岩崎千明の最近のブログ記事

アイワ AD-4200

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岩崎千明


週刊FM No.15(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 金属の質感を強調した仕上げの、斜めに傾斜したパネル。いわゆる平量き型のカセット・デッキの今までのイメージから一歩前進したデザインは、すでにこの面で著名な商品があるのでオリジナル・デザインとはいい難いが、使いやすさと、まとまりの良さで成功しているといってよい。このAD4200の特長をずばり表わしている点だろう。
 シンプルながら録音用とは別に再生用のヴォリュームを独立させたり、テープ・セレクターにもイコライザー、バイアスをそれぞれ3点切換で使い方に広い幅をもたせ、音質に対する配慮に気をくぼっている点は4万円台のデッキとして丁寧な処置だ。
 ドルビーオンの際の高音特性の変化に対しても親切で、新しいLHテープに対してバイアスを大きめにとることもできるのも好ましい。
 決して広帯域とまでいかないのだが、それでもカセットのこの価格帯の製品としては、ひじょうにバランスの良い音だ。スッキリとした感じの、充実感ある録音で5万台以上の平均的なものとくらべても、ひけをとるまい。
 高品質カセットにありがちな低音の力強さの不足がまったく感じられない点が、もっとも嬉しい所だ。レヴェル・メーターが少々振れすぎるぐらいに録音する方が、この面でも有利なようだ。なおエジェクトの際にマガジンが静かにせり上るのはうまい。アイワの普及型中の傑作といってよい。

パイオニア CT-8

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岩崎千明


週刊FM No.15(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 パイオニアのCT8はナンバーから推察すると当然CT9の弟分に相当するはずだが、外観からはほんの少しパネルの背が低いことを除くと弟分ではなくて凝縮型のマイナー・チェンジと思えるくらいだ。もっともこれを使ってみると、カタログ上の数字はともかく、すべての点で、まったく兄貴格と同じであることも知らされる。つまり、CT8は実質的性能の高い割安な最高級品といえる。
 軽く、しかも確実なタッチの操作レバー。豪華なレヴェル・メーター。扱いやすいスウィッチのテープ・セレクター、さらに例によって見やすく装填しやすい垂直型のマガジン。LEDのピーク・インジケーターも兼備する。扱いやすさと高級感に加えて、CT8の耳当りの良い音も、このデッキの特筆できる魅力だろう。
 カセットらしからぬ広帯域感。単なるフェライト・ヘッドなどではなく回路を含めての設計のうまさだろう。低音の豊かさがよく出てるし、聴感的にヒスの少ないのも使いやすさに大きなプラスをもたらしているだろう。
 ドルピーの際のヒスの低減で、カセットらしさはまったくなくて、実用上、オープン・リールにもくらべられ得るほどだ。カウンター・ゼロを記憶するメモリーは扱いやすく初心者にも容易に扱いこなせるのも新しい特長だ。

ビクター JA-S41

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岩崎千明


週刊FM No15(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 ステレオの左右クロストークを改善するのに左右の電源トランスを分けるという従来の手段に対して、電流、電圧変動の大きくなる出力段を別電源とする新しいテクニックを採用して登場したビクターの新しいこのアンプは、その点、大成功を得たといってよい。少なくとも今、市場にある左右2電源方式にくらべて明らかに優れている。フォノ入力を片側外し普通の演奏状態で反村側のスピーカー端子のスピーカーを外して8Ωの抵抗を接いでおいて、フォノ入力のない側のスピーカーからの洩れを確かめればクロストークは誰にでも容易に確認できる。このように実際的に優れたステレオ・アンプとしての基本性能をそなえたS41は、クロストークだけでなく、パワーとか歪みにおいても今までのアンプの常識を完全に乗り越えた性能を持っている最新型にふさわしい強力アンプだ。
 さて、そのサウンドは中音の確かなる充実感に加えて、ややきらびやかで輝かしい広帯域感。それを支える力あふれる低音の迫力。重低域までよく延びた豊かな響きにこのアンプの実力の底力を知ることができる。ステレオ感の拡がりの十分な音場再生は、ノイズの少なささえもかもし出している。高域までクロストークの良い特長がホワイト・ノイズの音像を拡散しているためだろう。
 ロー・レヴェルのこまやかな音の美しさはビクターのアンプの共通的特長だが、この点でもS41は一段と優れ、新型にふさわしい。

パイオニア C-21, M-22

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岩崎千明


ジャズランド 7月号(1976年6月発行)


 高級パワーアンフが海外製、国産合わせて40機種あまりも市場にあって、互いにその高性能ぶりを競いあっている。そのメーカーにとって最高の位置に存在すべきより抜きの製品の中で、製品としてもっとも成功したのが、パイオニアの特級ブランド「エクスクルーシヴ」の名を冠したM4であることは、よく知られる。
 Aクラス・アンプM4は、海外製のもっとも優れた製品と比較しても、なおそれをしのぐ。アンプをM4に換えれば、音質の差として、聴くものにはっきりと違いを感じとることができるは無論だが、それが品の良いスッキリした響きとして誰でもが質的な向上を知らされるはずだ。
 ただM4はあまりにも高価だ。35万という価格は一般的オーディオ・ファンにとって決して容易ではない。50/50ワットの規格出力のことになると、単位出力当り、世界でもっとも高価なアンプといってよいが、最高を望むにはこれくらいの出費を覚悟しなければならないのだろうか。M4を作った当事者たるパイオニアがそのひとつの解答を与えてくれた。
 Aクラス・アンプM22がその答えだ。価格12万、出力30/30ワットで、M4と変わらぬ高品質のサウンドを与えられたアンプだ。M4の3分の1の価格で6割の出力となると、ざっと計算して、このM22はM4に較べて2倍の価値を持つことになる。
 M4を欲しくても持ってなかったファンがM22に期待し注目するのも当然だといえよう。
 M4が大型のアンプ・ケースに収められたごく標準的な箱型であるのに対し、このM22は昔ながらの、パワーアンプ然として、平なシャーシーの上に中央にトランスを、左右に大きな放熱器を配した、マニアの自作するアンプのようだが、全体はかなり大型でありながら、ごく薄く、いかにも現代的な製品だ。鋳物で造られた軽金属のヒートシンカーはシャーシー上の2分の1を占めて、M22の外観の大きな特徴をなしている。
 Aクラス・アンプとしての動作が、あらゆる意味でM4の特長であるのと同様に、M22においても「Aクラス・アンプである」ということがそのすべてだ。
 Aクラス動作の大きな特徴は、極めて大きな電流をパワー・トランジスタに流すということによってもたらされる高熱発生を前提とすることである。M4の場合は低速回転の放熱ファンによってこれに対処したが、コストを抑えたM22では先程述べた大型の放熱器がこれを受けもつ。つまりM22の特長のすべては外観同様、この放熱器に象徴されるともいえそうだ。
 Aクラス・アンプがオーディオ再生になぜこれほどの優秀性を発揮するかの解析は難しく、現代の技術をもってしても詳かではない。しかし、Aクラス・アンプで優れた設計をなされたアンプは、間違いなくベストな再生を約束するはずだ。
 もし本当にクォリティ本位の選択をするなを、M4あるいはその弟分たるM22を選ぶのに何のためらいもあるはずがない。

 M22とペアになるべきプリアンプがC21だ。プリアンプといっても、それは従来の常識的なプリアンプではなくて、その一部のフォノ・イコライザー回路を独立させ、それに音量調節用ボリューム回路を加えたものだ。だから回路的にトーンコントロールもなく極めてシンプルであり、従ってそれを収めるべきスペースも大きくとる必要はないし、そのフロント・パネルはつまみが極端に少いので小さい面積で済む。
 そうしたC21の基本的特長をズバリ、全体のプロポーションで表明せんとするかの如く、C21はごく薄い形にまとめられている。この特長的な薄型は、だから商品アピールというよりも、本質的な内容を象徴するわけなのだ。
 なぜ、こうした単純化を極度に推進したかというと、「入力信号の純粋性を大切にする」ためだ。今日のように高級アンプはすべての面で充実させようという「万能志向」が、実はその本質を見落してしまう根拠になっていたが、この事実はもう早くから気付いていて、この三年来、高級プリアンプにおいて単純化を求める模索が続けられ、例えば海外製の一部、マークレビンソンのプリアンプなどに成果がみられた。
 パイオニアC21もこうした点を追求して得られたひとつの結果なのである。海外製の価格の上では10倍近い製品と較べても、SNの点ではるかに勝るというべき驚くべきフリアンプがこのC21だ。
 C21はプリアンプの常識的機能をすべて取り去ったマイナスを考慮したとしても、より大きい成果をも生みだした。それは極限まで高められたSN、驚異的低歪率、信号回路の単純化による波形的損失の徹底的な追放等々である。しかし、こうしたデータの上に認められる向上だけを認識するのでは、C21の真の素晴しさを知るには物足りない。
 やはり、C21の良さはそれを優れたパーツで構成されたオーディオ・システムの中に置いて、音楽を演奏したときにはじめてはっきりと体験することができよう。
 それ以外の方法は目下ないのである。

オーレックス FM-2000

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岩崎千明


週刊FM No.8(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 アンテナなんていうものは特殊なんで今まで専門も専門、アンテナだけ作ってるメーカーの独占商品だと思ってたらなんと東芝が出したってわけ。なんでまた、というなかれキミ。オーレックスのチューナーは、国内製品はおろか世界中を見渡してもちょっと例の少ないシンセサイザー・チューナー。それも周波数デジタル標示だよ。スゴイネ。これだけのチューナーを出してりゃどんなアンテナをつけたとき本領を発揮してくれるんだい、とユーザーからいわれるにきまってる。だからFM2000なのだ。つまり、このアンテナをつけさえすれば、スゴイチューナーが一層スゴイ性能を出せるっていうものさ。
 しかし、FM2000、いままでのがらばかり馬鹿でかいFMアンテナとは違って、キミの手を拡げた時よりもひとまわり小さいくらいだ。だからといって、テレビ用を代用してるのと違って、ちゃんとしたFM専用なのである。つまりFMバンドの全域に対してほぼ同じような感度を得られるように作られている。確実にひとまわりは小さくまとめてあって、全体がすごく軽い。だから今までのように大げさにならず、どんな場所にも取り付けられるっていうわけだ。ちょっとやってみたけど、天井近くブームの一方を片持ち式に取り付けても軽いからビクともしない。チューナー付属のフィーダー・アンテナの時に苦労するステレオ放送でのノイズっぽさが驚くほど直る。

トリオ KT-7700

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岩崎千明


週刊FM No.8(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 昔からチューナーはトリオっていわれてきたんだから、今度の高級品KT7700、悪かろうわけないよってなことをつぶやきながら、ケースから取り出して机の上にどんと置いて、やっぱりため息が出ちゃう。この新型は、とてもいいのだ。無駄な飾り気や視覚的夾雑物がない。つまり、あくまで機能本位でまとめられたパネルが実にすばらしく、さすがにチューナーのベテラン、トリオの最新型といえるほど外観的デサインの完成度の高さ。こりゃきっといい音がするぞと期待。プリ・アンプにリード線をつなぎ、付属のフィーダー・アンテナをちょいとつけて......またぴっくり。感度の高さ、調節のしやすさ。ダイアル・ツマミのタッチなど「いかにも高級チューナーの手ざわりが、スムースな回転とダイアル指針のすべるような働きではっきりと知ることができる。しかもメーターの針の動きがアンテナの高さに応じるようにシグナル・メーターが振れ、センター・スケールの同調メーターも、中点を中心としアンテナ入力に応じて左右に大きく振れるので、正しい中点を確実に探し出すことができるのだ。ダイアル目盛が長く、しかも等分目盛なので同調点を正確に求めることができる。
 かなりほめてしまったがまだ足りないくらいなのが「音」だ。力強くぐいぐいと量感もあって、しかも鮮明さを溢れるほど感じさせる。

ソニー TC-2140

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岩崎千明


週刊FM No.8(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 パッケージから出したTC2140、そのやや小ぶりの大きさからも間違いなく普及型。だけど、それが実にいいんだなあ。本当。いや味がないどころか、とってもスッキリしていて安っぼいところが全然ないし、よくありがちな飾りだてがなくて、すごく好感を持てる。つまりセンスがいいのだっていうわけ。
 これだけ洗練されてると、もう中味の方だって大体の所いい線いってるものだ。早速つないで音を出してみようってわけで深夜のFM、弦楽器をやってたのだが、ちょっとびっくりしたのだ。弦てやつは割にワウ・フラッターが出やすいのに全然だ。弦の高音域は歪みをもろに出しやすいというのに、歪みっぽさや汚れた感じがないのだ。ピアノの響きにも少しのふるえもないし、タッチのビリつきもない。
 念のためモニター・スウィッチを切換えてみて直接放送とテープに録音したのとを瞬間切換で聴きくらべた。ここでもう1度驚いたのだ。これ本当に普及型なんだろうね、なに39、800円? へえ本当? だってこのスッキリした音、これで録音した音だよ、ほら放送でもあんまり変わりやしないじゃない? でもなんとなく放送の方が低音ののぴがいいかな。それではテープを高級なテュアドに変えてみよう。あっ俄然すごい。低音の量感はぐいと溢れる変わりよう。ね、切換えても放送直接と録音とどっちだか判らないくらい。驚いた。

ソニー PS-4300

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岩崎千明


週刊FM No.10(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 かつてサーボモーターで圧倒的勝利を収めたソニーがクオーツロック以来、昔の実績をとり戻さんと強力なプレイヤーをデビューさせた。PS4300はDDモーターをベースにしたフルオートマチック・プレイヤーだ。現代的な高級プレイヤーの条件ともいえる軽針圧はもはや平均的な人間の指先の感覚では扱い切れずこの数年、各社からの新型の中心はフルオート全盛となった。ソニーお得意のエレクトロニクスによるサーボがゆきとどいていて、操作ボタンさえ触れるだけのワンタッチ・エレクトロ・スウィッチ。もっともこの羽根タッチそのものが必ずしも良いことばかりではなくて、かえって動作の不確実さを招きかねないのは皮肉。ボード上面でなくケースの前に位置させて誤タッチを避けているのだが、馴れないうちはそれでも操作させる意志がなくても触れてしまうのは赤い小さなランプがちらちらとつくせいかしら。この辺が狙ってるはずのイメージをぶちこわしてるのでは......。動作はまず満点に近い正確さ。ストップさせてから実際動作にちょっと間がありすぎる気がするが、手で直接アームを動かしてもメカとしては何ら差支えない点はいい。できれば5万台ともなったら、4万円と違い実用性能本位1点ばりでなく明らかな高級感が欲しいけど無理かな。アームはまあまあ、カートリッジは使いやすいがこれも価格帯相応の程度。

サテン M-18BX

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岩崎千明


週刊FM No.10(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 今まで、何回となく、こんなによくなった、というメーカーの言葉ほどには変わりばえのなかったサテンのMC型。扱いやすさの点で確かに11型になったとき格段の向上をみせて以来、もっとも大きく音の良さを獲得したのがこのM18ではないだろうか。

 少なくとも、豊かさという点で、どうしても突破れなかったサウンドはM17あたりから、かなりはっきりした変わり方で、今までにない「大らかさ」を音楽の中に加えてきている。そして、サテンでは初めてベリリウム・カンチレバーを作ったのがこのM18BX。もともと、くっきりした繊細感という点では、ひ弱な繊細感の多い国産品の中で目立った存在だったサテンだが、中域から低域にかけての力強さが、はっきりと感じられるようになったのははじめてだ。特にBXはその力強さの点では、かつてないほどの迫力を発揮してくれるのがいい。サテンの場合、針圧の許容範囲の点でクリティカルなのが弱点ともいえるが、それも次第に確実に改良されて向上を重ねてきたのも見逃せない。
 カートリッジ自体の重量の重いのは相変わらずだが、あまり極端な軽針圧用アームさえ避ければ十分に使える。ただこれに変えると必ずアームの水平バランスをとり直さねばならない手間が加わる。しかしMC型としては驚くほど出力が大きく、トランスやヘッド・アンプは不要なので手軽だ。

テクニクス RS-678U

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岩崎千明


週刊FM No.10(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 試聴用に送られて来たというのに、ケースのふたをあけて、黒いパネルに例のハンドルのついたパネルが、ちらっと顔を出すと胸がドキドキして来るくらいだから、これを買ったのなら、そして自分でフタを開けたのなら、さぞかし、どんなにか、うれしいだろう。このふくらみすぎる位の期待を、少しも裏切らずに十分の中味と、聴きごたえのある、カセットらしからぬ音を出してくれるのが、このRS678Uだ。
 操作ボタンが、ありきたりの配置に変わって、だんぜん使いやすく、ビギナーにもマゴつかせない。タッチのスムースさも文句ない。カセット・ハウジングにねかせて着装するテクニクスのオリジナル方式の手なれたためか、ミラーの角度もいいせいか、走行状態もよくわかる。
 たいへんにスッキリと澄んだ音で、細やかな音のディテールも良く出るし、なによりも広帯域で、おそらく誰もが、だまって聴かせたらカセットとは気がつくまい。中低域の厚みがちょっぴり加われば、オープン・リールにも匹敵するだろう。しかし、これはアンプのラウドネスかトーン・コントロールで補正すればすむ問題だ。パネル・デザインのあつかいやすい配置と、操作類のまとめ方、ピーク切換もできるメーターも、小さいながら見やすく.センスのいいまとめ方だ。

岩崎千明


電波科学 12月号(1976年11月発行)


 本誌の読者のように自らの手によってアンプを自作することが苦労でないオーディオマニアにとっては、一台20万、30万円という管球式アンプ、その価値をいったいどこに認めるのかいぶかしいに違いない。「この程度の物なら外観こそかまわなければ、おそらく半分の費用で作れることだろうに」というのが偽らざる気持だろう。
 ではいったいメーカーが手作り同様に手を掛け時間を掛け、少数、作り上げるこれらのアンプの「製品」の価値は一体どこにあるのだろうか。この答えの端的なあらわれが最近米国のオーディオファンの間で、こうした高価な管球式アンプが見なおされ、関心を高められている、という形ではっきり示されてきていることからもわかる。①希少価値 ②手作りによる限定生産 ③量産品、つまりトランジスタアンプに対するアンチテーゼ 以上のようなはっきりした理由から、この一年間、アメリカにおいても、日本の一部のマニアだけがひっそりと使っていた真空管アンプの良さが再認識され急激に復活している。この傾向は、再度日本のオーディオ高級ファンに逆輸入されつつある。
 ところで、これら最新の真空管アンプは、決して昔のままではなく、回路を確かめ、回路定数を調べれば、明らかなように、トラジジスタによって培われた電子回路技術が、大幅に取入れられて、電気的性能は良くなっている。周波数帯域にしても、入出力特性にしても、あるいはひずみ率特性にしても、最大出力帯域幅と、どれをとってみてもひとケタかふたケタは良くなっているし、位相特性を計れば、その基本特性の良さも、もっと良くなっていることが確められるのではある。
 さて、加うるに、もうひとつの大きな製品としての価値がある。自作アンプでは、つい、ないがしろにしてしまいがちなパネル板の厚さとか、内部構造の貧弱さとか、あるいはプリント基板の相対位置とか、配線の引き回しとか。つまりもろもろの目につき難くい、おろそかにしやすい、すべての付帯事項と思われがちなポイントで、これは実は、高級機種においては、けっして2次的なものではなくて、信頼性に直接かかわるだけでなく、S/Nにとっても、重要な関連を持つ。
 ダイナベクターのアンプの最大の特長は、なんといっても管球式アンプとは思えない明晰な音と、素嘱しいS/Nにあるのだが、この2つの点は少なくともトランジスタよりも、より大きな構造を要求される真空管アンプにおいて、それに見合った「堅固さ」が必要である。だから、分厚く、途方もない金属の塊のようなパネルも重要なるS/Nと信頼度との要求から絶対的に必然性のあるものなのである。
 高級機らしいフィーリングとよくいわれるが、それはつまみの手ざわりの感覚とか、それを廻すときの手ごたえとか、スイッチの切れ味とかを意味し、それはつまみの大きさと重さとにも大きく影響され得るファクターだ。ダイナベクターのアンプの場合、パネルに半分埋まったそれらのつまみは、すべて金属の無垢だが高級磯としては単なる目的ではなく、手段なのであることはいうまでもない。高級機らしさは、視覚的にも触覚的にも、それを受けとる側のセンスに直結したファクターであるが、ダイナベクターアンプの場合、それは必ずしも普遍的なものではなく、かなり凝ったうるさ方向きの好みを満足させる点を指摘したい。
 最近の高級アンプのはっきりした進歩は、S/Nの向上の形で具体的に音からも確かめることができる。S/Nはフォノ入力からスピーカ端子において70dB(定格出力にて)が高級機の平均の水準であったが、それが10dBは向上しなければ、いまや不十分だ。できることなら86dB以上ほしい。さらに実用レベルの1/2の音量、あるいは2/3の音量、つまり1/4出力ないしは1/3出力のS/Nが大切だ。さらに単なる数字だけでなくてノイズ成分の周波数分布、スペクトラムが大切で聴感上、ホワイトノイズとしてのうるささを感じさせないものが好ましい。真空管アンプの残留雑音は、この点からいうと、トランジスタに比べて格段に有利になる。数字が少々悪くても聴感上より有利なことはしばしば経験するが、この辺に理由がある。特にこのダイナベクターDV3000のように超広帯域をめざして設計した回路においては、数字の示すものも良いが、さらにがぜん実用性能の方が有利になってくるといえそうだ。
 しばしばその優劣が話題になるイコライザの回路における「NF形か、CR形か」という点もダイナベクターでは、きわめてはっきりと結論を下している。つまり、増幅回路には周波数に関係なく、常に一定のNFがかかることによって、安定な動作が定インピーダンスのもとに確保され、段間にCRイコライザが挿入される。したがって、きわめて広い帯域内での位相特性が保たれることになる。それがきわめてすっきりした、まるでとぎすまされた透明感を思わせる音になって、とうてい真空管の音とは思えないほどだ。しかし、よく聴けば、その限りなく澄んだ音には、けっしてつきはなされたような冷たさがないことに気付くだろう。これは特に肉声、あるいは自然な発声姿勢から歌われる歌を聴けば、はっきりと知ることができる。あくまでも人間の暖かみを失うことがないし、ただそれがのどの動きまでわかるはど刻明に再現されるだけである。あるいはヴィオラとか、ヴァイオリンとかの複数の弦を聴けば、知ることもできる。それは、豊かで、くっきりとして一弦一弦の音を聴くことができると同時に、全体の和音によって積み重ねられた豊かなハーモニーがゆったりと感じられる。そこには、わずかたりとも鋭さとか、きつい音はこれっぱかしもない。あくまでも耳当りよく、ポリウムを上げたとて、楽器が近づくだけで、うるさくはならない。少くともこうした持続音の再現には、あきらかに管球式アンプの利点を感じとりやすいものだが、ダイナベクターのアンプの場合「管球式アンプを一歩つきぬけた鮮明さ」をはっきりと示しながら、なおかつ「管球式アンプの暖かさ、ソフトなタッチ」が共存するのは、奇蹟としかいいようがないのが事実である。
 こうした現代の真空管アンプの特長的なサウンドをきわめて明瞭な形で示してくれるこのダイナベクターのアンプの良さは、むろんプリアンプ以上にそのパワーアンプDV8050の良さに関わっていることが大きい。真空管アンプの良さのひとつは、スピーカというダイナミックな動特性をもつ負荷に対する動作こそ重要だと思われるが、このためには、単にNFによる出力インピーダンスの低下を計るだけではだめで、電源回路自体の出力インピーダンスの絶対値が問題となる。低内部抵抗の出力管、さらにそれをより以上効果を上げるプッシュプル回路、加えて効率を高めるシングルエンドと重ねて凝った理想に近い構成がとられているのも、回路技術を知った所産であろう。
 なぜならば、優れたスピーカほど動作中、アンプを負荷とした強力なる発電機となり、それをなだめるには、アンプの実効出力インピーダンスの低減以外に道がないのだから。今日の録音技術の所産である立ち上りのよい音をそこなわずに再現するのは、新しいオーディオ回路技術だが、それをどぎつい音に行き過ぎるのを収めるのは、どうやら管球式アンプが切り札のようである。

ソニー EL-5

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岩崎千明


週刊FM No.19(1976年発行)

「私の手にした新製品」より


 少なくとも基本的な性能のすべて、それにサウンドのすべては、はるかに高価な20万円近いEL7に匹敵する。それなのに、価格の上で60%にすぎないというのだからいかに効率の高い実用価値を持った製品であるか、ということがわかるだろう。まさに、このEL5の登場によって、本格的にエルカセットの道は開かれたといってもよかろう。
 外観の上では、テープ・セレクト・スイッチと、録音レヴェルのためのヴォリュームつまみがいくつか減っているのを除けば、兄貴分のEL7と変わらない。それどころか、テープ・マガジンのまわりの操作ボタンを含め、一切がまったく同じであって、むろん、その走行メカ・ニズムは、すべてEL7とまったく同じなのである。むろん、走行性能から扱いやすさについても、まったく同じであるのは.価格を考えると、信じられないほどだ。リヴァースからプレイへ、あるいはリヴァースから早送りへの直接切換という荒っばい扱いに対しても、まったくスムースに、なんらさしさわりなく動作してくれる大きな特長も失われてはいない。EL7に比べて大きなただひとつの違いは、3ヘッドから2ヘッドになった点だ。しかし、少なくとも録音された音に関しては、その違いを聴き出すことは、音楽では至難の業だ。
 パワフルで、輝かしく、粒立ちのよい音は、さすがカセットとは格段の違いだ。これでやっとエルカセットもファンが増えよう。

ソニー EL-7

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岩崎千明

週刊FM No.13(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 エル・カセットという名づけ方がうまい。それにサウンド・クォリティもカセットより格段上だ。むろんS/Nだって断然いいし、ヒスもオープンなみに少ない。つまりこれはたいへんなものだ。カセット以来の大飛躍といえる。それに、このEL7、この革命的な新システムをいかにもマニアの期待に応えたメカとして完成させてある。この走行ぶりは、もはやカセットと呼ぶ水準をはるかに越えている。オープンなみの重厚さ、完ぺきさで、ただ、見てるだけで「高級デッキ」だなあと溜息が出てくるほどだ。音だって、カセットと比べる範囲を遠く越えた、つまり、どこからみても、これは、ずばぬけた魅力を満々とたたえた新製品で、マガジンを見ただけではとても想像できないエル・カセットのすばらしきの象徴ともいえる。だからあえていいたい。あまりに高すぎる。オープン・デッキの3ヘッドだって10万台であるんだから。せめてカセットの高級品なみだったら、このEL7を買って、カセットを止めちまおうと考えるファンも少なくないだろう。この僕だってそう思ったくらいなのだから。良いから高いのだという理屈は、こうした新しい「システム」のスタートでは通らないのではないか。それにしてもイイ。文句なしだ。低音の豊かさ、厚さはオープンなみ。S/Nだって高域の帯域だってそうだ。むろんステレオの定位の良さは、ちょっと聴くだけでその差があまりに大きいのでカセットを聴くのがいやになってしまうくらいだった。惜しい。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 まずシェルにカートリッジを取付け確かめる。次に、アームに着装する。水平バランスをとる。針圧を適正値に調整する。インサイドフォースをたしかめる。場合によって、ラテラルバランスをたしかめる。高さを調節して、カートリッジがレコード面に対し、正しく水平位置を保ち、針先の垂直角がほぼ適正状態にあることをたしかめる。
 以上の事をカートリッジひとつひとつ毎に適確に行わなければならない。少なくともこれだけの手順を、手ぬかりなく果さなければ、カートリッジの音質うんぬんすることはできないことになる。
 ざっと計算して、ひとつ当り3分間として123個、計369分つまり、音以外の純粋な付帯雑務時間をひきりなしに続けたとして、なんと6時間! つまり、隠れたる苦労が大きかった。

試聴に使用した装置
 プレーヤーとして、マイクロのDDX1000、それにアームが同じマイクロのダイナミックバランス型MA505、FRの同じダイナミックバランスの最新型FR64の組合せをメインとした。トーレンスの125と、オルトフォンのアームRMG212の組合せは初め使っていたが、どうも横ゆれに敏感で、ハウリングは少ないがかえって使いにくくて、途中から、さけることが多くなってしまった。ビクターのTT81をターンテーブルとしたプレーヤーはクィック・スタート、クィック・ストップができ驚く程便利であった。これは使ってみないとなかなかわかるものではないが、新しい現代的プレーヤーの持つべき条件だろう。クォーツ・ロックが内部的特長ならクィック・ストップは実用的外面要素だ。
 カートリッジと、それに組み合わせるべきアームの関係は、数多い問題を内蔵する。軽針圧カートリッジが軽針圧用アームに最適といわれてきた根拠も定かでないし、確かめにくい。少なくとも現代では、軽針圧カートリッジにもっとガッチリした、いわゆる汎用アームのほうが音質的にも、特に低音に対して好ましいというのが常識でさえある。もっとも、アームは水平方向も垂直方向もきわめて高感度であることは、最低条件として当然なことだが。ここで用いたアームは、そうした意味ですべて、アーム自体が堅固といえる程にガッチリしたものを選んだ。
 音質評価のきめ手の、特に重要な部分として「スピーカー」の選定は、難かしい。ここで用いたのは、普段そぱにおいて、使いなれ、よく知りつくしているのが理由だ。アルテックの604−8Gだ。620Aという大型の箱をあたえられて、低域をずっと伸ばし、音質チェックの上で一段とよくなっている。ドライブアンプは、マランツの510だ。理由はいまさら特にいうまでもないだろう。
 プリアンプとしては、クワドエイトのLM6200Rで、むろん、トーンコントロール、フィルター等のたぐいは一切ない。
 もうひとつのスピーカーシステムを、このラインナップに加えている。これは、ごく小さなブックシェルフ型の自作のシステムで、アルテックの12cmフルレンジ・405Aをたったひとつ収めたものだ。これは、至近距離1mほどにおいて、ステレオ音像のチェックに用いたものだ。いうなればヘッドフォン的使用方法だ。シングルコーンの405Aも、コアキシャル604−8Gもともに音源としてワンスポットなのでこの点からいえば大差ないはずともいえなくはないのだが、実際は好ましかるべきマルチセラーの高音輻射より405Aの方が音像をずっとはっきりと判断できるのは、多分、単一振動板だからだろう。単純なものは必ず純粋に「良い」のをここで知らされる。それにも拘らず604をメインとしたのは、音質判断上もっとも問題とされてしまう音色バランスの判断のためである。
 セカンドシステムは、まったく別の部屋にあって、メインシステムのように音をチェックするというのではなく、もっと総合的に、音楽を確めるといったかたちで、役立たせた。
 少なくとも、SPのリカット盤や、ステレオ初期の録音盤などでは、第一システムでたとえ評価が落ちたとしても、この第二システムでまったく逆にもっとも好ましい結果を得ることが常であった。評価が逆転するということは、ある面で不合理だが確かな事実だ。
 スピーカーは、JBLハーツフィールド、38cmの今はなきウーファー150−4Cと375+537−509(現在のHL89)との2ウェイで、低音域はホーンロードで今回の水準からすると決して広帯域ではないが、ブックシェルフにない、音の生命力が強く感じられる。ドライブアンプは、マランツのモデル2とマッキントッシュのMC30で、ともに管球アンプとしてHi-Fi初期の名うての高級品である。プリアンプは、マランツのこれも管球式のモデル7。
 プレーヤーには、第一システムと同じマイクロのDDX1000とFR64の組合せと、デンオンのDP5000Fシステムの2系統を使用した。
 このようにして、ふたつのまったく違った部屋で聴いたことには大きな意味があることを知って欲しい。その意味というのは、第一システムのラインナップと第二システムのラインナップの大きな違いにあり、ひとつはまったくのプロフェッショナル・モニター系のシステムであり、一方は、まったく家庭用のハイファイシステムであるという点だ。
 この場合、プレーヤーシステムを変えてしまっては音の判定がますます混乱することになるので、共通としたことはいうまでもない。ここで再びアームについて解説を加えると、今回使ったそのほとんどがダイナミックバランス型をとっていることだ。今日の実際的なレコードのコンディションを考えると、ダイナミックバランス型が良いと言い切ってもよい。ただし、こうしたテストの場合に考えられるいくつかの落し穴をカバーするために優れたスタティックバランス型アームをも2本使用している。

使用レコード
 今回の、この膨大な数にのぼるカートリッジのヒアリングテストに使われたレコードは、ジャズおよびロック系を中心としたもので、ジャズは、新しいものとステレオ初期とモノーラルの50年代初期のものと、さらに40年代以前の古い録音との4種類を選んだ。
 最新録音盤は、周波数特性とかスペクトラム的な判断に価値があったとしても、ステレオ感となるとかえって作為的で、良さの判断にはつながらず、苦労の種でしかない。ステレオ初期のレコードはこの点正直だ。50年代のジャズレコードのもつ特色は、そのまま「ジャズサウンドは、いかにあるべきか」を端的に示して、再生音楽におけるジャズ的視点を定めるのに好適といえる。古い録音のナローバンドのSN比の悪いSPリカット盤は、音楽以外の雑音や歪がどれだけ抑えられ、音楽を楽しむのに邪魔されずにすむか、を確かめるのに役立つ。現代的な意味で音の良いカートリッジが必ずしも雑音を抑えてくれるとは限らず歪も目立つ。
 ロックの場合、電気楽器の粘っこいサウンドが、大きいエネルギーで他の音を圧して中声域の混変調を起して歪のもととなりやすく、これは他の音楽にはないサウンド的な特徴で、それを確かめるのは今日の音楽ファンに対するせめてもの心がけといえようか。
 選ばれたレコードが物理的な意味で必ずしもベストのものでないことに、あるいは不満をいだく方もあろう。しかし音楽とは所詮物理的技術的結果ではなく純粋に芸術であり、それが再生音楽だとしても、受けとめているのは人間の芸術的感覚である。つまりレコードといえども厳然たる事実として「音楽」であることは誰しも認めるだろう。使ったレコードは以下の通り。
●パブロ(英国盤) エリントン/レイ・ブラウン 「ワン・フォー・ザ・デューク」
●ブルーノート(アメリカ盤) ヴィレッジヴァンガードのソニー・ロリンズ
●マーキュリー(アメリカ盤) クリフォード・ブラウン/マックス・ローチ 「イン・コンサート」
●アメリカ・コロムビア盤 チャーリー・クリスチャン 「ソロ・フライト」
●ローリングズトーン 「プルー&グレー」 ローリング・ストーンズ

クワドエイト LM6200R

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 いま、わが家でもっとも多く使っているプリアンプが、この米国の業務用メーカーのクォードエイト社の作る本格的なプロフェッショナル用ポータブルミクサーLM6200にフォノイコライザーのプリント基板を組み込んだ特別型LM−6200Rだ。
 本来それぞれにレベルコントロールを独立にそなえている6回路のマイクミクサー回路と、バッファーアンプを内蔵し、マスターコントロールをつけたもので、VUメーターを別のパネルで備えて、全体をキャリングケース(可搬型)に収めてある。価格は76万円と、かなり高価だが、本来プロ用のミクサーだから高くて当り前。大型の36回路コントロール・テーブルは1千万円もするくらいで、そのミニチュア型なのだから。ところで、このLM−6200Rはマイク回路はマッチング用入力トランスが入っているが、フォノ回路はそれがないのでSNはまあまあで、おなじみのマークレビンソン並みだ。でもMC型カートリッジをヘッドアンプやトランスなしでストレートで使えることは、もちろん。その時でも、ノイズは大して気にならないほどだ。
 さてこのクォードエイトLM−6200Rは、トーンコントロールはむろん、フィルターも一切ついていないから、実質的にイコライザー回路だけの単純な構成だ。それだけに音質の方は、きわめてストレートで、一切の変形も歪もない。このアンプの堂々とした力強さでクリアーな透明感は、マランツの幻の名器といわれたプリアンプ、モデル7を、もっと澄み切った音としたものといえば、もっとも近い。だから、今までモデル7を使っていたのに、LM−6200Rを使い出したとたん、モデル7はめったに使わなくなってしまった。
 最近接したプリアンプの中で、もっとも印象的だったのはアンプジラと、ペアとなるべきプリアンプ「テドラ」だが、テドラはそのパネルのデザインが独特で扱い難い。いわゆる美的感覚にのっとった所産ではなく、マニア好み一辺倒だ。LM−6200Rは実用一点張りだが、それなりの合理性が信頼感につながる。ただフィルターがないので、パワーアンプのスイッチを低域に入れる前に、プリアンプをONにしておくこと。

QUAD 33, 303

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 このアンプだけは、他のものと違って少々くつろいだ選択基準にのっとっている。つまり、朝に夕に、息を抜いたひとときに気軽にスイッチを入れてレコードを楽しむためのアンプとでもいえようか。特に、そうしたときに「音に対決する」といった息づまるような聴き方でなく、音楽を楽しめるコンデンサー・スピーカーを選んで、これを実用的に鳴らすことを考慮した時に必ず浮上するのが英国のアコースティック・インダストリー・マヌファクチャー社のコンデンサー・スピーカーQUAD(クォード)ESLであり、それをドライブするためのアンプとしてのクォード・トランジスタ・プリアンプ33、パワーアンプ303なのだ。
 ごく一般的な音楽の高級ファンの場合「永く聴いても疲れることのない装置」が強く望まれるものだ。QUADのシステムはこうした要求にぴったりであろう。聴く位置は固定されるが音像の確かさもすばらしいし、その品質は価格からは想像できない。まして最近のポンド下落の折で、日本での価格はこれからも高くなることはあるまい。
 クォードのアンプとして、オーディオマニアであれば、管球式のステレオ用プリアンプ・モデル22とパワーアンプ・モデル2を2台というのが、いつわらざる本音だろうし、今日、やや骨董的な価値も出てきて、マニアであればあるほど大いに気になるアンプであろう。
 ただ、今ではこれを探すのは労多く、価格的に割高のはずだ。トランジスターで間に合わせようというわけではないが、303と33でもいい。内容を見れば米国製の同価格の製品とくらべてみるとよく判ろうが、驚くほど綿密に、精緻に作られ、まるで高級測定器なみだ。プリント板の差換えでフォノイコライザーやテープイコライザーを変えられるようになっている所もいい。アンプの再生クォリティーは、今日の水準からは決して優れているというわけではないが、しかしESLを鳴らすには、この303の出力は手頃だし、最新パワーアンプ100/100ワットの405のお世話になることもあるまい。価格対内容では世界有数の製品だ。
岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 デンオンはこの数年来、高級プリメインアンプでもっとも成功しているブランドだ。昨今話題となっているステレオ右、左のクロストーク特性においても、製品の新型に2電源トランスを用いてアピールしている他のメーカーのような処置は何んらとっていないのだが、実際にはデンオン・ブランドのプリメインアンプのクロストーク特性ほど優れて、2電源の他社製をはるかにしのぐ。ステレオ初期から「ステレオ」用としての基本特性である左右セパレーションを重視しているから当り前であって、何をいまさらというのが、デンオンを作る日本コロムビアのメーカー側の言い分だ。当然である。
 コロムビアの昔の製品に「ステレオ・ブレンド・コントロール」というつまみが付いていたが、左右を混ぜてステレオからモノーラルの間を可変にし、2つのスピーカーの間の拡がりを変えているわけだが、こうしたステレオコントロールを付けるには、始めからステレオのクロストークを十分良くしておかなければならず、それがデンオンアンプのステレオ用としての優秀性を築いてきたのだろう。
 このように基本特性の優秀性はデータの上にはすぐ出てこないけれど、本当のアンプの良さを示すものといえよう。話題になって初めて、ある部分がクローズアップされる。本当に良い製品は、こうした部分的な面が解析されると、すでに手を打ってあって、いつの時代でも優秀性がくずれない。デンオンの新しい管球アンプ1000シリーズは、管球という昔ながらのディバイスを再認識して現代の技術で作り上げた高級品といわれる。つまり、トランジスタ技術を活用した新しい時代の管球アンプなのである。
 だから6GB8という超高性能高能率パワー管を採用し、100ワットという驚くべき出力をとり出し、しかも最新トランジスタアンプ並みの高い電気的特性を保っているだろう。その音は、無機的といるほど透明感があふれ、常識的な管球アンプの生あたたかい音では決してない。プリアンプを含め、いかにもフラット特性の無歪の道のサウンドスペースを創っているといえそうだ。

アキュフェーズ M-60

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 ケンソニックは、トリオのトップクラスの技術者がグループを作って始めた新進メーカーだ。高級品を選んで作るという姿勢がとても好ましく、いかにもハイファイメーカーとしての基本姿勢そのものをメーカーの体臭として感じとれる。最新に作った製品P−300を始め、すべてのパワーアンプ、プリアンプがすべて海外市場で最高の賛辞を受けた実力ぶりも高く評価できる。特に日本での高級アンプが、価格的にベラボーな高価格が多かった2年前の初期から、他社とは違って実質的価格を打ち出しており、これがまたハッタリのない実力を感じさせるゆえんだ。それというのも、ケンソニックは当初から海外市場を大きなマーケットとしてこそ成り立つことを考えていたためであろう。価格的に、日本市場で極端な割高な海外製品の価格を相手とせず、その本国での価格、つまり実質価格を相手として、ケンソニックのすべての製品価格の基準としている。この辺が内容にふさわしく、海外ライバル製品に対してはるかに割安で、高級製品としても高い商品価値をそなえている理由だ。
 ケンソニックの最新製品はM60と呼ばれる300ワットのモノラルアンプだ。1台28万円、従ってステレオで56万円となるが、300Wのステレオ用となると製品は海外製を見わたしても多くない。マッキントッシュMC2300を始めSAEの2500、マランツ510など250ワット・ステレオが多い。国内製品でもラックスのM6000が唯一で、山水BA5000も250ワット・ステレオだ。M60は、だから300ワットのステレオ用でも、これでももっとも低価格アンプということになる。M60はこうした大出力なのに、驚くほど静かな音が特長だ。静かといっても、一たんボリュームを上げるとフォルテでは床を鳴らし、家をゆるがせるだけのすごいエネルギーを出せるのは、もちろんだ。しかし普段は、これで300ワットかと思うほど静かなのである。とても自然でその音はナイーブですらある。ちょっと女性的なほどだ。しかし、その芯はむろんケンソニックのすべてのアンプのように、ガッチリした力強い筋金入りで、それはここぞというときにのみ、頭をもたげるのだ。

マランツ Model 510M

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 わが家には、いつでもスイッチさえ入れれば動作してくれるアンプが何台もあって、その多くは何んらかのスピーカー・システムが接続されている。スイッチさえ入れ、プリアンプをつないでボリュームを上げれば、すぐ音が出る。ところで、こうしたアンプのうちで、もっともスイッチを入れるチャンスの多いのはマランツのモデル2というパワーアンプだ。これは6CA7というフィリップス系のパワー管のプッシュプル接続パワー段で40ワット出力のモノーラルアンプであって、後にこれを2台結合して同じ寸法のシャーシーに収めるため出力トランスを少々小さくして35W/35Wとしたのが、有名なステレオ用モデル8Bである。さて、この管球アンプは多くの管球アンプ海外製品の中でも、もっとも音の良いアンプだ。堂々たる量感あふれるこの低音は、一度聴くと手離せなくなる。これに匹敵する製品はいくら探しても見当らず、マッキントッシュのアンプですら、300/300Wの超出力MC2300以外ない。
 永い間、このアンプに相当するものがなくて、これに近いのが同じマランツが昔作ったソリッドステートのモデル15とそのパワーアップ型、モデル16であった。モデル15の方が、かなりおとなしい中音でオーソドックスなマニア好みはするだろう。共に低音の力強さはマランツ独特のものだ。特にモデル16は今日的な意味でのクリアーな透明感があって、ある意味ではモデル2よりも好みの音である。パワー80/80が、あとから100/100ワットにパワーアップされたとはいえ、現代のアンプとしては少々力不足はいなめない。音マイク録音のすさまじい立上がりの最新録音では、クリアーな音も越しくだけになってしまうのだ。
 マランツの最新型510Mは265/265Wの超出力で、その割にコンパクトなサイズ。それは100/100ワットのモデル16の50%増程度、重量も2倍ぐらいなものだ。クォリティーは、まさにモデル16をはるかに上まわる電気特性で、より透明で鮮明なサウンドがいかにも最新型だ。

テクニクス 60A, 70A

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 2年ほど前から、米国の新しい小さな電子メーカー、マークレビンソンのプリアンプの優秀性が話題となっている。プリアンプといっても、フォノイコライザー回路を独立させて、それに左右独立の音量調整用ボリュームをつけた形の、純粋にディスク再生のための文字通りのプリ(補助)アンプであって、トーンコントロールやフィルターさえ付いていないが、雑音発生量が極度に抑えられていて、いわゆるSN比は今までの常識よりはるかによい。そのために小さなレベルでの再生がきわだってクリアーでスッキリしている。こまやかなニュアンスもよく出る。こうした点が、高級マニアの注目するところとなった。ただ、あまりに高価で、VUメーターのついたのが90万円を軽く越し、メーターなしの超薄型のでも50万円を越すという驚くほどの価格だ。誰にでも買えるものではないが、この高価格なのが又、新たな話題となって、ますます注目されるという2重のプラス(?)を生んでいる。ただし、うまい商品であるし、商売でもあろう。
 商品としての巧妙さは、また逆にその裏をかかれることにもなるが、持ち前の電子技術を誇る日本のメーカーが黙ってみているはずがない。この半年に、マークレビンソンのフォノイコライザー・アンプを狙った製品がいくつか出てきた。その一番バッターがテクニクスの70Aだ。外観的にはよく似たアンプで、SNもかなりよく、性能的にはテープモニターを2系統プラスしている。音の方も、より暖か味ある日本のマニア好みの音だ。肝腎のSNの点で、もう一歩という所だが、7万円という価格からは止むを得ないのだろう。プリント回路の質的な面で、もう少し良ければなあと望むのは欲ばりすぎかも知れないが、パワーアンプ60Aの出来具合のすばらしさにくらべて、プリの内側はちょっと淋しい。パワーアンプ60Aは、8万円という価格の中で外観、内容とももっともユニークかつ魅力を持ったアイディアと個性にあふれた製品だ。組合わせて聴くと、おとなしい音は大人のマニア向けという感じで生々しく、自然な響きが質の高さを示す。

パイオニア C-21, M-22

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 パイオニアが驚くべきシリーズの新製品を出した。M−22パワーアンプ、C−21コントロールアンプ。それにディバイダーアンプも加わっている。最近流行の薄型プリアンプC−21は、内容の方もフォノイコライザー回路を独立させたもので、パネルにはボリュームコントロールのつまみが左右別々に出ているだけだ。つまり外観通りに簡略化された回路設計を基本として、その部品を最上級のものでかため、プリント回路のパターンも完成度の高いものだ。こうした傾向は信号の純粋性を保ち、歪をおさえSN比を究めるという基本姿勢をそのまま製品に反映させた点で、車でいうなら、走るために徹底したレーシングマシーンみたいなものだ。ひとつの目的にぴたりとねらいを定めて、他を一切排除した設計。アクセサリーや余分の回路、スイッチを省いた設計である。だからC−21のSNは驚くほどで、例のマークレビンソンのプリアンプを上まわるほど優れている。歪特性も同様だ。最新の設計思想で貫かれているのだ。
 個の思想がオーディオに入ってきたのは、まだ最近の1年程度だが、パイオニアのようなもっともポピュラーと見做されていたメーカーから、こうしたハードな姿勢の製品がシリーズ20として出されたことは注目に価しよう。驚くべきことだ。M−22はC−21と同様に、質的な良さを純粋に求め、製品化したわけだ。つまりエクスクルーシブシリーズ中、もっとも好評のM4をそのまま、ひとまわりパワーダウンして価格を1/3に下げて達した驚異的製品だ。30/30ワットという出力は、今日のハイパワー時代には逆行する小出力ぶりだ。ブックシェルフ型隆盛の今日の平均的なスピーカー商品に対して、M−22はその実力を発揮することはあるまい。しかしスピーカーが良質であって質的に高級であれば、必ず今までのアンプとは格段に質が高いことを知らされよう。M−22は、だから本当に良いものを求め、しかし余りあるほどの資力のないマニアにとって、この上ないアンプとなるに違いない。このシリーズにディバイディングアンプが加えられており、M−22を中高音用にも使えるのは+αだ。

パイオニア Exclusive M4

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 良いアンプとは、いったいなんだろう。「良い」という意味は多くある。電気的特性の良さはアンプにとって最低条件だとよくいわれる。電気的特性が良くないのでは、良い音がするわけないともいわれる。しかし、逆に良い音のアンプなのに電気的特性は現代の最新普及価格帯の総合アンプに劣るものもある。いや最近の5万円台のアンプは歪0.1%を下まわり、海外製のひとけた上の優秀なアンプよりも性能表示は優れている。しかし、音は必ずしも電気的特性に伴わない。今日のアンプの音が悪いというわけではないが、電気諸特性がずっと良いのに音を聴くと大したことないのも少なくないのである。
 ところで、こうして記していると結論が出なくなってしまいそうだが、ただアンプをみつめるのでなくて、スピーカーを接続して初めてシステムとして動作することに目をつけて、スピーカーの方から逆に見た方がよいのではないかと思われる。つまりスピーカーをよく鳴らすことが、よいアンプの条件として判断しようというわけだ。
 ところで、アンプ以上に良い悪いの判断が難しいのがスピーカーだが、高価な高級品ほどよく鳴らすのがむずかしいものである。わが家には昔作られた、昔の価格で1000ドル級の海外製高級システムから、今日3000ドルもする超大型システムまで、いくつもの大型スピーカーシステムがある。こうした大型システムは中々いい音で鳴ってくれない。トーンコントロールをあれこれ動かしたり、スピーカーの位置を変えたり。ところが、不思議なのは本当に優れた良いアンプで鳴らすと、ぴたりと良くなる。この良いアンプの筆頭がパイオニアのM4だ。このアンプをつなぐと本当に生まれかわったように深々とした落ちつきと風格のある音で、どんなスピーカーも鳴ってくれる。その違いは、高級スピーカーほど著しくどうにも鳴らなかったのが俄然すばらしく鳴る。昔の管球式であるものは、こうした良いアンプだが、現代の製品で求めるとしたらM4だ。A級アンプがなぜ良いか判らないが、M4だけは確かにずばぬけて良い。

GAS Ampzilla

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 米国の新進アンプ・メーカーにグレート・アメリカン・サウンド社という特異な高級製品を作るメーカーがある。いかにも大げさな社名だが、作るアンプの製品名が「アンプジラ」。まるでゴジラみたいなアンプだが、'76年中には出力300ワットの物すごいのを作るといい、その名はズバリ「ゴジラ」。特異な体質のメーカーという理由は、こうした名づけ方からも推察されるのだが、こんな名前をつけられた製品は、どんなにかハッタリに満ちたものかといぶかしい眼でみられてしまうに違いない。特に日本のマニアのように、かなりまじめでオーソドックスな感覚の持ち主には、あまり好ましい先入観念は持てっこない。ところが、である。これらのどぎつい名前のアンプは、その名前からの印象とはまったく違って、きわめて正統的な設計をされ周到に作られており、そのサウンドもまた驚くほどすばらしいもだ。日本に入ってまだ半年も経たないのに、その優秀性がきわめて短時間に轟きわたり金にゆとりある高級ファンの間にちょっとしたブームさえまき起こしている。
 その中をみると、回路設計の簡潔なこと。使われている部品が重点的に最高品質を用いることに徹底している。アースは太い線ではなく、ぶ厚い銅帯を用い、ハンダ付けだけでなくボルト締めを重ねている。放熱には細心の留意をされ作られているが放熱版材料はぜいたくではない。さて、この「アンプジラ」を設計したボンジョルノ氏は多くの高級アンプを設計したキャリアもあり、初めて自尽のブランドで商品化しただけに最高を狙ったという。だがこのアンプは今回の選択から意識的に外した。理由は、間もなくより優れた設計のサーボ・ループ方式に変更されるといわれるからだ。現在、A級ドライバーを含むDCアンプだが、もっと良くなってからにしよう。ただ、アンプジラの持つ特長の数々は、現代アンプの技術的な象徴といえることは確かだ。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 カートリッジの音色の違いと簡単にいわれているその「差」は、いろいろな角度からとらえられねばならない。一般的に「高域がよく出る」とか「低音感がある」という表現で伝えられる音の違いは、文字通り音域内でのスペクトラム・バランスによる違いで、全音域中のある特定周波数を中心に特定範囲のレスポンス反応が他より高いために、その帯域の音が目立って強く感じることによる音の差だ。これは再生系のどのパートにも起り得る判りやすい現象でもある。アンプの中のイコライザー回路やトーンコントロール回路がこれであるし、さらにイコライザー偏差により、同じRIAA補正されるべきはずでも、音の違いが出てしまうというのもこのスペクトラム・バランスを具体的な形で表現した周波数レスポンスの違いによるものだ。
 しかし、スピーカーとかカートリッジのような音響電気変換器においては、この周波数特性はアンプのように定規で引いた如く平坦では決してない。これら変換器が特定のレスポンスを示している。というのは、その内側に起因となるべき、音響的、機械的共振が発生している、ということを意味する。そして、この共振という言葉のもつ意味、本来音の出るべきでない部分が、微かな衝撃とか振動によって勝手に特定振動を始めて、それが全体の音に影響してしまう----という故に共振があることは、それだけで音を損うと速断されてしまう。現実には、音響電気変換器のカートリッジにおいても共振を利用し、活用することによって、高域の広帯域化を具体化しているわけだ。共振をいかに処理し、いかに生かしあるいはおさえるか、技術的経験に基づくバランス感覚をどう技術として生かすかによっている。「共振があるからだめ」でもなく「まったく押えたからいい」でもないのであって、その判断は、まさにスペクトラム・バランスそのもので、全体としてとらえねばならない問題だ。
 ただ、はっきりいえることはカートリッジの音色の違いの、大きなファクターが、まず周波数レスポンスによって表れるほんの僅かな、太い線で記入されたら差がなくなってしまうほどの僅かな凸起や凹みにある。それは範囲が広ければ、つまり「範囲」と「差」の相対関係で、共振のQ次第で音の違いとして感じ取れるし、その裏側には必ず共振現象が存在するということだ。
 共振があるから音が違う、という表現は間違いではないにしろ、決して正しくない。共振の処理次第でそれはあくまで音が変わるのだ。
 カートリッジの音色の違いは、しかし今まで述べた周波数レスポンスによる差、たとえ内側に共振現象を秘めてあるにしろ、そうしたスペクトラム・バランスによる差は質的な違いから比べれば大した問題ではない。
 もっと基本的なのは、その音の質的な差で、これはどうも今日の技術的表現、例えば周波数特性とか歪率カーブでは表わせるものではない。これはスピーカーとて同じことだが。例えば矩形波の再現能力などでそれを示そうという試みはあるが、その程度ではまったく根拠にならないほどの違いがはっきりと感じられる。ただむずかしいのはこうした場合、周波数レスポンスの上にも差が出ることが多いため、それによる音の差と混同してしまいがちになる点だ。だが、明らかに周波数レスポンスの違いどころではない根本的な音の差がある。例えばMM型において、いくらMC動作を模して尽せどMC型との間にはっきりした差がある、というのがこの一例だ。
 例えば音のひとつひとつの内側が極く緻密である、というのがこれだ。あるいは粒立ちの良さという表現にもある部分で共通しよう。しかし「緻密さ」「充実感」「立上りの良さ」「積極的」といった判りやすい表現をつきつめていくとこの音質的な違いにぶつかり、それはいわゆる周波数レスポンスとはまったく無関係のものということも気付くはずだ。
 カートリッジにおいては特に重要なポイントというべき点であると指摘しておこう。
 音色の差という表現では扱えないのが「ステレオ音像の再現性」で、これは少々やっかいだ。小形のシングルコーンでそれを確かめないとしっかりした判断をし難い。大形システム、それもユニットの数が多いほど他の要素、スピーカー自体の付帯要素が重畳してしまって判断を狂わすからだ。この場合、再生帯域の広さよりも音響輻射そのものができるだけ不自然でなく、人工的でないことを重視しなければならない。あらゆる周波数範囲で同じ輻射条件が欲しい。アンプの位相特性も重要だ。そうした再生系が整って始めて、カートリッジの音像再現性がうんぬんできる条件となるわけだ。
 ステレオ音像については多く語る必要はあるまい。レコードにより、部屋を含む聴取環境とスピーカーの位置を決められると、再生音量はおそらくぴたりとある一点に決められ、調節点は各個人差はあるにせよはっきり指定されるはずだ。その時の音像の確かさ。音楽の中のピアニシモからフォルテに至るあらゆる部分でこのステレオ音像は変動したりくずれたりしてはマイナスだ。もっとも低域に関してはアームの優劣が音色的差の場合より強く影響し、カートリッジ単独でこの問題を論じることは少しばかり無理なところがあるのではないか。MM型にくらべればMC型の方が一般的に好ましい。英国デッカの場合では他とは発電機構の違いから特殊ケースとなる。
 ステレオ音像から得られる判断に際して、ピアニシモ、フォルティシモのローレベル時とハイレベル時の差はスピーカーが原因となっている点にも留意し、確かめなければならぬのは勿論。
 最後にトレース性能だ。創始期のADC社によって提唱され、シェアー社が確立したトラッカビリティ最優先論は、カートリッジがレコードの音溝をたどるという基本的動作上至極当然だが、ステレオ初期にはこの着眼点のすばらしさに驚いたものだ。今それは当りまえになっているか、というと必ずしもそうとは限らぬのではないだろうか。例えば、再生上好ましい音のカートリッジが、意外にも針鳴きが大きい、つまりカンチレバーの機械的共振を押えることをせず、従ってレコードへの追従性は特性周波数帯で悪化している可能性が少なからず、といえる「優秀製品」がないわけではなく、それは世界中から再生品質の良さを認められている。こうしたものが現実にいくつも出てきている。むろん建て前としては、針鳴きのない静かなトレースのカートリッジならトレース性能もいいだろうし、そのレスポンスもフラットに近いものに違いない。しかし、どうもそれだけで決めてしまい難いファクターがまだあるのではないか、ということだ。
 カートリッジを「製品」として技術的な面からも捉えることにより、それが音質へどうはねかえるか、それをいかに判断したか、ということを本来論じられるべきかも知れぬ。しかしここではあえて一ユーザーの立場、音楽ファンからの視点によってのみ論じ、結果としての音そのものを今回どの角度からどう捉えて判断したかを述べた。
 できることなら諸兄もここで述べた判断方法を、自らの部屋で確かめられることを望むものだ。音の捉え方はもっと深く広い。ただほんの象の脚をなでた程度かも知れないが、それを許していただきたい。
 再生系の音の入口にあって、機械振動を電気信号に変換するカートリッジを、単に音の面から捉えようと試みるのは、聴覚と、それに繋がるセンスだけを軸にして推し進めることになり、それと交叉すべきいくつかの方向、路線から押えるということになってくる。むろんそのための路線はいくつもあるが、それを感覚的に捉えられるかどうかは、試みる側の能力次第にかかる。判るものにとっては容易だが、共通の言葉がなければすれ違いになるし、判りようがない。
 しかしここにあげたそのうちのいくつかのポイントは、読者にとって無論把握しておられる方もいようし、またそれを意識して試みようとすれば容易のはずだ。
 ただ「音から捉える」ということの難しさは、音がカートリッジによって変るのは確かであるが、そうと判断し受け取るのは、あくまでその当事者自身であり、音の差はカートリッジをばい体とした当事者の判断そのものということをはっきりと認識しなければならない。

マイクロ PHONOGRAPH

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)より

 プレーヤーの数少ない専門メーカーともいえるマイクロ精機が、商品ならざる製品を出した。新たなる製品ながら、新製品ととうてい言い難いのはそれが1900年代初頭の、文字通りのゼンマイ仕掛けの蓄音器をそのまま、現代に複製したのがこのいとも優雅な製品なのだ。一般にこうした場合、範をエジソンの作品を始めとする米国製品をモデルとすることが多い。小犬が首をかしげて聴きいるマーク鮮やかなるRCAブランドのオールドタイプが普通だ。
 ところがマイクロの場合、さすがといえるのはヨーロッパは芸術の国フランスのこの分野で最高級といわれてきたパティマルコニー社の1905年(明治38年)製をコピーしたもので、いかにも骨董品然とした古めかしい風格が満ちている。それはまるで宝石箱かなにかのようなシンプルな作りの良いガッチリした箱の上に、薄く小さく輝く皿のようなターンテーブルを乗せ、ただでさえ重そうな太い金属管の先に幼児のこぶしほどの丸いサウンドボックスを持つ。
 そしてその箱の何倍もあろうか、まさに朝顔の花をそのまま拡大した超大型のラッパが全体をおおうようだ。巨大な金属朝顔の、上半分の視覚的な重さから前に傾きそうにもなるはずだが、開口を斜上に向けたバランスの巧みさがどっしりした安定感を創り出して、それが出現した当時の驚くべき「音楽器機」を構築している。その雄大なる姿は、とうてい今日的な再生システム、ブックシェルフ型スピーカーを両脇に配した素気無いメカニズムとは格調が違う。
 サウンドボックスに眼を凝らしてみるとただ一枚の雲母(マイカ)が、自然そのままただ丸く形をととのえられて収まっていて中心からのびた針金が直角に下におりた所に、鉄の蓄針(レコードバリ)が装着される。つまり、後期の蓄音器が金属のままで現代のホーンスピーカー用ドライバーユニットか、ドーム型ダイアフラムの形をしているのに対し、それはまったく平面そのままの天然マイカ板の所が純粋だ。この辺が実は凝ったカートリッジを今も作るマイクロらしい特長だろう。
 と、ここまでくると、このたった一枚のマイカ板が巨大朝顔を通すと、いったいどんな音として出てくるのかが気になってくる。付属の小さなZ型の把手を小さな箱に押し込んでゼンマイを40回ほどまわすと、いっぱいに巻上げられる。これで25センチSP盤のほぼ表裏を演奏できることになる。
 何より驚くのは、この音量だ。小さい部屋では、周囲の会話を不可能としてしまうほどだ。それに、音はまるで「生命を得たごとく」にいきいきとして、文字通り躍動する。特に金管楽器は、SPレコードにこれだけの音が入っていたのかと信じられぬ思いで、演奏者がその場に居合せたようなプレゼンスに聴きいってしまう。むろん帯域はせまいのだが、音楽を凝縮して必要以外を押えてしまった音といえそうだ。この蓄音器の音を聴くと、現代のオーディオが、昔ながらのどこかで取残した部分について気になり出してくるのである。

オーレックス PC-3060

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岩崎千明

週刊FM No.19(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 オーレックスの新しいパネル・タイプのカセット・デッキPC−3060は、みるからに現代の若者のセンスをいっぱいに感じさせる。これは、モダンなフィーリングの中に、扱いやすそうな機能性を満たして、しかも、全体はとても親しみやすいのだ。まるで親しい友達みたいに。それがなぜなのか製品を前にして考えてみたが、おそらくこうだろう。どこといって難かしそうな所がないのに、いかにも高級製品らしい雰囲気が溢れていて、実際に使ってみると、まさに信頼できる高級品に匹敵するのだ。
 外観の上で大きな特長は、マガジンの中に斜めに倒れたままで蓋がされるアクリルのカヴァーは、使ってみると、なかなか扱いやすく便利なのはびっくりするほど。そのカヴァー以外に、どこといって特長らしい点はないが、しかし、全体の品のよい作り、仕上げのうまさは、最近のオーレックスのアンプなどと同じだ。まああげ足をとれば、レヴェル・メーターの上の、長々とした、ドルビー方式の説明の横文字は、ちょうとギザったらしいが、これも若いファンの眼をとらえるには違いない。うまいセールス・テクニックでもある。
 ところでこの5万円そこそこのデッキのクォリティは、まったく驚くほどで、このデッキの内側が、価格からは思いもよらぬ高レヴェルであることを知ろう。自然な感じの、いかにも歪みの少ないソフトで素直な音は、カセットの達するひとつのリミットにごく近い。

ソニー TC-3000

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岩崎千明

週刊FM No.17(1976年発行)
「私の手にした新製品より」

 カセットは、はっきり二分化してきて、生録志向の可搬型2電源方式と、パネル型実用性能型に人気がある。ところでこの可搬型、どうも大きくて重すぎて、ステレオ型でない安いものにくらべて可搬型とはいい離い。ソニーの今度の新型は、高性能ステレオ・カセットとしてもっとも小さい方で、これで初めてラジカセなみとなった。これぞ、まさに本物のポータブル。肩にかついでいても、くたびれないですむ、ひとまわり小さい大きさと4.6kgの重さで、それで性能は今までと変わらぬどころか、上まわるというのだから、まさに本場の本物。左側の操作レバーの下にヴォリューム以外のツマミを一列に配し、右側には大型のカッコいいメーターの下に大きく扱いよさそうな丸型ヴォリューム・ツマミが、でんと収まる新しいパネル・レイアウト。
 音の方もバランスの良さから一段とハイファイ的で、広帯域化か強く、スッキリした音と低ヒスのため、デッキとして使うとアンブ型とくらべてもまったく遜色ないのに驚いた。
 マイクを使っての録音もすばらしく、緻密な音で、広帯域低歪感の充分な、スッキリした音で、楽器の音のクリアーな迫力はみごとだ。ヒスやノイズの少ないのも生録の時の特筆できる特長だ。
 単1×4で6時間という経済性も、ポータブル型らしく抜群だ。TC−2850はかくして生まれかわってTC−3000になり、本当のポータブル・ステレオ・カセットとして完成した。

ビクター HP-550

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岩崎千明

週刊FM No.17(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 ヘッドフォンを愛用するファンも増し、誰もが使用するチャンスが頻繁になってきた。ヘッドフォンに対する要求も「軽く手使いよく」「音がはっきり聴こえる」。その上に「力強い迫力」までも、スピーカーなみに求められるこの頃のことだ。新型ヘッドフォンとなると、こうした時代の流れに応じた諸条件がアピールされることになる。ビクターのHP−550もこうした時代に敏感な新型ヘッドフォンだ。
 たいへん軽いうえに、頭に装着した感じは、帽子をかぶるよりも楽なほどだ。密閉型というけれど、耳をおさえつける圧迫感もなければ、うっとうしさもない。頭にちょんと乗せた、という感じぐらいで楽だ。それでいて、音だけは、かなりガンガンと力強く明快に鳴ってくれる。どちらかというと品の良さよりパワー感が、はっきりと感じられ、スッキりというよりガッチリと聴かせてくれる。こういう密閉型では一般に低音感が薄っぺらになるが、そうした欠点はなく、力強くロー・エンドまで伸びている。ただ、少しばかり鳴り過ぎという感じが残るけれど、メーカーのいう通り、打楽器のガッツ・サウンドは目ざましい。これで中域から高域までに品の良さが加われば、と望むのは価格から考えるとぜいたくというもの。感度も高く、使い方は自由。音もスッキリ、といいことずくめ。最近のヘッドフォンがカッコよさに気を使う新型が多い中で実用・実質主義実力型だ。

ダイヤトーン DA-P7, DA-A7

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岩崎千明

週刊FM No.17(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 ダイヤトーンの新シリーズ・セパレート型の一番安い、といっても、プリとパワー合わせて10万円の組合わせだ。70W+70Wだから、プリ・メイン一体型と価格的には相等しい。プリ・アンブが分離している構造がお徳用となるわけだ。その構造によって、SN比はよくなることは間違いなく、それが音質上にもはっきりとプラスをもたらして、クリアーな音の粒立ちと、ロー・レヴェルでのリニアリティの良さかがデリケートな音の違いの上にくっきりと出ている。プリ・アンブはデザインはまったく違うこの上のP10とは構造も違うが、伝統的に歪みの低さ、クロストークの少なさは、10万円台のアンブを越えているようで、それが音の上にも感じられるのだろう。プリとメインを分けるこの構造は、P7+A7では一体構造で用いる場合も少なくないと思われるが、実に堅固で、4本の取付けボルトさえ確実にしめつけてあれば絶対に安全、かつ確かだ。端子の位置も使いやすく、そうした意味での操作性は理想に近い。
 70W十70Wのパワー感も、セパレート型として、あるいは物足りないのでは、と不安もあろうが、実際に使ってみると、どうしてどうして、100W+100Wクラスにさえひけをとるものではない。使用中にあまり低音のブーストをやりすぎなければ充分なるパワーといってよい。この、いかにも中味の充実した中域から低音にかけての力強さは、高音の輝かしいクール・トーンと共にダイヤトーンの大きな魅力だろう。

マイクロ MA-505

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岩崎千明

週刊FM No.12(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 アームは、理屈からいってもスプリングで針圧を加えるダイナミック・バランスが絶対良い。針圧にカウンター・ウェイトをずらして重力を利用したスタティック・バランス型の場合、アームは必ずアンバランス状態にある、ということになる。だから、ちょっとレコードのソリや偏心、あるいはプレーヤーの傾きは針圧に比例してアンバランス状態を招き、実際の使用状態で理論通りの働きをしてくれない。理想とはほど遠い状態にさらされているのがディスク再生の現実なのである。ところがダイナミック型は、かんじんの針圧加圧用のバネ自体を均一に作るのが難しい。だからダイナミック・バランス型アームはスタティック型にくらべて製品が格段に厄介だ。だから国産品は最近まではなかったし、海外製でもまれだ。軽針圧用にも使えるマイクロのMA−505がなぜ良いか、その基本的理由は以上のようだ。
 さらに中でも、この針圧を自由に変えられるのもダイナミックならではだがMA−505の場合「インサイドフォース・キャンセラー」から「高さ調節」まで演奏中に調節できるというのは驚きだ。超低域の響きがどっしり、スッキりするだけでなく、音楽の音全体が安定して、それは同じカートリッジと思えぬくらいの変わり方だ。トレースの安定向上という点だけにとどまらない飛躍ぶりは一度使えば誰もが痛烈に思い知らされるはずだ。ただし、この構造では止むを得ぬとはいうものの、デザインがあまりに武骨なのが残念だ。

Lo-D HS-450

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岩崎千明

週刊FM No.12(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 なんの前触れもなしに突然のように発表されたHS−450。期待が全然といってよいほど無かっただけに、受け取り方は、かえって素直にできるというものだが、決してオーヴァーないい方ではなく、この新製品にはびっくり。というのは、このHS−450。最近のLo−Dスピーカーよりもずっと抵抗なく身体を包んでくれるという感じの鳴り方だ。Lo−Dがハッスルしたスピーカーは、確かにとってもいい音だけど、それを素直に口に出すのに、ちょっとひっかかるような要素が、音の中にちらついていた。それがこのHS−450ではまったく感じられないのは、なによりも驚きだ。
 少なくとも外観からはここんとこ流行の、いかにも若いファン様々といったようなプロフェショナル志向むき出しを思わせるのが、ちょっとばかり気に喰わないけれど音の方は、そうではなく、どっしりした低域と、中域のスムーズなバランスとが完成度の高さを聴かせてくれる。どちらかというとシャッキリ、クッキリ型だった今までのに対して暖かみさえ感じられるくらいだ。密閉性の高い箱は極めて堅固に作られ、完全なる密閉型として動作してなおロー・エンドまで力強く出るのは、ユニット自体の質の高さによるものだ。スコーカーも注目すべき新ユニットだし、トゥイーターにも新しいテクニックがみられる。価格は安くないが、それに見合った内容というべきだ。アンブとしては例えばHA−500Fがよい。カチッと引きしまり力ばかり惑じられるような最近のアンプは避けること。

ヤマハ CA-V1

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岩崎千明
 
週刊FM No.12(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 同じようなブラック・パネルのアンプがこの所ぞくぞくという感じで各社から出てきたが、さすがヤマハ。日頃のデザインの腕をこの新製品にも発揮した。これだけの仕上げと風格があるのは、V1だけだ。VUメーターがこのプロ志向のパネルにぴったりで雰囲気を盛り上げているのだ。
 スイッチを入れて淡いライトで照らされるメーターのカッコ良さ。音が出ると、これまた力強いこと。ここでもまた、さすが、となる。ヤマハは若いコのハートをよく掴んどるねえ。パリッとしたさわやかな中域に加えて、ドカンと低音の力強い迫力、キラリと高音の効いてること。要するにうまいのである。デザインセンスとサウンドのセンス。白いパネルの従来のシリーズとは明らかに違ったヤマハの姿勢をV1の中に見い出すことができるのだ。パネルのつまみ配置は今までとあまり変わらないがツマミを減らして扱いやすい。
 前作X1のさらに普及型としてV1を受け止めることはできない。X1が白いパネルであることからもわかるようにV1はまったく生まれが違うのだ。X1がマニア好みのクリアーな力強さに対して、Vlはもっと誰もが親しめる音といってもよいだろう。V1の魅力をさらに増すのは、同じデザインの優れたチューナーが揃っている点だ。揃えて前におくとそれはまさに若いファンにとってオレのオーディオ・マシンという満足感を与えるに違いない。SPに同社のNS−451ならぴったり。これほど馬の、じゃない、音の合うのもちょっとあるまい。

オルトフォン MC20

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岩崎千明 

週刊FM No.19(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 オルトフォンが、久方ぶりにMC型カートリッジの製品を出した。SL−15という傑作をデヴューさせてから何年になるだろうかその名もずぱり、「MC−20」と新しいネーミングで、いかにも自信のほどを、その名前からもうかがえる。MC−20は、まるでラピラズリーのような濃いブルーのボディで、よく見る今までのSL−15と外形は寸法までもまったく同じのようだ。しかし、その針先のカンチレバーは、今でより一段と細く小さい。
 MC−20は、まさに現代の技術によって、現代の音を背景として「オルトフォン」によって作られたムーヴィングコイル型カートリッジだ。その音の力強さの中に、オルトフォン直系の姿勢を感じとる事ができる。でも、この驚くほどの広帯域、分解能力は、まさに今日のハイファイの技術と、それによって来たるサウンドとを知らされるだろう。
 確かに、MC型は、MM型とは本質的な音の中味の違いを持っていることを、つくづく知らせてくれる。MC−20は、こうした点でもっともMC型らしさを持っているカートリッジだが、これは、もっとも老練なMC型メーカー、オルトフォンが作る製品であることを知れば当然だ。世界に、これ程MC型のノウハウを、長年蓄積してきたメーカーはないのだから。といっても、いまやMC型を作るメーカーは、はたして世界に何社あるだろうか。そこまで考えれば、MC−20の存在価値と、高価格の意義もおのずから定まるといえよう。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 想像し難い一風変った発電メカニズムでこれを技術的オリジナリティとしているこのミクロアコースティックQDC1eは、今日的な標準からいかにしても長いカンチレバーに前時代的な印象を受けてしまうが、その割には針鳴きも大したことなく、大へん不思議な振動系だ。どういう振動工学上の根拠にあるのか定かではないが、出てきた音を聴く限り新鮮でかなり強いイメージを受ける。つまり、ストレートにパンチをくらったような直接的なサウンドで明快な鮮かさと、クリアーな分解能とで音像の確かなところも好印象。低域は力強く、迫力も量感も十分あり、それもシャープなアタックの感じは、ホーン型低音のようなイメージで、しかもこれがローエンドまで延びているのもすばらしい。低域から中域での鮮明でち密な粒立ち、さらに高域へかけて引きしまっている。ただこの辺は少々うるさくなる感じがなきにしもあらずだが、高音の輝きに耳を奪われてしまうのは惜しい。

ビクター Z-1E, Z-1, X-1

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 かのフロアー型バックローディングホーンスピーカーFB5の発表で口火を切って以来、独特なスタイリングをもったセパレートアンプ、デジタルカウンターをもったクォーツロック・ダイレクトドライブターンテーブルなど、最近のオーディオ界の中でビクターの名が話題に昇ることは非常に多い。つまり製品開発の成果が、それだけ成功をおさめているともいえるのだ。その成功の中にあるビクターの最新型カートリッジは、驚異的な新技術こそもたないのは当然ながら、新型アームとともに、音を追求する高級オーディオマニアにとっては注目に値する製品だということができる。つまり新型アーム、新型カートリッジの機構そのものが、とくに良いということよりも、実際に音を出したときに、その良さを知ることができる。こうした音の良さは、最終的にターンテーブルやトーンアームを実際にアッセンブルしたときに気がつくことであり、コンビネーションの良さということができよう。
 Z1Eは、まずその力強さをもった明るい音色で、圧倒的な迫力を感じさせてくれる。ダイレクトカッティングの明解さを充分に感じさせてくれる音だが、細部の再現性については、いくらか不満が残る。ステレオ感も全体的に表現して、細かな定位感については聴きとりにくいのが欠点といえる。
 Z1は、1Eでの問題点が大幅に改善され聴感上、相当な広帯域感が得られる。左右前後の広がりも大幅に改善され、音像の再現性は1Eよりもかなり良くなっている。全体の音色は、やはり1Eに似ているが高域でのクォリティは、こちらの方が数段向上している。雑音に対しては1Eよりも気になる傾向があり、針圧の可変範囲もよりシビアになる。
 ビクターの最高級モデルであるX1は、まず音の立上りの良さが一番の特徴だ。ダイレクトカッティングの良さと、スクラッチの抜けの良さは、とくに感じられた長所といえる。全帯域にわたって鮮明で明解な音を聴かせるが、ピアニシモにおける音のディテールの再現においてやや誇張される傾向があることに気がつく。ステレオ感の再現、定位の確さは、さすがに高級カートリッジらしい良さだ。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 日本のダイレクトドライブターンテーブルのパイオニアとして、テクニクスの海外での人気は、非常に高く、国内においてもSP10MkIIの発表以来、他のDDターンテーブルにまた一段と差をつけた感がある。こうした技術指向の非常に高いテクニクスは、カートリッジにおいても、新素材・新技術に積極的にとり組んだ製品が数多く、他社との製品の差もそこにあるのが大きな特徴だ。
 テクニクスのカートリッジは、昭和43年に発表されたテクニクス200C以来、独特の円盤状マグネットとワンポイント・サスペンション方式が採用されている。マグネットはエネルギー積の大きいサマリウムコバルトが使われている。テクニクスのカートリッジといえば、205C/IIシリーズに代表されるといってもよいかもしれない。205C/IIシリーズは、最近ローインピーダンス型(250Ω・1kHz)の205C/IILと、高出力型(7mV・1kHz、5cm/sec)の205C/IIHとが加わった。さらに、205C/IIもマイナーチェンジされて205C/IISに発展している。
 270Cは、テクニクスカートリッジの中でも、もっとも普及型といえる価格で、耳あたりの良い好ましいバランスをもったものだ。高域での微妙な音のニュアンスは、普及型とはいえ充分に再現してくれる点が魅力といえる。ただし、低域の量感やエネルギー感は残念ながら今ひとつ物足りなさを感じてしまう。
 405Cは、チタンカンチレバーを採用したテクニクスの高級仕様を狙った意欲作といえるものだ。全体に強く抑え込んだフラットレスポンスの特性が頭に浮かぶような、ワイドレンジ感をもたせる音だ。ただし高域にいくにしたがってエネルギー感が増し、結果として低域の量感の乏しさを感じさせてしまう。こうした印象は、どうもテクニクスのカートリッジ全般について感じられてしまう大きな特徴のようだ。この405Cのもっているそうした音の印象は、音楽を無機的な表現にしてしまい、聴き手との間に距離感をもたせることになってしまう。音楽の中に飛び込んでいくような音というよりも、融け込むことを拒否するような印象を受けてしまう傾向がありはしないだろうか。
 205C/IISは、405の実用機種ともいうべき性質で出されたカートリッジ。実用的な意味での使いやすさから出力も標準的なもので405Cに比べて、その音はいくらかおとなしいといえる。405Cが音質チェック向きとすれば、こちらの方が一般的といえそうだ。
 205C/IILは、テクニクスの中でも405Cともっとも似た性質をもち、フラットな広帯域感が強く感じられる。405Cよりもいくらかナチュラルで無機的な印象は多少是正されている。205C/IIHは、本質的な音は、これまでのテクニクスと変らないが、中域から低域にかけての音が充実し、ソロ楽器も比較的よく出る。ステレオ感も充分だ。

スペックス SD-909

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 スペックスは、古くからMC型のみを製品化してきたという長いキャリアをもちながらも、その名は一部のマニアだけに知られている程度であった。その生産数もメジャーにくらべると日産にして数十個と少ない。もっともスペックスは海外での人気の方が高く、特にアメリカでは、このところMC型カートリッジがもてはやされているようだが、その先鞭をつけたのは、ほかならぬこのスペックスだ。
 SD909は、一言でいうとオルトフォンばりの低音感、高音のブライトネスをもつといえよう。全体に昔のオルトフォンのイメージに似た力強さも感じさせてくれる。しかも帯域は、比較的広くとられ、スクラッチも少ない点で良いといえる。音像の定位は良いのだが、左右、前後の音の拡がりは普通だ。
 MM型のように、周波数によってあやふやな表現をすることがなく、いかにも高級品らしさをもっている。日本製品には珍しく音の特徴をはっきりともち、海外製品と間違えるようなキャラクターをもっている。それだけに嫌われる要素ともなるかもしれない。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 一口に言ってハイエンドもローエンドもいかにもよく伸びた印象を与える。オーディオ界の中でもとくに現代指向の強いもので、それがわりあい明るいサウンドであるところにソニーらしい、若いファンを充分に意識している姿勢を感じ取ることができよう。
 XL45は、ラインコンタクト針、45Eは楕円針で、それぞれきわめて安定したトレース特性は国産カートリッジの中でも最上のひとつだ。あまりデリケートな扱いをしなくても、かなり優れたトレースを安定にやってのける。鮮明というほど鮮やかというわけではないが、音のディテールはかなり良くとらえて、しかもその内側の緻密さや力感も不足なく出してくる。ステレオ音像のたたずまいも、その後のバックグラウンドの部分もそれなりに感じさせてくれる。広がりの安定性もしっかりしていて安心させてくれる。
 XL35は、充分な力感をもち、明るいサウンドが身上といえる。くっきりとした音の表現は全体のバランスからみても、相当高いクォリティをもっている感じがある。XL45に比べるとまとまりとしては、この35の方にも充分良さをもっていることがわかる。ソニーの中では、このXL35がもっとも売れる製品なのではないかとさえ思わせる。
 XL25は、もっとも最近になってから出された機種ともいえるので、音はどちらかといえば、ソニーの、この一連のXLシリーズの特長でもある明るいパステルカラーのような音を再現してくれる。それほど広帯域をカバーしているわけではないが、中域にエネルギーをもったサウンドは全体のまとまりを良く感じさせる。
 XL15は、ソニーの中でのもっとも普及価格の商品として、決して単なるローコスト商品に終らぬ良さをもったカートリッジといえる。なによりも音楽のメリハリを充分に出してくれる点は、このクラスのカートリッジにとっては重要なことだ。音のクォリティよりも、初心者にとって大切な音楽の表情をそれなりに表現するのがよい。

