点で、それぞれ製品としての特徴がある。
瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「読者の質問に沿って目的別のベストバイを選ぶより

 特別な方法を採らないかぎり、レコードの直径よりキャビネットを小型化することはできない。となるとあとはアームと操作機能の整理によって、どこまで小型化できるかという問題になる。従来、短いアームは音が良くないという説があったが、それはトラッキングエラーの増大よりも、アームの共振の処理の問題であったのではないか。つまりロングアームにくらべてトラッキングエラーが1〜2度増すという点は、聴感上での明らかな歪の増加にはならないが、もうひとつのアームの共振に目を転じると、共振周波数の現われ方やその分布状態が、ショートアームのほうが聴感上不利であったのだろうと考えるわけだ。しかしこの点は、そういう面に注目して正しく設計が行われれば、アームを短くしたからといって音質が劣化するということは防げるはずだ。あと残るのは操作ボタンやスイッチの処理だが、これらは人間工学的に考えを煮つめれば、スペースファクターの点でさほどの問題は生じない。
 こう考えてゆくと、プレーヤーのサイズはいままでより小さく作ることは十分に可能だが、残念ながら日本のマーケットでは、同じ価格なら小さく作る方が見栄えが悪くて商売上で損をするというような、変な考え方にメーカーがとらわれているものだから、本質的にプレーヤーを小型化しようという問題意識で製品作りにとりくんだ例がきわめて少ない。その少ない中からしいてあげれば次のようになる。
●テクニクスSL01/この製品には、はじめから性能を十分に保ったままコンパクトなサイズに作ろうという明確な意図のみられる点が好ましい。モーターは単売のSP20に相当し、アーム軸受けはEPA100の考え方を簡略化したもの、というように、マニュアルプレーヤーとしては手抜きのない正攻法のまとめ方だ。ただ、色調は個人的には頂けない。プレーヤーでは目下余裕のあるテクニクスのことだから、明るい色調の製品を併売して自由に選べるようにして欲しい。
●ラックスPD121およびリン・ソンデックLP12/ともにアームレス型なので、どういうアームと組み合わせるかによって出来栄えが変わるが、両者とも、一応SMEを標準に考えているようだ。無駄のないシンプルな表情は、日夜手もとに置いてレコードを楽しませ、少しも飽きさせず、しかも性能面でも不満を感じさせない。

マカラ 4842A

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

エアーコントロールの独特の技術を活かした高級機の新しい顔だ。

ヤマハ YP-D10

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

超重量級の安定度を重視したアームが目立つヤマハの高級モデルだ。

デンオン DP-1600

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

ベストセラー機らしいオーバーオールのバランスの良さが魅力的だ。

ビクター JL-B37R

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

定評ある技術を結集した価格を感じさせぬ性能と音質が魅力的である。

テクニクス SL-FM1

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

FMマルチ付プレーヤーとして行動派には好適の新しい魅力だ。

デンオン DP-7700

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

定評あるデンオンプレーヤーを代表する完成度の高さが独特の魅力。

ダイヤトーン DP-EC3

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

電子制御を中級機の価格帯にもたらした新鮮な魅力をもつ製品。

ヤマハ PX-1

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

超重量級のベースとリニアアームを採用した超高級オート機の本格派。

パイオニア XL-A800

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

パイオニアの電子制御を導入した第一作。動作は軽快で素早い。

サンスイ SR-838

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

音質を重点的に開発された充実した中域のエネルギー感が独特の魅力。

デンオン DP-2500

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

中級マニュアルプレーヤーとして推奨に値する性能と音質をもつ。

ダイヤトーン DP-EC1MKII

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

電子制御を導入した新世代のプレーヤーの第二世代として見事な製品。

ソニー PS-X9

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

セミプロ機の世界を開いたソニーらしい新構想のシステム製品だ。

ルボックス B790

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

類例を脱したユニークな発想をもつ趣味性の豊かさが独特の個性だ。

EMT 930st

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

業務用機器の魅力を十分に感じさせる充実した性能と機能、音である。

ビクター QL-A7

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井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

独特のチューニングを施した活気のある高いクォリティの音が特長。

B&O Beogram 1902

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

製品の魅力とは特性ばかりでなくデザインの洗練が必要という見本。

パイオニア XL-1350

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

造形処理のメタリックな点は好みでないが市販中最小の寸法を評価。

デュアル 1249

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

長い間の改良で現行のオートチェンジャー中最も信頼のおける製品。

トリオ KP-7600

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

音質の良さではこのクラス抜群。デザインもまあ嫌味のないほう。

テクニクス SL-1301

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

性能、デザインともさすがによくこなれているローコストフルオート。

ダイヤトーン DP-EC3

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

EC1からスタートした電子式オートプレーヤーが中級機にも実った。

ラックス PD272

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

PD121の優雅な雰囲気を受け継いで軽針圧に徹した設計が良い。

サンスイ SR-838

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

音質本意にとりくんだ製品だが、その面の評価の低いのは意外な感じ。

テクニクス SL-01

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

実質本位の小型化が好ましい。もっと明るい色なら自家用にしたい程。

ダイヤトーン DP-EC1MKII

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

全電子制御フルオートの滑らかな操作性がMKIIになって一層洗練。

テクニクス SL-1300MK2

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

最高の性能を確保しながらフルオート化が可能なことを示した好例。

EMT 930st

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

スタジオ機器が一般用とは隔絶した凄さを持つことを思い知らされる。

B&O Beogram 4002

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

眺めただけでそのまま抱き込みたくなるほどのエレガントの極み。

ビクター QL-A7

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ'78ベストバイ・コンポーネントより

音質で定評ある製品のオートアップ化。やや大ぶりな点はいま一息。

トーレンス Reference

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菅野沖彦

音[オーディオ]の世紀(ステレオサウンド別冊・2000年秋発行)
「心に残るオーディオコンポーネント」より

 トーレンスの「リファレンス」を僕が買ったのは、1980年の暮れのことである。その半年ほど前に、マッキントッシュXRT20を入れて、これとの蜜月に夢中になっていたころのことだ。CDの登場間近で、LPが終焉を迎えるかもしれないなどと言われ始めたころでもある。連日、XRT20でLP鑑賞に耽っていたのだが、プレーヤーをもっとよくしたら、さらにいい音になるはずだ......と想うと、居ても立ってもいられない気持ちになったのであった。
 じつはその十数年来、アナログプレーヤーには悩んでおり、なかなか気に入ったものがなかったのである。EMTはアームとカートリッジの制約が気に入らなかったし、あのいかにもスタジオ機器然とした雰囲気も仕事の気分から解放されないようで嫌だった。DDはどうも音が悪いし、リムドライブももうひとつ......不満があった。糸ドライブでもやろうか? とも考えたが年中不安定で、いつもテンションに気を使わなければならないという煩わしさも音楽鑑賞上邪魔になりそうで嫌だった。結局、落ち着くところはベルトドライブで、慣性モーメントの大きいターンテーブルを小トルクの小型モーターで回すものがいいと考えていた。そしてまた、重量とソリッド剛性一点張りの偏った設計思想によるものは真っ平ごめんで、曖昧さを否定するという青臭い理屈を掲げて、あんなにロッキーなマニアックなサウンドに熱中する餓鬼には成り下がれなかった。かといってフラフラ軽量ターンテーブルもお呼びでない。つまり、当時僕が思い描いていたプレーヤーは、豊富な物量投入による重量級で、適度な剛性とダンピング、Qの分散をはかった、トータルバランスに優れたものだったのである。さらに、できれば、トーンアームは自由に交換できて、同時に数本取り付け可能なものが望ましい......などと欲張っていたから、そんなプレーヤーが簡単に見つかるわけはないだろう。しかし、CD時代も間近だし、そろそろアナログプレーヤーを決めなければ......とも考えていた矢先の、トーレンスの「リファレンス」の発売だったのである。縁というものはこういうものであろう。僕が頭に描いたものにもっとも近いプレーヤーシステムがついに現われたのだから......。当然これを見たときには「おお、これ! これこそ望みうる最高のプレーヤーだ!」と実感したのであった。
 こんなに、ぴったり自分の要望に叶う製品に出会うことは、滅多にあることではない。『ステレオサウンド』誌に書いた「リファレンス」の紹介記事(64号)はつねにも増して熱が入ったことは言うまでもない。そこでも書いたが、ターンテーブルに使う色として、ゴールドとモスグリーンを選んだことにも意表をつかれた思いで新鮮だった。当時、妙に強く印象に残っていた、真冬のアルスター湖畔で会った美女が着ていたモスグリーンのコートの色、そして彼女が肩からかけていた大きなゴールドの金具がついたタンのショルダーバッグと、このプレーヤーの色とのダブル・エクスポージュアが、鮮やかな記憶として残っている。
 わが愛機「リファレンス」は、いまもアナログディスクを聴くたびに満足感を与えてくれる。あの時期によくぞ出してくれた! とトーレンスに感謝しているのである。

ヤマハ PX-3

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 ヤマハでは理論的に一般のオフセットアームに比べて性能が高いリニアトラッキングトーンアームに早くから着目し、いち早く超高級プレーヤーシステムにこのタイプのトーンアームを採用したPX1を開発。続いてリニアトラッキングシステムを合理化した第2弾製品PX2を市場に投入しているが、今回、このシリーズの第3弾製品としてPX3を新発売した。
 リニアトラッキング方式で最重要のシステム構造は、基本的にはPX2系のもので、アームベース内に非接触・光学式トラッキングエラーセンサーがあり、DCコアレスサーボモーターが不平衡電圧によりアームベースを駆動する。サーボ回路には±0・5mmの不感帯があり、レコードの偏芯が0・5mm(JISで0・2mm以下)ならレコード内周方向にのみアームは移動する。結果的に、これにより針先偏位は±0・5mm、アーム角度±0・15度以下で動作をし、歪発生を最小に抑えている。
 無共振構造ストレートアームは、材料の吟味、加工精度を始めフィンガーフックもない左右完全対称型設計、アーム基部の二重構造などで実効質量17gに設定されている。この値は、市販MM型20種、MC型10種の重量とコンプライアンスを測定した結果からf0 12Hzを目標に決定。レコードのソリ(1・1Hzが基本成分)、偏芯(0・55Hzが基本成分)の超低域成分と音楽信号成分が約12Hzを分岐点として高低に分かれている測定結果からの値である。
 ターンテーブルは重量1・6kgアルミダイキャスト製。モーターはDC4相8極コアレスホール型で、全周積分FG付のクォーツ制御方式である。キャビネットは高比重BMC製。1・1kgダストカバー付で、ゴム・スプリング複合型インシュレーターが附属する。
 機能は、電子制御フルオートマニュアル盤径選択後、PLAYで動作する方式だ。
 PX3は、豊かで柔らかい低域から中低域をベースとした安定感のあるナチュラルな帯域バランスをもつ。音色は適度に明るく、音の伸びやかさもある。試みに手もとにあったスタビライザーを乗せると、中低域が緻密になり全体に音が引き締って鮮度感が上がる。リニア方式独特の音場感の自然な拡がりと定位のシャープさは現時点でも新鮮な魅力。バランスの優れたシステムだ。

ソニー PS-X800

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 ソニーのPS−B80は、世界最初のMFB制御方式のバイオトレーサーアームを採用した製品として、オーディオの歴史に名をとどめるフルオートプレーヤーシステムであるが、今回新しく登場したPS−X800は、理論上で理想のトーンアームであるリニアトラッキング方式のアームをバイオトレーサー化して採用した注目の新製品である。
 リニアトラッキング方式のトーンアームは、レコード制作時に使うカッティングレースの動作と近似の動作をするために水平方向のトラッキングエラーが極めて小さく、トーンアームの全長が短く、軽質量でトラッキング能力が高いメリットをもっている。
 しかし、現在市場にあるリニアトラッキングアームは、細かく見れば針先の移動に対してトーンアーム支持部の動きが静止・移動・静止と断続的に移動する方式が多い。この細かい点に注目して、今回発売のリニア・バイオトレーサーでは、アクティブ・トレース・サーボ方式を開発、アーム支持部の速度と針先速度の差として得られるトラッキングエラー角を検出し、常に針先速度とアーム支持部の速度が同じになるようにサーボをかけ、トーンアーム自体が動くという新リニアトラッキング方式を採用している。
 リニアトラッキング方式にはアーム支持部を移動させるためのガイドを必要とする。PS−X800のガイドはモノレール型で、アーム支持軸とアーム支点が常に同軸上にある。また、軸受にはノイズ発生の原因となるベアリングを排除し、特殊樹脂に含油したスライド軸受により振動を防いでいる。
 アーム駆動は独自のリニアトルクBSLモーター採用であり、アーム部のコントロールには垂直と水平が独立した速度センサーを備え、独立したリニアモーターに速度フィードバックをかけて低域共振を抑えるとともに、トーンアームが動くリニアトラッキング方式の問題点を解決している。
 機能は自動アームバランス、純電子式針圧印加をはじめ、自動盤径選択とレコード有無選択、2速度のアーム移動、それにカセットと連係動作用の別売のシンクロリモートコントロールRM65がある。
 音の傾向はスケールが大きく、素直で抑制の効いた、安定感のある表現が特長。独特の素気なさがかえって現代的な魅力だ。
井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
「注目の新着コンポーネントを徹底的に掘り下げる EXCITING COMPONENTS」より

 英国ノッティンガム・アナログ・スタジオの製品は、ヨーロッパでは、ハイエンドのADプレーヤー工房として定評があるようであるが、国内市場では『ザ・スペースデッキ』が最初に登場して一躍注目をあつめ、続く『ザ・メントール』でハイエンド・ADプレーヤーメーカーとしての実力が認められるようになった。今回新製品として開発された『アンナ・ログ』は、同社のモデル中の最高峰に位置づけられるADプレーヤーである。
 現在における理想のADプレーヤーを目指して作られた『アンナ・ログ』は、ノッティンガム・アナログ・スタジオ社が、5年間の歳月をかけて開発したモデルで、従来からの同社独自のユニークな技術にさらなる試みが加えられて完成されたという。
 同社の主宰者トム・フレッチャーが、英国の産業革命時代の、なんと1740年頃にカナダから輸入された樹齢200年を超える古い樺の巨木に出会ったことから、この『アンナ・ログ』の開発がはじまったという。樺は原木のまま保管されていたわけではなく、何らかの建築物や建造物に使用されていた木材だと推測されるが、とにかく古い巨木に出会ってインスピレーションがわいたことが『アンナ・ログ』開発の契機となったことは事実のようだ。
 外観からもわかるように、『アンナ・ログ』は、同社のADプレーヤーづくりの独特な考え方に基づいている。各種構成部品がネジ止めにより構造体が作られる一般的な方法ではなく、「ベース材料の上に各種構成部品を積み重ねて置く」という非常にシンプルで、わかりやすい方法を採用している。
 システムの基礎となる厚い平板上の部分は、MDFより一段と高密度なHDFと呼ばれるブナ集積材で作られている。
 重量級の超弩級ターンテーブルが取り付けてあるターンテーブルベースが、開発のポイントになった、カナダ産の古巨木の樺材を使ったブロックである。この樺材は、25mm厚の正方形にカットされ、19個をスパイラル(らせん状)に角度をずらして重ね合わせ、巨大な圧力をかけて特殊接着される。さらにブロックの中心を少しオフセットして、軸受けベアリングがマウントされる。トム・フレッチャーによれば、このブロックは、「貴方が指の爪で引っ掻いてみても、何ら固有音は聞えず、貴方の爪の音しか聞こえません」という。
 ターンテーブルベース両側は、長さが違うスタビライザーが置かれており、ターンテーブル中心からターンテーブル両端に向かって伝わる振動を抑制している。
 ターンテーブルは、二重構造で自社内の専用工場で作られ、材料は3年間エージングしたものを加工している。合金材料は公表されず、たんに重量25kgと発表されている。ターンテーブル上部には、カーボングラファイトの重量3kgのターンテーブルマットと呼ぶには抵抗を感じる円盤と組み合わせて、異種材料の構造体を形成している。軸受けは、さまざまな材料を組み合わせたスペシャルベアリングである。
 駆動は、円断面ゴムベルトを使うベルトドライブ方式で、駆動モーターは精密24極超低トルク・シンクロモーターが採用される。ターンテーブル起動時には、ターンテーブルを直接指で回すという、単純明解な方法が採用されている。駆動モーターは、HDFベース下に単純に置くだけの別置き型設計である。
 カートリッジの針先が、ディスクの音溝の振動をピックアップして電気信号に変換するアナログディスク再生においては、ターンテーブルおよびモーターの振動を無視できるような低レベルに抑えることが重要である。このため同社では、慣性モーメントの巨大なターンテーブルと、定速回転を保つだけの最小限の駆動力を与える超低トルクモーターを組み合わせる方法がベストと考えている。
 トーンアームは、単純に『アンナ・アーム』と名付けられたモデルだ。長さ30cmのこのトーンアームは、手加工で作られたアルミブロック削り出し一体型ヘッドシェルをもつ。アーム部分はカーボンファイバー製で、軸受け部は一点支持型かつ無制動としてユニークな設計で、無共振・無振動のパイプ中には7本の純銀単線が通っている。内容は不明だが、左右信号系4本と、他は独立したアース系のリードであろう。適応カートリッジの重量は、6〜20gと発表されている。
 このトーンアームで特徴的なことは、アームリフター優先設計でヘッドシェルには指かけがなく、現実的にはマニュアル操作は不可能に近い。したがってアームリフターの差同範囲は非常に広く、リフターが上がっているときには、まずディスク上に針先を落とすことが不可能な安全設計となっている。また、アーム操作はかなり慣れが必要なタイプで、特に針圧操作は、スケールをもたないスライド式の針圧調整ウェイトを指先で調整する方法のため、別に針圧計が必要となろう。
 試聴にはオルトフォンの最新型MCジュビリーを組み合わせて使った。自重10・5g、針圧2〜2・5gの規格で、好適なペアだ。
 カートリッジが現在の最先端技術を組み合わせたモデルであるだけに、スクラッチノイズの質はよく、量も低く抑えられ、伸びやかに広帯域型の音を聴かせる。しっとりした、ほどよくしなやかで潤いのある音は非常にナチュラルで、SN比の高さは格別の印象である。確実に音溝を拾いながらも、エッジの張った音とならず、情報量豊かに静かに内容の濃い音を聴かせるパフォーマンスは見事である。
 簡単に聴くと、穏やかな音と感じられるが、他の100万円旧のADプレーヤーと比較試聴すると、予想以上の格差があり、あらためて『アンナ・ログ』の実力の高さに感銘を受ける。従来の針先が音溝を拾う感じのあるリアリティの高さもアナログの楽しさだが、この静かなストレスフリーの音も新世代のアナログの音である。

トーレンス TD320MkIIIB

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菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

TP90スタティックバランス型トーンアームを付属するカートリッジレスのセミオート・プレーヤーシステムである。ほどほどの価格で、さりげなくアナログディスクを楽しみたい人達に広く薦められる製品である。トーレンスらしいバランス感覚が好ましいし、ブラックアッシュ仕上げも地味だがブラックディスクによく似合う。
菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

イギリスで作られるユニークな手作りのアナログプレーヤーである。これはカーボンファイバー製のトーンアーム付システムである。スタート時はターンテーブルを手で回してやらなければならない。負荷がなくても自身では起動不可能な弱いトルクのモーターで、自重25キロのターンテーブルはベルト駆動される。実に静粛である。

トーレンス TD520RW+3012R

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菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

SMEのトーンアーム3012Rを装備したセミオート・プレーヤーでカートリッジは付いていない。本格派のアナログプレーヤーの標準的な製品といったところである。音はトーレンスらしい適正なダンピングとQのコントロールにより、大人の雰囲気を持ち、柔軟性と高解像感のバランスは中庸を保っている。

テクニクス SL-1200MK4

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井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

実質的に世界最高の生産量を誇る超ロングセラーモデル。キャビネットとモーターを一体化したアナログプレーヤーとしては、華奢な印象を受けるが、適度な柔軟構造による制振効果もあるようで高周波妨害にも強く、かなり条件の悪い場所で予想以上のアナログディスクの音が楽しめるのは立派。

テクニクス SL-3300

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井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には5300シリーズからクォーツフェイズロック方式を省いた製品群が3000シリーズと考えてよい。シリーズ製品は4機種あり、その区別は5000シリーズに準じる。SL3300はフルオートモデルで、モーターに駆動巻線の逆起電力周波数を利用した特殊なB・FGサーボ全周検出方式を採用している点が5000シリーズと異なっている。
 プレーヤーベース、トーンアーム、機能、付属カートリッジは5000シリーズと同等。

テクニクス SL-5300

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井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスのプレーヤーシステムの特長は、ターンテーブルの駆動方式、モーターの形式、プレーヤーベースの構造などから数多くのシリーズ製品があり、各シリーズのなかに、マニュアル、セミオート、フルオートさらにチェンジャーといった基本メカニズムを共通にしたバリエーションを置いて、非常に広範囲に及ぶ製品を有していることがあげられる。現実にカタログを眺めると製品数が大変に多く、その選択に迷うことがあるが、一度分類の基本がわかれば細かな使用目的を条件にしても好適な機種が得られるメリットがある。
 新しい5000シリーズのプレーヤーシステムは、従来のSL1700/1600/1650にかわるシリーズ製品で、5100がマニュアル、5200がオートリターン・オートストップ、5300がメモリピート付フルオート、5350がチェンジャーで、全てクォーツDD方式である。
 5300は、現代ではすでに標準モデルと考えられるフルオートプレーヤーシステムである。プレーヤーベースは、新音響素材TNRC(テクニクス・ノンレゾナンス・コンパウンド)採用、底ベースも同じ材料を使った2重構造で防振効果が高く、振動の減衰特性が優れている。モーターは、テクニクス独特のターンテーブルと一体構造DD型で、3種の専用ICで構成した電子回路と全周検出FGをもとに水晶発振器を基準としたクォーツフェイズロック方式を採用している。
 トーンアームは、初動感度7mgの軽質量シンバルサスペンション型で、高コンプライアンスカートリッジ使用時にも低域共振は10Hz近くに設定してある。
 機能面では、1〜6回と無限に連続演奏できるメモリピート、プリズム型針先照明、中央のシマ目が正規回転を示す独特の3列ストロボがある。なお、操作は前面操作型で、MM型テクニクス270C付。

マイクロ DQX-500

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井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 DDX1000の方向を発展させシステム化した製品。セパレート電源方式採用のクォーツロックPLL方式DD型モーターと、ユニークなストレート型パイプアームの採用はデザイン的にも美しい。

デンオン DP-50M (L)

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井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 磁気記録スピード検出方式、両方向サーボによる電子ブレーキ付のクォーツロック方式DDモーターを中心とした新製品だ。ターンテーブルは、直径30cm、重量1・5kgのアルミダイキャスト製、トーンアームは、ラテラルバランスとアンチスケートが付いたS字型スタティックバランスタイプで、付属カートリッジはない。レーザーホログラフィ解析を利用したゴムシート、水晶発振器でパルス点灯するストロボを備える。なお、DP50Mはマニュアル機、50Lはオートリフト機能をもったセミオート化が導入されたモデルだ。
井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」より

 ディスクの再生では、プレーヤーシステム、アンプ、スピーカーシステムがシリーズに接続され、それぞれのコンポーネントの置かれた位置と機能の違いが、各コンポーネント固有の音の変わり方をすることになる。
 一般には、システムのもっとも出口の位置にあるスピーカーシステムが、その扱うエネルギー量も多く、メカニズムを利用した電気エネルギーを音響エネルギーに変換するというトランスデューサーでもあるために、それをセットする部屋の条件も加わって、各コンポーネントのなかでは結果としての音をもっとも大きく左右する部分とされている。
 また、中間に位置するアンプは、入力として加えられた微弱な電気信号を増幅し、スピーカーシステムをドライブするだけの電気エネルギーとして出力に出す純粋な電気の増幅器であるために、物理的な計測データを基としての解析がメカニズムをもつトランスデューサーよりも容易であり、本来はエレクトロニクスの技術が進歩すればするほど製品化されたモデル間の音違いが少なくなるはずである。しかし、現実には、入力、出力ともにトランスデューサーであるカートリッジやスピーカーシステムと結合されるとなると、計測時のように入出力に定抵抗が接続された状態とは異なった動作をなすことになり、これが音の違いとなっている。また、エレクトロニクスの技術の製品であるだけに、回路を構成する部品の改良、それを使った新しい素材にマッチした回路設計という反応が、非常に短いインターバルで繰返される結果、ほぼ半年毎により計測データの優れた新製品が開発され、聴感上でも音の変化がいちじるしいため、現実には話題が絶えず、もっとも注目される部分だ。プレーヤーシステムは、コンポーネントのもっとも入口の部分に位置している。そのため、ディスクにカッティングされている情報量の50%しか電気信号に変換できないとすれば、アンプ、スピーカーシステムにどのような高性能のコンポーネントを使ったとしても、結果として聴かれる音は最大限50%にしか過ぎないことになる。このように非常に重要な位置にありながら、アンプ、スピーカーシステムにくらべて、なぜかさほど重要視されない傾向が強いようだ。
 それというのも、プレーヤーシステムが、それぞれ独立したコンポーネントと考えてもよいカートリッジ、トーンアーム、フォノモーターと、それを取り付けるプレーヤーベースで構成されているからだろう。そのため、単体のカートリッジ、トーンアーム、フォノモーターの性能、音の違いは問題にされることはあっても、トータルなシステムとしての音の変わり方についてはあまり問題にされず、それが問題にされだしたのはつい最近のことといってもよい。
 簡単に考えれば、スピーカーシステムやアンプの分野では、相当に高度なアマチュアがどのように努力しても、メーカー製品以上の性能、音質をもつものを作ることは不可能といってもよいが、ことプレーヤーシステムにおいては、優れたカートリッジ、トーンアーム、フォノモーターを選択すれば、強固なプレーヤーベースを作るノウハウさえ持てば、メーカー製品を凌ぐ性能と音質をもったシステムをアマチュアが自作できる、唯一のジャンルであるためだろう。
 ちなみに、ステレオサウンド別冊「ハイファイ・ステレオガイド」を見ても、プレーヤーベースの頁には、オーディオメーカー以外の会社から異例に多くの製品が発売されており、プレーヤーシステムの特異性を示している。
 プレーヤーシステムのジャンルでも、最近では、トータルなシステムプランから開発された、メーカでなくては作れない製品がその数を増し、次第にスピーカーシステムと同様にプレーヤーシステムとして完成されたものが主流となってきつつある。たとえば、オートマチックプレーヤーシステムは、メーカーならではできないプレーヤーシステムである。
 今回の特集はプレーヤーシステムであり、プレーヤーシステムの重要性を確認する目的から、本誌では珍しくブラインドテストが行われることになった。この方法には、当然長所短所があるが、ある部分では、平均的な試聴とは異なった製品の実体に触れることができるのは事実である。実際に、スピーカーシステムやアンプでブラインドテストをしたために、ひとつの印象として捉えていた製品に、より多くの新しい可能性を見出すことはよく経験することである。
 ブラインドテストは、出てきた音に聴き手がどのように反応するかである。つまり、単純に考えれば、モルモットそのものにいかになりきるかということができる。したがって、モルモットの置かれる条件が結果を大きく左右することになる。たとえば、傾いた机の上に置かれれば、それを基準として反応するほかはない。
 今回のブラインドテストは、聴く人数の面から、試聴室の長手方向にスピーカーシステムをセットして行なったが、それにしても左右のスピーカーとテスターとの相対位置は、中央付近を除いて相当に異なるため、このあたりが結果としての発言内容の差と密接に結びついている。私の位置は左端で、左チャンネルのスピーカーのやや外側である。この位置では、リファレンスとしたEMTのプレーヤーシステムも、ややバランスを崩した状態であり、現在のコンポーネントでもっとも重要視される、ステレオフォニックな音場感の広がりと定位、音像の問題はチェックポイントとはなりえず、聴感上でのバランス、音色、音楽の表現能力などが判断基準となっている点に注意されたい。
 結果としては、テスト機種のなかには、つねに試聴室で、また個人用として使用している製品が含まれていたが、それらの製品名を試聴結果から当てることはできなかった。たとえば、現在のフォノモーターの水準からはかなり劣るはずのガラード301・SME3012のシステムすら判別不可能で、モルモットとしては正しく反応していたつもりだけに残念という感が強いが、この反応で正しかったと思っている。
 各テスト機種は、先入感がないだけに、かなり大幅に結果としての音、音楽を変えて聴かせてくれた。それは、低域、中域、高域といった、いわば聴感上での周波数特性的なバランス、帯域の広い狭いをはじめ音色的にも当然違いがある。また、カートリッジのMC型、MM型による差が少ないものの、差を大きく出すものといった違い方もある。さらに、音楽そのものが相当に変わってしまうこと、これは大変に重要なことである。これに、ステレオフォニックな音場感、定位、音像などの要素を加えれば、各テスト機種の違いはさらに拡大されるはずである。やや表現を変えれば、プレーヤーシステムでの音の変わり方を情報量的に捉えると、テープデッキでの、カセットデッキ、4トラックオープンリールデッキ、2トラックオープンリールデッキに対比させることができる。結果として製品がわかったプレーヤーシステムとメモを突合わせてみると、一般的な傾向として、大型で重量級の製品ほど2トラックオープンリール的な音をもっているように思われる。たしかに、物理的にも感覚的にも、ディスクにカッティングされている音溝の凹凸は非常に細かいものと思われやすいが、実際にカートリッジを手に持って、直接ディスクの音溝に触れさせてみると、指に感じる反応の激しさで音溝の凹凸による抵抗がどのように大きいかを知ることができるが、これからもフレーヤーシステムは予想以上に機械的な強度を要求されていることがわかるはずだ。これは、当然のことながらフォノモーターのトルクについても同じことがいえる。測定データからも音溝の抵抗でサーボ系がどのように反応しているかを知ることができるであろう。
 このように音が大幅に変わること自体が、プレーヤーシステムの選択の尺度をさらに厳格にしなければならないことを物語っていることになる。かつて、プレーヤーシステムをもっとも優先的に考えるべき論旨があったが、これは現在でも変わることはなく、他のコンポーネントが優れているだけに、プレーヤーシステムでの音の変化がクローズアップされるべきだと感じた。
黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」より

 ブラインドテストだからといって特別のことはない。使い勝手だとか、あるいはみためのことだとかが問題になる場合ならともかく、そうではないときはいつだって、耳だけをたよりに試聴にのぞんでいるから、たとえプレーヤーシステムが別室にあって、どのプレーヤーシステムの音かわからなくても、どうということもない。
 もし、どのメーカーの製品かわかって、その値段を知って、、そうかなるほどというきき方がもしオーディオの専門家のきき方だというのなら、ぼくのきき方は、ついに専門家のきき方たりえない。ブラインドテスト──という言葉は、ともするとそのときのテスターを、目かくしをされた鬼ごっこの鬼のような気持にさせるのだろうか。鬼は、てぬぐいで目かくしをされているから、手さぐりで、つかまえた相手のあちこちをさわってみて、「あっ、ふとっているから、イサオちゃんだ」といったりする。
 おそらく、そういうあてっこのたのしみのために、ブラインドテストが行われるようだが、この場合はどうだったのだろう。
 すくなくともぼくは、鬼ごっこの鬼どころのはなしではなく、せいぜいモルモットにすぎなかった。聴覚だけをたよりにきいた。ききおぼえがあるものといえば、つかわれたレコードの音と、そしてそこでつかわれたカートリッジの音だけだった。イサオちゃんというプレーヤーシステムだけがふとっていて、腹がぷくっとふくれているかどうかなんて、もともとわからないのだから、それがイサオちゃんかどうかあてられるはずもなかったわけだ。
 ただ、このブラインドテストをして、俺の耳もたいしたことないな──と、もともとわかっていたこととはいえ、それをまざまざとみせつけられて、うんざりしたということはある。ブラインドテストは、二日にわけて行ったが、前日は、このましいプレーヤーシステムだと思い、○印をつけておいて、翌日、どうもものたりないところがあると思い、×印をつけたものがあったからだ。具体的にいえば、ビクターのTT101+UA7045+CL−P1Dだ。一方が○印で、もう一方が△印なら、まあ、ことはいかにも微妙だからと、自分にいいきかせることもできなくはないが、○と×とでは、極端で、自分を納得させるすべがない。
 たしかに、きいたレコードの性格は、少なからずちがっていた。一方はクラシックで、もう一方はジャズといった、それぞれのレコードにおさめられている音楽の性格がちがうということもある。それに、一方のレコードが通常のレコードで、もう一方がダイレクト・カッティングのレコードだったということもある。一方が大編成のオーケストラ・プラス・声のレコードで、もう一方がコンボのレコードということもある。つまり、さまざまな点でちがていた。だから、一方が○で、もう一方が×でもおかしくないんだ──といえばいえなくもないだろうが、どうも釈然としない。
 それで、俺の耳もたいしたことないな──という。自己嫌悪の色濃厚な独白となる。もともとたいした耳と思っていたわけではないのだが。
 プレーヤーシステムによる音の変り方は、かなり基本的なところでの変り方で、だからききとりやすいということも、また逆にききとりにくいともいえる。たとえばこれがカートリッジなり、スピーカーなりが変ったというのなら、それはレコードが変ることによって、きこえ方が大幅にちがい、こっちでよかったものが、あっちではよくなくなるということもあるが、プレーヤーシステムでの変り方は、もう少し基本的なところでの変り方だから、そういうことはあまり起らないはずである。
 にもかかわらず、一方で○印をつけ、もう一方で×印をつけたというのは、自分ではそれなりの理由がわからなくてもないが、やはり基本的なところでの変化をききのがしたためといわざるをえない。そのための、俺の耳もたいしたことないな──という自己嫌悪の独白だ。
 プレーヤーシステムの音は、基礎の音だと思う。
 地震の際に、造成地にたてられた家が、もろくもこわれて、岩盤の上の家が、内部はそれなりに、棚がおちたり、あちこちこわれたりしているのかもしれぬが、外からみるかぎり、地震の影響などまるでないかのように立っているのをみたりする。さまざまなプレーヤーシステムの音をきいていて思ったのは、そのことだった。いかに立派な家でも、土台というか、基礎がやわでは、いかんともしがたい。
 今回のブラインドテストは、いってみればその普段目にみえるところを同じにして、さてこのおとは 岩盤の上の音か、それとも造成地の上の音かをききわけることを目的としていたのではなかったか。それぞれの音は、ぼくは岩盤の上の音だよ──と、せいいっぱいがんばっていた。しかし、本当に岩盤の上になりたっている音と、そうでない音とは、かなり明確にちがっていた。
 しかし、どこまでが土台に関係した音で、どこからが基礎とは関係のない音なのか、充分に判断できないこともあった。そのために、一方のレコードでは○印をつけ、もう一方のレコードでは×印をつけるというような、つまり混乱が生じたのだろうと思う。
 すぐれたプレーヤーシステムの音には、あぶなっかしさがなかった。ひびきは、すみずみまで、しっかりしていた。
 カートリッジやスピーカーでは、ひびきのキャラクターが、大きな問題になる。むろん、プレーヤーシステムの音にも、それぞれのキャラクターがあるが、カートリッジやスピーカーの場合のようには、問題にならない──というより、そのキャラクターのとわれ方がちかうように思う。あの家の屋根はトタンで、この家の屋根は瓦だというようなことは、誰にもわかるし、屋根をトタンにするか、瓦にするかは、おそらくその家の住人の好みに関係することだろうが、家を岩盤の上にたてるか、それとも造成地の上にたてるかは、好みとは別のところでのことといえるのではないか。
 ただ、プレーヤーシステムの音にも、カートリッジやスピーカーシステムの場合とは意味するところ微妙にちがうとはいえ、キャラクターがあるので、それにとらわれると、その音が岩盤の上の音か、造成地の上の音かを、ききそこなうことになる。
 そして、このブラインドテストに参加して、あらためて思ったのは、やはり、なにはさておいても、プレーヤーシステムに、それなりの投資をしないといけないなという、すでにわかりきったことだった。毎日の生活ということでいえば、岩盤の上の家での生活も、造成地の上の家での生活も、さしてちがいはないように思うが、やはりどこかで微妙にちがってくるのかもしれない。
 ぼくの今住んでいる家は、造成地というわけではないが、それでも前の道を大きなトラックが通ったりすれば、かなりゆれる。だからといって生活に不便をきたすほどではないが、やはりどっしりした家屋に住んでいるとは思いがたい。そういう家に住んでいると、あまり出来のよくないプレーヤーシステムでレコードをききつづけることによる心理的な影響をあなどれないなと思ったりする。

ヤマハ PX-1

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 力強いひびきをぐっと前におしだすというタイプのプレーヤーシステムではなさそうだ。しかし、ここできけるさわやかな、よごれをすっかり洗いおとしたようなひびきは、実にチャーミングだ。ここできけるひびきは、ついにぼてっとしたり、ふやけたり、重くひきずったり、あるいはかげったりしない。きいての印象がさわやかなのは、おそらく、そのためと思える。
 その方向で徹底させようというなら、デンオンDL103Sということになるだろう。木管楽器がかさっているところでの、個々の楽器のひびきを、ききてがその気になりさえすれば、充分にききふけることができる。このプレーヤーシステムの音にも、一種独特の品位が感じられる。よごれた音を、まちがってもきかせることはなさそうだ。
 ただそのために、用心深くなりすぎた音になってしまっているということはいえるだろう。これでさらに、一歩ふみこんで力強いひびきをきかせる積極性を身につければ、プレーヤーシステムとしての魅力を倍加させることになるのではないか。

ソニー PS-X9

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 このプレーヤーシステムは、どうやら、中域の音を、しっかり、あいまいにならずに、しかもそのエネルギー感をあきらかに示すところに特徴があるようだ。むろん、中域の音をしっかり示すのは、とてもこのましい。そのためと思うが、このプレーヤーシステムできいた音は、いずれのカートリッジの場合も、あいまいさから遠くへへだたったところにあって、しっかりしていた。
 くっきりしたひびきをきかせてくれたが、できることなら、さらに鮮明であってほしいと思わなくもない。ただ、その点については、デンオンDL103Sでかなりの成果をあげたことを考えあわせると、しかるべきカートリッジをつかうことで、かなりカヴァーできるはずである。ベーシックな部分がいかにもしっかりしているというきいての印象がある。あぶなげは、まったくないし、ひよわさもない。
 オルトフォンMC20でピッチカートが、くっきり示されて、しかも大きくふくらまないあたりに、このプレーヤーシステムの基本性能のよさが示されていたといえるだろう。

デンオン DP-7700

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 ひびきそものに、一種の品位とでもいうべきものがある。決して粗野にはならない。それぞれのカートリッジのよさを無理なくひきだしているという印象である。その意味で、実にまとまりのいいプレーヤーシステムだ。あぶなげがまるでない。
 今回の試聴で用いたようなレコードには、よくフィットして、はなはだ好印象をいだいたのだが、さらにエネルギー感を求められるような音楽の場合には、このプレーヤーシステムの品位が、幾分マイナスに働くということもなくはないようだ。それは、このプレーヤーシステムの音が、ひびきを前に押しだすようなタイプのものではないことと、関係があるかもしれない。
 折目正しさ、破目をはずさない──というのは、たしかに、なににもかえがたい美点で、その美点は、このプレーヤーシステムのものだ。したがって、ききては、そこで安心して、きこえてくる音に対応できる。そういうききてを安心させるというのは、実は、なかなかむずかしいことだということを、ここで思いだすべきかもしれない。

