2009年9月アーカイブ

ビクター JA-S41

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 大変オーソドックスな響きを聴かせてくれるアンプだ。以前に他の機会にこのアンプを聴いた時には、もっと豊潤な、魅力を感じさせる音だという印象だったのだが、今回の試聴では、そうした効果的な響きがなく、ある面、物足りなさを感じさせる音であった。スペンドールBCIIでは、この傾向が強く出て、魅力に乏しく、音楽の楽しさが生きてこないようで、JBL4343では、オーソドックスなよさが、端正な再生を可能にしてくれる。このクラスの製品としては実際に組み合わせられるスピーカーなどの価格的制約を考えれば、もう少し、美しいと感じさせる音を持ったアンプの方が圧倒的に多いし、その必然性もあるだろう。このアンプは、今回聴いた限りでは、大変真面目な音に徹していて、総合的には高く評価できるように思われるが、現実には商品性の難しい立場にある。一言にしていえばあきのこない音だ。聴感上のSN比は大変優れ残留ノイズは極少だ。

トリオ KA-7100D

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 細工はりゅうりゅうといった感じの気合いの入った力作である。本質的な音の素性はかなり品位が高いが、それに加えて、なかなか堂に入った味つけが巧みに施されている。充分にびきった低域にバランスさせるべくコントロールされた高音域の輝き、艶が、ソースによって、あるいは、スピーカーによっては、大変効果的に響くのだが、スペンドールでは効果として働き、JBLではその逆の傾向になった。ベーゼンドルファー・ピアノの音はしっとりした味わいと、品のよいソノリティが、少々ヒステリックになり、日々が安っぽい。弦楽四重奏では、内声部から低音にかけての厚みが豊かなソノリティをつくり効果的だが、高弦のハーモニクスがやや耳をさす。大オーケストラのfffでの音の締りと明晰さはこのクラスとしては秀でていて、音くずれが少ない。TC回路を入れると一枚ベールをかぶるのは問題だが、残留ノイズの少ないことは特筆に値する。

オンキョー Integra A-5

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菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 暖かさと、まろやかさが、適宜、明解な力強さとバランスした音だ。スペンドールBCIIで聴くフィッシャー=ディスカウの声のふっくらとした丸いふくらみと豊かな余韻、弦楽器のハーモニーと、個々の楽器の分離の明解さと整ったバランスは見事であった。45W×2というパワーは、現在水準からして決して大きいほうではないが、このアンプの持っている豊かな音質感が、パワー不足を感じさせない。降雨率のJBL4343をドライヴすると、相当な音圧レベルでも安定したプレイバックが楽しめる。大編成オーケストラのトゥッティのfffともなると、もう一つ、スピーカーを引き締めて、がっしりとした音の構築を感じさせて欲しい気もするし、鋭いピアノのアタックの一音一音には、重量感と力感がほしい。しかし、「サイド・バイ・サイドII」の八城一夫の−ベーゼンドルファーの気分の再現は上々で、個クラスでは優れた製品。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーディオテクニカのVM型カートリッジは、発電方式としてはMM型であるが、V字型に配置された2個のマグネットをもつために、同社ではVM型と呼んでいる。このタイプは、1967年の開発以来、カッターヘッドと相似形の動作を理想として数多くの製品が開発され、発展してきたが、今回のニューGシリーズは、従来のモデルをベースとして蓄積された、細やかなノウハウを集めて、一段と完成度を高めたシェル付カートリッジでいずれもオーソドックスな2チャンネルステレオ専用のタイプである。ヘッドシェルは、音質追究の結果から採用されたマグネシュウム合金製のMG10型で、すでに音の良いヘッドシェルとして高い評価を得ているものである。なお、高級モデルのAT15にかぎり、ヘッドシェルなしのタイプも用意されている。
 AT15Ea/Gは、とくに、セレクトされたプレステージモデルであるAT20型を除けば、事実上のオーディオテクニカのトップモデルであり、ニューGシリーズでは最高級製品である。
 カートリッジボディは、軽合金のダイキャスト製で、従来のAT15型の金色から銀色に変わった。また、スタイラスホルダー部分は、ボディカラーの変更にともなって、インディゴブルーとなり、ボディ前面のテクニカのマークの色も同様に変わった。また、新しくスタイラスホルダーのプロテクターの部分に、型番が記されるようになったため、ヘッドシェル装着時にも型番の識別が容易になった。
 振動系は、大幅に改良が加えられているようだ。カンチレバーは、超硬質軽合金と発表されているが、表面の色が、従来のいわゆるアルミ色から、ちょっと見には鉄に見える色に変わっているが、明らかに非磁性体である。テーパード型カンチレバーは、新開発のツイステッドワイアーで支持されるが、ダンパーの色も従来とは異なっている。また、マグネットは、これも従来の円柱状から角柱状に変わっている。
 AT14Ea/Gは、AT15Ea/Gに準じたモデルである。変わっている点は、カンチレバーを支えるワイアーが、金メッキをしたピアノ線となったことと、コイルのインピーダンスが高く、AT15Ea/Gよりも、25%高い出力電圧を得ていることである。ボディフレームは、軽合金ダイキャストと同等なシールド効果をもち、強度を高める硬質メッキ処理が施されている。スタイラスホルダーの色は、エメラルドグリーンで、ボディのシルバーと鮮やかにコントラストをつくっている。
 ニューGシリーズは、振動系が大幅に改良されているために、音質的には、従来のトーンを一段とリファインし、さらに、力強く、粒立ちがカッチリとしたクリアーさが加わっているのが目立つ。音場感的にも、前後方向の奥行きが明瞭に再現され、音像定位が安定で、明快になっていると思う。

テクニクス EPA-100

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスの新しいユニバーサル型トーンアームは、可変ダイナミックダンピング方式という大変にユニークなメソッドを採用した、精密級の精度と仕上げをもつ高性能アームである。
 軸受構造は、ほぼ矩形の内輪と外輪を組み合わせたジンバル方式が採用され、高感度化を実現する目的で、摩擦係数が小さい、スーパーフィニッシュ・ルビーボールを5個使うベアリングを4個組み込み、共振制御式としては初動感度5mgという値を誇っている。
 パイプ部は、チタンで、アルミとくらべて質量を85%減少でき、内部損失が大きく共振が少ないメリットがある。さらに、この材料は特殊窒化法により硬化処理がおこなわれ、機械的強度を約1・6倍に高めて、軽実効質量トーンアームとしている。なお、ヘッドシェルは、粘弾性剤で防振し、無共振化したタイプで、オーバーバング調整のカーソル機構を備えている。
 本機の最大の特徴である制動可変型ダイナミックダンピング機構は、従来不可能であった使用カートリッジのコンプライアンスの変化による、トーンアームの低域共振周波数の変化に対応する制動を、任意にコントロールすることができる。これにより、各種の高性能カートリッジを、もっとも適した条件で使用することができる。つまり、ユニバーサルアームの本来の意味での発展型ということができる。実際のメカニズムは、後部のウェイトの内部に組み込まれた可動ウェイトをシリコンオイルダンプのスプリングと2個のマグネットという2組のダンピング機構で浮動保持し、アームの低域共振を制動するタイプで、共振制動周波数はセレクターにより選択可能である。なお、セレクター目盛は使用カートリッジのコンプライアンスにより決まることになる。

テクニクス SP-20

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスの新しいフォノモーターは、同社のトップモデルであるSP10MK2を基本として、その高性能を維持しながらコストダウンをはかったコストパフォーマンスが高いモデルである。
 外観上からは、SP10MK2の本体と変わりはないが、色は黒い特殊な熱処理によるリンクル仕上げになった。
 ターンテーブルは、直径32cm、重量2・4kg、慣性質量320kg・㎠の重量級で、クォーツ・フェイズドロック方式の新開発全周積分型プッシュプルFGサーボモーターによってダイレクトにドライブされる。このモーターには、純電子式ブレーキが備わり、スタート時1/4開店で定速に達し、ロジックコントロールでワンタッチで滑らかに停止をする。負荷変動は1・5kg・cmの制動トルクに対して変化が生じないというから、針圧2gで150本のアームを同時に使っても速度変化がないことを意味しているといってよい。なお、別売のプレーヤーベースSH10B4があり、SP10MK2とSP20に使用可能である。

ビクター TT-71, QL-7R

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターのクォーツロック方式のダイレクトドライブ・ターンテーブルは、すでに、TT101、TT81の2モデルがあり、特長あるデザインと高い性能、とりわけ音が良いターンテーブルとして、高い評価を得ているが、このシリーズの第3弾製品として、今回、大幅にコストダウンされたTT71が発売され、同時にこのターンテーブルを使用したプレーヤーシステムQL7Rも発売された。
 TT71は、デザインが上級モデルの特長がある感じから、単体のフォノモーターとしては、オーソドックスな印象の円盤状のタイプに変わっている。ターンテーブルは、外周はストロボパターンが刻まれた直径31・3cm、重量2・2kgのアルミダイキャスト製で、慣性質量は、350kg・㎠ある。駆動モーターは、TT81と同じDC型12極・24スロットFGサーボモーターで、1回転に180個のパルスを発生するFG型速度検出機構をモーターユニットに内蔵している。このタイプは、起動特性、動的な耐負荷性、ワウ・フラッター特性が優れている特長がある。
 クォーツロック・サーボは9504kHzの水晶で発振した安定周波数をIC分周回路で周波数を低くし、これを基準信号として位相比較回路に送り、これとFGからのパルスを比較して、モーターの速度誤差があれば、2つの信号の位相差によってモーター駆動回路はコントロールされ、ターンテーブル回転を規定の速度に保つ働きをする。
 ストロボ照明電源は、商用電源ではなく水晶の安定した周波数による信号を電源としているため、ストロボのユレはほぼ皆無としている。
 ターンテーブルのコントロールは、タッチ・センサー方式で、回転数切替とストップは触れるだけで動作をするタイプだ。なお、ストップは、制動用ブレーキパッドをプランジャーでコントロールする方式で、メカニカルブレーキ独特の摺動音が聞かれるのが、いかにもディスク的な感じである。
 QL7Rのプレーヤーベースは、共振と制動を抑えた設計で、インシュレーターには、ゴムとスプリングの長所をいかし、欠点を抑えたパラレルアイソレーターで、ゴムにスプリングをコイル状に取りつけてあり、タテ、ヨコ両方向の振動吸収に高いメリットがある。
 トーンアームは、UA7045から高さ微調整機構などを省いたUA5045型で、軸受けはニュー・ジンバルサポート、パイプは防振材入り、ヘッドスクリュー部分は、2重構造のチャッキングロックタイプなどの特長をもち、ヘッドシェルは、溶湯鋳造の純アルミ製で共振がない、音のよいヘッドシェルである。
 なお、カートリッジは付属せず、上級モデルには備わっていた速度微調整は、本機では省かれて、2速度の固定型になっている。シンプルで内容の濃い製品である。

マイクロ DD-6

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソリッド5以来のスリムでシンプルなデザインを受け継いだ新製品である。
 ターンテーブルは、外周に投光式ストロボスコープをもつ直径33cm、重量1・2kgのアルミダイキャスト製で、FGサーボ型のACモーターでダイレクトにドライブされている。このタイプのモーターは、耐負荷特性が優れ、温度ドリフトが少なく、安定した回転が得られるメリットがある。
 トーンアームは、定評があるダイナミックバランス型アームMA505と同等な性能をもつタイプで、演奏中にも針圧の調整が可能であり、最近の高性能化したカートリッジの聴感上での適性針圧を探し出せる大きな特長をもっている。なお、ヘッドシェルは、共振が少なく剛性が高いH303が付属している。このアームは、別売サブウェイトを使えば、重量級カートリッジの使用が可能である。
 プレーヤーベースは、天然木を使ったスリムでコンパクトなタイプだが、穴あけ部分を最小に抑えて実効質量を大きくし、共振点を低くし、ハウリングに強い構造としている。なお、ベース側面に別売サブアームベースを使用すれば、2本のトーンアーム使用が可能となる点も見逃せない。

マイクロ DD-100

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ユニークなデザインをもつプレーヤーシステムDDX1000を発表して好評を得ているマイクロから、同社のプレステージモデルともいうべき大型のプレーヤーシステムDD100が発表された。
 このシステムは、民生機としては珍しい16インチ直径の超大型ターンテーブルを採用した点に特長がある。この種の大型ターンテーブルは、フライホイール効果が非常に大きく、一般的な30cm径のタイプにくらべて、よりスムーズな定速回転が得られるメリットがある。ちなみに、本機に採用されたターンテーブルは、直径40cm、重量5・2kg、慣性質量1500kg・㎠と驚異的に大きい。駆動モーターは、クォーツロックによるPLLサーボ方式のダイレクト型で、水晶発振器からの高精度な基準周波数でモーターからの回転周波数をフェイズロックするため確実に規定回転数が得られ、ストロボスコープを必要としない。なお、速度調整を必要とする場合には、クォーツロックを解除すれば、±6%の微調は可能である。
 トーンアームは、ダイナミックバランス型のMA505の延長型で有効長267mmあり、別売サブウェイトを使用すれば、オルトフォンSPU−Gなどの重量級カートリッジが使用可能である。
 プレーヤーベースは、剛性を高め、耐ハウリング性を向上する目的で、厚さ1mm、重量3kgの鉛板2枚をサンドイッチ状にはさんだタイプで重量は12kgもある。
 機能面では、アームベース部分に、カートリッジ負荷抵抗とコンデンサー容量切替スイッチが付属している。なお、電源部はセパレート型である。

トリオ KP-7300

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオから新しく発表されたプレーヤーシステムは、比較的にローコストなモデルだが、プレーヤーシステムの基本であるプレーヤーベースをはじめ、トルクの大きなダイレクトドライブ用モーター、重量級のターンテーブルの採用などに代表される、使用部品を充分に検討して開発されたオーソドックスな製品である。
 プレーヤーペースは、プレーヤーシステムの性能を向上させるための重要な部分であるが、ここでは、骨組みとして、石綿を加えて高圧成形したコンクリート一種であるMC材を使用している。この材料は、吸水率、含水率が低く、剛性が高い特長をもち、外部振動に強いシステムとすることに大きく役立っている。また、ベースの底板部分は、1・6mm厚の鉄板を使用しているのも、この部分の共振を抑えるための配慮である。また、ダストカバーは、スピーカーからの音のエネルギーを大量に受ける上面の肉厚を厚くし、各コーナーの内側は、三角形の肉もりを施して剛性を上げ、材料には振動減衰率が大きいアクリル材を使用するなどして機械的な強度の高いカバーとしている。また、プレーヤーシステムの幾何学的中心に重心がないと、高い周波数と低い周波数の2つの共振点が出来ることになり、防振性の上で大きなマイナスになるとの見解から、ダストカバーの開閉時にも、総合的な重心の移動を極小にできるような、カバーの重心分布が考えられているとのことである。
 ターンテーブルは、最大トルク1・1kg・cmの20極・30スロットDCサーボモーターで、ダイレクトに駆動されるが、ターンテーブル自体は、直径33cm、重量2・6kgのアルミ合金ダイキャスト製で、ゴムシートを含む慣性質量は、440kg・㎠と、このクラスの製品としてはかなり大きな値を得ている。なお、ゴムシートは、肉厚が6mmあり、ターンテーブルの分割共振を抑えているとのことだ。
 トーンアームは、S字型のスタティックバランス型で、パイプ部分は、直径10mm、肉厚1mmのアルミパイプを硬質アルマイト仕上げし、パイプのネックは、真鍮材で作った充分な長さのパイプで固定してある。ヘッドシェルは、アルミダイキャスト製で、フィンガー部分も一体成型として強度を高めたタイプである。
 付属カートリッジは、デュアルマグネットタイプのMM型で、音の傾向としては帯域が広く、とくにパルシブな音が多いジャズ、ロック系の音楽に適した、ガチッとした音をもっているとのことである。
 なお、プレーヤーベース部分のインシュレーターは、再生音、耐ハウリングの両面から検討された新開発のタイプで、上下方向の防振はもとより、横方向および回転軸の動きを制動する特長があるデュアルサスペンション方式である。ストロボスコープは、付属の小型円板をターンテーブルのスピンドルに入れて使うタイプである。

テクニクス SL-01

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このプレーヤーシステムは、ダイレクトドライブ型フォノモーターを最初に開発し、商品化をしたテクニクスが、数多くのダイレクトドライブ方式のプレーヤーシステムを送り出した経験をベースとして、再び、ダイレクトドライブ方式の原点にもどってプレーヤーシステムを見直して、つくり出したともいうべき製品で、このことは、新しい型番からもうかがい知ることができると思う。
 プレーヤーシステムとしては、色調がブラックとなり、デザインもスリムになったために、外観から受ける印象は、引き締まって、実際外形寸法よりは、かなり小型に感じられる。
 プレーヤーベースは、不要な空間を可能な限り減らす目的と、不要振動をカットするハイマス設計アルミダイキャストのキャビネットと防振構造をもつ亜鉛ダイキャストによる剛体設計のベースを粘弾性材を介し、三重構造とした、複合防振構造とし、インシュレーターには、粘弾性定数を充分に検討して決められた、大型の防振効果が高いタイプを採用して、トータルなシステムとしての耐ハウリング性、音質の向上が計られている。
 フォノモーターユニットは、基本的には、新発売のSP20と同等のものである。ターンテーブルは、直径30・1cm、重量2・7kgと、SP20よりも、直径がやや小さく、重量がやや大きく、慣性質量は330kg・㎠で、これは、少し大きな値となっているが、まず同じと考えてよいだろう。このターンテーブルの内側には、テクニクス独自のモーターのローター部分が組み込まれ、一体構造としている。サーボ系は、水晶振動子を使う基準発振器とプッシュプルFGとの組合せによる位相制御方式で、駆動電子回路には、新開発のDDモーター用ワンチップIC、AN640を使用し、全波両方向駆動により効率を高めている。なお、ブレーキ機構は、純電子式で、スムーズに働くタイプである。
 トーンアームは、亜鉛ダイキャスト製のしっかりとしたアームベースにセットされている。このアームの軸受部分は、EPA100アームに似たジンバル型で、専用ピボットベアリングの使用により、水平、垂直ともに初動感度7mgという高感度を得ている。ヘッドシェルは、オーバーハング調整付の複合防振構造である。アームのアクセサリーとしては、アンチスケートコントロールとオイルダンプ型リフターがある。
 SL01は、外観からは非常にシンプルな印象を受けるが、内容は、もっとも現代型のプレーヤーシステムらしい最新の技術をもりこんだ密度の高いものがある。実際の使用でも、アームの下側にコントロールが無いために、操作性が優れ、一条一列シマ目のストロボはLED照明で見やすい。また、音的にも、まさしくナチュラルなバランスと適度な質感の再現性があって、非常に好ましい印象の製品である。

ビクター JT-V75

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 FM・IF段、MPX部、AM部、出力アンプ部、チューニングホールド部、それに333Hz発振器をすべてIC化したチューナーである。
 主な特長は、300%の過変調に対応した低歪と広いダイナミックレンジをもつ出力アンプ部、最良同調点を保つチューニングホールド回路、録音レベル設定用発振器、、遅延特性を保ちながら選択度をさらに改善した4レゾネーター型セラミックフィルター、ダブルミューティング回路、ミラー構造の目盛と凸型文字使用のダイアルである。

テクニクス ST-8080

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プリメインアンプSU8080のペアチューナーである。FMフロントエンドは、4連バリコン使用であり、IF段は、4共振素子型セラミックフィルター4個(1個は狭帯域型)とIC2個の組合せ、MPX部は、波形伝送特性を向上させる独自のパイロット信号キャンセル回路がある。また、シグナルメーターは、65・2dBfまで直線指示をする電解強度比例型である。付属機能には録音レベル設定用の440Hz50%変調に相当する発振器を内蔵している。

トリオ KT-9700

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 外観からは、あまり特長めいたものを感じさせないモデルだが、内容では新しいFMチューナーの技術をフルに盛り込んだFMのトリオらしい快心作である。
 フロントエンドは、RF増幅にリニアリティが優れたDD−MOS型FET、バランスドタイプのミキサーには、2乗特性が優れたDD−MOS型FETを使用し、バリコンはエアーギャップが広い局部発振器内蔵型8連を採用し、アンテナ入力回路がシングル、段間がトリプル、トリプルチューニングとしている。なお、局部発振はバッファーアンプ付である。
 IF段は、帯域3段切替で、ワイドでは6ポールLC集中型フィルター、ノーマルでは、12ポールLC集中型、さらにナローでは、4素子3段のセラミックフィルターを使い、ワイドとノーマルにはバッファーアンプが入る。また、IF段は、10・7MHzの第1IFと水晶発振器による1・93MHzの第2IFをもつダブルコンバート方式で、これは中間周波数の約10倍の周波数特性が要求されるパルスカウント方式の検波段で、パルス変換を容易にすると同時に、相対周波数偏位をあげて検波効率を高め、SN比を上げる目的があるためである。
 パルスカウント方式の検波段は、直線検波が可能なため歪みが少なく、調整箇所がないため、安定度が高い特長がある。直線性の優れている利点は、多少の同調ズレがあっても歪率が悪化せず、シンセサイザーやAFCで周波数をロックする必要がない。
 MPX部は、トリオ独自のDSDC方式で、ビートを抑えるPLLループ応答切替、ノルトン変換した7素子ローパスフィルターを使うキャリアリークフィルターがある。オーディオアンプは、差動直結オペレーショナルアンプで、300%の過変調時でも歪の劣化は少ない。
 機能面では、80dBまでの信号強度が読める直線目盛のシグナルメーター、38kHz検出型マルチパスメーター、デビエーションメーター、2段切替のミューティングレベル、2系統のアンテナを切替使用できるアンテナ切替スイッチなどがある。
 本機は、現時点の高級チューナーとして頂点に位置する音質と性能をもっている。とくに音質は、オーソドックスなもので、最近聴いたチューナーのなかでは抜群である。選局のフィーリングは優れているが、繊細な同調ツマミの動きにダイアル指針が敏感に反応しない点が大変に残念である。

ソニー ST-A7B

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 長らくの間高級チューナーの発表がなかったソニーから、同社のトップモデルのプリメインアンプTA−F7Bの発売と同時に、ペアチューナーST−A7Bが発売されることになった。
 パネルフェイスでの特長は、何といっても受信周波数をデジタルで表示するディスプレイの採用であろう。本機では、受信周波数は、一般の横行ダイアルでチェックする他に、独立したデジタルディスプレーで正確な受信周波数を読み取ることができる。つまり、ダブルに表示をするわけだ。
 FMフロントエンドは、デュアルMOS型FETのRF増幅、デュアルFETによるバランスドミキサーと5連バリコンの組合せである。局部発振は、水晶を基準発振器として100kHzおきにロックするタイプで、精度が高く、刑事変化、温度変化による同調ズレが皆無に近く、正確な同調点を保つことが可能である。なお、ロック状態はロックインジケーターで確認可能である。IF段は、帯域2段切替型で、ノーマルではユニフェイズフィルター、ナローでは、さらに選択度を重視したユニフェイズフィルターが加わる。MPX部は、PLL・ICにデュアルFET使用の差動2段のプリアンプを設け、PLL・ICの出力をプリアンプに負帰還する構成で、ビート音を除く、ビートカットフィルターを備えている。オーディオアンプは、電源部に定電圧の±2電源を採用した音質重視設計である。なお、完全に独立したAMチューナー部をもち、FMダイアル右端に、専用ドラム型ダイアルが組み込まれている。
 本機は、ダイアル系がスムーズなため、選局のフィーリングは、さすがに高級機らしい印象である。放送局の同調点は、ロックインジケーターでも確認できるが、ダイアル指針が同調時には上下2段のLEDが発光し確認は容易である。音質は、大変にプリメインアンプTA−F7Bに似ており、粒立ちが細かく、豊かで軽い感じの中低域と伸びやかな高域が特長である。

デンオン PMA-701, PMA-501

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デザインを変えてイメージチェンジをした2機種の新製品は、デザイン以上に大変にユニークな機能を備えていることが特長である。この機能は、カートリッジのクロストーク特性をアンプ側で電気的にコントロールするためのPCC(フォノ・クロストーク・キャンセラー)と名付けられたものである。
 一般にカートリッジのクロストークは、中域の条件が良い状態でも、−20dB〜−30dB程度で、アンプ側のフォノ入力からスピーカー端子までのクロストークにくらべて大幅に劣っていることは、よく知られていることである。カートリッジのクロストークの位相特性を調べると位相差が0°付近と180°付近にあることから、左チャンネルから右チャンネルへのクロストークを例にとると、第一に左チャンネルの信号を適当な値で取り出し、極性を反転して右チャンネルに加えれば打消しにより数dB以上の改善が期待できる。第二に、第一の方法により打消すことができないクロストーク分は、信号分との位相差が±90°の成分であり、このためには移相器が有効であろう。
 以上の予想を基本として実験の結果は、周波数によっては10dB以上の改善が見られたとのことで、実際のPCCは、L→R、R→Lの両方でキャンセラーを動作させる必要があり、各チャンネルを2個のツマミで調整することになる。なお、カートリッジのクロストークは、アームへの取付条件までを含めれば、1個毎に異なるために個別の調整が必要で、その目的のために、調整用レコードがアンプに付属している。
 回路構成上の特長は、フォノ入力回路は切替スイッチやシールド線を使用せずイコライザー段に直結とし、入力インピータンス特性を向上させ、併せてそれらによるSN比の低下を防いでいる。また、電源部はデンオンのプリメインアンプとしては、はじめてのパワーアンプのB級増幅部分での左右独立トランスの採用の電圧増幅段、プリアンプ部専用の電源トランスをもつ、3電源トランス方式が使われている。
 PMA701と501の違いは、出力が70W+70Wと50W+50W、機能的には後者には、ハイフィルターがない。
 PCCによ、カートリッジのクロストーク調整は、付属している17cm盤のテストトーンのバンドを使っておこなう。片チャンネルについて、2個のコントロールを交互に調整して、信号が最小になる位置を探せば、調整は完了する。この調整は、割合いに容易であり、PCCスイッチのON・OFFで、クロストークの改善度が確認できる。効果は、かなり大きくPCCのONで、ワーブルトーンの調整信号音は、大幅に減少することが判るはずだ。音質的な変化は、音が全体にスッキリとして、間接音成分的な、あいまいな感じがなくなり、音像の輪郭が、一段とクッキリとして浮かび上がるようになる。このような効果は、ベースとなるアンプのクォリティが充分に高くないと望めないことだけに、新しい2機種のプリメインアンプは、アンプとして、デンオンらしいクォリティの高さがあることを裏付けているわけだ。この結果から予想すれば、もし単体ユニットでPCCが発売されるとしたら、より高級機との組合せで効果がありそうだ。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新しいインテグラは、型番がシンプルな1桁に変わり、デザイン面でもまったく従来のイメージを一新している。
 このシリーズは、開発当初からアンプ動特性を重視し、音楽的な完成度の高さが追求されてきたが、今回一歩進んで、〝ローインピーダンス化4ポイント方式による強力電源回路と給配電ライン〟を中心とした設計により、音楽の感動、興奮といった物理上のハイファイ再生とは次元を異にした芸術領域の音楽成分を充分に再現できる、豊かな芸術性を秘めた新インテグラに発展しているとのことである。
 ローインピーダンス化4ポイント方式とは、①等価直列抵抗を特に小さくした大容量電解コンデンサー ②極太のローインピーダンスケーブル ③大型パワートランス ④徹底したブス(母線)アースラインの採用でアースを含めた給配電ラインと電源部との総合インピーダンスを可能な限り低く設計し、これにより、左右チャンネル間および同一チャンネル内における相互干渉を排除するとともに、強力なエネルギー供給体制をとり、とくに大振幅時の立上がり特性の改善とピークパワーの確保を計ろうとするものである。
 回路構成は、差動1段A級プッシュプルのイコライザー段、差動1段3石構成のオペレーショナルアンプ型のトーンコントロール段、ドライブ段にA級プッシュプル方式を採用したパワーアンプである。
 A7とA5の違いは、パワーが60W+60Wと45W+45W、イコライザー許容入力が230mVと170mVをはじめ、パネル面の機能では、A5でボリュウムコントロールのdB表示、セレクターでのAUX入力、トーンコントロールのターンオーバー切替、ハイカットフィルター、スピーカー切替スイッチのA+Bが、それぞれ省かれている。