ソノボックス SX-3E

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ソノボックスは、モノーラル時代からのオーディオファンならば、一度はその名を聞いたことのある永いキャリアと名声をもつメーカーだといえる。かつてはMC型に主力をそそいでいた感じだったが、このSX3EはMM型のカートリッジだ。マグネットは一般的な棒状ではなく、同社が日、米に特許をもつ球状のもので、エネルギー積の大きいサマリウムコバルト・マグネットを採用している。
 このSX3Eは、いかにも現代的な、広帯域カートリッジを目指している。サウンドイメージの上では、バランスもよく、聴きやすい感じをもたせている。このカートリッジの魅力は、小編成器楽曲などの中低域が充実していて不要成分を抑えたと思える聴きやすさにあるといえる。つまり全体的にはナローレンジの感じを聴く者に与えるのだが、その帯域内の音の充実さという点で良い。
 ステレオ音場の広がりは、あまり良くないのだが、自然な感じは損なわれず、他のカートリッジにはない独得なステレオ音像を再現してくれる点は、さすがにキャリアを感じさせる。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ムービング・コイル型としてはほかにない針先交換可能という、オリジナル指向をそなえたサテンの製品は、現在M117シリーズとM18シリーズの2系列にまとめられている。そして、これらの全製品は、振動系支点を明確にするために、板バネ2枚とテンションワイヤー1本とにより、厳密に一点化する機構が採用されている。この技術は明らかに音の上にも感じられ、MC型特有の、ごく澄んだ力強い音色で、密度の濃さからは独特の気品高い雰囲気に包まれる。
 それは、まさに優雅というにふさわしく、すき透った薄衣をまとったような品の良さをかもし出している。サテンというブランド名はそのまま高級な布地のきぬずれを思わせる。このサテンのピックアップの歴史は、かなり古く、モノーラル時代からのメーカーだが、Mシリーズの一連のMC型カートリッジにより、振動系の中からゴムを追放するという大きな技術テーマに取組み、現在では、その技術指向もいきつくところまで行ってしまった感さえある。こうした独特の技術指向を、おそらく気の遠くなるほど永い期間追い求めていく姿勢は、日本ではまったく珍しいといえるだろうし、現実に、研究の成果は着々と実を結んでいるといってよいだろう。
 M117Eは、まずこれまでのサテンにあったような針先のきゃしゃな感じがなくなり、扱いやすくなっているのが特徴だ。音も若いファンを意識した、立上りの良い鮮やかな音に仕上げている。色彩感も強く出し、ときとして高域のどぎつささえも感じられる。ただ、今までのもっていたサテンの一種の派手さとは種類が違って、図太いと感じさせる一面も持っている。117Xは、全体のバランスとしては、Eと驚くほどの差はないが、Eタイプで時々気になる高域の色づけが、抑えられていることが大きなメリットといえるだろう。
 M18シリーズは、ダイナミックレンジのきわめて広いレコードに対しても、そのディテールの再現性において優れ、デリケートな音に対しては絶妙にレスポンスすることができる特徴が大きくクローズアップされてくる。
 このM18シリーズの中でも、もっとも価格の安いM18Eは、全体におとなしくまとめられてはいるが、力強さに欠けるところもあり、全体に音の厚みが不足しているのが気になる。どうも、もうひとつサウンドイメージがひ弱になってしまうのだ。それに比べてM18Xは中域の厚みが増し、これまでのサテンになかったエネルギー感をもった音を再現する。ステレオ感の再現にしても好ましい音像をつくり、前後感も充分に再現しているところは、やはり高級機らしい。ただし高域については、ブラスがやや必要以上に輝くのが気になるところだ。
 ベリリュウムカンチレバーを採用したM18BXは、サテンのこれまでの技術的キャリアを一度に昇華させた意欲作といえるが、とにかく驚くべきことは、これまでのどのタイプの、どのメーカーのカートリッジにもなかった再生音を聴かせ、その音は、まさに超高忠実度再生といえるものであることに異論を唱える者はおそらく非常に少ないだろう。何といっても、そのダイナミックレンジは、これまでの数倍はあるように感じられ、それが再生音であることを忘れさせてしまうかのようだ。ただ、それがいかにもダイナミックレンジの良さを感じさせ、周波数帯域の広さ、を感じさせてしまい、結局、音楽を聴くことに集中できない人も出てくるようなことが起る可能性は十分にあるところだけが気になる。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 オーディオの総合的メーカーとしてのパイオニアは、この十数年来、プレーヤーにおいても見事な腕前をふるってきた。本来の専門分野でないのに定評ある企画力のうまさは、プレーヤーシステムでも個々の製品に発揮されてきた。
 ただ、この場合、不思議なことに、プレーヤーのもっとも重要パーツともいえるカートリッジには、良いものはまったくなかったのだ。これは驚くべき事実といえよう。ただのひとつでも評判を得たことはないのに、プレーヤーは売れ続けていたのだから。
 しかし、地道だが試行錯誤のあと、昨年PC1000が発表された。このカートリッジは、メーカーにとって待望のものだったに違いない。パイオニアのカートリッジが初めて絶賛を博したのだ。
 ベリリウム・テーパードパイプという、まだ当時どこのメーカーもなし得なかった技術によるが故に、量産は決して容易なことではなく、だからその良さは、必ずしも多く知られていたわけではないが、このカートリッジに接した者の間で深く静かに評価されているといった風である。
 このPC1000も発表以来一年を経て早くもII型にマイナーチェンジされた。
 鮮やか過ぎるといわれることのあったサウンドイメージをすっかり改め、暖かみさえも感じられるほどで、たとえばヴォーカルの自然な響きに飛躍的な向上を知らされる。一般にこの種の新素材を用いた新しい製品では、新しいサウンド志向を示して、鮮明なクリアーな積極的な音を特徴とする。このPC1000/IIも例外ではなく、そうした傾向のサウンドには違いないが、ごく高い品質レベルでそれらが達成されており、いかにも高級品たる深い陰影を伴っているのがすばらしい。
 PC550/IIは、PC1000/IIをそのままスケールダウンしたような音で、妙にこせこせとしたところがなく、ステレオ感の再現性も充分にもつ。各部分の細かなニュアンスはトップ機種にゆずるが、落ちついた音を感じさせる。
 PC330/IIは、とくにハイファイと感じさせない自然な感じをもたせているが、その低域については好感がもてる。ステレオ音像の再現も極端にくずれることがなく、入門者には使い易い。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 オンライフは、オリジナリティを充分にもった管球式セパレートアンプや、最近発表したセンセーショナルな近代的トーンアームなど、新しい技術をもった日本には珍しいオリジナリティを大切にするメーカーだ。
 オンライフのカートリッジは、すべてMC型で、OMC38ダイナベクターシリーズとして、15A、15AQ、15B、15BQの四つの製品がある。ボディは赤い透明なプラスティック製で、内部構造の様子が伺い知ることができるのが特長だ。MC型ながらMM型とほとんど変わらぬ高出力で使いやすさを大切にしているのは、マニアにとってはありがたい。
 今回試聴した製品は、全体に緻密な音で、エネルギー感も充分にもち、とくに打楽器に対してはMC型の中でも群を抜く再生をする。もちろんトレース能力も安定している。ベリリウムカンチレバーをもったOMC38/15BQは、ときとしてデリケートな音の再現で、オーバーに感じられることがあるのだが、15AQは、BQに比べるとソフトな聴き易さをもち、より自然だ。一般的なMC型に比べれば、鮮明度は充分高い。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 カートリッジメーカーの老舗として、まじめなオーディオマニアにとって人気のあるマイクロは、最近こそターンテーブルとアームによってその名を高めているが、VF型を始めとするカートリッジの分野では、非常に長いキャリアをもっている。現在のところ、カートリッジは機種数こそ少ないが、いかにも正直な商品だけを作り続けるまじめなメーカーとしての姿勢は、非常に好感がもてる。事実、その製品によって裏切られることも少なく、信頼度という点からも充分に満足が得られる商品をもっているのもうれしい。
 マイクロのカートリッジは、そうしたいかにもまじめな姿勢が感じられる色づけの少なさが特徴といえるだろう。単独商品としてもっとも安価のひとつが、このプラス1である。またその反面商品の中で高価かつMM型でありながら受注生産品というLM20およびMC型のLC40と、こうみると、超高級マニアと初級ファンの両極に意欲的な姿勢を、マイクロの中に見ることができよう。かつては、永い期間、プレーヤーの重要パーツとしてのカートリッジを作ってきたキャリアがあるマイクロが、技術蓄積を活かして、普及品でもバラツキを抑えた高級仕様を推進している。受注の数少ない高級品は、仕様も規格も他社より格段に厳格であることはいうまでもない。
 プラス1は、その力強く弾むようなサウンドと低域での量感とが大きな特徴だ。高出力で使いやすく、ステレオ感も適度に広く、高域のレンジもやたらに伸ばすことをせず適度な拡がりをもち、いかにも入門者向きの製品だ。価格からすれば、このトレース能力の安定感も抜群で、針圧の許容範囲も大きく扱いやすい。針先の動きが中域で充分ではないのが普及品の共通点だが、このプラス1ではそれも巧みに収めてある。
 LM20の方は、より軽針圧を目指した手作りの高級品であり、個々の特性がついている。MM型カートリッジが次々と出る中にあって、このLM20はかなり保守的な姿勢で作られている。サウンドは、全体に静かで、くせをまったく感じさせない。品の良さが少々過ぎるかと思えるほどだ。沈みがちの音であるが全体にスッキリしすぎて、そっ気ないくらいである点が判断の別れ目になりそうだ。LC40は、MC型としてはトレース能力が良く、全体にMC型特有のともすれば骨太になる音を、見事に抑えた素直な音をもっている。ステレオ感も端正で広がりもよい。

Lo-D MT-202E

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ギャザードエッジスピーカーやダイナハーモニーという、新技術指向の非常に強い、そしてその成果が充分に認められつつあるLo-Dから出されているのが、このMT202Eだ。いかにも高級カートリッジらしい広帯域感が強く感じられ、全体の周波数特性の抑えがよく利いている印象を受ける。
 こうした高級カートリッジのもっとも大きな特徴である、スクラッチを充分に抑えた感じや、周波数特性をフラットにした感じを充分にもっている反面、高域の再生においてとぎすまされたような冷たさを感じさせるところもある。全体にやや無機的な音になる点も気になるところだ。ステレオ音場の再現性は良く、針圧印加の許容範囲も比較的良いといえる。使いやすく、性能的には文句ないところだが、いかにも高価格だ。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ジュエルトーンは、一般的にはこれまでその名をあまり聞かなかった新しいブランド名だが、そのキャリアは、比較的永い。
 ここでとり挙げているJT333、JT555は、ともにソリッドブラックと呼ばれるカーボン繊維を使用したカンチレバーが使われているのが特徴だ。
 このふたつのカートリッジに共通していえることは、全体的に広帯域を目指しているのだが、中域のある部分で機械的な共振と思われる部分があるという点だ。
 音の傾向として、JT555はウォームトーンであり、音像はふやけ気味な点が気になるところといえよう。それに対してJT333は、クリヤートーンといえる。両者とも全体に広帯域であるという感じはするが、高域に少々ヒステリックな一面をもつ。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 この数年来、F8シリーズの大ヒットで、他社を寄せつけなかったほどの成果を上げてきた。F8Lから始まって、ごく最近製品のF8L'10によっても判る通り、今もこのF8シリーズはグレースの主力製品といえる。こうした同一製品に対して、交換針だけでそのサウンド指向を多数そろえるという今日的な商品構成法も、実はこのグレースのF8シリーズがその源となったわけだ。
 F8シリーズは全体に繊細感がその品位の高さを示し、その上、高帯域かつ透明なすがすがしさを強く印象づけられる。F8シリーズF8Lはそのすなおさがもっともはっきりと感じられる。
 F8Mは高出力型で力強さと高域・低域での充実感においてもはっきりと違い、広帯域感はおさえエネルギー感を考慮したのが特長で、小編成器楽曲にはむいている。
 F8CはF8ボディの特選ボディと特殊針先との組合せで、素直さにもっとも品のよい緻密なサウンドを得ている。きわ立ちのよい輝やかしい音。ステレオの音像の確かさと拡がりも、このF8シリーズ中もっともよい。
 F8Eは、ラインコンタクト型の針をつけた高級仕様といえるが、出力はやや低目でその代りに大へん広いハイエンドを感じさせ、新しいレコードでは針音(スクラッチ)が一段と耳ざわりにならぬが逆にイージーなレコードではチリチリと目立ってくる感じ。
 F8L'10は、この一年来、めっきり多くなったライバルを意識しての改良型としてデビュー。出力をやや大きくして、中域から低域へかけての充実感、器楽曲で今までF8にはなかった躍動感が付いてきた。
 F9シリーズはF8から飛躍して一層の軽針圧化と、今までの高域での細身なサウンドを突破ろうと試みた音作りへ積極的姿勢をはっきりと感じる。しかし、そのためのよりフラットレスポンスへの技術を、音へ移すのにあまりストレートであったためか、音のデリケートなニュアンスの違いを表現すべきところまでつぶしてしまったようだ。
 F9Uは最新作で、広汎な用途に適すると思われ、F9シリーズ中の標準品。もっともスッキリした音と広帯域感。ややおとなしく、中域の充実感はこのUよりもLが強く感じられる。針圧の融通性も高く使いやすい。
 F9Lは価格的に前者よりやや高価だが、音の方は中域から高域でやや派手なイメージを抱くのが意外。こちらの方が一年ほどデビューが早い。
 F9Pは円錐針の中針圧型。他の2倍といっても2・5g。さすが針圧は3gでもまた2gでもトレースOKで使いやすい。ステレオ感はやや狭まるが音像の安定はごく優れ、トーレス性も抜群。低音のどっしりした安定感が大きな魅力。
 F9Eはごく高価だが、広帯域感の十分なスッキリした自然さ。ステレオの拡がりの良さ。少々デリケートな針圧とゴミなどのついているのに対してトレースは不安定。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 高級カートリッジを唱えてスタートしたFRは、国内カートリッジメーカーの中でも、もっとも密度の濃い製品を作り、オリジナル技術を常に目指す意欲的なメーカーだ。あらゆる面で製品は、必ず他社にさきがけ、あるいは、他社をよけつけぬオリジナリティをもつ。それはMC型カートリッジにしても、あるいはライバルの多いMM型にしても、はっきりした特徴をもっている。最近の製品FR101は高品質低価格を目指した意欲的製品だ。この小さな専門メーカーが品質と量産とをいかに妥協するかが101の見どころだが、音の上からは確めにくい。やや中域のはなやかさと、積極的な音というのが第一印象だが、細かくつき正すと、結構広帯域かつ緻密な音だが、これに低域のひきしまった量感が加われば申し分ない。高出力であるのも、低価格であるとともに、ビギナーにすすめたくなる大きな理由だ。一段と高級な101SEは、音の分解能の点で一段と向上してアンサンブルの中の楽器の音像のきわだちが感じられる。FR5Eは、このメーカーの最初のMM型だ。トレースの安定性に、ちょっとばかり不足をかこってはいるが、それにしても、FRの透明なサウンドの特徴がはっきり出ていて、やや冷いその音は小編成の器楽曲やジャズには特にいい。
 FR6SEはFR6の向上型だが初期から格段に進歩して、もはや初期のおもかげがないくらいに現代的な傑作となっている。FRのいかにも透明なサウンドに、ますます磨きがかかり、その上、力強さも一層加わって、MM型ながらMC型に近いということば通りに器楽曲で、アタックや響きが鮮やかだ。歌やステージの歌劇など、つまり自然な発声とアリア風な発声の両面の歌に対して、大へんナチュラルな響きを感じとる。
 FRのMM型はただひとつのウィークポイントがあるようだ。それはトレースの対許容性ともいえるもので針圧にクリティカルな面がある。それもトレースそのものはかなり適応性があって20%やそこらの±に対しても、一向に差支えないのだが、針先の傷み方、あるいは針先がもぐってしまうトラブルを、過針圧によって起しやすい、といったらよいだろう。
 MM型でもトレーシングの優れているといわれるものにしばしばみられるこの現象にFRファンも気をつけねばなるまい。音の素質自体がよいだけに、愛用者からの忠告でもある。
 FR1はFRのオリジナル技術ともいえるMC型カートリッジの第一号製品だ。初期製品に比べてトレース力は抜群に向上し、針先も頑丈になり、音もずっとすなおに、しかもクリアーさも失わず、音の方は力強くなった。MK2は特にトレース特性が向上して、針先の損傷も今までの心配がうそのようだ。ただMC型特有の力強さがFRのMCにはなかったが、最近のMK3に至って静かななかに力強さもはっきりと感じられる。
 透明ということばに冷たさがつきまとうがMK3は冷たくなくて、かえって暖かみがある。節度のある折目正しい音という品位の高い、仕上し尽くされた感じの音だ。時々オーケストラなどにおいて、ふと、キャシャなもろさが出ることがなければ世界でも一級だ。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 市販品中でもっとも安い価格のカートリッジを作るメーカーとして、エクセルの名はとくに初級者にとって親しみがあるかもしれない。プレーヤーを単体で買ったユーザーは、おそらく最初にカートリッジを買うときにこうしたクラスを狙うであろうし、そうしたときに、少なくとも支払った金額だけのバランスだけはかなり良いが、とくに広帯域ということでもなく、中級ないしは普及製品にあるような音の細やかな変化が、そのまま表現できないというところがいつわらざるところだ。
 ちょっと聴いて、くっきりしているようなイメージを受けるが、それはあくまで音溝の音に比例しているわけではなく、とりこぼしがあるのは、高級カートリッジをつければわかる。高域での帯域をやや伸ばしたEXはCD−4対応型だが、出力がへって高域のかがやきがかえって薄くなりシンバルのあつみも物足りない。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 放送局のレコード再生システムを多く作る専門的業務用機のメーカー、デンオンのブランドをそのまま冠して、同じく業務用に開発されたカートリッジを基本として、市販品を作ってキャリアの長いメーカーだ。その質は、悪かろうわけがない。
 デンオンの場合、たいへんに明確で、はいっている音をくまなく拾いだすというピックアップ本来の働きを音のイメージとしてもっている。やや骨太のところもなきにしもあらずだが、高域のキラキラした鮮やかさが、全体の音のバランスに有効に作用して、デンオンならではのすばらしい音の世界を作る。MC型独特の美しさと共に、ステレオ音像のすばらしく整った様も大いに称賛できる。音質チェック用として、多くの現場でもつかわれており、その用途のために信頼性も高い。つまりデンオンのカートリッジのバラつきの少ないのはおおいに注目すべき特徴だ。
 DL107は、MM型カートリッジとしてデンオンが初めて、安定性と使い易さとを、価格をおさえた形で実現した製品。更にそれがDL109に発展して、帯域は驚く程拡大されて、現代風になった。一般にこうした改良にともなって、出力の低下をきたすのが普通だが、109の場合は逆に出力向上を得ているが改良というよりも、まったくの新種といえるだろう。さらに新しい傾向に即して針圧をやや軽くしたことによって、今まで市販品の平均水準より重い傾向であったのを、補うことになった。107にくらべ幾分か繊細感が加わって全体にフラットレスポンスをはっきり感じさせる。とくに唄において、この109Rの再現性は、国産カートリッジ中でも、もっとも優れたひとつであることをつけ加えておこう。針先を円錐から特殊楕円にした109Dは、帯域を5万HzまでのばしてCD−4対応型としたものだが、超高音はかえってうすい感じとなっている。中域もやや希薄に受けとれるのが少しばかり気になる。
 DL103はデンオンの最も初期からある代表的MCカートリッジだ。やや武骨な、ガッチリした音が、いかにも業務用というイメージを作り、それが103の個性として、多くの人に受けとられている。103の再生水準に関して、それを認めたとしてもこの骨太な音を好みに合わないと思うファンもいるだろう。DL103Sは、103の軽針圧、広帯域型として誕生した。価格的に一躍20%以上上昇だが、再生帯域の方は、かなり伸びているし、それも6万HzというMC型には信じられない広帯域であって、単なる楕円針の成果ではない。聴感的なワイドレンジ化よりも、全帯域をおさえこんでしまったという感じが強くて、特に中音域での、デンオン独特の充実感を少々うすめすぎたのではないかと思われる点が残念である。低域での量感もやや力を欠いて聴えるのはなぜか。どうやらステレオ音像の定位の良さからいうと、103Sも103同様に大変リアルな、きわめて明確かつ率直で、あらゆる音域において高い次元にあるといえよう。ただ、103の演奏楽器のスケール感が乏しい。

コーラル 777E, 666EX

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 スピーカーの専門メーカーのコーラルのことだ。スピーカーと同じようにコイルと振動系からなる同じような変換器を作るのだから、当然優れたものが出てくるだろうと判断するわけだ。事実MC型の777Eにおいて、少々粗いが力強さも量感もあるサウンドが、かなり良く出ていて、いかにもMC型らしい内容の濃さを思わせる。しかも、これだけのカートリッジが、今までMC型はおろかカートリッジの経験がないのだから。
 価格を考えれば決して高くはないにしても、これだけの名のあるメーカーなら、もう少し品の良さが音の中にあっても、と思う。MM型の666EXの方は、これもCD−4対応ということが建前のためであろう。本当はもう少し価格を下げても良かったのではないか。せっかくの高域の冴えも、少々浮足立っている感じ。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 オーレックスのカートリッジは、現在エレクトレットコンデンサー型とムーヴィング・マグネット型の2系列の製品構成だ。特にエレクトレットコンデンサー型は世界でも珍しい存在といえる。
 大変真面目な姿勢で、音に立向っているのは大企業らしく、カートリッジのような、ちょっと考えるとこの企業規模から、想像できない小粒の製品に、これほどの力をそそぐのが不思議なほど。その大きな成果がエレクトレットコンデンサー・カートリッジであるのは瞭然だが、そのあとのMM型でも結構、小さな専門メーカーなみのきめのこまかさを感じる。
 やや、無機的な感じのそっ気ない音は、大へん高い水準だが、少々スッキリしすぎて、豊かさはまったく感じられず、骨だけですけすけなほどの、肉不足の傾向だ。広帯域、かつフラットレスポンスはよいが、楽しさを音楽の中から引出してくれない。MM型の550Mでも幾分、こうした冷たさがおさえられているとはいえ、基本的に同じような音の姿勢である。音像の定位は小レベルまでも大へん良い。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 オーディオクラフトは、オイルダンプ型トーンアームで一躍脚光を浴びたメーカーだが、最近ではフラットタイプのシンプルなプリアンプAC3001を発表した。
 アームをスタート台にした、このもっとも新しいブランドのカートリッジは、新進メーカーらしく、新しい音を狙っている事はよく理解できる。決して単なる広帯域再生だけを求めず、バランスの良さの中に、音楽性を少しでもあざやかに盛り込もうと考えている。しかし力強さが音域の中の高域に片寄っているためか、演奏曲によってはそれが少しばかり気になって低域での充実感が欲しくなってくる。歌の声の乾いた感じも少し気になる。楽器なら輝やきというプラスも声ではそうではなくなってきてしまうのが残念だ。ステレオ感の再現性についても、かなり自然さをもっていて無理がないのだが、しっかりとした安定感をもう少し望みたいと思わせるところがあり、今ひとつ決らないもどかしさが感じられてしまう。つまり、ダイレクトカッティングの良さが別な意味で、その良さを薄くしてしまうのが残念だ。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 同じムービング・マグネット型でも、はっきりした特徴をVM型なりに音の上に示す。高出力かつ緻密な音色は、VM型の技術による確かな結果といえよう。初期の製品において充分に感じられなかった高域の繊細感も新製品では、他社の製品をしのぐほどにもなった。
 AT11dは、8千円という普及価格なのに、堅固なシェルをつけて、使いやすい高出力で、実用上針圧に対してもラフな使い方が許され、まさに一般初心者のすべてに気楽にすすめられる。しかし、全体から受ける印象として帯域の物足りなさ、音の大づかみなところが、高級カートリッジとしての条件に欠ける理由だ。力があって、出力も高いのは、いかにもこのメーカーの特徴を端的に示している。むろん単独商品の価値は充分だ。
 AT13dは、シバタ針をつけて前者を向上させたものだ。しかし針先の変化そのものが、音そのものに強く反映するとは、とても信じられないぐらい変ってしまった。単純に力まかせという感があった11dに比べ、音のメリハリというか、節度がはっきりとそなわって、まるで一桁も二桁も上のクラスのような明解さをもつ。さらに、今までやや不鮮明だったステレオ感もきわだって良くなったのも見逃せない。この価格帯の推選品。
 AT14シリーズは、テクニカがはっきりとその方向を新しい音の路線に求めることを意識したシリーズのように思われる。一口でいうならば、今までのどちらかというとくっきりした音から、もっと耳当りの良さを追うことを考えたのではあるまいか。このシリーズだけがおっとりとした甘さ、ないしは暖かさに通じる、といえばいい過ぎか。ただ高域に関しては広帯域感はかなり強くなる反面、低域の力強い量感が抑えられている。
 AT14Eは、楕円針の標準の状態で出力もやや大きく誰にでも使える良さをもっている。
 シバタ針つきのAT14Saはやや高域のすみきった感じが出てきた。ステレオ用にも良いが、CD−4にも対応できる割安な製品。
 AT15シリーズは、テクニカの目下の高級グループで、15Saは、針を下すやそのスクラッチの静けさと、その広帯域感からいかにも高水準をねらった音がする。非常に細かな繊細感が音楽の中のひとつひとつの音をはっきりと聴かせてくれるのが大きな特徴。
 しかも、こうしたカートリッジがしばしば音のひ弱さと言われてしまうのにテクニカではこれがない。AT15Eは音の鮮明さということばどおりの輝きを保ちながら、つめたくならないのも良くさすがに高級品というイメージをもった音だ。
 AT20SLaは、さすがに高級機種らしく超高域でのステレオ感を安定し、スクラッチの質もよく、音楽のジャマをしないのはさすがだ。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 スタントン・マグネディックスは、アメリカ・オーディオ界のボス的存在として知られるフォルダー・O・スタントンを社長とするピカリングと同系の会社である。本来業務用のみのカートリッジをつくる専門的なプロユースのメーカーだが、そのブランドイメージが高くなったことから高級オーディオマニアから注目を浴び、コンシュマーの手にも入ることになったという。ピカリングの技術を土台とした、安定志向の兄弟ブランドといえる。
 スタントン500AAは、このメーカーの中では低価格のクラスに属する手頃な製品といえる。出力は、聴感上非常に高く感じるが、とくに広帯域化を狙った音ではなく、力強い中低域をもつ安定した響きをもつ。左右に大きく拡がるタイプではなく、適度な音響をつくるが、全体に聴き手に近づく音だ。
 600EEは、500シリーズと同じブロードキャスト・スタンダードシリーズに入る。
 その音は、周波数バランスはかなりナローレンジと感じさせるが、帯域内でのピーク・ディップがあまり感じられず、聴きやすい音だ。音のクォリティそのものは相当高く、中域での音離れも良いので、比較的リズミックな表現は得意だ。
 680シリーズに入る680ELと、ハイファイ志向の680EEとがある。680ELは、まさに放送局用ともいえる音を再生し、帯域内での音の緻密さを充分にもってバランスは悪くない。ステレオ音像の広がりも、カベをつき抜けるような空間の広さは感じられないが、音楽の確かさを充分に感じさせる。それに対して680EEは、家庭再生用としての音のバランス、やはり中域の確かさをもちながらも、広帯域感は充分にもち、トレース能力もきわめて良いのが特徴といえる。このシリーズは、まさにスタントンの本領を出しているが、次に出る681シリーズは、現在のスタントンの2チャンネル専用のトップモデルにふさわしいクォリティを聴かせてくれた。
 681EEは、比較的オーソドックスなサウンドイメージをもちながらも、他のアメリカ・カートリッジとは多少違ったハイグレードな再生音が得られる。渋さを感じさせる落着いた中低域と、鮮やかすぎない適度なブライトネスを持った高域をもつ。全体にスタントン・カートリッジは、広帯域感が過剰にならないのが特徴となっているが、この681EEの場合は、それにもまして音の粒立ちをみがき上げている点で、ハイクォリティ・サウンドということができる。ステレオ感も、これまでになく、安定して拡がりが得られる。
 681トリプルEは、681EEのグレードアップ版といえる高性能タイプだ。スタントン・ニューキャリブレーション・スタンダードシリーズと呼ばれる。この音は、まさに大人の音を感じさせる。どのプログラムソースに対しても高級品のイメージをくずすことなく、まったく音楽を安心して楽しむことができる点で、他のメーカーのトップ機種に通じている。ステレオ感の安定した再生ぶりは、もちろん優れているが、それ以上にレコードにおさめられているスペクトラムの再生はシュアーV15に対しても、一歩もひけをとらない。トレース能力も一段と安定して、スタントンのキャリアを充分に感じさせてくれる。

ソナス Red Label, Blue Label

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 アメリカの軽針圧カートリッジの旗手として有名なP・E・プリチャードが新しく起したカートリッジ専門メーカーがソナースだ。彼はインデュースド・マグネット方式の発電機構を考案した。ソナースというブランド名をそのまま型名とし、針先の交換により三種類のバリエーションをもっている。サウンドイメージは、やはりADC・Qシリーズにつながる明るい音だ。
 最高価格のブルーラベルは、積極的な音をもち、リズミックに弾む低域は力強さも充分にもつ。中域から高域にかけては、緻密な粒立ちのよい音を聴かせ、全体にフラットだがより現代的な音楽再生に向いている。
 レッドラベルは、聴いていて耳当りのよいソフトな再生音が得られる。音楽ジャンルにとらわれない特徴はこの二機種に共通した良さといえるが、レッドラベルの場合、音像もソフトに表現する。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 シュアーは、今やマイクメーカーというよりも米国を代表するもっとも高名な、そして高級なカートリッジの量産メーカーだ。
 ステレオの初期において、他社にさきがけてMM型の実用的な高級品を完成した。アメリカ国内のライバルメーカーが追いつくまでに、音溝の追従性を技術的テーマとしてカートリッジを軽針圧化したのが、今日のシュアーの礎だ。
 今日のすべてのムービング・マグネット型カートリッジが、このシュアーの影響を受け、おそらくすべての技術の源であるといって差しつかえあるまい。
 約十年前に、すでにV15を完成し、それは今、第三世代になっている。
 シュアーV15タイプIIIは、おそらく誰でも一度は手にしているだろう。高級ファンにとって、このカートリッジは少なくともひとつの基準ないしは、信頼の源点にあるはずだ。
 タイプIIIになって確かに伸びた高域は、低域からまるで定規でひいたようにフラットそのものの特性をもつ。これは驚き以外の何ものでもない。しかも、この特性が世界的に売られる量産品に保たれていることこそ、注目しなければならない。
 やや甘いローエンドも、ちょっとばかり細身な中低域も代々のV15の個性でもあり、特徴でもあった。それが気にくわなければ、タイプIIIとは妥協できない。何はともあれ、これが音楽再生の基準として、もっとも広く使われている事実。これだけで、このカートリッジの価値は、あらゆるファンにとって必要であろう。ステレオ音像の無類の広がりも、トップモデルにふさわしい。
 M95EDは、V15タイプIIIの実用型ともいうべきモデルといえるが、単に実用型にとどまらず低域の充実感がプラスされたことによって、音が積極的な面をもつに至っている。
 ヴォーカルが聴き手の間近に再現され、小編成器楽曲が迫力をもって再現されるので若いファンにとっては喜ばれよう。無論、相対的に中高域がややおとなしいという傾向をもち、それがクラシックの、とくに弦楽器の再生において好ましいともいえる。ステレオ音像は、ふやけることもなく、適度な広がりをもたせ、さすがにシュアーのキャリアを物語っている製品といえる。
 SC35Cは、一般マニア向けというよりもディスコテックなどの業務用であり、針圧指定値が、5gということからも、まさにヘヴィーデューティであることがわかる。そのごついカンチレバーを通して出る音は、まさにナローレンジには違いないが、まったく確実な情報を伝えてくれるのがもっとも大きな特徴ということができる。
 M91GDは、シュアーの特徴ともいうべきウェルバランスの再生音が得られ、決して単なる普及機に終らない良さをもつ。音楽再生のカンどころをおさえた周波数バランスをもち、シュアーのもうひとつの特徴でもある針圧に対する印加幅の広いことも、この機種についていえる。トレース能力も実用上かなり高く、そうした点も高く評価したい。
 M75Gタイプ2は、ローコスト機種ながら、音楽再生上、一般マニア向けというよりもより音楽を大切にするファンに推められよう。それほど広帯域とは思えない再生音は、音楽ジャンルを問わず素直なバランスを聴かせてくれる。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 全米一のキャリアを誇るピカリングは、もっとも知れわたったカートリッジの量産メーカーだ。
 製品は充実し、その品種は多い。しかし、はっきりとその品種はランク分けしてあるので、製品をいかに選ぶかはユーザーの志向さえ定まっていれば容易だ。丸針つきのローコスト機はオートチェンジャーやイージープレイ用として有効で高出力かつ音量が十分に感じられるスペクトラムバランスをもち、高級品ほど広帯域で、最高級品種はCD−4対応の高性能品だ。
 V15マイクロIV/ATは、オートチェンジャー用とされる高出力型で、価格的にも国内にある海外製品中でも最低価格品だ。中域のガッツある力強いサウンドと弾力的で量感のある低音がリズムをよく再現してくれる。高出力かつ安定なトレース性能は大変ゆとりがあり、針圧の範囲もごく大きい。ステレオ感は広く音像が大きくなりがちだが間近に迫る感じだ。
 XV15/400Eは、新シリーズ中の普及価格の実用機種になるが、これはピカリングらしくないウォームトーンの広帯域型だ。といってもハイエンドは高級品なみとはいかないが、ピカリングとしては珍しくおとなしい処理で、しかもきびきびした高域から中域の表情ゆえに甘さはない。低域での弾むような腰の強いエネルギー感は、ここでも幾分かひかえ目なバランスを保つ。
 XV15/1200Eは、ピカリングの中で、手頃な高級品をひとつ選ぶとしたら、この広帯域型だ。それはいかにも力のある音の粒立ちをもち、甘くはならないが、そうかといって鮮明に過ぎるということもないピカリングの良識をはっきりと感じさせる。低音は量的には多いが決して音像がふやけるということもない。やや華やかな中域から高域にかけてのきらめきも潤いがあるので、音像を乱すことはなく、雰囲気のある音場を再現する。音像の定位は、きわめて良く、ちょっと聴いた感じではそれほど高域が伸びているとは思えないのに、ステレオの広がりから判断するハイエンドは、バランスよく保たれている。ヴォーカルが比較的間近かに、確かな音像をつくるのも、若いファンには向いているといえよう。
 UV15/2000Qは、1200のジュニア版ともいえるモデルだが、この種のカートリッジにありがちな音の薄くなるようなことがそれほど感じられず、ピカリングの特徴は充分にもっている。ピカリングからのCD−4対応型の中では比較的安価なモデルだが、4チャンネル再生に、アメリカンサウンドを得ようとした場合には、充分期待にこたえてくれよう。
 XUV/4500Qは、このカートリッジが出た当時、ピカリングの製品ということがとても信じられなかったくらいで、今までになくおとなしい、ひかえめな音だ。一聴してハイエンド、ローエンドを充分に伸ばした超広帯域型だということを知らされるが、聴き込むにつれてそのハイクォリティな音を感じとることができる。
 CD−4対応型として出されたのは無論だが、それ以上にピカリングの製品の中でも、最高クラスに位置するという、いわば技術的レベルを示すイメージ製品としての価値も大きい。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 デンマークは陸続きのいわゆるヨーロッパ大陸の典型的オーディオメーカーといえる体質で、そのサウンドには、低音の力強い量感と、その上に支えられた厚い中音部、さらに高域の輝やきがバランス良く音楽再生を構築する。それに現代オーディオの基本姿勢ともいえるワイドレンジ、フラットレスポンスをいかなる形で融け込ませるか、がMC型新種のテーマで、何度目かのアプローチの結果がSL15の成功だ。MC20はさらに低音の引き締ったエネルギーとフラット特性の熟成である。SPU−G/E以後、永くMCのみだったオルトフォンもM15以来、いくつかのMI型にも積極的で、昨年始め以来広帯域型ともいえるVMS20がその最新モデルとなっている。
 SPU−G/Eは、いかにも豊かな低音ここにありといった厚さと量感がたっぷりしているが、これは少々質的にふくらみすぎ、引き締った筋肉質ではない。だからローレベルでの低域は、どうしてもホールの響きのようにいつまでもつきまとって、今日的な意味で冴えているとはいえない。
 この低音の厚さにバランスして高音の輝やきがまたきらびやかである。中低域から中域はソフトながら芯の強さがあって内部の充実を感じさせるが、これも分解能力の点では物足りない。
 SPU−GT/Eになってトランスを内蔵する場合、使用上便利この上なく、リーケージによるハムも心配ないのも凝り性の初心者向きといわれる理由だ。しかし低音は一層ゆたかでまさにふやけてしまう。またハイエンドとローエンドでの伸びが抑えられたので、一聴すると苦情は出ないが、トランスを外して確かめれば2度とトランスをつけたくなくなるほどだ。当然ヘッドアンプを欲しくなりSPU−G/Eが主体となってくるに違いない。
 SPU−A/EはAシェルに入っただけではない。明かにカートリッジの差があって低域は伸びていないがずっとおさえられ、全体にそっ気ない音になっている。むろん細部を聴けばオルトフォンの中域であり、低域でありバランスではあるが。でもステレオ音像の確かさからSPU−Aの良さはもっともはっきり確かめられよう。拡がりは十分ではないが、音像の定位はピシリと決ってくる。
 SL15MKIIは、かなりワイドレンジ化を進めた製品だ。SPUとは全然質の違う低音はよくのびてゆったりしているが、量感はおさえられている。ハイエンドもよくのび静かさが強く出てきて、現代志向が強い。きめの細かさは粒立ちの粒子が一段とミクロ化して、分解能力が格段だ。ヴォーカルのソフトな再現性は迫るほどであるが、少々作り物といった感じもある。
 SL15QはCD−4対応型で、高域のレンジの拡大がはかられているが質的にはSL15MKIIの高級品といったイメージ。
 MC20が今回の大きなポイントだが引きしまった力強い低音と緻密な中域が見事だ。ハイエンドの伸びも注目できよう。トレース能力も見事。
 VMS20Eは、SL15のMI型とでもいえるサウンドで、低域がややソフトで耳当りよいが、オーバーではない。オルトフォン全製品中、全体に広帯域感がもっとも強い。
 M15EスーパーはSPUのスペクトラムバランスをサウンドに秘めたMI型でトレース性能の点でもシュアーV15を凌ぐほどの実用性能である。

グラド FCE+, F-3E+, F-1+

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 発売以来、実用性能一点ばりのためか、外観的な面では、何か時代のずれがあって、センスの良さが少しもないが、逆にこのごつい形が、実用的なオリジナリティを創っているともいえる。
 音の方は、外観のひどさにはほど遠く、かつての音楽的センスがフルに生かされて、きわめて好ましい力のある帯域内のバランスを作っている。中域ではややソフトというか耳当りの良さを持ち、いわゆる疲れることのない、接しやすい音だ。この中域を中心に、粒立ちの良さを作る中高域の明るく引きしまったサウンド、さらにそれ以上ではどぎつくならない程度の、さわやかに輝く高域、加えて低音は決してローエンドまで延びていないが量感と力強さとがバランスしている。
 こうしたサウンドは、どちらかというと米国のメーカーよりもヨーロッパのそれに多いので、米国製カートリッジとしてはかなり強い特長として受けとられているだろう。
 FCE+は海外製品の日本市場価格としてはもっとも低価格であり、それでさえはっきりとグラド特有のサウンドを示しているが、中域での甘さはおさえられ力強さを感じさせる。ステレオ音場としてはあまり拡がりはないが、音像の定位はきわめて確かで、低音に至るまであらゆるレベルでふらつくことはない。ただスクラッチが目立つのが残念だが価格から考えれば無理か。
 F3E+は一万円を超える価格で、国内製品と実際価格としても変ることなく、しかも1gの針圧でトレースは確かであるし、高音域の延びはずっと拡大され、広帯域指向を狙っている。やや高域で独得の輝きがあるが、決してうるさくはならず、再生上きらめくような音楽的な鳴り方を示してくれる。中域の耳当りの良さはここではグラド本来のもので、FCシリーズのような力強さはなく、バランスもゆったりした低音感の豊かさに支えられて聴きやすい。ステレオ音像ほ、高域まで拡がりよい空間にソロの音像が、少々小さめに定位し、高級カートリッジなみにその確かさを感じる。
 F1+はグラドの高級品種で、さすがにハイエンドの十分な延びが、全体の音を静かにし、品の良さをプラスするのに有効だ。スクラッチの静けさも特筆できる。

ゴールドリング G900SE

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岩崎千明


ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)

特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より


 英国のオーディオ機器には、かなりはっきりしたサウンド志向が共通的にみられる。それは昔からのスピーカーにズバリと出ているのだが、ローエンドにあまり延びていない低音の弾むようなエネルギー感、中低域のねばるような甘さ、中高域は一転して華麗さを強め、さらに高域でハイエンドにすっきりと延ばしつつ、きらめきを加える、といったスペクトラム・バランスをもっている。ゴールドリングという英国で数少いカートリッジもまったくその通りであった。それが今回大幅の改良を受けて新製品となったが今までとはまったく違ってしまった。G900SEは、今までのどぎつさが全然おさえられて、極めて高い品質を感じさせて、驚異的な向上を音の上で感じさせる。フラットレスポンスとワイドレンジ化への志向をこのカートリッジも持ったのである。しかも中域での心地よいあまさは質を高めてそのまま受け継がれており、高域のクリアーな品の良さと加えて実に優雅なサウンドイメージを作る。高価になったがそれに見合う向上だ。

EMT XSD15

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岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 現代の高級カートリッジのおびただしい優秀品の中にあって、このEMTのプロ用に日本のファンが目をつけた理由は何なのだろう。おそらくその根底にオルトフォンSPUへのノスタルジックな要望と軽針圧カートリッジとの融合があるのだろうと思われる。事実、XSD15は、アームとのコネクター以外プロフェッショナル型のTSDと変らず、その音はどっしりして力強い低音に支えられた中低域の厚さと中域以上でのすばらしい例えようのないきめのこまかさと鮮鋭な分解能力とにあろう。それはまるで西独の観光用カラー写真にでもみられるようなすみずみまであくまで克明な本物以上のスーパーリアリズムにある。だからリアルを通り越して悪いというのはないし、この超現実感の魅力は一度接したが最後、ふり切ることはできなくなる、妖しい魅力でもある。ステレオ音像の驚くべき確かさ、やや中央に集りがちなスケール感さえも再生音楽をいっそう本物らしくしてしまうのだ。

岩崎千明


ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)

特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より


 エンパイアは米国の電気音響部門中心の大規模な総合オーディオメーカーで、主力はスピーカーとプレーヤー・カートリッジなど変換機器を中心としたメーカーだ。カートリッジもMMではなくムービングアイアン方式の音質的にも技術的にも他社とは違った所に位置していて、サウンドの面から強いオリジナリティを持っている。つまり、どちらかというと、米国系の一般的大メーカーの平均的傾向でもある繊細だがデリケートな音とは違ってヨーロッパ系に似た力のこもった張りのある力強い弾力的な音が本来の姿勢であった。ところがこの数年来、力強さを押さえ、品の良さを表面に打出してシュアーと争ってきた。その最終的な製品が1000Zであった。一昨年から再び、かつての力強いサウンドが製品によみがえってきて、その意欲作4000の大成功がこれに自信を与えることになって、今年はすべて主力製品は4000を受けついだ2000Eを加えたニューラインアップだ。

 その音は、広帯域かつ、中低域から低域にかけて力強く、張りのある音だ。しかもハイエンドは十分に延びてスッキリしており、輝きも適度に持って明快なサウンドを特長としている。

 エンパイアの4000以後のもっとも大きな特長は針圧の許容範囲が、適正値を中心にプラス・マイナス100%ぐらいの大幅な点であろう。4000以前の軽針圧高級品1000Zでは、この点がとかくいわれて、ほんの少しでも重すぎると針先がもぐってカートリッジのボディの下を盤面でこすってしまうという初歩的なトラブルが多くあった。かといって時代の至上命令、軽針圧化のためにはカンチレバー支持をできるだけやわらかくしなければならず、この辺がエンパイアの新型全般の最大の利点をなしている。

 2000Eは、もっともポピュラーなタイプで昔からのエンパイアの伝統的路線でもあるメリハリの効いた明快なサウンドを持つ。聴感上、レンジは広くないが、歌などの間近な再現性、楽器のパンチあるサウンド。誰にも使いやすく気軽に音を楽しめるカートリッジである。その上、音場の拡がりは十分でないがステレオ音像の明確な定位もすばらしい。

 2000E/IIIは、2000とはまったく違って、これは4000D/IIIの普及型といった方が近いだろう。レンジは、4000ほどではないにしろ、すばらしく広帯域かつ、その高域は決して薄くなく輝きがあり、中域の充実感と低域のよく延びた量感とバランスよい再生ぶりだ。やや中域での力強さが控え目で歌などでそれを良く感じられる。

 4000D/IIIは、価格からは他社のトップクラスに相当するわけで価格からすればこれは良くても当り前ということになる。だがそれにしてもエンパイア、シュアーやADCとはまったく違った路線から推めて、極点に達すると、他社の最高価格品と結果的に同じ方向へひたはしり、ということになるのだろう。だから4000は低音感にパンチがあり、力強さを音の芯に持っているという点以外は、米国他社一流品と似ているといえよう。4000D/IIIはこうした僅かの差がもっとはっきりした形で感じられ、ステレオ音像のすばらしい確かさが違いとなっていることが特長だ。むろん高価だがこの差は数字として性能的、技術的な差なのだ。

 2000Zは1000Zの改良型でこれのみが広帯域型で、かなり控え目な細身のサウンドで、針圧のクリティカルな点も旧シリーズ直系だ。

岩崎千明


ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)

特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より


 西独のもっとも伝統を誇る音響メーカー・エラックはハイファイ初期以前から専門の音響電機変換器の名うてのメーカー。日本市場で名を知られてきたのは比較的新しいが全ヨーロッパのこの分野での草分けでもある技術技術力を背景とした優秀なカートリッジは文字通り世界トップクラスだ。全体にバランスの良い音と中声域でのソフトながら充実した鳴り方が、他の米国製品などにない魅力的要素として重要なポイントだ。一般にMM型の中音域はMC型にくらべてどうも希薄になりがちなものだが。

 STS155−17は最下クラスである。この上の品種STS255−17と共に円錐針で、針圧もこの2種がやや大きい。一万円台の前後にあるこの2種は共に高出力MM型でサウンド的にもよく似ていて安定した低音と、バランスの良い帯域が特徴。155の方がいく分低音での力強さを持ってより若いファンを意識したものといえる。あまりこまかな表情は望むのが無理だが、大づかみに捉えて音楽の楽しさをよく出してくれる。高域での鮮かさもほどほどにおさえていて、安物というイメージは全然ない。

 STS355Eは一段と軽針圧のSTS455Eと並んで楕円針つきの主力品種だ。きわめて広い帯域特性は、音溝に針先の入ったときのスクラッチの音の静けさからも判断できる。このクラスになるとソフトな感触ながらも音の粒立ちの良さが出てきて、クッキリとした音のディテールが中域から高域にかけて一段と加わる。歌などでこれが、美しい生々しさを作る。重低音域での豊かさは455系で、音をマクロ的にまとめる。

 ステレオ感の自然で、拡がりの良いのもこのクラスの大きな特長だ。エラックサウンドの特長ともいうべき豊かな音の厚さは、ステレオ感の十分なる拡がりが大きな貢献をしていよう。低域で音がゆったりしていながらその音場がふやけたりくずれないのも、エラックのMMの良さの重要なポイントだ。こうした特長はエラック共通のものだが普及クラスではそれが十分に出てこないが。中級品でははっきりと音像のスケ−ル感と定位の良さを誰しも認めることができよう。

 STS455Eでは355よりさらに暖かさとか自然感が増して、一層聴きやすいが、粒立ちはさらにこまやかで、分解能力も一層向上している。

 STS455のさらに上級機種がSTS555Eである。高域の拡張が一段と増し、音域全体にわたってサウンドとしてもスッキリとしたイメージだ。低音域も高音域もよく延びているが、力強さという点はずっと押えて、きめのこまかい音だ。楽器の多い時にその細部まで十分にクローズアップさせるほどに、粒立ちがこまかい。しかも全体の厚さも出せる。ただ、中声域のゆたかさ、あるいは厚さとなると455に一歩をゆずる。

 STS555Eをより広帯域化させた上、その針先をシバタ針にしたSTS655D4は、CD−4対応型だ。超高域でのカッチリとしたきめこまかさを一段と充実させた音でその違いは確められるが、ステレオ時の音の厚さとかゆたかさが少々物足りなくなるようだ。

岩崎千明


ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)

特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より


 デンマークといえばオルトフォンで他の名のイメージはどうも影がうすれてしまう。B&Oの場合、決してただカートリッジのみを作るメーカーではなくて総合的なオーディオメーカーであり、特にこの数年来、B&Oのオートマチック・プレーヤーで日本でもすっかり注目株になってしまった。当然、そのカートリッジに対しての関心が高くなり、これがまた意外にいい。オルトフォンと同じ国だからサウンドイメージとしては似ていたところで不思議はなく、オルトフォン本来のサウンドとは同じ源から端を発しているのではなかろうか。つまり、決して広帯域ではなくかなりはっきりした低音と高音での強調が、全体のサウンドの基礎をなしている。B&Oではオルトフォンよりそれが一段と強く、B&O独特といわれる鮮烈なサウンドを形成してきたようだ。新型ではそれを脱しつつあるとはいえ基本的にはそうした路線は今も続いているといってよかろう。高級品ほどそれは大幅に改められて今日的な広帯域フラットを求める方向にある。

 MMC3000は、昔ながらの低音強調的、力強いサウンド。中域は厚く、中味の濃いという感じで、ちょっと聴くと粒立ちは良いが、実際に永く聴くと地が出てしまう感じ。しかし安定した再現性と高音の輝きもあるバランスの良さで、初級ファンには推められる。

 MMC4000は、格段と本格派で、広帯域感もずっとそなわり、高域のスッキリした延びが、これ以上の上級機の共通的特長だ。中域での充実感も一段と増し、それもはるかにち密になって細やかな表情の再現性が、歌などによく表れる。低音の力強さも、一段と引締った充実感として感じられる。高音域の輝きは意識的な面がなく品位も高い。概して、3000の高級化というより別種の感じだ。

 MMC5000は中域の充実感がますます加わり、ぐっとクリアーだ。低域の力強さも中味のずっしりつまった厚さとして感じられる。高域の輝かしさを加え、全体にバランスのとれた高品位の鮮明で的確な音。

 MMC6000は、MMC4000に一段と品の良さを加えたイメージで受けとれる。こまかい表現力の拡大とより広帯域化を図りゆったりした低音と、刺戟的でない中音を与え、大人の音楽ファンに向けたものだろう。

デッカ Mark V, Mark V/ee

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岩崎千明


ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)

特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より


 MKVは、従来の路線上にあって、独得の力強くダイナミックな迫力を特長としている。あくまでめりはりが効いて、音の立上りを強調しながら表現してしまうため、ピアノとか打楽器では、思わず息を止めてしまうほど鮮やかできれいだ。その反面、歌になるとどうしてもサシスセソが目立ってきて、それが気になってどうしようもなくなってしまうほど。単独の楽器のスケール感はよく出てるが、オーケストラや、ステージ感となると不足気味。

 Veeは楕円針付なのだが、音はかなり違って、大へん広帯域感が強く、全体のイメージとしてスッキリした音となって感じられる。音の粒立ちはV同様たいへん優れているが、Veeの方がはるかに細かい粒子を思わせて、歌などの子音の強調感がずっと押えられている。オーケストラの楽器の分解能力もよりこまやかで、スケール感も出てきている。定位は抜群によく、安定した再生音を聴かせてくれる。

AKG P6R, P6E, P7E, P8E

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岩崎千明


ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)

特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より


 すでに市場にあったシリーズを一新して、今までのゴツイ外観を改め、従来より格段に聴きやすい音となった。ヨーロッパの音響製品に共通の、きわめてち密なサウンドと、低域、高域の力強く張りのある充実感がAKGのカートリッジにもみられる。

 P6Rは、もっとも普及価格のもので、名前から円錐針のついたものと判断される。この品種のみが、やや重い針圧を要求されていて、サウンドの上でも他とは少々違ったイメージを受ける。つまり力強さの外側に厚い衣をかぶらせたような、従って耳当りの良い暖かさ、まろやかさを感じさせ、加えて低音域でのどっしりした重量感が音全体のイメージを大きく変えてしまっている。あまり細かい表現は不適だが、全体を大づかみに捉えて聴きやすく再生する、といった風で、歌なども聴きやすい。バランスの良さがこうしたサウンドの魅力の根底を作っているのだろう。

 P7Eは、P6Eとよく似ているがP6Eのような力強さが、いく分おとなしくなっている。P6Eではくっきりしたクリアーな力と感じられるイメージがあったが、それに対してP7Eでは、もっとさわやかな新鮮さとなって、力強さもないわけではないが品があり、ヨーロッパ製ならではのソフトな耳ざわりを醸し出している。高域でのスッキリした冴えた響きも意識的でなく、品位が高い。ステレオ音像も、十分な拡がりの中に安定な確かさで定位する。ステージ感も要求されれば、最高の水準で再現してくれるし、歌などでは、きわめてリアルで自然な形で音像が浮かび出す。

 P8Eは、最高ランクだけにまるで拡大鏡でのぞくようなミクロ的な分解能力が何より見事だ。くっきりと、こまやかな音の表現をやってのける。ただその反面、少々鮮かすぎて、ソフトフォーカスのニュアンスにかけ、雰囲気のある再生には不向き。力強くスッキリした低音、キラキラした鮮明な高音域、加えて新シリーズ中もっとも充実感のある中声域。ステレオの拡がりも極めて大きく、定位の良さも抜群で、音楽の中に踏み込みたいという聴き手の要求をあらわに反映してくれる。

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 Qシリーズは、これまでのADCの行き方とは違う路線の新シリーズのカートリッジであった。それまでのデリケートで繊細なる音から方向転換して、大胆な変身を遂げ、明るく健康そのものの音になった。それまでの息をひそめるような音にくらべいく分かラフな所があるが、逆に気楽に音楽を楽しめる、ともいえる。Qシリーズでは、若いファンを考慮しているに違いないから、こうした新傾向は当然すぎる変化といえる。
 針圧の点でも、それまでの、極めて入念な調節を必要とするクリティカルな傾向から一転して、適正値がかなり幅をもったラフな調節ができるようなものとなった。つまりQシリーズとなり体質的にすべてが変ったのである。
 QLM30MKIIは、Qシリーズの中でもっとも安価なクラスである。Qシリーズとしての共通的なローエンドまで延びているわけではないが弾力ある低音は30MKIIでは、ひときわ力強いが、かなり意識的な低音感で、必ずしも、入力に忠実というわけではない。中声部はややソフトで聴きやすいが、これも細やかな表現を薄めてしまう結果となっている。中音域全体にソフトな快よさがあるが特にこの30MKIIでは、中域である特定の周波数成分の華かさがある。これは、器楽曲では豊かさをもたらして有効だが、ヴォーカルでは音程を高めるような傾向を作ってしまう上、音像にも不自然さを感じさせる。
 QLM32MKIIは、Qシリーズの中級機で、中域におけるくせはずっと薄らぎ、Qシリーズ本来の耳当りのよい中声域がはっきりと感じられる。低音域での力強さが豊かさを加えて、力まかせの30MKIIにくらべてずっと質を高めている。
 QLM36MKIIは、XLMとは明らかに一線を画してはいるものの、帯域をひときわ拡大して、全体に明るく、刺戟のない快よい音を感じさせる。しかも粒立ちはくっきりとしているので分解能力もあり、音のディテールもよく表現する。ただ、あまりこまやかな表現は十分でなく、そこに適度のあまさがあって、それがソフトな聴き安さとなり、それなりの魅力となっている、といえよう。針圧に対する許容幅のゆとりある所はこの上級機も変りなく、針圧を倍にしてもトレースは安定で使いやすい。ステレオ感はこの36MKIIではずっと拡がりもよく、音像の定位もはるかに自然になって、30MKIIのような不安定な所がない。Qシリーズは、やはり価格に相当して初級ほどはっきり質の向上が確かめられ、分解能力、特に音の粒立ちのこまかさは、価格に比例しているといえる。
 XLM MKIIはADCのオリジナル高級製品10E直系の最高品種だ。かつては針圧のあまりにデリケートな点を指摘されたものだが、現機種ではそれもずっと改められている。とはいうものの針圧はかなり正確に適正値を保たねばならぬ。軽針圧用として使用上当然で、1gを切る針圧でも正確なトレースを果してくれる数少い実用的な高級品だ。きわめて広い広帯域感は、よく延びきったハイエンドとローエンドから感じられ、線の細いスッキリしたサウンドイメージが品の良さをもたらす。フワッとした低域は力強さこそないが、さわやかな豊かさにおいて、独特の魅力を作っている。
 VLMは、XLMよりいく分か針圧を要求されるが、トレースの安定性がかえって向上しているほどで、低音感がいく分どっしりしている。
 シバタ針つきのスーパーXLMは、高域で一段と輝きを増し、XLM/IIより高音に緻密さが加わっている。

ラックス CL32

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 この外観に接して、これが管球式とは誰も思うまい。さらにこの音に触れれば、その思いは一層だろう。今様の、この薄型プリアンプはいかにも現代的な技術とデザインとによってすべてが作られているといえる。クリアーな引きしまった音の粒立ちの中にずばぬけた透明感を感じさせて、その力強さにのみ管球アンプのみのもつ量感が今までのソリッドステートアンプとの差となってにじみ出ている。高級アンプを今も作り続けている伝統的メーカー、ラックスの生まれ変りともいえる、音に対する新体制の実力をはっきりと示してくれるのが、このCL32だ。管球アンプを今も作るとはいえ、もはやソリッドステートが主流となる今日、あまりにも管球アンプのイメージを深くもったラックスの新しい第一歩はこのCL32によって大きく開かれたといってよいだろう。おそらくソリッドステートを含むすべてのアンプの基礎ともなり得る新路線が、CL32に花を咲かしたと思うのである。

マランツ Model 150

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 今もってマランツ10Bの名は、高級オーディオ・ファンの間でしばしば口にされる。この幻を絶つことは今回のマランツにとっての最大の課題のひとつであった。モデル150がデビューしたときの米誌の評はこの辺の事情を思わずして語っており、しかもその上で10Bを越える性能と、その音の誕生に両手を挙げて喜んでいる、というのが目に見えるほどだった。
 事実、モデル150は、10Bの時代より一層過密なFM電波を望み通り選び、楽しむことのできる性能と特性とを具えた数少ない高級かつ低歪チューナーの最大の傑作だ。今回、多くの製品があふれる中で「オーソドックスな機構による真の低歪チューナー」を選ぶとすれば、このモデル150のみだ。

マイクロ DDX-1000

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 とかく日本のマニアは、国産品には厳しい。あるいは、世界のどの国でも自国製には冷たいというべきか。そうしたマニア気質をもってしても、マイクロの驚くべき企画から生まれたDDX1000は、十分過ぎるほどの魅力を感じさせる。まさに日本製品にかつてなかった魅力だが、あるいはまた、日本のメーカーでなければ作るはずのない製品ともいえる。あまりにもぜいたくで、しかもそれが単なる外観とか見栄えに止らず、性能も実力もまたぜいたくといえるほどであるのは嬉しい驚きである。スタートの立上りは眼をつぶろう。プロ用でなく音楽ファン用なのだから。その代り、一度廻り始めたらもう絶対に理想的物体といえるくらいのを、と考えたに違いないこの機構は、そのまま外観的デザインとなって見る者を、否応なしに説得してしまい、使ってみると納得させられる。こんなターンテーブルがマイクロのDDX1000だ。ユニーク極まるデザインは、こうしたオリジナリティの極点の賜物でもある。

トーレンス TD125MKIIAB

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 ダイレクト・ドライブ方式のターンテーブルが世に出てきた時になって始めて、最高級ターンテーブルの条件にひとつの変化がでてきた。それは「トーレンス」ブランド以外にも良いターンテーブルがある、ということであった。それまでは、最高性能を備えた実力ある製品はことターンテーブルに限り、すべて「トーレンス」だけだったといっても差支えあるまい。ステレオになって、わずかな上下振動も音に影響を与えるようになると、「トーレンス」の良さが俄然と注目され、TD224、124と全世界の高級ファンは、これを手元におくのが常識になった。125になり、電子制御モーターが採用されて性能はますます向上した。今日といえど、全盛をきわめるDDモーターの果していくつがこの125に肩を並べる実力を持つだろうか。

デンオン DH-710F

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 76年、ますますその名と実績とを上げているデンオン・ブランドの、幅広いオーディオ製品中もっとも高い信頼性をにない、かつ、ファンからもそう願われているのが、オープンリールデッキだ。
 日本全国の放送局の現場で永く用いられ、今日もまた使われているのがデンオンのデッキであるからだ。逆にいえば、放送局のような分野も穴のあくことを許されない現状の厳しい眼と条件によって厳選されるにふさわしい品質が、デンオンのデッキのみにあるともいえる。従って、あくまで最高級のメカにのみこうしたよりぬきの品質が達せられることを使う側でも知っているわけで、市販の製品においてもデンオンのデッキは特に最高価格のクラスにおり、多くの熱いまなざしが集まろうというものである。
 メーカーとしても、こうしたファンの熱い希望に応えんと、そのプロ用で培った技術を、マニア用にふさわしい価格内で製品化したのが710である。
 エレクトロニクスサーボによるデュアル・キャプスタンという新しいドライブ方式を走行メカニズムにとり入れて、オリジナリティを確立し、いかにもプロを手がけてきたキャリアを感じさせる魅力と確かさとを発揮している魅力的な製品だ。特にファン用としてコンパクトにまとめながら、それまでの大型コンソールタイプにも匹敵する走行性能と信頼性は、いかにも現代のエレクトロニクスの上にそびえ立つ、一大技術を思わせる高い完成度を感じさせる。

デンオン POA-1001

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 デンオンは、76年暮にソリッドステート・アンプのコントロールアンプとパワーアンプのペアをデビューさせた。その一年前に、同じくセパレート・アンプでも真空管方式を発表した。管球式にくらべて、価格的に半分だがソリッド・ステート型の新製品の水準は真空管式に優るとも劣らないと思える。
 管球アンプを出して一年後にソリッド・ステートを出したという点にこのかくされた秘訣がありそうだ。つまり管球式の良さを十分に確めた上で、その上にトランジスターにする最新技術を積み重ねて行った点だ。ソリッドステート・アンプもV−FETあるいはA級アンプとさまざまな技術が投入され試みられてその良さを競った製品が多く市場にあふれる。
 その中でデンオンがセパレートアンプを遅ればせながらデビューするに当っての開発テクニック、あるいはその方法として狙ったものは仲々のものであるようだ。真空管ならざるアンプのソリッド・ステートならざる音は忘れ得ぬ大いなる魅力だ。

デュアル 1249

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 もう10年くらい前かな、いやもっと以前のことか。オートチェンジャーというものに対する観念をすっかり変えてくれたのが、デュアル1019だった。つまりこの1249の母型ともいえるもので、当時の一般的なオートチェンジャーの感覚で受け止められ得る平均的な外観のオートチェンジャーだった。ところが、物体の方は他のチェンジャーとは少々異っていて、それまでの考え方をすっかり変えてしまうに足りる「完璧さ」と「正確さ」を併せ持っていた。
 その上、使い始めなんと6年間も、かなりの使用頻度の苛酷さにもびくともせずに、常に最初と回じ正確さと精密な動作を崩さなかったのには度肝をぬかれた。アームをより軽針圧化させ、ターンテーブルを12吋にして、さらにマイナーチェンジを二度経て1249となって今、デュアルのオリジナル製品としての伝統とキャリアは、アメリカ・日本を中心に、世界のあらゆる国にあまねく知られている。
 ガラードからデュアルの手に移ったオートチェンジャーの品質的な地位ほ、当分ゆるぎそうにないと思える。
 そのオリジナル製品が、デュアル独特の機構により成り立つ上、そのオリジナル機構は、今も主要機構は少しも変ることないという点でも一流たるにふさわしい。
 軽針なオートチェンジャーとして、あるいはフルオートプレイヤーとして、今、初級フアンの激増する時デュアルの1249の価値はますます高くなってくるし、また求められるであろう。

デュアル CS-721S

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 日本のオリジナル技術ともいえるDDモーターの分野に、高品質チェンジャーのトップメーカー、デュアルが挑んで作ったのが、701ダイレクトドライブ・プレーヤーであった。世界にその名を知られる西独きってのメーカー、デュアルのことだけあって、その製品のポイントともいうべきダイレクトドライブ・モーターは、日本製品とは全然別の開発によるもので、ターンテーブルを外した状態でも、スムーズな回転運動をしてくれて、いわゆるコッギング運動(ぎくしゃく運動)のない点でも、さすがデュアル製と思わせるすばらしさだ。加えて、アームやプレーヤーベースの伝統的なノウハウに支えられた高い完成度は日本製品とは違って、眼に見えない所の良さを、音を出したときに知らされる。
 一見たいして変った点のないこの721が、さらに変ったと聞かされて、それがどこか探すのに手間どるほどであったが、基本的には変っていない点がかえってほっとしたというのが偽らざる所。一流品はそう変ってもらっては困るのだが。

ダイヤトーン DA-A100

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 ダイヤトーンの歴史は、日本のオーディオの歴史そのものといってもよい。日本におけるハイファイ創成期ともいうべき昭和20年代以後から早くもダイヤトーンの16センチのスピーカーの活躍はスタジオ、放送局で始められていた。というわけで、必ず出てくるのはスピーカーだけだった。ダイヤトーンがこのDA−A100をデビューさせるまで、ダイヤトーンのアンプの存在は、スピーカーの影にかすんで、すっかり薄くなってしまっていた、といわざるを得ない。ところが電機メーカーとしての三菱の技術は、当然、アンプの分野でも三菱ののれんにかけて、おそらくそれなりの指向をもっていたろうし、それはスタジオ用の大型スピーカー・システムを作ったときに早くも、地道ながら成果を挙げて「システム・ドライブ用出力増幅器」として存在していたわけだ。こう語れば判る通り、ダイヤトーンアンプはデビューするはるか以前から、その独自の技術をつくした成果を遂げていたわけである。だからDA−A100が出たとき、始めて知ったその技術は驚くべき水準にあったとしても少しも不思議ではない。ハイファイの歴史の、陽の当らざる所にあったアンプの技術は、かくてDA−A100のデビューによって力強く見事に芽吹いたのである。DA−A100の実力は、デビュー以来三年経た今日といえども少しも影ることはない。中音の充実したイメージのまま、全体に無駄のない透明感に加え、冷たさのないサウンドの完成度は実に高い。

ダイナコ Mark VI

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 マークIIIとして永く愛用される60ワットアンプをもって、数少ない管球アンプの伝統を持つダイナコのもっともハイパワーかつ強力なるアンプが、このモノラル・パワーアンプMKVIだ。おそらくMKIIIの倍の出力を持つためにMKVIとなったのだろう。
 120ワットの出力はソリッドステートパワーアンプなみで、もしMKVIにくらぶべきソリッドステートとなると300W級だから、驚くべきハイパワーだ。
 ダイナコ製品の、もうひとつの大きな特徴は、米国のコンシュマーレポートの常連といえるほどに、しょっちゅうその名が「お買得ベスト」の中に名を連らね、それも年を追っても型番が変らないという点だ。つまり、ひとたび製品化するとこれを中止することはめったにせず、幾星霜たつといえど同じ製品がずっと永く市場をにぎわす主要製品として続く点だ。寿命の驚くほどの永さこそダイナコの製品の最大の強味でもある。MKVIおそらく10年後もそのまま続くだろう。
岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

「Kホーン」というのが50年代後半の米国超豪華型システムとして、本物かどうかの判別の決め手といわれた。それほどまでにKホーンは高級ファンから高いイメージで迎えられていた。
 Kホーンとは、クリブシュホーンの略称であり、40年代にKホーンとして左右の壁面を開口に利用した折返し型コーナーホーンを発明した人の名をつけたものだ。各社の最高級大型システムが採用し、一時期米国製の豪華型はほとんどすべてKホーンまたはその亜流としてあふれたほどだ。
 当然クリプシュ自体のシステムがあったが、各社それぞれ力いっぱい宣伝し力を注いだからオリジナルは永い間ややかすんでいたという皮肉な状態だった。
 60年代に入りやがてステレオが普及してARなどのブックシェルフ型の普及と共に超大型システムがすっかり凋落したあと、最近になってこのクリブシュホーンのオリジナル製品は米国でもやっと脚光を浴びてきつつある。このクリプシュK−B−WOは木目を美しく出した家具調のオーソドックスなスタイルに38cmでドライブするKホーンと、中音、高音にそれぞれホーン型ユニットを配した3ウェイシステムだ。Kホーンの大きな特徴たる低音の豊かさは、ちょっと想像できないほど力強く、アタックのシャープな深い低音エネルギーをいとも楽々と再生してくれる。いや、こうした音そのものの類いまれなすばらしさ以上に、オリジナル・クリプシュホーンとしてもつ十分すぎる価値を保っていよう。
岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 米国にきら星の如く数多く出てきた新進アンプメーカー中、もっともユニークな存在がこのオーディオリサーチだ。その作るアンプはすべて管球式。注目すべきなのはすでにソリッド・ステート万能の時期である数年前からのスタートでありながら、管球式アンプにこだわるといえる姿勢だ。たしかに真空管アンプの音の良さはオールドファンを中心にベテラン達の堅く永く口にする点だ。ソリッドステートに技術的性能では遠く及ばずとも、音の良さは明らかな差を感じさせる。オーディオリサーチ社のアンプが高級ファンに愛される理由は、高水準のマニアほど十分に納得できるだろう。プリアンプに対する評価よりもパワーアンプに対する評価が高いのは「スピーカー・ドライブの点での管球アンプの有利性」のためではなかろうか。デュアル75でスタートして、トランスを含むパーツや機構を大幅に変えて76年にデュアル76となっている。

アルテック 620A Monitor

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 もう20年も前に焼跡の中に立ったバラックの並ぶ、銀座の裏のちっぽけなジャズ喫茶の紫煙にけむる奥から聴えたディキシーを、本物の演奏とすっかり間違えさせたのが、アルテックの603Bだった。それ以来アルテックの15インチ・コアキシャルは、深く脳裏にきざみこまれた。やがてレコード会社でモニター用に鳴っている604Eに耳を奪われて、一生のうちに一度はこのアルテックの15インチ・コアキシャルを自分の手元で、と心に誓った。だから僕にとっては、アルテック604Eは他のいかなる愛用者にも劣らぬ、もっとも強いあこがれそのものとして、オーディオの象徴的な存在であった。その後アルテックのシステムを仕事の上で接触することはあっても、高価なこのユニットは、なかなか手にできなかった。
 604Eが8Gとなってワイドレンジ化した際に、やっと20年の念願かなって入手できたとき、それはやはり何にも増して感激に満ちたわが部屋での音出しであったし、それは20年前のあのディキシーランドと同じキッド・オリーの10インチ・モノーラル盤で始めたものだ。トロンボーンの雄大な力強さは、やはりこの604−8Gでなければ出せ得ない響きだった。しかし、ステレオ版になって604は、より以上の真価を発揮してくれた。それはもうしばしばいわれるように、コアキシャル独特のユニット配列から得られるステレオ音像の定位の確かさで、業務用としてアルテック・コアキシャルでなければならぬ理由も、ただこの一点が大きくものをいいそうだ。

アムクロン DC300A

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 今、日本のアンプが、さかんにハイパワー、DCアンプ化への血道を上げている。アムクロンDC300は今を去る10年近くも前にこの2点「ハイパワー」「DCアンプ」として米国にデビューし、米国でのハイパワー時代のトリガーとなった製品である。150/150Wのこのアンプの出現によってすべての高級メーカーは100ワット以上の出力を目指すことに踏み切らざるを得なくなったといってもよい。ところがアムクロンDC300、決してこうしたオーディオ高級アンプとしての目的で作られたものではない、あくまでラボラトリーユースの産業用アンプであり、そのためのDCアンプであったわけだ。アムクロンというメーカーが当時超高級デッキのシェアーでもっともよく知られた点でオーディオ用としても使われたとみるべきだろう。さてDC300、今日純粋なオーディオ用として300Aに生まれ変り、その内容の大要は変ることなく、もっとも伝統ある誇り高きハイパワーアンプとして今日も存在するが、その存在は色あせることなくまだ続こう。
岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 アキュフェーズのブランド名でケンソニックからスタートして、もはや数年の月日がたつ。ケンソニックの名は伝統の深からざるオーディオ業界にあってもなおもっとも日が浅い。それだけに、一流ブランドとしての成り立ち、あるいは信頼を勝ちとるための努力はなみのものではなかったろう。
 それにしても僅かな期間に世界的に高い製品評価と高級メーカーとしての信頼とを得たのは十分にうなずける根拠を容易に求められる。そのひとつは高級機種のみを限定して製造することであり、その二は一応発表した製品は決して競合すべき新型を出さず、また中止もしないということだ。
 この一流品たる資格の基本条件たる二つの点を当事者たるメーカーが製品発表の事前にはっきりと明言しているというケースは、めったにあるものではないがアキュフェーズの場合がこれだ。高級製品メーカーとしての見識と誇りの高さとを知らされ、それが信頼への深いきずなとしてユーザーとメーカーとを結びつけている。
 プリアンプC200と共に最初に発表したパワーアンプP300こそケンソニックの名を世界に知らしめた最初のアンプであり、その時にペアーとなるべきチューナーとして出たのがT100である。
 この三機種こそ、アキュフェーズブランドの名を代表するべき3つの象徴といってもさしつかえなかろう。しかしこの後のハイパワー時代の急激な拡大に伴ってパワーアンプはさらに、2倍のパワーアップを図った国産初と思われる300Wの大出力を秘めたモノーラルパワーアンプ、M60となった。そこでP300に代ってM60がアキュフェーズ・ブランドの旗頭となったのだ。M60は、300Wのハイパワーながら、その価格28万円を考えると、今日はっきり国際的な市場を視点としてもなお価格的に妥当なものであろう。
 日本製アンプが、日本国内市場でごく割高なる価格をつけられた海外製アンプと競争でき得るとても、当事国では日本製アンプが、あまりに高価になり過ぎる例が多い中でアキュフェーズ製品はすべて価格的に国際市場のどこにおいても十分に納得でき得る価格であるという点は、見逃せない大きな特徴であり、この点こそがアキュフェーズ製品が国際的な意味からも優秀製品であることの、もっとも大きな理由だ。
 ケンソニックの中核がかつてはトリオの主脳陣であったことはよく知られており、さればチューナーの文字通り開発者としてアキュフェーズのチューナーもまた大いに期待できる製品だ。その期待は海外の評価が早くも、T100デビュー早々に、「FMチューナーのロールス・ロイス」という賛辞で示された。アンプ同様、豪華な仕様と風格とはその底知れぬ深い完成度を感じさせ、そのまま製品の高い品質への信頼感へもっとも大きな支えとなっているからだ。

SAE Mark IB, Mark 2400

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 この7年間、70年代に入って米国市場のオーディオメーカーに新しい名が目立って多くなった。
 その中でSAEはもっとも早くからいち早く成功を伝えられたメーカーで、アンプ・メーカーとして今ではもっとも生産数を誇る実績を確立している。この成功は、SAEが、いかにも現代的な技術の優秀さで裏付けされた技術的集団であることを、初期の製品から一貫してはっきりと示しているからだ。SAEの製品は、一見して今までのそれらとは一線を画する飛躍した電子技術を内に秘めていることを、受け手がよく技術的知識を蓄えていればいるほど感じるであろう。しかもこうした新進メーカーによくみられる未熟さが全然なく、その初の製品からでさえ、きわめつくされた完成度を、あらゆる点で知らされるのも例がない。
 どこをとっても一分の隙もないパネル・デザイン、しかも一本のライン、つまみのいちカットにさえ細心の誠意と合理性とをつめ込んだ技術的なセンスの高さ。技術が芸術に昇華するほどの、高いレベルだ。
 MK2400も、決してプラックフェイスという外観だけに止まらず、技術的な内容もさらにその音にも、はっきりと感じられる。きわめてスッキリして、透明そのもの、無駄を廃した端正の極地といったような音だ。使い方により機能をどこまでまとめ上げ、どこで妥協するか、という点のむずかしいコントロールアンプでのSAEの腕前がこのMKIBにぞんぶんに発揮されて、いかにもSAEオリジナルらしい、すばらしい傑作となった。

JBL D44000 Paragon

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岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 JBLパラゴン家の中に持ち込んでみてわかったのは、この「パラゴン」ひとつで部屋の中の雰囲気が、まるで変ってしまうということだった。なにせ「幅2m強、高さ1m弱」という大きさからいっても、家具としてこれだけの大きさのものは、少なくとも日本の家具店の中には見当らない見事な仕上げの木製であるとて、この異様とも受けとめられる風貌だ。日本人の感覚の正直さから予備知識がなかったら、それが音を出すための物であると果してどれだけの人が見破るだろうか。何の用途か不明な巨大物体が、でんと室内正面にそなえられていては、雰囲気もすっかり変ってしまうに違いなかろう。「異様」と形容した、この外観のかもし出す雰囲気はしかし、それまでにこの部屋でまったく知るはずもなかった「豪華さ」があふれていて、未知の世界を創り出し新鮮な高級感そのものであることにやがて気づくに違いない。パラゴンのもつもっとも大きな満足感はこうして本番の音に対する期待を、聴く前に胸の破裂するぎりぎりいっばいまでふくらませてくれる点にある。そして音の出たときのスリリングな緊張感。この張りつめた、一触即発の昂ぶりにも、十分応えてくれるだけの充実した音をパラゴンが秘めているのは、ホーンシステムだからだろう。ホーン型システムを手掛けることからスタートした、ジェイムズ・B・ランシングの、その名をいただくシステムにおいて、正式の完全なオールホーンを探すと、現在入手できるのはこのパラゴンのみだ。だから単純に「JBLホーンシステム」ということだけで、もはや他には絶対に得られるべくもない、これ限りのオリジナルシステムたる価値を高らかに謳うことができる。このシステムの外観的特徴ともいえる、左右にぽっかりとあく大きな開口が見るからにホーンシステム然たる見栄えとなっている。むろんその堂々たる低音の響きの豊かさが、ホーン型以外何ものでもないものを示しているが、ただ低音ホーン型システムを使ったことのない平均的ユーザーのブックシェルフ型と大差ない使い方では、その真価を発揮してくれそうもない。パラゴンが、その響きがふてぶてしいとか、ホーン臭くて低い音で鳴らないとかいわれたり、そう思われたりするのも、その鳴らし方の難しさのためであり、また若い音楽ファン達の集る公共の場にあるパラゴンの多くは、確かに良い音とはほど遠いのが通例である。しかしこれは、決して本来のパラゴンの音ではないことを、この場を借り弁解しておこう。優れたスピーカーほどその音を出すのが難しいのはよく言われるところで、パラゴンはその意味で、今日存在するもっとも難しいシステムといっておこう。パラゴンの真価は、オールホーン型のみのもつべき高い水準にある。
 パラゴンは、米国高級スピーカーとしておそらく他に例のないステレオ用である。正面のゆるく湾曲した反射板に、左右の中音ホーンから音楽の主要中音域すべてをぶつけて反射拡散することによりきわめて積極的に優れたステレオ音場を創成する。この技術は、これだけでもう未来指向の、いや理想ともいえるステレオテクニックであろう。常に眼前中央にステージをほうふつとさせるひとつの方法をはっきり示している。

サンスイ AU-607, AU-707

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岩崎千明


音楽専科 1月号(1976年12月発行)

「YOUNG AUDIO 新製品テスト」より


 サンスイのアンプが、この秋大きく変った。変ったといってもその特長たるブラック・パネルはそのまま踏襲され重量級の風格は変ることがない。しかしよくみると、その仕上げは、艶消しのソフトな感触に変り、今までの鋭どさがぐっとやわらいだ。つまみも角を丸くおとしてまろやかなタッチで、つまみの数も、いままでにくらべてずっと抑えて、全体にシンプルだ。こうした一段とソフトな感じがこの新シリーズ、607、707の大きな特長であることは、その音を聴くと、一層はっきりすることになる。従来、サンスイのアンプは「中音が充実し、やや華麗な中に、鮮明な迫力一ぱい」として受けとられて来た。
 人気絶頂の米国JBL・スピーカーの総代理店たるサンスイの特典が、アンプにいかんなく発揮されている、ともいえそうな鮮度の高い迫力ある音がブラックパネルのサンスイのアンプの共通的な特長であり、さらに中音から中高音にかけてのクリアーな力強さが感じられてきた。
 ところが、今度の新シリーズは今までのこうした特長からははっきりと変化を知らされる。路線が変ったというよりも、今までのすべてを突き破ったといえる。鮮明さは少しも失わずに、しかも、全体に受ける印象は、まろやかな音だ。どぎつさが全然なく、すべてに落ち着きとゆとりを感じさせる、高い水準の完成度が見事なほどだ。
 外観のイメージから受けることのできる、大人っぽい高級感は、音の方にもはっきりと感じることができるのが、今度の新シリーズ、607、707なのである。
 サンスイのアンプは今までもハイクラスのマニアの愛用者が多い。逆にいえば、高価格のアンプがよく売れる。1年前のAU7700といい、2年前のAU9500といい価格的には一般的平均よりもずっと高い高級品であった。こうした高価なアンプであれば、内容的には当然優れているわけで、それを十分使いきり、生かせることのできるファンが、サンスイの愛用者に多いといえる。
 新シリーズはこうした点をもっとはっきりと意識して、製品の企画に反映した、といえるだろう。初心者やレベルの低いファンにとっては今までのサンスイのアンプにくらべ物足りないと思われるほど、おとなしい音、おとなしいデザインにまとめられているのは、実はこいうした、大人のファンのための高級品だからであろう。
 607は65/65Wの、家庭用としては十分にして無駄のないパワーをもち、機能面でも、余り使うことのないものを整理し、しかも、若いファンのための必要なアクセサリーともいうべきテープ録音再生の端子は2台分を用意してあり、その使いやすい切換つまみでまとめたパネルつまみは、新製品にふさわしく、便利で有効だ。
 707は出力を一段と上げて80/80Wと強力でしかも機能面はマニア、音楽ファンの愛用者のあらゆる望みをかなえてくれるに違いないほどいっぱいだ。
 最近のアンプはかなり技術志向が強くて、「DCアンプ」「電源左右独立」といったアンプの内部を理解していないとつかみにくい面が強調されることが多い。サンスイの新シリーズもむ論、この面で同様の新技術を採用しているが、要はそうした技術が、サウンドにいかに生かせるか、である。サンスイの707、607、デビュー早々若い音楽ファンが熱いまなざしをもって迎えられているというのも本当の理由は、こうした実質的な、真の良さのためだろう。

デンオン POA-1001

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岩崎千明


スイングジャーナル 1月号(1976年12月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 76年秋、デンオンはトランジスタ・アンプらしからざるマイルドな音色のソリッドステート型高級アンプとして、コントロール・アンプPRA1001、パワーアンプPOA1001を発表した。ちょうど1年前の秋には、同じデンオンが真空管アンプらしからざる透明感あふれる音色の、管球式高級アンプ1000シリーズを発表しているが、外観的にはこの1年前の管球式1000シリーズとはっきりした共通点が認められる。今回の1001シリーズは、こうした外観的な特長からも、またこの型番からも、1000シリーズのアンプの技術を土台にして、その上に結実した結果ということができよう。
 ところで、オーディオ界におけるデンオン・コロムビアのブランドは、ビクターと並んで、最も古くからその中核をなしその企業組織内にレコードを主とした音楽産業を併せ持つ、音楽的色彩の強いオーディオ・メーカーであることはよく知られているだから、デンオン・ブランドのオーディオ機器は、一般に他社とははっきりとした違いを持ち、受け手の側が音楽との関わりを深めていくにつれて、「デンオン」の製品のこうした音楽的特長に気付いてくるに違いない。
 ひとくちに言って、デンオンの製品は、スピーカーにしろアンプにしろ、あるいは、プロフェショナルに永く問わりを持ち、業務用という言い方で誰をも納得させてしまうデッキやプレイヤー関係の機器に至るまでのすべてにおいて、他とは違うサウンド上の特質ともいうべき「いきいきとした生命感ある音」を大変はっきりと示してくれている。
 このため、デンオンのプリメイン・アンプは数あるライバル製品の中にあって、どちらかというと割高の傾向をみせながらもなおその愛用者が少なくない。プロ用機器の技術を土台としたデッキやプレイヤーに比べて、サウンド感覚そのものが大きく判断を支配してしまうスピーカーやアンプにおいての成功は、デンオンのオーディオ機器の優れた本質を示してくれる裏付けであると言ってよいだろう。
 だから、デンオン・ブランドのプリメイン・アンプは、最近ますます音にうるさい愛用者の用うべき高級品だと評判も高い。
 当然のことながら、こうしたプリメイン型アンプのより高級なる地位を占めるべきセパレート型に対しての期待が大きかったわけだ。しかし、一般に、期待の大きい場合にはその大き過ぎたがゆえに、期待外れの失望感を味わいやすいものだ。
 ところが、今回発表された1001シリーズは、こうした危倶をまったく感じさせない。すっきりとした外観は、見るからに高級品然とした高い品位の風格を示し、プリメイン・アンプの高級品とも格段の相違をはっきりと示す。確かに、プリアンプ、パワーアンプあわせて30万を上まわるのだから、これは当然の配慮というべきだが、それが、一見して感じられるところも商品作りのうまい点だ。こうしたことは、最近のようにデザイン重視の傾向が進めば進むほど、意外にも見逃されがちのようである。例えばほとんど同じ系列の製品群に対して同一デザインを踏襲してしまい、仕上げまでも同一程度のため、安いものほど高級感が出てきて、高価なものではその逆にその高級感が物足りなくなってくることがままある。パワーアンプのような実質本位な製品は、デザインが軽視されがちだ。
 デンオンPOA1001は、ごくあっさりとした外観ながら、実はきわめて緻密な配慮のもとにデザインされていて、サブ・パネルの下に使用頻度の少ないツマミを収め、扱いやすさと風格とをあわせ持つ。スイッチを入れると、そのスピーカー保護回路が働くのも、高級アンプにふさわしいタイム・ラグを感じさせる。
 あくまで澄みきったサウンドのうえに、切れこみの良さと、耳になじんだ快さは、マイルドで芳醇なコーヒーの味にも似て、じっくりと味わうにつれ、その深みを増していくようである。
岩崎千明

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・マッキントッシュ」(1976年発行)
「私のマッキントッシュ観」より

 昭和三十年頃の僕は、毎日毎日、余暇をみつけては、ハンダごてを握らない日はなかった。この頃の六、七年間、数多くのアンプを作った。作っては壊し、作っては壊ししたそれらは当時のラジオ雑誌にほとんど紹介してきたものだが、もともと、そうした記事のために、目新しい回路をもととして、いままでとは、どこか違った、新しいアイディアを必ず盛り込んだものだった。もうはとんど手元にはなく、ただ昔の、古く色あせた雑誌の写真に姿をとどめているだけだ。つまり、製作記事のための試作アンプにすぎない、はかない存在だ。しかし、中には壊すのが惜しくて、そのまま実用に供し、そばに置いて使おうという気を起こさせたものもある。いまでも、そうしたアンブ、そのほとんどがモノーラルの高出力アンプだが、20数台もあろうか、物置の片隅を占領してしる。その多くが30Wないし50Wのパワーを擁する管球式で、外観は、共通し当時のマッキントッシュの主力アンプMC30に酷似する。
 なぜ、マッキントッシュに似たか。理由は唯ひとつ、僕の中にそれを強くあこがれる意識が熱かったからだろう。
 当時、日本には、海外製品として、英国製のスピーカー以外は入ってきていなかったし、海外製のアンプは、たまにこれらラジオ雑誌に簡単に技術紹介されるだけであって、その実力を知ることもなかった。まして現物になどお目にかかれるなどという幸運は一般のマニアにまったくなかった。だから、このマッキントッシュに対するあこがれの理由は、どこに端を発したのか、今ではしかと思いだせない。手元にある古い雑誌を見ても、マッキントッシュの広告は、まだほとんどなくて、その名前さえ知られることのない一九五〇年代の前半のことだ。でも不確かな記憶だが、マッキントッシュのMC30をたった一度だけ、見たのは、当時、駐留軍としての米国の高級将校の家で米ボーゲン製の小型アンプと置き換えたばかりの雄姿に触れた時だった。
 あまり大きくないクロームメッキのシャーシーに、ギリギリいっぱいの位置におかれた肩の丸い黒い角型ケースに収まった特徴あるトランスがふたつでんと収まった力強い姿だ。この時の印象があまりにも強かったので、他のアンプのイメージがすっかりうすれてしまったともいえる。少なくとも構造的にまったく違った構造配置のパワーアンプが、常識であった当時だ。たとえば、マランツのおなじみ8Bに代表されるようなシャーシーの半分に、出力トランス、電源トランスをすっぽりとケースで包んでしまった形は、業務用アンプの代表であって、映画館を初めとするプロ用ラックタイプのアンブはほとんどこれだった。細長いシャーシーの両端にふたつのトランスを配し、その間に真空管を並べるアクロサウンドの形式も多かった。しかし、こうしたアンプよりも、マッキントッシュに強く惹かれるのは、外観だけの問題ではなく、それを作ろうとする時、大きな利点を見いだせるからだ。つまり、出力管と、出力トランスを、至近距離においた上、パワーアンプ初段管のカソードヘの帰還回路の配線が、最短距離で達成され、さらに、出力トランスと、出力端子が極端に至近距離におけるという、理想的な配線は、マッキントッシュのMC30のシャーシー配置構造の利点なのである。
 これは、作ったものでないと判らないし、一度作れば、これ以上によい方法は、ちょっと思い浮かびあがらないほど、完璧だ。
 だから、今、手元にある20数台のアンプは、出力トランスと出力真空管と、むろんそれらの大きさと、最大出力の違いのため、そのシャーシーの大きさが、てんでんばらばらだが、構造的には、マッキントッシュのMC30によく似ているのである。もうひとつの共通点は、MC30よりも、出力が大きく、当時の水準からすれば、「大出力アンプ」といい得るものだ。念のために申し添えると昭和30年前後のその頃の技術雑誌の製作記事で、MC30をはっきりと意識したアンプは、たったひとつの例外を除いて、僕の作ったもの以外にはないと20年経った今でも自負している。
 そのたったひとつの例外というのは、某誌の表紙にまでカラー写真でのったY氏製作の30Wのアンブだ。
 これは、金のない僕の作るものとは違って、シャーシーまで本物のMC30のように、メッキされていたように記憶している。
 その時、「ははあ、彼氏もマッキントッシュの良さを知っているな」と秘かに同好の志のいるのを喜ぶとともに手強いライバルを意識した。しかし、Y氏は、それきり、アンプの記事は書かなかったように記憶する。最高を極めたからか。
 Y氏、実は山中敬三氏である。
 さて、今までの長い前置きでもわかる通り、僕にとっては、マッキントッシュのアンプといえば、MC30以外には、ない。一次捲線と二次捲線とを、二本並べて捲くという、いわゆるバイファイラー捲きの特許の出力トランスを用いた高出力アンプにこそ、マッキントッシュならではのオリジナル技術だが、それを、広く高級オーディオファンの手にわたる具体的な商品として、現実に製品化した一号機こそが、MC30なのであって、むろん、それ以前の製品もあるのだが、それが本来のMC30の、歴史的意義にもなっている。
 しかし、そうした背景は、一切目もくれないとしても、僕にとっては、アンブとしてのMC30そのものの印象も、価値も大きいのだ。
 いまや、ソリッドステートの時代となって、マッキントッシュも、MC2300を初め、最新のノン・クリッピング技術を盛り込んだMC2205、さらに、あまりにも有名な、良く知られているMC2105等、すべて、管球アンプではない。また、管球アンプとしての最後の製品となったMC3500の中をのぞくと、カラーテレビの水平出力用に使われる大型の高能率、高耐圧出力管が、ずらりと8本ならんでいて、その様は、どうみてもレギュレーター、ないしは定圧電源といった感じで、ハイファイアンプとしての楽しい夢のある容姿ではない。ステレオの最後の管球アンブ、MC275あたりが、オーディオファンにとっては、いかにもマッキントッシュ、ここにあり、といったイメージだが、いっそ、真空管なら、その原点にまで目を向けたくなってくる
 マッキントッシュと並ぶ、マランツのアンブをば語る時のように、プリアンプとパワーアンプのペアを、考えようとすると、マッキントッシュでは、C22管球ステレオプリや、C28、あるいはC26といったプリアンプの名前が出てくることになるが、本来、マッキントッシュの場合、その技術は、あくまで出力管回路、パワーアンプにある。プリアンプでは、時代とともに、型番も、むろん回路内容も改められてきた。つまり、パワーアンプほどに、明確なる決定打はなかったと、いってよい。パワーアンプが、いくつかあるのは、その出力の違いによるものだし、その原点は、6550をパワー管とした60WのMC60、さらには1614をパワー管とした30WのMC30に行き着いてしまうのである。
 だから、昨年、マッキントッシュ・クリニックのシールも新しいMC30を、当時のプリアンプC8とぺアで、ステレオ用として、2組入手したときに、僕のマッキントッシュにかかわる思い出と、永い散策とに、やっとピリオドを打ったような気がしたものだ。マッキントッシュMC30を、米軍将校の部屋で見染めてから、それは22年の長い道程でもあった。