ダイヤトーン DP-EC1MKII

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 いずれのカートリッジにおいても、不鮮明になることから用心深く遠ざかりえているのは、このプレーヤーシステムが基本的なところでしっかりしているからだろう。オルトフォンMC20で、音像が過剰に大きくなっていないことは、注目すべきだ。ひびきがきめこまかくなると、それにつれて音像が肥大してしまうということが、このカートリッジでは起こりかねないが、ここでは、そういうことがない。
 それに、シュアーV15タイプIVできけたひびきが、きわだってきめこまかだったということも、興味深かった。つまり、このプレーヤーシステムは、それぞれのカートリッジのキャラクターに素直に反応するので、ききては、自分で使おうとしているカートリッジのマイナス方向の働きも計算に入れて使うといった、めんどうなことをしなくてもすむ。このましいと思ったカートリッジのそのこのましさが、このプレーヤーシステムでは、そのままいかされるということだ。全体のひびきの印象は、すっきりしていて、さわやかだが、ここに弱々しさは感じとれない。

テクニクス SL-1300MK2

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 しっかりした、ごまかしのないプレーヤーシステム──というのが、三つのカートリッジをつけてきいたこのプレーヤーシステムの第一印象だ。そのために、三つのカートリッジのそれぞれのチャーミング・ポイントを、よく示している。たしかに、深いひびき、あるいは力強いひびきといったものに対しての反応では、いずれのカートリッジでも、さらに望むところがなくもなかったが、だからといって、その点で特にものたりなさを感じたということではない。
 三つのカートリッジで共通していえたのは、誇張感がないということだった。いずれかの部分が誇張されるということは、その逆の性格の部分がないがしろにされるということで、必然的に、誇張感があれば、レコードにおさめられている音楽を自然なバランスできくことがむずかしくなる。その意味で、このプレーヤーシステムは、音楽をたのしむための条件をみたしていたと考えることができる。
 ただ、さらに望むことが許されるなら、それぞれのひびきが、さらに一層生気にみちた、つまりいきいきとしたものであったらと思わなくもない。

ビクター QL-A7

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 とりわけデンオンDL103Sでの結果がいい。そこでこのプレーヤーシステムのたしかさがあきらかになったと考えることができそうだ。すっきりとしたひびきで、ききてに、細部への見通しを可能にする。オルトフォンMC20というカートリッジには、むろんすばらしいところは多々あるが、プレーヤーシステムによっては、その美点より欠点をあきらかにしてしまい、音像を大きくし、低域のひびきを過度にふくれさせてしまいかねないのだが、ここでは、そういうことがない。たしかに、ほかのふたつのカートリッジに較べて、音像は大きくなりがちだが、むしろこのカートリッジの美点の方が、勝っている。
 音のおさえがいいというか、あいまいにならないというか、つまり、性格としては、積極的だが、はりだしすぎたりしないところに、このプレーヤーシステムのよさがある。さらに望めば、定位のエネルギー感の提示といった点で、いま一歩と思わなくもないが、きこえ方のバランスがいいので、すくわれている。なかなか魅力的なプレーヤーシステムというべきだろう。

トリオ KP-7700

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 ひかえめにすぎるかなと思わなくもない。ただ、デンオンDL103Sで、積極性を示したということは、注目すべきだろう。三つのカートリッジで共通して強調感がなかったのはいい。一種のきめこまかさもある。総じて、薄味だし、ひびきそのものは細身だが、表現がごりおしにならないのはいい。ただ、スタティックにすぎるという印象は、ぬぐいさりがたい。
 シュアーV15タイプIVでは、このプレーヤーシステムの弱点がでてしまっているように思われるので、試聴した三つのカートリッジからひとつ選ぶとなれば、やはりデンオンDL103Sということになるだろう。そこでは、ほかのふたつのカートリッジより力にみちた音がきける。部分的にひびきの表情が過剰になるとしても、そこでのくっきりさをめざした音は、わるくない。
 それにしても、このプレーヤーシステムは、ダイナミックな音楽をおさめたレコードのためのものというより、静かな音楽をおさめたレコードを、耳をすましてきくためのものといえるように思われる。

ソニー PS-X700

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 きわだったくせのないのがこのプレーヤーシステムの特徴というのが、きいての、まず第一に感じることだ。それはむろん美点のひとつとしてあげられることだ。きわだったくせがないということは、それぞれのカートリッジのキャラクターによく順応するということだが、ひとつまちがうと、順応しすぎるというか、つまりカートリッジの弱点におし流されるということも、起こりかねない。しかし、このプレーヤーシステムは、その一歩手前で、とどまっている。すなわち、プレーヤーシステムとして、自己の音をもっているということだ。
 たとえば、DL103Sできいたときなど、かなりこまかいところまで、耳をすべりこませることができて、このましいのだが、そこで不足しているもののひとつに、腰のすわった力強いひびきに対しての反応がある。それがさらにこのましくみたされれば、そこで可能なすっきりしたところも、よりはえるのではないか。それに、ここできける音が、総じて明るいことも、このプレーヤーシステムのこのましさとしてあげておくべきかもしれない。

パイオニア XL-A800

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 細い筆でこまかいところを書きこんでいくというより、太い筆にたっぷりと絵具をふくませて書きあげるとでもいうべきか。細部にこだわってきくと、幾分ものたりなさを感じなくもないが、これはこれでひとつの性格と考えるべきではないかと思ったりもする。だからといって、カートリッジの個性を無視して一色でぬりつぶすというわけでもない。それぞれのカートリッジの持味には、それなりに順応する。
 ききながらとったメモの中に、「すっきり」という言葉がまったくなく、「くっきり」という言葉が数多く認められるのが、特徴的だ。このプレーヤーシステムできける音は、敢ていえば寒色系の、そして細身の、つまり「すっきり」という言葉で表現できるものから、遠いところにある。しかし、ここで評価すべきは、ひびきの輪郭をあいまいにしないことだろう。
 太くなったり、重くなったりするものの、あいまいにならない。その点で、ききてを安心させるということはあるのだが、もう少し「すっきり」の要素がほしいと思う。

ダイヤトーン DP-EC3

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 個々のカートリッジに対してよく順応する。ということは、それぞれのカートリッジのよさをひきだす場合もあれば、逆にそれぞれのカートリッジの弱点を露呈することもあるということだ。しかし、いずれの方角をむいているプレーヤーシステムかということになれば、これはあきらかに、すっきりしたひびきをもたらす方角をむいていると考えるべきだ。
 デンオンDL103Sでの結果が、もっともこのましかった。弦楽器のひびきが幾分浅くなるが、ここできけるすっきりしたひびきは、このプレーヤーシステムのよさを示したものといえる。ただ、そこに力強さとか、濃厚なひびきとかを求めることはできない。
 オルトフォンMC20は、おそらく、このプレーヤーシステムがむかう方向とは逆の方向にむかおうとしているカートリッジで、そのために、結果は、思わしくなかった。すっきり、ことさらのこだわりなくきこうとするならシュアーV15タイプIV、少しつっこんできこうとするならデンオンDL103Sということになるのではないか。嫌味のない音をきかせるプレーヤーシステムだった。

ヤマハ YP-D9

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 ヤマハの製品に共通して感じられるものと、このプレーヤーシステムから感じられるものとは、かならずしも一致しない。とりわけ、シュアーV15対VIVとオルトフォンMC20で、それがいえるようだ。なるほど、これはヤマハのプレーヤーシステムだと思えるのは、デンオンDL103Sにおいてだ。しかし、できることなら、デンオンDL103Sと、オルトフォンMC20の中間の音がほしい。デンオンDL103Sでは、スギタルハオヨバザルガゴトシだ。ひびきがかさつきすぎているし、オルトフォンMC20では、ひびきに脂がつきすぎている。
 しかし、さまざまなひびきをブレンドさせるより、分解して示す傾向は、共通してうかがえる。それをこのプレーヤーシステムのキャラクターといっていいのかどうかわからぬが、このプレーヤーシステムを考えるポイントのひとつにはなるだろう。そして、多分、その方向でさらに追いこんで使えば、それなりの魅力を発揮するにちがいない。ここで選んだカートリッジは、このプレーヤーシステムにとって、不運だったかもしれない。

デンオン DP-50L

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 プレーヤーシステムとしての性格を、積極的か消極的かといったようなわけ方をするとすれば、このデンオンDP50Lは、消極的なプレーヤーシステムということができるだろう。しかし、むろん、消極的ということは、よくないということではない。この場合の消極的というのは、ごりおしにならない、音がはしゃぎすぎない、音像が肥大しない──ということで、それは、すっきりした音を望む人にとって、はなはだ望ましいことだと思う。
 とりわけ、シュアーV15タイプIVでの反応は、注目すべきものだったといえるのではないか。たしかにひびきそのものは薄味だったが、音像のひきしまり方など、このましかった。もしこのプレーヤーシステムでつかうカートリッジを、この三つの中から選ぶとなれば、必然的にシュアーV15タイプIVということになるだろう。
 そこでききてに与える印象が、たとえスタティックだとしても、ききてにかなりの音の見通しを可能にするということは、このプレーヤーシステムの美点といっていいように思う。

パイオニア XL-1650

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 全体的な傾向としては、音をマクロ的にとらえる──ということがいえるだろう。どうやらオルトフォンMC20は、このプレーヤーシステムにあわないようだからはずして考えると、シュアーV15タイプIVでも、デンオンDL103Sでも、共通して、すっきりした音がきけたということが、このプレーヤーシステムのチャーミング・ポイントになるだろう。
 そして、そのいずれにおいても、きつくなりすぎる音が用心深くさけられているということも、注目する必要がある。ただ、音場が、奥にひくより、むしろ横にひろがりがちな傾向があり、それがきいての印象を、平面的、ないしは表面的にするということが、いえなくもないようだ。もっとも、そういうことは、レコードにおさめられている音楽の性格によっては、効果的にもなるわけで、いちがいにはいいがたい。
 音のとらえ方が消極的になりすぎないところがいいが、ひびきの中味がもう少しつまれば、力強い音に対しての反応もさらに充実するだろうし、そうすれば、このプレーヤーシステムの魅力はさらに一層ますにちがいない。

サンスイ SR-838

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 よくいえば、カートリッジの性格に順応するというべきだろうが、音を、くっきり、正確に提示するという点で、わずかながら弱いところがあるようだ。プレーヤーシステムとして、妙なくせのないのはいい。ただ、リズムのかった部分で、どうしてもひきずりがちになる。
 ききながらとったメモは、それぞれのカートリッジにつき500字程度ずつ、全体で1500字ほどあるが、それを読みかえしても、共通点をみつけだしにくい。たとえば、木管楽器のきわだつ部分で、シュアーやオルトフォンでは、クラリネットが強調され、デンオンでは、オーボエが強調されるといったようにだ。それはむろん、カートリッジのキャラクターによってのものだが、本来なら、そこにおのずとプレーヤーシステムとしての性格が浮びあがるはずなのに、それがみさだめにくい。
 カートリッジの性格に順応する──というのは、そういうことがあるからだが、しかし、そこでこのプレーヤーシステムなりの一本の筋を通せば、プレーヤーシステムとしての魅力をさらにあきらかにできるのではないか。

ヤマハ PX-1

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 音像を肥大させないところにこのプレーヤーシステムのよさがあるというべきだが、総奏でのひびきの力の提示にもう一歩ふみこんでの積極性がほしい。ひかえめなところはこのましいのだが。


デンオンDL103Sで聴く

 さわやかだし、すっきりとしているが、ひびきのこくといった点で、多少ものたりない。声など、もう少し、声ならではの湿りけが感じられた方がいいだろう。細部の鮮明な提示はいいが。


シュアーV15/IVで聴く

 示すべきものをすっきり示して、しかし決しておしつけがましくならないよさとでもいうべきか。もう少し力感がほしいと思わなくもないが、リズムの切れに鋭く反応するあたりはいい。

ソニー PS-X9

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


 たっぷりしたひびきが、積極的におしだされる。総奏でのひびきの重量の提示など、見事だが、軽やかさ、さわやかさという点で、もう一歩だ。そのために全体としての印象が幾分重い。


デンオンDL103Sで聴く

 このプレーヤーは、中域のひびきに対しての反応のたしかさによさがあるようだが、ここでそれが示されている。くっきりした、あいまいさのないさまざまなひびきへの反応はよい。


シュアーV15/IVで聴く

 腰のすわった音とでもいうべきか。音像は大きくなりがちだが、くっきりと示す。強い音に対しての対応は、なかなかのものだ。微細なひびきに対してさらにシャープに反応すれば、よりこのましいのだが。

デンオン DP-7700

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 声のなめらかさはかなりのものだ。きつくなりすぎないよさがある。音像は、幾分大きめだが、気になるほどではない。はった声も、硬くも、薄くもならない。ピッチカートも、たっぷりひびくが、ふくらみはない。


デンオンDL103Sで聴く

 実に鮮明だ。細部の見通しということでは、他のふたつのカートリッジよりはるかにまさる。それにここでのひびきには、つきはなしたようなそっけなさがない。はずみのあるひびきへの対応もいい。

シュアーV15/IVで聴く

 音像はきりりとひきしまり、ひろびろとした音場感を感じる。すっきりとしていて、とてもききやすい。誇張も、ねじまげも、無理もない。相反するひびきが、それなりに自然に提示される。

ダイヤトーン DP-EC1MKII

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 このカートリッジのよさに素直に反応しているといった印象だった。ひびきはきめこまかく、しかし音像のふくらみをおさえていた。はった声が硬くならず、まろやかさをたもっていた。


デンオンDL103Sで聴く

 鮮明だ。決して消極的ではないが、ひびきははしゃぎすぎていない。細部への見通しは大変いい。ピッチカートなど、ふくらみすぎずに、しかし効果的にひびく。もう少ししなやかさがあればと思わなくもない。


シュアーV15/IVで聴く

 弦楽器のひびきのきめのこまかさは特徴的だった。すっきりさわやかなひびきだが、それに加えて、いきいきとしたところがあってよかった。ピッチカートなどももう少しくっきり提示されてもいいが。

テクニクス SL-1300MK2

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 ひっそりとしたひびきが特徴的だ。声など、なかなかなまなましい。ただ、リズムのきれが幾分甘く感じられる。とげとげしいひびきを出さないのはいいが、ピッチカートのひびきはふくれぎみだ。


デンオンDL103Sで聴く

 ひびきの角をシャープに示す。クラリネットとオーボエのひびきの対比など、不自然さがなく、このましい。もう少ししなやかさがあってもいいだろうが、このすっきりした提示は魅力的だ。


シュアーV15/IVで聴く

 すっきりしたよさがある。音像は小さく、誇張感もない。さまざまなひびきを、余分なものをそぎおとして、提示する。そのために、ひびきのあじわい、ないしはこくに欠けるといえなくもない。

ビクター QL-A7

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 このカートリッジのよさをあきらかにしている。なめらかで、いきいきとしている。総じて、ひびきは、シュアーV15タイプIVのときより、積極的に前にはりだしてくる傾向がある。


デンオンDL103Sで聴く

 音像はきりっとひきしまっている。誇張感はない。たとえば声などは、もう少ししなやかでもいいと思うが、徒らにふくらまず、すっきりしているのはいい。ひびきの明るさもこのましい。


シュアーV15/IVで聴く

 音像が小さく、すっきりひろびろとした音場感は、特徴的で、このましい。ひびきのこくとか、つや、それに厚みといったことでは、もう一歩だが、独特のさわやかさがあっていい。

トリオ KP-7700

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 声はなめらかだ。すっきりしている──といえないこともないが、力強い音に対しての反応で、幾分ものたりないところがあるので、すっきりとしているよさがいかしきれないというべきだろう。


デンオンDL103Sで聴く

 ここでのきこえ方は、デンオンDL103としては、異色だった。ひびきは他のふたつのカートリッジの場合より、前にはりだした。その分だけ積極的になったということもできなくはない。

シュアーV15/IVで聴く

 誇張感のないことはよしとすべきだろう。ただ、音像が総じて奥まってしまう。敢ていえば弱さが、気にならなくもない。声とオーケストラの、きこえ方のバランスは、きわめて特徴的で、声は後方からきこえた。

ソニー PS-X700

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 ひびきの表情を誇張ぎみだ。音像も、シュアーV15タイプIVとはうらはらに、大きい。その他の点においても、シュアーV15タイプIVとは、まったくちがう。ひびきは、総じて、重く、ねばりぎみだ。


デンオンDL103Sで聴く

 ひびきの角を鋭く示す。ひびきは、総じて、薄味で、こくに不足するが、あいまいにならないところがいい。軽量級のひびきですっきり提示するのが、ここでの美点というべきかもしれない。


シュアーV15/IVで聴く

 ぼてっとしたひびきをいさぎよくそぎおとしている。そのためにきわめてすっきりしている。すっきりしすぎているというべきかもしれない。声などに、もう少しなめらかさがほしい。

パイオニア XL-A800

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 ひびきそのものにきめこまかさがあるが、音像は大きい。クラリネットの音などで、なめらかでこのましいものの、声は、すくなからず脂っぽい。リズムは重く感じられる。オーボエの音のかすれが感じとりにくい。


デンオンDL103Sで聴く

 このカートとリッジの音としては異色なことながら、声が暗くおもい。そして、オーボエの音も脂っぽい。ひびきの輪郭があいまいにならないのはいいが、弦楽器の堂々としたひびきは特徴的だ。


シュアーV15/IVで聴く

 すべての音がたっぷりひびく。細部へのこだわりをすてて、全体を大きくつかまえた音とでもいうべきか。その意味でなかなか積極的だ。ひびきの表情を拡大して示す傾向がなくもない。

ダイヤトーン DP-EC3

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 総じて音像は大きくなる。ピッチカートもたっぷりひびくし、声のまろやかさも示されるが、ひびきが重くなりすぎる。はった声も硬くならないのはいいが、もう少し鮮明さがほしい。


デンオンDL103Sで聴く

 音像はかならずしも小さいとはいえないものの、すっきりきかせるよさがある。ただ、オーケストラのひびきのとけあいより、個々のひびきを分解して示す傾向がある。弦のひびきにこくがほしい。


シュアーV15/IVで聴く

 音像も大きくないし、誇張感がないのがこのましい。弦楽器によるピッチカートもふくらまない。きいての印象は、幾分消極的だが、すっきりきかせるよさがある。声にももう少しまろやかさがほしい。

ヤマハ YP-D9

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 ここでも音像は大きい。オーケストラより声の方が積極的に前にでる。チェロのひびきが太くなる。リズムの切れは、もう少し鋭くてもいいだろ。低域の反応でいささかのにぶさを感じる。


デンオンDL103Sで聴く

 一応すっきりした印象を与えるが、やはりここでも、音像は大きめだ。オーケストラの個々のひびきを、分解して提示する。ひびきの角を強調する傾向がなきにしもあらずである。


シュアーV15/IVで聴く

 音像はふくれぎみだ。音をおしだしてくるような傾向がある。それでひびきの中味が充実すればいいのだろうが、その点で幾分ものたりないところがあるので、表面的な印象をききてに与えてしまう。

デンオン DP-50L

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黒田恭一


ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より


オルトフォンMC20で聴く

 音像は大きめで、オーボエよりクラリネットのひびきの方がきわだつ傾向がある。総じて、たっぷりとはひびくし、こえにまろやかさもあるが、細部がさらに鮮明に示されればさらにこのましいだろう。


デンオンDL103Sで聴く

 音像はほどほどで、ひびきに一種独特のなまなましさがある。このカートリッジのクールな性格がおさえられているのはいいが、もう少し細部が鮮明だと、さらに効果的だったのではないか。


シュアーV15/IVで聴く

 ひびきそのものは薄味だが、音像がひきしまって、声のしなやかさがあきらかになるのがいい。誇張感がなく、声とオーケストラのバランスもこのましい。ただ、ひびきは、あくまでも薄味だ。

トリオ KP-7700

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このモデルは、重量級ターンテーブルにより機械的な慣性を利用して滑らかな回転を得ておき、これにクォーツロック制御をかけて総合的な特性を向上しようとしている点は、ラックスの新モデルと同様な構想である。しかし、ダイレクトドライブ用のモーターに20極30スロットDCモーターを使用し、サーボ検出部は磁気的、機械的積分方式ともいえる180スロット3層ギアを使い、さらにターンテーブルの回転速度をそのまま電圧に変換する速度電圧方式としているのが特長だ。この方式は、回転数・周波数・電圧とも3段階に変換する従来方式よりも損失が少なく、クォーツPLL回転の応答を早くできる利点がある。
 その他、10mm直径のスピンドル、電子ブレーキ機構、ヘルムホルツ共鳴箱を利用したターンテーブルシート、デュアルサスペンション型インシュレーターなどを備えている。

ソニー PS-X9

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プレーヤーシステムは、ダイレクトドライブ型フォノモーターが実用化されて以来、FG型サーボの第2世代、さらに、クォーツロックの第3世代と性能が向上し、現在のトップランクの製品では、まったく完成期に入ったかのように感じられる。性能的に見ても、聴感上においても頂点に達し、もはやプレーヤーシステムが、コンポーネントシステムのネックになるとは考えられないというのが実情である。しかし、一部では、精密な機械加工による精度をもつ、まったくサーボシステムをもたない旧タイプのフォノモーターを使ったシステムのほうが、現在のクォーツロックのフォノモーターのものよりも聴感上で明らかにメリットがあるとの声も絶えないのは事実である。
 たとえば、業務用として定評のあるEMTのTSD15を、一般のプレーヤーシステムとEMT927stとで比較試聴したとしよう。当然のことながら同じTSD15なのに、結果としての音は、カセットデッキの音と2トラック・38センチの音ほどに隔絶した差、誰しも驚くほどの違いが出てくる。この意味では、アンプにたとえれば、現在のプレーヤーシステムは、プリメインアンプの範囲にとどまり、高級セパレート型アンプに匹敵する製品は皆無といえよう。
 今回ソニーから発表されたPS−X9は、まさしくセパレート型アンプのランクにある待望された大型製品である。
 直径38cm、重量2・8kgの大型ターンテーブルは、トルクムラによる振動がない起動トルク7kg/cmの大型リニアBSLモーターでダイレクトドライブされ、サーボ系は、マグネディスク検出方式に加えて、クリスタルロック機構付である。プレーヤーベースは、モーターとトーンアームを他の部分から隔離したアルミ鋳造フレームによるフローティング機構を備え、アルミダイキャスト製の固定フレームからゲル状の高粘性体のインシュレーターで懸架されている。また、モーター部は軸受部分が砲金製、モーターハウジングが鋳鉄製である。
 トーンアームは高感度で剛性が高い軸受ブロックとパイプには剛性アルミ合金と炭素繊維をラミネートした材料を採用し、内部のリード線には高域損失が少ないリッツ線を、シェル固定には前後2箇所で締めつけるネックシリンダー機構をもつ。
 カートリッジはマグネシュウムシェルと一体化したXL−55Pro、電源はパルスロック型で、MCヘッドアンプとフォノイコライザーが内蔵されている。なお、トーンアームはオートリフター機構付である。
 PS−X9に各種のカートリッジを使い、内蔵アンプを使用せず、ダイレクトにコントロールアンプに接続して試聴してみると、安定感があり重厚な低域をベースとして、テープの2トラック・38センチ的な雄大なスケールをもったダイナミックな音に変貌した。
瀬川冬樹

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」より

 アンプとスピーカーに関するかぎり、ここ二年ほどのあいだに、内外の大半の製品をテストする機会が与えられていたから、プリメインとセパレート、ブックシェルフとフロアータイプ、そしてプロ用のモニタースピーカー、と、それぞれの製品の分野での大まかな水準を掴めていたつもりだった。そして、アンプ及びスピーカーに限っていえば、ここ数年間での全体的な性能の向上は、まったく目を見張る思いだった。こうした体験を通じていえることは、少数の例外的存在を除いて、アンプもスピーカーも、大すじには価格と性能がほぼ比例していて、たとえば5万円のスヒーカーが20万円のスピーカーよりも音が良いなどということは、まあありえないと断言してもいいと思う。事実、そんなことがあれば、何かが間違っている。
          *
 プレーヤーのブラインドテストというのをさせられて、終ってから製品名と価格を種明かしされたいま、とても複雑な気持に襲われている。それは、いま書いたばかりの「何かが間違っている」状態が、プレーヤーに関してはいまところまかり通っているのではないだろう、という気持からだ。
 そのことは別項の速記録をお読み頂くことで明らかになる筈だが、少なくとも私自身に限って言っても、相当に高価なプレーヤーもそれと知らずに聴くかぎり、ローコストのプレーヤーにくらべて音質の上での明確な差を、聴き分けることができなかった。もう少し正確な言い方を心がけるなら、聴感上での音質の良し悪しと価格の高低とのあいだに、アンプやスピーカーほどの相関関係を見出すことが困難だった。たしかに音質は一台一台みな違った。だが、この音はどうも頂けない、とメモしたプレーヤーが、意外に高価であったり、一応聴くに耐える音のした製品がそんなに高価でなかったりしたのを、あとになって知ってみると、どうも複雑な気分にならざるを得ない。いったい、プレーヤーの価格の根拠はどこにあるのだろうか......と。
 こんなことを書けば、次のような反論が出るにちがいない。アンプやスピーカーをブラインドテストすれば、やっぱり同じことを言うのじゃないか、ローコストでも、高価な製品より音の良いのがあるじゃないか──。例外的にはそういう製品がないとは断言できない。けれど、アンプとスピーカーに関するかぎり、そういう作り方がいまや成り立ちにくくなっている。粗理由をくわしく書くのはこのスペースでは無理だが、スピーカーでたとえれば、借りに耐入力を犠牲にすれば、音域の広さや音色の美しさやバランスの良さを鳴らすことはできるだろう。だがいくらブラインドテストでも、パワーを入れればたちどころに馬脚をあらわす。
 アンプの場合には、パワーという要因だけでは説明しきれない。パワーを抑えればコストダウンできるが、しかし限度はある。となると、ファンクションを簡略化するとか、セパレートをやめてインテグレイテッド(いわゆるプリメイン)化するなどの手段をとる。こういう見た目の形態は、ブラインドテストではわからない。だがそうであるにしても、音の良いアンプは結局高価だ。
 正直に白状すれば、いくらブラインドテストでも、こんにち、本誌が我々をモルモットに起用する以上、この製品はたぶん入っているだろう、というような推理ぐらい働かせて試験に臨む。そして、いま鳴っているこの音は、これは各コンポーネントが相当にしっかりしていなくては鳴らないだろう音だから、もしかしたらこれがあの製品じゃないだろうか──といった推測もしている。しかし恥ずかしながら、少数の例外を除いてすいそうは見事に外れた。テープを前に憶面もなくしゃべり終えた(メーカー名や製品名を知らされないおかげで、何の気兼ねなしに悪口を言えたが)あとで、ひとつひとつの製品名を知らされて、なるほどと納得したりえ! あの音がこの製品? と青くなったりした。これがブラインドテストのおもしろいところだろう。もっとも、本当の意味でおもしろがっていたは、モルモットにされた我々よりも、それを操る編集部の諸君であったにちがいないが。
          *
 そんな状態で、プレーヤーというパーツは、アンプやスピーカーの最近の性能向上に比較すると、まだまだ見落しの多い部分であることを感じた。言うまでもなく、ターンテーブルやアームやカートリッジ、といった単体のコンポーネントパーツについては、それぞれに研究・開発の成果が実っていなくはないが、それを総合してまとめる際に、スピーカーやアンプと比較すると、まとめかたの勘どころあるいは決め手が、まだ見つかっていない、というのが本当のところなのではないかと思う。
 テストの進めかたについては別項にくわしい解説があると思うが、私自身は、とくにカートリッジのちがいによるプレーヤーの音色の変化に興味を持って臨んだ。ことに、オルトフォンMC20は、インピーダンスが2Ω近辺ときわめて低い。一方、現存するフレーやーの大半、アームの先端からアンプに接続するピンコードの直流抵抗分が大きく、大多数が、往復で2Ω或いはそれ以上の直流抵抗を持っている。これでは、理屈だけ考えてみてもMC20のようなローインピーダンスのカートリッジに対して、よい結果の得られる筈がない。
 現実に私の心配は当った。スタントン881Sでは一応の結果が得られても、MC20の場合となると、打って変って精彩のない、反応の鈍い、あるいは大切な音の一部をどこかに忘れたか落したかしてしまったかのような、おもしろみに欠けた音になってしまうものが少ないとはいえない。すでにカートリッジやアンプの受け口の部分では、MCカートリッジのブームが到来していながら、プレーヤーの専門メーカーが、意外なほどMCカートリッジのため設計を怠っている。MCカートリッジが、その本来の特性の良さでレコードに刻まれた溝の隅々から微細な音を拾ってきても、それをアンプの入口に運んでくる以前に、どこかにとり落して、魅力のひとかけらもない、つまらない音にしか聴かせない。
 あらかじめ覚悟していたものの、そういうプレーヤーが現実にとても多いことに、改めてびっくりさせられた。
 今回のブラインドテストには、リファレンスとしてEMTのプレーヤーが使われた。もともとMC20や881Sを組み合わせるための製品ではないのだから、それらが最良の結果で鳴ったとはいえない。ただ私自身は、自分の聴き馴れたプレーヤーとして、これを最良の基準としたのではなく単に、自分の耳の尺度を整える意味で、参考として頭に置いたにすぎない。
 残念なことに、今回たまたまブラインドテストの対象に選ばれたプレーヤーの中には、アンプやスピーカーの時とは異なって、一台ぜひ(例えばサブ機としてでも)欲しいと思わせるほどの音を探し出すことができなかった。いずれの製品も、部分に的には良い音を聴かせながら、同じ一枚のレコードの音を、どこかで欠落させているといった印象を拭い去ることができなかった。
 こんにち、DDモーターの再検討が論じられゴムシートや、引出コードや、ヘッドシェルや、その他部分的には細かな問題点が個別に指摘されている。そうした反面で、プレーヤーシステムとしての総合的なまとめの方法論に、もうひとつトータルな、俯瞰的な視野の広さが求められるのではないだろうか。いや、そんな小難しいことをくだくだしく言わずとも、ともかく、ヴィヴィッドでたっぷりと豊かな音を一枚のレコードから抽き出して、聴き手を心から満足させてくれるプレーヤーシステムの出現を、いまこそ強く望みたいと思った。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 40万円以上のプレーヤーシステムは、まったくのスペシャリティ製品の存在する価格帯で、その上限も350万円を超すとなると、「ベストバイ」としての選出自体が、いささか問題となるのではないだろうか。
 このランクの製品は、基本的に、コンシュマー用の超高級モデルと、本来はスタジオや放送用の業務用モデルの2種類がある。さらに、20〜40万円の価格帯でも述べたように、アームレスシステム、それも超重量級のターンテーブルを糸またはベルト駆動するシステムに、ユニバーサル型や専用アームを取付けて組合わせるタイプも、この価格帯では考慮する必要がある。業務用は完全にフル装備で、イコライザーアンプも備え、基本的に変更はできないのに対して、コンシュマー用はかなりフレキシブルであり、アームレス型なら複数個のトーンアームの使用、ターンテーブルを追加しての二重駆動など発展の可能性は大きい。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 20〜40万円の価格帯になると、スピーカーシステムでいえば中型フロアーシステム、アンプでいえば中級セパレート型に相当する性能・音質をもつ製品が存在するところでややベストバイの意味からは外れた位置づけにあるプレーヤーシステムである。
 選択のポイントは、①性能と機能のバランスを重視してフルオート機を選び、イージーオペレーションで、適度にクォリティの高い音質をリラックスして楽しむか、②高性能さを優先させて大型/重量級のマニュアル機を選び、普及機では再生し得ない、ディスクにカッティングされている底知れない情報量を汲みとるか、の二者択一であろう。また、このクラスならシステムとは別にアームレス型を選び、使用するカートリッジにマッチしたトーンアームを組込んで、セミカスタム型のシステムを作るのも効率の高い選択である。当然、選択にはある程度のキャリアが必要だが、その結果には夢がある。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 8〜20万円未満でも、さらに10万円、15万円は製品としての境界線である。10万円未満は、8万円未満の延長線上に位置する製品である。プログラムソースとして、ときにはディスクを使うという程度なら、8万円未満を選択したほうがよいが、やはりディスク中心のプログラムソースで楽しむのならこのクラスである。マニュアル、フルオート、リニアトラッキングアーム、ベルトドライブなどテーマも多いが、メカニズム的にもこのクラスは信頼性が高く、その音質にかなり聴きごたえする価格帯である。15万円未満は、実質的な高級モデルの存在する価格帯である。最近では高性能機はマニュアルという誤解も少なくなり、フルオート機がかなり登場している。また、リニアトラッキングアームの本来の特長が活かされるようになる価格帯でもある。20万円未満は15万円未満の延長線上で製品も少ないが、それ以上の価格帯に相当する好製品が存在する。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プレーヤーシステムは、コンポーネントシステムの入口を受持つ位置づけにあるため、その選択を誤ると、アンプやスピーカーシステムにいかに高性能な製品を使ったとしても、希望する音が得られなくなる点に注意したい。8万円未満の製品といっても実質的には6万円、7万円をボーダーラインとして3つのグループに分けて考えたほうが現実的だ。6万円未満の製品はプレーヤーシステムとしてベーシックなモデルであり各社の製品競争が激しいところで、比較的優れた製品が多い。最近の傾向としては、ストレートアームを備えたフルオート型が主流を占めるようであるが、選択は必ず比較試聴をして決めたい。7万円未満はいわば標準モデルで、6万円未満とは音質的に1ランク差があるようだ。8万円未満は、30〜40万円クラスのコンポーネントシステムの組合せに使えるだけの性能・機能・音質を備え、一般的にこのクラスの製品を選べば安心して使用できる。

デンオン DP-75M

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ターンテーブル内側に磁気テープのような磁性体をコーティングし、これにパルス信号を記録し、磁気ヘッドで検出する精度の高いサーボ方式をDD型登場の初期から採用するデンオンが、この独自のDD型をクォーツロック化し、ターンテーブルに二重構造の振動防止機構を組込んだDP75フォノモーターをベースとしたシステム。DD型にありがちな、あいまいさがなく、穏やかで安定度の高い音は、リファレンス用としても使える。

Lo-D HT-840

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Lo-Dの新しいプレーヤーシステムは、現在、中級機以上では標準となりつつある水晶制御方式を導入したDD型ターンテーブルを採用したマニュアル機である。
 駆動源であるDD型モーターは、同社独自の開発であるユニトルク型で、ブラシレス、コアレス、スロットレス構造の偏平型DCサーボ方式である。この基本性能が高いモーターにPLL水晶サーボをかけ、負荷特性、回転精度を一段と高めている。発表された測定値は負荷特性が針圧120gまで0%、回転偏差0・0003%以内だ。
 トーンアームはS字型スタティックバランス型で、トーンアームに生じる100Hz付近の曲げ共振による振動エネルギーを、一般的なメインウェイト軸とパイプ間にゴムを入れて共振を40Hz近辺の低い周波数にずらす方法ではなく、メインウェイト軸内部にゴムダンパーを介して取り付けた小型ウェイトで構成するダイナミックアブソーバーで吸収し共振レベルを下げる特殊な構造を採用している。また、ヘッドシェル取付部分のコネクターは、コネクター部が二重構造で、内側締付金具が外側に向ってテーパー状となったチャッキングロック型を採用し、ガタがなく、剛性を増している。
 プレーヤーベースは天板が14mm厚の高密度BMCボード、下部は、40mm厚の高密度パーチクルソリッドボードの二重構造であり、大型インシュレーターと重量級ダストカバーで耐ハウリング性を高めてある。

CEC DD-8200

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 カセットデッキは、オリジナルのフラット型から、最近ではその製品の大半がコンポーネント型と呼ばれる、コントロール部分とカセット収納部が前面パネルにある垂直型となり、大きく姿が変化しているが、ことプレーヤーシステムでは、ディスクを水平に置く必要があり、操作系は、一部を前面に置いた例もあるが、基本はトッププレートに操作系を置くのが通常である。
 プレーヤー専門メーカーとして、もっとも長いキャリアをもつCECからの新製品は、プレーヤーシステムのすべての操作系をプレーヤーベースの前面に置く、タテ型構成のユニークなDD8200である。
 ターンテーブルは外径31cm、重量1・5kgあり、DCサーボモーター、ダイレクトドライブ方式である。トーンアームはS字型スタティックバランス型で、ラテラルバランサーとアンチスケート機構が付属し、カートリッジはV型マグネットをもつMM型で、針先は0・6ミルコニカル針付だ。
 このシステムはセミオート機で、オートリターン、オートカット動作ができるが、オート動作でアームがレストに戻ったときにアームを上昇、下降させる前面のキューイングレバーが自動的にUPの状態となり、針先を保護する機構をもつ点が目立つ。
 タテ型操作系をもつこのシステムは、プレーヤーを高い位置に置く場合の利点をもつと思うが、さらに発展してフルオート機になればよりユニークな存在となるだろう。

サンスイ SR-838, SR-636

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイからは、さきに自社開発の水晶制御フォノモーターを使ったプレーヤーシステムSR929が発売されているが、今回、これに続くシリーズ製品として、水晶制御型フォノモーター採用のシステムSR838とPLLサーボ型フォノモーター採用のSR636が発売された。
 この二機種の製品は、基本的にはフォノモーターの制御方式、ターンテーブルが異なるのみで、発表された特性上の差は少ない。モーターはDC型20極ブラシレス方式で、制御用にシャフトに取り付けたストロボスコープ上に480本のスリットを持つ円板と、発光ダイオードとフォトトランジスターを組み合わせ、回転数に比例したパルスを発生する光電型ジェネレーターが組み込まれている。SR838はこれあ水晶発振によるPLL制御方式とし、SR636はCR発振によるPLL制御方式として使っている。なお、ワウ・フラッター特性を向上するため、シャフトはセンターレス精密仕上げ、焼入れを施した特殊ステンレス鋼を、スラント軸受部は二硫化モリブデン配合の66ナイロン材を使用している。
 トーンアームはスタティックバランス型だが、軸受部分がSR929の一点支持方式ではなく、横方向のスパンを広くとった方式に変わっている。このタイプはピボット部分の遊びに対しねじれ方向の影響が少ない利点があり、アームの支点部分に重量を集中し音質を向上するために、上下方向の回転軸には85gの重量をもつ真鍮製のシリンダーが採用されている。アームベースは亜鉛ダイキャスト製でプレーヤーベースと確実に固定するために、裏側に厚さ4mm、重量250gの大型ワッシャーが、SR838では2枚、SR636では1枚使用されているのが目立つ。パイプアームは内部の空洞にテフロン系のダンプ材が採用され、ヘッドシェル取付部分のコネクターはSR929同様にテーパ材で取付けたときの機械的強度が高い。また、付属カートリッジは角型マグネットを持つMM型で、音像定位を明確にするために薄いダンパーを採用してあるとのことだ。
 プレーヤーベースは40mm厚のソリッド材使用のピアノ仕上げで、ステンレスのスプリングと緩衝ゴムを組み合わせた新開発のインシュレーターが付属し、ダストカバーは厚さ4mm、重量1・4kgのサイド・フィルムゲート式のアクリル製である。ターンテーブルは、デザインは異なるが、ともに外径318mmのダイキャスト製で、レコードとの接触面積を大きくするために内側に向かって350分の1の勾配が付いている。
 ともにプレーヤーシステム基本から忠実に製作されているため低域から中域にかけて粒立ちがクリアで緻密さがあり、とかくこのクラスのシステムでは使い難いエンパイアやピカリングの高級モデルの本来の音を素直に引き出すだけの十分のクォリティの高さがある。音の良いプレーヤーを目指した成果が聴きとれる製品である。