マランツ Model 1150MKII

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来の♯1150を基本に、細部の改良が加えられた新製品である。外観、機能などからは、従来のモデルとさして変化はなくいわばMKIIらしいMKIIといえる。
 音質的には、全体に従来のモデルに比較して、音が一段と鮮明になり、とくに、低域の安定度が増して、むしろ、上級機♯1250に近づいた感じが強い。また、一般にドライブし難い、静電型やダイナミックタイプ平板型スピーカーに表示パワー以上のパワーが送り込めるのも、ひとつの特長である。パルシブな音の再生は見事であり、反応が早い音を聴かせるのは、この♯1150IIの魅力であろう。

テクニクス SU-8080

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 機能的に整理されたパネルフェイスは、類型的なパネルをもつ例が多いプリメインアンプとしては際立った印象を受けるが、本機は、内容としてもハイレベルインプット以後は、完全にDCアンプ化が可能という、いわば挑戦的な新しさがある。
 回路構成上のポイントとなっているのは、DCアンプ構成のパワーアンプ部である。通例とは異なって、初段の差動増幅用にFETではなく、デュアルトランジスターを採用したパワーアンプ部は、フロントパネルのメインアンプ・インプットスイッチをダイレクトにすると利得が42dBというハイゲインアンプとなり、AUXなどのハイレベル入力は直接パワー部に入り、結合コンデンサーレスのDCアンプとなる。セレクターがヴィア・トーンコントロールの場合には、ハイレベル入力は、トーンコントロール回路を通りパワー部に入るが、このときには、パワーアンプゲインは28dBとなり、トーンコントロール段の利得は14dBと加算してトータルで42dBとなる。また、オーディオミューティングも、パワー部のNF量を14dB変化していっていることも特長である。この構成が、テクニクスでプリメインアンプならではのDC化といっている理由である。
 機能面では、イコライザー段に内蔵されたサブソニックフィルター、カートリッジ負荷抵抗と容量の各2段切替、DCアンプ構成時に、ハイレベル入力に接続された機器からの直流成分の洩れからスピーカーを保護する、カットオフ2Hzの直流カットスイッチなどがある。
 SU8080は、色付けが感じられないストレートな音をもっている。従来のテクニクスアンプよりも粒立ちが明確で、聴感上で、力強さが加わっている。

ソニー TA-F7B

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全般的にプリメインアンプの焦点は、パワー対価格に絞られているようであるが、ソニーから新発売されたプリメインアンプTA−F7Bは、価格的にもプリメインアンプトップエンドにあるだけに、量的なグレイドアップというよりは、むしろ本質的な質的向上にポイントをおいた、いわばプリメインアンプの形態をとってはいるが、質的にはセパレート型アンプの内容をもった製品と考えることができる。
 外観上は、まずパネルフェイスの色調がソニーのアンプとしては、はじめてのブラック系に仕上げてあることが特長であり、型番末尾のBは、ブラックを意味している。
 回路構成上の特長は、プリアンプ部の各ユニットアンプが初段FETを使うDCアンプ構成であり、パワーアンプ部もDCアンプ構成で、初段がデュアルFETによる差動増幅、出力段は、ユニークなV−FETと高周波トランジスターをカスコード接続にしたパラレルプッシュプル回路を使う純コンプリメンタリーSEPP・OCLである。ユニットアンプ間の結合コンデンサーは、トーンやフィルターをOFFの状態では、フォノ入力からSP出力まで2箇所、AUXからは1箇所と大幅に減少し、低い周波数での位相特性が優れた設計である。電源部は、パワーアンプ電圧増幅段とプリアンプ用、パワーアンプ電力増幅段用が左右チャンネル独立型で、3トランス方式である。また、信号経路を単純化する目的で、フォノ入力切替、スピーカー切替は、リレーを使うリモートコントロールであることに注目したい。
 TA−F7Bは、歪感がまったく感じられない、滑らかで粒立ちが細やかな音をもっている。聴感上の帯域は、かなりワイドレンジだが、ちょっと聴きには、広さを感じさせない良さがある。音色は軽く、明るいタイプで、中低域の豊かさ、ナチュラルで透明感のある中高域が魅力的である。

ビクター JA-S75

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 型番末尾数字が従来の1から5に変わった新シリーズアンプの第一弾製品である。パネルフェイスは、印象が少し変わっているが、もっとも大きい点は、フロントパネル面のテープ入出力端子が省かれたことだ。
 回路構成上の特長は、音楽信号のダイナミックな変化に伴ってアンプ内部に発生する動的干渉を抑え、音像定位の向上を狙って、電源部をかなり重点的に強化している点だろう。プリアンプ部およびパワーアンプ部のプリドライバー以前のA級動作をしている部分には、独立トランスを使い、各ユニットアンプには、左右独立給電方式を採用している。パワーアンプのB級動作部分は、左右チャンネル独立の専用トランスを使うなど、3トランス方式である。なお、イコライザー段は、初段FET3段カスコード接続の入力コンデンサーレス型だ。
 使用部品では、音量を絞ったときに音量対歪率のリニアリティがよい、ハイリニアリティボリュウム、高調波歪みが少ない新開発マイラーコンデンサーの採用が目立つ。
 JA−S75は、滑らかな粒立ちの細やかさと、力強い伸びやかさが両立した音である。全体に表情が豊かで洗練された印象が強く、充分にクォリティは高い。

トリオ KA-7700D

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 本機は、左右独立電源、DCアンプと話題を投げかけたトリオらしい新製品で、さらに、プリアンプ電源を独立した3電源方式に発展している。
 回路構成は、FET差動を含む差動2段の3段直結ICLイコライザー、初段FET差動2段直結フラットアンプと独立した高音と低音のNF型トーンコントロール段、アクティブ型の高域とサブソニックフィルター、初段FET差動を含む差動3段のA級増幅段とパワーダーリントンブロックをつかうDCアンプ構成のパワーアンプ部である。

ヤマハ CA-2000

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのプリメインアンプは、当初からCA1000をトップモデルとして、これに改良を加えたMKII、さらに外形寸法がひとまわり大きくなった現在のMKIIIと発展してきたが、ハイパワー化の影響によるパワーアップの要求と、セパレート型アンプのC2、B2との間をうめる意味もあってか、CA1000IIIのボディのなかに、ひとまわり強力なパワーをもつ新モデルを今回発表することになった。逆にいえば、X1シリーズにはじまったプリメインアンプの置換えはR1シリーズで終了し、それら一連のプリメインアンプとは差別化の意味で、上級モデルが最初から2機種企画されており、これがCA1000IIIのボディがひとまわり大きくなった理由と思われる。つまり、パワーアンプに対するアンプの容量の増加が見込まれた結果である。
 CA2000は、ボディサイズは、既発売のCA1000IIIと同じであり、フロントパネルの機能もほとんど同様であるために、外観からは両者の判別は難しいようだ。しかし、トーンコントロールツマミの部分が、C2と同様にデシベル目盛になっているあたりが、両者の違いをあらわしている。
 機能面では、基本的にCA1000IIIと同じで、インプットセレクターでフォノ入力を選択した場合には、独立したフォノセレクターで、フォノ1とフォノ2が選択でき、フォノ1は、さらに3種類の負荷抵抗切替とMC型カートリッジ用のヘッドアンプの使用がセレクトできる。また、独立したテープアウトセレクターがあり、インプットセレクターとは関係なく、録音プログラムソースが選択可能で、さらに、レコーディングアウトがOFFにもできる特長がある。また、ピーク指示型のレベルメーターは、切替でパワーとレコーディングアウトのレベルをチェックできる。
 回路構成は、イコライザー段がC2と同じで、超低雑音FETによる初段、SEPPコンプリメンタリーの終段で構成され、高級セパレート型アンプとしてもトップクラスのSN比と歪率を誇っている。なお、別に超低雑音IC採用のMC型カートリッジ用のヘッドアンプを内蔵している。トーンコントロール段は、基本的にイコライザー段と同様な構成で、ボリュウムを絞り込んでも信号源インピーダンスにより、歪率はほとんど変化しない特長がある。
 パワーアンプは、出力段が並列接続のパラレルプッシュプルの全段直結OCL型で、B級120W+120W、A級時30W+30Wの定格があり、DCアンプ構成である。
 CA2000は、CA1000IIIと共通性がある音をもっているが、音の粒子が一段と磨かれた印象が強く、パワーアップのメリットで、低域の質感がよく再生され、安定度を増した余裕のある感じが特長である。充分に熟成した大人っぽいこの音は、違いのわかる人に応わしいものだ。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 現在プリメインアンプの需要の中心は数量的には5万円未満のモデルであるが、オーディオ敵に質的・量的のバランスを考え、プログラムソースであるディスク側のダイナミックレンジの拡大を含めれば、やはり6〜9万円台のモデルが魅力あるプリメインアンプとして、本来の中心機種の座にあるといってよい。
 新しいサンスイのプリメインアンプは、この価格帯に投じられた専門メーカーらしい製品で物理的データの高さと現代アンプらしい音質、それに、新しいブラックフェイスのデザインをもつ、意欲作である。
 AU707、606のパネルフェイスは、サンスイが初期の管球プリメインアンプAU111以来一貫して守ってきた伝統的なブラックパネルであるが、色調はマットブラックで統一され、簡潔でダイナミックな印象としている。このパネルは、サイドにハンドルをつければ標準ラックパネルにセットすることができる。
 AU707の回路構成上の特長は、イコライザー段が初段カレントソースつき差動1段、バッファー、アクティブロードつきA級増幅1段、純コンプリメンタリーSEPP出力段の8石構成で、1kHzの許容入力300mV、RIAA偏差±0・2dB、SN比77dBを得ている。パワーアンプは、初段デュアルFET差動2段、カレントミラーつき電流差動プッシュプル(特許申請中)、3段ダーリントン接続のDCアンプであり、電源部は左右チャンネル独立型、電解コンデンサーは、15000μF×4である。
 機構設計上の特長は、入力端子、イコライザー、トーンコントロール、パワーアンプと、信号経路を合理的に配置しシールドカバーの併用で物理性能の向上をはかっている。また、パワー段の放熱板は、チムニー型で放熱効果が高く、信号経路のコンデンサーは、低雑音タイプのBRN電解コンデンサーとマイラーコンデンサーをセレクトして採用している。
 AU607は、出力が65W+65W(707は85W)である点と、トーンコントロール段のバッファーアンプの省略、電源部の電解コンデンサーの容量が、12000μFに変更されたあたりが、基本的に、AU707と異なった点である。
 AU10000は、コントロールアンプCA2000とパワーアンプBA2000を一体化して、プリメインアンプとした新製品で、デザインは高級機に準じている。
 AU707/607は、サンスイのアンプとしては音質的にCA2000、BA2000の系統である。各ユニットアンプの性質が素直なためか、歪感がなく、滑らかで静かだが、それでいて充分に力もある音だ。とくに、AU607のハーモニーの美しさと、表情の豊かさは見事で、音楽を楽しく聴かせてくれる。

ビクター X-1II, X-1IIE

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 既に高い評価を得ているビクターのX1シリーズ・カートリッジが、パルストレイン法のコンピューター解析の導入により、発展・改良しX1IIシリーズとなった。
 このシリーズは、4モデルあるが、広帯域型で4チャンネル・2チャンネル共用のX1IIと、2チャンネル専用のX1IIEが基本モデルで、それぞれをシェルマウントしたのがX1II/D、X1IIE/Dである。
 X1IIの振動系は、カンチレバーにベリリウムパイプを採用し、針先は従来のシバタ針を改良し、さらにトレース能力を高めたシバタ針MKIIのブロックダイヤチップである。
 マグネットは、比重が小さく高エネルギー積のサマリュウムコバルト磁石で、振動系の支持は後端をテンションワイアーで固定するワンポイントサポート方式だ。
 カートリッジボディは、マグネシュウム合金製で、針先からの微振動を吸収し、混変調歪みを抑えるとともに、シールド効果も高い。磁気回路は、ラミネートコアで、超高域での微小な振動を正しく再生することが可能である。なお、シェルマウントタイプは、溶湯鋳造シェルにマウントしてある。
 X1IIEは、カートリッジボディはX1IIと同様で、振動系が異なったモデルである。変更点は、カンチレバーがテーパード型のチタンパイプ、針先は、0・3ミル×0・7ミル楕円ブロックダイヤチップであることだ。
 X1II/Dは、可聴周波数帯域全域にわたって粒立ちが細かく均一にコントロールされ、fレンジが爽やかに伸び切っている。
 このタイプの現代型のカートリッジは、とかく力不足となりやすいが、本機は充分な力感がある。音色は明るく、反応が早いために、表情が豊かで、音楽を気持よく聴かせる。海外高級カートリッジに互しても譲らぬだけの音の魅力があり、MKIIらしいグレイドアップが明瞭に聴きとれる。
 X1IIE/Dは、共通の音色をもつが、さすがに2チャンネル用カートリッジらしく、一段と力感が加わり、重心が低い安定な音が聴かれる。基本的なクォリティが高く、音の鮮度が高いため、2トラックテープの音に似たリアルさがある。

マイクロ LM-70W

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 磁気回路のコイルに、純銀線を2本より合わせた特殊線を採用した特長がある製品である。銀は比抵抗値が低く、微細な電流を扱うために好ましく、2本より合わせることにより表面積が増加し表皮効果を避けて磁気回路の高域特性を改善できる。振動系は、ベリリウムカンチレバーを一点支持方式でサポートするタイプである。
 2本より銀線を使う、この方式は、ツゥイステッド・シルバー・コイルを略してTSC方式と名付けられ、発言効率、過渡特性、周波数特性を改善でき、音の拡がり、定位の良さ、分離を大幅に向上している。

テクニクス 100C

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 アクティブに振動系の軽量化と新素材の導入に取り組んでいるテクニクスからカートリッジの原器をめざした高級MM型の製品が発売された。EPC100Cは、カートリッジとヘッドシェルが一体化した、いわばピックアップヘッドといった構造を採用している。振動系は、チタンと元素中もっとも非弾性係数が大きいボロンを高周波スパッタリングにより反応させたチタニウム・ボライドのテーパードカンチレバーを採用し、マグネットは円板状のサマリュウムコバルトである。なお、針先は0.1mm角ブロックダイヤチップである。
 磁気回路は、超高域までフラットな特性を得るために、初めてオールフェライト化され、さらにコイル配列は左右チャンネル完全分離対称配列である。また、このEPC100Cで際立った特長となっているは、コイルのインピーダンスとインダクタンスが驚異的に小さいことだ。発表値としては、それぞれ210Ω・33mHでMC型カートリッジと同等といってもよく、接続する負荷抵抗、負荷容量の影響をほとんど受けない。ちなみに、テクニクス205CIISは、3600Ω・560mH、同じく205CIILが250Ω・40mHである。ヘッドコネクター部分にオーバーハング調整と傾斜調整があり、大型プロテクターは、ワンタッチで上に跳ね上がるタイプである。

ソニー HA-55

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 入力インピーダンスを2段切替で選択できるMC型カートリッジ用の汎用型ブースターアンプである。本機は、カートリッジ側から見て理想的に設計されているのが特長で、電源はAC電源でパワースイッチのON・OFF時のミューティング回路をもち、ポップノイズを防いでいる。

ソニー XL-55

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソニーのXLシリーズ・カートリッジは、炭素繊維のカンチレバーへの導入、新しいマグネットなどの、新素材や新技術を開発し、実用化してきたが、新しいムービングコイル型の製品XL55がシリーズに加わることになった。
 XL55は、振動系に磁性体を使用せず、コイル部分は独特な8の字型で、発電効率が高く、歪みが少ない特長がある。実際のコイルは、リング状の磁気ギャップの中に左右チャンネル用の8の字型コイルが直交して配置され四ツ葉のクローバー状に見える。8の字型コイルになった理由は、プッシュプル動作で発電するためだ。なお、巻枠は円形の非磁性体である。カンチレバーは、特殊軽合金の細いパイプの先端に針先が、後端にテンションワイアーが取り付けてあり、全長の半分から後ろ側には炭素繊維のパイプが、さらにその外側に先端を絞ったアルミパイプがある複合型である。
 磁気回路は、高エネルギー積の希土類マグネットを採用し小型で高能率化してある。

サンスイ BA-2000

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ブラックフェイスのパネルに、対数圧縮目盛をもつ、実効値指示型の2個のパワーメーターがあり、1mW〜150Wのパワーを読みとることができる。パワーは、110W+110Wで、現代アンプらしい、低歪率、高SN比設計のモデルである。回路構成は、カレントミラー付差動増幅を初段にもつ、パラレルプッシュプル出力段の全段直結純コンプリメンタリーOCLである。電源部は、左右チャンネル独立巻線をもつトロイダルトランスと12000μF×4の電解コンデンサーの組合せである。
 保護回路は、パワートランジスター用に電流制御回路、スピーカー用に、直流検出と温度検出回路があり、高信頼性設計である。また、ヒートシンクは、包絡体積12000ccの新しい対流放熱器を4個使用し、チムニー型で高い放熱効率がある。
 内部構造は、ドライバー段、出力段、電源部を完全に分離したブロック別の機構設計で、相互干渉や影響を防止している。
 CA2000とBA2000を組み合わせた音質は、デザインが上級機種と同じだけに、共通のトーンポリシーを想像しがちであるが、設計が新しいだけに、オーバーな表現をすれば、まったく異なった現代アンプらしい、帯域が広く、滑らかでクリアーな音といえよう。とくに、ステレオフォニックな左右の拡がりが、パッと視界が開けたように感じられる。音色は、明るく軽いタイプで、ある種の反応の早さ、表情のナチュラルさがこのペアの特長である。中域がしっかりしているサンスイのアンプの特長は、受け継いでいるが、従来のものにくらべ、表面的に感じられないのが、全体の質的向上を意味している。

サンスイ CA-2000

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイのセパレート型アンプ、コントロールアンプCA3000を中心に、2機種のハイパワーアンプBA3000/5000でラインナップをつくっているが、今回、ジュニアタイプとして2機種の製品が加わり、製品群としての厚みが一段と加わった。
 CA2000は、標準的なコントロールアンプに要求される、多機能とセパレート型アンプらしい高い物理的性能を備えた、オーソドックスなコントロールアンプである。
 イコライザー段は、動特性重視の差動1段を含む7石構成で、終段は純コンプリメンタリーA級プッシュプルで、入力感度3段切替、最大許容入力は、入力感度8mVのとき1000mVである。ボリュウムコントロールは、4連ディテント型で残留ノイズを抑え、実用上のSN比を向上させている。トーンコントロールは、サンスイ独特の中音コントロールをもつトリプルタイプであり、低域フィルターは、2石構成のアクティブ型である。このトーンコントロールとフィルターは、機能を必要としないときにはディフィートスイッチで、信号系から完全にバイパスすることができる。

オーレックス SC-77

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 SC55と同寸法のシャーシに収まったものパワーアンプで、出力は120Wである。回路構成は、初段カスケード接続差動2段、3段ダーリントン全段直結順コンプリメンタリーOCLで、電源分は、トロイダルトランスと低倍率電解コンデンサーのコンビ。ゲイン切替、メーター端子のほか、サブソニックフィルターがある。

オーレックス SC-55

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 薄型デザインの60W+60Wの出力をもつステレオパワーアンプである。構成は、初段カスケード接続、差動2段全段直結OCL型で、電源分は左右チャンネル独立したトランスを使用している。機能面では、左右チャンネル独立の入力調整のほか、NF量可変によるゲイン切替をもっている。また、スピーカー端子と並列にメーター端子があり、別売のピークレベルメーターで出力レベルのチェックが可能である。

オーレックス SY-77

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

〝回路設計から音質設計へ〟をポリシーとして開発されたオーレックスのセパレート型アンプは、物理データが目標に達した時点を音質設計の出発奠都し、物理データ以外の項目で、構造、部品の検討がこの段階で行われ、、2段階の設計でつくられている。
オーディオアンフスの構造・配置は、物理データでの歪率、チャンネルセパレーションと密接な関係があり、これらは当然のこと音質とかかわりあいがある。また、部品の選択は、部品の変更で物理特性が変わらなくても音質が変わる事実から、とくに、コンデンサーの物理特性をスペクトラムアナライザーで測定するとともに、音質評価を加えながら部品選択がされているとのことである。使用するコンデンサーによって音が変わることは、古く管球アンプ時代からわかっていたことだけに、物理性能と音の関連性を、現代の技術で解明してほしいものだと思う。
 SY77は、最近の傾向を反映した薄型のデザインを採用した製品である。パネルフェイスは、主なコントロール類だけを表面に出し、トーンコントロールなどの諸機能は、ヒンジ付きパネル内のシーリングポケットに収めた簡潔なまとめ方である。また、このパネルは、サイドにオプションのハンドルを付ければ、JIS、BTS等の規格ラックにマウントすることができる。
 回路構成は、イコライザー段が、差動2段、3段直結A級動作で1kHzの許容入力は600mV、RIAA偏差は±0・2dBであり、フラットアンプは、初段化スコード接続2段純コンプリメンタリー・パラレルプッシュプルA級出力段で、出力インピーダンスは600Ωである。トーンコントロール段は、差動1段、2段直結型で使用時のみアンプ系に入り、完全にバイパスする設計である。電源分は、左右チャンネルのトランス巻線が独立したセパレートタイプである。

パイオニア F-73

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パネルサイズは、一連の新製品と共通なラックマウントサイズの横幅と、77系より一段寸法が小さい高さになっている。リアパネル両側は、端子類やコードを保護するために一段飛出した保護ガードになっている。FMフロントエンドは、高周波増幅1段、4連バリコン使用であり、中間周波増幅段は帯域が2段に切り替わる。検波段はクォドラチュア方式、MPX分は、パイロット信号オートキャンセラー内蔵PLL・ダブルバランスNFB方式である。なお、レベルチェック用440Hz50%変調の発振器が内蔵されており、エアチェック時の録音レベルが設定できる。
 関連製品として、ラックサイズの4トラックオープンリールデッキRT701、カセットデッキCT97、キャスター付オーディオラックJA−R1Sがある。

パイオニア M-73

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 いわゆる標準ラックサイズのパネルには、ピーク指示型で対数圧縮目盛をもつ2個の大型パワーメーターを備えている。表示は、8Ω負荷で0・01W〜200Wである。
 電源分は、ドライバー段以降の左右チャンネルを分離した2電源方式で、回路構成は、差動2段全段直結パラレルプッシュプル純コンプリメンタリーOCLで、出力は85W+85Wである。

パイオニア C-73

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 単体コンポーネントは、性能、デザイン、組合せおよび使用上での自由度などから、現在もっともオーソドックスなオーディオシステムのベースとなっている。
 たとえば、グレードアップの場合にも、部分的な変更で、トータルのシステムの量的・質的な向上を実現できることは、コンポーネントシステムの大きな魅力である。しかし、システム全体のデザインとなると、予想に反して完成度は、あまり高くはならないのが通例である。性能とトータルデザインという、相反する要求を満たすことを目的として開発されたものがアンプシステムで、アンプを中心にして、FMチューナー、テープデッキなどパネルサイズをラックマウントタイプに統一して、互換性をもちながら、デザイン的にも全体のバランスを崩さないことが狙いである。したがって、もっともベースとなるのはラックマウントサイズのオーディオラックであり、これに任意の単体コンポーネントをマウントして、システム化することになる。
 C73は、既発売のC77のジュニアモデルとつくられた新製品である。機能面では、最近の傾向であるユニットアンプ的な方向ではない、フル機能のオーソドックスなコントロールアンプであることが特長だ。カートリッジの負荷抵抗、容量切替、各ターンオーバーが3段切替のトーンコントロール、相互ダビング可能な2系統のテープ端子など機能は豊富である。物理的な特性面では、現代アンプらしくSN比が高く、歪率が低い特徴をもつ。