ヤマハ CA-1000III

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岩崎千明


音楽専科 10月号(1976年9月発行)

「YOUNG AUDIO 新製品テスト」より


 ヤマハのプリメインアンプCA1000が、マークIIIとなって2度目の改良を受けた。もっとも、この改良は、単に改良というだけでなくて、まったく新らしく設計をしなおしたと思われるくらいに変わってしまって、もはや、改良というよりも、新型の新製品といってよかろ
 CA1000IIIは、ヤマハの高級イメージにささえられたオーディオ製品の中核をなすプリメインアンプの中で、最高のランクに地位する機種だ。その品質に関しては、デビュー当時よりもっとも高いクウォリティと、品位のある外観と、さらに、質の高いサウンドとで日本の市場におけるこの価格帯の中でもっとも優れた存在であった。オーディオアンプとしてその完成度は世界の超一流品にも匹敵するといわれてきた。デビュー以来、すでに4年目になろうとした今日、そのすべての特徴は、今も少しも色あせることはない。しかし、オーディオ志向の需要者層が大きく変わった。10万を越えるというこうした高級アンプを買おうというと若がえって、20歳をはるかに切ってしまうほどだ。
 こうした使用者の変革に伴なう使い方、デザイン感覚、さらにはサウンドへの好み、といった大きな条件を踏まえて、ヤマハにとっての「不朽の名作」CA1000を再度改めたわけだ。マークIIへの変革は、内部の改良に伴なう性能向上だけであったが、今度はそうした意味でも新製品ともいえるほどの大向上ぶりである。
 まず、もっとも目立つのは、ふたつのレベルメーターで、これは、最近の高級アンプの新しい動向である。主に、録音マニア達の好みに対応したものと思える。レコーディング・アウト・セレクターというつまみが、新しく付けられて、いわゆるテープモニター・スイッチの大巾な拡大用途に対応している。このスイッチの2つのポジションは、1→2、2→1のテープコピーとなっている。インプットセレクターには、テープ1、テープ2の2つのポジションが独立して付いている。このように単にテープモニター・スイッチを付ける今までのアンプに対してこのアンプのテープ録音への配慮は、不慣れな、初心者にも使いわけが、容易になるように心を配ったものといえる。
 今までにない新しい「フォノ・セレクター」は、カートリッジの種類とか銘柄によって、もっとも理想的使用状態になるようカートリッジの負荷抵抗を選べるようになっている。さらに、特出すべき大きなボイントだが、MC型カートリッジのためのヘッドアンプも内蔵されており、トランスとか、アダプターアンプを加えることなく、そのままフォノ1につないで使用することができ得る。
 もともとこうしたMC型カートリッジ用のヘッドアンプは、ノイズの点でたいへん難かしくて、高価にならざるをえない。だから、プリメインアンプの中に収めるということは、技術的にも価格的にも、とても難かしいことなのである。CA1000の伝統的特徴であるAクラス切換によるパワーアンプのA級動作は、タイプIIIになって、さらにパワーアップされて、用途を拡げた。普通のブックシェルフでも、夜なら充分な音量で楽しむことも、やりやすくなった。
 さて、CA1000IIIは、この改良によって、音がいかに変わったかは、大いに気になるに違いない。ひと言でいうならば、格段に明るく、力強く、特に、ボーカルとソロとが非常にくっきりと、聴ける。

スタックス DA-80

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岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1976年9月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 8月のまだ暑さの厳しい、ある日の昼下り、SJ試聴室にふと立寄った時、見なれぬブランドのパワー・アンプが眼に入った。〝Stax〟と小さく、しかし、鮮やかな文字がパイロット・ランプ以外に何もない、そのスッキリとしたパネルにあった。知る人ぞ知る個性派ナンバー・ワンのメーカー、スタックス・ブランドのアンプということで、大いにそそられ、聴きたくなったのも当然だろう。
 SJ試聴室の標準スピーカーJBLスタジオ・モニター4341が接続され、音溝に針を落してボリュームが上がると、響きが空間を満たした。その時のスリリングな興奮は、ちょっと口では言えないし、まして、こうして文字で表わすことなどできない。なんと言ったらよいのだろうか、まず4341が、JBLがこういう音で鳴ったことは今までに聴いたことがない。それは、やわらかな肌触わりの、しなやかな物腰の、品の良いサウンドであった。いわゆるJBLというイメージの、くっきりした鮮明度の高い強烈さといった、いままでの表現とまったく逆のものといえよう。だからといって、JBLらしさがなくなってしまった、というわけでは決してない。そうした、いかにもJBLサウンドという音が、さらにもっと昇華しつくされた時に達するに違いない、とでもいえるようなサウンドなのだ。まったく逆な方向からのアプローチであっても、それが極点に達すれば、反対側からの極点と一致するのではないだろうか。ちょっと地球の極点のように、南へ向っても北へ向っても、ひとまわりすれば極点で一致するのと同じ考え方で理解されようか。
 スタックスのアンプのサウンド・クォリティーを説明するのは、むづかしい。本当は今までになく素晴しい、といい切っても少しも誇張ではないが.それならば、どんなふうにいいのか。少なくとも、音溝のスクラッチ音が極端に静かになる。JBLのシステムで聴くと、レコードのスクラッチはきわめてはっきりと出てくるが、その同じスピーカーでありながら、スタックスのアンプでは、驚くほど耳障りにならなくなってしまう。さらに演奏者の音が、そのまわりの空間もろとも再現されるという感じで鳴ってくれる。ステージでの録音ならばそれは、良い音としての必要条件ともなるが、スタジオでのオンマイク録音においてでさえも、こうした演奏現場の音場空間がスピーカーを通して聴き手の前にリアルに表現される。優れた再生というものの重要なるファクターであるこうした音場再現性が、スタックスのこのパワーアンプDA80でははっきりと感じられる。もし聴きくらべることができる状態ならば、おそらくそうした事実は、誰もが非常にはっきりと感じとることができるのではないだろうか。それは、ちょっときざっぼい、言い方をすれば、再生音楽の限界の壁を越え得たといえる。または、生(なま)へ大きく一歩前進したともいえよう。
 さて、こうした、かってない未知の再生効果の衝撃的体験をしたときから、このアンDA80は、私に新たなる可能性を提示し拡大してくれたのである。その製品の、オリジナリティーおよびクォリティーの高さは、スタックス・ブランドの最も誇りとするところであり、これはごく高いレベルのマニアの間でこそ常識となっているとはいうものの、「スタックス」というブランドは必らずしもよく知られているわけではない。だからSJ読者の中にも、このページの登場で初めて意識される方も多いことと思われる。スタックスは、国内オーディオ・メーカーの中でも、もっとも永いキャリアーと他に例のないユニークな技術とで知られる、今や世界にもまれになったコンデンサー・カートリッジとコンデンサー・スピーカーからそのスタートを切り、アーム、さらにヘッドフォン、そのためのアダプター・アンプと順次に作ってきて分野を序々に、しかし確実に拡げてきたのち、1年前に、パワー・アンプDA300を発表した。150/150ワットのA級アンプは、ごく一部のマニアの間で、話題になったが商品としては、高価格のため必らずしも大成功とまではいかなかったようだ。今回、このDA300を実用型として登場したのが、このDA80だ。しかし、DA80は、兄貴分たるDA300を、性能的にも再生品位の上でも一歩前進したといって差支えないようだ。AクラスDC構成アンプというその回路的な特長による技術的な優秀性だけが、決してそのすばらしさのすべてではないのだ。おそらくオーディオも商品としてもまた兄貴分DA300は、一歩を譲るに違いあるまい。

ヤマハ NS-500

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岩崎千明


音楽専科 9月号(1976年8月発行)

「YOUNG AUDIO 新製品テスト」より


 ヤマハNS500は、ヤマハの数あるスピーカーの中で、最新の実力機種だ。ヤマハには、NS1000Mという世界に誇るスピーカーシステムがある。つい先頃、ヨーロッパの中でも特に音にうるさいスウェーデンにおいて国営放送が、このヤマハのNS1000Mをモニタースピーカーに選んだという。総数1000本も使われるというこの大事な役割も、品質のそろっている事が前提でなければならない。ヨーロッパ始め世界のメーカーの作るモニタースピーカー数ある中からヤマハNS1000Mが選ばれたのは、もっと注目すべきだろう。
 ところで、このNS1000Mは、1本で10万を超すという高価格だ。誰にでも推められ、また買えるというのでもないだろう。特に最近の若いファンにとっては、いくら世界一の音といっても、スピーカーだけで20万を払うというのは、とても無理で、よほど恵まれていなければ、実現性がない。そこで、この弟分のデビューは、待ちこがれていた。
 NS500は、この待ちにまったNS1000Mの実用型弟分なのである。
 その最大の特長とするところは、ヤマハ独特の技術によって生れたベリリウムダイヤフラムを振動板とした高音用スピーカーだ。NS1000Mでは、中音用と高音用がこの技術で作られたユニットで、それに低音用を加えた3ウェイ・スピーカー・システムだったのが、NS500では、高音がベリリウム・トゥイーターで、それに低音用の25cmウーファーを加えた2ウェイ・システムだ。つまり、ひとまわり小さい外観だけでなく、中味も弟分だ。
 さて、このベリリウム、金属のくせにモーレツに硬くて、その硬さは、宝石なみの超硬度だ。プレスも曲げることもできやしない。それを、半球上の薄膜に作るなんていうことは、とてもできるわけがなくて、だから、いくら理想的な材料といわれていながら、今まで作られていなかった。
 ピアノやオートバイの部品から作っているヤマハが、この難かしい問題を解決して、理想的スピーカーを作りあげたというわけだ。ベリリウム・トゥイーターのおかげで難しいといわれていた高音用の動作が理想的になったため、理論どおりの設計が具体的に製品として、出来あがるようになった。
 NS500は、NS1000Mを作る時に得た技術的なノウハウをさらに加えたという点で、あるいは、NS1000Mよりも一歩一前進したスピーカーということもできる。その力強く、輝きに満ちて、素晴しい音の粒立ちのある再生能力は、NNS1000Mとまったく同じレベルにあるが、さらに、NS500には、もうひとつのプラスがある。それは、歌や、インストルメンタルのソロが、ぐいぐいと間近にせまってくるという形で、再生される事だ。NS1000Mのやや控えめなのにも比べて、音が積極的だともいえよう。
 だから、NS500は、若いファンにとって、今考えられる最も高いレベルの推薦スピーカーであると断言しよう。日本の市場には、多くの海外製を含め国産の限りない製品がひしめきあっていて、それに毎年のように新型が加わり、せっかく新しく手に入れたとしても、2、3年で色あせてしまう。つまり、買う時に、いますぐだけの事でなく、2年先、3年先の事を考えておかなければ損をする。
 だから、ヤマハのNS500を推めたいのだ。ヤマハが世界に誇るベリリウム・トゥイーター付きの自信作なのだから。

アイワ AD-4200

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岩崎千明


ジャズランド 9月号(1976年8月発行)


 AD4200の大きな特徴はまずその外観に求められる。スラントデッキと名付けられた20度の傾斜をもつユニークな操作パネルは、テープの走行状態やメーターの監視、そしてつまみの操作を大変容易にしている。
 カセット・デッキにおいては、いわゆるコンポ・スタイルの縦型操作のデッキがすっかり主流となった感があるが、カセット本来の目的や実際の使用状態を考えると平型デッキも捨て難く、また水平メカニズムの安定性を思えば、特に普及型においてこうした製品が開発されるのは十分納得できる。
 もちろん基本性能にも十分留意しており、ワウ・フラッター0・09%、SN比62dBという値は4万2800円という価格を考えれば、特筆に値するものといえよう。また、フェリクローム等の高性能テープに対応すべく、イコライザー、バイアスの独立3段切換が可能であり、いかなるテープに対してもその能力を最大限に発揮させることができる。
 その他の付属機能もローコストとは思えない充実ぶりで、ドルビー・システムの内蔵をはじめ、テープの頭出しの容易なクイックレビュー・キュー、テープが終了するとメカニズムが停止するオート・ストップ機構などは便利。またカセット・イジェクトのオイルダンプ・メカニズムのソフトなフィーリングも高級機の風格がある。
 さて、AD4200の再生音だが、普及型らしからぬ本格派で、デッキ側での音作りを排した姿勢が好ましい。歪も少なく、すっきりとした誇張感のない音はこのクラスでは貴重である。レンジはそう広い方ではないが、バランスがよくとれているので、全体によくまとまっている。
 最近発売されたパブロのカセット・シリーズを聴くと、アコースティックなパブロ・サウンドを伸び伸びと再現してくれた。
 諸特性もこのクラスでは抜群で、エアチェックなどには威力を発揮するだろう。
 カセットの性能向上の努力はカセットそのものの枠を突破し、遂にエルカセットの登場をみたが、カセットデッキ自身も高価格商品が続々と発表されている。このようなカセットの高級化志向の一方で、きわめて完成度の高い普及型商品が着実に企画されているのは大変歓迎すべきである。
 AD4200の魅力は、その高性能に比しての価格の要さに集約されるが、その性能はオーディオ機器としての十分な水準を維持している。

ソニー TTS-8000

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岩崎千明


スイングジャーナル 9月号(1976年8月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 DDモーターが登場して、それが世界を、少なくともプレイヤーの、今までの常識をすっかり変えてしまってから、もう何年になるだろうか。
 いつの時代にも、まったくといってよいほど、変わる所のなかったフォノモーターが、おそらく始まって以来、革命的な向上を果したといってよいのが、ダイレクト・ドライブ・ターンテーブルであった。ところが、さらにいま、この方式は水晶による、驚異的一定周波数発振器を内蔵させることによって、それを回転の定速制御の中に、くり入れることによって得た、新しい技術〝クォーツロック・ダイレクト・ドライブ方式〟として、ひとつの完成を成しとげたことになった。
〝クォーツロック〟あるいは、クリスタル・ロックと略称される新しいターンテーブルがこれであり、こうした新製品が、主要メーカーからポツリ、ポツリと市場に送られてきつつある。ソニーのTTS8000も、こうした新しいターンテーブルのひとつである。
 注目すべきは、このTTS8000が、ソニーの手によるクォーツロック・ターンテーブルという点なのだ。
 DDモーターの出る以前に、すでに電子制御によって、回転数を一定にしようとする試みは、世界中の主要ターンテーブル・メーカーが、これを試みていた。現在でも、世界的に信頼されている、スイス・ブランドのT社を筆頭に、国内メーカーからも、こうした電子制御モーターが、数多くあったが、その中でもいち早くスタートを切り、大成功を収めたのが、かくいうソニーのTTS3000であった。それは、機構的にはベルト・ドライブ方式であったが。したがって、電子制御に関しては、ソニーは他社に先んずる技術を持っていた。それはテープレコーダーという、新しい回転機器を作り、育ててきたソニーならではの技術でもある。テープ走行用の技術は、ターンテーブルの定速回転のために、拡大応用された、といってよい。
 本来、オーディオという分野は、電気、科学、機械、材料、と幅広い部門の上に成り立ち、その上に音楽的感覚が加わるという、広い範疇の総合技術である。にもかかわらず、オーディオ・メーカーといわれる中で「オリジナル技術」ないしは「個性的技術として、誇るにたるノウハウ」を持っているメーカーが、果して何社あろうか。ソニーはそうした意味でもっとも強力な技術と、ノウハウを持つといい得る、世界にも誇るぺき、技術志向の強いメーカーである。技術のソニーは、トランジスターを創り、TRラジオを創り、テープ・デッキを創り、TRテレビを創ってきた。さらには、TRアンプを加え、電子制御ターンテーブルをものにしてきた。そのキャリアが、クォーツロックド・ダイレクト・ドライブ方式のプレイヤーを完成させた。先に発表された高級プレイヤーPS8750がこれである。このクォーツロック・プレイヤー、DDモーターの最終極点にあるとも言える水晶制御だけに、価格も高い。とても一般のユーザーが、気遅れなしに入手できるといえる程の価格ではない。加えて、この高価格にしては、黒と金属のツートーンのデザインは、あまりにもメカっぽく、音楽をたしなもうという雰囲気に、どうもそぐわないと感ずるファンも少なくないだろう。音楽は、いわゆる人間の精神の奥に根ざすべき感情活動をともなう芸術である。冷たい感触は、こうした人間味を薄めかねまい。
 今回、TTS8000として、ターンテーブルのみが、単独商品として発表された。割安な価格という、プラスも大きいが、それ以上にその使い手の好みに応じて、プレイヤーを創ることができ、ケースを自分の趣味で選び、あるいは装うことができるという、プラスの要素が、価値としては大きいのではないだろうか。
 クォーツロック方式による、回転精度の向上、ワウやフラッターの低減などの電気的、機械的な性能向上は、いわずもがなだが、さらに、クイック・スタート、クイック・ストップの強い良さも、付加的なメリットだ。おそらく一度使ったら手ばなさなくなる使い良さは、かつての名作、TTS3000以来のソニーのモーター技術の伝統でもあろう。

マランツ Model 1250

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岩崎千明


ジャズランド 8月号(1976年7月発行)


 今日、米国のオーディオ界で最も成功しているメーカーとして、名前を挙げるのがマランツだ。それは一度でも米国に行ったことのある人なら、否応なしに知らされる事実だ。
 ところで、日本のオーディオ界を考えると、オーディオの各パーツのなかで、アンプが他の部分より成功していることは誰もが気がつくだろう。事実日本の多くの製品が世界のオーディオ界に進出しているけれど、なかでもアンプは他の追随を許さないほどの成功を収めているのだ。こうした、国産アンプの優秀さは国内市場においても明らかで、アンプに関する限り、海外ブランドは超高級品以外は、全く国産ブランドの独壇場といってもよいくらいだ。たった一つの例外を除いて......。
 それが、実はマランツなのである。
 マランツのファンは大きく分けて、二つの世代に分れるといえる。その一つはいわめるオールド・マランツの支持者達であり、今はなきマランツの旧製品を愛する古くからのファンだ。それに対して、黒い窓枠を与えられた個性的なフロント・マスクに代表される新しい製品群を手許に置き、あるいは置きたいと願う若い世代のファンがいる。この両者は重なり合うこともあるし、はっきり区別されることもある。
 ただ、これを個々の製品の内側からみると、ニュー・マランツにおいても、マランツの伝統を踏まえたサウンドを持ち、その意味ではまぎれもなくマランツそのものだ。ただこの二つが違っているのは、ニュー・マランツの、現代のアンプとしての多機能性を盛り込むためにデザインされたフロント・パネルの違いだけだ。
 マランツの製品の最高ランクのプリメイン・アンプとして登場したMODEL1250の大きな特長として指摘できるのは、1150などのそれとははっきりと一線を画したそのフロント・デザインから、かってのマランツのイメージをより豪華にアレンジしてパネルに盛り込んだという点である。高い完成度に優雅さを漂わせたともいえるそのデザインは大いに魅力だ。
 内容的には1150をさらにパワー・アップし、130W+130Wというハイパワーを誇り、テープ回路等に使い易さを拡大した点にある。漸新な回路技術を駆使して得られたその成果は、1250がマランツのみならず、全てのオーディオ・アンプの中の最前線に位置することを示している。
 1250は20万弱と決して安いアンプではない。しかし、オールド・マランツ・ファンも納得し、新しい若い世代のオーディオ・マニアにも熱い眼差しを向けさせるだけの、マランツ・ブランドの最高級たるに相応しいプリメイン・アンプなのである。

ラックス SQ38FD/II

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岩崎千明


ジャズランド 8月号(1976年7月発行)


 近く行われる米国大統領選挙に、民主党からはジミー・カーター氏が候補者として指名された。カーター氏はディープ・サウスのジョージア州の出身ということだが、もし米国大統領になりでもすれば、これは大変なことに違いない。ジャーナリズムはカーター氏に対して、大方好意的な評価を下しているようだが、少なくともベトナム戦争やウォーターゲート事件を通過した米国民が本来の民主主義の復活を望んでいることだけはいえそうな気がする。
 これとは無関係ではあるが、偶然にも米国オーディオ界で管球式アンプの復権が著しい。もちろん、管球式アンプが民主主義だというつもりはないが、複雑になる一方のトランジスター・アンプ全盛のなかで、シンプルな管球式が復活し、しかも音もいいとなると、何となくオーディオ界の現状と米国大統領選挙がオーバーラップしてきたというわけだ。
 とはいえ、管球式アンプの復活は、古い形そのままではなくて、現代に通用する新しさを、回路技術的にも、特性的にも、サウンド的にも盛り込んでいるのだ。とにかく、管球式アンプでなければ夜も日もあけぬという、くらいの米国の高級オーディオ、マニア達に最近、その優れた管球式アンプ群によって、俄然注目を浴びているメーカーがある。それがラックスだ。
 ラックスはいうまでもなく、わが国でも数少ない管球式アンプの製造を継続しているメーカーの一つだ。もちろん、ラックスにおいても主力はトランジスター式だが、あたかもこのような情況を見通していたか如く、他社が相次いで管球式アンプの製造を中止していくなかでも、頑なといえるほどにそれを維持し、むしろ新製品を発表したりしているぐらいなのである。これはラックスが当時においても管球式アンプの良さをはっきりと認識し、その可能性さえも予想していたというべきだろう。
 そのラックスの管球式アンプは、最近シカゴで行われたCEショーでも高い評価を得たと伝えられるが、米国でもラックス・アンプの良さを認めるマニアは確実に増えている。
 そうしたラックスの管球式アンプ群のなかでも、わが国のファンに最もなじみ深いのが、世界でも稀な管球式プリメイン・アンプSQ38FDだ。
 発表以来12年、4回のモデル・チェンジを経て、現在の型番となったが、その間、常にわが国の管球式アンプの中心的存在となってきた。
 30W+30Wと出力は控え目だが、一般の家庭で使用する場合、スピーカーの選択さえ誤らなければ、パワー不足になることはないはずで、その気品のある音質は、内容を知れば知るほど価値の高まるものだ。
 技術の進歩の早いハイファイ界において、このようなアンプが生き続けているのは奇跡といわずして、何といおうか。

テクニクス SB-4500

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岩崎千明


スイングジャーナル 8月号(1976年7月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 テクニクスにおけるオーディオの姿勢は、その着手の当初からひじょうに明確であって、オーディオをあくまで技術的、理論的視点から正しくとらえ、推進してきたといってよかろう。いわゆる電気的請特性、調査と計測によるあらゆるデーターを土台にし、開発が進められてきたのだろう。その時期その時期において発表された製品は、非常に長い期間諸特性の優秀さという点で.他社製品に一歩優先してきたものが少なくない。ロングセラーの優秀品がテクニクス・ブランドには指おり数えるほどに多いのも、こうした技術的裏付けがあってのことというべきだろう。
 永い間、低迷し、初期のモノーラル時代における輝やかしいキャリアが途絶えていたスピーカーが、この一年間驚くべき成功をなしとげた。その源は単に計測一辺倒だったスピーカー開発テクニックを、新たなる実際的な手段によって音楽的完成度を得たからだ。SB7000を筆頭とするシリーズの質の高さについてはすでに多く述べられ、いまさらここにいうまでもないが、比較試聴を最終的な決め手として今までになく重要視した成果といえよう。
 マルチ・ウェイの各スピーカー・ユニットを、聴き手から正確に等距離におき、ボイス・コイルを同一平面上に配置するという具体的な手法を採用して、各ユニットからの音波の位相をそろえるという国産スピーカーでは始めての特徴をアピールして、それが、過去の不評を根絶するのに大きく役立ったことも効果的だった。
 テクニクスのスピーカー・システムは、国内市場の数ある製品の中で、最も注目され、関心をそそられる製品として今や位置づけられることになったのである。SB7000を筆頚に、6000、5000とシリーズの陣容が整ったところで、このシリーズをたたき台とした新しいスピーカーのシリーズが誕生した。SB4500である。
 今までのシリーズに比べて、外観的にも、それははっきり特徴づけられる。ウーファーのエンクロージャーの上に、まったく独立して、ドーム型高音ユニットが箱の上にのせてあるという感じで設けられていた今までのシリーズに比べ、今度のSB4500は、コーン型に変更された高音ユニットは、25cmウーファーのエンクロージャーの上部を一段後退させた部分に取付けられている。従ってスピーカー・システムとしては、上端をへこませたブックシュルフ型といってもよかろう。
 少なくとも、今までのシリーズの一般のブックシェルフ型より不便をかこつ欠点は、新しいシリーズにおいては、解消されたといえる。これは、小さいことのようだが、実用上非常に大きなプラスであり、商品としての完成度を高めている。ところで、SB4500が登場した本当の意義、ないし狙いは、その音と、26、000円台という価格に接する時、始めて判断できよう。今までのテクニクスのスピーカーのもつ共通的特徴から明らかに別の方向に大きく一歩踏み出すという姿勢と、更にその成果とをはっきりと知らされる。今までの、ともすると「品がよくて、耳当りのよい素直な音」というイメージではない、「力」をまず感じさせる。その「力」も、この言葉を使うときに、例外なしにいわれる低音のそれではない。いわゆる中音域、中声部、あるいは、歌とか、ソロとかいわれる音楽のなかの最も情報量の多い、従ってエネルギー積分値の大きい音域で、力強さをはっきりと感じさせてくれる。今までのテクニクスのスピーカーにはなかった音だ。あるいは、今までが優等生なら、今度のSSB4500は少々駄々っ子だが、魅力的個性を発揮するタイプといったらよかろうか。だからその音は、いきいきして、躍動的で、新鮮だ。深く豊かな低音と、澄んだ高音が、この力ある鮮度の高い中音を支えて、スペクトラム・バランスもいい。さらにテクニクスの伝統的な技術的裏付けもデータから、はっきりとうかがうことができ、うるさ型のマニアも納得させることだろう。こうした新路線のサウンド志向は、今日的な音楽に対向するものであることはいうまでもないが、これを受け入れる層の若い年令を考慮して2万円台の価格となったに違いない。しかし、このサウンドを獲得するのに必要なユニットへのマグネットなど物的投資を確めると、この価格は驚くほど安いといえるだろう。

ヤマハ NS-500

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岩崎千明


オーディオ専科 7月号(1976年6月発行)


 ベリリウム・ツィータおよびスコーカを採用し、モニタースピーカとして好評を博しているNS1000Mの弟分として発売されたのが、NS500である。NS500は25ccmウーハー、3cm口径のペリリウム・ダイヤフラムを用いたドームツィータを配した2ウェイブックシェルフ型であり、NS1000Mをひとまわり小振りにした外観は、ツヤ消し仕上げの、非常にメカニカルな雰囲気とプロフェッショナル・ユースにも合うような大変たのもしい風格を待つ。
 ヤマハの特徴であるベリリウム・ツィータは、今回のNS500においては、口径が23mmと小型で、、そのハイエンドの周波数特性は20KHzを超える程の高い音域にいたるまで、最も理想的なピストン運動動作をたもつことが出来る。しかもこのベリリウム・ツィータの最も驚ろくべき特徴は、1800Hzという非常に低いクロスオーバー周波数でありながら、なおかつ、音楽プログラムにおいて60Wという高い耐入力を持っている点であろう。一般には小口径のツィータにおいてはボイスコイルの質量がかなり制限されるためその線材としてきわめて細い線を用いることか
ら、余り大きな耐入力を得ることでは不利なわけであるが、このベリリウム・ドームツィータでは常識をはるかに超える耐入力を得ている点に注目したい。
 25cmウーハーは当然のことながら2000Hzまでをカバーするべく今までのウーハ一に比べて、低音用の中域における特性を重視した設計がなされており、具体的にほ、コーン紙を自社で独自に開発したものを使用しており、質量が軽いうえに、高い剛性を持っているので、中音域での理想的動作を持ち得る大きな要素となっている。又、このブックシェルフの大きな特徴である重低音の再生は、このすぐれたウーハ一によるところが大きいが、NS1000Mの密閉型とは違って、NS500においてはローエンドを確保すべくバスレフ方式を採用している点を見逃すことが出来ない。このバスレフ方式によって低音域におけるローエンドがスピーカのf0よりさらに拡大されることによって、非常に広い再生帯域を低い方に確保している。これはベリリウム・ツィータによるハイエンドの確保とのバランスを考えると適切な処置といえよう。さらにこのバスレフ方式採用によって、低音用ユニットからの音響幅射が極めてスムーズなため中音での音のクリアな感じがほうふつと感じられる。さらにこのウーハ一には、55mmφ×35mmhの大型アルニコマグネットを用いて、ロスの少ない高能率な内磁型のマグネットサーキットを持ち、こうした強力なマグネットを充分に生かしたショートボイスコイル方式を採用しているため、極めて高能率かつ歪の少ない再生が可能となっている。しかもボイスコイルには200度以上の高温に耐えうる素材を採用するなど耐入力特性に秀れている。こうしたいくつかのユニットの特徴に加え、ネットワークも空芯コイルを用いた極めて豪華な金のかかったネットワークとされ、ロスの少ないことによる高能率化、また音質の劣化も充分に考慮されたものとなっている。
 さらにNS500における大きな特徴は重量級のキャビネットである。松材のパルプを用いたパーチクルボードを用いた極めて重量の重い一体構造となっているわけで、こうしたブックシェルフスピーカのなかでも20kgに近いという極めて重い重量級となっている。しかも、ブラック&シルバーの外観は、ウーハーのアルミフレームおよび支持金具が形づくるレイアウトによって、非常にめだつデザインとなっている。これはこのNS500の価格帯には他社の優秀製品がライバル製品としてひしめき合っているだけに、店頭効果を充分考慮したユニークなデザインといえよう。
 さて、NS500はNS100Mに較べて、外観上もひとまわり少さく、しかも2ウェイ構成であるにもかかわらず、その中音域での音の極めて積極的な響き方は驚ろく程で、特に歌あるいは楽器の演奏等に対して非常に力強い迫力を秘めている。このローエンドからハイエンドに至る極めてフラットな感じの一様なレスポンスを感じさせる音は、現代の最も進んだハイファイ用スピーカのひとつの典型ともいえよう。
 とくに最近増えている若い音楽ファンなどにはNS500はまさにうってつけのヤマハの高級スピーカといえよう。

ビクター JA-S41

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岩崎千明


電波科学 7月号(1976年6月発行)


 若いファンにとって求めやすい価格帯のいわゆる、普及形アンプの品質向上がますます加速されている。
 新製品は必らず性能的により高いレベルに要求されるし、実際にそれは遂げられている。同じ価格なら性質は良いし、同じ性能なら価格は安くなった。文字通りお買い得の新形として、常に賛辞を浴びてデビューするというのがこの頃の常識だ。
 だから、今さらここで「ビクターの今度の新形JA−S41は前のくらべて、パワーはぐんと上って65/65W、ひずみ0・05%の高性能、電源トランスは2つ付いてるし電源コンデンサは15、000μFが2つ。性能もSNも抜群、クロストークも格段にすぐれてる」と定石通りにほめ言葉を並べたところで、こんな美辞麗句に馴れっこになってしまった読者の皆さんには、大して気に止めなくなってしまった。馴れというのは恐いものだなんて、長屋のいん居のぐちみたいなことをこぼすひまはここにはないのだが、少なくとも、これだけははっきり知っておいて良い。ビクターの新形アンプJA−S41はまぎれもなく、今までのビクターのアンプ技術の一大集成ともいえる傑作で、音に接しても今までになくステレオ感も自然でくせは本当に感じられず、透明でありながら暖か味さえ伝わってくる。
 歌の生々しさは、音量さえ適切ならばびっくりするほど、眼をつぶって聴くと歌手が眼前で語りかけてくる姿が見えてくるほどだ。マイクに対してのわずかな顔の向きの変り方すら手にとるように判る。バックの演奏者の並び方から楽器の配置、その大きさなど注意して聴けば聴くほどリアルな再生ぶり。それはサウンドのバランスの良さ、音の質的な水準の高さ、さらにステレオ感、セパレーションの良さなくては得られない。
「アンプというのはエレクトロニクス技術だ。だから電気的データが何よりも大切で、これが長ければ実際の動作も音もよいはず」という説はたしかにその通りだ。しかし、電気的性能さえよければそれですべてよいというわけでは決してない。音の良くなる最低条件として電気的性能は必らず要求されるけれど、その辺を十分に認識していないと性能さえよければ音は必然的に良いはずと思い込んでしまうことになるし、それが落し穴とすらなってしまう。しかし、逆に性能なんか無視してもよいというわけでは決してないが、本当の音質の良さの基本になるべき性能の良さというものは、単なる数字で表わせる、というほど簡単なものではない。このところをよく了解しておかなくてはならない。
 たとえば今、話題となっているクロストークについても、セパレーション何dBと数字が良ければそれで本当に良いといえるかどうか。逆にデータの上で、驚異的な数値なんかを発表していなくとも実際には優れているのだってある。ビクターのJA−S41の場合、クロストークに対しての配慮とか処置とかいうだけではないだろうが、電源を左右分離するのでなく、最終出力段とドライバ段以前とを別電源としている。電流変動の大きな出力段を分離することにあって、電源全体的な電圧変動がなくなるため、特に直線性とかひずみとかに強く影著されることがなくなったわけだ。これが同じ価格帯なのにひずみが格段に減り、出力がより大きくなりしかも、ピーク出力でも直線性がよくなった理由だろう。つまり、基本的な性能を重視した新らしい技術的着眼が、アンプの今日的問題点とされているクロストークまでも格段に向上させてしまったということになる。
 それなのにこの新らしい大いなる飛躍は、それをはっきりと知らすことが単なる数値の羅列ではでき難いのである。さぞかしメーカーも歯がゆいことだろう。でもこうした良さは聴く側に耳さえあれば必らず判るものだ。こうして聴いてみることを推めよう。
①左右スピーカを一辺とした正三角形の頂点に座る。
②できれば歌の入った演奏を、ミニチュア化したステージで歌手がある程度の距離で歌っているように再生する。
③アンプのバランス中央のまま右のフォノ端子入力を外す。そのままで左ピーカへと音像、つまり歌手が移動する。次に左フォノ端子を外したときに右スピーカ側に移動する。
④これでよく判らなければ右側フォノを外してアンプ出力端子の左スピーカー側のリード線を外して、8Ωの純抵抗を接続し右側の音を聴き確める。特に高音シンバル、低音ベースなどが洩れていないか。

 JA−S41はこうしたときに数字には表されることのない良さを発揮する。JA−S41の水準にあるアンプは市場の5万台に果して何機種あるだろうか。

岩崎千明


スイングジャーナル 6月号(1976年5月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 この1年間ほど米国のオーディオ誌やステレオ・レビュー誌の広告に、FRのアームが真上からみた原寸にも近い大きな姿勢で載っている。この広告は決しでFRのものでもないし、無論トーンアームの広告でもない。シェルはSMEだがアームはまぎれもなくFR54がなぜか登場しいる。おそらく広告制作者が、FR54の美しい姿態に魅せられての結果だろうということは十分察しがつくというものだ。現在世界に何10種とあるトーンアームの中で、奇をてらうことなく本格派の風格を、これほどのセンスでまとめ上げたアームは他に探すのはちょっと難しかろう。このアームに眼を止めた読者は、単純にその美しい姿を無意識のうちに理解し、更にその広告主のセンスの良さを無言の中で受けとめよう。
「名は態を表わす」というのと同じくらい「態は内側を表わす」ものだ。外観の上にその中味はにじみ出るから「美しい」ものは必らずその内容も悪かろうはずがない。これは真理だ。人の世に芸術というものがある以上、自然の法則ともいえよう。
 ところでこのFR54を外観の上でも、内容としてもはるかに凌駕する製品が出現した。このスーパースターこそFR64Sなのである。
 FRは軽量級MC型カートリッジFR1と、そのアームFR24をもってスタートした。その後、MM型カートリッジFR5を加え、さらに汎用アームFR54を加えて今日の基礎を成してきた。今、FR6シリーズ、さらにFR101とMM型カートリッジ陣を展げ さらにFR1は1度の改良を加えて性能をはるかに向上させた。そうした一連のグレード・アップともいえるカートリッジを最も理想的に動作させるため、実働性能の優れたトーンアームを既に数年前から開発中だった。実働性能といういい方は少々理解し難いかも知れぬ。例えばレコードのコンディションやプレイヤーの動作環境を考えれば、必らずしも理想状態にいつもあるとはいえない。いや逆に実際のコンディションは、理想状態とは程違いというのがディスク再生の実際なのである。
 これを考慮したとき、今日の高感度軽量級アームの基本技術といえるスタティック・バランス・タイプの全ては実用的動作で問題を内蔵することになる。レコードの偏心、ソリ、プレイヤーの傾き、水平の保持の不確かさ、こうした全てが重力をたよりにしたスタティック・バランス型では裏目に出てしまう。針圧を加えんと、カウンター・ウエイトをずらして水平バランスをくずした時から、このウイーク・ポイントに常に脅かされることになるというわけだ。アーム自体の水平バランスを完全にとった上で、スプリングによる針庄加圧をするダイナミック・バランス方式こそ理想だ。プレイヤーをほんの少し傾けてみたとき厳然たる事実として、それは誰にでも確かめられよう。プロフェッショナル用アームにおいて、ダイナミック・バランス型の多いのも理由がはっきりあるのだ。
 ところが、このダイナミック・バランス方式は機構として針圧加圧のためのスプリングを内蔵するが、これが実は難物だ。市販の量産品にこのタイプがない最大の理由がそれである。現実にEMTのプロ用アームにおいてもその1グラム単位のひと目盛は2m/m程度の大まかなものであるのは、スプリングの許容誤差を究めることが至難なことを示している。
 さて、FR64S開発に既に5年あるいはそれ以上を経たはずだが、今日の新型はなんと0・5g刻みで、1目盛は4m/m近くもある。つまり1gあたり8m/mはあろう。これはかつてあらゆる海外の業務用メーカーの達し得なかった領域で、そこに使われているスプリングの構度の極限をまさに一眼で表わしているといえよう。ダイナミック・バランス型の良さを承知していても実際上、製品化の難しいのは当事者たるメーカー各位がよく知っているはずで、最近になってやっと数種が国産製品化に成功したに過ぎない。その数少ないダイナミック・バランス型の中にあってFR64Sは、もっとも高精度のアームといってよい。加うるにステンレス・アームによる超低域特性の
確固たる音は、価格5万5千円を補って余りある内容と知れば、誰しも納得してしまうことだろう。

岩崎千明


サウンド No.6(1976年5月発行)

「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より


 8つのスピーカー・システムということで、それを考えると、いざ名前を挙げるに従って8銘柄では少々物足りないのに悩んでしまう。

 8番目は、英国の名器とうわさ高い「ヴァイタボックス」の大型システムか、あるいは米国のかつてのビッグ・ネーム「クリプシュ」の現在の大型システムか、この2つのうちのひとつを挙げるのが、まず妥当なとこだろう。次点として、英国のローサの、これもコーナー型のホーンシステム。どれをとっても、低音はコーナーホーンで折返し形の長いホーンをそなえている。どれかひとつ、といういい方で、この中のひとつを絞るのは実は不可能なのだが、あえていうならヴァイタボックス。

 但し、これらは手元において聴いてみたいと思っても、それを確かめたことは一度もない。だから、人に勧めるなどとは、とてもおこがましくてできないというのが本音だ。そこで、よく知りつくしたのを最後に挙げよう。

 AR2aXまたはKLHモデル4だ。

 ARは今や2aXとなったが、その原形のAR2を今も手元で時折鳴らすこともあるくらいに気に入った唯一の本格的ブックシェルフ型。ARの低音はしばしば重すぎるといわれるが、それはAR3以後の低音で、AR2においては決して重ったるい響きはない。あくまでスッキリ、ゆったりで豊かさの中にゆとりさえあって、しかも引き緊った冴えも感じられる。高音ユニットは旧型がユニークだが、今日の新型2aXの方が、より自然な響きといえよう。

 KLHのモデル4は、同じ2ウェイでもブックシェルフとしてARよりひと足さきに完成した製品で、ブックシェルフ型の今日の普及の引き金となった名器だ。今でも初期の形と少しも変わらずに作り続けられているのが嬉しい。AR2よりも、ずっとおとなしく、クラシックや歌物を品よく鳴らす点で、今も立派に通用するシステムだ。持っていたい、たったひとつのブックシェルフといってよいだろう。

ヤマハ NS-1000M

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岩崎千明


サウンド No.6(1976年5月発行)

「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より


 ヤマハのオーディオ技術は他社と違って、はっきりした特長がある。それはオリジナル技術を持っている点で、アンプのV-FET、スピーカーのベリリューム・ダイアフラムだ。ともに他社にその類似製品があるが、ヤマハの場合、独力に近い形で一から始めて商品化に成功し、製品化にこぎつけたという点でユニークだ。

 ベリリューム・ダイアフラムは、それまでのジュラルミン系のダイアフラムにくらべ2倍も硬度が高く、重さはかえって軽いという驚くべき金属で、これが高音用に用いられると、同じ口径なら1オクターブ上の周波数範囲までピストンモーションが確保される。つまり理想状態でスピーカーが動作する。

 NS1000Mとして中音、高音にこのベリリューム・ダイアフラムを着装したシステムは、おそらく始めて海外製品を越えたサウンドを得たと断言できる。このシステムを聴いて海外メーカーの技術者は、おそらくどれほど驚いたことだろう。

 オーディオファンとして、JBLのシステムと切換えて、それに匹敵するサウンドの国産品が誕生したことを、半ば信じられない形で驚嘆した。それは、もう1年も前か。今、その第2弾としてヤマハNS500がデビューしたばかりだが、普及価格帯にまでベリリューム・ダイアフラムが登場したことには、オーディオ王国・日本の誇りと心強ささえ感じたものだ。

 さて1000Mのデビュー以来、このシステムはいろいろな形で常に座右にあってモニター用としての威力をふるっているが、そのすばらしさは誰かれとなくスピーカーにおいての国産品を見直すきっかけを作ってきた。

 10万円のスピーカーにしては1000Mの外観は少々おそまつかも知れぬが、それは実質本位のなせるためで、黒檀仕上げの14万円の1000の方が、より風格も雰囲気もあるのは当然だ。しかし10万円のシステムというラインの中でのNS1000Mのサウンドの魅力は、何にも増して強烈だ。マニアほどそれを鳴らさんと、やる気を起こさせる。

ダイヤトーン 2S-305

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岩崎千明


サウンド No.6(1976年5月発行)

「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より


 世界のスピーカーがすべて「ローディストーション、ワイドレンジ、フラットレスポンス」を目指す今日、その先見の銘をもっていたのがダイヤトーンの305だ、といったら誰かになじられようか。事実、三菱がハイファイ・スピーカーに志向し始めたとき、その目標としたのが前提の3項目であるし、それはなんと今から20年も前のことだった。

 その最初の成果が30センチの2ウェイ305であり、続く2弾が16センチのP610であり、どちらも20年以上の超ロングセラーの製品なのだ。305は最初、良質なる音響再生に目をつけたNHKによってモニター用として使用され始め、今日にいたるも、その主要モニターとして活躍し続けている。30センチの大型ウーファーに5センチの高音ユニットを、1500Hzのクロスオーバーで使うこの2ウェイ構成は、なんとごく最近の英国KEF製のBBCモニターにおいてトゥイーターユニットが2つだが、まったく同じ組合わせの形をしている。これは果たして偶然なのであろうか。KEFのモニターが、よく聴いてみればダイヤトーン22S305と酷似しているのは当然すぎるほど当然だ。三菱305の場合、日本のマニアからみれば国産品という点において、いわゆる舶来品との違いが商品としての魅力の点で「差」となってしまうのが落し穴なのだ。

 だから、もう一度見直して、いや聴き直してみたい。それがこの2S305だ。いくつかの驚くべき技術が305には秘められているが、そのひとつはウーファーのボイスコイルだ。そのマグネットは巨大で、ヨークの厚さに対してボイスコイルが短かい、いわゆるロングボイスコイルの逆の、ショートボイスコイル方式だ。これはダイヤトーンのウーファー以外には、JBLの旧タイプのウーファーだけの技術である。国産品の中にJBLの技術にひけをとらないといい得るのは、なんとこの305だけなのである。JBLなみに手元におきたいモニターシステムというのは、その理由だ。

タンノイ HPD385

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岩崎千明


サウンド No.6(1976年5月発行)

「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より


 タンノイという名称が意味するのは、今やスピーカーの中でも、もっとも英国的、ジョンブル的な色合いを強く残した響きを感じさせる。事実、タンノイは昨年、米国企業に合併された今日といえども、もっとも英国的なスピーカーを作るメーカーとして日本の高級ファンに受け止められている。戦前は英国の車載用音響機器のメーカーとして知られたキャリアーをもつが、戦後はもっばら高級ハイファイ・スピーカー・メーカーであるとされてきた。

 その作るユニットはたった3種、10インチ、12インチ、15インチのそれぞれの口径のコアキシアル2ウェイ・ユニットで、特長とするところは中央軸にホーン型高音用ユニットを備えており、低音のマグネットを貫通したホーンが、そのまま低音コーンのカーブを利用して大きな開口となっていて、1500Hzという比較的低いクロスオーバーをそなえた2ウェイ・ユニットなのだ。これは、アルテックの604を範にして作られたものだが、細部は独創的で音響的にも英国製品としての生すいの血筋を感じさせる。中音のやや高めの音域の充実感は、いかにもクラシック音楽の中核たる弦楽器をこの上なく、よく再生する。

 タンノイのこうした魅力は、かなり米国的になった現在のニュータンノイといわれるもの以前の製品に色濃く感じられるので、できることなら、その旧タイプのユニットが望ましい。ワーフデルとかグッドマンとかの、かつての英国サウンドが今やみる影もなく、ちょう落してしまった今日、僅かにタンノイにおいてのみ、その栄光が残されているうちに、マニアならば入手しておきたいという心情は、単なる良い音へのアプローチという以上のノスタルジックなものも強くこめられている。それは今日の隆盛をきわめるハイファイの引金となったに違いない英国のオーディオ技術、サウンド感覚の没落を悲しむ、ひとつのはなむけで

もあるし、日本武士のたしなみでもあろう。じゃじゃ馬ともいわれるその使い馴らしの難しさも、今や大きな魅力となろう。

QUAD ESL

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岩崎千明


サウンド No.6(1976年5月発行)

「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より


 スピーカーが振動板というひとつの重量物、いくら軽いとはいってもそれは重さのあるものだが、それを動かして空気中で音波を作り出すことを土台としている以上、作り出した音波自体が避けたくとも、大きな制限を受けることになる。楽器の中に限ったとしても、打楽器以外の天然の音はすべて、重さのある振動板によって作られた音ではないから、もしそれを本物らしく出そうとすると、振動板は「重さ」があってはならない。

 例えば管楽器のすべてがそうだ。木管ではリードが振動して音源となるが、リードは竹の小片で高音用スピーカーの振動板なみに軽い。しかし高音用ユニットでは、木管の音は出そうとしても出るわけがない。ときおり、もっと重い振動板によって軽やかな管楽器の音を出そうということになる。それがバイオリンのような小がらの弦楽器になると、もっとひどいことになる。バイオリンの弦の重さは、高音用ユニットの振動板よりも軽いくらいだから。

 ESLと呼ばれて、今日世界に例の少ないコンデンサー型・スピーカーが高級マニア、特に弦楽器を主体としたクラシック音楽のファンから常に関心を持たれるのは、そうした理由からだ。コンデンサー型システムの音は、あくまで軽やかだが、それは振動板がごく薄いプラスチックのフイルムだからであり、それは単位面積あたりでいったら、普通のスピーカーのいかなる標準よりも2ケタは低い。

 つまり、あるかないか判らないほどの軽い振動板であり、ボイスコイルのような一ケ所の駆動力ではなくて、その振動板が全体として駆動されるという点に大きな特長がある。つまり駆動力は僅かだが、その僅かな力でも相対的に大型スピーカーの強力なボイスコイル以上の速応性を持つ点が注目される。過渡特性とか立上がりとかが一般スピーカーより抜群のため、それは問題となるわけがない。ただ低音エネルギーにおいてフラット特性を得るため、過大振幅をいかに保てるかが問題だが、ESLはこの点でも優れた製品といえる。

アルテック 604-8G

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岩崎千明


サウンド No.6(1976年5月発行)

「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より


 アルテックが日本の高級オーディオ・ファンにとって、どうしても重要なイメージを持つのは、それがウェスターン・エレクトリックの音響機器製造部門としてスタートしたメーカーであるからだ。もうひとつは、米国を中心とした全世界の音楽産業において、もっとも古くから、もっとも広く使用されているスタジオ用モニター・スピーカーのメーカーであるからだ。

 モニターということばがスピーカーに用いられる最初の動機は、このアルテックの有名なコアキシアル大型ユニット604であった。もっとも最初は601であったが、602を経て604となり、その原形が今日とほぼ同じとなって30年は経つ。音楽が再生系を経てリスナーの耳に達するのが常識となった今日、プロフェショナルの関係者の使用するモニター用スピーカーが何であるのか、それを使うことによって、もっとも原形に近い再生状態が得られるに違いないと信ずるのは、ごく当然の帰結であろう。

 その604は今75年後期に大幅の改良を経て604-8Gとなった。8Gは8オーム型、16Gは16オーム型なので、日本では8Gが一般用として出ているが、当然16オームの16Gも現存することになる。今までの604Eにくらべて、ウーファーのf0を1オクターブ半以上も下げることにより、ローエンドの再生帯域を拡大し、また高音ユニットのダイアフラムの改良で、ハイエンドをよりフラットにして実効帯域内の高域エネルギーをずっと高域まで平均化して、フラットを完ぺきに獲得した。

 今までは、高域になるに従ってエネルギーが次第に増えるハイ上がりの特性であったのが、ごくフラットな平坦特性を得たため、ずっと聴きやすく、はるかにスッキリした再生特性を持つことになった。つまり、アルテックの現代性志向をはっきりと反映した新型ユニットといえよう。いままでアルテックをモニター用、音の監視用といういいわけで避けてきたマニアも、604-8Gは音楽再生用として受け止めよう。

JBL L400

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岩崎千明

サウンド No.6(1976年5月発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より

 JBLの最新最強力のシステムが、間もなく始まる6月の米国CEショーで発表される。これはL400と呼ばれる4ウェイシステムで、JBLのコンシューマー用初の4スピーカーシステムだ。おそらく、日本では70万円前後の価格で年内に発売されることになろうが、その母体はすでにあるスタジオモニター4341であろう。L200がスタジオモニター4331・2ウェイシステムと同格、L300が同じく4333・3ウェイと同じランクにあるのと同じように。

 このL400は、当然ながら38センチの低音ユニット、25センチの中低音用。ホーン型中高音用はLE85相当のユニットつき。それに077相当の高音ユニットの4ウェイ構成で、その狙うところは低歪、広帯域フラット再生だ。現代のハイファイ技術をそのままの姿勢でスピーカーに拡大した形といえよう。

 ところで、こうしたスピーカーのあり方は今日の全世界では共通なのだが、それがJBLシステムとして、他社との違いは何か、という点を具体的に追い求めていくと、D130ユニットになってしまう。D130は38センチ形のフルレンジだが、30センチ版がD131という名として知られており、これは4ウェイ5スピーカーのスタジオモニター4350の中低音用として、今日もっとも注目され、アピールされている。

 このように、JBLユニットのフルレンジの原形たる38センチD130から発したJBLサウンドが、もっとも現代的な形でまとまったのがL400に他ならない。L400はJBLの一般用システム中パラゴンを除き、最高価格のシステムになる。パラゴンは左右ひと組で3、600ドル。L400はひとつで1、200ドルは下るまい。ステレオで、3、000ドル近くでパラゴンに近い。L400の良さは具体的に接してみないと定かではないが、モニター4341から発展した音楽用で、低音をより充実して、ハイファイ志向に強く根ざした広帯域リブロデューサーの最強力形には違いあるまい。

JBL D44000 Paragon

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岩崎千明

サウンド No.6(1976年5月発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より

 ステレオ全盛の今日、ステレオ用として十分に意識され考えられたスピーカー・システムが果たしていくつあろうか。ステレオ初期からあった「ステージ感のプレゼンス」を考慮して、高音を周囲360度に拡散するとか、音の直接放射を壁面に向けて壁からの反射音によって「拡大されたステレオ感」と「遠方音源」の両面から「ステージ感」を得ようとする試みはヨーロッパ製を始め、多くの英国製品にみられた。

 しかし、リスニング・ポジションをかなり限定されてしまうという点で、今日の主流となっている全エネルギー直接輻射型システムと何等変わることはない。つまり、現在のスピーカー・システムをステレオ用として使うことは、モノラルにおけるほど広い融通性を持っているわけではなくて左右2つのスピーカーの間の、ごく限られた一定場所においてのみ、正しいステレオ音像が得られるにすぎない。そのスピーカーの大小、部屋の大小に拘らず、理想的にはただ1人だけに限られる。

 パラゴンの場合、驚くべきことに、その設置された部屋のどこにあっても、ステレオ音像はほとんど変わることなく、両スピーカーの中心にある。たとえ部屋のどこにいて聴こうが、変わることはない。こうしたスピーカーが他にあるだろうか。

 しかも特筆すべきは、このシステムが低音、中音、高音各ユニットともホーン型のオール・ホーンシステムであるという点である。

 パラゴンが、現存するオール・ホーン型の唯一のシステムであるということだけでも、その価値は十分にあると、いってよいが、パラゴンの本当の良さは、ホーン型システムというより以上に、ステレオ用としてもっとも優れた音響拡散システムであるという点を注目すべきだ。ただ1人で聴けば、コンサートホールのステージ正面の招待席で、ステージを見下ろすシートを常にリスニングポジションとして確保できる。また部屋を空間と考えれば、その空間のどこにあっても、もっとも優れたステレオ音像を獲得できる。パラゴンでなければならぬ理由だ。

ヤマハ C-2, B-2

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岩崎千明


スイングジャーナル 4月号(1976年3月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 市場の数ある高級セパレート・アンプの中で高い評価を得たひとつにヤマハCIとBIのペアを上げるのは妥当であろう。V−FETという現代的なデバイスを基にした技術がアピールされたパワー・アンプBI。至れりつくせりのフル機能の内側をそのままのパネル、デザインの豪華にして、ぜいたくなプリ・アンプCI。ともに「豪華型」において、ひとつのはっきりした特長をズバリと明確にし、ユーザーにポイントをはっきりと把握させることができた点がひときわぬき出た成功の源動力となったといえよう。それというのもこれだけ大きく取り上げて謳い上げ得る特長を持ち、それを外観的デザインに完成させた。
 ところで、こうしたBI、CIの初期段階での華麗なる成功があっただけに次なる豪華型アンプはひどくむつかしくならざるを得ない。大スターのあとに続くスターは、前者を乗り越えなければ成功につながらない、という宿命を内蔵し、それが思い通りに事の運ばぬ大きな理由ともなるものだ。
 ヤマハのC2、B2は、こうした点でCI、BIよりもはるかに試練を受けるべき立場にある。CI、BIの成功が大きければ大きいほど、こうした宿命ともいうべきものを背負ってしまうということになるのである。
 C2、B2はこうした背景のもとに早くから多くの関係者から強く期待され、その期待は時とともに高まった。
 そのヤマハのC2、B2がやっと姿をあらわした。
 ごく一部に片鱗が伝えられていた通りに、C2はCIとはすべての点で、まったく違っている。フル機能ともいい得るほど、考えられるすべての使用用途に応じられるスイッチ類や、コントロール類を盛り込んだCIに対して、C2はすべての点で簡略化されている。外観的にも、C2は高さ8センチにも満たない超薄型の形態にまとめられて、デザイン以上に構造上からもユニークだ。
 プレイヤーがそのまま乗りそうな大きな上面パネルは、側面と一体で全体の強度の中心となっていて、分厚いダイキャストの引きぬきだ。
 全体は上品な艶消しの黒で仕上げられでいるが、ともすると重い感じに陥りがちなこのイマージュを、ケースの縁との断ち落されたようなシャープなラインが外側を囲むように包んでいて、この鮮かなカットが現代的な感覚を強めているため、全体としてスッキリとした格調の高いイメージを強く訴えている。
 裏ぶたを取ると単純化された回路ブロックごとに整然とした配列が、大きなプリント基板の上に見られ、その細かなパーツは整然と並んで僅かの乱れもみせない。回路の部品点数こそ多くないが、そのひとつひとつが大変高い精度であることは、パーツの外観からも確かめられる。数少ないスイッチやコントロール・ボリュームも密閉式であったり、スイッチの接点の金属の輝きにも厳選された高級品としての格調がはっきりと認められるのも、ヤマハの超高級アンプらしい。
 こうした細かいひとつひとつの積重ね、集積がその全体のサウンドの上にも如実に表われているのは響きの澄んだ冴え方から判断できる。
 単純化イコール純粋というパターンの典型が、このC2のすべてでもある。アンプの電子回路的な見地からもパーツからの視点でも、さらにその創り出すサウンドの世界からもこのパターンをはっきりと聴くものに知らされるのだ。CIとの比較試聴がこの特長をひときわきわだたせる。つまり、CIが至れり尽せりの回路の完全性で、非のうちどころのないサウンドとして我々を驚かせるのに対して、C2は自然感そのもの、ナチュラルな響きと素っ気ないまでの素直なことこのうえないスッキリした再生ぶりだ。すっかり賛肉を取去ったこのC2こそ、まさに現代ハイファイが求める音の方向なのだ。
 C2に多くを語ったためB2へのスペースが少なくなってしまったが、そのV−FET出力回路の技術はBIからの直系のもので、特に中出力(といっても100W十100W)の実用的高出力でゆとりをもって鳴らすさまは、BIと置きかえても羞を感じさせないほどの再生クォリティーといってよかろう。
 願わくは、この日本の誇る豪華型アンプがより多くの方の耳にいっときも早く達することを。

ヤマハ NS-690(組合せ)

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岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 ヤマハのスピーカーの名声を決定的にしたのがこのNS690だ。あとからのNS1000Mが比類ないクォリティで登場してきたので、この690、やや影が薄れたかの感がなきにしもだが、やや耳あたりのソフトな感じがこのシステム特長となって、それなりの存在価値となっていよう。30cm口径の特有の大型ウーファーは、品の良さと超低域の見事さで数多い市販品の中にあって、最も品位の高いサウンドの大きな底力となっている。ドームの中音、高音の指向性の卓越せる再生ぶりは、クラシックにおいて理想的システムのひとつといえる。このヤマハのシステムの手綱をぐっと引きしめたサウンドの特長が大へん明確で組合せるべきアンプでも、こうした良さを秘めたものが好ましいようだ。
 ヤマハのアンプが最もよく合うというのはこうした利点をよく知れば当然の結論といえ、CA1000IIはこうした点から、至極まっとうなひとつの正解となるが、あまりにもまとも過ぎるといえる。その場合、ヤマハのレシーバーがもうひとつの面からの、つまり張りつめた期待感と逆に気楽に音楽と接せられる、ラフな再現をやってのける。

スピーカーシステム:ヤマハ NS-690 ¥60,000×2
プリメインアンプ:ヤマハ CA-1000II ¥125,000
チューナー:ヤマハ CT-800 ¥75,000
プレーヤーシステム:ヤマハ YP-800 ¥98,000
カートリッジ:(プレーヤー付属)
計¥418,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 春以来LMシリーズがヒットしてサンスイのブックシェルフのイメージが盛り上ってきたこの秋、力のこもった強力な新シリーズが鮮烈に加わった。SP4000とSP6000だ。このシリーズの特長ともいえる高音ユニットのホーン構造からも判るとおりユニット各部に対し、質の高さを追求しことがポイントで、LMとは違って音質の面、ひとつぶひとつぶの音のパターンの明確さという点で俄然確かさが感じられる。その質感は、あるいはJBLのそれとも相通ずるものだ。つまり強力なマグネットを源にしてパワフルなエネルギーがあっての成果だろう。この場合、実は組合せにおいてはかえってむずかしくなるもので、例えばJBLのシステムがその用いるアンプのくせを直接的に表出してしまうのとよく似ている。
 つまり音がむき出しになりやすいので、この辺をいかにまとめるかが、一般の音楽ファンの好む音へのコツといえる。サンスイのFETアンプBA1000は、この場合最も容易に結論へ導いてくれることを期待してよかろう。ややソフトな中域の再生ぶりがSP4000の引きしまった良さととけ合うのは見事だ。

スピーカーシステム:サンスイ SP-4000 ¥49,800×2
コントロールアンプ:サンスイ CA-3000 ¥160,000
パワーアンプ:サンスイ BA-1000 ¥89,800
チューナー:サンスイ TU-9900 ¥89,800
プレーヤーシステム:サンスイ SR-525 ¥44,500
カートリッジ:エンパイア 2000E/II ¥16,500
計¥500,200

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 ビクターのグレート・ヒットFB5はこのメーカーのそれ以来の路線に少なからず影響を与えたようだ。JS55はFB5のユニットの特長をそのまま拡大したようなサウンドとクォリティとで、そのパワフルな再生ぶりはとうていブックシェルフ型のそれではない。つまり音響エネルギーの最大限度が異例に高いためであろうか、力強さは抜群だ。
 このずば抜けた量感あふれるエネルギーは中域から低域全体を支配して音楽のポイントを拡大して聴かせてくれるのだ。ややきらびやかな高域も現代の再生音楽のはなやかさにとっては必要なファクターといえよう。
 このスピーカーを引き立たせるには、たとえばセパレートアンプも考えられるが、より力強さを発揮する新型JA−S91に白羽の矢をたてた。ここでは音の鮮度を重視して、暖かな響きを二の次にしたからだ。つまり、あくまで生々しく間近にある楽器のソロのサウンドを捉えようとしたのだ。FB5のエネルギッシュな音にくらべてやや控え目ながらここぞというときに輝かしいサウンドがJS55からは存分に味わえるに違いない。JA−S91はこのとき本領を発揮する。

スピーカーシステム:ビクター JA-55 ¥46,500×2
プリメインアンプ:ビクター JA-S91 ¥130,000
チューナー:ビクター JT-V71 ¥59,800
プレーヤーシステム:ビクター JL-F35M ¥37,500
カートリッジ:(プレーヤー付属)
計¥320,300

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 ソニックスは海外でよりその名を知られた最もポピュラーなスピーカー専門メーカーで、その作るブックシェルフ型は価格対品質、あるいは実質的投資という点で他社に先がけてきた。クォリティ一辺倒というよりもその価格帯でのユニット構成という点でも優れる。大型システムにも匹敵するスケールの大きなサウンド、やや華麗な中域の充実感などが全体的な特長だ。

 その中の中級品種ともいうべきAS366は最も重点的な主力製品だけに一段と充実した内容で、用途の一般的な広さからも誰にも奨められる。
 そこでこのシステムをもっとも高いレベルでの再生を考えるとアンプにはやはり相当の品質のものを組み合わせるべきだ。トリオのKA7300は全体にKA7500を格段に上まわるすばらしい質とエネルギーとを、ステレオアンプとして最も理想的なモノーラル2台にわけたといえるほどのセパレーションで実現している。中音から低音の定位の抜群な良さを示す。このアンプのもつ可能性は同じスピーカーでもひとけた違ったグレードにまでも高めてくれるのには目を瞠る。マイクロの超低域までの安定したサウンドと共に、全体の完成度はきわめて高い。

スピーカーシステム:ソニックス AS-366 ¥41,800×2
プリメインアンプ:トリオ KA-7300 ¥65,000
チューナー:トリオ KT-7500 ¥48,000
プレーヤーシステム:マイクロ DD-7 ¥74,800
カートリッジ:エレクトロ・アクースティック STS155-17 ¥8,700
計¥280,100

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 パイオニアのブックシェルフ型の新たな流れがこのCS−T5、T3だ。今までにない積極的な前に出る音をはっきりと狙い見事な形で聴く者に迫るサウンドがこの新シリーズの大きな特長で、今までのパイオニアのスピーカーになかったサウンドでもあるのだ。
 このスピーカーが加わることの音楽へのアプローチの拡大ははかり知れぬ。
 もし、このスピーカーをジャズ向きだなどと評するものがいるとしたら、それは音楽の真の聴き方を知らないといわれそうだ。つまりあらゆる音楽が、それを知れば知るほど身近に欲しくなるものだ。そうした欲望はなにもジャズに限ったことでは決してない。
 つまり、オーディオマニアが音楽ファンになったときに欲しくなる音をCS−T5は提供してくれる。
 その鳴らし方はそれこそ聴き手の求め方次第だが、最もオーソドックスな形としてSA8900またはSA9800というこの一年間ベストセラーを続けた製品を指定しておこう。パワーのゆとりがあればトーンコントロールで望む音へのアプローチは大きく拡大されるし、しかもこの入手しやすいスピーカーの価格を考えると、好ましい価格のアンプだから。

スピーカーシステム:パイオニア CS-T5 ¥29,800×2
プリメインアンプ:パイオニア SA-8900 ¥78,000
チューナー:パイオニア TX-8900 ¥65,000
プレーヤーシステム:パイオニア PL-1250 ¥45,000
カートリッジ:ADC Q32 ¥9,000
計¥256,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 あらゆる意味でステレオ用スピーカーとして、世界に唯一の存在ともいえるのが、JBLレインジャーシリーズの主役たるパラゴン。得意な形態は、その中音域に対する理想的拡散器の役目を果す大きく湾曲した反射板によるものだ。中音は外観から一目瞭然だが、低音も高音もホーン型で構成される点、今や珍しい存在である。だが、f特ひとつ考えても「軸上1m」という測定条件の設定さえも不可能なことから判る通り、現代のスピーカー技術とは明らかに違った志向の所産である。この点がパラゴンの真の特長でもあるし、その価値判断の別れ道ともなる。
 こうしたホーン構成の3ウェイであるためか、音色バランスの特異な点が使用上むずかしい問題点となり、しばしばその良さが十分に発揮されることがない。JBLのオリジナルにおいて「エナジャイザー」SE408パワーアンプを組合せる場合にも、独特のイコライザーボードを挿替えて400Hz以上をオクターブ6dBで上昇させたり、超低域のダンピングを変えたりしている。事実このバランスは、組合せるべきパワーアンプが難しいようだ。この例は自信をもって奨められる数少ない組合せだ。

スピーカーシステム:JBL D44000 Paragon ¥1,690,000
コントロールアンプ:クワドエイト LM6200R ¥760,000
パワーアンプ:パイオニア Exclusive M4 ¥350,000
プレーヤーシステム:トーレンス TD125MKIIAB ¥141,000
カートリッジ:エレクトロ・アクースティック STS555E ¥35,900
計¥2,976,900

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 50年代初期から、米国の高級スピーカーシステムにクリプシュホーンあるいはKホーンとしてこのコーナー型折返しホーンがしばしば採用されてきた。65年をきっかけにして、エレクトロボイス・パトリシアンを始めKホーンは他社のブランドとして見ることがなくなったが、オリジナルブランド、クリプシュの名で、このひとつの理想といわれるホーン型エンクロージュアを採用したシステムが米国市場で年を追うごとに名を轟かしてきた。今日のクリプシュホーンは比較的シンプルな構造ながら、ホーン効果としては優れた小型のフロア型ラ・スカラが特によく知られているが、クリプシュホーンその名のままの最高機種がもっともオーソドックス、かつ真髄を伝えるオリジネーターとしての価値と品質を秘めている。
 独特の38cmウーファーは、適度の高いコーン紙をもち、まさにホーンのドライバーとして作られたものだ。中音用には米ユニバーシティの中音ドライバーユニットを独特のホーンに組合せ、同じ米ユニバーシティの高音用ユニットとの3ウェイ・ホーン型システムとして高い完成度を得ている。
 スケールの大きなその外観の豪華さは、まさに雄大かつパワフルで鮮明なその音を思わせるたたずまいといえる。
 50年代以来20数年を終えた今日もなおその優秀なサウンドクォリティは、僅かたりとも色褪せることなく、ブックシェルフ型になれた耳にはフレッシュな感激を強烈に感じさせる。あまり広帯域再生を狙ったものではなく、音色的には中低域の重視が感じられ、ハイエンドもローエンドも十分に延びている現代的システムとは明らかに異なる意図を持ったシステムだ。しかしこの強力なサウンドエネルギーのもたらす生々しい迫力は、他にない魅力だ。
 高能率なだけにあまり高出力でなくとも十分にゆとりのある再生を得られるが、できることなら高出力アンプが望ましい。質のよい管球アンプなどが、このホーンシステムの真価をますます発揮してくれるであろうが、ここではそうした面の良さを音色的にも質的にも持つラックスの高級セパレート型アンプを組合せてみよう。
 クリプシュホーンの良さを理解するに違いない高級マニアなら必ずや納得してくれる疲れを知らない品の良さと親しみを得るサウンドが、オーディオ機器の存在感を拭い去り、心ゆくまで音楽に没頭させるであろう。

スピーカーシステム:クリプシュ KB-WO Klipsch Horn ¥656,000×2
コントロールアンプ:ラックス C-1000 ¥200,000
パワーアンプ:ラックス M-4000 ¥330,000
チューナー:ラックス T-110 ¥96,000
プレーヤーシステム:エンパイア 598III ¥226,000
カートリッジ:(プレーヤー付属)
計¥2,184,000

JBL L300(組合せ)

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岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 JBLの久しぶりの家庭用フロア型の大型システムが出た。前面を僅かに傾け角を落した奥行きの十分ある箱は、今までにない重量だ。そのずっしりした重量感から重低音の力強さは予測できるが、期待をさらに上まわり量感あふれる低音エネルギーがこのL300の最大の価値であろうか。ほぼ同じユニット構成ながらモニターの4333との違いも、フラットながらこの低音エネルギーに片寄っている所は、家庭用再生システムに対するJBLの志向を物語って興味深いが、音楽を楽しめる点で好感と親しみとを強く感じさせる。
 こうした音楽と直結した「音」を、もっとも活かそうと心したとき、新技術の結晶とでもいい得る最新のアンプジラは最適だ。音を知り抜いたハイセンスのサウンドは今日での頂点ということができ、ぜひL300に試みたい組合せであるといえるであろう。
 L300の登場した現代のオーディオ・シーンの状況下で、高品質のトランジスター・ハイパワーアンプこそもっとも適切な組合せであることは当然だ。鮮度の高い中域の充実感を考えるとき、最新技術を背景にしてより魅力あるサウンドを得られるに違いない。

スピーカーシステム:JBL L300 ¥520,000×2
コントロールアンプ:GAS Thaedra ¥610,000
パワーアンプ:GAS Ampzilla ¥499,000
プレーヤーシステム:トーレンス TD160C ¥98,000
カートリッジ:ピカリング XUV/4500Q ¥53,000
計¥2,280,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 スピーカーメーカーとしてののれんと規模で第一級の、イーストコーストの大メーカー、エレクトロボイスのシステム。かつてパトリシアンという豪華型を出していた、このEVは一貫して低音の雄大かつ量感が、その目指すサウンドスペクトラムの特長をなしている。高さ88cmの大型フロア型システム、セントリーIIIは、38cmウーファーをバスレフレックスの箱に収めて低音用とし、ホーン型の中音用、ホーン型高音の3ウェイで、ずば抜けた低音感と中域の豊かな迫力とがエレクトロボイス社の伝統的サウンド志向を意識させる。低音を、ホーンエンクロージュアとしたセントリーIVにくらべて、ずっとローエンドを拡大しゆとりを感じさせるが、このシステムを動かすにはパワーのゆとりのある高出力アンプこそ絶対的条件といえる。ある意味でJBLの最新スタジオモニター同様に、低音域は、ジャンボ・ブックシェルフと考えられる。このオーソドックスながらパワフルなエネルギーを秘めたシステムは、アンプの質がよいほどその良さを発揮してくれそうで、最近評価を高めているオーディオ・リサーチの管球式アンプを組合せることにしよう。

スピーカーシステム:エレクトロボイス SentryIII ¥355,000×2
コントロールアンプ:オーディオリサーチ SP3A ¥285,000
パワーアンプ:オーディオリサーチ Dual 76 ¥420,000
ターンテーブル:マイクロトラック Model 740 ¥165,000
トーンアーム:マイクロトラック 226S ¥36.000
カートリッジ:スタントン 681EEE ¥28,000
計¥1,644,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 英国きっての名門というにふさわしいグッドマンの新しい技術と姿勢とをもっとも強く感じさせるシステムが、このアクロマット400だ。いわゆるモニター風の志向の強い3ウェイ構成の中型ブックシェルフ型システムで、そのサウンドは、一面いきいきとして音の鮮度の高い輝かしさを持ち味としながら耳あたりのよいソフトな低域から中域を秘めているともいえよう。
 このスピーカーは、ある意味では使い方がむずかしく、特長はややもすると欠点としてクローズアップされてしまうものだ。こうした点を適当にカバーしつつ、質的な劣化をきたさないために、英国を代表するQUADのパワーアンプはうってつけのようだ。
 ここでは303でなくプロ用の50Eを指向したのはアクロマット自体が、プロ指向の強いためもある。パワーの点で米国製のような強大さはないが、それ故に耐入力のあまり高くない英国製スピーカーにはぴったりだ。ややおとなしい50Eは400の輝き過ぎた高域を柔らげて耳当りのよいサウンドを得られよう。プリアンプは、米国製の中でもっともユニークなクインテセンスのシンプルな、しかしハイレベルなクォリティに期待しよう。

スピーカーシステム:グッドマン Achromat 400 ¥124,000×2
コントロールアンプ:クインテセンス Per-1A ¥218,000
パワーアンプ:QUAD 50E ¥95,000×2
ターンテーブル:リン LP12 ¥123,000
トーンアーム:SME 3009S2 Improved ¥41,000
カートリッジ:デンオン DL-109R ¥18,000
計¥838,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 ベリリウムを素材としてダイアフラムに採用し、理論と技術との両面から達成したまれにみるデバイスは日本のスピーカーの世界に対する誇りでもあろう。クリアーで鮮麗な響きがこの高いレベルの再生を物語り、アタックのまざまざとした実感は、ちょっと比べものがないくらいだ。品の良さに力強さが融合したヤマハの新たなる魅力だろう。
 大型のブックシェルフともいうべきこの1000Mは、ウーファーの量感もあって、豊かさを感じさせる見事な再生ぶりがひとつの極限とさえいえる。ただこのためには、アンプは高出力かつハイクォリティを条件とすることになるが、この点で、ヤマハの誇るFET採用アンプBIは、まさに1000Mの女房役として切っても切れない存在といえよう。
 プリアンプにはあらゆる点で、オーソドックスな良さを持つCI、またはより高い鮮度と純粋さを音に感じるC2が適切。好みからいえばC2といいたいのだがマニアの多様性、一般性からはより高級で、壮麗なサウンドのCIというところだろう。プレーヤーは使い勝手とデザインの両面から考えてB&Oを選ぼう。

スピーカーシステム:ヤマハ NS-1000M ¥108,000×2
コントロールアンプ:ヤマハ C-I ¥400,000
パワーアンプ:ヤマハ B-I ¥335,000
プレーヤーシステム:B&O Beogram 3400 ¥140,000
カートリッジ:B&O SP12 ¥19,000
計¥1,110,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 JBL以後の第三世代というべき超広帯域再生と低歪を追求するスピーカーの志向の中で、米国製としてひとつの代表が、このエレクトロリサーチのスピーカーシステムだ。
 ハイエンドからローエンドまで、完璧なフラットレスポンスをきわめ、しかもハイパワーに耐える点で英国に代表されるヨーロッパ製とは一線を画すいかにも米国製らしい魅力だ。
 このスピーカーはエレクトロリサーチの中級機種に相当するが、使用アンプは、でき得る限りハイパワーが好ましく、しかも高い品質はむろんだが今や国産の中にそうした意味でも可能性あふれる製品が目白押しだ。その中の注目株ナンバーワンは、パイオニアの新型の77シリーズのセパレートアンプであろう。価格面から若いファンにも手ののばせるレベルで、しかも内なるクォリティは倍の価格にも匹敵しよう。パワー250W/chは、この低能率ながらパワフルなスピーカーのための製品といえるほどだ。組合せるべきカートリッジにより、あらゆるジャンルの音楽を内包させ得よう。シュアーは、この点で気楽に奨められるが、ここでは、最高級品のV15タイプIIIを挙げておこう。

スピーカーシステム:エレクトロリサーチ Model 320 ¥98,500×2
コントロールアンプ:パイオニア C-77 ¥120,000
パワーアンプ:パイオニア M-77 ¥180,000
プレーヤーシステム:ソニー PS-8750 ¥168,000
カートリッジ:シュアー V15 TypeIII ¥34,500
計¥699,500

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 このスピーカーの良さはちょっと一言では表わせない。いうならば、広範囲に拡散された音の壁面に反射する間接音が、室内の広さ以上に、音響空間を拡大してくれ、生の音楽の現場としてのホールのプレゼンスが見事。米国製スピーカー〝ボーズ〟のようなエネルギー的なものよりも雰囲気としての再生ぶりが思いもよらぬすばらしい効果をもたらす。
 このソナーブのシステムではこうしたいわゆるオーソドックスな再生サウンドとは異質な、例のない雰囲気の再生ぶりに気をとられて、つい再生の本質的クォリティを見失いがちになってしまうものだ。
 そこでまず、なによりも純粋な形でのクォリティを狙うべきである。そうしたとき、ヤマハのCI、BIは価格的に誰にも奨められるわけではないにしても、心強い存在だ。
 ソナーブの透明な美しい響きは、このCI、BIの鮮明度の高い豊かな色彩で、より高い音楽性をひきだし得よう。楽器のパワフルなソロをのぞむというのでなければ、このシステムのもたらすサウンドの質のレベルの高さは、ちょっと他には得難いものであることは確かだろう。

スピーカーシステム:ソナーブ OA-12 ¥178,000
コントロールアンプ:ヤマハ C-I ¥400,000
パワーアンプ:ヤマハ B-I ¥335,000
プレーヤーシステム:デュアル 1229 ¥79,800
カートリッジ:オルトフォン VMS20E ¥27,000
計¥1,019,800

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 ダイヤトーンのフロア型というだけでスタジオユースのモニターシステムのイメージが濃いが、その外形といいサウンドといい、期待を越えてマニアにとって新たなる魅力を秘めた新型といえるスピーカーだ。
 30cmのウーファーながらゆとりとスケール感はもっと大型のシステムに一歩もひけをとるところがない。しかも中音域の充実感、バランスの良い再生帯域のエネルギースペクトラム。広帯域という意識は感じさせないにしろ、モニターたり得るだけのハイエンドの延びは今日の再生と音楽の条件を十分に満足させよう。能率の高さからパワーアンプの出力はあまり大きい必要はないにしろ音離れのよい響きに迫力をも求めれば高出力ほどよいのは当然。マランツMODEL1150はその規格出力以上のパワー感をもち、こうしたときに最も適応できよう。価格を考えても国産メーカーの中でこの質に達した製品は決して多くないはずだ。中域の充実感はダイヤトーンスピーカーの持つ最大の美点だが、マランツのアンプはこれに一層みがきをかけるであろう。
 EMTのカートリッジがその質をさらに高めてくれる。

スピーカーシステム:ダイヤトーン DS-50C ¥88,000×2
プリメインアンプ:マランツ Model 1150 ¥125,000
チューナー:マランツ Model 125 ¥84,900
ターンテーブル:マイクロ DDX-1000 ¥138,000
トーンアーム:マイクロ MA-505 ¥35,000
カートリッジ:EMT XSD15 ¥65,000
計¥623,900

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 かつては全米ナンバーワンの規模を誇るアンプメーカーとして、フィッシャーは米国内ハイファイ業界の良識派を代表するものであった。創始者が交替した今日、フィッシャーはアンプメーカーとしてよりもブックシェルフ型スピーカーのメーカーとしての姿勢を強めているが、そのサウンド志向はアンプメーカーだった場合と何ら変ることなく、代表的イースト・コースト派としてヨーロッパ指向の強いサウンドを身上とする。
 ST550は、その最高級ブックシェルフ型としてはもっとも大型で38cmウーファーを収め、全指向性を狙って左右に配した中音、高音のドーム型ユニットが特徴だ。耳あたりの良いソフトな音色バランス、ボリュウムを上げていくと底なしの重低音に、ブックシェルフ型で或ることを忘れさせてしまうほど強力かつ雄大で、品の良い中域以上の弦の美しさも特筆できよう。
 つまりクラシック音楽、それもオーケストラなどにもっとも力を発揮しそうだ。ここではフィッシャーのサウンドのセンスあふれる高いクォリティを活かそうと、豊じょうな良さを秘めるケンソニックのM60を組合せイーストコースト志向を意識した。

スピーカーシステム:フィッシャー ST-550 ¥249,000×2
コントロールアンプ:アキュフェーズ C-200 ¥165,000
パワーアンプ:アキュフェーズ M-60 ¥280,000×2
チューナー:アキュフェーズ T-101 ¥110,000
プレーヤーシステム:デュアル 701 ¥118,000
カートリッジ:オルトフォン M15E Super ¥31,000
計¥1,482,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 糸づりダンパーというグッドマン・アキシオム80と同じ技術を採用した30cmウーファー、同じくフリーエッジの中音用の強力なドライバー、さらに平板ダイアフラムという独特なる技術を具えたユニットを組合せて3ウェイ構成のブックシェルフ型に相当すべき大型フロア型システム。マルチセルラーホーンを中音、高音に用い、その高音ユニットを内側に向けるという奇抜なアイデアながら、かつモニターユースにもなり得るクォリティを確保した高水準の安定度をサウンドに感じさせるのはロングセラーのキャリアからか。
 いかにも音ばなれのよい響きの豊かさが、このラボシリーズの大いなる特徴といえるが、それをなるべくシンプルな純度の高い形で発揮させることがカギであろう。
 国産の高級アンプの中で、ひときわその純粋さを形、内容ともに感じさせるのがテクニクスの最新セパレートアンプだ。この音と価格は、ちょっと比類ない魅力としてマニアの多くが関心をもつに違いあるまい。クライスラーの高い可能性を発揮するのに、もっとも適切なベストのひとつであると思う。ダイナベクターのMC型高出力カートリッジも見落せぬ魅力だ。

スピーカーシステム:クライスラー Lab-1000 ¥139,000×2
コントロールアンプ:テクニクス SU-9070 ¥70,000
パワーアンプ:テクニクス SE-9060 ¥85,000
プレーヤーシステム:テクニクス SL-1500 ¥49,800
カートリッジ:ダイナベクター OMC-3815A ¥18,000
計¥500,800

KEF Model 104(組合せ)

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岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 最近の英国を代表するスピーカーメーカーとしてKEFは、わが国でも人気上昇中だが、この104はこれまでのシリーズを一段と質的に練り上げたシステムとして有名だ。
 英国のスピーカーは、ともすれば耐入力の点で心配が残るのだが、このシステムは比較的大きなサウンドエネルギーをとり出すことができそうだ。しかし、やはり米国製ブックシェルフ型のARやKLHなどとは数段に違うので十分な注意が必要だ。
 極端なハイファイ志向の音というよりは、音楽を楽しめる音という表現ができるような耳当りのよい音だ。小音量でクラシックの小編成曲を聴くときの魅力は注目でき、バロック音楽などを十分楽しむことができよう。やはり英国の音というにふさわしい印象をもったシステムといえる。
 ここでは非常に質の高い再生音を目標とし、きめの細かさと高出力を兼ねそなえたラックスL309Vを使うことにした。ここでも高出力の威力を十分発揮してくれる。カートリッジは、スピーカーと同じく英国のデッカMKVとして、中高音の粒立ちを一層きめ細かく再生してくれよう。シームは当然インターナショナルだ。

スピーカーシステム:KEF Model 104 ¥79,000×2
プリメインアンプ:ラックス L-309V ¥148,000
ターンテーブル:ラックス PD121 ¥135,000
トーンアーム:デッカ International Arm ¥25,000
カートリッジ:デッカ Mark V ¥25,000
計¥491,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 JBLのユニットを用いていながらJBLブランドでないところに、このウェストレークの特長があるのだが、その中心となるのは中高音用のユニットとして用いているホーンがトム・ヒドレーのオリジナルホーンである点だ。設計者の名をそのまま冠したこのホーンは、JBL2397をそのままの形でふたまわりほど拡大したような、大型の木製ホーンで、ドライバーユニット2440と組合せ、クロスオーバー800Hz以上を受けもっている。
 JBLのプロフェッショナル用大型スタジオモニター4350と外形がよく似た大型のバスレフレックス箱に収めた2本のJBL38cmウーファーは、初期において2215を採用していたがごく最近は変更したとも伝えられる。JBL4350が、2ウーファーの4ウェイであるのに対して、ウェストレークは、2ウーファー3ウェイ。それは中音の強力なオリジナルホーンで達成されたともいえる。
 高音用として2420ユニットをホーンなしで、そのまま高域ユニットとしているが、磁気回路を貫通する8cmの長さの小さな開口のショートホーントゥイーターといえる。
 このようにJBLのユニットそのものを、ひとひねりして用いているが、4350と価格面ではほぼ同じにあるので、この両者の比較は大変興味をひかれることだろう。もっとも4350も、ごく最近、その特長となるべき中低音用ユニットを変更すると伝えられていて、本当の勝負はこのあとになろう。
 ウェストレークを活かすには独特の中音域ユニットをいかにしてより効果的に鳴らすかという点にかかりそうだ。プロフェッショナルユースとしてのこのシステムを、あらゆるかたちで追い求めるとしたら、マランツの新型パワーアンプこそ、もっとも適切だろう。ハイレベルでも、家庭用としても、音楽の美しさを凝縮してくれよう。プリアンプとして3600は確かにひとつのベストセレクトには違いないが、プロのみのもつ最高レベルのSNを、ここではぜひ欲しい。家庭用としてのポイント、ダイナミックレンジの飛躍的拡大を考えれば、SNのよいプリアンプが要求され、クワドエイトのプロ技術で作られた、小型ミクシングコントロールにフォノ再生仕様を加えたLM6200Rが、今日考えられる最高と断じてもよかろう。カートリッジは、プロ用機から生れた103Sを使うことにしよう。

