2009年10月アーカイブ

ヤマハ A-1

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのプリメインアンプは、すでに定評が高いCA2000をトップモデルとして、充実したラインナップを持っている。
 今回発表されたプリメインアンプは、型番が従来モデルと区別されていることからもわかるように、やや現在では特殊なタイプとも考えられるディスク優先型のユニークな構想に基づく新製品である。
 ディスク優先の考え方は、デザインに強く表現され、フロントパネルにはボリュウムと使用時のみ照明される3個の角型のプッシュスイッチがあるのみだ。他のトーンコントロール、テープ関係のスイッチなどの機能は、ヒンジにより下方向に開くサブパネル内部に収納されている。プッシュスイッチは、左から電源、スピーカー、ディスクの順で、ディスクスイッチは、内部のセレクタースイッチがどの位置にあっても、フォノ優先の切替が可能である。この場合には、回路的にはトーンコントロールアンプぺはジャンプされ、イコライザーアンプは直接パワーアンプに接続される。
 構成は、ヤマハの超低雑音ICによるMCヘッドアンプ、初段に同様に自社製の超低雑音デュアルFETを使い終段がSEPPのイコライザー、利得が0dBのヤマハ独自のCR−NF型トーンコントロール、入力感度が200mVに設計され一般よりも約20dB高利得型のDCパワーアンプからなる。ディスクスイッチON時には、MM型カートリッジを使用するとすれば、信号系にはイコライザー出力部にフィルムコンデンサー1個のみということになる。
 機能は、バランス調整がないだけで他はトーンコントロールを含むベーシックな装備を備えるが、カートリッジ負荷抵抗切替は、リアパネルの専用ジャックに附属の47kΩ、68kΩの表示があるプラグを差込んでおこなう方式が採用され、プラグなしでは100kΩとなっている。
 A1は、他のヤマハのプリメインアンプとは異なるフレッシュで伸びやかな明るい音が印象的である。音のクォリティが高く、十分な表現力があり、セパレート型アンプの魅力をインテグレート化したといえるユニークな製品である。

トリオ KT-8000

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最高級機種KT9700の内容を中級機で実現した注目すべき新製品である。7連バリコン使用のフロントエンド、IF帯域の2段切替とダブルコンバージョン方式によるパルスカウント方式の超低歪FM検波回路の採用が最大のポイントである。MPX部は、クリーンサブキャリアー方式によるパイロットキャンセラー付。

デンオン TU-850

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 TU850は、デンオン独特の回転ドラム式ダイアル、2個のメーターをもつ個性的なデザインを踏襲した新製品である。
 中間増幅段の帯域切替、超高域FM検波器、NFBパイロットキャンセルのMPX、録音用発振器内蔵などが特長といえよう。

デンオン PMA-850

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのプリメインアンプは、良き時代の高級感級アンプの面影を感じさせるPMA700Zが、DCアンプ化されマークIIIとして登場したばかりである。
 今回は、これにつづいて、1001、1003といったセパレート型アンプでの成果をベースとし、最新の技術動向の最先端をゆく回路構成を備えたPMA850が、新しく装いを変えて登場することになった。
 基本的な開発のポリシーは、格段のユニットアンプの特性を極限値まで追求し、いわゆるプッシュプルタイプの平衡型コンプリメンタリー構成を全段増幅に採用している。これにより、裸特性の良さを活かし、ダイナミックな音楽信号の歪補正を従来回路の製品より完全にしている。また、ダイナミックレンジを拡大する目的で、とくにSN比が重点的に追求され、同社の従来製品よりも約10dB向上しているとのことだ。
 機能的には、30mVの許容入力をもつMCヘッドアンプ、イコライザーとパワーアンプを直結するダイレクトカップルスイッチなどを備える。従来どおりのクロストーク特性の重視に加えて、左右別巻線のトロイダルトランス仕様の強力な電源部、DC構成の全段直結平衡型DCパワーアンプなどは、今回はじめて採用された。
 このモデルは、各構成アンプの素直で優れた性能がナチュラルに音に反映したかのような、明るい、伸びやかな現代のデンオンの音といえるものだ。従来機との違いは、ちょうど、カートリッジでいえばDL103と最新製品DL103Dの差と似ており、音の性質でも同様なことがいえる。新世代のデンオンを感じさせる磨き込んだ立派な音である。

パイオニア F-007

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 F007は、基本性能をF26におき、シンセサイザー方式を導入したモデルだ。100kHzおきに受信局を選択するこのタイプのダイアル精度をゼロとする目的で、本機には、ダイアルスケールにコード版がセットされ、これを光で検出する方式が採用されているのが、ユニークで大変に素晴らしい。

パイオニア A-0012

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアの新シリーズのプリメインアンプは、4モデルあり、A0012は、トップ機種でその外形寸法が他のモデルより1サイズ大きい。フロントパネルは、主機能を上部に、他の副次的な機能は下側のスモークグラスのヒンジ付サブパネル内に配置した使いやすさを狙った構成が特長である。
 内容的には、パワーアンプ部に、セパレート型のM25でおこなった超高域でも十分パワーを獲得し、可聴周波数帯域内のクォリティを向上するマグニワイドパワーレンジの構想と、小音量時の音質を改善する目的で3W以下の出力では純Aクラス動作、それ以上は徐々に定格出力までBクラス動作に近づくABクラス動作が採用されている点があげられるが、これはシリーズ共通の特長である。また、MCヘッドアンプイコライザーのSN比は、カートリッジ実装時の値を重視して追求されている点も見逃せない。
 機能的には、1dBステップのパイオニア方式ツインコントロール、DC構成のイコライザー部とパワーアンプ部を直接結合して使うためのオーディオミューティングスイッチ、ファンクション表示インジケーターなどが目立った点である。
 このモデルは、豊かに響くやわらかいスケール感がある低域から中低域をベースとし、粒立ちが細かく滑らかに磨かれた中域から高域の音が印象的だ。トータルの雰囲気がかなり洗練され、安定した大人の魅力を十分に感じさせる。反応は適度といえる。

ラックス T-12

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 T12は、クォーツロックFM専用チューナーで、最適同調点でツマミは機械的にロックするユニークな機構を採用している。

ラックス C-12, M-12

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新世代のラックスを意味する技術志向が前面に出たラボラトリー・リファレンスシリーズのセパレートアンプをベースとして、より入手しやすいコストのモデルとして開発されたのが、この一連のセパレートアンプである。趣味としてのオーディオを熟知したラックスの製品であるだけに、最近の動向である薄型アンプの形態を採用し、キュートで、洗練されたデザインにまとめられている魅力は、むしろ兄貴分のラボラトリー・リファレンスシリーズに勝るとも劣らないものがある。
 C12は、単純機能のクォリティ優先型のモデルであるが、独得のリニアイコライザー、ツインT型サブソニックフィルターを備え、2系統のテープ入出力端子をもつ。回路は、すべてDC構成である。
 M12は、ブラックボックス風のユニークなデザインである。とくに、メッシュを通して、管球アンプ的な灯りが仄かに見えるのが楽しい。構成は、完全左右独立型のDCパワーアンプである。
 C12、M12の組合せは、クォリティの高い、外観とマッチしたキュートなスッキリとした音だ。リニアイコライザーで低域を補正するとスケール感が豊かな予想以上の余裕ある音を響かせる。
井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ダイヤトーンのセパレート型アンプには、DA−P100/A100をはじめ、コントロールアンプとパワーアンプを機械的に結合すれば、プリメイン型化が可能な大変ユニークなコンストラクションを採用したDA−P10/A15に代表される一連のシリーズがあるが、今回発表された製品は、コントロールアンプは完全な新モデルであり、パワーアンプは従来の機種に改良をくわえたモデルである。また、コントロールアンプが19型ラックマウントタイプとなったために、パワーアンプとのドッキングはできない。実用上では問題はないがやや、残念な感がないでもない。
 DA−P15は、DA−P7/P10の上位に位置づけされるコントロールアンプである。
 フロントパネルは、スッキリとしてシンプルな19型ラックマウントタイプであり、最近の動向を反映したものだ。外観からは一般的なコンストラクションと受け取れるが、内部は、前シリーズで採用した2台のモーラルアンプを機械的に結合した、2モノーラル構造を踏襲している。
 機能的には、コントロールアンプらしくMCヘッドアンプ内蔵、テープデュプリケート、ターンオーバー可変型の左右独立したトーンコントロール、スピーカー切替など、現在の標準装備といってよい。
 DA−A15DCは、基本的には従来のDA−A15をDCアンプ化し、高域特性を改善したモデルである。ダイヤトーンのパワーアンプは、DA−A100以来、機能を象徴したユニークなデザインを採用している点に大きな特長があり、フロントパネルを持たないために、本来のセパレート型アンプの楽しみである任意のコントロールアンプとの組合せが、デザイン的な制約なしに可能なメリットがある。コンストラクションは、左右独立した2モノーラル構成であり、スピーカー切替はリレーを使い、コントロールアンプ側でリモートコントロールする方法を採用している。なお、シリーズ製品としてDA−A10DCとチューナーのDA−F15がある。
 この組合せは、コントロールアンプの性能が従来のDA−P7より一段と向上しているために、スッキリとした聴感上のf特が広く、歪感が少ない粒立ちの細やかな現代的なサウンドで、パワーアンプの150W+150Wのゆとりが、より十分に感じられ、スケール感も大きい。
井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 アキュフェーズのコントロールアンプC200とパワーアンプP300は、同社の第1弾製品として、すでに4年間にわたりセパレート型アンプのトップランクの製品として定評を得ている。今回の新製品は、これをベースとして現時点での最高水準の性能を実現するために改良、変更が加えられたものであり、それぞれ型番末尾にSをつけた新モデルに発展している。なお、同社では従来モデルを愛用しているファンのために、Sタイプ仕様の改造を引き受けており、これにより、主にフロントパネル関係を除いてSタイプと同等の性能にグレイドアップすることができる。最近では、とかく新製品発表が多くなっているが、高級アンプほど新製品に買換えることは至難であり、メーカーへの信頼感が薄らぐことが多いが、今回のSタイプの発表に際して採用された従来品を改造するプランは高級ファンをつかんでいるアキュフェーズらしい細やかな配慮である。
 C200Sは、各ユニットアンプのICL化、ミューティングスイッチ、プリアンプ出力ON−OFFスイッチ、ヘッドフォン利得の向上、フィルター関係の整理などをはじめ、パネルの色調が一段と濃くなった点が主な変更点である。
 P300Sは、DCアンプ化された他に、1dBステップの入力調整、高域フィルターの除去、メーター目盛にW表示の追加、オーバーロードにも強い保護回路、M60などと共通化された増幅度、出力端子の変更などがある。
 Sタイプとなって、この両機種の組合せの音は、今までの力強く緻密な音を保ちながら、性能の向上により、その物理的特性に裏付けられたような、一段とクリアでスッキリと抜けた、リファインされたものとなり、現代高級アンプらしさを身につけている。

ヤマハ B-3

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのセパレート型パワーアンプは、全段V−FET構成のBIが最初の製品として、バイポーラトランジスターとV−FETの長所を活かして開発されたB2は第2弾の製品としてすでに発売されている。今回発表されたB3は、形態的にもパワーアンプ本来の機能をシンボライズするような個性的なデザインとパワー段に静電誘導トランジスター(SIT)を純コンプリメンタリー方式に使ったDCパワーアンプである。
 デザイン的には、左右側面の長手方向に放熱版を配し、電源関係を含む入出力端子は残った2面の1面に集中しているが、入力レベル調整ボリュウムの軸は本体を貫通して対向面に伸長され、この面にもツマミがついているために、どちらが前面ともいえないユニークな設計である。この構造をもつため実用上での場所の制約は少なく、場合によれば立てても使用可能である。機能的にはパワーアンプだけにシンプルなタイプだが、スイッチによりBTL接続して140Wのモノーラルパワーアンプとして使用でき、今後とも増加すると思われるマルチアンプ化にもふさわしい製品である。
 すでに定評を得ているコントロールアンプC2は、発表時期からすれば、B2がペアになるが、細部の仕上げの異なった面を考えれば、むしろこのB3が本来のペアとなるパワーアンプのように思われる。この点は、組み合わせたときの音にも現われているようで、同じヤマハのサウンドではあるが、フレッシュで伸びやかであり、Cの2の魅力がより効果的に音に活きてくるように思われる。

ソニー TA-F6B

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 TA−F6Bは、プリメインアンプの電源に最初にパルスロック電源を採用した注目の製品である。MCヘッドアンプ、DC帰還付イコライザー、新開発のドライバー用IC採用のDCパワーアンプなどに特長があり、対数圧縮型の大型パワーメーターを装備している。

ソニー TA-N88, TA-E88

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 一般にオーディオ用パワーアンプには、Aクラス動作、Bクラス動作といったアナログ増幅法が採用され、電力増幅素子の出力側がスピーカーと電源の間に置かれ、素子の内部抵抗を変化させて負荷であるスピーカーに流れる電力をコントロールしている。この場合、電源からの電力はスピーカーのなかだけではなく、増幅素子によっても消費され電力の損失になるが、PWMアンプのようなデジタル増幅器では、扱う信号はパルスであるため、増幅素子は単純にオンかオフの動作しかない。つまり、デジタル増幅器では、増幅素子はスイッチの役目を果たすことになり、オンのときには抵抗値がゼロ、オフのときには無限大であれば、すべての電力が負荷であるスピーカーに供給されることになる。したがって、アンプの効率は100%になるはずだが、実際にはオンのときに抵抗値がゼロにならないため、効率は80〜90%になる。
 オーディオ信号をデジタル変換するためには、500kHzの搬送波をオーディオ信号で変調し、PWM波としておこない、これをデジタルアンプで電力増幅をし、フィルターで搬送波を除去し、もとのオーディオ信号を取出している。このタイプを採用した製品としては、米インフィニティのしプがある以外はなく、国内では、数年前からソニーで研究され、試作品として発表されたことがある。
 TA−N88は、これをベースとして製品化された国内最初の製品であり、電源にも高能率のパルスロック方式のスイッチングレギュレーターを採用しているため、画期的な超小型で160W+160Wのパワーを得ている。
 TA−E88は、PWNステレオパワーアンプ、TA−N88と組み合わせるプリアンプとして開発された製品である。本機のコンストラクションは、完全に2台のモノアンプを前後に並べ、入力端子から出力端子までの信号経路は最短距離を一直線にとおるように配置されている。機能は単純型でクォリティ重視の設計であり、各ユニットアンプは入力コンデンサーのないダイレクトカップリングのDCアンプ構成で、低雑音LECトランジスター採用のMC用ヘッドアンプを内蔵している。各使用部品は物理的にも聴感上でも厳選されている。
 この組合せの音は、従来のソニーのアンプとは一線を画した、滑らかで、明るく、伸び伸びとしたものであり、デジタルアンプ然とした冷たさがないのが好ましい。適度の暖かさがあるのは特筆すべき点である。

ビクター EQ-7070, M-7070

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターの7070シリーズは、単なるセパレートアンプの分野にとどまらず、周辺機器までを含めたシステムプランにより開発されたユニークな製品である。すでに、このシリーズではグラフィックイコライザーSEA7070、エレクトロニッククロスオーバーCF7070が発売されているが、今回、イコライザーアンプEQ7070、モノ構成パワーアンプM7070、FMシンセサイザーチューナーT7070、プラズマインジケーターDS7070がシリーズに加わり、充実した製品のラインナップとなった。
 EQ7070は、フォノイコライザーの名称をもつようにディスク優先型のプリアンプで、必要最少限度の機能のみを残した単純機能のプリアンプであり、トーンコントロールはシリーズ製品のSEAを併用することになる。機能は、2系統はMM/MC切替可能となっている3系統のフォノ入力、AUX、チューナーの入力切替、2系統のテープモニタ、CとRのカートリッジ負荷切替などを備える。
 MCヘッドアンプは、エキストラ・ローノイズFET採用のICL−DC構成で高SN比をもち、イコライザーアンプは、初段FET同相帰還ダブル差動定電流負荷のICL−DC構成、フラットアンプは初段FETシンメトリー・プッシュプル・ドライブ型ICL−DC構成である。
 M7070は、モノ構成の完全なDCアンプである。電源関係を重視した設計であるために、A−B独立電源のBクラス動作をするパワー段には、一般の商用電源を一度DCに整流した後に数10kHzのパルスに変換し、高周波用トランスで変換してから再び整流してDC電源を得るDクラス電源に、制御系にPWM方式を用い応答速度を高めた定電圧電源が使用されている。これにより、電源の内部インピーダンスを高域まで非常に低くすることが可能となり、電源のレギュレーションは、理想の電源と言われた蓄電池をしのぐものとしている。
 この強力な電源をベースとして、パワー段には高域特性が優れた素子として注目されているパワーMOS FETを採用し、100kHzにおいても120Wの実効出力を、0・02%の高調波歪率で得ることに成功している。
 フロントパネルには、12ポイントのLEDピークパワーインジケーターを備え、0・3Wから200Wまで表示可能であり、入力調整、ヘッドフォン端子、スピーカー切替を備える他にプロ用機器としても使用するために、キャノンコネクターをもつ。
 EQ7070とM7070の組合せは、現代アンプらしい伸びきったfレンジと粒子が細やかで透明感のある音をベースとし、反応が速く十分にエネルギー感がある充実したサウンドで、ソフトドーム系や、古いタイプのスピーカーに積極的に働き、活気ある音として聴かせる。

ラックス L-10

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新セパレート型アンプC12、M12と共通の外形寸法とデザインをもつ新プリメインアンプで、ラボラトリー・リファレンス・シリーズの5L15と共通のDC構成イコライザーとハイゲインDCパワーアンプのみの単純構成が特長である。パワーアンプは、高周波特性が優れた小型パワートランジスターの並列使用で、動作はABクラスだ。機能はシンプルだが、湾曲点3段切替の高音、低音コンペンセーターがあり、変化範囲は狭いが実用上では本機自体が歪感が皆無といってもよいナチュラルな音をもつため、僅かのバランスの変化が敏感に聴きとれ、一般のトーンコントロールと同様に効果的に使える。

マランツ Model 1180

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 モデル1180は、基本的にはモデル3250とモデル170DCをインテグレートアンプ化したと考えてよい製品である。機能的には、モデル3250にピークインジケーターが加わった点だけが異なる。セパレート型の組合せの音に比較すると、ややローエンドとハイエンドを抑えたプリメイン型らしいバランスであり、これは聴感上でのパワー感となって反映されている。同じ定格出力だが、本機のほうがスピーカーを駆動するエネルギーは強く、4343を十分に駆動した。
井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 管球アンプ時代からの伝統を誇るマランツのセパレート型アンプは、ソリッドステート化されてからも、シンプルで機能美の典型ともいえるフラットなフロントパネルをもつデザインを踏襲してきたが、コントロールアンプ・モデル3600の発表を機会として、ブラック仕上げのサブパネルを配した立体的なフロントパネルに変更され、新しいマランツの顔として定着している。
 今回発表された一連の新シリーズ製品は、それに対してサブパネルをフロントパネルに重ねた二段構成のタイプとなり、色調も薄いゴールド一色に統一されている。
 モデル3250は、マランツのコントロールアンプとしては、位置づけとしてモデル3200の後継機種として開発された製品である。モデル3200に比較して外形寸法は、標準のいわゆるマランツサイズに統一され大型化されたため、外観から受ける印象は本格的なコントロールアンプらしくなっている。
 機能的には、現在のアンプとしては例外的ともいえるフロントパネルに左右独立したマイクジャックを備える他に、高音と低音のみがターンオーバー可変型で、かつ中音を含めたトライコントロールをもち、加えてMCヘッドアンプと連続可変型のラウドネスコントロールがある。
 モデル170DCは、コントロールアンプ・モデル3250と組み合わせるパワーアンプで、型番末尾にDCが付いているように、マランツ最初のDC構成のアンプである。パワーは90W+90Wで、フロントパネルにはブルーに照明される2個の大型のパワーメーターがあり、対数圧縮されたメータースケールにより8Ω負荷時のピークパワーを直読できるうえに、左右独立したLED使用のピークインジケーターを備えている。
 モデル3250とモデル170DCの組合せの音は、最新製品にふさわしく従来のマランツのアンプよりもかなり粒子が細かく、広いfレンジを感じさせる現代的なものだ。強力な電源回路をベースとする伝統的な、力強く芯がしっかりした低音の上に、米国系のアンプらしい中域の充実感があるのは血統の異なるところであろう。モデル3250は、単体で使用してもナチュラルな音場空間の拡がりと定位感のよさは、モデル3600を明らかに抜いたものだ。

ビクター JA-S77

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 セパレート型アンプの2020シリーズを基盤として開発されたプリメインアンプで、ビクターの中心機種の位置にある。構成は、イコライザー、トーンアンプがA級動作のDC構成、パワーアンプがDCアンプのトライDC構成で、電源は、A−B独立型、対数圧縮型パワーメーター、フロントパネルのテープ入出力端子が目立つ。
 このモデルは、最新アンプ共通の歪感がなくfレンジが広い、滑らかな粒子の細やかな音をもつ。ビクター製品らしく、音色が明るく、中域に十分な厚みが感じられるのが魅力のポイントである。

オーレックス SB-730

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 各ユニットアンプをはじめ、電源部、各種の構成部品を徹底的に低歪化してつくられたオーレックスの新プリメインアンプである。
 このモデルは、音色が軽く明るいタイプで、粒立ちが細かい音をもつが、中高域に適度の輝きがあり効果的にシャープさを感じさせる魅力となっている。低域の反応はおだやかで中高域は早いタイプといえるだろ。
井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 すでにオーディオアンプのジャンルでは、量的に世界最大の生産量を誇るにいたっているわが国において、超高級機を象徴するセパレートアンプの分野では、いまだに海外製品、ことに米国の製品には一歩を譲る感が深いのが現状である。
 テクニクスでは、数年前にパワーアンプの出力段をも含めた完全定電圧化電源を採用したSE10000パワーアンプと、これとペアになるSU10000コントロールアンプを発表し、質的には世界のトップランクの製品として認められ、その高価格な面をも含めて脚光を浴びたが、今回久し振りに沈黙を破ったかのように、、まさにスーパーアンプの名称に応わしいような、質的にも量的にも、名実ともに現時点での究極のセパレートアンプともいえる超弩級製品が発売されることになった。
 パワーアンプのテクニクスA1は、小出力のAクラスアンプの電源の中央をフローティングし、別個の電源アンプで出力振幅にフォローするようにAクラスアンプの電源中点を駆動するというユニークな発想を実用化したA+クラス動作による、350W+350Wのパワーを誇る製品である。
 この方式の採用により、質的には優れるも、量的にはハイパワー化が至難であったAクラスアンプの問題点を一挙に解決し、従来の100W足す100W級のAクラスアンプの外形寸法のなかで、空冷用のファンを使用せずに高出力化に成功している点は特筆すべきものがある。
 構成は、2モノーラル型で1チャンネル当り4電源、系8電源をもった完全なDCアンプであり、アクティブ・サーマル・サーボ方式によりDCドリフト対策は万全である。機能面は、高分解能ピークメーター、ベル可変の4系統スピーカー端子、フェードイン・アウト回路を持つクリックのないファンクションスイッチなどを備える。また、高出力アンプとしては例外的に高域のレスポンスが伸び、歪率が低く抑えられている点が見逃せない。
 コントロールアンプのテクニクスA2は、驚くべき多機能を装備した超大型コントロールアンプである。イコライザーを含み完全なDCアンプ構成をとり、段間のコンデンサーは皆無であり、動作は全段Aクラスである。この完全DCアンプ化は、世界最初のものであり、パワーアンプにも採用されたアクティブ・サーマル・サーボ方式により実現されたものだ。機能面では、リレー制御のフェード回路付タッチスイッチによるファンクション切替、4バンドの周波数、Q可変イコライザー兼一般型の高音、低音調整、可変型ラウドネス調整、多用途切替型高分解能メーター、4種の波形が選択可能な発振器内蔵、ミキシング可能なマイク入力など現時点で考えられる限りの機能はほぼ完全に装備している。発表された規格は測定器の限界に迫る驚異的な値である。

トリオ L-05M

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 前回発表されたパワーアンプL07Mは、スピーカーとパワーアンプ間のコードを短縮し、業務用に見られるスピーカーとパワーアンプの一体化がテーマであったが、今回のL05Mでは、過渡応答の徹底的改善をテーマとし、いわゆるハイスピード化を狙った製品である。出力段に高域特性が優れたEBTを採用し、モノ構成のDCアンプとしているため、DC領域までの動特性を含めた低域特性に見合う高域特性を得ている。単なる広帯域化でなくアンプの音質改善を主眼としたトランジェント特性を重視した結果とのことだ。

オーレックス SY-88

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井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 SY77につづく、オーレックス第2弾のステレオプリアンプである。
 機能面は、単純でクォリティ優先型のプリアンプで、MCヘッドアンプを内蔵している。構成部品は、最近の製品では徹底して性能面、音質面から追求される重要なポイントであるが、ここではV型無誘導メタライズド・ポリエステルフィルムコンデンサー、高音質電源用電界コンデンサー、対数パターンPBボリュウムの採用など十分に検討されている。コンストラクションは、電源トランスからアンプ系を前後に分離独立したタイプである。
黒田恭一

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「マイ・ハンディクラフト リアルサウンド・パワーアンプをつくる」より

 力士は、足がみじかい方がいい。足が長いと、腰が高くなって、安定をかくからだ。そんなはなしを、かつて、きいたことがある。本当かどうかは知らぬが、さもありなんと思える。上杉さんのつくったパワーアンプの音をきかせてもらって、そのはなしを思いだした。なにもそれは、上杉さんがおすもうさん顔まけの立派な体躯の持主だからではない。そのアンプのきかせてくれた音が、腰の低い、あぶなげのなさを特徴としていたからである。
 それはあきらかに、触覚をひくひくさせたよう音ではなかった。しかしだからといって、鈍感な音だったわけではない。それは充分に敏感だった。ただ、そこに多分、上杉佳郎という音に対して真摯な姿勢をたもちつづける男のおくゆかしさが示されていたというべきだろう。
 高い方の音は、むしろあたたかさを特徴としながら、それでいて妙なねばりをそぎおとしていた。むしろそれは、肉づきのいい音だったというべきだろうが、それをききてに意識させなかったところによさがあった。上の方ののびは、かならずしも極端にのびているとはいいがたかったが、下の方のおさえがしっかりしているために、いとも自然に感じられた。そこに神経質さは、微塵も感じられなかった。
 座る人間に対しての優しいおもいやりによってつくられたにちがいない、すこぶる座り心地のいい大きな椅子に腰かけた時の、あのよろこびが、そこにはあった。ききてをして、そこにいつまでも座っていたいと思わせるような音だった。
黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「マイ・ハンディクラフト 最新テクノロジーによる真空管式ディスク中心型プリアンプをつくる」より

 幾分ひかえめなところがあるとしても、いうべきことを正確に、しかもいささかもいいよどむことなくいう人をまのあたりにするというのは、きわめて心地よいことだ。このプリアンプをきいての印象を、もし言葉にするとすれば、そういう人に会った時の感じとでもいうべきかもしれない。
 決してでしゃばらない。決してあざとくおのれの存在を主張しない。どうです、このヴァイオリンの音、きれいでしょう(試聴したレコードのひとつに、ジュリーニがシカゴ交響楽団を指揮してのマーラーの第九交響曲の終楽章があったのだが)、きいてごらんなさいよ、こんなにつややかで──などと、おしつけがましくなったりしない。
 しかし、ここからが肝腎なところだが、このプリアンプの音は、決して消極的ではない。すべての音は、ついにねころんだり、すわりこんだりすることなく、すっきりと立って、ききての方向に、確実な歩みで、近づいてくる。そういう折目正しさは、このプリアンプの魅力といえよう。
 ただ、このプリアンプの、そういうこのましさを十全にいかそうとしたら、積極性を身上とする、つまり音のくまどりを充分につけてくれるパワーアンプを、相手にえらんだ方がいいということは、いえるにちがいない。しかし、この場合にも、スギタルハオヨバザルガゴトシという、正論があてはまる。
 さまざまなひびきに、実に素直に、無理をせず、しなやかに、対応する。それはもちろん、大変な魅力だ。無駄口をたたく軽薄さからは、遠くへだたったところにある。ただ、相手の選択をひとつまちがうと、そういう魅力は、優柔不断という欠点になってしまう危険もなくはない。すっきりと立ちあがった音を、手前に歩かせるのは、むしろ、パワーアンプの役割というべきだろう。だとすれば、音をすっきりと立ちあがらせるこのプリアンの特徴は、そのままにこのプリアンプの美点となる。
瀬川冬樹