ダイヤトーン DP-EC2

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新しい時代のオートプレーヤーを象徴するような電子制御方式のプレーヤーを発売し、プレーヤー部門で一躍熱い視線を集めたダイヤトーンから、基本性能を同じくし、一部の機能を簡略化して、第2弾製品としてDP−EC2が発売された。
 EC1と比較すると、このタイプの特長である光線を使うレコード外形寸法の自動選択が、30cm盤と17cm盤の2種類となり、これに連動していた回転数自動選択がなくなり、マニュアル切替になっている。この他、リピートの動作状態が一部変更になっているが実質的な変化ではない。
 このEC2は、オート動作時にはスタートボタンを押して動作させるが、このボタンを押しつづければレコード外周以内はアームの移動速度が遅くなり、ボタンを放した位置で盤面に降下する。また、演奏中にストップダンを押せばアームはリターンするが、オートランプが消えるまで押しつづければアームはアップした位置で止まったままとなり、スタートボタンをワンタッチで押せば再び盤面に降下する。なお、ターンテーブル上にレコードがない場合にスタートボタンを押してもアームは最内周まで移動し降下することなくレストに復帰する動作などは、すべてEC1と同様であり、反応が速く機敏に動作をおこなう。
 他の基本的部分は、ターンテーブルゴムシートだけが新しいタイプとなっているが、それ以外の変更はない。

デンオン DP-1800

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンには、すでに、プレーヤーベースの上板に天然大理石を採用した、DP3750があるが、このDP1800も基本的には、同じ構想でまとめられたプレーヤーシステムである。
 DP1700の上級modelである、このシステムは、まず、質量が大きく耐ハウリング性を向上するためと、デザインの両面からプレーヤーベースに天然大理石とパーチクルボードを接合して使用している点が目立った特長である。
 フォノモーターは、基本型は、DP1000で、ストロボスコープ窓部分にカバーが付けられた点と、レーザー光によって振動解析の結果、スピーカーからの音圧などによるレコード盤の振動を抑え、音質の劣化を防ぐ、新開発ブチルゴム系のターンテーブルシートを使っている。
 トーンアームは、S字型のスタティックバランス型で、1回転で2・5g針圧が変化する回転型のカウンターウェイト、ダイアル式のアンチスケート機構をもつが、アームボディとパイプ間に、ダイナミックダンピング機構が設けられ、パイプ自体をダンピングするほかに、プレーヤーベースからの振動を抑えて、カートリッジの性能を素直に引き出す設計である。
 このシステムは、音をスッキリと整理して聴かせるタイプである。聴感上の帯域バランスは、とくに伸びきった印象こそないが、ナチュラルであり、素直にカートリッジの音色を引き出す点は好ましい。このクラスのシステムとしては、基本的なクォリティも高く、オーソドックスな製品である。

マランツ Model 6100

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この製品は、同社のもっともローコストなプレーヤーシステムである。モーターは、シンクロナス型で、ベルトドライブによりターンテーブルを駆動する。トーンアームは、S字型スタティックバランスタイプで、SME型のアンチスケート機構付であり、オートリターン・オートカットのセミ・オート型の機能を備えている。なお、インシュレーターは上級機と共通のタイプである。

マランツ Model 6200

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この製品は、トータルマチック型と呼ばれるフルオート型プレーヤーシステムである。レコードサイズと回転数を選択した後に操作レバーをPLAYの位置にするとアームはメカニズムにより自動的にリードインするタイプで、REPEAT機構も備えている。オートの動作は、比較的にスムーズであり、メカニズムは安定している。
 モーターは、FG型のACサーボ型で、ターンテーブルは、ベルトにより駆動されるが、このタイプの特長で、スタートが早く、トルクも充分にある。トーンアームは、S字型スタティックバランスタイプで、ダイアル式のアンチスケートデバイスが付属している。
 このシステムは、MODEL 6300よりもクリアーな音で、低域の音の芯が強く反応も少し早い。聴感上の帯域は、さして広いタイプではなく、細部を引出して聴かせることもないが、音の輪郭を外側から掴み、クッキリとした音を聴かせる。

マランツ Model 6300

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近の高性能化、高価格化の傾向が強いプレーヤーシステムのなかでは、このモデルは、現在、マランツのトップランクの製品ではあるが、いわば、中級機の価格帯にあるプレーヤーシステムである。
 プレーヤーベースの右側にあるアームボードの部分には、アルミ板製で、ここにすべてのコントロールが集中して配置されたレイアウトが採用されている。回転数切替、独立型のピッチコントロール、電源スイッチのほかに、目立ったファンクションとして、マニュアルとオートの切替がある。このオートの機能は、発光ダイオードとフォトトランジスターを組み合わせた、オートリフト・オートシャットオフ機構であり、一般のオート機構のように、アームはアームレストに戻るタイプではない。また、プレーヤー底面にあるインシュレーターは、硬質ゴムと、それを支えるクッションゴムからなるダブルインシュレーター構造であり、外側のリングを回転して本体の水平調整が可能である。
 モーターは、8極・24スロットのDC型で、ダイレクトに、直径31cmのターンテーブルを駆動し、トーンアームは、独特なジンバルベアリングを回転軸受に使ったS字型スタティックバランスで、ラテラルバランサーとアンチスケートデバイスをもつ。なお、マランツのプレーヤーシステムには、3機種とも、付属カートリッジに、シュアーM95EDが採用してある。

ビクター TT-71, QL-7R

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターのクォーツロック方式のダイレクトドライブ・ターンテーブルは、すでに、TT101、TT81の2モデルがあり、特長あるデザインと高い性能、とりわけ音が良いターンテーブルとして、高い評価を得ているが、このシリーズの第3弾製品として、今回、大幅にコストダウンされたTT71が発売され、同時にこのターンテーブルを使用したプレーヤーシステムQL7Rも発売された。
 TT71は、デザインが上級モデルの特長がある感じから、単体のフォノモーターとしては、オーソドックスな印象の円盤状のタイプに変わっている。ターンテーブルは、外周はストロボパターンが刻まれた直径31・3cm、重量2・2kgのアルミダイキャスト製で、慣性質量は、350kg・㎠ある。駆動モーターは、TT81と同じDC型12極・24スロットFGサーボモーターで、1回転に180個のパルスを発生するFG型速度検出機構をモーターユニットに内蔵している。このタイプは、起動特性、動的な耐負荷性、ワウ・フラッター特性が優れている特長がある。
 クォーツロック・サーボは9504kHzの水晶で発振した安定周波数をIC分周回路で周波数を低くし、これを基準信号として位相比較回路に送り、これとFGからのパルスを比較して、モーターの速度誤差があれば、2つの信号の位相差によってモーター駆動回路はコントロールされ、ターンテーブル回転を規定の速度に保つ働きをする。
 ストロボ照明電源は、商用電源ではなく水晶の安定した周波数による信号を電源としているため、ストロボのユレはほぼ皆無としている。
 ターンテーブルのコントロールは、タッチ・センサー方式で、回転数切替とストップは触れるだけで動作をするタイプだ。なお、ストップは、制動用ブレーキパッドをプランジャーでコントロールする方式で、メカニカルブレーキ独特の摺動音が聞かれるのが、いかにもディスク的な感じである。
 QL7Rのプレーヤーベースは、共振と制動を抑えた設計で、インシュレーターには、ゴムとスプリングの長所をいかし、欠点を抑えたパラレルアイソレーターで、ゴムにスプリングをコイル状に取りつけてあり、タテ、ヨコ両方向の振動吸収に高いメリットがある。
 トーンアームは、UA7045から高さ微調整機構などを省いたUA5045型で、軸受けはニュー・ジンバルサポート、パイプは防振材入り、ヘッドスクリュー部分は、2重構造のチャッキングロックタイプなどの特長をもち、ヘッドシェルは、溶湯鋳造の純アルミ製で共振がない、音のよいヘッドシェルである。
 なお、カートリッジは付属せず、上級モデルには備わっていた速度微調整は、本機では省かれて、2速度の固定型になっている。シンプルで内容の濃い製品である。

マイクロ DD-6

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソリッド5以来のスリムでシンプルなデザインを受け継いだ新製品である。
 ターンテーブルは、外周に投光式ストロボスコープをもつ直径33cm、重量1・2kgのアルミダイキャスト製で、FGサーボ型のACモーターでダイレクトにドライブされている。このタイプのモーターは、耐負荷特性が優れ、温度ドリフトが少なく、安定した回転が得られるメリットがある。
 トーンアームは、定評があるダイナミックバランス型アームMA505と同等な性能をもつタイプで、演奏中にも針圧の調整が可能であり、最近の高性能化したカートリッジの聴感上での適性針圧を探し出せる大きな特長をもっている。なお、ヘッドシェルは、共振が少なく剛性が高いH303が付属している。このアームは、別売サブウェイトを使えば、重量級カートリッジの使用が可能である。
 プレーヤーベースは、天然木を使ったスリムでコンパクトなタイプだが、穴あけ部分を最小に抑えて実効質量を大きくし、共振点を低くし、ハウリングに強い構造としている。なお、ベース側面に別売サブアームベースを使用すれば、2本のトーンアーム使用が可能となる点も見逃せない。

マイクロ DD-100

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ユニークなデザインをもつプレーヤーシステムDDX1000を発表して好評を得ているマイクロから、同社のプレステージモデルともいうべき大型のプレーヤーシステムDD100が発表された。
 このシステムは、民生機としては珍しい16インチ直径の超大型ターンテーブルを採用した点に特長がある。この種の大型ターンテーブルは、フライホイール効果が非常に大きく、一般的な30cm径のタイプにくらべて、よりスムーズな定速回転が得られるメリットがある。ちなみに、本機に採用されたターンテーブルは、直径40cm、重量5・2kg、慣性質量1500kg・㎠と驚異的に大きい。駆動モーターは、クォーツロックによるPLLサーボ方式のダイレクト型で、水晶発振器からの高精度な基準周波数でモーターからの回転周波数をフェイズロックするため確実に規定回転数が得られ、ストロボスコープを必要としない。なお、速度調整を必要とする場合には、クォーツロックを解除すれば、±6%の微調は可能である。
 トーンアームは、ダイナミックバランス型のMA505の延長型で有効長267mmあり、別売サブウェイトを使用すれば、オルトフォンSPU−Gなどの重量級カートリッジが使用可能である。
 プレーヤーベースは、剛性を高め、耐ハウリング性を向上する目的で、厚さ1mm、重量3kgの鉛板2枚をサンドイッチ状にはさんだタイプで重量は12kgもある。
 機能面では、アームベース部分に、カートリッジ負荷抵抗とコンデンサー容量切替スイッチが付属している。なお、電源部はセパレート型である。

トリオ KP-7300

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオから新しく発表されたプレーヤーシステムは、比較的にローコストなモデルだが、プレーヤーシステムの基本であるプレーヤーベースをはじめ、トルクの大きなダイレクトドライブ用モーター、重量級のターンテーブルの採用などに代表される、使用部品を充分に検討して開発されたオーソドックスな製品である。
 プレーヤーペースは、プレーヤーシステムの性能を向上させるための重要な部分であるが、ここでは、骨組みとして、石綿を加えて高圧成形したコンクリート一種であるMC材を使用している。この材料は、吸水率、含水率が低く、剛性が高い特長をもち、外部振動に強いシステムとすることに大きく役立っている。また、ベースの底板部分は、1・6mm厚の鉄板を使用しているのも、この部分の共振を抑えるための配慮である。また、ダストカバーは、スピーカーからの音のエネルギーを大量に受ける上面の肉厚を厚くし、各コーナーの内側は、三角形の肉もりを施して剛性を上げ、材料には振動減衰率が大きいアクリル材を使用するなどして機械的な強度の高いカバーとしている。また、プレーヤーシステムの幾何学的中心に重心がないと、高い周波数と低い周波数の2つの共振点が出来ることになり、防振性の上で大きなマイナスになるとの見解から、ダストカバーの開閉時にも、総合的な重心の移動を極小にできるような、カバーの重心分布が考えられているとのことである。
 ターンテーブルは、最大トルク1・1kg・cmの20極・30スロットDCサーボモーターで、ダイレクトに駆動されるが、ターンテーブル自体は、直径33cm、重量2・6kgのアルミ合金ダイキャスト製で、ゴムシートを含む慣性質量は、440kg・㎠と、このクラスの製品としてはかなり大きな値を得ている。なお、ゴムシートは、肉厚が6mmあり、ターンテーブルの分割共振を抑えているとのことだ。
 トーンアームは、S字型のスタティックバランス型で、パイプ部分は、直径10mm、肉厚1mmのアルミパイプを硬質アルマイト仕上げし、パイプのネックは、真鍮材で作った充分な長さのパイプで固定してある。ヘッドシェルは、アルミダイキャスト製で、フィンガー部分も一体成型として強度を高めたタイプである。
 付属カートリッジは、デュアルマグネットタイプのMM型で、音の傾向としては帯域が広く、とくにパルシブな音が多いジャズ、ロック系の音楽に適した、ガチッとした音をもっているとのことである。
 なお、プレーヤーベース部分のインシュレーターは、再生音、耐ハウリングの両面から検討された新開発のタイプで、上下方向の防振はもとより、横方向および回転軸の動きを制動する特長があるデュアルサスペンション方式である。ストロボスコープは、付属の小型円板をターンテーブルのスピンドルに入れて使うタイプである。

テクニクス SL-01

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このプレーヤーシステムは、ダイレクトドライブ型フォノモーターを最初に開発し、商品化をしたテクニクスが、数多くのダイレクトドライブ方式のプレーヤーシステムを送り出した経験をベースとして、再び、ダイレクトドライブ方式の原点にもどってプレーヤーシステムを見直して、つくり出したともいうべき製品で、このことは、新しい型番からもうかがい知ることができると思う。
 プレーヤーシステムとしては、色調がブラックとなり、デザインもスリムになったために、外観から受ける印象は、引き締まって、実際外形寸法よりは、かなり小型に感じられる。
 プレーヤーベースは、不要な空間を可能な限り減らす目的と、不要振動をカットするハイマス設計アルミダイキャストのキャビネットと防振構造をもつ亜鉛ダイキャストによる剛体設計のベースを粘弾性材を介し、三重構造とした、複合防振構造とし、インシュレーターには、粘弾性定数を充分に検討して決められた、大型の防振効果が高いタイプを採用して、トータルなシステムとしての耐ハウリング性、音質の向上が計られている。
 フォノモーターユニットは、基本的には、新発売のSP20と同等のものである。ターンテーブルは、直径30・1cm、重量2・7kgと、SP20よりも、直径がやや小さく、重量がやや大きく、慣性質量は330kg・㎠で、これは、少し大きな値となっているが、まず同じと考えてよいだろう。このターンテーブルの内側には、テクニクス独自のモーターのローター部分が組み込まれ、一体構造としている。サーボ系は、水晶振動子を使う基準発振器とプッシュプルFGとの組合せによる位相制御方式で、駆動電子回路には、新開発のDDモーター用ワンチップIC、AN640を使用し、全波両方向駆動により効率を高めている。なお、ブレーキ機構は、純電子式で、スムーズに働くタイプである。
 トーンアームは、亜鉛ダイキャスト製のしっかりとしたアームベースにセットされている。このアームの軸受部分は、EPA100アームに似たジンバル型で、専用ピボットベアリングの使用により、水平、垂直ともに初動感度7mgという高感度を得ている。ヘッドシェルは、オーバーハング調整付の複合防振構造である。アームのアクセサリーとしては、アンチスケートコントロールとオイルダンプ型リフターがある。
 SL01は、外観からは非常にシンプルな印象を受けるが、内容は、もっとも現代型のプレーヤーシステムらしい最新の技術をもりこんだ密度の高いものがある。実際の使用でも、アームの下側にコントロールが無いために、操作性が優れ、一条一列シマ目のストロボはLED照明で見やすい。また、音的にも、まさしくナチュラルなバランスと適度な質感の再現性があって、非常に好ましい印象の製品である。

ビクター JL-B37R

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターのプレーヤーシステムは、つねに定評があるモデルを市場に送り込んでいる点に特長がある。今回の新プレーヤーシステムは、基本的には、クォーツロックを外した、TT−81型相当のフォノモーターを中心にして構成された、高性能なモデルである。
 ターンテーブルは、厚みがある、直径32・8cm、重量2・15kgの重量型で、1kg・cm以上の大きなトルクをもつ、12極・24スロットのFGサーボ付ブラシレスDC型サーボモーターで、ダイレクトにドライブされる。
 トーンアームは、高級トーンアーム、UA−7045の構造を受継いだ実効長245mmニュージンバルサポートのS字型で純アルミを溶湯して高圧で鋳造成形した特殊なヘッドシェルと、チャッキングロック方式のネックシリンダーを備えている。なお、付属カートリッジは、X−1の設計を受継いだZ−1Sで0・5ミル針付である。
 このJL−B37Rは、各単体部品に、ビクターの高級モデルがもつ基本性能を落とさずに簡略化して使用してあるために、価格からは、想像できないシステムとしてのパフォーマンスが高いメリットがある。プレーヤーベースは充分に強度があり、ターンテーブルは外乱に対して機敏にサーボを効かせている。ストロボは煩雑を避けるために331/3回転だけがターンテーブル外周に刻まれているが不都合はあまりない。

デンオン SL-71D

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのフレーヤーシステムでは、DP−3700Fのように、モデルナンバーの頭文字がDPではじまる一連のシリーズが、よく知られているが、今回、発売された、新しいシステムは、モデルナンバーがSL−71Dと付けられていることからもわかるように、異なったシリーズであり、以前のベルトドライブ型プレーヤーMTP−701などの後継機種と考えられる。
 直径33・8cmのアルミダイキャスト製ターンテーブルは、その外周部分が一段落ちになっていて、この部分に、ストロボのパターンが刻まれ、プレーヤーベースの左手前にある大型のネオンランプで照明されるが回転数の確認は、容易なタイプである。
 トーンアームの下側のパネルには、操作部分が集中し、それぞれが単機能でコントロールされる方式である。実効長235mmのS字型のパイプをもつトーンアームは、スタティック・バランス型で、メインウェイトを回転して、0.1gステップで3gまで針圧を印加できる。アームに付属するアクセサリーは、インサイドフォース・キャンセラーとアームリフターがある。アームは、全体が黒で統一してあるために、カーボンファイバー製とも思いやすいが、充分な剛性を得るために、硬質アルマイト加工された結果である。付属カートリッジはJM−16は、MM型で、0.5ミル針付のものだ。
 DD方式のモーターには、アウターローター型、ACサーボモーターを使用しており、回転数の制御は、周波数検出型である。
 本機は、このクラスのプレーヤーとしては、これといって目立つ点が少なく、平均的な印象の製品だ。しかし、いわゆる音のよいプレーヤーという言葉があるが、結果として得られる音質は、かなり高級プレーヤーに匹敵するものがある。全体に、音が引締まり、力強く、とくに、中域の下から低域にかけてこのことが著しい。
 プレーヤーシステムの音の差は、よく問題にされるが、現実に機種間の差は、かなりあり、その程度は、少なくともアンプ以上である。選択にあたって、ヒアリングテストが不可欠である。

サンスイ SR-323

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイからの新しいプレーヤーシステムは、シンプルなデザインをもつ、ベルト・ドライブ方式の製品である。
 直径30.3cmのアルミ合金ダイキャスト製のターンテーブルは、重量が1.1kgあり、4極シンクロナスモーターで、ベルト・ドライブで駆動される。
 トーンアームは、実効長220mmのS字型ユニバーサル型であり、針圧は、メインウェイトを回転して印加する。トーンアームの付属機構は、ラテラルバランサーと、SMEタイプのインサイドフォースキャンセラーがある。回転軸受部分にSMEと逆方向に出たバーがバイアスカーソルで、0.5gステップで2gまで針圧対応でバイアスをかけることが可能である。付属カートリッジは、MM型で0.5ミル針付である。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 20万円未満の価格帯では、基本的に価格帯の分割方法がラフに過ぎるため、簡単に傾向を記すことは不可能である。したがって、ここではさらに細分して考えることにする。
 5万円未満では、各メーカーともにシリーズ製品のベーシックモデルが選択のポイントになる。これらの製品は付属機能を省いたマニュアル機で、基本的な機構設計が同一な点に注目したい。駆動モーターも、クォーツロック型よりも、ただのDD型のほうが結果としての音が優れた例もあるため、最低限の比較試聴をしたいものだ。
 5〜10万円台は、予想外に優れた製品が少ない価格帯で、ポイントは、各メーカーともに、最新製品を選ぶことだ。
 10万円以上では、機械的な設計、とくに強度が充分にある製品が必要最低限の選択条件だ。トーンアームのガタや、ターンテーブル軸受が弱いために、ターンテーブルの端を押すとタワムような製品は要注意である。

パイオニア PL-70

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 エクスクルーシヴの流れを受継いだマニュアルプレーヤーの最高級モデルだ。アームは、ダンプ両可変のオイルダンプ方式のスタティックバランス型、クォーツロックDD駆動のターンテーブル、マーブルエボニー天然木仕上げの重量級ベースとオーソドックスな構成。

ダイヤトーン DP-EC1MKII

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる電子制御フルオート機の国産第1号であるEC1の改良モデルだ。前面操作方式、クォーツロック化などが変更されたポイント。低域を充分に制動したシャープで抜けのよい音をもち、クォリティはこの価格帯にふさわしい高さだ。

テクニクス SL-1300MK2

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 重量級ターンテーブルを独自の開発によるクォーツシンセサイザーピッチコントロールのダイレクトドライブ方式で駆動する高性能フルオートプレーヤー。トーンアームは高さ調整付のスタティック型で、各種のカートリッジの特徴を素直に引出す性能をもつ。

テクニクス SL-10

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 レコードジャケットサイズの超小型フルオートプレーヤー。リニアトラッキングアームにはMC型カートリッジが組み込まれ、専用ヘッドアンプを内蔵している。機能は自動レコードサイズ選択と速度選択が特長で、水平位置、垂直傾斜のどの状態でも動作する未来指向型。

マイクロ BL-71

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 3・2kgの重量級ターンテーブルと直径16mmのシャフトの組合せをFGサーボモーターでベルトドライブする専門メーカーのマイクロらしい製品。巨大な軸受リング採用の特長のあるアームは、内線材に無酸素銅を採用。自然で色づけのない力強い音が特長である。

デンオン DP-70M

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 DP80での成果である二重構造ターンテーブルをアウターローター型ACサーボモーターでダイレクトドライブするマニュアルプレーヤーだ。アームは独自のダイナミックダンピング機構付。音質はナチュラルで抜けがよく、適度な緻密感をもつオーソドックスなタイプ。

パイオニア PL-50(L)

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自のSHローター方式モーターとオイルダンプ型のアームを採用したマニュアルプレーヤーで、型番末尾にLの付くタイプは、オートリフトアップ機構を加えた製品。音は穏やかだが安定感があり、各種カートリッジのキャラクターを素直に引出し聴かせる。

サンスイ XR-Q9

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自の構想に基く、最適支持方式を採用したストレート型アーム。磁気検出型の自社開発クォーツロックDD型モーター、大型の3本のダイキャスト型脚部に吊り下げ構造を組み合わせた、ユニークなサスペンション方式のプレーヤーベースを備えた高性能フルオート機。

ダイヤトーン DP-EC3

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる30cmと17cm盤の自動サイズ選択と速度、、ターンテーブル上のレコードの有無をはじめフールプルーフに使えるフルオートプレーヤーである。ナチュラルな帯域感と素直な音は常用するにふさわしい製品である。

ビクター QL-Y5

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 Y7とシリーズをなす最新のセミオートプレーヤー。トーンアームは、電子式ダイナミックバランス型で、針圧、アンチスケート、ダンピングは独立した調整ツマミで電気的にコントロールできるのが最大の特長。伸び伸びとした力強い音は、聴いていて大変に心地よい。

デンオン DP-40F

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自の開発による無接触式電子制御フルオート機構を採用したクォーツDD型プレーヤー。前面操作型でダストカバーを閉じたまま、レコード盤上の任意の位置に針先を落とせるポジションセレクター、電子式アンチスケートなどを備える。安心して使える中級機である。

ヤマハ P-750

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 低共振の左右対称ストレート型ARSアームがフレッシュな印象を与えるクォーツロックDDフルオートモデル。ヘッドシェルはネジで着脱可能であり、パイプ状をスライドする針圧ウェイとは大変に使いやすい。帯域感が広く、シャープでクリアーな音が特長である。

パイオニア PL-30(L)

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 中級機として定評があるPL50(L)のジュニアタイプのマニュアル機だ。上級機種と同等な重量級ターンテーブルをベースに、リジッドな構造のアームを採用し、安定感のある音が特長であり、まさしくベストバイだ。型番末尾のLはオートリフト付のモデル。

サンスイ FR-Q5

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 エレクトロニクス制御のトーンアームを備えたフルオード型のシステム。ーたーはクォーツロック方式のDD型で自社開発であるのが特長。付属カートリッジは、エンパイア製で2000の相当品だが、中域の充実した活気のある音は、このクラスでは抜群である。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 20万円以上の価格帯は、最近になって製品が豊富になり、選択の楽しみが増している。従来の20万円未満の価格帯の製品をアンプのプリメインアンプとすれば、この価格帯は、セパレート型アンプともいえるスペシャリティの分野である。
 たとえば、中型以上のフロアー型スピーカーシステムを、合計35万円クラスのセパレートアンプでドライブするシステムを使っているとしよう。これにマッチするプレーヤーシステムは、やはり30万円以上としなければ、折角のアンプやスピーカーシステムの実力が、プレーヤー部分がネックとなり、充分に発揮できないことになる。
 ちなみに、ローコストのシステムで10万円未満のプレーヤーシステムと、このクラスの製品とを、同じカートリッジを使って比較してみるとよい。いかに、プレーヤーシステムの性能が、トータルのシステムに決定的な影響を与えているかが明確にわかるはずだ。

EMT 930st

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 伝統的な業務用コンストラクションを現代に伝えている貴重なプレーヤーシステムだ。直径33cmのターンテーブルは二重構造を採用し、リムドライブ方式で駆動される。トーンアーム929には、TSD15を組み合わせる。

パイオニア Exclusive P3

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 本格派の超高級プレーヤーの第1号ともいえる製品だ。アルミ削り出し2・8kgターンテーブル、オイルダンプ方式ダイナミックバランス型アームは、コアキシャル支持方式で超重量級ベースからフローティングしてある。重厚で力強い音はリファレンス用に最適だ。

ソニー PS-X9

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 高性能な重量級プレーヤーシステムの先駆者的存在の製品だ。業務用機に準じたボディ構造を採用し、ターンテーブルには38・1cm、トーンアームは実効長264mmでXL55PRO標準装備。内部には、ヘッドアンプ、イコライザーアンプをもち、オートリターン機構付。

ケンウッド L-07D

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 異種金属貼り合わせ防振構造の重量級ターンテーブル、動的位相補償器内蔵の水晶制御DDモーター、アルミ、ボロン、カーボン三層構造パイプアーム、独立型の電源部、超精密級のアーム高さ調整機構など、現代の豊富な材料と革新的な技術により開発された高級機だ。

パイオニア Exclusive P10

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 P3のジュニア版として開発されたマニュアル機だ。ターンテーブルは2・8kgの低圧鋳造製で防振材付。アームは、インテグレートシェル付の直線型と、S字型にパイプの交換が可能である。音は緻密でスケールが大きく、高価格製品が多くなった高級機のなかの標準モデルといってよい。

B&O Beogram4004

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる電子制御フルオートプレーヤーの、世界最初の製品4002の改良モデル。リニアトラッキングアームにはMMC20EN付、ターンテーブルはベルトドライブ型、操作軽の変更の他に、リモートコントロールが可能になったことが、このモデルの特長。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アナログディスク・ファンには垂涎のプレーヤーであろう。少々モデルが多すぎて混乱するが、一台一台が手作りであるから、いろいろ作ってみたくなるのもわかるような気がする。なかでは、これはスタンダード・カタログ・モデルといんよいもので、カーボン製のワンポイント支持のロングアーム付きだが音も充分よい。
井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

世界最大の製造台数を誇る超ベストセラー・アナログプレーヤー。小型軽量ながら要所を押えたメカニズムと、TV、パソコン等の外乱のイズに非常に強い設計により聴かれる、予想以上に優れたアナログディスクの音に驚かされる。高級機でもノイズ対策が不完全なら、本機の再生音を超える音はまず不可能であろう。信頼性、安定度は抜群。

テクニクス SL-1600

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DD型フォノモーターを最初に開発しただけに、テクニクスは、DD型とオートプレーヤーの組合せでも当初から積極的であった。国内製品のオートメカニズムとしては最も完成度が高いテクニクスの方式と、DD型フォノモーターを結合したこの製品は、さすがにバランスが優れ、実用面の利点は非常に高い。

ビクター JL-B37R

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 とかくローコストなプレーヤーシステムは、デザインや方式が表面に出て、基本性能が劣化しやすいが、その点、このモデルは、性能を重視して簡潔にデザインされている点が好ましい。プレーヤーシステムの音の差は驚くほど大きいが、ローコストで音の良いプレーヤーシステムの代表作が、このモデルである。

ダイヤトーン DP-EC1

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 B&Oのエレクトロニクスコントロールのフルオートプレーヤーシステムが登場して以来、このタイプのオート化が望まれていたが、通常型のトーンアームとのコンビで製品化した最初の製品が、このDP−EC1である。演奏中にストップとリピートのボタンを押せば、アームはレストに戻らず最外周から再び演奏をはじめるあたりは、従来のメカ方式では得られない本機の利点であり、まさしく新時代のプレーヤーらしさが魅力的だ。

ダイヤトーン DP-EC2

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 EC1に続く第二弾のエレクトロニクスコントロールのフルオートシステムである。光線を使うレコードの盤径選択は30cm盤と17cm盤に限られたが、アームがドライとも表現できるように、途中で考え、止まることなくコントロールされるあたりは、まったく小気味よい。音は、いわゆる反応が速いタイプである。

サンスイ SR-838

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 デザイン的には上級機のSR−929を踏襲しているが、開発当初より性能の高さと、音質の良さのバランスに置いているだけにシステムとしてのクォリティは上級機以上のものがある。トーンアームは長方形の回転軸受使用の一般型に変わり、ベースと結合をリジッドにしているのが音質向上に効いている。

ヤマハ YP-D7

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 フォノモーターの瞬間的な負荷変動を、反応速く制御することをポイントとして開発されたこのモデルは、プレーヤーシステムの問題点であるトーンアームに新しい構想が盛込まれている。ヤマハでは、すでにローコストのDD型プレーヤーYP−511で、プレーヤーベースとトーンアームの取付部に鉛のウェイトを取付ける方法が採用されているが、ここでも物凄くリジッドなアームベースを使い音質の改善をはかっている。

パイオニア XL-A700

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DD型フォノモーターの第三世代ともいうべき、水晶制御のフォノモーターとメカニカルなフルオートシステムとを組み合わせた時代の最先端をゆくシステムである。重量級のターンテーブル、単体としてみても良くできたトーンアームをもつこのモデルは、オートマチック動作の快適さを安心して味わえる特長がある。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ヘルマン・トーレンスがオルゴール製造のためにトーレンスSAを創立したのは1883年で、その後、蓄音器、ハーモニカ、電磁型ピックアップ、電気式レコードプレーヤー、トラッキングエラーレス・ピックアップ、ラジオから業務用円盤録音機、SP用オートチェンジャーなどを順次開発。60年代になるとEMTフランツ社と共同出資の形態をとるようになった。
 オーディオファンの間で一躍注目されるようになったのは、57年のTD124ベルト・アイドラー型フォノモーターの登場からだ。本機は、当時リファレンスとして評価の高かった英ガラード社の♯301アイドラードライブ型に比べ、圧倒的にワウ・フラッターが少なく、静かなターンテーブルとして究極のモデルといわれた。現在でも、現用モデルとして、愛用するファンは多いと思う。
 以後、TD124のオートチェンジャー版、ターンテーブルを非磁性体化したMK2と続くが、この当時が世界の王座に君臨していた栄光の時代であり、80年代のトーレンス・リファレンスが超弩級機としての頂点であろう。
 TD520RW/3012Rは、16極シンクロナスモーターを電子制御で使うダブルターンテーブル型ベルト駆動アームレスプレーヤーTD520RWに、ロングサイズのSMEの3012Rトーンアームを組み合わせたモデル。さすがにメカニズムの見事さは抜群で、要所を絶妙に押さえたトータルバランスの良さは感激ものだ。現代のリファレンス機として、アナログならではの音を楽しみたいときに、最も信頼性の高い素晴らしいシステムだ。セオリーどおりに微調整すれば、想像を超えた音が楽しめ、軽針圧型から重針圧型までのカートリッジとの対応性も穏やかである。
 TD318MKIIIは、同社の技術をベーシックモデルに結集した快心作。このところのアナログディスクの復活に的を絞った、素晴らしく良く出来た音の良い注目の新製品だ。

テクニクス SL-01

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 とかく高性能なプレーヤーシステムは、外形寸法的にも大型となりやすく、実用面で制約を受けることがあるが、このSL−01は、コンパクトにシステム化されたプレーヤーシステムならではの魅力を備えていることが特長である。滑らかで誇張感がなく、クォリティの高い音は、繊細なニュアンスの再生に相応しく高級カートリッジを組合せたい。

ビクター QL-7R

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 コンプリートなプレーヤーシステムにビクターが水晶制御のDD型フォノモーターを採用した最初の製品であり、ユーザー側からみても、かなり魅力的なモデルである。充実した中域をベースとしてナチュラルなバランスの良さをもち、安定した音の良いプレーヤーシステムとして完成度が高い製品である。

ダイヤトーン DP-EC1

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 プレーヤーシステムには、現在のように高度なメカニズムやエレクトロニクスが使用できる時代になっても、オートプレーヤーは正統派のコンポーネントではないとする考え方が残存しているようである。たしかにメカニズムを使うオート方式は、たとえばアームの動きひとつとってみても、いまだに手で操作したような、感覚的なスムーズさが得られないことが多いのは事実だが、オート化したための性能低下や、カートリッジの針先やディスクへの影響は、国内製品に限れば普及品といえども皆無である。
 DP−EC1は、エレクトロニクス・コントロールを意味する型番をもった、最新の技術を導入したフルオートプレーヤーシステムである。デザインはスリムな薄型にまとめられ、色彩的にも明るく、とかく重厚なデザインが多い高級モデルのなかでは、軽快さが特長である。機能面では、ディスクの有無、ディスクサイズと回転速度の自動選択が、光線を利用して純電気的にコントロールされ、アームの水平方向の移動速度は適度に早く、リフターの動作、アームの反転ともに連続的に休まず、滑らかに動作する。メカニズム使用の方式に慣れた感覚では、早く確実に動くために、ややドライに感じられるかもしれないが、逆に、これがエレクトロニクス・コントロールらしい新鮮な魅力である。システムトータルの音も現代的で、反応が早く、帯域の伸びた感じがあり、基本的なクォリティが充分に高いために、高級カートリッジの微妙なニュアンスの魅力をよく出して聴かせる。

デンオン DP-7700

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 デンオンのプレーヤー関係の製品は、もともと同社が放送局用をはじめとして、業務用のプレーヤーシステムやテープデッキを手がけているだけに、堅実で安定度が高く、耐久性に侵れた特長がある。
 一般のコンシュマー用のプレーヤー関係の製品は、ターンテーブル内側に独得の磁性体を塗布し、これに記録した磁気パルスをヘッドで検出し、速度制御をするダイレクトドライブ・フォノモーターDP5000を登場させて以来、ユニークな操作性の高いデザインと侵れた性能、さらに音質の良さでもっとも信頼性のあるプレーヤーシステムとして、一連のシリーズ製品はそれぞれの価格ランクで高い評価を得ている。しかし、最近の第三世代のダイレクトドライブ方式といわれる、水晶発振器を基準信号として高精度、高安定度に速度制御をおこなうタイプの製品が数を増してくると、デンオンからもトップモデルとして、このタイプの製品の登場が待たれるのは当然のことである。その意味では、水晶発振器制御型のフォノモーターDP7000を使ったプレーヤーシステムのDP7700は、期待をになって登場したデンオンらしいトップランクのモデルである。トーンアームは、ユニークな機構をもったDA307、プレーヤーぺースは大型で重量級のタイプである。近代的な高級カートリッジの性能を充分に引出し、素直に反応を示し、定評あるダイレクトドライブ型モーターは、水晶発振器制御で一段と静かになり、トルクも高くなっている。デンオンらしい製品である。
黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か」より