スピーカーシステム:ウェストレーク TM2 ¥1,200,000×2
コントロールアンプ:クワドエイト LM6200RI ¥760,000
パワーアンプ:マランツ Model 510M ¥525,000
ターンテーブル:デンオン DP-5000F ¥78,000
トーンアーム:デンオン DA-305 ¥19,000
カートリッジ:デンオン DL-103S ¥27,000
計¥3,809,000

岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 アルテックブランドには数少ないブックシェルフ型のシステム。特に日本市場を意識しての企画だけに、その音色を練りあげて、極めてスムーズなバランスの良さが明快なアルテックサウンドの上に構築されている。
 25cmのウーファーは市販品種ではないが、ドーム型のトゥイーターは、最新の市販ユニットだ。やや大型のブックシェルフ型の背面には、アルテックのマークも鮮かな、本格的な独立製品そのままのネットワークが埋め込まれているのが、このシステム全体の価値を大きくしているのは見逃せない。
 いかにもアルテックらしいスケールの大きな堂々たる低音のゆとりは、極端なローエンドの拡大を狙ったものではないが、量感のすばらしさは、この価格とは信じられぬほどだ。暖かい感触の中音、鮮明でスムーズな高音。音楽のジャンルを選ばぬ高い水準の音質は、組合せるべきアンプさえ得られれば、家庭用としてひとつの理想を成すに違いない。ここではパワフルな響きに分解能の卓越した再生ぶりを期待して、マランツの最高品質のプリメインを組合せる。心地よく、やや甘さのあるアルテックの音は格段の力を加えるに違いない。

スピーカーシステム:アルテック Belair ¥78,800×2
プリメインアンプ:マランツ Model 1150 ¥125,000
チューナー:マランツ Model 125 ¥84,900
プレーヤーシステム:テクニクス SL-1350 ¥90,000
カートリッジ:ピカリング XV15/1200E ¥26,700
計¥484,200

Lo-D HS-400(組合せ)

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岩崎千明


コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)

「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より


 ハイファイ・スピーカーのもっともむずかしい面はクォリティの管理にあるといえるが、日本の電気メーカーとして、常にオリジナル技術で先頭を切ってきたLo−D技術陣は、HS500を通して得たこの至難の問題点を真正面から取り組んで「信頼性」「寿命」さらに「生産性」をも一挙に解決すべく、メタル・サンドウィッチのスチロール系のコーンを開発した。
 大型のHS500がこの開発の土台となったが、HS400はこの新デバイスを量産製品に実現したという点で、世界に誇るまさに画期的製品だ。特有の音響的なピークを電気的共振型で除くという点を危ぶむ声もないわけではないが、実質的に特性上なんらの支障もないということで成果は製品を聴く限り表面化していないのも確かである。たいへん活々として再生ぶりが前作HS500との相違点で、広帯域に亘る極めて低歪再生ぶりはまさにそのものといえよう。組合せるべきアンプによって生命感溢れるサウンドは躍動しすぎになりかねないので無理な再生を狙うとき、ほどほどに押えが必要かとも思われる。日立のアンプV−FETを採用したHA500Fはこうしたときにうってつけ。

スピーカーシステム:Lo-D HS-400 ¥47,800×2
プリメインアンプ:Lo-D HA-500F ¥89,800
プレーヤーシステム:ソニー PS-3750 ¥47,800
カートリッジ:(プレーヤー付属)
計¥275,600

JBL 375+2397(組合せ)

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岩崎千明


スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 '76(1975年秋発行)

「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ25選」より


●組合せ意図、試聴感
 使い慣れたJBLをシステムとして生かすべく考えたのがこの2397ホーンと375ユニットの中高音用を組込んだシステムだ。52年発行の米国のあるオーディオ文献に掲載してあったウェスターン・エレクトリック社無響室の写真で、技術者の横に置いてあるスピーカー・システムが眼に止った。この、小型フロアー型とも思えるシステムに、大きさといい、形状といい、JBLの木製ラジアル中高音用ホーン2397をそっくりの高音ユニットが使われているではないか!
 これを見付けたのは7月中旬の、長い入院生活の退屈さまぎれのひとときだったが、そのときすでに、我が家では1年半ほど使用していた2397の、原型を発見した気分でいささか得意であった。
 さて、2397ホーンと2328アダプターとのアセンブリーに、ドライバー・ユニットの375またはそのプロ版2440を組み合わせた高音用ユニットは、それ以外のJBLの高音用ユニットに較べて、格段の品の良さと、音の繊細感が素晴らしく、パワフル一点張りのJBL中高音用ホーンとは何か違ったスッキリした音なのが、この上なく大きな魅力だ。そして、このユニットの魅力をフルに活かしてやろうと考えたのがこのJBLの強力型ユニットを用いたスピーカー・システムだ。
 我が家で7年来も付き合っているバックロード・ホーン型エンクロージャー、ハークネスの中に収めたD130とはまた違って、もっともマニアにとって手近な形の低音用ユニットを考えると、平面バッフルに取り付けた最新型モデル136Aウーハーがある。これは従来のウーハー130Aより、ずっとf0を下げた点で、家庭用としてはロー・エンドをはるかに拡大できるユニットだ。低音用ユニットとのクロスオーバーとしてJBLのネットワークには、LX5またはそのプロ用の3110がある。この木製ホーンは、一応カット・オフ周波数が500Hz、使用クロスオーバーとして800Hzを指定されるが、375という強力ユニットと、家庭用として、アンプから送りこむパワーを、それほどの大きさにすることはないという前提のもとに、その音響エネルギーの中域でのレベル・ダウンを予測すれば、500Hzを選ぶこともできる。
 こうした変速用クロスオーバーでの使い方は、色々な問題点もないわけではないが、その創り出される音色バランスからは意外なほどに、おとなしいサウンド・クォリティーが得られるので、ぜひ試聴されることを強く望む。木製ホーンは決して問題点を悪い形では現わさない。
 さて、136Aは、中域でやや控え目ながら、ロー・エンドはずっと伸びて、平面バッフルでも至近距離では実にゆとりある深く豊かな重低音を楽しませてくれる。こうした高級なシステムを、フルに発揮するのに、JBLのディーラーであるサンスイの高級アンプは、JBLのアンプなき今、欠かすことはできまい。BA1000は、ブラック・パネルのハイ・パワー、BA5000、BA3000とはまた異った家庭用の広帯域再生に迫力あるクリアーなサウンドを発揮してくれる。プリアンプのCA3000はフル・アクセサリーで、ハードな魅力のカタマリだ。この、サンスイのアンプを組み合わせた本コンポーネントは、高級マニアも充分納得するだろう。プレイヤーでは、トーレンスTD125MKIIとピカリングXUV4500Qの組合せが極めつけだ。

●グレード・アップとバリエーション
──JBLの新製品ユニット136Aと375+2397をネットワーク3110でつなぎ、サンスイCA3000+BA1000でドライブ、次にこれをマルチ駆動、チャンネル・フィルターにサンスイCD10を用い、アンプではサイテーション16を低域用に、375+2397をさきほどのBA1000でドライブいたしましたが、結果としてはいかがでしたでしょう。
岩崎 マルチ駆動とする前に、まずやりたいことは、ここでは試みませんでしたが、ユニットをエンクロージャーに収めたいですね。これがまず第1のグレード・アップですね。これは自作でもけっこうです。実は、JBLの4350に、あるいは4340というプロ・ユースのマルチ駆動用システムに刺激を受け、触発されまして、これはマニアの間でもチャンネル・アンプを使ってみようとする気運が高まってきたと思います。これを実際に試してみるのも意義のあることではないかと思います。また、理論的に考えてみた場合、ネットワークの持つL成分、C成分というものを、無視して考えられない面がないわけでなく、とりわけインダクタンスを持つコイルにおける直流抵抗分がスピーカーのボイスコイルに直列に入ることを考えた時、それがたとえごくわずかでも、ゼロではない限り、なんらかの形で影響が出てくるということも考えられますね。確かに理論上、わずかでもダンピングの面で理想状態より悪くなってしまう。そのあるかなしの、ごくわずかの問題点であっても、たとえ神経質と言われようと取り除く方向で努力するのが世のマニアの常なんでしょうね。理想に一歩でも近付こうとする努力がマルチ・アンプ・システムなんですね。さらに言うなら、自分だけの、オリジナルなシステムを究極に求めるならば、自分の嗜好をより完全な形で求めようとするのは当然だと思うんです。それを端的に表現できるのがマルチ・チャンネル・システムだと思うんです。クロスオーバー周波数をはじめ、レベル調整でも、ネットワークに付随する減衰量のあらかじめ指定された点以上に、自由に、1dB、0・1dBといったわずかの変化量さえ可変できるし、またクロスオーバー付近でのスロープ特性も6dB、あるいは12dBと、自由に選べます。すなわち、あらゆる意味で、良い音というものを判断できる耳があり、自身があるならばある程度完全に近い形をとりうる方式だといえますね。
──低域に使用していただきましたサイテーション16に関してはいかがでしょうか。
岩崎 このモデル16というアンプは、力強さ、エネルギー面におきまして、海外製アンプの中ではとりわけ質の高い強力な製品で、とても150W+150Wとは思えない、それ以上のものを感じさせてくれますね。回路的に見ますとこれは左右を完全に分離した独立電源を用いておりまして、超低域におけるクロストークを排斥することで、再生音場に対するマイナス面を除去しよう、という試みがされています。またLEDによるパワー表示はどうも日本人の好みとは異るようですが、しかしピーク表示という意味に関してはこれほど正確なものはないわけで、性能的にはメーター指示よりはるかに上回るものを持っており、ハイパワーアンプにはさわしい方式だと思いますね。

岩崎千明


スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 '76(1975年秋発行)

「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ25選」より


●組合せ意図、試聴感
 おそらくこれを見たマニアは、誰しもむしょうに欲しくなってしまうだろう。マニアとしての熱が高ければ高いほどに。マイクロの新型ターンテーブルDDX1000だ。
 いずれ新たに本誌をはじめ、多くの誌面を賑わすに違いないこの、ユニークなターンテーブルは、従来のプレイヤーの概念をまったく変えてしまった。
 手段と目的とを、豪華な形でこれほどまでに見事に結合した製品は、オーディオ界全般を考えてみても滅多にあるまい。まさにプロフェッショナルな現場で活躍する、カッターレース用のターンテーブルを、そのまま切り取ってきたとでもいえようか。プロフェッショナルな豪華さを、これほどまでに徹底的に意識して追求したターンテーブルは、他にあるまい。
 このマイクロのDDX1000を入り口に置いて、このコンポはスタートした。だから、メカニカルでプロフェッショナルなフィーリングを、コンポ全体に置こうと意識して、モニター的スピーカーを選び、マニア的マランツを選んだのだ。それも、プリアンプ、パワーアンプと確立した、セパレート型アンプだ。♯3200と♯140の組合せがそれである。
 さて、アルテックのベルエアは、すでにデビュー以来数ヶ月、しかし、商品の絶対数が足りず、よって日本市場での需要に応じ切れず、ディーラーはその対処に弱っているとか。ブックシェルフ型とはいえ、サウンドの上でも、またグリルを外した外観上にもモニター的な雰囲気をぷんぷんと生じる、オリジナル・アルテックの2ウェイ・システムの新製品なのである。
 このアルテック・ベルエアを思い切り鳴らしてくれるアンプに同じ米国西海岸(ウェスト・コースト)の、今や全米きっての強力きわまるアンプ・メーカー、マランツが登場するのは少しの不思議はないだろう。♯3200は、例の大好評の♯3600をベースとした、ジュニア型ともいえるプリアンプで、それとコンビネーションになるべき♯140は、先頃発売されたプリメイン・アンプ♯1150のパワー部を独立させたものともいえる、ジュニア型のパワーアンプだ。ともにデビュー早々で、特に日本市場の高いレベルのファンを意識した商品であろう。
 パワーアンプは、深いブルーに輝く大型VU計をパネルに備えて、みた目にもマニア・ライクだ。
 期待した通り、サウンドはマランツの共通的特長の力強いエネルギー感の溢れるものだ。それは70W+70W以上のパワー感をもってベルエアを、文字通りガンガンと鳴らしてくれた。ベルエアはそれ自体、朗々と鳴ってくれるシステムだが、その期待をさらに高めさせたのがこのマランツのサウンドだろう。ややもすると響きすぎのベルエアの低域は、マランツの力によって内容を充実した味を濃くしたといえそうだ。緻密なサウンドとなったこのベルエアのサウンドの響きは置き場所を選ぶこともなくなっただろう。
 プレイヤーのハウリングの少なさは構造上の特質としてアピールされるが、ベルエア−マランツによって得られる十分にしてパワフルな低域も、このシステムの低域の素晴らしさを一段と高める大きなファクターといえるし、試聴に使用したレコードをも申し分ない状態で再生できた。

●グレード・アップとバリエーション
──「ミンガス・アット・カーネギー・ホール」がすごくごきげんに鳴っていて、私達にしてもかなり楽しめたと思うんです。
岩崎 そうですね。でも、このベルエアというかなりの高能力スピーカーを持ってしても、なお♯140というマランツの70W+70Wのパワーアンプではドライブしきれない面がありました。どうしてももっとパワーが欲しいなと思いましたので、さらにパワー・アップを図るべく、同じくマランツの♯240を追加することで良好な成果がえられたと思います。♯240はメーターの付いていないタイプですがメーター付きの♯250と同規格製品です。予算とかデザイン、すなわち好みに合わせてどちらかを選べばいいと思いますが、ここでは実質一本やりで♯240としました。
──歴然と差が出ましたね。
岩崎 音の力強さが格段に違いますね。パワーの差だけではない、音のエネルギーそのもののグレード・アップだと思いますね。しかし、価格以上のものは得られていることの証拠に、音の出方そのものの、リアリティまでさらに一段と加わってきたと思うんです。本来はソウルフルな、黒い音楽を楽しもうということでプランをスタートさせたわけですが、パワーアンプを♯240に替えることで、さらに忠実度の高い、プレゼンスに富んだ、ジャズの熱演をより一層リアルにとらえることができましたね。
──そうですね。まさに狙い通りといったところでしょうか。加えて音そのものを一段と研ぎすまされたものにしようというお考えのようですが。
岩崎 音の輪郭をクリアーにし、エッジをとぎすますという意味ではカートリッジでのグレードを上げてみました。最初に用いたグレースのF9Lを最近発売されたピカリングのXUV4500Qにかえてみようと思いました。この他にも海外製品ではスタントン681EEE、エンパイアなど、いろいろ考えられるわけですが、現代的なサウンドを非常に広帯域で、しかも技術の新しさも感じるXUV4500Qを用いました。これは、この場合非常に成功したと思いましたね。一般に、このピカリングのカートリッジは、音がはね上ると言われていますが、決してそんなことはなく、確かにスタントンの方が落ち着いた音がしますが、XUV4500Qでは一聴してレンジの広さを感じさせる、フラット・レスポンスで、高域での解像力は抜きんでていますね。現代アメリカのハイファイ技術の最先端を行く、良さというものが各部にびっしりとうずめつくされているといった感じがしますね。
──そうですね。レコードの録音の良さがまさに明解に表現されているといった感じのサウンドのようですね。
岩崎 たとえばここで聴くキース・ジャレットにしましても、その透徹したサウンドが一段と透徹してくると申しますか、どちらかといえば、録音の良いレコードほどその真価を発揮するシステムだと思うし、またカートリッジをピカリングにすることでその傾向がさらに強まったと思うんです。音のメカニズムというものを、ずっと深くつきつめて考えていった場合、どうしてもこうしたシステムを組むことが私には必然性を持ったものに感じられますね。

JBL LE8T(組合せ)

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岩崎千明


スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 '76(1975年秋発行)

「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ25選」より


●組合せ意図、試聴感
 JBL大型システム・パラゴンを聴くようになってから、至近距離できくマルチウェイのシステムの持つ「ステレオ音像の不自然さ」がやたら気になるこの頃だ。ほんの、ちょっと顔を左右にふっただけで、その正面の音像はスッと位置を変える。それだけならまだよくて、音域が変わるにつれて、その音像は大幅に移動してまるで躍るように動き廻る。首をふらなければそうしたことはほとんど意識されずにすむかも知れないが、逆に気になり出したら、頭を動かさなくても気になり出す。
 こうした現象を避けるために、永い間、ラジアル・ホーンとか、放射レンズつきの中高ユニットとの2ウェイで通してきたが、むろんスピーカーの振動板の構成がシンプルなほど有利になるので、シングル・コーンのフルレンジ型ひとつのシステムを用いることがもっともオーソドックスな解決法であり、理想的なテクニックでもあるといえよう。
 だから、ここではぐっと後戻りの印象を受けるかも知れぬがLE8Tを用いることにした。もうひとつ考えられるのにアルテックの755Eパンケーキと呼ばれる永く愛されている755Eが考えられる。
 LE8Tのプロ・シリーズ2115は、それはハイエンドの拡大という点で一挙向上してはいるが、聴きやすさとか音楽としてのバランスの点でLE8Tの方が、かえっていいくらいといえそうで、ここでは予算が限られたこともこともあってユニットを購入して平面バッフルに取付けて用いることとする。21mmのベニア合板を2つに切って90×90cmの板の中心からやや下にずらした所に17cmの穴をあけて用いる。
 さてLE8Tを鳴らすのに最初一般的なリスナーの便利さを考えてレシーバーを用いるつもりだった。
 しかし、ちょうど出たばかりのヤマハCA−X1という普及価格のアンプを見、それを試聴してみてこれを採用した。今までのヤマハのアンプのようなジッとおさえた控え目な鳴り方ではなくて、スピーカーを朗々と鳴り響かせてくれるのが驚きであり、嬉しい限りだった。効果的にCA−X1の採用は大成功だったといってよかろう。決してこのX1はパワー競争の所産ではないので、あり余るパワーとはいえないにしろ、LE8Tというさして大きくないスピーカーをガンガン鳴らすには不足はまったく感じさせることはない。それどころかゆとりも感じるので、低音コントロールを2ステップほど上げて、平面バッフルによる低域の不足を補うことさえできる。つまりLE8Tを90×90cmという平面バッフルできくにはこの程度の補正は必要である。
 プレイヤーのヤマハYP511は白い木目でなく、落ち着いた雰囲気で高級感も十分で、新型の多い中にあってもまずお買徳。ヤマハの例によってカートリッジのシュアー製も大きなプラス・アルファだろう。
 さてこのCA−X1にはコンビとなるべきチューナーもあり、こちらもまた大変に優れたクォリティーで、価格からはどうしても信じられぬほどだ。

●グレード・アップとバリエーション
──おもに「ドラム・セッション」のレコードなどを聴かせていただいたわけですが。
岩崎 そうですね。音の定位というものをここで少し考えてみたわけで、シングル・コーン一発という形をとってみようと思い、LE8Tを一本、平面バッフル仕様としましたが、どうも低域の伸びが不足しがちで、「ドラム・セッション」での、あのオンな感じのドラムの音が間近に、力となって量感をともなって出てこないんです。どうも箱がないとね。そこで、グレードアップの第一としてはこのLE8TをサンスイSP−LE8Tの箱に収めるという作業ですね。もちろん低域をアンプでブーストしてやるという手もあることはありますが。
──次に、音の解像力という点ではいかがですか。あのシンバルの音をよりリアルにとらえるにはどうすればいいでしょうか。
岩崎 その点では、YP511付属のカートリッジでは、音が平均的になりすぎて、力となって出てくる部分に物足りなさを感じますね。音にメリハリをつけ、さらに解像力をも増すという面で、私はオーディオテクニカのAT15Saに魅力を感じました。これを使う方向でいけばいいでしょう。またもう一つの方向としてMC型のカートリッジを使うということで、この場合、出力電圧の少なさという面でハンディがあるわけですが、高出力型MC型もありますので、オンライフOMC38−15Bなどは非常に一音一音をくっきりと浮き出させ、しかも力強さも持っていますね。その点、デリケートさとは違う意味での細やかな表現も可能としてくれる素晴らしい製品だと思います。サテンのM117というカートリッジも似たようなタイプですしね。ただ音の傾向としては以上あげたカートリッジは、それぞれ異った性格を持ったものだけに、できれば何かの機会を得て、聴き較べ、自らの感覚にそった選択をしてほしいですね。
──この「ドラム・セッション」における生々しいリアリティーを持った音は確かに素晴らしいものだと思いますが例えばバリエーションとして、もっとボーカルなら強いとか、やわらかな味を持ったとかいう、別の良さをそれに付け加えたい時にはどうしたらいいでしょうか。
岩崎 リアルな音像再現という点で、ヤマハCA−X1は抜群の偉力を発揮しますが、たとえば、もっと生の演奏の持っているやわらかい雰囲気を狙う場合、最近話題となっているFETを使用したパワー部を持つアンプの使用は有効だと思いますね。その意味ではソニーTA4650、日立Lo−DのHA500Fが考えられますが、結果、HA500Fでは中域のやわらかみが良く出てきて、ボーカルでは品の良い──たとえばアニタ・オディの声がそれほどやわらかくて品がいいとも思えないんですが(笑)──響きの良い豊かな声が聴かれますね。これはもう、それだけで大変な魅力ですね。また、ソニーTA4650では、CA−X1とHA500Fの中間をゆくというか、両方の良さをうまく兼ねそなえたものを持っていましたね。「ドラム・セッション」でのタイコの皮の張り具合がゆるむこともなく、しかもサックスやトランペットなど、管の再生にもやわらかな丸みを帯びた、それでいてリアルな音で楽しめましたね。

グレース F-9E

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岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1975年6月発行)

「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より


 グレースはグレース・ケリーのグレースと同じ綴り、などというと年が判っちゃうかな?。グレースのグレースは高尚とかいうが、実はグレイからもじられたグレースというのが多分本当だろう。
 グレイというのは、昨年来、日本市場にも再度10何年ぶりにお目見えした超豪華プレイヤーについていたアームのブランド名だ。しかし再度と知っているオールド・マニアにとっては、グレイはオイルダンプド・アームの本家としてモノーラル時代に世界を圧した業務用アームの老舗である。この誇りあるのれんの重さは当時にあっては並ぶべきものが全くなかったほどだった。
 やがてステレオ期になって、軽針圧カートリッジ時代に入るとぷっつりと姿を消して、その名も絶えてしまったのが本家の米国グレイ社であった。マイクロトラックというブランド名の重量級プレイヤーについている武骨なオイルダンプ・アームは、まぎれもなくグレイ社の製品であったのを懐かしむ者もいたはずだ。本家のグレイが落ちぶれたのに対して日本のグレースは、ステレオになるやMM型カートリッジの秀作F5、F6とヒットを送りさらに400シリーズから発展した500シリーズの軽量級パイプ・アームが市場を長い期間独占していた。
 こうした成功は決して僥倖によるものではなくて、ひとつの製品を土台にしてその改良を絶えず行ない、さらにその集積を次の新製品とする、という偉大なる努力を間断なく続けてきた結果のF9シリーズは、それらの技術的姿勢の賜物というべきだろう。だからこのF9も決して他社のように新製品のための新型ではない。技術の積み重ねが得た止むに止まれずに出てきた新製品なのである。
 F9はMM型メカニズムとして従来のF8と全く異るというわけではないが、その磁気回路とコイルとの組合せによって成立する構造は従来のF8には盛り切れなくなって達した新機構ということができる。それは、しばしばいわれるように、シュアーV15がタイプIIIになって新らたなるメカとなったことと共通しているといえようか。だから wv9は、よくシュアーのV15IIIと比較されることもあるが、その違いはF9の基本的特性が素晴らしくのび切ったハイエンドを秘めているのに対してV15タイプIIIは必ずしも数万ヘルツまで帯域が確保されているとはいい難い。それどころか最近多くなったCD4ディスクへの対応という点ではV15タイプIIIはもっとも弱い立場にあるともいわれる。F9のデーターにみるフラットな再生ぶりは、類がないものだ。

プロ志向に徹したマニア・ライクなシステム
 こうした技術データーの優秀性はそのまま音の上にもはっきりと感じとることができ、澄み切った音は今までになく透明で、しかも従来のような線の細さがF9になってすっかり改められ、力強さを加えていることだ。これは中高域における1dB以内とはいえレベル・ダウンがなくなったことが大きなプラスとなっているのだろう。つまり、解像度はよいが繊細すぎるといわれた点の改善である。
 こうした音色上の改良点は、そのまま再生上の水準を大きく引き上げることとなりF9になって海外製品との比較や組合せが、心おきなく可能となったのは大きな収穫だろう。
 このF9を生かすべき組合せは、この透明感と無個性といいたくなるほどのクセのない再生ぶりを生かすことだ。そのために選んだのが、これまた音の直接音表現で名をはせるテクニクスのアンプである。
 テクニクスはこうした面での再生を高いポテンシャルで実現する点、国産高級アンプ中でも無類の製品だ。かつてはSU3500で価格の割高なことがマイナスとならなかったロングセラー・アンプであることは有名だ。日進月歩の今日3500は3年を迎えて、今でも第一級なのだから。この3500以来テクニクスのアンプの優秀性はひとつの伝鋭となったくらいで、その最新作9200セパレート型アンプ、 引き続いての9400プリメイン・アンプと、どれをとっても透明そのものの再生ぶりがメカニックなプロフェッショナル・デザインと共にユーザーに強い印象を与え、多くのテクニクス・アンプの支持者を生むことになったのだ。
 プロ志向にあこがれるのはベテラン・マニアだけでなく若いファンとて同じなのだ。
 さて、このF9プラス、テクニクス・アンプとプロフェッショナル志向の強くなった組合せは、プレイヤーにデンオンの新型、コストパーフォーマンスの高いDP1700を選ぶのは妥当だろう。このアームはデンオンのプロ用直系で、F9にとってグレース・ブランドのオリジナルと同様好ましい動作が期待できよう。
 またスピーカー・システムに関してもプロフェッショナル志向という点で、サンスイのモニター・シリーズを選ぶのはごく自然な成り行き、結着といえるだろう。ここではモニター2115、つまりLE8Tのプロ用ユニットを収めたやや小型のブックシェルフ型だ。さらに大型の10インチ2120も考えられる。しかし、ただ一本でできるだけ良質の再生ということからは、この2115こそもっとも妥当なセレクトといってよい。
 このシステムで再生したラフ・テスト盤のフォノグラムの最新作「ザ・ドラム・セッション」の端正きわまりない再生ぶり、底知れぬ力に満ちたドラムのアタックと4人の個性的なサウンドと、その奏法のおりなす生々しい展開は試聴室をスタジオの現場と化してしまうほどであった。そのスケール感と定位の良きは、F9の基本的性能の良さを立証するものに他ならないといえよう。
 このシステムから流れ出るサウンドは.なぜか聴き手を引き込むようなサウンドであり、しばらくはSJ試聴室でだだただ興奮!

Lo-D HA-1100

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岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1975年6月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 Lo−Dアンプが全製品イメージ・アップして、一挙に新シリーズに改められた。
 歪0・006%と、かつてない驚異的な低歪率特性で、名実とも、Lo−Dのトレード・マークはますますその輝きを増すことになったわけだ。音声出力に対して歪成分はなんと6/10万という信じられない値である。
 今ではすっかりスピーカー・メーカーとして体質を変えてしまったが、英国にリークというアンプ・メーカーの老舗がある。モノーラル最終期の50年代後半までは、英国を代表する高級アンプのメーカーとして今日のQuadよりもはるかに高高いイメージをもった高級志向の実力メーカーであったこのリークの名が、一躍世界の檜舞台へ踊り出て脚光を浴びるきっかけになったのが、歪0・1%のアンプで、その低歪をそのまま商品名としたポイントワン・アンプであった。
 10数年の歳月がたった今日、0・006%と2ケタも低い歪特性が達成されたのが、Lo−Dブランドであるのは決して偶然ではあるまい。例えばLo−Dの名をもっとも早く定着させたブックシェルフ・システムHS500は、歪0・5%という。これがデビューした当時にしては驚くべき低歪特性であったことは有名だ。その後昨年発表した大型スピーカー・システムHS1500は歪率0・1%を実現している。
 カセットにおいても、その常識をぶち破る低歪、ワウ・フラッター特性を、カートリッジにおいても......というようにLo−Dブランドの目指すものが、単にブランドとしての名だけでなくて、まぎれなく実のある低歪を確立しているのは、まさに瞠目べき成果であろう。そして、今日の新シリーズ・アンプの0・006%!
 新シリーズ・アンプに達する以前からも日立のアンプの高品質ぶりは、内側では早くからささやかれていた事実だ。ベテラン・ライターやエディター達はその擾れた再生能力については一目も二目もおいていたともいっても過言ではない。ただ、そのおとなしい再生ぶりとデザインとが、アピールをごく控え目におさえてしまっていた。新シリーズになって、それではデザイン・チェンジによって強烈なイメージを得たかというと、必らずしもそういう派手な形にはなっているわけではない。しかし、ごくおとなしい、つまり大人の雰囲気の中に外見からも格段の豪華さが加わったことだけは確かだ。パネルの右側に配された大型のコントロールつまみ。これひとつだけで、日立のアンプはまったくそのイメージを一新してしまったのだ。もっとも大きく変ったのは、外観ではなくて、0・006%歪の示すように、その内容面の質的向上である。もともと、日立のアンプの優秀性は、その電子技術の所産としての高性能ぶりにあったのだし、今日それは格段の高性能化への再開発を受けし、アンプとしてきわめて高いポテンシャルを獲得したのである。
 日立のアンプの大きな特長、オリジナル技術がこの高性能化の土台となっているが、それは例えば、ごく基本的なパワー・アンプについていえば、インバーテッド・ダーリントン・プッシュプル回路であろう。インバーテッド・ダーリントン・プッシュプル回路を採用しているアンプとしては、米国のマランツ社のアンプがトランジスタ化と同時に今日に至るまで、高級品がすべてインバーテッド・ダーリントン回路である。。他社製品が多くコレクタ接地回路のパワーステージであるのに対してのインバーテッド・ダーリントン回路はエミッタ接地のPP回路だ。これによって、パワー段の増幅度が大きくなるので、パワー・アンプは増幅度が高く、回路構成は簡略化されるので低歪のためのNFは安定化されるし、基本的に低歪であるが、そのためにはドライバー段の設計はきわめてむつかしいといわれ、マランツのアンプが日本メーカーコピーされることがないのもその辺が理由であった。日立の場合はすでにキャリアの永い「定電流駆動ドライバー段」の技術の延長上にこうしたインバーテッド・ダーリントンPP回路が成果を結んだとみてよかろう。
 パワー段のみに眼を向けるだけですでに紙面が尽きてしまったが、あらゆる点にLow Distortionへのアプローチとしてのオリジナル技術があふれる日立アンプは、他社にみられないすばらしい再生ぶりを発揮してくれる。品の良い力強さ、透明感あふれるサウンドが何よりこのアンプの高品質を物語るのである。

オルトフォン SL15MKII

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 名作SPUをより広帯域化、フラットな周波数特性を、はっきり意図した現代版MC型。デリケートな表現力と、豊かな低域の響きとで今やオルトフォンMC型の主力製品だ。

ヤマハ CR-600

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プリメインの600よりもずっとソフトな音が意外なくらいで、一般的なリスナーを対象とした商品という現れか。その点がかえってハイレベルのファンにも受けそうな魅力だ。

サンスイ 771

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 かなり金がかかっていることを外観から知るが、豪華なのはレシーバーの客層を考えれば当然といえる。やや割高だが、中をのぞけばそれが信頼性を支えていることをも知れる。

ニッコー R-5000

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 輸出に精を出していたキャリアが抜群のコストパフォーマンスを引き出して、豪華な風格と、内容の豊富さとをうまく製品に満たした点、国産レシーバーのひとつの傑作。

パイオニア SX-434

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 市販レシーバー中のスーパーベストセラーというべき実績にのって、デザインを改めて豪華になったのも商品としての魅力を減らさぬメーカーの偉大なる努力の賜だ。

L&G R-3400L

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 日本ばなれしたデザインは、あるいは今日ではちょっと早すぎるかも。海外製品と並べてもなおこの個性は秀逸だ。若者の個室の一隅にあれば、そのセンスの良さの象徴となる。

パイオニア SX-737

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 レシーバーをステレオの入門用としてのコンポと考えるならば、価格の割に豊富で高い内容はまさにお買徳品。つまり初心者にも納得できる良さ、バランスのとれた製品だ。

ヤマハ CR-400

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 FMの感度に、もう一歩と望むのはこの価格からは無理というもの。市販レシーバー中級群のデザインと使い良さは時代を越えた永久的な魅力といえる。誰にも薦められる良さ。

ヤマハ CR-1000

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 サブ用として居間などにぜひ一台は欲しくなるのが音楽の分る高級マニアだろう。つまりこのアンプの質は外観の斬新さ以上にオーソドックスな絶対的良さを秘めているのだ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 レシーバーは、オーディオマニア的リスナーよりもメカには弱いが実用的な音楽志向のファンのために有効な手段であろう。それは、質的にはほぼ同価格のプリメイン+チューナーと変ることなく、スペースの点ではほぼ1/2だから。ただパネル一面にダイアルを主体としたチューナー分にプリメインアンプが納められる結果、頻度の低いアクセサリーは省略せざるを得ない。しかしそれは逆に扱いやすさともなり得る点でメカに弱い音楽ファンには、かえってありがたい点ともいえるだろう。デザイン面が重視されるのは、需要層の要望の特長だ。

ダイナコ Stereo400A

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 あちらではもっぱらキットで名を馳せ、200/200Wの高出力の買い徳製品だが、ダイナコらしい低域の圧倒的な底力と、暖か味のあるサウンドは個性的で大いなる魅力だ。

ジェンセン G610B

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 すでに20年以上も前に存在したことが不思議なほどの完成度の高いコアキシャルユニットだ。反面、高級品ほど真価を発揮させ難いことをこれほど知らされるのも他にない。

JBL 2135

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 D130のプロフェッショナル版。ただし、D130とは基本的に変ることはないので今さらここに挙げることもないが、規格の揃っている点にウーファー用としての価値あり。

JBL D123

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 JBLのもっともまとまった現代的サウンドをもったシングルユニット。中域から高域の密度に少々不満もあるが、どんな箱に収めてもよい音を得る点でも使いやすい。

ソニー TA-5650

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 60W/60WのFETアンプは、前作よりも中域のクリアーな音の粒立ちと引きしめた低音とで、音の麺で向上が感じられる。ただ価格からやむを得まいがいかにも中級の作りだ。

ラウザー PM6 MKI

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 どぎついほど中域、高域の張りのある充実感。一昔前の音作りを感じながらも、その強い個性的なサウンドはあばれ馬的。それだけに使い馴らしてみたい魅力に惹かれる。

Lo-D HA-610

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 Lo−Dシリーズのアンプ中、最高出力製品で、従来の品のよい中低域を充実した点でパワフルだ。デザインもフレッシュだが音と同様ややおとなしく、それが大きな個性だ。

ラックス L-100

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ラックスの最新アンプは、セパレート型プリと同じデザインの110/110Wのパワーを収めた点で、質的には高級志向の強いマニア好みのアンプとして完成度が高い。

オンキョー Integra A-711

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ハイパワーアンプの数ある中でコストを考えると、もっとパワーをという声もあるが、高級アンプの何たるかを示すひとつの方向だ。高出力、小出力時の歪みの少なさは特筆。

トリオ KA-9006

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ハイアタックシリーズも四年になるので、この春は安くてハイパワー型も出るが、なおオーソドックスなこのシリーズも引き続き主力製品となる。それだけの質も持ち合す。

ソニー TA-8650

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 かなりメカマニア的なソニー8000シリーズ中、もっともおとなしいが、音の方もややソフト過ぎるかも。その点がいかにもV−FETらしいというベテラン好みの質だ。

アキュフェーズ E-202

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プリメインとしては、このクラスより下も上も作らないという姿勢がまずなによりも好感がもてる。セパレートに比べてややソフトだが、パワーと内部の高級品らしさが魅力。

パイオニア SA-9900

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プリメインとしてひとつの上限界にあるが、需要層のレベルの高さも意識して作られたシリーズ最高製品。あまりのまっとうな音は、ちょっと物足りないほどだが最高品質。

テクニクス SU-9400

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 若者にとって魅力あるスタイリングに収められたオーディオメカニズム、といいたくなるほどの技術志向のはっきりした点が、偉大なる商品としての価値の支えとなっている。

ビクター JA-S20

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ビクターの一連のアンプ中、最高出力の最新型。規格パワーの大きいことよりも実質的な鳴り方も力強く、回路の確かさ、電源のゆとりが感じられる。豪快なるデザインも良い。

JBL D208

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 20cmという扱いやすい口径と価格ながら、中声域の充実した優れた音楽的バランスはJBLの伝統そのもの。使いやすさと手軽さから、どのジャンルにも向く点で推められる。

サンスイ AU-9500

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 発表後すでに二年を経ていまなお他社のトップクラスのアンプと比べてもひけをとらないのは、電源部のゆりとある完璧さからか。怒濤のようなパワー感は、聴きものだ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 あくまで無個性のサウンドを狙うかの如き、オンキョーのアンプ群のひとつの頂点ともいえそうだ。711に匹敵するパワー感とクリアーな響きは、もっとも現代的な高品質。

マランツ Model 1070

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 マランツのプリメインの最新製品は、パワーこそ40/40W程度だが、音を聴くとその倍くらいの力を感じさせ、やや鮮かな音がひときわ重量感ある迫力でマランツ直系の音。

デンオン PMA-700Z

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 音楽をのびのびと鳴らすといった印象の鳴り方でスピーカーをドライブする点、デンオンのアンプは他に類のない魅力だ。700Zは広帯域感をより強めて質的にも前進した。

ヤマハ CA-1000II

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 マークIIになってパネルデザインに変更はないが、中味の方はイコライザーを始めドライバーに至るまで手を入れた徹底的な改良でまた質的向上を成した評判のアンプ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 アンプを選ぶのは、ステレオシステムそれ自体を選ぶことの基といえる。アンプが決まればシステム全体が決まるも同然だ。
 プレーヤーに対して重点を置く、あるいはスピーカーに贅沢をする、それは個人の好みとしてステレオ選択の姿勢には違いないが、それもひとつの基準あっての重点、贅沢だ。ならばその基準は、というと総合金額、総価格と思われがちだが、実はアンプにその全ての姿勢がある。そうなるとあるらゆるレベルのアンプが要求される。ただそのレベルにおいて性能上の最低限界は厳しく見定めなければならないのだ。

エレクトロボイス SR8B

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 20cmの使いやすさと、価格面から誰にも推められよう。バランスのよい中域から低域は、エレクトロボイスの良識でもある。力強さの点で音は英国系と似ていてパワフルだ。

アルテック 604-8G

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 アルテックのスタジオモニターのユニットとして米国のHi−Fiを創る底力となり基礎となってきたユニット。その功績は敬意を表するに十分。最新型は高域が一段と拡張された。

アルテック 605B

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 最初に15インチの威力を知らされた思い出のユニットでもある点で、この私にとっては忘れられない。音像の自然な臨場感と、優れたバランスとは、音楽鑑賞用の標準ともいえる。

JBL 2115

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 LE8Tをより広帯域化し、サウンドの分解能をぐっと向上させた点で、もはやLE8Tのプロ仕様という以上の最新型ユニットといえよう。高価だが価値は十分だ。

エレクトロボイス SP12

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 米国のHi−Fiサウンドの良識を、このユニットほど温存させているのはあるまい。重厚な低域、充実された中域、派手でない高域とがとけ合ってすぐれたバランスだ。

JBL D130

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 おつき合いはすでに20年に近く、私にとって切っても切れないのがこのユニット。さんざん苦労し、共に喜び共に鳴(?)いた気心を知った仲だ。誰にでも信頼される奴だ。

JBL LE8T

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 音を確かめ、ステレオの定位、音像の位置をより定かに確認しようとするとき、このシングルコーンは何にも増して有効だ。むろんふだんは音楽を手軽に楽しむサブ用としても。

デンオン DP-5000F

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 デンオンのDDモーターの、もっとも高価格の一般用製品だ。完璧なサーボは大型トランジスターの採用による。この熱を逃がす放熱器を最近外部に出し厚くなるのも直った。

テクニクス SP-12

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 DDモーター日本の誇り、世界に日本製プレーヤーを輝かしめた大御所がこのSP12。多くのDDモーターがまかり通る今でも、このSP12だけは別格のきわめつき本格派だ。

デンオン DP-1000

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 さすがDDでオリジナリティの濃いデンオンのモーター。外観も性能もほとんど変えずに、この製品をこの価格で出したところは、珍しく冴えた企画性を発揮したといえよう。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 スピーカーシステムと違ってユニットの場合には、ユニットを買うことを必要とし重視するという層を考慮しなければなるまい。それは技術的な知識にもめぐまれ、オーディオ歴も実践的なかたちのキャリアを経たベテラン、あるいは音がわかるという前提にたってユニットで自己のシステムを構成せんとするファイトに燃えたやる気旺盛の、しかし経済的には少々めぐまれない層であろう。さればこそ可能性も高く、その組合せや使い方で既製のシステムにない良さも引き出し得る性能を秘めた、決して高価でないユニットが好ましい。

トーレンス TD125MKII

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 世界のあらゆるオーディオ機器メーカーでもっとも広く使われ、高級マニアの支持が多いのがこのトーレンス。電子サーボのリーダーとしてメカの確かさでずば抜けた信頼性を。

デンオン DP-3000

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 マニアなら、これを使ってるか、使いたいと志しているかで「できるな」ということになるのだ。なにせプロ用としての実績が底流にあり、類似デザインの業務用が使われてるのだ。

アルテック 9846-8A

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 アルテックの低f0の新型ウーファーをベースにした、広帯域化を狙った新システム。ダイナミックフォースと呼ばれるこのウーファーはJBL・LE15系といえば判りやすい。

デッカ International

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 軽量アームの条件下でワンポイント支持のオイルダンプ機構を実現した。アームは細身ながらベースは巨大で重心位置も低く左右への安定も考慮されている。価格面でも魅力。

EMT 929

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 数少ないダイナミックバランス型。カートリッジを選ばぬ多用途性と、堅牢そのもので、精度も実用上最高級といえる。かつてのトーレンスに使われていたが、高すぎるのが欠点。

デュアル CL180

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 歌からジャズからオーケストラ、ロックまですべてを現代的サウンドで鳴らしてくれる西独のデュアルは数少ない純血メーカー。安くはないが、最終的なヒアリングテストにも向く。

SAEC WE-308

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ユニークな支持機構は、アームに近く下からその外側に上からのダブルエッジで支えているため、水平のガタがなく、しかも高感度。ただあまりに大げさなメカむき出しのデザイン。

デンオン S-500

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 バックロードホーンが流行しそうだが、市販品中、ビクターと並ぶ注目製品だ。とくに中域から低域にかけての充実した音は、どんな音楽にも発揮され、使いやすく鳴らしやすい。

JBL L200

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 スタジオ・マスターというペットネーム通りスタジオモニターばりの明快で鮮麗な響きと迫力が、今もなお割合に安く提供されていることを見逃しては損だ。

JBL L45-S4

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 小さな箱のL45にもホーン型高音の2ウェイが収められるのは発見だ。かつて名を馳せたランサー101の再現といってよい。割安で、本格的なJBLサウンドここにあり。

BOSE 901

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 背面からのエネルギーが前方の8倍、従って背面の壁面がサウンドに影響することが大きな特長であり、日本家屋ではウィークポイントともなり得る。これも使い方次第なのだ。

ピクソール Record Cleaner

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 我家のほこりだらけのディスク・コレクションが、これによって生れ変りつつある。これはかつてない新しい着想の、ほこりよけでなくほぼ完璧なるほこりとり器といえる。

ボザーク B410 Classic

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 なにしろ聴いたことのないような豊かなエネルギーのローエンド。どっしりとした低域に音楽のすべての音が安心しきって乗ってくれるという感じだ。良き時代の良き音の再現。

サンスイ QSD-1

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ステレオディスクの可能性を、サウンドの面から無限にまで拡大し、音楽としての情報に加え、その周辺のサウンドの分離によってディスクの情報量をかくも大きく拡大し得る。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 アクセサリーは、その使用者のレベルによってきりがなく広く、大がかりになるもの。しかもその内容は知識範囲が広ければ拡大されるし、高ければ要求も高度化される。アクセサリーひとつとってみても馬鹿にはできないが、そうかといって小物は自作か工夫で間に合ってしまうし、市販品よりもはるかに創意工夫の実が結ぶ。とすると自作の範囲を越えたアクセサリーとなるがそうなると品物はグッと減って探すのもむずかしくなるくらいだ。その中でQSD1は、手元のステレオディスクがサウンドを拡大して蘇る点をなによりも高く買える。

マランツ Model 240

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 かつてのモデル16の量産アレンジ版ともみられる240は、パワーの点で今や独立パワーアンプとして大きい方ではないがサウンドにおけるマランツらしさを強く感じさせる。

マランツ Model 125

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 10B以来と、この2月号の米オーディオ紙に絶賛されたサウンドは、マランツ直系であろう。スコープつきの高価格品と、無しの実用機120とがそろえられデビューした。

アキュフェーズ T-100

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 アキュフェーズのチューナーということで世界にまかり通るというもの。ロールスロイス級と外誌で讃えられたその質は、国産チューナーの中でも群を抜くクォリティと再生音。

マッキントッシュ MR77

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 マランツ10B以来という低歪のオーディオ特性で注目されたマッキントッシュには珍しい高級チューナー。ダイアル面などに新鮮さも欲しいがそのオーソドックスな点も魅力。

マッキントッシュ MC2100

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 もっともよく知られるマッキントッシュのメーター付MC2105の原型ともいえ、質とサウンドのみへの志向の強い点と、価格面でのお徳用ともいう点を買いたい。

アキュフェーズ T-101

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 高級チューナーにもっとも腕をみせるであろうという期待は、このT101という実質的製品により実現され、このクラスで抜群の製品として完成度も高く質的魅力もいっぱい。

QUAD 50E

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 メーカー側の思惑とは逆に、日本では303よりも業務仕様のこちらに人気が高い。それというのも、信頼性とか英国製品らしい個性がより強く受けとれるからであろう。

デンオン TU-500

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 2個のVUメーターという大いなるプラスαが、このチューナーの最大の魅力。やや手綱をゆるめすぎた音も、ダイアルメカやメーターアクセサリーで揃って余りある製品。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 今や稀少なる管球アンプによるハイパワーアンプ。回路設計に今日の技術が活かされているためか音にも現代的な広帯域感が強く、しかも低域、高域の力強さなど管球らしさ十分。

ソニー TAN-8550

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ヤマハに先がけて開発したV−FETアンプの真価は、この8500によって知ることができよう。高級オーディオへの意欲がデザインにも強く出て、魅力をプラスする。

SAE Mark IIICM

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 米国の高級アンプの中でも珍しく量産されているSAEアンプのうちでも特に高い質を、製品のメカにも音にも感じられる。すっきりした中に美しさも秘めたサウンド。

アキュフェーズ P-300

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 日本市場に数あるハイパワーアンプの仲で価格まで考慮した上で、世界市場にまかり通り得るごく僅かな製品の最右翼がこのアンプ。引きしまったサウンド、力強くパワー感十分。

ダイヤトーン DA-A100

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 スピーカーを、このアンプほどよく鳴らすアンプはない。それも当然ダイヤトーンスピーカーを伝統とする三菱郡山工場の開発アンプなのだから。規格出力より大きなパワー感。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 英国系ウェストレックスとでもいいたいのがこのシステム。アルテックよりよりデリケート、JBLよりより繊細。しかも豊かな響き。迫力を追わなければピカ一のシステム。

マッキントッシュ MC2300

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 70万を越す価格も、製品を前にすると「なんと安い」ことを教えられる。マッキン製品中の名実とも最高のパワーアンプであり、ハイパワー時代にあってもマッキン健在なりだ。

パイオニア Exclusive M4

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 パイオニアが高級マニアも決して忘れていなかったということをはっきりと知らせてくれた点で、価値が高い製品だ。コスト対パワーなんていう馬鹿げた基準をくつがえす傑作だ。

ダルクィスト DQ10

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 Mr.ソール・マランツがこれと見込んだダルキストは、コンデンサーシステムの繊細な輝きとため息の出るような広帯域性とを豊かなハーモニーと共に再現できる音楽性を秘める。

デンオン DA-305

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 いわゆるプロフェッショナルユースの色彩の濃いシンプルなメカニズムと頑丈な構造で、使いよさ抜群のアームだ。複雑な各種のバランサーがないのは使用者にとってプラスだ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 パイプアーム全盛でオリジナリティのある製品の少ない今日、珍しくも木製軽量アームで、かつてオイルダンプでその名を馳せたグレイ社の製品。積層ウォルナット製。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 デビュー当時そのフレッシュなメカニズムとデザインとに驚嘆したが、今なおこのアームの高性能と美しさは少しも色あせてはいない。高感度軽量アームのトップクラスの傑作。

サンスイ LM-022

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 山水の意欲的なシステムはデザインも斬新だがメカとしても新方式。スピーカーがふたまわりも大きくなったようなスケールの大きい響きと、充実した中低域から低域は魅力的。

ヤマハ NS-1000M

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ベリリウム・ダイアフラムの素晴らしさは、これから世界中に知れわたるだろう。未来を的確に把握した技術の勝利とでもいいたいひとつの理想の実現がヤマハの手でなされた。

マイクロ MA-303

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 マイクロのアームは着実に各部の精度を一歩一歩向上し製品の精密加工技術の向上とによって市販品中でも最高の感度をもつに致っている。使いよさと丈夫な機構も高信頼性がある。

QUAD ESL

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 世界でも例のない準コンデンサー型システムで、デリケートな音の素子が他に類のないクリアーな響きを伝える。低域が大音量で僅かにわれるのが気になるのは、欲張り過ぎか。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 テクニカのアームの使いよさは、メカの堅牢さに加え、その安定さもおおきな理由となっている。必要以上の高感度と取りかえに実用的丈夫さと機構とが愛用者の支持理由。

KLH Model 6

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 米国のアコースティックサスペンション型システムの尖兵としてARより一歩先に大ヒットしたのがこのKLH6と4だ。ウェルバランスのソフトな品のよい音は永久の傑作だ。

グレース G-545F

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ロングセラーのスーパースターみたいなアームで、この種の軽量パイプアームの先駆者。その実用性の高さと精度の驚異的な安定性が、こうした支持を今なお受けているのだろう。

JBL D44000 Paragon

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 なにを隠そう、この俺もパラゴンの魅力に魅せられて、とうとうひとつ買うことに相成ったほどのほれ込みよう。じっくり鳴らし切るまでの楽しみは、また格別ぞ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プロポーションの美しさ、仕上げの見事さは、その本質的なメカニズムの優秀さが機能美として滲み出ているからだ。使いよさと精度の点でも国産品中のトップクラス。

SME 3009/S2 Improved

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 いわずとしれたSME、その新型は簡素化され、自然な操作で馴染む良さとバランスの長所を一層向上し、軽量アームのマニア用としてますます使いやすくなったインプルーブド型。

KEF Model 104

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 代表的なKEFのシステムの中で優れた音の104は割安な点からも、誰もが具えたいと願うに違いない。広帯域特性の低歪率は、最大音圧の物足りなさを補って余りあろう。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 フォノモーターは基本性能の良さが絶対的な価値判断となるが、しかしこの良さは決してデータの数値だけで判断できない点がむずかしい。結局自分で使って確かめるということになるが、さらにその性能を長期間保っていられるだけの信頼性となると、これはもうメーカーを信じる以外に手がなくなってしまうものだ。その上オリジナリティをどこまで強くもち、またそれを保っているかということも重要だ。アームは以上に加えてカートリッジとの兼ね合いがあり、極言すれば同一メーカー製が好ましいにしろ、基本条件こそ最重要だ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 スピーカーシステムとしてはどうしても高価格に片寄る傾向が強くならざるを得ない。それというのも、ステレオではスピーカーに対しての志向が究極的には贅沢の限りを尽くしたくなるものだからである。つまりシステム全体としての絶対価値をより大きくしたくなるとき、スピーカーシステムにはその矛先が向いてきてしまうからだ。それは他のパートよりもその最低と最高の価格差も大きいし、絶対価値もまた他に比べてはるかに高いのがスピーカーシステムであるからだ。オーディオの遍歴を重ねたとき、必ずそうなるものだ。

ビクター X-1

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ベリリュウム・カンチレバーは、従来のビクターのカートリッジ共通の華やかだが芯のない音とは一変して、ガッツを感じさせる音だ。ただ交換針の高いのは外国製品なみ。

オルトフォン SPU-GT

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 Gシェルの中にミニトランスを組込んで使いよさを向上した標準製品。シェル内部という優れた格納スペースは秀逸な着想で、出力はMM型より大きい。本体が重いので注意。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 世界にその優秀性をうたわれるテクニカの最高級新型は、クリアな透明感に力強さも感じさせ、今まで以上の優れた安定したつい銃声をもち、高級品たる資格にふさわしい。

オルトフォン M15E Super

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


必ずしも優れた周波数特性ではないにしろ、この豊かな低域と力強い輝きある中域は、まぎれもなくオルトフォン直系の色を濃くもっている点で、私を含め愛用者は少なくない。

オルトフォン M15 Super

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 丸針付のM15は使いやすさで一段と一般向けといえる。安定した音とトレース性能、とくに針圧の大幅な許容範囲が特長で、それがオルトフォン愛用志向の初心者用製品。

オルトフォン SPU-G

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 いわずと知れたオルトフォンのMC型オリジナルだ。低域から中域にかけての力強さ高域の輝かしさが、たとえようもなく音楽を豊かにする。誰しもが一個は持ちたいと思う名作だ。

エンパイア 4000D/I

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 シュアーを目標とした新技術の成果は4000に至って為し遂げられたとみてよい質とサウンドをもつ。世界的なネームバリューに劣るとはいえ、目下急追中の高品質推薦品だ。

ピカリング XV15/1200E

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ピカリングの最高級品種は、広帯域の中にクリアな高域と力強い低域を加えたともいえる再生ぶりに、ピカリング中最軽針圧動作で高級品らしい製品だ。特にハードロック向き。

シュアー V15 TypeIII

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 シュアーブランドの日本におけるめざましい進出の尖兵がV15であった。世界のすべてのメーカーの目標とされる高品質も誇りも少々ありふれてきたが、傑作には違いない。

デッカ Mark V

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 丸針によって音の安定度は格段に増し、力強さもガッシリとした感じが加わり、一般的な使い方ができよう。激しい立上りもいくぶんなめらかさが加わるようだ。デッカ入門用。

デッカ Mark V/e

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 個性的という点で、あらゆるオーディオ製品中もっとも強烈な魅力がこの身上だろう。この魅力に惹かれ、一度とりこになったら生涯手離せなくなることの方が恐いだろう。

デンオン DL-103S

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 103を、より広帯域化しよりデリケートな表現を可能にした改良は、より一般的高級ファンに受け入れられよう。出力の低下も僅かで、専用トランスはそのままだから便利だ。

ソニー XL-45

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 いかにも現代風のサウンドといえる鮮明度を、安定したトレースと音にプラスして手慣れた腕による高い完成度の新製品が突然のようにソニーブランドからデビュー。

デンオン DL-103

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 国内製品中最高の信頼性と音の解像力と定評に裏づけされファンは少なくない。クリアなサウンドは迫力も十分で引きしまった響きは原型といわれるオルトフォン以上の鮮明さ。

グレース F-9F

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


グレースの、最新最高級の優秀品。優れた周波数特性、極めて安定したトレース性能がベストセラーの裏づけだ。大ヒットしたF8の品の良い明るさを加えている。

ADC Q36

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 使いやすさという点で、今までのADCカートリッジの最大弱点を補ったQシリーズ中のベストクラスは、帯域の広さもあり安定した音とトレース特性で誰にも推められる。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 MM型の元祖としての貫録が製品にやっと反映した優秀品。トレースと音の安定性はすばぬけ、中域の充実感もヨーロッパ製品らしく、広帯域再生用のもっとも好ましい優秀品。

オルトフォン VMS20E

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 オルトフォンのサウンドも一段と広帯域に拡大され、米国製品への対抗姿勢が感じられるものの音色の確かさと力強さは、さすがに技術以上の魅力となって高級ファンの目標だ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 MC型でスタートを切った専門メーカーの最新製品は従来より一段と力強さと輝きとが加わり、繊細なる国産共通の音に新たなる魅力を加えた。専用トランスの組合せが条件。

エンパイア 4000D/III

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 シュアーを意識するあまりか線の細い音に傾斜していたエンパイアも4000では、従来の力満ち張りのある中低域と輝きをとり戻し、デリケートすぎた適性針圧を格段に改善。

マイクロ LM-20

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 受注生産といわれるだけあって、一個一個造られ調整され、抜群のトレース性能とモニター的な粒立ちのよい音でマニアの間に秘かなセラーを続ける特長的傑作といえよう。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 国産の高性能カートリッジの中にあって、音は力と輝きを感じさせる数少ない優秀品。とくに楽器のサウンド、歌に張りのある再生ぶりがいい。交換針が安いのも嬉しい。

テクニクス 260C

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 あまりにフラットというべきか、無機的なほどの無個性な個性。音が細身なのがちょっと気になるが、これほど色づけのなさを感じさせるのも大きな魅力といえよう。

オーレックス C-407S

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 冷たいほどのクリアな立上りと解像力は独特のエレクトレット・コンデンサー型のミニマム・マスのためか。よく聴き込んでみると透明度抜群なのを知ろう。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 もし初心者であれば、最初のコンポーネントユニットはカートリッジの選択から始まるに違いない。他のパーツよりも出費は少なく手軽に音質変化や向上が認識できるからだ。さらにグレードを高めるときにはスピーカーなりアンプなりに眼や意識は方向転換していく。そして次にシステムとして二回りや三回りも向上を遂げた後であるに違いなく、今度はちょっとやそっとのグレードでは納まらない。つまりもっと高いレベルを目差してのカートリッジの選択条件となり、それは当然厳しくなってくる。

AKG PU2R

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 マイクでおなじみAKGの新参カートリッジ中の一般級。バランスの良い帯域は、中高域のくっきりした特長と安定性で、はっきりした個性を感じさせる魅力あふれる音。

トーレンス TD160C

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 125のモーターをサーボではなく、シンクロモーターにしたのが160。実用性能の高さ、使いよさがこの身上。ただし横ゆれには弱いのが日本の木造向きとはいいにくい。

ピカリング XV15/400E

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ピカリングとしてはかなり平坦な周波数特性を音からも感じられごく安定したその響きは、やや繊細感がものたりないとはいえあらゆる音楽にも応じ、迫力と豊かさが得られよう。

マイクロ DD-10

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 一見日本製であることを疑いたくなるほどの薄型プレーヤーは、なんとDDモーターなのだ。電源トランスを外部に取り出して、かってないSN比と形態が生まれた。

B&O Beogram 1203

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ヨーロッパ系の超薄型の形態を、はっきりとしたデザインにまとめ上げ、しかも性能面でも一流データを確かなメカとして収めてしまった真のグッドデザイン製品。

スタントン 500A

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


ピカリングの業務用として、とくに広い帯域は望まないにしろその中域を主体とした安定した音とトレースとで、少々針圧を増せば使いやすいことこの上なしだ。

ヤマハ B-I

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 このアンプぐらい高級マニアを刺激し、買い気をそそられたオーディオパーツはない。それは底力あるパワーと中域の管球アンプに共通する暖かさに魅せられるからだ。

グラド FCE+

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 あまりみばえのしない外観はグラドの共通的なマイナス面であるが、その音の安定ぶりと鮮かな再生ぶりでまったく見直される。より高域までの再生帯域と繊細さがプラスだ。

B&O Beogram 4002

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 今さらここで、このプレーヤーの良さをうんぬんする必要はなさそうだ。超現代的なデザインは、レコード演奏をさまたげるどころかもっともフールプルーフな完璧なもの。

アキュフェーズ C-200

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ケンソニックはパワーアンプの方が有名になりすぎて、おとなしいパネルデザインのプリはどうも影がうすい。全段Aクラスの非常に正攻法的な回路で完全さをつくされている。

ヤマハ YP-800

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 日本の今日のプレーヤーデザインのリーダーシップをとったフレッシュな外観に、DDモーターと高性能アームを組み合わせ、シュアーの標準的カートリッジさえついているのだ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 やや高域不足ともいえるがバランスの良さと中声部の安定した力強さから、超ロングセラーを続ける製品でとくに音楽を選ばぬ再生ぶりも広く一般用としてふさわしいものだ。

ダイヤトーン DA-P100

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ややおとなしいがこのプリアンプのオーソドックスなサウンドの中にある最新技術に裏づけされた透明感は、質の高さ以上に音に対する正当な姿勢の確かさを知ることができる。

エンパイア 598III

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 いかにも米国の豪華型プレーヤーという貫録が、なによりもこのプレーヤーの魅力だ。統一黄金仕上げで、一見武骨なアームもIII型でますますま軽針圧への志向を強める。

SAE Mark IB

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 米国の新進ブランド中、もっとも完成度が高いSAEは、デザインのオリジナリティひとつとってみても現代的なセンスに溢れる、サウンドの鮮明な透明感と迫力とは高水準だ。

トーレンス TD125MKIIAB

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 世界的視野でみるなら高級マニア間で、もっとも広く使われているのがこれだ。サーボモーターとベルトとの二重ターンテーブルという独創メカは、DD時代にも変ることがない。

QUAD 33

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 時代の流れを越えて、誇りと伝統を貫くといったジョンブル精神をオーディオに凝縮したのが、このプリアンプだ。マニアであればサブ用として必ず欲しくなる魅力の強烈さ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プリが別れていればセパレート型だが実際には100+100W程度までなら質的にプリメインアンプとの差は大きくはない。しかしあえてその差を求めるなら独立プリのパネルにフルに埋められるようなスイッチやツマミゆえにセパレート型では、多用途性とより細かな調整とが可能。つまりオーディオマニア的な使い方と、それがもたらす高い内容とを求めることができる点に価値がある。さらにハイパワーと豪華さとを、より高価格クラスに求められるが、その場合セパレート型というよりアンプの最高、超豪華としてのプリアンプであり、パワーアンプだ。

デンオン DP-3700F

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 数あるDDプレーヤーの中で、マニアという自覚のもとに選ばれることのもっとも多いのが、このプレーヤー。ターンテーブル周辺の検出機構がマニアに対し説得力をプラス。

デュアル 1229

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 軽針圧時代に入るや、またたく間に世界のオートチェンジャーを独占に近いほどの普及ぶりで、デュアル最高級チェンジャー。マニュアルプレーヤー以上ともいえる高い信頼性。

グラド FCR+

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 思いもかけぬ、という言い方どおりこの品質は価格から判断できぬ充実した音だ。中域のくっきりした力のある音と豊かな低域は、米国製らしからぬ優れたサウンドと追従性。

オルトフォン SL15Q

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 MC型として世界最初のCD4対応型。ずばぬけた超高域特性から、ステレオ用としても優れた対応特性を示す。ひとつにはイメージアップの製品ともみられるが割安だろう。

オルトフォン SPU-A/E

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 Gタイプよりも一段と重厚さと音像の充実感をもち、クラシックのベテラン音楽ファンにとってより大きな魅力を感じさせよう。本来業務用の製品で、やや重い針圧が必要だ。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 オーディオテクニカのもっとも代表的カートリッジで、帯域の中心にひ弱さがないのが、国産品では珍しい。安定したトレースとクリアな音で広く一般に推奨。交換針も安い。

オルトフォン FF15

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 オルトフォンの中域から低域への力強く豊かなサウンドを主軸に、ややソフトな中高域とくっきりした高域で海外製らしく幅広い音楽に応じられ、トレースの安定性も優秀。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ややソフトな中域と優れたバランスは豊かな低域が大きい支えだ。針圧に対する余裕が幅広いユーザーに適応しよう。ヨーロッパ製を、というときには誰にも推められよう。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プレーヤーシステムは、ある意味でシステム全体の基本的品質の支えとなり、音の入口としての重要性がいわれ評される。しかしプレーヤーとして今日望まれるのは、こうした基本的条件以上のプラスアルファ的良さも選ぶものにとって大切なファクターだろう。たとえば扱いやすさ、便利さなどがオートマチック機構やその延長ともいえるチェンジャー、さらに完全なるオートメカニズムにある。そして音楽を楽しむ者にとって使うこと自体をも楽しめるようなデザインであろう。つまり夢を託したくなるのが現代のプレーヤーシステムだ。

KEF T15MKII

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 あらゆるKEFシステムのハイエンドにおける広帯域特性と、品位高いソフトな響きが、このユニットによる再生ぶりのすべてだ。価格も国産品と大差ない。

シュアー M44G

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 安定したサウンドとトレース能力でシュアーの偉大なる特長を凝縮したといえる。どんなソースにも無難にこなし、けっして広帯域ではないが優れた再生で誰にでも手軽に使える。

フィリップス AD2090/T

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 コーン型スピーカーはヨーロッパ製に優秀品が多いといわれ、それを実証するのがフィリップスの中高域ユニット群だ。鮮明度が高く、力もあり清澄な響きを使いやすい。

JBL LE20

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 JBLの高音用ユニットの主力品で、いくつかの変形がある。基本的にただひとつだ。指向性の素晴らしさと輝きある艶やかな響きは、コーン型と信じられないほどの傑作品だ。

フィリップス AD160/T

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 いわゆるソフトドーム型トゥイーターのはしりで、国産のように線がやたら細くなく、しかも澄んだ品位の良さ。さすがにヨーロッパの第一線メーカー製品だ。安いのも嬉しい。

JBL 2405

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 075を基としていながら、それとはまったく別物のように真の改良を実現して、プロ用2405はまったくの新製品といえる。指向性とハイエンドの向上はめざましい。

JBL 2340

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 直角に曲げられたHL91相当のセクトラルホーン。小型であるためとカットオフ1・2kHzで使いやすく使い方次第で多くの活用が可能。ブックシェルフ型の低域との組み合わせなど。

アルテック 311-60

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 アルテックの511をカットオフ300Hzとしたこの311は、指向性を60度とややしぼって音圧を上げ、よりスムーズな特性を無理なく得る。小型にまとめられて家庭に向く。

ピカリング V15 MICRO IV/AM

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 きっすいの米国伝統的カートリッジ、ピカリングの製品中、鮮麗な音の高出力を特長とする使いやすい一般用。やや針圧を増すのが安定したトレースと再生音を得るコツだ。

JBL 2345

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 HL91とカットオフが同一のラジアルホーンで、よりスムーズな動作と水平方向の理想的指向特性が断然有利。ただホーンかなめとウーファーのエッジを同一面に置くこと。

エンパイア 909/X

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 張りのある腰の強い低域と鮮かな高域が好ましく、広帯域にプラスされたエンパイアらしい音と、ラフに使える幅広いトレース能力が初心者にも安心して手を出せよう。

EMT TSD15

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 業務用ということで入手し難い点が、ますます評判を高める。MC型ながら軽針圧かつ出力もかなり高く入力トランスなしでもまず使える所が嬉しい。繊細感プラス鮮明な迫力。

JBL 2305

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 175DLHのホーンレンズのみの相当品だが、このプロ用ホーンは、2・6cmほど長いので効果は一段と高く、周波数をより低くまで出し得るしユニットの電気入力パワーも入る。

オルトフォン SPU-G/E

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 楕円針で高域のレンジと解像力を大きく改善し、SPUも鮮明さを一段と強めて現代の音楽ソースに対応したとみてよい。SPUファンにとって、これは頂点の目標だろう。

JBL HL91

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 LE85や175用のストレートホーンとスラントプレート・ディフューザーは、響きも鮮かであるし、音圧のパワーもより強力だ。音波の出方がより素直という点が買える。

JBL 1217-1290

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 JBLのオリジナルであり、別名蜂の巣レンズをつけた175用。蜂の巣の中はフェルトが多層につまってストレートホーンの突きささるようなエネルギーをやわらげている。

JBL 2390

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 かつてコンシュマー用として黄金色のディフューザーで知られていたこのホーンレンズは、今プロ用として黒い外観のレンズが少々不満だ。ストレートホーンの小気味よい魅力。

パイオニア PC-1000

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プレーヤーで名を馳せるパイオニアが、カートリッジに対し意欲を示した驚異的製品。パイプ状のベリリュウムカンチレバーは世界ただひとつ。未来を志向する先取り型の傑作。

JBL 2397

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 JBLの比較的新しいワイドアングルの木製ホーンは、家庭用として使い得る大きさと音で、今やかなりのファンが持つという金属ホーンと違って、鋭さが少ないのも魅力。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 シュアーなみに使いやすく、性能面でも最高級655に匹敵する実用的な高級品。米国系のMM型の線の細い音に不満の際、選ばれる最右翼のMM型として推薦ナンバーワン。

スタントン 681EEE

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 物理的な性能の良さが聴感上で感じられるカートリッジである。さして積極的に演出を加えるタイプではないだけに面白さはさしてないが安心して音楽が聴けるのがよい。

QUAD FM3

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 プリアンプと並べて常備したくなるこのチューナーは、実質的な面よりもデザインとオーディオ用としての音の素直さとに魅力が強い。高級ファンのサブ用的な英国製品。

パイオニア TX-9900

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 価格に対応しメカニズムとエレクトロニクスの内容をはっきりと知らされる実質的高級チューナーの典型。豪華さと正直さに金を出すことを納得する数少ない高価格高級チューナー。

ソニー ST-5000F

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 今や歴史的ともいえる名作チューナーも8000シリーズの出現で大分かげが薄くなったものの、今日でも多い愛用者の支持に一級チューナーたる名声は消えることはなかろう。

ヤマハ CT-7000

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 その崇高といえるほどのスタイリッシュな感じは、デザインの完璧さからか、価格も当然といえようか。その高品質ぶりは、聴き比べたときにつねに最上位群にランクされよう。

岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 FMチューナーは、アンプの付属品というのが一般のファンの考え方のようだが、実はアンプよりも高価になってしまうほどにその内部は非オーディオ的な電子回路に対して金はかかるし、要求すればきりのないほど高級化ができるのもチューナーの電子回路で、その一つの例が二千五百ドルの米国製品だ。つまりこうした贅を尽くさぬまでもアンプの付属品という二義的な考え方でチューナーを捉えるべきではない。しかしオーディオアクセサリーとしてのプラスα的な価値より、まだまだ歪みやオーディオ特性を改善すべき面が注意されるべきだ。

JBL 2440

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 375相当プロ仕様が2440。かつてはコンシュマー用との間に高域の鮮かさとより高エネルギーとで差があったが、今やコンシュマー用も向上し、プロ用との差はすくない。

JBL 2410

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 175相当のプロ仕様ユニットが2410だ。コンシュマー用との違いはユニットの外観が僅か違うだけで内容的にはやや高域が鮮明であるが、大差ないといってよい。

JBL LE85

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 175の強力磁気回路型だが、この凝縮された高音のサウンドエレメントのパワフルぶりを知ると、ジャズファンならLE85を買わざるを得なくなるだろう魅力は充分。

JBL 375

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 現存するあらゆる家庭ハイファイ用ユニット中の最強力型。強力このうえないマグネット回路と4インチ軽ボイスコイルのもたらす立上りのエネルギーは音のマシンガンだ。

JBL 2420

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 175の強力磁気回路型LE85と相当のプロ用ユニット。ひきしまった高音の響き、立上りの鮮かさは175の比ではない。JBLのプロ仕様高音ユニット中のベスト。

JBL LE175

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 175は、JBLのユニット中のぞくことができない優秀品。JBLで2ウェイを自作しようとする場合の最大の好伴侶となり、ビギナーのあらゆる期待に応えてくれる。

アルテック 291-16A

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 JBLの375に相当するアルテック製品。JBLよりややソフトな立上りと豊かな響きが最大の違いで、これもそれをはっきりと感じさせる。JBLよりも安いのも魅力だろう。

フィリップス AD5060/Sq

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 米国の新しいシステムにしばしば選ばれることの多くなったのも、この古くからあるユニットの真価が広く認められてきたせいか。充実した質感と品のよさを併せもつ。

パイオニア PM-12F

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 これをフルレンジとしてまず使い、次なるステップでウーファーを追加し、最後に高音用を加えて3ウェイトして完成、という道を拓いてくれるのが何よりも大きな魅力だ。

KEF B110

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 KEFのすぐれたサウンドの中心を支えるのが、この一見なんでもないコーン型スコーカーだ。エネルギー的パワーさえ求めなければ、この素直で品のよいサウンドは魅力の塊。

JBL 130A

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 D130をベースにした低音用。中低域の充実している点で抜群であり、さらに冴え切ってひきしまった迫力も、という点からいっても例がないほどだ。ただし箱を選ぶこと。

アルテック 416-8A

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 豊麗なサウンドがたとえようもなく魅力で、こうしたプロ志向の大型ウーファーには珍しく、音楽を聴かせる代表的製品だ。組み合わせるべき中高音ユニットは幅広く選べよう。

JBL LE10A

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岩崎千明


ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)

特集・「'75ベストバイ・コンポーネント」より


 ウーファーとして箱が大きく物をいい、その点25cmの大きさは誰にとっても手頃だ。超低f0なのでブックシェルフ型でよいので、扱いやすく、珍しい本格派のウーファー。

アルテック DIG MKII

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岩崎千明


スイングジャーナル 3月号(1975年2月発行)

「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より


 アルテックのシステムは、本来、シアター・サウンドとしての名声があまりに大きいため、その家庭用システムの多数の傑作も名品も、どうも業務用にくらべると影がうすい。それは決してキャリアとしても他社に僅かたりともひけをとるどころではないのに。つまり、それだけ業務用音響システムのメーカーとしての「アルテック」の名が偉大なせいだろう。
 だから、アルテックの名を知り、その製品に対して憧れを持つマニアの多くは、アルテックの大型システムを揃えることをもって、アルテック・ファンになることが多い。そうなればなるほど、ますますアルテックは若いファンにとって、雲の上の存在とならざるを得なかった。
「ディグ」の日本市場でのデビューと、その価値は、実はこの点にある。
「ディグ」のデビューによって、初めて日本のアルテック・ファンは、すくなくとも若い層は、自分の手近にアルテックを意識できるようになったといってもいい過ぎでない。
「ディグは」小さいにもかかわらず、安いのにかかわらず、まぎれもなく、アルテックの真髄を、そのままもっとも純粋な形で秘めている。アルテックの良さを凝縮した形で実現化したといった方が、よりはっきりする。
「アルテックの良さ」というのは、一体何なのであろうか。アルテックにあって、他にないもの、それは何か。
 アルテックは、良いにつけ、悪いにつけ、シアター・サウンドのアルテックといわれる。シアター・サウンドというのは何か。映画産業に密着した米国ハイファイ再生のあり方は、どこに特点があるのだろうか。
 もっとも端的にいえば、映画の主体は「会話」なのだ。映画にとって、音楽は欠くことができないし、実況音も、リアル感が大切だ。しかし、より以上に重要なのは、人の声をいかに生々しく、すべての聴衆に伝えるか、という点にかかっている、といえるのではなかろうか。
 だから、アルテックのシステムは、すべて人の声、つまり中声域が他のあらゆるシステムよりも重要視され、大切にされる。それらは絶対的な要求なのだ。だからこそアルテックのシステムが、音楽において、中音域、メロディーライン、ソロ、つまりあらゆる音楽のジャンルにおいて、共通的にもっとも大切な中心的主成分の再生にこの上なく、威力を発揮するのだ。
 音楽を作るのも、聴くのも、また人間であるから......。
「ディグ」の良さは、アルテックの真価を、この価格の中に収めた、という点にある。きわめて高能率なのは、アルテックのすべての劇場内システムと何等変らないし、そのサウンドの暖か味ある素直さ、しかも、ここぞというときの力強さ、迫力はこのクラスのスピーカー・システム中、随一といっても良かろう。
 その上、システムとしての「ディグ」は、マークIIになってますます豪華さと貫禄とを大きくプラスした。
「ディグ」の使いやすさの大きな支えは、高能率にある。平均的ブックシェルフが谷くらべて3dB以上は楽に高い高能率特性は、逆にいえば、アンプの出力は半分でも、同じ迫力を得られることになる。システム全体として考えれば、総価格で50%も低くても、同じサウンドを得られるという点で、良さは2乗的に効いてくる。
 つまり割安な上、質的な良さも要求したい、この頃の若い欲張りファンにとって、「ディグ」こそ、まさしくうってつけのシステムなのだ。
 アンプのグレード・アップを考えるファンにとっても、「ディグ」はスピーカーにもう一度、視線をうながすことを教えてくれよう。パワーをより大きくすることよりも、システムをもうひとそろえ加えて、2重に楽しみながら、世界の一流ブランド「アルテック・オーナー」への望みもかなえてくれる夢。これは「ディグ」だけの魅力だ。

内容外観ともにガッツあるシステム
 キミのシステムに偉大な道を拓く点、グレード・アップにおける「ディグ」の価値は大きいが、ここでは「ディグ」を中心とした組合せを考えてみよう。
 アンプはコスト・パーフォーマンスの点で、今や、ナンバー・ワンといわれるパイオニアの新型SA8800だ。ハイ・パワーとはいわないが、まず家庭用としてこれ以上の必要のないパワーの威力、それをスッキリと素直なサウンドにまとめた傑作が8800だ。
 パネルの豪華さという点でも、8800は文句ない。やや大型の、いや味なく、品の良ささえただようフロント・ルック。ズッシリと重量感あるたたずまい。
「ディグ」とも一脈相通ずる良さがSA8800に感じられるのは誰しも同じではなかろうか。
 チューナーには、これもハイ・コスト・パーフォーマンスのかたまりのようなTX8800。
 もし、キミにゆとりがあればSA8800の代りにひとランク上の、最新型8900もいい。チューナーは同クラスのTX8900でも、8800でも外観は大差ない。
 プレイヤーとしては、同じパイオニアからおなじみ、PL1200もあることだが、今回はビクターの新型JL−B31を使ってみよう。ハウリングに強いのもいい。
 カートリッジもこのプレイヤーにはひとまず優良品といえるものがついている。
 デザイン的にも、また使用感も一段と向上したアームは、仲々の出来だ。このアームをより生かすカートリッジとして、スタントンを加えるのも楽しさをぐんと拡大してくれる。600EEあたりは価格・品質は抜群だ。
 出ッとしてマニアライクなオープン・リールの新型、ソニーTC4660を推めようか。

JBL LE175DLH

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岩崎千明


ステレオ別冊「ステレオのすべて '75」(1974年冬発行)

「オーディオ製品紹介 1975」より


 JBLのオリジナル、もっとも初期からシステムとして構成されたその名も001。2ウェイの高音用として指定されたのが175DLH。ウーファーは130A、4cm径の金属ダイアフラムのユニットと約20cmのホーンはその前面に設けられたパンチングメタルを5枚、すき間をあけて重ねて作られた音響拡散器とによって、開口部における音響反射がおさえられるとともに90度の広角に高音エネルギーを拡散して、家庭用としてこの上なく理想的な高音輻射を実現している。パンチングメタルの間につめられたフェルト状吸音材によりJBLの他の高音用よりやや繊細なサウンドでこれが好みを左右する。

JBL 075

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岩崎千明


ステレオ別冊「ステレオのすべて '75」(1974年冬発行)

「オーディオ製品紹介 1975」より


 JBLの初期から高名とどろくホーン型高音用が075。リングラジェーターと称しホーンのスロートでごく狭くした上でドーナツ状にして拡散を図ったが、設計の意図と違ってリング状のホーンの開口は、全体として約10cmのホーン開口と同じことになってしまって、せっかく鮮鋭な高エネルギーながら拡散特性はあまり良いとはいえず、高音用としての大きな利点を損なったともいえる。しかし73年になって、プロ用にこの075の拡散特性を大改良した角型開口の2405が発売され、さらにコンシューマー用としても、まったく同じ構造の077なる名器の075改良型がでることになるJBLブランドにふさわしい製品だ。

アルテック 604E

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岩崎千明


ステレオ別冊「ステレオのすべて '75」(1974年冬発行)

「オーディオ製品紹介 1975」より


 アルテックのスピーカーを代表するモニター用15インチ(38cm)2ウェイ型。当時アルテックにいたミスターJ・B・ランシングが1946年に発売したホーン型高音用を大型ウーファーと同軸上に組み合わせた2ウェイ・スピーカーを、具体化して製品としたのがアルテックの600シリーズで、601の12インチ型と603簡易型及び604の15インチがある。38cmウーファーは強力型515と同じ。そのウーファーを貫通して高音用ユニットのマグネットを貫通して高音用ホーンが設けられており、外観から想像できぬほどのホーン有効長を得た本格的な2ウェイ。力に満ちた迫力と、比類ないステレオ定位、音像の確かさは秀逸。

アルテック 605B

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岩崎千明


ステレオ別冊「ステレオのすべて '75」(1974年冬発行)

「オーディオ製品紹介 1975」より


 業務用としてスタジオでの監視用モニターにもっとも広く活躍する604Eを基とし、家庭用ハイファイ用にリファインされたのが605B。ウーファーが604Eの515同等に対し416A同等となっている展が最大の相違点で外観上は604Eのやや高域に偏し引締った音に対し、格段に優れてフラットな特性と聴きやすいサウンドを得ており、類まれな高品質の2ウェイとなった。製品としては604と同時期から存在するが604のかげに日本ではその良さを充分に認識されることがなかったのは痛恨事であったが、最近「クレッセンド」が認められつつある。

JBL D130

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岩崎千明


ステレオ別冊「ステレオのすべて '75」(1974年冬発行)

「オーディオ製品紹介 1975」より


 JBLスピーカーの優秀性を端的に代表するユニットが38cmフルレンジD130。比類ない高エネルギーと能率の高さが、今日ではおろそかにされがちな音響変換器の本来持たねばならぬ素質の良さを、強烈な形で使う者に知らせてくれる。8000Hz上の高域はかなり低減するが帯域内でのバランスの良さ、特に200ないし80Hzのいわゆる中音域の充実感はこれを知ると手放せなくなろう。このユニットが日本のファンに好評な理由は、まずフルレンジとして高音をやや強めた状態で愛用され、あとから高音用ユニットを追加することにより、JBLオリジナルに近い2ウェイ・システムに高められるという利点にある。

アルテック 419-8B

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岩崎千明


ステレオ別冊「ステレオのすべて '75」(1974年冬発行)

「オーディオ製品紹介 1975」より


 JBLの大型フルレンジの38cmがD130なら、アルテックの38cmは420A、30cmが419得非である。JBLのシングルコーンに対してアルテックは2つのコーンをつないだ形の変形ダブルコーンで、倍フレックスと呼ばれる。バイBiは2つの意味。センターのアルミドームが高域ラジエーターとして有効なのはJBLと似ている。再生音域が充分広いとはいえぬがややソフトな耳当りの良い朗々たるサウンド。はっきりして定位の優れたステレオ感。いかなる用い方にも応じ得る素質のよさに裏付けされたハイファイ全般への広範な酔うとに広く推められるべき極上のコストパフォーマンスの優秀ユニットだ。

ダイヤトーン DS-28B

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岩崎千明


スイングジャーナル 12月号(1974年11月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 この秋の新製品の中でも文句なしの出来と認められているのが、このダイヤトーンの新型システムDS28Bだ。
 ダイヤトーンは、言うまでもなく、初心者にとっては名作といわれる16センチ・フルレンジ型ユニットP610のブランドとして良く知られ、オーディオ・ファンとしてそろそろ判ってくると、これまた日本の名作スピーカーDS251という名のブックシェルフ・スピーカーのブランド名として忘れられない名前となっており、さらにマニア度が昂じてくると、今度はNHKで活躍し本格派にとって目標とされるモニター・スピーカー2S305のメーカー名として脳に叩き込まれる。
 つまり、オーディオ・ファンのあらゆる層に対して、ほんの、しかもオーディオという事象が日本で始まった時から、僅かでも絶えることなく、偉大なるウェイトと輝きをもってファンの上に聳え続けてきた。こうした事実は、三菱電機郡山音響部というより、ダイヤトーン・スピーカーの実力の高さを示す以外なにものでもないのだが、メーカーにとってはかえって不幸となるべき要素も胎んでいるのである。3つのピークが永い年月を乗り越えてきたので、あまりにも大きく裾が広く、まさに壮大というほどの輝やかしいものだから、その他の峰はすべて霞んで、いかに光ろうと、目立つことがないからだ。
 かつてDS301という画期的な名作ブックシェルフがあった。決して影の薄い商品ではないし、現在でも、そのマイナー・チェンジ版がDS303として確固たる座にあり、海外誌でしばしばこのうえなく誉め讃えられてきた。にもかかわらず、DS301やDS303は果してDS251ほどの人気を持っているかというと、答えるまでもなく、P610と、251と、305の輝きの下で霞んでしまっているとしか形容できないのである。まだある。DS36Bというフロア型ともいえそうな大型ブックシェルフ・スピーカー・システムが、一部のファンの間で熱愛されているが、これまたDS251の前には商品としてすっかり薄れてしまう。つまり余りに3つの印象は大きく強烈なのである。そうした内側の問題ともいえそうな3つのピークは今秋遂に打破られた。そう言っても言い過ぎではなかろう。それは時間が証明するだろう。
 かくて、DS251以来の、それ以上の出来をささやかれ、認められつつあるこのDS28Bは、今後のダイヤトーンの最も主力たるスピーカー・システムとなるであろうことは、まず間違いない。というのは、今やコンポーネントの一環としての、市販スピーカーは、ひとつの価格水準として、ほぼ4万前後がオーディオ・ファンの最も多くから認められる最大公約数といえるからである。もっとも、そうした最近の状況をよくわきまえた上で企画されたのがDS28Bであり、その成功を獲得するための、あらゆる条件を究めつくした結果と言うこともできる。
 28Bは一見したところ、従来のダイヤトーン・スピーカーとはまったく異って、現代的なセンスに溢れる。まるで海外製品のようだ。更に前面グリルをはずしても、それが言える。
 あるいは全世界の製品中、最も秀れた外観的デザインと云われる米国JBLのブックシェルフと間違えるほどに、フィーリングが相似であるのは今までの三菱というメーか−を知るものにとり、その製品の武骨な外観を見てきたものにとって意外なほどだ。その次に音に触れると、それは感嘆に変わるだろう。なんと鮮明な、なんと壮麗で豪華なサウンドであろう。そこにはブックシェルフ型というイメージはまったくない。もっと10倍も大きなシステムからのみ得られる、深々とした重低域の迫力と、歪を極端に抑えた静けきと、生命力の躍動する生き生きとした力とが、まったく見事に融合して湛えられているのを知るのである。音のバランスは確かにDS251と相通ずるものがあるが、その帯域の広さと音のゆとりとの点で一桁も二桁も高い水準にあり、DS251たりといえども28Bとは比べむべくもないほどだ。音像の確かさと広いステレオ感などとやかく言うこともあるまい。必ずや28Bは251を軽く凌ぐ人気と実績をものにするだろうから。

オンキョー E-212A

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1974年10月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