デンオン SC-107

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 国内のスピーカーシステムとしては、異例の海外製スピーカーユニットを採用したモデルとして成功を収めたデンオンのSC104の上級モデルが、SC107として発売されることになった。
 本機は、やや大型のブックシェルフ型システムだが、前面ネットの部分が色調として明るくなったために、外観からは既発売のSC104とシリーズをなすモデルとはわからない。
 ユニット構成は、3ウェイ・3スピーカー型で、各ユニットは、ユニットメーカーとしてヨーロッパで定評が高いデンマーク・ピアレス社製である。
 ウーファーは、口径25cmユニットを2個並列動作で使用している。コーンは、多孔質の紙に制動剤を塗ってある。スコーカーは、口径10cmユニットで、フレームは軽金属のダイキャスト製でバックチャンバーは一体化してある。コーンは、裏面に制動剤を塗ってあり、アルミ製ボイスコイル、発泡ウレタンのロールエッジ付である。
 なお、バックチャンバー内部には、リング状にグラスウールが入っている。トゥイーターは、口径5cmのコーン型ユニットが2個並列使用である。コーン紙は、制動剤が塗ってあり、センターキャップは薄いアルミ箔を成形して高域レスポンスを伸ばしたタイプである。
 LCネットワークは、ウーファー用Lだけが直径1mmの銅線をフェライトコアに巻いて抵抗値を抑えてあり、その他は空芯コイルである。コンデンサーは、すべてプレーン箔型を使用している。
 エンクロージュアは、完全密閉型で、5個のユニットは、ブチル系のパテを使って空気もれのないようにセットしてある。エンクロージュア材質は、リアルウッドの化粧板を張った、板厚20mmの硬質パーチクルボードが全面に採用してある。レベルコントロールは、エンクロージュアのリアパネルにあり、トゥイーターレベルだけが、連続可変で±2dBの狭い範囲だけ変化させるタイプである。
 本機は、トゥイーター、ウーファーともにパラレル駆動を採用した点に特長があるが、リニアリティを向上し、ダイナミックレンジを広くしようとの目的で、この方式が採用されたとのことで、とくにウーファーのパラレル駆動は、スピーカーシステムとして、設置場所の条件による影響を受け難いメリットがあるとしている。
 SC107の音色は、やや柔らかみがあるウォームトーン系である。低域から中低域は質感は柔らかいタイプだが、量感があり、豊かさが魅力である。中域は、さほど粒立ちが細かいタイプではないが、適度の張りがあり、ヴォーカルなどの音像は明快である。高域は、適度にハイエンドで帯域コントロールされているようである。トータルなバランスがよく、充分に抑揚があり、ハーモニーを豊かに再生するのがこのシステムの魅力である。

パイオニア CS-516

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 型番末尾に16がつくスピーカーシステムは、すでにCS616が発表されている。本機は、基本的にはCS616のスコーカーを外して2ウェイ化したシステムと考えてよい。
 低音は、国内製品としては珍しく浅いコルゲーションつきコーンの25cmユニットであり、高音は4・5cm口径のストレートコーン使用のコーン型である。エンクロージュアは、左右専用型のバスレフ方式を採用している。
 このシステムは、ダイナミックでアクティブな音が魅力的だ。音楽を外側から確実に掴み、聴かせどころをピシッと駄あたりは、かなりバタ臭い印象である。ともかく、聴いてみなさい! 楽しい音のスピーカーだよ。というのがピッタリである。

パイオニア CS-655

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 完全密閉型エンクロージュアと、3ウェイ構成を採用している点では、CS755と共通性があるが、使用ユニットは、すべてこのシステム専用に開発されたようで、その意味での関連性はない。
 ウーファーは、25cm口径のユニットで、設計の基本はCS755のウーファーと同様である。スコーカーは、ダイアフラム背面のバックチャンバーに特殊発泡吸音材を使用した無共振設計で、口径6・5cmのドーム型。トゥイーターは、チタンダイアフラムを採用した2・5cmドーム型だ。エンクロージュアは、針葉樹パーチクルボードを使ったエッジレス構造で、ユニット配置は、CS755同様に左右対称の専用型である。

パイオニア CS-755

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 今秋発表されたパイオニアの新しいスピーカーシステムは、異なった2つの性格をもったシリーズにわけることができる。一方は3桁の型番の末尾2桁が55であるシリーズであり、他方は同じく、16のつくシリーズである。
 CS755は、3モデル発表された55シリーズの真中に置かれたシステムである。エンクロージュアは完全密閉型で、ユニット構成は3ウェイ・3スピーカーという、もっともオーソドックスなタイプだ。ウーファーは、30cm口径で、磁気回路は直径156mmの大型フェライト磁石を採用し、ポールピースに銅キャップをつけ、磁気歪を低くしている。また、振動系の重量バランスと動的な変形防止の目的でマスバランスボイスコイルリングを使用している。スコーカーは、口径6・5cmのドーム型で振動板はベリリウムで、支持には、デュアルサスペンション方式を採用している。トゥイーターは、同様に2・5cm口径のベリリウム振動板を使うドーム型である。
 CS755は、聴感上の帯域が広く、各ユニットはスムーズにつながり、レスポンスがフラットな印象が強い。音色はスッキリと明るく、粒立ちが細かく、透明なことでは、従来のパイオニアのシステムとは、一線を画した質的向上が感じられる。

ダイヤトーン DS-25B

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 コーン型ユニットを使う2ウェイ構成であり、エンクロージュア形式がバスレフ型となると、もっともダイヤトーンが得意とする伝統的なノウハウを生かせるスピーカーシステムである。ウーファーは、25cm口径で、ボイスコイル部分にゴムのダンプリングをつけ、クロスオーバー付近の特性を改善しているのは、DS40Cのウーファーと同様な手法である。トゥイーターは、5cm口径のコーン型で、コーン紙背面のバックチャンバーの容積が大きく、チャンバー内の残響を抑えるとともに、残響時間の不均一を防ぐスリット上のオリフィスを設けたサブフレームを取つけ音響制動をかけた無共振チャンバーを採用、振動系はコーン紙中央にチタン製ダイアフラムを使い分割振動を抑えている。
 DS25Bは、音に活気があり表情が明るく、伸びやかな魅力がある。基本的には、正統派のシステムだけに、物理特性的に不足感はなく、質的にもこのクラスでは抜群の高さがあることは特筆すべきことで、かつての発売時点でのDS251の再来と感じさせるダイヤトーンの快心作だ。

ダイヤトーン DS-35B

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ブックシェルフ型システムのベストセラー機種であるDS28Bの上級モデルとして開発されたブックシェルフ型のシステムである。したがって最近のバスレフ型エンクロージュアを採用することが多い傾向に反して、本機は完全密閉型である。
 ユニット構成は、30cmウーファーをベースとした3ウェイシステムで、中音用は10cmコーン型、高音用は3cm口径のドーム型である。ウーファーは、機密性に富み腰が強いコルゲーション付コーン紙と耐熱性が高いボイスコイルボビンとコイルの組合せで、磁気回路は低歪化されている。スコーカーは、エッジ部分にリニアリティが高いポリエステルフィルムにダンピング処理を施して使い、パルシブな入力に対して立上がりの良い再生を可能としている。また、磁気回路はウーファー同様な低歪磁気回路である。トゥイーターのダイアフラム材質には、ガラス繊維強化プラスチック、GFRPを使っている。また、音色は、レーザーホログラフィーでの振動解析や、新しく導入されたインパルス応答による累積スペクトラムなど最新の技術とヒアリングにより検討されている。
 エンクロージュアは、分散共振型で補強桟は不均一に配置してあり、箱鳴りを抑えた設計である。
 DS35Bは、タイトで明快な低音をベースとして、粒立ちがよく、エネルギー感のある中域と滑らかに伸びた高域が巧みにバランスし、密度が濃い音を聴かせる。この音は、個性を聴かせるタイプではなく、オーソドックスな安定感、充実感が魅力であり、併用するアンプ、カートリッジで、かなり結果としての音をコントロールできる余裕があるようだ。価格帯から考えるともっとも正統派のシステムで信頼性が高い。

ダイヤトーン DS-40C

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ダイヤトーンの新しいフロアー型システムは、既発売の3ウェイ構成のフロアー型DS50Cのシリーズ製品として開発された、2ウェイ構成のシステムである。
 エンクロージュアのプロポーションは、いわゆるトールボーイ型で、一般的なブックシェルフ型システムをタテ方向に伸ばしたようなタイプであり、床面積をあまり広く占有しないため設置上での制約が少ない利点がある。バッフルボード上のユニット配置は、変調歪みが少なく、椅子に座ったときに、音軸が耳の位置とほぼ同じ高さになるように位置ぎめされている。
 低音用の30cmウーファーは、バスレフ型エンクロージュア専用に設計してあり、クロスオーバー周波数付近の特性を良くするために、コーン紙はコルゲーション入りのいわゆるカーブドコーンを使っている。また、ボイスコイルにゴム製のダンプリングを付け、一種のメカニカルフィルターとして、ウーファーの高域特性をコントロールしている。エッジは、熱硬化性樹脂と念弾性樹脂を混合し、数回にわたりコーティングしたクロスエッジで、さらにその上から特殊なダンピング処理をしてある。
 磁気回路は、今回もっとも重点的に改良された部分である。一般の低歪磁気回路は、ポールピースに銅キャップをつける方法や硅素鉄板の積層材を使う方法があるが、ダイヤトーンで新しく開発した方法は、ポールピースに特殊な磁性合金でつくったリングをつける方法で、磁気回路での非直線歪みが、ボイスコイルにリアクションをして音の歪みとして再生されることを大幅に低減している。歪率の低下は、周波数によっては、1/10と発表されている。
 磁気回路のマグネットには、ダイヤトーンは、ウーファーに限りフェライトマグネットを使わないのがポリシーであったが、新しい低歪磁気回路の開発により、フェライトマグネットを採用しても低歪磁気回路の採用で、総合的な性能としては鋳造マグネットを上廻る、として、初めてフェライトマグネットが採用されているのも、新しいシステムの特長であろう。
 トゥイーターは、5cm口径のコーン型ユニットだが、センタードームが円錐形の独特な形状をしているためにセミ・ドーム型と呼ばれている。磁気回路は、クロスオーバー付近の特性を良くするために、磁束密度14000ガウスの強力磁気回路による磁気制動と、バックチャンバー容積を大きくして振動系を臨界制動で動作させている。なお、バックチャンバーは、楕円形でチャンバー内の残響をコントロールして、トランジェントの悪化を防いでいる。
 DS40Cは、バスレフ型の豊かな低音の味わいと、2ウェイらしいスッキリとした音がバランス下、ダイヤトーンらしい音である。低歪化のためか、クロスオーバー付近の硬さがなく、量的に不足しないのがメリットで、音像定位は明瞭で安定しているのは、ダイヤトーンの伝統である。

オンキョー Scepter 10

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 型番こそ高級システムのセプター名称をもっているが、スピーカーシステムとしての性格は、個性を聴かせるモデルとして定評が高い、M6、M3の延長線上にある製品のように思われる。
 エンクロージュア形式は、バスレフ型でユニット構成は2ウェイ・2スピーカーだが、低音に大口径ウーファー、高音に、音響レンズ付のトゥイーターというよりもハイフレケンシーユニットと呼びたい本格的なドライバーユニットとホーンを組み合わせたユニットが使用されている。
 ウーファーは、38cm口径の大型ユニットで、180φ×95φ×20mmのフェライト磁石を使い、11000ガウスの高い磁束密度を誇り、ポールピース部分には銅のショートリングを装着し低歪化している。
 コーン紙はコルゲーションつきで物理特性が異なった2種類のウレタンフォームを7対3の比率で貼合せた特殊成形の2層発泡ウレタンエッジと耐熱性樹脂積層板を使う薄型ダンパーでサスペンションされている。ボイスコイルは、直径78mmのロングボイスコイルで、コーン紙との接合部にアルミ補強リングをつけ、コーン紙のつりがね振動防止と中低域の音色改善を計っている。
 トゥイーターは、ダイアフラム材質に、高域再生用として理想的な高度をもつ厚さ20ミクロンのチタン箔をドーム型に成形し、ポリエステルフィルムを使ったフリーエッジ構造や2重スリットのイコライザーの併用で、高域のレスポンスを伸ばし、硬く、軽い特長は、過渡特性を一層改善し鋭い立上がり特性を得ている。ホーンは、カットオフ500Hzのアルミダイキャスト製ショートホーンで、ハイインパクト・スチロール樹脂製の共振が少ない大型音響レンズと組み合わせて、30度の指向周波数特性が20kHzまで、軸上特性にほぼ等しい結果を得ている。
 トゥイーターのレベルコントロールは、一般のタイプとは異なり、モードセレクターと名づけられている。ポジションは3段切替型で、①ウーファーとトゥイーターが密結合の状態で、クロスオーバー付近のレスポンスはやや盛りあがり気味で、メリハリが効いた幾分ハードな音、②ウーファーとトゥイーターつながりが、音圧周波数特性でフラットになる設定、③中低域に、やや厚みをもたせ、トゥイーターレベルを抑え気味にしたソフトな再生パターンに変化することができる。
 エンクロージュアは、容積が160リットルあり、バッフルボードは20mm厚の米松合板を、側板には針葉樹材チップボードを使い、補強材を組込んで減衰波形の美しいエンクロージュアとし、外装はローズウッド木目仕上げで、フロアー型システムらしいデザインにまとめ上げている。
 出力音圧レベル95dB、最大入力100Wであるから、最大出力音圧レベルは115dBとオーケストラの最強音圧に匹敵する。

ビクター S-755

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このシステムは、大口径ウーファーをベースとした3ウェイシステムというよりは、中口径フルレンジユニットの低域と高域をそれぞれ専用ユニットで補ったシステムというほうが適当であろう。
 20cmシングルコーン型ユニットは、250Hzから8kHzの幅広い帯域を受持っている。コーン紙は、新開発のSP1コーンで、ハイヤング率、軽量タイプである。
 ウーファーは、このクラスとしては異例に大口径な38cm型で、SP1を使ったコーン紙は、ボイスコイルとの結合部にコンプライアンスをもたせ、機械的なハイカットフィルターとして、ネットワーク用の大きなコイルがウーファーと直列に入り、直流抵抗が増加することを防ぎ、併せて価格を抑えるのに役立っている。トゥイーターは、スコーカーに同軸型に組込まれた4cm口径のコーン型で、フェイズ・リンク・コアキシャル方式である。
 このシステムは、スケールの大きな落着いた音である。低域は豊かで安定し、高域のやや輝く感じが低域とバランスをとり、アクセントを効果的につけている。

ビクター S-777

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近では珍しい同軸型ユニットを使ったフロアー型システムである。このユニットは、基本的に既発売のバックローディングホーン型エンクロージュアを採用した、フロアー型システムFB7のユニットを同軸化したと考えてよい。
 30cm口径のウーファーは、軽量で腰が強い米国ホーレー社製コーンで等価質量35gと軽く、直径10cmのエッジワイズ巻ボイスコイルは、アルニコV型マグネットをスタックした内磁型の磁気回路と組み合わされ、95dBの出力音圧レベルを得ている。トゥイーターは、開口部にドリップ型イコライザーをもつ、700Hzカットオフのアルミホーンと直径38mm、厚さ40ミクロンの米国製強力アルミ合金のダイアフラムを使い、アルニコV型マグネット使用の磁気回路で14000ガウスの磁束密度を得ている。このトゥイーターは、ホーン部分がウーファーの磁気回路を貫通して組立てられ同軸化している。ウーファーとトゥイーターの相対的な位置は、新測定法フェイズ・モアレ伝送パターンから決定され、位相干渉が少ないフェイズ・リンク・コアキシャル型とし、整った波面が放射状に伝送され、また周波数による音像移動が少なく、安定した音像定位を得ている。
 エンクロージュアは、バスレフ型で、内部の定在波を減らすために、バッフルボードはやや上方に傾斜させあわせて椅子に座ったときに音軸が耳の位置にくるようにユニットの配置がしてある。
 このシステムは、全体に引締まったクリアーな音である。聴感上では、やや中域が薄い傾向があるが、質的に充分磨かれ緻密さがあるのがよい。音の反応が速く活気があり、キビキビした印象は、新鮮で気持がよい。

ソニー SS-G7

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 スピーカーのユニット設計に、アポロ計画をはじめ、宇宙船の開発に応用されたNASTRANと呼ばれるコンピューター技法を導入し、聴感とデータの徹底的な検討により完成した注目すべきソニーの新製品である。
 ユニット構成は、3ウェイ・3スピーカー方式で、使用ユニットはバッフルボード面に、一線に配置されるインライン方式であるが、本機ではさらにたくユニットの音源位置を垂直線上に揃える、ブラムライン方式としている。各ユニットの音源の位置を揃える利点は、聴感上の定位感が明瞭になると同時に臨場感が豊かになることが確認されている。
 30cm口径のウーファーは、音源を揃えるために、巨大な、自動車のアルミホイールを思わせる形状の特殊成形アルミ合金フレームを採用している。コーン紙は、半頂角60度カーボコーンで、コルゲーションが設けられ、ボイスコイル直径は、10cmと大口径である。磁気回路は、直径25mm×20mmのアルニコ系鋳造磁石を14個使った内磁型で、T型ポールには特殊鋼材を使い低歪化してある。
 スコーカーは、コーン型とドーム型の中間的なバランスドライブ型で、口径は10cm、磁気回路には、120φ×70φ×17tmmの大型フェライト磁石とT型ポールピース採用である。このT型ポールピースは、磁気ギャップ内の磁束分布を均一化でき、磁場の非対称による歪みを低くできる。
 トゥイーターは、口径3・5cmのバランスドライブ型で、ダイアフラムには厚さ20ミクロンのチタンを深絞り一体成形して使用し、エッジ部分は人工皮革を採用して金属的な鳴りを抑えている。磁気回路はアルニコ系磁石を壺型ヨークと組み合わせて、16000ガウスの磁束密度を得ている。
 エンクロージュアは、バスレフ型で、バッフルボードは厚さ30mmの硬質カラ松材パーチクルボードを使用し、中高域の拡散効果を目的として格子状の加工が施してある。ACOUSTICAL GROOVEDを略してAGボードと名づけられたこの加工により、聴感上の臨場感を向上することができる。また、エンクロージュアの各壁面の放射周波数帯域を分散することにより、箱鳴りといわれて敬遠されていた現象を音色的に有効に利用している。エンクロージュア内部は、高密度フェルトを壁面に密着させ、板共振を抑え、定在波の発生を防ぐために、多量の吸音材を入れてある。
 このシステムは、各ユニットが音色的にも周波数レスポンス的にもよくつながり、音が安定している特長がある。聴感上では、さしてワイドレンジと感じないが、必要な場合には充分な帯域の伸びがわかるタイプである。音の密度は濃く、力感もあって、大人っぽい完成度の高さが、このシステムの魅力といえよう。

サンスイ SP-G300

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイのフロアー型システムには、現在バックロードホーン型エンクロージュア採用のSP707J、バスレフ型エンクロージュア採用のSP505Jがあるが、いずれも使用ユニットは米JBL製のフルレンジユニットであり、そのシステムをベースとしてマルチスピーカー化する可能性を残した、いわば基本型といった性格が強い製品である。
 今回、新しく発売されるSP−G300は、最初から自社開発のユニット使用を前提として企画されたコンプリートなフロアー型システムで、開発にあたっては、かなりJBLのモニターシステムの影響を受けていることが、そのユニット構成、規格からも知ることができよう。
 トールボーイ型をしたエンクロージュアは、バスレフ型で西独ブラウンのスピーカーシステムと同様に、コーナーが大きくRをとってあるために、全体の印象は穏やかな感じがあり、SP707Jなどとはかなり異なっている。
 ユニット構成は、2ウェイ・3スピーカー方式で、ウーファーは、30cm口径のユニットを2個並列使用、トゥイーターは音響レンズ付のホーン型が採用されている。
 ウーファーは、ちょっと見には、単純なパラレル駆動と思われやすいが、それぞれコーン紙の形状が異なっており、性質の違ったユニットであることがわかる。タテ位置に2個取りつけてある下側のウーファーは、低域共振周波数が低く、振動系の質量が重いタイプで、本来のウーファーとしての低音を受持ち、上側のウーファーは、やや低域共振周波数が高く、振動系の質量が軽いタイプで、低音の高いパートから、トゥイーターにクロスオーバーする帯域を受持っている。このユニットは、いわばスコーカー・ウーファーと考えてもよいものだ。
 一般的には、ウーファーは重低音を要求すれば中低域に欠点が生じやすく、中低音を要求すれば重低音不足となりやすい傾向があるが、逆の声質をもつ2個のウーファーをコントロールして並列駆動として使う方法は、大変に興味深いものがある。
 考え方を変えれば、38cmウーファー1個を追い込むよりは、実効的なコーン面積がそれと等しい異なった種類の30cmウーファー2個をコントロールするほうが、ある場合には、むしろ好結果が得やすいのかもしれない。この場合にはその成功例といえる。
 トゥイーターは、本格派のハイフレケンシーユニットで、ショートホーンとスラントタイプ音響レンズの組合せで、SP6000で使用されたユニット発展型と考えてもよいのかもしれない。
 このシステムは、表情が豊かで、伸びやかな音である。ややウォームトーン型だが、低域が安定しよく響き、よくハモる。中域以上は、ホーン型とは思われないほどの細やかさと滑らかさがある。小音量でもバランスを保つのは実用上の利点で、JBLと異なった音であることが好ましい。

デンオン DA-307

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンの新製品は、ダイナミック・ダンピング方式を採用した、スリムなユニバーサル型トーンアームである。
 ダイナミック・ダンピング方式は、簡単にいえば、トーンアームの軸受を中心として、従来は、後のバランス用ウェイトとその軸であるアームの後部をゴムなどのクッションを介してフレキシブルに結合したのと逆に、ヘッドシェルを拭くんだ、アームの前の部分を、回転軸受に近い部分で、フレキシブル結合した方式と考えてよい。
 この方式の採用により、カートリッジの針先コンプライアンスとトーンアーム自体の等価質量で決まる低域共振を効果的にダンプすることができ、レコードの音溝にたいする追従能力が一段と向上している。したがって、オイルダンピング型アームのような追従性不良による低域の混変調歪や一点支持のための使いにくさ、オイル漏れがないというメリットがあり、さらに、プレーヤーキャビネットなどから伝わりやすい振動からカートリッジを保護でき、ハウリングにも強いために、使用するカートリッジの性能を充分に引出し、大音量再生が可能になったとのことである。
 軸受部は、ピボットベアリングとミニアチュアベアリングを採用した高精度、高感度設計で、感度は、水平、垂直ともに0・025g以下である。
 バランス用ウェイトは、太い筒型の後部アームの内部を移動するタイプで、針圧目盛は0・1gステップ、1回転が2・5gになっており、適合カートリッジ自重範囲は、5〜10gである。
 付属するヘッドシェル、PCL−5は、自重約6gのマグネシュウム合金ダイキャスト製で、DL−103を付け、針圧2・5gのときの、アームの等価質量は、20gと発表されている。
 付属機構は、オイルダンプタイプのアームリフターと、マグネチックコントロール方式のインサイドフォースキャンセラーがある。このインサイドフォースキャンセラーは、無接触方式であり、かつ、レコード位置によるインサイドフォースの変化にも対応することができる。また、アームのバランス調整時などでは、インサイドフォースのキャンセル量をコントロールするツマミを引出せば、完全にフリーの状態とすることができる。このタイプは、無接触型のため、クリティカルなカートリッジを使用中にでも、インサイドフォースのキャンセル量を演奏中に細かく調整できるメリットがある。
 このトーンアームは、パールトーンに仕上げてあるが、この仕上げが、従来のデンオンのアームにくらべても、格段に優れており、大変に素晴らしいできである。実用上では、各部の動きは滑らかであるが、独得なメカニズムをもっているために、シェルを交換したときや、アームのバランス調整をするときなどでは、何とはなく、グニャグニャして最初は少し使い難いようだ。

ビクター JL-B37R

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターのプレーヤーシステムは、つねに定評があるモデルを市場に送り込んでいる点に特長がある。今回の新プレーヤーシステムは、基本的には、クォーツロックを外した、TT−81型相当のフォノモーターを中心にして構成された、高性能なモデルである。
 ターンテーブルは、厚みがある、直径32・8cm、重量2・15kgの重量型で、1kg・cm以上の大きなトルクをもつ、12極・24スロットのFGサーボ付ブラシレスDC型サーボモーターで、ダイレクトにドライブされる。
 トーンアームは、高級トーンアーム、UA−7045の構造を受継いだ実効長245mmニュージンバルサポートのS字型で純アルミを溶湯して高圧で鋳造成形した特殊なヘッドシェルと、チャッキングロック方式のネックシリンダーを備えている。なお、付属カートリッジは、X−1の設計を受継いだZ−1Sで0・5ミル針付である。
 このJL−B37Rは、各単体部品に、ビクターの高級モデルがもつ基本性能を落とさずに簡略化して使用してあるために、価格からは、想像できないシステムとしてのパフォーマンスが高いメリットがある。プレーヤーベースは充分に強度があり、ターンテーブルは外乱に対して機敏にサーボを効かせている。ストロボは煩雑を避けるために331/3回転だけがターンテーブル外周に刻まれているが不都合はあまりない。

ビクター TT-81

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 コンポーネントシステムのなかでは、音の入口にあるプレーヤーシステムの優劣が音を決定する大きな要素であり、各機種間の音の差は、予想外に大きいのが現実である。ダイレクトドライブ型ふぉのーモーターの第3世代ともいうべき、クォーツロック方式のダイレクトドライブ型フォノモーターは、価格的に高価であるが、この、TT−81は、上級モデルのTT−101の多くの特長を受継いだ新製品である。
 TT−81の主な特長は、クォーツロックを外さないで速度微調整ができる1Hzステップのピッチコントロール、速度変化に敏感に反応するプラス・マイナスサーボシステム、見やすい大型のクォーツ電源で照明する反射式ストロボスコープ、電気ブレーキを使うクイックストップなどがある。
 本機の基準となる水晶発振子は、9504kHzで、これを分周して100Hzの基本信号を得ている。これと180個の検出をもつFGが発生する100Hzの信号を位相比較して、その差を位相制御回路に送りモーター駆動回路をドライブしている。
 ピッチコントロールは、440Hzにたいして、1Hzステップで、±6Hzコントロールできるタイプであり、±サーボシステムは、速度が速い場合にも、遅い場合にもサーボは動作するため、45回転から331/3回転の切替が瞬時に移行し、クイックストップは、駆動回路に逆電流を流して、電気ブレーキとする方式である。

ヤマハ CT-V1

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 CA−V1のペアチューナーとして開発されたモデルだが、内容的にはCT−7000で使った選択度と歪率を両立させる微分利得直視法導入のIF段等X1同様の高SN比、低歪率のNFB型PLL・MPX回路を採用し、機能面では、333Hz録音レベル較正発振器内蔵。操作面では、滑らかで精密な機構を備えている。