 ──まさか「ステレオサウンド」を読むほどの方には、そんな方がおいでになるとは思えないけれど、一般的には、プレーヤーで音が変るの? という人が多いよ。
 ──うん、たしかに、多いね。ターンテーブルが同じようにまわっているんだから、音がそんなに変るはずがないと考えているのかもしれないな。でも、そのように考えている人が多いのには、それなりに理由があると思うんだ。つまり、音が変るといったって、たとえばスピーカーやカートリッジをかえたときのような変化はないからね。
 ──そう、だから、表面的にはわかりにくいということもいえるんじゃない。たとえばだよ、町を歩いている人をみて、あの人は美人だとか、あの人の着ているスーツはいかにも上等そうだとか、あの人はずいぶん背が高いなとか、そういうことはわかるけれど、今すれちがった人が病気にかかっているのかどうかなんて、とてもわからないし、わかろうともしないものね。夏休みで海にでもいったのだろう、まっ黒にやけていて、みるからに健康そうだけれど、もしかすると胃がわるかったりするかもしれないし......
 ──なるほど、シロートにはプレーヤーシステムの音の差がわかりにくいということになるのかな。
 ──いや、そうじゃないよ、シロートもクロートもない、こっちがそのつもりでみれば、わかることだけれど、普段は、顔かたちとか、背の高さとか、着ているものとかに、どうしても目をうばわれてしまうだろう。
 ──それでは、試聴にあったっては、そのつもりになってことにのぞんだというわけか。さしずめ、美人コンテストの審査員の目ではなく、内科の医者の目でみたことになるね。
 ──まあ、無理にこじつければ、そういうことになるかな。
 ──それで、どうだった。何人に聴診器をあてたの。
 ──聴診器をあてたといういい方は、どうもひっかかるな。ただきいただけだよ。いつものように下手な字でメモをとりながらね。きいたは、二十二機種だった。すくなくともぼくにとっては、それぞれのプレーヤーシステムごとの音のちがいが、ごく本質的なところでのものだったから、ききやすかったな。いいプレーヤーシステムはカートリッジがかわっても、それなりにそれぞれのカートリッジのよさをひきだしていたし、問題があるなと思ったのは、カートリッジがかわって急によくなるなどということはなかったな。
 ──それで、その二十二機種をきいての、おおまかな感想を、まずきこうか。
 ──そうだな、思った以上に、健康な人がすくなかったというべきかな。
 ──しかし、よくいわれるように、オーディオは趣味の世界のものだろう。だとすれば、きみが問題ありとしたものに対して、他の人は高い評価を与えるかもしれないじゃないか。
 ──オーディオは趣味の世界のものだということは、よくいわれるし、たしかにそう思える部分もなくもないと思うけれど、そのことがいわれすぎることに、ぼくはひっかかるんだよ。逆にうかがうけれど、趣味の世界のものだといってしまえるようなところまで、今のオーディオはいっているのかな。
 ──いや、この議論は、なかなかおもしろそうだけれど、本題からはずれすぎるので、また別の機会にということにしようよ。
 ──うん、そうしよう。ただ、ぼくがプレーヤーシステムについていいたかったことと、そのこととは、無関係ではないんだ。スピーカーなり、カートリッジなり、あるいはアンプにしてもそうかもしれないけれど、その音について、趣味の世界のこととして、つまり好き嫌いで語れるところがなくもないと思うんだけれど、プレーヤーシステムの音については、その部分が極端に少ないように思うな。たしかに、それぞれのプレーヤーシステムにそれぞれの音があって、Aのプレーヤーシステムの音が好きだという人もいれば、Bのプレーヤーシステムの音の方がいいという人もいると思うけれど、でも、音のキャラクターについて考える以前に、まず音のクォリティについて考えざるをえないのが、プレーヤーシステムだと思う。ずっとそう思っていて、はからずも今回の試聴で、その考え方を確認したような気持だな。
 ──いいたいことはわからなくもないが、もう少し具体的にいてくれないかな。
 ──ひとことでいえば、基本性能がしっかりしていなければどうしようもないということになるかな。またさっきのたとえをつかわせてもらうとすれば、容姿の点で幾分いたらない点があった場合、それを愛矯でカヴァーするというようなこともあるのかもしゃないけれど、胃に潰瘍ができていたら、いくらニコニコしてもしかたがないものね。
 ──まあ、それはそうだけれど......
 ──つまり、表面的なとりつくろいが通じにくいということだよ。
 ──きいていれば、そこところがあらわになると......
 ──そう。
 ──それで、試聴にあたって使ったレコードは......。
 ──以前にも、たしかスピーカーの試聴のときにつかったレコードなんだけれど、ヨハン・シュトラウスのオペレッタ「こうもり」の全曲盤なんだ(グラモフォン MG8200〜1)。カルロス・クライバーの指揮した、一九七五年に録音されたレコードの、第二面の冒頭のところを三分ほどきいた。第二面の冒頭のところというと、ロザリンデ(ユリア・ヴァラディ)とアデーレ(ルチア・ポップ)の会話があって、そこにアイゼンシュタイン(ヘルマン・プライ)が加わり、そのまま三重唱に入れこむ──というところで、その三重唱の途中まできいたことになるんだけれど......
 ──レコードは、それだけ?
 ──そう。
 ──いつもは、何枚かきくんじゃなかったの?
 ──時間的に余裕があれば、さまざまなレコードをとっかえひっかえきいてもよかったのだけれど、その点でむずかしかったのと、それに、これまではなしてきたような理由から、何枚もきかなくてもいいと思ったからなんだ。
 ──なるほど。
 ──実は、はじめは、傾向のちがう音楽をおさめた三枚のレコードをきいていたんだけれど、三枚きくことはないと思ったんだよ。なんといっても、一台のプレーヤーシステムに三つのカートリッジをつけかえてきくわけだからね、作業としても大変だったわけさ。カートリッジことの変化があきらかになる方が、この場合には大切で、それがこれでレコードがふえてしまうと、煩雑になりすぎるという編集部側の考えもあったしね。
 ──それで、ポイントはどこにしぼってきいたわけ?
 ──ポイントをしぼったというわけでもないんだ。むしろポイントは、おのずとしぼられたというべきだろうな。つまり、試聴に先だって、ここがポイントだからということで、その点にことさら耳をそばだてたということではないんだよ。きいて、ききながらとったメモを読みかえしてみたら、一種の共通因数とでもいうべきものがみえてきたといった方が正直ないい方になるだろうな。思いこみを持って試聴にのぞむのが嫌だったからね。
 ──もう少しまわりくどくなく、ストレートにいってくれないかな。
 ──いや、あらかじめポイントをきめていたわけではなく、きいているうちにポイントがうかびあがってきたということさ。
 ──わかった。で、そのポイントを具体的にいってくれないかな。
 ──ひとつは、音像が過剰に大きくなっていないかどうかということで、もうひとつは、ひびきの力だな。結局、具合のよくないプレーヤーシステムというは、ひとことでいえば、ひびきに力がないんだ。そために音像が肥大するということもあるだろうし、こっちにおしだされてくるべき音がひっこんでしまうということもあったようだな。
 ──きみのいうひびきの力というのは、音の強さのこと?
 ──いや、むろんそれも含まれるけれど、それだけではないんだ。たとえば、今度使ったレコードに即していえば、三重唱に入る前のセリフのところで、アイゼンシュタインが凍えではなすところがあるよね。ああいうところの声は、ひびきに力がないと、あいまいになっしまう。だから、音の強さは当然示されるべきなんだけれど、それと同時に強い音とはいえない音が、しっかりささえられているかどうかが問題になると思うんだ。ひびきの力というのは、そのことなんだけれどね。
 ──わかるような気がするよ。そういわれてみると、プレーヤーシステムによる音の変化が基本的なところでの変化だということも、納得できるな。
 ──あらかじめわかっていたことではあるんだけれど、今度、試聴をしてみて、あらためて、プレーヤーシステムのコンポーネントの中での重要性について考えさせられてしまったよ。
 ──限られた予算内でなんとかしていこうと思うときに、どうしてもプレーヤーシステムは後まわしになるというか、予算を他のところにまわしがちだからね。
 ──いや、それはいちがいにいえないよ。本当にわかっている人は、まずプレーヤーシステムからと考えているかもしれないからね。今度の試聴では、機能面については、ぼくのうけもちでなかったので、なにもふれなかったけれど、その点でも、さらに積極的にさまざまな試みがなされていいように思うな。
 ──それはそうだけれど、きみのはなしをきいていると、まず音の面で、より一層充実することの方が先じゃないの?
 ──それはそうだ。なんといったって、プレーヤーシステムは、コンポーネントの土台だからね。そこがしっかりしていなければ、いかにいいカートリッジをつかい、いいアンプをつかい、いいスピーカーシステムをつかっても、極端なことをいえば、砂上の楼閣になりかねないからね。
 ──ずいぶんおどかすじゃないか。
 ──いや、おどかしているわけじゃないよ。事実をいっているだけだよ。
 ──それで、しめくくりの言葉は、どうなるわけ?
 ──プレーヤーシステムに対してより一層のご注目を!──ということになるだろうな。むろん、これは自分に対していう言葉でもあるんだけれど。

パイオニア XL-1650

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

 音像は大きめだ。とりわけ張った声に誇張感がある。ひびきの微妙な推移・変化がききとりにくい。もう少しシャープな反応が示されてもいいだろう。このプレーヤーシステムにはあわないカートリッジか。

 すっきりしたよさはあるが、全体にそっけなさすぎるように思う。音像は小さめだが、細部にこだわりすぎているといえなくもないようだ。歌い手の呼吸が誇張ぎみに示されている。

 きつさはない。しなやかとはいいがたいが、ひびきに脂がつきすぎていないもはいい。ただ、ひびきに、もうひとつこくがないので、どうしても表面的になる傾向があるのがおしい。

サンスイ SR-838

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

 シュアーではききとりにくかった背後でひびくホルンがききとれる。オーケストラのひびきはむしろせりだしぎみだ。ひびき全体にべとつきが感じられなくもない。音像が大きめなのはシュアーと同じ。

 音像は小さくまとまるが、オーケストラのひびきを分解してきかせる傾向があり、幾分つきはなしたようなつめたいところがある。声に、もう少しうるおいがほしい。はった声が硬くなる傾向がある。

 音像は大きめ。したがって歌唱者は、かなり間にでてきた感じになる。音楽の表情は強調されがちだ。弦のひびきには、もう少しまろやかさがほしい。積極的なところをもってよしとするかどうか。

テクニクス SL-15

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 テクニクスが開発したSL−10を基盤に、さらに充実させ使いよくしたフルオート・プレーヤーシステムで、プレーヤーの世界に新しい一つの分野を開拓した、イージーハンドリングでハイパフォーマンスを狙ったもの。自動選曲は10曲までプログラム可能である。何から何までオートマティックに動作してくれる(レコード反転はしないが)便利さと、各パーツのクォリティがよくバランスした画期的なシステムである。

ビクター QL-Y7

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プレーヤーシステムとしては、ビクターの現シリーズ中の最高モデルである。カートリッジはついていない。メカニズムはセミオートタイプで、電子コントロールのダイナミックバランスタイプのトーんー無をもつ。一種のサーボコントロールにより、アームの受ける機械的な不安定要素を制御して、安定したトレース能力と音質を得ている。FGサーボのコアレスDCモーターによるクォーツロック・ダイレクトドライブ方式。

EMT 930st

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プロ用のプレーヤーシステムとして特殊な存在だが、EMTとしては927Dstに比べて、コンベンショナルな放送局用である。TSD15カートリッジ専用で、トーンアームは同社の929を使っている。アイドラードライブの3スピードというオーソドックスなターンテーブルの信頼性と性能、音質の品位は高い。イクォライザーアンプを内蔵し、出力はラインレベル/インピーダンスで取出せるようになっている。

トーレンス Reference

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 EMTの927Dstと、偶然のように殆ど同じ価格だが、EMTは、同社のTSDシリーズのカートリッジ専用であるのに対して、こちらは、好みのアームやカートリッジをとりつけられるユニバーサル・ターンテーブルシステム。レコードの音溝を針先でたどるという、メカ的なプリミティヴな方式を守るかぎり、メカニズムに十二分の手を尽したプレーヤーシステムは、それ相応の素晴らしい音質を抽き出してくれるという証明。

EMT 927Dst

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 いまは消えてしまった16インチ(40cm)ディスクを再生するための大型プレーヤーデッキだが、標準の30センチLPをプレイバックしてみても、他に類のない緻密でおそろしく安定感のある音質の良さが注目されて、生き残っている。大型のダイキャストターンテーブルの上にガラス製サブターンテーブルを乗せたのが927Dst。プラスチック製はただの927st。しかし音質面では、ガラス製のDstにこそ、存在価値がある。
瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

音質について
 良くできた製品とそうでない製品の聴かせる音質は、果物や魚の鮮度とうまさに似ているだろうか。例えばケンウッドL07Dは、限りなく新鮮という印象でズバ抜けているが、果物でいえばもうひと息熟成度が足りない。また魚でいえばもうひとつ脂の乗りが足りない、とでもいいたい音がした。
 その点、鮮度の良さではL07Dに及ばないが、よく熟した十分のうま味で堪能させてくれたのがエクスクルーシヴP3だ。だが、鮮度が生命の魚や果物と違って、適度に寝かせたほうが味わいの良くなる肉のように、そう、全くの上質の肉の味のするのがEMTだ。トーレンスをベストに調整したときの味もこれに一脈通じるが、肉の質は一〜二ランク落ちる。それにしてもトーレンスも十分においしい。リン・ソンデックは、熟成よりも鮮度で売る味、というところか。
 マイクロの二機種は、ドリップコーヒーの豆と器具を与えられた感じで、本当に注意深くいれたコーヒーは、まるで夢のような味わいの深さと香りの良さがあるものだが、そういう味を出すには、使い手のほうにそれにトライしてみようという積極的な意志が要求される。プレーヤーシステム自体のチューニングも大切だが、各社のトーンアームを試してみて、オーディオクラフトのMCタイプのアームでなくては、マイクロの糸ドライブの味わいは生かされにくいと思う。SAECやFRやスタックスやデンオンその他、アーム単体としては優れていても、マイクロとは必ずしも合わないと、私は思う。そして今回は、マイクロの新開発のアームコード(MLC128)に交換すると一層良いことがわかった。
 
デザインと操作性
 単に見た目の印象としての「デザイン」なら、好き嫌いの問題でしかないが、もっと本質的に、人間工学に立脚した真の操作性の向上、という点に目を向けると、これはほとんどの機種に及第点をつけかねる。ひとことでいえば、メカニズムおよび意匠の設計担当者のひとりよがりが多すぎる。どんなに複雑な、あるいはユニークな、操作機能でも、使い馴れれば使いやすく思われる、というのは詭弁で、たとえばEMTののレバーは、一見ひどく個性的だが、馴れれば目をつむっていても扱えるほど、人間の生理機能をよく考えて作られている。人間には、機械の扱いにひとりひとり手くせがあり、個人差が大きい。そういういろいろな手くせのすべてに、対応できるのが良い設計というもので、特性の約束ごとやきまった手くせを扱い手に強いる設計は、欠陥設計といえる。その意味で、及第点をつけられないと私は思う。適当にピカピカ光らせてみたり、ボタンをもっともらしく並べてみたりというのがデザインだと思っているのではないか。まさか当事者はそうは思っていないだろうが、本当によく消化された設計なら、こちらにそういうことを思わせたりしない。
 そういうわけで、音質も含めた完成度の高さではP3。今回のように特注ヘッドシェルをつけたり、内蔵ヘッドアンプを使わないために引出コードも特製したりという異例の使い方で参考にしたという点で同列の比較は無理としてもEMT。この二機種の音質が一頭地を抜いていた。しかし一方で、操作性やデザインの具合悪さを無理してもいいと思わせるほど、隔絶した音を聴かせたマイクロ5000の二重ドライブを調整し込んだときの音質の凄さは、いまのところ比較の対象がない。とはいってもやはり、この組合せ(マイクロ5000二重ドライブ+AC4000または3000MC)は、よほどのマニアにしかおすすめしない。
 これほどの価格でないグループの中では、リン・ソンデックの、もうひと息味わいは不足しているが骨組のしっかりした音。それと対照的にソフトムードだがトーレンス+AC3000MCの音もよかった。またケンウッドの恐ろしく鮮明な音も印象に深く残る。

デンオン DP-3700F

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンオンのプレーヤーシステムとしてはオールドシリーズ。DDモーターのDP3000とトーンアームDA305を装備したシンプルなシステムだが、それだけに高い実質性能で信頼性がある。ハウリングにも強く、音質はいかなるカートリッジにも妥当なバランスを発揮する。間違いのない製品だ。

デュアル 1249

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 すでに有名な西独製のオートマチックプレーヤーである。メカニカルな動作だが、故障も少なく信頼性が高い。ダイナミックバランスのトーンアームは、見た眼には決して優れたパフォーマンスが感じられまいが、実際使ってみると、期待以上のパフォーマンスが得られる。いい機種なのである。

テクニクス SL-1300

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 この稿を書いている時点でマークIIが発表されたが、DCサーボのダイレクトドライヴによる、オートマチックリピートとカット機構をもったシステムの草分け的存在であった。スタティックバランスのアトーンアームも、妥当なバランスの音質が得られ、使い勝手のよい便利さと高性能を兼ね備えている。

ビクター JL-F45R

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 これは実質的に便利で、かなりの性能の得られる普及型の中での優秀機。フラットなデザインのベースに、オートリピート、オートカット機構のついたDDターンテーブルとスタティックバランスドアームが装備される。付属カートリッジも、まずまずのものだが、高級なものにもちゃんとフォローする。

エンパイア 698

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 技術的データをあげれば、今や国産の高級ターンテーブルとは比較にならない。しかし、伝統的に、がっしりとしたメカニズムをもつ、エンパイアの製品だけあって、オーソドックスなベルトドライヴは、信頼性の高いもの。ダイナミックバランスのトーンアームも武骨だし、決して洗練されたデザインではないが、いかにもユニークで、オリジナリティがある。単にオールドスタイルへの憧れを超えた何かが必要なのだ。

ソニー PS-8750

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックサーボ・ターンテーブルとして早くから登場したシステムである。数々の新技術をとり入れてまとめられた、いかにも機械といったイメージが表面に出すぎているのが、個人的には少々好みに合わないが、実質性能は高く評価できる。スタティックバランス型トーンアームも、適応性の広いユニヴァーサルタイプとして、音質的にバランスもよい。やや生硬な音になるのは、見た目からくる先入観かもしれない。

ダイヤトーン DP-EC1

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 フルオートマチックシステムでありながら、マニュアルプレーヤーの性能の高さをもつ。全電子式コントロールは、きわめてスムーズで未来的。一度使うと、その便利さが忘れられないオートプレーヤーだが、ここまで性能と動作の円滑な自動機構をバランスさせた製品は数少ない。国産唯一の電子コントロール・オートプレーヤーとして高く評価できる。デザインも悪くはないがもう一次元、洗練されてほしい。

サンスイ SR-929

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ピアノに見られる黒塗装のフィニッシュがユニークで、質感が高い。レコードをかけるフィリングは自然で、心情的にも魅力のあるシステムだ。ナイフエッジのトーンアームは、どこといって不満はないほどリファインされたが、しっとりした魅力の質感には至っていないのが残念。やはりSMEには一歩も二歩も譲らざるを得ない。しかし、使いよさではSMEより上で、動作も手堅い。価格を上廻る風格がある。

テクニクス SL-01

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニクスお家芸のハイパフォーマンス・ダイレクトドライヴ・ターンテーブル。コンパクトにまとめられ、さりげないところがよい。黒を基調にしたフィニッシュも、精密機械のイメージを表現する。持つものへの満足感では、もう一つリファインを要求したいところだが、これだけの性能が秘められていると思うと、奥ゆかしい魅力を覚える。

ビクター QL-7R

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菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックサーボ・ターンテーブルと、ジンバルサポート回転機構の高性能トーンアームというハイパフォーマンスなユニットを、堅実で、よくコントロールされたプレーヤーベースに装着した内容の充実した製品。プレーヤーシステムとして現在要求される性能を高い水準で満足させている。価格は、その割に安いから、当然お買徳。

デンオン DP-3700F

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DDモーターもいわば第二世代に入って、音質面からさらにつっこんだ研究がはじまっていて、現時点で比較すると、3700Fの音は必ずしも最高クラスとはいいにくいが、必要最少限の機能を上品にまとめた、プレーヤーシステムとしての完成度の高さを評価したい。使って満足できる高級なフィーリングがある。

デュアル 1249

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DDでこそないが、亜鉛ダイキャストの重量感(公称3・4kg)ターンテーブルをベルトドライブしているオートプレーヤー。トーレンスも同様だが、亜鉛ダイキャストの重いターンテーブルを使ったプレーヤーは、聴感上の音質がどういうわけか優れている。外形が最小限度に切りつめられたコンパクトさも好ましい。

デュアル 601

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 西独デュアルの一連の製品は、永いことオートマチックプレーヤー(およびチェンジャー)の分野で世界に君臨してきたが、日本のDDの進出で、このところモデルチェンジ攻勢が激しいのは感心できない。601はその中で、デュアルの良さを色濃く受け継ぎながら新型化した安定な製品のひとつといえる。

テクニクス SL-1300

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DDプレーヤーで初めてフルオート化した最初の市販品として記念すべき製品。この出現が、オートプレーヤーの高級化をうながしたことは特筆されるべきだ。性能的に不安なく、オートという意識抜きに良いプレーヤーのひとつとして使える。テクニクスとしては珍しくカートリッジレスはむしろ歓迎したい。

ビクター JL-F45R

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニクスと並んでビクターも古くからオートプレーヤーの技術を持っていて、それをDD化したのがこれだが、デザイン的にユニークな超薄型で、キャビネットの仕上げに三種類のバリエイションのあるところも楽しい。オートの動作はきわめて安定。このクラスのオートプレーヤーとしては音質もなかなか良い。

テクニクス SL-1600

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 SL1300から1500までの世代で完成したDD量産技術とオートプレーヤーの技術を生かして、いっそうコストダウンしたのが1600だが、実用的にはさして差はなく、安い製品、という実感が湧く。音質はやや軽い傾向だから、音のマニアよりも手頃な扱いで一応の品質の欲しいという愛好家に奨める。

トリオ KP-7300

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 質実剛健という表現を使いたくなる製品で、実用に徹した、いささか素気ない武骨な印象が損をしているが、ターンテーブルとアームおよびキャビネットという主要パーツを音質重視で検討したというだけあって、うわついたところのない再生音はこの価格で出色。好みのカートリッジを加えた方が良さがわかると思う。

テクニクス SL-2000

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DDモーターを使ったプレーヤーとして三万円を割ったという話題作。プラスチックを多用して、見た目にややチャチな部分はあるにしても、必要な部分にはダイキャストを使うなど、機能に徹して量産向けに割り切った設計は、アマチュアよりもむしろ設計者を感心させる面がある。ともかくこの価格では性能も優秀。

エンパイア 698

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 一九五〇年代のリッチなアメリカの雰囲気をいまだに受けついだ独特の製品だが、メーンテーブルやフレームやアームの材質や構造がきわめて堅固でぜいたくな作りのためか、音はきわめて緻密かつ豪華な安定感があって、一度は使ってみたい気を起こさせる。指かけなどもかなり大づくりで、いわゆる繊細な操作性とは正反対のフィーリングだが、金色のゴージャスな外観は、マッキントッシュやパラゴンのイメージと合いそうだ。

ソニー PS-8750

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 いかにもソニーらしく、ターンテーブル(駆動モーター)もアームも、ベースその他も理詰めでまとめられ、レコードというオーガニックな素材から音楽という官能的な芸術を抽き出すプレーヤーとしては、いささかメカニックにすぎる印象が個人的には好きになれないが、しかしアームの音質を含めて、ひとつのプレーヤーシステムとして考えたときの音質や物理データが、きわめて高い水準でまとまっている点を評価する。

ダイヤトーン DP-EC1

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 電子制御のフルオートプレーヤーだが、その動作は見た目にもいかにも精密かつ軽妙でしかもエレガント。使っていてそのフィーリングはとても気持がいい。これは確かに高級品の雰囲気だ。ターンテーブルがDDであることばかりでなく、アームの設計自体が基本性能に十分に検討されているためか、MMでもMCでもよく特長を発揮させる。この製品の出現で、オートプレーヤーの地位が向上したことは喜ばしい。

ダイヤトーン DP-EC2

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 いうまでもなく兄貴分EC1の第二世代で、前者の経験をもとに、操作機能やキャビネットの装飾板など一部を簡略化してローコスト化をはかっているが、ハウリングマージンの点では、後発であるだけにむしろやや優れ、アームを含めた音質はEC1よりもクリアーな感じに仕上がっている。優秀な兄弟同士。

サンスイ SR-929

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ピアノフィニッシュと称する漆黒のキャビネット(指紋を気にしていつも磨いておきたくなる)の質感の良さが929の最大の特長だが、ベースをリジッドに固めたことが音質の向上につながって、とてもクリアーで鮮度の高い音を聴かせてる。モーターまわりのダイキャストの仕上げが、もう少しキメこまかくなればさらに品位が上がると思うし、音質面では低音域にもうひと息厚みが出てくれるといっそういいと思うのだが。

サンスイ SR-838

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 SR929で成功したピアノフィニッシュ・シリーズの第二弾として発表されてか、アームの設計や操作ファンクションの整理など、むしろ929とは別シリーズのように思える。929ではやや不満であった低音の重量感がよく出るという点で、同価格の中でもちょっと群を抜いた出来栄え。

ヤマハ YP-D7

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 アームベースに重量を集めて土台を固めたのが特長だが、そのためか5万円台では最も音に安定感のあるプレーヤーのひとつといってよい。同じカートリッジでも、一段と解像力が増して聴こえる。ただ、キャビネットの色や質感、それにターンテーブルまわりの粗いストロボなど、ラフさを狙った仕上げはこの内容にふさわしくないと思う。なぜヤマハ一流のあの清潔でエレガントな雰囲気でデザインしなかったのかふしぎだ。

テクニクス SL-01

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)

特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 

 モーターはSP20がベースになっているようだが、プレーヤーとして必要最小限にコンパクト化し、しかも操作機能の整理も扱いやすさを十分に考慮した設計は成功している。ただ、全体をまっ黒に仕上げた点は賛成しかねて、できることなら、もう一機種、明るい仕上げのモデルを併売してくれるとうれしい。またそれだけの価値は十分あると思う。

ビクター QL-7R

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)

特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より


 TT101と81でビクターはDDモーターに新しい分野を開拓したが、それをクォーツ化し、極力ローコスト化した裏には、B61Rや7045などのプレーヤーやアームに対する以前からの並々ならぬ研究が土台になっているのだろう。見た目もよく、扱いやすく質の良い、バランスのとれた製品として、安心してすすめられる。

デンオン DP-3700F

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菅野沖彦


ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)

特集・「世界の一流品」より


 デンオン・ブランドをもつ日本コロムビアの歴史は大変に古く、日本ビクターとともに日本のレコード会社の草分け的存在である。と同時に、かつて日本電気音響として、プロフェッショナルのエクィプメントを、専門に生産してきたハードウェアのメーカーを同社の傘下に収めた。そのブランドがデンオンとして残り、日本コロムビアのオーディオ製品の高級機に使われているのである。

 そういう歴史的背景をもつブランドにふさわしい高性能高級プレーヤーシステムとして、このDP3700Fを一流品に挙げたわけである。このプレーヤーについて詳しく申し上げる余裕はないわけだが、少なくとも最新のテクノロジーを用いた、ターンテーブルとしては最高性能のものであり、トーンアームも実用的な意味合いとトーンアームのあるべき物理特性とを巧みにバランスさせた、高性能かつ高実用度の、音のいいものである。そして、ベースはシンプルでありながら、きわめてハウリングマージンの大きい設計である。このプレーヤーシステムほど何のためらいもなく安心して使える製品も少ない。

 デザイン面や風格という点では、まだ私は一流品として挙げるに少々の不満が残るが、総合的に見て、信頼性、性能の高さなどから、プレーヤーシステムの一流品として推選しても恥ずかしくない製品だと思う。

B&O Beogram4002, Beogram6000

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菅野沖彦


ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)

特集・「世界の一流品」より


 デンマークのバンク・アンド・オルフセン社は、家庭用のミュージックシステムからテレビに至る、普及品から高級品までの非常に製品バリエーションの豊かな、いわゆる総合電機メーカーである。一九二五年にピーター・バンクとシュベント・オルフセンという二人のニンジニアによって屋根裏部屋の一室からスタートしたこの会社は、その後次々に斬新なアイデアに満ち、二人の卓越した技術の結晶ともいえる魅力ある製品が、今日もなお生まれ統けているのである。

 およそデンマークという国柄は、クラフツマンシップを伝統的に持っているが、いわずもがな、私の好きなデンマークのパイプには、世界のファンシーパイプとして、クラフツマンシップの粋が見られる。またデンマークは、ファニチュア、モダンアート、インテリアデザインの面でも世界の最高水準を確保している国でもあるのだ。そういう国柄のバックグラウンドをも感じさせるオーディオ製品として、私はこのベオグラム・プレーヤーシステムを一流品として挙げたわけである。このプレーヤーシステムが持っている一流品としての所以は、私はデンマークという国が持っているセンスとテクノロジーの風格だとあえていいたい。

 一九七二年に発表されたベオグラム4000、その改良型の4002、6000は、必ずしも現代のプレーヤーの中で、最高の性能をそなえているというわけではない。しかし、ユニークなエレクトロニクスコントロールのフルオートプレーヤーを、これだけ美しいデザインで、しかもリニアトラッキングという理想的なトーンアームのムーブメントを備えたプレーヤーを、かくもフラットな、誰が見ても素敵というデザインでまとめたことは、一つの驚異的な仕事であると同時に、ずば抜けたセンスの良さを感じないわけにはいかない。実際に使ってみても、カートリッジを自由に交換ができないというハンディもあるが、操作性がスムーズであり、素晴らしいプレーヤーのひとつに数えられるものだと思う。

 ベオグラム6000は、同社のベオシステム6000用として特別に設計されたプレーヤーシステムで、このスリムなプレーヤーべースの中にCD−4用のディモデュレーターが内蔵され、2チャンネル再生時と切り替えて楽しむことが可能だ。カートリッジには、同社のムービング・マイクロクロス型という独特の発電方式によるトップランクの製品MMC6000が専用としてビルトインされている。

 ベオグラム4002は、前記のベオグラム6000からCD−4ディモデュレーターを省略したモデルと考えてよい。両者は外観からはほとんど区別がつけにくく、わずかにエレクトロニクスコントロール・パネル上部の型名表示と、ペオグラム6000の右サイドに付けられている2チャンネル/CD−4切替スイッチの有難を調べる以外にない。外形寸法は全く同じである。

 いまやダイレクトドライブ全盛といえるプレーヤーシステム部門において、この2モデルはベルトドライブ方式だが、そのメリットを巧みにいかした美しい薄型のデザインは、まさに一流品としての品位を備えている。

トーレンス Reference

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 56号(1980年9月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 トーレンス・リファレンス。この大きさとボリュウム感が、印刷された写真からはたしてどれほど、実感として伝わるのだろうか。たとえばターンテーブル。本体の中央にむしろ小さくみえるけれど、直径はむろん約30センチ。その直径から厚みを推測して、これだけの量感のあるターンテーブルをなお小さくみせる本体の大きさというものを想像して頂ければ、ようやく、これが只ものでない超大型のプレーヤーであることが、おぼろげながら理解されはじめる。
 そこに、スペックに印された寸法をあてはめてみる。さらに、90キログラム、という重量を思い浮かべてみると、どうやらこの製品の全貌がみえてくる。
 全体の渋いモスグリーン(苔緑色)系のメタリック半艶塗装。四隅に屹立する太い柱は、本体を吊っている支持枠(サスペンションハウジング)で、本ものの金メッキがほどこされている。本体の塗装の色は、おゆらく、この金色に最もよくあった色が選ばれたにちがいない。アームベースやパネルを締めつけている小さなネジもすべて金メッキである。
 ベルトドライブのターンテーブルに、アーム3本が取付可能のマニュアル式プレーヤー。──機能としてはそれだけ。こう言ってしまうと身も蓋もないが、それをここまでの物凄さに作り上げたトーレンスの真意は、いったいどこにあるのだろうか。
 ことしの3月に、パリの国際オーディオフェア(アンテルナシォナル・フェスティヴァル・デュ・ソン)に出席の途中に、スイスに立寄ってトーレンス社を訪問した。そのときすでにこの製品の最初のロット約10台が工場の生産ラインに乗っていたが、トーンレス本社で社長のレミ・トーレンス氏に会って話を聞いてみると、トーレンス社としても、これを製品として市販することは、はじめ全く考えていなかった、のだそうだ。
「リファレンス」という名のとおり、最初これはトーレンス社が、社内での研究用として作りあげた。
アームの取付けかたなどに、製品として少々未消化な形をとっているのも、そのことの裏づけといえる。
 製品化を考慮していないから、費用も大きさも扱いやすさなども殆ど無視して、ただ、ベルトドライヴ・ターンテーブルの性能の限界を極めるため、そして、世界じゅうのアームを交換して研究するために、つまりただひたすら研究用、実験用としてのみ、を目的として作りあげた。
 でき上った時期が、たまたま、西独デュッセルドルフで毎年開催されるオーディオ・フェアの時期に重なっていた。おもしろいからひとつ、デモンストレーション用に展示してみようじゃないか、と誰からともなく言い出して出品した。むろん、この時点では売るつもりは全くなかった──、ざっと原価計算してみても、とうてい売れるような価格に収まるとも思えない。まあ冗談半分、ぐらい気持で展示してみたらしい。
 ところが、フェアの幕が開いたとたんに、猛反響がきた。世界各国のディーラーや、デュッセルドルフ・フェアを見にきた愛好家たちのあいだから、問合せや引合いが殺到したのだそうだ。あまりの反響の大きさに、これはもしかしたら、本気で製品化しても、ほどほどの採算ベースに乗るのではないだろうか、ということになったらしい。いわば瓢箪から駒のような形で、製品化することになってしまった......。レミ・トーレンス氏の説明は、ざっとこんなところであった。
 トーレンスとEMTは、別項の工場訪問記にも書いたように、同じ工場の、同じラインで組立てられている。ただ、トーレンスが一般コンシュマー用、EMTがプロフェッショナル用という、厳然とした区別があって、管理から販売に至るまで完全に独立している。言いかえれば「リファレンス」がトーレンス・ブランドで発表されているということは、この製品が全く、プロフェッショナル用ではないことを表している。現実に、プロの現場(たとえば放送局の送り出し用、レコード会社や録音スタジオでのプレイバック用等)としては、どう考えてもおそろしく扱いにくい製品で、結局これは、超マニア用として作られたとしか、思えない。というよりも、正確には、前述のようにこれは、トーレンスの社内での実験用マシーンであったのだ。
 だが、トーレンス社があえて、おそろしいような価格をつけて市販に踏み切ったからには、なにがしかの成算あってのことに違いあるまいと、誰しもが思うのは当然ではないだろうか。
 なるべく手間や材料を省略して安く物を作ろうという風潮が支配的になっているこんにち、およそこれほど、無駄のかたまりとも思える物量と、手間とを投入した製品は、珍品と言いたいほど例外的な存在だ。
 組立の終った「リファレンス」が、本誌の試聴室に設置された。もう何回も眺めてきたのに、いままで工場その他の広い場所ばかりで見てきたせいか、こうしてふつうの広さの部屋で、目の前に置いてみると、改めて、大きい、と思う。いや、大きさもさることながら前述のモスグリーンと金色との豪華な質感と全体の量感、そして、みるからに質の高い加工の美しさのハーモニイを眺めると、何ともいえない凄みを感じる。初めて見た人は、誰もが、うわあ! と思わす驚きの声を上げる。もうそれだけで、このシステムから、悪い音など出るはずがない、という気持にさせる。
 サンプルとして入荷した第一便には、三台のアームベースのうち、二台に、EMTとトーレンスのアームがそれぞれ、とりつけられ、一台分だけ空白になっていた。私は、その音をよく知りつくしているオーディオクラフトのAC3000MCをそこにとりつけてもらった。EMT、トーレンスの各アームには、それぞれの専用カートリッジしかとりつけられない。そこで、それ以外のカートリッジをACにとりつけて聴いてみようというわけである。
 参考として、本誌前号(55号)のテストの際、私個人が最も良いと思った三機種──エクスクルーシヴP3、マイクロ5000(二連)+AC40000MC、それにEMT930stを、内蔵のアンプを通さずに直接出力を引き出すように手を加えたモデル(専用インシュレーターつき)──を、比較試聴用に再び用意してもらった。デンオンDL303、オルトフォンMC30、それにEMT/XSD15の三個のカートリッジで、エクスクルーシヴとマイクロを聴いて、前号の印象と変わりないことをまず確かめた。厳密にいうと、マイクロについては前号と設置および調整の条件が多少異っていたため、前号と同じ音質にはならなかったが、印象としてはむしろ前回を上廻る部分さえあった。それらの詳細については本誌55号をご参照いただきたい。
 前記二機種が、こんにちのプレーヤーシステムの中ではそれぞれにきわめて水準の高い音質を堪能させてくれたあとで、EMT930stにTSD15をとりつけて、内蔵ヘッドアンプを通さずに(ということは、内蔵アンプが悪いという意味ではない。いやむしろ内蔵のアンプの独特の音質の美しさこそ、EMTの特長でもあるのだが、あえてそれを使わないというのは、他のプレーヤーの試聴と条件を合わせるというだけの意味にすぎない)直接、出力をとり出した音を聴いてみると、中音から低音にかけて甘く量感のある安定感に支えられて鳴ってくる音の、くるみ込まれるような豊かな響きの美しさに陶然とさせられる。そのことも55号には書いた。
 さて、そうした音を聴いた直後に聴く「リファレンス」の音質である。とくにEMT930stとの比較のために、カートリッジはTSD15一個をつけかえ、さらに、トーレンスに付属している独特のコレットチャック式(締めつけ式)のスタビライザーも共用して、聴きくらべた。つまり違うのは、モーターのドライブシステムと、ターンテーブルおよびそれを支えるベースとサスペンションだけ、ということになる(アームは同じものがついているのだから)。厳密にいえば、アームからの引出コードは違う。トーレンス・リファレンスには、最初から先方でつけてきたコードがついているし、EMT930のほうは、本誌で改造した国産コード龍用品だ。
 しかし、同じレコードを交互に乗せかえて比較したかぎり、この音質のちがいは、とうていコード一本の差といった小さなものではないことが、誰の耳にも容易に聴きとれる。
 EMTのTSD(およびXSD)15というカートリッジを、私は、誰よりも古くから使いはじめ、最も永い期間、愛用し続けてきた。ここ十年来の私のオーディオは、ほとんどTSD15と共にあった、と言っても過言ではない。
 けれど、ここ一〜二年来、その状況が少しばかり変化しかけていた。その原因はレコードの録音の変化である。独グラモフォンの録音が、妙に固いクセのある、レンジの狭い音に堕落しはじめてから、猛数年あまり。ひと頃はグラモフォンばかりがテストレコードだったのに、いつのまにかオランダ・フィリップス盤が主力の座を占めはじめて、最近では、私がテストに使うレコードの大半がフィリップスで占められている。フィリップスの録音が急速に良くなりはじめて、はっきりしてきたことは、周波数レンジおよびダイナミックレンジが素晴らしく拡大されたこと、耳に感じる歪がきわめて少なくなったこと、そしてS/N比の極度の向上、であった。とくにコリン・デイヴィスの「春の祭典」あたりからあとのフィリップス録音。
 この、フィリップスの目ざましい進歩を聴くうちに、いつのまにか、私の主力のカートリッジが、EMTから、オルトフォンMC30に、そして、近ごろではデンオンDL303というように、少しずつではあるが、EMTの使用頻度が減少しはじめてきた。とくに歪。fffでも濁りの少ない、おそろしくキメこまかく解像力の優秀なフィリップスのオーケストラ録音を、EMTよりはオルトフォン、それよりはデンオンのほうが、いっそう歪少なく聴かせてくれる。歪という面に着目するかぎり、そういう聴き方になってきていた。TSD15を、前述のように930stで内蔵アンプを通さないで聴いてみてでも、やはり、そういう印象を否めない。
 ところがどういうことなのだろう。トーレンス・リファレンスで鳴らしてみると、930stと同じアーム、同じカートリッジの音が、明らかに1ランク以上、改善されて聴こえる。930stよりも、周波数レンジが広く聴こえる。音の表現力の幅がグンとひろがる。同じ針圧をかけているのに、トレース能力まで増したかのように、聴感上の歪が軽減された印象になる。EMT930stでも、国産機と比較するとずいぶん低音が豊かに感じられたのに、トーレンス・リファレンスの低音は、いっそう豊かでいっそう充実している。そして低音の豊かさが、中〜高域にかぶってこない。したがって音はクリアーで、ディテールはいっそう明瞭になる。とくに、オーケストラの強奏でその点が際立ってくる。音の伸びが良い。たとえば、カラヤン/ベルリン・フィルの「ローマの泉」の第二曲(朝のトリトンの噴水)の噴水の吹き上がる部分。リファレンスの音は、ほんとうに水しぶきが上がってどこまでも吹き上げる。水のしぶきに、ローマの太陽が燦然ときらめき映える。このレコードの音は、ずいぶんきわどく録音されているが、しかしやかましいという感じにならない。残念ながら、私が目下愛用しているマイクロ二連ドライブ+AC4000MC、それにMC30では、どうしても少々上ずる傾向になりがちだ。エクスクルーシヴとEMT930stでは、しぶきが十分な高さに吹き上がらない。そういう迫真力で格段の差を聴かせておきながら、少々傷んだレコードをかけてみても、他のプレーヤーよりその傷みからくる音の荒れが耳につきにくいというのは、何ともふしぎである。
 結局のところ、EMTのアームとTSDカートリッジを組合せるかぎり、こんにちその能力を最高に抽き出すターンテーブルシステムは、この「リファレンス」ということになるのだろうか? いや、まだひとつ、EMT927Dstとの比較が残っている。私の927を、動かす気はない。となると、「リファレンス」を私の家に持ち込んでみなくては比較はできない。だが930stとの差を聴くことで、ある程度の推測はつく。少なくとも、927と930は、見た目は似ていてもそこから聴かれる尾との質の高さは別格だ。となると、927と「リファレンス」とは、音のニュアンスの差であってどちらが上とはいえない、とでもいうことになるのだろうか。いちどぜひ比較してみたい。本号締切り間際に「リファレンス」のサンプル入荷がようやく間に合ったという状態なので、残念ながらその比較の機会が作れなかった。
 ところで、他のアームとカートリッジの音質はどうか。
 まずトーレンスのオリジナルアームと、MCカートリッジ(EMTと基本は似ていて、同じ製造ラインで作られている)。この組合せは、本誌55号でトーレンスTD126MKIIIの試聴の際に、一度聴いている。しかし、さすがにターンテーブルシステムの能力が上がるということはおそろしいもので、TD126のときには、音域やDレンジの限界のようなものを感じさせたのに、その限界が格段にひろがって、これはこれで相当に良いアームとカートリッジだと思わせる。が、しかし三百五十万円のシステムの音、としてみると、やはりこれでは少しものたりない。というより、EMTオリジナルという凄い音が一方にあるために、どうしても聴き劣りしてしまうのだろう。トーレンス社としては面子にかけてどうしてもとりつけたいのだろうが、この「リファレンス」ほどのシステムを使う日本の厳しい愛好家にとっては、トーレンスアームとカートリッジは、そんなに必要性を感じないのではなかろうか。
 となると、興味はいよいよ、オーディオクラフトのアームに各種のカートリッジをとりつけたときのことになる。
 まずEMT用のアームパイプをとりつけ、TSD15で比較してみる。さきほど例にあげた「ローマの泉」の噴水の水しぶき、その吹上げかたが、オリジナルアームよりも少し頭打ちになる。また、きらめき方も十分ではない。ということは、「リファレンス」システム自体が、共振成分を相当に制動してあるということなのだろう。EMTのアーム自体は、共振の十分に取り除かれていないターンテーブル・システムでは、音が少々はしゃぎすぎる傾向をみせることが多い。オーディオクラフトのアームの音質が、どちらかといえばやや暗く沈みかげんになるということも、同じ理由かを裏から説明している。どうやらACアームは、マイクロ糸ドライブとの組合せが〝絶妙〟ということになりそうだ。
 そのことは、あとからMC30およびDL303をとりつけて聴いてみたときにもいえる。MC30に関しては必ずしも悪い音ではなく、むしろバランスのよい、過不足のない、こんにち的な音が楽しめる。ただ、「リファレンス」で鳴るEMTオリジナルの、リフレッシュされたような味の濃い音を堪能したあとでMC30+AC3000MCを鳴らしてみると、いくぶん物足りない印象を受けやすい。
 そういう印象は、DL303にするともっと極端になる。もともと、中域以下の音の厚みの出にくいカートリッジだが、EMTオリジナルの豊満な音を聴いたあとであるからばかりでなく、DL303にしてもなお、線の細い、かなり痩せた感じの音になる。DL303の、相当に潔癖なスリムな音質と、「リファレンス」の豊かな肉づきと、性格が合わないともいえるが、それよりも、残念ながら、カートリッジの格負けといった印象が強い。
 しかしそうしてみると、この「リファレンス」は、EMTのオリジナルアーム+カートリッジの能力を、最大限、発揮させるターンテーブルシステム、ということになるのだろうか。どうもそうらしい、ともいえる。が、もう少し時間をかけて、アームを調整しこみ、または別のアームにも換えてみて、可能性の範囲を追求してみれば、また別の面も聴きとれそうな気もする。
 というのは、サスペンション・ハウジングに、本体を吊っている鋼線(ワイヤー)の張力(テンション)を調整するつまみがついている。最大から最少までの幅で、本体に対する共振点を、1Hzから5Hzのあいだで調整できると説明されている。私の試聴では、張力を最もゆるめた状態、つまり1Hzの状態が良いと思った。
 ところがこの状態では、たとえばロックからフュージョン系の新しいレコードを聴く編集部のM君など、低音がゆるんでいて、とても我慢できない、というのである。彼に言わせると、張力を最も強くしたときのほうが、低音が締まって、これなら自分のレパートリィにも使える、という。このことからわかるように、ワイヤーの張力の調整によって、音質を、全体にゆるめたり引締めたりできるわけで、本機のテストだけでほとんど6時間あまりを費やしてしまったが、それでも、この時間の枠内では、ワイヤーのテンションを変化させながら最適アームをとカートリッジを探す、といった追い込みをする余裕が作れなかった。もっとも、その時間の半分以上は、ただぽかんと聴き惚れていた、というのが、正直な話なのだが。
 この「リファレンス」の構造について最後にふれておこう。
 ターンテーブルは、直径305ミリ、比較的柔らかいフェルトのシートが張ってあり、スカートの部分にはプラスチックのストロボスコープがついていて、全体の厚みは約83ミリ。引上げると、内面には部厚いドーナッツ状の合板が打込まれ、おそらく共振を制動している。ターンテーブルのサイズや大まかな形状およびいかにも精密加工された永いシャフトをみると、どうやらこれは、EMT930stのターンテーブルと、基本は同じもののように思える。ただし軸受けのほうは、ランブルを最少に保つための新開発のものだと、書いてある。ターンテーブルの重量は、制動材を含めて6・6キログラムと発表されていて、これはむろん930stより重い。
 手前のパネルには、左から速度切換(78・45・0・33)、速度微調整(±6%)。2個のシーソースイッチを間に置いて右端は電源のON−OFFスイッチが配されている。
 シーソースイッチは、アームリフターのリモートコントロールで、3本のアームのうち、2本に限り、原則としてトーレンス社で取付・調整したエレクトロニック・コントロールのアームリフターがとりつけられる。アーム取付ベース内に組込まれ、そこから出てきたコード(DINプラグつき)を、シャーシ背面で接続すると、リモートコントロールが可能になる。
 本体は、土台となる頑丈なベーシック・シャーシと、ターンテーブルおよびアームをとりつけてあるフローティング・シャーシとに分割されて、ともにアルミニウム・ダイカスト製。ベース側に例の金メッキの四本柱がとりつけられて、その天部から鋼鉄のワイヤーと、重ねた板バネ(二軸貨車などに使われる担(にない)バネのようなリーフスプリング)とで、フローティング・シャーシを吊っている。ワイヤーの途中を、ちょうど弦楽器の弦を指でおさえてピッチを変える要領で、可動式のクランプがおさえて、さきほど述べたように共振点を変える。この懸架の方法は他に類のない独特の構造で、ゴム系の制動を一切加えていない。
 フローティング・シャーシは、ターンテーブルのシャフト軸受の周囲の空間にトーレンスではアイアン・グレインと称する鉄の粒の制動材がつめこまれ、ダイカストの補強リブのあいだに形成される空洞共振をおさえ、なおかつ軸受の周囲に、Qの低いマスをつけ加えていることが、この製品の音質を相当にコントロールしているように思われる。
 駆動モーターはかなり小さい。電子的に速度を変えて3スピードを出している。ベルトのかかる軸の直径は約50ミリと非常に大きく、低速モーターであることがわかる。説明書には、「ハイトルク・シンクロナス・モーター」とあるが、トルクはこんにちの製品群の中では、むしろ弱いほう。レコードをのせてクリーナーを押しあてると、回転が停まってしまう。もう少しトルクが欲しいように思う。
 アーム取付ベースは、アルミニウム・ダイカストの枠で、アーム取付面には木製の板を使う。孔を加工しやすいように、との配慮だろうが、このように、木材とアルミニウム、といった異種材料の組合せは、共振を防止するという点でも好ましい。そしてダイカスト枠の小さな空洞にも、前述のアイアン・グレインがつめ込まれ、共振の防止はほとんど完璧といえる。
 取付枠は、大・小二種類あるが、先述したアーム・リモートコントロールのメカニズムは、小型のほうには組込めないように思う。
 この枠は、2本のビスでフローティング・シャーシに締めつけて固定するが、かなり大幅に動かすことができて、オーバーハングの調整は容易だ。ただ、ロングアームは寸法的に取付け不可能だ。アーム引出コードは、ダイカスト枠のスカート部分の切込みから引出すだけで、この辺の処理は、仕方ないとはいえ、スマートとはいい難い。
 本体とは別に、下に敷く木製のベースと、4本のサスペンションを利用して上に乗せるアクリルの蓋が付属してくる。本体の重量は90kgと公表されているから、付属品を加えると100kgを越すこともありうるわけで、この重量は、こんにちのオーディオ機器の中でも最も重く、設置場所には十二分の配慮が必要だと思う。支持枠の上部の大きなつまみを廻転させて水平どの調整はできる(水準器を内蔵している)が、土台が十分に水平を保っていないと、本体が重いだけになかなか水平度を出しにくい。ただ、優秀な懸架機構のおかげで、ハウリングの心配は殆どない。
 なお、もしも好運にこのサンプルをテストする機会のある場合、あるいはもっと好運に、この高価かつ豪華なマシーンを購入された場合、組立ての後、運転前に必ずチェックすべきことが二つある。
 第一は、ターンテーブル軸受に付属のオイルを十分に注入すること。シャフトを完全に収めた際にこぼれない範囲で、シャフトをオイル浸けにするというのが、EMT/トーレンスの基本である。少なくとも、このサンプルの到着の時点では、オイルの分量について、正確な指示が何もついてこない。私たちは、軸受周辺にティッシュペーパーを多量に敷いてオイルを多目に入れて、こぼれた分をあとからよく拭きとる、という原始的方法をとった。
 第二に、そのあとで、駆動モーターシャフト、ベルトの内外周それにターンテーブル周囲を、無水アルコールでていねいに清掃して、付着している汚れ、ことに油分を完全に拭いとること。これを忘れると、ベルトの寿命も縮めるし、廻転も不安定になりやすい。
 以上は、テストの際にとくに気がついた点であった。
 なにしろ、たいへんな製品が出てきたものだ、というのが、試聴し終っての第一の感想だった。すごい可能性、すごい音質。そしてその偉容。
 であるにしても、アーム2本、それに2個のカートリッジがついてくるにしても、これで〆めて358万円、と聞くと、やっぱり考え込むか、唸るか。それとも、俺には無縁、とへらへら笑うことになるのか。EMT927までは、値上げになる以前にどうやら買えたが、「リファレンス」、あるいはスレッショルドの「ステイシス1」あたりになると、近ごろの私はもう、ため息も出ない、という状態だ。おそろしいことになったものだ。