「オンキョーの新製品」といわれるまでは、それを知らないものはてっきり米国製新型システムかと思い込むだろう。また、このオンキョーのE212Aを見知っているのがJBL・L16に接すればオンキョー製と間違えるに違いない。それほどまでよく似た外観だが、どちらが先か、 といわれると指折り数えて月日を改めたくなるほどに同時期の新製品なのだから、お互いに真似たわけではないだろうし、おそらく偶然の一致なのだろう。
 しかし、オンキョーE212Aは、戦後いち早くスタートした同社のスピーカー専門メーカーとしての永いキャリアにおいて、おそらく始めて海外製品を意識して企画され、作られたスピーカー・システムなのではなかろうか。
 この数年、日本のオーデイオ市場における海外製スピーカーの人気はすっかり普及化し定着した。その背景からヒット商品のデビューのあり方も国産品なみで、爆発的な人気と売り上げは、国内のメーカーのライバルとして対象にならないわけがないだろうから、オンキョーのこうした意図は当然かも知れぬ。
 しかし似ているのはサウンドと外観だけであって、決して内容や機構ではない。日本製品の一般的あり方を考えると、これは讃えられるべきといえる。ヒット商品が出れば、あらゆる点においてそれに追随する、という製品が多いのだから。
 E212Aのフロント・グリルの内側には2本の16センチ・コーン型ユニットと1本の逆ドーム型トゥイーターとが収められ、一見、ヨーロッパ製ブックシェルフによくみられる並列に接がれた2ウーファーを思わせるが、実は単純な並列駆動ではなくて、一本は高音ユニットとクロスオーバーさせて、中音以下を受け持ち、もう1本だけが低音域のみに対して動作するという、つまり、エネルギーの不足になりやすい低域においてのみ、2ウーファーとして動作し、中域では2本ではなく1本のみが動作するように配慮されている。これは2つの振動板から放射される音響エネルギーが、完全なるピストン・モーションの範囲にあれば理論的にもスッキリとした音響エネルギーとして受けとれるが、その振動板が分割振動をし始める周波数以上においては、2つの振動板による相互の影響が幅射エネルギーとしての音源のあり方を決して純粋な形にしておくわけがない。初歩的ファンが、単純に受け入れてしまう多数の小型スピーカーを無定見に並べて、並列接続して分割振動の範囲までも動作させるシステムが持つ位相歪に起因する音他の定位のぼける欠点を、このシステムは知っており、2つのユニットに対してすら留意している、ということになるわけだ。
 こうした今までのシステムでは見逃されがちの、弱点に対して細心の注意を注いだ結果が、2つのユニットを用いながら、そのクロスオーバーを変えてトゥイーターに近いひとつは中音域から低域まで、もうひとつの下のユニットは、低音用としているわけで、いうなれば3ユニットの3ウェイ的な変り型2ウェイ、というややこしい動作をしているわけだ。しかもこうした大口径ウーファーによらぬ2ウーファーの大きな特長でもある重苦しさの少しもない軽やかで、迫力ある低音は失われることがないのは無論だ。
 実は、このE212Aの発売直後に、すでに好評を得ていて、オンキョーのブックシェルフ中の傑作といわれているE313Aと並べて試聴する機会があった。E313Aの重量感もありながら、さわやかさを失なうことのない中音から低域にかけての迫力に対して、E212Aはなんと少しもひけをとらなかったのには驚きを感じたのである。価格において50%安く、大きさにしてふたまわりは小さいといえるこのE212Aが、ふかぶかとした低音をスッキリと出してくれた。
 むろん、16センチの中音は、低音でゆすられるのではないかという心配をよそに、力強く、シャープな立上りと明快なサウンド・クォリティーで、いつもオンキョーのシステムに対して感じられる品の良さの伴った充実ぶりで、心おきなく楽しめるし、音域ののびもまた十分。つまり内外含めてライバル多きこのクラスの中にあって実感度の高いシステムと断言できよう。

アドヴェント ADVENT2

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岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1974年9月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 白い小さな現代的な姿のシステムが、広いけれど数多いパーツがその空間の多くを占めるSJ試聴室の正面にちょこんと据えられると、ひどくスッキリと目立つ。ただ、左右に2本置かれているだけでたいへんしゃれたたたずまいである。
 白いシステムの、後側に嫌み上げられたたくさんのシステムが、やたらに大きく感じられ、ぶっきらぼうなくらいに実用むきだしの体裁にみえる。
 アドヴェントIIの四隅をほんの少々丸みを持たせた小さな箱がこの上なくまっ白であるのは、それが塗装ではなくプラスチックのためだ。プラスチックの箱というと、これはまたただプラスチックというだけで価値も見映えもおそまつな感じを受けてしまいがちなものだが、このアドヴェントIIにおいては、プラスチックといわなければそう気がつかないほどに品のある仕上げだ。まっ白なので、塗装でないとすれば素材の色だろうし、その素材としては常識的に塩化ビニール・プラスチックにきまっているのに、そう見えないのは、その表面がきめ細かい艶消し仕上げだからだ。もっともそれだけではなく、板との2重張りの箱は工作上も現代工芸的イメージだ。さらにそれを決定的にするのは、この小さな箱に収められた20cmウーファーとドーム型の2ウェイ・システムのサウンドであろう。
 とてもこの大きさが信じられない程の太くゆったりした低音の響き、それとバランスよく釣合って鮮かに輝くような高音のタッチだ。
 この快く豊かなエネルギーが、聴き手をつつむとき、それは姿態通りの現代的なセンスに満ちたシステム。単にスマートなデザインというのではなく、しゃれた雰囲気がぴったりの小型システムなのだ。
 この一見、いかにも現代ヨーロッパ調のイキなシステムは、かくのごとく、サウンドの上でも、西独製の新進ブランドのスピーカー・システムを思わせるにもかかわらず、なんと米国製のスピーカーなのである。
 アドヴェントは、すでにこの4年間米国の新しいブックシェルフ・システムの名として、コンシュマー・レポート誌において絶賛され、BestBuy(最高のお買い物)に選ばれて以来先輩格のARやKLHに並ぶロング・ベストセラーを続けているシステムだ。このアドヴェントはARやKLH同様、米国スピーカーの中にあって、生粋のイースト・コースト派で、いわゆる品がよくて万人向けの優等生的サウンドのシステムだが、その中でもアドヴェントは高音に鮮かさを加えている点と、価格的にもっとも安い点で、いかにも現代的だ。
 アドヴェントには「レギュラー・アドヴェント」と「スモーラー・アドヴェント」のただ2機種のみしかなかったが、この新しいシステムが「アドヴェントII(ジュニア)」として登場してからはまだ間もない。つまり、アドヴェント・システム中の新顔なのだ。
 この数少ない製品から「品種をやたら増やすことのないメーカーの姿勢」が感じられるが、アドヴェントIIは、それなりの理由があって加えられた新製品だ。
 それなりの理由とはなにか。それをこの現代的デザインの白く小さな姿が物語り、コンチネンタル・サウンドを思わすこの響きがそれを示そう。
 アドヴェントIIは、明らかに従来のアドヴェントの、今までの米国製スピーカーから突き抜けた企画で創られた「新しいシステム」なのである。
 このシステムが、西独でもなければ、英国でもないし、北欧でもなくアメリカから生れた、という点に、大きな意義があるというのである。
 アドヴェントはすでに、米国市場において大成功を収めているが、アドヴェントIIのデビューによって、アドヴェントの新たなるファンが大いに増えることは間違いなかろう。アドヴェントが狙うファンは、ヨーロッパ製システムを予定していた、センスフルな若者なのだから。それはちょうど、クルマでいえば、ワーゲンを買おうとしていた若者ともいえるし、ありきたりのアメリカの良識にあき足らない感覚を満たすに違いない。そして、日本市場でもまったく同じ意味でアドヴェントIIは、大いにファンを獲得するに違いない。アメリカと違うのは、このアドヴェントIIによって日本市場で初めてアドヴェントが本格的に腰を据えるだろうという点である。

アキュフェーズ E-202

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岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1974年6月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 商品として完成されたE202をSJ試聴室の机の上に置いて秘かに舌を巻いた。
 E202との初顔合せはすでに数10ヶ月前のプロト・タイプであった。すでに、その時見せつけられた高性能振りと、力に溢れるサウンドにおいて、言うべき言葉も無かった程に感服してしまったのだが、その外面的デザイン、特に仕上げの話に集中した。
「このアンプが20万前後だとすれば、20万円という少なからざる投資をする側の期待は、おそらく絶大なものであろうし、この外観上、パネル・デザインではなく表面の仕上げの不完全さからだけで幾分不満を抱いてしまうのではなかろうか。しかも購買者との最初の出合いはおそらく外観のみで、多くの面がユーザーの内側に入りこむことなく、決断を迫られるに違いない」
 ところでこの言葉は実は数ヶ月前に某社の高額アンプを示された時にもやはりメーカーの担当者に語ったと記憶する。日本のオーディオ・メーカーは、今までコスト・パフォーマンスという面を中心的に、あらゆる面を推進してきたため、高額コンポーネントで完備していなければならないはずの真の「高級感」、「豪華なフィーリング」高級投資者に向けるべき感覚やその満足感をよく知らないのではなかろうか。
 それというのも今や世界を席巻しつつある日本のアンプ、といえどもその国の最高級製品、例えばマッキントッシュ、マランツをはじめ米国における新らしいメーカーの諸高級商品の持っている、高級品のみの具える「フィーリング」を体得せんと意図した事が今までに無かったためか。
 ところが、である。今日、こうして目の前にある商品となったE202は、パネル・デザイン、外観と、何ら変わるところが無いにもかかわらず、まったくパーフェクトに完成されていたのだ。例えば、プロト・タイプでは安っぽさの残っていたメーターとそのグリルの成型について言えば、商品ではいかにも高級VU計のフィーリングそのもので、やや小型とはいえ、プロフェッショナル用のイメージをはっきりと感じさせる。ツマミひとつにしても、一見さりげないのに、指で触れてその感触の良さ、動きのスムーズさに底知れぬ信頼感さえ指先から感じ取れるのだ。つまりすべての面で高級商品のみの持っている豪華なフィーリングが満ちみちて、それが外観の上にもにじみ溢れているのである。
 国内メーカー製品も、ついに海外高級アンプにも負けないだけの豪華なセンスを秘めるに至ったかと、じっくりと見入ってしまったのだ。
 たまたま手元に量産第1号と称する大手ステレオ専門メーカーの20万近いといわれるプリ・メインアンプの新製品が参上した。このメーカーの商品企画の腕は抜群と定評あるのだから当然だが、このP社製にもE202に較べ得るだけの豪華で重厚な高額商品でなければ出てこないたたずまいを感じさせて、いよいよ日本製アンプが、量だけでなく質においても名実共に世界一になる日も遠くないのを感じさせたのは感激的ですらあった。
 その感激の真只中でのE202のSJ社の試聴が僅かなりともマイナスとされるような点がある訳がない。新着の「ザ・クルセイダース」のライブの力に満ちた明快なサウンドは試聴室に爆発し、分厚いコンクリート壁を隔てた編集諸氏の面々から「もう少し音を絞ってくれまいか」と陳情されたほどであった。
 そのサウンドに関してとやかくは言うまい。ただ伝えておかねばならないのは、すでにケンソニックの最高製品として発表されているC200、P300との組合せと切換えてもその迫力一杯のジャズ・サウンドは、信じ難いことにはE202においても殆んど変らない、という事実だ。ごくごく低レベルの歌において、E202に明快さが加わるという以外には。
 市販高級アンプの続出する此頃だが、今までの製品とはっきり次元を異にする、世界を目ざした超豪華アンプということになると、残念ながらこれだというものは滅多にない。しかし、ケンソニックE202こそは、そういう意味で、世界に誇り得る、海外においてもその良さをはっきりと認め得るプリ・メイン型アンプのベストと言っても良い。

岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1974年6月発行)

「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より


 大口径スピーカーのみの持てる、ハイ・プレッシャー・エナジーの伝統的な迫力の洗礼を受けたのは、アルテックの15インチによってであった。38センチという言い表わし方ではその迫力の象徴を表現するには絶対的に不足で、オレにはどうしても15インチ以外はピンとこない。
 それは昭和26年頃の、まだ戦後の焼跡の生々しい銀座の松坂屋裏のちっぽけな喫茶店であったっけ。重いドアを押して中に一歩踏み入れた途端、奥まで紫煙が立ちこめ、そこに群がる黒人兵達の嬌声やらどなり声を圧するが如く、ニューオリンズ・ジャズのホーンの音のすさまじさ。動くこともできず思わずその場にたたずんではしばし、呆然としていた。
 初めは本物のバンドが紫煙の奥に在るのかと、いぶかしくなるほどにそのサウンドは生々しくリアルで力に満ちていた。奥に入っていって、そのジャズ・エネルギーがなんとスピーカーであることを知らされた。その名、アルテックの603Bは、死ぬまで忘れられない名としてオレの脳裏に刻み込まれたのだった。この邂逅はその後のオレのオーディオ・ライフへの道を決めてしまった劇的なものであった。
 この戦後の東京では最も古いに違いない喫茶店「スイング」は今も渋谷は道玄坂の一角で、その時のあの15インチ〝603B〟が、今もなお健在で集まってくる若人に20年前と同じ圧倒的な迫力をもって応じている筈である。
 この603Bが、今日の新たなる技術をもってリファインされたのが「クレッセンド」のユニットの605Bに他ならない。
 さて、15インチ2ウェイ・コアキシャル型の605Bは、その名から推測されるようにプロフェッショナル・モニター用として名の轟く604Eを基準とした製品だ。ユニット自体は604Eの11万強に対して約9万と安い。だから、しばしば604Eの普及型というとらえ方をされる。事実外観上の差はほとんどなく、マグネット・カバー上の型番を見るまでは見分けることすら難しい。
 だが、604Eが音質チェックを目的としたモニター(監視用)であるのに対して605Bはあくまで音楽再生を目的とした、アルテックきっての高級スピーカーなのである。つまり、音楽をサウンドとしてではなく、音楽とのかかわりを深く求めんとして再生する限り、この605Bの方がより好ましいのである。それは音色の上にもはっきりと現れて604Eがしばしばクリアーであるが、堅い音として評されるのに対して、605Bのそれは何にも増して「音楽的な響きをたたえた暖か味」を感じさせる。604Eの力強いがなにかふてぶてしく、鮮烈であるが華麗ではないサウンドに対して、605Bはこのうえなくバランス良く豊麗ですらある。
 つまりいかなるレベルの音楽愛好者といえどもこの605Bの魅力の前にはただただ敬服し、感じ入ってしまう品の良いサウンドであることを知らされるに違いない。しかもこのサウンドは、単に音が良いというだけでなくしばしば言われる〝シアター・サウンド〟を代表するアルテックという、世界で最もキャリアのある音楽技術に裏付けられた物理特性あっての成果なのだ。電気音響界きっての誇りと伝統と更に現代技術の粋とを兼ね備えた音楽再生用スピーカーとしての605Bの優秀さは、もっと早くから日本市場にも紹介されるべきであったのだ。
 これがかくも遅れたのは、このスピーカーが抜群の高音響出力を持つためだ。高いエネルギーを可能とすることには付随的なプラスαとして無類の高能率があるのだ。そうした場合、スピーカー・ユニットを組込むべき箱は実に難しく、多くの点を規制され充分な考慮をせずには成功しない。箱の寸法とか補強措置や板厚のみならず、その材料にまで充分に注意を払わねばならない。つまり箱に優れたものをなくしては優れた本来の性能を出せなくなってしまうのだ。
 幸いなるかな日本市場では605Bは「クレッセンド」と呼ぶシステムとして優れたエンクロジュアに組込まれた形でユーザーの手に渡ることになっている。つまり605Bの良さは損なわれることなく万人に知られ得るに違いないし、それはしばしば誤られるごとく「ウエスト・コースト・サウンド」といわれるものではなく、この30年間常に、いや創始以来ずっとハイファイをリードし続けた、アメリカのオーディオ界の良識たるアルテック・サウンドの真髄を発揮した「サウンド」なのである。
 まずクレッセンドが比類なく高能率、高音響出力という前提では、アンプにはさして大出力は不要ということになる。その結論はひとつの正しい判断として間違いないし、そうした決定から国産の平均的アンプ、40/40W程度のものを対象としても、アルテック・クレッセンドはその実力を充分に発揮してくれ、そのサウンドは、間違いなくそこに選ばれたアンプが「かくも優れたものであったか」ということを使用者におそらく歴然とした形で教えるに相異あるまい。
 だからといって、このひとつの結論としてのそのサウンドがアルテック・クレッセンドの良さをフルに引き出したのかというと、残念ながら決してそうではないのである。国産の40/40Wのアンプは矢張りその価格に見合った性能しか秘めていない。倍にも近い価格の、だから多分高出力になっているに違いないより高級なアンプの持っている諸特性を考えれば40/40Wの手頃な価格のアンプはやはりそれなりの特性でしかないのだ。
 つまりクレッセンドの内蔵するアルテックの605B、その輝やかしい歴史と伝統に支えられた15インチ・コアキシャルは、もっとずっと、否、最高級のアンプで鳴らした時にこそ、最高の性能を発拝してくれるのである。
 それはイコライザー回路から、トーン・コントロールから、およそ回路の隅々にまで至るすべての点に最高を盛り込んだアンプのみがアルテックの傑作中の傑作を最も本格的に鳴らしてくれるのである。
 そしてそういう結論を大前提とし、なおかつ、大出力は必要条件ではないとしてもすべてを満たし得るアンプ、その少なくない国産品から選べば、次の3機種こそアピールされてよかろう。①ソニー:TA−8650②オンキョー:Integra711③ヤマハ:CA1000 以上のアンプは最大出力は100/100Wを下回るものの価格的にはヤマハを除いては割安とは言い得ない。つまり、メーカーとしてはどれもがそのメーカーの最高機種としての誇りと技術を託した高級アンプなのであり、そうしたベストを狙ったもののみがクレッセンドの良さを最も大きく引き出せよう。特にヤマハのアンプは品の良さと無類の繊細感で.この中では最高のお買物として若い人にはアピールされよう。ソニーの場合新開発FETアンプの持つ真空管的サウンドを買ったのだ。オンキョー711については、使うに従ってその良さが底知れぬ感じで期待でき、是非これに605Bを接いでみたい誘惑にかられているのだ。プレイヤーはプロ志向の強いトーレンスTD125MKII。カートリッジとしては、使い易さと音の安定性からズパリ、スタントン600EEを推そう。

岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 オーディオ機器の魅力とはいっても、その「魅力」という言葉自体がはっきりとは説明でき難い特質を持っているということが、まず第一の問題だ。魅力の「魅」は俗世界の人間とは違った存在であって、これは人間の知性や理性ではどうしようもない超能力の怪物みたいなものだ。辞書を引いてみると
 魅=①ばけもの。妖怪。②人をばかす。
   ③みいる。心をひきつけて、迷わす。
 魅力を感じるというその「魅力」は、だから説明がつけられないし、無理矢理説明すればそれはこじつけになってしまう。理由がはっきりとつかないで、それに参ってしまうから魅力なのであり、あれこれと判断して良いと心得るというのでは「魅力」そのものではないといえよう。
 そうした魅力と感じるかどうかは、そのきっかけは対象の方にあるのには違いないが、それを魅力と感じるかどうかは、それを受けとる人によって異なる。
 魅力だと感じとったことは、その当事者にとっては魅力であっても、果してそれ以外の者にとって必ずしも「魅力」とは限らないのではないか。例えば単純なことだが、「安い」という魅力はその内容に比してのことだろうが、その内容の価値を認め得ない者にとっては決して「安い」とは限らないし、そうすれば「安い」という魅力は誰でも同じに感じるというわけではなくなる。まして絶対的価値の高低を全然気にしない者には、「安い」なんていうことはまったく魅力とは成り得ない。
「豪華」なデザインだからといって良いと感じとる者もいれば、それだからいやだという者もいる。音が繊細だからいいという者も、頼りなくていやだと受けとる者もいよう。
 こう書いていけばもう判るだろうが、魅力というのは対象物の方にあるのではなくて、魅力と感じ受けとる当事者の方に魅力の源があるのだ。
 さらに突っ込んで考えれば、だから魅力を感じる当事者の内側が広く深いならば、魅力はあらゆる方向に見いだせるに違いないし、またその深さも当事者の堀り下げる尺度のとり方が深いならばどこまでも深くなろうし、そうでないならば表面的なものとか浅い見方しかできないということになろう。技術的によく精通していれば技術に対し深い見方をできるに違いないし、そうすればアンプにおける回路の違いどころではなく、抵抗一本の使い方にも、また数値の選び方にさえも新たな魅力を発見できよう。単に再生機器の音の良否をうんぬんするだけでなく、そのメーカーの本質や創始者の考え方や音楽的センスを知れば、メーカーの歴史や志向をたどれば「音」ひとつの判断にしたって変ってくるし、同じ音(サウンド)の中に、また他人の気付かぬ魅力を発見することも不可能ではない。つまり魅力とは、そのようにオーディオにあってはオーディオ機器という対象物の中にあるのではなく、きっかけはあるのだが、それを魅力と感じるかどうか、さらに魅力という形にまでも大きくふくらまし得るかどうか、というのは受け取る側の内部の問題なのだ。
 そうなると、オーディオ機器ならば、おそらくどんなものにも魅力が、正しくはそのきっかけとなる要素が必ずやあるだろうし、魅力のない機器はおそらく皆無に違いない。
 こういうふうに話を進めていくと、おそらく読者を始め編集者の期待する方向から話はどんどんずれていってしまうことになるので、以上のことをまずよく知っておいたうえで当事者の内側からオーディオ機器の方に話の焦点をしぼっていこう。つまり魅力と感じさせるオーディオ機器側の要素に触れていこう。
 魅力の第一は、バランスの良さだ。設計の全体、または各部のひとつひとつに対するバランス、またはデザインの上でもよい、細かくはパネルに並ぶつまみをとって考えれば、その並び方、大きさとすき間、仕上げ、光沢、それぞれが周囲のパネル全体に対してのバランスの良否が魅力というものを生み出す。いや、つまみひとつとってみても形や寸法、さらに仕上げ、カットの仕方、さらにその指先の触感、操作性などのバランスの良さというだけでも、アンプにおける魅力といわれるものさえ創り出してしまうことになる。
 このようにオーディオだけではないが、もっとも単純な外面的な捉え方にしても、バランスの良さということが誰に対しても共通的な魅力を感じさせる要素になる。
 むろん内部に対して眼を向けられ得る素養を当事者が持っているなら、設計上、生産上、またはコストの上から選ばれる部品にしてもバランスの良さが判り得るし、そうなれば、それらは魅力の要素といえよう。いかなる見方にしろこうした例を挙げるまでもなく、バランスの良さは誰にでも割に判りやすい魅力となり得よう。
 このバランスの良さというのは、オーディオにあっては音(サウンド)と、メカニズムと、デザインの三つのあり方が大きな柱となり得る。
 こうしたバランスの良さという魅力は、実は誰にも判りやすいがもっとも単純な魅力で、オーソドックスな判定基準のひとつといえようか。
 それに対して、アンバランスの魅力というのがある。ある面を特に強めようとするとき、バランスをくずして変化を強め、敢えてアンバランスの面白さを狙う。
 ただ、このアンバランスを魅力と感じるのは、バランスの魅力を通り越さないとだめだ。
 ここでいうアンバランスは単につまみの左右が非対称などという単純な形のものではない。設計上や企画上の重点主義も一種のアンバランスであろうし、性能上の面にもある。むろんサウンドの上にもある。メーカー側の片手落ちを、アンバランスの魅力と受けとってしまうこともあるが、このアンバランスの魅力というのは、実は完壁なバランスがあって初めて僅かな点に、アンバランスを有効な形で成り立たせているというのが実際だ。
 さて、こうして述べてきた魅力は、実はオーディオのみに限らず、人の世のあらゆるものに対してまったくそのまま当てはまる事象である。例えば芸術一般、音楽にしろ美術にしろ、さらに文学や人間の登場するありとあらゆるもの、さらに人間そのものに到るまで、人間の生活のリズムなど、どれをとったって同じことばがそのまま通用して、バランスとそれを基としたアンバランスが魅力を創り上げる。
 ところで話の本筋はこれからだ。オーディオを始めとして人間の作り出す魅力、または人間の生活に深くかかわる仕事やテクニックにおいて、もっとも大きな魅力を創り出す要素がひとつある。
 一心不乱の心だ。
 すべてがあるひとつのことのために集中され凝縮された状態である人間それ自体が、一番魅力を発揮するのもこうした状態だし、たったひとつのことのためにすべてを捨てるこの状態だ。ウェストコースト・サウンドといわれる高エネルギー輻射を、オーディオ再生のすべてとしているかのように受けとれるJBLサウンドの魅力もそれにあるのだし、実はそう受けとめている当事者たるこの私の方にあるのかもしれない。60年代の初めにあったノイマンの超高価プリアンプもつまみはたったひとつのみ。これに集約されたプロ用といわれる製品の数々も、それは業務用という名のもとに純粋に「手段」としてそのすべてが作られているという点にあるのだろうか。
 海外製品における魅力もつきつめれば、他にないオリジナリティというよりも、豪華さにあり、それはだから彼地にあってはありきたりでも、「海外製品」として日本にあってこそ初めて魅力を保ち得るのではないだろうか。
 つまり、輸入品としての高価格と稀少性のみが魅力のすべてを支えており、高価なら高価なほど、当事者の内の満足度も高くなる、という特別な形の魅力で、それは本来、オーディオ機器においてうんぬんする魅力とは違うものではなかろうか。
 最近の流行の大出力アンプも、目的のために他のあらゆる要素をすべて犠牲にした上で成り立っており、このラジカルな志向がオーディオ機器の魅力の真髄となるのではなかろうか。

オルトフォン SL15Q

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 平均的なシュアーを意識的に避けたのは、CD4に対する技術力の差だ。CD4そのものよりこれが実現に伴う周辺の技術はカートリッジの未来を決定する多くのファクターを秘める。たいぷIIIが商品として、あの磁気回路とコイルを土台としている限りCD4に取り残されざるを得ないのに、オルトフォンのコイル型はCD4を卒業してステレオ用にその技術を拡げつつある。限りない広帯域感と一層繊細なサウンドがそれを物語ろう。

岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 日本ほどいろいろ優秀なアームが市場に並ぶ国は他にない。そのいずれもが競争の激しい中で優れた高感度と確かな品質をそなえて、世界的にいっても平均的にハイレベルの分野だ。デンオン、スタックス、グレース、マイクロ、テクニカと並ぶその中からひとつを無理して選ぶとするとFR54ということになろう。デザイン、品質、使いよさ、すべて揃った点で、この54は今や数多い秀作ぞろいの国産品の中でも水準を出ていよう。

マイクロ SOLID-5

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 プレーヤーというものが、モーターとターンテーブルとアームとケースとからではなく初めからプレーヤーとなるとき、それを実現してくれたのがソリッド5だろう。DDとかベルトとかサーボとかいう技術をプレーヤーに凝縮し、収れんするとき、このソリッド5の意気も価格も判然としよう。プレーヤーの価格とは、そうした各々のメカニズムに対するものではなく完成された製品に対するものだということを教えてくれた製品だ。

トーレンス TD125MKIIB

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 ガラード301をトーレンスの124に替えてからずっとずっといつも私の傍で、常に回っていた。これ以外が回っているときは、デュアルのチェンジャーであった。125IIとなった今も124の隣りで回っているし、これからもずっと回るに違いない。DD万能の今日でもそれに劣らぬ高い信頼性と変わらぬクォリティ。やはりDDではなく125IIが私の回転メカに対する意外に古いセンスを満たしてくれるのか。

トリオ KT-8005

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 今や高級チューナーとしてはもっともオーソドックスなテクニカルで固められているトリオの最高級機種だが、メカニカルフィルターをはじめとするそれらのすべてはトリオによって拓かれた技術である。真の意味でのオリジナルを具えるトリオのチューナーは、期待通りの高性能を保証する数少ないチューナー製品として、高く評価してよい。デザインのオリジナリティも付言してよいし、私はこのデザインゆえJBL520と併用中だ。

マッキントッシュ MR77

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 特殊なフィーダーを用いたバランス検波回路というユニークな特許の検波回路がこの0・1%という驚くべき超低歪率をもたらしているが、そのためIFの最終段はなくパワー増幅段である。こうした77の優秀性の源となっている独特な技術がこのチューナーを入手したきっかけなのだが、実用するうちオーディオ回路の皆無なチューナーでさえ、マッキントッシュのサウンドポリシーを厳然と持ち合わせているのには敬服し尽くした。

ナカミチ Nakamichi 700

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 あとでローウィのデザインと聞いて、やっぱりそうかと思い、半面少々ガッカリもした。日本人ばなれしたデザインは日本人ではなかったのだ。カセットというイメージ、いやテープデッキというイメージをこのデザインからはとうてい感じられない斬新で現代的なセンスだ。
 サウンドは、カセットにありがちな、力不足の不安のないガッツのあるダイナミックなサウンドがなによりも魅力だ。

デンオン DH-710

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 オープンリールは、目下わが家には2トラがない。せめて1台ぐらいはないと、と考えていろいろ探し試聴してみると、海外製品に並んでこのデンオンの新製品がクローズアップされてきた。だから、これは手元において確かめたものではなく、手元において、よくみて使いたい。国産品といえども海外製品と並べてもおそらくその期待を裏切られない製品だと思う。デンオンの回転機器の確かさを日頃放送局のスタジオでみてるためか。

ヤマハ CR-400

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 まあ国産品で、西欧的な意味でデザインの優れた製品というものがあるとすれば、車におけるルーチェのように、フロンテSSのように外人の手によるものだったが、そういう事実をくつがえすといえるおDお製品がいくつかあるのは嬉しい限りだ。CR400はその点で世界に誇れる秀逸な製品で、その点からいえばCA1000をも上まわろう。そして、その美しくも優雅な外観がサウンドまでも表わしているのだから。

ソニー TA-8650

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 FETアンプの国産成功によってもたらされるのは、まちがいなく世界最高のアンプの栄光が実現したことだ。
 かつて1120によって日本のアンプを格段に飛躍させたソニーが、再び8650によって国際水準に引き上げたことは拍手をもって迎えるべきだろう。8650の音はなにしろ球のそれ以外の何物でもない。確かに石特有の超広帯域を合わせ持っていることは確かだが中声域での冷たい感じは、ここにない。

L&G L-2600

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 若いカップルが、フレッシュな思い出を創り上げるべき部屋に、この上なくぴったりのアンプがL&Gの全シリーズだ。
 これらのカラフルな、特にプリメインがそうしたセンス溢れるデザイン。ほほえましくて思わず購入してしまいたくなるようなフィーリングをたたえ、しかも内にはラックス直系のセンスフルなサウンドへのメカを秘める。オーディオ機器の商品として、これほど完成度の高いアンプが国産品に出てこようとは。

サンスイ AU-9500

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 国産プリメインアンプは、この一年間出力と共に質的にも大きなジャンプを果したが、その数多い製品中、無類の力強さと無限なエネルギーを感じさせる9500はずばぬけた存在。その黒く巨大な特徴ある姿態は、限りない信頼に支えられたゴージャスなサウンドをも表わして魅力の源となっていよう。
 価格の向上が著しいこの世の常として、採算上このアンプが姿を消す日がいつかは来ようが一日でも遠いことを願う。

岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 オーディオリサーチははたして新進メーカーなのか、音を聴いていつもそう思う。このサウンドは技術のみで到達できるものではないし、音楽のキャリアの裏づけがおそらくこのアンプの優秀高質を支えていよう。実効出力はマッキントッシュ275とほとんど同じはずだが、サウンドの力強さと充実感において上回り、技術上の新しさを感じさせるのはさすがだ。個性的で米国系らしいプリとともに特異な存在が魅力なのか。

ダイナコ Stereo400

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 ステレオ400を登場させるのは、そのサウンドが米国オーディオにおけるひとつの良識、良心を感じさせるからだ。コストパフォーマンスといういい方は気に喰わないがそうした観点からでも、400の優秀性は説明できるが、ダイナコというもっともポピュラーで評判の高い経験充分のメーカーのサウンドに対するセンス、しいてはアメリカの平均的オーディオ感の集約という点で特に注目すべき秀作だろう。

アキュフェーズ P-300

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 わが家において常用的に使い出した最初のハイパワー(一応100W以上)アンプがアキュフェーズだ。力強く明晰で曇りかげりのないサウンドが、あるいはあまりにもすべてをさらけ出しにしえぐり出してしまうといえるが、それを許せるのは生々しい暖かみさえある中声域の充実感だ。A級を全段に採用したプリの良さもあろうが、マランツ16と替え、2505と替えて、もっとも歪みの少なさを感じさせるのは最新技術の裏づけか。

アムクロン DC300

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 DC300は、アメリカ市場に登場した最初のハイパワーアンプでこのアンプの出現が今日の多くの製品のトリガーともなっている。そのデビュー時から、何をかくそう、ずっと私にとってあこがれであったのだ。粗いヘアラインのぎらぎらとしたパネルの仕上げが音にまで出て、乾いた感じの、つっぱなされるようなサウンドだが、この荒馬はきっと鳴らし甲斐があるに違いない。その本来の目的のラボラトリーユースを兼ねて鳴らしたい。

パイオニア PT-150

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 ベリリューム・トゥイーターという形が商品としてどこまで成功するかは疑問だが、前人未到の技術に挑んだメーカーの心意気と、到達しあるいはしつつある質的な成果は讃えてよい。DDモーター、FETアンプに続く世界的最高級品がこのトゥイーターを土台として生まれることを期待しよう。これを単独な形で購入した場合を想定すると、ESSにおけるハイルドライバー同様、ウーファーの選択はむつかしいに違いない。

アルテック 605B

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 604Eではなく605Bを選ぶのは、音の違いというよりも、誰にも推められる扱いやすさにある。604は大型コアキシャルの原点として理解されるべきだが、その良さはステレオから4チャンネルへと音像の確かさがますます重要となるにつれて、真価をみせてくるといえる。755やLE8Tなどの、またP610の価値も実はこの点にこそあるが、それをとびきり高品質で実現せんとするとき、605Bはかけがえがない。

JBL LE85 + HL91

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 JBLユニットで傑作中の傑作はホーン型ラジェターにあると思うが、そのオリジナル175の強力型が275でその現代版がLE85だ。ひとまわり大きく強力な中音専用375にくらべ、この組合せは2ウェイ用として存在する点に意義がある。175との対比をしばしば問われるが、圧倒的な差は高域になるほど強くなる最強エネルギーの違いであり、それがハイエンドの力と冴えとなり、その点こそLE85でなければならぬ理由だ。

JBL D130

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 またD130か、といわれてしまいそうだが、ジャズを愛するならその真髄を、そのソロを、このスピーカーほどリアルなエネルギーで輝かしく再生するユニットは、おそらく価格の制限を外してもそうざらにはない。たしかに今日の水準からは高域のレンジはかなり狭く、レベルも低いがそれはアンプのトーンコントロールでハイを上げて補えば、2ウェイにするまでもなくジャズは他のユニットにない生々しい再生をやってのける。

JBL L25 Prima

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 ブックシェルフ型というイメージを一掃し、カラフルなユニット風のシステムは実用性の高い未来志向を強く持ち合わせ大きな魅力。
 サウンドは定評のL26と同形で低域の自然さは一歩ゆずってもバランス良い聞きやすさは、プリマの大きなプラスだ。
 多くを語るより、「まあ使ってみて」といおう。良さは音だけでなく、オーディオとして以上のより多くを君に感じさせるに違いないから。

岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 国産品めいたこけ驚かし的なマルチユニットのちっぽけなブックシェルフ型から、これほどの魅力的な華麗鮮烈なサウンドが出てこようとは。無類の「音の良さ」を秘めたシステムだ。一般のブックシェルフにありがちな重苦しい低音も、またそれを避ける結果しばしばみられるふぬけた超低域もこれにはない。レベルを上げてもくずれない低域は力強く冴え瑞々しいほどの中音から高音の迫力とよくバランスし、抜群の広帯域感が溢れる。

ダルクィスト DQ10

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


 新しいオーディオ界を目指しつつある米国において、特にスピーカーの新興勢力はめざましいばかりだ。ESS、ヴェガと並んで好評の、新参ダルキストの風変りな容姿と、澄みきったサウンドは新進メーカー中の白眉だ。その提唱するところの新たなる基本理論よりも音楽的、音響的なセンスが無類にすばらしい。その滑らかな中高音をそのまま超低域まで拡張したサウンドが、新たなる時代に羽ばたく要素となった傑作といえる。

JBL Sovereign I

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岩崎千明


ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)

特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より


「ヴェロナ」がカタログから消えてしまって、今やJBLのフロア型もクラシックなスタイルで豪華なたたずまいの製品はこの「サブリン」だけになってしまった。だから「ヴェロナ」に対する愛着と願望とが「サブリン」に妥協した、といってもよい。フロア型に対する望みがブックシェルフ型と根本的に違うのは、室内調度品としての価値をもその中に見出したい点にあるが、それがサブリンに凝縮したともいえる。

マイクロ SOLID-5

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岩崎千明


スイングジャーナル 6月号(1974年5月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


「ソリッド・ファイブ」こう聞いただけでは、その名前からは到底レコード・プレイヤーの製品名とは思えまい。マイクロ精機のニュー・モデルがこの斬新な名前を冠してデビューしたのである。
 常日頃、堅実で手堅くオーソドックスな姿勢を崩すことないこのメーカーは製品のすべてが控え目なデザインと、着実な高品質ぶりに、ロング・セラーを重ね、プレイヤー部門ではトップの座を永く守り続けてきた。ありきたりながら、オーソドックスな機構は、見落されそうな内部メカニズムの細かい所にまで、良く行き届いて品質の安定した精密度の高いメカニズムが、この10年にも近い永い首位の座を支えてきたのは当然過ぎるといえよう。
 ところでこの数年のDDモーターの出現とそれに続く著しい進出普及ぶりは、プレイヤー界に新たな波となって革命といえるほどにすべてが変った。首位の座を崩されなかったマイクロ精機はプレイヤー専門メーカーとしての誇りからDDプレイヤーの製品化に当然積極的であったし、最も古くからプロフェ、シショナル・デザインの711を市場に送って時代の波に対応した。国内では充分に理解されることの少なかったこの1年間、ヨーロッパの各国で異常な程の人気を呼んで他のDDのはしりと目されている。
 さて「DDモーターは高性能」ということが常識化されると、DDモーターはあらゆる購売層にむけてあらゆる価格レベルのものが出回り、いつも繰り返されるように、今や氾濫気味でさえある。単にDDモーター付きというだけの品質を究めたとは言えない製品までもが大手を振って罷り通る。早くからDDプレイヤーを手がけてきたマイクロ精機の良心はこうした安物DDプレイヤーを商品とすることが出来なかったのだろう。そうした情況下でのマイクロ精機の回答が、この「ソリッド・ファイブ」に他ならない。名の示す通り、これは今までのこのメーカーの志向を大きく前進させて、強い意欲と決断とから培れた企画であり、それだけにオーソドックスなベルト・ドライブながら多くの点でまったく斬新なプレイヤーと言えよう。「ソリッド・ファイブ」という現代的な響きの名前。この名のいわれは、従来の観念からいうプレイヤーとそのケースとはまったく違った構造形態にあるのに違いあるまい。本来プレイヤーというものは、モーターにより駆動されるターン・テーブル、アーム、ケースの3点によって構成される。ところがこの「ソリッド・ファイブ」では、ターン・テーブルとケースはまったく一体化されていて、分離しては成りえない。もっと分り易く言うと、普通はターン・テーブルとそれを駆動するためのモーターが取り付けられている「モーター・ボード」といわれる部分は「ソリッド・ファイブ」には全く無くて、一見スマートで軽やかに見えるが中味の完全に詰まった厚さ40ミリの積層合板のケースそれ自体がモーター・ボードとなっている構造だ。この新たな構造はプレイヤー・メーカーだからこそ作り得られるメカで、完全に原点に立ち帰ってプレイヤーというものを考え直し、本来そうあるべき形態として生まれたものだ。基本的には直接サーボ・モーターによるベルト・ドライブというメカニズムで、これはマイクロのいつもながらの堅実で高い信頼性重視が採用させたものだ。同じメカながら今日のDDモーター時代に世に出る製品に相応しく、性能の上でDDモーターのそれに劣らぬデーターを示し、SN比、ワウフラッタ特性、安物DDモーターのウィーク・ポイントとされている実用時の高性能化、更に信頼性を大きく加えている。アームは優雅なほど素晴しく高級仕上げされ、高感度ながら、がっちりとして使い易いのも、いつものマイクロと同じだ。静止時のアーム・レストの高さ調整まで出来るといった細かいプラスαはここでは触れるまでもなかろう。
 名前通り現代的なフィーリングが構造にもデザインに.も、使用時にもはっきりと出ているのがこのプレイヤーの完成度の高さを示している。いつも「高品質だが商品としては80点、もう一歩完成度が欲しい」と言われ続けてきたマイクロが、初めて完成度100%のラインを一気に飛び越えた製品。それがこの現代的な高級プレイヤー、「ソリッド・ファイブ」といえるのではないだろうか。『DDを突き抜けたときの本物プレイヤー』ソリッド・ファイブ。

岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1974年4月発行)

「AUDIO IN ACTION」より


●アンプはパワーが大きいほど立上り特性がよくなるのだ! だからジャズには......
 アンプの出力は大きいほど良いか? はたまた、必要性のないただただぜいたくなのか?
 そうした論争や、論説はいいたいやつにいわせておけ。オレは今日も午前中いっぱい200ワット出力のアンプをレベル計がピクンピクンといっぱいに振り切れるほどの、ドラムの響きに身をまかせ切っていた。
 一度でもいい。キミも、大出力論争をやっているひまに、ほんのひとときを100ワット級のアンプで鳴らす空間にその身をさらされてみろ。一度でもハイ・パワー・アンプの洗礼を受けたが最後、ジャズを愛し、断ち切れないほどのファンなら、だれだって必ずやその虜になるぞ。必要ない、なんてうそぶいていたのは、実は、望んでも達せられないための、やっかみ半分のやつ当りだっていのうを、ひそかに思い当るに違いない。
 ハイ・パワー・アンプから繰り出されるこの上なく衝撃的なパルスは、現代に息吹く若者にとってあるいは麻薬の世界にも例えられるのかも知れない。一度覚えたそのアタックの切れ込みのすざまじさは、絶対に忘れられっこない経験として耳を通してキミの大脳にガキッと刻み込まれてしまうのだ。もうそれを消そうと思ったって薄れることすらできやしない。それどころか、口でけなし、あんなのはだめな音と、どんなに思い込ませようと努力したところで、逆にますます強く求めたくなってくるあこがれにも近い感情を内側でたぎらせてしまうだけだろう。
 恋の対象を初めて見かけたとき、それは少しも変りやしない。だから、ジャズ喫茶でスピーカーの前には、すべての環境から遮断されたマニアックなファンが少なからず、首をうなだれてサウンドにひたり切っているのだ。
 スピーカーは、例え小さくても良い、そのすぐ前で座ろう。プレイヤーは今までのでもいい、カートリッジの質さえある水準以上なら。
 ステレオの心臓はアンプだ。電気信号に変えてエネルギー増幅する、それがアンプの真髄。だから、アンプはきのうのより大きくしてみよう。2倍じゃなまぬるい。4倍も6倍も、いや10倍の出力のアンプなら一層結構、大きければ大きいほどいいのだ。それがたとえ借り物であっても、仮の姿でも、いつかはキミの所有になるはずだ。
 大出力のよさを身をもって知ったならば、もう逃れられっこないのだから。良さが判ればキミのステレオの次の標的として、大出力アンプは、大きくキミの前にほかの目標を圧して立ちふさがるだろう。キミはそれに向かって猛進するだけだ。100ワット/100ワットのジャンボ・アンプに向かって。

ソニー TEA-8250
 後から鳴らしたFETアンプのおかげでソニーのハイパワー・アンプはスッカリ形が薄れてしまった。けれど、1120のデビューのときの音そのものの感激がこのハイパワー・アンプ8250でもう一度思い出された。「あくまで透明」なサウンド。それは非情といわれるほどで、アタックの鋭さは正宗の一光にも似る。以前より低域の豊かさが一段と加わっているのは、単なもハイパワーのなせる所だけではないかも。

ソニー TA-8650
 20種にあまもハイパワー・アンプを並べたこの夜のSJ試聴室。編集F氏Sくんを含め、むろんこのオレも一番期待したのがソニーのこのFETアンプだ。球の良さをそのまま石で実現したといういい方は、気に喰わないというより本当にして良いのかという半信半疑からだ。
 その不安も、まったくふっとんでしまつたのだ。なるほど確かにハイパワー管球アンプの音だ。このFETアンプ8650に最も近いのは、なんと米国オーディオリサーチ社管球アンプだったから。
 低域の迫力の力強い響き、プリアンプのような超低域までフラットだが力強さがもうちょっと、なんていうのがFETアンプではうそみたいに直ってしまう。中声域から高域の力に満ちた立ち上りの良さプラス華麗さも、石のアンプのソッ気なさとは全然違う。
 こうしてまたしてもソニーは、アンプにおいて1120以来の伝統よろしくオーディオ界のトップに出た、といい切ってよかろう。製品が出たら、まっさきにオレ買おう。

オンキョー Integra A-711
 711はなんと20万を越す名実ともに一番高価なインテグレイテッド・アンプだ。しかし、音を聴けばそれが当然だと納得もいこう。ローレベルでの繊細さと、ハイパワー・アンプ独特の限りない迫力とを見事に融合させて合わせ持っている数少ないアンプだ。音の特長は、......ないといってよい。ない、つまり無色、これこそアンプメーカーの最終目標だろう。オンキョーのアンプがずっと追いつづけた目標は、このアンプではっきりと捉えられていよう。

オーディオリサーチ SP-3 + Dual75
 かつてマランツ社で真空管アンプを設計してたっていう技術スタッフが集まって興したのがこのメーカー。だからトランジスタ・アンプ万能の今日、その栄光と誇りはますます燃えさかり、このどでかいアンプを作らなければならなくなったのだろうか。なにしろ75/75ワットという実効出力にも拘らず、200ワットクラスの石のアンプとくらべても一歩もひけをとらず、それどころかサウンドの密度の濃さは、どうやら石のアンプでは比すべくもない、と溜息をつかせる。

SAE Mark 1M + IV C
 ロス周辺の新興エレクトロニクス・メーカーと初め軽く受けとっていたが、どうしてどうしてこの4年の中に、オーディオ界ではもっとも成功を収めたアンプ・メーカーだ。それだけに製品の完成度の高さと漉さは、抜群だ。プリIMと接続した状態で端正で品のよいサウンド。数あるトランジスタ製品中ベストの音色をはっきりと知らせたあたり、実力のほどをもう一度思い知らされろ。個性的でスッキリしたデザインはサウンドにも感じられる。

Lo-D HMA-2000
 やっぱり日本産業界切っての大物「日立」、やることが違う。というのがこのアンプのすべてだ。果しなくパワーを上げていくと、遂に突如、ひどくなまってくるのに慣らされた耳に、このアンプは不思議なくらい底知れずのパワー感がある。つまり音が冴えなくなる、という限界がないのだ。それはテクニクスに似てもっと耳あたりのよいサウンドの質そのもののせいといえる。日立のオーディオ界における新らたる実力だ。

フェイズリニア 700B
 そっけないくらいの実用的ハイパワー・アンプ。350/350ワットで700ドル台、日本でも40万円台と類のないハイCPのスーパー・アンプだ。今度バネルレイアウトを一新して、マランツ500そっくりのレベルメーターを配し、左右の把手のゴージャスな巨大さは、700ワットという巨人ぶりを外観にのぞかせたグッドデザイン。音はそっけないはどさっぱり、すっきりしているが、底ぬけのハイパワーぶりは低音の迫力にいやおうなしに感じられる。

マランツ Model 500
 今日マランツ社には創始者のMr.ソウル・マランツはいない。しかし、マランツのソウルは今もなおマランツの全製品に息吹いている。それをはっきりしたサウンドだけで聴くものに説得してくれるのが、モデル500だ。250/250ワットのアンプながら、それはもっと底知れぬ力を感じさせるし、モデル15直系の、音楽的な中声域の充実された華麗なサウンドはちょっと例がない。しかも現代のアンプにふさわしい豪華さを具え、この上なく超広帯域だ。

ダイナコ Stereo400
 なにしろ安い。アチラで600ドル、日本でも30万円で200/200ワットのジャンボぶり。すでに普及価格の高級アンプで定評あるダイナコの製品だけに前評判も高く、それらの期待に充分応じてくれる性能とサウンド。高音域のおとなしい感じもいわゆるウォーム・トーン(暖かい音質)というダイナコ伝統のマニア好み。うるさいヒトほど惚れ込んでしまう、うまい音だ。ボリュームを上げて行くと、分厚い低音の確かさにも一度惚れ直す。

ダイヤトーン DA-P100 + DA-A100
 ダイヤトーンのプリアンプの端正なたたずまいは、なにかマランツをうんと品よくしたといいたくなるような優雅さをただよわす。管球アンプを思わすパワー・アンプのゴツイ形態は、いかにもパワー・アンプだ。それはひとつの目的、エネルギー増幅の実体をそのまま形に表わした、とでもいえようか。このコンビネーションのサウンドはまた実に品のよいサウンドで、いかなるスピーカーをもこの上なく朗々と鳴らす。まさに、アンプはスピーカーを鳴らすためにある、ということをもう一度教えてくれるアンプといえそうだ。
 100/100ワットと今や、やや小ぶりながらひとまわり上のパワーのアンプとくらべても聴き劣りしないのは充実した中声域にあるのか、あるいはその構成の無理なく単純化された回路にあるのか。あまりワイド・レンジを意識させないのに、深々と豊かな低域、すき透るように冴えた高域、なぜか手放せなくなるサウンドだ。

パイオニア Exclusive C3 + Exclusive M3
 ズラリ並んだ国産アンプ中、スッキリとした仕上げ、にじみ出てくる豪華な高級感、加えて優雅な品の良さ。やはりパイオニアの看板製品にふさわしく、もっとも優れたデザインといえる。
 このデザインは、サウンドにもはっきりと出て、品の良さと底知れぬ迫力とを同時に味わせてくれろ。やや繊細な音のひとつぷひとつぶながら全体にはゆったりとしたサウンドはこうした超高級アンプならではで、さらに加えて「パイオニア」らしいともいえようか。このM3にさらにAクラス動作50W+50WのアンプM4が加えられるという。A級アンプというところに期待と限りない魅力を感じさせる。待ち遠しい。

アムクロン DC-300A
 ギラギラした独特のヘアライン仕上げのパネルは、いかにも米国製高級趣味といえようか。でもこのアンプの実力は、その製品名の示す通り、ラボラトリ・ユースにあり、直流から数100万ヘルツという超広帯域ぶり。ガッチリと引き締って、この上なく冷徹なサウンドが、なまじっかの妥協を許さない性能を示していも。米国でのハイパワー化のトリガーともなったこのDC300、今日でもずばぬけた実力で、マニアならマニアほど欲しくなりそう。

マッキントッシュ MC2300
 ここでとやかくいうまい。SJ試聴室のスタンダード・アンプというより今やあらゆるアンプがハイパワー・アンプとしての最終目標とするのがこの2300なのだから。サウンドの管球的なのもつきつめれば、出力トランスにあり、このアンプのあらゆる特長となっているサウンドに対する賛否もここに集約されるが、誰もが説得させられてしまう性能とサウンドに正面切ってケチをつけるやつはいまい。

サンスイ AU-9500
 黒くてデッカクて、やけに重いアンプ。山水の9500は75・75ワットっていうけれど、どうしてどうして、100/100ワットのアンプと互角以上にその力強い馬力をいや応なしに確かめさせてくれる。,
 ECMのすざましいばかりのドラムは、このアンプの13万なんぼというのが信じられないはどに力いっぱい響いてくれる。SJオーディオ編集者のすべてが認めるこのジャズ向き実力はハイパワ一時代、まだまだ当分ゆるぎそうもない。

テクニクス SU-10000 + SE-10000
 以前、SJ試聴室での試聴では保護回路の敏感すぎから、実力を知るに到らなかった10000番シリーズ、今宵はガッチリとたんのうさせてもらった。さすが......である。
 なんとも高品質な迫力と、分解能の良さに改めて10000番の良さを確めた。一式95万と高価なのだからあたりまえといえなくもないが、金にあかして揃えられるマニアなら、やはり手元にぜひおきたくなるだろう。物足りないくらいの自然さは最終的なレベルといえるだろう。

スタックス
 A級150/150ワットというそのメリットよりもスタックスの製品というところにこのアンプの意義も意味も、また魅力も、すべてがある。世界でもっとも早くからスタテック・イクイプメントコンデンサー・カートリッジ、コンデンサー・・スピーカーをファンに提供し続けてきたスタックス。数々の幻の名器を生んできたメーカーの志向がアンプの特長の根底にずっしりとある。サウンドは、それこそまさにコンデンサースピーカーのそれだ。加えてローエンドの底なしの力強さに惹き込まれて時間の経つのも忘れさせるワンダフルな機器だ。(発売時期末定)

ラックス CL350 + M+150
 309のパワーアンプを独立させたのがM150。75/75ワットというパワーもそれを物語る。アンプの高級ファンをガッチリと把握している企画と音作りのうまさはM150でもっとも端的にはっきりと現われている。しぶいが落ちついた品のよいその外観と音。加えてソフトながらいかにも広帯域をと力強さにも感じさせるサウンド。物足りないといわれるかも知れないが、しかし飽きのこない親しさもまた大きな魅力なのだ。

ESS/BOSE
 日本にはこれから入ってくるだろうと予想される話題のスーパー・アンプ2種。ハイル・ドライバーで一躍注目されてるESSのモデル500。みるからどでかくゴツい力強さを外にまでみなぎらせて、早く聴きたいアンプだ。
 もうひとつはペンダゴン型ボックスのスピーカーで有名なボーズのアンプだ。これは品のよいスマートな個性で粧おいをされた豪華大型。インテグラル・システム100/100ワットで200ドルと安いのが早くも出てきおったぞ。

アキュフェーズ C-200 + P-300
 国内製品では実力ナンバーワンを目されているのが、ケンソニックのP300だ。このところ目白押しの国内ハイパワー・アンプ。なんてったって世界市場を意識して企画され、価格を設定されたというところにこのケンソニックのすべての製品の特長と意義がある。つまりケンソニックのアンプは実力を世界に問うた姿勢で作られているわけで、逆にいえば世界のマニアに誇れる高性能を内に秘めてもってことになる。
 事実、このアンプをマッキンと較べ、マランツと比べても、一長一短、ブラインドで聴かせれば、どちらに軍配が上がるか率は半々。透明度の高さ、中域の緻密さにおいて特にすぐれ、高域の明るさと、低域の豊かさにおいて聴く者を魅了してしまう。
 プリアンプC200のこの上なくナチュラルな音に、P300の良さはますます高められて国産ハイパワー・アンプの大いなる誇りを持つものにじっくりと味わしてくれる。
 かくいうこのオレも、P300、C200のスイッチを入れない日はなく、メイン・システム、ハークネスはP300のスピーカー端子にガッチリと固定され、ひんばんに変っていたアンプが変わる気配もない。

オルトフォン SL15E MKII

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1974年4月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 CD4用のカートリッジとして、海外製品がこのところ続々と名乗りを上げている。いち早く製品を市場に送ったピッカリングを始め、ADCや西独のエラックなどもその製品の出るのは時間の問題だが、その中でも日本のオーディオ・ファンの間で、もっとも注目されたのはオルトフォンのCD4用のカートリッジSL15Qである。デンマークのオルトフォンというよりも、世界市場でもっとも高品質を誇るカートリッジ・メーカーとしてのオルトフォンであり、かつては業務用のディスク・カッターから再生機器の専門メーカーとして日本においてすら伝鋭的に語られている名門中の名門、それがオルトフォンであり、この方面では今日も全ヨーロッパに業務用機器を提供しつづける確固たる業績を誇る専門メーカーである。オルトフォンのCD4用カートリッジが、かくも注目され話題となったのは、それが他に例のないMC(ムービング・マグネット)型の故である。4チャンネルの前後分離のための前後差信号成分は、CD4方式において他の信号とまったく独立した形で、35、000ヘルツという超音波信号にFM変調の形で乗せられているのだ。デイスクの中からこの35、000ヘルツという気の遠くなるような超振動をとり出すために、カートリッジの針先は極端にミニチュアライズされなければならず、ダイヤ・チップをつけたカンチレバーは、従来よりひとまわりも、ふたまわりも小さくされなければならない。それをカンチレバー基部にコイルが着装されているMC型において実現することは、とうてい考えもよらぬことであったのに、さすがオルトフォン。SPU以来のコイル型カートリッジのクラフツマン・シップを発揮してSL15Qという形で製品化してしまったわけだ。CD4の開発者である日本ビクターの4チャンネル担当技術者さえ賞賛した傑作を、4チャンネル時代の擡頭期たる今日、いち早く完成してしまったわけである。他のあらゆるCD4用カートリッジがすべてMM型であるのに、オルトフォンはMC型として。
 以上は前置き。お話の本題はこれからだ。オールド・ファンにとって、スピーカーが変り、アンプが同じ真空管ながらよりハイパワ一に替えられたとしても、絶対に変わりないのがオルトフォンSPUカートリッジだ。ステレオ初期において決定的といえる勝利を収めたオルトフォンが、米国市場においてシュアに質的な意味でなく、たとえ量的な意味にしろ優位を奪われたのは、軽針圧動作という時代の要求によるものだったのだろう。歴史に残る傑作SPUを軽針圧したのがS15であり、さらにSL15に改良されて完璧といい得る軽針圧MC型は完成された。SPUのそれよりも半分の軽い針圧のもとではるかに広い再生帯域がSL15によって成し遂げられたのであった。しかし、SL15Q、4チャンネル・カートリッジの技術がSL15の姿をこのままですませて置くことにメーカーとしての責任をオルトフォンは意識したのに違いあるまい。
 SL15MKIIがSL15Qの発表された昨11月から半年目にデビューしたのである。SL15Qの出現を予想した時よりもごく当然のように、それはSL15Qのクオリティーをそのままステレオ用に移植したとでもいいたくなる成果をはっきりと示しながらのデビューだ。シュアv l15typeIIIになって中声域にMC型に匹敵する格段の充実をみせながらも、実は本質的にあのコアーとコイルの構造では量産上CD4への足がかりすら掴めないとも受けとれるのに対し、オルトフォンはCD4用を完成したあとで、その技術によりMKIIをものにしたのはさすが世界に冠たる名門ぶりといえてもよかろう。音色上SL15MKIIはSL15よりもさらに超ワイドレンジを感じさせる。果しなく高域のハイエンドが延び切ったという感じだ。しかも中域のピアニシモの繊細感は、多くの国産MM型カートリッジのそれに似て、より緻密で粒立ちの良いサウンドエレメントがビッシリと詰め込まれたといえようか。低域での豊かなひろがりに加えて、引き締った冴えたタッチは、従来のSPUの重厚な響きは薄れたとしても、それに優るローエンドの拡大を如実に示している。

岩崎千明


スイングジャーナル 4月号(1974年3月発行)

「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より


 ケンソニックP-300が我家で鳴り出してから、すでに数週間になるが、音といい、外観といい、その風格たるやそこに居並ぶ数多いアンプと隔然たる違いをみせて、いままでにないサウンド・スペースを創り出している。

 まず、従来の国産品のイメージを打破って、国際級のオーディオ製品を作り出したケンソニックに、なにはともあれ拍手を送ろう。この数年、国産オーディオ製品の質的向上が著しく進んで、誰しもが世界市場における日本製品の品質の高さは認めるこの頃である。しかし(ここに又しても「しかし」が入る)日本製品の高品質は、その価格にくらべてという前置きが必らず入るのである。「この価格ランクの製品においては」最高なのである。このクラスという前置なしの、最高級では決してなかった。高いレベルのオーディオ・マニアを十分満足するようなそういう真の意味での高級オーディオ製品は高品質の高級品の多い日本製にも残念ながらない。いや、いままではなかった。

 口惜しくも、また残念であったこの日本製オーディオ製品の現状を過去形にしてしまったのが、とりもなおさず今回のケンソニックの新製品なのである。

 ケンソニックの新製品、パワー・アンプP-300およびプリ・アンプC-200は、それ自体きわめて優れた製品であることは間違いないがその示す優秀さというよりも、この製品が市場に送り出されたことの真の意味、その価値は、日本製品の立場を世界のトップ・ランクに引き上げというただこのひとつの点にあるといえる。価格23万円なりのパワー・アンプP-300、C-200は16万5千円と、ともに従来の国産品の水準から見るとかなり高い。かなり高いこの価格以上のものが、かつてないわけではなく、テクニクスのプリ・アンプ、パワー・アンプの超高級製品10000番シリーズの45万円、50万円合せて95万円という製品がケンソニックに先立つこと1年余りで存在しているが、あまり私も含めマニアでも身近に接する機会が少くないような気もする。しかし、ケンソニックの場合は、企画段階から海外市場をも強く意識したプラニングがされ、諸仕様が作られた上、海外への前宣伝までもすでに手を打たれたと聞く。いまこうして実際に製品を手にしても、前宣伝のごとく商品として、価値の高さを、確かさをケンソニック新製品にみるのである。

 ケンソニックの優秀性は、まずなによりも単なる日本市場ということではなしに、こうした世界市場を意識した上での、つまり世界の超高級製品を相手とした上での高級アンプとして企画した製品という点にあるといえよう。これはとりもなおさず、世界の一流品と肩を並べることを意識した製品であり、こういう姿勢から作られたオーディオ製品は少なくとも日本ではケンソニック以前にはない。

 その自負とプライドとがまず製品のデザインにはっきりとうかがえる。なんのてらいもハッタリもないきわめてオーソドックなパネルながら、そのパネル表面とツマミの仕上の中に豪華さというにいわれる格調高さとが浸みでている。ハッタリがないだけに、それはとり立てる特長もないが、かたわらにおいて接すると、その良さ、持つことの満足感がしみじみと感じられる、という類いの風格だ。

 ハイ・パワーの高級アンプに求めるもの、それに対して期待するものはいかなるものにも増してこうした「満足感」であろう。今までの国産品では一流の海外高級品と肩を並べるだけのこの種の満足感、それをそばに置くだけで、それを自分のものにするだけでかもし出されるこうした満足感を備えている製品はかつてなかったのである。もう1つオーディオにおいて最も技術進歩が著しい分野がアンプであろう。トランジスタの開発、それに伴う回路技術が追いかけっこで日進月歩。新しい素子の開発によってきのうの新製品が数ヶ月を経ずして魅力が薄らぎ始める。それがアンプの持つ1つの宿命である。高級品においては、それだけ挑戦に耐える絶対的なものが備わっていなければならない。

「満足感」という言葉はケンソニックの大きな特長としてはじめから標榜している言葉だが、それはサウンドにおいてもっとも感じられるであろう。ゆったりと落ちついて力をみせずに、しかし、ここぞというとき底知れぬパワーを発揮する、という感じの響き方だ。なんの不安もなく、まったく信頼しきってスイッチを入れボリュームを上げられるアンプ、これがケンソニックのP-300でありC-200である。

 P-300の音は、ひと口でいうと静かなときは静かだが、いったん音が出はじめると、これはもう底知れずに力強いという感じだ。底知れぬといういい方のアンプはサンスイのAU-9500で味わって以来のものだが、ケンソニックの場合は、もっと素直なおとなしさを感じさせ、力のこもった芯の強さを知らされる。ちょっと聴くと明るい輝きと受けとれるが、実は、これは立上りのすばらしく良いことに起因するハイ・パワー独特のサウンドで、音色はどちらかというとマッキントッシュのトランジスタ・アンプと共通の、ずっしりと落ちついたサウンドだ。

 このパワー・アンプに配するプリ・アンプC-200は、これまたソフトなくらいに暖かみを感じさせるサウンドが最近のトランジスタ・アンプになれた耳には真空管プリ・アンプと共通の良さと知らされる。つまりそれはケンソニックのセパレート・アンプと同傾向の迫力と輝きとを兼ねそなえているので、これを生かすことが上手な使い方といえよう。となると、真にハイクオリティーの高級オーディオ製品ならなんでもよいといえよう。

 そこでまず第1に考えられるのは、過去の管球アンプ用として作られた最高のスピーカー・システムとカートリッジであろう。現実に我家でP-300を接いだことによってこの数年来のメイン・システムJBLハークネスは輝きと迫力とを格段と増したことを報告しよう。つまりP-300が我家の目下主力アンプとなって存在するわけだ。しかしまた優れたアンプが常にそうであるように、バスレフ構造のベロナに組入れたD130+075もいままでにない信じられないほどに朗々と鳴響いたし、なんと12年前に作られたAR2もいままでにないくらいに素直な張りをもった鳴り方でいまさらながらびっくりした。こうしたことを身をもって試したあとでスピーカーとして数多いなかから、ただ1つを選び出そうというのは所詮無理とは思いつつ厳しく選んだのが次のシステムだ。

 JBLはプロ・シリーズのバックロード・ホーンの4530、ユニットはいわずと知れたD130(又は130Aウーファーでもよいが)ネットワークはプロ用3115といわず一般用のルX5を用いてホーンは375ユニット・プラス509/500のホーン・プラス・デュフユーザー。つまり2ウェイのシステムだ。もしバックロード・ホーンがなければ自作でもよい。いや、平面バッフルだって、それなりのバックロード・ホーンにない低域から中域にかけて立上りの良さが抜群だ。

 もし、高域ののびにせっかくの市費-200+P-300の特長がうすれるというのなら1μFのコンデンサーを通してのみで075をつないだ3ウェイもよかろう。カートリッジにはオルトフォンSPU-GT。もしMM型がよいのならM15Eスーパーこそ絶対だ。

サンスイ SP-707J, SP-505J

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岩崎千明


スイングジャーナル 4月号(1974年3月発行)

AUDIO IN ACTION SP-505J、707Jのシステム・アップ」より


 SJ試聴室に、山水JBLのシステムSP707J、505Jそれに新しいJBLのシステムL88プラスがずらりと勢揃いする。その様はまさにJBL艦隊ともいうべきか、戦艦707J、巡洋艦505J、駆逐艦L88プラスと威風堂々と他の居並ぶシステムを圧倒し去る。この山水JBLのシステムが高音ユニットを加えることによって、どれほどグレード・アップするかを確かめ試聴する目的で一堂に会したわけだ。
 これらのシステムSP505J、707Jは、発売された状態では、それぞれ30cmと38cmのフルレンジが箱に収まった形だが、トゥイーターを加えることにより数段高いグレードに向上し、名実ともに世界最高のシステムと成長し得る。
 こうした大いなる可能性こそ、これらのシステムの大きな魅力と源となっているのだが、そのためこのシステムの愛用者や購入予定を願う多くのファンから、いかなる道が最もよいのかという質問がSJ編集部へ発売以来あとをたたずに来ている。そこで今月は、これを読者に代って試みよう。
 まず、SP505J、価格88、000円。JBL・D123、30cmフルレンジが中型のフロアータイプのチューンド・ダクト型エンクロージュアに収められている。
 D123はJBLサウンドの発足以来ごく初期から戦列にあり帯域の広いことでは定評のあるフルレンジだ。低い低音限界周波数とアルミ・ダイアフラムから輻射される鮮麗な高音域はJBL特有の高能率のもとに迫力にみちたスムースな再生を可能にする。
 SP505Jは、高音用ユニットとしてLE20、075、175DLHの3つの中から選べるが、組み合わせるべきネットワークはそれぞれちがってLE20はLX2、075はN2400、175DLHはLX10と組み合わせることが考えられる。
 価格は、それぞれの組合せで大きく違いLE20(20、100円)+LX2(14、000円)、075(38、200円)+N2400(15、600円)、175DLH(82、000円)+LX10(10、200)となるからどれを選ぶかフトコロと相談をして可能性の近いものをねらうことになるが音の方もかなりの違いを見せ、結論からいうと刺激的な音をさけるのなら、LE20、ハードなジャズ・サウンドをねらうなら無理をしてでもLE175DLHをねらうべきだろう。つまり、本誌の読者なら少々がまんをしてでも将来175DLHを加えることを、ぜひ薦める。
●LE20とLX2を組み合わせる場合
 JBLの山雨度は実に不思議で使うものの好みの音を「自由」に出してくれる。LE20との組合せの場合、ソフトな品のよい迫力が、その特徴だ。繊細感に満ちたクリアーな再生ぶりはまさに万能なシステムというべきで、クラシックのチェンバロのタッチからコーラスのウォームなハーモニーまでニュアンス豊かに再現する。しかも、ジャズの力強いソロにも際立った鮮麗さでみごとにこなしてくれる。ロリンズ・オン・インパルスのシンバルが少々薄い感じとなるが、タッチの鮮かさはやはりJBL以外の何ものでもない。全体にバランスよく、完成された2ウェイ・システムが得られる。
●075とN2400を組み合わせる場合
 これは075の高能率な高音が、ちょっとD123のサウンドと遊離してしまう感じがあって、鮮烈なタッチのシンバルだけが浮いてしまう。D123のバスレフレックスの組合せから得られる深々とした低音がLE20の場合みごとに引き立て合うのに、075では、その特徴が075のよさを相殺してしまう感じなのだ。ピアノの高音のタッチがキラキラしすぎるし、ミッキー・ロッカーのシンバルワークだけが、ややきつくなる感じ。075はかなりレベルをおさえて用いるべきだが、そうなるとLE20とかわりばえがしなくなる。
●175DLHとLX10を組み合わせる場合
 なにしろ、ロリンズのテナーの音までが力強くなって、輝き方が違ってくる感じだ。本田のタッチのすさまじさも175DLHとの組み合わせで俄然、迫力を加えてくるし、何とベースのタッチの立ち上りまで変ってしまう。
 まあ結論として、やっぱり175DLHを加えないとジャズ・サウンドの迫力は完全ではないのだ。拡がりと余韻の豊かさが加わるのは、175DLHの指向性のよいためか。
 175DLHの場合、高音用とはいってもクロスオーバーが1200hz付近だから、中音まで変ってくるのは、あたり前だが、それにしてもテナーやピアノなど中音はおろかベースからタムタムなど低音のアタックまでがすっかり変わり、D123が見ちがえるように迫力を加えてくる。やはり、ハードなジャズ・ファンだった175DLHをねらうべきだろう。

 SP707JはおなじみD130の38cmフルレンジでJBL精神むき出しの強力型ユニットを、これまたJBLならではの大型バック・ロードホーンのエンクロージュアに収めたシステム。元来、C40ハークネスとしてJBLオリジナル製品があったが、72年度よりC40はカタログから姿を消してしまったので、SP707Jの存在意義は大きい。C40のシステムとしてはD130単体と、D130+075の2ウェイ、D130A+175DLHの2ウェイの3通りが選べたが、日本のファンの間では後者がよく知られている。価格176、000円は決して安くはないがJBLオリジナル製品から比べれば安いものだ。
 組み合わせるべき高音用ユニットとしては、075、LE175DLH、LE85ユニット・プラスHL91ホーン・レンズの3通りがある。さらに、それぞれユニットをダブらせて用い、クロスオーバーをかえて3ウェイにすることをメーカーでは言っているが、まずその必要はないと結論してもよかろう。つまり、JBLはよほどの音響エネルギーを必要とする場合でない限り、ホールや劇場などを除いては3ウェイの必要性はないと言ってよかろう。
 さて、それぞれのユニットの試聴結果は、投ずる費用に応じてハッキリとグレードの高さを知らされ、どれもがD130単体の場合に比べて、格段と向上する。一段とではなく、格段とだ、つまり、SP707Jはこのままの状態ではなく、上記の3種のユニットのどれかを選んだ2ウェイとして初めて完全なシステムとなると言いきってもよい。それも世界最高級のシステムに。フトコロと相談して、075との2ウェイにするのもよい。ゆとりがあれば是非ともLE85+HL91をねらうべきであるのは当然だ。
 075とN7000が38、200円+16、700円。LE175DLH+N1200は82、000円+26、800円。LE85+HL91とLえっ苦5は83、000円+23、200円+41、500と価格は段階的に大きくステップ・アップするが、その差が音の上にもハッキリと表われてくるのだから言うべきところがない。
●075とN7000を組み合わせた場合
 これが意外にいい。SP505Jでは何かどぎつくさえ感じられた075が、707Jとの組合せでは俄然生き返ったように鮮明な再生をかってくれる。さわやかささえ感じる。のびっきった高音はアウト・バックのエルビンのシンバルのさえたタッチを、軽やかに鳴らす。707Jの音の深さが一段と加わり、力強い低音がアタックでとぎすまされてくる。特に音場感の音の拡がりが部屋の大きさをふたまわりも拡げてしまうのには驚かされる。
 JBLの怖じナル003システムはD130と同じ075をN2400と組み合わせされているが、この組合せを試みたところ、中域の厚さが確かに増し、ロリンズのテナーは豪快さを加えるが、シンバルの澄んだ感じがやや失われるのを知った。どちらをとるかは聴き手の好みによるが、オリジナルの003システムの場合のN2400ではなく、7000HzのクロスオーバーのN7000を指定したメーカー側の配慮も、また充分うなずけるものであるのは興味深い事実だ。
 175DLHこそ、D130とならぶJBLの最高傑作であると20年前から信じ続けているのを、ここでもやはり裏付けされたようだ。175DLHはD130の中音から低音まですっかりと生き返らせ、現代的なパーカッシブなジャズ・サウンドにみなぎらせ、鮮烈華麗にして品位の高い迫力をもってあらゆる楽器を再生してくれる。
 アウト・バックのエアート・モレイラのたたき出す複雑なパーカッションは大きなスケールで試聴室の空気をふるわせる。特に、バスター・ウイリアムスのベースのプレゼンスある響きは、大型の楽器を目前にほうふつさせ、エルビンのドラムスとの織りなすサウンドをみごとに展開してくれる。
●LE85+HL91をLX5と組み合わせた場合
 175DLHの場合に比べて音の密度が格段と濃くなり、音のひとつひとつの粒立ちがくっきりと増してくるのはさすが。175DLHに比べ、価格のうえで50%アップになるが、その差は歴然とサウンドに出る。
 もし、ゆとりさえあればLE85といいたいが、175DLHとして世界最高のシステムとなり得るのだからLE85は音のぜいたく三昧というところだ。なお、LE85の場合はホーンとデュフューザーが大きく、バックロード・ホーン型エンクロージュアのうえにのせるかたちになる。この場合、ぜひ注意したいのはHL91のホーン・レンズの後方には、、必ず厚板で音が後に逃げるのをふさがなければ完全とはいえない。つまり、ホーンを板につけ、板の前にデュフューザーをつけるべきで、板の大きさはデュフューザーよりひとまわり大きいのが望ましい。メーカーでこの板を作ってくれることを望むところだ。
 最後に、JBLオリジナル・システムL88プラスについて、ちょっとふれておこう。好評のL88のグリルを変えた新型であるL88プラスは、M12と呼ばれるキット34、300円を買いたして、3ウェイに改造出来得る。このキットの内容はLE5相当の12cm中音用ユニットと、ネットワークのコンビである。接続はコネクターひとつだけで、88プラスの箱のアダプターをはずしてつけることにより誰にでも出来るが、このエクスパンダー・キットを加えると、音域はまさに拡張された感じで中音のスムースさを加え、バランスが格段と向上して豊麗さをプラスしてくれる。
 JBLというブランドのシステムに対する、ジャズ・ファンの期待と信頼は、他のオーディオ・システムに例がないほどである。それを製品の上で、はっきりとこたえたのが、D130であり、D123である。D130のみでアンプの高音を強めた用い方により、D130のシステムは、ジャズ・サウンドのもつ醍醐味を満喫するのにいささかも不満を感じさせない。ましてD123のシステムにおいておやである。アンプの高音を3ステップ上げた状態で、我が家においてただ1本のD130と見破った者は、メーカーのエンジニアを含めまだひとりたりもいない。
 それを、さらにオリジナルJBLのサウンドに向上させるのが、この2ウェイ化だ。ひとつ気になるとすれば、D130をベースとしたオリジナル・システムは003と名付けた075を加えたものだけである。
 あくまで、オリジナルJBLに忠実ならんとする者にとってはD130うウーファーに使うことを将来ためらう向きもあるかも知れない。あえてというなら、130Aを買い換えなければなるまいが、ジャズの楽器の再現を主力にするならば、D130によりリアルなプレゼンスを認めることは容易であろう。

ガラード Zero100

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岩崎千明


ステレオサウンド 30号(1974年3月発行)

「現在のマジックボックス オートチェンジャー」より


 トラッキング・エラー補正メカニズムという、理想に大きく近づいた形を、ほぼ完全な状態で取り入れたアームを着装している点で、ガラード・ZERO100は、単に画期的な、というありきたりの冠詞では言いつくせない、品質評価され得ない、真の高品質といい得る高級オートチェンジャーである。
 それは、かつてLP出現期からステレオ初期に至る10数年間、全世界を席巻した唯一無二のオートマチック・チェンジャーであったガラードの「誇りとのれん」に示したとっておきともいえるオートチェンジャー・メカニズムの具現化商品であり、それだけにこのZERO100に賭けた老舗・ガラードの意気ごみは熱くたくましい。
 しかし、である、残念なことに、これだけの理想形ともいえるほどのアームをそなえているにもかかわらず商品としてZERO100は成功をおさめたとはいい難いのではなかろうか。
 れそはなぜか。ZERO100を手許に引き寄せ、そのスタート・スイッチを入れてみれば、誰しも大よその判断を得よう。ガラード・ZERO100のオートマチックメカニズムは、まったく従来のガラードのオートチェンジャーのメカニズムを踏襲したものであることを知るだろう。
 今や、西ドイツからデュアルという強敵をむかえる現事態を、真向からむかい合うのではなく、その存在を外しかわして、自らの技術の伝統を少しも改めようとしない頑強な英国特有のブルドック魂ともいえる精神がそこにみられる。
 オートチェンジャーは、その内側をのぞけば判るように、こまかいパーツが精密に入り組んで、容易なことで変更、改良がきかいないのは、周知の事実であり、その為に商品サイクルがマニュアルプレーヤーよりも長くなる原因ともなっている訳だ。ガラードの場合、その自信あるメカニズムに自らの信頼をおき過ぎたのではないだろうか。10数年間、大きなメカニズムの変更なしに着実にチェンジャーを世に送り出した中で、ZERO100は作られた。外観はモダンにメカニズムの枠として生れ変っているが、内側は、かつてのベストセラーだった75、85さらに95とほとんど同じチェンジャーメカニズムをもっている。
 アームの上下、および、水平運動、レコードの落下などの動作がすばやく、不安を感じさせないだろうか。
 オートチェンジャーというパートに、マニアが求めるのは、やはりオートチェンジャーとしての不安を除いてくれるような完璧な動作なのではないだろうか。
 ZERO100に採用されたトーンアームは、冒頭に述べたようにトラッキングエラー、アンチスケーティングなどに対する補正が、理想的につきつめられている。スタティックバランス型の角型パイプアームに平行したリンクアームにより、ヘッドシェルのオフセット角を変化させ、トラッキングエラーを常時ゼロに保つその設計意図は充分うなずけるし、マグネットを使ったアンチスケーティング機構も効果は大きい。
 しかし、それはいくつかの理由によって過小評価をまぬがれない。
 例えばアーム基部のアクリル枠だ。アクリルという安っぽさは、あるいはデザインによって克服され得るかもしれないが、ZERO100のせっかくのトラッキングエラー・レスというその大きな特長をアクリルという材料によって一見した印象で安っぽくしてしまう。少なくとも日本のマニアは、そうみるに違いない。
 最後にZERO100の最大の難点はレコードのサポートメカニズムとレコード落下時のレコードの踊りである。
 わずかな、とタカをくくってはならぬ。ガラードのチェンジャーが西ドイツ製チェンジャーに押され、BSRにさえ追い越されようとする最大の原因は、このたったひとつの点にかかっているのだから。

デュアル 1229

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岩崎千明


ステレオサウンド 30号(1974年3月発行)

「現在のマジックボックス オートチェンジャー」より


 デュアルのチェンジャーという呼び方をしなくても、独乙製というだけでそれが代名詞となるほどに、世界の高級ファンの間で親しまれてきた。12年前から急激にその地位を強めて、それまでの王座を誇っていたガラードの座にとって変って、全世界の市場で少なくとも独立したプレーヤーとして最強のシェアを培ってきたのは、その特有のメカニズムにある。それはガラードと違ってセンタースピンドルのみでレコードを受け、一枚ずつ落として演奏する、というメカニズムにある。今でこそ、それは当り前であるが、それまでのチェンジャーにはつきものであった、レコードを重ねのせた上におさえレバーをのせるという方式から脱却した、ただ一つの操作を最初になし遂げ、デュアルの地位を今日のものに築き上げる直接的なきっかけになっている。
 この6年来、デュアルは軽針圧カートリッジのためのチェンジャーメカニズムに力をそそぎ今や他社のごく少数のチェンジャーを除いて、デュアルのいかなる製品にも匹敵するものはない。
 昨年は同じ西ドイツの同業メーカーPE(パプチューム・エブナー)社を傘下に包含して、ますます量産体制を確立し全世界を市場にこの分野で限り知れぬ強みを発揮し、日本に続いてDDモーターを自社生産するなど、その実力はまさに世界にさきがけるチェンジャーメーカーといえよう。
 1229はデュアルの最高級機種であるが、ストロボがついた最新型1229の前身は1219であり、さらに30cm・ターンテーブルになる前の27cmの1019にさかのぼると、デュアルというより西独製プレーヤーとしての典型的パターンがここにある。
 視覚的デザイン的に、ターンテーブルギリギリのモーターボードに、やや太いストレートアームというその形は、ステレオディスクプレーヤーの原典たるノイマンのカッター付属を思わせるモニター用のディスクプレーヤーを思わせる。
 この一見武骨ながら比類ない確実さをもって、そっ気ないくらいに着実な的確さで操作をしてくれる点が、デュアルの人気は華々しくはないが、根強く着々と全世界に普及させた理由だ。
 こうしたデュアルのもうひとつの偉大な特長は、ハウリングに強いという点だ。
 かつてある雑誌の読者から、「スピーカーの上にプレーヤーを載せるとは何事ぞ」と掲載された写真を指摘されたことがあるが、私のDKには数年来、バックロードホーンのシステムの上にデュアルの古い1019が載せてあり、それは日本のファンの常識を超えて、フルボリュウムでもハウリングの気配すらない。
 アームが細く長くスマートになった1229では、1019ほどではないが、3点のスプリングによってサポートされた全体は、重量とスプリングの遮断共振点を選んであるためか、ハウリングには驚くほど強く、その点でデュアルのかくたる技術力をしらされる。
 ターンテーブルの重量はなんと3・1kgと、マニュアルプレーヤーとして世界一というトーレンスのそれに匹敵する。手もとのスウェーデンで発行されたカタログによれば(王立研究所の測定結果として)デュアルの701DDターンテーブルつきとほぼ同じSN、ワウフラッターの優秀な数字が掲げられ、それはトーレンス125に優るとはいえ、劣ることはない。
 演奏スタートから音溝に針が入るまでは、33回転のとき12秒と遅いほうではなく、それも無駄のない動きがなせるわざだろう。
 よくいわれるように、センタースピンドルからレコードが一枚ずつ落ちる場合に、レコード穴がひろがるとか、落ちるショックでお富み俗が傷むとかの説は、デュアルを使ったことがないためにでてくる言葉で、外径7mmストレートのスピンドルにそって落ちる速さはほどよく抑えられながら、きわめてスムーズでストッときまる感じだ。

BSR 810X

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岩崎千明


ステレオサウンド 30号(1974年3月発行)

「現在のマジックボックス オートチェンジャー」より


 BSRはオートチェンジャーの専門メーカーとして、ガラードと並び、世界でもっとも長いキャリアを誇りしかも現在では象徴的存在たるガラードを抜き去って、世界一の生産台数を謳い、5万の人員を擁して大規模な形態を整え、英国バーミンガムきっての企業である。

 その業績内容の優れた発展ぶりは、全英企業中にあってここ数年三位とは下ることなく、昨年は米国の音響メーカーとして意欲的なADCをも傘下に収めるという躍進は、凋落著しい英国企業中にあってひときわ目立ち輝く存在といえよう。

 かつての強力なライバルたるガラードを抜き去った底力はといえば、それはやはりオートチェンジャーのメカニズムに対する意欲的な技術と開発力そのものにあったのである。

 その優れた技術と、ハイファイ製品特有の企画性のうまさを端的に示しているのが、製品中の最高機種たる810Xである。

 全体はメカニックな端正な直線と、黒の艶消しの品の良い豪華さを強調した仕上げでまとめられ、まったくいや味なく高級感を品良くかもし出して、しかも堂々たる風格すらにじむ完成度の高いデザインだ。

 全体にかなり大きい感じを受けるものは、その長くスラリと横たわるアームのせいだろう。ヘアラインの磨き仕上げのストレートな角パイプアームは、実効長21・5cmと見た目だけでなく、全長も29・9cmとチェンジャーとしては長いものだ。

 さらにこのアームを視覚的に長く仕立てているのは、カウンター・バランス・ウェイトのスライド範囲が前後に長いためで、これは国産のサテン、オルトフォンSPUなどの自重の重いカートリッジから最近の軽いものまでを、自由に組み合わせることを意味する。

 グレースのアームでおなじみのメカで、ジャイロ機構とも呼ばれる上下左右ボールベアリングのジンバル支持マウントは、針圧調整をも内蔵して、マイクロギアーによって0gから4gまでを直読式で加圧でき、目盛は大きくみやすく実用上の狂いが少ない。このメカニズムがチェンジャー中でも、特に優れたBSRのアームのもっとも大きな特長ともいえるだろう。

 アンチ・スケーティング機構も内蔵され、より大きな力を要する楕円針の場合と丸針の場合との二重目盛になっていて、アーム基部にツマミを配置している。

 この810Xで特筆できるのは、なんといってもオートプレイの動作自体が高級プレーヤーたるにふさわしく、正確かつ優雅といえるほどにゆったりとスマートな物腰にある。

 長いアームの動作は、ひとつから次に移るくぎりの停止がピタリと決まっていて、少しも機械とかロボット的な感じを残していないことだろう。これは日本舞踏とかバレーの動作を思わすほどだ。

 それは全体の動作がゆっくりしている点にあるが、特にアームの上下の動きは独特のオイルによるもので、息をつめて操作しているという感じだ。

 だから、演奏のスタートから音溝に針先のすべり込むまでの時間はやや長いほうで、実測で18秒かかる。この悠々と、しかし正確きまわりない動作こそ、かつてのガラードに変り、BSRの高級機種たる810Xがコンシューマーレポートの最上位のひとつにランクされる理由となったのであろう。

 申し遅れたが、810Xは710と共に英国製では数少ないセンタースピンドルのみでレコード6枚を受け止める構造で、落下システムは直線的な細い外径6・6mmというスピンドル内に収められている。

 ただ演奏が終ってレコードを外そうとする時、スピンドルを外して行なうというのは、スピンドルを再び通すよりは素早くできるかもしれないが、そうではないのがわかっていながら、何かこわれないかというイメージをもたれるのではないか気になる。

岩崎千明


ステレオサウンド 30号(1974年3月発行)