ヤマハ CA-V1

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 多角的なサウンドへの展開の第1弾となった、X1シリーズに続く、第2弾製品がブラックフェイスのメカニカルなデザインをもつ、新しいV1シリーズである。
 フロントパネルは、やや、薄型となり、両側に取手が付いて、引締ったシャープな表情になっている。2個のレベルメーターは対数圧縮型で50Wまで直読でき、芯ファンクションとして、レコードを聴きながらFMエアチェックができるREC・OUTセレクターがあり、このスイッチにはデッキを使用しないときに信号系から切離すREC・OUT・OFF位置がある。
 回路構成上は、過渡応答を重視したディスクリート2段直結イコライザーは、低歪高SN比設計であり、トーン回路は、ディスクリート構成のアンプを使う、高SN比なヤマハ方式CR・NF混合型トーンコントロールで中央のウネリが少なく、パワーアンプは、カレントミラー回路を使った初段差動1段の全段直結ピュアコンプリメンタリーOCLタイプである。

ビクター JT-V45

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このチューナーは、一連のプリメインアンプと任意にペアが組めるように、性能と機能を重視してAMを除き、FM専用機として開発された特長がある。RF1段増幅バッファー付局発回路と7連バリコン使用のフロントエンド、PLL、MPX部などを採用し、機能面では、333Hz基準レベルとピンクノイズ発振器の内蔵、正確な同調点を保持するチューニングホールド回路、左右チャンネル独立型出力レベル調整があり、操作性がよい同調機構を備えている。

ビクター JA-S41

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターの新製品は、JA−S51とS31の中間に位置する65W+65Wのパワーをもつプリメインアンプである。
 機能面では、JA−S51に準じた、5段切替モードスイッチ、前面録音端子をもつが、入力切替がフォノ1系統でカートリッジ負荷抵抗切替がなく、テープが2系統になった他、高音フィルターが低音フィルターに替わり、実用性が増している。
 回路構成上では、初段FETで入力コンデンサーを除いたICL型イコライザー、4連ボリュウム採用のプリアンプ部、ドライバー段以後と以前を分離した独立電源をもつパワーアンプを備えている。
 このアンプは、一連のビクタープリメインアンプのなかでは、もっともストレートで明快な音をもっている。とくに、低域の腰が強く、リズミックで活気があるのがメリットである。

Lo-D HA-630

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この新製品も、セパレート型パワーアンプ、HMA−8300に採用されたと同様な、ダイナハーモニーと名付けられた、E級動作のパワーアンプ部をもったプリメインアンプである。
 回路構成では、イコライザー段に、差動1段の初段をもつ3段直結型が採用され、2・3mVの入力感度にたいして1kHzの最大許容入力は、230mVである。トーンコントロール段は、高利得、高安定度のIC、HA−1456を使ったNF型である。パワーアンプは、差動2段をもった、4電源方式の全段直結高能率ピュアコンプリメンタリーOCLで、20Hzから20kHzにわたり、8Ω負荷で60W+60Wの実効出力があり、1kHzでは8Ω負荷で85W+85Wのパワーが得られる。
 ボリュウムコントロールは、32接点のディテントボリュウムと、−15dB、−30dBに切替わるゲインセレクタースイッチの組み合わせであり、12dBのローカットフィルター、6dB型のハイかっとフィルター、それに、高音と低音を補正するラウドネスコントロールを備えている。
 HA−630は、低歪率設計をシンボライズしたような、柔らかで、歪感がない音をもっている。音のキャラクターが少ないだけに、ダイナミックパワー320Wというパワー感は、聴感上ではさして感じられない。このアンプの際立った特長は、クロストークが抜群に少ないことである。

サンスイ AU-3500, AU-1500

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイから普及型のプリメインアンプが2モデル発売された。2機種ともに、共通のフラットフェイスのパネルをもち、ブラック仕上げになっている。
 AU−3500は、35W+35Wのパワーをもつモデルである。フロントパネルの機能は、プッシュボタンによるフォノ、チューナー、AUX3系統の入力切替、テープモニター、それに、モード切替があり、レバースイッチによるミューティング、ラウドネス、高音と低音フィルターをもつほかにマイクミキシング回路を備えていることが、このクラスのアンプに応わしいところである。
 回路構成上のイコライザー段は、最大許容入力が2・5mV感度で230mV(1kHz)あり、RIAA偏差は±0・5dB以内に調整してある。トーンコントロール段は、2段直結アンプによるCR型であるのが珍しい点だ。ボリュウム及びトーンコントロールは、クリックステップ型ボリュウムを採用している。パワーアンプは、初段にデュアルトランジスターを採用した全段直結型ピュアコンプリメンタリーOCL方式で、電子回路とリレーを使ったスピーカー及びパワートランジスターの保護回路が備わっている。なお、プリアンプの電源も、±2電源タイプでスイッチ切替時のクリックノイズを抑えている。
 AU−1500は、パワーが22W+22Wとなり、機能が2つ少ない。

トリオ KT-7700

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 チューナーの新製品では、性能重視型のFM専用機が増加しているが、このKT−7700も、同様なポリシーで開発されたニューモデルである。
 ダイアルスケールは、読取り精度が高いミラー付ロングスケールで、シグナルとチューニングメーターとマルチパス兼放送局の変調度を指示するデビューションメーターがビルトインしてある。フロントエンドは、局部発振回路組込みの7連バリコンを使ったRF2段タイプで、選択度2段切替型のIF部は、12素子セラミック型と8ポールLC集中型フィルター採用である。MPX部はFETによる復調スイッチング回路を使う低歪率設計であり、オーディオ部は、差動直結±2電源オペレーショナルアンプを使い、ローパスフィルターには7素子ノルトン型を採用するなど、高性能なFM専用チューナーに応わしい新技術が各ブロックに導入されている。

トリオ KA-9300

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プリメインアンプのパワーアップは、普及機クラスから、徐々に中級機に波及してきたが、量と質のバランスを要求される高級機ともなると、単なる量的なパワーアップだけでは、シビアなユーザーの要求に答えることは不可能である。
 KA−9300は、一連のプリメインアンプのハイパワー化に加えて性能、音質ともにグレイドアップした高級モデルに相応しいプリメインアンプである。
 回路構成上は、初段FET差動4段直結型ICLイコライザー段、初段FET差動3段直結アンプを使った、高音と低音が分離したターンオーバー切替付NFBトーンコントロールなどをもつプリアンプ部は、43ステップの4連ディテント型ボリュウム採用で聴感上のSN比がよく、左右チャンネル独立電源をもつパワーアンプ部は、FET差動を初段とする差動3段パラレルプッシュプルのICL、OCL、DCアンプで、120W+120Wのパワーがあり、スピーカー端子には切替スイッチをとおらず直接アンプとスピーカーが接続可能なDIRECT端子がある。
 このアンプは、パワーが充分にあるために、低域に安定感があり、クリアーでストレートな音のメリットがよく出ている。聴感上では、さしてワイドレンジを感じさせないバランスをもつが、誇張感がなく、ストレートで素直な音をもっている。このタイプの音は、えてして音の芯が弱く軽い音になりやすいが、充分にあるパワーが低域をサポートしているためにソリッドで安定感のある好ましさにつながっている。DCアンプ採用というとワイドレンジを思い出すかもしれぬが、聴感上は、誇張感がなくナチュラルである。
 操作性は機能が整理されており、使いやすいが、ロータリータイプのスイッチは、フィーリングが不揃いで硬軟の差があり、高級モデルとして他の部分のバランスがよいだけに、ぜひ改良を望みたい。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 共通の特長は、新開発の4種類のパイオニア専用高集積度ICを採用することで、各ブロックごとをこのICで固め、従来のディスクリートでは得られぬ高SN比、低歪率、高域周波数特性改善を実現している。また、2機種ともに本格的なWIDE・NARROWの選択度切替型IF部をもつ音質重視設計であり、TX−8900IIでは、業界に先がけて、村田製作所と共同開発のIF用SAW(表面弾性波)フィルターを採用し、歪みの改善に優れた性能を発揮している。
 TX8900IIは、RF増幅2段と混合にデュアルゲートMOSFETを使い局部発振はバッファー付5連バリコン使用のFMフロントエンド、バンド切替とSAWフィルター採用のIF段、超広帯域直線検波器、新開発MPX用PLL・ICに特長がある。
 機能面では、エアチェックに便利な2個のICを使ったREC・レベルチェック信号内蔵、マルチパス端子とスピーカーにより、音で聞けるオーディオマルチパススイッチ、スライド式メモリーマーカーなどを備えている。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアのプリメインアンプとしては中堅機種であるSA−8900/8800が、音質重視の最新回路技術を導入して、IIシリーズに発展改良された。
 新シリーズ共通の特長は、SN比を高め、低歪率化をするために、使用部品を厳選するとともに左右チャンネル間の干渉を防ぎ、音質を向上する目的で電源部には左右チャンネルが独立した、2電源トランスを採用している。
 SA−8900IIは、イコライザー段に初段差動3段直結A級SEPP型アンプを採用し、最大許容入力300mV、RIAA偏差±0・2dB以内という特性と、負荷抵抗、負荷容量ともに、4段に切替わるカートリッジロードスイッチが付属している。トーンコントロールは、パイオニア独自のツインコントロールで、初段差動の2段直結アンプを採用している。
 パワーアンプは、差動2段の全段直結ピュアコンプリメンタリーOCLで、パワートランジスターは並列使用で80W+80Wのパワーがある。
 電源部は、ドライバー以後出力段まで、左右チャンネルが独立した巻線と電流回路をもち、さらにプリアンプ部とパワーアンプ部のプリドライバー段まで、左右独立した安定化電源をもっている。
 SA−8800IIは、イコライザー段の構成は似ているが、許容入力が250mVになり、カートリッジロード切替は、容量だけが4段切替である。トーンコントロールは、ターンオーバー3段切替のレギュラータイプになっている。なお、パワーアンプは、似た構成だが、60W+60Wのパワーである。これ以外については、ほぼSA−8900IIと同じ特長をもっている。

マランツ Model 1250

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 マランツのプリメインアンプは、普及機から徐々にラインナップを固めてきたが、そのトップモデルとして開発されたものが、このモデル1250である。基本的には、コントロールアンプのモデル3600とパワーアンプのモデル250Mを、ひとつのシャーシに組込んだプリメインアンプと考えてよいが、各ブロックのユニットアンプは、かなりモディファイされているように思われる。
 フロントパネルは、いわゆるマランツの伝統的なマランツサイズであるが、デザインは、最近の一連のモデルとは異なり、以前のマランツ同様にフラットフェイスになっているのが目立つ点である。この変更はモデル1250が、セパレート型アンプと比較されるスペシャルクラスのプリメインアンプであることを考えれば、他のモデルとの差別化の意味があろうし、それとは関係ないが、古くからのマランツファンには親しみやすいことは事実である。この変更で、副次的なメリットとして生じているのは、コントロールのツマミが大型化されたことで、実際に使ってみると操作性は、かなり向上していると思われる。
 なお、このモデルも、他のマランツアンプ同様に、オプションのRA−2ラックアダプターを使えば、標準サイズのラックに取付け可能であり、RA−2は、ゴールドメッキ仕上げで、横受ブラケットが付属した業務用的構造の製品である。
 機能は、モデル3600コントロールアンプや、モデル1150プリメインアンプに準じているが、本機独得のファクションとしてレコードセレクタースイッチがある。2個のスイッチがペアとなる、このセレクターは、RECORD・SELECTOR1が、メインのテープデッキの入力を選択し、RECORD・SELECTOR2がサブ、もしくはエクスターナルテープデッキの入力を選択する。2個のセレクターと入力切替スイッチを組み合わせて使用すれば従来のこの種のスイッチより、はるかに、多角的にテープデッキが活用できるメリットをもっている。
 回路構成上の特徴は、初段差動のイコライザー段は、40dBのゲインがあり、許容入力が1kHzで300mVと米国系のアンプとしては、充分なマージンがあり、MC型カートリッジを安心して使用できる。トーンコントロールは、高音と低音がターンオーバー2段切替型で、中音も±6dB変化することができる。パワーアンプ部は、全段直結OCLタイプであり、電源部は、他のモデルにくらべ、かなり強化されている。
 モデル1250は、よい意味で、マランツのアンプが伝統的にもつニュートラルでカラリゼイションのない音を受継いでいる。際立った特長こそないが、他と比較したときに初めてクォリティの高さが判かるという音である。パワーも充分にあり、グレイドの高い点では、セパレート型アンプの域に達したプリメインアンプである。

Lo-D HMA-8300

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パワーアンプがハイパワー化するにしたがって、消費電力は飛躍的に大きくなり、100W+100Wクラスでも、ピーク時には、1kWに近い場合がある。
 HMA−8300は、一般的にパワーアンプで使うB級増幅より、さらに電力変換効率が高いE級増幅を採用した200W+200Wのハイパワーアンプである。ローディーで開発されたE級増幅は、音楽信号の平均レベルとピークレベルの分布を調べた結果から、100Wのアンプを例にとると平均出力は約8Wであり、25W以上のパワーを必要とする時間は、1・4%しかないことをベースとし、これに見合う高能率アンプとして考えられたものである。基本回路構成は、並列、または直列接続のパワー段で、平均レベルでは、低電圧電源を使うパワートランジスターが動作し、任意に選択可能なレベル以上の入力にたいしては、高電圧を使うパワートランジスターが切替わり動作するタイプである。この方式は、さらに電源の数を増やせば、B級が理論的に78・5%の効率をもつこととくらべ100%とすることも可能とのことだ。
 HMA−8300では、高低2組の±2電源を使い、低価格でハイパワーを得ている。レベルメーターは、感度切替なしの対数圧縮ピーク指示型で、8Ω負荷630Wまで直読可能である。付属機能には、15Hzのサブソニックフィルター、大容量型スピーカーリレーなどがある。

Lo-D HCA-8300

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 アンプの分野では、今年になって、目立つ傾向は、独立したコントロールアンプとパワーアンプを組み合わせて使う、いわゆるセパレート型アンプの発売が多くなってきたことである。
 この、HCA−8300は、ロー・ディー初のコントロールアンプで、高能率E級パワーアンプ、HMA−8300とペアになるモデルである。
 フロントパネルは、フラットフェイスのブラック仕上げで、オプションのキャリングハンドルを両側に取付けることができる。リアパネルは、入出力端子が傾斜した構造を採用し、入出力コードの接続が便利であり、入出力コードの保護を兼ねたコの字型アングルが両側にある。
 この製品は、価格としては、ローコストのモデルだが、機能、性能は、はるかに高価格なコントロールアンプに匹敵するものがある。まず、機能は、フル装備で、レベルつ調整可能なフォノ1入力、4連32接点ディテント型ボリュウム、左右チャンネル独立使用可能な高音と低音トーンコントロール、ヘッドフォン専用アンプ内蔵、それに、リードレール使用の電源ミューティングなどを備える。性能的には、初段FET差動3段直結7石構成のイコライザーは、400mVの許容入力と±0・2dB以内のRIAA偏差であり、トーン回路も初段FET差動3段直結アンプを採用した低歪、ローノイズ設計となっている。

ヤマハ NS-500

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このシステムは、NS−1000M系のシリーズに属する製品である。エンクロージュアは、ブラック仕上げであるが、完全密閉型ではなく、円筒形のダクトをもったバスレフ型が採用してある。
 ユニット構成は、25cmウーファーをベースとした2ウェイシステムだが、トゥイーターに、ベリリュウムを使った2・3cm口径のドーム型が使ってある。
 ウーファーは、円形のアルミダイキャストフレーム付で、ノーメックスボビンと、専用に開発した軽く硬いコーン紙を使用し磁気回路は銅キャップ付のアルニコマグネットを使っていることに特長がある。
 トゥイーターは、20kHz以上までピストン領域をもつ、タンジェンシャルエッジ付ベリリュウム振動板に、エッジワイズ巻ボイスコイルを熱処理してダイレクトに接着したタイプで、17500ガウスの高磁束密度の磁気回路が組み合わせてある。
 ネットワークは、空芯コイルとMMタイプコンデンサーを使用し、ネットワークは樹脂モールドされ、振動の影響を防ぎ、磁気的な影響のない位置に取付けてある。

ヤマハ NS-690II

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このシステムは、6万円台のスピーカーシステムとして代表的な存在であった、NS−690をベースとして改良が加えられた第2世代のスピーカーシステムである。
 外見上では、レベルコントロールの下にヤマハのバッジが付いた以外には、あまり変化はないが、各ユニットは、全面的に変更してあり、結果としては、モデルナンバーこそ、NS−690を受継いではいるがまったくの新製品といってもよいシステムである。
 ウーファーは、NS−1000系のマルチコルゲーション付コーンが採用してあるのが変った点である。サスペンションではエッジがウレタンロールエッジとなり、ダンパーの材質と含浸材が新タイプになった。また、ボイスコイルボビンは、220度の耐熱性をもつ米デュポン社製ノーメックスとなり、磁気回路では、低歪対策として、センターポールに銅キャップが付いた。
 スコーカーは、トゥイーターともども、新しい振動板塗布剤が採用され、ボイスコイル接着剤の耐熱性が改善されている。トゥイーターでは、ボイスコイルに熱処理が施され、スコーカー同様に耐熱性が高くなっている。
 エンクロージュアも、全面に高密度針葉樹系パーティクルボードを採用し、ウーファー背面にNS−10000同様の補強板を付けてあり、重量が単体で、NS−690にくらべ、36%重い、18・5kgになっている。
 NS−690IIの音は、基本的には、NS−690を受継いでいるが、低域が充実して、安定感を増したために、全体に、音の密度が濃くなり、ユニットの改善で、音伸びがよくなったために、トータルのグレイドは、かなり向上している。

ビクター S-3

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このシステムは、このところ、新しい価格帯として注目されている2万円台のスピーカーシステムとして開発された、S−5のジュニアシステムである。
 基本的な設計方針は、当然のことながらS−5と共通であるが、ウーファーの口径が20cmとなっているのが大きく変っている点である。このウーファーは、軽合金センターキャップ付で、フレームはアルミダイキャスト製である。なお、トゥイーターは6cm口径コーン型で、S−5に採用してあるユニットと同じものだ。
 S−5は、この種の2ウェイシステムとしては、バランスがとりやすい25cmウーファーをベースとしているだけに、帯域バランスがよく保たれ、メリハリが効いたコントラストがクッキリと付いた音をもっている。音色が明るく活気があるのは、やはりビクターらしい特長である。
 S−3は、S−5にくらべると低域が軽くなった反面、スケール感は小さくなる。一般的には、アンプ側のトーンコントロールで補整したほうが、トータルなバランスはよい。トゥイーターは、このクラスとしては粗さが少ないために、適度にクリアーで輝き、トータルなシステムに活気を与えているようである。

ビクター S-5

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のスピーカーシステムは、共通して音色が明るく、活気のある音をもった製品が多くなっているが、このビクターの新製品も、現在流行しているディスコサウンドやクロスオーバーなどの、ジャズロック系のプログラムソースにマッチした、力強くいきいきした音を狙ってつくられたスピーカーシステムである。
 エンクロージュアは、前後のバッフルに比重が大きい針葉樹系高密度パーチクルボードを、側版には硬質パーチクルボードを合板でサンドイッチ構造にした特殊ボードを採用し、トータルな音の響きをコントロールするとともに、マルチダクトをもつバスレフ型が採用してある。
 ユニット構成は、25cmウーファーと6cmコーン型トゥイーターを組み合わせた2ウェイシステムである。ウーファーは、アルミダイキャストフレームを使い、コーン紙には米ホーレー社製の、腰が強く軽い、ハイ・ヤング率コーンが選び出され、コーン紙中央のキャップは、分割共振が少ない特殊合金製で、いわゆるドーム鳴きを抑えながらクロスオーバー周波数付近のレスポンスをコントロールしている。
 トゥイーターは、ウーファーと同様に、ホーレー社製のコーン紙を採用したコーン型で、最高域のレスポンスを補整するために軽合金製キャップが付けてある。
 各ユニットのクロスオーバー周波数は、2000Hzと発表されているが、クロスオーバーネットワークのコイルには、磁気飽和が高いケイ素鋼板コア入りのタイプを使い、高耐入力、低歪率設計である。なお、レベルコントロールは連続可変型である。

Lo-D HS-503

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 スピーカーシステムの新製品では、バスレフ方式の復活とともに、フロアー型システムが多くなってきたことも、最近の傾向といってよいだろう。
 HS−503は、トールボーイ型のエンクロージュアを採用したフロアー型の新スピーカーシステムである。
 エンクロージュアは、グレイのサランネットとブラック仕上げ塗装とのコンビネーションで、いわゆるモニターシステム的な印象がある。このエンクロージュアは、サランネット下側の部分が4本のネジで取外し可能な構造になっており、取外せばバスレフ型、スペーサーを介してサブバッフルを取付ければバスレフ型と密閉型の中間特性が得られるダンプドバスレフ型、さらに、フェルトパッキングのついたサブバッフルをエンクロージュア本体に固定すれば密閉型と、使用条件と好みにより3機種の変化をもたせることができる。
 ユニット構成は、ドロンコーン付と想われやすいが、ウーファーはギャザードエッジをもつ20cm口径のL−202を2本パラレルにしたツインドライブ型である。このユニットは、磁気回路にショートリングが付き、コーン紙にはラテックスが塗ってあり、歪を減らし、ボイスコイルボビンにはアルミを採用し温度上昇を抑えてある。トゥイーターは、比較的に口径が大きい7cmコーン型で、f0が低く、軽量コーン紙の採用で能率が高い特長がある。

クライスラー CE-100

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のスピーカーシステムの新製品ではエンクロージュア形式にバスレフ型が採用されることが多い。クライスラーのニューモデルは、そのなかでは、比較的に少ない完全密閉型のアコースティックサスペンション方式を採用したシステムである。
 ブックシェルフ型のオリジネーターである米AR社の完全密閉型は、小型なエンクロージュアで想像もつかぬ低音が再生できるメリットがあり、つい最近までは、ブックシェルフ型といえば、完全密閉型を採用することが標準化していたが、最近ではバスレフ型が復活してひとつの流れを形成しているようだ。簡単にこの両者の特長をいえば、完全密閉型は低域再生に優れるが出力音圧レベルが低く、バスレフ型は、逆に、出力音圧レベルは高くしやすいが、低域レスポンスはあまり伸びない。又音色的にも、やや対照的で、前者を重厚とすれば後者は軽快といる。
 CE−100は、このタイプとしては出力音圧レベルが92dBあり、聴感上の能率も高く感じられる。構成は、30cmウーファー、12cmコーン型スコーカー、それにホーン型トゥイーターの3ウェイシステムである。このシステムは、やや重く厚みのある低音をベースとし、明快型の中音、少し線が細い高音でバランスがととのっている。
 ステレオフォニックな音場感は、前後方向の感じをあまり際立たせるタイプではなく、音像も少し大きくまとまる傾向がある。

コーラル CX-3

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このシステムは、比較的に小型のスピーカーシステムだが、ユニークな発想をベースとして開発されたメカニズムをもっていることが特長である。
 エンクロージュア上部は、階段状になっており、その部分にトゥイーターが取付けてある。一見したところでは、海外製品に古くからあるスピーカーユニット間の位相差をコントロールするタイプと思われやすいが、ここではトゥイーターユニットが左右方向に、それぞれ90度首を振ることが可能であり、アーチ状の金属の上を前後に移動すれば、上下方向にも±15度の間で角度をコントロールできる。
 これにより、リスニング位置で最良のステレオフォニックな拡がりと、シャープな音像定位が得られるように調整が可能とされているが、ややデッドな部屋などでは、このメカニズムを使って細かく追込んでいけば、かなり、良い結果が得られるものと思われる。
 エンクロージュアは、トゥイーターユニット取付部分の後が開口となっている特殊なバスレフ型で、ウレタン・メタリック塗装仕上げである。ユニット構成は、JBLのLE8Tを想い出すようなメカニックなデザインをもった20cmウーファーと、コーン紙に、コーラルで新開発されたコーティングをした、6・5cmトゥイーターを組み合わせた2ウェイシステムで、爽やかで活気のある音を聴かせてくれる。

オンキョー M-3

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 さきに、ユニークなデザインと音をもったスピーカーシステム、M−6により、注目を集めたオンキョーから、その第二弾製品としてM−3が発表された。
 M−3は、外見上ではM−6とまったく共通のデザインとユニット構成を採用しているために、遠くから見ると見誤りやすいほど、よく似ている。ただし、ユニット構成が同じ2ウェイシステムだが、ウーファーの口径が28cmとひとまわり小さくなり、エンクロージュアのプロポーションも異なっており、結果としてのバッフル版上のユニットのレイアウトは、むしろM−3のほうが良いバランスと感じられる。
 エンクロージュアは、円筒状のポートをもつバスレフ型である。ポート部分は取外し可能で、対照的な位置に取付けてあるトゥイーターと位置交換が可能であるために左右スピーカーシステムのスピーカーユニットを、いわゆる対照的配置とすることが可能である。
 ウーファーは、5cm径のロングボイスコイルと直径120mm、厚さ20mmの大型磁気回路をもち、直線性が優れ、かつ大入力と高能率化がはかられている。トゥイーターは、メタルキャップ付きの4cmコーン型である。レベルコントロールは、ユニット間のクロスオーバーの変化までを考えてある再生音モードセレクターと呼ばれる3段切替型である。トータルバランスがよく明るい音色をもつ点ではM−6に勝る。

パイオニア CS-616

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ハイポリマーを使ったスピーカーシステムを発売するなど意欲的な製品開発をみせるパイオニアの新製品は、現代的な感覚のダイナミックで、歯切れがよく、パンチの効いた音をもつ、3ウェイスピーカーシステムCS−616である。
 スピーカーシステムでは、音色と出力音圧レベルは、密接な関係があり、一般的にダイナミックな音と感じるシステムは出力音圧レベルが高いことが多い。CS−616も、出力音圧レベルは93dBと高く、結果的な音とマッチした値と思われる。
 エンクロージュアは、円筒状のポートをもったバスレフ型で、最大許容入力100W、実質的には200Wに達する入力に耐えられるようにリジッドに作られている。
 ユニット構成は、30cmウーファーをベースとした3ウェイシステムである。ウーファーは、大型のダイキャストフレームを採用し、8本のネジでバッフルボードに取付けてある。コーン紙は、マルチコルゲーションが付き、材質にはカーボンファイバー混入したコーンに、広帯域にわたりスムーズなレスポンスを得るために、音響制動材をコーティングしたものだ。また、磁気回路は、第3次高調波歪を軽減するためとトランジェント特性を改善するために、銅キャップ付である。
 スコーカーは、10cmのコーン型で、フレームは強度が高く共振が少ないアルミダイキャスト製である。コーン紙は、質量が軽く、エッジワイズ巻ボイスコイルの採用で能率が高く、耐入力性が高いタイプである。トゥイーターも、スコーカーと同様にコーン型が採用されている。このユニットも、アルミダイキャストフレームを採用し、リニアリティをよくするために、エッジにはロール型クロスエッジを採用している。
 各ユニットは、いわゆる左右のスピーカーユニットの配置がシンメトリーになっている左右専用タイプで、各チャンネル専用のシステムがペアとなっている。
 CS−616は、3ウェイシステムらしい中域が充実した安定感のある音をもっている。音色は、やや明るいタイプで、中域がやや粗粒子型と受取れるが明快で力強さが感じられるのがメリットであろう。低域は、床から50cm程度離した状態がもっともよいようだ。これ以上、床に近づけると、低域が量的に増えて表情が鈍くなる傾向がある。最適位置でのこのシステムの低域は、量感があり、腰が強く押し出しがよいが、やや重いタイプである。
 ステレオフォニックな拡がりは、このクラスとしてはスタンダードで、前後のパースペクティブをとくに感じさせるタイプではない。音像定位は安定で、コントラストがクッキリと付いた2ウェイシステムと比較すると、シャープさはないが、むしろナチュラルな良さがあるように思われる。トータルなバランスがよく、安定して幅広いプログラムソースをこなすのが、このシステムの持味といってよい。