リン LP-12 + LV-II

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/明るく、引締ってなかなか良い音だ。とくに低音から重低音にかけてのコントロールに特徴がある。たとえばバスドラムやベースの低音。量感が十分でありながらキリッと引締めて、音階の変化や音色の違いがとてもよく聴き分けられる。スネアドラムやシンバルの音は、粒立ちの良さをことさらに感じさせはしないが、音がめり込むようなことはなく、爽やかな切り味が楽しめる。音が決して乾きすぎていない。ヴォーカルなど喉の湿りを感じさせるような血の通ったあたたかさがあるし、上滑りしたりハスキーになるような欠点がない。フォルティシモでも音がよく伸びる。従ってポップス系にはたいそう満足感を与えている。クラシック系でも、たとえばベルカントふうの明るいハッピーな音はとても気持ちよく聴かせる。が、反面、この音は曲によって少し明るすぎるような感じを受ける。たとえばフォーレのVnソナタ。音楽的におかしいところは少しもない。ヴァイオリンとピアノの音色もかくあるべきというバランスで鳴らし分ける。けれど、フォーレの世界にはもうひとつしっとりした味わい、陰の部分の色あいの複雑さ、が欲しく思われる。また、クラシックのオーケストラ曲に対しては、あとほんのわずか、低音をゆるめてよいのではないかと思わせる。だが、そうした高度な論議をしてみたくさせるということは、すでにこの音質が相当に高度であることを示す。そして、右のわずかな私にとっての不満は、アームをACに替えることで解決される(ただしこの組合せでは蓋がしめられなくなるのがまずい)。
●デザイン・操作性/前述のように国産のアームがハミ出るほど小型。仕上げは美しい。電源スイッチのON/OFF以外に操作性の問題点はないが、ボタンを押すたびにターンテーブルがフラフラ揺れる点は、改善の工夫が欲しいところだ。

ヤマハ PX-1

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/おとなしい音、耳を刺すような刺激性の音はよく押さえ込まれて、行儀よく整理されきれいに刈り込まれた、という印象で、その意味で全くヤマハ的なサウンドと言ってさしつかえない。ただしPX1も、こんにち的な意味で本当にプレーヤーの音質の問題提起とその分析の行われる直前の製品であるために、これ以後に出現した音質本位の機種と比較すると、むしろ、リニアトラッキングアームとフルオートマッチックという点が主テーマとなっているらしく思われるので、音質という面では多少割引いて評価する必要はあると思う。それはそれとして、他機種と同レベルでの比較をとりあえずしてみれば、たとえば「ザ・ダイアローグ」のパーカッションの粒立ちがいま一息、どことなくのめり込みがちで、ベースの低音やバスドラムのローエンドは少しゆるみがち。そして、音楽が生き生きと湧き上ってくるというようないわゆる自発性が感じとりにくい。あくまでも穏やかでおとなしい。弦楽器とくにヴァイオリンの高弦の音は、L07Dのあのきつい音よりははるかに好ましい。反面、胴鳴りの豊かさや厚み、そこから生れる実体感あるいは立体感にどこか乏しい。なお、アームのバランスウェイトの制約からEMTはとりつけ不可能だった。
●デザイン・操作性/いかにもヤマハ独特の端正でよく整った意匠。そしてフルオートとマニュアルとを使い分ける数多くのボタンやツマミ類。しかし人間工学的には、ボタンの操作に二〜三の矛盾点がある。AUTOのスタートは、17、25、30と並んだ中からレコード一枚ごとに必要なボタンを選択する手間が要り、うっかりすると押しまちがえる。これは一例で、ボタン類の配列とその機能的整理は、考えすぎてひとりよがりに陥ってしまっている。レコードを乗せずにAUTOをスタートさせると、針がターンテーブル上に降りてしまい、針先をいためる恐れ甚大。

パイオニア Exclusive P10

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/全体的な印象は、大掴みにはP3と似たところがある。たとえば低音の土台のしっかりしていること。中〜高域域で、ことさらに解像力のよさを誇示するようなきわどい音を鳴らすようなことがなく、安定感のある大人っぽい雰囲気の音を聴かせる点、など。少なくとも、今回テストしていない20万円前後のクラスと比較すれば、やはりこれは相当に水準の高い音を聴かせる製品といってよい。
 しかし、ここにP3というおそろしく出来栄えの良い兄貴があると、ついそちらと比較してしまう。P10のあとにP3を聴くよりも、P3のあとにP10を聴くほうが、その音の差はよくわかる。たとえば、音の品位。P3よりも楽器の質が1ランク下がった印象になる。P3よりも音が少し乾いて、少し響きが不足し、P3で聴いているときの、ついそのまま楽しんでしまいたくなるほどの楽しい雰囲気が、何となく半減した感じになる。ひとつひとつの要素は「ほんの少しずつ」であっても、その集積では、P3と想像以上の差になって聴こえる。23万円という価格の開きを考えたとき、この差をどう評価するか、ここは個人差の問題といえるが、もし私が選択をせまられれば、どんな無理をしてもあと23万円、借金してでも作ってP3の魅力を買う。
●デザイン・操作性/一見したところは似ていても、P3の蓋のガラスはプラスチックになり、スタート・ストップと速度切替スイッチがターンテーブル周囲の飾りリング上に移る。蓋の軽いのはかえって使いやすいが、スイッチは操作性・感触ともP3にやや及ばない。モーターのトルクも違うし、アームも似ているが全く違う。P3独特のインシュレーションが省略されている点も、音質の違う要因ではないだろうか。並べてみると、大きさもひと廻り小さく、P3より軽快、逆にいえば重厚さが後退している。

パイオニア Exclusive P3

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/今回とりあげた製品の中でも、非常に感心した。たとえばマイクロの糸ドライブのように調整の多少のコツを要する製品を最良のコンディションに整えたときの音、あるいは、EMT930を今回のように特殊な使い方をしたときの音、の二つの例外を除けば、完成品プレーヤーとして、これぐらい見事な音を聴かせた製品は唯一といってもほめすぎではない。第一に音が生きている。ひとつひとつの音にほどよい肉附きが感じられ、弾力的で、素晴らしく豊かな気分を与える。音が妙に骨ばったり、ことさら乾きすぎたりせず、中庸を保ちながら、しっとりと美しい響きが満喫できる。音の重心が低く、音楽を支える低音の土台がしっかりしている。おそらくそのためだろう、中〜高域でもきわどい音を全く聴かせないから、どんなにカッティングレベルの高い部分でも、聴き手をハラハラさせるような危ない音が出てこない。アメリカ製大型乗用車のあの、悠揚せまらざる乗心地のよさに似ている。音が生きているといったが、たとえば音の鮮度の高さとか、みずみずしさ、といった点では、ケンウッドL07Dに一歩譲るかもしれない。けれど、まるで装置全体が変わってしまったかのように、つい、いつまでも楽しんでしまいたい気分にさせる。決して安くはないが、音質、仕上げとも十分に使い手を満足させる。
 ステレオの音像もみごとで、中央が薄手になったりせず、奥行きと厚みを感じさせながら広がりも定位も十分。ひとことでいえば重厚な雰囲気を持った楽しい音、という印象。
●デザイン・操作性/ずいぶん大きく、重々しい雰囲気。だがこの大きさや構造ゆえに右の音質が得られたのだとしたら、文句はいえない。ターンテーブルのトルクは十分で、スタート・ストップの歯切れよく気持がいい。アームの調整も馴れれば容易。しいていえばアームリフターのレバーが奥にあるのは不満。

トーレンス TD126MKIIIC

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/オリジナルアームつきと、アームなしと、両方の製品がある。まず、アーム自体の性能のよくわかっているAC3000MCとの組合せから試聴した(リン・ソンデックよりひとまわり大きいので、国産アームが無理なくとりつけられる点は便利)。総体に穏やかでウェルバランスといいたい安定感がある。ことにクラシックのオーケストラや弦合奏、そして今回の試聴盤の中でもなかなか本来の味わいの出にくいフォーレのVnソナタなどが、とても優雅に、音楽の流れの中にスッと溶け込んでゆけるような自然さで鳴る。反面、ポップス系では、同席していた編集の若いS君、M君らは、何となく物足りないと言う。その言い方もわからないではない。たとえばL07Dの誰にでもわかる音の鮮明な粒立ち、あるいはLP12の、ことさらに粒立ちを意識させないまでも明るく音離れのよい爽快感。そうした音と比較すると、いくぶん暗く沈みがちに聴こえる点に、好き嫌いが出そうだ。本来の音が穏やかなのに加えて、音量感がほんのわずか減ったような印象を与えるところがあるので、それが聴きようによってはマイナス要因になるかもしれない。ところでオリジナルアームのほうだが、同じカートリッジをつけかえたとき、総体に音のスケールや音量感までも小さくなったように聴きとれる。中域が張ってきて、相対的に音域がやや狭く、Dレンジもまた狭まったかに感じられる。専用のカートリッジはEMT製だが、オリジナルのXSD15をACと組み合わせた音にくらべてかなり貧相だ。
●デザイン・操作性/以前の製品にくらべてツマミ類が何となく安手な感触になっているのが残念だが、比較的小型にうまくまとめられて、大げさでない点がいい。横揺れしやすいので、床がしっかりしていないと、外部からの振動で針が飛びやすい。設置にはこの点多少の工夫が必要。

ソニー PS-X9

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/附属のカートリッジ(XL55Pro)は参考にとどめ、他機と同じくMC30、EMT、DL303を主に試聴した。こんにちのように高級プレーヤーの音質の解析が深くおこなわれる以前の製品としては、相当に水準の高い音を聴かせる。切れこみがよく、鮮度の高い印象の音がする。ただ、パーカッションが一発パッと入ると、音のスペクトラムが中〜高域寄りに散る感じがあって、大型機の割に低音の土台の支えが弱く、表面的な派手さで聴かせる傾向がわずかにあって、本当の充実感ではなく、どことなく空威張り的な音といえる。内蔵のヘッドアンプのほうに切換えてみると、MC30に対しては少々ゲイン不足で残留ノイズがいくぶん耳につく。附属カートリッジとの相性はさすがによく、ゲインは充分。音が一杯に出て、いかにも情報量が多い、という印象を与えるが、私の耳にはどうしても本当の充実感にきこえにくい。ずっと以前、本誌48号でのブラインドテストのときとは印象が違うのは、あのときのテスト機は、あとから本調子が出ていなかったことがわかったそうで、フローティングの有無によっても音が変わるそうだ。
●デザイン・操作性/スイッチ類の配置は仲々キメ細かく、感触も仕上りも上出来である点はさすが。ただし、プレーヤー右手前の部分は、アームの操作のために右手が頻繁に往復するので、速度切替スイッチのボタンの軽いタッチが仇となって、不用意に触れてしまうおそれがあり、人間工学的にはここが問題点となる。アームは素晴らしい精度で組立てられていて、ゼロバランスをとってみると、感度の良さでは今回のテスト機中一〜二を争う出来栄えであることがわかる。スタジオ機的雰囲気は、EMTがイメージとしてあるように思えるが、いかにもソニーらしい手馴れた創りと仕上げに、魅力を感じる愛好家も多いことだろう。

ケンウッド L-07D

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/音の鮮明度、あるいは鮮鋭度、立上りの良さ、解像力や粒立ちの良さ......といった要素を際立たせて聴かせる。その意味では今回のテスト機中の最右翼と言ってよいかもしれない。二〜三の予備テストの結果、このプレーヤーのアームは、ヘッドシェルやカートリッジの相性にかなり神経質であるように思え、専用のシェルにDL303をとりつけた組合せが最良だったのでそれを中心に試聴した。さらに、センタースピンドルにトリオ製のスタビライザーと、もうひとつ、トリオ独特のレコード外周にタガをはめる形のスタビライザーを併用してみた。音のけじめがはっきりして解像力が上るが、正直のところ、レコード1枚ごとにこれらスタビライザーをはめて聴くのは私はご免蒙りたい。いずれにしてもこの音は、どちらかといえばジャズ、ポップス系の叩く、はじく、音に長所を発揮するようだが、クラシック系、ことに弦や木管の音は、ときとしてきつすぎ、コントラストのつきすぎの感じに聴こえて、私には違和感があってついてゆけない。おそらく、クラシック系の愛好家、あるいはポップスでも穏やかな音で聴きたい人はP3を、またポップス系中心に鮮烈な生々しさを求める人はL07Dを、そぞれ評価すると思う。少なくともP10のどっちつかずの音よりも、ひとつの方向で徹底しているという点で面白い。
●デザイン・操作性/電源が別ユニット。メカニックでどこか実験機的だ。アームレストの位置がターンテーブルに近すぎたり、アンチスケーティングの糸のかけ難さ、その反面のはずれ易さ、等々、メカ的には未消化の部分多く、メカ設計者のひとりよがりと、意匠デザイナーの未熟さが目立つ。凝りすぎの部分と、そうでない部分がひどくアンバランス。外部振動から一切逃げていない構造なので、ハウリングには弱く、置き台や置き方に工夫の必要がある。

EMT 930st + 930-900

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/中音域から低音にかけて、ふっくらと豊かで、これほど低音の量感というものを確かに聴かせてくれた音は、今回これを除いてほかに一機種もなかった。しいていえばその低音はいくぶんしまり不足。その上で豊かに鳴るのだから、乱暴に聴けば中〜高音域がめり込んでしまったように聴こえかねないが、しかし明らかにそうでないことが、聴き続けるうちにはっきりしてくる。ことに優れているのが、例えばオーケストラのバランスと響きの良さ。まさにピラミッド型の、低音から高音にかけて安定に音が積み上げられた見事さ。そしてヴァイオリン。試聴に使ったフォーレのソナタの、まさにフォーレ的世界。あるいはクラヴサンの胴鳴りが弦の鋭い響きをやわらかく豊かにくるみ込んで鳴る美しさ。反面、ポップスのもっと鋭いタッチを要求する曲では、ときとしてL07Dのあの鮮鋭さにあこがれるが、しかし一見ソフトにくるみ込まれていて気づきにくいが、打音も意外にフレッシュだし、何よりもバスドラムの重低音の量感と、皮のたるんでブルンと空気の振動する感じの低音は、こんな鳴り方をするプレーヤーが他に思いつかない。なお、試聴には本機専用のインシュレーター930−900を使用したが、もし930stをインシュレーターなしで聴いておられるなら、だまされたと思って(決して安いとはいえない)この専用台を併用してごらんになるよう、おすすめする。というより、これなしでは930stの音の良さは全く生かされないと断言してもよい。内蔵アンプをパスするという今回の特殊な試聴だが、オリジナルの形のままでもこのことだけは言える。
●デザイン・操作性/スタジオプレーヤーとして徹底した設計であるため、一版愛好家が使うには違和感もあるかもしれないが、使ってみれば納得、という感じ。昨日今日でっち上げられた製品とは格が違う。

トーレンス TD125MKIIAB

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 ダイレクト・ドライブ方式のターンテーブルが世に出てきた時になって始めて、最高級ターンテーブルの条件にひとつの変化がでてきた。それは「トーレンス」ブランド以外にも良いターンテーブルがある、ということであった。それまでは、最高性能を備えた実力ある製品はことターンテーブルに限り、すべて「トーレンス」だけだったといっても差支えあるまい。ステレオになって、わずかな上下振動も音に影響を与えるようになると、「トーレンス」の良さが俄然と注目され、TD224、124と全世界の高級ファンは、これを手元におくのが常識になった。125になり、電子制御モーターが採用されて性能はますます向上した。今日といえど、全盛をきわめるDDモーターの果していくつがこの125に肩を並べる実力を持つだろうか。

デュアル 1249

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 もう10年くらい前かな、いやもっと以前のことか。オートチェンジャーというものに対する観念をすっかり変えてくれたのが、デュアル1019だった。つまりこの1249の母型ともいえるもので、当時の一般的なオートチェンジャーの感覚で受け止められ得る平均的な外観のオートチェンジャーだった。ところが、物体の方は他のチェンジャーとは少々異っていて、それまでの考え方をすっかり変えてしまうに足りる「完璧さ」と「正確さ」を併せ持っていた。
 その上、使い始めなんと6年間も、かなりの使用頻度の苛酷さにもびくともせずに、常に最初と回じ正確さと精密な動作を崩さなかったのには度肝をぬかれた。アームをより軽針圧化させ、ターンテーブルを12吋にして、さらにマイナーチェンジを二度経て1249となって今、デュアルのオリジナル製品としての伝統とキャリアは、アメリカ・日本を中心に、世界のあらゆる国にあまねく知られている。
 ガラードからデュアルの手に移ったオートチェンジャーの品質的な地位ほ、当分ゆるぎそうにないと思える。
 そのオリジナル製品が、デュアル独特の機構により成り立つ上、そのオリジナル機構は、今も主要機構は少しも変ることないという点でも一流たるにふさわしい。
 軽針なオートチェンジャーとして、あるいはフルオートプレイヤーとして、今、初級フアンの激増する時デュアルの1249の価値はますます高くなってくるし、また求められるであろう。

デュアル CS-721S

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 日本のオリジナル技術ともいえるDDモーターの分野に、高品質チェンジャーのトップメーカー、デュアルが挑んで作ったのが、701ダイレクトドライブ・プレーヤーであった。世界にその名を知られる西独きってのメーカー、デュアルのことだけあって、その製品のポイントともいうべきダイレクトドライブ・モーターは、日本製品とは全然別の開発によるもので、ターンテーブルを外した状態でも、スムーズな回転運動をしてくれて、いわゆるコッギング運動(ぎくしゃく運動)のない点でも、さすがデュアル製と思わせるすばらしさだ。加えて、アームやプレーヤーベースの伝統的なノウハウに支えられた高い完成度は日本製品とは違って、眼に見えない所の良さを、音を出したときに知らされる。
 一見たいして変った点のないこの721が、さらに変ったと聞かされて、それがどこか探すのに手間どるほどであったが、基本的には変っていない点がかえってほっとしたというのが偽らざる所。一流品はそう変ってもらっては困るのだが。

テクニクス SL-1200MK3

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井上卓也


ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)

特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より


 1989年発売以来、世界的に超ベストセラーを続ける非常にトータルバランスの優れた製品。SL1200/1300系のモデルは、想像を超えた物凄い量を販売した実績があるだけに、世界各国の規格をクリアーしており、都市地域の強力なTV妨害や電源からの雑音排除能力が抜群に高く、安定した音は特筆に値する。

井上卓也


ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)

特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より


 古くはTD150以来の伝統をもつ2重構造ターンテーブル採用のサーボベルト駆動ターンテーブルは、サスペンション系が横揺れに強いリーフスプリング型となり、防振性能はさすがに抜群。組み合わせるアームは、現在、最も安定し各種カートリッジとの対応性が広いSME3009オートリフター付で総合性能は抜群。

ビクター QL-V1

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井上卓也


ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)

特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より


 歴史と伝統を誇るビクターの「HMV」を冠したHMVシリーズ用に、現在では異例の新開発で完成されたが、独自のコアレスDDモーターの採用でメインテナンスフリーとした構想は注目点だ。マホガニーのキャビネットにコンパクトにまとめられ、HMVシリーズ専用ラックに組み込んだときの大人の雰囲気をもつまとまりが絶妙。

EMT 948

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菅野沖彦


レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)

「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より


 EMTの新世代プロ用機で、主に放送局用として開発された。フォノイコライザー内蔵で、トーンアームは有名なTSD15他同社のカートリッジ専用のダイナミックバランス型が付属。ユーザーの趣味で、あれこれモディファイする自由はない。
 その性格上、安定性、信頼性、耐久性重視で作られていて趣味性とは無縁のはずである。ところが、音を聴くと圧倒的な説得力を持ち、きわめて豊かな表現力を聴かせることに驚くばかりである。一体どこからこんな音の魅力が出てくるのであろうか? 作る側も音のことは意識がないはずである。しかも、技術的には古い既成の枠を一歩も出ていないものであり、特性も、素材や作りも、ひたすら前述した業務用の命題に基づいた設計製造にすぎない。トーンアームは同形のものを私も手元に持っているが、現在の水準からすれば、お粗末といっても過言ではない代物である。カートリッジもまた然りであり、一体、音の技術の進歩とは何か? を考えさせられる。
 血沸き肉踊るように生き生きと音楽を奏でる、その鳴りっぷりのよさは何なのか? シェリングのヴァイオリンなどは、たしかに繊細な味わいや集中性の高い毅然としたものではなく、むしろ豪放な演奏に聞えるし、「トスカ」はトゥッティでうるさく、肌理の細やかな音触の機微は聴けない。しかし、他のプレーヤーでは得られない生命感が充実しているのである。これからすると他の音は、細かい部分にこだわりすぎて肝心のエッセンスを取りこぼしているようにさえ感じられるのだ。
「ベラフォンテ」のライヴや古いモノーラルの「エラ&ルイ」、「ロリンズ」などは、デリカシーよりバイタリティとエモーションが重要な意味をもつ音楽だけに、また、録音時期も古いだけに圧倒的にこのプレーヤーがよかった。アナログレコードの、ベルエポックを感じさせてくれた音だ。機械としての魅力も備えている。

菅野沖彦


レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)

「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より


 独特の回転支持機構をもつトーンアームが特徴のウェルテンパード・プレーヤーだ。シリコンバスの非機械式というこのサスペンションとダンパーは、たしかに音のよさに表れ安定度も高い。透明ですっきりした、立ち上がりのよい音でS/N感もいい。シェリングのヴァイオリンは冷静で、やや温度感が低いが繊細である。シェリングの印象と違和感はない音触だった。ヘブラーのピアノはエネルギーバランスのよさを感じさせるアコードが自然で、タッチ感もリアルである。スクラッチノイズの静かさから想像できる高音域のおとなしさだが、それでいて解像力に優れていて、精緻に音色の機微や微妙な変化を再現する。
「トスカ」でのソロ、コーラス、オーケストラの多彩さにも鋭敏な対応力をもっていると感じた。低音のコントロールもシステム全体のチューニングがよく働き、適切なエネルギーバランスである。このような特質が「ベラフォンテ」のライヴ盤にひときわ発揮され、シャープな高域が再生されながら、うるさくならないのが印象に残った。高域が冴えて聞こえる感じは、プレゼンスの豊かさによりライヴコンサートの雰囲気を盛り上げる。「クク・ル・クク・パロマ」の、レキントギターの擦過音が他のプレーヤーより浮き立ち印象に残る。同じ音でも無意識に聞き流す場合と意識に引っかかる場合の違いが、機器によってあることは読者も体験されていると思う。
「エラ&ルイ」も肉声感が自然で、二人の声の特質がストレート。声の基音と倍音のバランスのよさによるものであろう。「ロリンズ」ではブーミーな録音によるベースの出方を注意して聞くのだが、録音のアンバランスを強調することがなかった。執拗に繰り返される、サックスとギターのユニゾンの響きがバランスよく美しい。製品によっては、サックスをベースがマスキングするかのように鳴るものもあるが、これはロリンズがよく立つ。

トーレンス TD520RW + 3012R

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菅野沖彦


レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)

「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より


 トーレンスのプレーヤーのよさを一言でいうなら、バランスのよさ。アナログプレーヤーという機械には必要悪が山ほどある。そして、これらは互いに多くの矛盾を孕んでいて、総合的に一つの機能体としてまとめるには明確かつ一貫した思想を必要とするものである。
 どんなに微細な一部分でも変えれば音が変わるのも、機械振動のすべてが音として鳴るプレーヤーの宿命といえる。レコードに刻まれている波形のすべてを、過不足なく電気信号に変えるのが使命であることは、いうまでもない。これが仮に実現すれば、プレーヤーとして正しいわけだが、古今東西のプレーヤーでどれがもっとも正しい変換器であるかは誰にもわからないのが現実である。
 個々のアナログプレーヤーの設計者のなかには、自分のものだけが唯一無二の正しい変換装置だと主張する人が少なくないが、本当に音と音楽を知っていれば、そんな傲慢な姿勢をとれるはずがない。トーレンスのプレーヤーはこういうことをよく知っている。その結果必要悪は文字どおり、必要なことと肯定してバランス設計思想を尊重することになったのである。SMEのトーンアームも同様である。ストレートアームや超重量リジッドプレーヤーなどは、また違う思想であり、当然音も違う。大人の美しい妥協が生み出した不偏向な音のプレーヤーである。
 現在のトーレンスの上級機であるが、いかにも中庸の、しかも表現性の豊かな音が得られる。弦の艶と輝きのバランス、強靭な音の芯と漂うような響きのバランス、十分な細部の再現性ながら、けっして鋭利すぎない音を聴かせるボディや陰影のニュアンスがある。
「エラ&ルイ」のナローレンジをもっとも素直に聴かせトーキーサウンドを彷彿させたのも、このプレーヤーならではだ。部分的、分析的にはより優れた特質を聴かせるものは多くある。しかしバランスではこれを凌駕する製品は少ない。

ビクター QL-V1

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菅野沖彦


レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)

「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より


 '95年秋に発売されたこの時機の新設計のプレーヤー。現時点でこの情熱は賛えてよいが、裏を返せばトーンアームもターンテーブルも、かつての製品はすべて捨てられていたということである。モーターだけが在庫していたという。長年の歴史と伝統の犬のマークが泣いていた......。目先のお荷物はすべて捨てるのが商売になるとなれば、すぐ拾う変わり身の早さが日本メーカーの美徳? なのだ。かつて、あれほど数多くのプレーヤーを作っていたというのに。モーターの在庫数だけで生産を終わるというから、欲しい人は早く買っておいた方がよいだろう。
 DDプレーヤー共通の、しっかりした造形感をもつ再生音が特徴で、ソリッドな質感が充実している。曖昧模糊とした暖色傾向の再生音を好む人には向かない。しかし、楽音は無機的にはならず、艶も色もある。有機的で温度感も高い。プレゼンスも豊かで過去のプレーヤー作りのキャリヤーは生きている。声の肉声感やオーケストラの多彩な音色もよく生きている。弦楽器群の音触がリアルで自然である。全帯域のエネルギーバランスはよく整い、カートリッジの高域を素直に聴かせる。ライヴコンサートの臨場感がたいへん豊かなことが印象的でもあった。音楽演奏の運動感がよく伝わるのである。躍動感というべきかもしれないが、音がヴィヴィッドなのである。スピーカーに音が平板に張りつくイメージがないのがいい。「エラ&ルイ」の両者の声に艶があって魅力的だったし、モノーラルのまとまりのよさに位相特性のよさを感じた。プレーヤーによるモノーラル音像のまとまりには、意外に違いがある。機械振動であるから、どの部分も振動即音として影響するのがアナログプレーヤーの難しさであろう。低音のコントロールも適切で、ブーミーなロリンズ・コンボのベースもサックスの存在に悪影響を与えるほどではない。シンバル、スネアー、ハイハットも繊細に鳴らし分ける。

デュアル Golden 11

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菅野沖彦


レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)

「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より


 かつてオートチェンジャーで一世を風靡したドイツのデュアルのプレーヤーだが、その面影がトーンアームのジャイロスコープ・ジンバルサスペンションに残っている、ダイナミックバランス型のトーンアームである。78回転仕様があるのはディスクファンには喜ばれるだろう。こうして古いものをあっさり捨てない思想は、ここ半世紀の日本メーカーには、もっとも欠落しているものの一つであろう。だから、今この国は、技術も文化も断片化し底の浅いものになってしまった。
 ところで、このプレーヤーはけっして高級品といえるほどのものではないが、押さえるべきツボを押さえて、巧みにエネルギーバランスがとられている。アームの動作がよいのであろう、トレースが安定し細かい音もよくピックアップし、ヴァイオリンの音色は艶っぼい粘りのある魅力的なものである。シェリングらしさということでは少々違うように思うが、これはこれで官能的な魅力がある。ピアノも弾力感のある質感で、中低音にかけて豊かな肉づけが感じられる。f0の設定が上手い。ブーミーになるギリギリのところを掴んでいる。高域は派手めであるが、楽音や声質の変化には敏感で、多彩な音色を楽しめる。弦楽器群の音触は、しなやかさを聴かせるし、雰囲気がいい。精緻とまではいかないが、音楽的な感興のあるサウンドであった。空間感が豊かで「ベラフォンテ」のライヴは楽しめた。あの独特な声がよく活かされて、左チャンネルのレキント・ギターの弾くリズムがよく立って聞こえ印象的であった。
「エラ&ルイ」でサッチモの声がややドライになったのは、高域の華やかさのためと思われるが、その分、エラの声は魅力的で、あの柄に似合わぬ可愛らしさが生きていた。低音が豊かなため、「ロリンズ」のジャズではベースが録音のブーミーな傾向を助長し、シンバルの芯がやや細い。サックスも存在感の強い方ではなく、ジャズ向きではなさそうである。

テクニクス SL-1200 Limited

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菅野沖彦


レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)

「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より


 しっかりした造形感を感じさせるプレーヤーである。例によってオーディオ的な耳判断では......。したがって、何を聞いても水準以上の再生音が得られるが、特別な思い入れに応える品位は持ち合わせていないようだ。そのことは冒頭の「クロイツェル・ソナタ」の重く固い雰囲気に表れる。重く固いといっても、いわゆる重厚とは違う。むしろ重硬と書くべきムードである。生命感や、肌の温度感が希薄で若干無機的なのである。そうした人間表現の機微まで求めなければ、きわめて優秀なプレーヤーだと思う。
 少なくともシェリング&ヘブラーのDUOには響きが剛直にすぎると感じた。クレーメル&アルゲリッチの新録音はどう聞こえるだろう? と思った。「トスカ」では複雑な音色へのレスポンスが鋭敏とはいえず、繊細なタッチや音触の綾までは聴かせてくれなかった。どちらかというと、マクロ的に聞こえ、独唱者やコーラスの肉声感、オーケストラの多彩な音色の変化が鮮やかではない。どこかに支配的な固有の響きが付きまとうように思われた。この辺りがもっとも難しいオーディオ機器の問題である。この感性領域が音響と音楽の狭間であろう。科学と美学の接点とするか? 谷間とするか? 魅力的なオーディオ機器足り得るか否かの分かれ道だと思う。
 ダイレクトドライブ方式とベルトドライブ方式の対立や、リジッドベース思想とフローティング思想のそれなど、多くの論議はすべてここに発するものだと筆者は考えるものである。技術論だけでは勿論のこと、趣味嗜好の主観論だけでも、解決できないオーディオ固有の興味深い世界がここにある。ロングセラーの優れたプレーヤーをベースにリミテッド・エディションとして発売された製品で、少々厳しい注文をつけすぎたようであるが10万円はお値打ちである。価格対価値では高く評価したい。今、新しく作ったら2倍の価格でも無理かも知れない。

プロジェクト PRO-JECT6.1

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菅野沖彦


レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)