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」より

 アンプとスピーカーに関するかぎり、ここ二年ほどのあいだに、内外の大半の製品をテストする機会が与えられていたから、プリメインとセパレート、ブックシェルフとフロアータイプ、そしてプロ用のモニタースピーカー、と、それぞれの製品の分野での大まかな水準を掴めていたつもりだった。そして、アンプ及びスピーカーに限っていえば、ここ数年間での全体的な性能の向上は、まったく目を見張る思いだった。こうした体験を通じていえることは、少数の例外的存在を除いて、アンプもスピーカーも、大すじには価格と性能がほぼ比例していて、たとえば5万円のスヒーカーが20万円のスピーカーよりも音が良いなどということは、まあありえないと断言してもいいと思う。事実、そんなことがあれば、何かが間違っている。
          *
 プレーヤーのブラインドテストというのをさせられて、終ってから製品名と価格を種明かしされたいま、とても複雑な気持に襲われている。それは、いま書いたばかりの「何かが間違っている」状態が、プレーヤーに関してはいまところまかり通っているのではないだろう、という気持からだ。
 そのことは別項の速記録をお読み頂くことで明らかになる筈だが、少なくとも私自身に限って言っても、相当に高価なプレーヤーもそれと知らずに聴くかぎり、ローコストのプレーヤーにくらべて音質の上での明確な差を、聴き分けることができなかった。もう少し正確な言い方を心がけるなら、聴感上での音質の良し悪しと価格の高低とのあいだに、アンプやスピーカーほどの相関関係を見出すことが困難だった。たしかに音質は一台一台みな違った。だが、この音はどうも頂けない、とメモしたプレーヤーが、意外に高価であったり、一応聴くに耐える音のした製品がそんなに高価でなかったりしたのを、あとになって知ってみると、どうも複雑な気分にならざるを得ない。いったい、プレーヤーの価格の根拠はどこにあるのだろうか......と。
 こんなことを書けば、次のような反論が出るにちがいない。アンプやスピーカーをブラインドテストすれば、やっぱり同じことを言うのじゃないか、ローコストでも、高価な製品より音の良いのがあるじゃないか──。例外的にはそういう製品がないとは断言できない。けれど、アンプとスピーカーに関するかぎり、そういう作り方がいまや成り立ちにくくなっている。粗理由をくわしく書くのはこのスペースでは無理だが、スピーカーでたとえれば、借りに耐入力を犠牲にすれば、音域の広さや音色の美しさやバランスの良さを鳴らすことはできるだろう。だがいくらブラインドテストでも、パワーを入れればたちどころに馬脚をあらわす。
 アンプの場合には、パワーという要因だけでは説明しきれない。パワーを抑えればコストダウンできるが、しかし限度はある。となると、ファンクションを簡略化するとか、セパレートをやめてインテグレイテッド(いわゆるプリメイン)化するなどの手段をとる。こういう見た目の形態は、ブラインドテストではわからない。だがそうであるにしても、音の良いアンプは結局高価だ。
 正直に白状すれば、いくらブラインドテストでも、こんにち、本誌が我々をモルモットに起用する以上、この製品はたぶん入っているだろう、というような推理ぐらい働かせて試験に臨む。そして、いま鳴っているこの音は、これは各コンポーネントが相当にしっかりしていなくては鳴らないだろう音だから、もしかしたらこれがあの製品じゃないだろうか──といった推測もしている。しかし恥ずかしながら、少数の例外を除いてすいそうは見事に外れた。テープを前に憶面もなくしゃべり終えた(メーカー名や製品名を知らされないおかげで、何の気兼ねなしに悪口を言えたが)あとで、ひとつひとつの製品名を知らされて、なるほどと納得したりえ! あの音がこの製品? と青くなったりした。これがブラインドテストのおもしろいところだろう。もっとも、本当の意味でおもしろがっていたは、モルモットにされた我々よりも、それを操る編集部の諸君であったにちがいないが。
          *
 そんな状態で、プレーヤーというパーツは、アンプやスピーカーの最近の性能向上に比較すると、まだまだ見落しの多い部分であることを感じた。言うまでもなく、ターンテーブルやアームやカートリッジ、といった単体のコンポーネントパーツについては、それぞれに研究・開発の成果が実っていなくはないが、それを総合してまとめる際に、スピーカーやアンプと比較すると、まとめかたの勘どころあるいは決め手が、まだ見つかっていない、というのが本当のところなのではないかと思う。
 テストの進めかたについては別項にくわしい解説があると思うが、私自身は、とくにカートリッジのちがいによるプレーヤーの音色の変化に興味を持って臨んだ。ことに、オルトフォンMC20は、インピーダンスが2Ω近辺ときわめて低い。一方、現存するフレーやーの大半、アームの先端からアンプに接続するピンコードの直流抵抗分が大きく、大多数が、往復で2Ω或いはそれ以上の直流抵抗を持っている。これでは、理屈だけ考えてみてもMC20のようなローインピーダンスのカートリッジに対して、よい結果の得られる筈がない。
 現実に私の心配は当った。スタントン881Sでは一応の結果が得られても、MC20の場合となると、打って変って精彩のない、反応の鈍い、あるいは大切な音の一部をどこかに忘れたか落したかしてしまったかのような、おもしろみに欠けた音になってしまうものが少ないとはいえない。すでにカートリッジやアンプの受け口の部分では、MCカートリッジのブームが到来していながら、プレーヤーの専門メーカーが、意外なほどMCカートリッジのため設計を怠っている。MCカートリッジが、その本来の特性の良さでレコードに刻まれた溝の隅々から微細な音を拾ってきても、それをアンプの入口に運んでくる以前に、どこかにとり落して、魅力のひとかけらもない、つまらない音にしか聴かせない。
 あらかじめ覚悟していたものの、そういうプレーヤーが現実にとても多いことに、改めてびっくりさせられた。
 今回のブラインドテストには、リファレンスとしてEMTのプレーヤーが使われた。もともとMC20や881Sを組み合わせるための製品ではないのだから、それらが最良の結果で鳴ったとはいえない。ただ私自身は、自分の聴き馴れたプレーヤーとして、これを最良の基準としたのではなく単に、自分の耳の尺度を整える意味で、参考として頭に置いたにすぎない。
 残念なことに、今回たまたまブラインドテストの対象に選ばれたプレーヤーの中には、アンプやスピーカーの時とは異なって、一台ぜひ(例えばサブ機としてでも)欲しいと思わせるほどの音を探し出すことができなかった。いずれの製品も、部分に的には良い音を聴かせながら、同じ一枚のレコードの音を、どこかで欠落させているといった印象を拭い去ることができなかった。
 こんにち、DDモーターの再検討が論じられゴムシートや、引出コードや、ヘッドシェルや、その他部分的には細かな問題点が個別に指摘されている。そうした反面で、プレーヤーシステムとしての総合的なまとめの方法論に、もうひとつトータルな、俯瞰的な視野の広さが求められるのではないだろうか。いや、そんな小難しいことをくだくだしく言わずとも、ともかく、ヴィヴィッドでたっぷりと豊かな音を一枚のレコードから抽き出して、聴き手を心から満足させてくれるプレーヤーシステムの出現を、いまこそ強く望みたいと思った。
瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 本誌第59号ベストバイ・コンポーネント選定投票は、本誌のレギュラー執筆者八名によっておこなわれた。その結果や詳細についてはそれぞれのページをご参照頂くことにして、各項目中、①オープンリール型テープデッキ ②MC型カートリッジ用ヘッドアンプおよびトランス ③レシーバーおよびカセット・レシーバー(カシーバー)の三項については、あらかじめ規定された当籤必要票数を満たす製品が少なかったため今回は単に集計一覧表を公表するにとどめ、あえてベストバイ・コンポーネントとしての選定をしなかった。その理由について解説せよというのが、私に与えられた課題である。なお、以下に書く内容は、他の七名の選定委員の総意ではなく瀬川個人の意見であり、文責はすべて私ひとりにあることを明記しておく。

オープンリール・テープデッキ
 もう言うまでもなく、こんにち、カセットデッキおよびテープの性能が、実用的にみても相当に満足のゆく水準まで高められてきている。数年前によく行われた「オープンかカセットか」の類の比較論は、カセットという方式の枠の中で、カセットをかばった上での論議であったことが多く、私自身は、カセットの音質が真の意味でオープンの高級機と比較できるようになったのは、ほんのここ一〜二年来のことだと考えている。それにしても、事実、カセットの質がここまで向上してきた現在、そのカセットの性能向上にくらべて、いわば数年前性能でそのまま取り残されているかにみえる大半のオープンリール機については、こんにち、改めてその存在意義が大きく問われなくてはならないと思う。
 オープンリール機の生き残る道は二つあると私は思う。その一つは、高密度録音テープの開発とそれにともなうデッキの性能のこんにち的かつ徹底的な洗い直しによって、カセットをはるかに引き離したオープンリールシステムを完成させること。これについては、本年5月下旬に、赤井、日立マクセル、TDK,およびティアックの四社が連名で、この方向の開発に着手した旨の発表があった。たいへん喜ばしい方向である。オープンの存在意義のその二は、大型リール、4トラック、安定な低速度の往復録再メカの開発による超長時間演奏システムを本機で開発すること。この面での音質はカセットと同等もしくはカセットの中級機程度にとどまるかもしれないにしても、往復で9時間、12時間あるいはそれ以上の超ロングプレイという方向には、オープンならではの意義が十二分にある。

MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ
 5万円を割るローコスト・プリメインアンプにさえ、MC用ハイゲイン・イコライザーが組込まれている現在、あえて数万円ないし十数万円、ときにそれ以上を、トランスまたはヘッドアンプに支払うというからには、それなりの十分の音質の向上が保証されなくてはならない。ところがこの分野はまだ、根本のところまで解明されているとは思えなくて、現実には、どこのメーカーのどのMCカートリッジを使ったかによって、また、その結果それをどういう音で鳴らしたいか、によって、トランスまたはヘッドアンプの選び方が正反対といえるほどに分れる。別の言い方をすれば、一個で万能の製品を選ぶことが非常に難しい。そして、概して出費の大きな割合には得られる成果が低い。おそらくそうした現実が投票にも反映して、誰の目にも客観的にベストバイ、という製品が選ばれなかったのだろうと思う。トランス、ヘッドアンプについては、こんにちの最新の技術をもって、一層の解析と改善をメーカーに望みたい。

レシーバーとカシーバー
 棄権票が最も多かったということは、本誌のレギュラー筆者にとって魅力のある製品が極めて少なかったからであろうと思われる。いつ頃からか、チューナーとプリメインアンプを一体に組込んだレシーバーという形は、アンプとしては一段低い性能、という考え方が支配的になり、その反映として、作る側も、レシーバーをオーディオの真の愛好家むけに本機で作ろうとする姿勢を全く見せてくれていない。けれど、こんにちの進んだ電子部品と技術をもってすれば、レシーバーという形をとったとしても、性能の上では単体のチューナー+プリメインアンプという形にくらべて全くひけをとらないほどの製品に仕上げることは十分に可能なはずである。
 またレシーバーという形は、その使われ方を考えれば、本来、メインの再生装置が一式揃えてあることを前提に、大家族の個室、寝室、書斎、食堂その他に、さりげなくセットしてごく気軽に日常の音楽を楽しむという目的が多い。とすれば、なにもプリメイン単体と同格の性能を競うのでなく、むしろ電気特性はほどほどに抑えて、聴いて楽しく美しい音を出してくれるよう、そして扱いやすく、無駄な機能がなく、しかし決してチャチでない、そんな形を目指した製品が、せめて四つや五つはあっていいのではないだろうか。レシーバーといえば、入門者向き、ヤング向き、ご家庭向き、音質をうるさく言わない人向き......と、安っぽくばかり考えるという風潮は、せめて少しぐらい改めてもいいのではないだろう。少なくとも私自身は、日常、レシーバーをかなり愛用しているし、しかしそうして市販品をいろいろテストしてみると、オーディオの好きな人、あるいはオーディオマニアでなくとも音楽を聴くことに真の楽しみを見出す人、たちの求めているものを、本気で汲みとった製品が、いまのところ皆無といいたいほどであることに気づかされる。レシーバーなんて、作ったってそんなに売れない。メーカーはそう言う。それなら、私たちオーディオ愛好家が、ちょっと買ってみたくなるような魅力的なレシーバーを、どうすれば作れるか、と、本気で考えたっていいはずだ。
 ところで昨年あたりから、このレシーバーにさらにカセットを組込んだカセット・レシーバー、いわゆるカシーバーという新顔が出現しはじめた。これもまた、いや、もしかするとこっちのほうがいっそう、レシーバーよりも安っぽい目でみられているように、私には思えてならないが、レシーバーに馴れた感覚でカシーバーを使ってみれば、この形こそ、セカンドシステム、サブシステムとしての合理的な姿だと、私は確信をもって言える。だが、現実はまだそういうことを論じるにははるかに遠い。たとえば、①プリセットメモリーチューニング ②テープ自動セレクターつき ③録音レベルの自動セット──この三つはカシーバーを扱いやすくするための最低条件だし、しかもその機能が、安っぽく収まっているのでなく、音楽を楽しむのに十分の性能を維持していてくれなくては困る。どうせ小型スピーカーと組合わせるのだから、ワイドレンジ/ローディストーションであるよりは、必要にして十分な小さめの出力。ほどよく計算された聴き心持のよい音質。加えて扱いやすく、ジャリっぽくないデザインと操作のフィーリング。そんなカシーバーを、どこのメーカーが一番先に完成させてくれるか、楽しみにしている。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 30万円以上の価格帯は、100万円以上のセパレートアンプや、同様な価格のプレーヤーシステム以上に、まったくのスペシャリティ的な製品が存在するところで、特別にカセットデッキに興味がないかぎり、実質的に持つことの喜び以外には、ディスクファンには関係のないプライスゾーンである。しかし、このクラスの超高級国内製品ともなると、各種テープに対するチューニングは全てデッキ側で自動的に調整され、テープ間のf特的な特長はなくなり、本来のキャラクターが引出せるほか、走行系、アンプ系ともに非常に高度なものを備えるため、これがあのカセットテープの音かと驚嘆するような見事なサウンドが得られる。ノーマルテープでさえ、中級機程度のメタルテープの音とは比較できない優れた音質を聴かせる。
 海外製品は、これに比較してカセットの範囲内での個性的なサウンドとユニークな機能が特長で、ひと味ちがった楽しさがある。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 40万円以上のプレーヤーシステムは、まったくのスペシャリティ製品の存在する価格帯で、その上限も350万円を超すとなると、「ベストバイ」としての選出自体が、いささか問題となるのではないだろうか。
 このランクの製品は、基本的に、コンシュマー用の超高級モデルと、本来はスタジオや放送用の業務用モデルの2種類がある。さらに、20〜40万円の価格帯でも述べたように、アームレスシステム、それも超重量級のターンテーブルを糸またはベルト駆動するシステムに、ユニバーサル型や専用アームを取付けて組合わせるタイプも、この価格帯では考慮する必要がある。業務用は完全にフル装備で、イコライザーアンプも備え、基本的に変更はできないのに対して、コンシュマー用はかなりフレキシブルであり、アームレス型なら複数個のトーンアームの使用、ターンテーブルを追加しての二重駆動など発展の可能性は大きい。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 全面的に海外製品の占める分野である。このクラスも、コントロールアンプのスーパーマニア製品の項で述べたことが共通していえる。パワーアンプの場合には、パワーで差が出るというのがコントロールアンプより誰にでも理解のいくところだが、かといって、実際にすべての100万円以上のアンプが超出力であるとは限らない。マーク・レビンソンのML2Lのように、モノーラルで25Wというものもある。これを2台そろえれば、198万円だ。ステイシス1は200懦夫るあるが358万円にもなる。同じパワーでステイシス2は半値以下の113万円である。マッキントッシュのMC2500は500Wのパワーで118万円。このように、パワーと価格も全く無関係というのが現実である。メーカーの実情と力などによっての価格水準も変わってくることも加わって、その価値判断は実に複雑な様相を呈することになる。これが趣味の世界というものなのかもしれない。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 なぜ70万円で価格帯を区切ったのか編集部の意図を推測してみると、どうやら、マーク・レビンソンのコントロールアンプの存在のためらしい。ベストバイの一覧表を見ても、70万円を超えるものはマッキントッシュのC32と、あとはマーク・レビンソンのML7、LNP2L、ML6ALの、いずれも100万円を超す3台だけである。それなら、100万円で区切ったほうがよかったと思う。そして、このゾーンをスーパーマニアと呼ぶとなると何やらおかしいことになる。これだけのお金を払う人のことをスーパーマニアと呼ぶという考え方にとらえそうである。40〜70万円のところで書いたことは、このゾーンにもあてはまる。一品一品に心血をそそいで作られるアンプ、それは量産にはない魅力をもつ場合もあるが、逆に量産のもつ信頼性や安定性に欠ける場合もある。この両方のさよをバランスさせたものが、最高級ランクでのベストバイということになるだろう。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ペアで120万円以上は、スーパーマニア向き、あるいは専門家用の超高級システムということになり、最新最高の結晶、あるいは伝統に輝く名品といえるものが、このゾーンには存在する。もちろん、全部、大型システムとなる。いずれも、大変な風格を音にも外観にも持った製品がそろっている。これらのスピーカーの鳴らす音の世界は、それを使う人を反映するといわれるほどで、まさに、オーディオの世界の深奥を聴かせる可能性を秘めている。しかし、まかりまちがえば惨憺たるもので、7万円未満のブックシェルフシステムを、さり気なく鳴らした音にも劣りかねない危険性ももっている。つまり未熟ツナドライバーが、高性能のスポーツカーを走らせるようなもので、人にまで迷惑をかける。これを作った人間達の英知と教養と、それを使う人間の戦いでもあり、美しき理解と協調でもある。それにふさわしい高額な出費もやむを得ないだろう。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 15万円以上の価格ともなると、当然のことながら製品の機能・性能は非常に高くなるものの、ディスクとは異なり、デッキ特有の各種各様に存在するテープの選択と、デッキとテープとのマッチング、さらに録音レベルの設定による音質変化と転写の問題などが最終的な音質と直接関係するクラスであり、使いこなしを充分におこなわなければ、せっかくの高性能デッキが活かされないことになりかねないので選択には注意されたい。この価格帯も20万円を境界線として二分するほうが選択には便利だろう。20万円未満は実質的な高性能デッキの存在するところで、使いこなせば10万円未満とは一線を画した優れた音質が楽しめるはずである。20万円以上は、事実上各社のトップモデルが置かれる価格帯である。各社各様の開発方針が色濃く出た製品がほとんどで、フルオート化を選ぶか、マニュアルチューニングの高性能機を選ぶかが選択の要点。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 7〜13万円の価格帯は、8万円と10万円を境界線として考えるほうがよい。7〜8万円は、従来からも優れた実用モデルともいうべき製品が置かれていた価格帯で、3ヘッド型が多くなり、それぞれ専用ヘッドを備えるだけに性能も高く、音質も優れる。また、オートリバースの高信頼度のモデル、新ノイズリダクション方式の採用の製品など、ディスクファンの平均的要求に好適な内容をもつデッキが多く、ぜひともこの価格帯から、デザインを含み、性能・機能を実際にチェックしてから選出してほしいものだ。10〜13万円クラスは、それ未満の延長線上に位置するモデルが存在するところだ。製品数は比較的少ないが、価格的にも余裕があり、デッキメーカーとしてのキャリアと実績をもつ各社の製品であるだけに、いずれを選択してもさしたる問題を生じないのがこのクラスの特長である。最近のデッキの進歩を知ることができるのもこのクラスだ。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 カセットデッキは、メタルテープ対応以前から6万円未満の59800円が各社間の製品競争が激しいところで、他社と差別化するために、性能・機能ともに優れた製品が次々に新製品として登場し、製品寿命も短いのが特長である。7万円未満では、やはり、6万円未満と区別して考えるべきである。6万円未満でも実質的には5万5千円未満と以上でさらに二分され、性能・音質はやはり1ランク異なるようだ。このうち6万円未満の59800円クラスの製品が、カセットデッキを本格的に使うためのベーシックモデルで、性能優先型か、性能と機能のバランス型かどちらかを選ぶ必要がある。また、ドルビーCなどのノイズリダクションを新採用のモデルは、そのベーシックモデルがベストバイだと思う。6〜7万円は、それ未満のバリエーションモデルや3ヘッド型、オートリバース型と選択は広くなるが、音質もやはり、一段と高い。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 フォノモーター/ターンテーブルシステムという分野は、一つのパーツとして考えるべきものだろう。プレーヤーは、大きく分けてベース、フォノモーター、ターンテーブルアッセンブリー、トーンアームそしてカートリッジのシステム化により音が決まる。フォノモーターの場合は、ベースがないわけで既製のプレーヤーシステム、あるいはターンテーブルシステム(アームレスプレーヤー)のベースでは気に入らない人が、パーツアッセンブリーとして求めるものだろう。そうした実情から、フォノモーターは、コストを節約したものではあまり意味がない。ターンテーブルシステムは、モーター、ターンテーブル、ベース、そしてトーンアーム取付ベースまでを一体としてメーカーが作り上げたもので、性格としてはプレーヤーといえそうだ。トーンアームの選択を自由にしたものだけに、これも、よほど高度なものでなければ存在理由はない。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 トーンアーム単体には価格帯をもうけていないが、もともと、これを使おうというぐらいの人は、かなり要求度の高いマニアで、明確なコンセプトから選択するもだろう。プレーヤーシステム附属のトーンアームにも、かなりクォリティの高いものがある実情からして、プレーヤーシステムのターンテーブルに自分の要求が満たされないか、あるいは、どうしても附属のトーンアームが気に入らないといった人達のための存在ということになる。プレーヤーシステムは、カートリッジからベースにいたるすべてを含めて、一つの音をもつものだから、トーンアームも、それ自体の性格と、トータルのシステムの一員としての適性を考える必要がある。さすがに、各社のトーンアーム単品は、明確なコンセプトと専門メーカーらしい精緻な作りをもっている。自分自身の技術的な見地から充分調査することが必要だ。目的は一つでも、考え方がいくつかあるのがこの分野であるから。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 6万円以上の製品では、実質的には10万円がカートリッジとしての上限である。もちろん、それ以上の価格の製品も存在はするが、カンチレバー材料やボディ部分に、ダイヤモンドやサファイアなどの宝石材料を使用するスペシャリティな製品で、ベストバイの意味では、対象の範囲に入らぬ、特別な需要を満たすためのカートリッジといえるだろう。
 6〜10万円の価格帯では、国内・海外製品ともに、各社のトップモデルが置かれるところで、それぞれのメーカーのサウンドポリシーがもっとも強く現われているだけに、その選択は大変に興味深いものがある。何れを選択するにせよ性能が高いだけに、プレーヤーや、MC型では昇圧の方法など、使用するコンポーネントにより音質が大幅に変わるデリケートさをもっているために、各カートリッジに対する使いこなしはかなり時間をかけて取組まないと、せっかくの性能・音質が引出せない点に注意したい。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 4〜6万円の価格帯も、さらに5万円でボーダーラインを引きたい。5万円未満の価格帯は、特例を沿い手国内製品MC型実質的な高級モデルが数多く存在する。カートリッジは高級モデルになるに従い、軽量振動系を採用したワイドレンジタイプになるが、国内製品の高級MC型がほとんどこのタイプで、繊細さ分解能の高さを聴かせることに較べ、オルトフォン系は重針圧型のダ円針付、と好対照である。一方MM型は、海外製品の高級モデルのそれぞれ魅力的な個性が十分に楽しめる。
 5万円以上は事実上のカートリッジのトップモデルが顔を揃える価格帯である。MM型は海外製品が多く、軽質量振動系採用のワイドレンジ型であり、振動系のカンチレバー材料に宝石パイプ採用のモデルも登場しはじめる。MC型はトップモデルの置かれる価格帯で、このクラスとなれば、せびとも専用の昇圧トランスかヘッドアンプを組み合わせたい。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 スピーカーシステムのような外形寸法が大きく、重量もあるコンポーネントに比べ、カートリッジは小型軽量であるため、海外製品の実売価格が非常に低く、特例を除いてこの4万円未満で入手できるのが、特長であり、今回のような価格帯別のベストバイを考えるときに大きな問題点になってくる。従って、ここでは、国内製品を中心にして価格帯を考えてみよう。
 4万円未満でも2万円と3万円は、さらに、それぞれボーダーラインとなる。
 2万円未満はMM型も数あるが、狙うならMC型で古典型から現代型まで数機種が並ぶ。
 2〜3万円は高性能で信頼性の高いMM型とMC型の中級機種が存在する価格帯で、MM型の高性能化、MC型の実質的魅力かが選択のキーポイントになるだろう。
 3〜4万円は、実売価格が高いデッカ、オルトフォンの製品が存在し、これらは4万円以上と互角の魅力をもっている。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 20〜40万円の価格帯になると、スピーカーシステムでいえば中型フロアーシステム、アンプでいえば中級セパレート型に相当する性能・音質をもつ製品が存在するところでややベストバイの意味からは外れた位置づけにあるプレーヤーシステムである。
 選択のポイントは、①性能と機能のバランスを重視してフルオート機を選び、イージーオペレーションで、適度にクォリティの高い音質をリラックスして楽しむか、②高性能さを優先させて大型/重量級のマニュアル機を選び、普及機では再生し得ない、ディスクにカッティングされている底知れない情報量を汲みとるか、の二者択一であろう。また、このクラスならシステムとは別にアームレス型を選び、使用するカートリッジにマッチしたトーンアームを組込んで、セミカスタム型のシステムを作るのも効率の高い選択である。当然、選択にはある程度のキャリアが必要だが、その結果には夢がある。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 8〜20万円未満でも、さらに10万円、15万円は製品としての境界線である。10万円未満は、8万円未満の延長線上に位置する製品である。プログラムソースとして、ときにはディスクを使うという程度なら、8万円未満を選択したほうがよいが、やはりディスク中心のプログラムソースで楽しむのならこのクラスである。マニュアル、フルオート、リニアトラッキングアーム、ベルトドライブなどテーマも多いが、メカニズム的にもこのクラスは信頼性が高く、その音質にかなり聴きごたえする価格帯である。15万円未満は、実質的な高級モデルの存在する価格帯である。最近では高性能機はマニュアルという誤解も少なくなり、フルオート機がかなり登場している。また、リニアトラッキングアームの本来の特長が活かされるようになる価格帯でもある。20万円未満は15万円未満の延長線上で製品も少ないが、それ以上の価格帯に相当する好製品が存在する。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プレーヤーシステムは、コンポーネントシステムの入口を受持つ位置づけにあるため、その選択を誤ると、アンプやスピーカーシステムにいかに高性能な製品を使ったとしても、希望する音が得られなくなる点に注意したい。8万円未満の製品といっても実質的には6万円、7万円をボーダーラインとして3つのグループに分けて考えたほうが現実的だ。6万円未満の製品はプレーヤーシステムとしてベーシックなモデルであり各社の製品競争が激しいところで、比較的優れた製品が多い。最近の傾向としては、ストレートアームを備えたフルオート型が主流を占めるようであるが、選択は必ず比較試聴をして決めたい。7万円未満はいわば標準モデルで、6万円未満とは音質的に1ランク差があるようだ。8万円未満は、30〜40万円クラスのコンポーネントシステムの組合せに使えるだけの性能・機能・音質を備え、一般的にこのクラスの製品を選べば安心して使用できる。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 これもずい分広い価格帯の設定で、概括するのが難しいが、このランクにはかなり特色をもった個性的な製品が多くある。出力は小さいが、技術的には興味深いAクラス・アンプなどは、このゾーンに多いようだ。そして、一般的な国産パワーアンプは今のところ、ステレオで100万円が最高価格であるから、このゾーンはトップモデルを含むことになる。全体としては、海外製のアンプがこのゾーンではめっきり増えてくる。パワーでは200Wクラスが大きいほうで、先に述べたように、,50Wクラスのものまである。作りやデザインにも個性が強く現われ、不思議なことに、国産アンプも、コントロールアンプよりも、ずっとオリジナリティをもったデザインのものが多いようだ。音の密度の充実した製品が多く、海外の大型スピーカーシステムのもてる個性を十分に発揮させるに必要なアンプとなると、このクラスのものが望まれる。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 このクラスのパワーアンプとなると、さすがに、パワーアンプとして存在感が強い。国産パワーアンプがほとんどで、パワーも100〜150Wが標準である。歪特性はいずれも優秀で、性能的には不足のないものばかりに見える。しかし、実際に音を聴いてみると、実にいろいろな音を出すのが面白い。個性が興味の的となってくる。このクラスに総じていえることは比較的オーソドックスで汎用性の高いものが多いということである。パワーの小さめなものは、その分音質にまわっていることか納得出来るのも、このクラスから上の製品のもつ誠実さといえそうだ。だからといって、パワーの大きいものは音質が劣るとはいえない。僅かだが、そうしたものもあるにはあるが、国産パワーアンプの技術の見せどころといった中堅機種が、このゾーンの代表であり、もともと趣味性の高いセパレートアンプの世界のこと故、この面から見ると、もう一歩といったところだ。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 パワーアンプ単体も、コントロールアンプの項で書いた、セパレートアンプの性格と共通するものだが、ただパワーアンプの場合、コントロールアンプより使い方が多機能となる場合が多い。つまり、マルチアンプとして、高域用に小出力のアンプが欲しいとか、ある種のブースターとして使いたいような場合がある。30Wクラスの単体パワーアンプが3万円ぐらいから存在することと、同クラスの単体コントロールアンプとを同じに考えることは出来ないのかもしれない。しかし、ここでは一応メインシステムとして考えると、原則としてプリメインアンプのパワー部の水準を超えてこそ、単体パワーアンプの存在が光ってくるといっておこう。そして、それは現実に10万円から上になるようだ。管球式アンプは特殊な存在として、一般には、100W+100Wクラスのパワーのものが単体パワーアンプの現実の目安であろう。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 この価格帯の後半は全部といってよいほど外国製品となる。そして、これを概括して述べることは全く不可能といってよい。きわめて個性的なものが並んでいて、価格と価値の関係も、それぞれのメーカーのお家の事情で異なり、まったくまちまちである。こういう特殊なものだから、専門メーカーが多く、開発費のかけ方、生産量などが即、価格に反映するのである。早い話が、マッキントッシュのC29を一台だけ作ったら大変な価格になるだろうし、年間700万台も作れば1/10ぐらいになるかもしれない。しかし、このクォリティを維持することは出来ないであろうから、土台無理な話である。というわけで、こういう製品を値段で区切って、どうこういうこと自体が非現実的である。しいていえることとしては、40〜70万円をコントロールアンプ単体のために出費するユーザーとして、真によいものを見抜く眼力と張力が重要だということである。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 この価格帯には、国産のほとんどのコントロールアンプが集中している。一般的にいって、国産アンプの場合、パワーアンプに比べてコントロールアンプが不作であるが、それでも20万円以上となると、さすがに手応えのある製品を見出すことが出来る。物理特性的には最高だ。コントロールアンプは、心情的に豊かな魅力をもったものが要求され、直接手で触れて、音をコントロールする専門のコンポーネントということから、パワーアンプ以上に、要求が複雑になるようだ。音だけでなく、総合的な印象が音楽を聴く心情の対象として厳しく見つめられるであろう。そうした意味でいくと、20〜40万円のゾーンは、やや物足りなさがあるかもしれない。いいかえれば、国産コントロールアンプの抜群の特性にバランスした、ものとしての魅力や風格、オリジナリティとセンスにいま一歩のところがあることを物語っているようである。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 コントロールアンプというからには、パワーアンプが含まれていないセパレート型だ。アンプにはプリメインアンプと呼ばれるインテグレイトな便利なアンプがあるわけだから、セパレートには、それなりの必然性が要求される。つまり、プリメインアンプでは得られない性能、クォリティ、魅力があるべきだ。実際には、プリメイン型の高級機にも劣るセパレートアンプもあるから要注意である。形態がセパレートであるというのも魅力のうちだから、かなり安価なコントロールアンプも市場にはあるが、あまり感心出来るものはない。3万円〜5万円でプリメインアンプを超えるものが出来るわけはないのである。どうしても10万円近いところからが存在の必然性をもったものというのが実情である。本当は、10万円内外と20万円クラストの間に線を引くべきなのかもしれないが、このゾーンにも結構、単体コントロルアンプとしての魅力をもったものが存在する。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 国産・外国製共に、名実共に高級スピーカーシステムといえるものが、この価格ゾーンになるだろう。プロのスタジオ用モデルは別として、コンシュマー用は全部といってよいほど据置型のフロアーシステムであり、かなりの大型機が多い。半数ぐらいは、プロ用モニターシステムである。それも、外国製品が圧倒的に多い。60万円クラスで述べた趣味性はさらに高まり、このクラスとなると、ものは、その性能の可能性を誇り、使う人の才能、技術、経験を要求しはじめる。ユーザーの資格が問われるといってもよいであろう。ただお金があるから買うといったことがあってはいけない。ましてや、昨日今日オーディオに興味をもって、いきなり、このクラスのものを買い込むことは慎むべきだ。決してよい結果は得られないであろう。然るべきコンサルタントがいれば話は別であるが......。だからこそ、ステイタスにすりかえられることにもなるのであろう。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 この価格帯を展望した時の目立った傾向としては、外国製品の存在である。そして、フロアー型が多くなり、38cm口径級の大口径ウーファーをベースにしたマルチウェイが目立ってくる。マニア向けとしては決して高級クラスとはいえないが、ここまでくると、もう音楽は生活の伴奏ではなくなり、糧となる。大きさもかなりのものになってくるし、人は、正面からスピーカーと対峙する構えが必要だろう。特に国産品では最高級品の領域であるから、こうした性格が強い。外国製の場合は、どうしても割高となっているから別の捉え方が必要だろう。つまり、現地価格からして、このクラスが本格派への入門といったところである。かなりの個性派が多く、かなりの趣味性を満足させる似たる製品がずらりと並んでいる。人の感性や情緒の対象として、あるいは音楽表現の味わい、楽器の音色の色彩感や美しさに照らし合わせて云々するに足るものが増えてくるゾーンといえるだろう。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 このクラスになると、中堅製品とみてよいだろう。ブックシェルフシステムなら、もう限界といってよい大型のものから、フロアータイプのものまでが登場してくることになる。ウーファー口径も、大きいものは38cm径があるし、構成も、技術的特長も、変化に富んでくる。外国製の個性的な製品も多く入ってくるようだ。大ざっぱにみて、大型の本格派を、限られたコストの中で狙ったものと、独特な個性を技術的にも音的にも狙ったものに分けられる。前者は、この価格で大音量とスケール感を狙ったものだし、後者は味わいや個性といったクォリティを追求したものである。かなり技術的追求のおこなえるコストであるだけに、気の入った力作が多く注目される。音楽の表現や、色彩感に関与してくるといった趣味性が出てくるのである。相当〝うるさい〟人にも応えられる製品がある。いわば、本格派向きである。ブックシェルフとしては最高級品になる。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 7万円未満と7万円台では明確に線を引くべき根拠はない。大きく、7〜15万円という範囲を一把みにして考えるということでいけば、たしかに、一つの傾向を発見出来ることになるようだ。このクラスのスピーカーシステムは、開発の意図からして、音に感心のある趣味的な人を対象に考えているからである。ブックシェルフシステムがほとんどであるが、構成は、3ウェイシステムが圧倒的である。全体像として捉えると、中級スピーカーシステムということになるが、オーディオファンを対象とした場合に、この辺が、初心者、入門者向きの製品群とみるが妥当のように思う。コンポーネントシステムとして最も購買者層の厚い、いわゆる売れ筋の商品ということになるだろう。時々の音楽の流行や、音のファッションに左右されることの多い価格帯ともいえるし、店頭効果を狙ったものも多い。中にはオーソドックスなものもあり、もっとも混乱の激しいゾーンである。
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 7万円未満のスピーカーといっても、下限は1万円以下とその範囲は広い。12〜16cm口径のフルレンジスピーカーを一個内蔵した小型ブックシェルフシステムから、30cmウーファーをベースにした3ウェイシステムでかなり大型のブックシェルフまで、内容は多種多彩である。さすがに、大型フロアーシステムこそ含まれてはいないが、これらの製品群の最大公約数を見つけ出すことは難しい。しかし、ごく全般的にいって、このクラスは趣味性を満たすといえるものではないだろう。中に、際立って優れた傑作もないとはいえないが、それも、7万円に近い領域である。小型で、さり気なく使えるスピーカー、ベッドルームでのサブシステムとして、あるいは、音楽を生活の伴奏としてムーディに聴き流すといった向きの製品が、この価格ゾーンに存在すると考えて大きな間違いはないだろう。5万円未満は特にその傾向が強く小型システムがほとんどである。