トリオ LS-77

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このところ、2〜3万円クラスのスピーカーの新製品では、新材料や新デザインを導入した意欲的な製品が多い。
 トリオの新スピーカーシステムは、従来からも、ドロンコーンをもつバスレフ型のスピーカーシステムを開発してきたキャリアーをいかし、さらに、音像定位を明確化するために、例外的なコアキシャルユニットを採用した、注目すべき製品である。
 ブラック仕上げのエンクロージュアは、18mm厚の高密度ホモゲンでつくられ、エンクロージュア内の共振を分散するための補強がおこなわれている。
 使用ユニットは、ダイキャストフレームを採用した25cm口径のウーファーとラジアルホーン付のトゥイーターを同軸上に配置したコアキシャル2ウェイユニットと、同じフレームを使ったパッシブコーン、つまりドロンコーンが組み合わせである。
 マルチコルゲーションが付いたウーファーのコーン紙は、重量が8・3gと軽量であり、酸化チタンがコーティングされている。このコーンは、形状がほぼ、ストレートコーンともいえる、わずかにカーブをもっており、スムーズでキャラクターが少なく、伸びのある中音が得られるとのことである。
 トゥイーターは、振動板に、ルミナーにアルミ蒸着したものを採用し、ホーンはアルミダイキャスト、イコライザーは亜鉛ダイキャスト製で、ホーン鳴きを防止するために、ホーンの裏側にはゴム板を貼付けてダンプがしてある。
 パッシブコーンは、ウェイトを交換して低音をコントロールできるようになっている。標準としては、重量が30gあるウェイトが、コーン中央にネジ止めされているが、別売りのウェイト・オプションPW−77を使えば、低音不足を補う、20gのブースティング用ウェイト、低音が出すぎたり、中低音がカブル場合に使う、40gのダンピング用ウェイトが使用できる。
 標準ウェイトとウェイト・オプションは場合によれば、重ねて使用することも可能であるために、部屋の音響条件や、設置場所により、ウェイトを調整すれば、低音をかなりの幅でコントロールすることができる。一般に、この種のスピーカーシステムでは、部屋に応じて、最適の低音が得ることができれば、トータルなバランスは比較的にコントロールしやすいものである。ブックシェルフ型の特長である設置場所が自由に変えられるメリットに加わえて、パッシブコーンにより低音再生が調整可能な、このシステムは、良い低音再生をするために大きな可能性があると考えてよい。
 このシステムは、ホーン型トゥイーターを使った同軸型ユニットという特長があるために、クロスオーバー周波数が4kHzと高いことが音色にも影響しているようだ。バランス上では、中域が、やや薄く、声の子音や弦に独得のオーバートーンがつくが定位はシャープで、音色は明るい。
岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 まずシェルにカートリッジを取付け確かめる。次に、アームに着装する。水平バランスをとる。針圧を適正値に調整する。インサイドフォースをたしかめる。場合によって、ラテラルバランスをたしかめる。高さを調節して、カートリッジがレコード面に対し、正しく水平位置を保ち、針先の垂直角がほぼ適正状態にあることをたしかめる。
 以上の事をカートリッジひとつひとつ毎に適確に行わなければならない。少なくともこれだけの手順を、手ぬかりなく果さなければ、カートリッジの音質うんぬんすることはできないことになる。
 ざっと計算して、ひとつ当り3分間として123個、計369分つまり、音以外の純粋な付帯雑務時間をひきりなしに続けたとして、なんと6時間! つまり、隠れたる苦労が大きかった。

試聴に使用した装置
 プレーヤーとして、マイクロのDDX1000、それにアームが同じマイクロのダイナミックバランス型MA505、FRの同じダイナミックバランスの最新型FR64の組合せをメインとした。トーレンスの125と、オルトフォンのアームRMG212の組合せは初め使っていたが、どうも横ゆれに敏感で、ハウリングは少ないがかえって使いにくくて、途中から、さけることが多くなってしまった。ビクターのTT81をターンテーブルとしたプレーヤーはクィック・スタート、クィック・ストップができ驚く程便利であった。これは使ってみないとなかなかわかるものではないが、新しい現代的プレーヤーの持つべき条件だろう。クォーツ・ロックが内部的特長ならクィック・ストップは実用的外面要素だ。
 カートリッジと、それに組み合わせるべきアームの関係は、数多い問題を内蔵する。軽針圧カートリッジが軽針圧用アームに最適といわれてきた根拠も定かでないし、確かめにくい。少なくとも現代では、軽針圧カートリッジにもっとガッチリした、いわゆる汎用アームのほうが音質的にも、特に低音に対して好ましいというのが常識でさえある。もっとも、アームは水平方向も垂直方向もきわめて高感度であることは、最低条件として当然なことだが。ここで用いたアームは、そうした意味ですべて、アーム自体が堅固といえる程にガッチリしたものを選んだ。
 音質評価のきめ手の、特に重要な部分として「スピーカー」の選定は、難かしい。ここで用いたのは、普段そぱにおいて、使いなれ、よく知りつくしているのが理由だ。アルテックの604−8Gだ。620Aという大型の箱をあたえられて、低域をずっと伸ばし、音質チェックの上で一段とよくなっている。ドライブアンプは、マランツの510だ。理由はいまさら特にいうまでもないだろう。
 プリアンプとしては、クワドエイトのLM6200Rで、むろん、トーンコントロール、フィルター等のたぐいは一切ない。
 もうひとつのスピーカーシステムを、このラインナップに加えている。これは、ごく小さなブックシェルフ型の自作のシステムで、アルテックの12cmフルレンジ・405Aをたったひとつ収めたものだ。これは、至近距離1mほどにおいて、ステレオ音像のチェックに用いたものだ。いうなればヘッドフォン的使用方法だ。シングルコーンの405Aも、コアキシャル604−8Gもともに音源としてワンスポットなのでこの点からいえば大差ないはずともいえなくはないのだが、実際は好ましかるべきマルチセラーの高音輻射より405Aの方が音像をずっとはっきりと判断できるのは、多分、単一振動板だからだろう。単純なものは必ず純粋に「良い」のをここで知らされる。それにも拘らず604をメインとしたのは、音質判断上もっとも問題とされてしまう音色バランスの判断のためである。
 セカンドシステムは、まったく別の部屋にあって、メインシステムのように音をチェックするというのではなく、もっと総合的に、音楽を確めるといったかたちで、役立たせた。
 少なくとも、SPのリカット盤や、ステレオ初期の録音盤などでは、第一システムでたとえ評価が落ちたとしても、この第二システムでまったく逆にもっとも好ましい結果を得ることが常であった。評価が逆転するということは、ある面で不合理だが確かな事実だ。
 スピーカーは、JBLハーツフィールド、38cmの今はなきウーファー150−4Cと375+537−509(現在のHL89)との2ウェイで、低音域はホーンロードで今回の水準からすると決して広帯域ではないが、ブックシェルフにない、音の生命力が強く感じられる。ドライブアンプは、マランツのモデル2とマッキントッシュのMC30で、ともに管球アンプとしてHi-Fi初期の名うての高級品である。プリアンプは、マランツのこれも管球式のモデル7。
 プレーヤーには、第一システムと同じマイクロのDDX1000とFR64の組合せと、デンオンのDP5000Fシステムの2系統を使用した。
 このようにして、ふたつのまったく違った部屋で聴いたことには大きな意味があることを知って欲しい。その意味というのは、第一システムのラインナップと第二システムのラインナップの大きな違いにあり、ひとつはまったくのプロフェッショナル・モニター系のシステムであり、一方は、まったく家庭用のハイファイシステムであるという点だ。
 この場合、プレーヤーシステムを変えてしまっては音の判定がますます混乱することになるので、共通としたことはいうまでもない。ここで再びアームについて解説を加えると、今回使ったそのほとんどがダイナミックバランス型をとっていることだ。今日の実際的なレコードのコンディションを考えると、ダイナミックバランス型が良いと言い切ってもよい。ただし、こうしたテストの場合に考えられるいくつかの落し穴をカバーするために優れたスタティックバランス型アームをも2本使用している。

使用レコード
 今回の、この膨大な数にのぼるカートリッジのヒアリングテストに使われたレコードは、ジャズおよびロック系を中心としたもので、ジャズは、新しいものとステレオ初期とモノーラルの50年代初期のものと、さらに40年代以前の古い録音との4種類を選んだ。
 最新録音盤は、周波数特性とかスペクトラム的な判断に価値があったとしても、ステレオ感となるとかえって作為的で、良さの判断にはつながらず、苦労の種でしかない。ステレオ初期のレコードはこの点正直だ。50年代のジャズレコードのもつ特色は、そのまま「ジャズサウンドは、いかにあるべきか」を端的に示して、再生音楽におけるジャズ的視点を定めるのに好適といえる。古い録音のナローバンドのSN比の悪いSPリカット盤は、音楽以外の雑音や歪がどれだけ抑えられ、音楽を楽しむのに邪魔されずにすむか、を確かめるのに役立つ。現代的な意味で音の良いカートリッジが必ずしも雑音を抑えてくれるとは限らず歪も目立つ。
 ロックの場合、電気楽器の粘っこいサウンドが、大きいエネルギーで他の音を圧して中声域の混変調を起して歪のもととなりやすく、これは他の音楽にはないサウンド的な特徴で、それを確かめるのは今日の音楽ファンに対するせめてもの心がけといえようか。
 選ばれたレコードが物理的な意味で必ずしもベストのものでないことに、あるいは不満をいだく方もあろう。しかし音楽とは所詮物理的技術的結果ではなく純粋に芸術であり、それが再生音楽だとしても、受けとめているのは人間の芸術的感覚である。つまりレコードといえども厳然たる事実として「音楽」であることは誰しも認めるだろう。使ったレコードは以下の通り。
●パブロ(英国盤) エリントン/レイ・ブラウン 「ワン・フォー・ザ・デューク」
●ブルーノート(アメリカ盤) ヴィレッジヴァンガードのソニー・ロリンズ
●マーキュリー(アメリカ盤) クリフォード・ブラウン/マックス・ローチ 「イン・コンサート」
●アメリカ・コロムビア盤 チャーリー・クリスチャン 「ソロ・フライト」
●ローリングズトーン 「プルー&グレー」 ローリング・ストーンズ

デンオン TU-355

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には、同社のPMA−255と組み合わせるFM専用チューナーである。フロントパネルは、チューナーとしては、横長型のスライドレールダイアルを廃して、2個の大型レベルメーターをもつ、個性型チューナーTU−500をベースにしている。TU−500と比較して変更されたのは、2個のレベルメーターが、フロントパネル左側に並んでセットされた点と、センターチューニングメーターが独立したことだ。
 TU−355のダイアルは、窓の部分こそ小型だが、直径12cmのドラムを採用しており、目盛りの全走行長では、28・3cmと長く、200kHzごとに等間隔目盛りであり見やすいタイプである。ダイアルの回転機構は、ステンレスシャフトと合金軸受の組合わせでフィーリングは、スムーズである。
 2個のレベルメーターは、それぞれ、チューナーの出力レベルを指示するが、左側は信号強度計として兼用している。メーター切替スイッチは、3段切替型で、リアパネルにあるエキスターナル端子からの信号を指示することも可能である。この場合には、フロントパネルにあるエキスターナル・アッテネーターを使い−30dBから+33dBまで、つまり、24・5mVから、34・6Vまでの指示が可能でエキスターナル端子の入力インピーダンスが200kΩ以上あるために、簡易な測定器としても利用できる。
 フロントエンドは、5連バリコン使用で、高周波一段増幅、段間トリプルチューンの同調回路とデュアルMOS・FETの組合わせ、信号系と制御系を二分割した2系統のIF段、PLL採用のMPX部のほか、オーディオアンプは2段直結NF型である。
 このチューナーは、音質的には、TU−500よりも、音の粒立ちがよく比較をすると、ややクリアーで抜けがよい。

サンスイ TU-7900, TU-5900

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 価格ランクこそ異なっているが、新しい2機種のチューナーは、好みにより、3機種のプリメインアンプのいずれともペアにできる。デザイン的には、TU−9900のイメージを受け継ぎ、性能面では実用上もっとも影響力が大きいSN比50dB時の感度向上にポイントが置かれている。
 TU−7900は、RF段にデュアルゲートMOS型FETと複同調回路をもつ4連バリコン使用のFMフロントエンド、低歪化と選択度を両立させるフェイズリニア・セラミックフィルターを採用したFM・IF段、それに、PLL方式のMPX部をもつ、オートノイズキャンセラー、FMアンテナ入力を抑えるアッテネーターをフロントパネルに備えている。
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイから、新モデルとして3機種のプリメインアンプが発売された。これらの製品は、ハイパワーのプリメインアンプであるAU−20000でおこなわれたパワーアップの考え方を、中価格帯に導入したもので、サンスイのいうパワーアップとは、単なるパワーの増強ではなく、質的な高さをも含めた、質量ともどもの向上を意味しているとのことである。また、特性面では、音楽信号を入力するアンプの動特性の改善、低歪化などが追求され、とくに電源部についてはパワーイコール電源という考えで、電源部を重視しているのは現在のアンプの共通の特長と考えられる。
 AU−7900は、75W×2の出力をもつ今回の発売機種としてはもっとも高価格なモデルであるが、従来のAU−9500に匹敵するパワーである。機能面では、中音コントロールをもつTTCがサンスイのアンプの特長である。AU−7900では、高音が2kHz、4kHz、8kHzに湾曲点をもつ3段切替であり、低音は150Hz、300Hz、600Hzに湾曲点をもつ3段切替であるが、中音は1500Hzを中心にして±5dB変化させることができる。
 フィルターは、高音が7kHz、6dB/oct.と12kHz、12dB/oct.であり、低音が20Hzと60Hzと切替可能な12dB/oct.型である。ラウドネスコントロールは、ローブーストとハイローブースト切替型であり、ミューティングは15dBステップの2段切替である。
 回路構成上の特長は、初段に差動増幅を使った4石構成のNF型イコライザーを採用し、特性を改善するためにイコライザー基板は入力端子に直結する構造になっている。パワー部は、初段が物理的に安定度が高いデュアルトランジスターを使った差動増幅をもつ、全段直結コンプリメンタリーOCL方式で、電源部は大型のパワートランスと15000μF×2の電解コンデンサーを採用している。なお、トーンコントロール段は、ディフィート時には信号kからバイパスされるのもサンスイのアンプとしては特長になるであろう。
 AU−6900は、基本的にはAU−7900を基本にしてパワーを60W+60Wとしたモデルと考えてよい。機能面では、TTCの高音と低音がそれぞれ2つの周波数を選択できる2段切替になったのをはじめ、フィルター、ラウドネスコントロールともに一般的なタイプに変更されている。
 AU−5900は、3機種中ではもっともローコストなモデルであるが、機能面ではTTCの高音と低音の湾曲点切替が除かれた以外AU−6900と同等で、逆に考えれば、多機能な機種とも考えられる。
 3機種共通のポイントとしては、プリアンプ部分が発表された規格から見るかぎり、共通なアンプが採用してあることだ。例えば、フォノ1の感度が2.5mVであり、カートリッジ負荷抵抗の3段切替をはじめ、イコライザーの許容入力が250mVと、まったく同じである。電源部の電解コンデンサーの容量も、3機種とも15000μF×2と等しく、プリメインアンプとしてのコンストラクションも、ほぼ共通である。
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のアンプに目立つ傾向として、電源部分の音質に影響する点に着目して電源部の強化や、セパレート型のパワーアンプに採用されることが多い左右チャンネルの電源独立の手法が、プリメインアンプのパワーアンプにも採用されるようになっている。しかし、ことパワーアンプに関しては、かつてから経験豊かなファンはモノ構成のパワーアンプを使うことが音質を良くすることを熟知していたし、製品ではマランツの最初のソリッドステート・パワーアンプ♯15が、独立したモノアンプ2台でステレオアンプとしていたことは忘れられない。
 テクニクスのアンプは、従来から物理的な特性を重要視して、特性の優れたアンプが結果として音質の良いアンプをつくり出すというポリシーで開発されているように思われるが、今回の新しい2機種の8000シリーズのプリメインアンプも、とくに動的なトランジェント歪を追求して開発されたとのことである。
 音楽信号のように変化が激しい信号を増幅する場合には、安定度の悪い電源を使うと、無信号でにはアンプが最適動作点であったとしても、信号により電源が変動すると最適動作点からはずれて歪を発生することになり、これをトランジェント歪といっている。この解決は電源部の強化がもっとも有効で、SU−8600では3組の±電源をもつために±6電源方式をキャッチフレーズとし、さらにテクニクス独自のセルフトランジェント歪測定法により、一層の低歪化が図られている。
 フロントパネルは、2機種ともに横幅にくらべて高さが高く、両サイドにある大型のナットがメカニックな感じを出している。大型のボリュウムコントロールは、−30dB〜−40dBの間が2dBステップとなっている26接点のディテント型で、ラウドネス端子が設けられているために、小音量時には自動的に低域が増強されるタイプである。トーンコントロールは高音、低音ともにターンオーバー2段切替型で、SU−8600だけはトーンディフィートスイッチが付いている。フィルターは、SU−8600が12dB/oct.、SU−8200は6dB/oct.である。
 回路構成は、SU−8600の方がイコライザーに差動回路、変形SRPPの2段直結型、トーンコントロール段がカレントミラー負荷をもつ差動増幅を初段とした3段直結型、パワーアンプが差動増幅、エミッターフォロアー電圧増幅、出力段の構成で電源部の電解コンデンサーは15000μF×2となっている。
 一方SU−8200は、イコライザーがカレントミラー負荷差動回路と定電流負荷のエミッターフォロアーの2段直結型であり、パワーアンプは差動増幅、電圧増幅、出力段のシンプルな構成である。電源部は、プリアンプとパワーアンプが独立しており、イコライザーとトーンコントロールは定電圧化されている。

デンオン SL-71D

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのフレーヤーシステムでは、DP−3700Fのように、モデルナンバーの頭文字がDPではじまる一連のシリーズが、よく知られているが、今回、発売された、新しいシステムは、モデルナンバーがSL−71Dと付けられていることからもわかるように、異なったシリーズであり、以前のベルトドライブ型プレーヤーMTP−701などの後継機種と考えられる。
 直径33・8cmのアルミダイキャスト製ターンテーブルは、その外周部分が一段落ちになっていて、この部分に、ストロボのパターンが刻まれ、プレーヤーベースの左手前にある大型のネオンランプで照明されるが回転数の確認は、容易なタイプである。
 トーンアームの下側のパネルには、操作部分が集中し、それぞれが単機能でコントロールされる方式である。実効長235mmのS字型のパイプをもつトーンアームは、スタティック・バランス型で、メインウェイトを回転して、0.1gステップで3gまで針圧を印加できる。アームに付属するアクセサリーは、インサイドフォース・キャンセラーとアームリフターがある。アームは、全体が黒で統一してあるために、カーボンファイバー製とも思いやすいが、充分な剛性を得るために、硬質アルマイト加工された結果である。付属カートリッジはJM−16は、MM型で、0.5ミル針付のものだ。
 DD方式のモーターには、アウターローター型、ACサーボモーターを使用しており、回転数の制御は、周波数検出型である。
 本機は、このクラスのプレーヤーとしては、これといって目立つ点が少なく、平均的な印象の製品だ。しかし、いわゆる音のよいプレーヤーという言葉があるが、結果として得られる音質は、かなり高級プレーヤーに匹敵するものがある。全体に、音が引締まり、力強く、とくに、中域の下から低域にかけてこのことが著しい。
 プレーヤーシステムの音の差は、よく問題にされるが、現実に機種間の差は、かなりあり、その程度は、少なくともアンプ以上である。選択にあたって、ヒアリングテストが不可欠である。

サンスイ SR-323

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイからの新しいプレーヤーシステムは、シンプルなデザインをもつ、ベルト・ドライブ方式の製品である。
 直径30.3cmのアルミ合金ダイキャスト製のターンテーブルは、重量が1.1kgあり、4極シンクロナスモーターで、ベルト・ドライブで駆動される。
 トーンアームは、実効長220mmのS字型ユニバーサル型であり、針圧は、メインウェイトを回転して印加する。トーンアームの付属機構は、ラテラルバランサーと、SMEタイプのインサイドフォースキャンセラーがある。回転軸受部分にSMEと逆方向に出たバーがバイアスカーソルで、0.5gステップで2gまで針圧対応でバイアスをかけることが可能である。付属カートリッジは、MM型で0.5ミル針付である。

サテン M-18E

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サテンのカートリッジは、もっとも古いモノーラル用のモデルであるM−1以来、独自のポリシーのもとに、鉄芯を使用せず、ステップアップトランスも不要な、高出力MC型一途に、製品を送り出している。
 最近では、久しぶりに沈黙を破って、M−117を発表したが、今回の新製品、M−18は、M−117をベースとして発展させたモデルではなく、逆に、M−117のプロトタイプとして、M−117に先だって開発されたモデルである。
 サテンのムービングコイルは、三角形に巻かれているために、いわゆる、オムスビ型をしたスパイラル巻きであるが、M−18、M、117ともにダ円形のスパイラル巻に変更され、コイルが磁束を切る有効率が1/3から1/2に増し、M−117でも、質量は1/2と半減している。
 新シリーズは、カンチレバーの支持方法が、従来のテンションワイヤーによるものから、二枚の板バネとテンションワイヤーを組み合わせたタイプに変わり、カンチレバーは、二枚の板バネとテンションワイヤーの中心線の交点を支点として支持されるため支点は厳密に一点である。これにより、従来は不可避であったカンチレバーの軸方向まわりの回転運動がなくなったことが、新しい支持方式の大きなメリットである。また、コイルを保持し、カンチレバーの動きをコイルに伝えるアーマチュアも、大幅な改良が加えられ、50μの厚みのベリリュウム銅でつくったアーマチュアとコイルとの結合部がループ状になっており、電磁制動が有効に使えるタイプになっている。
 サテンのMC型は、針交換が可能なことも、忘れてはならない特長である。新シリーズは、交換針を本体に取付ける方法が、従来のバネによるものから、MC型が必要とする磁石の磁力によって交換針を保持する方式に変わった。
 M−18は、M−117の高級機であるために、精度が一段と高まり、ムービングコイルが、さらに軽量化されている。M−18シリーズは、4モデルあり、0.5ミル針付のM−18、ダ円針付のM−18E、0.1×2.5ミル・コニック針付のM−18Xと、コニック針付で、カンチレバーにベリリュウムを使ったM−18BXがある。
 試聴したのは、M−18シリーズのスタンダードとも考えられる、M−18Eである。MM型では、負荷抵抗による音の変化は、ほぼ、常識となっているが、MC型でも、変わり方が異なるとはいえ、負荷抵抗によって、音量が変化し、出力電圧も変化する。サテンでは、負荷抵抗として30Ω〜300Ωを推奨しているが、50kΩでも可とのこともあって試聴は、一般のカートリッジと同様に50kΩでおこなうことにした。
 M−18Eで、もっとも大きな特長は、聴感上のSN比がよく、スクラッチノイズが、他のカートリッジとくらべて、明らかに異なった性質のものであることだ。M−18の音は、文字で表現することは難しく、周波数帯域とか、バランスといった聴き方をするかぎり、ナチュラルであり、問題にすべき点は見出せない。ただ、いい方を変えれば、いわゆるレコードらしくない音であり、例えば、未処理のオリジナルテープの音と似ているといってもよい。他のカートリッジであれば、レコード以後のことだけを考えていればよいが、M−18Eでは、レコード以前の、いわば、オーディオファンにとっては見てはならぬ領域を見てしまったような錯覚をさえ感じる。この音は、誰しも、素晴らしい音として認めるが、使う人によって好むか好まざるかはわかれるだろう。

ラックス L-30, T-33

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスのプリメインアンプとしては、突然、昨年秋のオーディオフェアで発表されたジュニア機である。外観上は、80シリーズ以前の木枠を使ったフロントパネルをもつために、ラックスファンにと手は80シリーズよりも親しみやすいかもしれない。パワーは、35W×2とコンシュマーユースとしては充分の値で、回路面や機能面でも、従来のプリメインアンプを再検討して実質的な立場から省略すべき点を省略し、価格対音質の比率をラックス的に追求して決定した、いわば気軽にクォリティの高い音で音楽を楽しめるアンプである。
 L30のペアチューナーとしてつくられたのがT33である。価格は、抑えられたが、回路的には最新技術が導入されているとのことで、実用電界強度を表示する信号強度表示ランプがあり、FMミューティング、ハイブレンドを備えている。

ラックス L-85V

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスのプリメインアンプのなかでは、中核をなす位置にあたる80シリーズの製品である。従来、このシリーズには、L80VとL80の2モデルがあったが、これに今回、L85Vが加わり、3モデルで80シリーズが構成されることになった。
 L85Vは、80シリーズトップモデルであるだけに、パワーも、80W×2とパワフルである。外観上は、ラックスの一連のM−6000に代表される新しいアンプに採用されたものと共通なデザインポリシーをもっているが、80シリーズの特長は、フラットなフロントパネルを採用している点にある。しかし、パネルフェイスを立体的に見せるために、コントロールツマミやレバースイッチがアンプ内部のボディにセットされ、ちょっと見るとフロントパネルがフローティングされているように感じられるのが、このシリーズのユニークなところだろう。
 L80と80Vは、共通のフロントパネルをもつがL85Vは、イメージ的には共通だがリニアイコライザーが加わり、スピーカースイッチがロータリータイプになったために、フロントパネルはこの価格帯のプリアンプとして立派なものになっている。
 主な回路構成は、イコライザーにC−1000と同じ回路構成をIC化し、出力段のみがディスクリートのA級インバーテッド・ダーリントン・プッシュプルである構成が採用されている。トーンコントロールは、LUX方式NF型で、ボリュウムには、21接点のディテント型が使ってある。パワーアンプはM−6000などの開発の経験をいかした差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCL方式で、プリドライバー段を定電流駆動とし、さらにこれにつづいて定電流駆動のエミッターフォロワーを使い、A級動作のプリドライバー段とB級動作のパワー段とを電気的に分離してスピーカー負荷によるインピーダンス変動が、プリドライバー段におよぶのを防いで、広い周波数にわたる低歪化を図っている。
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「マイ・ハンディクラフト タンノイ10"ユニット用コーナー・エンクロージュアをつくる」より