「現在のマジックボックス オートチェンジャー」より


 本来なら、ここでは現在市販されている「オートチェンジャー」がいかに優れているかということをページの許す限り述べ尽くし、それらの最新型に関しては、なまじっかのマニュアル(手動式)つまり普通のプレーヤーよりも正確で細かな動作をしてくれる、ということについて高級マニアにも納得させるべきなのであろうが、あえてそういうことは避ける。
 なぜか。それは、フルオートプレーヤーと呼称を変えたりしているチェンジャーをいかに述べても、動作の細部をことこまかに納納得できるまで説明したところで、いくらでもそれらを非難し、受け入れることを頑強に拒否するきっかけや言いがかりを見つけ出すにきまっている。だからといって、現在のオーソドックスなディスクプレーヤーがどのくらいまで完全であるか、ガラードの最新型チェンジャー、「ゼロ100」のそれにすら理屈の上では大方の市販品が劣るのである。
 レコードが傷むのではないか、という器具がオートチェンジャーを拒む最大の理由の最たるものだが、それではオートチェンジャーでなければレコードは決して傷つくことなく完全を保証されるか、というとこれまた必ずしもそうとは限らない。その点のみについていえば、レコード扱う者自体のテクニックとそれ以上に、「レコードそのものをいかに意識しているか」という点にこそかかってくる。レコード即ミュージシャンの心、と断じて、決しておろそかに扱えないという音楽ファンのあり方は、大いに賞賛されるべきだし、また、その域にまで達すればチェンジャーの価値をオーディオファンとしての立場を含めて、必ずや的確に判断してくれるに相違あるまい。つまりチェンジャーの説明は少しもいらない。
 けれど、世の中さまざま、あらゆるものがすべてヴァラエティに富む現代、再生音楽そのものも広範囲に拡大しつつあるし、またその聴き方もきわめて多様化している。しかし、だからといって聴き方それ自体がいい加減になるというわけでは決してない。それどころか、自らの生活環境が、ますます広げられるにしたがい、寸時も惜しんで音楽にどっぷりとつかっていたいと乞い願うのが、音楽をいささかたりとも傷つけ、軽んじ、強いては内的に遠ざけるということに果してなるであろうか。日常の寸暇も惜しんであらゆる生活タイムに音楽をはべらすという生活。これが果して、夜のしじまのありるのを見定め、あらゆる日常の煩雑を遮断して心身を改め清めて音楽に接するというのに劣り、音楽を冒瀆しその接し方そのものが軽率であるというであろうか、断じて否である。
 かくて、音楽を片時たりとも手離すのは忍びないという願う熱烈な、いや浸りきりたいという、おそらくもっとも正常なる音楽ファンにとって、レコードをまったくを手をわずらわすことなく的確に正確に演奏してくれるというプレーヤーは、再生音楽ファンに必要な、再生テクニックの点から理想的といってもよく、オーディオメカニズムに対する初心者もしくは未熟者にとって、あるいは日常を仕事雑事で忙殺される社会の多くの人びとにとって、それはまさに「福音」以外の何ものでもないと言いきってはばからない。
 つまり、再生音楽を純粋に「音楽」そのものの形で、日常生活の中に融けこませるべき現代のマジックボックス、それがオートチェンジャーなのである。
 マジックは、それを目の当りに接し、その不思議な魔的な力を体験したものでなければ納得もしないし、認めることもできまい。しかし、それが虚妄のものでなくて確かな存在として、ひとたびその先例を受けるや、魔力はその者の観念を根底からくつがえしてしまうに違いない。
 魔法の例えは話を無形のものに変えて、本筋を不確かなものとしてしまうと思われよう。
 だが、現実にオートチェンジャーの新型製品は、間違いなく同価格のオーソドックスなプレーヤーより、多くの若いファンにとって、より確実に正確にレコードの演奏をしてくれるマジックボックスとして存在するのだ。
 若いファン、という言葉がもし気になるならば、「新しい技術や商品を認めるのに否定的でない」と言い直してもよい。
 なぜなら、オートチェンジャーはレコードプレーヤーの革命だからであるし、それを革命として認めるか否か、この点こそがオートチェンジャーのすべてを認めることといえるからだ。

 私自身の話をするのは説得力の点で大いにマイナスなのだが、オートチェンジャーを以前から長く愛用している一ファンという形で話そう。
 米国市場において、デュアルが大成功を収めるきっかけを築いたのが1019だが、その製品を米国将校の家庭でスコットのアンプやAR2aと共にみかけて、手を尽くして入手したのは9年ほど前だ。「朝起きぬけに、寝ぼけまなこでLPを楽しめる」というその年老いた空軍准将は、まさにチェンジャーの扱いやすさをズバリ表現していた。次の一枚との合い間の12秒間は、違った演奏者の音楽を続けて聴くときに貴重だ、ともいった。眼鏡なしではレーベルを読むのに苦労するという初老の彼にとって、LPを傷めることなしに1・2gの針圧でADCポイント4を音溝に乗せるのにはデュアル1019以外ないのであった。
 当時すでにハイCPのARXというベストセラーがあり、もっと高級なプレーヤーがエンパイア、トーレンスなどであるのだが、オーディオキャリアも長い彼にとっては、今やデュアルに優るものはないのだろう。
 オートチェンジャーはこわれやすいのではないだろうか、という点を気にする方がいるが、こわれやすいというよりも扱い方、操作の上での誤りが理由で、その動作がずれ、たとえばスタート点が正しい点より、わずかに内側になってしまったとか、終り溝まで達しないうちにアームが離れるとかいう原因となることがある。
 そうした狂いのもとはといえば、捜査のミス、というより最初のスタートの数秒が待ちきれずに、つい、アームに指をかけて無理な力を加えてしまうことにある。カートリッジ針先が音溝に入るまでのチェンジャーは、オーソドックス・プレーヤーと違ってスイッチを入れるやいなや表面は動かないでいても、そのターンテーブルの下では、アームの動作のためのメカが説密動作を開始している。音溝に針先の降りる十数秒間、この間はじっと待つことが必要であるし、それがチェンジャーを正しく使うために必要な知識であり、かつテクニックのすべてだ。
 この演奏開始までの十数秒間、これは、またチェンジャーのみに与えられたレコードファンの黄金の寸暇という説は、冒頭にも述べたが、本誌別冊の475頁に、黒田氏も触れて、それをこの上なく讃えておられるではないか。
 9年目の私の1019は実は三日前にアイドラーの軸中心に初めてオイルをたらした。アームの帰り動作中、しばしばキリキリと音を出し始めたからだが、注油後それすらなくなって、ターンテーブルがいくらかスタートが遅くなったような気がするだけだ。実際に使っては変らないのだが。
 さて、オートチェンジャーがいかに便利か、それによって初めて日常生活の中でハイファイ再生が、ごく容易になって、つまり特定の部屋で、特定の時間のみレコード音楽に接することから脱却する術を知って、私はさらに8年前からトーレンス224といういささか大げさな、しかしプロ仕様にも準ずるチェンジャーを、メインのシステムに加えた。さらにこれは、5年前から3年半、私のささやかなジャズファンの溜り場で、オーディオテクニックに通じるべき一人の省力化に役立って働いた。
 扱い者の不始末からロタート点での入力ONのクリックがひどくなって、オーバーホールするまでの3年間、生半可な人手よりはるかに正確に働き、その正確さはマニュアル動作の期間のほうが、レコードを傷めること、数十倍だったことからもわかる。トーレンス224う使ってそのあまりの良さに、手を尽しもう一台を予備用として入手したのだが、それが今はJBLシステムで、ひとりレコードを楽しむときの良きパッセンジャーとなっているのは、いうまでもない。ただ残念なことに224は、今トーレンスでも作っていない。
 オーディオ歴の長く、そしてしたたかなキャリアを持つベテランほど、加えて音楽を自らの時間すべてから片時も離さない音楽ファンであれば、彼のシステムのいずれかに必ずやオートチェンジャーが存在する。レコードの価値を、「量産されたるミュージシャンの魂」と理解するファンであれば、チェンジャーの存在は限りない可能性を日常生活の中に拓いてくれることを知ろう。
 最後にひとことだけ加えるならば、いかなるチェンジャーなりとも、現存するすべては「アームが音溝にすべり込んで、最後の音溝に乗るまではアームにわずかの操作力も加わることがない。その時のアームの動作状態は、マニュアルプレーヤーのアームの状態と、なんら変るものではない」ということを、チェンジャーヒステリー達ははっきり知るべきであろう。

岩崎千明


スイングジャーナル 2月号(1974年1月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 今年の国内オーディオ市場の大きな特長として、海外パーツの著しい進出と、定着とが挙げられるが、とりわけブックシェルフ型システムシステムを中心としたスピーカーの積極的な売り込みとその成功が大きく目立つ。
 そうした目につきやすいスピーカーのかげにかくれて、しかし、スピーカー以上に確かな地位をきずき固めつつあるのは海外カートリッジだ。
 従来も、高級品に関しては、国産品に対して十分な満足を満たされぬことが理由で、海外製品の中から選ばれせるというのがマニアの常識ですらあった。いわく、シュアーV15、いわくオルトフォンM15スーパー、いわくエンパイア、いわくADC等々であり、それをそなえているかどうか、そのいずれをそなえるか、さらにいくつそなえるかが、オーディオ・マニアのレベルの高さ、あるいはその志向する目標の高さ、さらにはそのマニア自体の質から誇りの崇高さないしは権威の水準までを示すものとして本人にも、まわりからもひとつの必需品とまでなっている。
 もし、当事者のうちにそんなばかなことが、といって拒否する筋金があったとしても、まわりはそうはさせず、海外製カートリッジの、それも高級品のいくつかが揃っていることで、そのマニアの質やレベルを判断してしまうのは、いつわりない状況だろう。かくいう私自身にしても、出入りする周囲のそうしたまなざしを迷惑ながらも、かなり気にせざるを得なくなって心ならず気に入らぬ海外製カートリッジの5〜6個を常用オルトフォンM15スーパーの他に揃えてはいる。苦々しく、いまわしいことだがそれが実情だ。
 所で、73年の海外カートリッジの進出は、こうした高級品群から、やや下まわった製品、価格水準にして、国内メーカーの作る高級品のランクの製品が数多く出まわっている点に注目しなければならぬ点がある。シュアー91シリーズに続き、ADCのQシリーズと名づけられた新シリーズ、さらにオルトフォンのMFシリーズのあとFFシリーズ、ピカリングとその同系のスタントン。ごく最近ではかつてのベスト・クォリティーの栄光の巻き返しをはかるグラドの普及価格品。
 そうした多くの海外製品は、たしかにトレースの安定差とサウンドの確かさ、豊かさとでもいえるうるおいにおいて、特性上はるかに優れているはずの国産品を脚もとにも寄せつけず、国産高級カートリッジの細身の音を、感覚的に上まわると誰にも思わせてしまう。
 この傾向は今年後半に入って登場した海外製品が市場に出るごとに確かめられた形となった。72年までは、国産カートリッジの優秀性が海外高級品のそれに肉迫し、あるいは追いつき追い越さんとしたところ、まったをかけられこの海外製新型の登場が73年に爆発的ともいえる形で始まったのである。
 シュアーV15タイプIIIにおけるMM型の電気特性の格段の飛躍は、そのほんの一例にすぎず、海外カートリッジ攻勢の氷山の一角にすぎない。その製品群の層は厚く、強固で堅い。国内メーカーはこの大きく立ちはだかる壁を乗り越えるべく努力を始めた。それは、乗り越えなければならないオーディオ業界の国際化の、大きな波なのだから。
 そうした時期に国内メーカーの中堅、FRが新型を発表したのである。
 FRはグレースとともに国内の高品質カートリッジの専門メーカーとして高い誇りと、キャリアと実績を持つ地味ながら確かな企業だ。小さいとはいえその技術力と開発力は、カートリッジ業界にあって特に注目すべき能力を内在し、メーカー発足以来いつの時代にあっても最高級カートリッジの製品を市場に送り、多くの高級マニアの支持を受けてきた。
 今回発表したFR6は、このメーカー独特の技術であるトロイダルコアーによるMM型の高品質カートリッジである。従来同種製品に新型を加えることのなかったこのメーカーには珍らしく、FR5から発展したMM型の高級製品で飛躍的なワイド・レンジと、高域セパレーションを獲得した高性能ぶりが注目できる。
 サウンドの面においても、国産カートリッジに共通な中域の繊細さに力強い芯を豊かさで包んだともいえる再生ぶりは、従来の国産品らしからぬ良さが国産品にもそなわってきたという点に注目すると共に拍手を惜しまぬものがある。
 高級カートリッジは決して海外製品の独壇場ではないことを知った貴重なワンステップであり、その基礎たる製品がFR6であろう。

ビクター JA-S5

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1973年10月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ステレオ・コンポーネントに対するビクターの熱の入れ方は昨年頃より猛烈というべきほどの気迫と闘志をもってなされ、すでに市場に空前の人気と好評をもって迎えられたブックシェルフ型SX3を始め、数多くのプレイヤーがある。さらに「標準機なみ」と識者間でささやかれた高級アンプS9と、この一年間に矢つぎ早やに驚くほどの成果をあげて「さすが音のビクター」という声もこのところ当り前にさえなってきた。
 そしてS9のあとをうけて、兄貴分S7なみの高性能と認められたS5が市場に出てはや、3カ月を経た。
 S5は5万円台のいうなればもっとも需要層の厚い分野の商品だ。
 逆にいえば、この5万円台はよく売れるということになり、このクラスの市販商品は目白押しに数も多くあらゆるアンプのメーカーの狙う層なのだ。
 ライバル商品のもっとも群がるこのクラスにビクターのアンプ・セクションはふたたび全力投球で、S5を送ったのである。
「出力の大きさ自体はともかく、あらゆる性能に関してS9と同等。やや以前に出たこの上のS7をも、しのぐ」というのがビクターの開発部O氏のことばだ。
 このことばの裏にはS5の性能に対する自信とともにS7を捨ててもS5を売りつくして商品としても成功させなければという決意がはっきりと受け取られるのである。
 このことばが決してハッタリやコマーシャル・メッセージでないことはアンプを持っただけでも納得できよう。5万円台としてはもっとも重い重量はそのまま電源の強力なことを意味しトランジスタ・アンプにおいての電源の重要度はそれは技術を徹底的に極めたもののみが確め得るところであった。事実S5は近頃がらばかり大きくなるアンプの中にあって割に小さい方であるにもかかわらず、重くそのケースを開けるとあふれんばかりに部品がぎっしりつまっている。
 しかもそれは手際の悪いためではなくこの上なく合理化され、十分に検討し尽されている上に、なおやっと収まったというほどに中味が濃い。
 例えば、ビクターのアンプの特長でもある例のSEAコントロールと呼ばれる5または7ポジションのトーン・コントロールもS5では5ポジションながら丸型つまみでスペースは小さくともれっきとした本格派のものがついている。プリアンプはガッチリしたシールド・ケースによってプリント基板ごとすっぽりと遮へいされているが、驚ろいたことに入力切換スイッチがこのケースの内側のプリント基板に取付けられていて、長い延長シャフトによって前面パネルに出ているのだ。こうすることにより入力切換スイッチにいたる配線は、あらゆる入力端子からもわずか数センチですむことになりアンプ高性能のために重要な高域特性が格段と優れることになるわけだ。こうした高価な処置は、長いリード配線をやらなくてすむための工程の節約によってまかなったと開発者はいうが、これこそビクターの経験ある大規模な生産体制でなくては出来得ないだろう。
 しかし、この処置は結果としてその利益につながるが決して生産性を向上させるための処置ではない。いままでなおざりにせざるを得なかったプリアンプにおける高域位相特性の改善を目的としたものである点にS5の良さのよってきたるところを知るのである。
 イコライザー回路は厳選に厳選を重ねたつぶよりの素子を組合せ実にフラットな特性を得ている。さらに最大許容入力はピーク時で驚くなかれ700mV。このクラスのアンプのなかではまさに秀一。ガッと飛び出して来るジャズ・サウンドには、広大なダイナミック・レンジが必要だがこのアンプは・その要求を心にくいまでに満足させてくれる。そして4チャンネルはビクターのお家芸。このアンプには将来4チャンネルにシステム・アップした時マスター・ボリュームとして使えるよう超連動の4連ボリュームが装備されている。
 S5は間違いなく今後もベストセラーを続けるであろう。それは日本のオーディオ界の良識と高品質とを代表する製品として。

トーレンス TD125MKIIAB

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1973年10月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 我家にはなぜかトーレンスのプレーヤーが4台ある。
 そしてもう1台はもっともふるくからわがリスニング・ルームの主役として活躍していたTD124IIだ。
 アイドラとベルトの2重ドライヴによる4kgのターンテーブルにアルミの2重ターンテーブル機構で、この軽量アルミのテーブルを浮かすことによりクイック・ストップのできるいかにもプロ用らしいメカニズムが気に入っていつも手元から手離せない。駆動源であるモーターの力をベルトによりアイードラーに伝え、それを介して重量級ターンテーブルを駆動するというメカニズムは類の少ないというよりトーレンスにあって始められた優れた機構であり、これにより、モーターの振動をおさえ高いSN比を得ることができ、高いトルクを保ったままでその高性能を得られる点、いかにも業務用機器を作って来たトーレンスならではのターンテーブルであり、TD124が全世界の高級マニアに常に愛用されトーレンス・ブランドを高級ファンの間に確固として固定した業績は誰も否定できまい。
 シンクロナス・モーターを用い電源周波数によって回転数の決る特有の性能を利用して、これに電燈線電源を接続するのではなく、新たに正確な電圧の周波数を保つ電源電圧をつくり出し、これによってシンクロナス・モーターを廻すという新しい理論にのっとったターンテーブル。それがTD125であった。
 この125のただひとつのウィーク・ポイントがモーターの回転数を変えるための、この電源の周波数切換えと速度徴調整の複雑さ等にある。これをより改良する目的でマークIIが誕生したとも言えよう。
 ターンテーブルはめったに買い換えがきかない点、誰しも同じで、一応気に入ったこの124はこの9年間主役を演じ、125が出たときも、それに置きかえることを拒んできた。
 新型125がいくらプロ用とはいえその構造が本来家庭用であるべき150と同じメカニズム、つまり2重ターンテーブルのベルト・ドライヴ機構である点とクイック・ストップのないことに不満が残ったからであった。しかし、今春のヨーロッパ紀行の経験はこうした単純な考え方を変えてしまった。
 ヨーロッパを歩きその各国のメーカーをまわり、スタジオを見、そしてディーラーのサーヴィス・セクションをのぞいた折、そのひとつとしてトーレンスTD125以外を使用しているところはないことを確かめたからである。
 もっとも信頼性の高い確実な高性能動作を常に保ってくれるというのがこのTD125に対する評価のすべてであった。
 しかし技術の進歩はターンテーブルのSNをさらに要求した。2年来、国産DDモーターがわが国のオーディオ・マニアの聞で急速にアピールしたのもその端的な表われであるし、DDモーターは国産にとどまらずデュアルからもオート・プレイヤーに着装されて商品化され日本にも入ってきた。
 世界最高と自他共に認めてきたトーレンスのターンテーブルはDD流行の波を受けてマークIIとしてマイナー・チェンジされ新たなるディーラー山水電気の手によって日本の市場に姿を呪わした。マークIlとなって電子制御回路を改め従来の複雑な回転速度調整を取り除くことにより一層の安定度と信頼性を獲得して確かさを一歩進め得たといえよう。
 ターンテーブルとアームを乗せた7kgのダイキャスト・ベースはモーターと電子制御回路を取りつけたメイン・シャーシーつまりプレイヤー・ケースからスプリングにより浮かせてモーターや外部からの振動・ショックに対して、またハウリングに強いトーレンスの特長をさらに高めより完全なものにし得たのである。
 こうした超重量級ターンテーブルにみられる立上りのおそい欠点もクラッチ機構により補い、このクラスではプロ仕様に指定されるに足るレベルにまで達し加えてベルトの僅かな伸びなども吸収してしまう工夫もなされている。さらに新たに設計されたアームは軽量針圧ながらダイナミック・バランス(スプリング加圧式)という理想的なものでオルトフォンなきあとの現在世界最高の軽針圧アームと断定してよかろう。

サンスイ SP-707J, SP-505J

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岩崎千明


スイングジャーナル別冊「モダン・ジャズ読本 '74」(1973年10月発行)

「SP707J/SP505J SYSTEM-UP教室」より


 ジェイムス・B・ランシングが1947年米国でハイファイ・スピーカーの専門メーカーとして独立し、いわゆるJBLジェイムス・B・ランシング・サウンド会社としてスタートした時、その主力製品としてデビューしたのが38センチ・フルレンジスピーカーの最高傑作といわれるD130です。

 さらに、D130を基に低音専用(ウーファー)としたのが130Aで、これと組合せるべく作った高音専用ユニットがLE175DLHです。

 つまり、D130こそJBLのスピーカーの基本となった、いうなればオリジナル中のオリジナル製品なのです。

 こうして20有余年経った今日でも、なおこのD130のけたはずれの優れた性能は多くのスピーカーの中でひときわ光に輝いて、ますます高い評価を得ています。今日のように電子技術が音楽演奏にまで参加することが定着してきて、その範囲が純音楽からジャズ、ポピュラーの広い領域にまたがるほどになりました。マイクや電子信号の組合せで創られる波形が音に変換されるとき、必ず、といってよいほどこのJBLのスピーカー、とくにD130が指定されます。つまり、他の楽器に互して演奏する時のスピーカーとしてこのD130を中心としたJBLスピーカーに優るものはないのです。

 それというのは、JBLのあらゆるスピーカーが、音楽を創り出す楽器のサウンドを、よく知り抜いて作られているからにほかなりません。JBLのクラフトマンシップは、長い年月の音響技術の積み重ねから生み出され、「音」を追究するために決して妥協を許さないのです。それは、非能率といわれるかもしれませんし、ぜいたく過ぎるのも確かです。しかし、本当に優れた「音」で音楽を再現するために、さらに優れた品質を得るためには、良いと確信したことを頑固に守り続ける現れでしよう。

 5.4kgのマグネット回路、アルミリボンによる10.2cm径のボイスコイルなど、その端的なあらわれがD130だといえます。

 あらゆるスピーカーユニットがそうですが、このD130もその優秀な真価を発揮するには十分に検討された箱、エンクロージャーが必要です。とくに重低音を、それも歯切れよく鳴らそうというとホーン・ロードのものが最高です。(72年まではJBLに、こうした38cmスピーカーのためのバックロード・ホーン型の箱が、非常に高価でしたが用意されていました。)

 そこで、JBL日本総代理店である山水がJBLに代ってバックロード・ホーンの箱を作り、D130を組込んでSP707Jが出来上ったのです。

 つまり、SP707JはD130の優れた力強い低音を、より以上の迫力で歯切れよく再生するための理想のシステムと断言できるのです。

 あらゆる音楽の、豊かな低域の厚さに加えて、中域音のこの上なく充実した再生ぶりが魅力です。

 刺激のない高音域はおとなしく、打楽器などの生々しい迫力を求めるときはアンプで高音を補うのがコツです。

 SP505JはJBLのスピーカー・ユニットとして、日本では有名なLE8T 20センチフルレンジ型の兄貴分であり先輩として存在するD123 30センチフルレンジを用いたシステムです。

 D123は30センチ型ですが、38センチ級に劣らぬ豊かな低音と、20センチ級にも優る高音の輝きがなによりも魅力です。つまり、D130よりもひとまわり小さいが、それにも負けないゆったりした低音、さらにD130以上に伸びた高域の優れたバランスで、単一スピーカーとして完成度の一段と高い製品なのです。

 D123のこうした優れた広帯域再生ぶりを十分生かして、家庭用高級スピーカー・システムとしてバスレフレックス型の箱に収め、完成したのがSP505Jです。

 ブックシェルフ型よりも大きいが、比較的小さなフロア型のこの箱はD123の最も優れた低音を十分に鳴らすように厳密に設計されて作られており、この大きさを信じられないぐらいにスケールの大きな低域を再生します。

 このSP505Jも、SP707Jも箱は北欧製樺桜材合板による手作りで、手を抜かない精密工作など、あらゆる意味で完全なエンクロージャーといえます。

 JBLスピーカー・ユニットの中で、フルレンジ用として最も優秀な性能と限りない音楽性とを併せ備えた名作がこのLE8T 20センチ・フルレンジ型です。

 この名作スピーカーを、理想的なブックシェルフ型の箱に収めたものがSP-LE8Tです。かって、米国においてJBLのオリジナルとして、ランサー33(現在廃止)という製品がありましたが、そのサランネットを組格子に変えた豪華型こそSP-LE8Tです。

 シングルスピーカーのためステレオの定位は他に類のないほど明確です。高級家庭用として、また小型モニター用として、これ以上手軽で優れたシステムはありません。


個性あるSP707J・505Jへのグレードアップ

より完璧なHi-Fiの世界を創るチャート例


075の追加

 D130と075の組合せはJBLの030システムとして指定されており、オリジナル2ウェイが出来上ります。ただオリジナルではN2400ネットワークにより、2500Hzをクロスオーバーとしますが、実際に試聴してみると、N7000による7000Hzクロスの方がバランスもよく、楽器の生々しいサウンドが得られます。シンバルの響きは、鮮明さを増すとともに、高域の指向性が抜群で、定位と音像の大きさも明確になります。さらに、高域の改善はそのまま中域から低域までも音の深みを加える好結果を生みます。


LE175DLHの追加

 D130と並びJBLの最高傑作であるこのLE175DLHの優秀性を組合せた2ウェイは、D130の中音から低音までをすっかり生き返らせて、現代的なパーカッシブ・サウンドをみなぎらせます。鮮烈、華麗にして、しかも品位の高い迫力をもって、あらゆる楽器のサウンドを再現します。

 オーケストラの楽器もガラスをちりばめたように、楽器のひとつひとつをくっきりと浮び出させるのです。空気のかすかなふるえから床の鳴りひびきまで、音楽の現場をそのまま再現する理想のシステムといえます。


LE85+HL91

 LE175DLHにくらべ、さらに音の緻密さが増し、音の粒のひとつひとつがよりくっきりと明確さを加えて浮んでくるようです。LE175DLHにくらべて価格の上で20%も上るのですがそれでも差は、音の上でも歴然です。

 もし、ゆとりさえあれば、ぜひこのLE85を狙うことを推めたいのです。LE175DLHでももはや理想に達するので、LE85となるとぜいたくの部類です。しかし、それでもなおこの高級な組合せのよさはオーディオの限りない可能性を知らされ、さらにそれを拡げたくなります。魅力の塊りです。


HL91

 D130単体のSP707Jはこのままではなく、最終的にぜひ以上のような高音ユニット3種のうちのどれかひとつを加えた2ウェイとして使うことを推めたいのです。2ウェイにグレードアップしてSP707Jの魅力の真価がわかる、といってよいでしよう。

 D130だけにくらべ、そのサウンドは一段と向上いたします。いや、一段とではなく、格段と、です。

 2ウェイになることによってSP707Jはまぎれもなく「世界最高のシステム」として完成するのです。


LE20を加える場合

 D123のみにくらべ俄然繊細感が加わり、クリアーな再生ぶりは2ウェイへの向上をはっきりと知らせてくれます。ソフトな品の良い迫力は、クラシックのチェンバロのタッチから弦のハーモニーまで、ニュアンス豊かに再現

します

 しかも、JBLサウンドの結集で、使う者の好みの音を自由に出して、ジャズの力強いソロも際立つ新鮮さで、みごとに再生します。全体によくバランスがとれ、改善された超高域の指向性特は音像の自然感をより生々しく伝えるのに大きくプラスしているのを知らされます。


075を加える場合

 LE20にくらべてはるかに高能率の075はネットワークのレベル調整を十分にしぼっておきませんと、高音だけ遊離して響き過ぎてしまいます。D123の深々とした低音にバランスするには高音は控え目に鳴らすべきです。

 ピアノとかシンバルなどの楽器のサウンドを真近かに聴くような再生は得意でも、弦のニュアンスに富んだ気品の高い響きは少々鳴りすぎるようです。


LE175DLHを加える

 LE175DLHも075も同じホーン型だが、指向性のより優れたLE175DLHの方がはるかに好ましい結果が得られ中音域の全てがくっきりと引き締って冴えた迫力を加えます。楽器のハーモニーの豊かさも一段と加わり、中音の厚さを増し、しかもさわやかに響きます。

 075のときよりもシンバルのプレゼンスはぐんと良くなって、余韻の響きまで、生々しさをプラスします。

 クロスオーバーが1500Hzだから、中音まで変るのは当り前だが、中音の立ち上りの良さとともにぐんと密度が充実して見違えるほどです。


D123をLE14Aに

 高音用を加えて2ウェイにしたあとさらに高級化を狙って、D123フルレンジを低音専用に換えるというのが、このシステムです。LE14Aはひとまわり大きく、低音の豊かな迫力は一段と増し、小型ながら数倍のパワーフルなシステムをて完成します。


プロ用の厳しい性能を居間に響かせる

新しい音響芸術の再生をめざすマニアへ


プロフェッショナル・シリーズについて

 いよいよJBLのプロ用シリーズが一般に山水から発売されます。プロ用は本来の業務用としてギャランティされる性能が厳しく定められており、コンシューマー用製品と相当製品を選んで使えば、超高級品として、とくに優れたシステムになります。

 例えばD130と2135、130Aと2220A、075と2405、LE175DLHと2410ユニット+2305ホーンで、それぞれ互換性があります。

 しかし、一般用としてではなくプロ用シリーズのみにあるユニットもありそれを用いることは、まさにプロ用製品の特長と優秀性を最大に発揮することになります。


高音用ラジアル・ホーン2345と2350

 ラジアル・ホーンは音響レンズや拡散器を使うことなしに、指向性の優れた高音輻射が得られるように設計され、ずばぬけた高能率を狙ったJBL最新の高音用です。

 ホーンとプレッシュア・ユニットとを組合せて高音用ユニットとして用います。プレッシュア・ユニットにはLE175相当の2410、LE85相当の2420があり、さらに加えて一般用として有名な中音ユニット375に相当するプロ用として2440が存在します。

 2410または2420をユニットとしラジアル・ホーン2345を組合せた高音用は、従来のいかなるものよりも強力な迫力が得られ、とくに大きい音響エネルギーを狙う場合、例えばジャズやロックなどを力いっぱい再現しようという時に、その優れた能力は驚異的ですらあります。

 ラジアル・ホーン2350は、2390と同様に500Hz以上の音域に使用すべきホーンで、音響レンズつきの2390に匹敵する優れた指向特性と、より以上の高能率を誇ります。

 本来、中音用ですが、2327、2328アダプターを付加すれば、高音用ホーンとして使えます。

 この場合は、LE85相当の2420と組合せてカットオフ500Hz以上に使えるのです。拡がりの良い、優れた中音域を充実したパワーフルな響きで再現でき、従来のJBLサウンドにも優る再生を2ウェイで実現できるのです。

 2350または2390+2327(2328)アダプター+2420ユニットというこの組合せの高音用はJBLプロ用システムの中に、小ホール用として実際に存在しています。

 この場合の低音用はSP707Jと全く同じ構造のバックロード・ホーンに130Aウーファー相当の2220Aが使用されネットワークはN500相当の3152です。


2205ウーファーに換える場合

 プロ用シリーズ特有のパワーフルな低音用ユニットが、この2205で、一般用にLE15Aの低音から中音域を改良したこのウーファーは150W入力と強力型です。

 プロ用ユニットを中高音用として用いた場合の低音専用ユニットとして2205は注目すべきです。SP707JのユニットD130を2205に換えたいという欲望はオーディオマニアなら誰しも持つのも無理ありません。

 2205によって低音はより深々とした豊かさを増し、中域の素直さは格別です。とくに気品のある再生は、現代JBLサウンドの結晶たる面目を十分に果しましよう


2220と2215ウーファー

 SP707JのD130はフルレンジですが、プロ用シリーズの38センチウーファーとして2220があり、130A相当です。100Wの入力に耐える強力型で、130Aに換えるのなら、ぜひこの2220を見逃すわけにはいきません。またLE15Aのプロ用として2215があります。

 以上2205と2220ウーファーは、末尾のAは8Ω、Bは16Ω、Cは32Ωのインピーやンスを表します。2215Aは8Ω、Bは16Ωです。

 プロ用の高音ユニットは全て16Ωなのでもし正確を期すのでしたら、ウーファーも16Ωを指定し、プロ用の16Ω用ネットワークを使うべきです。

オンキョー Integra A-722

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岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1973年9月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 発表時点より、少し時間を経た新製品、オンキョーA722が、今月のSJ選定品として選ばれた。
 少々遅れての登場には理由がないわけではない。
 つまり、今月のSJ試聴室には2台のA722がある。1台は、当初のもので、もう1台はその後運び込まれた新製品だ。この2台の中身は、実はほんの少しだが違いがある。
 結論をいうならば、この2台は外観も、規格も、仕様の一切は変らないのだが、その音に少しの差がある。それも、低音から中低音にかけての音のふくらみという点で、ほんの少々だが新しい方が豊かなのだ。
 それはSJ試聴室のマッキントッシュMC2300の響きにも似た豊かさといえよう。このわずかながらの音の向上が、今月の選定品として登場するきっかけにもなったわけだ。
 というのは、A722は新製品として誕生した時に、選定品たり得るべきかどうかで検討を加えられたが、ピアノの左手の響きなどに不満を残すとして、紙一重の差で選考にもれ保留されたのであった。
 その後、この音質上の問題点があるステレオ雑誌において痛烈な形で指摘されるところとなった。
 オンキョーのアンプは、従来それと同価格の他社製品にくらべ、きめのこまかい設計技術とそれによって得られる質の高い再生に、コスト・パーフォーマンスが優れているというのが定評であった。それは市版アンプの中でも一段と好ましいサウンドを前提としていわれてきたのであるが、そのサウンドというのは、トランジスター・アンプらしからぬナチエラルな響きに対する評価をいう。
 初期のA722においては、オンキョーアンプの特長で
もあるクリアーな響きが、紙一重に強くでたためか、硬質といわざるを得ない冷やかさにつながる響きとなってしまっていたようだ。その点が特に低い音量レベルで再生したときに、より以上強くでてしまうのは確かだ。出力60ワット、60ワットという高出力アンプであるA722をメーカーの想定する平均使用レベルよりもおさえた再生状態では、上記のことがいえる。
 A722を当初より手元において使っていた私自身、A722のロー・カットをオンのうえ、トーンコントロールは低音を400Hzクロスオーバーで4dBステップの上昇の位置で使っていたことを申し添えておこう。
 ところで、こうした再生サウンドのあり方は、メーカー・サイドでもいち早く気付くところとなり、ここではっきりとした形の改良が加えられた。
 今月、加わったA722はこうしたメーカーの手による新型なのである。
 当初から、大出力アンプA722に対して、8万円を割る価格に高いコスト・パーフォーマンスを認めていた私も、A722の中低域の引締った響きに、豊かさをより欲しいと感じていたが、その期待を実現してくれた。
 トーンコントロールの低域上昇によっても、中低域の豊かさはとうてい解決できるものではない。トーンコントロールで有効なのは、低音においてであり、決して中低域ではないからだ。
 もっとも、響きが豊かになったからといって決して中低域が上昇しているわけではない、アンプ回路設計のひとつの定石である負帰還回路のテクニックに音色上の考慮を加えたということである。性能、仕様とも技術的な表示内容が変らないのはそのためだ。
 なにか長々と改良点にこだわり、多くを費してしまったようだが、それは下記の点を除いてA722がいかなる捉え方をしても、きわめて優れたアンプになりえたからだ。
 もうひとつの不満点というのは、そのデザインにある。8万円近いA722が5万円台のA755と、一見したところ大差ない印象しかユーザーに与えないという点だ。確かにコストパーフォーマンスという点で、並いる高級アンプの市販品群の中にあって、ひときわ高いオンキョーのアンプには違いないが、そうした良さを備えているだけにより以上高級アンプとしてのプラス・アルファのフィーリングが欲しいと思うのは私だけではあるまい。
 だがこれを求めるには、やはり価格的な上昇を余儀なくされる結果に終るかも知れない。
 商品としての限界とマニアの希望とは、いつも両立しないのだが、この点アンプ作りのうまいオンキョーの「高級アンプA722」の悩みでもあろう。
 この悩みを内含しつつも、A722はリー・ワイリーの20年ぶりの新アルバム「バックホーム・アゲイン」をひときわ生々しく、ゆったりと、きめこまやかにSJ試聴室に展開してくれたのであった。

オンキョー Integra A-755

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岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1973年6月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 オンキョーがステレオに本腰を入れてからまだ6、7年しかたっていない。今日のリーダー的ステレオ専門メーカーが、昭和20年代から20年以上のキャリアを誇っている中にあっては、まあ後発メーカーといわれても何の不思議もない。しかし、スピーカーというステレオ・パーツの中でも、もっとも音楽的な感覚を要求される部分を手がけるキャリアは20年を軽く越しているのだから、後発というのはメーカーからすれば不当なりともいえる。
 しかし、ここ数年の驚くべき努力とそのみごとな成果によるこうしたメーカーの体制の変化は、後から割り込んだこのメーカーの実力を、業界のあらゆる分野に驚きとおののきをともなって知らしめたことは、まごうことなき事実なのだ。
 あらゆるアンプ・メーカーが、オンキョーの放つ新製品、特にそのアンプに注目し、市場に出るや否や、その製品の解析がライバル・メーカーの開発技術者のひとつの課題として、もはや定着してしまっている風潮がみられるほどだ。
 オンキョーのアンプ設計技術は、他社の新型を模することからはじまる中級アンプの大方の傾向とはまったく違って、常に新たなる設計理論の裏付けを持ち、国産メーカーには珍しくはっきりした形をとって輝いているのである。それも、このクラスの製品によくみられる生産性に比重を置いた技術ではなく、性能向上をはっきりめざした技術としてである。
「回路供給電圧を高くしただけじゃないか」といったライバル・メーカーの技術者がいるが、それがもたらす向上、ダイナミック・レンジの大幅なアップ、パワー段ドライバーの歪率の絶滅化、加えてそれらに反する安定性への大きな配慮など......こうした技術は次の時期の各社の製品にわがもの顔ですばやくとり入れられてしまうのだが、それに気付いたのはオンキョーのアンプが皮切りになっているはずだ。
 701からはじまり、725、733と経て、現在オンキョーの主力製品は755と、そのジュニア版766だ。近くそのトップ・レベルとして722が出るが、この3種のアンプ技術こそ、国産アンプの格段の飛躍の引き金となっていることは、広くは知られていない。
 だが、オンキョーという他の専門メーカーよりはいくらか弱いイメージのこのブランドの製品が、この半年間、日本のあらゆる市場で売れまくっているのは業界内部の常識である。これはユーザーは決しておろかではなく、知らないわけではないということを物語る痛快な事実だ。
 オンキョーのアンプは、中を開けるまでもなく、パネル・デザインも派手さがなく、おとなしくて控え目である。性能表示も決して誇大にしてはいない。しかし、このつつましやかなアンプが、いったんボリュームを上げたとき、そのしとやかな、ためらいがちな外観からは想像できないパワーとエネルギーをもたらすのである。30Wというのは、こんなにも力強いものなのかという実感をひしひしと味あわせてくれるのだ。
 カタログに記載されている表示値になかなか達することの少ない国産車なみのオーディオ・パーツの中にあって「うそのないアンプ」、これがオンキョーのアンプだ。
 インディアンのたわごとと軽くみるのはまちがっている。倍以上もする価格のアンプの発表データさえ当てにならず、規格どうりの出力はスイッチ・オン以後20分間だけ、あとは規格の70%でクリップしてしまい「それが当り前だ」といってはばからない「高級エリート向けアンプ」が少しも疑われずに大手を振っている国産アンプ業界なのだ。
 よく、オンキョーのアンプは真空管的だなどといわれるが、そういういい方よりも、「あらゆるアンプが最終的に到達するであろうと思われるサウンド」というべきだろう。3極管OTLにも近いし、超低歪率を狙った多量NFのトランジスタ・アンプにも似ている。こうしたサウンドはまじめなアンプ回路の追求から生れ出る以外のなにものでもない。
 オンキョーのアンプは755に限らず次の製品も次の製品も、常に多くのユーザーに支持され、多くのメーカーの注目するアンプであるに違いないと思うのである。

トリオ LS-400

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1973年4月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 この数ヶ月、雑誌の広告におけるトリオの紙面はスピーカー・システムの眼を奪うような予告をクローズ・アップしてきた。その話題のスピーカー・システムが遂に登場した。LS400である。
 30cmウーハーと、12cmスコーカーに流行のソフト・ドームを配した3ウェイのブックシェルフ型システムで、その点からはオーソドックスな、ごくありきたりの最新型システム以上のものではない。ただ、このシステムの唯一の特長は、予告広告においてすでに宣伝されているとおり、ランバーコアと呼ぷ前面バッフル板で、細い角棒をならべて構成した新しいバッフル板にある。従来、使われているホモゲンの硬質型であるチップボードや合板のもつ生産性、均一性と、マニアの間でいわれる高い天然木の単板との、両方の特長を合せ待った新材料の採用が大きな特長をなしている。
 この種の板は、すでにカウンターの材料などを中心に建築材料としてはありふれたものだが、これを音響材料としたところに着眼の艮さを感じる。
 皮肉な見方をすれば、最近の異常な材木の値上りが招いた、苦肉の策ととられるかもしれない。しかし、このようなマイナスの原因もプラスの方向へ導くきっかけにしている努力を大いに買いたいのである。
 ランバーコアは、単板の良さに均質性と量産性を加えた現実の形として納得のいく材料であることは、まぎれもない事実だからだ。
 この種の新材料は、しかし、今までにスピーカー・ボックスとして少なくとも一度も使われたことがなかっただけにこれをいかすことは、また大きな試みと努力の積重ねを経ずしては達せられるわけはないであろう。
 それを裏づけるようなことが、このスピーカーの完成間近にさえも開発途上でおきたという。それは補強棧の形と位置を、従来の常識から変えた形を行ったときに、中音の大きな変化として経験されたと聞く。これを私に教えてくれた開発担当者のN氏は、彼自身がテナーを吹く熱烈なジャズ・ファンであった。もっともこれは、かなりあとになって、私自身が偶然にも知ったことである。そのジャズ・ファンとしての耳が、中音の変化を敏感に感じとって、どの方向に試作スピーカーの音の作り方を決定するかに大きな役割を果したことに間違いない。
 このLS400、担当者自身が熱心なジャズ・ファンであるためなのか、スイング・ジャーナル試聴室でトリオのスピーカー・システムにかつてなかったほど朗々とより鳴り、ソロのアドリブの実にリアルな音像再生は、今まで私がトリオのスピーカー・システムに対して抱いていたイメージを一変させた。品が良く、特にクラシックの繊細な再現は得意だが、ジャズのような激しい迫力の再生は苦手のはずであった前のトリオのサウンドのイメージは、LS400によって、私の脳の中から吹きとんでしまった。
 付言するならば、このLS400をかくも立派に鳴らしたのは、これもトリオの新型アンプであるハイ・アタックの最上位機種KA8004であった。KA8004は、市場に出て以来数ヶ月、その評価も上乗で、ここに改めてふれるまでもないが、力強いサウンドに、驚威的広域と、繊細な解像力とを合わせ持って、現在市場にあるアンプの中でも5指に入る優秀機種だ。
 このKA8004で、高解像力の再現を確めたあと、SJ試聴室の新鋭機マッキントッシュの300/300ワットMC2300につなぎ換えたLS400はさらに重低域の迫力と、温みとをそのサウンドにプラスしたのであった。

サンスイ AU-9500

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岩崎千明


スイングジャーナル 2月号(1973年2月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 サンスイがこのところコンポーネントに示す熱っばいまでの意気込みは、すざまじいという言葉で表されるほどの迫力を感じさせる。そうとるのは、決して私一人だけではあるまい。
 つい先々月、このSJ選定品としてAU7500が登場したばかりだというのに、今月再びSJ選定品として目白押しの新製品の中から、再びサンスイのアンプが紹介されることになった。AU9500である。
 この新製品、ごらんの通り風格も堂々たる貫禄であるし、価格もまた、10万を軽く越すという、最近のデラックス志向の強いステレオ・パーツの中にあっても、ひときわ目立つ超豪華型だ。
 まさに国産アリメイン・アンプ中の最高レベルを狙ったとみられる新製品なのだ。
「実はさきにAU7500のときに同時に発表すべきだったのですがこれだけの高級機になりますと、社内でもいろいろな形で検討を加えられ例えば発表時期もSP707Jと同時発表という形をとることになったわけです」とメーカー側のいいわけ。
 JBLの38センチ・フルレンジのD130をユニットとしたバックロードホーンのエンクロージュアに収めた新製品がSP707J。この国産随一を狙った豪華スピーカー・システムと同時にデビューさせたことは、このコンビで、ライバルを一挙に圧倒し去ろうという、いかにも専門メーか−らしい冴えをみせた憎いテクニックとみた。
 AU9500のうわさは、しかし、すでに7500発表当時からささやかれていた。それが現実となって、眼のあたりに接してみるとき、かつて、その昔、山水がAU111を市場にデビューした当時のことを思わずにはいられない。
 AU111は、旧いオーディオ・マニアなら、その存在は、アンプの最終目標として長く君臨していたことを知ろう。6L6GCのプッシュプルを最終段とした45/45ワットという当時の最強力管球プリ・メイン・アンプであった。
 ハイパワーなるが故の大型出力トランスを2個に加え、その電源をまかなうべき馬鹿でかいパワー・トランスは巨大なる図体を余儀なくし、家庭用アンプというにはほど違いヘビー・ウエイトぶりは、脚に金属椅子と同じキャスターを取りつけるさわぎで、しかも、わずかな移動も、これに頼らざるを得ないという、万事常識はずれの強力型重量級アンプであった。
 家庭用として、45ワットはおろか100ワットさえ登場する今日、その中にあっても今日の新製品AU9500の大きさと重量は、やはり特筆に催するほどだ。
 これというのも、今日のサンスイのアンプが、すべて、カタログ表示であるフル・パワーを20〜20Kヘルツという音声帯域内全帯にわたって、保証するという、ぜいたくさから、きている。しかも、この規格値は、なんと驚くべきことに、ひずみ0・1%においての値なのである。
 歪0・1%という値は、かつて英国リークのアンプの表カンバンだった。しかし、実際には、0・1%歪は、1000ヘルツにおいての場合でのみだ。音声帯域全帯に対するものではない。
 マッキントッシュのアンプさえもこの全音声帯域内での歪率に対しては、0.3%を示すに過ぎない。
 しかし、山水のアンプでは、この0・1%歪をギャランティーしようという。まさに、おどろきの他ない。
 これを実現するためにはパーツを選び最新の回路技術に加え、今まで見過されていた多くの部分を再開発しなければならなかったという。かつて、303シリーズで、0・3%歪を実現したサンスイは、0・1%歪に挑んでコンポーネントの製品化を実現したのである。
 いうはやすく、実現至難な0・1%歪。現実の市販品でこのクラスのカタログ・データは、少ないわけではないが市販製品をチェックすれば、カタログとは足もとにも及ばぬのが普通だ。サンスイの堅実な努力は、しかし着々と成果を上げているのである。
 JBLにコンシューマー用アンプのなくなった現在、このサンスイ・ブランドの高級アンプ群は、JBLシステムを鳴らすにはかけがえのない存在となるわけだが、それに応えるかのようにAU9500のサウンドは、かつての名器、SA660と相通ずるものを感じさせる。低域の底知れぬ力強い迫力がそれだし、中高域のこの上ない充実したサウンドは、JBLアンプのそれに一段と透明度を加えたともいいたい。
 JBLファンにとってこのアンプの出現は限りない信頼感を加えた大きな標的ともなるに違いない。

パイオニア CS-R30

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菅野沖彦


スイングジャーナル 2月号(1973年1月発行)

 「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 日本の代表的スピーカー・メーカーとしての実績こそ、その本来のキャリアーであり肩書きでもあるパイオニアはその名誉と誇りを賭けて、この一年間強力な布陣をガッチリと固めた。
 そのピークに位置するのがCS3000であり、そのピラミッド型の需要層に対して分厚い中腹を狙うのがRシリーズと名付けられた新シリーズである。
 しかもこのRシリーズ、狙いを若いジャズ、ロック・フアンに合わせた点も注目せねばならぬ所だ。
 スピーカー・メーカーとしての貫禄をシステムのワイド・ヴァリエーション化という強力な手段で見せることに積極的姿勢をとったパイオニアの、新らたに獲得されるべき若いファンのためのスピーカーは、Rシリーズという名の通りに、まったくイメージを異にしたニュー・サウンドである。
 パイオニアのシステムに共通する技術は、まず第1にARのアコースティック・サスペンジョンに匹敵する「密閉箱と、超低f0(エフゼロ)ウーファーの組合せ」、第2には、ドームラジエターに代表される中高域の超ワイド指向性だ。
 Rシリーズにおいては、この2つの技術は大きく転換した。転換ではなく、前進というべきか。第1の密閉箱は、チューンド・ダクト型と呼ばれる変形バスレフレックス型になり、米JBLのランサー・シリーズと同じ方式となった。これによって、従来の低域限界は一段と重低域にまで拡大され、深々とした低音は、たっぷりとエネルギーを満たして、音のスケールを加えることになった。
 Rシリーズのもうひとつの特長はブックシェルフながら中音、高音にホーンを採用することを一応の前提とし、しかも指向性の点でも十分な配慮をしている。
 というのはホーンの唯一の欠点である指向性を、マルチセラー・ホーンによって大幅に改善した中音用を用いたR70。高音用はホーン開口を極小化して高域までも指向性を改善している。
 つまり、Rシリーズの狙うものは、国産サウンドからの脱皮であり、今後増えるに違いない脱国産ミュージックのファンのためのサウンドなのだ。
 ジャズやロックの強烈なエネルギーを、楽器のサウンドそのものを生々しい形で再現しようと志ざす若い音楽ファン、オーディオ・マニアのサウンド指向が、従来の国産スピーカーの頭脳的サウンド・パターン、品の良い繊細な音作りと路線と異にするものであり、それをはっきりと意鼓したポジションにRシリーズの存在意義があるのだ。
 CS−R70がずばり、これに応えるシステムとしてそびえ立つピークであればR50はその隣りに位置する副峰であり、そのために中音ホーンこそ用いていないが、コーン型としR70より品をよく従来の音作りに近いながらRシリーズと呼ばれるにふさわしい音を意識したサウンド・パターンである。
 さらに、R70と対称的位置に接しているのがR30である。
 R30はR70直系の音作りで、聴きやすさはやや小型ながら一段とポピュラー向きともいえる。
 つまり、若い初級的ジャズ・ファンにとってはRシリーズ中もっとも抵抗なく受け入れられるもので、しかも、従来のあらゆるパイオニアのシステムにもまして、迫力と鮮麗さとを加えていることを知るべきだ。
 しばしば「ジャズ向き」という呼び方に区別されるスピーカーを聴くと、その多くは、高音にぎらぎらときらめく独特のサウンドがそのままではクラシック音楽を聴くには耐えられないのが普通だ。むろん、こうしたスピーカーが決して「優れた」スピーカーでもなければ、誰にも推められるものでもないのはいうまでもない。
 しかし、パイオニアの創ったRシリーズのシステムは、さすがにこうした負い目は探しても見当らぬ。特にR30は、Rシリーズ中、もっとも買いやすい価格でしかも初歩的マニアにもその良さを知ってもらえるのは嬉しい。クラシックにも適応性を示すR50の良さにもまして、また本格的なエネルギー再現派のR70にもまして、R30が推められる第一の理由はこの辺にあるといえよう。

オンキョー Integra A-755

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岩崎千明


スイングジャーナル 12月号(1972年11月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 秋葉原でベストセラーのひとつとして、発表以来2年間、いまもって売れに売れているインテグラ725のオンキョーが、また、ベストセラーを狙う新型アンプを発表した。
 インテグラ755である。
 725が発表された時、これに接して、このクオリティーの高さと、それに対するペイとの比、つまり、コスト・パーフォーマンスという点で当時のアンプ市場で、画期的ともいえる注目すべき製品であったことを察し、いち早くそれを伝えたものだった。
 今回の新製品755も、また現時点におけるこのクラスのアンプの中にあって、725同様の地位を占めるに違いないことを予感し、それは725の場合のように、広くファンに伝えるべきが義務でもあると思う。
 インテグラ・シリーズと銘うったオンキョーのアンプは、725出現より約1年前からスタートを切った。しかし、そのあまりにオーソドックスなあり方と企画は必ずしもメーカー側の思惑どおりにはかどることがなかった。
 しかし、そのアンプ設計方針の手がたい正攻法は、725においてはっきりと実を結んだ。「コンピューターによる時定数の決定」という謳い文句は、宣伝だけのものではなく、アンプ設計の重要なポイントとしてクローズ・アップされてきたのはトランジスター・アンプ時代になってからである。それは段間直結が普及し、低音域が飛躍的にのぴトランジスター自体の改善により高域が目覚ましい帯域を獲得するや、ますます重要なファクターとなってきたのである。負帰還技術を駆使する現代の高性能アンプにとって、ハダカ特性、つまり負帰還をかける以前の回路の位相特性が、完成された状態のアンプのすべてをすら決定してしまうからである。インテグラ・シリーズにおいて、この点を追求したオンキョーのアンプ設計陣の狙いは正しかった。インテグラの725以後の製品がトランジスター・アンプにありがちだった「固い音」を一掃したのは、かつて位相特性を重視した設計の結実であり、勝利なのであるといえよう。
 725以後のオンキョーのアンプのすべてに、この格段の向上がみられ、すぐ続いて出た733は、さらにハイグレードの高性能をそなえた高級志向のアンプとして、725同様ハイレベルのマニアに柏手をもって迎えられ、725と並んでオンキョーのアンプ作りの見事な成果として実績を挙げて今日に到っている。
 ただ、それぞれについて、ひとこと注文をつけるなら、725はコンパクトにまとめたそのデザインが、物足りないし、733は価格的にもうちょっと購入しやすくして欲しいという点を加えたい。
 ところが この両者の長所をそっくり受け継いで、さきの注文をそっくりそのまま受け入れて、実現した新製品が出た。それが、今回の755なのである。こういえば、755がいかにすぐれ、いかにコスト・パーフォーマンスの点でも優れた製品かをお判りいただけるのではないかと思う。
 実際に内容をみると、まさに両者のイイところをそのまま組み合せたともいいたいほどで、プリ・アンプ部は725直系、パワー・アンプはハイ・パワーで鳴る733直系なのである。
 メーカー発表のデータの信頼度というのはそのままメーカーそれ自身の信頼度となるが、技術的にまじめなオンキョーの姿勢そのまま、755のデータは、私自身のチェックによっても発表値を少しも下まわることなく、きわめて高い信頼性を誇る。
 透明で暖みある音といわれるように、SJ試聴室においてフリーダム・レーベルの69年録音のスタンリー・カウエルのピアノが文字通り透明なひびきを室内いっぱいにみたし、ウッディ・ショーのペットがシャープに突ききさり、62年録音のニュージャズ・レーベルのバイアードの「ハイフライ」はプレゼンスも生々しく、楽器のサウンドを克明にえぐり出してくれたのである。

岩崎千明


スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 '73(1972年秋発行)

「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ28選」より


●組合せ意図及び試聴感
 この秋の各社の新製品をいろいろ聴いて来て、すごく印象に残ったのが、ヤマハの一連のコンポーネントだ。ケースのローズウッドの重厚さが、そのまま製品の内容の厚みを表わしている。最近までのヤマハのオーディオへの安易な行き方から、180度転換した誠実な本来のヤマハの製品が、この充実した中味を滲ませて強く印象づけられたのだ。ヤマハのこれらの優れたコンポをそのまま組み合わせれば、たしかに一流のステレオが完成されていることになるが、オート・メカニズムのYP700、小型ながらずっしりと中味のつまったブックシェルフをあえて避けて新らしい魅力をプラスさせようと試みた次第である。ヤマハのプレイヤーと同じローズウッド仕上げの、よりマニア好みのマイクロMR611である。ベスト・セラー数年、この分野にあって多くのライバルをけ落して、今日相変らずベスト・セラーの座にあるこの611は、本格派のオーディオ・メカニズムにくわしい者も認める超一流プレイヤーに違いない。この組合せの大きな魅力を決定するもうひとつのポイントが、スピーカーだ。オンキョーの野心作ラジアンIIIである。フロア型ながら床面積25センチ四方と小さく、高さは80センチと現代若者風のキャシャな腰つきだ。しかし、この細身からくり出されるパンチの効いた迫力あるサウンド、しかもその切れのよいこともうならせる。低音から中音にかけて、いつも重たい感じの残るオンキョーのスピーカー・システムの中にあって、このラジアンIIIは名前も変っているが素性も変っている。中味は16センチ2個、プラス・トゥイーター2個。16センチのすばやい過渡応答の良さつまりタイミングの良さ、変り身のす速さである。これがイイ。重く大きいコーンのウーファーとは違ってスッキリとした低音の迫力はこの16センチにあるとみた。しかも柳腰ながら下からゆすられる様な重低域のパワーもグー、いうことなし。この名の由来であるラジアンIIIの源の外側に斜めに構えた2個の高音用は広い室内に優れた指向性を発揮し、4チャンネル再生にぴったりだ。つまりあとからこのラジアンIIIを2本加えれば4チャン・スピーカーとして理想のものとなるわけ。低音でビシッと引きしまった力を発揮するヤマハのCA700はこのオンキョーの新兵器小型フロア型スピーカーを大型システムなみの迫力で鳴らしてくれる。加えて立上りよく切れ込みのすごいのもアンプとスピーカーの相乗効果でジャズの楽器のサウンドは最高に響きわたる。チューナーにはこれまたヤマハの自信作であるCT700だ。アンプと全く同系のデザインはやや小型で中味の濃いのもアンプ同様。チューナーの性能というものはカタログの数字やデーターだけでは決して判るものではないが、ヤマハのチューナーはデーターも良いし、実用特性の点でも一流なのである。独得の高音の輝きについてあるいは判定の割れる所だが、ジャズ・ファンにとってはチューナーの音色は大いに喜ばれるに違いなかろう。

岩崎千明


スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 '73(1972年秋発行)

「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ28選」より


●組合せ意図及び試聴感
 予算10万円チョット、チューナー、テープ・デッキを加えたとしても20万円までを限度とする組合せということだが、このクラスのコンポーネント・システムを狙うヤングは、オーディオ知識のレベルもかなり高く、決して中途半端な製品では承知しない。つまり年齢こそ若いが、通なのである。マニアではないかもしれせないが、マニア志向のハートの持ち主なのである。そんなキミのためにガッチリと予算を押え、本格派コンポーネント・ステレオを選ぶとしたらこれだ。組合せの中心はテクニクスのアンプ、それで近頃やたらとヤング志向とやらで、低価格のライン・アップに移行しつつある製品群の中から、内容の充実した基本主力製品を選ぶことにしよう。SU3400だ。それひとひねり、SU3400に4チャンネル・コントロールを加え、あとで4チャンネル・ステレオへの移行を前提として、SU3400を決めた。極端におさえられたコストでコンポ・システムを選ぶには、常套手段として一点豪華主義がいわれているが、そうかといって、他のセクションがどうでもいいというわけにはいかない。やはり質的に、あるレベルは保たねばならない。あるレベルというのが、一点豪華主義の組合せの成功のカギなのだ。アンプにテクニクスの主力製品の最強力型を選ぶことから、それに見あった質を秘めている普及型のプレイヤーとスピーカーを市場から物色してみよう。オーディオ・マニアのキミなら、あるいはキミの参謀がいるならプレイヤーにマイクロの製品を選ぶことはまず文句ないところだ。マイクロのMR211がかくて登場する。プレイヤー中の本格派、マイクロの、一番普及価格ながら質的にはもう一万円上のクラスにも匹敵するのが211。カートリッジにM2100という、これまた普及製品中のハイ・パーフォーマンスの傑作がついている。この辺のプレイヤーを選ぶとなると、あとはセミオート機構のついたパイオニアやソニーそれにヤマハなどが浮かぶが、マニア・ライクなマイクロの方に、キミはよりひかれようがそれでいいのだ。残りのもうひとつのセクション、スピーカー。これこそ、テクニクスSU3400を生かす、ひいてはこの組合せ全体の質を決めてしまう重要なポイントだ。ここではオンキョーの12センチ・フルレンジのユニットに白羽の矢を立てよう。「あまり大きな音量でなく」というただひとつの使用条件をつけると、この小さなユニットから引出されるサウンドのクリアーで楽器それぞれの分離のよい音は特筆されるべきだ。この他にフォスターの10センチFE103、コーラルのフラット・シリーズなどが考えられるが、馬力のある低域の迫力さえあまり期待しなければFR12Aは最高だろう。オンキョーの指定の箱は小さく、4チャンネルへのグレード・アップは容易だ。この場合リアのパワー・アンプは今迄のを利用しよう。チューナーはSU3400とコンビのST3400だがもし予算が苦しければその下の新型のST3000でも実用上は何ら変らないことを申しそえておこう。

Lo-D HS-1400WA(組合せ)

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岩崎千明


スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 '73(1972年秋発行)

「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ28選」より


●組合せ意図及び試聴感
 多くのメーカーから多数のコンポーネント・ステレオ製品が大量に市場にあふれている。世の中、万事多様化し、ワイド・バリエイションの中に自分の個性を生かそうという現代だから、この中からキミのオリジナリティを発揮していくステレオを選ぶことが、オーディオ道楽の醍醐味といえるわけだ。まして20万円からの予算を投じようとすれば、それこそ候補として市場製品の大半がその圏内に入るのだからいかような個性も生み出せるわけだ。しかし趣味の良さ、センスの良さを土台として、その上にユニークなパーソナリティを大きく盛り上げようとなると、やはりむづかしい。ここに掲げた組合せは、①楽器の迫力を間近に感じられる。②品位の高い再生とメカニズム。③コスト・パーフォーマンス、という点から得られる以上のプラス・アルファーのクォリティーと、ぜいたくな要求のもとに、そのいずれもが満足でき得る本格派ジャズ・ファンのための家庭用高級システムだ。この中心は日立のフロア型スピーカー・システム1400WAだ。すでに2年目を迎えているこのユニークな技術に支えられたスピーカーは、数10万円の海外製の超大型システムと変らぬくらいの豊かで迫力に満ちた超低音が魅力だ。ただ従来の1400Wはその超低音に見合った中音域をそなえていなかったことが残念だった製品だ。今回マイナー・チェンジを受け中音がすっかりファインされ、その再生品位は格段と向上した。もっともそれにつれて価格も1万円高くなり49、000円だが、今までのが安すぎたくらいで、音色全体の向上ぶりからいえば、この1万円は補って余りある価値といえよう。この1400WAのバス・ドラムのサウンドは一度接するとなまじっかのブックシェルフではとうてい物足りなくなってしまうに違いないのだ。コンポーネント・システムという言葉からブックシェルフ型スピーカーが直接想定されてきた今までのしきたりも、こうしたフロア型の大型システムの存在に眼を向け直す時機にきているのである。超低域のことばかり触れたが1400WAのサウンド、特に音色のバランスの良さはオレにいわせればかの名高いHS500よりもずっと確かで、ジャズの激しく鳴る楽器の再生には、はるかに優れているのだ。この1400WAを鳴らすべきアンプは日立の新型アンプHA660でもいいが、質の高さと、まともな性能で定評のあるトリオのハイ・アタック・シリーズ中のKA4004を選ぶことにしよう。無色透明の再生ということばがトリオのアンプやチューナーにはまさにピッタリ。これでスピーカーの能力はフルに引出されよう。プレイヤーにはこのところ俄然はりきって、質的向上の著るしいシCECの新型プレイヤーだ。高級な仕様を普及価格で実現したこのプレイヤーを作るCECは国内専門メーカーとして、もっとも歴史とキャリアのあるメーカーで、大手の下請けできたえたコスト・パーフォーマンスの高さはずば抜けている。カートリッジに性能のすごい同社の4ch専用を選びたいところ。チューナーは文句なしに同シリーズのKT4005、デッキは日立のカセットを選んだ。

岩崎千明


スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 '73(1972年秋発行)

「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ28選」より


●組合せ意図及び試聴感
 LE8Tを愛用するハードなジャズ・ファンであるキミのため岩崎千明の名にかけて決定的な組合せをまとめた。
 これだ!! スピーカーにSP505J、つまりサンスイ−JBLが6年ぶりに発表する野心作、SP−LE8Tのハイグレード版がこれだ。
 中味は30センチ・フルレンジD123、つまりLE8Tの大口径ハイ・パワー型のユニットだ。同時に発表した、、おなじみD130のバック・ロードホーン入りの方に、よりなじみと魅力とを感じるが、これは家庭用というには、やや大げさすぎ、よほどのマニアでなければ、というところ。むろん、キミにスペースとふところのゆとりさえあれば、このSP7070Jも推めておく。
 LE8Tを一度、手元において愛用するとジャズを聴くかぎり、もうこれ以外のスピーカーには、ちょっと手を出しにくくなる。そうかといってグレード・アップする場合に、さんざん困っていたはずだ。しかし、もうこれからは解消したのだ。
 スピーカーについて、いろいろ述べることはなかろう。中味はJBLの大口径フルレンジ型で、箱はサンスイの手になりJBLが認めたチューンド・ダクト型だ。
 アンプは、当然このJBLスピーカー・システムを、もっともよく鳴らすべき製品、ということでサンスイの新シリーズAU7500だ。万事控え目のサンスイにふさわしく、あまり目立たぬ存在といわれるが、黒く引き緊ったやや小柄の外形からは想像つかぬほどのハイ・パワーとハイ・パフォーマンスだ。0・1%歪率という値は、実用範囲でおそらくひとけた上の、つまり数倍の価格の海外製にもひけをとらぬ高性能のデータも、使用するうちにうなずけよう。単純にいえば、ずっしりとこのアンプの重いことからも中味の充実ぶりは誰にでも判るのではないか。
 この7500の上にもうひとつ9500が登場するが、一般用と考えれば、JBLシステムの高能率で7500で十分。
 さて、この豪華にしてぜいたくなシステムを、より豊かにするため、4チャンネル・システムを想定した。
 もしLE8Tを持っているのなら、そのままリア用スピーカーとして流用でき、アンプはサンスイ・デコーダーQS100が最適。リア用パワーアンプが内蔵されAU7500のテープ・モニター端子に接ぐだけのことで、完全な4チャンネル・コンポーネント・システムとなる。
 カートリッジはオルトフォンM15スーパーをスペアに、チューナーにはAU7500と同じデザインのTU7500。

ヤマハ YP-500

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岩崎千明


音楽専科 11月号(1972年10月発行)

「SENKA TEST LISTENING」より


 YAMAHAのマークは、ピアノとバイクで今や世界に鳴り響いており、このマークのもとで作り出されるレジャー・プロダグツは、いずれも一流品と信頼とされ、このマークのついた商品を持つ若者に誇りを持たせる。
 ピアノと共にバイク類の高性能ぶりは業界を寡占する一方の旗頭であることを証明する。さらに最近ほオートバイに次いで海洋レジャーをも目指し、着々と成果を挙げて、若人にもてはやされているのはよく知られている通り。
 かくも好成績を挙げる中で、たったひとつ、オーディオ製品のみは、必らずしもヤマハの意図通りにはいっていない。エレクトーンの技術を駆使し活用した「ステレオ」は、市場での人気も、はかばかしいものではなかったのだ。
エレクトーンからピアノと「楽器のサウンド」を創り上げてきたヤマハの技術もこれを市場では、強力に展開し成功させてさた商業的手腕も、神通力はオーディオ・マニアには効かなかったのであった。
 それは、オーディオ・マニアの眼が、他の分野におけるそれよりも、はるかに厳しく、品質と高性能とを絶対的なものとして追い求め、それに対するメーカーは高品質と高いコスト・パーフォーマンスとをもって応えなければならず、加えて、専門メーカーという強力なライバルが少なくないからである。
 長いあいだ、ヤマハのオーディオ製品は低迷していた。それは、かつて10数年前の高品質ハイファイ製品の数々を、ヤマハ・ブランドのもとに作り上げてきたプライドをもってしても、打ち破ることのできなかった厚い壁なのである。この壁は、しかし、外部の敵ではなく、おそらくかつての誇りが、古びて通用しなくなっていることから眼をそむけてきた内る障書もあったに違いない。
 その根源は、冒頭に挙げた、他の部門での圧倒的な成功であり、その手法である。「ヤマハの創る商品が悪いわけがない」とする自信が先走ったのである。
 だから、この数年前から展開したステレオ時代のヤマハ・オーディオ製品は、あらゆる製品に独創性が盛り込まれ、ユニークな魅力を持つにも拘らず、オーディオ・ファンからうとまれ続けた。カセットの聴けるステレオを初めとし、ピアノから形どったという高能率スピーカーによる新らしい音響再生技術は、こうしてヤマハの理想通りには運ばず、じりじりと後退を余儀なくされていった。
 それはかつて、プロフェショナル志向の優秀製品を市場に送ってきたヤマハ・ブランドの落ち目であり、旧いファンにとってはこの上ない淋しさを感じさせた。
 かくも追い込まれたヤマハのオーディオ・プロダクツ。ギリギリの所で見事な逆転を演じるべきお膳立てが出来上った所で登場したスターが、前にこの欄で紹介したブックシェルフスピーカーNS630であり650である。従来の変形スピーカーに対するこだわりを捨て去って、スピーカー本来の姿に立戻った点からスタートしたヤマハ初の市販ブックシェルフは発売するやたちまち市場に注目され楽器メーカ、ーヤマハのオーディオ・プロダクツの真価を発揮して、ベスト・セラーのひとつに成長している。
 同時に話題になったのはプレイヤーである。スピーカー、チューナーと共に、音楽志向のヤマハらしい魅力が盛り込まれており、ケースの仕上げの美しさと完ぺきなことは、ピアノを手がけるメーカーにふさわしく、ローズウッドの面は鏡のようにみがき上げられている。
 プレイヤーはYP700と500の二種で、アームが大きな違いをみせるだけだ。ベルト・ドライブのターンテーブルはターンテーブル本来の目的を忠実に実現したもので、SNの優れた点と共に、ハウリングに対する強さはこのクラスの愛用者が必らずしも高い知識を持っているとは限らない点を考えると、賞賛できる大きな利点であろう。つまり、コンポーネントの利用者が増えている現状でもっとも多いトラブルは、針先がスピーカーの振動を拾うことに起因する音響きかんが原因の低音共鳴である。これは、プレイヤーとスピーカーの相対位置とか床下の頑丈さで防ぐようにいわれているが根本的にはプレイヤー自体の問題であるべきなのだ。この点を直視した優秀製品が少ない中でマイクロの製品と共に、ヤマハ・プレイヤーの他に秀でる大きな特長であろう。この問題は最近になってやっとメーカーの側でも重要問題と考えるに致ったが、これはコンポ愛用者が多くなったためでありヤマハはそれに一歩先がけているといえよう。
 ヤマハのプレイヤーの最大のポイントはそのカートリッジにある。米国シュア社のM75系の新型がついており、扱いやすい6ミルの針先が着装されている。
 M75の再生ぶりは、安定したトレースとバランスよく歪の少ない品のよい音としてマニアの間で永く定評のあるものだ。市販プレイヤーの最大の弱点は、実は付属カートリッジなのであることは常にいわれているが、ヤマハのシュアに眼をつけた企画性のうまさは驚くべきだ。
 この点だけ考えても、今回のコンポーネントに対するまともな再生への考え方を推察できるというものだ。
 セミオートマチックのアーム動作も、このクラスのプレイヤーを買うお客様の立場をよく考えて作られており、ケースの仕上げの豪華さと、シンプルでユニークなデザインのアームとターンテーブルの組合せなど心憎いほどで、ベスト・セラーにならなければうそだ。

サンスイ AU-7500

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岩崎千明


スイングジャーナル 8月号(1972年7月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 待つこと久し、待望の新型アンプがサンスイからで出た。おそらくは、ユーザー・サイド以上に、当のメーカーであるサンスイ自身が、待ち焦がれていた新型アンプである。
 メーカー・サイドの人々の、他社の新型アンプが目白押しに出る中で永く、苦しい待ち時間は、もうこれ以上どうにもならない域に達していたに違いない。それだけに、それらの人々の、山なす期待をずっしりと担って、やっと覆面をとったその「アンプ」は、意外や、ごくひかえ目で小じんまりおとなしい新製品であった。期待が期待だけに、その期待の中にせっぱ詰まったものさえ感じさせられていただけに、この「新型アンプ」に接したオーディオ・ファンは、少々肩すかしをくい、かなりの戸惑いを感じさせられたのは事実である。
 AU7500、AU6500の新シリーズは、外観的には、従来のサンスイのアンプ群と、一見、見分けすらつかぬほどの、ホンのちょっぴり「品の良い」変化をつけたにすぎない。規格の上でも、あるいはセールス・ポイントたるべきいくつかの特長も特にこれといった大きなものはなにもない。「25年のハイファイ技術をここに結集して完成した新製品」というメーカーのいい分は、いったいこのアンプのどこに生きているのだろうか。
 しかし、発表会では判然としなかったこの疑問は、新型アンプを手元において、その再生ぶりを確かめるに及んで完全に氷解したのである。
 メーカーのいう25年のキャリアはまぎれもなく、この新シリーズ・アンプの内に脈々と息吹き、輝きに重みすら加えていた。
 このアンプの再生品質は、今までのサンスイのアンプのそれとは格段の向上というよりも、まさに生まれ変わったとしかいいようのない素晴らしいものであった。素直な再生、温かみを感じる透明なサウンド、親しみのある音、これらすべてが、なんのためらいもなく冠せられる再生品位が、この新シリーズそのものなのである。しかも類い稀なる力強い迫力を伴って。
 サンスイのアンプを語るとき、必ず引っぱり出されるのはAU777の記録的ベスト・セラーだ。
 777のあまりに華々しかったこの成功は、しかし、時間と共にメーカーの負担にこそなれ決してプラスをもたらしはしなかったのではなかろうか。
 その証拠というと誤解を招くかもしれないが、何らかの形で777に影響された。その最たるものは777に見られる独特の華麗なサウンドだ。華麗というには当らないにしても、中域から高域にかけての充実ぶりを意識的に盛り込んだ再生ぶりはそれ以後のサンスイのアンプのひとつの特長といってもよかろう。アンプだけではない、スピーカーにすらこの意識的サウンドが見られる。しかしこのサンスイの777の成功には、もうひとつの底流があった。AU111から飛躍的なグレード・アップを実現して、当時驚異的な性能はマッキントッシュ管球アンプにも匹敵せんばかりだった303シリーズである。今や数少ない国産の幻の名器となったこのシリーズへの熱意と闘志とが、AU777の成功の源流となっていたことを見逃すべきではなかろう。
 そして、303シリーズの企画の時点にまでさかのぼって「社内に散らばった闘志の管球アンプやトランス技術者を集めることから新シリーズ・アンプの設計はスタートした」そうである。まさに25年のキャリアという以外の何ものでもない意気込みを知らされる。
 4チャンネルにおいて、後発の新勢力の強力な展開ぶりに必ずしも思うにまかせずQSはSQとしのぎをけずる激戦中という現状。切り離すべく道を選んだセパレート・ステレオは、皮肉にも4チャンネル時代に再び脚光を浴びつつある悲恋のメーカー、サンスイ。
 今や、進むべき路線は、高級コンポーネント・ステレオ専門メーカーとしてその成功だけにかかっていよう。
 しかし、決して惑うことはない。すでに新製品の完成こそ成功の第1歩として、それは刻みえたのだ。
 このアンプの控えめながら記された規格表の性能に目を落としたまえ。「定格出力にて0・1%歪、20〜20,000Hz」マッキントッシュの最強力型のそれに比肩さるべきこの規格に達したアンプは国産では2番目。最初のそれはTブランドの註文生産品で、価格はプリ&メイン90万円なり。パワーこそ半分弱だがサンスイ新シリーズ・アンプAU7500は75、900円なりである。
 なおパワーを25%ダウンし、アクセサリーを省略化したお買得型が、AU6500で65、000であることを加えておこう。
 アタックそのものがこなごなに飛び散るようなモフェットのドラムと、眼前で弦が激動するアイゼンソンのベースと、例えようもなく力強く胸にぐさりと突きささるコールマンのアルトの咆哮を前身に受けながら......。

ヤマハ NS-650

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岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1972年9月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ヤマハから3種のブックシェルフ型システムが出たのは、さきにプレイヤーYP700を紹介した直後である。5カ月を経てこの欄に再び、ヤマハの製品として登場するわけだが、この5カ月間の経過期間に、このNS650は、すっかり評判を得て注目すべき製品になってしまった。
 最近のブックシェルフ型システムはその高級の主力製品が3万円台に多く集中している。その数多い中でもヤマハNS650の評価は、きわめて高く、はるか高価格のスピーカー・システムに劣らぬ質の高さは、改めていうまでもない。
 3万円台のシステムの中でも、ひときわ小型で目立ち難い存在だが、ひとたびその音に接すと、ヤマハが今日プレイヤーやアンプやスピーカーなどコンポーネントを通してオーディオに対して、真正面から取組んでいることを如実に知ることができるというものだ。
 現在、市場にあるあらゆる国産ブックシェルフ・スピーカーの中でも、このヤマハNS650に匹敵すべき製品は、おそらく5指を出まい。逆にいえば価格をぬきにしても、このスピーカーから出る高品質のサウンドと肩を並べるものが4つしかないというわけだ。
 ところが、このNS650は決して奇をこらしたメリットや、メカニズムはいっさいない。見た眼にはプレーンなシステムであって、ここで云々するほどの特長もなく、ごくありふれた構成の25センチ・ウーハー、12センチ・スコーカー、ドーム・ダイヤフラム・トゥイーターという3ウェイである。
 このスピーカーを試聴のため鳴らそうとしたとき、たまたま手元にあったレコード1枚にヨーロッパ録音の、キース・ジャレットのソロ・アルバムがあった。一聴してヨーロッパの最新録音を思わすカッチリと引き緊ったピアノ・タッチと、豊かな鳴り響きは最近の優秀録音盤の中でも、ひときは輝いたものと思うのだがこのサウンドをヤマハのNS650は文字通り実にみずみずしく、水のしたたるような新鮮で生々しい音に再現してくれた。
 たまたま日本ビクターの誇る最新技術である倍速カッティング盤と原盤の聴き比べをしてみたが、そのかく然たる遠いをはっきりと響きわける能力は、まさに本来歴史あるピアノ・メーカーで作られた本格派システムということを語るに十分だ。
 高域のサウンド・エレメントのパターンの細かいディテイルの違いを、くっきりと表現し、指先のキーにふれる様をその響きの中に見事に再現してくれる。日本ビクター・カッティング盤の優秀性がはからずも試聴中のヤマハNS650によって証明され得たひとこまであった。
 こうしたくっきりした音の立ち上りというものは、決して従来のスピーカー測定技術では判然とは出てきにくい。これは耳で認められる以外に適確な判断はなし得ない。それだけに、この再生の際の立ち上りの良さは、ややもすると、ないがしろにされやすい。それというのは、この立ち上りの良さを追求すれば、どうしてもスピーカー・ユニットのマグネットを強化せねばならず、しかもそれが確められるまでするには、かなりの強力を余儀なくされ、勢い製造上のコスト・アップにつながる。さらにブックシェルフ型のように小型化に沿った上で低域レンジをのばすことに四苦八苦の国産システムは、マグネットの強化が低域拡大と相反することにつながりかねない。
 このへんの事情もあって、マグネット強化というスピーーカー高品質化の大きな根本的条件をよけてしまうことになりやすい。
 ヤマハのシステムを聴くと、こうした真の高級化への道を、正攻法によって取り組んでいることを知らされるのである。ひとまわり小型なのに拘らず3万3千円という価格は、このシステムのもうひとつのウィーク・ポイントでもある能率の低いことと共に大きなマイナスには違いない。
 しかし、真の高品質サウンドの再生を望むものにとって、それは、補って余りある小さな代償と考えるべきではないだろうか。

コーラル BETA-10 + BL-25

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岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1972年5月発行)

SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 私のいつも使っているスピーカー、JBLのハークネスの後方、300Hzカットのアルテックの旧型マルチセルラ・ホーンの横に、縦長のボックスに入ったこの部屋で唯一の国産スピーカーがもう4年間も居続ける。
 これが、コーラルのBeta10だ。バスレフ箱に入ったこのBeta10は発売直後、その鮮やかな力強いサウンドに惚れこんで、手元において以来、JBLのD130がC40バックロード・ホーンの箱に収まるまでは、しばしばマイルスの強烈なミュートや、エヴァンスの鮮麗なタッチを再現していた。
 ただ、惜しいかな、鮮烈華麗なその中高音の迫力にくらべ、バスレフ箱に入れた低音は異質であるし、力強さもかなり劣ることを認めざるをえない。つまりBeta10の国産らしからぬジャズ向きの魅力あるサウンドは十分に認めながらも、その音のクォリティーを重低音にいたるまで保つことはバスレフ型では、しょせんかなわぬことを痛感していた。
 Beta10のサウンドの原動力は、その強大なマグネットにある。試みに15、500ガウスという強力な磁界に比肩したスピーカーを探してみよう。JBL D130、130Aクラスでさえ12、000ガウス。ボイス・コイル径が大きいからそのままくらべることはできないにしろ、Beta10の方が単位当りでは20%は強力だ。あとは英国製の高級スピーカー、グッドマン・アキシオム80と、このBeta10が範をとったと思われる、ローサー・モデル4ぐらいなものだ。そのどちらも17、000ガウスとBeta10をわずかに上まわるだけである。
  ジャズでは、楽器のサウンドそのものが音楽を形成し、そのアタック奏法が重要な要素であるゆえに、それを再現するには強烈なアタックの再生の得意なスピーカーがもっとも好ましい。僕がJBLを愛用するのもそのためだが、Beta10にも同様のことがいえる。
 加えて、軽く強靭なコーン紙。中央の拡散用金属柱でサブ・コーンからの高音の指向性の改善も、単にみせかけだけでなく、60度ずれた付近までシンバルの音がよく拡がっている。
 ただ、これほど楽器のソロが前に出るスピーカーでありながら、フルコンサート・ピアノのスケールの大きさが、とくに重低域でどうもふやけてしまうのが歯がゆいばかりであった。
 ところが正月の休み明け、広告でBeta10用のバックロード・ホーン、BL25の存在を知り、急いでコーラルから、BL25を取りよせてみた。
 チック・コリアのソロ・ピアノアルバムを聴いてみたが、Beta10がそのすさまじいまでの迫力を、中高域から低域にまで拡げたことをその時知ったのだった。それはまさにジャズ・ピアノのサウンドである。チック・コリアのちみつにして繊細流麗なタッチ、しかも左手のきらびやかな中に秘めた力強い迫力を、B得る25に収まったBeta10はみごとに再生してくれた。
 国産スピーカーと外国製のそれとくらべるまでもなく、国産オーディオ・パーツにはどうもベテラン・マニアを納得させる魅力をもった製品が少ない。国産パーツの優秀性はいやというほど知らされているのに、その中に魅力らしい魅力のない歯がゆさをいつも感じ僕。コーラルはその不満を解消してくれたまれな国産パーツだ。おそらく、この手間のかかる手造りのバックロード・ホーンはあまり商売にプラスをもたらすとは思えないが、これほど魅力に満ちた製品がまた日本市場に出ることを知って嬉しいのである。
 このBL25が、Beta10が今後も永く市場に残ることを願い、それをよく認識するマニアの少しでも多からんことを願うのである。

アルテック DIG

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1972年4月発行)

「SJ選定 best buy stereo」より


 アルテックというと、一般にどうも業務用音響機器の専門メーカーのイメージが強い。Altec は Alt tecnic つまり「大音量の技術」というところからきたのだし、ウェスターン・ブランドのトーキー用システムを始めプロ用システムを専門に作ってきたキャリアが長いだけに当然といえよう。
 映画産業のもっとも隆盛を誇ってきた米国内において、トーキー以来ずっと映画関係と、電波を媒介とする放送が始まればそれに伴ない、さらにレコードとも密着して、ずっと発展し続けたのだから、まさに業務用音響メーカーとしての地位を確保し続けたのは間違いない事実である。
 しかし、アルテックがハイファイ初期から、家庭用音響機器をずっと手がけて、50年代から早くも市販商品を世に送ってきたことは、このプロフェショナル・メーカーとしての存在があまりにも偉大でありすぎたために十分知られていない。
 これはひとえには1947年、アルテックから独立したJ・B・ランシングが、アルテックの製品と酷似した家庭用高級音響製品の数々を、高級音楽ファンやマニア向けに専門的に発売し出したことも、アルテックの家庭用音響幾器の普及にブレーキをかけたといえよう。もっとも、このJBLの各製品の設計者であるJ・B・ランシングが、この頃のアルテックの多くの主要製品の設計に参画していたのだから酷似するのはあたりまえともいえよう。
 アルテックの家庭用機器が大きく飛躍したのは、オーディオ界がステレオに突入したころからであるが、その後は毎年飛躍的に向上して、少なくとも今日米国においては、アルテックはJBLと並び、ARやKLHなどの一クラス上のマニアに広く愛用されるポピュラーなメーカーであるといえよう。
 いや、ポピュラーな層に大いに売り込もうと前向きの姿勢で努力している「もっとも犠牲的なメーカー」であるといいたいのだ。
 ブックシェルフ型スピーカー「ディグ」がその端的な現れである。アルテックでも、「ディグ」以前にもこの種のシステムは数多く現れては、消えた。消えたのはおそらく、その製品が十分に商品としての価値を具えていなかったからに他ならない。商品としてもっとも大切な価格の点でプロフェッショナル・システムになれてきたアルテックが、市販商品としての企画に弱かったのだといえるのではないだろうか。
 つまり、音響機器においての「価格」はサウンドに対するペイであり、アルテックにすれば商品として以上に内容に金をかけすぎてきたのであろう。
 もうひとつの理由は、ARに代表されるスピーカー・システムのワイド・レンジ化が、アルテックの標模するサウンド・ポリシーに反するものであったことも見落せない。
 アルテックの音楽再生の大きな特長というか姿勢は、レンジの拡張よりも中声部の充実を中心として、音声帯域内でのウェル・バランスに対して特に意を払っていることだ。
「ディグ」の中味は、20センチの2ウェイ・スピーカー1本である。それもフェライト・マグネットを使っているためユニットは外観的に他社製品のようなスゴ味を感じさせるものではない。
 つまり、中味を知ると、多少オーディオに強いファンなら[ナァンダ」と気を落してしまいそうなメカニズムを土台としているシステムなのだ。
 しかし、この点こそがアルテックならではの技術なのである。
 音量のレベルが小さい所から大音量に到るまで、バランスを崩さずに中声部を充実させるため、この永年使いなれたユニットをもっとも効果的に鳴らしている。それが「ディグ」なのである。
「ディグ」というジャズ・ファンにおなじみなことばを製品につけたのは、広いファンを狙った製品だからなのだが、単に若いファンだけを対象にしたのではないのは、その温かみあるサウンドににじみ出る音楽性からも了解できよう。むろん、若いジャズ・ファンが納得する迫力に溢れた瑰麗なサウンドは、「ディグ」の最大の特長でもある。ブックシェルフとしてはやや大きめの箱は、この409Bユニットによる最大効果の低音を得るべく決められた寸法であり、ありきたりのブックシェルフとはかなり違った意味から設定されている。小さいながらもこのブックシェルフ・タイプのサウンドは、アルテックのオリジナル・システムA7と同質のものなのである。