セクエラ Model 1

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 業務用の通信機で使われる受信周波数附近の電波を視覚的に見せるパノラミック・スコープ・アダプターをFMチューナーに導入した世界唯一の製品である。価格的にはFMチューナーの常識を破る超高価な製品であるが、その性能、機能を通信業務用の受信機のレベルからみれば、むしろ、ローコストともいえるだろう。ナチュラルでS/N比の優れた音は、FMチューナー的な音ではないが、フィデリティの高さは送信機の質を上まわる。

ソニー TC-K777

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 カセットデッキの性能向上を最大のポイントとし、かつてのオープンリールデッキの名器といわれたモデルのナンバーを受継いで開発された、ソニーひさしぶりの3ヘッド構成の製品。性能志向型のため機能はミニマムに抑えられているが、各テープに対応するマニュアルチューニング機構、最新アンプ系と電源を備え、その音質は、デッキやテープの現在の水準をするためのリファレンスとして最適であり、その信頼性の高さは抜群である。

パイオニア CT-970

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 基本的な性能をCT770におき、内容を高級機にふさわしく一段と充実させた本格派のカセットデッキである。オリジナリティが豊かで使いやすく優れたデザインは、視覚的にも実用上でも、従来のカセットの範囲を超えたもので、リールが回転し走行状態を示すディスプレイは視覚的にも楽しい。音質はCT770
上級機らしく同じラインではあるが、音の粒子は一段と細かく滑らかになり、分解能の高い中域から高域は類例のない見事さだ。

パイオニア CT-770

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 パイオニアのメタルテープ対応第二世代を代表する、非常に意欲的な開発方針に基づいたカセットデッキだ。デュアルキャプスタン方式走行系に、リボンセンダストヘッド採用の3ヘッド構成AUTO BLEを加えた性能と機能は、この価格帯では他の追従を許さぬ実力を備える。テープとの対応性は幅広く、テープのキャラクターに適度にデッキの音を加えて聴かせるタイプであり、この価格帯のリファレンスデッキである。

ビクター UA-7045

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 トーンアーム単体は、使用カートリッジの種類によって簡単には決めかねるものだ。軽針圧型から重針圧型まで幅広く対応させるためには、軸受構造もオイルダンプやナイフエッジよりは一般的なジンバルが好ましく、慣性質量も中庸をえたタイプがよい。この点ではUA7045は、長期にわたる使用経験上も各種カートリッジの特長を、それなりに素直に引出すのが最大の美点であり、明るく伸びやかな音は使いやすい現代的な魅力である。

エンパイア 4000D/III LAC

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 カンチレバー内部に特殊構造を施した現在のダイナミック・インターフェース・シリーズはエンパイアの最新モデルであるが、スタンダードなカンチレバー採用の製品のトップモデルが、この4000DIII/LACである。ワイドレンジ型で、音の粒子が微粒子型であるため、ソフトでスムーズな音とシステムによっては誤解されるが、高度なシステムでは、非常にシャープで繊細な音でMC型以上となり、現在でもリファレンスの位置づけを持つ。

ヤマハ MC-5

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 現在、デッカのMarkV以外には実用化されていないタテ方向とヨコ方向の発電系をもち、マトリックス回路を通して45/45方式とする発電機構を世界最初のMC型に導入したMC7はユニークな存在であるが、このタイプの第二弾製品が、このMC5だ。超軽量級の振動系はカンチレバーに当然ベリリュウムパイプを使う。スッキリと伸びたレスポンスと音溝をダイレクトに拾うような鮮明でシャープな立上がりは、MC型で類例がない。

デンオン DP-75M

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ターンテーブル内側に磁気テープのような磁性体をコーティングし、これにパルス信号を記録し、磁気ヘッドで検出する精度の高いサーボ方式をDD型登場の初期から採用するデンオンが、この独自のDD型をクォーツロック化し、ターンテーブルに二重構造の振動防止機構を組込んだDP75フォノモーターをベースとしたシステム。DD型にありがちな、あいまいさがなく、穏やかで安定度の高い音は、リファレンス用としても使える。

ヤマハ T-8

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 発売当初、きわだった透明感と分解能でチューナー技術の成果を聴かせたCT7000以来、T2、T9と続くヤマハ・チューナーの高性能さと高い音質は、一部で非常に高い評価を得ているが、一般的には、むしろ過小評価されているといってもよい。T8は、バリコン同調型以上の性能を目標として開発されたCSLデジタルシンセサイザー方式の製品。SN比がよく、ナチュラルな音で、生放送番組などを聴くと性能の高さが明瞭に感じられる。

デンオン POA-3000

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 数ある高能率A級増幅方式としては唯一のA級増幅をベースとしたデンオンAクラスは注目の技術である。パワーと比較して巨大な外形は、A級増幅を出発点としたため、一般のB級増幅スタート型より少し能率が低いこの方式の特徴を物語るものだ。カラレーションが少なく、スムーズに伸びたレスポンスとキメ細かく滑らかな音は、これ見よがしの効果的なタイプではないが、聴き込むに従って本来の高性能さが受取れる信頼性は高い。

ヤマハ C-2a

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 物量を投入し、多機能と高性能を追求した、いかにも高いアンプらしい音で貫禄を示したCIに続いて開発された、シャープな感覚のC2をベースにモディファイされた薄型コンロトールアンプの典型的な製品。第二世代のアンプらしく、内容の充実ぶりは、発売以来の歳月は経過しているが、新製品と比較をしても、安定感、トータルバランスの良さは見事なもので、それぞれのパワーアンプの性質を引出して聴かせる力量は見事だ。

ビクター A-X5D

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 A級増幅の低歪とB級増幅の高能率を両立させた独自のスーパーAクラス方式に加えて、新しくピュアNFB方式を採用した、実力派のプリメインアンプ。兄貴分のA−X7Dの安定感のある魅力もさることながら、このX5Dのシャープでキビキビとした反応の早い音は、このクラスのトップランクだ。伝統的な音場再生のセオリーにのっとった、ディフィニションが優れ、明快な音像定位と、パースペクティブの再現力は試聴上の本機のポイントである。

JBL 4333B

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 C50SM、4320、4333と続くJBLスタジオモニターの正統派のラインを受継ぐ最新作。低音は独自の構造のフェライト磁気回路の採用で、従来の4333Aと較べ、エネルギーバランスが格段に優れ、システムとしての性質も大人っぽく完成度を高めた。使用するアンプ系は、並の製品では低域に破綻を生じやすく、本来の性能を引出せない。システムとしてのまとまりの良さは4343B以上で、さすがにプロ用モニターだ。

ダイヤトーン DS-505

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 オーディオ帯域を専用ユニットで4分割する4ウェイは理想に近いユニット構成である。低音と中低音はアラミド・ハニカム構造コーン、中高音と高音はボイスコイル部分をも一体成型した特殊なボロン振動板採用で、振動板に制動材を使わずに性能を引出した技術は見事だ。ワイドレンジ、高分解能型の典型で、使用機器さらにプログラムソースのクォリティに敏感に反応する性能の高さは他とは次元が異なり、試聴上の注意点だ。

BOSE 901 SeriesIV

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 コンサートホールのプレゼンスをリスニングルームに運び込む目的で、背面に8個、正面に1個の小口径フルレンジユニットを配置した特殊構造のエンクロージュア方式と、専用イコライザーを使う、901の最新モデル。充分な間接音成分とシャープな直接音のエネルギーバランスは絶妙で、ソリッドでパワフルな低域は外形からは驚異的でさえある。必要に応じて2段、4段と積重ねるのも効果的で、ひと味ちがった使用法だ。

ヤマハ NS-690III

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ヤマハ最初の本格的3ウェイ・ブックシェルフ型として一躍脚光を浴びた、ソフトドーム型ユニット採用の完全密閉型NS690の、2度目のフレッシュアップモデルだ。ピアノ響板材料をパルプに使った新ウーファー、再設計を加えられたソフトドーム型ユニットの構成は、カラレイションがなくスムーズなレスポンスをもち、しっとりと滑らかでプレゼンスが優れる。現代の高性能アンプで駆動するソフトドーム型は新鮮な魅力だ。

BOSE 301 Music Monitor

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 小口径フルレンジ型ユニットを複数個使ってシステムアップするボーズの特殊技術の成果は、小型ポータブルPA用スピーカー802の凄くパワフルなサウンドに代表されるが、301はミュージックモニターと名付けられたように小型モニターを目標として開発された製品。聴取位置正確な音像定位をコントロールするフォーカシング機構はユニークで効果は抜群だ。ガッツがあり、パワーハンドリングの優れた音は、さすがにモニター。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 低インピーダンス専用のスイッチレス型トロイダル巻線採用の高性能トランス。
 聴感上でナチュラルに伸びたワイドレンジ型に近いレスポンスと、音の粒子のキメが細かく、滑らかに磨込まれた美しく爽やかな印象が特徴で、クォリティはFRT3Gより一段と高い。
 MC20IIとの組合せは、豊かに量感タップリに鳴る、低域から中低域をベースとした情報虜が多い音である。音色は暖色系で滑らかさがあり、楽器の固有音をかなり正確に鳴らす。
 FR7fとすると帯域バランスはナチュラルとなり、音色もニュートラルになる。素直に聴かせる分解能の高さ、ダイナミックで余裕のある表現力、ナチュラルに拡がる音場感のプレゼンスなど、優れたカートリッジの性能をフルに引出した音。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 リング型コアにトロイダル巻線を採用した入力インピーダンス2段切替の製品。
 最近の製品らしく、昇圧トランスとしては帯域の狭さを感じさせないレスポンスと、キメ細かく滑らかでありながら適度に力感もある音に特徴がある。
 MC20IIは、少し細身のスッキリした音になるが、音場感はスムーズに拡がり、再生の難しいディスクの大振幅でも、破綻を見せずこなしてしまう。音の表情は素直で、適度なダイレクトさもある。
 DL305では、MC20IIよりもトランスのキャラクターにマッチし、伸びやかなレスポンスと一段と分解能が高い音を聴かせる。音色は明るく軽く、反応も適度に速い。FR2は穏やかで素直な表情と爽やかでバランスが優れた音である。

アントレー ET-200

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 高性能化を目的として入力スイッチを取除いた低インピーダンス専用トランス。
 ET100と比べると全体に音のキメが細かく、一段とワイドレンジ型になったのが判る。MC20IIは、やや細身の高域にアクセントがついたスッキリ型になり、爽やかさはアルが、やや実在感不足の傾向がある。FR7fは、予想より低域バランスの線が太い大味な音になる。アントレーEC30を組み合わすとやはり、それなりに納得のいくバランスとなり、力強いMC型というEC30の特徴が素直に聴かれる。
 このトランスもRCAピンコードによる音の変化があり、ET15でナチュラルなバランスとなったコードはメリハリ強調型となり、付属コードですっきりした音になるが、今一歩なのだ。

アントレー ET-100

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 入力インピーダンスが3Ω、10Ω、40Ωの3段切替で使える昇圧トランスで、定評の高かった初期の製品を改良したのが現在のモデルである。
 聴感上の帯域は、安定感がある低域をベースに少し抑え気味の中域と輝きがある中高域から高域が適度のバランスを保つ。音色は明るく、音表情は穏やかで安定感がある。
 MC20II、FR2、DL305の3種のMC型に対し、それぞれの特徴を引出しながら適度にクッキリとコントラストの効いた、プレゼンスのある音として聴かせる。価格的にみて、現状では高価な製品ではないが、昇圧トランスの一種の基準尺度として使えるだけの信頼性の高い音は見逃せない。ET100は付属コードでバランスがとれる。

アントレー ET-15

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 3Ω、40Ω切替型の昇圧トランスである。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかく軟調の低域、抑え気味の中域、硬質でコントラストをクッキリとつけるがやや粗い中高域から高域をもつ、個性の強いタイプだ。
 MC20IIとDL305ともに、トランスの個性のために大きな傾向の差が出ないが、音色が明るく細かさも出てくる点でDL305の方が良い。
 パスを含むスイッチ切替実験の結果、付属RCAピンコードを普通のタイプに交換してみると、個性の強さは大幅に減り、トランスとしては素直でキャラクターが少なく、ナチュラルな帯域バランスをもっていることが判った。昇圧トランスやヘッドアンプでは、使用するRCAピンコードで音が大幅に変わることが多い点に注意したいものだ。

EMT STX20

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 EMTのTSD/XSD15専用の昇圧トランスであり、今回は当然、TSD15を組み合わせて使う。適度に伸びた重厚で力強い低域をベースに、厚みが充分にある中域と、ハイエンドを抑えた高域が、安定感のある帯域バランスを形成している。
 全体に音の芯がクッキリとし、やや硬質で線の太さが感じられる音だが、楽器それぞれに固有の振動を見事に聴かせるのはさすがだ。プログラムソースに対しては適度に反応を示し、ソリッドな魅力があるが、カシオペアのようなジャンルは不得手である。
 試みにMC20IIを使ってみる。バランス的に低域を抑えたクリアーで小柄な音になり、低域が豊かすぎてカブリ気味のスピーカーには効果的に使えそうだ。

ダイナベクター DV-6A

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DVカートリッジ用に開発された、巻線を含む全ての線材に銀線を採用し、一次巻線はスイッチ切替でバランス型とアンバランス型に使用できるユニークな構想にもとづいた製品である。
 入力インピーダンス40ΩでDL305を使う。柔らかな低域をベースとした安定型の帯域バランスをもつことはDV6Xと似るが、音の基本クォリティは格段に高く、豊かな響きと少し硬質な中高域がバランスを保つ。音場感はナチュラルでスピーカーの奥に拡がる。
 試みにバランス型に切替えると帯域バランスはナチュラルに伸び全体にクリアーで表情豊かな音に変わる。とくに前後方向のパースペクティブがスッキリと感じられるのはバランス型の大きな特徴で、今後の発展が楽しみな製品である。

ダイナベクター DV-6X

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DV6Aのジュニアタイプとして開発されたスイッチレスの昇圧トランス。
 入力インピーダンスは3〜60Ωと発表されているために、MC20IIとDL305を使う。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかな低域をベースとした暖色系の音色をもった穏やかなタイプで、ハイエンドはなだらかに下降するレスポンスをもつようである。
 DL305は低域ベースで高域が下降気味となり、柔らかな雰囲気は楽しめるが、本来の、解像力があり爽やか音とは別のキャラクターに感じられる音になる。
 MC20IIは、DL305よりは明快さが出てくるが、やはり本来とは異なった穏やかな音になる。製品の性格からいっても、ダイナベクター・カートリッジ専用の昇圧トランスという印象が強い。

デンオン HA-1000

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DL103Dの発売とほぼ同時に開発されたセパレート型電源採用のヘッドアンプで、利得切替は24dBと32dBの2段切替型だ。
 MC20IIは、ローエンドを少し抑えたワイドレンジ型で、ハイエンドはやや上昇ぎみのバランスとなる。いわゆるスッキリとした細身のバランスで、音の表情は淡泊でサッパリとし、音を整理し凝縮して小さく聴かせる傾向がある。音場感はナチュラルでプレゼンスはかなりのものだ。
 DL305は情報量も多く、滑らかに伸びたレスポンスと、トータルバランスの優れたクォリティの高さ、やや抑制の効いた素直な表情が特徴である。全体に音楽を凝縮して聴かせる傾向は24dBの利得の方にもあるようで、一般的にはもう一段とスケール感が欲しい。

デンオン AU-340

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 広帯域、低歪をテーマに開発されたデンオン昇圧トランス中で最新の製品である。入力は、3Ωと40Ωの2種類が切替使用可能。
 MC20IIは、安定感のある低域をベースに、少しハイエンドを抑えた帯域バランスである。全体の線はクッキリと太く、楽器の基音成分をクッキリと聴かせるが、倍音の豊かさは今一歩という印象である。各プログラムには平均して対応しディスクのキャラクターを素直に引出す性能がある。
 DL305では、やや硬質でスッキリとナチュラルに伸びた帯域バランスと、細やかな粒だち、軽く明るい音色が特徴となる。全体に音を美しくキレイに聴かせる傾向があり、クォリティは充分に高いが、押し出しのよいパワー感とリアリティの面では少し不満が残る。

デンオン HA-500

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 HA1000に続いて開発された製品で、利得は24/32dBの2段切替だ。
 聴感上の帯域バランスはあまりワイドレンジを意識させないナチュラルなタイプで、適度に分解能がよく爽やかな、,軽く明るい音が特徴で、使いやすい音の傾向と思われる。
 MC20IIを32dBで使う。クッキリと粒立つシャープで整然としたやや硬質な音である。全体に力があり、音像がグッと前にせり出す傾向があり、各プログラムソースをコントラストをつけて明解に聴かせる。
 DL305を24dBで使うと、安定した低域をベースに滑らかでスムーズな音である。音場感は32dBとは逆に少し奥に拡がるタイプに変わる。試みにFR2を32dBで使う。滑らかさとメリハリが両立した快適な音だ。

デンオン AU-320

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 AU310の細身で素直な音と比較すると、低域の量感が一段と増加したことと、中高域に少し輝かしいクッキリとコントラストを付けるキャラクターがあり、トータルバランスを形成しているのが異なる点だ。
 MC20IIは、やや薄くシャープでクッキリとした音で、音場感の拡がりも一応の水準にある。しかし本来の音と比べると、中低域の豊かさが減り、中高域が硬質になっているのが判る。
 40Ωに切換えDL305にすると、全体に線が太い絵のように細部が見えず、音場の拡がりも狭くなる。DL103に替えると、低域の力強さと中高域の輝きが巧みにDL103の音にアクセントをつけて効果的に聴かせる。やはり、カートリッジとトランスの製作年代のマッチングの成果であろう。

デンオン AU-310

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 高インピーダンス専用トランスでDL103、103S用に開発された製品。
 DL305では、ナチュラルな帯域バランスと、少し細身のスッキリとしたシャープな音となる。音場感はやや後方に拡がるタイプだが、ホールのプレゼンスは一応の水準で聴かれる。
 ロッシーニは適度に軽快さがあり安心して聴けるが、気をつけて聴くと分解能が不足気味で、反応も少し遅い。ドボルザークとなると中高域に少しキャラクターがあり、ホールの後の席の音だ。峰純子はやや硬めで、小柄なボーカルながらまとまりはよく、カシオペアもそれなりに聴かせる。
 DL103にすると帯域バランスがピタリと決まり、これなら納得という音だ。この変化は大変におもしろい。

コッター Mark2/TypeL

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 低インピーダンス専用で、同社の他のモデルとはトランスが異なった仕様だ。
 聴感上では、トランスとしてはワイドレンジ型で、豊かな低域をベースに、適度に緻密で安定したトランス独特の魅力がある。全体に従来より幾らか穏やかになった印象のタイプP/PP/Sに比較して、クォリティの高さは格段に優れる。
 MC20IIは、暖色系の柔らかく豊かな低域をベースとした美しい音を聴かせる。この音は、ハイファイというよりは音楽を長時間聴くに相応しいタイプで、独特の抑えた光沢はコッターならではの魅力だろう。
 FR7fにすると帯域も一段と広く、力強く伸びやかな分解能が優れた音になる。音源は少し遠いが、カートリッジの性能差をかなり明瞭に聴かせるのは見事。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 タイプPがオルトフォンなどの低インピーダンス用、タイプPPがEMT用、それにタイプSがデンオンなどの高インピーダンス用となっている。基本トランスは完全に同じもので、トランスの多重巻線の接続を変更して使用を変えているために、3タイプ間の変換は後からでも可能である。
 タイプPにはMC20IIを使う。聴感上のf特は高域と低域をわずかに抑えた、トランスとしては標準的なタイプだ。柔らかに低域は安定感があり、中高域に独特のわずかのキラメキがある。音の分離は優れるが、ソーによれば今一歩の印象もある。音色はほぼニュートラルで、各プログラムを平均してそれなりのクォリティで聴かせる。
 タイプPPにはTSD15を使う。スケールが大きく、暖色系の豊かな音で、適度にスムーズさをもつが、TSDの本来の音を少し滑らかに角をとって聴かせるタイプである。
 タイプSにはDL305を組み合わせる。ナチュラルに伸びたf特と、耳あたりがよく抑えた光沢を感じさせる音は、大変にキレイであるが、峰純子は少しマイルドになりすぎ、カシオペアもムード音楽的になる。試みにMC20IIを使ったが、総合的にこれがベストである。

コーラル T-100

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 今回の特集に集めた唯一の一万円未満のトランス。
 3Ω専用モデルでMC20IIとFR7fを使う。全般的にはFR7fのスケールの大きな音がマッチするようだ。聴感上のf特は少しナローレンジ型で適度にコントラストをつけて、やや硬質の音を聴かせる。ロッシーニは生硬さがあるが雰囲気をひととおり聴かせる。低域が不足するためか演奏の店舗が少し速くなる。この点は、中高域にクッキリ輪郭をつけるMC20IIの方が、スケールは小さいが小粒にまとまりバランスよく聴ける。ドボルザークはFR7f、MC20IIともに硬質になりすぎる。峰純子、カシオペアは平均的に聴かせるが、カートリッジの個性を引出すには至らない。SN比を稼ぎ、小粒にカリッとまとまる音が特長だ。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 3段切替スイッチ付のユニバーサル型トランスだ。
  MC20IIは、少し高質さはあるがスッキリとした爽やかな音で、聴感上のf特もスムーズに伸び、キャラクターの少ない穏やかな音である。プログラムソースとの対応の幅も広く、音をキレイに聴かせるのが特徴となる。
 DL305は、やや細部の描写が不足気味で、線が太く、本来のシャープさが出難い。
 AT34IIにすると中高域に少し硬いキャラクターが付くが、バランスの良さは、当然のことながらベストである。このトランスも付属コードを交換するとかなり音質が変化するため、使用にあたっては、コードを変えて使用システムに最適のバランスに調整するのが好ましい使用法と思う。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 中間インピーダンスをもつオーディオテクニカのMC型カートリッジ用の昇圧トランス。
 ややミスマッチにはなるが、MC20IIを使うと、トランスとしては適度の帯域バランスと少し細身の滑らかな音となる。ロッシーニは程良く鳴るがドボルザークは音源が遠く、大ホールの後の席で聴く感じだ。峰純子は少し細身の穏やかなボーカルとなり、雰囲気はアルが少し実体感不足だ。カシオペアは小柄になるが、一応楽しくは聴ける。
 AT34IIを組み合わせると、やはり、f特をはじめトータルバランスは一段と向上し、ややラフな面もあるが、価格から考えれば、充分な昇圧トランスらしい安定した落着いて聴ける音が得られる。この意味でも専用トランスと考えたい。

パートリッジ TH7834

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 この製品もTH7559同様に、キットとトランス単体が用意されている。本機は入力対出力の位相は同相で、一般の製品と等しい。
 MC20IIでは豊かで柔らかく、力強さのある低音をベースに、適度にコントラストをつける中高域がバランスをとった押し出しのよい華麗な音を聴かせる。ロッシーニ、ドボルザークを容易にこなし、カシオペアの強力なパンチも見事だ。これならSPUを使ってみたいところである。
 DL305では全体に線が太くなり、MC20IIとの本来のキャラクターの差が縮むようだが、音としては全体に力強くなったDL305、といった印象で、低域ベースで少し高域を抑えた安定感のある堂々としたタイプだ。
 TSD15では、ややオーバーゲインで使い難い。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 左右独立電源採用の利得切替なしのヘッドアンプで、入力と出力の位相が逆になる反転アンプである。
 聴感上のf特はワイドレンジ型で、音の粒子は細かく、適度にしなやかな反応と特定のキャラクターが少なく、基本的クォリティは相当に高い。
 MC20IIは水準以上のクォリティの高い音になるが、低域が少し軟調で甘くなり、中高域に少しキャラクターが聴きとれる。音像は少し引込み気味で、音場がスピーカーの奥に広がるタイプ。
 DL305は、帯域感は広いが高域の分離が今一歩不足気味で、これは中高域の硬質なキャラクターによるマスキングのせいであろう。全般的にみれば、MC20IIよりも音にフレキシビリティがあり、音を整理してキチンと聴かせるタイプだ。