 試聴は例により、ステレオサウンド試聴室でおこなうことにする。用意したスピーカーシステムは、今回の企画で製作した〝幻のコーネッタ〟、つまり、フロントホーン付コーナー・バスレフ型システムとコーナー・バスレフ型システム2機種で、それぞれ295HPDユニットが取り付けてある。また、これらのシステムとの比較用には、英タンノイのIIILZイン・キャビネットが2モデル用意された。一方はIIILZ MKII入りのシステムで、もう一方は英国では "CHEVENING" と呼ばれる295HPD入りのシステムである。
 試聴をはじめて最初に感じたことは、2種類の英タンノイのブックシェルフ型が、対照的な性質であることだ。
 まず、両者にはかなり出力音圧レベルの差がある。それぞれのユニットの実測データでも、295HPDが出力音圧レベル90dB、IIILZ MKII93dBと3dBの差があり、聴感上でかなりの差として出るのも当然であろう。それにしても、295HPDの出力音圧レベルは、平均的なブックシェルフ型システムと同じというのは、HPDになりユニットが大幅に改良されていることを物語るものだろう。
 第二には、IIILZが聴感上で低域が量的に不足し、バランスが高域側にスライドしているのと比較し、295HPDでは低域の上側あたりがやや盛り上がったような量感を感じさせ、高域にある種の輝きがあるため、いわゆるドンシャリ的な傾向を示す。しかし、質的にはIIILZ MKIIのほうが、いわゆるタンノイの魅力をもっているのはしかたがない。量的には少ないが、質的にはよく磨かれている。一方295HPDでは逆に、とくに低域が豊かになっているが、ややソフトフォーカス気味で、中域から中高域の滑らかさが、IIILZ MKIIにくらべ不足気味に聴こえる。
 次に、295HPDの入ったオリジナルシステムと、今回製作した2機種とでは、当然のことながらブックシェルフ型とフロアー型の間にある壁がいかに大きいかを物語るかのように、少なくとも比較の対象とはなりえない。同じユニットを使いながら、この差は車でいえば、ミニカーと2000c.c.クラス車との間にある、感覚的な差と比較できるものだ。まだく両者のスケール感は異なり、やはりフロアー型の魅力は、この、ゆったりとした、スケール感たっぷりの響きであろう。
 2種類のコーナー型システムは、フロアー型ならではの伸びやかな鳴り方をするが、予想以上に両者の間には差がある。
 フロントホーン付コーナー型は、低域がよく伸び、中低域あたりまでの量感が実に豊かであり、とても25cm型ユニットがこのシステムに入っているとは思われないほどである。また、高域はよく伸びて聴こえるが、中域の密度がやや不足し、中高域での爽やかさも少し物足りない。ただ、ステレオフォニックな音場感は、突然に部屋が広くなったように拡がり、特に前後方向のパースペクティブの再現では見事なものがある。音質はやや奥まって聴えるが、くつろいでスケール感のある音楽を楽しむには好適であろう。聴感上バランスではやや問題があるが、ステレオフォニックな拡がりの再現に優れている。
 一方、コーナー型では全体に線が細い音で、中域の厚みに欠けるために、ホーン付にくらべかなりエネルギーが不足して感じられる。いわゆるドンシャリ傾向が強い音であり、ステレオフォニックな拡がりも、とくに前後方向のパースペクティブな再現が不足し、音像は割合に、いわゆる横一列に並ぶタイプである。
 スピーカーシステムの構造としては、フロントホーンの有無だけの差であるが、フロントホーンの効果は、ステレオフォニックな空間の再現で両者の間に大幅な差をつけている。オーバーな表現をすれば、一度フロントホーン付のシステムを聴いてしまうと、ホーンのないシステムは聴く気にならなくなるといってよい。つまり、豊かさと貧しさの差なのだ。
 概略の試聴を終って、次には幻のコーネッタに的をしぼって聴き込むことにする。このシステムの低域側に片寄ったバランスを直すためには、高域のレベルを上げることがもっとも容易な方法であるが、実際にはもっともらしくバランスするが、必要な帯域では効果的ではなく、不要な部分が上がってしまうのだ。いろいろ手を加えてみても解決策は見出せない。次には仕方なく、ネットワークに手を加えることにする。
 狙いは、高域側の下を上昇させ、低域側の下を下降させことにある。合度&と来で決定した値にしたところ、トータルバランスは相当に変化し、鈍い表情が引き締まり、システムとしてのグレイドはかなり高くなる。しかし好みにもよろうが、ローエンドはやや締めたい感じである。方法は、バスレフポートをダンプするわけだが、これはかなり効果的で、ほぼ期待したような結果が得られた。補整をしたシステムは、ますますホーンなしのシステムとの格差が開き、ほぼ当初に目標とした音になったと思う。ここまでの試聴は、レベル、ロールオフとも0位置に合わせたままで、特別の調整はしていないことをつけくわえておきたい。
 このシステムに使用するアンプは、中域の密度が高く、中低域から低域にわたりソリッドで、クォリティが高いタイプが要求される。少なくとも、ソフトで耳ざわりのよいタイプは不適である。逆に、ストレートで元気のよいものも好ましくない。プリメインアンプでいえば、少なくとも80W+80Wクラスの高級機が必要であろう。
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

井上卓也様

 人を帰さないためであるかのように降ってくる雨のことを遣らずの雨といったりしますが、行かせずの雪とでもいうでしょうか、今日、井上さんのお宅にうかがう日、東京ではめずらしく、雪になりました。しかし、井上さんの音がきけるとなれば、雪なんてなんのその、いそいそと家を後にしました。
 井上さんとは、『ステレオサウンド』や『テープサウンド』の仕事で、非常にしばしばご一緒させていただいているので、こうしてあらためて手紙をさしあけるというのも、なんとなく妙な気持がいたしますが、おじゃましたお礼かたがた、きかせていただいた音などについて、書かせていただくことにします。
 まず、ボザークの大きなスピーカーが、アップライト・ピアノの両側におかれてあるのを拝見して、うれしくなりました。と申しますのは、おはなししたかもしれませんが、ぼくも同じように、ピアノを間にはさんでスピーカーをおいているからです。どうやらピアノを間にはさむと、スピーカーの大きさが気にならないということがあるようです。そのためばかりではないでしょうが、別のところで見た同じタイプのボザークのスピーカーより、お宅で拝見したものの方が、小さく見えました。
 大きなスピーカーが小さく見えるように配置し、しかも大音量がだせるスピーカーにもかかわらず、むしろおさえぎみに、余裕をもたせてならしているあたりに、ぼくは、さすが井上さん、と思いました。いろいろな機会におはなししているうちに、井上さんのことで、ぼくなりにわかったことがあります。井上さんが、仰々しいことや、これみよがしなこと、はったりめいたこと、それに分際をわきまえぬことを唾棄されるのを、ぼくは知っています。ですから、ブックシェルフ・スピーカーを大型スピーカーのごとくつかいたがる人が多い中で、ボザークのスピーカーを、ことさらのてらいもなく、なにげなくおつかいになっている井上さんに接して、さすが井上さんという印象をもったのだと思います。
 強い音が好きだ──と、井上さんは、おっしゃいましたね。さもありなんと思いました。井上さんなら、きっと、そうでしょう。そしてそのおっしゃり方は、いかにも井上さんらしい。強い音は、軽い音をかろやかに感じさせるのにも、なくてはならないものと思います。そしてたしかに、きかせていただいた音は、井上さんの求められる、その強い音を、十全に感じさせるものでした。
 こんなことをあらためて申しあげるのもどうかと思いますが、井上さんの耳のよさには、いつもおどろかされます。ご一緒に仕事をさせていただいて、この人耳は悪魔の耳ではないかと思ったりすることがあります。しかも井上さんはそのききとられたものを、いわゆる文学的な言葉でいいあらわすことをいさぎよしとされず、なにげない口調でさらりといわれたりします。
 そういう井上さんを、ぼくがひそかになんと呼んでいるか、この機会に、申しあげてみようかと思います。含蓄のリアリスト──というのが、その呼び方です。この言葉を目にされて、井上さんがどんな顔をされるか、ぼくにはわかるような気がいたします。なぜ、このようなことをわざわざ申しあげたかといいますと、今日きかせていただいた音をぼくがどう感じたかをお伝えするために、その言葉が必要に思えたからです。きかせていただいた音は、まさに、含蓄のリアリストのそれでした。
 すごいテクニックをもっているのに、決してそれをひけらかしたりせず、たとえばモーツァルトのやさしいソナタなどをさらりひくさわやかさが、井上さんにはあって、そういうところが、きかせていただいた音にも、感じられました。
 現在は、人間にしろ、音にしろ、ギンギンギラギラと、おのれをうけらかしてくるものの方が多いような感じがぼくはいたしますが、そうした中にあって、井上さんには、そして井上さんのきかせてくださった音には、そうしたものがまったく感じられず、ぼくは、男らしい男にじかにふれたような気持になって、きかせていただいた音にほれぼれと耳を傾けました。
 おいとまするころに、雪はさらに強くふっておりましたが、あれは、ぼくにもう少しきかせていただいたらどうかといっている帰さずの雪だったのかもしれません。今日は、どうもありがとうございました。

一九七六年二月五日
黒田恭一
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

山中敬三様

 ともかく山中さんのお宅にうかがったら、生きた状態にあるすごい名器の音をきかせていただけるから──と、編集部の人にいわれていたので、期待に胸はずませて、うかがいました。聴覚的にも、視覚的にも、期待をはるかにうわまわるもので、音の美味を、心ゆくまで堪能させていただきました。ありがとうございました。美食家であるがゆえに超一流の料理の腕をもつ方の手になるごちそうでもてなしていただいたような気持になりました。
 弦楽器の、特に低い方の、つややかな、そして腰のすわった音に、まず、びっくりしました。本当にいい音ですね。とげとげしたところが全然なく、なめらかで、しかも響きには、それ本来ののびやかさがあるように感じられました。
 そういう音をきかせていただいた後だったので、山中さんの、かつてのベルリン・フィルはよかったけれど......とおっしゃる言葉をきいて、なるほどと思いました。オーケストラを、少しはなれた、つまりコンサートホールで申せば特等席できいているような気持になりました。響きが津波のごとくききてめがけておしよせてくるということはなく、オーケストラの音が、多少の距離をおいたところで美しく響いているという印象を、ぼくはもちました。それは、言葉をかえて申しますと、あからさまに、そしてむきだしになることを用心深くさけた、節制の美とでもいうべき美しさをもった音ということになるかもしれません。
 かけて下さったレコードも、山中さんの、そういうきかせてくださった音から感じとれる美意識を、裏切らないものだったと、ぼくには思えました。それはすべて、ごちそうになったブランデーのように、充分に時間をかけて醸成されたもののみがもつこのましさをそなえていたともいえるでしょう。
 そのよさは、いかにあたらしものずきのぼくにも、わかりました。つまりそこには、ほんもの強さがあったということでしょう。ただ、かつてのベルリン・フィルはよかったけれど、今のベルリン・フィルも、また別の意味ですごいと思っているぼくが、山中さんのきかせてくださった音に心ひかれたとすれば、それはぼくにとってはなはだ危険なことということになります。ぼくはどうも、あいからわず、今の音楽を、今の音で追い求めたがっているようです。誤解のないように申しそえておきますが、この場合、今の音楽と申しても、現代音楽だけ意味しません。現代の演奏家による、たとえばベートーヴェンをも含めてのことです。
 その時つかっている装置によってきくレコードがかなり左右されると山中さんはおっしゃいましたが、そのお考えに、ぼくもまったく同感です。オーディオ機器のこわさは、こっちがつかっていると思っていたものに、結果としてつかわれてしまっていることがあるところにあると思います。ですからぼくは、正確には、今日きかせていただいた音を、山中さんの音というではなく、今の山中さんの音というべきなのかもしれません。
 今日は、耳をたのしませていただいただけでなく、きかせていただいた音や、うかがわせていただいたおはなしから、いろいろ勉強させていただきました。これまでぼくのオーディオについての考えの一部をあらため、さらにおしすすめることができたような気がいたします。その意味でも、お礼を申しあげなければなりません。
 お部屋で拝見した機器は、どれもこれも、文字通りの超一流品ばかりで、中には、はじめて目にしたものもすくなからずありました。一流品には、当然のことに、一流品ならではのよさがありますが、一流品ばかりがそろっている場所には、とかく、これみよがしな、ひどく嫌味な気配がついてまわるものですが、そうしたものがまったく感じられなかったのは、多分、山中さんが一流品だからということで集められたのではなく、それぞれの機器に充分にほれこんでお部屋にもちこまれ、しかもそれらを生きた状態でおいておかれるからだろうと、ぼくなりに了解いたしました。
 ただ、アンプにしろ、プレーヤーにしろ、機械というものを生きた状態でおいておかれるのは、さぞ大変な努力が必要でしょうね。アンプのパネル面など、すぐにタバコのやにでうすよごれてしまうのに、山中さんのところのアンプはどれもこれも、とてもきれいだっことが印象に残っております。今もなお、山中さんという音の美食家がきかせて下さった音のおいしさを思いだし、舌なめずりをしております。ありがとうございました。

一九七六年二月二日
黒田恭一
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 山中氏は、スピーカーシステムについてはつねに大型フロアーシステムを愛用される。現在は、エレクトロボイスのパトリシアン600だが、知られている限りにおいても、アルテックのA−5、ヴァイタヴォックス191コーナーエンクロージュア、JBLハーツフィールドがあり、アルテックとJBLは現在でも所有されている。
 パトリシアンは、エレクトロボイスのトップモデルとして、1940年代に発表されて以来、数次にわたる改良を加えられ、1963年発表の800を最後に生産は中止されたが、600は、パトリシアンシリーズがそのもっとも高い完成度を示した記念すべきモデルと思われる。エンクロージュアは、フロント・ホールデッドホーン方式としてクリプッシュのパテントによる、いわゆるクリプッシュKホーンで、その外径寸法は、96・5×148・6×76・2cm(W・H・D)、重量は、推定であるが140kgを軽くこすだろう。外径寸法を最終モデルとなった800と比較すると、幅12・7cm、高さ19・1cm、奥行5・7cm大きい。
 ユニット構成は、オールホーン型4ウェイ・5スピーカーシステムである。ウーファーはホーンロード用の46cm口径18WK、ミドル・バスが折返し型ホーンとドライバーユニットを組み合わせた828HFが2個、ミドル・ハイがT25Aドライバーユニットと6HDホーンのコンビ、トゥイーターはT350である。クロスオーバー周波数は200Hz、600Hz、3500Hzと発表されている。エレクトロボイスのドライバーユニットは、ダイアフラム材質が硬質のフェノールであることが特徴で、音色は、ウエスターン系の軽金属ダイアフラムとはかなり異なった、マイルドで弾やかである。
 アンプ系は、取材時には3種類のシステムが使われた。第一はマランツ♯7と♯2×2、第二はハドレー♯621とマランツ♯2×2、第三が米国の新進メーカーGASのテァドラとアンプジラである。
 山中氏のリスニングルームには、米国系を中心としたセパレートアンプ群が整然と置かれているが、そのいずれもが最新の製品のように美しくレイアウトされ、しかもスイッチ操作ですべてが動作する。つまり、これらのアンプ群はすべて現用機であり、生きていることに深い感銘を受けた。まさに驚異的とも思われる保守の見事さであり、想像を絶する努力の結果であることにほかならない。
 これはプレーヤーシステムでも同様で、完全に復元され動作するフィッシャーの両面を演奏可能なオートチェンジャーに代表されるように、かつての名声をほしいままにしたレクォカットやトーレンスのプレーヤーシステムが現用機として使われている。テープデッキはこれまた機種が多い。アンペックス300は、現在のAG440を電気機関車にたとえれば、まさしくSLといった存在で、そのダイナミックな音はすさまじいエネルギーを秘めている。棚に乗っているルボックスG36、サムソナイトのケースに入って目立たなく置かれたアンペックス600など、それぞれが一時期を画した名器だ。
 この部屋で聴く音楽は、スケールが大変に大きく、細やかであり、力強い。そのうえ、ステレオフォニックな音場は幅広く拡がり、奥行きは、部屋の壁をこえて彼方の空間につながっているように感じられた。
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

長島達夫様

 ぼくは、よそのお宅にうかがうのが、あまり得意ではありません。そういうことに、得意も得意でないもないようなものですが、よそのお宅にうかがうと、あがってしまうのでしょうか、なんとなくおちつかない気持になります。なぜだかよくわかりません。もしかすると内弁慶の性格ゆえかもしれませんが、今日、お宅にうかがった時も、かなりあがってしまったようでした。
 長島さんのお部屋は、まさに、長島さんおひとりのための部屋だという印象を、まずうけました。部屋には、もともと複数の人間がいることを前提とした部屋と、自分ひとりのため部屋とがあると思います。リスニングルームといわれる部屋についても、どうやら、そのふた通りあるようです。レコードで音楽をきくのだったら絶対にひとりでききたいという人が一方にいるかと思うと、できることなら親しい人と一緒にききたいという人がもう一方にいるのですから、それも当然というべきでしょう。
 長島さんのお部屋の、特等席とでもいうべきでしょうか、もっともこのましくきけるところで、長島さんの音をきかせていただいて、本来は足をふみいれてはいけないところに足をふみいれたような、幾分うしろめたい気持になったのは、雑誌の取材などという理由でおしかけたそこが長島さん以外の他者のたちいりをこばんだ部屋だったからかもしれません。
 きかせていただいた、ウェーバーのオペラ「魔弾の射手」には、本当にびっくりしました。ヨッフムのレコードでしたが、セリフの部分での、アガーテとエッヒェンは、あたかもオペラハウスの最前席できいているかのように思われるほど、なまなましく左右に動きました。そのわかり方がまた、尋常ならざるもので、たとえばアガーテが十センチ立っている位置をずらしてもわかるのではないかと思われるほどでした。
 充分に考えぬかれたスピーカーの位置、あるいは方向づけ、さらにはそれに呼応して椅子の位置ゆえのものだったといえるでしょう。ワン・ポイント・リスニングとでもいうべきでしょうか、それの徹底したものと、ぼくは感じました。そして、そのようにしてきいていらっしゃる長島さんに、長島さんならではの生真面目さを感じたりもいたしました。普段は、おそらく、ぼくがきかせていただいた位置で、耳をそばだててレコードをきいていらっしゃるにちがいない長島さんの姿が、目にうかぶようでした。
 そういえば、長島さんの音は、なにごとによらず不徹底では満足できない長島さんらしさのあらわれたものということができるようです。長島さんは、紅茶をいれてくださるのに、湯をそそいだポットを布巾でつつむということをなさいましたね。そういうことがイッはン的になされるものかどうか、ぼくは不覚にも存じませんが、たとえ紅茶をいれるにしても、ただいれるだけでなく、そこでつかう紅茶の葉から、最良の結果をえようとする長島さんの、いかにも長島さんらしいおこないのように、ぼくには思われました。きかせていただいた音には、そういう長島さんをしのばせるところがあったようでした。
 にもかかわらず、長島さんは、それをてらうわけでなく、いや、いつでもそこできくわけではなくて、酒をのんで、ひっくりかえってきくことだってあるんだよ──なんて、おっしゃったりしました。たしかに、そういうこともあろうかと思いますが、きかせてくださった音の質といい、レコードといい、長島さんの生真面目さをものがたってあまりあるものといえそうでした。
 もし求心的なきき方というものがあるとすれば、長島さんのなさっていることは、そういわれてしかるべきものといえるのではないでしょうか。長島さんのきかせてくださる音を前にすると、ききては、どしても耳をそばだててきかざるをえなくなります。そうしないことには、そこでなっている音に対して申しわけないような気持になってしまうからです。まさにプライベートルームでひびくそのような生真面目な音に、率直に申しあげて、ぼくはいささかたじろぎました。すごいなと思い、してはいけないことをしてしまったようなうしろめたさが残りました。そして、長島さんはいったい、この生真面目な音とむきあって、一日のうちのなん時間ぐらいを、すごされるのだろうと思ったりいたしました。
 長島さんの肉声とでもいうべき、長島さんの音をきかせていただいたことに、お礼の言葉もありません。

一九七六年一月十六日
黒田恭一
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 長島氏のスピーカーシステムは、大型のジェンセン・インペリアルシステムと呼ばれていたものだ。いまではジェンセンというブランドネームはポピュラーではないが、古くSP時代からLP全盛期にわたり、スピーカーユニットとしては国内でかなり愛好されていた。とくにSPの頃には、明快で歯切れのよいスピーカーとして定評があり、ローラ・セレッションの前身のローラのスピーカーユニットが柔らかく滑らかな音をもっていたのとよく比較されたものだ。
 インペリアルシステムは、83×140×70cm(W・H・D)の外径寸法と約95kgの重量をもつ大型システムだが、コーナー型エンクロージュアの後をカットしたようなセミコーナー型ともいえる形態をもち、そのうえ、シンプルなバックロードホーン型であるのが特徴である。このバックロードホーンは、一般的なエンクロージュアの天板部分に開口部があり、部屋のコーナーに置いて両側の壁面と天井をホーンの延長として使う場合と、全体を倒立させて両壁と床面をホーンの延長として使う方法の二種の使用が可能であるが、長島氏の場合は床側にホーン開口部を置く使い方である。
 使用ユニットは、ジェンセンのトライアクシァル型フルレンジユニットG610Bで、3ウェイ同軸型としては歴史が古く他に例のない存在である。このユニットの前身は、LP全盛期に最高のスピーカーユニットとして、高価のあまり買うという実感とはほど遠かったG610であり、変わったのは、コーン紙前面のブリッジ上にセットされたトゥイーターのホーンが、円型から矩型になったことくらいである。
 ウーファーは、ホーン型中音と高音ユニットの能率に合わせる目的で、おそろしく強力な磁気回路をもっていて、特性的には低域に向かってレスポンスが下がる典型的なオーバーダンプ型である。中音は、布目の細かいフェノール系のダイアフラムが特徴で、形状はウェスターンの555と同様な特殊なタイプである。ホーンはウーファーの磁気回路を貫通してウーファーコーン紙をホーンとして使っているのはタンノイと同じだが、磁気回路は独立しており単独に取外し可能な構造になっている。トゥイーターは、中音と同じくフェノール系のダイアフラムをもつホーン型で、かつての円型ホーンをもっていたユニットは、単体として、たしかPR302という型番で発売されていた。
 アンプ系は、マランツの管球タイプのシャープ7コントロールアンプと♯2×2の構成。プレーヤーシステムは、エンパイア598ニュートラバドールとオルトフォンSPU−A/Eのコンビ、テープデッキがルボックスのHS77、FMチューナーは珍しいルボックスFM−A76。
 長島氏のインペリアルシステムから出る音は、中音と高音のレベルセットが異例ともいえるMAXであるが、長島氏の長期間にわかるエージングの結果、ナチュラルなバランスであり、とくに低域が、バックローディングホーンにありがちな固有音がまったく感じられず、引締り重厚であるのが見事である。G610Bが同軸型であり、システムがコーナー型であることもあって、部屋のなかでの最良の聴取位置はピンポイントであり、そこでのみ音像が立ち並ぶ独得なステレオフォニックな音場空間が拡がる。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 10万円以上は、いわゆる高級デッキの存在する価格帯である。基本的には、15万円台をボーダーラインとして分割して考えられる。
 10〜15万円の価格帯では、メタル対応モデルが各社から比較的早く製品化されたため、昨年のオーディオフェアを境に新旧の世代が分かれているが、やはり、新しいモデルにメリットが大きい。
 まず、10万円に近い価格では、基本的に、9万円台のわずかに性能向上や機能が増したモデルが多く、選択はシビアになる。高級機らしさを性能、機能、構造に求めれば、やはり14〜15万円台で、定評のあるメーカーのトップモデルか、昨秋以降の新製品を選べば、普及機では考えられないようなメタルテープの凄さを満喫できよう。また、このクラスはLH、コバルトテープの音が、一格異なった味であるのも楽しい。
 15万円以上は本来のスペシャリティで、メーカーも限定されるが、新世代のこのクラスデッキは、使い方さえ正しければ、普及型のプレーヤーシステムとは比較にならない、高性能と高クォリティの音を聴くことができる。

ナカミチ Nakamichi 680ZX

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独立3ヘッド構成、クローズドループ2キャプスタン型の走行系に、世界初の自動アジマス調整機構をビルトインした半速を含めた2スピード型の高級機。ヘッドは半速で15kHzを保証可能な独自のタイプで、並のデッキの標準速度に匹敵する音を聴かせる。2速度型のキューイング、自動選曲など機能も充実し、現代デッキの頂点に立つデッキである。

ソニー TC-K88

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自のモーター駆動で前後方向にスライドするテープ走行部により、世界で最薄型のカセットデッキを実現した、見事なソニーらしい製品である。2ヘッド・3モーター方式の走行系には、自動選曲、キューイング機能を備え、精度の高いテープ残量計としてもメーター部は使える。ナチュラルな周波数帯域と緻密で充実した音は、さすがに高級機ならではのものだ。

Lo-D D-3300M

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 D5500Mと同等な、マイコンによる自動バイアス・感度・録音イコライザー調整機能を備えている点が、最大の特長である。この自動調整は、テープセレクターでテープの種類を選択後に動作させるタイプで、最適調整値は記憶させることが可能であり、バックアップ機能をもつ。音質は滑らかでキメ細かく、帯域の十分に広い素直な音である。

アイワ AD-F90M

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 高級カセットデッキのスタンダードといってもいい性能と機能を備えた製品である。2モーター・フルロジック型の操作系と3ヘッド構成を採用し、独自のピークとVUのダブルニードルレベルメーター、キャリブレーション発振器、バイアス調整に加えて、ワイヤレスリモコンが標準装備である。クリアーでスッキリと抜けの良い音は、独特の魅力をもっている。