ヤマハ YP-700

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1972年4月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ヤマハのプレイヤー、と聴いて、昔のプロフェショナル仕様のプレイヤーを思い浮かべた方がいたら、それは、本格派のベテランマニアに違いない。モノーラル時代の盛んなりし頃、たしか30年ごろだったと記憶するが、リムドライブ型フォノ・モーターと、例の長三角形のオイル・ダンプド・ワンポイントサポート方式のアームを組合せた、プレイヤーをヤマハ・ブランドで市販した。高級マニアのひとつの理想が、このプレイヤーに凝縮され息吹いていた。このプレイヤーを手がけたのは現在のティアック、東京電気音響のさらに前身であったのだが、放送局のモニタールームなどにあったレコード再生機のイメージがそのまま市販品として再現されていた。形だけではなく、その性能も、規格もプロ用に匹敬して今日において歴史に残る名作と謳われるべき高性能機種であった。
 今、ヤマハのプレイヤーを前に置いて、かつての名作を思い浮かべる時、眼の前にあるプレイヤーは、昔のものとはイメージすら全然異なるものであるのは確かだがそれはそのまま我国のハイファイの推移を具象化した形で示していることを感じた。
 かつて、ハイファイは一般の音楽ファンにとって高嶺の花でしかなかった。
 今日のように、多くのファンやマニアの間にオーディオが定着した現実と、ヤマハというブランドがオーディオ産業の奈辺に存在するかに思いをいたせば、この新型プレイヤーの外観と、志向する性能が、昔日と全く異なるのはしごく当然といえよう。購買層ファン自体が、大きく変ったのである。共通点はただひとつ、ターンテーブル上のゴムシートのパターンだけだ。
 新製品YP700は、セミ・オートマチック・プレイヤーである。つまりレコードの音溝の上にアームを位置させてプレイ・ボタンをおせば、アームは静かにレコード上におり、演奏が終われば、アームは上って静かに定位置に戻りレスト上に止る。
 この新製品がセミ・オートマチック・プレイヤーであるということで、現在のヤマハの狙っている層が、昔日のように一部の超高級マニアではなくもっと若い広い層を考えていることが判ろうというものである。
 ターンテーブルは今日では高級品としてオーソドックスなべルト・ドライブ方式で、大きなメタル・ボードの左奥にアウター・ローター型シンクロナス・モーターがあり、三角形のカバーがその位置を示している。この位置は、カートリッジのレコード面上の軌跡からもっとも遠い位置であり、この一点を見てもプレイヤーの設計にオーソドックスながら十分な配慮がなされていることが判る。事実、カートリッジ針先をモーターボードに直接のせてボリュームを上げてみてもスピーカーから洩れるモーターゴロは微少で、モーター自体からの雑音発生量の少ないのが確められる。
 これはモーターボードの厚くガッチリした重量による効果も大きく見逃せない利点だ。
 さて、このプレイヤーのウィーク・ポイントは、アームのデザインにあるようだ。使ってみて、扱いやすく、誰にでも間違えることのない優れたアームとは思うが、ただ取り柄のまったくないありきたりのパイプアームだ。シンプルというには後方のラテラル・バランサーなどがついており、多分、これが特長としたいのだろうが、このラテラルバランサーと対称的にインサイド・フォース・キャンセラーが、アーム外側につけられている。アームは、実用的であると同時に、毎日これと対決を余儀なくさせられる音楽ファンの、マニア根性を、もう少し刺激して欲しいパーソナリティーを望みたい。
 ちょっとだけ不満な点にふれたがこのプレイヤーの最大メリットが2つある。まずヤマハならではの、豪華にして精緻なローズウッドのケースの仕上げだ。圧巻というほかない。
 もうひとつの大きなプラスアルファはカートリッジにマニアの嬉しがるシュア・75タイプIIがついていることだ。タイプIIになってスッキリした音が一段と透明感を強めた傑作カートリッジが、オプションでなく、始めからついているのは、このプレイヤーの49000円という価格を考えると魅力を一段と増しているといえよう。

デンオン DP-5000

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岩崎千明


スイングジャーナル 3月号(1972年2月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 今月のこのページを一見して、おやまた、ダイレクト・ドライブかと思われる読者が多いことであろう。
 先月号のテクニタスSL1000に引き続いて、今月はコロムビア/デンオンのDP5000の登場である。これで、この1年間に登場したプレイヤー関係の3機種が国産ダイレクト・ドライブ(以下DD)ターンテーブル関係の製品で占められたことになるわけである。先陣を切ったテクニクスSP10、続いて量産化の名乗りを挙げたソニーTTS2500とその高級型TTS4000、先月紹介のテクニクスSL1000、今月のデンオンDP5000、とすでに登場した製品群に続いて、さらにパイオニアMU3000が控えているし、開発完了を伝えられるマイクロ精機のDD型ターンテーブルも市場に姿を現わすのも間近いことだろう。
 すでに多くの機会に語られているように、これらのDD型ターンテーブルの出現は、国産ターンテーブルおよびそれを基盤としたプレイヤーの、飛躍的向上を意味する具体的な成果として、受け取ってよい。この、技術は、例えていえば自動車産業における、ロータリー・エンジンの、レシプロに対する優位性以上に評価され得よう。いくら賞賛しても決して過ぎることのない優れた研究開発であるし、製品化技術であり、それ一世界のオーディオ・メーカーのすべてに先駆けた、純粋の国産技術であるという点において、その価値が一段と輝きを増すのだが、それだけに、どうしてもDD技術に対するその評価は甘くなり勝ちなのだ。
 そうはいっても、国内市場において国産メーカー同志のDD型ターンテーブルやプレイヤーが肩を並べて競い合うようになってくると、それぞれの製品に対する特長づけや評価が要求されるものだし、それに応えるのが、このページの責任でもあろう。
 さて、今月のデンオンDP5000、さすが業務用一本槍に生き続けてきた筋金入り本格派老舗直系のブランド商品である。
 まずひと目みてスタイルが実にユニークだ。元来ターンテーブルのデザインほどむづかしいものはなかろう。
 ディスクを乗せるターンテーブルはまずまったくといってよいほど形を変えられるものではないし、そのまわりもモーターボードと名付けられる通り板状の域を越えるのか難かしいものだ。そうかといってターンテーブルのまわりがないのもは高級品には見当らないのだ。DP5000は視覚的にはまさにこの両方の中間的なスタイルボードではないがメカニカルには堅牢この上ないボードが30センチピッタリのターンテーブルの周囲をゆるやかに取りかこんでいる。ゆるやかにということばは妙ないいまわしだが、それは手前で幅広く、奥で狭くなるように傾斜を変えてあるために感じられるデザインのなせるわざだ。このユニークなプロフィルは、最初にちょっと、とっつき難い印象を受けるのだが、それを手元におけば、実に扱いやすく、演奏前後のレコードを傷つける可能性を根絶した配慮を知らされるに違いない。ターンテーブルのふちはその上でレコードを裏がえす際に、時に障害になり得るし、外し損なったレコードをしばしば傷つけるものだ。
 この傾斜したターンテーブルまわりのボード(?)は、レコードの取り外しの際30センチというターンテーブルとゴムシートの作るわずかの隙間に指をかけやすくする、という大きな利点をも生み出している。さらにもうひとつの意味はプレイヤーの大きさやアームを追加する際にも制限をなくしている。
 加えて、ほこりがつき難いこともいい足してよかろう。
 このわずかなボードに、ストロボと操作を考えて大きく並べたプッシュスイッチの角型つまみ。
 ランプを内蔵している点もいたれりつくせりの感がある。
 さて、本来の性能だが、ACサーボというテクニクス方式とはやや異なる電子サーボを採用しているがその特長は、大きなトルクを得られる点にあり、まさに業務用ということを強く意識した瞬間定速型で、1/3回転で定速度に達するのが大きなポイントとなっている。
 むろんその回転むらや振動の少なさはDD型そのものズバリで、いうことはなかろう。価格も適正な上、信頼度の高いデンオン・ブランドのDD型の出現は、マニアにとって大きな購売目標となって永く市場を確保するであろう。

JBL L100 Century

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岩崎千明


スイングジャーナル 1月号(1971年12月発行)

「SJ推選ベスト・バイ・ステレオ」より


 ここで今さら、JBLセンチュリーのよさをうんぬんするまでもなく、すでにオーディオ誌やレコード雑誌において、多くの評論家諸氏の圧倒的な賛辞を一身にあつめたこのスピーカー・システムは、JBLの傑作である。
 JBLのシステムを大別するとランサー・シリーズと呼ばれる系統の製品と、従来からのユニットを主力とした組合せシステムの2系統がある。
 ランサー・シリーズは、いわゆるLEシリーズのユニットを中心として組み合わせたものをもってスタートしたが、ジム・ランシングという創始者の名をもじったランサーというこの名称からも分る通り、JBLの家庭用システムの主力を形成している。これに対して従来からの高能率型ユニットを組み合わせたシステムは業務用および高級マニア向けともいえよう。ランサー・シリーズによってJBLはメーカーの姿勢とその狙う需要層とを大きくかえたともいえる。
 つまり業務用にも準じる超高級システムを少量生産するメーカーから、大きく基模を拡大して、家庭用音楽システムのメーカーと変革をとげたのであった。その尖兵として、いみじくも槍騎兵ランサーと名付けたシステムが登場したわけである。
 このランサー・シリーズには、すでに傑作中の傑作といわれたランサー77を始め、ローコスト型44、さらに現在の米国の市場で驚異的な売行きをみせているランサー99があり、その最高ランクが例の101である。ランサー・シリーズの成功が、JBLをしてこの延長上の製品をつぎつぎと発売させるきっかけとなったのはいうまでもない。
 このセンチュリーも、新時代のスピーカー・システムとして、指向性の一段の改善ということを加えた新型のランサー系のシステムである。センチュリーを含めランサー系のシステムのもっとも大きな特長は、このシリーズ独特ともいい得る、まるでそよ風を思わせる超低音の豊かな息づかいである。この超低音は、ブックシェルフ型といわれる寸法的な極端な制限を受ける現代の家庭用システムとしては、まったく信じられぬくらいの低域に達する低音限界レンジのためである。このfレンジは、さすがのARのオリジナル・システムさえもしのぐほどで、これがJBLランサー・シリーズの華麗なサウンドの大きな根底ともなっているわけだ。
 もっともこの超低音とよくバランスする高音のすばらしい伸び、ずばぬけた指向特性は、豊かな低音エネルギーをよりひきたたせているし、さらにJBLの従来からの音楽に対する良識の現われともいうべき中音部の豊かさも失われることなく、ランサーの大きな魅力となっているのはいうまでもない。このように豊かな音響エネルギーに加えて広いfレンジとがJBLの現代的志向であるのは当然で、その成果のひとつの頂点として、ここにあげるセンチュリーの存在の意義とそれに対する賛辞の集中とがあるのである。
 指向性の改善に登場したフォーム・ラバー・ネットは、このセンチュリーの外観的な最大の特長で、カラーがチョコレート、オレンジ、ライト・ブルーとあり、サウンドともどもその風格に現代性をガッチリと植えつけて、モダンなスタイルを作る。
 最近、私はこのセンチュリーを愛用のエレクトロボイス社エアリーズと並べ、比較使用したがJBLセンチュリーの一段と解像力を上まわるのを知らされ豊かさにおいてひけをとらぬエアリーズより、現代的サウンドをJBLセンチュリーから感じとった。
 このJBLシステムをより以上生かすのには、手元にあった8万円台の国産アンプが好適であった。それはラックス507Xでありトリオ7002で、これに準じた高出力のトランジスター・アンプが欲しい。ただ、案に相違して手元の管球アンプよりこれらの石のアンプが優れていたのが興味ぶかかった。

JBL SG520, SE400S, SE460

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1971年10月発行)

「supreme equipment 世界の名器を探る」より


 71年の看板商品だったアクエリアス・シリーズが評判の割に1型、4型を除き、宇宙的デザインの主要高級品2、3が本国で思わしくないとかの噂。世界のJBLも近頃はその威光にかげりが見えたとか、ささやかれている。
 これを吹き飛ばすかのようにプロフェショナル・シリーズが日本にもお目見えして、またまた話題を呼びそうだ。米本国のプロの分野で大手を振って幅をきかせているアルテックと並び、JBLが最近勢いを急進しているという。
 今やJBLはスピーカーだけでなくアンプを中心として音響設備に大々的に乗り出しているのである。
 JBLがアンプを作り出したのは、自社のスピーカーももっとも理想的に鳴らすという、はっきりした目的を持っている。当り前だがメーカーとしてこれほどはっきりした姿勢を、製品に持たせたことはそれまでにはなかった。JBLが「バラゴン」というステレオの3ウェイのホーン・ロード・システムを発売したときと同時に「エナージァイザ」という変った呼び方で発表したパワー・アンプが、パラゴンのドライブ用だ。スピーカー・システムの後側には、専用の格納スペースさえ設けられている。
 このアンプにつけられる名称通り、スピーカーの音響エネルギーの供給用という目的が、はっきりと出ているし、それがJBLの姿勢そのものなのである。この「エナージァイザ」にはパラゴン用とするときの低音上昇のための専用イコライザー・ボードが内蔵されていた。
 このエナージァイザはSE400として独立したステレオ用パワー・アンプの形で発売されたが、それと同時に発売されたのがSG520プリ・アンプでグラフィック・コントロ−ラーという名称をつけられた。スライド型のコントロールと、プッシュ・ボタンの切換という当時まったく新鮮なデザインに対して名づけられた。ステレオ・ブームの始まろうとする61年のことである。その翌年には早くもSG520は米国内西海岸のグッド・デザイン製品に選ばれ、品質、デザインとも、ずばぬけた高性能を認められたのは当然であった。
 この当時は真空管アンプで圧到的に他を圧していたハーマン・カードン社のサイテイション・シリーズがトランジスタ・ライズされた製品を発表し、今はなきアコーステック・ラボラトリのアコースティック・アンプが好評のもとにスタートした。しかし、現在、そのいずれもが数年前に姿を消し、ハーマン・カードン社もこのトランジスタ・アンプの失敗が原因で大きく後退を余儀なくされマイナーに引下ってしまった。トランジスタ・ライズに早くからふみ切って成功したのはJBLアンプだけなのである。これは実に偉大な技術的成果であり、メーカーの姿勢の正しさをも示すといえるであろう。
 かつて初期のSE400を実測してみたことがあった。ステレオ用として同時にフルパワーな出したとき、それはあらゆる周波数で60/60ワットを示した。規格の上ではなんと40/40ワットのアンプがである。現在はSE460としてさらに大きくパワーアップされている。
 この直後、私はSG520と、SE400を組み合せて手元におき、毎日のように愛用し、リスニング・ルームのメインとして活躍しているのはいうまでもない。
 永年使用してみてはっきり知らされたことは、61年に発表したSG520は10年を経た今日といえとも、これに匹敵する美しく華麗なステレオ・サウンドを持ったトランジスタ型のアンプを知らない。10年たった今においてまさに世界の名器といわれも大きな理由であろう。メーカーのすぢ金をこれほどはっきりと感じさせもアンプはめったにないであろうし、それは10年に渡って何ら変ってはいないのである。

ラックス SQ507X

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1971年10月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ここに紹介するラックスの新型アンプSQ507Xは、この71年秋発表される製品の中でもっとも魅力に富み、その期待に十分応え得る品質を秘めたSJ選定の名に恥じぬアンプである。
 ラックスは、同社のベストセラーであるSQ38FDアンプにみられる通り、今日で市場にあるただひとつの管球式を現在に到るも市販、製品化しているきわめて「保守的」な色彩を濃く持ったメーカーである。日進月歩、技術のピッチの著しい。ステレオ・メーカーとしてトランジスタ・アンプが幅をきかせる今日、今だにSQ38FDを商品としているのがこのメーカーのよい面にも悪い面にも出ているのだ。
 良い面は、いわずとしれて、高級マニアの欲する技術を温存していることにあり、「音楽のわかる」ことを誇るステレオ・メーカーである。悪い面はこのメーカーの作るトランジスタ・アンプが他社ほどにふるわない原因を作っているともいえるし、名作SQ38FDがラックスの作ってきた今までの数多いトランジスタ・アンプの影を薄くしてしまっているという事実だ。
 このSQ38FDのイメージをぶちやぶらずには、アンプ・メーカーとしてのラックスの地位を将来に確保することすらおばつかないのではあるまいか、という危惧はラックスのアンプの高品質を知るものにとって、おそらく共通の懸念であり、またこれからのアンプに対する期待でもあったに違いない。
 ラックスが発売したSQ507Xは、まさにSQ38FDの水準に達し、それを追い越したといい得る「最初」の製品である。
 このアンプの音に接したとき、このアンプの中味がすでに発売されているSQ505Xとほとんど変ることがなく、ただパワー・ステージを強力な石に換えて出力をアップしただけと聞かされ、それを疑ったほどである。つまり、それほどにSQ505Xにくらべ、音色の向上が明瞭なのである。
 深みと、うるおいのある音から、SQ505Xのと同じ回路方式とはどうしても思えないぐらいだ。あえていえば、これはJBLのアンプに近い音であるともいえるし、SQ38F特有の美しい音を受け継いでいるともいえる。
 ジャズ・サウンドのとりこになっている私にすれば、今までふれてきたラックスのトランジスタ・アンプの音は、やはりアタックにもの足りなさと歯がゆさをいつも味わうのだが、このSQ507Xに対してはそれが全然なかった。アルトやテナーのソロの迫力、ピアノのアタックのガッチリした響き、どちらもSQ507Xは見事にたたきだした。シンバルの輝きも、ベースの厚いうねりも、楽々と再生してくれた。この深みはかってSQ38FDで得た力強いベースに匹敵し、トランペットの輝きはSQ38FDさえ凌駕していた。このしっとりとして、しかも華麗ともいえるうるおいを他に求めればトランジスタ・アンプではJBLのそれしかないのである。
 この艶ややかにして素直なサウンドは、ラックス特有のシンプルな構成のトーン・コントロール回路と全段直結の融合による所産であるに違いない。さらに加えるならば構成ステージをやたら増すことなく、全体にムダを廃しゼイ肉を落し切った構成にあるのであろう。
 しかも、このアンプの11kgという重量は電源回路のゆとりあるレギュレーションを意味し、見えない所まで徹底したメーカー技術陣の充分なる配慮をうかがわせる。
 ラックスが今秋発象したSQ505X、503Xなどの全段直結アンプ群の最高級品としての誇りと品質とを担って登場したSQ507X、おそらくこのメーカーの今後の発展の強力なる索引力となるに違いない。

トリオ KT-8001

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1971年10月発行)

 「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 もしキミ、お金の糸目をつけずにチューナーを選べ、といったら、おそらく大多数のマニアはソニーの高級チューナーST5000FかまたはこのトリオのKT8001を指名するに違いない。こと、チューナーに関する限り外国製はFM周波数帯域が日本国内と違うため、海外製品が選ばれるというケースはよほど特殊の状態に違いない。
 しかも日本メーカーのチューナーに対する高周波技術は、今や世界の第1級に位しているから、あえて海外製に国産の2倍から3倍の金をはらうマニアはめったにいまい。
 まあ、こう考えてくると、国内市場でトップにランクされるチューナーは世界の市場でも最高ランクの品質をもっているとみて差支えない。つまり、トリオKT8001はまぎれもなく、世界のあらゆる製品中トップに位する高級チューナーであるといい切り得るのである。
 トリオのチューナー技術、FM受信の技術は、それはそのまま日本のハイファイ・チューナーの技術を示し、その発展を示すことを知らぬマニアは少ない。
 その長年のFM技術の一歩一歩の積重ねが、今日最高品質といわれるKT8001を創り上げたのである。
 というのは、トリオは、日本国内においてFM放送がまだテスト電波の時期において、すでに米国市場に数多くのFMチューナーをディーラー・ブランドで輸出していた。これは、おそらくオールド・ワァンなら誰しもがよく知っていた事実であり、61年頃の米国ハイファイ・カタログにはトリオの当時のチューナーとまったく同型の製品をひとちならずみつけることができる。
 米国内のラジオ放送ネットワークが、BCバンドからFMに急速に拡がり一都市に数10局のFM局が林立し、びっしりとFMバンド内を埋めつくしている。この受信には単に混信の問題だけでなく、アンテナ入力において他局の強力な電波による混変調、チューナー自体の局部発振回路からの妨害など、従来、全然考えられ得なかった難問題がつぎからつぎにと続発し、チューナーが高感度であればあるほど未知のトラブルをひとつずつ解決せずには前進できなかったのであった。
 さらにFMステレオの普及によって問題はマルチプレックス回路内にも及び、チューナーが高級化すればするほど、究明解決を要するテーマが山積してくる。
 こうした幾多の試練がトリオのFM技術を作り上げ、それが常に他社の製品にさきがけて新技術を盛り込んだ製品を世に送り出すという見事な成果をあげてきたわけだ。
 このKT8001に採用されている新技術の数々、例えばフロント・エンド(受信同調部)に設けられた局部発振のバッファー回路、集中回路による6素子のクリスタル・フィルターさらにマルチプレックス復調回路のダブル・スイッチングなどは、おそらく早晩他社の高級チューナーにも登場してくるに違いない。技術を舞台とした戦いというものはそういう宿命を常に持っている。しかしあえて私はいいたい。トリオの技術こそ、無からそれらの新技術を開発しだその技術陣の努力こそ、本当の「技術」であり、あとからそれを追いかけ、コピーしたものより常に一歩先んじているに違いないことを。
 開発途中でいくつかの難点にぶちあたり、それを、こまかくひとつずつ突き破っていく、これが見せかけだけでなく技術を土台から創り上げていくのである。つまり、トリオのKT8001と規格特性上はほぼ同じ製品が他社から出ることはもう時間の問題なのだが、しかしその時になっても、トリオのKT8001の存在は、ますますさん然と輝きを増すに違いない。
 トランジスタ・アンプ時代に先駆けたトリオのアンプ陣の、強力なバックボーンとしてトリオのチューナーはますます重要な地位を占めるであろう。
 KT8001はその最頂点の存在を一層明確に築き上げるであろう。

ソニー PS-2500

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岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1971年9月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 今や世界に冠たる日本のステレオ業界は、その隆盛ぶりを誇っているが、そのひとつの現れとして新製品の出ない月はない。毎日のように、どこかのメーカーで新製品発表会が催されている。この秋も、オーディオ・フェアを控えて、またまた多くのメーカーからどっと新製品がファンと関係者の期待と夢をになってくり出されるだろう。
 この秋の新型を予測することは難かしいことではないが、ドル・ショック以来大いにゆれ動くステレオ業界だけに、今後の新型発表のピッチはやはり遅くなることだけは避けられそうもない。今までにもしばしばみられたような、眼を惹くがための商品としてのモデル・チェンジというような姿勢から、実質的な本来の意味の新型へと、商品計画を改めるようにならざるを得ない。逆にいえば、製品の商品としての寿命は長くなるだろうから消費者としては良い商品をじっくり選んで永く愛用するという空気が強められるに違いない。メーカーにとってつらいには違いないがそれはまた好ましいことでもあるのだ。
 さて、こうした眼で今年の新型を考えてみたときに、優良製品として残る71年型オーディオ製品はいったいいくつあるだろうか。このページに採り上げられた数々は、それに対するひとつの答えといえるが、今月紹介する「ソニーPS2500」こそ今年の優秀製品として、今後永くソニー製品としてのブランドをになうべき製品と断言できよう。
 国産オーディオ製品として、ターンテーブルが海外品に劣るという考えは、この3〜4年のうちに急速に解消したが、それでも海外製品より優れた機器となると、やっと今年になって出廻ってきたテクニクスSP10ぐらいなものだ。一般的な製品としてパイオニアのMU41とか、マイクロのターンテーブルなどコストパーフォーマンスとしてはずばぬけた製品であっても、絶対的な優秀さを誇ると断定するにはいささかためらわざるを得ない。
 ソニーの新型プレイヤーは、このためらいを一挙に取除いてしまった。それはまず、ダイレクト・ドライブ機構ターンテーブルにある。このダイレクト・ドライブ機構のアイディアは、電池式かべ掛け時計の廻転機構に発する。だから、それを実際に具体化するのは、メーカーの技術力とその速度にかかっていたわけだ。
 テクニクスが他社にききがけて高級製品の製品化に成功したあと、トランジスタ技術では世界にその名を轟かすソニーがほほ同じメカニズムのターンテーブルを完成したのは、当然といえば当然であった。しかし商品としてみた場合、ソニーのダイレクト・ドライブ・ターンテーブルは、まったく強力な商品であるといえよう。その価格といい、プレーヤーに仕立て上げて同時発売という商品企画と布陣の展開のすばやさといい、ソニーのこの新製品に対す熱意と姿勢は眼をみはるほどだ。
 DD機構のこのターンテーブルは、オーディオ・メーカーの一方の雄...ソニーをしてこれだけの強力な布陣も当然といえる10年ぶりの優秀製品なのである。DD機構そのものについては、すでに優秀性を多く伝えられているので改めて記するまでもない。
 おそらく、10年後は優秀ターンテーブルといえるものは、海外製品を含めて全てこのメカニズムになってしまうに違いない。
 これを組込んだプレイヤーが、アーム付きでなんと59、800円という価格は、まったく信じ難いといえる。
 ただただ難点をいえば、このターンテーブルの驚異的なメカニズムとその性能に対し、アームは数年来の製品を改良したにとどまったものを併用している点である。改良されたとはいえ、このアームの扱い難さに不満をおばえてしまう。

テクニクス SU-3400

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岩崎千明


スイングジャーナル 9月号(1971年8月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 テクニクスSU3404、エレクトロボイス社のエアリーズ、エンパイヤ999VE着装デュアル1019──これが8月初め現在の、もっと詳しく言うならば、5月連休以後の私の居間におけるリスニング用システムだ。このシステムで、テレビの音楽番組からカセットでとった自家製ジャス・テープから、むろんお気に入りのジャズの新譜と、生活に溶け込んだあらゆる音楽を楽しんでいるわけだ。
この居間兼食堂は私の生活の場だ。JBLハークネスを置いたリスニング・ルームとはまた違った意味で私にとってこの上なく音楽と結びつきの濃い部屋であり、ここでの装置への要求は、たとえ根本的に同じであっても、リスニング・ルームにおける場合とは少々ニュアンスの違うものだ。その最大のポイントは、「聴きやすい再生」を何にもまして望んでいる点だ.
 エアリーズというスピーカーについては、すでに7月号のこの欄で紹介ずみだが、音楽の持つ情感とか雰囲気を良く伝えてくれる点だ。私の好きなシステム・コンポーネントであるが、これらの、その特長をもっとも発揮してくれるアンプ、それがこの部屋での愛器「テクニクスSU3404」だ。
 このSU3404は、クォードフォニック用の2チャンネル──4チャンネル変換用のアダプターを組み込まれたものであって、その母型ともいえるのが2チャンネル・ステレオ・アンプSU3400である。
 SU3400は、一口に言うならば、老練なハイ・レベルのマニアから、若いオーディオ・ファンまでを対象とした高品質のプリ・メイン・アンプだ。老練なマニアは、このアンプを聴き込んで行くに従ってますます気に入るだろう。長く聴いても飽きのこないすなおさ、長時間聴き込んでも疲れることのない音に惚れこむに違いない。そして若いファンは、このアンプの迫力とゆとりに満ちた重低音、味、どぎつさのないしかし澄んだ輝きにも似た高音の冴えにたまらぬ魅力を感じるに違いない。
 私自身にしても、ここに触れたそれらの特長は最初きいたときからまいってしまった。特にエアリーズを接いだときの重低音のゆるがすような響きは、エレクトロボイスが狙うこのシステムの最大ポイントを他の国産アンプには見られないくらいフルに引出している。このアンプSU3404は収まるべきスペースに収めたままになってしまった。
 テクニクスのアンプ群は50A、また以前この欄で紹介したSU3600、さらにこの3400とデザインが一作ごとに一新されている。逆にいえば、デザインのポリシーが定まっていないことを指摘できるのだが、ただこれは外観上のことであって、中味に関しては決してデザインにおけるほど一貫していないわけではない。50Aのすなおさと品の良いクオリティはSU3600の一聴派手なサウンドにおいても基調となっているし、さらに3400シリーズになってこの基調の上に加え50Aに近い音色をとり戻したといい得る。
 つまり、テクニクス・アンプはひとつのサウンド・ポリシーの上に築かれたアンプなのである。3400になって外観的にメカニカルな面を強め若いファンを意識したデザインに格段と近づいたが、サウンドそのものは外観とは異なり前作3600より一層完成度の高い製品となった。
 それは、35ワット/35ワットというハイパワーと、テクニクス直系のサウンド、さらに伝統の全段直結アンプという盛りだくさんのメリットを59、000円の価格でまとめあげ得たという点にある。
 この価格はコンポーネント・システムを狙う層にとっては製品レベルともっとも買いやすい価格とを示すものだし、他社のアンプもこのラインに目白押しにあるし、消費者側からみれば選択の幅のひろいクラスなのである。毎月のように新型アンプが市場に送り出されるがSU3400はこの中心にあって、ナショナルというステレオの老舗の良識を示す夜明けの星の如き存在となるにちがいない。

サンスイ SP-70

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岩崎千明


スイングジャーナル 9月号(1971年8月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 ブックシェルフ・タイプという形態のスピーカーを日本のオーディオ・ファンの間に定着させたのは、米オリジナルのARでもなければ、それをイミた形でスタートしたパイオニア製品でもない。
 ほかならぬサンスイのスピーカー・システムSP100、SP200のシリーズだろう。この製品のずっと以前からこの形をとったシステムがないわけではないが、サンスイが始めてスピーカーに手をのばして発売したブックシェルフ・スピーカーが高い人気と業績をあげたのは注目に価する出来事としてわがステレオ史に残るだろう。
 ブックシェルフとしては大体ARを原点とした物が多く、製品がARほどのサウンドに至らなかった当時は「ブックシェルフの音は低音がつまっている」と酷評されるのが常であった。この常識をサンスイのシステムはぶちこわし踏み越えた。
 サンスイはこれらシステムを発売するに約2年先立ち、JBLの日本総代理店として扱い製品は、JBLのスピーカーを中心としてすべてにおよんだが、このキャリアはハイ・ファイ製品にもっともむつかしい音作りに貴重な経験となった。そして具体的なポイントとしてはJBLのブックシェルフ・スピーカーとして名乗りを上げたランサー・シリーズが、すべてチューンド・ダクトと呼ばれるバスレフレックス・タイプか、またはその変形とされているドローン・コーン形式のパッシブ・ラジエーターによって低音特性を得ていることにある。
 この世界的な名器を範にとったサンスイのブックシェルフ型の低音特性が従来のそれとまったく違ったサウンド低音感として大いに受けて、画期的な売行きとその後のスピーカーの方向をすら変えてしまったわけである。
 このバスレフレックス・タイプの箱に入れるべき「ユニット」は、オリジナルのブックシェルフともいうべき密閉箱型式のユニットにくらべて、f0がかなり高くとり得ることこそ特長だ。というのは、このためコーン紙を含む振動系のf0の低いものとくらべて軽くできるという特点をそなえ、これがスピーカーという電気機器にとってその性能の最大点である能率の向上をはかれる点にある。「ブックシェルフになってスピーカーは能率が低下した」という点はサンスイのものに限っては、決してそうでない点がサンスイのみの特長でもあるわけだ。この利点はスピーカーが小さくなればなるほど重要な意味をもってくる。つまり、小型スピーカーを使用する需要者にとっては、なるべく安上りのコンポーネント・システムを狙うため、いきおいアンプに対する価格をおさえ、必然的にパワーの小さいアンプを用いてシステムを構成することになる。小型スピーカーほど小出カアンプで鳴らされるという矛盾がごく普通にまったくの無頓着さで行われているのだ。小型スピーカーほど低能率、従ってハイ・パワーを必要とするのに、小型システムを低価格の小型アンプで鳴らすという理にそむいたことが平然と行われ、常識となっている現状なのだ。そこで小型スピーカーの高能率化こそ良い音へのなさねばならぬ急務である。いや、急務であったのである。
 一般のアマチュアやファンがそれに気付く動機こそ、SP70の出現だった。SP70が、小型ブックシェルフの中でもズバヌケた売行きだということだ。それは、消費者がむつかしい理くつを抜きにして、SP70が他の類形的なシステムと違う点、高能率という点を「音の良さ」という形で気付いているからに違いない。
 4チャンネル化時代をむかえたオーディオの世界で、SP70の存在は、まだまだ重要なものであるに違いない。また4チャンネル用としてSP70が部屋の四隅におかれるのは、ある意味で理想的なリスニング状態といえるのである。

シュアー M44-5

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岩崎千明


スイングジャーナル 8月号(1971年7月発行)

 「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 キミはいま、自分の再生装置に対して不安を感じていないか。
 キミの再生装置の音が果して本当によいかどうか自信があるか。
 キミの再生装置を友達に聴かしてやるだけのファイトがあるか。
 レコードの傷みが全然気にならないでいるか。
 そういうときに、まずレコードプレイヤーのカートリッジをチェックしてみて、絶対に信頼できるなら、まずキミはしあわせだ。
 優れたカートリッジほど、使い方はむつかしい。軽針圧を保ったまま、完全にトレースさせるには、アームが優秀であって、その調整が完全でなければならない。
 むろん、そのためにはレコード自体の保守が十分に行き届いている必要があるし、その音溝が最良の状態に保たれていなければならないし、それをトレースする針先は、きわめて厳格にチェックして、正しい状態に保たれていなければならない。
 正しい状態、これがなかなかのくせものだ。キミがまだかけだしのマニアならどういうのが正しいのかということすら十分に知らないだろうし、もし、かなりマニアなら、ほんの僅かのカンチレバーの片寄りでも気になるだろうし、動作中片寄りを起こすことのない、軽針圧カートリッジはごくわずかだ。
 こう書いていくと、たったカートリッジの針先ひとつにしたって、大へんな神経の使いようと、細心の注意の要求のため、音楽を楽しむどころではなくなってしまう。
 さて、そこでだ。
 キミを、こういう一切のわずらわしさから解放してくれるカートリッジがあるのだ。シュアーM44/5、これだ。M44/5はもう発表以来10年近い歴史を持っている。
 この原型でもあるM3型がステレオ・レコード発売以来、もっとも優れたカートリッジとしての座を永く保っていたが、M44出現以来、その座はこのM44にとって変った。「美しい安定した音色」という偉大なるおまけがついて。
 今日、国産カートリッジもその高性能ぶりは舶来カートリッジに迫り、あるいは追い越そうとさえしている。
 カートリッジの優秀性を測るべきポイントとして、私はその中音域から高域にかけてのトラッキング・アビリティーつまり音溝に対する追跡能力というか「追随特性」と、もうひとつ最高域のセパレーションの2点について注目するが、この点でも国産カートリッジの高級品は非常に優れており、海外製の高級品に決して負けてはいない。ただひとつの点をのぞいて。
 そのただひとつの点、これを端的に持っているのが、このM44を端に発するシュアー製品である。というのは、なによりも音が安定していて、美しいのである。
 音が美しいというのは、ある意味ではそこで楽器的な要素が介在することとなって再生という事象にある面で水をさすことにもなり得る。
 しかし、限度ある再生音楽において音が美しいという点は他のいずれの長所にもまして大きなるポイントなり得るのである。
 M44/5が、今でもなお多くのファンの支持を得ている、というのも、このカートリッジか、決して今日的な高性能カートリッジでもなければ軽針圧カートリッジであるという理由でもない。ただ非常に安定に動作し、音が豊かで美しいという点のみにある。この点では、おそらく、これからもこのカートリッジに優る製品は決して多くはないであろうし、M44/5がまだまだ多くの新らしいファンを獲得していくことが予想できるのである。

ソニー TA-1140

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岩崎千明


スイングジャーナル 8月号(1971年7月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 TA1140という型番、およびパネルデザイン、この両方に対してはっきりと感じとれるのは、TA1120直系の製品であるという点だ。
 TA1120はいわずとしれたソニー最高級アンプ。名実とともにその存在は日本国内市場はもとより、米国をはじめ世界のハイファイ市場においても、最高の品質と性能を誇る傑作アンプだ。マランツ、マッキントッシュという高名ブランドの製品と肩をくらべ得る製品は、国産品が世界アンプ界を圧している現在たりといえども、そう多くはないことを考え合せればソニーのTA1120の製品としての価値は、極めて高く評価でき得るであろう}
 このTA1120直系のジュニア型というべきアンプがTA1140である。
 あえて直系というのには、無論、理由あってのことだ。
 ソニーはESシリーズと銘うって一連の高級オーディオ・コンポーネントを発売して、ガッチリとステレオ業界に根を下したあと、その商線の拡大を企り、若いオーディオ・ファンを強く意識した新シリ−ズのアンプを打出した。それが2年前この欄において紹介したTA1166であ
る。
 しかし、そのイメージ・チェンンジはあまりに強引であり、あまりにもソニーのイメージから、かけはなれたものにしてしまったようだ。通信機に似たパネル・デザインと派手好みな音色作りが、ソニーのオーディオ製品に対する期待をまったくそらせてしまう結果となった、といえよう。
 この製品と前後して出たオーディオ・コンポーネントには、大なり小なりこういう傾向が目立った。それがよいにしろ、悪いにしろオーディオ界のソニー・ブランドがマニアだけのものという従来のイメージをぬぐいさったことは、大いなる前進といえよう。
 この時機に必要なのはTA1120シリ−ズの普及型、というべき若いオーディオ・ファン向けのアンプであろう。
 1120はすでにタイプAを経て今やタイプFとなり、価格は世界の名器にふさわしく13万8千円という高価。その後1120Fのマイナー・シリーズとして昨年秋、発売されたTA1130すら88、000円という、初期の1120なみの価格だ。
 初級マニア、このマニアということばにはその語訳どおり、マニアックな熱烈なファンという意味で、その熱烈なファンの卵達にとって、11120Fクラスのアンプを使うというのは、彼のオーディオ・ライフのひと
つの夢であろう(その夢を現実のオーディオ・ライフにしてくれるべき1120ジュニア版の出現こそ、今のオーディオ界にとってソニー製品の布陣にとっても大いなる価値と意味を持っている。
 TA1140の出現は「これ」なのだ。
 TA1140こそ、若いオーディオ熱心なファンにとって、正に夢を現実に引戻してくれる「正義の味方」な
のである。無放の剣なのである。永年の夢をかなえてくれる、最高品質のプリ・メイン・アンプなのである。
 キミの机の上に、世界長高のアンプがどっしりと置かれることが手近かに考えられるべく出現した製品なのである。あれこれと、多数の商品の中から選ぶ必要のない最終的要素を濃く持った製品なのである。
 TA1140の良さについて、今さらいうこともないであろう。1120のパワーを縮少した以外には、ほとんど差のないといい得る諸特性と音質を誇る。しかも価格は6dBダウンというのが、若いファンには絶対ともいえる大いなる魅力だ。
 ただ、ひとこと付加えたいのは、ソニーのアンプ全般にいえることなのだが、規格最大出力はたしかにすばらしい数字なのだが、実際に長時間、フルパワーに近く鳴らしていると、規格出力を保つことがくるしくなるように思われる。もっとも、いくらジュニア版とはいえ片側35ワットのこの級のアンプを、フルパワーで鳴らしつづけるという使い方をすることは、一般家庭においてはあまりないことであるに違いない。つまり、普通のユーザーならば、そういう点に気付くことはまずあるまい、と思われる。しかし、あまりハイ・パワーを望む向きには1130とか1120Fをすすめるべきだろう。

Lo-D IA-600

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岩崎千明


スイングジャーナル別冊「最新ステレオ・プラン '71」(1971年夏発行)

「Lo-D in jazz」より


 最近、オーディオの新製品が各社から多数発売されているが、全体を通して強く印象に残ったことは、日立、ナショナルなど家電メーカーといわれる大企業の、ステレオ・パーツの著しい向上ぶりだ。向上というよりは脱皮というべきか、誕生というべき、そのハイ・グレードぶりなのである。
 日立がステレオで注目されたのは、HS500というブックシェルフ・スピーカー・システムの誕生以来だ。まだ4年になるまい。
 このシステムを、目白の奥まった西洋館然とした日立別館での発表会で接したとき、AR3風の底力ある重低音が評判の高いARよりもさわやかだったのに不思議な面持ちであった。
 ずっとあとになって、このスピーカーのために、日立中央研究所の技術陣グループが多数動員され、工学博士級が各ユニットおよびエンクロージュアを、それぞれ担当したと伝え聞いた。そのグループはHS500の開発終了後、カラーテレビ新設計に携わり、いまふたたびスピーカーにもどったとか......世界の大企業と肩をならべる大メーカーにふさわしい技術的シンク・タンクの巧妙な使い分け。「技術の日立」とよくいわれるその技術陣の厚さ、その活用のうまさが端的に示されている。世界に類をみないHS500のユニーク・ポイントの数々は、「日立」でなければ創り得ないであろう。
 さて、こうした製品の中で、日立のアンプをじっくりとながめ、音を聴くという付き合いも、ここ最近のことであった。スイングジャーナルの試聴室で、数あるアンプの中に置かれた日立のアンプに視線が流れたとき、そこで止まることはなかった。たぶん、ぼくだけではなく、初めて接する方は誰でもそうであろうと思う。
 それくらいに地味な、飾り気のないパネル・デザインである。味もそっ気もないということばがぴったりのシンプルなパネルだ。つまみが上段一列、下段の右半分にスイッチが−列。これでもステレオ・アンプか、と思うほどツマミも少ない。昔、見馴れたモノーラル時代のアンプを、スッキリさせて並べたという感じである。
 今日のステレオ・アンプには、ツマミやスイッチ類がことさらに数多く、並べられているのとは好対照なこの端正なデザイン。日立のアンプ類はこのシンプルなデザインにすべてがよく表われている。
 特長とか、眼をひくようなポイントは何ひとつない。それこそが日立のアンプの特長なのだ。それはそのサウンドにも表われているし、このアンプの性格を決定しているのだ。それはまた日立の製品に対する姿勢を意味しているのではないだろうか。ステレオにおけるアンプの価値が低歪率、信号対雑音比、f特、ダイナミック・レンジ......と技術が進歩するにつれて、その要求される技術的な性能がますます高められているには違いない。しかし、なににも優って優先させなければならないのは信頼性とか、寿命とかであろう。つまり、故障しては困るという要求、いくらよい特性を備えていても何にもならない。鳴らないアンプでは何もないよりもまし......というより広くもない棚に大きな荷物が陣どっているのでは、無い方がましなくらいだ。
 多くのアクセサリー回路や、アイディアを盛り込んだ回路は、逆にいえば部品の数も増えようし、それだけ故障率が増えることにもつながる。だから必要な最少だけにしぼって、その主要品は十分に意を払って、ガッチリと手をかける日立のやり方はアメリカ合理性ということができるかも知れない。いかにも技術重視的ないき方ともとれる。しかしこれこそ、本当の需要者のための商品ということではないだろうか。
 端正なそのたたずまいをそのままに日立のアンプは、特にスッキリした、爽やかな飾り気も無い音だ。まるで冷たいまでにソッ気ないのも、パネルの印象と同じだ。というと、メカニカルな感じ、金属的なサウンドというようなイメージを持たれてしまうのだが、メカニックといういい方がもし悪い意味でなければ、そういえるし、金属的というのが冷徹という意味ならそういい得よう。作るべくして作ったのでなく、技術的な性能追求がこのサウンドに達したのだろうと思う。
 これは、市場に出ているアンプの中で、ひときわ高級品とされ、ハイグレードと誰もが認めるソニーのアンプにおけるそれとよく似たケースともいえる。ソフトとかウォームとかいう意識的につけ加えたサウンドがないという点がはっきり認識されるのだ。試みに録音のよいジャズ・レコードをかけてみよう。ぼくのもっとも好きな「ブラック・ホークのシェリー・マン」(米コンテンポラリー)の4枚組だ。音がボケやすいライヴ・レコーディングの中でもっとも鮮かなサウンドと、生々しい楽器のプレゼンス、加えてクラブの雰囲気がよく捉えられた名演名録音盤である。決っしてスタープレーヤーを集めたわけでもないのに、この名演ぶりはマンのドラミングと、曲の引きしめ方がうまいためだろう。このアルバムはオン・マイクの楽器のサウンド、特にドラムを筆頭に、ピアノ、アルト、ペットと鮮明度の高いサウンドにあるのだが、このアタックを期待以上に再現するのが日立のIA600であったのだ。クリアーな、パンチあるサウンドのクォリティーは特にローレベルでも実に見事なのである。
 ぼくはこのローレベルの、特にピアノの澄んだタッチに惣れた。日立のアンプにもまったく難点がないわけではない。中音域から高音域の鮮明さにくらべ、このアンプのサウンドは特にジャズに対して低音の力が物足りないのだ。ベースの床をはう響きはジャズだけのものだが、こういうエネルギーがちっとも出てこない。ステップ式の低音のコントロールを上げる。このトーンコントロールは効き方もはっきりし途端に力強い低音のパワーが、試聴室のJBL・C40のホーンから床に伝わり、椅子を揺るがす。試みにエアリーズに切り換える。ごく低い重低音が充分ゆったりした感じになるが、ボリュームと共にトーンコントロールはもうワンステップ上昇だ。この低音の大振幅の場合にも、ローレベルと同じような爽やかさに驚かされる。フラットの状態にくらべ低音は6段以上持ち上げられているから、パワーは4倍になっているはずだ。規格値を越えるハイ・パワーぶりなのではないかと思うほど......。しかし、これはデータに正直な日立のこと。いわゆるカタログ特性だけよいというのではない、ということが認められたわけであった。
 それにしてもローレベルの音の澄んでいること。マンの押え気味のタッチ、ドラミングの特長はこのローレベルの冴えで、ひときわ輝きを増す。カタログを見る。なるほど、日立の技術が、このアンプに光っている。「定電流ドライブ出力回路」これだ。やさしくいうと、小さい音のとき荒れやすいトランジスタ・アンプの音を、透明にするための技術だ。トランジスタの動作を理想的にするため負荷としてトランジスタを使っている新回路だ。これなら出力トランジスタは傷まないし、一石二鳥。ヤルネェ。なかなか......。
 実は4チャンネルにそなえて、このところ国産アンプの厳選したお気に入りを何台か買い込んだのだが、そのいずれとくらべても、互角か、それ以上のジャズ・サウンド。その秘密はやはりこの日立の技術にあったのだ。もうひとつ付け加えておくと、このときのアンプの中で、もっとも安いのが日立。ぼくはあまり好きなことばじゃないがコスト・パフォーマンスという点からいうと、ベストに選べそうだ。
 だけど、キミ。このアンプでジャズを楽しみ出したら、よいサウンドが判ってしまうことは確かだ。それがオーディオの泥沼の始まりになったとしても、当局はいっさい関知しない。

エレクトロボイス Aries

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岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1971年6月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 日本で初見参のエアリーズは、米国エレクトロボイス社の新型スピーカーシステムである。
 エレクトロボイス社については、すでに3月号におけるパトリシアン紹介記に述べたのでここに多くをいわないが、ケープケネディの音響設備の大半を手がけるほどの規模と実力を誇る米国きっての音響機器メーカーである。
 エレクトロボイス社のスピーカーの他社ともっとも違う点は、低音域にある。それをもっとも如実に示しているのは同社最大のスピーカーシステム・パトリシアンだ。
 初代のパトリシアンIVは、最近日本のマニアの間にクローズアップされているクリプッシュホーンを用いて、重低音域に充実を企った。当時としては数少ない大規模なスピーカーだ。当時これと肩を並べ得るのは、わずかにJBLハーツフィールド、アルテック820Cぐらいなものだった。むろんモノーラル時代のそれももっともけんらん期における最高級システムのひとつであったこのパトリシアンは、今も商品として残っているただひとつのシステムなのである。しかし、今のパトリシアンは800と名を改め、クリプッシュホーンをやめて、76センチの大型ウーファーを用いている。クリプッシュホーンから78センチ大型ウーファーと、最高のぜいたくな技術を採り入れているのがエレクトロボイス社の最高級スピーカーシステムなのである。注目すべきは、低音に対する、その十分にして豪勢な腐心ぶりである。
 エアリーズがテクニカ販売によって輸入されたことを聞き、その発表会に馳せ参じた時、来日していたエレクトロボイス社副社長がいったことばは忘れられない。
「エレクトロボイス杜のスピーカーは低音を重視する。音楽にとって低音はもっとも大切な要素だ」
 その発表会において、私は初めてエアリ-ズの実物に接した。それは、まさに、クラフツメン(職人)によって創られたスピーカーのたたずまいであった。家庭用スピーカーとして今まで、ブックシェルフ型のみに馴れた私の眼は、この据置型のエアリーズのプロフィルは、強烈なイメージを焼きつけられた。
 カーキ色サランに竹を編んだ風な「アメリカン・トラディショナル」と名づけられた仕上げは、まさにアーリーアメリカンの、開拓期の家屋の豪華なリビング・ルームにどっしり置かれた本箱という感じであった。手をのばしてつまみを引くと、そのままふたが開いて、びっしりと積まれた羊皮張りの部厚い書籍が並んでいるのではないかと思われようにずっしりと重量感に溢れていた。このアメリカン・トラディショナルと共に黒サランのスパニッシュと、まだ来日していないがもうひとつ白い木地そのままのコンテンポラリーとがある。
 さて、この一見本箱風フロア型、AR製などのブックシェルフよりひとまわり大きなシステムから流れる音。流れ出るというより、室内に溢れ満ちる音という感じのサウンドは、実に堂々としてうねるような重低音感は、床をゆるがし、分厚い重さと、しかしさわやかなアタックとが見事に融合されたというべきでパトリシアン直系のものだ。
 低音のふくいくたる醸成ぶりに多くの紙面をさいたが、このエアリーズの品のよい再生能力は、多くの高級マニアや識者がよくいわれ、推める。クラシックにおけると同じように、ジャズに対しても優れた力を発揮した。コルトレーンのアルトや、ロリンズのテナー、ドルフィーのバスクラというジャズサウンドの醍醐味をいかんなく再現し、マリガンのバリトンも、ゴルソンも生々しく、眼前に迫ったのだ。
 エルビンのすざまじいアタックと、シェリーマンのシンバルワークを聞いて私は、このスピーカーこそ自分の毎日を送る部屋にふさわしいと断じた。
 五月の連休の直前に、エアリーズは私の居間のテレビとななめ向いに収まった。
 ビートルズのオブラディーオブラダのコーラスが流れるとき、この部屋はビートルズを囲む多くのファンでうずまり、プレスリー・オンステージを鳴らすとき、この小さな8畳間は、ラスベガスのインターナショナル・ホテルのステージに変る。
 コンテンポラリー・レーベルで私がいち番好きな「シェリー・マンズホールのシェリーマン」に針を落す時、むさしのの一角のこの小部屋は、ロスの街角の地下にあるマンズ・ホールのざわめきの中にうずもれるのである。
(本誌4月号新製品紹介をも参考ください。岩崎)

エンパイア 1000ZE/X

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岩崎千明


スイングジャーナル 6月号(1971年5月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


「王冠」をシンボル・マークとしているメーカーは、別に珍らしいわけではない。しかも王者たるにふさわしい貫禄と高品質のメーカーである場合が少なくない。時計ではローレックス、車ではマセラッティ、そして音響製品としては、この米国のエンパイアだ。
 エンパイアは、その重要な部門は米国軍需産業と結びついている。近頃とみに重要性を増している水中通信のための超音波部門がそれだ。原子力潜水艦が海軍力の大きなウエイトを占め海底に数10日という長期間潜まるために、海中との通信は電波を用い得ないため音響分野で解決される。この分野で2次大戦中より重要な役割を果してきたエンパイア社が、卓抜せる音響技術をオーディオに活用して、エンパイアのHiFi製品がうまれた。当然のことながらその技術はある意味で他社をはるかにしのぐことになろうし、「王冠」のマークも当然のことで誰しもが認めよう。
 エンパイアの製品は、音響製品のすべてにわたる。スピーカー・システム、アーム、カートリッジ、さらにターンテーブルとアンプを除くあらゆる電気音響変換器を網羅している。注自することはどの分野でも、高性能を誰しもが認め超一流と格付けされる棄華なぜいたくきわまりない製品を市場に送り出している点だ。
 このエンパイアがこのたび発表したカートリッジが1000ZE/Xである。カートリッジにおけるキャリアは、シュアーと並ぶほど古く市場の評判も長くシュアーと並んで2分していた。売行きはピッカリングという老舗をはるか引き離し、品質は新進気鋭のADCをしのぐ実力ぶりは決して底の浅いものではなく、軍需産業を担ってきた基礎的な技術がものをいっているのに違いない。
 エンパイアのオーディオ製品にみられるサウンド・ポリシーはひとくちにいって、いかにも米国調らしいといい切れる。JBLの新大陸的な明快さと、清澄な迫力とを併せ持っている。ヨーロッパ調の格式ある控えめな品の良さはないが、フィラデルフィア・オーケストラの音のようにエリントン・バンドのサウンドのように華麗な迫力と厚さを感じるサウンドだ。
 この路線をはっきりと打出していたのがステレオ初期以来のカートリッジで、最近は8888シリーズがこれを明瞭に感じる。999シリーズになって音域がさらに広くのびて繊細感が格段と向上した。しかし、やはり迫力ある低音感、それにまして充実された力強い中音域。ジャズ・サウンド特有の楽器の迫力を実に鮮かに再生する能力はまさに、ジャズ向きという言い方がぴったりくるようなサウンド・ポリシーである。グラナディアを頭とするスピーカー・システムも円柱型というユニークなデザインと共に、サウンドの力強さをあらゆるファンから認める傑作だ。
 1000ZE/Xはエンパイアのサウンド・ポリシーに乗っとった高級製品に違いない。しかし、この音は明らかに一歩を踏み出した。踏み出したとて「延長上」であるとはいい切ることはできない。というのは、ここにあるのはヨーロッパ調を目指したもので、品位の高い格調あるサウンドなのである。従来になくおとなしさを意識させられる点で、間違いなく「エンパイア」であることを眼で確かめたくなったぐらいだ。ピアノ・トリオを聞き、従来のエンパイアに感じられたきらびやかさが押えられ、スケールの大きさと音のふくよかさがにじみ出てきた。ヴォーカルではより生々しい自然らしさが感じられる。ただシンバルがやや薄く線が細い響きとなったように思われるのは私の耳だけか。
 カートリッジでもっとも注目すべき点はトレース能力にある。テーパード・カンチレバーを世界に先駆けて、ステレオ製品の初めから採用してきたエンパイアのカートリッジの最高級にふさわしく、なんと0・5gの針圧が常用できる世界でもまれな製品がこの1000ZE/Xなのだ。

フィリップス GP-412

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1971年4月発行)

「SJ推選ベスト・バイ・ステレオ」より


 冒頭から少々きざったらしい言い方をするが、私はこのフィリップスの新型カートリッジを紹介できることをおおいに誇りにしている。このカートリッジの優秀性をわずかな紙面でどうやって紹介できるか少なからず心配しながらも筆をとっている。

 フィリッブスというメーカーはいうまでもなく、カセット・テレコでよく知られており、4チャンネル時代を迎える今日、その実用的なソースとしての未来性がますます注目されている。

 しかし、メーカーとしての真のフィリップスの姿は、あまりに大きすぎてどう説明していいのかわからない。

 戦前は、米国RCAと並んで全世界の市場を2分するほどの、エレクトロニクスと家電の大御所だった。ヨーロッパに君臨するこの大メーカーの規模は、戦後おとろえたとはいえ、米国フォーチューン誌において10位以内に入る世界のトッブ企業なのである。ちなみに日本の最大メーカーは新日鉄で、ほぼこれに匹敵する。

 西洋音楽が芽生え、根を下し、今日の繁栄の地となったヨーロッパ大陸に地盤をおいたフィリップスの、音楽再生に対する技術は一般にはまだあまり知られてはいない。

 しかし、カセット・テレコの例を持ち出すまでもなく、その分野において常に最高であり容易に他の追随を許すことはないほどに質的に高い。その上おどろくことに、その高水準の技術の所産がマニア用としてではなく一般用を目的の商品としてでも大成功をとげている事実はあまり例がない。見せかけでなく真に音楽に根ざした技術的所

産というべきだろう。

 現在、市販のステレオ・カセットは国産品20機種以上にも上るが、その高級品とほぼ同価格のフィリップス製が「通」の間ではやはり人気ベストワンであることを知っておられるだろうか。外国製は割高というハンディをせおっているこの普及型カセットにおいてすらこの有様なのだ。

 SJ誌試聴室において、偶然のことから眼にとまったごく目立たないカートリッジに PHILIPS という字をみて、私はトリオレーベルの本田竹彦トリオの音溝に針を落した。まったく期待のない時だっただけに、音の出た瞬間、痛烈なカウンターを喰ったようなショックを私は受けた。このピアノの音は、かつてオルトフォンに初めて接したときのように実に豊かで堂々としていた。しかも、録音本来の最大特長であるアタックの切れ込みの良さはほんのわずかも損なうことなく強烈だった。まさに、フル・コンサート・ピアノのスケールに、そのままというか、目の前2mぐらいで演奏しているエネルギーが室内に満ちた。このアルバムにおさめられているピアノやドラムの激しいアタックはカートリッジのビりつきを露呈するのだが、ここでは実に安定し、フォルテの時にも微動だにせずトレースをやってのけたである。念のためビル・エヴァンスのアローンをかけた。

 ヴァーヴ盤は、ギター・ソロがびりつきやすく、これがカートリッジのトレース特性のチェックにもってこいであるし、国産でこれを無難にやりとげるのはわずかしかない難物である。すでにどうにもならぬほど傷んだ個所を除き実に安定にトレースしたのだった。かくも「安定に」この難物をトレースしたカートリッジはシュアーV15II、エンパイア999を除いてはない。安定なのは音だけではなくトレース能力自体であることも明記しておこう。

 ソフトなタッチでしかも強烈なアタックを刻明にうきぼりするこのフィーリングは、ごく最近手にした、ライカのレンズに対して感じたものとまったく同一のものである。そこには単に技術だけではどうにもとらえきれない「何か」がはっきりと存在しているのだ。

 マニア用として、全く別系統のセクションで作られ、販売されるというこのカートリッジに、私は伝統を思い知らされ、羨望を感じたのである。

テクニクス SU-3600

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岩崎千明


スイングジャーナル 4月号(1971年3月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ナショナルというブランドは、あまりにも電気製品と強く結びついて普及しすぎた。
 その点がナショナルのハイ・ファイ進出をきまたげた。さまたげただけではない、ブランド・イメージをこの業界にあって、なくてはならない「高級」から遠ざけた。
 10年前に、8PW1、という名作スピーカーを生み、ステレオ・カートリッジの優秀品を生んだ、ステレオ・メーカーの姿勢は、おそらく永く変ることがなかったのに違いないのに、家電メーカーとして、あまりに大きく成長し、その名を世界に知られすぎたため、ハイ・ファイからその姿がうすらいだかのように見えた。
 しかし、最近のナショナルは違うと断言してよい。
 オーディオ・フェアやショーにおけるその力の入れよう、意欲のすざまじきは、多くの人が感じとっているだろう。OCLアンプの先駆として市場に華々しくデビューしたテクニクス 50Aが、その力と姿勢を、さらに意欲とを如実に示している。
 そして、今度のSU3600である。このアンプと接したのは、昨年の秋の東京オーディオ・フェアを先きがけること数週間前であった。そのプロトタイプは、パネルに厚い底のカバーをつけ、つまみも既製の小さなプラスチックの物というデザイン的には未完成品であった。しかし、このフク面アンプに火を入れ、コルトレーンの「インプレッション」に針を落した時、私は「してやったりさすが......!」と心の中でさけんだ。私の手元には、すでに市販のS社のOCLアンプやT社の高級アンプをはじめ、最近愛用することの多いSA660があったがそれらと較べてこの音質はひけをとならいどころか素晴しい迫力と解像力とを、品のよいナショナル特有のソフト・トーンの中に融合させていた。
 その時から私は、このアンプSU3600がリスニング・ルームの一角に陣取ることができるようになったのであった。
 私はこのアンプの一番気にいった点は、ほかでもない低音のうねるような迫力であった。コルトレーンのテナーは、50Aで聴いた記憶よりもずっと力強く感じられた。しかも、ギャリソンの太く鋭い響きのベースの迫力が、コルトレーンのテナーを一層力強くバック・アップしたし、ロイ・ヘインズのシャープなドラミング、小刻みのハイ・ハットはまるで怒濤のように私を包んで鬼気をはくすき間すら与えなかった。
 テクニクス 50Aの音を愛するファンにとっては、あるいは、高音域のするどい切込みに応ずるアタックの良さをきつすぎると批判するかも知れない。しかし、シンバルの音というのは、この鋭どさなくては再現でき得ないだろうし、M・タイナーのハイノートの早いパッセージは、こうまで生々しくならないに違いない。
 試みに「エラ・イン・ベルリン」に盤を移そう。エラの太く、豊かなヴォリームは、実にスムームに、前に出てピタリと定位する。いわずもがな、ナショナルのハイ・ファイ製品で、もっとも得意な再生は、ヴォーカルであり、歪の少なきをつきつめたハイ・ファイに対する姿勢は、ここに非の一点もなく結実している。さらに付け加えたいバックの大型スケールのアンサンブルこそ、最低音域までひずみの少ない大パワーを秘めている証拠であろう。
 このアンプの諸特性は、この音出しのときは知らされてはいなかったが、このクラスでは大幅に上まわるハイ・パワーであるに遠いない、ということはベースのタッチを聴いただけで十分了解し得た。それは私がテクニクス 50Aで少し物たりなかった点である。
 そして最後に、このアンプは、7万円台というテクニクス 50Aの40%ほど安くなるだろうと知らされたのであった。オーディオ・フェアを待つまでもなく専門誌上においてSU3600の優雅にして魅力たっぶりのパネルをみた。さらにフェア直前の発表会で実物の量産アンプに模した。アンプの性能、サウンドをそのままに表している品のよい堂々たるパネル・デザインであった。
 私は昔、ハーマン・カードンの真空管アンプ、プリ5型、パワー4型を毎日のようにながめ用いたが、それと似た感じでありながら、はるかに高級イメージを与えていた。それはナショナルならではの商品企画の優秀さをそのまま表わしていることを強く感じさせた。トランジスター・アンプという名からくるサウンド・イメージをぶちやぶった、ナショナルの若い世代、ジャズ・ファンに挑むすばらしいアンプが市場に送りだされたことは拍手とともに推賞の辞を惜しむものではない。

オルトフォン M15

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岩崎千明


スイングジャーナル 4月号(1971年3月発行)

 「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


「ソニー」という固有名詞が、トランジスター・ラジオの意味で、普通名詞として通用する後進国があるという。その国の人達にとっては、トランジスター・ラジオはソニー製品以外にはあり得ないのであろう。しかしラジオ同様小型のトランジスター・テレビを眼前にする日になったとき、はじめてソニーが普通名詞から本来の固有名詞に戻ることであろう。
 これとほぼ同じ状況が、日本の高級オーディオ・マニアの間にあったのは、つい3〜4年前までであった。
「オルトフォン」という名は、ステレオ・カートリッジやアームのメーカーとしてではなくて、高品質のムービング・コイル型カートリッジの代名詞として通用されていたのである。シュアV15がムービングマグネット型ながら優れた動作と再生能力を示すことが高く知られるようになるまでは、オルトフォンは、ステレオ・カートリッジの最高級品の代名詞ですらあった。そして、その日は、ステレオレコードがこの世に現われてから10年近い長い期間、ずっと続いていたのは進歩のピッチの速い、製品のサイクルの速いこの分野にあって、まさに奇蹟にも近い業であったといってよい。
 ムービングコイル型の、高品質カートリッジの代表的な製品名であるこのオルトフォンがひそかにいわれていた噂を裏書するかのように、ムービング・マグネット型カートリッジを市場に送ったのは、もう1年近く前である。
 実際に私達の前に製品が現われてその音に接するまでは、不安と期待とが、それぞれ強く混ぜ合っていた。MC型でないというのがいかなる理由なのか、またMC型で発揮した腕前はこの新素材を果してどこまで生かすか。
 すでにその発表時期には、シュアV15型がステレオ・カートリッジの最高級品として全世界の、もちろん日本のハイファイ・ステレオ・マニアの間において、かなり大きなウェイトで、その座を確保したあとであるだけに、オルトフォンの新らしいムービング・マグネット型は注目されている以上に、深い興味の対象となっていた。かつて米国コンシューマー・レポート誌を始め、多くの専門誌の紙面において、首位争いに伯仲していたオルトフォンMC型/シュアMM型の対決以上に興味と話題をさらって登場したのが、このオルトフォンであった。
 しかし、不安と心配はまったくとりこし苦労に過ぎなかった。
 M15は、実にみごとな再生能力と、トレース能力とを合わせ持っていた。そのサウンドは一聴してだれしも認める通り、シュアと共通した音の細やかなディテールをくっきりと鮮やかにクローズアップする分解能力を示しながら、しかもその全体のサウンドイメージは、正にオルトフォンのそれであり、ずっしりした腰の強い低音の厚みが、サウンド全体の芯として構成されているかのようである。MC型より受けつがれた音の安定したパターンはオルトフォンのサウンド・ポリシーに他ならないといえよう。
 トレース能力がカートリッジの良さを如実に示すことはシュアが高品質MM型カートリッジを説明するごとに取り上げ、トラッカビリティの重要性を強調していることであるが、オルトフォンM15のトレース能力の安定性は、まさに比類ない安定さのひとことに尽きる。
 他のカートリッジのよくトレースし得ない音溝に対してさえ、オルトフォンM15は、MC型同様に安定した再生と合せて不安気なしにトレースしてしまうのである。
 M15はシュアV15と並びステレオ・カートリッジの最高峰として再び王座を確保し普及するに違いないだろう。

岩崎千明


スイングジャーナル 3月号(1971年2月発行)

「世界の名器を探る supreme equipment」より


 米国ハイファイ市場において、「最高級スピーカー・システム」とその名を歴史に残すシステムは数少なくはない、JBLのハーツフィールド、ユニットに6吋半ローサを用いたブロシナーのトランスィエンデント、アルテック820C、ジェンセン・インペリアル、その他にも変ったところでは、ハートレーやボザーク、今はなくなったスティーブンスなどの米国製スピーカーの数ある中で、もっともオーソドックスな見地からその一つを選ぶならば、それはエレクトロボイス社の「パトリシアン」だ。
 それを裏づけるかのように、駐日米国大使館のホールにも、また極東放送網FENのメインスタジオにも設置されているのは「パトリシアン」だけだ。FEN放送局の数多くのモニター・スピーカーはその大半が、同じエレクトロボイスの「ジョージアン」てあったことも付け加えておこう。
 たとえていうならば、英国を代表するスピーカー・メーカーとして、今一つ挙げるならばワーフワーディルであろうし、日本ならばパイオニアの名が誰をも納得させよう。米国でもっとも伝統的なスピーカー・メーカーはJBLやアルテックなど日本のマニアにおなじみの名ではなく、戦前ならジェンセンであるし、今はこのエレクトロボイスなのである。
 この専門メーカー、エレクトロボイスが最高級品として戦後のハイファイ隆盛期に創り上げたのがこの「パトリシアン800」なのである。
 今日の形になるまでに、「パトリシアン」は何回かのマイナー・チェンジを経て来ている。その最大のものは、クリプシュ特許のあの折返しホーンを止めて、超大型76cmウーファーを採用した時だろう。この改造は、それまでのIVから800と型式名を変えただけでなく「パトリシアンIV」とははっきりした構造上の変化を伴ったものである。さらにスピーカー・メーカーとしてのエレクトロボイスらしい特徴を強く打ち出しているのが注目され、その王者としての風格が外観上のクラシカルな貫録に満ちた風貌と共に、内容的にも30インチ(76cm)ウーファーによってもたらされるのであった。
「パトリシアン」のサウンドは、その規模においてハイファイ・メーカー中トップと言われている大メーカーとしてのエレクトロボイスの名誉とプライドをかけたものである。そのサウンドは、ほんのわずかなすきも見せない堂々としたサウンドで、しかも落ち着いた風貌と迫力とは米国のマニアだけでなく、世界のマニアが最高級スピーカーとして認めるに足るものに違いない。
 日本の市場に入ってからすでに1年以上もたつが、現在その真価が広く認められているとは言いがたくも、その実力は必ずや万人を納得させ、エレクトロボイスのファンが多くなる日も間近いことであろう。

パイオニア SA-100

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岩崎千明


スイングジャーナル 3月号(1971年2月発行)

「SJ選定《新製品》試聴記」より


 パイオニアがついに、新シリーズのアンプを出した。待ちこがれた買手の要望と、メーカー側の満々たる自信とを重ね担っての新製品である。
 この新シリーズ・アンプは、パイオニア以外のメーカーにとっても、この上なく気になり存在を意識させられるに違いない。そういう点から言ってもこのアンプは最近になく話題の焦点であろう。というのも外でもない。最近アンプは、新製品といえば「全段直結方式」という画期的な新回路技術が全面的に採用されて、今までのアンプに比べてはっきりと性能向上がデータの上にも表われ、また、音の上でも素直な素質の良い音に、歪の少なさが確然と感じられるからである。これからのトランジスターアンプは、今や「全段直結方式」というのがこの道の通の常識にさえなりつつある。それを裏づけるかのように、このところ続いて発表される各メーカーの、この種の新型アンプは非常な好評で迎えられ新しいアンプの時代を築きつつあるといっても過言ではない。名門ソニーに続きティアック、ナショナル、オンキョーという意欲的なメーカーに一歩遅れをとって、トランジスターアンプの専門メーカー、トリオ、さらにサンスイとこの流れに乗っている中で、ひとりパイオニアは沈黙を守り続けた。
 しかし、時代は熟したり満を持して放ったのが、この新シリーズ・アンプなのである。その製品に接してさすがにパイオニアと改めて息をつかせたのがこのSA100であり、新シリーズ、ニューUAシリーズのアンプであった。
 まず音だ。パイオニアのアンプに私が常々感じているのは、いかにも大人向きの品のよいサウンドだ。これはステレオというよりも、ハイファイ界において、まさにその名通りの先駆者としてのキャリアと貫録とが、生み出し到達したサウンドであろう。歪の少なさにプラスして、誰にも受け入れられるに違いない音であるが、しかし、なにか音の魅力という点で、もう少し欲しい何者かがある。その点では今から10年以前のパイオニアのスピーカーの方により以上の魅力を感じるのであった。そのサウンドが今度のアンプにはある魅力ある生々しい迫力を今度のアンプに感じることが出来るのである。
 それは、おそらく新回路方式によってより広い帯域に対して、完全に設計意図通りのデータが保たれたことがやはりこの新アンプのニューサウンドの底流にあるに違いない。
 さらに注目すべきは、直結アンプ特有のスピーカー保護回路にある。直結アンプはその回路の性質上、わずかのクリックもスピーカーに直接加わるため、スピーカーという高価なパーツを破損してしまうチャンスが今までよりずっと多いのである。
 パイオニアでは、発売を延してまてこの点こそ充分に時間をかけて万全を期すべく技術を傾けたという。スイッチ・オンの後、回路が完全に動作状態になるまでスピーカーは接続されず、、8秒後にスピーカーが動作するように特別のバランスが太検出回路がプロテクターを形成する主役となっているという。
 スピーカー側の最大入力などの異常動作の場合も、瞬間的に保護回路が動作し、動作が正常になれば、つまり正常使用状態なら瞬間的に動作復帰する自動瞬間復帰方式だ。まさにスピーカー専門メーカーとしてのキャリアがアンプに生きているといえる。ブラックシルバーのいぶし仕上げのヘアーラインという新鮮で、豪華なパネルデザイン。つまみの配置もマニアライクな優れたものだ。
 新シリーズのチューナーTX100、アイディアに満ちたステレオ・ディスプレイSD100とともに、当分の間ファンの話題となる新シリーズだろう。

Lo-D HS-1400W

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岩崎千明


スイングジャーナル 3月号(1971年2月発行)

「SJ推選ベスト・バイ・ステレオ」より


 HS1400Wをベストバイとしてここで述べる前に私は少々触れたいことがある。少なくともベスト・バイというなら多くのファンが良いということを認めて来た実績がなければならないからだ。
 冒頭からなぜこのようなことに触れたのか、ベスト・バイという言葉と日立のスピーカーを考えると、あまりにも強烈な印象でHS500が浮び上がってくるからであろう。これは当然のことだと思われる。日立のスピーカーを語る時には、このHS500の存在を忘れるわけにはいかないからである。
 HS500の音は、初めて接した2年半前の暑い夏の昼さがりの蝉の声と共にはっきりと思い出す。AR3と並んだ箱からAR3よりも、もっとすなおな、品位の高い低温がずっしりと深く息づくように出たとき、国産スピーカーということを忘れ、スタート台に立ったばかりの、日立という音響メーカーの底力をまざまざと見せつけられた思いであった。
 このスピーカー・システムは、たった20cmのウーファーが低音を受け持っているが、それはギャザード・エッジという世界初めての新しい技術と途方もないくらい大きなマグネットからなり立っている点で特筆でき、今日でも、その正攻法的なスピーカー設計意図は製品の高品質とともに高く評価できる。
 日立のハイファイに対する姿勢であるローディー、つまり低歪率再生と掲げられた文句はこの時に確立し、その圧倒的な低音の質の良さはこのHS500で確立したといってよい。
 その日立が、今度は高能率の重低音再生に向ったのがHS1400Wである。このHS1400Wはハイファイ界の永久の夢でもある重低音再生という点に技術が新しい方向を創造し、道を切り拓かれたといえる。それはまさに技術であり、独創的に溢れた企画商品だ。
 非常に簡単な計算をしよう。
 40Hzの低音を、1000Hzと同じエネルギーだけ取り出すためには、振動が25分の1ならスピーカー・コーン紙の振動振幅は25倍必要となる。1000Hzで1mm動くとすれば10Hzでは2・5cmも可動振幅範囲を要求される。むろ、こんなに動くスピーカーはない。だから低い音ほど出し難い。
 この出し難いエネルギーを取り出すにはどうすべきか、という点を、今までの音響システムから一切はなれた点からスタートして、HS1400Wは生れ出たのであった。この低音メカニズムを一言でいえば重低音共鳴箱である。
 共鳴箱である以上、どんなパルスが入っても共鳴箱は共鳴しやすい。また共鳴が始まると、共鳴して止まるまでがおそい。その点が、ハイファイ再生という立場からは根本的にずれている、ということを指摘することは難しくない。
 だが実際に重低音を出す楽器は、やはり低音共鳴体に伴っているものだ。ベース、ドラムにしてもそうだし、オルガンやティンパニーならなおさらである。そこで共鳴箱を再生用として使うことはなんら差し支えないということもいい得るのである。
 非常にユニークな共鳴箱型スピーカー・システムは、そのプロフィールも今でになく新鮮だ。そして何よりも嬉しいのは、たった3~4万のスピーカー・システムでありながら、20万、30万のスピーカーシステムに少しもひけをとらならい重低音を楽々と再生する点だ。
 ユニークな独創的システムにふさわしいユニークなデザインをあしらうことにより、ユニークなオーディオ・ファンのリスニング・ルームにおけるユニークな存在となるだろう。

デュアル 1219

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岩崎千明


スイングジャーナル 2月号(1971年1月発行)

「supreme equipment 世界の名器を探る」より


 コンポーネント・ステレオが、セパレートに代って高級ステレオの代名詞となってきつつあるこの頃、レコード・プレイヤーの地位がますます高まっている。「音の入口には、できるだけ高級品を選ぶ」というのが、コンポーネント・ステレオのひとつの条件とさえなっているのはご存知の通り。
 音の品位を入口において損こなってはいくらよいアンプでも、スピーカーでも音を良くすることはできないし、レコードの寿命という点についてもレコード・プレイヤーの良否が決定してしまう。そこで高級レコード・プレイヤーとしてはオートチェンジャーは永い間敬遠されてきた。
 しかし、このデュアルの高品質チェンジャーが、この迷信をくつがえした。
 ステレオの台頭とともに軽針圧カートリッジが出現して以来、その2グラム前後という軽い針圧では、英国製のチェンジャーはどうも満足な動作を必らずしも完了してはくれず、チェンジャーに対する信頼が極端に低くなってしまったのである。そのため米国オーディオ界ではステレオの興隆とともにAR社のプレイヤーがそれまで普及していたオートチェンジャーにとって代って普及しつつあった。
 この米国内のプレイヤーの異変ともいえるチェンジャーの没落を一気に盛り返し、再びオートチェンジャーの主導権をヨーロッパにもたらしたのがこの西独デュアルの前製品1019であり、1012であった。このデュアルの傑作、1219は、70年代になってさらにメカ部を一歩前進させて、アンチスケーティング機構(インサイド・フォース・キャンセラー)と、連続演奏時にも針先とレコード面の角度ヴァーチカル・アングルが正しくセットされるようモード・セレクターがついて一枚演奏と連続演奏を切換えるように工夫された。また外観上も、アームはさらに細くいかにも軽針圧用としてデサインされ、アーム支持部もジャイロが大型になってより精度を高めたことも特筆できる。
 このデュアルのチェンジャーの最大のメリットは、針圧がスプリングによるいわゆるダイナミック・バランス型といわれている機構である点である。量産上バラツキの点で軽針圧ではむづかしいといわれるダイナミック・バランス式はオルトフォンの大型アームなどプロ用に僅か使われているにすぎないメカニカルであり、これはそったり偏心したレコードの軽針圧トレースが完全にできる利点がある。また一見なんの変哲もないこのアームは、あらゆる点でプロ用アーム並みの高性能機構と性能をそなえている点が注目すべきだ。
 ターンテーブルも3・1kgというヘヴィーウエイトのもので、完全ダイナミック・バランス調整されている高級品だ。
 このデュアルのプレイヤーに代表される小型ながらメカニカルで充実した内容のズッシリと重い機構は、大型で
ぎょうぎょうしいプレイヤーにみなれた眼からはなにか物足りないくらいだがいかにもドイツ製品にふさわしい。このデザインの原型はプロ用ノイマンのプレイヤーにオリジナルがみられることを付言しておこう。

サンスイ AU-888

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岩崎千明


スイングジャーナル 2月号(1971年1月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


「アンプ戦線異常あり! 各メーカー全段直結に注目し、総力を挙げて、製品強化を図り、全体制を至急整えるべし」というのが、71年を迎えんとするハイファイ・ステレオ業界の現状である。
 その全段直結戦線の端を切ったのがナショナル・テクニタス50Aであり、この大好評が大旋風の緒である。続いてティアックAS200、オンキョー・インテグラ701と大御所が名乗りを上げ、この流行が早くもピッチを上げてきつつあった時、ソニーTA1120を頂点とする全アンプESシリーズが、マイナー・チェンジという形でいっせいに全段直結化した。それを専門メーカーが黙って指をくわえたままのはずはない。
 サンスイが、AU666、AU999の2機種によって、ついに一般のオーディオファンの手に届き得るべく商品化したのが4ヶ月前。AU666はすでに前評判もよく、市場において成功を収めつつある状態だ。
 続いて、トリオが主力製品KA6000を上まわる全段直結アンプKA7002を発表。ようやくこのアンプ戦線に主役が揃って来たところである。後はパイオニアの新型アンプを待つばかりだ。
 すでにくり返しいわれているようにこの新回路方式のアンプは、理論上も従来の方式に比べてあらゆる点で格段の優秀さを具えている。何よりも注目すべき点は、あらゆる再生帯域内での「位相特性」が格段によくなる点であろう。負帰還技術を駆使した今日のハイファイ・アンプでは、負帰還以前の原回路の位相特性がもっとも問題となるが、従来の方式では、すでにリミットにあった位相特性が格段と向上し得る手段こそ新方式の全段直結回路なのである。
 これが再生品位に及ばす効果を伝えるのは容易ではない。というのはすでに従来のアンプが理想に近いレベルまで向上していたからで、それ以上のわずかのレベルアップに考えもつかない費用が要され、しかもそれと製品化するために多くの難関が道を阻ぎる。
 テクニクス50Aの同級アンプに比べて倍の価格がこのところをよく物語るし、それを知る者にとって、サンスイのAU666の価格は相当おさえられた価格であることを知らされる。
 しかも、それら全段直結アンプの音は、今までのアンプの音に比べて「音に豊かさと透明度が加わった」という点で共通している。日本製以外の製品としては、わずかJBLの高級アンプとマランツの豪華型にしかないというこの高水準の回路方式が今や国産アンプの「常識」になりつつある。ということはまったく驚異と共に喜びをもって迎えたい。
 AU666に続いて発表したのが、このAU888である。
 これはライバル・メーカーの主力製品に対する秘密兵器的な地位にある新製品だ。2年前のベストセラーであるAU777のグレード・アップという名実共に裏付けされている点でメーカー側の姿勢が感じられ、発売前から評判も高く、その売れ行きを約束されているといえよう。.
 ブラック・フェイスというサンスイのイメージ・デザインの延長ながら、AU888にはメカニックでフレッシュな新感覚がみごとなばかりにパネルに結実している。加えて、AU666におけると同じく透明度高く、しかも豊かなつややかな中音域が大きな特長だ。トランジスタ・アンプから除ききれなかったドライな切れ込みが、まろやかに鮮烈なアタックもそこなうことなくしっとりした音を聴かせてくれる。
 この理想境に達したのは、全段直結アンプ方式以外では考えられまい。アンプメーカーとして、AU111、AU777という2大金字塔を誇るサンスイが、AU666に続いて大荒れのアンプ戦線に加えた強力兵器、それがこのAU888であり、その期待をになうべく、デッキ?デッキの録音、再生も可能というフルアクセサリーのマニアライクな仕様、そして性能を満して市場に出る。
「シェリー・マンホールのレイ・ブラウンとミルト・ジャクソン」の冴えたキラ星のごときヴァイヴとベースの力強い開放弦の低音がSJ試聴室のA7をろうろうと響かせた。

JBL Olympus S8R

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岩崎千明


スイングジャーナル 1月号(1970年12月発行)

「supreme equipment 世界の名器を探る」より


ギリシャの神殿「オリンポス」をその名にとったスピーカー・システム、それが米国JBLサウンドの家庭用最高級システム「オリンパス」だ。
 その名の由来を彷彿させる厳しゅくなたたずまいと、優雅な響きは、まさに世界スピーカー・システムの中に厳然たるJBLサウンドを代表するにふさわしいシステムであろう。
 JBL社の代表的システムとして、あるいはオールホーンのレンジャ・パラゴンをたたえる識者や、さらに古くモノーラル時代の絶品ハーツフィールドを推すマニアもいるに違いない。
 そのいずれもが低音ホーンロードのエンクロージュアで、折返しホーンの前者、クリプッシュ・ホーンの後者のいずれもが価格的にオリンパスの倍にも近い豪華システムである。
 しかし、今日のステレオ時代、さらに4チャンネル・ステレオ時代を迎えんとする40年代における代表格としてあえてこの「オリンパス」こそ、それにふさわしいものと断じるのはいささかもためらいを要しないと思う。
 大型エンクロージュアでしか得ることのできなかった重低音は、その数分の1の容積のシステムでも楽々と再生され、ここにこそ常にトップを行くJBLサウンドの技術をまざまざと見ることができるからである。
「オリンパス」のデビューしたときにはそれはバスフレックス・エンクロージュアであった。しかし、現在の低音はJBLのオリジナル製品ともいいうるパッシブ・ラジエーターによって再生される。
 この方式がRCAのオルソン博士によって発表されたのは遠く戦前1936年のことだが、その直後に出たRCAの電蓄を除いては、今まで製品として市場に出たことはなかった。この方式の唯一の成功例がオリンパスであり、さらにそれに続いたランサー・シリーズのいくつかで、すべてのJBLのシステムなのは興味深い事実だ。
 このオリンパスの成功こそJBL社が、以後まっしぐらに家庭用システムでの多大の成果を得るきっかけとなったことからも、また今日のJBLの偉大な存在の布石となった点からも、JBLの代表ともいい得よう。
 オリンパスには2通りある。LE15A+パッシブ・ラジエーターの低音に、LE85+HL91を加えたS7と呼ぶ2ウェイ。
 LE15A+パッシブ・ラジエーターの低音に575ドライヴァー+HL93の中音、075の高音という3ウェイのS8R。
 むろん代表格は3ウェイのS8Rシステムだろう。

フィリップス N2400

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岩崎千明


スイングジャーナル 12月号(1970年11月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 フィリッブスの新型ステレオ・カセットN2400が出た,というニュースはEL3312Aを使っていた私を少なからずがっかりさせた。
 というのも、それまで自分のもっていたステレオ・カセットがなんとなく旧式化してしまった気を起させるからだ。これと同じ気持を、多くのフィリップス・ステレオ・カセットの愛用者が感じたに違いない。
 しかし、この新型はたしかに新製品であるが、それは若い新らしい層を、はっきり意識した新商品ということができ、その意味では救われるようだ。
 メカニックな、金属的なデザイン。カチッとひきしまったプロフィルからも感じられるように、この新製品は新らしい音楽ファンを対象として企画されたに違いない。
 重厚さというか品の良さからは一歩遠ざかってデザインは鮮かなイメージを見たものに植えつける。ヨーロッパ調から米国調への移行を感じさせるこの変り様は、そのまま商品の狙いを示しているようだ。
 例えば、REJECTのつまみは、テープマガジンのすぐそばに移されて、少さく、軽いタッチで、軽るやかにふたがあく。ガチャンボンからスーツパッというようにメカニカル動作のイメージも変った。
 今までのピアノ・キー式の操作ボタンも、はるかに柔かく、ストロークも深くなって操作に確実さが一段と増した。それより、なによりも、このキーが、クロームメッキの強烈ともいえる輝きをもったデザインに改められたことだ。丸くくぼんで指頭にぴったり吸いつくような凹型が、デザインのポイントとして、実用性との両頭から大きな特長となっている。
 このメッキされたことにより、表面のよごれだけでなく、損傷からも保護されることとなって、より多くの使用者に対する、より多くの表面的なトラブルのチャンスがなくなっていることを見逃すべきではないだろう。
 加えて、表面パネル、全体のヘアーライン仕上げとのコンビが、メカニカルなデザインと現代調の製品感覚をもたらしていることも新鮮だ。
 再生された音は旧製品にくらべて、一段と高音域のレンジののびを感じさせるが、低音から中音にかけての豊かな音作りが、少しも余分なものを思わせぬ華麗さを持っていて、それがフィリップスのデッキ共通のよくいわれる音作りのうまさのポイントとなっている。
 録音、再生の音の良さは、これはもういままでに事あるごとにいわれ、賛えられてきているが、やたらなレンジの広さを追うことなく、しかもカセットと思えぬ豊かな低音から中音部。スカッとした高音へのつながりのスムースさ。カセットを品位の高いアンプとスピーカーを通す時には、カセットということを忘れさせてしまうほどの音だ。これは、音のバランスというよりも絶対的な歪の少なさがもたらすものであろう。ジャズ独特の力強さとか迫力とかという点で、19センチのオープンリールと互に張り合うことは無理かもしれぬ、しかし歌とか、ハードでないジャズに対してなら、オープンリールに劣ることのない能力をまざまざと知らしてくれる。
 カセットが4chソース・ステレオ時代に、大きくアピールされることはもうすでに約束されているといえる。数年先のその時まで、このステレオ・デッキがあらゆる音楽ファン層の大幅なかなりぜいたくな希望を満たしてくれることは間違いない。このカセット・デッキは、それだけの性能を具えていることはこれを一度使ったものなら誰しも認めるであろう。