パートリッジ TH7559

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 英国パートリッジ社のトランスを使った製品で、別に配線材で有名なベルデン社のコード付オールキット、および単体トランスも用意されている。
 このTH7559は,一次側入力に対して二次側出力が位相反転する、反転トランスであるのが特徴。
 聴感上の帯域バランスはナチュラルに伸びたタイプで、音の芯がクッキリと再現される少し硬質なリアリティのある音が目立つ点だ。MC20II、DL305ともに低域が安定し、ソリッドに引締まり、音に躍動感がある。この音は大変気持よく、ダイレクトディスクの峰純子のリアリティは試聴製品中でベスト3に入る見事さだ。
 TSD15はスケールは大きいが音の輪郭が甘く、少しソフトに過ぎる。これは位相関係が原因であろう。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 40Ω程度の高インピーダンスMC用トランスで、二次側の負荷条件は47kΩ/50pFが標準である。
E03と比較して、滑らかでキメ細かい音とナチュラルに伸びたスムーズなf特がこのE40の特徴である。プレゼンスを感じさせる中低域の残響成分を充分に聴かせるのが、このブランド共通の特徴だろう。
 DL305では、各プログラムソースを平均的にこなすが、音を美しくキレイに聴かせる特徴はE03と同じで、TSD15は全体に音が鋭角的で力強い特徴を少し抑えた誇張感の少ない音になる。試みにMC20IIを使ってみるとf特バランスが大変に優れたクッキリとコントラストのついた適度にシャープで安定した音で、これがベストだ。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 米国オーディオインターフェイス社の3Ωの低インピーダンスMC用昇圧トランスである。したがって、MC20IIとFR7fを使ったが、結果としては少しFR7fのほうがトータルバランスの優れた音であった。
 このトランスは、ゆったりとした余裕の低域から中低域をベースとした暖色系の豊かで滑らかな音が特徴である。音の表情は穏やかなタイプであるため、ロッシーニやドボルザークのようなプログラムソースをゆったり楽しむのに好適なタイプである。
 このトランスの豊かな中低域の残響成分はコンサートホールのプレゼンスを美しく再現し、音像は少し距離をおいてナチュラルに拡がる。しかし、カシオペアのようなプログラムソースは不得手なタイプである。
井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 MC型の出力電流100%利用する特殊回路設計のヘッドアンプである。
 利得切替はなくMC20IIとDL305を使ったが、低インピーダンスでは表情を抑えた緻密な音であるのに比べ、高インピーダンスでは明るく伸びやかで活気のある音と2通りに変化する。
 ロッシーニは、音場感が拡がり明るい華やかさでDL305が楽しく、MC20IIは精密で小さくまとまった格調の高さがあり対照的だ。
 このアンプの特長を聴かせるのはMC20IIの峰純子で、音色は暗いがソリッドさがあり、引締ったSPUといった音である。反応はさして速くはないが、適度にダンプされた印象はまさしくトランス的で、メモにもトランス的アンプとある。基本的なクォリティは高く個性的なアンプだ。

アキュフェーズ C-7

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井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 RET入力完全対称型プッシュプルA級DC構成のヘッドアンプ。聴感上でのf特は最新アンプにありがちなワイドレンジ志向ではなく、ナチュラルな帯域バランスが特長。MC20IIでは、整然とした凝縮した緻密な音が聴かれ真面目な表現が目立つ。ロッシーニは、少し表情に硬さがあり、ドボルザークは、整理された音が少し遠くに広がる。峰純子は重い低域と穏やかな丁寧な歌い方となり音質は少しソフトにまとまる。
 DL305にすると、音色は暖色系で柔らかくスムーズでキメ細かさが出てくる。ロッシーニは気軽に楽しめ、ドボルザークは少しスケールが小さくキレイにまとまる。キャラクターは少なく手堅く音を美しく聴かせる点が特長で、長時間聴いても疲れない音質。

Lo-D HT-840

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Lo-Dの新しいプレーヤーシステムは、現在、中級機以上では標準となりつつある水晶制御方式を導入したDD型ターンテーブルを採用したマニュアル機である。
 駆動源であるDD型モーターは、同社独自の開発であるユニトルク型で、ブラシレス、コアレス、スロットレス構造の偏平型DCサーボ方式である。この基本性能が高いモーターにPLL水晶サーボをかけ、負荷特性、回転精度を一段と高めている。発表された測定値は負荷特性が針圧120gまで0%、回転偏差0・0003%以内だ。
 トーンアームはS字型スタティックバランス型で、トーンアームに生じる100Hz付近の曲げ共振による振動エネルギーを、一般的なメインウェイト軸とパイプ間にゴムを入れて共振を40Hz近辺の低い周波数にずらす方法ではなく、メインウェイト軸内部にゴムダンパーを介して取り付けた小型ウェイトで構成するダイナミックアブソーバーで吸収し共振レベルを下げる特殊な構造を採用している。また、ヘッドシェル取付部分のコネクターは、コネクター部が二重構造で、内側締付金具が外側に向ってテーパー状となったチャッキングロック型を採用し、ガタがなく、剛性を増している。
 プレーヤーベースは天板が14mm厚の高密度BMCボード、下部は、40mm厚の高密度パーチクルソリッドボードの二重構造であり、大型インシュレーターと重量級ダストカバーで耐ハウリング性を高めてある。

CEC DD-8200

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 カセットデッキは、オリジナルのフラット型から、最近ではその製品の大半がコンポーネント型と呼ばれる、コントロール部分とカセット収納部が前面パネルにある垂直型となり、大きく姿が変化しているが、ことプレーヤーシステムでは、ディスクを水平に置く必要があり、操作系は、一部を前面に置いた例もあるが、基本はトッププレートに操作系を置くのが通常である。
 プレーヤー専門メーカーとして、もっとも長いキャリアをもつCECからの新製品は、プレーヤーシステムのすべての操作系をプレーヤーベースの前面に置く、タテ型構成のユニークなDD8200である。
 ターンテーブルは外径31cm、重量1・5kgあり、DCサーボモーター、ダイレクトドライブ方式である。トーンアームはS字型スタティックバランス型で、ラテラルバランサーとアンチスケート機構が付属し、カートリッジはV型マグネットをもつMM型で、針先は0・6ミルコニカル針付だ。
 このシステムはセミオート機で、オートリターン、オートカット動作ができるが、オート動作でアームがレストに戻ったときにアームを上昇、下降させる前面のキューイングレバーが自動的にUPの状態となり、針先を保護する機構をもつ点が目立つ。
 タテ型操作系をもつこのシステムは、プレーヤーを高い位置に置く場合の利点をもつと思うが、さらに発展してフルオート機になればよりユニークな存在となるだろう。

サンスイ SR-838, SR-636

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイからは、さきに自社開発の水晶制御フォノモーターを使ったプレーヤーシステムSR929が発売されているが、今回、これに続くシリーズ製品として、水晶制御型フォノモーター採用のシステムSR838とPLLサーボ型フォノモーター採用のSR636が発売された。
 この二機種の製品は、基本的にはフォノモーターの制御方式、ターンテーブルが異なるのみで、発表された特性上の差は少ない。モーターはDC型20極ブラシレス方式で、制御用にシャフトに取り付けたストロボスコープ上に480本のスリットを持つ円板と、発光ダイオードとフォトトランジスターを組み合わせ、回転数に比例したパルスを発生する光電型ジェネレーターが組み込まれている。SR838はこれあ水晶発振によるPLL制御方式とし、SR636はCR発振によるPLL制御方式として使っている。なお、ワウ・フラッター特性を向上するため、シャフトはセンターレス精密仕上げ、焼入れを施した特殊ステンレス鋼を、スラント軸受部は二硫化モリブデン配合の66ナイロン材を使用している。
 トーンアームはスタティックバランス型だが、軸受部分がSR929の一点支持方式ではなく、横方向のスパンを広くとった方式に変わっている。このタイプはピボット部分の遊びに対しねじれ方向の影響が少ない利点があり、アームの支点部分に重量を集中し音質を向上するために、上下方向の回転軸には85gの重量をもつ真鍮製のシリンダーが採用されている。アームベースは亜鉛ダイキャスト製でプレーヤーベースと確実に固定するために、裏側に厚さ4mm、重量250gの大型ワッシャーが、SR838では2枚、SR636では1枚使用されているのが目立つ。パイプアームは内部の空洞にテフロン系のダンプ材が採用され、ヘッドシェル取付部分のコネクターはSR929同様にテーパ材で取付けたときの機械的強度が高い。また、付属カートリッジは角型マグネットを持つMM型で、音像定位を明確にするために薄いダンパーを採用してあるとのことだ。
 プレーヤーベースは40mm厚のソリッド材使用のピアノ仕上げで、ステンレスのスプリングと緩衝ゴムを組み合わせた新開発のインシュレーターが付属し、ダストカバーは厚さ4mm、重量1・4kgのサイド・フィルムゲート式のアクリル製である。ターンテーブルは、デザインは異なるが、ともに外径318mmのダイキャスト製で、レコードとの接触面積を大きくするために内側に向かって350分の1の勾配が付いている。
 ともにプレーヤーシステム基本から忠実に製作されているため低域から中域にかけて粒立ちがクリアで緻密さがあり、とかくこのクラスのシステムでは使い難いエンパイアやピカリングの高級モデルの本来の音を素直に引き出すだけの十分のクォリティの高さがある。音の良いプレーヤーを目指した成果が聴きとれる製品である。

ダイヤトーン DP-EC2

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新しい時代のオートプレーヤーを象徴するような電子制御方式のプレーヤーを発売し、プレーヤー部門で一躍熱い視線を集めたダイヤトーンから、基本性能を同じくし、一部の機能を簡略化して、第2弾製品としてDP−EC2が発売された。
 EC1と比較すると、このタイプの特長である光線を使うレコード外形寸法の自動選択が、30cm盤と17cm盤の2種類となり、これに連動していた回転数自動選択がなくなり、マニュアル切替になっている。この他、リピートの動作状態が一部変更になっているが実質的な変化ではない。
 このEC2は、オート動作時にはスタートボタンを押して動作させるが、このボタンを押しつづければレコード外周以内はアームの移動速度が遅くなり、ボタンを放した位置で盤面に降下する。また、演奏中にストップダンを押せばアームはリターンするが、オートランプが消えるまで押しつづければアームはアップした位置で止まったままとなり、スタートボタンをワンタッチで押せば再び盤面に降下する。なお、ターンテーブル上にレコードがない場合にスタートボタンを押してもアームは最内周まで移動し降下することなくレストに復帰する動作などは、すべてEC1と同様であり、反応が速く機敏に動作をおこなう。
 他の基本的部分は、ターンテーブルゴムシートだけが新しいタイプとなっているが、それ以外の変更はない。

パイオニア XLC-1850

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 クォーツロック方式のDD型ターンテーブルが高級機で実用化されて以来、パイオニアではいち早くこのタイプのDD型モーターを採用したプレーヤーシステムを中級機の価格帯で発表し、より多くのユーザーが新しい方式の魅力を味わえるようになったが、その後もフルオートプレーヤーシステムのクォーツロック方式化をおこない、今回アームレスタイプのプレーヤーシステムにクォーツロック方式を導入した、新型XLC1850を発表した。
ターンテーブルは直径320mm、重量1・8kgのアルミダイキャスト製であり、回転数制御は水晶発振器の出力波形とモーター回転子に組み込んだ周波数発電機からの出力波形を位相比較するクォーツPLL方式で、モーターに逆方向電流を流し、停止寸前に供給電源を切る純電子式ブレーキが付属している。
 クォーツロック時には表示ランプが点灯し、ロックをOFFにすると大型の速度表示メーターの目盛が照明され、ロック表示ランプが消える。一般のストロボによる表示でない点がこのモデルの特長であり、目盛は331/3回転、45回転ともに±6%間であり、変化量は多いタイプである。
 アーム取付板にはほとんどの14インチ型アームが取付可能であり、SME3009用の加工済専用ボードとアルミプレートが付属している。プレーヤーベースは、外周部が二重構造の4・7kgの重量がある。

ラックス 5T50

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 一連のラボラトリー・リファレンス・シリーズのコンポーネントは、プリメインアンプ、セパレート型アンプなどのアンプが中心だが、周辺機器としてトーンコントロールアンプ、グラフィックイコライザー、ピークインジケーターなどがあり、ここでは、デジタルシンセサイザーFM専用チューナー5T50を取り上げることにする。
 このモデルは、FM多局化に備えて開発され、多くの新しい機能がある。
 受信周波数は、デジタル表示されるほかに従来のダイアル的感覚を残すために、FM放送帯を1MHzごとに示すLEDがついたダイアルがあり、別に1MHzの間を100kHzだとに示す10個のLED表示部分を組み合わせアナログ的な表示が可能である。同調はオートとマニュアルを選択可能で、操作はUPとDOWNの2個のボタンでおこなう。オート動作では、目的方向のボタンを押せば、次の局の電波を受けるまで探し同調し止まる。マニュアルではボタンのワンタッチで100kHzでと上下に移動し止まり、押しつづければ連続して動き、放せば止まる。このチューニングスピードは、任意に調整可能である。
 また、このモデルにはスイッチによるプリセットチューニングが7局できる。プリセットは機械式ではなく、C−MOS ICを使い、デジタルコードで記憶させる電子式で、希望局の記憶、消去が簡単であり、電源を切っても記憶させた局が消去することはない。シグナルメーターはないが、放送局の受信状態の目安を0〜5までの数字で表示するシグナル・クォリティ・インジケーターが採用してあるのも面白い。
 実際の選局はオート、マニュアルとも違和感がなく快適にチューニングでき、プリセットチューニングの記憶、消去も容易で、とくに慣れを要求しないのが好ましい。
 このチューナーの音は、T110などを含めた従来同社のチューナーよりも、クリアでスッキリとし、粒立ちがよく、滑らかさも十分にある。
井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 2機種のチューナーは、それぞれ、対応するプリメインアンプとペアとなるモデルであり、T7はFM専用機、T5はFM/AMチューナーである。
 機能面ではT7が水晶発振子を使い、常にIF周波数を10・7MHzにロックするクォーツ・ロック方式で同調ズレがなく、ワイアレスマイクのように周波数が変動しても十分にフォローする能力がある。選択度切替、エアチェックキャリブレート用の440Hz発振器などがある。T5はICを使ったサーボロック方式で、音質最良点から±50kHz以内に入るとロックインジケーターランプが点灯、音質最良点に自動的にチューニング可能だ。T7/5ともに異なっているが、常時音質最良点に同調が保たれるため、タイマーなどを使う留守録音ではわずかの同調ズレで音質を損なう心配がないのがこのタイプの利点だろう。

Speaker System (Powered type)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第34項・市販品をタイプ別に分類しながら(7) パワーアンプを内蔵したスピーカー、マルチアンプ用スピーカー」より

 前項で例にあげたメリディアンM1は、スピーカーエンクロージュアの内部に、トランジスターのパワーアンプを内蔵している。それも、低音・中音・高音とそれぞれに専用に分けたいわゆるマルチチャンネルアンプになっている。したがって、ここにプリアンプを接ぐだけで、そのまま鳴らすことができる。
 パワーアンプをスピーカーのエンクロージュアに内蔵させてしまうというのは、二つの意味がある。ひとつは、右の例のようにスピーカーとアンプを一体に設計して、音質をいっそう向上させようとする場合。もうひとつは、プロフェッショナル用のモニタースピーカーの一部にみられるように、録音スタジオのミキシングコンソールの出力をそのまま接続できる用にという、便宜上から(パワーアンプを)内蔵させるタイプ。この工社の代表例は、たとえばNHKでのモニター用として設計されたダイヤトーンのAS3002Pなどだ。
 どちらの考え方にせよ、このパワーアンプ内蔵型は、そこにプリアンプの出力を接ぐだけでよいという点で、他のスピーカーシステムとは、使い方の面で勝手が違う。少し前まではこのタイプはほとんど例外的な存在だったが、最近になってスピーカーシステムの性能が一段と向上してきたために、これ以上の音質を追求するには、いわゆるマルチアンプ方式で専用アンプを内蔵することが有利ではないかという考え方が、いわゆるコンシュマー用の製品にも少しずつ広まってゆく兆しがみえはじめている。そのひとつが、たびたび例にあげたメリディアンM1だ。
 メリディアンと同じく、マルチチャンネルアンプを内蔵した(そして音質の良い)スピーカーとして、西独K+H(クライン・ウント・フンメル)のOL10もあげておきたい。エンクロージュアの両側面に把手がついていたり、ほんらいスタジオモニターとして徹した作り方だが、このバランスのよい音は一聴の価値がある。
 パワーアンプ内蔵という形をいっそう煮つめてゆくと、オランダ・フィリップスの一連の新型のように、MFBという一種のサーボコントロールアンプで、スピーカーの動作を電子制御して、いっそうの音質の向上を計るという製品ができあがる。この一連のシリーズは、エンクロージュアが非常に小さいにもかかわらず、大型スピーカーなみの低音が再生されて驚かされる。また内蔵の電子回路を応用して、コントロールアンプからの入力が加わった瞬間に電源が入り、入力が2分以上途絶えると自動的に電源が切れるという、おもしろい機能を持たせている。これも、もともとはプロ用として開発された製品だが、価格も大きさも、一般の愛好家が使うに手頃なスピーカーだ。
 パワーアンプを内蔵はしていないが、はじめから高・低各音域を分割して2台のパワーアンプでマルチドライブすることを指定しているのが、JBLの4350Aだ。言うまでもなく名作4343のもう1ランク上に位置するスタジオモニターの最高峰だが、ウォルナット仕上げのWXAなら、家庭用としても十分に美しい。使いこなしは難しいが、うまく鳴らしこんだ音は、アキュレイトサウンドのまさにひとつの極を聴かせてくれる凄みを持っている。

Speaker System (Designed type)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第33項・市販品をタイプ別に分類しながら(6) デザインの美しさ、ユニークさを特徴とするスピーカーたち」より

 たとえばJBL4343のような、ほんらいは録音スタジオで使われることを目的として作られたスピーカーであっても、その〝WX〟モデルのように、高級材と云われるウォルナットの木目も美しい仕上げを施したものは、そのままどんな部屋に置いてもインテリアの雰囲気をこわすどころか十分に美しい。JBLのスピーカーは、これにかぎらずどれをとっても、音質ばかりでなくデザインや仕上げの美しいことで有名だ。JBLばかりではない。一流といわれる製品は、音質と共に外観もまた美しいのが通例だ。
 しかし、そういう例でなく、もっと積極的に、モダーンインテリアに、まだ逆にアンティーク調に、あるいは奇抜な形に、と、デザインにくふうを凝らしたスピーカーが、いくつかある。いくら形が美しくとも奇抜であっても、音質を犠牲にしてしまったようなものではここにとりあげる価値はない。形も仕上げも美しく、また意表をついていながら、その音質もまた、一聴に値する──。そういうスピーカーのいくつかをとりあげてみる。
          *
 JBLのパラゴン。ステレオの初期、もう20年あまり昔に作られたこの類のないユニークなスピーカーは、およそどんなインテリアの部屋に置いても、部屋ぜんたいの格調を高めるような、風格のある姿をしている。音量をどこまで絞っても、逆に部屋一杯にボリュウムを上げても、いまや数少ないオールホーン独特の、力強く緻密な音は少しのくずれもみせない。
 もしもシンプルでモダーンなデザインの部屋になら、イギリスの中型スピーカーの中から、ブースロイド・スチュアートのメリディアンM1、B&WのDM7、フェログラフS1、レクソンLB1およびSP1などを探し出すことができる。ゲイルのGS401Aは、クロームの光沢メッキに、黒いグリルクロスというコントラストの強いデザインだが、こういうスピーカーの似合う部屋があればおもしろいだろう。そしてこれらのイギリスのスピーカーは、それぞれに、繊細で雰囲気を豊かに再現するとても良い音質だ。なかでもメリディアンは、26項で説明したモニター用として使えるほどの、正確な音の再生できる素晴らしいスピーカーだ。音質の犠牲なしにデザインを美しくリファインした好例といえる。
 少し変わったところでは、ジョーダン・ワッツ(英)のフラゴンとキュービック。フラゴンは陶製の壺。キュービックはサイコロ型のエンクロージュアの横腹に陶製のタイルを貼りつけたもの。......というとまるでゲテものすれすれみたいだが、実物は意外に渋い仕上りで、使いようになってはとてもおもしろい。
 もうひとつ、これはいわゆるアンティーク調で、セレッションのデッドハム。虫喰いのあとまで作った手作りのエンクロージュアがユニークだこれほど凝ってはいないが、アメリカ・マランツのSL1や、前出(23項)のアルテックのマグニフィセントIIなども、どちらかといえばクラシック調だ。

テクニクス ST-8075 (75T)

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このSU8075と組み合わせるチューナーは、チューナーの波形伝送にポイントをおいて開発されている。
 フロントエンドは、4連バリコンと、高周波増幅段にデュアルゲートジャンクション型FETを使い、構成部品はプリント基板を使用せず、温度などの影響を避けるために空中配線化している。中間周波増幅段は、フィルターに4共振素子型セラミックフィルター3個と増幅素子としてIC2個を使用し、リミッター特性が優れた差動アンプを5段使用し、検波にはクワドラチュア検波を使っている。なお、MPXや波PLL方式で、ローパスフィルターには改良したチェビシェフ型を使っている。
 シグナルメーターは、電界強度比例型の目盛りをもち強信号でも飽和しない。また、エアチェック用の、規正レベル信号として440Hzの発振器を内蔵し、FM50%変調に相当するレベルを示すようになっている。

テクニクス SU-8075 (75A)

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ハイレベル入力以後をDCアンプ化したプリメインアンプとして登場し、注目を集めたSU8080に続いて、今回、同一構想にもとづいて開発されたジュニアタイプのモデル、SU8075が発表された。
 パワーアンプのDCアンプ化は、最近のアンプの目立った動向であるが、テクニクスでは早くから、複雑な音楽波形を完全に増幅するためにはDCアンプが非常に優れていることに着目し、その開発に成功するとともに、さらに一歩進んで、トーンコントロール回路を使用しないときには、パワーアンプのゲインを増してチューナーやAUX入力をダイレクトにDCアンプ化したパワーアンプに導く方法により、ハイゲイン入力以後をDCアンプとしている。
 また、従来のアンプでの、ハイレベル入力からのSN比とフォノ入力からのSN比を同一にする目的で、SU8080では、88dBのSN比を得ることに成功しているが、今回もM47Lという超ローノイズトランジスターをこのモデル用に開発し、イコライザー初段に採用し、やはり88dBのSN比を得ている。このイコライザー段には、NFループを利用して超低域をカットするサブソニックフィルターがある。
 トーンコントロール回路は、ボリュウム内部にスイッチを機構をもち、機械的中点、つまりフラットの位置でコンデンサーと抵抗などのトーンコントロール素子を完全に切り離し、周波数特性をフラットにできる。
 パワーアンプ部は、スピーカー端子にDC電圧が発生するDCドリフトを抑えるため初段にワンパッケージのデュアルトランジスター差動増幅をもつDC構成で、62W×2の出力があり、万一ハイレベル入力に接続したチューナーなどから直流分が洩れた場合にスピーカーを保護する目的で、カットオフ2Hzの直流カットスイッチがフロントパネルにある。なお、電源部は左右チャンネル共通で、電界コンデンサーは10、000μF×2である。

ヤマハ CA-X11

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのプリメインアンプは、完全に新モデルに変わり、価格帯の幅が従来より一段と広くなったが、新モデルのトップをきって発表されたCA−X1が、内容を新しくし、グレイドアップして、CA−X11に発展し発売されることになった。
 改良されたポイントは、特性的にはSN比で10dB、チャンネルセパレーションで5dB、パワーが12%といすれも向上し、機能的にはイコライザーアンプの出力を直接パワーアンプに送り込むメインダイレクトスイッチ、サブソニックフィルターをイコライザーに組み込んだためのハイフィルターの新設、ターンオーバー2段切替の高音、低音トーンコントロール、レンジ切替可能となったパワーメーターの大型化などがある。まて、上級機種と同様にボリュウムとバランスコントロールが同軸型となった点も見逃せない。結果からみれば同社でもいているようにこのCA−X11は、CA−R1化されたCA−X1なのである。
 回路面では座部ソニックフィルター内蔵の3石構成のイコライザーアンプ、初段が差動増幅の3石構成のCR−NF方式のヤマハ型トーンコントロールアンプ、初段にデュアルトランジスター差動増幅を使った純コンプリメンタリーOCL方式のパワーアンプが、そのラインアップである。
 本機の音は、X1にくらべ大幅にクォリティが上がった緻密さと滑らかさが感じられ、より伸びやかなレスポンスをもつ。

トリオ KA-7300D

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオでは同社で確立したというダイナミック・クロストーク理論に基づいて、ステレオアンプの左右チャンネルの電源部を独立し、さらにDCアンプ化するなど現在のオーディオアンプの動向をリードしてきたが、今回はさらに音質を改善するために、スピーカーとパワーアンプ間の問題に焦点を絞ったダイナミック・ダンピングファクター理論に基づいて設計された、新しいプリメインアンプKA7300Dを発売することになった。
 ダイナミック・ダンピングファクター理論とは、スピーカーからの逆起電力がパワーアンプに及ぼす影響をテーマとしたもので、簡単に考えれば、超低域でのスピーカーに対する制動力で従来のACアンプにくらべDCアンプが優れていることの証明であるといったらよいであろう。
 回路面は、初段にカレントミラー負荷をもつFET差動アンプ、出力段にSEPPピュアコンプリメンタリー回路を使い入力コンデンサーを使わないイコライザー段、ICL化したフラットアンプと独立した低音、高音トーンコントロールアンプ、DC構成の75W+75Wの出力をもつ同じくICL化した差動増幅3段のピュアコンプリメンタリーSEPP・OCL方式のパワーアンプが組み合わされ、電源部は左右チャンネルが完全に独立した電源トランスと各チャンネル10000μF×2のコンデンサー、定電圧化したプリアンプ電源をもつ。

ソニー TA-N7B

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 TA−E7BとペアとなるDC構成の100W+100Wの出力をもつパワーアンプである。このモデルは、パワーアンプの機能を具現化した独得なスタイリングが特長であり、従来のソニー製品にないフレッシュな魅力がある。とくに、フロントパネル下側の空気取入れ口は、電力を扱うパワーアンプに応わしいデザインと思われる。
 回路面での特長は初段がデュアルFETを使ったカスコード接続の差動アンプで、カレントミラー回路によって出力を取り出し、2段目は定電流負荷のカスコードアンプによる2段構成である。このカスコード接続は、出力側からの帰還容量により生じるミラー効果がなく高域での伝送能力の向上と直線精を改善している。パワー段は、パルス応答性が優れたV−FETと高周波用トランジスターをカスコード接続し3組使うトリプル・プッシュプルのピュアコンプリメンタリーSEPP・OCL回路である。
 パワーアンプにとってはもっともベーシックな部分であり、性能に影響を与える電源部は、左右チャンネル感の干渉を避けるために左右チャンネル独立型であり、同じチャンネル内でも電圧増幅段用と電力増幅段用を独立させた4電源トランス方式で、電圧増幅段用にはFETを使った定電流バイアス供給式の定電圧回路により安定化が図られている。電力増幅段用電源トランスは新開発のトロイダル型、電源のコンデンサーは22、000μF×4である。

ソニー TA-E7B

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のソニーのプリメインアンプ、FMチューナー、カセットデッキなど一連のコンポーネントは新しいデザインに装いを変えているが、今回発売されたセパレート型アンプも、当然のことながらシリーズ製品らしい新しいデザインとなっている。
 機能目では、現在のコントロールアンプと呼ぶに応わしい標準的な装備だが、伝統的なレバーとロータリースイッチを組み合わせたクイックアクセス方式のファンクションセレクターをはじめ、32ステップのアッテネーター型ボリュウムコントロール、2dBステップでターンオーバー周波数が各2段に切替可能な高音・低音コントロールの他に、VU、ピーク、サンプリングホールドの3通りに切替可能なメーターがあり、これは感度調整もできる。また、フロントパネルの優先割り込み式のテープ2用ジャックはテープファンには好まれるだろう。
 回路面では、単体のヘッドアンプHA55と同様な構成をもつLEC低雑音トランジスター使用のMC型カートリッジ用ヘッドアンプ、DC帰還回路付NF型イコライザー、初段にFETを使ったDC構成のユニットアンプなどが採用され、フォノ入力は切替はリレーを使ったリモートコントロールである。また、電源部は、ヘッドアンプ部、主信号系およびヘッドフォンアンプ部、メーカー回路用の4系統を分離し、主信号系とヘッドアンプ用にはFET定電流電源を使用した定電圧回路を採用している。

ヤマハ NS-L225

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この新製品は、型番にLをもつことから、さきに発売されたNS−L325のジュニアタイプと思われるが、システムの性格からは、むしろ普及機の価格帯で注目を集めたNS451の上級機として開発されたと考えるほうが妥当であろう。
 エンクロージュアは、合成樹脂を成形したパイプを使ったバスレフ型で、内容積は46・5ℓ、表面は落ちついたシャイニーオーク仕上げである。低音は25cm口径で、コーン紙にはNS451系の軽量ストレートコーンを使い、磁気回路にはアルニコ磁石と低歪化のために銅キャップ付のポールを組み合わせ11、000ガウスの磁束密度を得ている。高音は口径5cmのコーン型のセンターキャップに23mm口径のドーム型を複合させた構造をもち、コーン型とドーム型の利点を両立しているため、とくにラジアル型と呼ぶユニットである。このユニットは、ボイスコイルに、耐入力の向上と広帯域化の目的で銅クラッドアルミリボン線を、磁気回路にはアルニコ磁石を使い、14、000ガウスの磁束密度を得ている。
 このシステムは、2ウェイ方式にありがちな中域の薄さがなく、ゆにっとのつながりは十分にスムーズである。低域はやや暖色系でよく弾み、量感も豊かであり、中域以上はNS451とくらべると、むしろおだやかで粒立ちが細かく滑らかである。最近のように華やかな音をもつ製品が多いなかでは、このナチュラルさが特長である。