テクニクス RS-M88

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 基本的にはRS−M85のメタル対応モデルと考えてよい。外観上は、FLメーターが2色になった他は変わらず、薄型タイプの先駆けとなったフラットなデザインは、現在でも新鮮な魅力をもっている。音質は、いかにもワイドレンジといった誇張感がない、ナチュラルなレスポンスと、聴感上のSN比がよく、スムーズで高クォリティの音を聴かせてくれる。

ソニー TC-D5M

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 世界でもっとも小型・軽量なポータブルデッキでありながら、高級コンポーネントデッキに勝るとも劣らぬ、抜群の走光性と音質を誇るTC−D5のメタル対応機だ。本機とECM150とのコンビは、メタルテープの桁はずれの情報量を活かし、ドルビー使用では、へたなオープン顔負けの、これぞマイク録音ならではの凄いサウンドを収録できる。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 10万円未満の価格帯のカセットデッキの概要は、プレーヤーシステム以上に製品数も多く、新旧の世代交代が激しく続けられているために一括して記すことは不可能だ。
 とくに、昨年来のメタルテープ対応が最低の条件となり、メタルテープの単価から考えると、そのランニングコストに比較して、デッキ単体の価格が安いランクの価格帯やラジカセまでがメタル対応化されている現在では、カセットの分野は他のジャンルにくらべると、まったくの特殊分野だ。とくに最近の傾向として、春には普及価格帯の新製品ラッシュが起き、短期間に製品の価値観が急変する点に注意したい。
 5万円台は、前半と後半では実際に別の価格帯であり、後半の激戦価格帯はすでにメタル対応の第2世代になっている。初期のメタルテープが使えるという時期から、メタルテープを使うためのデッキに変った。前半の製品、それ以上に4万円台後半の新製品は初期の5万円台後半の性能以上である。
 7万円台は従来からも数こそ少ないが、選択すればベストバイモデルが存在していた注目のゾーンだ。新しい3ヘッド機がポイントで、2ヘッド機では市場に現われた物量投入型に現在も魅力がある。
 9万円台は、メタル対応以前は最も製品が充実し、各社各様の独自の魅力をもつ機種があり、選択の楽しみがもともあった価格帯だったが、メタル対応化が遅れ比較的に新しいモデルが多い。選択はカセットの使いやすさを重視すれば、自動選曲機能を備えた2ヘッド機、性能・音質重視なら3ヘッド機となるは7万円台と同様である。選択機種にはないが、最もメタル対応が遅れたオートリバース機もディスクファンには狙いめである。

ティアック C-3(BL)

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 Cシリーズ中では最新のC3のブラックフェイスモデルである。基本的には、トップモデルC1の設計思想を受け継いだ、いわゆるシステムデッキであり、別売のプラグインカードによるテープ最適条件の設定をはじめ、ミキサーアンプ、dbxシステム、キャリングケースなどプロ用に準じた本格派の使い方が出来る点が最大の魅力である。

ヤマハ K-1a

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 K1のメタル対応機で、ブラック仕上げとシルバー仕上げが選択できるのが楽しい。定評のある走行性能をベースに、独自のセンダストヘッドは巻線を銀線とし、かつ低インピーダンス化して性能・音質をK1より一段とリファインしている。音質は滑らかで明るい音色が際立ち、ディスクファンにも十分に満足されよう。

ソニー TC-K75

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 コンポーネント型としてはソニー初の3ヘッド構成である点が特長だ。バイアス固定、リミッター付を原則としたこれ以前のモデルを第1世代とすれば、発振器内蔵バイアス微調整付でキャリブレーション可能なこの製品は、テープが高度に発達し、多様化した現在に対応する、いわばソニーの第2世代の第1号機であり、その完成度は見事だ。

テクニクス RS-M51

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 使いやすいオート機能を重点的に採用したユニークな製品である。定評の高いソフトム方式の操作系をベースに、前もってプログラムソースのピーク値を検出し最適レベルを決める、オートレックセンサー、LH/コバルト/メタルの3種のテープ自動選択機能など、誤操作によるミスをオート機能で防止する内容とプレーンなパネルフェイスが特長。

ソニー TC-K71

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 価格的には、従来のK65の上級機種の位置にあるが、その内容は性能の向上を重視して、K75と同様な3ヘッド構成を採用している点に注目したい。走行系は、音質を重視して、フライホイールなどの回転系にダンプ材を使い、雑音をシャットアウトするなど、メタル対応機の第2世代らしく、優れた基本性能と音質重視設計が魅力の優れた製品だ。

Speaker System (floor type)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第32項・市販品をタイプ別に分類しながら(5) フロアー型スピーカー」より

 どこまで頑張ってみても、所詮ブックシェルフはブックシェルフ。どこか伸びの足りない音がするのにくらべて、フロアータイプの大型の、ナマの楽器そのもののスケールの大きさや、音場感や、悠然とした余裕のある鳴り方こそ、やはりスピーカーのゆきつくところだ、という感じがする。しかしフロアータイプは、とうぜん大型で設置のための面積が大きく占有される。また、部屋の中でどうしてもスピーカー最優先、という置き方が必要になり、視覚的にもスピーカーが部屋の主役の感じになる。価格には幅があるとはいえ、注目製品は概してかなり高価につく。そういう不利な条件をものともしない愛好家でなくては、とうぜん手を出しにくい。しかしくりかえすが、その点を承知であれば、フロアータイプの上質のスピーカーの聴かせる音楽の世界は別格だと断言していい。
           *
 フロアータイプの高級機を代表する製品は、すでに7〜12、19〜23などの項で紹介したのでそれとの重複を避けて、注目製品を列挙しよう。
 まずアメリカ製ではボザークのB410MOORISH(ムーリッシュ)。広い部屋で、たっぷりした音量で鳴らしたときの量感の快さはちょっと類がない魅力。しかし部屋が小さくてスピーカーに接近して聴かざるをえないとき、そして音量を絞って聴くときには、ボザークの良さは発揮しにくい。
 そういう目的にはむしろ、JBLのL300やそれのプロ用4333WXAがある。E−VのインターフェイスDも、このメーカー久々の良いスピーカーだと思う。アルテックのモデル19は、これらと大きさは近いが、その音はボザーク同様に広い部屋で生かされるタイプだ。
 イギリスは、すでに書いたようにスピーカーの大型化をあまり好まない国で、かつてのタンノイのオートグラフや、22項のヴァイタヴォックスCN191を除くと、いまや大型のフロアータイプはタンノイの〝バッキンガム〟と、セレッションのアンティークデザインの〝デッドハム〟ぐらいのものか。ヴァイタヴォックスの〝バイトーン・メイジャー〟は、アルテックA7Xのイギリス版という感じで、A7Xをぐっと渋くした音に特徴がある。
 イギリスでは、いまではこれらよりもう少し小型の、21項のディットン66や25のようなトールボーイタイプが好まれるらしい。ディットンの三桁ナンバーの新製品662は、551(29項参照)同様に新しい音を目ざした良い製品。スペンドールBCIIIは、モニター的なバランスの良い音質を愛好する人が多い。タンノイは全面的にモデルチェンジしてしまったが、さすがに日本で人気の高いアーデンとバークレイだけは、マークIIになったとはいえ、残している。
 ひとつぜひ紹介しておきたいのが、フランス・キャバスの〝ブリガンタン〟。やや個性的な音だが、いかにもフランスを思わせる華麗な音質は他に類がない。
 そして最後に国産だが、フロアータイプでは、これら海外の著名一流品の魅力にいまひとつおよばないというのが正直のところではなかろうか。

Speaker System (Mini type)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第31項・市販品をタイプ別に分類しながら(4) ミニスピーカーと小型ブックシェルフ」より

 たとえば書斎の片すみ、机の端や本棚のひと隅に、またダイニングルームや寝室に、あまり場所をとらずに置けるような、できるだけ小さなスピーカーが欲しい。しかし小型だからといって妥協せずにほどほどに良い音で聴きたい......。そんな欲求は、音楽の好きな人なら誰でも持っている。
 スピーカーをおそろしく小さく作った、という実績ではテクニクスのSB30(約18×10×13cm)が最も早い。けれど、音質や耐入力まで含めて、かなり音質にうるさい人をも納得させたのは、西独ヴィソニック社の〝ダヴィッド50〟の出現だった。その後、型番が502と改められ細部が改良され、また最近では5000になって外観も変ったが、約W17×H11×D10センチという小さな外寸からは想像していたよりも、はるかに堂々としてバランスの良い音が鳴り出すのを実際に耳にしたら、誰だってびっくりする。24畳あまりの広いリスニングルームに大型のスピーカーを置いて楽しんでいる私の友人は、その上にダヴィッド50(502)を置いて、知らん顔でこのチビのほうを鳴らして聴かせる。たいていの人が、しばらくのあいだそのことに気がつかないくらいの音がする。
 ダヴィッド5000とよく似た製品に、西独ブラウンのL100がある。しかしブラウンなら、これと価格のたいして違わないL200のほうが、大きさで無理をしていないだけ音に余裕が出てくる。ミニスピーカーのチャンピオンは、やはりダヴィッドだと私は思う。ちなみにダヴィッドの名は、巨人ゴリアテを見事に倒した例のダヴィデから名づけられている。
 ブラウンL300は、外径はL200の奥向きがわずかに増しただけだが、このサイズで3ウェイを収めた強力型で一聴の価値がある。ブラウンとヴィソニックは、ともに西独の製品特有の、カチッと引締まった気持のいい音がするが、どちらかといえばブラウンの音のほうがやや弾力的だ。
 これらの製品に音質の点ではおよばないが、おそらくいま世界最小のスピーカーは、フォステクス(日本)のG700だろう。またアイデンのCUBEは、アメリカ・オーラトーンを真似た正方形のサイコロ型で、これも場所をとらない点がおもしろい。ほかに国産の注目製品を左にあげておく。
 これら超小型スピーカーよりもひとまわりサイズを増して、そのかわり無理をせずにまとめた小型ブックシェルフの中に、いくつかおもしろい製品があって、もしスペースが許せば、超小型の意外性を別としてこちらのほうがやはり音の伸びが自然だ。
 ロジャース(英)のLS3/5Aは、英国BBCがモニターに採用しているだけあって、音のバランスが自然で、繊細な音の美しさでズバ抜けている。
 これよりさらに少々大きくなるが、国産のヤマハNS10M、その成功に刺激されて後を追ったダイヤトーン、オンキョー、デンオンはそれぞれに出来がいい。ヤマハとダイヤトーンがやや真面目な音。オンキョーとデンオンは弾みのある豊かな感じ。そしてこれらほど音をうるさく言わずに、食堂の片すみなどに気軽に設定する製品として、フォステクスのG11Nは目をつける価値がある。

Speaker System (Bookshelf type)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第30項・市販品をタイプ別に分類しながら(3) ブックシェルフタイプ──日本編」より

 日本のスピーカーは、ブックシェルフタイプに限らず、ほんの数年前までは、海外での評価はきわめて低かった。というよりも、まるで問題にされなかった。アンプやチューナーや、テープデッキ等を中心に、国産のオーディオパーツは欧米で十分に認められ、むしろその価格に対する性能の良さが怖れられてさえいる中で、残念乍スピーカーだけは、高音がひどくカン高い、とか、低音が話にならない、などと酷評されていた。
 けれど、日本のメーカーの努力が少しずつ実を結びはじめて、こんにちでは、ブックシェルフ型と次の31項の超小型に関するかぎり、欧米の有名品と互角に勝負ができるまでに、性能が向上してきた。
 アメリカのスピーカーが、カラッと明るい力強さを特徴とし、イギリスのスピーカーが繊細な艶やかさと上品な味わいを特徴とする中に日本のスピーカーを混ぜて聴くと、そこにやはり日本のスピーカーだけの鳴らす音の特徴を聴きとることができる。それは、アメリカやイギリス(を含めたヨーロッパ)の音にくらべて、総体に薄味に感じられる、という点である。
 欧米のオーディオ用語の中に「カラーレイション」という表現がある。音の色づけ、とでもいった意味で、音楽の録音から再生までのプロセスで、できるかぎり機器固有のクセによる音の色づけを排除しよう、というとき、カラーレイションのない(または少ない)......といった形で使われる。この考え方は日本の専売特許のように思い込んでいる人があるがそれは違う。カラーレイションを排除すべきだ、という考え方は、欧米の文献にも一九五〇年代以前からすでにあらわれている。
 ところが、日本の一部のオーディオ関係者や愛好家の中には、欧米の音は色づけが濃くて、日本の製品こそ、真のハイファイ、真のアキュレイトサウンドだ、とかたくなに信じている人がある。しかし自分自身の匂いは自分には感じとれないと同じ理由で、日本の音を聴き馴れてしまった人には、日本の音こそ無色に感じとれてしまうだけの話だ。フランスの国内専用の旅客機に乗ったとたんに、チーズの匂いに似た強い香りにへきえきしたことがあったが、たぶんフランス人にはそんな匂いは感じとれないだろう。そして、少し長い海外の旅をして日本に降りたったとたんに、日本という国独特の、まるでタクワンのような実に奇妙な匂いが感じる一瞬がある。
 それと同じことで、欧米のオーディオ専門家に日本のスピーカーを聴かせると、いろいろな表現で、日本のスピーカーがいかに独特の個性を持っているか、を彼等は語る。つまた日本のスピーカーもまた、決して無色ではないのである。
 しかしそういう前提をした上で、少なくとも無色を目指して、メーカーが真剣に作った製品の中に、国際的に通用する立派な製品が出てきたことはたしかだ。その代表が、たとえば18項でもとりあげたヤマハNS1000Mだが、そのヤマハではむしろ、NS690IIのほうが、いっそう日本らしいスピーカーといえそうだ。これを目ざしたライバルのビクターSX7IIとオンキョーMX7は、ヤマハよりやや味が濃いがそれぞれに完成度の高い中堅スピーカーといえる。ビクターのSX3/IIIはその弟分としてローコストの代表機。そのライバルのデンオンSC104II、そして新製品のラックスMS10、トリオのLS202がこれからの注目製品だろう。

Speaker System (Bookshelf type)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第29項・市販品をタイプ別に分類しながら(2) ブックシェルフタイプ──イギリス編」より

 ブックシェルフの元祖ARを別にすれば、アメリカのスピーカーは、どちらかといえばもっと大型の高価な、いわば物量を惜しまない作り方のほうに特徴を発揮している。ブックシェルフタイプは、それぞれのメーカーの製品系列の中のお得用品、といったニュアンスがある。これに対して、ヨーロッパのスピーカーは、ブックシェルフサイズこそ本流で、概して欧州民族はスピーカーがことさら大げさになることを好まないらしい。たとえフロアータイプを作っても、32項であげるようにタテに長いいわゆるトールボーイ型が多く、部屋に置いたときに、スペースを占有しないような配慮がうかがえる。
 もうひとつ、アメリカとヨーロッパの大きなちがいがある。それは音量の問題だ。一体にアメリカのスピーカーにくらべて、ヨーロッパのスピーカーは、大きな音量に弱い。アメリカのARやJBLやE−Vやその他28項であげた製品たちが、それぞれに音触の傾向を異にしながらも、楽器が眼の前で演奏されているかのような音量に上げても、音が割れたりせずに危なげのない堂々とした量感で楽しめるのにくらべると、ヨーロッパ、ことにブックシェルフタイプにとても小粋な味を出すことの上手なイギリスのスピーカーは、ハイパワーに弱い、というひとつの弱点を持っている。ただ、イギリス人と話をしてみると、彼らはそれを弱点とは思っていない。それは彼らが、そんな大きな音量でレコードやFMを鳴らすことをまるで考えてもみないからだ。イギリスの家庭用のスピーカーは、ややおさえかげんの、控えめな、少しオーバーにいえばひっそり、といった感じの音量で鑑賞することが、どうやら使いこなしのカンどころのようだ。
 また、これはすでにくりかえしたことだけれど、アメリカのスピーカーが概して演奏者に近接して聴く感じで音を直接的に聴かせるのに対して、イギリスをはじめとするヨーロッパのスピーカーは、演奏者とやや距離を置いて聴く感じ、その結果。楽器の音が、それを演奏している部屋の響きをともなってきこえるような印象となる。そして、アメリカの音は概して乾いた感じで聴こえて、ヨーロッパの音は反対にやや湿り気を帯びて聴こえる。アメリカの音は良くも悪くもややドライだが、ヨーロッパの音には独特の繊細な艶がある。こういう違いが、スピーカーを選ぶときの大きな鍵になる。
 たとえばすでに紹介したスペンドールBCII、そしてそれをいっそう小造りにしたような音のロジャース〝コンパクトモニター〟はその代表例だ。しかし同じイギリスでも、KEFの103や104aBになると、明らかにもっと新しい世代の、イギリスにしてはパワーに強い、そしてクールな音を聴かせる。またセレッションの〝ディットン〟シリーズは、66や25ところでも書いたようにいくらか古めかしい独特の魅力を持っていたが、小型のディットン15XRは以前のものより音がフレッシュになってきたし、新しい551は、従来のディットンとはかなり違って、レンジの広いシャープな音に仕上ってきている。

パイオニア CT-720

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 CT710のメタル対応モデルであり、このクラスの製品では珍しい、クローズドループ方式のデュアルキャプスタン走行系が特長である。ヘッドは3ヘッド構成で、優れたアンプ系のバックアップで、各種のテープを限界にまで追い込んだ録音が可能であり、とかく線が細くなりやすいカセットの音を、ダイナミックに聴かせるのが魅力だ。

サンスイ SC-77

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 標準サイズボディに充実した内容を盛り込んだ中級クラスのスタンダードモデルである。2モーター方式の走行系は安定感があり、優れたアンプ系のバックアップで、情報量は桁はずれに多いメタルテープの魅力を引出し、拡がりのある音場感とクッキリとした音像定位を聴かせる。メタルテープは単価が高いだけに、音や音場感でも格差が必要である。

ビクター KD-A55

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 2モーター・フルロジック操作系のメカニズムを採用した最初のメタル対応機として好評を得たA5のグレイドアップモデルである。すでにA5と同等の性能を4万円台のA33でビクターは実現しているだけに、このA55では、リモート操作、自動選曲、メモリー停止と再生、スーパーANRSを加え、機能面を格段に向上した点に注目したい。

テクニクス RS-M05

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 同社のコンサイスコンポシリーズに加えられた小型メタル対応機である。走行系は独自の1モーター方式のソフトム操作系を採用し、Fe−Crを除く3種のテープの自動選択、自動頭出し選曲、自動巻戻再生、キューイングの他に、1ボタン録音が可能であるなど、小型のボディに性能をベースとした多くの機能を備えている点に特長がある。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 20万円未満の価格帯では、基本的に価格帯の分割方法がラフに過ぎるため、簡単に傾向を記すことは不可能である。したがって、ここではさらに細分して考えることにする。
 5万円未満では、各メーカーともにシリーズ製品のベーシックモデルが選択のポイントになる。これらの製品は付属機能を省いたマニュアル機で、基本的な機構設計が同一な点に注目したい。駆動モーターも、クォーツロック型よりも、ただのDD型のほうが結果としての音が優れた例もあるため、最低限の比較試聴をしたいものだ。
 5〜10万円台は、予想外に優れた製品が少ない価格帯で、ポイントは、各メーカーともに、最新製品を選ぶことだ。
 10万円以上では、機械的な設計、とくに強度が充分にある製品が必要最低限の選択条件だ。トーンアームのガタや、ターンテーブル軸受が弱いために、ターンテーブルの端を押すとタワムような製品は要注意である。

パイオニア PL-70

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 エクスクルーシヴの流れを受継いだマニュアルプレーヤーの最高級モデルだ。アームは、ダンプ両可変のオイルダンプ方式のスタティックバランス型、クォーツロックDD駆動のターンテーブル、マーブルエボニー天然木仕上げの重量級ベースとオーソドックスな構成。

ダイヤトーン DP-EC1MKII

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる電子制御フルオート機の国産第1号であるEC1の改良モデルだ。前面操作方式、クォーツロック化などが変更されたポイント。低域を充分に制動したシャープで抜けのよい音をもち、クォリティはこの価格帯にふさわしい高さだ。

テクニクス SL-1300MK2

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 重量級ターンテーブルを独自の開発によるクォーツシンセサイザーピッチコントロールのダイレクトドライブ方式で駆動する高性能フルオートプレーヤー。トーンアームは高さ調整付のスタティック型で、各種のカートリッジの特徴を素直に引出す性能をもつ。

テクニクス SL-10

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 レコードジャケットサイズの超小型フルオートプレーヤー。リニアトラッキングアームにはMC型カートリッジが組み込まれ、専用ヘッドアンプを内蔵している。機能は自動レコードサイズ選択と速度選択が特長で、水平位置、垂直傾斜のどの状態でも動作する未来指向型。

マイクロ BL-71

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 3・2kgの重量級ターンテーブルと直径16mmのシャフトの組合せをFGサーボモーターでベルトドライブする専門メーカーのマイクロらしい製品。巨大な軸受リング採用の特長のあるアームは、内線材に無酸素銅を採用。自然で色づけのない力強い音が特長である。

デンオン DP-70M

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 DP80での成果である二重構造ターンテーブルをアウターローター型ACサーボモーターでダイレクトドライブするマニュアルプレーヤーだ。アームは独自のダイナミックダンピング機構付。音質はナチュラルで抜けがよく、適度な緻密感をもつオーソドックスなタイプ。

Speaker System (Bookshelf type)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第28項・市販品をタイプ別に分類しながら(1) ブックシェルフタイプ──アメリカ編」より

 これまでに例にあげた以外にも、いろいろな意味で注目に値するスピーカーは数多い。そのひとつひとつについて、いままでのようなとりあげかたをしていては、いくらスペースがあっても足りないので、この辺から、内外の多くのスピーカーを、おもにその寸法や価格からタイプ別に分類しながら、特徴のある製品を拾って眺めていこう。まず何といっても、現在なお世界的に主流の座を占めているブックシェルフタイプから、ということになる。
          *
 ブックシェルフタイプとは、その名のとおり、欧米の家庭の居間や書斎によく見受けられる作りつけの本棚(ブックシェルフ)に収めやすいサイズであるところから生まれた呼び名だが、その呼び方と、こんにち世界的に最も多い長辺60センチ前後、短辺35センチ前後、奥行き30戦地前後、というサイズは、アメリカのARの初期の製品の25×14×11 3/8インチ(約635×355×290ミリ)が手本になった。これを横倒しに本棚に収めると、B4版やその変形版の大型書籍とうまく並ぶ。こんにちでは、本棚とは無関係にタテに置く方が一般化したが、このサイズが、使う側よりもむしろ作る側にとって経済的な寸法であったため、これほどまでに普及したといえる。
          *
 そのブックシェルフの元祖ARは、ボストンにあって、アメリカ東海岸を代表するスピーカーのメーカー。こんにちではAR10πがその代表製品といえるが、少なくとも10畳程度以上のなるべく広い、しかも響きの豊かな部屋で鳴らしたときに、そのマイルドで力強い音が楽しめる。どちらかといえば、音量を上げるにつれてその長所を発揮する。
 同じアメリカでも、西海岸のJBLや、比較的新顔のESSになると、ARと反対に、明るく鮮鋭で力強い音がする。ESSのam1ブックシェルフ、JBLの小型モニタースピーカー4311Aや4301WXがその例だ。JBLも、コンシュマー用のL40はもう少しソフトな味になるし、旧型のロングセラーSP−LE8Tなどの、こんにちではやや異色の、しかし捨てがたい製品もある。
 アメリカの中部を代表するE−V(エレクトロボイス)は西と東のまさに中庸をとったような、とてもバランスの良い音を聴かせる。インターフェイスA/IIはその代表作。また、これは西海岸のメーカーながら、同じくバランスのよいという点では、BSWのボリヴァー18に注目したい。有名メーカーでないせいかあまり話題にならないが、輸入品でこの価格としては、もっと騒がれてよい製品だと思う。
 アメリカ製のブックシェルフタイプで私が注目している製品は以上だが、もう少し追加するなら、AR10πのレベルコントロールのみを一部省略したAR11、JBLの4301のコンシュマー用L19を、同種のローコスト買徳版ということであげておこう。また、E−VのインターフェイスA/IIをひとまわり大型化して、これはブックシェルフというよりはフロアータイプに近くなってしまうが、同じ「インターフェイス」シリーズのB/IIやCも、それぞれに特徴のある製品といえる。

パイオニア PL-50(L)

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自のSHローター方式モーターとオイルダンプ型のアームを採用したマニュアルプレーヤーで、型番末尾にLの付くタイプは、オートリフトアップ機構を加えた製品。音は穏やかだが安定感があり、各種カートリッジのキャラクターを素直に引出し聴かせる。

サンスイ XR-Q9

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自の構想に基く、最適支持方式を採用したストレート型アーム。磁気検出型の自社開発クォーツロックDD型モーター、大型の3本のダイキャスト型脚部に吊り下げ構造を組み合わせた、ユニークなサスペンション方式のプレーヤーベースを備えた高性能フルオート機。

ダイヤトーン DP-EC3

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる30cmと17cm盤の自動サイズ選択と速度、、ターンテーブル上のレコードの有無をはじめフールプルーフに使えるフルオートプレーヤーである。ナチュラルな帯域感と素直な音は常用するにふさわしい製品である。

ビクター QL-Y5

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 Y7とシリーズをなす最新のセミオートプレーヤー。トーンアームは、電子式ダイナミックバランス型で、針圧、アンチスケート、ダンピングは独立した調整ツマミで電気的にコントロールできるのが最大の特長。伸び伸びとした力強い音は、聴いていて大変に心地よい。

デンオン DP-40F

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自の開発による無接触式電子制御フルオート機構を採用したクォーツDD型プレーヤー。前面操作型でダストカバーを閉じたまま、レコード盤上の任意の位置に針先を落とせるポジションセレクター、電子式アンチスケートなどを備える。安心して使える中級機である。

ヤマハ P-750

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 低共振の左右対称ストレート型ARSアームがフレッシュな印象を与えるクォーツロックDDフルオートモデル。ヘッドシェルはネジで着脱可能であり、パイプ状をスライドする針圧ウェイとは大変に使いやすい。帯域感が広く、シャープでクリアーな音が特長である。

パイオニア PL-30(L)

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 中級機として定評があるPL50(L)のジュニアタイプのマニュアル機だ。上級機種と同等な重量級ターンテーブルをベースに、リジッドな構造のアームを採用し、安定感のある音が特長であり、まさしくベストバイだ。型番末尾のLはオートリフト付のモデル。