「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より


 何十年もアナログディスクに親しんだ耳にとっては、アナログプレーヤーの性格は無音溝のリードインのノイズを聞くことでおおよその見当がつく。つまり、これが格好のテスト用ノイズスペクトラムとなり、カートリッジ・スタイラスからシェル、トーンアーム、ターンテーブル、モーター、駆動機構、ベース構造、フローティングによる共振状態に至るまでのトータルの音響的性格に関する豊かな情報が、瞬時に耳に伝わるものなのである。言い方を換えれば、数秒後に奏でられるであろう音楽の鳴り方が予想できるのである。人間の耳が測定器的働きをするわけであって、音楽的判断とは別物である。オーディオ的な耳と言ってよいもので、豊富な経験の上に築かれるものであろう。音楽的な耳、感性にこれがどう結びつくか? が大問題なのであろう。
 直接このプレーヤーに関することではないが、今回のテストの第1号機を聴いて久しぶりにこの測定器のスイッチがONになった。この価格としては大変上質なノイズ・スペクトラムで、バランス設計に優れている。案の定、音もいい。
「クロイツエル・ソナタ」冒頭のシェリングのヴァイオリンの重奏音は毅然たる音色だし、続くヘブラーのアコードも納得のいくヴォイシングで安定した和声的構築が快感。「トスカ」の複雑な音色へのレスポンスもなかなかいい。高域に若干にぎやかなキラつきがあるが、これが解像力を演出する効果ともなっている。
「ベラフォンテ」のライヴでもこの高域の派手さが気になった。カートリッジ程ではないにしても、プレーヤー本体も低音域だけではなく高音への影響も大きい。プレゼンスもまずまずで、モノーラルの「エラ&ルイ」を聴くと、位相特性もよさそう。低音域のコントロールは可聴帯域内に目立つブーミングを感じさせない。ジャズも全体の音触感は自然な方で、適度に締まったソリッドネスが価格以上の
品位を聴かせる秘密のようである。

テクニクス SL-1200MK3

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井上卓也


オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)

「世界の一流品 アナログプレーヤー/カートリッジ/トーンアーム篇」より


 本機は、超ロングランモデルであるとともに、全世界に輸出され、現在でも月産1万台は下らない生産量を誇る、ベストセラー中のベストセラー機だ。
 筐体構造をはじめ、ターンテーブルやトーンアームは、耐ハウリングマージンが大きく、比較的設置場所を選ばない。そして、ターンテーブル外周部の照明ランプ付ストロボスコープ、大型スライドレバーによる可変ピッチコントロール、盤面照明ランプなど、その操作性の高さは抜群である。トーンアームも、インサイドフォース・キャンセラー、アーム高さ調整機構、アームリフタ一等を備え、各調整が容易にできるため、使用するカートリッジに最適の条件が確実に設定できる点はうれしい。
 本機は、いまもって世界中のディスコなどで業務用に数多く使用されている。それだけに、長期間にわたる生産期間の中で完成度が向上するというメカニズム特有の熟成条件を完全に満たしており、外観から受ける印象よりは、はるかに高い安定度と信頼性をもっている。アナログプレーヤー全体の中でも傑出した、価格を超えた世界の一流品である。
 また、各国、各様なFCC、FTZに代表される不要輻射対策はすべてクリアーしており、電源系のノイズやTV、FMなどの高周波妨害に強いことが、その最大の特徴となっている。この妨害波に強いメリットは、東京タワーに近接して強力なTV電波が8波もある本誌試聴室における試聴でも、その真価を発揮した。バス妨害が皆無に近く、高域に薄くモヤがかかったようになる高周波妨害がなく、他の高級プレーヤーに比較しても予想を超える安定度がある。彫りの深いアナログならではの音が聴かれ、本機の実力を見事に示してくれる。
使いこなしポイント
 電波障害の少ない地域にあっても、AC電源の汚れが全国的に及んでいる現在、本機の特徴はアナログ再生の大変に強い味方となるはずだ。

EMT 927Dst

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 50号(1979年3月発行)
特集・「栄光のコンポーネントに贈るステート・オブ・ジ・アート賞より

 原形はR80と呼ばれ、なんと一九五三年に完成している。すでにフレーム(シャーシ)やターンテーブルの構造は、927と殆ど同じもので、少量(50台といわれる)が供給されたが、これをもとにEMT927シリーズは出来上った。
 ♯927は大別して三つのパートから構成される。第一に、直径16インチの超重量級ターンテーブル。これを支えるシャフトは、直径約20ミリ、長さは軸受部に入っている部分だけでも約160ミリ。材質は吟味され、高い精度の加工と入念な焼入れによって、数千時間を経ても摩耗を生じない。軸受中央部には、容量約23ccの油槽があって、シャフトの一部に油漬けになっている。
 ターンテーブルを駆動するのは、スタジオ用テープデッキのキャプスタンモーターとほぼ同等の大形シンクロナスモーター。回転中に手を触れても、僅かの振動も感知できないほどダイナミックバランスが完璧だ。この静粛かつ強力なモーターで、慣性モーメントの大きなメインターンテーブルにリムドライブで、強力な回転エネルギーを与える。
 メインターンテーブル上には、プレクシグラス(硬質プラスチック)または硬質ガラスのサブターンテーブルが載る。ガラスの載ったものが927D(ステレオ用は927Dst)。いま日本で流行のガラスターンテーブルは、EMTがとうの昔にやっている。
 プレクシグラス製のほうは、930シリーズ同様、ブレーキによってサブターンテーブルの外周をおさえてスリップさせ、クイックスタート/ストップができる。これはリモートコントロールもできる。Dタイプは、ガラスのためこのメカニズムは使えない。
 ただしDタイプは、センタースピンドルにわずかなテーパーがついている。このスピンドルはバネで支えられていて、付属のセンターウェイトを載せると、ゆるく沈み、レコードをあいだにはさむ形──というよりターンテーブル上に貼りつけたように固定する。ガラスターンテーブルとエラスティック・スピンドルはD型だけの特徴だ。
 第二の部分は、TSD15に代表されるEMTカートリッジと専用のアーム。アームをコントロールするリフターがたいへん素晴らしいメカニズムで、オイル又は空気でダンプなどしていない直結型だが、手前のレバーを上下させる指の感触と、アーム(針先)の上下動の速さとが感覚的にみごとに一致していて、あたかも針先をじかに指でつかんで操作するかのような一体感がある。
 もうすとつはオプティカル・グルーヴ・インジケーター。右手前の細いすりガラスの窓に、ミリメートルスケールの精密目盛が刻まれている。スケール上にはタテに一条の細いライトビームが焦点を結ぶ。アームに移動にともなって、この光条は右から左に移動して、針先(音溝)の位置を知らせる。このスケールはオプションで、とりつけたものを927Aと呼ぶが、後述の927Dになると、スケールは四倍に拡大され、レコードの芯ブレや溝の送りの荒さまでが精確なミリメートル値で読みとれる。この部分だけでも、ちょっとした精密光学機器だ。
 第三は、スタジオ用ターンテーブルの常識として、ライン出力まで増幅するイコライザーアンプと、その電源が内蔵されていること。電源部には、リモートコントロール用のリレーも含まれる。
 927シリーズは元来モノフォニック時代の製品だったが、のちにステレオアンプが組込まれ、927st、927Ast、927Dstの3機種が追加された。
 この927シリーズを原形として、12インチLP専用にモディファイされたのが930シリーズだが、こちらにはガラスターンテーブルはつかない。また、フレームは(一見しただけではよくわからないが)927のような金属の鋳物ではなく、ガラス繊維入りの強化プラスチックになっている。アームもちがう。これらの相違のせいか、同じTSD15をつけても、まるで格の違う音がする。私はいまだ927以上の音のするプレーヤーを知らない。
瀬川冬樹

別冊FM fan No.21(1979年3月発行)
「メーカーメイドプレイヤーに満足できない読者のために組み合わせ型プレイヤーを考える」より

 DDプレイヤーの出現で、ディスク・プレイヤーの性能に疑いを抱かなくなってしまってから久しい。多くの人たちがあの軽い30センチ径のLPを、1・5グラム前後といった超軽量の針圧でトレースするのだから、ダイレクトドライブ、クオーツロックのフォノモーター(ターンテーブル)の性能は、レコードを定速で円滑に回転させという目的からは、もう十分以上であると、大多数の人々が思い込んだのも無理もない。
 ところが誰いうとなく、いまのDDモーターの性能はほんとうにこれでよいのか、現在のディスク・プレイヤーは、レコードに刻まれた音の忠実な再現という面からみて、ほんとうにももう十分なのか、といった疑問がここ数年来投げかけられはじめた。
 たとえば、ターンテーブルとレコードのあいだにあるゴムのシート(マット)を、別のものに交換してみると音色が変わる。ヘッドシェルやアームを交換しても音が変わる。いやヘッドシェルやアームはそのままでも、接続してあるコードを交換してみるとそれでも音が変わる。フォノモーターをとりつけてあるベース(キャビネット)を補強すると音質が良くなる......。要するに、メーカーサイドであまり重視してなかった(あるいはメーカー自身では知っていても、本格的に対策を講じれば非常に高価になるため、できなかった)ような部分に、アマチュアたちが気づいてしまった。
 そして、かんじんのターンテーブルも、レコードの溝に刻まれた音のエネルギーは、想像をはるかに越えるほど強大なもので、実際に針先がレコードをトレースする状態では、力の弱いモーターでは問題が生じるらしいことも、少しずつわかりかけてきた。
 このことは、アンプやスピーカーやチューナーや、レコードの録音といった周辺の性能の向上にともなって、いっそう問題視されはじめ、昨年秋の全日本オーディオ・フェアあたりをきっかけにいくつかのメーカーが、それまではアマチュアがいわばバカげた道楽でしか作らなかったような、超ド級のプレイヤーの試作品を、それぞれに発表しはじめた。
 たまたま今回の規格で、それらの試作品あるいは製品のうちのいくつかを実際に聴いてみようということになった。中でもかなり興味を持ったのは、トリオが〝原器〟と(いささか大げさに)名づけた試作機で、これは、いまのところたった一台。重量が約150kgというものすごい作品で、同社の中野会長のお宅にあるということなので、拝聴に参上した。会長邸には、私も使って最も信頼している西独EMTのプロ用プレイヤー927Dstがあるので、比較もしやすい。そして、このほかにマイクロ、エクスクルーシヴ(パイオニア)、及びサエクを、それぞれ自宅に借りて試聴した。
 中でも、トリオの試作機とマイクロの糸ドライブ(これは市販する製品)は、音質の良さでは印象に残った。各社とも、サンプルがまだわずかしかないため、試聴の翌日にもうわが家から引き上げて行ったが、マイクロは、返すのが惜しいくらいだった。
 これらの試作品は、アンプやスピーカーの発展の影に埋もれていたプレイヤーの音質向上にいろいろな角度から光りをあてて、問題提起をしているといえる。その、プレイヤーの音質上の問題とは、どういう部分にあるのか、それを、十分とはいえないが以下に考えてみようというわけである。

 今回のこの話をするに当たって、ひとつの参考という形で、幾つかのメーカーがかなり実験的な意味も含めてトライしている、何て言ったらいいのかこういうものを一括する言葉がないが、パイオニア・エクスクルーシヴのP3、マイクロのRX5000、サエクのスチール製のターンテーブルデッキ・システム、それとトリオが原器と今のところ呼んでいる、実験的な超ど級のプレイヤーと、そして私の常用しているEMTの927といったプレイヤー・システムでいろいろなレコードを聴いてみた。とにかく同じカートリッジでも、それぞれのプレイヤー・システムに付け換えてみることによって、なんと同じレコードが非常に違ったニュアンスに聴こえたことか!......。
 ステレオサウンド48号のブラインドテストでも体験していたことではあるが、今回のようにオーディオ専業メーカーがベストを尽くしたと思われるプレイヤー・システムでも、やはり音の差が大きく出るのだということを改めて再確認した。参考という形で、たまたま家にあったパイオニアのごく標準的なセミオートのプレイヤーシステム、これは非常にコストパーフォーマンスのいい、一般愛好家用としては、非常に取り扱いのやさしい、便利のいいプレイヤーだが、これに対して、それの大体十倍前後の価格の開きがあるプレイヤーが同じカートリッジを取り付けて、本当にそれだけのことがあるのか、という興味もあったのだが、確かに出てきた音が、十倍払うだけの値打ちがあるかどうかということは、僕は個人個人の価値観の問題だと思ったが、けれども一人一人の主観だなんていうこと言うと、何か逃げてるみたいに思われるので、僕がかなり主観的な言い方をあえてここでさせていただければ......同じカートリッジをパイオニアの普及品に付けたときと、それからたとえばマイクロRX5000に付けた場合とでは、同じレコードから受ける音楽的な感銘はもう根本的に違った......。
 普通のローコスト普及型のプレイヤー、たまたまパイオニアを例に出したが、パイオニアが悪いという意味ではなしに、市販のプレイヤーというのは、みなこの水準だということをはっきりここで言っておいた方がいいと思う。そういう五万円近辺の、ごく普通のプレイヤーというのは数年前のプレイヤーからみたらモーターはきちんとしているし、回転ムラなども全くない。モーターのゴロが出るわけでもない。非常に安定にトレースする。全く見事で、これだけ聴いてればちっとも疑問は持たないだろう。ところがやはり、例えばマイクロの、これはもうアームなしで四十三万円というような、豪華なプレイヤーだけれども、これでパイオニアに付けたのと同じカートリッジ(EMT XSD15)を付け換えて、同じアンプの音量を、少しも変えずに、そのまま聴いてみると音量感が違う、それから音楽のダイナミックスが全然違う。音楽がとにかく躍動してくる。非常にやはり聴き手にインパクトを与える。それから音がとても立体的に聴こえてくる。例えば歌を聴けば、歌い手がスピーカーの間にふわっと浮び上がり、また歌い手とバンドとの距離感がよく感じとれる。いやそういう細かなことをいう前に、まず音楽がとても聴き手を楽しませて、何かもっと聴いていたい、一枚のレコードを途中でポリュームを絞るのが惜しいような、そして一枚聴き終わると、このレコードはどうだろうと、また次のレコードをどんどん間髪を入れずかけ換えたくなるという、これは実は僕の長いオーディオ体験からいって、いいオーディオ機器とそうでないものとを判別する、大切なカギにしているのだが......。
 レコードをひとつの音楽として楽しんじゃおうと、もうテストなんてやめちゃおう!。とにかくレコードを後から後から聴いてみたい、という装置があるのだ。逆に何かレコードをしばらく聴いていると、ボリュームを絞りたくなってしまう音というのがある。絞りたくならないまでも何か気持ちが弾んでこない、白けた気持ちで、耳がやれ音のバランスだとか、定位だとか、歪み感とか、ついそっちの方で聴いてしまうというような、こういう機械は決して本当の意味で優れたオーディオ装置ではないと僕は思っている。
 このことはプレイヤー以外のアンプやスピーカーにもいえて、いい音響機器というものは、レコードのボリュームを絞りたくならない、何となくもっと先を聴いてしまう、つい長い時間聴いてしまう、一枚ターンテーブルから下ろすと、またすぐ次のレコードを乗せたくなる。全然違ったレコードを後から後から思い出して、そうだあのレコードはどうだろう、あんなレコードがあった。あのレコードはどう聴こえるだろうなんて興味を尽きさせないものだ。

マイクロ RX5000
 僕は今までに長いこと、マイクロの製品をいいと思ったことは実際なかったのだが、特にこのシステムのアームのMA505は多少二、三改良されて今までの505と違うという話だったが、505というアームは、全体に何か音が軽々しく、かん高くなる傾向で、この事はアマチュアからも同じことを言われたので、僕だけの偏見ではないはずだ。
 ところがこのアームも含めて、少なくともこのプレイヤー・システム全体としては、きょう聴いたプレイヤーの中では一番音が楽しかった。音のバランスがきちんと整っているし、それからこれは今までのマイクロと違って、ターンテーブルシートを使わず、ターンテーブルの金属にじかにレコードを乗せるということになって、このやり方というのはえてしてターンテーブルの共振で弊害が出るという体験を僕はしているのだが、このプレイヤーではそんなことは感じなかった。音の彫りが深く躍動感があって、ダイナミックスが感じられて立体感が出て、何よりも音が楽しく、聴き手が引き込まれてしまうという、その意味で、僕はいいプレイヤーだなと思った。これは発表されているデータからもターンテーブルそのものの機械的な精度と強度に着目したということになっているが、やはりターンテーブルのシャフトというものは、重いターンテーブルを支える、いわば土台なので、そのシャフトをきちんとするためには、ダイレクトドライブでは絶対にだめだという信念をもって、ナント糸でドライブするという、これは本誌17号で紹介された高城さんも昔からおやりになっているが、これは高城さんだけに限らず、以前からわれわれの仲間も一時はやっていた方法なのだが。この古いというよりか、おそらく今まではメーカーだったら製品化するのをためらったような方式にトライしている。この点でも面白い。僕は見本製品を見たときに、その形はなかなかきちんとしてると思ったけれども、実際に物を手にとって聴くまでは一抹の不安を持っていたのだが、実物を見ても、なかなかこなれた形をしている。このマイクロのプレイヤーはちょっと話題になっていい製品だ。
 僕はマイクロの製品、初めていいなあという気がした。細かいことをいえば、ストロボの入れ方とか、全体のもっていき方、あるいはアームとか、いろいろな細かい部分にいくらでも注文をつけたくなるけれども、やはり注文つけたくなるというのはその製品がある程度水準に達しているから、自分としてはそれが気に入ったから、それがもっと気にいるためには、こうして欲しいみたいな注文だと思ってほしい。とにかくいいプレイヤーだ。

エクスクルーシヴ P3
 次がパイオニアというよりエクスクルーシヴのP3だが、これは今のマイクロがもちろん製品として、発表しているけれども、駆動モーターとターンテーブルも別々になっていて、しかも糸の長さによって位置を変えなくてはならないとか、かなり実験機的な様相を多分にもっているのに対して、こちらは製品として完全にこなれたものにしようという意図がうかがえた。
 エクスクルーシヴのアンプや、スピーカーと同じように非常に上質のローズウッドでキャビネットができていて、中の仕掛けはいろいろ凝っているにもかかわらず、それを表にあまり出さないである程度デザイナーの手が入って全体をできる限りこなれた形に仕上げ、そして品位を保とうという意図が十分うかがえる。それからプレイヤーのふたもかなり重いふたが付いている。全体が非常にしっかりとして大変重くできてる。
 モーターとアーム部は一体化してそれをサスペンションしているとか、インシュレーターの方法が今までと全然違うとか、とにかく非常にぜいを尽くした作り方だ。操作してみても、ながめてみてもかなりこなれている。音はマイクロとはずいぶん違ったニュアンス、というよりも僕は非常に面白いと思うのは、エクスクルーシヴのアンプ、C3とM4の組み合わせ、またはC3とM3の組み合わせなどが聴かせる一種の重厚なそして危げのない、ちょっとハラハラするような音は絶対に出さないで何となく音が一粒一粒がウェットに重い感じで、何か音一つひとつうまく湿めらせて重みをつけた......。これはエクスクルーシヴのアンプの特徴だが、このプレイヤーにもその音がある。だからその点で、僕はやはりエクスクルーシヴのアンプを作った人と同じ耳が、この音決めに参加しているのではないか、というふうに思った。特にアームがオイルダンプでダンプ量を調整できるので、ダンプをオーバーにかけると、ちょっと音に生気が失くなるがダンプ量をクリティカルに調整したときに、すばらしい音がする。でマイクロの場合は非常に音のダイナミックレンジを広げて聴かせる感じがしたのに対して、これはちょうど逆で、ダイナミックレンジをむしろ少し抑えるような、ピークがパァーッと伸びるのではなくて、そこはうまく何かリミッターを非常に上手にかけたような感じと......そういう印象を受けた。
 別な言い方すると、オーディオファンがひとつひとつの細かな、よく解像力という言葉使うが、そういう解像力というような聴き方とは逆に、音の細かなところまでも見通すというよりも、そういう聴き手の耳をそばだたせない、むしろそばだたせないところがこのプレイヤーの意図ではないか。全部音をくるみ込んで、きわどい音を出さない。だからオーディオファンよりもこれはやはり音楽ファンが何かハラハラしないで聴きたいプレイヤーが欲しいといった場合には、これは確かになかなか特徴のある製品ではないかなという気がする。ただ僕の主観を言わせていただけば、マイクロを聴いてるときは、いまも言ったように、レコード一枚一枚もっと聴きたい、もっと聴きたいという気持ちになるけれどもエクスクルーシヴだとそこまでは面白くはさせてくれない。何か聴いていてとにかくこっちが、何というか、でれっとくつろいでしまってあんまり神経質にならない、そこがこのプレイヤーのよさでもあるし、またややシビアな聴き方をしたときの物足りなさにもなるのではないか。
 しかしこのクラスのプレイヤーで、こういう見た目も含めて、きちんとまとまったプレイヤーというのはあまりない。

サエク ターンテーブルデッキ
 さて、このサエクの考え方というのは、エクスクルーシヴとは対極にあって、エクスクルーシヴができるだけ音を全体に抑えていこう、例えばアームの作り方ひとつみても、P3のアームがオイルダンプで、それからアームの後ろのウエイトを非常に柔かいサスペンションで、ダンピングをして、とにかく共振を全部ダンプしようという意図が構造にも出ているし、音にも明らかにそういうところが出ているのに対して、サエクの場合には、アーム自体の考え方が、もうサエク社の当初のアームから一貫して、ゴムのようなあいまいな材料を使わないという基本方針があって、それがついにこのターンテーブルシステムというか、これは何と呼んだらいいのか。やはりデッキか? その方向にもきちんと表われてきて鉄のブロックという非常に重く密度の高い材料をとにかくできる限りの、まあこれは機械工場で使う定盤に、ほとんど近い感じのものを真っ平らな面に仕上げて、それにモーターとアームをできるだけがっちり取り付けて、それをこの重量で支えてしまおうという考え方だ。
 サエクのアームは機械工学の専門家が設計しているアームだが、このターンテーブルデッキにもその機械屋さんの感覚というのを僕は非常に強く感じる。少なくともエクスクルーシヴが家具としても、ある程度の部屋の中に溶け込ませようという配慮があるのに対して、このサエクの方はそういうことは一切考えないで、とにかく機械設計家の感覚からいってやれるだけのことはやっていくという発想のように思えた。とにかくあいまいな共振のダンプをしないということらしい。
 あいまいな共振ではなくて、共振のあいまいなダンプをしないということ、つまり共振をダンプするのではなくて、共振が出ないようにとにかく各部をきちんと作っていって、その結果として各部はきちんとサスペンションされているというのがこのプレイヤーだ。確かにこのシステムから出てきた音というのは音の輪郭をきちんと正直に出してくれるという感じだった。ただひとつちょっと難点といえるのは、インシュレーターが上下方向の振動も十分、よく吸収するのだけれども左右方向に割に無防備なインシュレーターなので、この辺は僕はちょっと研究していただきたいなぁという注文はつけさせてもらいたい。とにかくひとつのはっきりしたポリシーが打ち立てられているのは立派だ。アーム単体は、このターンテーブルデッキに付けたのとは別に、ごく僕らが耳になじんだプレイヤーでこのアームだけ付けて聴いたことがあるが、これは僕は大変いいアームの一つだと思うし、実際いい音のするアームだ。音の輪郭ひとつひとつをあいまいなくきちんと出す、いかにも、設計方針がそのまま音になっている感じだ。とにかくサエク社の初期のアームに比べて、形が随分こなれていて、初期のものは、ちょうどこのターンテーブルデッキを見るみたいに、材質とその構造が、もうそのままむき出しになったという感じで、それはそれでひとつの機械加工ぎりぎりまで突き詰めきたというすご味を僕は感じていたが、半面ちょっときわどくてもう少しこなれた形にならないかというような面があった。しかし、この新しいアームは僕は随分形もこなれているし、とにかく初期のアームが少し共振性の音を出したのに対して、これはほとんどダンプしないで共振をきちんと抑えて、しかもダンプしたアームとは、明らかに違う、輪郭のきちんとした音を出す。ダンプ型のアームの対極にあるけれどもかなりいいアームの一つだ。ただ今回のこのプレイヤーシステムでデッキという格好で組み上がったものは、たまたまモーターにテクニクスのSP10MK2が付いてるので、聴いた感じはSP10MK2の音を、かなり僕としては感じた。やはりSP10の音というのは非常に真面目な音がする。ひとつひとつの音をとにかくきちん、きちんと出していこうという傾向があってそこをSP10を非常に好きだという人と、それから少し音が真面目すぎるのが難点で、もっと何かニュアンスとか、味があってもいいんじゃないか、という人もいる。けれどもターンテーブルにニュアンスとか味というのを求めるというのは、おそらくテクニクス側からいえば、おかしいというだろう。そういう性質のものがターンテーブルなのだから......これはこれでいいのだ。つまりその音がきちんと正直に出ていた。

EMT 927
 EMT927に関しては、何しろ僕は初めてこのプレイヤーと会って以来、ほれっ放しなものであまりあれこれと言わない方がいいのではないかと思う。それは冗談半分として、このプレイヤーというのはやはり、いま聴いたようなプレイヤーを含めて、おそらくこれから出てくるであろうプレイヤーにまで、相当その陰の影響を与えているのではないか、と思う。つまりいま頃われわれがやっと気が付いてきたターンテーブルの重さの問題、そのターンテーブルを支える軸受の問題、あるいはターンテーブルシートの問題、それからプレイヤー・システムとしての全体のバランスというか、重さのバランス、組み上げ方のバラン、操作上のバランス、そういうことが音質に影響することを、恐ろしく古い時期に気がついていて、それらをすべてやっていたプレイヤーだ。しかも現在のダイナミックレンジの広いレコードをかけてもちっとも聴感上おかしいと思わない。なにしろ音に底力が感じられる。底力というと、これは誤解されそうだが、つまり非常にエレガントな、静かな音楽をかけているとき、このプレイヤーは何にも自己主張しない、もう実にエレガントなのだが、そこに例えば急激に立ち上がる力のある打楽器の音とか、力強い楽器の音が入ってくると、ほかのプレイヤーよりも一回りも二回りも音がグンと伸び切る感じがして、それが明らかなエネルギーとして聴こえてくる。それは今聴いたこの三つと比べても十分あった。
 これは本当に不思議なのだけれども、結局いろいろ想像するに、やはりレコードを回す土台の頑丈さと、回転力の強さだろう。まずターンテーブルが非常に重くて慣性能率が大きい。メーカーではそんなことは何も発表してはいないが、本当にターンテーブルを計量して計算すれば出てくるのだろうけれども、僕はそんなことやる気は全くない。とにかく大きな重いターンテーブル、そしてけたはずれに長くて丈夫なシャフト、そしてその軸受け、それをまたけたはずれに強力な、しかもけたはずれに精密で静かなモーターで、ものすごい力でドライブしている。従って、レコードのどんな強力な音のところでも、ターンテーブルの回転が妨げられることは少しもない。それからプレイヤー・システム自体の重さも相当強力なので、インシュレーターなしで床の上にじかに置いてるのにハウリングなどは起こさない。そのことからも、これがいかに頑丈なものかわかるわけで、それとアームとカートリッジと内蔵のトランス、及びイコライザーアンプといったもののトータルの性能がいかんなく発揮されてるということで、とにかくレコードに入っている音のすご味を感じさせる。レコードってこんなすごい音が入ってるのか! と。これを聴く限りまだまだ国産の実験的なプレイヤーというのはまだやることがいっぱいあるのではないか、またそしてやることによって、またいっぱい出てくるのではないかと、思わせるほどだ。

トリオ〝原器〟
 これはトリオの実験機なのだそうだが、アームを研究中に、アーム本来の音を聴きとるプレイヤーを追究していったら、このようなものが出来上がったらしい。とにかく中野会長のお宅にうかがって、EMT TSD15カートリッジをこの原器とEMT927で聴いてみた。
 いままではEMT927がTSD15の情報量を最大限に引き出すと信じていたが、このトリオの原器からは、927からは聴こえなかった音が出てきたのには、びっくりした。
 僕はいままでTSD15がこんな風に鳴ったのを、聴いたことはないし、それはたとえば、927にチューニングされているTSD15が、トリオの原器と称されているプレイヤーに付けられたために、その弱点が補正されずに出てきた、あるいはバランスが変わって、このように聴こえた......といった種類のものでないことはたしかだ。とにかくプレイヤーとは何かを考えざるをえないシステムだった。

聴き終わって
 以上五機種のプレイヤー・システムを聴いて、ではローコストの四、五万クラスのプレイヤーと、どこが違うんだ! といわれた時に、僕はうまくいえないが......。
 要するにローコストのプレイヤーでかけたレコードが、例えば明らかになくなっちゃう音があるわけではない。低音も出てくるし、高音も出てくる、そんな素朴な問題は起きない。ただ、このローコストプレイヤーでかけたレコードをそのままEMTに乗せてプレイバックしてみると、具体的にひとつひとつの音がどうってことはないのだけれども、ローコストプレイヤーでは出なかった音が出てきたような気がしてくる。何かそのレコードの情報量が何倍にも増えたような気がする。聴こえるということは明らかに何か、言葉でうまくいえない音が確かに出てきているのだ。しかしそういう説明では説明しきれないところがあって、それは何かというと、僕がよくオーディオのビギナーの人に、オーディオの楽しみを説明するときに、レコードというものは中途半端な形で聴くと、何年か聴いてる間にレコードというのは大体こんなもんだ、オーディオというのはこんなもんだという、気持ちになることがあるのだが、ところがきょう聴いたなかでも、例えばマイクロ、あるいはEMTのプレイヤーで聴いていると、これはプレイヤーに限らず、アンプでもスピーカーでも、僕がさっきマイクロのところでちょっと言ったように、もっと聴きたい、もっと聴きたいというぐらいの気にさせるような音がしてきて、レコードの世界というのは恐ろしく底が深いなぁと思わざるをえない時がある。一枚のビニールの円盤で、人間を何か魂の底から揺すって感動させるようなオーディオ・システムが存在し、そこにオーディオの楽しみがあるのだということを僕はいってきている。
 魂の入った音楽が一枚のビニールの円盤になって、それをエレクトロニクスで復元していくと、そんなものは消えてしまうはずなのに! 大体ある時期まではレコードってのはやっばりそういうものだってあきらめがあったかもしれない。ただ要するにうんと古い時代の人はレコードをそう思ってない。SPレコードでやはり魂揺すぶられている人がいた。レコードをまともに再生すると、それは音の歪みがそんなふうに思われてたとか、歪みをちゃんとなくすとレコードってのはこんな程度の音しか出ないとか、少しさめた言い方になってくる。しかし現在のレコードには音楽の感動が絶対はいっている。しかし現在のプレイヤーの研究段階では、それがプレイヤーのどこをいじるとどうして再現できるのかということはつかめていない。またレコードに、そういう音が入っているのだということを本気で信じる人がすべてかというと、プレイヤーを作っている当事者のなかにも、そんなことを信じてない人も少なからずいる。しかしやはりレコードを聴いて、一瞬背筋にあわが立ったり、あるいは一瞬涙をこぼしてみたり、一瞬どころかそれで一晩考え込んでみたりというような体験を何度かしてみると、やはりそういう音が出るプレイヤーが本当だと思うし、あるいは本当に嘘ではなくて、そういう音が出ないプレイヤーはおれはいやだ、というようになってくる。本当でなくてもいい、つまり、例えばマイクロが出した音とEMTが出した音が、これはそれぞれの機械が作った音ですよと言われても、それは理屈家さんの話で、やはりレコード聴いてどちらがうれしくなるかといえば、やはりマイクロの音、EMTの音、がうれしくなって、もっとレコードを聴きたいという気にさせられる。僕はそういう音でなければオーディオではないと思う。オーディオであるかないかではない、どちらが正しいか、正しくないかでもない。一方にそういう音を出すプレイヤーがあり、一方にそういう音を出さないプレイヤーがあるとしたらどちらを選ぶだろうか。

EMT 930st, 928

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 EMTは Elektromesstechnik の頭文字をとったもので(最近の同社発行の資料には Elektronik, Mess-& Tonstudiotechnik となっているが)、1940年にウィルヘルム・フランツが創立した。プロフェッショナルのスタジオ用機器と測定器が主要製品で、日本のプロの間ではターンテープルよりもむしろエコーマシン(EMT140、240。鉄板共振型のリヴァブレイションユニット)の方がよく知られているほどだ。
 ドイツの有名な Schwarzwald(黒い森)に本拠を置き、スイスにも工場を持っている。スチューダーやルポックス、トーレンス等とも親戚の関係にある。
 EMT930スタジオターンテーブルの原形は25年以前に作られているが、ステレオ用の#930stになってからでもすでに10年以上を経過している。この製品の特長を列挙すると----
(1)きわめてトルクの強く、ダイナミックバランスの完璧で振動皆無といえる大型のシンクロナスモーターによって、超重量級のアルミ鋳造のターンテーブルをリムドライブで回転させている(78、45、33の3スピード)。周辺にストロボスコープを目盛ったプレクシグラス(硬質プラスチック)のサブターンテーブルと電磁ブレーキによって、クイックスタート(スイッチONから500ミリセコンド)とクイックストップの働作は明快。スタートとストップはリモートコントロールが可能で、そのためのスイッチと連動したリニアスライド型のアッテネーターが用意され、このアッテネーターをミクシングコンソールに組み込める。
(2)専用のカートリッジTSD15と、ダイナミックバランス型のアーム#929を標準装備し(アメリカ向きにカートリッジ/アームレスのUSAモデルもある)、さらに、イコライザーカープの切替えと遮断周波数を2〜20kHzまで変化できる高域フィルター(10dB/oct)を内蔵したイコライザーアンプ#155stが組み込まれ、200Ωまたは600Ωのラインアウトプットで、+17・5dB(約6V)までの出力が得られる。
(3)全体が強化プラスチックの堅固なシャーシに高い精度でマウントされている。針先を照明する強力なランプがついているが、ランプハウジングの凸レンズの巧妙な設計によって、アーム先端の可動範囲をきわめて明るく有効に照明する(専用カートリッジ・シェル先端のレンズは、このランプによって針先と音溝の観察を容易にするためのもの)。
(4)カートリッジは、モノーラルLP用のTMD25、SP用のTND65を追加できる。旧型のOFD、OFSシリーズもある。また最近になって新型のイコライザーアンプ#153stが発表され、交換が可能である。
 #928型はトーレンスの125を強力型に改造し、イコライザーアンプ、ブレーキ装置、照明ランプなどを加えた簡易型だが、操作感はトーレンスとは別もので、コンシュマー用とは明らかに一線を画している。

サンスイ SR-929

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菅野沖彦


スイングジャーナル 11月号(1976年10月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 プレイヤー・システムはレコードを演奏する装置であり、コンポーネントの中でも、きわめて重要な存在だ。それは、その微細なディスクに刻まれたミクロの振幅を拾い上げ、電気エネルギーに変換するというデリケートきわまりない作業をやってのけるのだ。この作業を直接果すのはカートリッジだが、いくら優れたカートリッジでも、トーンアームやターンテーブル、そして、それらを支えるプレイヤー・ペースが完全に補佐しない限り、その性能を発揮することは不可能である。ディスクの溝に刻まれた振動は、それ自体は、うねうね曲りくねったパターンに過ぎないが、これを回転させ、その溝に針を垂下させることによって、針先を動かす機械的エネルギーが生れる。針先の僅かな動きは全て電気エネルギーになってアンプへ送られ増幅され、スピーカーから育として再生される。こんな当り前のことを今さらあえていうのも、この当り前のことをちゃんと行なうことが、どうしてなかなか難しいからなのだ。つまり、針先に加わる機械振動が全部音になるというわけだから、レコードの溝に刻まれた波形が針先を動かす以外に、もし、なんらかのエネルギーが針先に加わることは、余計な音をスピーカーから出すことになる。たとえば、モーターの振動だ。これは絶対に禁物だ。最近のモーターは大変優秀で、静かな回転が得られるようになった。しかもDD式でモーター自体の回転を遅くすることによって振動がずっと少なくなったも回転速度も正確に、かつ滑らかに絶
えずコンスタントな速度で回らなければならない。毎分33 1/3回転といっても、1分間で33 1/3回転すればいいわけではない。一定速度で回転しなければ、音のピッチがゆすられて音程が保てないし、音質の劣化という現象につながる。これも、最近は、いろいろ優秀なものが登場した。バランスのとれた重いターンテーブルの慣性と、モーターの速度の僅かな誤差を検出して制御するサーボ機構の組合せ、しかも、モーターを回転させる発振源に水晶を使うという時計なみの精度をもったクォーツ・ロック・システムなどである。こうした新兵器はたしかにプレイヤー・システムの性能向上に役立っているが、実は、もっと、一見単純でしかも重要な問題がある。
 それは、プレイヤー・ベースの構造である。この土台がしっかりしていないと、絶対に音のいいプレイヤー・システムにはならない。しっかりしていなければならないといっでも、ここのところが難しい。前の針先の振動は、カートリッジのダンパーでは全部吸収されず、アームに伝わる。アームの共振はベースに伝わる。したがって、アームやベースの特性は必らずカートリッジの振動系と一体となって、一つの音色傾向を持つことになる。そんな馬鹿なという人がいるとしたらそれは体験不足というものだ。プレイヤー・システムは、全てが音に影響のある振動体なのだ。 シェルの指かけや、ターンテーブルのラバー・マットなどについても最近はやかましくいわれ出しているが、その割には、カートリッジ自体のボディーの材質や構造、ベースのそれと音の関係がまだ煮つめられているとはいえないようだ。ハウリングという、プレイヤー・システムの最も恐るべき現象に対してさえも、まだまだ、実際には配慮の足りないものもある。こうした背景の現時点で新しく登場したSR929は、かなり集中的に、これらプレイヤー・システムの諸問題が追求され成果々上げたものだと思う。勿論、回転系は、最新型のクォーツ・サーボ・システムのDDターンテーブル。トーンアームのナイフエッジとワンポイント・サポートはフィーリングとしてもう一つ不満だが、音質のよいものだ。そして、肝心のベースが力作である。コンクリートとウッドの二重構造で、フィニッシュが黒の艶出し。ピアノと同じ鏡面仕上げである。これは、プレイヤー・システムのもつべき条件を、物理的に、共振と制動の両面から追求し、感覚的には、ディスクの質感とぴったりくるピアノ塗装でまとめたという熱意の溢れた製品だと思う。きわめて品位の高い風格と音質を持っている。インシュレーターのバネ定数と総重量とのバランス、その制動をもう一つ自動車工学からでも学んでくれたら、完壁な線までいっただろうに。ハウリングにはもう一息の努力が欲しかった。

EMT 930st

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瀬川冬樹


月刊PLAYBOY 7月号(1975年6月発行)

「私は音の《美食家(グルマン)》だ」より


いたれりつくせりの機構と、精密なメカニズムを誇る西ドイツ製プレイヤーEMT930st。98万円。ダイレクトドライブでもなければ、ベルトドライブでもない。むかしながらのリムドライブだが、厚さ10センチ、重さ4キログラムに及ぶターンテーブルを、静かに、しかも安定した力強さで回転させる。
EMTのカートリッジも、この本体につけてこそ、その真価を発揮する。

パイオニア PL-1400

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 PL1200Aの高級版1400は、コンポーネントシステムを組む上での心臓部として信頼できる性能とメカニックなデザインの魅力をもったマニア好みの好製品だ。

BSR 710X/II

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 オートマチック・ターンテーブルとしてのキャリアがよく生きた製品で、高い仕上げと信頼性のあるメカニズムの割りに価格が安い。付属のカートリッジも信頼できる。

ビクター JL-B44

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 中級製品として高いパフォーマンスと実用性をもっている。ハウリングに強くトーンアームの感度も高い。色のフィニッシュが一般的ではないので好みの分かれるところ。