オンキョー E-63A MKII

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岩崎千明


スイングジャーナル 12月号(1970年11月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 私がオンキョーのE83Aをこのページで紹介してから、もう1年以上の月日がたってしまった。
 E83Aはその後、といっても半年ほど前に各ユニットのマイナー・チェンジが行なわれて、セプター・シリーズとなり、E83AMKIIと名も改めた。依然としてスピーカー・メーカーとしての、いゃ、ステレオ専門メーカーとしてのオンキョーの看板製品であることにはかわりない。価格が少々アップしたが、その製品の金のかかり方といい、出てくる音の再生品位のレベルの高さから考えると、今日においても市販スピーカー・システム中で大型システムの5指には入る。お買徳のスピーカー・システムであろう。
 その音は「例」の傑作HM500A中音ホーンを中声部の芯として、ガッツと迫力に富んだ、ヴィヴィッドなサウンドで、ジャズに最も大切な力とアタックのよさは特筆できるオンキョーの力作であった。
 このE83Aの弟分ともいえる製品が今度新たに発表された。E63AMKIIがこの新製品である。
 音は、一聴してE83AMKIIの流れをくむものであることが判るし、この製品ナンバーのE63AMKIIという名称からも判断される。
 このシステムに対するメーカーの姿勢は、看板製品ともいえるE83AMKIIと同じシリーズとして扱うことからも知らされる通り、かなりの自信と、力の入れようを意識させられる。
 このようなことをわざわざ書き記すのは理由のないことではない。音の傾向が同じで弟分的存在でありながら、このスピーカー・システムの中音はホーン型ではないのであ! このことは音を聞いたときには想像だにできなかったことだ。グリルを外して眼前にドーム・ラジエターの中音用をまじまじと見るまでは、まさかこの音がダイアフラム型スピーカーから出てくるものだとは夢にも思わなかったのである。つまり、このE63AMKIIの中音は実にホーン的なサウンドだ。パーカッシヴな音の力強さが、国産のドーム・ラジエターから出るものとはそれまで想像でき得なかったからだ。
 米国のAR3が出たとき、中音、高音にドーム型ラジエターをつけていたことで注目され、同じくエンパイアのグラナディアにも同型式の中高音がついた。その後、米国のブック・シェルフ型スピーカーの中音にドーム・ラジエターをそなえたものが多くなるにつれ、その効果と特性の優秀性が最近日本でも注目されてきた。
 AR社のシステムの優れた音響特性の多くは、この中高音の指向性と過渡特性のよさに支えられていることが判る。日本にもこれと同じ型式のスピーカーが使用されたシステムが最近急激に増えてきた。
 パイオニアのCS10の3年前のデビューをかわ切りに、この所いくつかを聞いたが、はっきりいって、このドーム・ラジエター型中音スピーカーには共通といってよいほどの物足りなさを感じた。それは「中音域の品のよさ」という、言葉で粉飾されているが、力のなさというかエネルギー不足である。
 ジャズのように楽器のエネルギーを直接ぶつけられるような状態を再現する場合には、この中音エネルギーの不足は、それが軸上正面上の特性ではフラットな音響特性であっても、かなりの物足りなさを私が強く感じたようにジャズ・ファンの多くに与えるに違いない。
 オンキョーのE63AMKIIによって、私はこのドーム・ラジエターに対する不満感を完全にくつがえされたのである。
 それは従来、ホーンからのみ得られるとされていたサウンドを、このE63AMKIIのドーム・ラジエターが楽々と再生し得るのを知ったときであった。
 5万円近い価格は、ブック・シェルフ型としては安いものではないかも知れない。しかし、このアタックの切れの鋭どさが、中音の分厚い音とが同じスピーカーから出るのを知ればE63AMKIIの存在が大へんな価値を持っていることを認めない者はいないだろう。
 E83Aに対しておくった賞賛に倍する柏手を、このE63AMKIIに対しておくることに、ピーターソンの「ハロー・ハービー」を聞きながら、私は少しのためらいもないことをつけ加えておこう。

トーレンス TD125

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岩崎千明

スイングジャーナル 11月号(1970年10月発行)
「世界の名器を探る Summit Sound」より

 トーレンスTHORENSの名は人間社会が音楽再生という技術を持った初期からすでにメーカーとして名乗りをあげていた。150年以上という気の遠くなる昔から、THORENSのマークは当時の最新音楽自動演奏機械であるオルゴールについている。ナポレオン全盛時代の動乱のヨーロッパにおいて、また中世の名残り深いスイスの城の中で、今日のアップライトピアノぐらいはあろうという、今日の日本人の常識をはるか越える大型オルゴールは、王候達を前にキンコロロンドンガララリンと妙なる音でパーティーの今日でいうところのバック・ミュージックに備われていた。
 その主要メーカーとして、トーレンスはもっとも著名かつ高品質であった。サイクルの早いオーディオ業界の中にあって150年の歴史を誇るメーカーはスイスの山奥に息長く続くこのトーレンスを除いては皆無である。世界産業界でもっとも歴史を誇る時計メーカーですら100年を越すのは4社でしかないのである。回転メカニズムのメーカーとしてのトーレンスの栄光はまさに世界の名器を作りあげるにふきわしいといえよう。
 このトーレンスがターンテーブルTD124を発表したのはステレオれい明期60年である。以後ターンテーブルを鉄から非磁性金属に変えたIl型を出しただけで10年をへる間、モデルチェンジをしないで通してきた。この124をベースとしオリジナルアームと組合せた唯一のオートマチック・チェンジャー以外にアレンジもなしで長年ターンテーブル界の名器という名をほしいままにしてきた
 しかし70年代を迎えるに当り、TD124IlはTD125して面目も内部メカニズムもすっかり一新した。超精密シンクロナスモーターの駆動には水晶発振器による高精度交流電源を内蔵している点である。この定周波数発振電力回路はかつて米国スコット社のモーターが57年ごろ採用したが真空管のため発熱も多く誤差が多くでるというめんどうな製品であった。トーレンスのモーター用電源はトランジスタのため安定性もたかく、ロスも僅少で実用製品としてTD124のあとをつぐにふさわしい高級品である。
 そのスッキリしたしょうしゃなデザインは、現代感覚にあふれ、内部の新機構にふさわしい。
 なおこのデザインと同じ系統で普及型プレイヤーTD150Aも2重ターンテーブル・プラス・ベルト・ドライヴのメカニスムが同じユニークな製品である。

岩崎千明


スイングジャーナル 9月号(1970年8月発行)

「Summit Sound 世界の名器を探る」より


「世界最高のアンプ」という名を、名実ともにほしいままにしているのが米国マッキントッシュ杜の一連のパワー・アンプ群である。
 マッキントッシュ社は本来、業務用ハイ・パワー・アンプの専門的なメーカーであった。戦後、社長マッキントッシュ氏の特許になる「バイファラー・ワインディング方式による大出力用マッチング・トランス」の驚異的に優秀な伝送特性がもたらしたものだ。
 ハイ・ファイ・ブームが起きるときにそれまで業務用として劇場やホールスタジアムなどの音響設備に用いられていたマッキントッシュのアンプは、まもなく、他のあらゆるアンプを業務用の座から追いやってしまった。それほどまで、圧例的に健秀さを誇っていたのである。しかも大差ない価格のままで、業務用アンプの代名詞にまでなってしまうほどのこのアンプ存在に、オーディオ・マニアが注目したのは無理もなかった。
 加えて、米国ハイ・ファイ界に57年からブックシェルフ型スピーカーが登場し、ますますハイ・パワー・アンプの時代が続くこととなり、マッキントッシュのアンプは高級マニアの間でも広く知られるところとなった。
 MC40、MC60、MC75といったモノーラル時代のアンプをそのままステレオ化して2チャンネルにしたのがMC240、MC260、MC275であり真空管ハイ・パワー・アンプの代表として今日も歴然たる存在である。
 時代はトランジスタ化の流れに移る。
 マッキントッシュは真空管とともに衰退したかに見えた。しかし、そうではなかった。他社におくれをとったと見えたのは、自信ある製品のための必要な時間であった。
 MC2105がこのギャップを一挙に取り戻したのである。
 105/105ワットのハイ・パワーと、業務用としてどんな条件のもとにも耐えるべく設計されたマッキントッシュの伝統あるハイ・パワー・アンプをトランジスタによって実現したのである。無理のきかないトランジスタ・アンプにおいては、この「いかなる条件下にても」ということを実現できるのはマッキントッシュ以外にはないのである。
 MC2105と組み合わせるべきプリ・アンプは、同じメカニックなデザインのC26がある。マッキントッシュの場合パワー・アンプにモデル・チェンジがないのにC23、C24、C26と変ってきている。管球の場合もC20、C21、C22と新らしくなったと同様だ。
 マニアにとってこのC26とMC2105はまさに垂涎の組合せといえるであろう。

ビクター BLA-405

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岩崎千明


スイングジャーナル 9月号(1970年8月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ニビコ、なんていう名を知っているオーディオ・マニアはおそらくそうざらにはいまい。
 ニビコが急に有名になったのはSEA−TONE・CONTROLが商品化されてからである。さよう、分割帯域音質調節の例の7つのスライダーがついたハイパワー・アンプは在日米軍人の間で魅力的商品として呼び声の高いものであった。そしてそのメーカーとしてニビコが急に世界のハイ・ファイ界に脚光を浴びて日本ビクターカンパニー略してニビコの名に世界中のマニアが注目した。
 もっともニビコとしててなく、ビクターといえば、これはもう、ステレオはおろか、SP以来のいにしえから蓄音器と名づけられた再生機というものがてきて以来、音の再生のトップメーカーとして日本業界を開拓してきた老舗である。
 この老舗の看板が、時として重荷になり、マイナスの印象をうえつけることとなりかねない。特にハイ・ファイという日進月歩の、サイクルの早い分野においてはそのマイナスの面が外部からも内部からも起きやすいものだ。
 そのマイナス面を、ブッツリと立ち切って、ハイ・ファイ業界の雄たる貫禄を、改めて見せたのがSEAであった、と私は思う。
 だから、SEA以来のビクターのオーディオ製品は、今までビクタートーンといわれた音のイメージを一新してしまったし、また、製品の企画にしても意欲的な製品が次々と打出されてきている。
 この新シリーズのブックシェルフ・スピーカー・システムもその新しいビクターの優れた技術と、音楽性とが巧みに結合し融合して完成された製品といいたい。
 非常に豊かな低音、重低音域という言葉を使いたいが、いささかも重いという感じがない点、それを適確に表す言葉がない。なにしろ豊かで品がよいゆったりした低音である。力強さを感じさせ、どんなリスナーにも満足を与えるに違いない低音である。中音域はこれまた実に優雅な、品の良いサウンドだ。
 従来のビクター・トーンといわれてきた音の特長は、ひとことでいえばソフトなゆとりある品のよい音である。歪の少ないことがそのサウンドへの技術的の第一条件であることを考えればこれは、明らかにいうは易しく行うは難かしい。ビクターのステレオ業界のトップの座は決して偶然でもなければ商売のうまいせいだけではなかった。
 しかし、この一般受けする、もっとも多くの層を対象とした音作りとその伝統は、最近の若いオーディオ・ジェネレーションには物足りなさを感じさせたといえるのではないだろうか。長年ゆるぎないトップの座が、ステレオ専業3社と呼ばれる新進メーカー群に追上げられてきており、それがこの3〜4年特に著しい。ビクターが伝統の上に築いたオーディオの城は、最新技術によって、再び面目を一新する必要に迫られたといえる。
 それが最近の一連の製品の音作りの効果に顕著に出てきているのであろう。
 音作りをもっとも代表するスピーカー・システムが、それを端的に物語る。
 中音と低音とのつながりの良さが、バランスの良さを生み出し、マルチ・スピーカー・システムにありがちな中低音のもたつきがない。ややおさえたこの中低音が、多くの需要層を納得させよう。高音もよくのび、その高音の拡がりの良さも特筆できるほどだし、中音用スピーカーの高音につながる帯域の輝しい迫力も、このシステムの高音の良さに重要な役割りを買っていよう。
 最近のブックシェルフ・タイプ・スピーカー・システムの、数多い商品の中にあって、このビクターBLA405の品の良い音作りは、あるいは際立つことの少ないものだろう。しかし、初めてコンポーネント・システムを志ざす方からマニアまでの広い層に推めて悔いることのないスピーカー・システムがこのビクターの新シリーズであり、最近のビクターのコンポーネント製品を手にする時は組合せの上でかけがえのないシステムである。

サンスイ CD-5

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岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1970年6月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 多くのマニアが後をたたずにマルチに挑んで、より理想に近いステレオを目覚している現状だ。
 だがマルチ・アンプの最大のメリットは、やはり、あまりぼう大な支出を扱わずに、理想的なステレオ・システムに間違いなく一歩近ずく、という点であり、しかも、それが、一時的な出費でなく、段階的な支出によってそれに見合ったレベル・アップが達せられるという点である。
 普通は、ステレオに限らずともグレードをより高くするには手元の製品はなんとか処理しなければならず、車の例をとってもその処理には多大の損失が例外なしに伴うものだ。
 ところがマルチ・アンプ・システムの場合は手元のアンプに無駄にならず、そのシステムの重要な一環として活用、いや、より以上重要性を増し、より以上に活用されることとなる。この点が実に日本的な発想による企画であると思う。
 山水というメーカーがこの商法を思いついて始めてから4年、今やこのマルチ・アンプはまさに一世を風びしているといった感がある。
 この成功は、山水がいち早くCD3というデバイダーを商品化した企画のうまさを賛えるよりも、オーディオ・マニアの立場をよく理解していた、というよりもメーカーそれ自体がマニアの内部に存在していたという点を指摘できる。逆説的かも知れないが、山水の技術者はそのすべてがきわめて熱烈なオーディオ・マニアであり、メーカー・サイドとしての仕事を、即、自分のリスニング・ルームの向上に役立たせ、またさらに自分の部屋での実験をメーカーとしての製品開発に活用している。
 CD3は、世界でも初めての本格的デバイダーとしての商品として誕生したが、これは山水でなくては決してこの商品化を実現しなかったに違いない。
 しかしCD3のジュニア型でもあるCD5は、少々事情が違う。CD5が商品化された2年前も、まだデバイダー・アンプの高級品はCD3とL社のFL15しかなかった。しかも、CD5はCD3の半価という大変な低価格で発売されたのであった。メーカーとしての山水は、この製品が量産という形で、なければこれほど安くはならなかったといいながらも、量産を実現するのに冒険をあえておかさねばならなかった。それほどに、チャンネル・デバイダーというものの需要が2年前には多くなかったのである。しかし、山水の危惧は単なる危惧に終った。
 チャンネル・アンプのブームは爆発的に、本当に爆発的に始まっていたのであった。
 これにはむろんCD5と同時に発売した山水の新製品ブラックフェイズ通称PBシリーズと共にマルチアンブ方式が全国的なキャンペーンをし、その努力は山水の一社によるものでありながら実に綿密に着実に行われ、同系の他の多くのメーカーがわれさきにとしたほどだった。この努力が相乗的にプラスされてのマルチアンプ作戦は大成功を収めた。つまりCD5は圧倒的に全国の若いマニアの心をうばい、売れていったのであった。
 CD5を、先日、つくづくと眺め取扱ったチャンスがあった。2チャンネルと3チャンネルとの切換の標示が、クロスオーバーを欲ばったためか少々判り難いという点を除けば、この製品のマニアライクな、実にこん切丁寧な設計に、改めて山水のマニア精神を思い知らされた。しかも、若いマニアにも容易に手の出せ得る価格、18、500円は、現在でもチャンネル・デバイターとしてはもっとも安い製品である。内容はその倍の他社の製品とほとんど変ることがないのに。

グレース G-840

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岩崎千明


スイングジャーナル 7月号(1970年6月発行)

「SJ選定《新製品》試聴記」より


 グレースが久しぶりに新型アームを発表した。G840という。
 現在のグレースのアームG545シリーズにとって代る主力製品たる期待をになって登場した新製品である。従来のG545シリーズは、540シリーズのマイナー・チェンジということで、そのスタイルに540シリーズのイメージを深く残し、ジンバル機構、バランスウェイトなどの各部に共通の部分が見られた。「新製品という形でなく、現在の製品を常に改善し性能向上を図るのがうちの姿勢です。だから同じ製品でも一年前のとくらべれば部分的に改善されており現在の製品は格段と良くなっているはず」というのがグレース主脳陣のいつもの言だ。それがカートリッジでははっきりと音質の違い、トレース能力の向上などという形で現れており、アームについても地味ながら眼に見えない部分に改良がなされてきた。例えば部分的な量産性の向上を図って製品全体のバラツキを減らすとか工程の簡略化により精密度をより改善して製品の精度の向上するとか。これらはどこのメーカーでもやっていることではあるがグレースの場合、特に新製品の開発の技術力をふり向けてまでその点に重点を置いてきたといえよう。
 それがグレースという老舗らしい手堅い行さ方である。日進月歩の速度の早いオーディオ界において高級マニアに古くから信頼されてきたコツであり同社の他のメーカーとは違う長大の点ともいえるのであろう。
 とはいえ同分野のメーカーの数は多くその規模にしても新進といえども業界きっての古参、ダレひとりと肩を並べあるいは追越す規模の同業メーカーも一二を下らない。それら各社の製品が毎月のように新製品捕を賑わしている状況下では、新製品に対して消極的なグレースといえども、新型を出して対向せぎるを得なかったという見方もできるのである
 そこで、この新型であるが今までの545シリーズを一段とグレードアップしたという点ではまったく系列の異なる新製品ということはできない。従来のグレースの姿勢がはっきりとうかがい得る新製品である。とはいえ同じ機構を踏習しながらも、そのイメージとしては全く一新し微精度的メカニズムを感じさせる軽快で繊細なデザインだ。
 同じシンバル機構つまりジャイロによる水平垂直回転機構をさらに小型化することにより一歩前進させ精度と感度を向上したという。
 さらにそのアームは従来より一段と細いパイプアームに変えて、現在の市販製品中でも好辞を伝えられFR24、UA3などと同じ軽量級アームとしてのイメージアップに努めている。
 ただ、このグレースの新製品が、このような一段と軽量級アームに向いつつあるのが現在の時点であるということがひとつの問題点でもありグレースのグレースらしいやり方でもあり、それがこのアームの市場性の得失にもつながっていることを見逃すわけにはいかない。
 今日、高級アームの大きな問題点として、軽量化に対するひとつの批評がクローズアップされつつあるということをここで改めて思い起していただきたい。アームの軽量化が音質の上で、低音の迫力、量感の不足の一因として指摘されて久しい。これが軽針圧、軽量級アームの著しい普及によって一段といわれているのである。
 しかし、この批評にもかかわらず依然として軽量級アームがもてはやされているのは針圧の軽減化がレコードの消耗を防ぐ最大の効果となっているからであり、その点では音質の悪影響も見逃されているという事実。そして、これを再確認するところから保守的なメーカー、グレースがあえて軽量化への道を選んだのであろうという見方もできる。ただはっきりといえることは今までももっとも使い勝手がよくまた荒い操作にも耐え得る点を買われていたグレースのアームの軽量化という点だ。おそらくアフターサービスの点でもっとも良心的なメーカーのひとつとしてグレースのアームば軽量アームの中でも一番丈夫であるに違いない。
 シェルの強度とデザインの点で難点はあるとはいえこのグレースの軽量アームが今後市場で好評となることはほぼ間違いはなかろう。
 私の目前でゲイリー・ピーコックの日本録音の大娠幅も 0・59gという軽針圧でまったく難なくトレースをしてしまうアームは国産品、輸入品を問わず、このグレースの新製品G840シリーズを除いて、その例を私は多くは知らない。

パイオニア SA-70

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岩崎千明


スイングジャーナル 6月号(1970年5月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 ステレオ・ハイファイの隆盛と共に生長し、その急上昇カーブはしばしば経済誌や週刊誌にとり上げられるところとなり、専門メーカーの中でもひときわ頭角を現わした第一級メーカー、それが「パイオニア」だ。
 スピーカー・メーカーとしてスタートを切っただけにスピーカーには傑作、逸品が陸続としていて不思議はない。そしてこれらスピーカーに並んで市場においてもっとも好評なのがPLシリーズのレコード・プレイヤーである。PL41を始めとして文字通りベストセラー製品が続いて、スピーカーだけでなくあらゆるセクションに優秀な技術を誇り得る体制がステレオ専門メーカー、パイオニアに築かれつつあったのである。
 その時点、正確にいうと2年前に新シリーズがSA70をきっかけに発表されたのがあった。
 パイオニアのアンプは、それまでにもなかったわけではない。いやそれどころか、対米輸出を始め多くの製品がスピーカー同様世界にバラまかれていた。しかし国内市場では、レシーバーと呼ばれるチューナーつきアンプにのみ重点が置かれ、マニア・ライクなプリ・メイン・アンプは、常に他社の独歩を横目でにらんでいたとしかいいようのないものだった。
 マニアの層が厚くなり、若い層がプリ・メイン・アンプに手を出すようになった2年前、やっと売る気になったのであろうか。商品企画としても十分納得できる製品が待望の中で発表されたのであった。それがSA70でありSA90だ。
 SAという呼称はステレオ・アンプのイニシャルからであろうが、パイオニアの従来のSAアンプにくらべて、SA90、70、50の新製品ははっきりと区別される。それはまず、トランジスタ化されたプリ・メイン・アンプであり、さらにつっこんでいうと量産性を十分に考慮されている製品である。それまでのSAアンプは真空管による構成であった。トランジスタ化されたのはレシーバーのみであった。逆にいうとレシーバーにおいて研究し尽された技術の蓄積が新シリーズのアンプの土台となっている。それは、単なる技術だけでなく、実際のパーツ、プリント板の各部においてもハッキリと認められる点である。例えばトーン・コントロール・セクションのプリント板はすでに量産され全世界に送り込まれているレシーバーの一機種と全然変らないもので新型アンプに「流用」されているという具合である。このパワー・セクションはあのレシーバーと共通部分、という組合せによって、パーツのクリアランスは少数生産の時よりはるかに押えることができ、ひいては製品の質の均一性、信頼性を高めることになっている。さらに重要なこと、特に需要者にとって重要なことはこの量産性が製品のコストを引下げる点である。
 新型アンプは同じ級の他社製品とくらべると、明らかに割安だ。同じ価格ならパワーが大きいとか、アクセサリーが豊富な点だ。
 SA70のムービング・コイル型カートリッジ用ヘッドアンプはこの価格の他社製品には見られない。
 そして安いからといってその再生音は少しも濁りがなく、素直なトーンクォリティは多くの専門家も認める所である。大出力に支えられた低音の量感、歪の少なさに基づく中音から高音にかけての品の良いスッキリとしたソフト・タッチ。
 トランジスタ化されて一段とパワーを望まれるとき、パイオニアのアンプの魅力はまだまだ尽きることはないがコスト的に見てベストバイにはSA70が強いだろう。爆発的というわけにはいかない。しかし、本当のベストセラーというものはこのように長く、じっくりと売れる製品をいうのである。

サンスイ AU-999

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1970年4月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 サンスイから、やっと待望の大出力アンプAU999が発表された。
 やっと、というこの言葉をもっとも痛切に感じているのは、このアンプの常用者になり買い手となるべきマニアの側ではなくして、おそらくサンスイというメーカー自身ではないだろうか。
 サンスイがブラック・フェイスという独特のメカニカルなデザインを打ち出したトランジスタ・アンプのPBシリーズ、AU777を頂点として爆発的なベストセラーを続けたのは、今を去る3年前であった。このAU777の売れ行きは、まさに伝説として残るほど驚異的であり絶対的であった。高級マニアにトランジスタ・アンプの良さを納得させ、トランジスタ・アンプの愛用者を確実に個定化したのもこのサンスイAU777の大きな業績といえるだろう。それまでは、トランジスタ・アンプは音が良いという以外の何かの理由で使用するだけであったのである。
 AU777の驚くべき人気に刺激されたトリオ、さらにパイオニアなどのステレオ専門メーカーが、このAU777の後を続けとばかり、ぞくぞくと一連の製品を充実させて今日のトランジスタ・アンプ全盛期を迎えている。今では、特にことわらなければ、アンプといえば、トランジスタであるのが常識である。それは、そのままトランジスタ・アンプの性能の向上と現在の優秀性を物語るのである。そして、市場のアンプの充実が著しい最近の情況下に於いては、定評のあったAU777も多くのライバル製品にその地位をおびやかされる現状である。AU777は中音コントロールを加えAU777Dとして諸性能を充実させたが、ライバルメーカーのより大型のアンプ群を相手に、ベストセラーの伝統に輝くサンスイ・PBシリーズの象徴製品たるには物足りなくなって来たのは事実である。それをもっとも強く感じていたのが、かつての栄光を意識するサンスイと言うメーカー自身であって何の不思議があろうか。
 その山水が逐に他を圧する本格的大出力アンプを出したのである。
 AU999は単に大出力というだけでなく、PBシリーズの最高級、いやそれ以上に「象徴」たるにふさわしい幾多の「内容」に充たされている。
 その最大のポイントは、なんといっても全段直結パワー・アンプという点であろう。最近の高級トランジスタ・アンプのひとつの流行がこの全段直結である。JBLのアンプSE400の改良型によって初めて採り入れられたこの回路方式は、トランジスタ回路によってのみ実現の可能な、いいかえれば、トランジスタにふさわしい回路方式であり、これは初めカウンター回路のために開発された直流増幅器であった。高速カウンター回路への発達が、そのままオーディオ用としてもっとも理想的な回路方式を創ることになったとしても、少しも不思議ではなく、トランジスタとその回路の発展として考えればごく当然な結論であった。ハイ・ファイ用として終局的に理想とされるのがこの全段直結であり、これを製品化したのがJBLであった。さらにサンスイがJBLの日本総代理店を兼ねていることから、サンスイのアンプにJBLの息のかかった全段直結が応用されるのもまた当然であり、サンスイならそれが最良の状態で活きてくることも想像できる。
 サンスイとJBLの結合はすでにスピーカー・システムにおいても見られるが、アンプにもこの優れた成果が遂に通せられたと見るべきであろう。
 このことはAU999の音質を聞けばだれしもが納得するのではないだろうか。力強く、あくまでも豊かな低音、輝かしい中高音、そして冴えわたる高音のひびき。JBLのアンプとの違いはより充実し厚みと力を増した中音域に
あろう。それはテナーのソロを聞くときに強く意識させられ、中音コントロールをも備えるAU999にとって大きなメリットとなろう。
 AU999のもうひとつのポイントは2台のデッキにより、テープからープの録音再生が容易な点であり、これは今日のテープ隆盛期においてのマニアには大きな魅力といえよう。
 全段直結と名を冠した各社の高級アンプの中でも本命とみられるこの50/50Wの大出力のアンプが85、000円と割安なのもファンにとってはかけがえのない製品といえるだろう。

トリオ KT-7000

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岩崎千明


スイングジャーナル 4月号(1970年3月発行)

「SJ選定 best buy stereo」より


 KT7000が出た時、この製品が日本のHiFi市場において、類に無い傑作であると感じた私は、トリオの工場へファルコンを駆って取材にいった。
 クリスタル・フィルターを用い、選択度のずばぬけたIF回路、ICを本格的に採り入れた回路構成、FETを採用して、入力混変調をシャット・アウトしたフロントエンド(入力同調回路部分)、さらに何よりも注目すべき帯域1メガヘルツ(MHz)のFM複調回路(ディスクリミネ一ター)。歪を極度におさえセパレーションを格段に向上させ、高音域までも信号洩れをおさえたステレオ・アダプタ回路、いずれをとってみても今までのFMチューナーの国産品はおろか海外製品をはるかに上回る高性能ぶりはカタログを見ただけではすべてを納得できなかったのであった。
 開発部長兼任の春日常務(当時)の部屋で手にしたKT7000は、中身も今までのチューナーの概念では計れないものだったし、その性能ぶりも予想を上回るすばらしさだった。
「カートリッジを換えて音がよくなるのをマニアならだれでも知ってるでしょう、チューナーだってまったく同じですよ。KT7000に換えれば今までのチューナーがどんなに音を取り逃がしていたかわかりますよ」という春日常務の言葉が少しも大げさでなく納得できたのである。
 チューナーにおいてその性能を判断する一つの手軽な方法として私は次のようなことをいつも試みる。
 局側でステレオ開始時に調整のためのソースを流すが、右チャンネルから音が出るとき、左の音をボリュームを上げて聞いてみる。左側の場合も同じだ。洩れ信号は必ずといってよいほどザラついて汚たない。つまりセパレーションの悪いチューナーでは単にセパレーションが悪いだけでなく、それは明らかに「歪」そのものなのである。
 この方法で確かめたとき、かたわらの出原開発部長がニンマリと笑って「KT7000は大丈夫ですよ。アダプタ回路の帯域が今までのよりずっと広いんです。これは縁の下の力みたいに目だたないのですが、技術的にも価格的にも大へんな仕事でした......」
 なるほど、見えない努力はここだけでなく、あらゆる点におよんでいた。クリスタル・フィルターのシャープな選択度特性は、単に数個組合わせただけでは完全なフラットな帯域特性をうることはむずかしく、さらに従来なおざり視されていた位相特性をよくする点がからんでトリオのすこぶる優秀な技術陣でも大へんな努力の積み重ねが強いられたという。しかしこれらの数多い技術的試練も成果を上げたといえよう。その後の、そして今日において.もベストセラーを続けるKT7000がすべてを物語る。
 このKT7000の人気が KA6000の評価を高め、その後この2機種を主力としたトリオのアンプ全体の売れゆきを高める索引力として大いに力あったようだ。
 最近KT7000が特にテープ・マニアに多く使われると聞く。私自身、接したテープ党にも圧倒的に使われており、また推めてもいる。理由は、最近ますますレンジが拡がり、ステレオ放送録音で高域でのビートを起こしやすいのがKT7000によって解消するからだ。つまりオーディオ・マニアが増えるにしたがい、オーディオ技術、ステレオ再生技術が向上するにしたがってKT7000の真価がいっそうはっきりし、その存在がクローズアップするというわけだ。
 このベスト・バイ紹介記に数多くの商品が登場してきたが、このKT7000は、おそらく今まで以上に長いベスト・バイを続けるにちがいない。本当に優秀な製品というのはそういうものだ。

パイオニア CS-300

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岩崎千明


スイングジャーナル 4月号(1970年3月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ライバル・メーカーのブックシェルフ・スピーカーの追求にあって永年ハイファイ・スピーカーの専門メーカーとして君臨していたパイオニアの牙城がおぴやかされたのが3年前。CS10というブックシェルフ型の国内製品最高の名作が王座をゆるぎないものとしてきたが、最近の各社ブックシェルフ・タイプ・スピーカーの見覚ましい改良で新型はますます向上していることはご存知の通り。それに対抗して、パイオニアが専門メーカーとしての面目を、スピーカー・メーカーのめんつにかけて発表したのが新シリーズCS700、CS500、そして今度のCS300である。
 FBコーンと称した新したコーン材料は、米国のJBL、アルテック社などのそれらと同じ低すき紙によりコーンの繊維が従来のものとはくらべものにならぬくらい丈夫さを増すことになり、軽く薄い外国製スピーカーと同じコーン紙を完成させることを可能とした。従来のウーファーとはコーン重量も格段に軽くなって、ウーファーの受持周波数をはるかに越える範囲まで歪率を押えた上でレンジも拡げられたという。これが新シリーズのスピーカーの音を従来のパイオニア・ブックシェルフを一変してしまった。ウーファーのこの向上は他社の場合よりもパイオニアにおいては条件としては技術的にはるかにむつかしいものを克服しなければならないことは予想ができる。というのは米国のARのオリジナル・ブックシェルフと同じ、ウーファー方式、つまリアコースティック・サスペンション方式に準じた完全密閉式のブックシェルフ型は、パイオニアのブックシェルフと、クライスラーのそれだけであり、密閉式の新作中におけるコーン紙に加わる内部空気圧の変化と圧力は他社のバスレフ型や、それに準じた形式にくらべてはるかにきびしいものであることは容易に想像でき、それを克服するためにはコーンの硬度というか丈夫さは一段と高いものを要求されることとなる。
 これを完全に解明して完成したFBコーンは、パイオニアのブックシェルフ・スピーカーを大きく前進させたのである。
 新シリーズのスピーカーが従来、ややもすると「品がよい」という言葉のもとに触れられなかった再生音のいきいきとしたVIVAな魅力をパイオニアのスピーカーにも与えることになったのである。
 ジャズにおいては、特にこの楽器のいきいさした活力が欲しい。ジャズ再生の決め手といえるが、この新鮮な感覚であり真の手ごたえである。そして、今度の新シリーズがこの点で今までになく向上したのは、ジャズを生活の中に取入れているオーディオ・マニアとしてこんな喜ばしいことはないといえよう。
 CS700が高音にマルチセラー・ツィーターをそなえ、CS500がコーン型ツィーターでともに中音コーン型の3ウェイである。
 今度、発売された普及型の300は、2ウェイだ。20センチ・ウーファーとコーン型ツィーターで構成され、ちょうどAR4とよく似たものである。AR4の音がおとなしくプログラムソースを選ばずに品のよい音を出すが、類をみないほど低能率でアンプのボリューム設定点が全然達ってしまうくらいにレベルが落ちこんでしまうのにくらべ、パイオニアのCS300は一級品のシステムにくらべても損色ないほど高能率だ。そしてこのCSの需要層を考えるとき、スピーカーの高能率はなににもまして嬉しい。あまりパワ一にもゆとりをゆるせない、どちらかというと比較的普及型クラスのアンプと組み合せても十分なエネルギーを保たれ、しかもこの位の小型スピーカーでは苦手の低音域において豊かさといい、スケールといい実に見事である。低音域から中音域にかけての鮮明度の高いサウンド。アタックのきれのよさ、そして高域の澄んだ迫力。この小型ブックシェルフの傑作が1万円という価格で市場に出たことを柏手をもって迎えたい。

オンキョー Integra 712

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岩崎千明


スイングジャーナル 3月号(1970年2月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 コンピューター万能の時代である。コンピューターをアンプの設計に活用した、という時代の先端をそのまま商品とした強力なアンプがオンキョーから発売された。
 ハイ・ファイ業界の眼れる獅子といわれた関西の大型専門メーカー大阪音響は、すでにマルチ・チャンネル・アンプ・ステレオ・シリーズで一躍業界でフット・ライトを浴びる存在となって一年。お手のもののハイ・ファイ用スピーカーを基盤に着々とステレオ専門メーカーの地盤を確固たるものにしつつある。コンポーネント・ステレオが流行のこのところ、すでに発表以来高性能をかわれているスピーカー・システムE83AやF500のスピーカー陣にいよいよアンプが加わることとなったのである。
 結論から申し上げると、このアンプ群、いかにも百獣の王にふさわしい大型メーカーの作り上げたアンプである。
初めてのアンプ製品ながら、じっくり時間をかけて、ベテラン技術スタッフがガッチリと取組んで完成したにふさわしい、手ごたえのある本格的高性能を秘している。ただ欲をいえば、もう少し商品としての魅力がほしい。しかし、やはり専門メーカーらしくオーソドックスなデザインになっている。同じ関西の非常に手堅いアンプメーカーL社の商品に対する考え方と同じものをデザインに感じさせる。
 ハイ・ファイ専門メーカーとかステレオ専門メーカーといえるメーカーは決して多くはない。オンキョーはそういう数少ないメーカーであり、業界で屈指の規模の大型メーカーである。
 カラー・テレビまで自社の技術で作り出し得る高度の電子回路技術力は、アンプ・メーカーではチューナーで名の通っているT社がわずかにこのオンキョーと匹適する程度であろう。
 テレビに対するパルス回路的考え方が、アンプの低域特性に応用されて、コンピューターの出動にまで発展したものであろう。アンプの低域時定数の理想的な決定に複雑で面倒な計算に計算機を応用したという。そして、もうひとつの理想的な回路として、このところにわかに注目されてきている出力コンデンサーレス、OTL回路を含む全段直結アンプ方式を、すでに検討を終り、オンキョー・アンプの最高級機種としてインテグラ701を同時に発しているのである。ただ701は全段直結とハイ・パワーのためにかなりの高価な値段で一般の若いマニアには手がとどきかねると申しておこう。
 インテグラ701を最高ランクとして712、713、714を除いてまったく同じといってよいパネル・デザインである。
 最近のアンプの各社の製品を見ると、マルチ・アンプ方式に対する配慮がにじみでているが、オンキョーの場合も同時に発表されたディバイダー・アンプとパワー・アンプを組合せてマルチ・アンプシステム化ができる。しかし、このマルチ・アンプ・システムは非常にレベルの高い音楽ファン層を意識していることがわかる。きわめて周到に設計されており値段も安いものではない。これでもうかがわれるようにオンキョーのアンプはかなり高級マニアを狙ったものだ。いまは、珍しいものではない周波数切換付きトーンコントロールも、親切な配慮であるし、よけいなアクセサリー回路も欲ばっていない。つまり非常にありきたり、オーソドックスな設計基本方針にもとづいて製品化されたものであることがわかる。
 特徴のないデザインもそれの現われであろう。ただこのあたりまえな衣の内側は非常に充実しており、それは712において13kgという超重量にも見られる。おそちく、胴大な電源回路が同クラス製品中ずば抜けた迫力をもたらしているのであろう。
 初級者にはきわだった魅力を聴しにくい製品ではあるが、あなたがレベルの高い音楽マニアならインテグラ・シリーズの良さを使っているうちに、本当に認めるであろう。
 このアンプを実際に鳴らしたとき、この価格が妥当なものであるごとがすでに判ったことは確かである。この重低音の力強さと分厚い響、中音域のぬけのよさ、そして高音ののびはさすが大型メーカーの手がけた製品にふさわしい一流製品である。

JBL D130

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岩崎千明


スイングジャーナル 2月号(1970年1月発行)

「私とジムラン」(サンスイ広告)より


 私はその部屋に入るなり思わず立ち尽くした。目もくらむような鮮かなフル・コンサートの音でその部屋は満たされていた。
 何分たったろうか、視線をめぐらしてスピーカーの存在を確かめるまで、それが再生された音であるとは信じられないぐらい鮮烈であった。
 私とJBLの最初の出合いは、その音と共に強烈な印象を脳裏に刻み込まれたのである。
 なんと幸運にも、その音を出していたJBL・D130はこの直後、私の部屋のメイン・スピーカーとなって、鮮かな音で再生音楽に息吹を与えることとなったのだ。13年も前のことである。

 JBLという名が米本国のハイファイ業界において大きく伸び、広い層に知られるようになったのは、前大統領リンドン・B・ジョンソンの時期であったといわれる。ジョンソンのイニシアルであるLBJにひっかけて、JBLという呼称で、最高級ハイファイ・スピーカーのイメージを広く一般層にアピールした作戦があたったためであろう。

 私がJBLを使い出した頃、米国マニアの一般の通例として、ランシング・スピーカーといういい方で知られていたが、すでに最高級マニアのみが使い得る最高価格のスピーカーとしての定評は、米本国内では確固たるものであった。
 ランシング・スピーカーと呼ばれる商品はJBLのほかにアルテックの製品があるが、アルテックが業務用ということで知られていることをはっきり狙った製品だ。業務用が信頼性と安定性をなによたも重要視するのにくらべて、ハイファイ用はまず、音楽の再生能力そのものを意識する。
 JBLが独立した戦後間もない初期の製品は、アルテックのそれと外観、機構ともよく似ている。しかし音自体はかなり差があって、JBLの方がより鮮明度が高い、ということができた。このことは現在でも少しも変らずにJBLの音に対する伝統となっている。

 D130が1本しかなかったため、私はステレオに踏み切るのがかなり遅かったが、他のスピーカーによるステレオ以上に、D130のモノーラルの方がずっと楽器そのものを再生した。よく、どぎつい音がするとか、派手な音がするとかいわれたが、装置の他の部分、例えばアンプとか、カートリッジとかがよくなればよくなるほど、私のD130はますます冴えて、本物の楽器のエネルギーを再現してくれた。
 私は最近、ジャズをよく聴くが、アドリブを重視するジャズにおいては、一瞬一瞬の情報量という点で、ジャズほど情報量の多いものはない。一瞬の波形そのものが音楽性を意味し、その一瞬をくまなく再生することこそが、ジャズの再生の決め手となってくる。
 音色、バランス、クオリティー、パターン、いろいろ呼び方の音の再生能力の中で、ジャズでは音の変化の追随性というか、過度特性という点が、もっとも重要なファクターであるといえる。
 その点でJBLのスピーカーは、最も優れた能力を秘めていると思える。長い間、私はいろいろなスピーカーを使ったが、結局、最近はJBLを最も多く聴くようになってしまった。

 いま私の部屋にはレコード試聴用のSP-LE8Tとは別に、C40リアー・ホーン・ロード・バッフルに収められたD130が2本、それにオリジナル175DLHのクロスオーバーを下げた強力型のLE85が2ウェイを構成し、ステレオ用としてのメイン・システムとなっている。

 時代が変っても、社会の急速な進歩と共に、再生芸術の狙いも変ってくる。毎月聴いている新譜も、鮮かな音のもが増えているが、JBLのスピーカーはますます冴えて、その限りない真価を深めつつある。

パイオニア TX-70

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岩崎千明


スイングジャーナル 2月号(1970年1月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 新聞の片隅の「東京地区の新らしいFM局に春早々に予備免許がおりる」ことを報じた記事が目に止った。
 もっとも、この新局は現在の唯一つのFM民間局、FM東海が合併されるとのことであったから、東京地区で新局開局によってすぐFM放送局が増すというわけではないらしい。
 しかし、新局は現在のFM東海にくらべて放送電力がかなり大きいことが予想されるから、サービス・エリアはぐっと拡がるだろう。それに東京ではさらに4局ぐらいは増すことになると伝えられているから、FM放送もテレビなみに番組によりいくつかの放送の中から選んで聞けるという日ももうすぐである、
 しばしばいわれるように、米国ではFM民間局が極端に発達していて、ニューヨーク、ボストン、シカゴ、ロスアンジェルスといった主要都市では、大小さまざまの20から40局ものFM局がダイアルいっぱいにひしめいている。日本でもそれほどではないにしても、FM多局時代がやってくることはまちがいなく、今やFM全盛時期を目前に控えた準備時期ともいえるようだ。
 このFM多局時代をはっきりと感じさせる製品、それがパイオニアの最新型チューナーのTX70である。
 放送局サイドの開局準備が着々と進んでいるのと平行して、聴取者も来たるべきFM花ざかりの時代に応じた意識を、今から植えつけることは決して無意味なことではない。
 テレビ全盛の今日、聴取者側のあり方といったものが日ごとのようにジャーナリズムをにぎわしているのをみるとき、新らしいマスコミとしてのFM放送の受けとり方といったものも論じられるのは当然であろうし、それ以上に必然性をもっていよう。そして、その最低条件として、物理的な意味での、質のよい電波とその受けとり方自体がまず問題となる。
 特に音楽番組に重点を置いた場合、周波数レンジ、ダイナミック・レンジ、雑音とあらゆる点において優秀性を示すFM電波の特長を十分発揮するために、この点が一層重要な問題となるのである。
 放送電波の質については、生放送、高速テープなど放送局側に期待せねばならないが、受信側の不完全により、せっかくの良質の内容を見逃がし、あるいは損なっては、大きな損失であろう。特に音楽ファンにとって借痛にちがいない。
 FM電波をより良く受信するには大きなアンテナと並んで「正しい同調」が大切だ。FM電波はテレビの音声と同じように、同調点が正しく合っていないと音は小さく、そして歪む。しかも、この正しい同調点はダイアル面上で針を突いたようなただ一点しかないのである。
 そこで、FM放送を正しく同調させるためにSメーターや、中央指針の同調メーターが必要となり、それは高級チューナーでは、アクセサリーとしてより、それ以上に重要な必需品となっている。高価なチューナーでは、正しい同調のためのオシログラフさえ組み込まれているのだ。
 そこで実用性の高い押ボタン同調機構が注目される。
 FM放送にあって、押ボタン同調方式(プリセット式)はカーラジオなど中波におけるよりはるかに重要な意味を持っているのである。単に「便利」というのではなく、めんどうなFM受信の「正確な同調点が容易にキャッチできるという点が注目されるのだ。
 バイオニアのTX70は製品としては日本で初めての押ボタン式同調機構を採用したチューナーだ。
 FMの押ボタン同調メカニズムは電波が超短波のために大きく深い幾多の問題点をかかえてきた。それを克服しなければ製品化はでき得ない。この簡単な、素人にも正確なFM受信を可能としたメカニズムには、しかし最新のエレクトロニクスと高度の精密技術と、新らしい高周波材料とが秘められている。
 この新らしい機構にかえて、技術的良心の行きとどいた回路は、高級な音楽マニアも納得するFM再生を可能にする。それはこのTX70をT社の最高級チューナーと切換スイッチにより、SJ試聴室で音を確かめたとき裏付けされた。
 まったく驚いたことに、切換えたことが判別できないほどにすばらしいものであった。

ソニー TA-1166

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岩崎千明


スイングジャーナル 1月号(1969年12月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 コンポーネント・ステレオという言葉が説明なしに通用し、セパレート・ステレオに代って流行してきつつある。そしてステレオ専門メーカーの製品が市場において、ますますその地位を確固たるものとしてきている。
 音楽ファンの好みが次第に高級製品に移行してくるに従って、製品のレベルも格段に向上しつつあるこの頃である。
 こうした情勢下のハイ・ファイ市場において、最近ソニーがアンプを中心とした一連の製品を発表し注目された。高級アンプにおいて、国産製品はもちろん全世界の製品の中にあっても屈指の水準を誇るソニーのトランジスタ・アンプ、その血統を引いた製品が今回発表されたTA1166なのである。
 かつてこの欄で、ソニーの普及型レシーバーSTR6500を試聴したが、ソニー製ということで、あまりにも多くを期待し、肩すかしを感じたことがあった。TA1166については約5万円という佃格を考え、ほぼ同価格の他のアンプと比較対照とすることに努め、期待の過ぎることを戒めさえした。
 しかし結論からいうと、これは不要であったようだ。ソニーの技術はTA1120においてみせたその水準の高さは、新製品にはっきりと示されて、5万円弱の製品とは信じられない優秀性をみせたのである。
 TA1166は同級製品の中にあって一段と優れた再生を約束してくれるアンプである。くっきりとした音の粒立ち、アタックにおける尖鋭な音、という点でまぎれもなく名作TA1120の流れを引く再生を示してくれたのである。
 アンプにおいてトランジスタがよいか、球がよいか、という論争が今でもくり返えされている。しかし、音の解像度、分解能力という点ではよく作られたトランジスタ・アンプがはっきりと優れていることは誰しも認める事実である、そして、少くともジャズという音楽芸術は、楽器のひとつひとつの音に演奏者のすべてをかけているだけに、この瞬間の音こそ忠実に再生することが他の何よりも、例えば全体の響とか、ハーモニーとかよりも重要である。とすれば、その再生にあたって、何よりも分解能力が重要となるであろう。その点で、音の立上りの良さに抜群のソニーのアンプはジャズの再生に対し、この上なく理想的といえる。しかも5万円という価格から予想できる音楽ファンの平均的好みを配慮してか、低音感について力強い迫力と共に、一段と豊かさを加えての音作りが心にくいほどだ。むろん、この低音感は単に低音のみが出るというのではなくそれに対する高域の透明な切れ味があってのものだ。
 高域の、冷たいほどにとぎすまされた切れ味は、ソニーの名作TA1120においてすでに十分知らされてきており、それがそのままTA1166に受けつがれて血筋の良さを感じさせているのである。
 TA1166のデザインは、今までのソニーのイメージをまったく打ち破ったメカニカルな、現代的な線が強い。一見通信機を思わせる、思いきったシャープな線でかこまれたダーク・グレイの2トーンだ。
 このデザインから、初め、若者向けのものという印象を受けたのだが、どうしてどうして単に若者向けに止まる程度のものではなく、音色にも、バランスにもきわめて高い水準を示して、類のないパネルの仕上げの良さが、そのまま内容的にも十分に神経を使った高級品であることを感じさせる製品であった。
 ただ、これは個人的な好みなのかも知れないのが、パネル・デザインがあまりに凝りすぎて、例えば、バランス調整のスライド部のまわりなど、繁雑な印象を受ける。せっかく使い良さそうに配された各ツマミは、もう少しスッキリとまとめられていた方が、若い層だけでなくより広い層に支持を受けるのではないだろうか。とはいえ、この価格のアンプにまた魅力いっぱいの製品がひとつ加わったのは、ファンにとっても喜ばしいことにちがいない。

サンスイ SP-2002

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岩崎千明


スイングジャーナル 1月号(1969年12月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 山水がブックシェルフ・スピーカーSP100とSP200をひっさげて、国産スピーカーの戦列に加わってから3年の月日が経った。
 技術的進歩、開発のテンポの著しく早いハイ・ファイ業界において、3年間という月日は、製品がほとんど入れ代ってしまうほどであるが、山水によってきっかけが作られたといってもよい、ブックシェルフ・スピーカーの分野では、特にそれがはっきりした形で現れ、再生音の傾向までが変ってしまった、といえるほどである。それは裏返えせば、それほどにまで山水のスピーカーが成功し、他に影響を与えたといえるのである。
 単に音域を低い方に延ばすことにのみ技術を傾けた他社のスピーカー・システムは、山水のSPシリーズにくらべて低音感が重く、スッキリと豊かな山水のシステムとは対称的で、それがそのまま山水のシステムを空前といわれる成功をもたらし、それ以後の国産ブックシェルフ・スピーカーの音のパターンまでも方向づけてしまったといえよう。
 国産のブックシェルフ・タイプ・システム全盛の今日を形作った、山水・SPシリーズも、3年の年月で他社の新製品に追上げられ、さらに新らしい技術を導入して製品の向上を企ることとなった。
 そして誕生したのが、SP100を向上させたSP1001であり、さらに、SP200を向上させたSP2002である。
 SP1001、SP2002とも低音のソフトな豊かさに一段のさえと張りつめたアタックの良さが加わった。さらに特筆すべきは、その中音域の充実ぶりである。
 特にSP2002はその効果が、非常によい結果をもたらした。つまり全体の音色と音のバランスが、格段にグレードアップされた。それはまぎれもなくJBLのスピーカーと同じ路線上にある音である。
 JBLの日本代理店でもある山水のスピーカーがJBLと似たとしてもこれは決して偶然ではあるまい。いや、それは山水でなくしては得られなかった結果といえないだろうか。
 それは、ここに使われているユニットを観察しても判ることなのである。
 まずさえたアタックの鮮明な低音を得るため低音用スピーカーはコーン紙が一段と改良され、低いf0と硬度が増したコーン紙を与えられている。さらに注目すべきはその中音用だ。一見SP200とよく似た中音用のコーンは、アルミ・ダイアフラムが、中心部に加えられている、しかもよくみるとこのダイアフラムは凸起が高く、従来のあらゆるスピーカーにくらべて深く成形されていることに気付こう。このような深いダイアフラムはJBLの最近の製品中、特に優秀性を認められているLE20トゥイーター(高音用)のダイアフラムだけである。この砲弾型に高く凸起したダイアフラムにより高音のエネルギーが歪なく一段と強くなり、指向性の著しい向上が図られているようである。このJBLの技術に山水の技術陣が見逃すわけがない。音楽再生上特に重要なこのダイアフラムをとり入れた、とみるべきであろう。その結果、特に歪の気になる中音の高域において従来より歪をおさえ鮮明度の高い中音を得ることができる重要なファクターとなっているのである
 このアタックのすばらしい低域と、鮮明でタッチのシャープな中高音はそのままJBLの本来の良さと同じ傾向の再生音をつくり出したのである。そして、JBLのスピーカーと同じように、この優秀性はジャズにおいてもっとも効果を得ることができるのも確かな事実である。

グレース F-8C

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1969年10月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 F8Lというベスト・セラーのカートリッジに「MUSICA」と名付けたF8Mが加わったのは昨年春であった。F8シリーズは国産MM型カートリッジの代表のようにいわれ、その性能、品質、さらに再生品位までもが高い信頼度をそなえている製品である。
 非常に繊細に音のひとつひとつを適確に拾い上げる能力、どんな演奏のレコードでも正確に音溝をトレースする能力、このようなもっとも大切にして必要な条件を、危な気なくそなえているという点て、グレースのF8Lは国内製品中でもベストに上げられるひとつであった。
 そして、その音の繊細さに、より以上の迫力、アタックの力強さを加えて誕生したのがF8Mであった。
 むろんF8Mは発売後、F8Lと並んで好評を持って迎えられ、特にジャズ・ファンからはF8L以上に支持されていると聞く。
 F8L、F8Mの話を長々と前置をしたのには理由がないわけではない。
 今回、F8Cが発売された。F8シリーズの最高級品としてのF8Cについて、次のようなことがよくいわれているのである。
 つまり「F8CはF8LとF8Mとの中間的な製品である」「F8LとF8Mの良い所を採り入れて作られたのがF8Cである......」
 これは結論からいくと誤りである。F8CはF8シリーズの標準品種F8Lを基として出発したF8Mとは兄貴分に当る製品である。メーカーの言によると「F8シリーズの最高級を目指して、精密技術を駆使して完成した製品」である。
 結果としてF8Mのアタックを加えられたF8Cは、音色の上で、F8LとF8Mの中間的なファクターを示すこととなった。メーカーサイドでは、しかしこれはあくまで聴感上の結果であるという。
 F8Lをもととしてその性能向上化の結果、それ以前のF8Mと似たとしても、技術的にはかなり違ったものからスタートして得たのである.
 一般にカートリッジの高性能化の方法として、針先カンチレバーの質量を減らし、その支持をやわらかにすることにより、振動系を動きやすくするのを目的とする。これはシュアーのカートリッジが追従能力、トラッカビリティの向上を狙って優れた性能を得るに到ったことからも納得ができよう。
 レコード音溝に刻みこまれた20、000ヘルツにも達する高速振動に追従するには、そのカンチレバー自体の自由共振はその限界を越えることが好ましい。しかし現実にはそれが、いかに難かしいことか現在の市販製品は20、000ヘルツ以上のものがない。もっとも高いひとつであるF8Lにしても18、000ヘルツである。一般には音声帯域内にあるこのカンチレバーの高域共振はダンパーによって押えられているわけである。このように押えられて周波数特性はフラットにされている。
 微少化されて20、000ヘルツ以上の音声帯域以上高い範囲に自由共振点が達したためJ支持部によるダンプの必要力くなくなって、針先の自由度が大きく向上したわけである。つまり針先コンプライアンスが向上して追従性がF8Cにおいて、25×10の−6乗
cm/dynと、より優れているのはこのためである。アタックの優れているのはこの結果、過渡特性が向上したからである。
 しかし、この僅かな向上のためにかなりのコストアップがつきまとうことになり、コスト・パーフォーマンスの点でF8Lにくらべて損をすることとなるのだが、この点こそ次のように強調したい。
 一般にコスト・パーフォーマンスを考えない最高級カートリッジとして国産を選ぶことは今日ではめったにないのが通例である。国産メーカーの奮起を促すことをいつも叫んできた我々にしては、このF8Cの出現をもっと価値のある成果として見直してもよいのではないだろうか。F8Cこそ外国製高級カートリッジに挑戦した国産カートリッジ第一弾なのであるから。

ヤマハ NS-15

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岩崎千明


スイングジャーナル 11月号(1969年10月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 世界最大のピアノ生産量を誇る日本楽器がスピーカーを作り出した、と聞いたとき、大して驚きもしなかった。その形態がいくら変っているとしてもそれはヤマハが世界に誇るエレクトーン用のそれであるから、とごく当然と考えていた。
 そのスピーカーがハイ・ファイ用である、と知られたとき、かなり驚きをもってその話を受けとめた。
 大きく薄型のヤマハのシステムが私の部屋へ試聴用に運び込まれたのは発売する半年以上も前だったが、その特異な形状は改めて見るとやはり奇異な思いにとらわれた。
 私の知る限り、大型平板スピーカー以外の変形は英国KEF製のADCモデル18のウーファーの角のとれた長だ円型だけで、このヤマハのように奇妙な形は史上初めてであろう。
 それまでのスピーカー技術をあざけ笑うようにさえ思えるこの妙なスピーカーは、アンプにリードを接ぎスイッチを入れると生々した、いかにもVIVEな感じで歌い出した。
 その頃、私はアルテック515Bを組入れた845ボックス、つまりXA7用のウーファーを、愛用のアルテックのシアター用マルチセラー・ホーンと組み合わせて使っていた。
 そのXA7の横においたヤマハのNSスピーカーは、アルテックに大したひけをとらずに太い低音を部屋いっぱいに轟かしたのであった。これにはかなり驚いた。今まで国産はおろかアルテックの業務用のこのウーファーと並みで音を出せるスピーカーなどでJBL・D130を除いては全然なかったからだ。
 ヤマハのNSスピーカーの低音はJBL以上に高能率だった。そして何よりも、その低音はその頃の国産のウーファーにあり勝ちだった重い押しつけがましいことはないし、明るくカラリと澄み、鮮かなアタックは冴えていた。ただ、A7の深い低音域までの延びが、NSスピーカーには物足りなかったのであった。
 しかし業務用のXA7という価格の上でひと桁も違うスピーカーとあまり大差ない鮮かさを、従来の国産ではまったく苦手だったウーファーという分野において外国製と匹敵するこの成果は大いにたたえてよいと思う。
 このシステムはほかに中音用と高音用の3ウェイ・システムであったがこの部分が原因となっているのか判らないが、中音域の上でかなり派手な音作りがなされ、ハイ・ファイ用というにはいささかためらわざるを得ない試聴品であったことを加えよう。その後、このシステムの最新型がヤマハ・ミュージック・ショーで発表されたが、変形のカーブがかなりスッキリして、KEFの長方形スピーカーによく似た形をとってきた。そして音質的にはきわめて素直になりやや派手さのあった中音域はおとなしく、しかもNS本来のVIVEな生々しさは少しも失なわれていないようであった。
 NSのこの優秀性は技術的に2つのポイントにしぼれると思う。そのひとつはすべてのスピーカーにいえることだが強力なマグネットであり、もうひとつは大きな面積をもったコーンが、軽く丈夫なためである、この軽いコーンは、物理的にただただ特性を良くすることをやっていない点だ。この特性本位から音色本位の技術はピアノや楽器創りのヤマハならではの姿勢であろう。この姿勢から今日のNS15のようなハイ・ファイ用としても優れた性能のスピーカーが生れてきたことは注目してよかろう。ドラムの乾いたスキンの音を、迫力十分に伝えるこのスピーカーの行き方は、従来のスピーカーの進むべき道を変える要素を持っているだけに今後が期待できよう。

岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1969年9月発行)

 「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 AR4は米国のAR社の製品中、もっともポピュラーな小型のブックシェルフ型スピーカーである。
 AR社、詳しくはアコースティック・リサーチ社は50年代末期に米国ハイ・ファイ界にデビューしたまだ10年を経たぬ新進メーカーであるがそのユニークな技術に裏書をされた優れた製品は、すべて米国市場で空前といえるほどのベスト・セラーを続けている。おなじみの米国コンシューマー・レポート誌のテストにおいてAR社の製品はひとつ残らず、A BEST BUY つまり「絶対お買徳」と判定されてきた。コンシューマーキラーといわれるゆえんがこの辺にあるのだが、発売するすべての製品が、これほどにうけるのは、万事合理的、機能最高主義の米国人気質に徹底した技術と企画のうまさが物をいっているのであろう。
 AR社は米国内ではAR2およびAR3の2種のスピーカー・システム、ARXAと呼ぶプレイヤーとが家庭用ステレオの独占的製品としてよく知られているのだが、日本市場ではスピーカー・システムのみが高級製品としてよく知られている。アコースティック・サスペンション方式の低エフ・ゼロ・スピーカーはブックシュルフ・システムの別名とまでなっているが、いずれも日本では10万を越す高級品で、AR2からグレード・アップした最近のAR5も12万以上と、すべて家庭用スピーカーとしては輸入品の中でもきわめて割高だ。
 しかし、ユンシューマー・レポート誌のA BEST BUYに選ばれることからも判るとうり、コスト・パーフォーマンスの点で非常に優れているのがARの製品の特長であり、それがベストセラーとなる最大の理由なのである。つまりARの製品はすべてポピュラーな性格の製品なのであり、しかも高性能という点に価値が高いのである。さて、ARスピーカーの中でもひときわポピュラーなのがAR4aである。20センチの低音用と高音用スピーカーとの2ウェイ方式のこの小型のシステムは、ポピュラーな製品と狙って生れてきたわけではない。
 このAR4の発売された67年の前年には、英国の代表的スピーカー・メーカー・グッドマン社が超小型システム「マキシム(米国名マキシマス)」を発売し、それは米国市場で大へんな人気を呼んだ。名とは逆にごくミニマム・サイズの「マキシム」は小さな体に似合わず、力強い低音とすばらしい中高の解明力で、なにごとも大きいものの好きな米国人の間でもかなり売れた製品であった。
 小型車VWワーゲンに対すると同ように輸入品に対する対抗製品のトップ・バッターとして、それを作るにふさわしいベスト・セラー・メーカーAR社が、マキシムを意識して作ったのがこのAR4であった。
 AR4はマキシムほど小さくはないが従来のARスピーカーのサイズよりはずっと小柄だ。しかし、その小柄に似合わず、大きな音を出した時にもびりつくことはなく、音にゆとりがある。小さく鳴らした時の澄んだ音は、大きく鳴らした時にも、少しも影りをみないのはさすが米国製品である。「能率の低い」という点はARスピーカーの大きな欠点でありまたその特長ともなっているが、AR4も能率はあまり良くない。しかし大きな電気入力を加えた時、つまり大型アンプで鳴らすAR4の素直な音はさすがハイ・ファイの本場米国のベストセラー製品とうなづけよう。特に、プログラムを選ばず、ヴォーカルもソロも、フルバンドも、ドラムもそしてピーターソンのピアノも素直な響きで鳴らす。
 38、000円という価格は日本市場ではちょっと割高だが、このスピーカーもまた価値がある製品なのである。

マイクロ MR-411

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岩崎千明


スイングジャーナル 10月号(1969年9月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 マイクロ精機がいよいよ発売したレコード・プレイヤーMR411。「いよいよ」という言葉に、ふたつの意味がある。ひとつは永い間、ファンの間で普及価格でありながらグレードの高いプレイヤーが待たれていたことに対する「いよいよ」である。のこるもうひとつはファンの方には直接は関係ないかも知れないが、プレイヤーに進出したマイクロ精機のメーカーとしての意欲と期待である。
 最近、ステレオの進歩と、その需要層の拡大滲透が急速になされた結果、メーカーサイドの努力もあるがセパレート・ステレオ全盛期からプレイイヤー、アンプ、スピーカーの孤立パーツを組み合せるいわゆるコンポーネント・ステレオ期に大きく方向転換が行われつつある。
 そのため、アンプ、スピーカーにくらべて、レコード・プレイヤーの部門に優秀製品があまり多くはないこともファン側からは物足りなかった市場状況であった。
 そのため、依然として昔ながらのアーム、ターンテーブルを組み合せる形式を取らざるを得ない現状である。つまり専門メーカーのアームやターンテーブルの方が大メーカー・ブランドのプレイヤーにおけるアームやターンテーブルなどよりも、品質の上でより優れていると一般に信じられており、それを裏書きするかのような個々の製品が市販されているのはたしかな事実なのである。
 さて、マイクロ精機はアーム、カートリッジから出発してターンテーブルMB400とMB800をベルト・ドライブ方式のさきがけとしてティアックに続いて市販して成功を収め着々とプレイヤー部門の地盤を築き上げてきた。特に最近は輸出に加え大メーカーの下請けとしての業績も大いに上って躍進の著しいプレイヤー関係メーカーであり、この業界においての真の意味で量産体制の確立した数少ないメーカー規模をもっている。
 アームにしろ、カートリッジにしろ量産のなされ難い製品を大量生産すれば、それなりの設計技術や設備が必要であり、そのため、この業種は大きく育たないといわれてきたのをくつがえすほどに成長したのがマイクロ精機なのである。
 そして、市販のアームの中でマイクロの77シリーズがロングベストセラーを続け、さらに昨年発表したカートリッジM2100シリーズがベストセラーとなった。量産設備のととのったこのメーカーのムラのない品質に加え価格から考えられない高性能はベストセラーと始めから約束されていた。
 この高品質を結集したのが、今月発表のMR411プレイヤーなのである。
 しかも、このプレイヤーにみせるマイクロ精機の意気込みを製品の価格から推測できるのである。
 39、800円というこのプレイヤーの価格を聞いたとき、私はかたらわの編集部F君に「これはハタ迷惑の製品だネ」と話かけた。というのも同業メーカーにとって、このプレイヤーは大きな驚異になるに相連ないし今後の製品に大さな影響を与えるのが目に見えているからてある。ちょうど、昨年発表したM2100がその後の市販カートリッジの価格のオピニオンリーダーとなったのとも似ている。
 MR411のシンプルで抵抗なく受けいれられるフラットなデザインはその内部に眼を向けると裏ぶたにクロスした補強材に、メーカーの製品に対する細かい配慮を確められる。従来の薄いベニアの裏ぶたがしばしばハウリングの原因となっていたことに対する新機構だが、重いモータボードと共に注目してよい。
 最後にその再生音の品質だが、安定したトレースと素直なくせのない再生能力に定評あるM2100と77Hの組合せは「ロリンズ・オン・インパルス」の太い豪快なテナーを期待通りゆとりをもって楽々とSJ試聴室に響かせた。

パイオニア SX-100TD

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岩崎千明


スイングジャーナル 9月号(1969年8月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 米国でハイ・ファイ・ショーと並ぶコンシューマー・エレクトロニクス・ショー略してCEショーがこの6月下旬にニューヨークで盛大に開かれた。今年の特長はハイ・ファイ・ショー的な色彩がかなり濃く、大規模な電気メーカーの参加がなかったかわり、各メーカーの強い意欲が強烈に出ていたという。そして特に注目されたのは日本のハイ・ファイ・メーカーの著しい進出ぶりである。
 その中心はなんといってもハイ・ファイ・アンプである。この数年間、各メーカーによる米国ハイ・ファイ市場のすざましい攻勢はすでに何度も語ってきたが、その猛烈ぶりと成果が今度のCEショーでもはっきりと出てきたのである。ハイ・ファイ・ステレオ・アンプはごく一部の超高級品を除き、日本製品が市場をおさえてしまったのである。
 この猛烈なアンプの進出は、しかし一朝一夕に築かれたものではない。トランジスタの回路技術、生産性の高い、しかもクォリティと信頼性の点からも米国製品を上まわる量産技術の蓄積が今日の国産アンプを創り上げたのである。
 コンシューマー・レポート誌のテストにおいての報告によると、米市場における主力製品20種をテストした結果、性能も優れ、コスト・パーフォーマンスの点で推薦された製品の中の4種は日本製であった。
 そのひとつの詳細なテスト表をみると多くの点で圧倒的に他をしのぎオーディオ全般にわたる優れた性
能、特に歪の少なさと120ワットの大出力特性を持っていた。その名はパイオニアSX1000TAで国内向けSX100TAと諸性能は全然変ることのない輸出用製品である。これがSX100TAの名声を、国内でも一挙に高めるきっかけとなったことは間違いない。SX100TAは、その後日本においてもチューナーつきアンプのベストセラーにのし上った。
 高価な高級品に多くの魅力をおりこんでまず新シリーズを発表し、次第に普及型にその範囲をひろげていくという。いつもの方法がトランジスタ・アンプではとられなかった。それは多くの点で出おくれたが、しかし賢明な着実な戦略であった。トランジスタにつきものの、多くのトラブルや技術的難点は、まず普及型から始めることにより容易なレベルから次第に高度な技術水準に無理なく達することが可能であり、そのため製品に対するクレームは避けることができたと見られる。
 トランジスタ化によって失敗した例は限りなく、そのすべては製品の不完全さによるクレームが原因であり、パイオニアはそれをもっとも安全にさけたのである。そして、パイオニアが自信をもって世に送ったトランジスタ・アンプの豪華型こそSX100TAであった。すでにあった他社の製品をもしのぐ性能は決して隅然でもなく幸運でもない。パイオニアの技術力を示したのだ。
 今まで、トランジスタによるといわれたスティーリーな音は、探しても聞き出すことが出来ない。ウォーム・トーンといわれた管球アンプ特有の音と共通のサウンドが、片側50ワットという強烈な迫力を秘めて発揮されたのである。その音の秘密は従来のこのクラスのアンプをひとケタ下まわる歪の少なさが大きな力となっているように思われる。
 SX100TAのパネル・デザインを改め、スイッチをまとめたのがSX100TDである。米国市場にはさらにパワーアップしたSXT1500Tもあるが、チューナーつきアンプのロング・ベスト・セラーとして、世界の市場に君臨してすでに2年、この級のアンプの新型はおそらく必要ないだろう。まぎれもなく世界一のチューナー・アンプなのだから。

サンスイ CD-5

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岩崎千明


スイングジャーナル 9月号(1969年8月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


「マルチ・アンプにしたいのだがまず手始めにどうしたらよいか」という質問が、やたらに多い。本誌の技術相談はもとより、時々顔を出しているメーカーや専門店のオーディオ相談などで、今までのマニア達に加えて、近頃は、これからステレオを買おうとする程度のごく若いオーディオ・ファンやジャズ・ファンなどの熱心な問合せが、マルチ・アンプに集まる。
 マルチ・アンプ方式では、プリアンプの出力を高音・中音・低音と分けるためのディバイダー・アンプが必要だが、この製品は意外と市販品に多くはない。古くからあるL社のFL15、これはクロスオーバー周波数の選び万に限度がある。現在市場にあるビクター200、ソニー4300、山水のCD3と今回発売されたCD5の4種である。あとはマイナーレーベルの局地的な製品しかない。T社は最近発売し予告されているが市場にはまだ出ていない。
 マルチ・アンプ時代としては意外に、ディバイダー・アンプの製品は少ないのである。そしてかなり初級とみられるオーディオ・マニアにも求めることができ、使いこなせることができるディバイダー・アンプは、今までは皆無であった。そして、その穴を埋めたのが今日の山水CD5である。、
 1万円台という今までの製品の1/2〜1/3の価格がまずうれしい。ディバイダー・アンプは本来、量産がむつかしいので、どうしてもコスト高になるが、山水のこの価格は、アマチュアがこれを自作する場合のパーツ代にプラスα程度の驚くべき価格なのである。おそらく、メーカー側としての狙いはマルチ・アンプ推進のためのサービス製品としてディバイダー・アンプが企画されたためではないかと思える。
 安いから普及型なのかと思うと決してそうではない。本格的なかなりのレベルを狙った製品だ。それはマルチ・アンプ方式自体が、非常に高いグレードを狙ったシステムであるだけに、文字通りそのかなめともなるべきディバイダー・アンプなのだから相当なクオリティーは絶対だ。
 まず、クロスオーバー周波数、3チャンネルのときは低音と中音の分割周波数が200、340、560、900ヘルツ、高音と中音の分割周波数が2・5K、3・6K、5K、7K各ヘルツとそれぞれ4ポイントを自由に選ぶことができる。そして2チャンネルのときは、不要側を2CHポジションにして必要周波数の1点を選んでおけば、低音がその周波数で分割される2チャンネルとなる。つまり上記のどの周波数でもひとつを自由に選び得るわけである。さらにシャーシー下部の切換スイッチで分割周波数の減衰特性をオクターブ6デシベルにも、12デシベルにも選ぶことができるというのもこまかい配慮である。使用スピーカーさえ十分広いfレンジを持っていれば、オクターブ6デジベルの方が「位相歪の点で有利」という説があり、ごく高級なマニアではそれを希望することもあるからだ。
 CD5の親切な行届いた設計はこの切換を不用意に違うポジションに切換えたりして、スピーカーを破損させたりすることのないようにロックがついていて、一度セットしたクロスオーバー周波数切換スイッチはロックを外さなければ切換えられない。音量レベルには一般の中高音にくらべて能率の低い低音スピーカー用を考慮して低音レベルは最大のままでついていないが、中音・高音が前面パネル左右別々についている。
 一般にマルチ・アンプのレベル調節はむつかしいがこのCD5には超ハイ・ファイ録音のジャズ的な、チェック・レコードが付属してアナウンスの声、ベース、ドラム、シンバルなど楽器の音を聞きながらレベル調節ができるのは嬉しい。
 SJ試聴室のアルテック・A7もCD5によるマルチ・アンプで重低音は一層迫力を増し、アーチー・シェップのファイア・ミュージックにおいて「マルコム」のデイビッド・アイゼンソンのベースに緊張感と迫真力が一段と加わるのを意識させられたのであった。

パイオニア PAX-A30

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岩崎千明


スイングジャーナル 8月号(1969年7月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 日本でのロング・ベスト・セラーはトヨタの「コロナ」シリーズと、パイオニアの「PAX」シリーズだといったやつがいた。カー・マニアでオーディア・マニアだった。
 どちらも若者の心を捉えるベスト・セラーという点で共通点がある。しかし、PAXシリーズには欠陥があるわけではない。今度、Aシリーズとして全面的に改良された。PAX30Aはその新シリーズの中で最大口径の、最高級製品である。
 PAXシリーズは、ステレオ以前の昔に端を発する。バイオニアのトゥイーターをウーファーの軸上に配したコアキシャル・タイプということでPAXと名付けられた。PAXシリーズが、もっともポピュラーとなったのは30センチのPAX30Bという傑作のあと、20cmのPAX20Aの出現によってであった。PAX20Aはステレオ期に突入した時期にあって、比較的小さい箱で、十分な低音が出せることで当時のベスト・セラーだった。その後、国産スピーカーはこのPAX20Aをイミッた製品が多く出たことが、いかに売れたかを意味しよう。Aという字がついているが、今度のAシリーズとは違う製品だ。PAXシリーズはその後、Fシリーズとして大幅な改良をされた。このFシリーズの改良点は、特に低音特性をさらに低域にのばすことを自的としていた。その効果は実に明瞭で従来のいかなるスピーカーの低音よりも重低音の迫力がものすごかった。
 そして、またまた、このFシリーズの成功はスピーカー・メーカーの各社を刺激しこれと似たスピーカーがはんらんした。現在のスピーカー・ユニットは大半がこのFシリーズのウーファーとほぼ同じ狙いである。
 今回の新シリーズAタイプはどんな点を狙って改良されたのであろうか。ひと口にいうのはむつかしいが、音のアタックが一段と冴えたことからその多くを判断できる。
 最初にこのスピーカーに接した時は日本製のスピーカーから出てる音とは思えなかった。それほどに国産の今までのスピーカーとは音の鮮かさの点でひらきがあった。それはレコードの音とマスター・テープの音との差ほどに違った印象を受けた。それは、私のいつも使っているJBL・C40オリジナル・ホーンに組み込まれたD130の中低域から低域にかけての鮮かさとあまりにも酷似していたのであった。
 PAX新シリーズの30cm口径のPAX−A30を筆頭に、PAX−A25、PAX−A20、PAX−A16とあるが特にこのA30はスケールの大きさでも、38cm級の外国製とくらべて、ひけをとらない。A25の方が全体のバランスがよいという声も聞くが、スケールの大きさ、圧倒的な迫力という点では口径の大きなA30の方に一段と優る点が認められる。従来の低f0型の重低音本位のスピーカーが、中低音域にやや物足りなさを覚えるのに対し、新Aシリーズでは、音域がきわめて充実しており、その鮮列なアタックこそ最も優れている点といえるのである。これは米国のコーン製造技術を導入して得た新たしいコーンによるところが大であったことも付加えておこう。
 それに加えて、このAシリーズのもうひとつの特長は高音の指向特性の優れている点である。事実このスピーカーとマルチ・スピーカー・システムとを切換えると音場の定位が、きりりとひきしまって、くっきりした楽器の定位が認められるのである。数少ない国産のステレオ・モニター用スピーカーといわれるのはこの高域のずばぬけた指向特性による所が大きい。
 PAXシリーズの真価は、今後ますます広く認められ、新しいスピーカーの路線として注目されることは間違いないであろう。

デュアル 1019

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岩崎千明


スイングジャーナル 6月号(1969年5月発行)

 「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 つや消しみがきの白く光る金属肌と黒のつや消しのツートーンのガッチリしたメカニックなデザインで仕上げられたやや小ぶりのオートマチック・チェンジャー。それが、この3年間、米国ハイ・ファイ市場のプレイヤー分野をわがもの顔に独占しているDUAL1019である。
 小型回転機器はキャリアに優る欧州製品が、常に米国市場を席巻していた。永い間、英国ガラードの製品が、そうであったし、最近では、ARXAという簡易型プレイヤー以外は、このデュアルの製品だ。
 67年も68年にも込めコンシューマー・レポート誌ではレコード・チェンジャーを採り上げているが、その65年以来続けて A Best Buy に選ばれているのはDUAL1019だけである。
 デュアルの良さは、ひとくちにいって、そのメカニズムの完全さと、ユーザーの立場ですべてを考えられた扱いやすさである。メカニズムの完全さ、口でいうとやさしいが、量産製品にとってこんな大へんな話はない。ひとつだけを精密に作ることはできても同じ精密さをそろえるのはすごく高くついてしまう。
 アームのスタート点、カット点は0・1mm以下精度を要求され、量産オートチェンジャーの難点のひとつが、デュアルにはこの点でもむらは全然見当たらない。
 デュアルならではの扱いやすさ、これは圧倒的なメリットだ。米国人に受けているのも、その実質的な扱いやすさからだ。扱いやすさというのは、プレイヤーとしてチェンジャーとしての根本的なメーカーサイドの姿勢によるものだ。今までの考え方、見方からは生れてこない。そして、それを実現するためには高い精度によって裏付けされた優れた機械工作技術が条件となっている。
 その実例をコンシューマー・レポート誌は、68年8月号でこう述べている。振動回転むら、回転数の偏差はごくわずかで問題にならない......。米国の数多くのプレイヤーの中でこう評価を受けているのはARXAとDUAL1019だけである。
 その使い良さの端的な例を上げてみよう。アンプのボリュームを、しぼらずに、アームをアームレスト(受け台)に落とすとき、普通はカタンとかカチとかスピーカーから、ショック音が出るものである。アームを指でなでると、スピーカーからサーサーと雑音が出る。これは市販の最近のアームのすべてにいえる程度の差こそあれそうでないアームはまずない。ところがデュアルにはこれがない。カートリッジ・シェルをさわる、たたく、こんなことはアンプのボリュームをしぼらずには禁物だった。デュアルは雑音はほんの僅かで気になるほどではない。一見チャチな感じさえするストレート・パイプ・アームは何の変哲もないようにみえていて、ここまで考えて作られている。
 デュアルにはオートチェンジャーであるのにそこまで扱いやすさを考えている。ケースに装備されたままケースをたたいてみる。......なんていうことは、針飛びして国産品はおろか、舶来品でも禁物だ。ところがデュアルでは所ックにもびくともせずトレースも安定だ。しかもおどろくのはそのとき針圧1g。3箇所のピラミッド型の3回捲いた支えスプリングがショックを吸収している。
 ベンツを生みワーゲンを創った西独の機械工業技術が、プレイヤーに結晶した。といえそうなのがこのデュアルなのである。
 オートチェンジャーでありながら0・7gまでの針圧でトレースが可能という高級プレイヤーとしての高性能にプロ用を思わすメカニックなデザインで今後ますます愛用者も増すことであろうと思われるデュアル1019である。

トリオ KT-7000

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岩崎千明


スイングジャーナル 6月号(1969年5月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 本放送をきっかけに「絢爛たるFM放送時代」がやってくる。
 音楽ファンにとってFM放送はレコード以上のミュージック・ソースですらある。ある意味というのは、レコードのように金を出してそれを買う必要がない点と放送局用の標準仕様のレコード・プレイヤーや高級テープメカニズムによって演奏される点できわめて品位の高い「音」をそなえているところにある。
 FM放送の高水準の音質をそのまま再現することは多くの点でたいへんむずかしい問題を含んでいる。ただ従来はメーカーがそれをほおかぶりしてきたに過ぎない。それというのもFMの音が本質的にすぐれていたため、多くの点でイージーに妥協して設計された受信回路によってもかなり優れた再生を期待できえたのであり、それがFM放送の良い音だと思われていたすべてであった。
 たとえば高域のfレンジの広さを考えてみよう。放送で聞いたローチのシンバルとくらべ、同じレコードの音の方がずっと鮮かであるのが常であった。そして、これは局側て放送波になるまでの多くの過程をへたことに起因するのと思いこまれていた。これはなにも技術を知らない者だけでなく、高い技術的知識を持ったオーディオ・マニアでさえそう信じていたのてある。
 トリオからKT7000の予告があったとき、私はその技術的すべてが信じられなかった。その実物をみるまで、予告されたクリスタル・フィルター+ICという回路は、あくまでも宣伝のメリットであるにすぎないだろうとたかをくっていた。'68年代に入ってから米国のレシーバーの多くにICが採用されてきたが、それはICの良さを発揮するというよりも、あくまて宣伝上のうたい文句であったことからそう思っていたのである。ICによってトランジスターと比べものにならぬほど高い増幅度を得ることができるのは確かだが、それはいままでの回路常識によっては本当の良さを発揮できず、集中同調回路、または理想的なクリスタ・ルフィルターと併用してこそ本当にすぐれた回路構成ができることを私は知っていたのである。そして、その通りの理想的構成をKT7000はそなえていた。KT7000を初めて見たのは内輪の発表会ではあったが、その後メーカーを訪ずれた際、その全貌をじっくりみせてもらうことができた。
 その技術的レベルの高さ! ここにはまぎれもなく世界最高水準のFM受信回路が秘められていた。それもクリスタル・フィルター+ICのIF回路だけでなく、いたるところ、チューナー・フロント・エンドにもマルチアダプター回路にも新しい技術が、周到な準備を棟重ねた上でのきめこまかい配慮によってびっしリと織りこまれていることを確かめたのであった。
 この高い技術に支えられたKT7000の優秀さは、ほどなく行なわれたオーディオ各誌の市販チューナー鳴き合せでもいかんなく発揮された。国産中はおろか、はるかに高価な海外製品とくらべても一歩も譲るところなく、それに上まわる結果を示し、米国市場において、もっとも多量のFMチューナーを提供してきた実績を持つトリオの真価を発揮したのである。
 私の耳によって確かめた優秀さの実際をひとつだけ記しておこう。
 ステレオ放送の初め片チャンネルからのみ音を出す準備の音だしの際、音のでていないはずのもう一方のチャンネルの音量だけあげて聞いてみる。KT7000の以外のチューナーの多くは、もれた音が歪っぼく聞けるのに、KT7000ては優れたセパレーションがもれを極端に少なく押え、その音はいささかも歪ぽい感じを受けない。これはIF特性、マルチ回路全体の優れた位相特性のたまものであり、KT7000によってそれが初めて実現されたといえるのである。
 6万円近い高価な価格も、技術とその音を聞けば、お買徳品てあることは間達いなく、ベスト・セラーになるだろう。

ティアック LS-360

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1969年4月発行)

「SJ選定新製品試聴記」より


 ティアックが最初にスピーカー・システムを発表したのはもう一年も前であった。かなり好評をもってむかえられたこの大型ブックシェルフ型スピーカーの音に、初めて接したとき、私はそれほど感じなかったがまた同時にテープレコーダー・メーカーとしてトップ・クォリティをうたわれるティアックの音に対する独特なポリシーないしは立場のむつかしさというものの一面をかい間みた思いがした。テープレコーダーというものはレコードと一律にして判断でき得ないきわめて優れた再生品位を持っている。これはまぎれもない事実である。そして、これと表裏一体のマイナスの面も無視はできないこのマイナス面にはヒスを主体とするSNがあり、あるいは位相の問題もあろう。このマイナス面を意識しすぎた音作りが最初のスピーカー・システムの音にあったといえるのである。
 具体的にいうならば声や歌が生々しいプレゼンスを持っているのにかかわらず器楽曲における類をみない独得の音色的バランスである。ヒスに対しての心使いから生れたのであろうが、少し高域が足りないようである。
 TEACというブランドの知名度は、日本においてよりも米国マニアの間での方がより高い。それもずっと以前、ステレオ初期から、超高級テープレコーダー・コンサートン・ブランドのメーカーということで伝説的でさえあった。
 そして、このトップ・レベルののれんがスピーカー・システムという音作り一本の商品に気おいこみすぎた結果といえそうだ。さてこのところテープレコーダーのティアックがマニアの間でますます地盤を固めてきた結果プレイヤー、アンプなど商品の範囲を広げるのは当然である。プレイヤーはマグネフロートを吸収してティアック独特の精密仕上げにより性能を一新した傑作であり、また当初海外向けに出されたアンプはとかく、ユニークな設計と企画のインテグレイト・タイプAS200は、これまた高品位の再生に期待通りの真価を発揮する優秀製品である。JBLのアンプを思わせるAS200の出現は、引き続きティアックが本格的なスピーカー・システムにも力を入れてくることを予想させた。
 今回発表された新型システムLS360は、まぎれもなく「ティアック」ブランドにふさわしいスピーカー・システムということができる。
 30cmウーハーを使用した3ウェイという常識的な構成をうんぬんすることは、ここでは必要ないだろう。注目したいのは、単にハイ・ファイ・テープレコーダー・メーカーというせまい立場で、この音は企画され設計されたのではないといえる点だ。AS200の回路構成にみられるコンピュータ技術に立脚した回路、たとえば差動アンプ回路やその安定性、またこのハイ・レベルの音から知ることのできるハイ・ファイ的センス、これは単にテープレコーダーの高級品メカニズムだけを作っていた頃のティアックのものではない。
 ハイ・ファイ総合メーカーに大きく飛躍していこうという姿勢から生み出された音作りを新型スピーカーにも見出すことができるのである。
 きわめてクリアーな歪の少なさを感じさせる中音。かつてのシステムから一段とレベル・アップしたすぐれたバランスの上に成り立っている音は分解能力の点でもずばぬけ、手元にあったヴォルテックス・レーベルの前衛派の数枚は、定位よくマッシヴに再現され、ひときわ鮮烈さを増したことを伝えよう。中音域に起因すると思われるいま少しのブラスの輝きがほしいが、このスケールの大きな音がこの価格で得られるというのもティアックならではのことだ。

JBL Lancer 77

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岩崎千明


スイングジャーナル 5月号(1969年4月発行)

「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より


 アメリカ人は、JBLとかジムランといういい方をしない。ランシングと呼んでいる。James B Lansingの略だから当然で、このランシングスピーカーは米国の相当なマニアにとっても「高価な豪華品」を意味している。
 さてこのJ・B・ランシング社にランサーという名をつけたシステムが出たのは確か5年前である。
 ランサーという名からは、本来の語意の槍騎兵にふさわしいマスートなセンスをうかがわれるが、さらにこの名からシリーズに賭けた意欲をも知ることができよう。
 この時期を境にしてJBLはスピーカー・メーカーから規模も狙いもぐんと拡大した大型メーカーとして生れ変ったようだ。ランサーには、おなじみLE8Tを主体にし、パッシブ・ラジエター(ドローン・コーン)で低域を素直にのばした比較的普及価格のランサー44があるが、その一段とハイ・クォリティーの製品がランサー77である。
 さらにその上にパワー・アンプつきのランサー99や、このシリーズ最高級のランサー101がある。
 ARスピーカーの爆発的人気を意識して作られたこのランサーのシリーズの特長は「広い帯域特性と、素直な音色バランス」にある。ハイファイ技術のきわめて高度に達した今日では、広帯域特性はひとつの最低条件ともなっている。しかし、ランシング・スピーカーの最大の特長は、あくまでもその高能率と分解能のずばぬけた優秀性とにあり、これがいかなる楽器の音をも鮮やかに再現する基本的な底力としてこの社のスピーカーの他にない特長であり、ポイントでもあった。そして、この優秀性を基本的には損なうことなく、広いレンジを得たのが、ランサー・シリーズなのである。
 こういう点を考えると、ランサー・シリーズの中でも、もっともランサーらしい優秀性をそなえている製品はランサー77である。
 ランサー77は、JBLだけでなく米国製としても珍らしい10インチ25センチ・ウーファーが主力となっているが、この10インチ・ウーファーLE10Aはブックシェルフ型ランサー77のために設計されたのに相違ない。つまり本来のシステムとしての優秀性を確保すべく、広帯域ウーファーとして作られたものだ。当初はLE30Aという口径3インチのドーム・ラジエター・タイプのトゥイーターと組み合せて発表されたが、高域の鮮