ソニー SS-G5

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昨年末、10万円をこす価格ランクにフロアー型スピーカーシステムとして発売されたソニーのSS−G7は、物量を投じたユニット、エンクロージュアを採用した、本格派のスピーカーシステムとして注目されているが、今回、Gシリーズの第二弾として、SS−G5とSS−G3が加わり、シリーズ製品らしいラインナップとなった。
 SS−G5は、シリーズ製品だけに、SS−G7と同様な構想のシステムだが、もっとも大きく異なる点は、エンクロージュアがブックシェルフ型となっていることで、オプションの物凄く重いスタンド(WS−G5)を使えば、フロアー型としても使えるようになっていることだ。
 低音は30cm口径の高剛性リブコルゲーション付のカーボンコーン採用で、磁気回路はアルニコ磁石とT型ポールに加えて特殊鋼材を用い、第3次高調波歪みの発生を抑えている。中音はドーム型とコーン型の利点を兼ね備えた8cm口径のバランスドライブ型ユニットで、磁気回路には電流歪を軽減するT型ポールを使ってある。
 また、高音は厚さ20ミクロンのチタン箔を一体成型した口径25mmのドーム型ユニットである。各ユニットは音像定位の明確化のため、等価的に各ユニットの音源一を一致させたブラムライン方式に配置され、バッフルボード表面には格子状に凹凸溝を彫ったアコースティカル・グルーブ・ボードが採用され、指向特性の改善が図られている。

ダイヤトーン DIATONE F1

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ダイヤトーンの新スピーカーシステムは、意表をつくような独得のデザインと仕上げをしたエンクロージュアを採用した、まったくの新ラインの新製品である。
 エンクロージュアは、バスレフ型だが、ウーファーとトゥイーターの中間にバスレフのダクトを突出させてユニット間の干渉による混変調歪を軽減させる方式が採用されている。この方式を具体化する表現方法として、積極的にデザインのなかにこの方式の特長を生かす方法がとられ、見方によれば唐突とも受け取れるが、目的はさきに採用された独得の磁気回路構造を採用してユニットの歪を軽減した考え方と同じであり、トランスデューサーとしての物理特性を改善する目的と考えられる。
 エンクロージュアは、内部補強桟を不均一に配置した分散共振型で特定帯域でのいわゆる箱鳴きを抑えている。独得なダクト部分は中音ホーンとも受け取られやすいエクスポーネンシャル状のテーパー付である。
 システムとして高能率化が大きなポイントとなっていると発表されているが、実際に聴感上の能率が高く、キビキビして応答性が速い音を聴かせる。低域は伸びやかでよく弾み、充分の量感があり、中域から高域は、硬質さがなく透明感があり、ナチュラルである。しなやかで活き活きと屈託なく音を出してくれるあたりは、従来にない新しい時代の音であり、ダイヤトーンの試みは十分な成功を収めているようだ。
菅野沖彦

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・マッキントッシュ」(1976年発行)
「マッキントッシュ論」より

「マッキントッシュ論」という、本来きわめてかたい文章を引き受けたわけだが、私はどうもこれから、〝友人ガウを語る〟というにふさわしい文を書いてしまうような気がする。というのも、私がこれほどまで深くマッキントッシュを知り、また知ろうという気持になったのは、ゴードン・J・ガウという一人の男を知ったからであり、その男の魅力にひかれたからでもあるからなのだ。
 彼は現に、マッキントッシュ社の頭脳でもあり行動そのものでもある。すなわち、ガウを語ることは、そのままマッキントッシュ社を語ることであると、私には思えてならないのである。

私が見たマッキントッシュ・ラボラトリー
 私がマッキントッシュ社をはじめておとずれたのは、1969年早々だった。ちょうど、同社のトランジスター・アンプが評価を得たころだったと思う。私はその製品の美しい魅力にひかれ、こういうものを作る会社は、一体どんな会社だろう、という期待に満ちて、マッキントッシュ社をたずねる気になったわけだ。
 マッキントッシュ社は、ニューヨークのマンハッタンから、当時はプロベラ機で40分ほど、やや西に飛び、有名なナイアガラ・フォールスとマンハッタンの中間ぐらいに位置する、ビンガムトンという小さな町にあった。
 小高い山の頂上を削って出来た飛行場からは、美しいビンガムトンの町全体が、見渡せるほどの感じだった。
 その空港で、一人の小柄な紳士が私を迎えてくれた。小柄とはいっても大変に精桿な印象で、しかも、体に似合わない非常に大きな声で、明るくあいさつをしてくれた。「おれはゴードン・ガウという者だ」
 もちろん私は、彼がどんな人物なのか全く知らなかった。そればかりか、彼がさしだした名刺を見ても、この人がマッキントッシュの中心人物であることを、知ることはできなかった。なぜなら、彼の名刺にはなにも書いてない。そこにはただ、ゴードン・J・ガウ、マッキントッシュ・ラボラトリー・インコーポレイテッドとだけしか書かれていない。これは後で知ったことなのだが、マッキントッシュ社の人々がもつ名刺には、どれも肩書きがないのだ。いや、肩書きがないというよりも、彼等は、肩書きとして書くべき地位をもっていないというべきだろう。ともに仕事をする人間関係に対する、マッキントッシュ社のユニークな考え方が、ここにあるのだが、その話はあとにゆずろう。
 そして、これも次第にわかってきたことなのだが、空港で私を迎えてくれたガウ氏が、これからお話をするマッキントッシュの中心人物で、マッキントッシュ製品のすべてを手がけ、創業以来、製品づくりから製品の売り方まで、すべてのことをやってきた人物だったわけである。
 そのときの私の印象では、彼は、それほどの年配でもなく、いわゆる大ボスという風格をもった人ではなかった。ただ、精桿な面構えで、現役バリバリの技術部長というふうな感じを私は受けた。
 彼の運転するクライスラー・インペリアルで、空港のある山頂から町へおりたわけだが、それは、緑の多い、すばらしい景色だ。彼はそのときこんなことをいった。「これはリンゴの木だ。これはマッキントッシュ・アップルというリンゴの木なのだ」と。もっとも、マッキントッシュ社と関係があるのではなく、偶然のことであるらしい。
 やがて、木の間がくれにサスケハナ川の両側に拡がる、ビンガムトンの小ぢんまりとした愛らしい町並みが見えはじめた。
 実のところ当時の私は、アメリカのアンプ工場で、文字どおりのクラフツマンシップを目にするとは、考えてもいなかった。アメリカに対する漠然たる認識は、マスプロダクションにほかならなかったからである。しかし、ビンガムトンのその工場では、まさにクラフツマンシップが展開されていたのである。どこを見まわしても、ベルトコンベアーらしきものは見当らない。当然そこでは、一人のワーカーが非常に多くの作業を受け持っている。一台のアンプは、せいぜい数ブロックに分けられる程度であり、多少オーバーな言い方をすれば、まさに、一人で作っているのだ。
 さらに、もう一つ驚かされたのは、日本のメーカーなら当然、専門の下請工場へ出すべき部分まで、すべて自社生産である。シャーシの板金、メッキ、塗装、そしてあのグラスパネルのシルクスクリーン・プロセスまで。もちろん、マッキントッシュ・アンプの心臓部であるユニティーカップルト・トランスフォーマーも、自社で巻いている。大変に年配の人が、せいぜい三人ぐらいで......。
 こういう一貫生産という姿、これは日本人の私達でさえ、すでに忘れかけていたものだった。さらにもう一つ、私が今でもはっきりと印象に残っている光景があった。それは、工程から工程へ移るとき──マッキントッシュの製品はご存知のように、ガラスパネルもメッキ部分も、すべてピカピカであり、その美しいフィニッシュを得意としている──必ずクロスですべての部分をピカピカに磨きあげて、次の人に渡す。当然、次の人はそれを受け取り、自分の手あかをつけるわけだが、自分の仕事が終った後、また、ピカピカにして次の人に渡す。
 私の「なぜだ」という質問に、ガウ氏は笑いながらこう答えた。「別にわれわれが強いてこうしろと言っているのではない。自分達が作っているものを大切にする気持が、自然にあらわれているんだ。ここで彼等がふくたびに、きっとマッキントッシュ・スピリットが入ってゆくんだろうな」と半分冗談まぎれに......。
 しかし、私にとってその光景は大変に印象的であり、なるほど、文字どおり手塩にかけて作ってゆく商品は、どこか違うはずだ、という感じをつくづく持ったのを覚えている。
 そして、その後、何回マッキントッシュの工場をたずねても、ごく最近では今年の6月におとずれた時でさえ、その物づくりの徴密さという点は、全く変っていなかったのである。
 マッキントッシュ社のクラフツマンシップが、いかに根強いものであるかを証明する一つの材料として、ガウ氏が話してくれた次のようなことが思い当る。
 それは、マッキントッシュ社の人間関係についてだが。
 アメりカという国はご承知のように、雇用関係がきわめてドライな国であり、昨日までGMの社長が、今日からフォードの社長になるといったことも、けっして珍しくない。こうした風土に生まれたマッキントッシュ社は誕生時10人のメンバーでスタートしている。
 誕生から30年近くを経た現在では、600人とかいう数になっているわけだが、スタート時の10人のうち8人が、今でも同社で働いているのである。これは恐らく、雇用関係が義理人情でしばられやすい日本でさえも、ちよっと珍しいことではないだろうか。
 何かでしっかりと結びついているに違いないこの人間関係が、私にはマッキントッシュ社のクラフツマンシップと、無関係に考えることのできない、重要な事実のように思えるのである。
 そしてさらに、前記した、名刺に肩書きがないということも、緊密な人間関係と、緻密なクラフツマンシップに深いかかわりを持つのではないだろうか。
 人間に肩書きをつけないという方針は、まさにガウ氏の考え方であり、彼はそのことについて次のような話をしてくれた。
「人間にタイトルをつけるということは、大変に人間を侮辱することなのだ。一体、誰が誰にタイトルを与える権利があるのだ。人間はタイトルによって働くものだと、今の会社組織は思っているようだが、とんでもない。タイトルを与えれば、タイトル以外のことはしなくなる。部長とか課長とかいうタイトルは、与えるものではなく、自分がつくるものである。リーダーは上の人が任命するのではなく、下の人が自然につくりだすものではないか。フォロワー、つまり、従う人間があってはじめて真のリーダーたり得るはずなのだ」
 この考え方を、マッキントッシュ社では現に実行している。だから、社長であるはずのマッキントッシュ氏をはじめ、ガウ氏、さらに現場の一技術者に至るまで、名刺だけに肩書きがないのではなく、定められた地位や仕事のわくにしばられていない。全く、彼等からもらった名刺からは、誰が何をしているのかわからないのである。
 人間同志の緊密なつながりを最も尊ぶこの考え方は、マッキントッシュの社内の人間関係だけにはとどまっていないようだ。これは、方針といったものではなく、マッキントッシュ社の体質なのである。 その具体的なあらわれを、私はいくつか知ることが出来たし、私自身も経験した。
 これは、前記したマッキントッシュ社がすべてを一貫生産する、ということにもかかわる話なのだが。マッキントッシュ社の中には印刷工場まであり、カタログや宣伝物まで、すべて自分達の手でつくっている。もちろんこれには、彼等なりの経済的な理由もあるのだが、それよりも、この機構が、ユーザー一人一人を直接マッキントッシュ社と緊密に結びつける上で、重要な働きをしている。
 というのも、マッキントッシュ社は、いわゆる雑誌広告とか、どこかへ広告を出すとかいったアドバタイジング活動は一切やらない。それに代えて、あくまでも厳選した販売店ごとの新製品の紹介も含めた販売店ニュース的なものや、自社製品のダイレクトメールなどを、この印刷工場で印刷し、販売店にかわって、全部ZIPコードをつけお客のところヘダイレクトで送る。ユーザーに直接コミュニケーションするための機構として、この印刷工場はフルに活動しているわけである。
 もちろん、ここでは自社製品の説明書やカタログなども印刷しているわけだが、そうしたものも、外部に依頼すると必ず種々のトラブルが生じ、結果的にサービスの低下につながる、という。そして「この方式が、ユーザーからも販売店からも、最も信頼され、かつ効果的な方式である」とガウ氏は言った。
 マッキントッシュ社が、自分の責任、自分のオリジナリティをきわめて大切に、しかも、緊密な人間関係を重視していることの、一つのあらわれではないだろうか。
 さらに、ユーザー一人一人とマッキントッシュ社を強く結びつけるものとして、クリニックカーによるマッキントッシュ・クリニックのシステムがある。
 マッキントッシュ社では、今、申し上げたようなシステムによって、どの地区にどれだけのユーザーがいるということを、はっきり掴んでいるわけである。したがって、それに応じ、クリニックカーが定期的に順回してくる。もちろんそこでは、マッキントッシュのすべての製品を、また、他社製品でさえ、フリーで測定し自社製品は無料で修理するという、きめの細かい活動が行なわれるのである。
 このことは、今申し上げている、ユーザーと直接、緊密なつながりを持つという事のほかに、もう一つ、マッキントッシュにとって重要な意味を持つ。それは、マッキントッシュの製品はすべて開発段階で、将来ともにフリー・オブ・チャージでサービス出来るという、条件をそなえていなくてはならないことになるわけである。製品開発の基本的な姿勢をここに置く、ということが条件づけられるわけなのだ。現にそれは守られている。
 マッキントッシュ社がこのように、社内の人間関係を大切に考え、かつユーザーとの緊密なつながりなど、あくまでも心のかよったあたたかさですべてを通している根底として、私は、マッキントッシュ氏とガウ氏、この二人の人柄と友情を無視することは出来ないと思う。
 とにかく二人とも、本当にいい人なのだ。だから、先ほども述べたように、この緊密な人間関係は、けっして方針ではなく体質に違いないと思うのである。ことに、この二人の仲の良さ、友情の深さは本当に驚くばかりだ。二人がマッキントッシュ社をはじめて、すでに30年を経過するわけだが、お互いに、本当に信頼し合っていなくては、こうした関係がこれほどの期間つづくものではない。
 会ってみると、二人とも実に頭のきれる人で、しかも人間的な魅力があって、明るく豪快。そして、そのホスピタリティのすばらしさには、ただ、驚くばかりである。とにかく彼等は、皆で飯を食い、飲むということが大好きである。それも、こちらがとまどうばかりに、実に綿密な計画と準備万端で客を迎える。私はその後、しばらくは毎年行ったのだが、こんなにしてもらっていいのだろうかと思ってしまうほどだった。ある時は私達のテーブルに、アメリカと日本の小さな国旗をかざり、ある時は、日本からのお客様だからといって、どこで探したのか、日本の菊の花をいっぱいにかざる。滞在中は二度と同じ所で食事をさせない。ある時など、ニューヨークへの定期便が時間的に都合悪くなると、「われわれの方でチャーターしてあげる」といって、チャーター機を用意してニューヨークまで送ってくれたりもする。
 そう、その時の話がいかにもガウ氏の人柄をしのばせるので紹介しよう。
 空港まで送ってくれたガウ氏は、そこで自分のしていた「マッキントッシュ」のネクタイピンをはずし、これをあげると言って私のネクタイにさした。しかし、私は以前にもらったことがあったものなので、機内に入ってから同行のN君に、「君にやるよ」と言ってネクタイにつけさせたわけだ。やがてニューヨークに着いた私達の前に、ショファー・スタイルの一人の男があらわれ、N君にこう問いかけたのである「あなたはミスター・スガノであるか」と。ネクタイピンは目印だったのだ。
 迎えのリムジンでホテルまで送られながら、私は何ともいえないあたたかいものを感じた。おそらくガウ氏は、私達を送り出すとすぐに、ニューヨークに電話をして迎えの手配をしたのだろう。そして今頃、空港の迎えに驚いている私を想像しながら、楽しんでいるに違いない。彼はそういう男なのだ。
 ガウ氏はよくこう言う。「われわれは高い広告費を払って広告はしない。その費用があったらそれは研究開発に回す。また、こうして話しながら食事をしたり飲んだりする方が、はるかにマッキントッシュを理解して考えられるではないか。一人一人のユーザーにまでそれは出来ないが、考え方は同じだよ」
 でも、この言葉は半分うそであろう。彼のホスピタリティは営業的政策以前のものである。それは彼の体質である。彼は客をもてなす事を、彼自身、真に楽しんでいるのである。彼はそういう男である。だから、そこで本当に心が通じ合うのではないだろうか。

マッキントッシュ・ラボラトリーの誕生
 マッキントッシュ社は、正式には「マッキントッシュ・ラボラトリー・インコーポレイテッド」という。オーナーのフランク・H・マッキントッシュ氏は、以前、ワシントンで放送機器関係のコンサルタント業とともに、FM放送のサブキャリアを使った、バックグラウンド・ミュージックの仕事をしていた。ガウ氏は、そのときエンジニアとしてマッキントッシュ氏に雇われたのである。
 彼に与えられた仕事は、BGMの音質を改良することであった。彼はそこで、こつこつとアンプを設計したり、手づくりで製造していたという。
 彼が、より良い音のアンプを作るために、一番気になったことは、プッシュプル回路のノッチングひずみであった。それまでの標準的なプッシュプル回路では、どうしてもBクラスのノッチングひずみが出てくる。しかし、Aクラスではあまりにも効率が悪すぎてコマーシャルベースに乗りにくい。Bクラスのエフィシェンシーを持ち、かつ、何とかノッチングひずみをへらす方法を考えたいと、研究を重ねたわけである。
 このノッチングひずみについては、1936年にペン・タン・サーという人が、すでに問題を提起していたが、ガウ氏が非常に印象を受けて、自分の研究の刺激になったのは、フレッド・ターマンというオハイオ州立大学の教授が発表した論文であるとの事であった。彼がまず取り組んだ回路は、シングルエンディット・プッシュプル、すなわちSEPP回路によるひずみの低減であった。その結果ぶち当った問題が、今度はアウトプット・トランスフォーマーということになったわけである。それまでのトランスでは、どうしてもある程度以上にひずみを減らすことは出来なかったわけだ。
 とにかく彼は、入出力のリニアリティを上げるために、コア材と巻き線の両面で非常に苦労をした。とくにコア材に関しては、フラックス・デンシティとコイルの磁力がリニア関係をもつものが、全くなかったという。彼はいろいろなコア材の研究をした結果、グレイン・オリエンテッド・シリコン・スチールという鋼材が、きわめて良好な結果をもたらすことを発見した。これを具体的に採用したのが、ウエスティングハウスの開発に成るハイパーシル・コアというものであった。
 一方、ワインディングすなわち巻き線に対しても、彼は多くの研究を重ねている。その結果得たものが、現在のバイファイラー・バランスド・シンメトリックという、つまり、1次線と2次線をパラレルにして同時に巻いてゆく方法なのだが、これに至るまでに、実にあらゆる方法を実験したそうである。 たとえばその一つは、実に58ものタップが出るコイルであった。普通のトランスでは五つか六つのタップであるが、それが58もあったわけだ。彼は苦心して作ったハイパーシル・コアに、58ものタップをもつコイルを巻いた試作品を作り、マッキントッシュ氏に見せた。その時マッキントッシュ氏は「これは大変にすばらしい、しかし、一体いくらにつくのだ!」とさけんだという。
 ガウ氏はその時の事を私にこう話してくれた。「はっきり覚えちゃいないけど、とにかくとても商品になるような値段ではなかったよ」と。しかし、この回路を元に、その後二人でもっと実用性のある方向にアレンジを加え、そして出来上ったのが、1946年に出願したマッキントッシュ・サーキットなのであった。そして1949年に、この回路はパテントを得ている。
 マッキントッシュ社が会社として設立されたのは、前記した特許出願の年、1946年、場所はまだビンガムトンではなくワシントンDCであった。もちろん当時は、まだ、それまでのプロフェッショナル・ユースのアンプを一点づくりで納めていた、アメリカ流に言えばガレージ・メーカーである。その後、パテントを得た1949年に現在のビンガムトンに本拠を構え、アンプメーカーらしいアンプメーカーとしてスタートする。この時、前に申し上げた10人の社員になったわけである。
 その段階で、マッキントッシュのオリジナルサーキットが決まり、その後、チューブ・アンプリファイアーからトランジスター・アンプリファイアーになっても、この基本回路はずっと踏襲されてきている。
 現在のマッキントッシュ社は、社員が約600名。本社工場をはじめ、ビンガムトン内に七つのプラントを持っている。この七つのプラントで、アンプ、チューナー、スピーカーをはじめ、前記したようなシャーシ類の製造から例のガラスパネル、そして各種の印刷物まで、すべてを作っている。そして、会社の中心人物は、マッキントッシュ氏、ガウ氏のほかに、技術関係をコーダーマン氏、総務的な問題をペンショー氏、営業的な面をキャロル氏が担当しているらしい。らしいと言うのは、たびたび申し上げるように、彼等の名刺には何も肩書きが書かれていないからである。

マッキントッシュのアンプ・デザイン
 私とガウ氏の交友もすでに7年になり、その間、何度も顔を合わせて、いろいろな話をしているわけだが、マッキントッシュの製品に関して、私が以前から興味を持ちながら、しかもなぜか、一度もあらたまって質問したことのない部分があった。それはマッキントッシュ製品のデザインについてである。
 ご存知のようにマッキントッシュ製品は大変にすばらしいデザインを持ち、高級品にふさわしいオリジナリティと美しいフィニッシュを誇っている。
 マッキントッシュ社のデザイン部門をガウ氏がプロデュースしていることは、以前から私も知っていた。しかし、デザインに対するポリシーなど、その考え方については、これまで、とくに質問したことがなかったわけだ。マッキントッシュ社では、すべてを自社生産しているように、そのデザインもいわゆるデザイン事務所に外注したりはしていない。社内にデザイン・セクションがあり、彼の意見によって若いデザイナー連が仕事をしている。
 ガウ氏は驚くほどいろいろな事をやってきた人なのだ。アフリカにいたこともあるらしいし、サンフランシスコの大学で教鞭をとっていたり、それからアナウンサーをしていたこともあるという。そんな彼だから、恐らくいつのまにか、デザインについても意見を持つようになったのだろう。これは私の想像なのだが、先日ステレオサウンドで見たC−8のパネルに書いてある「BASS」とか「TREBLE」とかいったフリーハンドの文字が、どう見ても彼の筆跡に似ている。恐らくあれは、ガウ氏の字だろう。
 そう言えば、彼は以前、マッキントッシュの一連のパワーアンプにほどこされているシャーシのメッキについて、こんなことを言ったことがある。「あれは要するに、おれのアマチュアイズムなんだ。おれは自分で物を作ったら、それがバラックみたいなかっこうであることがいやなんだ。別にデザインというほどのものではないよ」とその時点では謙遜していた。しかし、「ガラスパネルを本格的に使うようになってからのものは、デザインらしいデザインと言えるかな」とも言っていたわけだ。そこで今回、この一連のガラスパネルによるアンプデザインについて、そのポリシーなどをたずねてみた。しばらく、ガウ氏の話に耳をかたむけてもらおう。
 おれはデザインについてこう思うんだ。デザインは思いつきや感覚だけで出来るものではないと。最も大切なのはリアリティだよ。君がおれのアンプをきれいだと言ってくれるのは大変うれしい。もちろん、きれいじゃなくては困るんだけど、一番必要なことは、絶対に必然性だ。機械としてのね。
 そこで、アンプの場合には何が最も必要かという事になるのだが、アンプは音楽を聴くためのものだ。音楽を聴く場合には、音楽を聴く人のエモーショナル・レスポンス・フォー・ミュージック──音楽に対する情緒的反応──これが生命だと思う。だからアンプは、エモーショナル・レスポンス・フォー・ミュージックというものを持つべきで、これを大切にしなくてはいけない。そのために何が最もふさわしいかなのだが、おれはそれに対し、イルミネーションが最もふさわしいものだと考えたわけだ。
 次に、それならイルミネーションの色はどうすべきか、という問題になる。
 そんな事を考えながら、ある時、飛行機に乗っていて、それが滑走路へおりて行く時に、おれはタクシーウェイのイルミネーションを見た。これだ、これは絶対にすばらしいと思った。しかも、これはだてや酔狂で、ネオンサインのつもりで色をつけているのではないはずだ。そう思うだろう? 相当リサーチされた結果に違いないんだよ。
 実の所、イルミネーションでいこうと決めた時、その色やデザインについて、おれはミシガン大学の研究室に協力をあおいでいたんだ。(ミシガン大学はデトロイトにある関係もあって、すぐれた自動車デザイン部門を持っている)おれは何をやるにも、まず基本的なスタディからはじめないと気がすまない性格だからね......。
 ガウ氏は、この空港で得たヒントを研究室に持ち帰り、徹底的なリサーチを行った。その結果決定されたのが、マッキントッシュのイルミネーションに使われている、ブルーでありグリーンであり、レッドなのである。
 彼の説明によると、ブルーという色は、人間に、少ない光量で視覚的に正確な認識を与えるものとして最も適している。光量が一番少なくていいわけである。要するに、イルミネーションで正確な認識を与えるためには、光量が多ければいい。しかし、それでは結果的にまぶしく、疲れてしまう。最低の光量で、最も正確に認識しうるものが、イルミネーションの基本のはずである。「現に、飛行場のイルミネーションも、この実験から生まれたものだったんだよ」と彼は言う。
 しかし、心理的に、このブルーという色は冷たい感じを与える。「視野の中に入ってきたブルーから冷たい感覚を得ないためには、それにグリーンとレッドを組み合わせること。こういうデータをミシガン大学の研究室で得たんだ」
 たとえばメーターは、最低の光量で見えるべきだ。見てまぶしいようなメーターでは困る。最低の光量で正確に見える色はブルーである。だが、これだけでは冷たい。そのためにグリーンを持ちレッドを持つ。「これが、あのイルミネーションの基本的な考え方なんだ」
 次に、なぜガラスを使ったかなのだが、これについてガウ氏は、「それは単純だよ」と言う。つまり、イルミネーションというアイデアが浮かべば透明なものを使わなくてはならない。考えられるのはアクリルなどのプラスチック類とガラスである。「三つの点でガラスがまさっている。第一に傷に強い。第二に最も純粋な透明度が得られる。第三にフィーリング・オブ・アキュラシー、つまり緻密な精度感を持つ。せっかくいいメカニズムを作っても、そのフィニッシュにアキュラシーなフィーリングがなくては......。それは中味を象徴することになるのだから」
 だが、材質をガラスに決定した事によってイルミネーションのプリントには大変な苦労をしたようである。ピンホールがちょっとでも出来ると、相手が光だからパッと出てしまう。しかもプリントの精度は、1万分の1インチ以上でなくてはフィーリング・オブ・アキュラシーが出ない、と彼は言う。
「とにかく、200種類のインクを分析して実験した。その結果、出来るようにはなったんだが、プリント時の温度は絶対に70度プラスマイナス5度。そして湿度は15%プラスマイナス5%。これを管理しなければならない。実際にこれは、途中で何回やめようと思ったかわからない。でも、思いついたことをやりとげるのが自分達の仕事の喜びなんだ」
 あまり飾らないガウ氏が熱をこめて語るこの言葉は、同時に、彼のマッキントッシュ製品に対する自信のほどを、裏づけるものとも、私には思えたのである。