マイクロ SOLID-5

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 堅実なメカニズムをもったシステムで、フラットなデザインも美しく、信頼性が高い。DCサーボモーターのベルトドライブは下手なDDより、よほど安心できる。

EMT 930st

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 EMTのスタジオ用機器で、きわめてオーソドックスなアイドラードライブによるがっちりした製品。ターンテーブルはこうあらねばならぬといった重厚さは他に類がない。

B&O Beogram 6000

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 デンマークのB&Oならではのオリジナリティに溢れた内容と外観は、モダニズムの極といってよい魅力に富んだ製品だ。エレクトロニックコントロールの玩具である。

ヤマハ YP-800

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 現代的なすっきりしたデザインが魅力的で仕上げの精度もよくもつ喜びがある。性能も高く、附属のシュアー75EMも万人向きだ。カートリッジなしのYP800CLでもよい。

パイオニア PL-1200A

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 DDモーターを使ってローコストで出現し話題になっただけあって、巧みなシステム化が生きる実用価値の高い製品。広く一般層にすすめられる。デザインも立派に見える。

トーレンス TD125MKIIAB

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ダイナミックバランスのアームは専用シェルで互換性に難があるが優秀。モーターも実にスムーズで安定している。さすがにトーレンスと感心させられる実用性の高いもの。

デンオン DP-3700F

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 DDモーターの中では、もっとも聴感上の問題のないのが、ここで使われているDP3000だし、トーンアームDA305もシンプルで安定した動作、高い適応性の優れたもの。

デュアル 1229

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 マニュアルオート両用のシステムで、デュアルのチェンジャーの高級モデル。便利さと、高いパフォーマンスをよくバランスさせたシステムとして高く評価できる製品だ。

ソニー PS-4350

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 TTS3000以来の定評のあるサーボベルト方式のフォノモーターを採用したシステムである。各部に新材料が導入され、視覚的にも未来指向型の興味深い製品である。

パイオニア PL-1100

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 一連のパイオニアのDD型プレーヤーシステムのなかで、もっともローコスト製品である。やや外観からくる満足度は薄れたが、PL1200に匹敵する性能をかいたい。

テクニクス SL-20

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 カートリッジを含む、フル装備の製品としては、驚くほどローコストなシステムである。DD型ではないが、サーボベルト方式が採用され物理的性能の高さがポイントになる。

ソニー PS-8750

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 非常に安定度が高い水晶制御によるDDモーターは、高級DD型の理想的な姿といえよう。カーボンファイバーを多用したアームの採用とあわせて大変に興味深い製品である。

ビクター JL-B41

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 JLーB31の上級機種である。外形寸法もひとまわり大きく、トーンアーム、フォノモーター、プレーヤーベースなどは、すべて1ランク上のものを装備した堅実な中級機。

ビクター JL-B31

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 外観から受ける印象よりも実際の価格が安い、まさしくコストパフォーマンスが優れたDD型プレーヤーシステムである。定評の高いJL-B33Hの優れた後継機種と考える。

ヤマハ YP-800CL

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 一連のヤマハのオーディオコンポーネントと共通な美しいデザインにまとめ上げた機種である。YP1000にくらべ、中域の充実したアームを装備しているのが特長である。

パイオニア PL-1200A

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 永遠のベストセラー機種といっても過言ではない製品である。多角的なユーザーの要求に、このPL1200Aほど見事に答えうるプレーヤーシステムは少ない。

エンパイア 598III

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 性能を中心にすればDD型を選べばよいがプレーヤーシステムの魅力はデザイン、メカニズムにもおうところが多い。この製品の重厚な伝統的な魅力は捨てがたいところだ。

トーレンス TD125MKIIAB

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 スマートなデザインをもった名門トーレンスのマニュアル機種である。ハウリングマージンが大きく、アームベースの交換も容易で性能よりもオーディオ的感覚が魅力である。

デンオン DP-3700F

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 業務用を基盤とするデンオンならではのシステムである。高級マニュアルシステムとして性能、音質、操作性、が優れ、トータルバランスの良さでも抜群の存在である。

テクニクス SL-1300

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 DD型フルオートシステムの製品としてはデュアルに一歩先んじられたが、DD型であり、サイレントメカニズムをもつオート機構は従来のオートシステムの不信感を一掃した。

デュアル 1229

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井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 古典的なアイドラードライブのオートチェンジャーである。しかし、基本を確実に抑えた設計は予想よりも性能が高く、DD型のなかにあっても注目に値するものがある。

井上卓也


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プレーヤーシステムは、コンポーネントシステムのなかではもっとも古風であり、単純な要求に答えることが基本的に要求されることである。ターンテーブルの駆動方式は、現在DD方式が主流であり、その物理的な性能の高さは抜群である。しかし、性能が良く、音の良いプレーヤーシステムが少ない現在では、トータルバランスが優れたベルトドライブ、とくに、サーボベルトドライブのモデルに注目すべきだ。一部には、価格面を重視して選んだ機種もあるが、選出のポイントは、個性があり、ユニークな発想をもつ音の良い機種である。

テクニクス SL-1300

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菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 オートマチックターンテーブルでDDモーターという話題の製品。コンパクトにまとまりデザインも好ましい。面倒臭がりやには大変便利。かつ、かなりの性能も保証される。

菅野沖彦


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 それぞれの価格帯で、価値ある性能をもったものを選んでみた。もちろんこれ以外にもいいものはあろうし、これ以上のものもあるかもしれぬ。しかし、私がなんらかの形で、直接知っているものを選んだので、いたらぬ点は他の識者の意見を参考にしていただかねばなるまい。プレーヤーに要求される条件、トーンアームの音のよさ、つまり、トレース能力、共振点の設定などを細かく検討すると完璧なものはないし、モーターのワウ・フラッターについても、同じように難しい。総合的にこれなら価値ありと思われる判断をしてみたつもりだ。

EMT 927Dst

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 16インチディスクまでかけられる大型のスタジオプレーヤー。 硬質ガラスのターンテーブルと、小さな光のスポットで示されるアームの位置のスケール板をそなえている。

デュアル CL701

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 海外製品では日本に次いで初のダイレクトドライブ。それを最初からオートプレーヤーに仕上げるところがいかにもデュアルらしい。高価だがアームも♯1229より優秀。

瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 前衛芸術を思わせる大胆奇抜なデザインがどこまで続くかと危ぶんでいたが、アームなど根本的に改良され、一層の磨きがかかって製品化された。一台欲しい魅力を持っている。

ガラード Zero100SB

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 トラッキングエラーが殆どないというのは私にとって必ずしも重要でないが、そのためのアームのメカニズムが一種のからくり的な面白さで、演奏を眺めているだけでも楽しい。

ヤマハ YP-700C

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 DDでないかわりにオートリターンで、操作性もわりあい良い方。アームとカートリッジ(シュアーM75-6/II)のバランスもまあまあ。全体のまとめのうまさで買わせる製品。

ヤマハ YP-400

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 明るく洒落た雰囲気は、私がプレーヤーに望みたい大切な要素のひとつ。この価格で、安ものだがシュアーのカートリッジを内蔵して、オートリターンという点がメリット。

ソニー PS-2310

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 新しいシリーズがすでに発表されているが、私自身のレコードに対するイメージからは、木の質感を大切にしたこの旧製品のまとまりの方がはるかに好ましく思える。

EMT 928

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 930を小型化するため、トーレンス125をベースに駆動系を改良した製品。内装のイコライザーも930とは回路が違い、音の切れこみ等が改善されているが、とにかく高価。

B&O Beogram 1203

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 BEOGRAM4000のシリーズのデザインは抜群だが、この1203も、何とも洒落た美しい仕上げで、眺めているだけでも楽しくなる。商品としてこれは大切な要素だ。

BSR 810X/II

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 シュアーM91EDの単売価格やオートメカの確実な動作を考えあわせると、割安なオートプレーヤーといえる。操作ボタン廻りのオモチャっぽい仕上げはうれしくないが。

テクニクス SL-20

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 この価格でサーボモーターとは信じられないほど。アームとかカートリッジの性能はまあまあだが、デザインはこのクラスとしては嫌味がなく素直で、小柄に仕上っている点もいい。

EMT 930st

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 TSD15カートリッジを最も生かすプレーヤー。欧州系のスタジオ仕様なので、一般ユーザーにはむしろ使いにくい面が多いが、コンシュマー用とは桁違いの性能である。

B&O Beogram 6000

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 基本形は4002だが、ディスクリート4ch用の専用カートリッジとCD-4のディモジュレーターを内装している点が違う。これぐらい優雅な製品があれば4chも聴いてみたい。

B&O Beogram 4002

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 最初に出た4000は、標準装備のカートリッジがSP15ということでかなりクセが強かったが、改良型では、操作性も向上しカートリッジが新型になって完成度が高まった。

トーレンス TD160C

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 125のモーターをサーボではなく、シンクロモーターにしたのが160。実用性能の高さ、使いよさがこの身上。ただし横ゆれには弱いのが日本の木造向きとはいいにくい。

マイクロ DD-10

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 一見日本製であることを疑いたくなるほどの薄型プレーヤーは、なんとDDモーターなのだ。電源トランスを外部に取り出して、かってないSN比と形態が生まれた。

B&O Beogram 1203

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ヨーロッパ系の超薄型の形態を、はっきりとしたデザインにまとめ上げ、しかも性能面でも一流データを確かなメカとして収めてしまった真のグッドデザイン製品。

B&O Beogram 4002

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 今さらここで、このプレーヤーの良さをうんぬんする必要はなさそうだ。超現代的なデザインは、レコード演奏をさまたげるどころかもっともフールプルーフな完璧なもの。

ヤマハ YP-800

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 日本の今日のプレーヤーデザインのリーダーシップをとったフレッシュな外観に、DDモーターと高性能アームを組み合わせ、シュアーの標準的カートリッジさえついているのだ。

ヤマハ YP-800

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 800CLとの差額12000円。こちらはシュアーのM75EM/II(75ED/IIのメーカー納入用別製)を装備。となると、ここが、価格・性能比の考えどころというわけ。

エンパイア 598III

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 いかにも米国の豪華型プレーヤーという貫録が、なによりもこのプレーヤーの魅力だ。統一黄金仕上げで、一見武骨なアームもIII型でますますま軽針圧への志向を強める。

ビクター JL-B41

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 B31と共通のイメージのDDプレーヤー。軌道の速いことこのランクのDDではトルクも強いことは良い点。アームのできもまあまあ。ただし操作性は70点というところ。

トーレンス TD125MKIIAB

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 世界的視野でみるなら高級マニア間で、もっとも広く使われているのがこれだ。サーボモーターとベルトとの二重ターンテーブルという独創メカは、DD時代にも変ることがない。

ビクター JL-B31

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 この価格ランクのダイレクトドライブとしてはトルクも強く立上りがきわめて良い。アームやカートリッジの性能も悪くない。明るい雰囲気を持ったベストバイ製品のひとつ。

ヤマハ YP-800CL

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ヤマハのプレーヤーは原則としてシュアーを標準装備しているが、このクラスになったら、むしろ他のもっと良い製品をつけたいので、カートリッジなしの出現も歓迎というわけ。

デンオン DP-3700F

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 数あるDDプレーヤーの中で、マニアという自覚のもとに選ばれることのもっとも多いのが、このプレーヤー。ターンテーブル周辺の検出機構がマニアに対し説得力をプラス。

デンオン DP-2700

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 明るい色を使った割には何となく理詰の印象を与えたり、実寸よりも大柄にみえたり、要するに洗練という域には遠いが、価格、性能の実質的なバランスでまあまあの製品。

トーレンス TD125MKIIAB

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 型番末尾のABは、アーム及びベースの記号。ふつうSMEその他を組み合わせるが、本来装備しているアームの性能も決して悪いものでなく、リフターの扱いやすさなど特徴も多い。

デュアル 1229

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 軽針圧時代に入るや、またたく間に世界のオートチェンジャーを独占に近いほどの普及ぶりで、デュアル最高級チェンジャー。マニュアルプレーヤー以上ともいえる高い信頼性。

デンオン DP-3700F

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 モーターやアームの性能のバランス、ハウリング対策の十分なキャビネットと、特性重視型でありながら外観の統一もよく、シンプルで美しく、信頼できるプレーヤーのひとつ。

デュアル 1229

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 欧米での永いキャリアと販売実績で、最も信頼されているオートプレーヤー。いかにもドイツらしい堅実なまとまりをみせ、好みのカートリッジで確実に作動する。

テクニクス SL-1300

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 外観、仕上げその他細部に注文をつけたい部分も残っているが、オートの動作の良さ、マニュアルとオートの使い分けの自由さとフールプルーフのメカニズムの良さを評価する。

瀬川冬樹


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 漆黒の一枚の円盤は、私にとっては、買い直しの利く商品ではなく、自分にとってかけがえのない音楽の喜びをもたらしてくれる生きもののような気がしているので、それを載せるプレーヤーの良否はことに気になる存在である。見た目の洗練も大切だが、その操作性や感触の微妙な部分にまで十分に神経のゆきとどいた製品が望ましい。あらゆる意味での〝野暮〟を私は最も嫌う。その点、ここにあげる製品すべてが申し分ないとはとてもいえないが、一般に国産品は価格・性能比を追うあまりか、洒落気の乏しい製品が多いのは残念だ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プレーヤーシステムは、ある意味でシステム全体の基本的品質の支えとなり、音の入口としての重要性がいわれ評される。しかしプレーヤーとして今日望まれるのは、こうした基本的条件以上のプラスアルファ的良さも選ぶものにとって大切なファクターだろう。たとえば扱いやすさ、便利さなどがオートマチック機構やその延長ともいえるチェンジャー、さらに完全なるオートメカニズムにある。そして音楽を楽しむ者にとって使うこと自体をも楽しめるようなデザインであろう。つまり夢を託したくなるのが現代のプレーヤーシステムだ。

B&O Beogram 4000

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井上卓也


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 いわゆるヨーロッパ調デザインのオリジネーター的存在であるB&Oのオーディオ製品はオーディオに限らず世界のインダストリアルデザインに影響力をもつといわれている。ベオグラム4000は超薄型のシステムながら完全にフールプルーフな純電子的コントロールによるフルオートプレーヤー機構を備えている。メカニカルなフルオートにくらべレコードサイズの自動識別、自動変速などの新機能を備えた未来志向型の典型だ。

井上卓也


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 すべてを濃いゴールド系の色調で統一したニュートラバドール598は、旧タイプほどのアクの強さは、薄らいでいるがアメリカならではつくりだしえない雄大なスケール感をもっているのは見事というほかない。システムのトータルなバランスは、完全なハウリング対策をベースとしているだけに優れたものがある。機構的には実用上で不便に感じる面ももつが、却って自己主張の強い魅力と受取れるところがオーディオである。

ソニー PS-2410

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 レコードというデリケートな素材を載せて回すプレーヤーのフィーリングは、物心ついた年齢からレコードが身近に回っていたような育ち方をした人間にでなくてはつかめない言い表し難いある種の感性が必要だが、その点、国産のプレーヤーに、満足な製品の殆ど無いのは仕方ないことかもしれない。中ではソニーの一連の製品、ヤマハの一部の製品、パイオニアのPL41の頃の製品の一部に、多少はマシといえるものがある。

EMT 930st, 927Dst

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 やや旧式ながらヨーロッパの伝統的な機械の美しさをいまだ受け継いでいる、いわゆるスタジオ用のマシーンだが、人間と機械との関係にいかに血の通った暖かさを思わせる手触りや、取り外してみるとびっくりする分厚いターンテーブルや、ほとんど振動の無い駆動モーターのダイナミックバランスのよさなど、むろんカートリッジや内蔵のヘッドアンプの良さを含めて、ディスク・プレーヤーの王様はこれだと思わせる。

B&O Beogram 4000

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瀬川冬樹


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 近ごろ最も頭に血が上った製品で、写真よりも実物の方がいっそうチャーミングでしかも写真に写るよりも実物の方がはるかに小型でキュートである。フールプルーフのオートメカニズムやそれを誘うするワンタッチのコントロールパネルの感触や、ストレートラインのアームの動きなどまるでドリーム・デザインのようでありながら実に良く練り上げられている。蛇足ながら専用のSP15型カートリッジの音質も独特のクールな魅力。

マイクロ SOLID-5

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 プレーヤーというものが、モーターとターンテーブルとアームとケースとからではなく初めからプレーヤーとなるとき、それを実現してくれたのがソリッド5だろう。DDとかベルトとかサーボとかいう技術をプレーヤーに凝縮し、収れんするとき、このソリッド5の意気も価格も判然としよう。プレーヤーの価格とは、そうした各々のメカニズムに対するものではなく完成された製品に対するものだということを教えてくれた製品だ。

テクニクス SL-1200

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菅野沖彦


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 ユニークなメカニズムとデザイン、これは世界的に通用するオリジナリティを高く評価したいプレーヤー・システムである。個人的にはアームのデザインがどうしても嫌で、気になることが、無条件で魅力ある製品に入れることにためらいを感じさせるが、性能のいいDDターンテーブル、ダイカストによるベースでユニット化された高性能実用機器として水準を超えた日本製品だと思う。大きさもコンパクトで好ましい。

EMT 930st

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菅野沖彦


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 EMTはノイマン、スチューダーと並ぶヨーロッパのプロフェッショナル・エクイプメントメーカーである。このプレーヤーシステムも勿論プロ用。どこからみても信頼感に溢れた重厚そのものの造りとデザインだ。B&Oのベオグラム4000とは対照的な製品で、まさに、古きよきゲルマンを感じさせる。メルセデスやポルシェに相通じるこの風格は見てさわってみなければわかるまい。みるからにドイツのオーケストラの音がしそう。

B&O Beogram 4000

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菅野沖彦


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 アンデルセンの国、スカンジナビアのデンマークが生んだ、もっとも美しいオーディオ製品。北欧の現代感覚溢れたデザインは、家具や照明などのインテリアでも定評があるが、このプレーヤーシステムには、その面目躍如たるものがある。機構も、徹底的なハイ・エンジニアリング、リニア・トラッキングのインテグラル・アームを備え、完全自動のシステムで、カートリッジは同社のSP15がつく。鳴らさなくてもいい。ほしい。

マイクロ SOLID-5

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岩崎千明


スイングジャーナル 6月号(1974年5月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


「ソリッド・ファイブ」こう聞いただけでは、その名前からは到底レコード・プレイヤーの製品名とは思えまい。マイクロ精機のニュー・モデルがこの斬新な名前を冠してデビューしたのである。
 常日頃、堅実で手堅くオーソドックスな姿勢を崩すことないこのメーカーは製品のすべてが控え目なデザインと、着実な高品質ぶりに、ロング・セラーを重ね、プレイヤー部門ではトップの座を永く守り続けてきた。ありきたりながら、オーソドックスな機構は、見落されそうな内部メカニズムの細かい所にまで、良く行き届いて品質の安定した精密度の高いメカニズムが、この10年にも近い永い首位の座を支えてきたのは当然過ぎるといえよう。
 ところでこの数年のDDモーターの出現とそれに続く著しい進出普及ぶりは、プレイヤー界に新たな波となって革命といえるほどにすべてが変った。首位の座を崩されなかったマイクロ精機はプレイヤー専門メーカーとしての誇りからDDプレイヤーの製品化に当然積極的であったし、最も古くからプロフェ、シショナル・デザインの711を市場に送って時代の波に対応した。国内では充分に理解されることの少なかったこの1年間、ヨーロッパの各国で異常な程の人気を呼んで他のDDのはしりと目されている。
 さて「DDモーターは高性能」ということが常識化されると、DDモーターはあらゆる購売層にむけてあらゆる価格レベルのものが出回り、いつも繰り返されるように、今や氾濫気味でさえある。単にDDモーター付きというだけの品質を究めたとは言えない製品までもが大手を振って罷り通る。早くからDDプレイヤーを手がけてきたマイクロ精機の良心はこうした安物DDプレイヤーを商品とすることが出来なかったのだろう。そうした情況下でのマイクロ精機の回答が、この「ソリッド・ファイブ」に他ならない。名の示す通り、これは今までのこのメーカーの志向を大きく前進させて、強い意欲と決断とから培れた企画であり、それだけにオーソドックスなベルト・ドライブながら多くの点でまったく斬新なプレイヤーと言えよう。「ソリッド・ファイブ」という現代的な響きの名前。この名のいわれは、従来の観念からいうプレイヤーとそのケースとはまったく違った構造形態にあるのに違いあるまい。本来プレイヤーというものは、モーターにより駆動されるターン・テーブル、アーム、ケースの3点によって構成される。ところがこの「ソリッド・ファイブ」では、ターン・テーブルとケースはまったく一体化されていて、分離しては成りえない。もっと分り易く言うと、普通はターン・テーブルとそれを駆動するためのモーターが取り付けられている「モーター・ボード」といわれる部分は「ソリッド・ファイブ」には全く無くて、一見スマートで軽やかに見えるが中味の完全に詰まった厚さ40ミリの積層合板のケースそれ自体がモーター・ボードとなっている構造だ。この新たな構造はプレイヤー・メーカーだからこそ作り得られるメカで、完全に原点に立ち帰ってプレイヤーというものを考え直し、本来そうあるべき形態として生まれたものだ。基本的には直接サーボ・モーターによるベルト・ドライブというメカニズムで、これはマイクロのいつもながらの堅実で高い信頼性重視が採用させたものだ。同じメカながら今日のDDモーター時代に世に出る製品に相応しく、性能の上でDDモーターのそれに劣らぬデーターを示し、SN比、ワウフラッタ特性、安物DDモーターのウィーク・ポイントとされている実用時の高性能化、更に信頼性を大きく加えている。アームは優雅なほど素晴しく高級仕上げされ、高感度ながら、がっちりとして使い易いのも、いつものマイクロと同じだ。静止時のアーム・レストの高さ調整まで出来るといった細かいプラスαはここでは触れるまでもなかろう。
 名前通り現代的なフィーリングが構造にもデザインに.も、使用時にもはっきりと出ているのがこのプレイヤーの完成度の高さを示している。いつも「高品質だが商品としては80点、もう一歩完成度が欲しい」と言われ続けてきたマイクロが、初めて完成度100%のラインを一気に飛び越えた製品。それがこの現代的な高級プレイヤー、「ソリッド・ファイブ」といえるのではないだろうか。『DDを突き抜けたときの本物プレイヤー』ソリッド・ファイブ。

ガラード Zero100

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岩崎千明


ステレオサウンド 30号(1974年3月発行)

「現在のマジックボックス オートチェンジャー」より


 トラッキング・エラー補正メカニズムという、理想に大きく近づいた形を、ほぼ完全な状態で取り入れたアームを着装している点で、ガラード・ZERO100は、単に画期的な、というありきたりの冠詞では言いつくせない、品質評価され得ない、真の高品質といい得る高級オートチェンジャーである。
 それは、かつてLP出現期からステレオ初期に至る10数年間、全世界を席巻した唯一無二のオートマチック・チェンジャーであったガラードの「誇りとのれん」に示したとっておきともいえるオートチェンジャー・メカニズムの具現化商品であり、それだけにこのZERO100に賭けた老舗・ガラードの意気ごみは熱くたくましい。
 しかし、である、残念なことに、これだけの理想形ともいえるほどのアームをそなえているにもかかわらず商品としてZERO100は成功をおさめたとはいい難いのではなかろうか。
 れそはなぜか。ZERO100を手許に引き寄せ、そのスタート・スイッチを入れてみれば、誰しも大よその判断を得よう。ガラード・ZERO100のオートマチックメカニズムは、まったく従来のガラードのオートチェンジャーのメカニズムを踏襲したものであることを知るだろう。
 今や、西ドイツからデュアルという強敵をむかえる現事態を、真向からむかい合うのではなく、その存在を外しかわして、自らの技術の伝統を少しも改めようとしない頑強な英国特有のブルドック魂ともいえる精神がそこにみられる。
 オートチェンジャーは、その内側をのぞけば判るように、こまかいパーツが精密に入り組んで、容易なことで変更、改良がきかいないのは、周知の事実であり、その為に商品サイクルがマニュアルプレーヤーよりも長くなる原因ともなっている訳だ。ガラードの場合、その自信あるメカニズムに自らの信頼をおき過ぎたのではないだろうか。10数年間、大きなメカニズムの変更なしに着実にチェンジャーを世に送り出した中で、ZERO100は作られた。外観はモダンにメカニズムの枠として生れ変っているが、内側は、かつてのベストセラーだった75、85さらに95とほとんど同じチェンジャーメカニズムをもっている。
 アームの上下、および、水平運動、レコードの落下などの動作がすばやく、不安を感じさせないだろうか。
 オートチェンジャーというパートに、マニアが求めるのは、やはりオートチェンジャーとしての不安を除いてくれるような完璧な動作なのではないだろうか。
 ZERO100に採用されたトーンアームは、冒頭に述べたようにトラッキングエラー、アンチスケーティングなどに対する補正が、理想的につきつめられている。スタティックバランス型の角型パイプアームに平行したリンクアームにより、ヘッドシェルのオフセット角を変化させ、トラッキングエラーを常時ゼロに保つその設計意図は充分うなずけるし、マグネットを使ったアンチスケーティング機構も効果は大きい。
 しかし、それはいくつかの理由によって過小評価をまぬがれない。
 例えばアーム基部のアクリル枠だ。アクリルという安っぽさは、あるいはデザインによって克服され得るかもしれないが、ZERO100のせっかくのトラッキングエラー・レスというその大きな特長をアクリルという材料によって一見した印象で安っぽくしてしまう。少なくとも日本のマニアは、そうみるに違いない。
 最後にZERO100の最大の難点はレコードのサポートメカニズムとレコード落下時のレコードの踊りである。
 わずかな、とタカをくくってはならぬ。ガラードのチェンジャーが西ドイツ製チェンジャーに押され、BSRにさえ追い越されようとする最大の原因は、このたったひとつの点にかかっているのだから。

デュアル 1229

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岩崎千明


ステレオサウンド 30号(1974年3月発行)

「現在のマジックボックス オートチェンジャー」より


 デュアルのチェンジャーという呼び方をしなくても、独乙製というだけでそれが代名詞となるほどに、世界の高級ファンの間で親しまれてきた。12年前から急激にその地位を強めて、それまでの王座を誇っていたガラードの座にとって変って、全世界の市場で少なくとも独立したプレーヤーとして最強のシェアを培ってきたのは、その特有のメカニズムにある。それはガラードと違ってセンタースピンドルのみでレコードを受け、一枚ずつ落として演奏する、というメカニズムにある。今でこそ、それは当り前であるが、それまでのチェンジャーにはつきものであった、レコードを重ねのせた上におさえレバーをのせるという方式から脱却した、ただ一つの操作を最初になし遂げ、デュアルの地位を今日のものに築き上げる直接的なきっかけになっている。
 この6年来、デュアルは軽針圧カートリッジのためのチェンジャーメカニズムに力をそそぎ今や他社のごく少数のチェンジャーを除いて、デュアルのいかなる製品にも匹敵するものはない。
 昨年は同じ西ドイツの同業メーカーPE(パプチューム・エブナー)社を傘下に包含して、ますます量産体制を確立し全世界を市場にこの分野で限り知れぬ強みを発揮し、日本に続いてDDモーターを自社生産するなど、その実力はまさに世界にさきがけるチェンジャーメーカーといえよう。
 1229はデュアルの最高級機種であるが、ストロボがついた最新型1229の前身は1219であり、さらに30cm・ターンテーブルになる前の27cmの1019にさかのぼると、デュアルというより西独製プレーヤーとしての典型的パターンがここにある。
 視覚的デザイン的に、ターンテーブルギリギリのモーターボードに、やや太いストレートアームというその形は、ステレオディスクプレーヤーの原典たるノイマンのカッター付属を思わせるモニター用のディスクプレーヤーを思わせる。
 この一見武骨ながら比類ない確実さをもって、そっ気ないくらいに着実な的確さで操作をしてくれる点が、デュアルの人気は華々しくはないが、根強く着々と全世界に普及させた理由だ。
 こうしたデュアルのもうひとつの偉大な特長は、ハウリングに強いという点だ。
 かつてある雑誌の読者から、「スピーカーの上にプレーヤーを載せるとは何事ぞ」と掲載された写真を指摘されたことがあるが、私のDKには数年来、バックロードホーンのシステムの上にデュアルの古い1019が載せてあり、それは日本のファンの常識を超えて、フルボリュウムでもハウリングの気配すらない。
 アームが細く長くスマートになった1229では、1019ほどではないが、3点のスプリングによってサポートされた全体は、重量とスプリングの遮断共振点を選んであるためか、ハウリングには驚くほど強く、その点でデュアルのかくたる技術力をしらされる。
 ターンテーブルの重量はなんと3・1kgと、マニュアルプレーヤーとして世界一というトーレンスのそれに匹敵する。手もとのスウェーデンで発行されたカタログによれば(王立研究所の測定結果として)デュアルの701DDターンテーブルつきとほぼ同じSN、ワウフラッターの優秀な数字が掲げられ、それはトーレンス125に優るとはいえ、劣ることはない。
 演奏スタートから音溝に針が入るまでは、33回転のとき12秒と遅いほうではなく、それも無駄のない動きがなせるわざだろう。
 よくいわれるように、センタースピンドルからレコードが一枚ずつ落ちる場合に、レコード穴がひろがるとか、落ちるショックでお富み俗が傷むとかの説は、デュアルを使ったことがないためにでてくる言葉で、外径7mmストレートのスピンドルにそって落ちる速さはほどよく抑えられながら、きわめてスムーズでストッときまる感じだ。

BSR 810X

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岩崎千明


ステレオサウンド 30号(1974年3月発行)

「現在のマジックボックス オートチェンジャー」より


 BSRはオートチェンジャーの専門メーカーとして、ガラードと並び、世界でもっとも長いキャリアを誇りしかも現在では象徴的存在たるガラードを抜き去って、世界一の生産台数を謳い、5万の人員を擁して大規模な形態を整え、英国バーミンガムきっての企業である。

 その業績内容の優れた発展ぶりは、全英企業中にあってここ数年三位とは下ることなく、昨年は米国の音響メーカーとして意欲的なADCをも傘下に収めるという躍進は、凋落著しい英国企業中にあってひときわ目立ち輝く存在といえよう。

 かつての強力なライバルたるガラードを抜き去った底力はといえば、それはやはりオートチェンジャーのメカニズムに対する意欲的な技術と開発力そのものにあったのである。

 その優れた技術と、ハイファイ製品特有の企画性のうまさを端的に示しているのが、製品中の最高機種たる810Xである。

 全体はメカニックな端正な直線と、黒の艶消しの品の良い豪華さを強調した仕上げでまとめられ、まったくいや味なく高級感を品良くかもし出して、しかも堂々たる風格すらにじむ完成度の高いデザインだ。

 全体にかなり大きい感じを受けるものは、その長くスラリと横たわるアームのせいだろう。ヘアラインの磨き仕上げのストレートな角パイプアームは、実効長21・5cmと見た目だけでなく、全長も29・9cmとチェンジャーとしては長いものだ。

 さらにこのアームを視覚的に長く仕立てているのは、カウンター・バランス・ウェイトのスライド範囲が前後に長いためで、これは国産のサテン、オルトフォンSPUなどの自重の重いカートリッジから最近の軽いものまでを、自由に組み合わせることを意味する。

 グレースのアームでおなじみのメカで、ジャイロ機構とも呼ばれる上下左右ボールベアリングのジンバル支持マウントは、針圧調整をも内蔵して、マイクロギアーによって0gから4gまでを直読式で加圧でき、目盛は大きくみやすく実用上の狂いが少ない。このメカニズムがチェンジャー中でも、特に優れたBSRのアームのもっとも大きな特長ともいえるだろう。

 アンチ・スケーティング機構も内蔵され、より大きな力を要する楕円針の場合と丸針の場合との二重目盛になっていて、アーム基部にツマミを配置している。

 この810Xで特筆できるのは、なんといってもオートプレイの動作自体が高級プレーヤーたるにふさわしく、正確かつ優雅といえるほどにゆったりとスマートな物腰にある。

 長いアームの動作は、ひとつから次に移るくぎりの停止がピタリと決まっていて、少しも機械とかロボット的な感じを残していないことだろう。これは日本舞踏とかバレーの動作を思わすほどだ。

 それは全体の動作がゆっくりしている点にあるが、特にアームの上下の動きは独特のオイルによるもので、息をつめて操作しているという感じだ。

 だから、演奏のスタートから音溝に針先のすべり込むまでの時間はやや長いほうで、実測で18秒かかる。この悠々と、しかし正確きまわりない動作こそ、かつてのガラードに変り、BSRの高級機種たる810Xがコンシューマーレポートの最上位のひとつにランクされる理由となったのであろう。

 申し遅れたが、810Xは710と共に英国製では数少ないセンタースピンドルのみでレコード6枚を受け止める構造で、落下システムは直線的な細い外径6・6mmというスピンドル内に収められている。

 ただ演奏が終ってレコードを外そうとする時、スピンドルを外して行なうというのは、スピンドルを再び通すよりは素早くできるかもしれないが、そうではないのがわかっていながら、何かこわれないかというイメージをもたれるのではないか気になる。

岩崎千明


ステレオサウンド 30号(1974年3月発行)

「現在のマジックボックス オートチェンジャー」より


 本来なら、ここでは現在市販されている「オートチェンジャー」がいかに優れているかということをページの許す限り述べ尽くし、それらの最新型に関しては、なまじっかのマニュアル(手動式)つまり普通のプレーヤーよりも正確で細かな動作をしてくれる、ということについて高級マニアにも納得させるべきなのであろうが、あえてそういうことは避ける。
 なぜか。それは、フルオートプレーヤーと呼称を変えたりしているチェンジャーをいかに述べても、動作の細部をことこまかに納納得できるまで説明したところで、いくらでもそれらを非難し、受け入れることを頑強に拒否するきっかけや言いがかりを見つけ出すにきまっている。だからといって、現在のオーソドックスなディスクプレーヤーがどのくらいまで完全であるか、ガラードの最新型チェンジャー、「ゼロ100」のそれにすら理屈の上では大方の市販品が劣るのである。
 レコードが傷むのではないか、という器具がオートチェンジャーを拒む最大の理由の最たるものだが、それではオートチェンジャーでなければレコードは決して傷つくことなく完全を保証されるか、というとこれまた必ずしもそうとは限らない。その点のみについていえば、レコード扱う者自体のテクニックとそれ以上に、「レコードそのものをいかに意識しているか」という点にこそかかってくる。レコード即ミュージシャンの心、と断じて、決しておろそかに扱えないという音楽ファンのあり方は、大いに賞賛されるべきだし、また、その域にまで達すればチェンジャーの価値をオーディオファンとしての立場を含めて、必ずや的確に判断してくれるに相違あるまい。つまりチェンジャーの説明は少しもいらない。
 けれど、世の中さまざま、あらゆるものがすべてヴァラエティに富む現代、再生音楽そのものも広範囲に拡大しつつあるし、またその聴き方もきわめて多様化している。しかし、だからといって聴き方それ自体がいい加減になるというわけでは決してない。それどころか、自らの生活環境が、ますます広げられるにしたがい、寸時も惜しんで音楽にどっぷりとつかっていたいと乞い願うのが、音楽をいささかたりとも傷つけ、軽んじ、強いては内的に遠ざけるということに果してなるであろうか。日常の寸暇も惜しんであらゆる生活タイムに音楽をはべらすという生活。これが果して、夜のしじまのありるのを見定め、あらゆる日常の煩雑を遮断して心身を改め清めて音楽に接するというのに劣り、音楽を冒瀆しその接し方そのものが軽率であるというであろうか、断じて否である。
 かくて、音楽を片時たりとも手離すのは忍びないという願う熱烈な、いや浸りきりたいという、おそらくもっとも正常なる音楽ファンにとって、レコードをまったくを手をわずらわすことなく的確に正確に演奏してくれるというプレーヤーは、再生音楽ファンに必要な、再生テクニックの点から理想的といってもよく、オーディオメカニズムに対する初心者もしくは未熟者にとって、あるいは日常を仕事雑事で忙殺される社会の多くの人びとにとって、それはまさに「福音」以外の何ものでもないと言いきってはばからない。
 つまり、再生音楽を純粋に「音楽」そのものの形で、日常生活の中に融けこませるべき現代のマジックボックス、それがオートチェンジャーなのである。
 マジックは、それを目の当りに接し、その不思議な魔的な力を体験したものでなければ納得もしないし、認めることもできまい。しかし、それが虚妄のものでなくて確かな存在として、ひとたびその先例を受けるや、魔力はその者の観念を根底からくつがえしてしまうに違いない。
 魔法の例えは話を無形のものに変えて、本筋を不確かなものとしてしまうと思われよう。
 だが、現実にオートチェンジャーの新型製品は、間違いなく同価格のオーソドックスなプレーヤーより、多くの若いファンにとって、より確実に正確にレコードの演奏をしてくれるマジックボックスとして存在するのだ。
 若いファン、という言葉がもし気になるならば、「新しい技術や商品を認めるのに否定的でない」と言い直してもよい。
 なぜなら、オートチェンジャーはレコードプレーヤーの革命だからであるし、それを革命として認めるか否か、この点こそがオートチェンジャーのすべてを認めることといえるからだ。

 私自身の話をするのは説得力の点で大いにマイナスなのだが、オートチェンジャーを以前から長く愛用している一ファンという形で話そう。
 米国市場において、デュアルが大成功を収めるきっかけを築いたのが1019だが、その製品を米国将校の家庭でスコットのアンプやAR2aと共にみかけて、手を尽くして入手したのは9年ほど前だ。「朝起きぬけに、寝ぼけまなこでLPを楽しめる」というその年老いた空軍准将は、まさにチェンジャーの扱いやすさをズバリ表現していた。次の一枚との合い間の12秒間は、違った演奏者の音楽を続けて聴くときに貴重だ、ともいった。眼鏡なしではレーベルを読むのに苦労するという初老の彼にとって、LPを傷めることなしに1・2gの針圧でADCポイント4を音溝に乗せるのにはデュアル1019以外ないのであった。
 当時すでにハイCPのARXというベストセラーがあり、もっと高級なプレーヤーがエンパイア、トーレンスなどであるのだが、オーディオキャリアも長い彼にとっては、今やデュアルに優るものはないのだろう。
 オートチェンジャーはこわれやすいのではないだろうか、という点を気にする方がいるが、こわれやすいというよりも扱い方、操作の上での誤りが理由で、その動作がずれ、たとえばスタート点が正しい点より、わずかに内側になってしまったとか、終り溝まで達しないうちにアームが離れるとかいう原因となることがある。
 そうした狂いのもとはといえば、捜査のミス、というより最初のスタートの数秒が待ちきれずに、つい、アームに指をかけて無理な力を加えてしまうことにある。カートリッジ針先が音溝に入るまでのチェンジャーは、オーソドックス・プレーヤーと違ってスイッチを入れるやいなや表面は動かないでいても、そのターンテーブルの下では、アームの動作のためのメカが説密動作を開始している。音溝に針先の降りる十数秒間、この間はじっと待つことが必要であるし、それがチェンジャーを正しく使うために必要な知識であり、かつテクニックのすべてだ。
 この演奏開始までの十数秒間、これは、またチェンジャーのみに与えられたレコードファンの黄金の寸暇という説は、冒頭にも述べたが、本誌別冊の475頁に、黒田氏も触れて、それをこの上なく讃えておられるではないか。
 9年目の私の1019は実は三日前にアイドラーの軸中心に初めてオイルをたらした。アームの帰り動作中、しばしばキリキリと音を出し始めたからだが、注油後それすらなくなって、ターンテーブルがいくらかスタートが遅くなったような気がするだけだ。実際に使っては変らないのだが。
 さて、オートチェンジャーがいかに便利か、それによって初めて日常生活の中でハイファイ再生が、ごく容易になって、つまり特定の部屋で、特定の時間のみレコード音楽に接することから脱却する術を知って、私はさらに8年前からトーレンス224といういささか大げさな、しかしプロ仕様にも準ずるチェンジャーを、メインのシステムに加えた。さらにこれは、5年前から3年半、私のささやかなジャズファンの溜り場で、オーディオテクニックに通じるべき一人の省力化に役立って働いた。
 扱い者の不始末からロタート点での入力ONのクリックがひどくなって、オーバーホールするまでの3年間、生半可な人手よりはるかに正確に働き、その正確さはマニュアル動作の期間のほうが、レコードを傷めること、数十倍だったことからもわかる。トーレンス224う使ってそのあまりの良さに、手を尽しもう一台を予備用として入手したのだが、それが今はJBLシステムで、ひとりレコードを楽しむときの良きパッセンジャーとなっているのは、いうまでもない。ただ残念なことに224は、今トーレンスでも作っていない。
 オーディオ歴の長く、そしてしたたかなキャリアを持つベテランほど、加えて音楽を自らの時間すべてから片時も離さない音楽ファンであれば、彼のシステムのいずれかに必ずやオートチェンジャーが存在する。レコードの価値を、「量産されたるミュージシャンの魂」と理解するファンであれば、チェンジャーの存在は限りない可能性を日常生活の中に拓いてくれることを知ろう。
 最後にひとことだけ加えるならば、いかなるチェンジャーなりとも、現存するすべては「アームが音溝にすべり込んで、最後の音溝に乗るまではアームにわずかの操作力も加わることがない。その時のアームの動作状態は、マニュアルプレーヤーのアームの状態と、なんら変るものではない」ということを、チェンジャーヒステリー達ははっきり知るべきであろう。