マッキントッシュのオーディオ・ポリシー
 マッキントッシュ社の緊密な人間関係や、ユニークな一貫生産のシステム、そしてガウ氏のデザイン・ポリシーなどについて話してきたわけだが、次に、もう一歩ふみこんで、彼の、ということはすなわちマッキントッシュ社の、プロダクト・ポリシーといった面に話をすすめてみよう。
 ガウ氏がよく口にする言葉がある。「大切な事は、たゆまぬ研究開発である。しかし、研究開発というものは常に動的なプロセスであって、その段階で、それをすぐ製品化してしまうということは、大変に危険なことなのだ。自分達は断じて、お客様にリライアビリティ、すなわち信頼性を保証しなくてはならない。リライアビリティが保証できる自信のないものは製品化すべきでないんだ」これが彼の製品づくりの哲学と言ってもいいと私は思う。この点に対するガウ氏の神経の使い方は大変なもので、信頼性のない製品は必ずすべてをぶち壊してしまうと言う。客に迷惑を与え、販売店をぶち壊し、メーカーを駄目にする。もちろん機械に故障はつきものだが、だからこそ万全を期して、大きな故障が起きないようにしなくてはならない、と言うわけだ。
 このリライアビリティの重視は、すなわち製品のロングライフにつながる。「使っていて、短期間のうちに極端に初期性能が衰えてしまうようなものは、自分としては絶対に作りたくない。何年間でも、調整さえすれば常にオリジナルの状態に復元できるような機械でなくてはだめなんだ。これは機械の作り方だけの問題ではなく、基本設計の時点ですでに問題になることなんだ」そしてさらに「だから、まず良いオリジナルな設計を持つ事が大切だし、それを持ってスタートしたら、今度はとことんまで製造面を追求して行かなくてはならない」
 マッキントッシュ社にとってのオリジナルは、前に申し上げたバイファイラー・トランスフォーマーによるマッキントッシュ・サーキットであるわけだから、彼等はこれを、けっして捨てることはないわけである。「このオリジナルに、もうリサーチの余裕がないという事になればともかく、まだまだ、これを発展させ改良させることは可能だ。簡単に捨ててしまうようなものは、本当のオリジナリティではない」と彼は常に言っている。
 アンプがトランジスターになった時、それでもトランスをしょっていることについて、彼はいろいろな人から質問を受けたらしい。私が質問した時にも、またか、と言った感じだったが、その時にも彼が言ったことは「一番大きな理由はロングライフだ。これは絶対に壊れないんだ、トランスをしょっていれば」という事だった。現に彼は、その頃のハイパワー・アンプのライフテストを全部やって、その結果、マッキントッシュのアンプが最も過酷な使用に耐えるアンプであるというデータを自分で確認していたのである。
 ガウ氏はアンプの音質について、こんな考え方を持っている。もし、二つのアンプが同じひずみ率、現在はかり得るすべてのディストーションが同じグレードにあったとしたら、その二つのアンプのオーバーロードではない範囲の音質すなわち、静かにかけている場合には、二つの音質の違いは非常に聴き分けにくい。アンプの問題は、ほとんどの場合オーバーロードで働かされている事にある。
 たとえば彼の実験によると、スネア・ドラム1個のアコースティックパワーは5ワット出ると言う。ところが、能率の悪いエアーサスペンションのスピーカーだと、音響変換効率はせいぜい1%である。そうすると5ワットのエネルギーを出すためには500ワットのパワーを入れなくてはならない。だからアンプは、まず大きなパワーを持たなくてはならない、と言うわけである。たしかにマッキントッシュのアンプは、その時代、その時代で、いつも大きなパワー、大きなパワーという方向に行っているが、それは彼のこうした考え方によるものなのだろう。
 もっとも、ガウ氏は個人的には静かな音で音楽を聴くのが大好きなのである。「オーディオ機器のあらが一番出ない、静かな音で、イメージとして音楽を聴くのが、最もハッピーである」と言う。しかし、実際の使われ方はそうではない。多くの人はスピーカーからリアリティを求めている。「そうなると、きわめて大きなパワーがなければリアリティは求められない」という事になる。
 彼は言う。現に、現在のほとんどのアンプはオーバースイングの状態で使われている。そういう状態では、アンプはきわめて音質の差がはっきり出てくる。たとえばチューブアンプとトランジスターアンプの場合、いろいろな要素はあるけれど、一番ティピカルな音の違いはオーバーロードに対するものだ。この二つのクリッピング波形は、はっきりそれとわかる。これを何とかしなければ、いつまでたってもおまえのところのMC2105より275の方が、はるかにパワフルで、はるかにいい音だと言われてしまう。だから、現在アンプで最も問題にしなければならないのは、クリッピングしないほどのパワーを持たせるか、あるいはクリッピングしても、それをあまり強く感じさせないことだ。
 彼は、こんな実験をしたという。それは、最近よく問題にされるスルーレートに関するものである。「方形波を入れて、それがアウトプットでどういう形になるか。それがアンプの特性を示す一つの目安になることは確かだ」と彼も言う。しかし同時に「現在のような形でスルーレートを取り上げるジャーナリズムのあり方には、大きな問題がある」と言うわけだ。
 彼は、一般のユーザーを集め、方形波のかなり悪いシステムと、かなり良いシステムを比較させ、音楽を聴く上でそれがどれだけの影響を持つかを確めている。彼は言う「たとえばテープレコーダーは方形波がきわめて悪い。磁気ヘッドは本質的に位相特性が非常に悪いから、方形波はめちゃめちゃに崩れてしまう。でも、そういうテープレコーダーで、はたして音楽は音楽でなくなってしまうか。あの波形を見ると、確かにびっくりするほどの波形だが、音楽はちゃんと音楽らしく鳴っているではないか」
 もちろん彼は、エンジニアにとって方形波が非常に重要なものである事は認めている。ただ、現在のジャーナリズムの取り上げ方は本当にアンプの物理的なことを理解していないコンシューマーに対して、「方形波がこうなるということは、あたかも音楽がそういう形になるかのようなすりかえで、アピールしている」これは大変に危険なことだ、と言うのである。
 私はこの考え方を、オーディオの認識のトータルの姿として重要だと思う。これを、単なるガウ氏のデモンストレーションとして受け取ったら、それは浅い。彼自身の意図は、エンジニアリングの立場だけを、一般の人にアピールしたのでは、一般の人たちが神経質になってしまい、オーディオを楽しめなくなってしまう、という事なのだ。それは、ガウ氏が単なるエンジニアではなく、彼自身が音楽好きで、しかもオーディオマニアであるからだろう。もし単なるエンジニアだけだったら、方形波は悪くとも音楽は聴けるではないか、というような事はなかなか言えるものではないと思うのである。
 前記した、クリッピング時の波形がアンプの音質にとって重大な影響を持つというガウ氏の考え方は、マッキントッシュのアンプが、常にハイパワー化へ方向づけられていたゆえんでもあるわけだが、最近、もう一つの新しい方向が持ち出され、製品化されている。
 彼はチューブアンプとトランジスターアンプの音質の差という事に、本当に真剣に取り組んで、いろいろな研究をしてきたわけである。この結果、クリッピング波形の問題に着目した。たとえば彼が言うのは、10ワット程度の真空管アンプは、たしかに10ワット程度のパワーしか出ないからダイナミックレンジは狭い。しかし結構豊かな音で鳴る。ところが、トランジスターアンプは50ワットあっても豊かさに乏しい。その最大の理由が、クリッピング時の波形の違いであると言うわけだ。トランジスターアンプのクリップ波形はシャープで、サインウェーブが方形波のようになってしまうが、真空管アンプはクリップしても、なかなかそういう波形にはならない。現実には先ほども申し上げたように、ほとんどのアンプがひんぱんにクリップポイントにリーチしながら使われているからトランジスターアンプはひずんだ音が気になるケースが多い。
「トランジスターアンプがオーバードライブされても、ひずみとして耳に感じさせない事。これがわれわれの、一つの新しい方向なのだ」この回路が、新しいパワーアンプMC2205をはじめとする一連の製品に採用された、パワー・ガード・サーキットである。これは簡単に言うと、インプット波形とアウトプット波形を常に比較して、アウトプット波形が1%のひずみに達した時、インプットを制御する方式らしい。したがって、オーバーロードでもシャープなひずみが発生しないわけである。ダイナミックレンジはそこで狭まることはあっても、ひずみとして耳に聞こえる事はない。これは実際に聴いてみると非常に効果のあるものであった。
 だからと言って、もちろんマッキントッシュがハイパワーの方向を捨てたわけではない。と言うのも、近々、400ないし500ワット・パー・チャンネルのアンプを登場させるという。従来の200ワットクラスの大きさと目方で、それぐらいのパワーが取り出せるようになったと、ガウ氏は最新の情報として話してくれた。

私のマッキントッシュ・インプレッション
 これまでお話し申し上げたように、私はマッキントッシュを大変にすばらしいメーカーだと思っている。と言うのも、これは私のオーディオ観でもあるのだが、私のオーディオに対する喜びの中の一つの大きな要素として、メカニズムそのものに対する魅力というものを無視することができない。もちろん、オーディオの大部分は、音楽を聴くための道具であるが、音楽を趣味とすると同時にオーディオそのものを趣味としている一つの理由が、メカニズムの魅力だと思う。そして、そのメカニズムの魅力とは何かと言うと、結局、帰するところは、メカニズムを作った人間との対話なのだ。結果的にあらわれた、すばらしいメカニズムだけを評価してすませてしまうか、あるいは、作った人間がどういう人間であろうかというふうなところまで、考えをめぐらすかどうか、と言う事だと思う。そして私の場合には、メカニズムを通してその人間を想像し、いろいろと楽しんでいる。私はそういうメカニズムとの接し方をしているのである。
 したがって、そのメカニズムから、どうしてもその裏側にあるべき人間が想像できないようなものは、きわめて気味が悪く、私にとってはあまり魅力がない。これはオーディオだけではない。カメラ好きの人はカメラからそれを感じるだろうし、車好きの私は、やっぱり車からもそれを感じる。どうしても、設計者や製造者に対する興味を禁じ得ないのである。
 そういう意味からマッキントッシュにも私はアプローチをし、その人達と親しくなったわけだ。その結果、マッキントッシュの製品から受けるものが、実際に会ったマッキントッシュの人々と、非常によく合致するということを明確に感じた。
 またガウ氏の話で恐縮だが、彼がよく行くレストランにベステル・ステーキハウスというのがあって、そこでは本当にびっくりするほどの、サイズ・イレブンと称せられる物すごいサイズのローストビーフを出す。誇張でなく、その隣にスカッチの水割りグラスを置くと、その高さとローストビーフの厚さが同じなのである。ガウ氏はそれをペロッと食ってしまう。私も懸命になって食べたが、まさに獅子奮迅の格闘をして食ったあとでも、その口ーストビーフは持ってきた時と大して形が変わっていなかった。でも彼は、本当にペロッと食べてしまう。
 それから、彼は絶対に大きい車が好きである。小さい車には全く興味を示さず、仕事に使うのはキャデラックの75リムジン、キャデラックでも一番大きい車である。ガウ氏自身もこう言っている「おれは小さいだろう、だから何でもデカイのが好きなんだ」と。
 そして私には、この彼の性質と、マッキントッシュの作る強力なアンプ、常に大パワー、大パワーを目指す方針が無関係とは思えないのだ。もちろんその方針は単なる感覚的な事ではなく、理屈の裏づけがあってのことなのだが、それでも、そこからは彼のスケールの大きさがそのままにじみ出ているのだ。
 私がガウ氏に会う前に、マッキントッシュの製品から想像していたイメージが、実際のガウ氏とほとんど食い違わなかった事に、私はひそかな喜びを感じたのである。やっぱりこれほどの製品になれば、メカニズムを通しての人間との対話ということが、本当にありうるものだと、しみじみ感じた次第である。
 こう書いてくると、私はまるでマッキントッシュ・クレージーのように思われるかもしれない。だから誤解がないようにつけ加えておかなくてはならないのだが、私自身は、マッキントッシュの音そのものはマイ・サウンドとは言えないのである。私は決して、マッキントッシュのアンプを自分の音として愛用しているものではない。C−28とMC−2105を以前に買って持っているが、常用ではない。マッキントッシュ・サウンドのあの大柄な、あのたくましい感じが、私のものとは違うという感じがするのである。それでも私は、マッキントッシュの製品に最大限の評価と賛辞を惜しまない。ここがオーディオのむずかしいところなのだろう。もっともこれは必ずしもオーディオだけに限らず、たとえば車でも同じ事が言える。
 いずれにしてもマッキントッシュは、すぐれた頭脳と堅実な思想、そして彼等の豊かな人間性によって、すばらしい製品を作り上げている。もちろんそれも、ある見方を変えれば、たとえば古いと言われる一面も持っているかもしれない。マッキントッシュ社は、けっして新しいテクノロジーをどんどん取り入れて行くタイプではない。いまだにアウトプットトランスをしょったアンプは、アウト・オブ・ファッションと言われるかもしれない。しかし、それを単なる古さ、おくれた考え方とだけ見るのは大きなあやまちである。私はむしろ、そこに彼等の、文化に対するどっしりとした精神的バックボーンを見るのである。
 私は常に、明治のハイカラ思想と第二次大戦後の欧米コンプレックスの二つが、日本のいいものをかなぐり捨てた、そして、いま日本はそれによってあえいでいると実感している。優秀なものが大量に出来るようになったが、ドーンと人を感動させる最高級なものを作ることが出来ないでいる、現在の日本の精神構造の弱さ。これほど高い文化の歴史を持つ国でありながら、現代人が作り出すものの中に文化というにおいがしない。これは工業製品だけではなく、すべての分野に言える事であろう。
 しかし、われわれオーディオの好きな人間ぐらいは、そういう精神文化というものを大切にしていきたいと思う。その点においても、私はマッキントッシュ製品を、高く評価しているし、この考え方は今後も変らないものと思っている。
岩崎千明

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・マッキントッシュ」(1976年発行)
「私のマッキントッシュ観」より

 昭和三十年頃の僕は、毎日毎日、余暇をみつけては、ハンダごてを握らない日はなかった。この頃の六、七年間、数多くのアンプを作った。作っては壊し、作っては壊ししたそれらは当時のラジオ雑誌にほとんど紹介してきたものだが、もともと、そうした記事のために、目新しい回路をもととして、いままでとは、どこか違った、新しいアイディアを必ず盛り込んだものだった。もうはとんど手元にはなく、ただ昔の、古く色あせた雑誌の写真に姿をとどめているだけだ。つまり、製作記事のための試作アンプにすぎない、はかない存在だ。しかし、中には壊すのが惜しくて、そのまま実用に供し、そばに置いて使おうという気を起こさせたものもある。いまでも、そうしたアンブ、そのほとんどがモノーラルの高出力アンプだが、20数台もあろうか、物置の片隅を占領してしる。その多くが30Wないし50Wのパワーを擁する管球式で、外観は、共通し当時のマッキントッシュの主力アンプMC30に酷似する。
 なぜ、マッキントッシュに似たか。理由は唯ひとつ、僕の中にそれを強くあこがれる意識が熱かったからだろう。
 当時、日本には、海外製品として、英国製のスピーカー以外は入ってきていなかったし、海外製のアンプは、たまにこれらラジオ雑誌に簡単に技術紹介されるだけであって、その実力を知ることもなかった。まして現物になどお目にかかれるなどという幸運は一般のマニアにまったくなかった。だから、このマッキントッシュに対するあこがれの理由は、どこに端を発したのか、今ではしかと思いだせない。手元にある古い雑誌を見ても、マッキントッシュの広告は、まだほとんどなくて、その名前さえ知られることのない一九五〇年代の前半のことだ。でも不確かな記憶だが、マッキントッシュのMC30をたった一度だけ、見たのは、当時、駐留軍としての米国の高級将校の家で米ボーゲン製の小型アンプと置き換えたばかりの雄姿に触れた時だった。
 あまり大きくないクロームメッキのシャーシーに、ギリギリいっぱいの位置におかれた肩の丸い黒い角型ケースに収まった特徴あるトランスがふたつでんと収まった力強い姿だ。この時の印象があまりにも強かったので、他のアンプのイメージがすっかりうすれてしまったともいえる。少なくとも構造的にまったく違った構造配置のパワーアンプが、常識であった当時だ。たとえば、マランツのおなじみ8Bに代表されるようなシャーシーの半分に、出力トランス、電源トランスをすっぽりとケースで包んでしまった形は、業務用アンプの代表であって、映画館を初めとするプロ用ラックタイプのアンブはほとんどこれだった。細長いシャーシーの両端にふたつのトランスを配し、その間に真空管を並べるアクロサウンドの形式も多かった。しかし、こうしたアンプよりも、マッキントッシュに強く惹かれるのは、外観だけの問題ではなく、それを作ろうとする時、大きな利点を見いだせるからだ。つまり、出力管と、出力トランスを、至近距離においた上、パワーアンプ初段管のカソードヘの帰還回路の配線が、最短距離で達成され、さらに、出力トランスと、出力端子が極端に至近距離におけるという、理想的な配線は、マッキントッシュのMC30のシャーシー配置構造の利点なのである。
 これは、作ったものでないと判らないし、一度作れば、これ以上によい方法は、ちょっと思い浮かびあがらないほど、完璧だ。
 だから、今、手元にある20数台のアンプは、出力トランスと出力真空管と、むろんそれらの大きさと、最大出力の違いのため、そのシャーシーの大きさが、てんでんばらばらだが、構造的には、マッキントッシュのMC30によく似ているのである。もうひとつの共通点は、MC30よりも、出力が大きく、当時の水準からすれば、「大出力アンプ」といい得るものだ。念のために申し添えると昭和30年前後のその頃の技術雑誌の製作記事で、MC30をはっきりと意識したアンプは、たったひとつの例外を除いて、僕の作ったもの以外にはないと20年経った今でも自負している。
 そのたったひとつの例外というのは、某誌の表紙にまでカラー写真でのったY氏製作の30Wのアンブだ。
 これは、金のない僕の作るものとは違って、シャーシーまで本物のMC30のように、メッキされていたように記憶している。
 その時、「ははあ、彼氏もマッキントッシュの良さを知っているな」と秘かに同好の志のいるのを喜ぶとともに手強いライバルを意識した。しかし、Y氏は、それきり、アンプの記事は書かなかったように記憶する。最高を極めたからか。
 Y氏、実は山中敬三氏である。
 さて、今までの長い前置きでもわかる通り、僕にとっては、マッキントッシュのアンプといえば、MC30以外には、ない。一次捲線と二次捲線とを、二本並べて捲くという、いわゆるバイファイラー捲きの特許の出力トランスを用いた高出力アンプにこそ、マッキントッシュならではのオリジナル技術だが、それを、広く高級オーディオファンの手にわたる具体的な商品として、現実に製品化した一号機こそが、MC30なのであって、むろん、それ以前の製品もあるのだが、それが本来のMC30の、歴史的意義にもなっている。
 しかし、そうした背景は、一切目もくれないとしても、僕にとっては、アンブとしてのMC30そのものの印象も、価値も大きいのだ。
 いまや、ソリッドステートの時代となって、マッキントッシュも、MC2300を初め、最新のノン・クリッピング技術を盛り込んだMC2205、さらに、あまりにも有名な、良く知られているMC2105等、すべて、管球アンプではない。また、管球アンプとしての最後の製品となったMC3500の中をのぞくと、カラーテレビの水平出力用に使われる大型の高能率、高耐圧出力管が、ずらりと8本ならんでいて、その様は、どうみてもレギュレーター、ないしは定圧電源といった感じで、ハイファイアンプとしての楽しい夢のある容姿ではない。ステレオの最後の管球アンブ、MC275あたりが、オーディオファンにとっては、いかにもマッキントッシュ、ここにあり、といったイメージだが、いっそ、真空管なら、その原点にまで目を向けたくなってくる
 マッキントッシュと並ぶ、マランツのアンブをば語る時のように、プリアンプとパワーアンプのペアを、考えようとすると、マッキントッシュでは、C22管球ステレオプリや、C28、あるいはC26といったプリアンプの名前が出てくることになるが、本来、マッキントッシュの場合、その技術は、あくまで出力管回路、パワーアンプにある。プリアンプでは、時代とともに、型番も、むろん回路内容も改められてきた。つまり、パワーアンプほどに、明確なる決定打はなかったと、いってよい。パワーアンプが、いくつかあるのは、その出力の違いによるものだし、その原点は、6550をパワー管とした60WのMC60、さらには1614をパワー管とした30WのMC30に行き着いてしまうのである。
 だから、昨年、マッキントッシュ・クリニックのシールも新しいMC30を、当時のプリアンプC8とぺアで、ステレオ用として、2組入手したときに、僕のマッキントッシュにかかわる思い出と、永い散策とに、やっとピリオドを打ったような気がしたものだ。マッキントッシュMC30を、米軍将校の部屋で見染めてから、それは22年の長い道程でもあった。

ビクター SX-55

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターのブックシェルフ型は、主流を占めるラインナップに完全密閉型のエンクロージュアを採用している点に特長がある。
 今回発表されたSX55は最近のこの種のシステムがバスレフ型エンクロージュアを採用する傾向に反し、完全密閉型の特徴を活かしながら、より音色を明るくする方向で開発されている。ユニット構成は、上級モデルのSX7/5と同様に、3ウェイ方式であり、30cm型ウーファーには、SX7と同様にコニカルドームが付いたコーンを採用しているのが目立つ。スコーカーとトゥイーターは、ソフトドーム型で、このタイプの利点である指向特性が優れ、音が緻密であることを活かしながら、明るく、伸びやかな音とするために、振動板材質をはじめユニット全般にわたり再検討が加えられているようだ。なお、スコーカー、トゥイーターともに、振動板の保護を兼ねた、放射状に置かれたフィン型のディフューザーが採用されている。また、発表されたインピーダンスが4Ωであることは、実際の使用では見かけ上の出力音圧レベルを上げるために効果的と思われる。
 聴感上での能率は予測したようにかなり高く、音に一種の精気を感じさせている。各ユニットのつながりはスムーズで、完全密閉型らしい厚みのある低域をベースとして、緻密さがありスッキリと抜ける中音、高音がクォリティの高さを感じさせる。効果優先型の音でないのが好ましい。

サンスイ SP-G200

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ホーン型ユニットとダブルウーファーで構成したシステムとしてさきに発売されたフロアー型のSP−G300のジュニアモデルである。ウーファーは25cm口径で、G300と同様に特性が異なるユニットをスタガー駆動するダブル駆動方式で、低音輻射面積は、ほぼ38cmウーファーに匹敵するものがある。ダブル駆動の一方のユニットはシート・シームドコーンを使用して、ミッドバス的に使用され、トゥイーターとのつながりがスムーズな利点をもち、他方はセミ・コールドプレスコーンを使った専用ウーファーで、重低音までカバーする。
 磁気回路は直径145mmのフェライト磁石と銅キャップ付のセンターポールが採用され、ボイスコイルには直径65mmの耐熱処理を施した、ロングボイスコイルが使用されているが、Lシリーズのショートボイスコイルとは対照的な使用法である。
 トゥイーターは英タンノイの高音ユニットと同様な多孔イコライザーをもつ本格的なリアドライブ方式のドライバーユニットと、ショートホーンが組み合わされ、スラント型の音響レンズが付属している。磁気回路は外径90mmのフェライト磁石を使用し、ダイアフラムは厚さ40ミクロンの硬質ジュラルミン箔を成形歪が少ない空気成形法で成形してある。なお、ボイスコイルは磁束を有効に利用する線積率が高いタイプの銅被膜アルミ線で軽量化してある。
 ネットワークは、ラミネートEI型コアと線径が太い線を使った低抵抗コイルとMPコンデンサーを組み合わせ、エンクロージュアは、バッフルボードは米松合板、側版などは20mm厚パーチクルボード製である。
 SP−G200は、緻密さがありクリアで引き締り、質的に高い音である。スケール感が豊かで余裕があり、ことに実用的な小音量でプレゼンスある音を聴かせる点ではG300に一歩を譲るが、音像定位がシャープでコントラストが十分についたモニター的な性質では、むしろG200に利点があろう。トータルバランスが良い製品だ。
井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイのスピーカーシリーズにはLMシリーズ、JBLのモニターユニットを使ったモニターシリーズをはじめ、10万円をこした価格帯で注目されたGシリーズなど、かなりバリエーションが多いが、これに加えて、新しくるシリーズの3機種が発売されることになり、一段と製品群としての厚味が増加した。
 Lシリーズは、各社の製品がもっとも激しく競合する価格帯に投入されたシリーズであり、構成面からみればLMやGシリーズと比較して個性が少なく、オーソドックスな手法により開発されている点が、返って特長といえよう。ユニット構成は各モデルともにコーン型ユニットを使う2ウェイ方式であり、エンクロージュアはバスレフ型で角型のパイプダクトを採用している。
 ウーファーはコーンに西独クルトミューラー製のパルプを使い、エッジには方向性がなく、内部損失が多い発泡樹脂を熱成型したロールエッジを採用している。ボイスコイルは超偏平リボン線を使いエッジワイズ巻きとしたショートボイスコイル型で、巻幅が狭いため大振幅にも磁気回路内で余裕ある動作が可能で、歪が少なく能率が高い特長があり、ボビンは強度が高く音の伝播速度が速い耐熱性樹脂製であり、ボイスコイル部分以外のボビン部分には強度を高めるために同じ材質を使ったシートで補強がしてある。磁気回路はセンターポールに銅キャップを使用し、中央には通気用の穴が貫通している。マグネットはフェライト磁石で、L250の30cmユニットには外径156mm、L150の25cmユニットには外径145mm、 L100の20cmユニットには外径120mmの大型なタイプが採用されている。各ユニットともに駆動部分のボイスコイルとコーン氏との結合が強固であるため、ウーファーとしてはかなり高域特性が伸びた、いわばフルレンジタイプであり、トゥイーターとのクロスオーバー周波数の選択の幅が広い特長がある。
 トゥイーターはコーン型であるが、ウーファーと同様にワイドレンジタイプで高域限界は50kHzと発表されている。振動板はコーンとセンターキャップを一体成型して特殊な樹脂溶液の含浸処理をし強化してある。ボイスコイルはボビンに耐熱性樹脂シート採用で剛性が高く、高域特性を向上するためにメリットがあり、コーン紙との接着は新開発の特殊接着剤を使用している。
 磁気回路は、L250/150が外径90mm、L100が外径80mmのフェライト磁石を使用し、16、000ガウス以上の磁束密度を得て磁気回路を完全に飽和させ、ボイスコイルに流れる電流により発生する電流歪を防ぎ、音圧レベルと高域特性をも改善している。また、磁気回路の空隙をなくすためにプラスチック材を使い振幅が大きくなるf0付近の第3次高調波歪を改善している。フレームはダイキャスト製である。
 クロスオーバーネットワークは、コイルはダンピングと能率の劣化を防止するために、線径の太い線と大型ラミネートEI型コアが使ってある。エンクロージュアは、バッフル版が共振が少ない三層構造パーチクルボード、他の部分は比重が大きいパーチクルボードで、結合は三方止めとし、エンクロージュア全体を一体化している。
 Lシリーズのシステムは、かなり反応が早く、伸び伸びと音を出し、そのクォリティがもっともローコストなL100でも充分に高く、聴く音楽のキャラクターにより、高級機、普及機といった区別なく使いわけられることが特長である。スピーカーシステムの理論どおりに中域にもっとも密度があるのは20cmウーファー使用のL100であり、スケール感が大きいのは30cmウーファー使用のL250で、さしてシステムとしてのキャラクターが変わらず充分に基本をおさえ、巧みにコントロールされている。何れのモデルを選択してもかなり使い込める点は、このLシリーズの魅力である。

オーレックス SZ-1000

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 SZ1000は、エレクトレット・コンデンサーカートリッジ専用のイコライザーアンプで、アンプの電源電圧を従来の製品より高くとり、2段直結差動アンプを組合わせて、ダイナミックレンジを増大させている。信号系のコンデンサーは、スチロール型などのフィルムコンデンサーを使用し、聴感上の音質を重視した設計である。標準出力は0・5Vと、かなり高い。

オーレックス C-400

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーレックスのエレクトレット・コンデンサーカートリッジには、CD4方式に対応できる、広帯域型のモデルとして、C404Xがあるが、今回の製品は、C404Xをベースに2チャンネル専用として開発された、C400である。
 振動系の重要な部分である、カンチレバーには、新素材のボロンが使われている。ボロンは、軽量であり剛性が高い特長をもち、カンチレバー材料としては注目されていたが、この種の新素材に共通な加工の困難さがあるため実用化できなかったが、この、C400には、ボロンを0・3mm直径の棒状に加工したものを採用している。また針先は、微小なチップで振動系の実効質量は非常に小さい。なお、C400は、アルミニュウムとマグネシュウム合金の一体成型のヘッドシェルが付属している。

デンオン DP-1800

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンには、すでに、プレーヤーベースの上板に天然大理石を採用した、DP3750があるが、このDP1800も基本的には、同じ構想でまとめられたプレーヤーシステムである。
 DP1700の上級modelである、このシステムは、まず、質量が大きく耐ハウリング性を向上するためと、デザインの両面からプレーヤーベースに天然大理石とパーチクルボードを接合して使用している点が目立った特長である。
 フォノモーターは、基本型は、DP1000で、ストロボスコープ窓部分にカバーが付けられた点と、レーザー光によって振動解析の結果、スピーカーからの音圧などによるレコード盤の振動を抑え、音質の劣化を防ぐ、新開発ブチルゴム系のターンテーブルシートを使っている。
 トーンアームは、S字型のスタティックバランス型で、1回転で2・5g針圧が変化する回転型のカウンターウェイト、ダイアル式のアンチスケート機構をもつが、アームボディとパイプ間に、ダイナミックダンピング機構が設けられ、パイプ自体をダンピングするほかに、プレーヤーベースからの振動を抑えて、カートリッジの性能を素直に引き出す設計である。
 このシステムは、音をスッキリと整理して聴かせるタイプである。聴感上の帯域バランスは、とくに伸びきった印象こそないが、ナチュラルであり、素直にカートリッジの音色を引き出す点は好ましい。このクラスのシステムとしては、基本的なクォリティも高く、オーソドックスな製品である。

マランツ Model 6100

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この製品は、同社のもっともローコストなプレーヤーシステムである。モーターは、シンクロナス型で、ベルトドライブによりターンテーブルを駆動する。トーンアームは、S字型スタティックバランスタイプで、SME型のアンチスケート機構付であり、オートリターン・オートカットのセミ・オート型の機能を備えている。なお、インシュレーターは上級機と共通のタイプである。

マランツ Model 6200

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この製品は、トータルマチック型と呼ばれるフルオート型プレーヤーシステムである。レコードサイズと回転数を選択した後に操作レバーをPLAYの位置にするとアームはメカニズムにより自動的にリードインするタイプで、REPEAT機構も備えている。オートの動作は、比較的にスムーズであり、メカニズムは安定している。
 モーターは、FG型のACサーボ型で、ターンテーブルは、ベルトにより駆動されるが、このタイプの特長で、スタートが早く、トルクも充分にある。トーンアームは、S字型スタティックバランスタイプで、ダイアル式のアンチスケートデバイスが付属している。
 このシステムは、MODEL 6300よりもクリアーな音で、低域の音の芯が強く反応も少し早い。聴感上の帯域は、さして広いタイプではなく、細部を引出して聴かせることもないが、音の輪郭を外側から掴み、クッキリとした音を聴かせる。

マランツ Model 6300

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近の高性能化、高価格化の傾向が強いプレーヤーシステムのなかでは、このモデルは、現在、マランツのトップランクの製品ではあるが、いわば、中級機の価格帯にあるプレーヤーシステムである。
 プレーヤーベースの右側にあるアームボードの部分には、アルミ板製で、ここにすべてのコントロールが集中して配置されたレイアウトが採用されている。回転数切替、独立型のピッチコントロール、電源スイッチのほかに、目立ったファンクションとして、マニュアルとオートの切替がある。このオートの機能は、発光ダイオードとフォトトランジスターを組み合わせた、オートリフト・オートシャットオフ機構であり、一般のオート機構のように、アームはアームレストに戻るタイプではない。また、プレーヤー底面にあるインシュレーターは、硬質ゴムと、それを支えるクッションゴムからなるダブルインシュレーター構造であり、外側のリングを回転して本体の水平調整が可能である。
 モーターは、8極・24スロットのDC型で、ダイレクトに、直径31cmのターンテーブルを駆動し、トーンアームは、独特なジンバルベアリングを回転軸受に使ったS字型スタティックバランスで、ラテラルバランサーとアンチスケートデバイスをもつ。なお、マランツのプレーヤーシステムには、3機種とも、付属カートリッジに、シュアーM95EDが採用してある。