マイクロ MR-622

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菅野沖彦


スイングジャーナル 12月号(1973年11月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 プレイヤー・システムというものはレコードをかける事を喜びとするものにとって、もっとも身近な親しみをもって接する機械であり、手で触れる事の多いものである事はいうまでもない。例えていうならば、車のステアリングでありトランスミッションのチェンジ・レバーであり、インストゥルメント・パネル(ダッシュボード)である。事好きにとって、ステアリングやインストゥルメント・パネルの感覚は無視できない重要なポイントであり、これらのデザインに夢を求め、そのメカニズムの確度に喜びを感じる人が少なくない。したがって、プレイヤー・システムというものは、レコードを演奏するという心情にぴったりしたデザインと感触をもったものであることが望ましいし、この意味では、まだ、現在の全てのプレイヤー・システムが夢を満たしてくれるものとはいい難いのである。私など、もう数十年もレコードをかけ続け、プレイヤーに親しんできているのだが、こういう意味から大きな満足を与えてくれたものは、どういうわけだか、SP時代の78回転のターンテーブルと数10グラムもあるようなピックアップのついたもの以外にはないのである。LP時代になってからは、どうも心情的にぴったりきたものにお目にかかったことがない。私が小、中学生の頃使っていた父の電蓄のプレイヤーは、きわめて仕上げのいい板に針箱やパイロット・ランプが美しくはめ込まれ、ターンテーブルには、いかにも曖かい高級感に溢れたラシャが張ってあり、その堂々としたピックアップのトーンアームは重厚性をもち美しく仕上げられた魅力溢れるものだった。もっとも、今の塩化ビニールのLPではラシャのようにゴミをすいつけるものは全く不適当だし、感度のよい軽量アームということになれば、見た目にも冷い軽々しいものにならざるを得ないのだろう。技術の進歩はどうして、こうも、機械から暖かさを奪ってしまう事になるのであろうか? 淋しい限りである。また車の話しになるが、昔の自動車の内装の暖かさと重厚さは今の車に求む得べくもないし、国鉄の車輛でも同じような傾向だ。昔の客車の趣きは、今のペラペラ・ムードの特急車輛とは比較にならないほどの味わいを持っていた。こういう車輛はヨーロッパにいけば現在でも見ることが出来るが、日本ではもう夢だ。
 話しがそれてしまったが、プレイヤー・システムというものが、その基本的な動作性能に加えて、そうした味わいを持つべきことは、今さら私が強調するまでもないと思う。しかし、正直なところ、日本の高級優秀プレイヤー・システムのどれが、そうした夢を叶えてくれるだろうか? 日本製に限らない。外国製でも、そういうものがどんどん少くなってきている。アルミとグレーとホワイトに代表される現代感覚とやらにはもう食傷気味だ。冷いオフィス調のタッチを家庭にまでもち込むのはごめんこうむりたい。
 ところで、マイクロの製品は、従来から、マイクロのセンスの悪さが幸いして、そうしたモダニズムに走る危険から逃れていた貴重なる存在である。MR411、MR611など堅実な機構と性能をもった手堅い製品がプレイヤーとして実用的価値が高く、好ましいものであったが、そのデザインは凡庸であった。しかし、中庸をいく、嫌味のなさは浅薄なモダニズムよりはるかにましだと思っていたし、MR411、611シリーズは私の好きなプレイヤーだった。MR711というDDモーターを使った製品はまったく未消化のもので、お世辞にもほめられたものではなかった。デザイン的にも田舎者が急に洒落れこんだギコチなさ丸出しであった。せっかくアイデアを使いながら、繁雑で完成度の低いシステムに止まっていたのである。しかし、このMR622はちがう。優れた性能を温厚なデザインで包み込んだ、さりげない高級品として高く買いたい。DDモーターの性能も健秀でDCサーボも安定している。ワウ・フラ、S/N共、広帯域大出力装置に充分使える優れたものだし、トーンアームの感度も大変よく、しかも実用的で広い自重範囲のカートリッジをカバーする。ただしカートリッジはいただきかねる。トレースはいいが音像がへばりつき、音楽の生命が躍動しない。当然よりよいカートリッジを併せ持って発しむ事になるだろう。仕上げもまずまず。推薦品だ。

トーレンス TD125MKIIAB

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1973年10月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 我家にはなぜかトーレンスのプレーヤーが4台ある。
 そしてもう1台はもっともふるくからわがリスニング・ルームの主役として活躍していたTD124IIだ。
 アイドラとベルトの2重ドライヴによる4kgのターンテーブルにアルミの2重ターンテーブル機構で、この軽量アルミのテーブルを浮かすことによりクイック・ストップのできるいかにもプロ用らしいメカニズムが気に入っていつも手元から手離せない。駆動源であるモーターの力をベルトによりアイードラーに伝え、それを介して重量級ターンテーブルを駆動するというメカニズムは類の少ないというよりトーレンスにあって始められた優れた機構であり、これにより、モーターの振動をおさえ高いSN比を得ることができ、高いトルクを保ったままでその高性能を得られる点、いかにも業務用機器を作って来たトーレンスならではのターンテーブルであり、TD124が全世界の高級マニアに常に愛用されトーレンス・ブランドを高級ファンの間に確固として固定した業績は誰も否定できまい。
 シンクロナス・モーターを用い電源周波数によって回転数の決る特有の性能を利用して、これに電燈線電源を接続するのではなく、新たに正確な電圧の周波数を保つ電源電圧をつくり出し、これによってシンクロナス・モーターを廻すという新しい理論にのっとったターンテーブル。それがTD125であった。
 この125のただひとつのウィーク・ポイントがモーターの回転数を変えるための、この電源の周波数切換えと速度徴調整の複雑さ等にある。これをより改良する目的でマークIIが誕生したとも言えよう。
 ターンテーブルはめったに買い換えがきかない点、誰しも同じで、一応気に入ったこの124はこの9年間主役を演じ、125が出たときも、それに置きかえることを拒んできた。
 新型125がいくらプロ用とはいえその構造が本来家庭用であるべき150と同じメカニズム、つまり2重ターンテーブルのベルト・ドライヴ機構である点とクイック・ストップのないことに不満が残ったからであった。しかし、今春のヨーロッパ紀行の経験はこうした単純な考え方を変えてしまった。
 ヨーロッパを歩きその各国のメーカーをまわり、スタジオを見、そしてディーラーのサーヴィス・セクションをのぞいた折、そのひとつとしてトーレンスTD125以外を使用しているところはないことを確かめたからである。
 もっとも信頼性の高い確実な高性能動作を常に保ってくれるというのがこのTD125に対する評価のすべてであった。
 しかし技術の進歩はターンテーブルのSNをさらに要求した。2年来、国産DDモーターがわが国のオーディオ・マニアの聞で急速にアピールしたのもその端的な表われであるし、DDモーターは国産にとどまらずデュアルからもオート・プレイヤーに着装されて商品化され日本にも入ってきた。
 世界最高と自他共に認めてきたトーレンスのターンテーブルはDD流行の波を受けてマークIIとしてマイナー・チェンジされ新たなるディーラー山水電気の手によって日本の市場に姿を呪わした。マークIlとなって電子制御回路を改め従来の複雑な回転速度調整を取り除くことにより一層の安定度と信頼性を獲得して確かさを一歩進め得たといえよう。
 ターンテーブルとアームを乗せた7kgのダイキャスト・ベースはモーターと電子制御回路を取りつけたメイン・シャーシーつまりプレイヤー・ケースからスプリングにより浮かせてモーターや外部からの振動・ショックに対して、またハウリングに強いトーレンスの特長をさらに高めより完全なものにし得たのである。
 こうした超重量級ターンテーブルにみられる立上りのおそい欠点もクラッチ機構により補い、このクラスではプロ仕様に指定されるに足るレベルにまで達し加えてベルトの僅かな伸びなども吸収してしまう工夫もなされている。さらに新たに設計されたアームは軽量針圧ながらダイナミック・バランス(スプリング加圧式)という理想的なものでオルトフォンなきあとの現在世界最高の軽針圧アームと断定してよかろう。

ヤマハ YP-500

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岩崎千明


音楽専科 11月号(1972年10月発行)

「SENKA TEST LISTENING」より


 YAMAHAのマークは、ピアノとバイクで今や世界に鳴り響いており、このマークのもとで作り出されるレジャー・プロダグツは、いずれも一流品と信頼とされ、このマークのついた商品を持つ若者に誇りを持たせる。
 ピアノと共にバイク類の高性能ぶりは業界を寡占する一方の旗頭であることを証明する。さらに最近ほオートバイに次いで海洋レジャーをも目指し、着々と成果を挙げて、若人にもてはやされているのはよく知られている通り。
 かくも好成績を挙げる中で、たったひとつ、オーディオ製品のみは、必らずしもヤマハの意図通りにはいっていない。エレクトーンの技術を駆使し活用した「ステレオ」は、市場での人気も、はかばかしいものではなかったのだ。
エレクトーンからピアノと「楽器のサウンド」を創り上げてきたヤマハの技術もこれを市場では、強力に展開し成功させてさた商業的手腕も、神通力はオーディオ・マニアには効かなかったのであった。
 それは、オーディオ・マニアの眼が、他の分野におけるそれよりも、はるかに厳しく、品質と高性能とを絶対的なものとして追い求め、それに対するメーカーは高品質と高いコスト・パーフォーマンスとをもって応えなければならず、加えて、専門メーカーという強力なライバルが少なくないからである。
 長いあいだ、ヤマハのオーディオ製品は低迷していた。それは、かつて10数年前の高品質ハイファイ製品の数々を、ヤマハ・ブランドのもとに作り上げてきたプライドをもってしても、打ち破ることのできなかった厚い壁なのである。この壁は、しかし、外部の敵ではなく、おそらくかつての誇りが、古びて通用しなくなっていることから眼をそむけてきた内る障書もあったに違いない。
 その根源は、冒頭に挙げた、他の部門での圧倒的な成功であり、その手法である。「ヤマハの創る商品が悪いわけがない」とする自信が先走ったのである。
 だから、この数年前から展開したステレオ時代のヤマハ・オーディオ製品は、あらゆる製品に独創性が盛り込まれ、ユニークな魅力を持つにも拘らず、オーディオ・ファンからうとまれ続けた。カセットの聴けるステレオを初めとし、ピアノから形どったという高能率スピーカーによる新らしい音響再生技術は、こうしてヤマハの理想通りには運ばず、じりじりと後退を余儀なくされていった。
 それはかつて、プロフェショナル志向の優秀製品を市場に送ってきたヤマハ・ブランドの落ち目であり、旧いファンにとってはこの上ない淋しさを感じさせた。
 かくも追い込まれたヤマハのオーディオ・プロダクツ。ギリギリの所で見事な逆転を演じるべきお膳立てが出来上った所で登場したスターが、前にこの欄で紹介したブックシェルフスピーカーNS630であり650である。従来の変形スピーカーに対するこだわりを捨て去って、スピーカー本来の姿に立戻った点からスタートしたヤマハ初の市販ブックシェルフは発売するやたちまち市場に注目され楽器メーカ、ーヤマハのオーディオ・プロダクツの真価を発揮して、ベスト・セラーのひとつに成長している。
 同時に話題になったのはプレイヤーである。スピーカー、チューナーと共に、音楽志向のヤマハらしい魅力が盛り込まれており、ケースの仕上げの美しさと完ぺきなことは、ピアノを手がけるメーカーにふさわしく、ローズウッドの面は鏡のようにみがき上げられている。
 プレイヤーはYP700と500の二種で、アームが大きな違いをみせるだけだ。ベルト・ドライブのターンテーブルはターンテーブル本来の目的を忠実に実現したもので、SNの優れた点と共に、ハウリングに対する強さはこのクラスの愛用者が必らずしも高い知識を持っているとは限らない点を考えると、賞賛できる大きな利点であろう。つまり、コンポーネントの利用者が増えている現状でもっとも多いトラブルは、針先がスピーカーの振動を拾うことに起因する音響きかんが原因の低音共鳴である。これは、プレイヤーとスピーカーの相対位置とか床下の頑丈さで防ぐようにいわれているが根本的にはプレイヤー自体の問題であるべきなのだ。この点を直視した優秀製品が少ない中でマイクロの製品と共に、ヤマハ・プレイヤーの他に秀でる大きな特長であろう。この問題は最近になってやっとメーカーの側でも重要問題と考えるに致ったが、これはコンポ愛用者が多くなったためでありヤマハはそれに一歩先がけているといえよう。
 ヤマハのプレイヤーの最大のポイントはそのカートリッジにある。米国シュア社のM75系の新型がついており、扱いやすい6ミルの針先が着装されている。
 M75の再生ぶりは、安定したトレースとバランスよく歪の少ない品のよい音としてマニアの間で永く定評のあるものだ。市販プレイヤーの最大の弱点は、実は付属カートリッジなのであることは常にいわれているが、ヤマハのシュアに眼をつけた企画性のうまさは驚くべきだ。
 この点だけ考えても、今回のコンポーネントに対するまともな再生への考え方を推察できるというものだ。
 セミオートマチックのアーム動作も、このクラスのプレイヤーを買うお客様の立場をよく考えて作られており、ケースの仕上げの豪華さと、シンプルでユニークなデザインのアームとターンテーブルの組合せなど心憎いほどで、ベスト・セラーにならなければうそだ。

ヤマハ YP-700

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1972年4月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ヤマハのプレイヤー、と聴いて、昔のプロフェショナル仕様のプレイヤーを思い浮かべた方がいたら、それは、本格派のベテランマニアに違いない。モノーラル時代の盛んなりし頃、たしか30年ごろだったと記憶するが、リムドライブ型フォノ・モーターと、例の長三角形のオイル・ダンプド・ワンポイントサポート方式のアームを組合せた、プレイヤーをヤマハ・ブランドで市販した。高級マニアのひとつの理想が、このプレイヤーに凝縮され息吹いていた。このプレイヤーを手がけたのは現在のティアック、東京電気音響のさらに前身であったのだが、放送局のモニタールームなどにあったレコード再生機のイメージがそのまま市販品として再現されていた。形だけではなく、その性能も、規格もプロ用に匹敬して今日において歴史に残る名作と謳われるべき高性能機種であった。
 今、ヤマハのプレイヤーを前に置いて、かつての名作を思い浮かべる時、眼の前にあるプレイヤーは、昔のものとはイメージすら全然異なるものであるのは確かだがそれはそのまま我国のハイファイの推移を具象化した形で示していることを感じた。
 かつて、ハイファイは一般の音楽ファンにとって高嶺の花でしかなかった。
 今日のように、多くのファンやマニアの間にオーディオが定着した現実と、ヤマハというブランドがオーディオ産業の奈辺に存在するかに思いをいたせば、この新型プレイヤーの外観と、志向する性能が、昔日と全く異なるのはしごく当然といえよう。購買層ファン自体が、大きく変ったのである。共通点はただひとつ、ターンテーブル上のゴムシートのパターンだけだ。
 新製品YP700は、セミ・オートマチック・プレイヤーである。つまりレコードの音溝の上にアームを位置させてプレイ・ボタンをおせば、アームは静かにレコード上におり、演奏が終われば、アームは上って静かに定位置に戻りレスト上に止る。
 この新製品がセミ・オートマチック・プレイヤーであるということで、現在のヤマハの狙っている層が、昔日のように一部の超高級マニアではなくもっと若い広い層を考えていることが判ろうというものである。
 ターンテーブルは今日では高級品としてオーソドックスなべルト・ドライブ方式で、大きなメタル・ボードの左奥にアウター・ローター型シンクロナス・モーターがあり、三角形のカバーがその位置を示している。この位置は、カートリッジのレコード面上の軌跡からもっとも遠い位置であり、この一点を見てもプレイヤーの設計にオーソドックスながら十分な配慮がなされていることが判る。事実、カートリッジ針先をモーターボードに直接のせてボリュームを上げてみてもスピーカーから洩れるモーターゴロは微少で、モーター自体からの雑音発生量の少ないのが確められる。
 これはモーターボードの厚くガッチリした重量による効果も大きく見逃せない利点だ。
 さて、このプレイヤーのウィーク・ポイントは、アームのデザインにあるようだ。使ってみて、扱いやすく、誰にでも間違えることのない優れたアームとは思うが、ただ取り柄のまったくないありきたりのパイプアームだ。シンプルというには後方のラテラル・バランサーなどがついており、多分、これが特長としたいのだろうが、このラテラルバランサーと対称的にインサイド・フォース・キャンセラーが、アーム外側につけられている。アームは、実用的であると同時に、毎日これと対決を余儀なくさせられる音楽ファンの、マニア根性を、もう少し刺激して欲しいパーソナリティーを望みたい。
 ちょっとだけ不満な点にふれたがこのプレイヤーの最大メリットが2つある。まずヤマハならではの、豪華にして精緻なローズウッドのケースの仕上げだ。圧巻というほかない。
 もうひとつの大きなプラスアルファはカートリッジにマニアの嬉しがるシュア・75タイプIIがついていることだ。タイプIIになってスッキリした音が一段と透明感を強めた傑作カートリッジが、オプションでなく、始めからついているのは、このプレイヤーの49000円という価格を考えると魅力を一段と増しているといえよう。

ソニー PS-2500

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岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1971年9月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 今や世界に冠たる日本のステレオ業界は、その隆盛ぶりを誇っているが、そのひとつの現れとして新製品の出ない月はない。毎日のように、どこかのメーカーで新製品発表会が催されている。この秋も、オーディオ・フェアを控えて、またまた多くのメーカーからどっと新製品がファンと関係者の期待と夢をになってくり出されるだろう。
 この秋の新型を予測することは難かしいことではないが、ドル・ショック以来大いにゆれ動くステレオ業界だけに、今後の新型発表のピッチはやはり遅くなることだけは避けられそうもない。今までにもしばしばみられたような、眼を惹くがための商品としてのモデル・チェンジというような姿勢から、実質的な本来の意味の新型へと、商品計画を改めるようにならざるを得ない。逆にいえば、製品の商品としての寿命は長くなるだろうから消費者としては良い商品をじっくり選んで永く愛用するという空気が強められるに違いない。メーカーにとってつらいには違いないがそれはまた好ましいことでもあるのだ。
 さて、こうした眼で今年の新型を考えてみたときに、優良製品として残る71年型オーディオ製品はいったいいくつあるだろうか。このページに採り上げられた数々は、それに対するひとつの答えといえるが、今月紹介する「ソニーPS2500」こそ今年の優秀製品として、今後永くソニー製品としてのブランドをになうべき製品と断言できよう。
 国産オーディオ製品として、ターンテーブルが海外品に劣るという考えは、この3〜4年のうちに急速に解消したが、それでも海外製品より優れた機器となると、やっと今年になって出廻ってきたテクニクスSP10ぐらいなものだ。一般的な製品としてパイオニアのMU41とか、マイクロのターンテーブルなどコストパーフォーマンスとしてはずばぬけた製品であっても、絶対的な優秀さを誇ると断定するにはいささかためらわざるを得ない。
 ソニーの新型プレイヤーは、このためらいを一挙に取除いてしまった。それはまず、ダイレクト・ドライブ機構ターンテーブルにある。このダイレクト・ドライブ機構のアイディアは、電池式かべ掛け時計の廻転機構に発する。だから、それを実際に具体化するのは、メーカーの技術力とその速度にかかっていたわけだ。
 テクニクスが他社にききがけて高級製品の製品化に成功したあと、トランジスタ技術では世界にその名を轟かすソニーがほほ同じメカニズムのターンテーブルを完成したのは、当然といえば当然であった。しかし商品としてみた場合、ソニーのダイレクト・ドライブ・ターンテーブルは、まったく強力な商品であるといえよう。その価格といい、プレーヤーに仕立て上げて同時発売という商品企画と布陣の展開のすばやさといい、ソニーのこの新製品に対す熱意と姿勢は眼をみはるほどだ。
 DD機構のこのターンテーブルは、オーディオ・メーカーの一方の雄...ソニーをしてこれだけの強力な布陣も当然といえる10年ぶりの優秀製品なのである。DD機構そのものについては、すでに優秀性を多く伝えられているので改めて記するまでもない。
 おそらく、10年後は優秀ターンテーブルといえるものは、海外製品を含めて全てこのメカニズムになってしまうに違いない。
 これを組込んだプレイヤーが、アーム付きでなんと59、800円という価格は、まったく信じ難いといえる。
 ただただ難点をいえば、このターンテーブルの驚異的なメカニズムとその性能に対し、アームは数年来の製品を改良したにとどまったものを併用している点である。改良されたとはいえ、このアームの扱い難さに不満をおばえてしまう。

マイクロ MR-611

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菅野沖彦


スイングジャーナル 6月号(1971年5月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 マイクロ精機がディスクのプレイバック・システムの専門メーカーであることはいうまでもない。しかも、専門メーカーとしては珍しく、カートリッジやトーン・アーム、フォノ・モーターという各パーツを自社の製品で固めたプレイヤー・システムを発売している。どういうわけか、グレースやオーディオ・テクニカ、そしてFRなどではプレイヤー・システムを発売していないのである。マイクロ精機のこの特色は、同社が音屋と機械屋の両方をバランスさせることに長年努力していることの証左であり、同社の意欲と熱意のほどが伺いしれる。マイクロが製造しているこれらのパーツ、システムはきわめて多く、他社ブランドの製品、輸出などを含めると、その豊かな経験が比較的新しい同社の歴史をうめるに価いするものであることがわかるだろう。大変堅実で、頑固なほど真面目な製品づくりは、ややもすれば洗練された感覚に欠ける嫌いがあり、熱意と努力とはうらはらに、もう一つすっきりしない仕上センスに私は今まで不満をいだいて来た。プレイヤー・システムはディスク・レコードへの音楽的な憧憬の心情と密接に連るものであるだけに、そのデザインや素材や加工がかもしだす味わいはオーディオ・ファンにはきわめて重要なもののように思える。したがって、個々のパーツの性能もさることながら、システムとしてまとまったものは、その雰囲気──機械美の本質を失わないデザインとメカニズムの感触、スムースネスなどにメーカー製らしいプロフェッショナルな手腕とセンスが滲み出ていなければならないと思うのだ。カートリッジ、アーム、モーター、プレイヤー、ケースをバラバラに買ってきて素人が組み立てたものと大差のないアピアランスでは困るのである。したがって、本来ならばシステムに使われているモーターなどは、それ自体がプレイヤー・ケースと一体のデザインであってしかるべきで、モーター単体として、デザインされたものをケースに取付けるという(残念ながら現代では全てのプレイヤーがそういうものばかりなのが不可思議)のでは能がない。単体としてもシステムとしても共用できるという都合から来ていることはわかるが、もう一つその枠や概念を破ったものが出てもよい。話しがやや脱線したが、今度、マイクロが発売したMR611は、従来私が持っていた不満を大巾に取り除いてくれた好製品だ。まず、その雰囲気はマニアの部屋におくにふさわしいものだという感じがもて
る。8極ヒステリシス・シンクロナス・モーター、堅実なスタティックバランスのトーン・アーム、バリアブル・フラックスの新設計のカートリッジによって構成されたこのプレイヤー・システムはローズウッド特有の重厚な化粧板によって装われている。実際に使ってみると、カートリッジは切れ込みのよい水準以上の性能を示すし、ターンテーブルも大変スムースで安定している。なによりもよいことはハウリング・マージンが大きくとれていることで、さすがにプレイヤー・システム作りの経験の豊かさが生きていると思った。他の某高級プレイヤー・システムより約6dbレベルを上げられる。せまい部屋で、大音量でジャズを聴きたい我々にとって、これは実に有難いことなのである。ワーンというハウリングに至らなくてもハウリング気味の状態が、いかに再生音を混濁させていることか。このMR611で再生すると途端に音がすっきりすると同時に低域のしまった安定感が快よかった。細い点では、アームの高さ調整機構がワンタッチで確実なことやヘッドシェルが小型ながらきわめて強度の高いこと、ストレイ・キャパシティの小さい出力コードの採用などいずれも実質的なパーフォーマンスの向上に役立つ配慮ががなされているし、付属品を入れるパーツ・ボックスも設けられている。アクリル製のダストカバーを演奏中に、その自らの重みで落下させても針飛びはなく、補強のきいたしっかりしたウッド・ベースとゴム脚の防振効果のバランスが見事である。なにかいいことずくめのようだが、先にもふれた仕上げの感覚ではもっと要求したい点もなくはない。例えばターンテーブルのラバー・マットの質感やパターンにはもっと高級感がほしい、あちらこちらにやたら入っているマイクロのブランドはいかにもパーツの寄せ集めを感じさせる。もしそうでないとしたら、一つの製品にブランド・マークが都合8つもついているのは選挙運動じゃあるまいし、あまり趣味のよいものではない。このこと自体はたいしたことではないがそういう感覚が実はオーディオ機器の本質や、マニアの趣向のデリカシーには重要な意味を持つものなのだ。メーカーも自負する〝高級マニュアル・レコード・プレイヤー〟であるだけに小言の一つもいいたくなったのである。
 しかし、このMR611にはマイクロ精機の商品感覚に一つの飛躍が感じられ、その実質の優秀性と共に大きな満足感を得ることが出来たものであることを使用感想記の結論としたい。

デュアル 1219

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岩崎千明


スイングジャーナル 2月号(1971年1月発行)

「supreme equipment 世界の名器を探る」より


 コンポーネント・ステレオが、セパレートに代って高級ステレオの代名詞となってきつつあるこの頃、レコード・プレイヤーの地位がますます高まっている。「音の入口には、できるだけ高級品を選ぶ」というのが、コンポーネント・ステレオのひとつの条件とさえなっているのはご存知の通り。
 音の品位を入口において損こなってはいくらよいアンプでも、スピーカーでも音を良くすることはできないし、レコードの寿命という点についてもレコード・プレイヤーの良否が決定してしまう。そこで高級レコード・プレイヤーとしてはオートチェンジャーは永い間敬遠されてきた。
 しかし、このデュアルの高品質チェンジャーが、この迷信をくつがえした。
 ステレオの台頭とともに軽針圧カートリッジが出現して以来、その2グラム前後という軽い針圧では、英国製のチェンジャーはどうも満足な動作を必らずしも完了してはくれず、チェンジャーに対する信頼が極端に低くなってしまったのである。そのため米国オーディオ界ではステレオの興隆とともにAR社のプレイヤーがそれまで普及していたオートチェンジャーにとって代って普及しつつあった。
 この米国内のプレイヤーの異変ともいえるチェンジャーの没落を一気に盛り返し、再びオートチェンジャーの主導権をヨーロッパにもたらしたのがこの西独デュアルの前製品1019であり、1012であった。このデュアルの傑作、1219は、70年代になってさらにメカ部を一歩前進させて、アンチスケーティング機構(インサイド・フォース・キャンセラー)と、連続演奏時にも針先とレコード面の角度ヴァーチカル・アングルが正しくセットされるようモード・セレクターがついて一枚演奏と連続演奏を切換えるように工夫された。また外観上も、アームはさらに細くいかにも軽針圧用としてデサインされ、アーム支持部もジャイロが大型になってより精度を高めたことも特筆できる。
 このデュアルのチェンジャーの最大のメリットは、針圧がスプリングによるいわゆるダイナミック・バランス型といわれている機構である点である。量産上バラツキの点で軽針圧ではむづかしいといわれるダイナミック・バランス式はオルトフォンの大型アームなどプロ用に僅か使われているにすぎないメカニカルであり、これはそったり偏心したレコードの軽針圧トレースが完全にできる利点がある。また一見なんの変哲もないこのアームは、あらゆる点でプロ用アーム並みの高性能機構と性能をそなえている点が注目すべきだ。
 ターンテーブルも3・1kgというヘヴィーウエイトのもので、完全ダイナミック・バランス調整されている高級品だ。
 このデュアルのプレイヤーに代表される小型ながらメカニカルで充実した内容のズッシリと重い機構は、大型で
ぎょうぎょうしいプレイヤーにみなれた眼からはなにか物足りないくらいだがいかにもドイツ製品にふさわしい。このデザインの原型はプロ用ノイマンのプレイヤーにオリジナルがみられることを付言しておこう。

マイクロ MR-411

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岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1969年9月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 マイクロ精機がいよいよ発売したレコード・プレイヤーMR411。「いよいよ」という言葉に、ふたつの意味がある。ひとつは永い間、ファンの間で普及価格でありながらグレードの高いプレイヤーが待たれていたことに対する「いよいよ」である。のこるもうひとつはファンの方には直接は関係ないかも知れないが、プレイヤーに進出したマイクロ精機のメーカーとしての意欲と期待である。
 最近、ステレオの進歩と、その需要層の拡大滲透が急速になされた結果、メーカーサイドの努力もあるがセパレート・ステレオ全盛期からプレイイヤー、アンプ、スピーカーの孤立パーツを組み合せるいわゆるコンポーネント・ステレオ期に大きく方向転換が行われつつある。
 そのため、アンプ、スピーカーにくらべて、レコード・プレイヤーの部門に優秀製品があまり多くはないこともファン側からは物足りなかった市場状況であった。
 そのため、依然として昔ながらのアーム、ターンテーブルを組み合せる形式を取らざるを得ない現状である。つまり専門メーカーのアームやターンテーブルの方が大メーカー・ブランドのプレイヤーにおけるアームやターンテーブルなどよりも、品質の上でより優れていると一般に信じられており、それを裏書きするかのような個々の製品が市販されているのはたしかな事実なのである。
 さて、マイクロ精機はアーム、カートリッジから出発してターンテーブルMB400とMB800をベルト・ドライブ方式のさきがけとしてティアックに続いて市販して成功を収め着々とプレイヤー部門の地盤を築き上げてきた。特に最近は輸出に加え大メーカーの下請けとしての業績も大いに上って躍進の著しいプレイヤー関係メーカーであり、この業界においての真の意味で量産体制の確立した数少ないメーカー規模をもっている。
 アームにしろ、カートリッジにしろ量産のなされ難い製品を大量生産すれば、それなりの設計技術や設備が必要であり、そのため、この業種は大きく育たないといわれてきたのをくつがえすほどに成長したのがマイクロ精機なのである。
 そして、市販のアームの中でマイクロの77シリーズがロングベストセラーを続け、さらに昨年発表したカートリッジM2100シリーズがベストセラーとなった。量産設備のととのったこのメーカーのムラのない品質に加え価格から考えられない高性能はベストセラーと始めから約束されていた。
 この高品質を結集したのが、今月発表のMR411プレイヤーなのである。
 しかも、このプレイヤーにみせるマイクロ精機の意気込みを製品の価格から推測できるのである。
 39、800円というこのプレイヤーの価格を聞いたとき、私はかたらわの編集部F君に「これはハタ迷惑の製品だネ」と話かけた。というのも同業メーカーにとって、このプレイヤーは大きな驚異になるに相連ないし今後の製品に大さな影響を与えるのが目に見えているからてある。ちょうど、昨年発表したM2100がその後の市販カートリッジの価格のオピニオンリーダーとなったのとも似ている。
 MR411のシンプルで抵抗なく受けいれられるフラットなデザインはその内部に眼を向けると裏ぶたにクロスした補強材に、メーカーの製品に対する細かい配慮を確められる。従来の薄いベニアの裏ぶたがしばしばハウリングの原因となっていたことに対する新機構だが、重いモータボードと共に注目してよい。
 最後にその再生音の品質だが、安定したトレースと素直なくせのない再生能力に定評あるM2100と77Hの組合せは「ロリンズ・オン・インパルス」の太い豪快なテナーを期待通りゆとりをもって楽々とSJ試聴室に響かせた。

デュアル 1019

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岩崎千明


スイングジャーナル 6月号(1969年5月発行)

 「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 つや消しみがきの白く光る金属肌と黒のつや消しのツートーンのガッチリしたメカニックなデザインで仕上げられたやや小ぶりのオートマチック・チェンジャー。それが、この3年間、米国ハイ・ファイ市場のプレイヤー分野をわがもの顔に独占しているDUAL1019である。
 小型回転機器はキャリアに優る欧州製品が、常に米国市場を席巻していた。永い間、英国ガラードの製品が、そうであったし、最近では、ARXAという簡易型プレイヤー以外は、このデュアルの製品だ。
 67年も68年にも込めコンシューマー・レポート誌ではレコード・チェンジャーを採り上げているが、その65年以来続けて A Best Buy に選ばれているのはDUAL1019だけである。
 デュアルの良さは、ひとくちにいって、そのメカニズムの完全さと、ユーザーの立場ですべてを考えられた扱いやすさである。メカニズムの完全さ、口でいうとやさしいが、量産製品にとってこんな大へんな話はない。ひとつだけを精密に作ることはできても同じ精密さをそろえるのはすごく高くついてしまう。
 アームのスタート点、カット点は0・1mm以下精度を要求され、量産オートチェンジャーの難点のひとつが、デュアルにはこの点でもむらは全然見当たらない。
 デュアルならではの扱いやすさ、これは圧倒的なメリットだ。米国人に受けているのも、その実質的な扱いやすさからだ。扱いやすさというのは、プレイヤーとしてチェンジャーとしての根本的なメーカーサイドの姿勢によるものだ。今までの考え方、見方からは生れてこない。そして、それを実現するためには高い精度によって裏付けされた優れた機械工作技術が条件となっている。
 その実例をコンシューマー・レポート誌は、68年8月号でこう述べている。振動回転むら、回転数の偏差はごくわずかで問題にならない......。米国の数多くのプレイヤーの中でこう評価を受けているのはARXAとDUAL1019だけである。
 その使い良さの端的な例を上げてみよう。アンプのボリュームを、しぼらずに、アームをアームレスト(受け台)に落とすとき、普通はカタンとかカチとかスピーカーから、ショック音が出るものである。アームを指でなでると、スピーカーからサーサーと雑音が出る。これは市販の最近のアームのすべてにいえる程度の差こそあれそうでないアームはまずない。ところがデュアルにはこれがない。カートリッジ・シェルをさわる、たたく、こんなことはアンプのボリュームをしぼらずには禁物だった。デュアルは雑音はほんの僅かで気になるほどではない。一見チャチな感じさえするストレート・パイプ・アームは何の変哲もないようにみえていて、ここまで考えて作られている。
 デュアルにはオートチェンジャーであるのにそこまで扱いやすさを考えている。ケースに装備されたままケースをたたいてみる。......なんていうことは、針飛びして国産品はおろか、舶来品でも禁物だ。ところがデュアルでは所ックにもびくともせずトレースも安定だ。しかもおどろくのはそのとき針圧1g。3箇所のピラミッド型の3回捲いた支えスプリングがショックを吸収している。
 ベンツを生みワーゲンを創った西独の機械工業技術が、プレイヤーに結晶した。といえそうなのがこのデュアルなのである。
 オートチェンジャーでありながら0・7gまでの針圧でトレースが可能という高級プレイヤーとしての高性能にプロ用を思わすメカニックなデザインで今後ますます愛用者も増すことであろうと思われるデュアル1019である。

デンオン DP-4500

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岩崎千明


スイングジャーナル 4月号(1969年3月発行)

 「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 音楽ファンが、レコードから音楽だけでなく、音そのもののよしあしに気付いてくると、機械の方にもこり出してくる。そして装置がステレオ・セットから、アンプ、スピーカー、プレイヤーと、独立したコンポーネントになり、さらにそれが高級化の道をたどるようになって、オーディオ・マニアと呼ばれるようになる。その辺で妥協してしまえばよいのにこのあとも時間と金をつぎこみ、泥沼に入るようになると、呼ばれているだけでなく、本当の「マニア」になってしまう。そういうマニアが極点として、放送局仕様のコンポーネントを揃えるというのはしばしばみられる行き方である。海外製の高級パーツを揃える場合と似て、ひとつの標準として、自分自身に納得させ、安心させるに足るよりどころをそなえている点が、魅力となっているのだろう。たしかに、放送というぼう大な聴き手のマスコミにおいて使われる機器であるだけに、それは最大公約数的な意味の「標準」として、またさらに信頼度と安定度とを要求される。この「標準」によって音楽を聞くことにより、ひとつの安心感のもとに音楽を楽しむことができるというものだ。
 またさらにオーディオ一辺倒の音キチでなく、本当の音楽ファンが音の良さに気付いた場合の機械に対する手段としても、放送局仕様のパーツで装置を形成するケースも少なくない。どちらの場合でも、局用仕様という点が「標準」として誰をも納得させるからであり、そういう点では正しい結論といい得る。
 オーディオ技術が進み、しだいに優れた製品が多くなり、どれを選んだらよいかという嬉しい迷いが多くなったこの頃、放送局用仕様という「スタンダード」は、かくて大きな意味を持ってきたようである。
 特にNHKにおいて使われている音楽再生装置に最近は著しくマニアの眼が向けられるようになった。三菱のダイヤトーンのスピーカーがそうであり、コロムビア・デンオンのテープ・デッキや、ここに紹介するデンオン・プレイヤーがそうである。
 デンオンは本来、NHKのスタジオ演奏用機器の設計製作だけを目的としたメーカーであった。NHKの他、官公庁の装置をわずか作るだけで、全然といってよいほど一般市販品を作っていなかった。
 ところが、コロムビアがデンオンを吸収したことが、マニアの福音となって、待ちこがれた局用仕様がマニアの手に入ることになった。
 その中でも、特に注目されているのが、DL103カートリッジである。
 ステレオ・レコード演奏用としてNHK技術研究所と、デンオンが協同開発したカートリッジである。昔モノーラル・レコード用として同様に協同開発したPUC3が米国の最高級と絶賛されたフェアチャイルドなどと互角に張り合った高性能を知る者にとって、このDL103は大きな期待を抱かせた。そしてDL103のこの上ない素直な音はどんなマニアをも納得させずにはおかなかった。装置の他の部分がよければよいほどDL103はそれにこたえて新らしい音の世界を開いてくれたのである。
 コロムビア・デンオンが、高級マニアのために企画したプレイヤーDP4500に、このDL103がつくのは当然すぎる企画だろう。そしてこのカートリッジの高性能を引出すシンプルな、しかし高精度で仕上げられたアームと、マグネフロート機構でロング・ベスト・セラーのベルト・ドライブ・ターンテーブルを組み合せたプレイヤーが、このDP4500だ。もし、予算に制限をつけず、安心して使えるプレイヤーを選ぶことを望まれたら、少しの迷いもなく薦められる、価値あるプレイヤーだろう。

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