トリオ KT-7100

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プリメインアンプの分野では、つねに、時代を先取りしたハイパワー化や、パワーアンプのDCアンプ化など話題を投げかけているトリオから、さきに発売された、モデルナンバー末尾に、DCアンプ化したパワーアンプをもつことを意味するDの文字を新しくつけたプリメインアンプ、KA7100Dのペアチューナーとして、KT7100が発売された。
 このモデルは、価格的には、安いランクに設定されているが、FMのトリオ、をもって任じる同社の製品だけに、受信機としての性能とオーディオ機器としての音質の相反する要求を満たすべく設計され、高級機の開発で得た音質対策の技術を活用し、電源部の強化、ビート歪みの解明に裏付けられた、PLLループフィルターの改良などが採用してある。
 機能面は、シンプルなタイプだが、回路面では、FMフロントエンドに、デュアルゲートMOS型FETをRF増幅に採用した4連バリコンと組み合わせ、高感度と強電界での安定度を両立させている。IF段は、フェイズリニア6素子フィルター、検波段には、帯域が広いクォドラチュア回路により低歪化がおこなわれ、MPX段では、PLLと新開発の左右チャンネル分離型のローパスフィルターによって、キャリアリークを抑えている。なお、AM部は、短波帯からのビートを防ぐトラップ回路がある。

サンスイ TU-707

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイの新製品、AU707、AU607は、現時点動向にマッチした、DCアンプ化したパワーアンプや左右チャンネル独立電源方式の採用などの技術的内容をはじめ、音質、一新されたデザインにより注目を集め、好評のうちに市場に迎えられているが、今回、ペアチューナーとして、TU707が発売された。
 プリメインアンプと共通なマットブラックのプレーンなパネルには、白いワイドなダイアルが設けられ、とかく、画一的になりやすい、この種のチューナーのなかでは個性的なデザインとしてまとめられている。
 機能面では、IF増幅段の帯域2段切替、FMエアチェック用のキャリブレーション発振器の内蔵をはじめ、ミューティング、ノイズキャンセラーがあり、また、新しく採用された同調メカニズムにより、選局のフィーリングは、滑らかで気持ちよい。
 回路面での特長は、フロントエンドにはエアギャップの広い4連バリコンの採用により周波数安定度を向上し、IF部には、リミッター特性の優れたICにより合計10段の差動回路を構成し、不安定な到来電波に対して安定な受信を可能としている。また、検波段には広帯域レシオ検波回路を採用して歪を低減し、MPX部には、PLL方式、オーディオアンプには、2段直結NFアンプとエミッターフォロワー1段を組み合わせ、低歪化がはかられている。なおオプションとして、パネル両側には取手、BX7が取付可能である。

ナカミチ Nakamichi 420

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 410と同サイズにまとめられたパワーアンプでフロントパネルがヒートシンクを兼ねたコンストラクションをもっている。パワー段は、正と負の信号の対称性を重視して特殊なコンプリートミラー型プッシュプル方式と呼ばれる新回路が採用されている。パワーアンプは、小型のブロック化され、左右チャンネル独立しており、チャンネル間の干渉を防ぐ機構が見られる。パワーは、50W+50Wだが、パワーアップの要求のためには、別売のBA100が用意されており、ブリッジ接続で、120Wのモノアンプにできる。なお、この場合には2台の420が必要なことは当然である。

ナカミチ Nakamichi 410

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 カセットの高級メーカーとして定評があるナカミチからは、すでに、カセットデッキを含めて、テープデッキの機能を活かすプランでまとめられた、ユニークな600シリーズのセパレート型アンプが発売されているが、今回は、この600シリーズにつづいて、400シリーズのコントロールアンプ Nakamichi 410とパワーアンプ Nakamichi 420が発売されることになった。新シリーズはアンプの物理的特性を極限まで追求するポリシーでつくられた600シリーズの設計思想を受継いだ、いわば、ジュニアシリーズとも考えられる製品である。
 600シリーズのコントロールアンプ610が、一般のコントロールアンプというよりは、ライン専用カセットデッキという思い切ったプランでつくられた、600のミキサーアンプにフォノイコライザーを加えたような、テープ志向が強く出た、ユニークなモデルであることにくらべれば、この410は、610からミキサー機能を取除いたと考えられる、いわゆるコントロールアンプらしいモデルである。
 薄型のプロポーションをもつフロントパネルには、ほぼ中央にプッシュボタン型の4系統の入力をセレクトする入力切替、1系統のテープ入出力切替、トーンディフィート、ステレオ・モノ切替、それに、サブソニックフィルターがあり、左側には、高音と低音のトーンコントロール、右側には同軸型の音量とバランス調整、連続可変のコンター、つまり、ラウドネスコントロールがあるが、機能的に、よく整理されているため、操作性がよく、視覚的にもスッキリとまとめられている。
 内容面は、イコライザー段に差動アンプを使用しない、トリプルトランジスターサーキットと呼ばれる特殊回路を採用し、入力換算雑音を−140dBまで下げてあるのが特長である。イコライザー段、トーンコントロール段、フラットアンプなどは、それぞれ独立したエポキシ系のプリント基板に分割してユニットアンプ的手法が採用されており、電源トランスは、磁束のリーケージを抑えるためトロイダル型オリエントコアを使っている。

コーラル FX-10

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 マルチウェイシステムとは別に、コーラルは、全域ユニットをたえず作りつづけていることに特長があるメーカーである。
 このモデルは、F60シリーズとして知られる一連の全域ユニットのなかの、10F60を、トールボーイ型のバスレフエンクロージュアに入れたシステムで、全域型として使うが、さらに、ワイドレンジ化へのグレイドアップのために、トゥイーターを取付可能なスペースが、あらかじめ用意されている。このためのユニットには、ホーン型のH60とドーム型のHD60があり、H60には、スラント型音響レンズAL601を、さらに追加できる。
 このシステムは、全域型ユニットファンならずとも、何故か、ホッとするような安定感のあるスピーカーらしい音である。帯域は広くはないが、表情がナチュラルであり、伸びやかさもある楽しめる音である。

ヤマハ NS-L325

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井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プリメインアンプを完全に一新したニューラインに発展させたヤマハから、スピーカーシステムの新顔が一機種発売された。
 モデルナンバーに、同社で初めてアルファベット文字を付けた、NS−L325は開発に着手してから3年以上の年月が、かけられたとのことで、プロトタイプ段階から数えても18ヶ月という機関が費やされたという。ローコストに新しい需要層を開拓した、NS451が発売された当時から予測として、1ランク上の価格帯に、仮称NS651が発表されるのではないかという声もあったが、おそらく、NS1000、NS690IIという正統派のシステムと新しいサウンドを求めた、NS451、NS500の接点として、予定したシステムが、発展して、この新システムとなったのではないだろうか。
 構成は、3ウェイ・3スピーカーシステムであるが、各ユニットには、現在までのヤマハのシステムに原点を見出すことができるタイプが採用されている。ウーファーは、25cm型で、NS500系と思われるユニットであり、スコーカーは、12cmコーン型でバックキャビティ付きの新ユニットである。また、トゥイーターは、NS690/690II系の23mm口径で、タンジェンシャルエッジまでを一体成型したソフトドーム型である。なお、ウーファーの磁気回路には、アルニコ系磁石とセンターポールに低歪化、インピーダンスの平坦化のため、銅キャップ処理がおこなわれている。
 エンクロージュアは、バスレフ型で、材料に高密度パーティクルボードを使い、バッフル版で18mm、他の部分は、15mmの板厚があり、仕上げは、シャイニーオークだ。
 このシステムは、タップリと量感のあるやや柔らかい低域をベースとし、活発で、輝きがある中高域が巧みにバランスした音である。中域は、3ウェイらしくエネルギーがあり、明快であるが、緻密さが、もう少しあってもよいように思う。全体の音色は明るいタイプで若々しい印象がある。
菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 プリメインアンプ35機種のヒアリングテストを終えた。5万円台から10万円台まで17社の製品であった。おそらくオーディオ・コンポーネントシステムの構成に、このクラスのアンプは、最も多く使われるものだろうし、メーカーにとってもユーザーにとっても、一番重要な主力製品といえるだろう。本誌がまとめた本年の1月10日現在のプリメインアンプ価格分布表を見てもその機種数は、3万円台に次いで、5、8、6万円台がそれぞれ多い。3万円台はいわゆるシスコン風のプリメインアンプとみてもよいだろうから、本格的なコンポーネントとしてのプリメインアンプは5万円台から10万円台に分布していると見てよいだろう。ごく少数、20万円台以上の製品もあるが、そのぐらいの値段になると、セパレートアンプとオーバーラップして、むしろセパレートの価格帯域と考えてよい領域に入るであろう。したがって、今回の本誌のプリメインアンプのテストは、文字通りプリメインアンプのすべてといってもよいものだし、それだけにテストに加わった一員として、その任の重さを感ぜずにはいられなかった。
 そもそも、アンプによる音質の変化というものは、その表現が大変に難しい。私の役目は、その音質の試聴感にのみ限られていて、アンプとしての操作性や、動作、総合的なデザインや完成度などといった視点からの判断は除外されているのであるが、だからといって、そうした要素を全く切り離してアンプの音だけが純粋に評価し得たとも思わない。できるだけ、そうするように努力はしたが、人間の総合感覚として、どうしても視覚的、触覚的要素を完全に切り離すことは困難であるし、また、そうすることは不自然である。ブラインド・テストという方法は、目に見える部分を無視するか、共通・同一の条件と仮定してなら意味があっても、きわめて非現実的であって、特に私個人のオーディオ感からは全く無意味である。これについて詳しく書いているスペースはないが、要は、人間を基本に考えた、生きた評価が重要で、それ以外の定量、定性的評価は測定に頼る他はない。そして、その測定の満たせない部分を、人間的に判断する意味があるからこそ、こうしたテストがおこなわれるものだと思うのである。
そんなわけで、私のテスト記は、決して機械的正確さはないことを、はっきりお断りしておきたいのである。したがって、少々極端な表現が出て支障があるかもしれないが、それは私の性質であり、癖であるとお考え願えれば幸せである。思ったことを率直に述べるのが、私の性分なので、何とぞ御寛容のほどをお願いする次第である。この種のテスト記は、筆者が、いかなる人間であるかという理解が前提になってこそ、意味があると私は思っている。狭くは、その音と音楽への思考や思想であろうけれど、本当は、人となりすべてが大きく影響するはずだ。また、それが重要だからこそ、本誌でも一人のテスターではなく、数人のテスターにやらせているだと思う。だから、テスターによって評価が異なることは至極当然であろう。ただし、大筋において、評価が一致することも当然であろう。このことに感心をもたれ、各テスターの評価を、読者諸兄なりに総合して判断されれば、参考になるではないかと思う。よくAという人とBという人の評価が全く違うから、この種のテストは信用できない、でたらめだという批判を聞くが、それはあまりにも単純だし、音や音楽と人間との関係を無視しすぎる考えだと思う。そういう考え方では、オーディオのすべてが不信の対象になってしまうだろう。本誌の愛読者ならば、そんな考えをもっておられるはずはないとは思うが、どうしても、今一度お断りしておきたい問題なのである。
 私のテストは、瀬川冬樹氏と同時におこなわれた。二人で、同時にレコードを機器、一台一台、その場で試聴記を書いて編集部に渡すという方法であった。このほうが印象が新鮮だし、あとで現行をまとめるより、率直でいろいろな思惑に悩まされることがなく、私には好ましい方法だと考えたからだ。それも、先に述べたような考えが私にはあるからであって、もっと、総合的に、それぞれのアンプに対する評価を述べるとなったら、とてもこの方法では無理であったと思われる。他の専門家による測定その他の客観的な評価と合わせて、一つの完成した評価が、それそれの読者のイメージとして把んでいただけるのではないだろう。
 次に、35機種のプリメインアンプを試聴した全体的な印象について、個々の試聴記で述べられなかったこと幾つかを、ここに記すことにしよう。
 まず強く印象に残ったことは、アンプがよくなったということである。データを見てもわかるように、諸歪率は、ほとんどのアンプが、コンマ・ゼロ何%以下という値であり、SN比も最低70dBを越えている。こうしたデータと音質の関係は、ほとんど耳で聴いて判断は不可能であるから、これをもって、アンプがよくなったと断じるのは早計かもしれないが、計測し得るデータはよいほどよいというのが私の持論だし、音質や音色の魅力は、その上でのことだと思っている。事実、ほとんどテータに変わりのない二つのアンプが、音では全く異なった印象をもつものが珍しくないのであった。アンプの音質の差というものは、たとえていうなら、人間の体質のようなもので、スピーカーやカートリッジが、人間の顔を中心とした、体形などの造形的違いとすれば、アンプのほうは、肌のキメの違い、肉のしまり具合の違い、体温の違いとでもいった印象の差として現われる場合が多い。したがって、こうした細かい点に注意しなければ、どんなアンプでも、美人ぞろいであって、プログラムソースや、スピーカーの造形を変えてしまうようなひどいものは、今や見当らなくなったのである。そのわかり、ひと度、そうした質に感じる感性を養った人にとっては、きわめて重要な本質的な品位と性格を決定するのがアンプの音だといってもよかろう。データが一様に向上した現在も、こうした質的な違いは、すべてのアンプに残されていたのである。今や、回路図とデータを見ても、そのアンプを知ることはできない。アンプに関するそれらの資料は、見合いの相手に関する履歴書と、慰藉の診断書みたいなものだ。高調波歪0・01%とか、周波数帯域DC〜500kHzなどというデータは、見合い写真に、胃袋のレントゲン写真を見せられたようなものだ。会ってみなければわからない。聴いてみなければわからないのである。いいアンプづくりのノウハウは「優れた回路設計と同様に、部品の選び方や、シャーシを含めたコンストラクションなどの現実の工法にウェイトがある」と語った、あるアメリカの私の友人の言葉が思い出される。設計だけでは、いいアンプは出来ないというのは当り前のようであるが、従来のアンプ製造は、どちらかといえば設計に80%以上のウェイトがおかれていたのではあるまいか。建築設計というものは、工事の現場からのフィードバックが重要なプログラムであるらしい。アンプづくりと家づくりはちょうど逆の性格をもっているのではないか。設計図なしで、立派な家を建てたのが昔の大工である。現場を知らずに精密な設計図を書くのが今の建築師である。アンプでは、今までは設計図重視であった。そして、その結果の確認は、測定データであって音ではなかった。今、現場の工事が、唯一の目的である音に大きく影響を与えることが認識されはじめたのであろう。これだけ多くの大同小異のデータをもったアンプが、それぞれ異なったニュアンスで音楽を鳴らすのを聴くにつけ、アンプがよくなったという実感とともに、面白くなった、難しくなったという感慨を持ったのである。
 もうひとつ、書き落としてならないことは、新しいものが必ずしも古いものより優れていなかったということである。もちろん、なんらかの点で、より優れたものが出来たからこそ、新シリーズとして誕生するのであろうが、実際に音楽を聴いてみて、明らかに旧シリーズのほうが勝っていたと思われるものが少なくなかったのである。データ上では、新しいものは必ず改良されているのを見るとき、何か見落としてはならない大切な問題の存在を感じるのである。
 音というものは、本当に難しい。しかし、味なものである。エレクトロニクスの粋であるアンプが、こんなに音のニュアンスに噛み合ってくる事実を知るとき、電子の存在に、一段と親しみを感じるのを覚えた次第である。
井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 今回のプリメインアンプ特集にあたり、より総合的に各機種の実態を解明するために、試聴リポートと別に〝テクニカルリポート〟という項目をたて、より立体的な取材をおこなうことになった。
 テクニカルリポートは、従来の解説と実測データに加えて、デザイン、仕上げ、加工精度、機能、それにプリメインアンプの基盤とも考えられる回路設計、構造などを、各機種ごとにチェックしようというものである。そのほか、そのモデルのメーカー内における位置づけ、従来モデルと関連性、さらにメーカー側で、その機種について、広告、カタログなどのPRの場で、主張していること、また、その意義についても検討を加えることにした。
 最近のように技術的な面が発展し性能が向上してくると、いきおい最新モデルが持っている回路構成上の特長が、かなり似てくることが多い。現に、昨年末「最初の3電源方式を採用したプリメインアンプ」というキャッチフレーズで3社から同時に発表されたこともあったくらいである。
 プリメインアンプのようなエレクトロニクス技術が表面に出やすい性質の分野では、カートリッジやスピーカーシステムのようなトランスデューサーと異なり、回路設計の成否が結果的な性能や音に直接関係をもつ。そのためか最近の各メーカーの広告やカタログを見ると、かなり技術的な知識をもっている人でも難解なことが多く、それだけに耳慣れない名称をもった新しい回路方式を採用していること自体が、高性能なプリメインアンプであるかのように見られやすい。この点はユーザーによく注意してもらいたいとおもう。
 たしかに、新回路による性能向上がプリメインアンプとして性能がアップすることに深い関係はあるが、回路方式はそれぞれに長所ばかりを備えているものではなく、、必ず短所を持っているものである。いわば両刃の剣のようなもので、いかに長所を引出し短所を抑えられるかは、その回路の使用法によって大きく変ってくると考えなければならない。
 実例として、最近のプリメインアンプの傾向である左右チャンネル独立電源方式を考えてみよう。2電源方式は立場を変えてみれば、従来の単独の電源を共通に使う方式に絶対の優位をもつとは断言できないのである。たしかに左右チャンネル独立電源方式は、アンプでもっとも重要なポイントであり、経費がかかる電源回路を通して左右チャンネル間に生じやすい干渉や影響を避けるために意義のある方式ではなるが、クロストーク特性ひとつを考えてみても、この方式のメリットは、低域についてのみであり中域以上の広い周波数帯域には、ほぼ関係ないと言っても差しつかえない。中域以上のクロストークは、そのほとんどが左右チャンネル共通のファンクションである入力セレクタースイッチ、モードスイッチ、トーンコントロール、フィルターなどの左右チャンネルの配線が近接する場所で生じやすく、つまり、いかに左右チャンネルの配線を分離するかという機械的なアンプ自体の構造や部品の選択の方がより重要なファクターになる。高い周波数になれば、左右チャンネルの配線を近づけるだけでクロストーク特性が劣化することは、AMやFMチューナーのアンテナ端子にアンテナを近づけるだけでシグナルメーターの指針が右に振れて入力が大きくなって、音量も大きくなる例からも容易に予測できるだろう。
 また、実際の音楽では、例えば右チャンネルにドラムスのパルシブな強いエネルギーが入り、左チャンネルは、ピアノが弱く鳴っているような場合には、左右独立電源方式では、左チャンネルの電源の余裕分は利用できず、出力が50Wなら、右チャンネルは、50Wのパワーしかスピーカーに送り込めないことになる。これが、共通電源なら、電源部は左右チャンネルを充分に供給できる能力があるために、両チャンネル同時動作で50W+50Wなら少なくとも片チャンネル動作では、10%程度のパワーの増加は見込めることになる。実際に、あまり強力な電源を採用できない価格帯の製品では、左右チャンネル独立電源方式を採用したために、電源の電解コンデンサーの容量が現在の平均値より少なくなり、むしろ、左右チャンネルの電源をパラレルにして使ったほうが好結果が得られるのではないかとも考えられる。いうまでもないことだが、大切なことは電源部を独立させることが目的なのではなく、性能を向上する目的での採用でなければならないということだ。
 アンプの機構的な構造は、一般的には、いわゆる回路設計よりも一段と低い位置にあるかのような判断がある。しかし、基本的な回路設計が、いかに卓越していたとしても、実際のプリメインアンプとするためには、回路設計を活かすだけの充分の機構設計がサポートしなければ優れた製品とはなりえないものである。最近のプリメインアンプの性能向上には驚くべきものがあるが、その背後には、電気的な回路設計の進歩もさることながら、機構設計の進歩の方が、はるかに貢献していると思われる。つまり、現在のプリメインアンプは、回路図を見ただけでは、性能の予測は難しく、機械的な構造、使用部品により大きく結果が左右されることを知るべきである。
 測定の面では、時間的、掲載する紙面の制約などから、現在のような高度な性能を持つプリメインアンプの実際の性能を知るに足るだけの測定項目であったとは思われないが、基本的には、従来から本誌でおこなってきた測定項目、つまりアンプのベーシックな性能をチェックするための項目に、現在のプリメインアンプの傾向を反映した測定項目を加えることにした。基本的項目は、従来は、片チャンネルのみの測定をおこなってきたが、今回は、2チャンネルステレオプリメインアンプとしての原点から見なおすために、できるだけ、左右両チャンネルの測定をおこなっている。各実測値は、絶対値としてはたしかに優れているが左右チャンネルの対称性となると、かなり良いとはいえまだ多くの問題を残しているように思われる。
 新しく加えた測定項目は、クロストーク特性とカートリッジ実装状態でのSN比である。クロストーク成分の波形については充分にチェックできなかったのは、残念なことである。このあたりをチェックしておかないと、例えば左右チャンネルのクロストーク特性が不揃いであったり、サインウェーブでの特性が優れていたとしても、実際のディスクからの音楽再生では、聴感上でクロストークが聴かれるようなことが生じやすい。
 また、カートリッジ実装のSN比は、メーカーで発表されているフォノ入力端子をショートした状態ほど機種間の差が開かず、ほぼ10dB程度の幅に圧縮された値を示していることが大変に興味深いことである。今回実測したのは、フォノ入力からスピーカー出力端子間でのカートリッジ実装状態でのSN比であるため、例えば、気宇面でのカートリッジ負荷抵抗切替や負荷容量切替をはじめ、入力感度切替のある機種ではそれらの機能を持たない機種にくらべて、配線の引回しによってSN比が予想よりも良くならない場合があったように思われる。いわば、多機能な機種ほどSN比はウィークポイントになりやすく、逆に考えれば多機能をもちながら高いSN比が得られた機種は、総合的な技術力が非常に高い水準にあると見ていい。
 当初は全般的に測定項目は少なく、各機種間の格差は生じないのではなかろうかと懸念されたが、高度な水準にあるとはいえ、予想以上の格差が生じたことは、工業製品としての性格が濃いプリメインアンプで量産ラインでの性能の確保が、いかに至難な技であるかを物語るようである。また、最近ではひとつのモデルの製品寿命が極端に短くなり、モデルチェンジが繰返されることに問題があるが、反面には、モデルチェンジごとに性能が向上していることは大変に好ましいことである。
 今回のプリメインアンプ特集に集めた製品では、10万円程度以上の価格帯の機種は、かなり新旧の対比が目立っている。管球式の製品を除いても、以前からある原型を改良しながら発展してきた機種と新開発の機種では、数少ない測定項目ではあるが、実測データの優劣は、かなり明瞭に出てくることがその裏付けとなるだろう。プリメインアンプは電気的な増幅器であるだけに、基本的な物理性能が優れていることがミニマムの条件であろう。よく、特性を向上しすぎたために結果的な音が悪くなる、との声をきくがそんなことはあり得ない。一面の特性を向上したために他の特性が劣化したか、または、基本的な電源回路や機械的な構造などが不備で本来の性能が結果に結びつかないと考えるべきであろう。
井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 今回、本誌では最初の試みであるテクニカルリポートを受持ったが、その結果から、テストをしたプリメインアンプのなかから、推選機種を選ぶことになった。
 テクニカルリポーターとして直接おこなったことは、実際にテスト機種を操作し、各コントロールのフィーリングをはじめ、機能面、仕上げを含む工作精度、回路図からの設計上の特長、アンプの構造などについて調べることが、第一段階の作業であり、つづいてステレオサウンドラボラトリーでの実測データの検討が第二段階の作業である。選出にあたっては、主として、この二段階結果を中心にしておこなったが、幸いにしてほとんどの新製品はサウンドクォータリーの試聴などで本誌試聴室で聴いているため、ある程度は、その結果をも加えている。
 現在のプリメインアンプは、その下限をシステムコンポーネントで抑えられ、上限をこのところ活発に新製品が登場しているセパレート型アンプに抑えられているために、今回もテスト機種の価格は、ほぼ5万円から20万円の間にあり、1対4の比率に収っている。この価格帯のなかで、各メーカーがもっとも力を注いでいるのは、10万円未満の機種であり、当然の結果ともいえるが、例外的なモデルを除いては、そのほとんどが昨年中か、今年になって発売された製品である。これに対して10万円以上の機種となると、最近とみに増加した比較的にコストの安いセパレート型アンプと価格的・性能的にも競合するレンジであり、需要層が10万円未満とは質的に異なる面もあって、まったくの新製品から、基本型を数年以上も前にさかのぼるモデルもあって、推選機種の選出は、この両者を分離しておこなう必要があるように思う。
●10万円未満の推選機種
 デンオン  PMA501
 パイオニア SA8800II
 サンスイ  AU607
 ヤマハ   CA−R1
 オンキョー IntegraA7
 パイオニア SA8900II
 デンオン  PMA701
 サンスイ  AU707
 価格順に列記すると、以上の8機種が推選機種になる。まず、実測データでは、ヤマハ、オンキョー、それにデンオン PMA701が優れた結果である。これらとタッチの差で、デンオン PMA501、パイオニアの2機種がつづき、次いでサンスイの2機種となる。また、実際の機種別チェックは、いずれも水準以上のものが充分にあって問題はなく、音的にはサンスイの2機種、ヤマハが現代アンプらしさのある音をもっている。
●10万円以上の推選機種
 トリオ   KA7700D
 ヤマハ   CA1000III
 ヤマハ   CA2000
 ラックス  5L15
 ソニー   TA−F7B
 マランツ  MODEL 1250
 以上の6機種が挙げられる。その他、やや例外的ではあるが、本誌3号のアンプ特集にそのプロトタイプが登場して以来、常にアンプ特集に登場しているラックス SQ38FD/IIも挙げたい機種である。実測データは、確かに現代アンプとは比較できないが、管球アンプとしてはよくコントロールしてある点に注目したい。実測データでは、トリオ、ヤマハの2機種とラックスが好結果を示し、なかでもラックスのクロストーク特性は驚くほどであった。また、機種別チェックでは、ソニーが回路的なユニークさで目立ち、マランツが、テープ関係の機能にオリジナリティがあった。ラックスは、別格のSQ38FD/IIと5L15の新旧の対比が、大変に興味深いコントラストを見せているのが印象に残った。
菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 全35機種中、推選機種をあげるとなると難しい。線の引き方で、どうにでもなってしまうからだ。価格とのかね合いで、徹底的に主観的判断をもって音質の好みをとり、客観的に、デザインを含めた商品としての完成度とバランスさせて選んだのが13機種である。視点を変えれば20機種以上を選び出してもおかしくないし、極端に言えば一機種にしぼることもできるというのが、この種の選考である。
 以下簡単に、13機種について推選理由を述べておくことにする。
 ソニーTA3650は、きわめて手馴れたアンプづくりのキャリアが生きていて使い勝手のいいパネルレイアウトと、万人向きのデザイン、音のよさはこのクラス随一といってよいし各種スペックも控えめながら信頼性が高い。
 サンスイAU607は、同社のアンプとしては飛躍的な佳作で、DCアンプ構成をとり、操作類は簡略化されながら、よく検討された機能とスムーズな動作で安心感がある。元祖のブラックパネルは現代的で緻密な感覚にあふれたデザインの高品質なアンプである。
 パイオニアSA8900IIは、IIになってやや音が無性格になったとはいえ、試聴記でも書いたようにあらゆるソースをこなすオールマイティと、よく練られた造形とセンスは第一級の製品だと思う。
 ビクターJA−S75は、大変オーソドックスで格調の高い音質、ややアンバランスなところはあるが嫌味のないデザインと、がっしり組まれた電源の質の高さなど、プリメインの模範的製品という感じである。
 サンスイAU707は、AU607をさらに充実させたもので、ここまでくると、あとはファンクションの豊富さと質を落とさずパワーアップという発展を残すのみ。85W×2というパワーと、この音質の両立は文句なく推選に値する。
 ソニーTA5650はTA3650のパワーアンプ・バージョンと考えるのは間違い。機能をより豊富にして質を上げたもので、私にはDCアンプの同社新製品をしのぐ音の品位が感じられた。
 トリオKA7700Dは、現在のアンプとしての特性のあらゆる点を盛りこんだ代表的なモダンアンプとでもいえるもので、DCアンプ構成、3電源方式の採用など、豊富なフィーチュアを持ち、それが単なるフィーチュアに止まらず、実質的に中味の濃い製品まで練られた徳用品である。高級プリメインアンプとして充分な質とパワーを備えた信頼度の高い製品だ。
 オンキョー・インテグラA722nIIは、同社としては新しい製品ではないが、充実した内容と、オンキョーらしさをもった佳作である。新シリーズより安心して音楽が楽しめると思う。新しいものにそれなりの良さもあるが、このほうが音の品位、堅実味で好感が持てる。
 ラックスL309Vも同社の旧シリーズのイメージ・デザインだが、いかにもラックスらしいアピアランスと音の品のよさが魅力だ。マニアックな製品をつくるラックスの体質が感じられる趣味性を評価したい。
 トリオKA9300は、プリメインアンプとして同社の最高級に位置するのみならず、一般的にいって、代表的プリメインアンプとするに足る。音質については試聴記を参照していただきたいが、質に独特な弾力性のあるのが好みの分れるところだろう。力強く、よく弾む音と、トリオの経験が集積されたアンプ構成・レイアウトは、さすがに完成度が高い。
 ヤマハCA2000は一口にいって最高の機能と質をかねそなえた一級品だ。使ってみれば、その感触のデリカシーに高級品の味わいを感じであろう。
 パイオニアSA9900マランツ1250は20万円近いプリメインの究極的な製品で、パイオニアのヴァーサタイルな信頼性、マランツの個性と風格は、互いに異質ながら、このクラスを求める人に充分な満足感を与えるはずである。
 以上の他、上げればキリがないが、詳しくは試聴記から判断していただければ幸いである。

マランツ Model 1250

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 確かな手応えと輝かしい魅力をもった音のアンプである。たくましい躍動感のあるベースの弾力的なはずみのある音はリズムに血が通う。華麗で艶っぽい高域は、プログラムソースによっては少々個性が強過ぎる嫌いはあるが、中低音が大変に品位が高いので、破綻としては感じられない。なにを聴いても音楽がリッチに響き、いじましさや、ドライな寒々しさは全くない音だ。空間のプレゼンスも立体的な奥行きがあって、実在感の豊かなしまった直接音を華麗に包み込み、決して野放図な空虚感にはならない。声の艶や湿感は色あせず、生き生きとして、みずみずしい。弦楽器の高域が一番このアンプに対する好みの分れるところだろうが、強調感はあるが、ゆとりのないヒステリックでドライな響きとはちがう。艶であり、輝きである。かなり明確な個性をもったアンプだが、音楽的な情緒を絶対に失わないので大きな魅力となる。昔ながらイメージの残るパネルフェイスもいい。

パイオニア SA-9900

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 パイオニアのアンプは、どれを聴いても快い質感を持っている。これを言葉で表現するにはとても与えられた次数では無理に思えるのだが、とにかく感触がいい音なのだ。このアンプも、同じように、そうしたタッチと、ウェル・バランスドな、大変まとまりのいい音であった。なにを聴いても、実によく音楽の特質を生かし、魅力をちゃんと再現するのである。コンストラクションもパネルデザインも、操作性も、この音と同じように、本当によく出来ているアンプだ。スピーカーを選ぶ傾向も他のアンプと比較して神経質ではなく、スペンドールもJBLも、その特質をよく生かして鳴らした。とびきり高級な品位と風格を備えた次元には至らないと想われるが、これだけ妥当な再生音を聴かせてくれるアンプは、ざらにはない。脱帽する。キメの細かさが立体的な力強さと相まって、なんとも聴き心地のいい音のアンプであった。

ソニー TA-F7B

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 力強い活気のある音だが、どうも電気臭い匂いが鼻についてくる。マルチトラックのミクシング・ダウンを最高のレコーディングシステムと考えている人達や、そのサウンドに何の疑問を持たずにすむ感性には大層効果的に響くアンプだろう。率直にいって、洗練された美しい音を素材とした高次元の音楽の再生には、このアンプの品位では追いつかない。おそろしいもので、声や楽器の表情が影響をうけて、演奏の品が下って聴こえてしまうのである。優れた特性をもつアンプであることは認められるのだが、ほんのちょっとしたこと、しかし、一番重要なことで、アンプの音が決定的になる。試聴に使った2台のスピーカーでは、スペンドールが全く真価が殺される。JBLのほうは、それなりに、効果的には鳴る。JBLが生きるわけでは決してないが、このスピーカーの物理特性の余裕が、こうしたエフェクティヴなサウンドにも効果を発揮するということだ。

ラックス 5L15

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 明るく抜けきった、きわめてワイドレンジの広い優秀な特性を想わせるアンプである。それでいて、弾力性のある質感と、軽くふわっと湧き上るような空間の再現のデリカシーも得られる品位の高さである。しかし、高音域のややきついヒステリックな刺激性と弱々しさが、プログラムソースによっては気になるし、スピーカーをかなり選ぶ傾向があるようにも感じられる。試聴ではスペンドールがベターであって、JBLはバランスをくずす。今までのラックスのサウンドとは画然とした違いのあるもので、品位の高さは同次元に近いが、まるでセンスの違う音という印象だ。フィッシャー=ディスカウの声には38FD/IIとはちがうけれど、品位の高さでは迫るものがあったが、弦合奏になると、高弦の破綻が現われる。ただし、これはレコーディングのアラかもしれず、38FD/IIがこれをまくこなしてしまうと判断すべきなのか? 難しいところだ。

ラックス SQ38FD/II

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプの音と俗なアンプの音の肌ざわりの違いは、まるでコーデュロイとヴェルヴェットのそれのようだ。フィッシャー=ディスカウの声の滑らかな艶と柔らかいニュアンスの中に、ぐっと力の入った筋肉質な喉のヴィヴラートのリアリティがこれほど魅力的に再現されたアンプは他になかったといってよい。弦楽器もしなやかで、まるで音の出方がちがうといった印象。あたかもスピーカーが変ったような、音の根本的なクォリティが上等である。ジャズやポピュラーにもその通りの品位のよさに変わりはないが、音楽の性格との違和感がある。全体にエネルギッシュなインパクトがなくなってしまう感じである。こう書いてくるとクラシック向きというようにとられる危険性があるが、たしかに結果的にそうなるのかしれない。このアンプの30Wというパワーからして、また、練りに練られた音の質感からして、デリカシーの再現が生命となるような音楽に向いていることは確かだ。

ローテル RA-1412

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 まず、大型のアメリカ人好みの、ものものしいパネルフェイスに度肝を抜かれる。決して品のいいルックスではないが、少なくとも、国産アンプのほとんどがそうであるような画一性からは独り立ちした個性をもっているし、仕事として力の入ったものだ。ところで音だが、これがまったくルックスとは違って、耳触りのよいキメの細かいスムーズな高音のラインを響かせながら、しっかりと充実した中低域にサポートされている立派なもので、なにをかけてもちゃんとプログラムソースの特徴を再現する。フィッシャー=ディスカウの声の魅力も見事だし、対照的な大オーケストラのfffパートで、バランス、音色分析ともに乱れがない。ピアノの質感も、ややタッチが軽くなるが、明晰で音色の表現もまずまずであった。もう一つ、締って充実した音の品位の高さがあれば特級品だ。各種スイッチ類もノイズを出さないし、残留ノイズも少ない優秀なアンプである。

ヤマハ CA-2000

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプの音は1000IIIとは大分素性がちがう。パワーでは20W大きいのだが、音の勢いがまるでちがう。音に生命感があって、音楽が生きてくるのである。大変品のよい、洗練された質感はヤマハのアンプであることがわかるが、その品のよさだけでなく、エネルギッシュな充実感のあるプログラムソースでも、これなら不満がなく火花を散らすようなインパクトを持って鳴り切るのである。弦楽四重奏などを聴くと、端正な瑞々しさが生かされ美しいし、オーケストラでは、スケール感の大きい、しかし決して粗野にならない節度を持ったソノリティが演奏の質の高さをよく生かした。ピアノの再現も明るく透徹で、もう一つこくのある、油ののった艶のある音色の輝きが出きらない嫌いはあったが、実感溢れる生き生きしたものだった。美しい音と力がバランスしたこのアンプはMCインプット、Aクラス動作、抜群のSN比と、高級アンプの名に恥じない。

トリオ KA-9300

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 最高級プリメインアンプにランクされる製品としての実力は備えているアンプだと思う。音の品位は高いし、なにをかけてもその音楽的特質をよく再現する。フィッシャー=ディスカウの声はソフトで、たっぷりと響き、豊かだし、クヮルテットも、高域にやや味の素の利き過ぎる感じはあるが雰囲気はよく出る。オーケストラの強奏への安定性はよく堂々としたソノリティと、明解な音色の分離で混濁することはない。コーラスも透徹なさわやかさだ。ピアノは少々モノトーンに感じられ、もう一つデリカシーが足りないが、立体的な粒立ちがよい。ベースもよく弾む。ただ、全体に妙な表現で恐縮だが、ゴム質の質感があるのが聴けば聴くほど気になってくる。これば決して嫌な感触ではないし、人によっては快かろう。しかし、この粘りつくようなセクシータッチは、湿って重苦しく感じられてくる。もう一つ明快に晴れ上ってほしいものだと思う。

ダイヤトーン DA-U850

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプの音は充実している。細かいところを問題にする前に、この豊かで輝かしい音の質は高く評価したい。ところで、問題は弦楽器の高い音域での一種ヒステリックなキャラクターで、これは、金管や打楽器系の再現では気にならないが、ヴァイオリンでは明らかに癖として出てくる。弦楽四重奏を聴いて、その点を強く感じた。一つ一つの音の彫琢の深さ、音の持っている弾力性のある実感は見事なものだけに、ここがスムーズに出てくれば高級アンプとしても最高の部類に入れられると思う。フィッシャー=ディスカウの越えなどに聴かれる美しく気品にみちた再現、ピアノの芯ががっちりしたタッチ感と、その輝かしい音色の再生は立派であった。ベースもよく弾むし、力感も十分で、定位や空間の再現も申し分ないものだ。残留ノイズは、現在の高級アンプとしてもう一息といったところだろう。実力のあるプリメインアンプだと思う。

サンスイ AU-10000

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 艶と油気の多い充実したサウンドは、ジャズやポップスには大変魅力的な再生をしてくれる。音のクォリティは高く、ソリッドな密度の高い手応えのあるものだ。アン・バートンは、このアンプが今まで聴いた中ではベストといってよいほど、声の魅力が生き生きとしてくるし、「サイド・バイ・サイド」のピアノの音も大変満足した。演奏の所作とでもいえる、ちょっとしたニュアンスがアンプによってずい分変るのだが、このアンプで聴くといかにも人間味豊かな八城一夫らしいタッチの妙が生かされる。反面、フィッシャー=ディスカウの声は少々粘り、エッシェンバッハのピアノの中低音も不明瞭な感じになる。空間のレゾナンスガ中低域で強調される傾向だ。JBLを鳴らすと、実に巧みにコントロールがきいて中高域がスムーズである。弦楽四重奏には軽妙な味や品のいいデリカシーの再現が少々不満であった。トーン・ディフィートでは大きく音の鮮度が変るアンプだ。

ラックス L-309V

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 楽器や演奏の持つ美しい質感をよく再現するアンプで、ハイセンスの音の品位と風格を持っている。オーケストラの持つヴェルヴェットのようなクォリティ・トーンをよく再現するし、ピアノ一音一音のデリカシー、輝かしい音色を生き生きと再現する。こうした微妙な音色感が得られるか得られないかが、10万円を越えるアンプの評価の分れ道だと思うのだが、このアンプは、はっきりその水準を越えている。もちろん5〜6万円クラスのアンプにもそういうものがあるのだが、10万円以上のアンプでも、その再現をなし得ないものが多いのだ。ただ、文句をいいたくなるのは、ノイズレベルが最新最高の水準に至っていないことで、残留ノイズも少なくないし、ボリュウムを上げた時のノイズの増加も、ゲインに比して多過ぎる。最新の製品ではないのである程度はやむを得ないが少々気になる。見た目の風格も、さすがにベテランの落着きと重厚さで品がいい。

オーレックス SB-820

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 従来のオーレックスのアンプからは大きな躍進が感じられる。しかし、この価格の製品として歴戦錬磨の強豪の中で客観的に評価すると、中程度の出来といわざるを得ない。どんな音楽をかけても破綻なく、大きな違和感や、バランスをくずすことはない。しかし、よく聴きこむと、ずいぶん細かいニュアンスのとりこぼしがあることに気がつくのである。大きくは把んでいるが、魅力となる微妙なニュアンスまでは再現しきれないのだ。したがって、嫌な響きも出ない。ピアノの音色など、きわめてしっかりしたタッチで聴けるが、複雑な波形がどこかへ消え、まるでうぶ毛のないそしてドライな音になる。レコード自体限界に近い大編成のオーケストラのトゥッティなどは、よくコントロールされ、うるさい響きとならないので、かえってよく聴こえるようだ。デザイン意識過多で、パネルは、下絵のデッサンを書き過ぎたような必然性のないこり過ぎだ。

マランツ Model 1150MKII

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 しっかりした構築のくずれない骨太の音で、高域には輝きと肉がのっていて、華麗だがヒステリックにはならない。柔らかいニュアンス、繊細な品位の高さを要求されるクラシックの室内楽などより、実感溢れた人間表現を積極的に訴えるジャズなどに、この充実したサウンドはよりぴたりとくる。たくましく華麗な音というのが、このアンプの印象だ。こういう音の質感は、好みもあろうが、音楽の大きな表現力を生き生きと伝えてくれるので私は好きである。明らかに水彩ではなく、油のタッチに近い。パネルレイアウトはかなり個性的で中域のトーンコントロールもできるトリプル・トーンコントローラーを表に出したイメージからしても、能動的にマイ・サウンドを楽しもうという人に向くアンプだという感じがする。これで弦楽器のしっとりした柔軟な味わいや、コーラスでさわやかな透明感がよく再現されれば文句はないが、そういう点では中の出来。

ヤマハ CA-1000III

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプの音質の印象を書くのは難しい。どこといって悪いところがないと同時に、常に欲求不満を覚えるなにかがある。というより、なにかがなくて不満なのかもしれない。美しい音だし、解像力や立上りにも不満はない。つまり、試聴の際にはとっかかりとするファクターは全部合格してしまうのに、どうしてもどこかで音楽からはぐれてしまう冷たさ、質感の違和感がつきまとうのである。強いて私流に表現すると、音にエロティシズムがない。音に把まえどころのない、生命感の不足、とでもいおうか。高音域の細身の肉薄のキャラクターは弦楽器で明瞭に現われる。淡彩という感じが、CA1000以来ずっと続いていたが、たしかにMKIIIになって、弱々しいところはなくなった。しかし、音の平板な弾みのないところが、もう一つ物足りない。それ以外は客観的にいってアンプとして完璧に近い。機能、SN比、A級動作とMCヘッドアンプ、万事水準を越える性能だ。

オンキョー Integra A-722nII

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 A5やA7の新シリーズのグラマラスな中低音、少々野放図に感じられる音より、このアンプの音は品位では勝っている。やや細身の音と感じられる部分もあるし、中音の肉付きがもう少したっぷりしていいように感じるが、このぐらいコントロールされていたほうが、端正な音楽のバランスが得られる。帯域の広さとしてはむろん、なんの不満があるわけではなく、むしろA5、A7のほうがコントロール不足のように思えるのである。弦楽四重奏に聴かれる品のよいアンサンブルのまとまりと対照的なジャズやロックの迫力と締った音の充実感は、プリメインアンプとして第一級の実力を認めてもよいだろう。不満としては、もう少々潤沢な柔らかい艶の肌ざわりを持った弦の内声部とピアノのフェルトハンマーによる打弦感がリアルに出るといいと思われるが、このアンプについては、むしろこの気位の高い端然とした響きの姿を高く評価したと思う。

トリオ KA-7700D

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 きわめてワイドレンジを感じさせる音でありながら、音楽の表現に重要な中域の充実した聴きごたえのある音。高域に独特の色彩感と触感があってリアリティを効果づけているが、プログラムソースによっては、それが気になることがある。特に弦楽器のハーモニックが味つけ過多の印象でもう少し素直に、しなやかに響くべきではないかと思う。反面、こうした特質は、管やピアノにはプラスと働くようで、艶と輝きのある音色効果は演奏表現を魅力あるもにする。余裕のあるパワーはさすがに力強く、数Wの範囲で鳴っている時でも音が締って力強い。どちらかというとソリッドな音で、空間を漂う繊細なニュアンスの再現より、実在感のある楽器の直接音の再現に力を発揮するアンプのようである。トーン回路による音の変化は少ないほうだが、やや甘く、音がひっこむ感じになる。SN比は大変よく、特性の優秀な高性能アンプの名に恥じないものだ。

ソニー TA-5650

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 価格に比してパワーは小さいが、その分中味の充実さを買ってもらおうという意図は充分達成されたアンプだと思う。実際のパワー以上の余裕ある音質感は、音楽を豊かに再生し、神経質な線の細さを感じさせない。音の立体感があって弾力性に富み、血の通った、たくましさと暖かさをもっている。空間の再現がよく、ステレオフォニックな音場がふわっと両スピーカーの間にたちこめる様は見事である。こうした豊潤な音は、私が従来のソニーのアンプに持っていた印象とは別物であり、最近の同社のスピーカーの示した変身ぶりとも相通じるものがある。無機的な響きがどうしても気になっていたソニーのオーディオ機器が、これほど人間的な値の通いを感じさせるようになったのは同慶にたえない。音楽のように人間表現そのものが生命といってよいものにあっては、こうした血の通いや心の躍動をニュアンス豊かに再現してくれるものでなければなるまい。

ダイヤトーン DA-U750

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 音の解像力もいいし、張りのある充実した響きは特性のいいアンプであることがわかる。力の入ったアンプだが細かく聴くと、いくつか気になる点がある。まず、高音域が、線が細く、やや耳を刺す。鉛筆にたとえれば、H、2Hといったタッチである。本当は、HBのタッチがほしいのだが。それでいて、中音から低音にかけては、HBからBの方向の感触なのだ。低音は大変豊かで、やや鈍重と評したくなるような重苦しさを備えているが、これは組み合わせるスピーカーと部屋の問題で変わってもくるだろう。これで、高域がのびきっている優秀な特性に、しなやかな肉ののったものになればかなりよい。弦楽器の音が硬く細い線になるのが惜しまれるのである。これは外観上のイメージとも共通するものでしっかりときれいに作られていながら、余裕のない硬さを感じさせるのである。明解さは、この高域によるところが大かもしれぬが、どうしても耳障りなキャラクターが残る。

サンスイ AU-707

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 AU607のところで、空気感の再現のよさを指摘したと同時に、音が空芯だという表現を使った。この707では、この音の感触がぐっと密度が高くなり、いうならば、空気圧が上ったという充実感がある。それだけに607ほど、他のアンプと異った特徴というものは感じられなくなったけれど、音のよさ、品位は明らかに一枚も二枚も上手である。フィッシャー=ディスカウの声の気品と重厚、柔軟な風格はちゃんと再現するし、弦楽四重奏の美しさは特筆してもよい。高弦のフォルテで破綻がなく、それでいて弦の色彩感は色あせることがない。オーケストラのfffも音くずれがないし、弦管打が遊離せず、がっしりとハーモニーを聴かせる。相変らずの黒パネルは、より洗練されて、昇華され、品のいいメカニックなイメージで好ましい。立体感のあるアンプの姿に共通した、充実した音の優れたアンプである。欲ばれば、もう一つさわやかなプレゼンスがほしい。

オプトニカ SM-3510

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 やる気十分の力作であることは一目でわかるし、コントロールした限りでは、技術的に攻め込んでいることもよくわかる。残留ノイズの少なさ、各種スイッチ類のショックもなく、トーン回路のオン・オフ時の音の変化もほとんどない。3トランスフォーマー・トロイダルと銘打つように、左右パワー電源、プリ電源を独立させるなど、大変な努力の跡はうかがえる。しかし、音質は、高域に浅薄な品の悪さがあってけばけばしい。パネルデザインのイメージもきらびやかなもので、心なしか、音のイメージと共通したものを感じさせる。これが、このメーカーの持つ個性的感性なのかしれないが、そうだとしたら、音楽の魅力の把み方の次元が少々低すぎはしないか。プリメインアンプとしては、かなりの高級品にランクされる製品だけに、もっと格調ある音の再現ができなければ不満である。表面的な繊細華麗さに止っている音であった。

デンオン PMA-701

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプで一連の試聴レコードをかけると、不思議なキャラクターが加わる。ウッドベースは、エレキベースの表情を持ち始めるし、ピアノの音の抜けも悪く、冴えがない。フィッシャー=ディスカウの声は、気品が一つ落ちるし、アン・バートンの声は、娼婦的になるのである。オーケストラのfffは、コントロールを失うようだ。全体にさわやかさや、雰囲気が再現しきれないようだ。悪いことばかり並べたようだが、これを、そのまま極端に受け取られるとあまりこのアンプがかわいそうなので弁護すると、音の肌ざわりは、とげとげしたところがなくて、なめらかなほうだし、曇りの微妙なニュアンスを問題にしなければ、いわゆる歪み感はない。だから、このアンプだけを聴いていれば、そうしたことに気がつかない人もいるだろう。しかし、全帯域のエネルギー・スペクトラムが、どこか平均していないようなノイズのキャラクターも感じられるのである。

テクニクス SU-8080 (80A)

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 高い技術レベルに支えられたアンプだということが聴いてもよくわかる。プリメインアンプとしてユニークな構成で、インプットのイコライザーからダイレクトにパワーに入れるトーンディフィートなどの発想は新しい。音は、いかにも端正で立派である。品位が高く、色づけのない素直なもので好感がもてるけれど、豊潤なソノリティを出し切れないのが、もう一つ、このアンプの魅力に欠けるところだと感じられた。クヮルテート・イタリアーノのベートーヴェンの初期の弦楽四重奏など、フィリップスの華麗な音色をコントロールして格調の高い響きで聴かせてくれるが、オーケストラの中低域のニュアンスや、ピアノの巻線領域の豊かさなどの抑揚に、もう一つ血が通わない再生音になる。自分の作ったレコードにしか自信を持っていえないが、試聴に使った一枚では、明らかに意図したリズムの豊かな躍動に不足を感じた。客観的に素晴らしいアンプだと思うのだが......。

ビクター JA-S75

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 はからずも? パイオニアの8900IIと同価格、同データのアンプが、このJA−S75である。音質は、このアンプのほうがオーソドックスだという気がするが、裏返せばパイオニアのほうが、あらゆるソースのアラをかくして、音楽をそれらしく効果的に鳴らす魔力では勝っている。音のクォリティは、こちらのほうが落着いていて、長い間に飽きはこないと思えるのであるが、弦楽四重奏やオーケストラのトゥッティでの高弦のフォルテにおいての乱れが、やや耳を刺す。これは、レコードやカートリッジの段階での問題かもしれないのだが、アンプによっては、その乱れを巧みに馴らして耳障りな響きをおさえこむものがあるので、聴感上、実態の把握は難しい。残留ノイズは抜群に低く、多分ツインボリュウムによるのだろうが、しぼりこんだ時のノイズは高能率のスピーカーでも皆無に近い。トーン回路挿入時の音色の変化は少なく、総合的に優秀なアンプであった。

パイオニア SA-8900II

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 パイオニアのアンプはどれを聴いても、大変にまとまりのいい心憎い巧みさを感じる。たとえていうなら、あたかも英デッカのレコードがヴァイオリンの高音に独特のシルキーハイとでもいいたい巧妙な音色コントロールのノウハウを会得しているのに似ている。一般的に、音響機器の一つの苦手な音色は、高い弦楽器のフォルテにあって、生に聴かれる柔らかさ、瑞々しい艶、しなやかな肉付きといった特色が消えて、キンキン、ピーピーといった音になりやすいことは、オーディオにこっている人なら体験ずみだと思える。これを巧みにコントロールすると、こちらの実は葉ごまかされる。というより快く聴ける。この辺のノウハウがパイオニアのアンプにはあるに違いないと感じられるような音なのだ。80Wという余裕のあるパワーと快い美音のコンビネーションが、実用価値の高いアンプを作りあげている。トーン回路を入れると少し音にくもりが出るが惜しいが、いいアンプだ。

オットー DCA-1201

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 インテグラルアンプとして真面目に作られたアンプだということは外観からもよくわかる。しかし、音は、レコードに入っているはずの最も大切な微妙なニュアンスがよく再現されないので興をそがれる。ピアノの音色の重要な支配者といえる高調波成分がよく再現されないため、音が坊主で表情が出ないのだ。もっと複雑な音色をもった大オーケストラのトゥッティでは、むしろよくコントロールされた音くずれの少なさが表へ出て、そうした音色のデリカシーの不満が感じられなかった。これは、こちらの耳の識別能力の問題だと思う。単純なソロ楽器での音色の特色のほうが、デリカシーはよくわかるものだからである。このアンプの音は、よくいえば端正で、よくコントロールされたもの、逆にいうと、音の魅力は、ニュアンスの再現までがコントロールされて楽しめないということになるだろう。もう一次元上の音の感触、色彩感などの味の問題が残る。

オンキョー Integra A-7

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 フィッシャー=ディスカウの声の品位、自然さがよく出るし、ピアノ伴奏のこまかいニュアンス再現もよい。ただ間接音の響きが、やや大ざっぱに強調される傾向があり、少々スケールが大きくなりすぎる嫌いがある。ライヴネスがよく出るのはいいのだが、極端にいうと鳴り過ぎるという感じがあって、もう少し節度があるべきだ。中低域がグラマラスで高域が派手に響くアンプだから、概して品位の高い音楽や演奏には耳につく色づけが感じられるようだ。よく弾むベース、透明なクリスタルを思わせるようなピアノ、腹にこたえるバスドラムの響きなど、ジャズやロックには、大変に効果的であるし、力強く聴きごたえがある。これで、弦楽四重奏やオーケストラの落着いたソノリティと重厚な雰囲気を、より克明に再現し得たらよいのだが、やや力不足のようだ。もう一つ音の締り、ダンピングがきいて、音に芯ができるとよい。

ヤマハ CA-R1

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 きれいな音のアンプである。キメが細かく、帯域が広く、繊細感が魅力。同時に、結構力強さもあって、現代的な音というイメージである。しかし、どうも冷たいという印象が常につきまとう。今や、歪感とか周波数特性などのキャラクターが音から感じられるというアンプの時代ではないし、どのアンプも高度な物理特性を持っていながら、一つ一つの音の違いが依然として存在するのだから不思議といえば不思議である。私なりに感じる音のちがいは、質感という表現があてはまろうかと思うが、このアンプの質感にはエロティシズムがない。日本流にいえば色気というべきかもしれないが、西欧の音楽、楽器の魅力に不可欠な、もっと肉筆の弾力性に富んだ音の分厚さが再現されてほしいのでる。油ののったベースの音が、やや乾いて聴こえるし、弦楽器の高域も美しいには美しいが、血が通わない。MC型がダイレクトに使えるヘッドアンプ内蔵はあがたい。

サンスイ AU-607

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプの音質は、音が空間に浮遊する様を感じさせる点では出色のものだ。空間感とか、プレゼンスとかいう表現に近いことになるのだが、それら音場を連想させるイメージに加えて、ここで感じられるのは、音像(音源でもよい)そのものの実在感に空芯のイメージがあるとでもいいたいのである。これは、決して数多くのアンプが可能にしてくれるものではないし、スピーカーでも、このイメージが出るものとそうではないものとがあると私は思っている。概して、この感覚が得られるオーディオ・コンポーネントは、かなり練りに練られた高級品にしか見当らないものなのだ。BCIIが、空気を一杯にはらんで鳴り響いているような素晴らしいソノリティが楽しめたし、4343による、ピアノやベース、そして、ドラムスの実感も相当なものであったが、欲をいえば、この空芯感と、さらに充実したソリッドな実感が調和すれば、理想的といえる。一線を超えたアンプだ。

ソニー TA-3650

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプの音はいい。さわやかな高音域が、プレゼンスのよい、のびのびとした音場を再現してくれる。中低域も充実していて聴きごたえがある。スペンドールBCIIの個性的魅力もよく生かし、艶ののった瑞々しい音が生きる。きちんとした音像の輪郭、大オーケストラのfffにおける乱れのない迫力、ピアニシモにおける空間感も見事であった。どんなアンプでも、音質のコントロールは作為と偶然性が相半ばするものだと思うが、このアンプのコントロールは、スピーカーを鳴らして音楽を生き生きと聴くという実体に根ざした当を得たものだと思う。目的のために技術が駆使されるべきオーディオの本質を心得て作られたアンプだという印象を強くした。フィッシャー=ディスカウの声の柔らかさと厚味、アン・バートンの舌打ちの自然な水気? なえなかリアリティがある。ピシッとガラスがわれるようなピアノのハーモニクスも手にとるように聴こえる。

パイオニア SA-8800II

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 よく出来すぎているアンプというと最高の賛辞に聴こえるだろう。実際、商品として、価格のバランスで見れば、最高の賛辞を呈してもよいと思うのだ、このアンプには......。パイオニアのアンプというのは、この点で世界一といっても過言ではないだろう。本当はこれで終り、これ以上は書く必要はないのだろうが、音や音楽というものは面白いもので、実は、ここから先が楽しいところであり苦しいところなのではないか。このアンプは、スペンドールを鳴らしても、JBLを鳴らしても、不思議に同じような音と響きで鳴らしてしまう。それは決して嫌な音でも響きでもない。いや、むしろ、快い音といえるだろう。しかし、ある種の組合せで、この二つのスピーカーが最高に魅力をたたえて鳴るような鳴り方とはちがうのである。どこも欠点はない。また、どこといってふるいつきたくなるほどはの魅力もない。このクラスの商品としてはやはり最高の商品なのだろうが......。

Lo-D HA-5300

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 日立のお家芸、ダイナハーモニーのアンプであるが、その割には、この価格で60W×2というスペックは、びっくり仰天するほどのもではない。細かいところに神経の配られたアンプだが、どうもその神経の配り方が、私がアンプに要求するポイントとずれている。たとえば、ボリュウムのアッテネート目盛りにライティングシステムを取入れているところなどは、大変なこりようだと思うが、そのわりには、レバースイッチの操作ノイズなどが大きく感触が安っぽい。そうしたことはともかく、肝心の音だが、あまり繊細なうるささを要求しなければ、なんでも適当な華やかさと、粘りで再現する効果音である。決して品位を要求する音楽の質の再現までは望めないが......。楽器のもつハーモニクス領域の再生が、あまりに大ざっぱなため、微妙なニュアンスや魅力が再現されないのが惜しい。残たゅうのイズは普通。トーンディフィートすると増えるというのは不思議だ。

デンオン PMA-501

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 フォノ・クロストーク・キャンセラーという武器を備えたアンプ。これを調整して使うと相当な効果がある。音場が一段と拡がってステレオフォニックな空間再現のイメージがはっきりと変るのである。この回路の入切による音質の変化はないので、大変有効なものだと思う。このアンプの音は、なにを聴いてもプログラムソースの持つ音、音楽のニュアンスをよく再現し、音楽を聴く意欲が損なわれない。どちらかというと、大型の高能率型のSPがよく、音の品位の高い、安定した再生が可能である。瑞々しい魅力が、やや硬いニュアンスとして再生される傾向にあるが、それだけに、音の充実感を強く訴えかけるのである。このクラスとしては音質面で高く評価したいアンプだ。ただし、トーン・ディフィートやモードスイッチなどの切替によるイズが出るのは、現在のアンプの水準からしてあまりにも無神経に過ぎる。それも、不安定な出方で、精神衛生上きわめて有害だ。

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