サンスイ FR-Q5

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 エレクトロニクス制御のトーンアームを備えたフルオード型のシステム。ーたーはクォーツロック方式のDD型で自社開発であるのが特長。付属カートリッジは、エンパイア製で2000の相当品だが、中域の充実した活気のある音は、このクラスでは抜群である。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 20万円以上の価格帯は、最近になって製品が豊富になり、選択の楽しみが増している。従来の20万円未満の価格帯の製品をアンプのプリメインアンプとすれば、この価格帯は、セパレート型アンプともいえるスペシャリティの分野である。
 たとえば、中型以上のフロアー型スピーカーシステムを、合計35万円クラスのセパレートアンプでドライブするシステムを使っているとしよう。これにマッチするプレーヤーシステムは、やはり30万円以上としなければ、折角のアンプやスピーカーシステムの実力が、プレーヤー部分がネックとなり、充分に発揮できないことになる。
 ちなみに、ローコストのシステムで10万円未満のプレーヤーシステムと、このクラスの製品とを、同じカートリッジを使って比較してみるとよい。いかに、プレーヤーシステムの性能が、トータルのシステムに決定的な影響を与えているかが明確にわかるはずだ。

EMT 930st

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 伝統的な業務用コンストラクションを現代に伝えている貴重なプレーヤーシステムだ。直径33cmのターンテーブルは二重構造を採用し、リムドライブ方式で駆動される。トーンアーム929には、TSD15を組み合わせる。

パイオニア Exclusive P3

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 本格派の超高級プレーヤーの第1号ともいえる製品だ。アルミ削り出し2・8kgターンテーブル、オイルダンプ方式ダイナミックバランス型アームは、コアキシャル支持方式で超重量級ベースからフローティングしてある。重厚で力強い音はリファレンス用に最適だ。

ソニー PS-X9

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 高性能な重量級プレーヤーシステムの先駆者的存在の製品だ。業務用機に準じたボディ構造を採用し、ターンテーブルには38・1cm、トーンアームは実効長264mmでXL55PRO標準装備。内部には、ヘッドアンプ、イコライザーアンプをもち、オートリターン機構付。

ケンウッド L-07D

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 異種金属貼り合わせ防振構造の重量級ターンテーブル、動的位相補償器内蔵の水晶制御DDモーター、アルミ、ボロン、カーボン三層構造パイプアーム、独立型の電源部、超精密級のアーム高さ調整機構など、現代の豊富な材料と革新的な技術により開発された高級機だ。

パイオニア Exclusive P10

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 P3のジュニア版として開発されたマニュアル機だ。ターンテーブルは2・8kgの低圧鋳造製で防振材付。アームは、インテグレートシェル付の直線型と、S字型にパイプの交換が可能である。音は緻密でスケールが大きく、高価格製品が多くなった高級機のなかの標準モデルといってよい。

B&O Beogram4004

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる電子制御フルオートプレーヤーの、世界最初の製品4002の改良モデル。リニアトラッキングアームにはMMC20EN付、ターンテーブルはベルトドライブ型、操作軽の変更の他に、リモートコントロールが可能になったことが、このモデルの特長。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 4万円以上の製品では、国内製品、海外製品のトップモデルがひしめいているのが特長だ。それぞれが高度な物理的特性を備え、しかも、トーンキャラクターは大幅に異なる点に注意したい。また、発電方式による音の差も少なく、新素材、新技術を投入したモデルが多く、現代の最先端をゆくトランスデューサーの魅力を充分に味わうことができる。ただし、それぞれのモデルの性能をフルに引出すためには、併用するプレーヤーシステムに、高度な性能が要求されるのは、当然と考えるべきである。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 2〜4万円台の製品では、国内製品と海外製品が数量的には互角に競合する価格帯である。選択された製品は、2万円未満と同様にMC型が半数以上を占め、それも新製品が少ない。この価格帯は定評の高いメーカーの伝統のある製品、もしくは改良型を手堅く狙うのが、ひとつのポイントであろう。基本的には、新素材、新技術を全面的に導入した製品は、これ以上の高価格帯で選びたいものだ。常用カートリッジとして、この価格帯から発電方式の異なったものを複数個選んで使うのが、最も魅力的な使い方といえる。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 2万円未満の製品は、選択された4機種中で、新製品はヤマハMC7のみであり、MC型が3機種あることは、カートリッジの分野でのMC型志向が強いことと、海外製品の販売価格の低さという特殊性がうかがえる。MC型は、ヘッドアンプで使用する場合には、インピーダンスが高いほうがアンプ側には条件がよく、高SN比が得られるため選択に注意したい。しかし、本格的に使うなら昇圧トランスを前提としたい。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 アームレス型プレーヤーは、システムというよりは、ハーフメイドのカスタム型だ。
 したがって、システムとするためには、トーンアームを選択しなければならないが、使用カートリッジの幅を考えれば、予想よりもその選択範囲は狭いのが現実である。
 カートリッジとトーンアームを分割した現在の使用法は、各種のカートリッジを任意に選択し、交換して使うためには使いやすいが、反面において、特定のカートリッジの性能を充分に引出すためには、そのカートリッジに適合したアームは一種類に限定されるという基本に反することになる。つまり、汎用型としてアームを選べば既製のプレーヤーシステム同様に中量級のユニバーサル型を選ぶしかないわけだ。
 アームレス型プレヤーを活かす使用法は、複数個のアームか、各種のアーム部分やパイプ部分が交換できるマルチアームを組み合わせ、使用カートリッジにマッチしたアームを選んで、既製システムでは得られない、それぞれのカートリッジの性能・音質をフルに引出した、ディスクオーディオならではの独特の世界を楽しむことである。

ラックス PD121A

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 オーディオ的に洗練されたフラットでシンプルなデザイン、ロードフリー型スピンドル採用で重量級ターンテーブルと組み合わせたクォーツロックDD型モーター、アルミダイキャスト製シャーシを採用した一体型プレーヤーベースを備えたアームレス型のシステム。

マイクロ RX-3000+RY-3300

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 最高級機の5000に続く第2弾の超重量級糸ドライブシステムだ。直径16mmの軸受部、10kgの砲金ターンテーブルの部とドライブモーター部の2ブロック構成で、ターンテーブル裏面と本体間のギャップは狭く、エアダンプ効果をもたせている。

マイクロ RX-5000+RY-5500

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 超重量級ターンテーブルの強烈なイナーシャを利用して、糸ドライブで駆動しようとする原理をオーソドックスに製品化したシステムである。角型の超重量級ターンテーブルベースはコーナーにサブフレームでアームを固定可能。予想より場所をとらない。

リン LP12

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 DD全盛の現在ではユニークな存在のベルトドライブ型のアームレスプレーヤーだ。モーターは24極シンクロナス型でスピードは33 1/3回転のみの1スピード型。ターンテーブルとアームボードは、3点支持でフローティングされる。機械精度の優れた佳作だ。

タンノイ Autograph

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「タンノイ研究(1) 名器オートグラフの復活」より

 タンノイと私のふれ合いは、不思議なことに、あの熱烈なタンノイ信奉者の故・五味康祐氏、そして、古くからのオーディオ仲間である瀬川冬樹氏のそれと一致する。本誌別冊の「タンノイ」号巻頭に、両氏のタンノイ論が掲載されているのをお読みになった読者もおいでになると思うが、両氏がはじめてタンノイの音に接して感激したのが、昭和27〜29年頃のS氏邸に於てであることが述べられている。私もその頃、同氏邸においてタンノイ・サウンドを初めて体験したのであった。両氏共に何故かS氏と書かれているが、新潮社の齋藤十一氏のことであると思う。もし違うS氏なら、私の思い違いということになるのだが......。当時、私が大変親しくしていて、後に、私の義弟となった菅原国隆という男が新潮社の編集者(現在も同社に勤務している)であったため、編集長であった齋藤十一氏邸に私を連れて行ってくれたのであった。明けても暮れても、音、また音の生活をしていた私であったが、その時、齋藤邸で聴かせていただいたタンノイの音の感動はいまだに忘れ得ないものである。正直いって、どんな音が鳴っていたかは覚えていないのであるが、受けた感動は忘れられるものではない。もう、27〜28年も前のことになる。以来、私の頭の中にはタンノイという名前は、まるで、雲の上の存在のような畏敬のイメージとして定着してしまった。五味氏によれば、当時タンノイのユニットは日本で17万円したそうだが、そんな金額は私にとって非現実的なもののはずだ。しかし、実をいうと、当時はタンノイがいくらするかなどということすら考えてもみなかったのである。それは初めて見たポルシェの365の値段を知ろうとしなかった経験と似ている。つまり、値段を聞くまでもなく、自分とは無縁の存在だということを嗅ぎわけていたから、そんな質問や調査をすることすら恐ろしかったのだと思う。なにしろ、神田の「レコード社」に注文して取り寄せた、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」(ペトレ・ムンテアーヌの歌で伴奏がフランツ・ホレチェック)を受け取りに行くのに5百円不足して四苦八苦したような頃だったから、推して知るべしである。おまけに、このレコードを受取りにいったレコード社で、ばったり、齋藤十一氏に会ったのはいいが、後日、先に書いた私の義弟を通して「美しき水車小屋の娘」を買うなんて彼は若いね......というような意味のことを齋藤氏がいっていたと聞き、えらく馬鹿にされたような気になった程度の青二才だったのだ。幸か不幸か、タンノイは、こうして私の頭の中に定着し、自分とは無縁の、しかし凄いスピーカーだということになってしまった。正直なところ、このコンプレックスめいた心理状態は、その後、私が、一度もタンノイを自分のリスニングルームに持ち込まず、しかし、終始、畏敬の念を持ち続けてきたという私とタンノイの関係を作ったように思うのである。若い頃の体験とは、まことに恐ろしいのである。
 その後、多くの機会にタンノイを聴いてきた。いい音もあったし、ひどい音で鳴っている場合もあった。自分でも勿論鳴らした経験は少なくない。よく鳴らすことが難しいスピカーだと思う。ひどく、エイジングで変るスピーカーだとも思う。血統の正しい、出来のいい、純度の高い、高性能な機器に特有のデリカシーを持っているのである。名器と呼ばれるものには、えてして、こういう気難しいものが多い。ここで断っておかなければならないが、気難しいといっても、その最低レベルは、並のもののそれより絶対に高い。ただ、使い手とぴったりよりそった時に聴かせる信じ難いほどの美しさや魅力が、おいそれとは聴けないという意味である。優秀な機械が、機械としての優秀性を超えたなにものかを垣間見せるということだ。オーディオ以外の私の道楽に車があるが、同じような体験をしている。ポルシェがそうだ。人馬一体の感覚が味わえる車だが、そう簡単にはいかないのである。昔持っていたキャデラックのエルドラードは、いつでも心地よく快適に乗せてくれたが、こちらの要求に、あるところまでしか応えてくれなかった。可能性に限界があって、それ以下では、いつも安定して黙々と忠実に動作するのである。ポルシェはちがう。まだまだ、こちら以上の可能性を感じさせ、逆に教えられるのである。タンノイは、これに似ている。オートグラフが見事なコンディションで、ある条件下で鳴らす、この世の機械から出た音とは信じられない美音を私は知っている。そんな時、つくづく私は、文字通り、そのオートグラフの主、G・R・ファウンテンという人間に触れ得たことを実感する。この瞬間こそが、機械を通して人と人とが心を通わせ合える時であり、オーディオや車などのメカニズムを愛する人間のみが知り得る幸せであろう。
 こうした高度の次元に存在する機械が少なくなりつつあることは、誠に淋しい限りであり、それを理解し、正しい価値観を持つ人間が減っていくことは嘆かわしい。特に芸術に関与するオーディオ機器の世界にとって、これは重大なことだ。
 今世紀初頭のヨークシャーに生れたガイ・R・ファウンテンが、47歳の時に発売した同軸型ユニットは、すでに30余年の歴史をもつ。また車を例に出すけれど、これは、ポルシェの歴史とほぼ一致する。この〝動く精密機械〟のプロト・タイプがオーストリーの寒村グミユントで産声を上げたのは1948年で、その市販モデルが、西ドイツのシュツットガルトで生産を開始したのが1950年である。さんかに車を持ち出すのは、実はガイ・R・ファウンテンも車に縁の深い人だったことによる。彼は、1920年代に自動車の技術に深い興味を抱いていたそうで、事実、友人数人と、ランカスター自動車会社というコーチビルダーの会社を経営、車の注文生産をおこなっていたほどだ。たゆまぬ技術改良をおこなったとはいえ、ポルシェが一貫して、現役の911までオリジナルの基本設計を貫いてきたのと同様、またタンノイも、デュアル・コンセントリックという同軸型2ウェイユニットを1947年に発売して以来、現在の最新モデル、スーパーレッド・モニターとクラシック・モニターに至るまで、その基本構造はまったく変更されていないのだ。そして、ポルシェ博士が、自ら設計製造した車のハンドルを自ら握ってラリーやレースに参加したように、ガイ・R・ファウンテンはレコード音楽を自らが満足のいく音で鑑賞するために、〝オートグラフ〟という、とてつもない複雑で巨大なホーンエンクロージュアを制作したのである。大のクラシック音楽愛好家であったファウンテン氏がなんとか自室をオーケストラの演奏会場のような音で満たしたいという執念と情熱が、この名作を生み出したのであった。タンタルム・アロイ(電解整流器の主成分としてタンノイ者が開発)の合成語タンノイの社名に加えて、ガイ・R・ファウンテンという自らのオートグラフをシステムに刻印し、それをそのまま、モデル名としたのであった。
 自らを信じ、自らの満足と納得のいくまで製品を練り上げ、世間におくり出す。それが、例え、世間の常識をはずれた価格であろうとも、必ずや、その価値のわかる共感者が現れてビジネスを支える。そういう時代はたしかに過ぎた。そしてすでにそうした背景から生れた数々の名器は姿を消した。タンノイやポルシェは数少ない現存の名作といってよいであろう。しかし、タンノイ・オートグラフのオリジナルは今やイギリスでは生産されていない。職人の高齢化によって創ることが出来なくなったからである。伝統工芸的な技術を要するこのエンクロージュアをつくる職人が絶えたのだ。たとえ、そうした職人が残っていたとしても、もはや、このようなビジネスが、世界のマーケットでビジネスを支え得るとは思えない。日本には幸い、読者諸兄のような価値観の持主がおられる。熱心なオーディオ愛好家にとって、たとえそれが日本製であっても、オリジナルにきわめて忠実な形でこの名器が継続して作られるということは喜ばしいことであろう。この日本製のオートグラフ・エンクロージュアはイギリスのタンノイ社が驚くほど精巧で、同社の公的な承認が得られ、その証明が示されている。
 そこで、混合から連載される「タンノイ研究」の第一回として、改めて、各種のオートグラフを比較試聴してみようということになった。新ユニット、K3808スーパーレッド・モニター入りのオートグラフが、今、市場で手に入れることの出来るオートグラフの代表機種であるわけだが、はたして、その音はどうだろうという興味は、試聴に出かける私のポルシェハンドルさばきを軽くした。
 オートグラフが発売されたのは1953年で、当初のものはかなりこった家具風の重厚なフィニッシュであったらしい。しかし、基本的なエンクロージュアの構造はすでに現在のものと大佐がないという。'57年に、マイナーチェンジを受け、内蔵ユニットがモニターシルバーからモニターレッドとなり外観デザインも現在のものになった。これは、'54年発売のヨーク(レクタンギュラーではない)、翌'55年発売のGRFのデザインと共通イメージである。
 さて、今回試聴したシステムは、4種類のオートグラフである。といってもエンクロージュアは'70年代初期と思われるオリジナル・オートグラフと、最新のレプリカの二種類で、ユニットとの組合せで4種類となる。
①オリジナル・エンクロージュア(モニターゴールド入り)
②オリジナル・エンクロージュア(HPD385入り)
③レプリカ・エンクロージュア(K3808スーパー・レッド・モニター入り)
④レプリカ・エンクロージュア(K3808スーパー・レッド・モニター長時間使用のユニット入り)
 右の4機種を比較試聴したわけだが、ユニットの入替えにあたり、スーパー・レッド・モニターは、HPD385、モニターゴールドと取付穴の寸法が異なるため、オリジナル・エンクロージュアには改造を施さねばならないということで、今回は試聴ができなかったことを、お断りしておく。オリジナル・エンクロージュアを持っていて、ユニットをスーパー・レッド・モニターあるいはクラシック・モニターという新しいものに交換したい方は、そのままでは取付不可能であるということだが、改造をいとわなければ可能であるということだ。そして、レプリカ・エンクロージュア(タンノイ社承認のティアック製)は取付寸法に二種類のものが市販されているわけで、HPD385内装のもは、オリジナル取付穴と同寸法で、新しいスーパー・レッド・モニター内蔵のものと異なるので、これも新ユニットに交換するには修整が必要となる。
 ところで、肝心の試聴記が最後になってしまったが、以下に、スペースの許す限りで、それを記すことにしよう。理解を容易にするために、モニターゴールド内蔵のオリジナルとの比較をベースに記すことにする。
 まず、新しいK3808スーパー・レッド・モニターと、かなり長時間使用のものとでは明らかに高域のしなやかさの点で違いがあり、エイジングのきいたユニットが絶対にベターなので、これにしぼる。また、オリジナルにHPD385を入れたものは、決して望ましいものとはいえないので、これも、モニターゴールド入りオリジナル一本にしぼってよいだろう。つまり、結局は2機種の比較試聴ということになり、他は、参考試聴ということになった。試聴レコードは、弦楽合奏、ソプラノとオーケストラのオペラのアリア、ピアノ独奏、打楽器主体のジャズという4種類とした。
 どちらにしても、ステージの空間が、そのまま再現される圧倒的な雰囲気であったが、低域はレプリカのほうがよ絞り、オリジナルは時として演出過多とも思える響きがある。オリジナル・エンクロージュアにスーパー・レッド・モニターを入れられなかったので、これはユニットの違いが大きいのか、エンクロージュアのそれかを現場で確認することは出来なかった。多分、私の推測では両者に要因があろうと思われる。ここの部分をどう受け取るかが難しいところでオートグラフを心情・感覚的に、一種のオーディオ楽器として受け取れば、オリジナルのもつ毒も薬としなければならないが、多少、その毒が気になる人にとってはレプリカのスーパー・レッド・モニター入りのほうが行儀よく、適度な味つけということになる。コーナー型として壁面と床をホーンの延長として使い、オーケストラの量感をなんとか出そうとしたG・R・ファウンテン氏の音への嗜好も、現代の録音とのバランスで考えると、むしろ、新型をよしとするかもしれないのである。つまり、彼が生きていたとしても、この新型には決して不満をいわないだろうと思える範囲での違いであった。
 これに伴い、ソロ・ヴォーカルの定位や、音像の明確さは明らかに新型がよく、オリジナルは、やや大きめの曖昧なものとなる。ただし、これは、弦楽器の夢のようなしなやかな再現をオリジナルが聴かせることと共通すると思われるのだが、シルヴィア・シャシュの声の妖艶な色気は、オリジナルの独壇場であった。ピアノについても、中音域の豊かさ、艶ではオリジナルにふるいつきたくなるような魅力があるが、低音域は悪くいえば団子状で量感の明解な響き分けがない。それに比して新型では、よく巻線領域の音色や質感を鳴らし分ける。
 両者にとって、もっとも不得手なのはジャズだ。バス・ドラムは曖昧だし、ベースのピツィカートは、アルコ奏法の瑞々しさとは裏腹に、なんとも不明瞭になってしまう。これは、スーパー・レッド・モニター・システム(スタジオモニターとして開発された新製品)では満足のいく再生を示すから、明らかにユニットのせいではなく、オートグラフ・エンクロージュアの特質と断言してもよいだろう。オートグラフには絶対に向かないプログラムソースであり、音楽性の不和としかいいようがない。ポルシェにロールスロイスの走行を期待しても無理であり、ロールスロイスには絶対、ポルシェの走りは出来ないようなものだ。それが不満なら、最新型のスポーティモダンとは呼ばれる中途半端で無個性のオールパーポンスの車を選ぶしかないということか?
 スーパー・レッド・モニター内蔵の日本製オートグラフをタンノイ社が承認したことが今回の試聴で納得できた。ガイ・R・ファウンテン時代のレコード音楽の環境は大きく変化している現実をふまえ、なお、彼の精神と感性が生かされた製品として立派な存在意義をもっている。そして、これを作れるクラフトマンがいることを日本人の一人として喜びたい。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 天然ダイアモンドカンチレバー採用の世界最初のMC型である。クリアーで解像力のある音は独特の感覚である。

オルトフォン MC30

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 同社初の軽量振動系を採用し、広帯域、高コンプライアンス化を達成した最高級機。いわば古典型から現代型に変った新しい魅力は抜群。

テクニクス 100C MK2

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 現代のカートリッジに要求される軽量化、低インピーダンス化などの理想像に、現在もっとも近接した位置にある類例のない高性能機だ。

デンオン DL-305

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 振動系にアモルファス構造のボロンカンチレバーを採用した純粋MC型の超軽質量タイプだ。色彩感をあざやかに、分離よく聴かせるのは見事。

エンパイア EDR.9

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 振動系に特殊の高域共振打消し構造を採用したエンパイアの最高機種。シャープで、輪郭をクッキリとつけ、コントラストを明確につける。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 プッシュプル発電方式を採用し、低インピーダンスで純粋MC型の電力発電効率を高めた設計が凄い。音は、まさしくMC型の味だ。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 新シリーズのキメ細かく滑らかで、優れた解像力をもつフレッシュな魅力を聴くための典型的なモデルだ。

オルトフォン MC20MKII

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 MC30に採用された三層構造のセレクティブダンピング方式を導入し、リファインした製品。伸びやかでスムーズな音が特長。

ピカリング XSV/4000

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 3000をベースに振動子の軽量化、高コンプライアンス化をはかり、針先にステレオヒドロン型、稀土類磁石採用の注目の新製品だ。

B&O MMC20CLC

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 いずれもダイレクト結合型の専用シェル付MMC20シリーズ4機種中のトップモデル。カンチレバーにサファイアを採用したのが特長。

ビクター MC-101E

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 三層構造のマイクロコイルを針先位置に近接して取付けたダイレクトカップル方式の高出力MC。力強く、アクティブな音が楽しめる。

デンオン DL-303

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自の十字型巻枠を非磁性体に変更し、純粋MC型とした最初のモデル。一聴してワイドレンジの現代型MCと感じられる音は、やはり純粋の一語で表現できる。

スタントン 881S

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 米国では、リファレンス的に使われるといわれるスタントンのトップモデル。素直なレスポンスと色づけのないナチュラルな音は、さすがだ。

オルトフォン SPU-GT (E)

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 SPU−Aの業務用に対し、コンシュマー用のGシェル組込み、トランス内蔵型の製品。重厚で安定した音は、製品の伝統を物語る。

エンパイア 4000D/III LAC

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ナチュラルで分解能が高い、高インピーダンス型の典型的存在だ。装置のグレードが上るほど、この音は冴え、MC型を凌ぐ。

シュアー V15 Type IV

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 最新のHE針と安定度を向上させるダンプ機構組込みの特殊ブラシを採用し、従来より一段と重厚でリッチな音を聴かせる見事な製品。

サテン M-18BX

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 オリジナルな高能率発電方式をミクロの芸術とも言える精緻な工作により実現した、サテン・カートリッジの最高機種。盤面の裏まで見えるような音は異例のものだ。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 前シリーズの傑作モデルだ。スムーズなレスポンスと雰囲気の豊かな滑らかな音は多くのファンを魅了。

オルトフォン SPU-A (E)

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 現役最古の業務用MC型。ダイナミックバランス型の専用アームと組合せたときの音は、軽量級の現代タイプとは一線を画した領域。

デッカ Mark V/ee

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 現在、唯一の垂直系振動子とマトリックス合成で左右チャンネルを取出すデッカ方式の最高級器。非常に鮮鋭でダイレクトな音も異例の存在。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 小型なメタルハウジングの内部に、電力発電効率を1・7倍とした軽量振動子と磁気回路を収めた製品。ダイレクトで豊かな音だ。

デンオン DL-103D

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 103の現代タイプでありデンオンの標準モデルである。103Sよりもフラットなレスポンス、103より高いトレース能力の信頼感は高い。

シュアー V15 Type III-HE

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 旧型の針先部を最新のハイパー・エリプティカルに変更した製品。音は一段と鮮明になり、シュアー独自の音の魅力が冴えわたる。

テクニクス 205C MK3

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 3種類あったMK2の発展型。ピュアボロンのカンチレバーに代表される軽質量・高剛性により、音は一段と鮮明になり、分解能が高い。

ゴールドバグ Medusa

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 新進メーカーの製品であるが、音質は充分にコントロールされ、その完成度は、大変に高く、経験の豊かなメーカーの製品の味がある。

シュアー M97HE

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 新しいM97シリーズのトップモデルとして最近登場した製品。当然、針先はハイパー・エリプティカル型で、導電性ブラシが付属する。

オルトフォン MC10

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 考え方によれば、SPUのイメージをもっとも現代に伝えているモデルだ。無理のない帯域感と自然な表現は電力発電効率の高さのあらわれだ。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 AT15Eの後継機種でシェルが付属する。ベリリウムカンチレバー、パラトロイダルラミネートコア採用で、現代MMの標準機。
井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 逆V字型デュアルコイル方式のMC型で、シェル一体型のAT34の単体カートリッジだ。広帯域型で、音の粒子が細かくシャープだ。

アントレー EC-10

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 アントレー第2弾のMC型。スッキリとよく伸びたレスポンスと滑らかで繊細な音は、分離がよく、MC型ならではの緻密な高クォリティサウンドだ。

ヤマハ MC-7

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独特な垂直・水平発電系をもち、マトリックスにより出力を取出すユニークな構想によるMC型だ。力強く、ダイレクトな音は、このタイプ独特の魅力。

アントレー EC-15

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 MC専門メーカーらしいアントレーのヤング向けモデル。活気のあるフレッシュな表情とMC型らしい分解能の高い音はバーサタイルに使える。

デンオン DL-103

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 独自の十字型巻枠を採用したデンオンMC型の原型ともいえる製品。ナチュラルなレスポンスと安定感のある音は、現在でもリファレンス的だ。

グレース F-8L'10

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井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 10年間のロングセラーを誇るF8Lに、F9で得た技術を導入した、いわば記念モデルである。針先はアドバンスド・ルミナルトレース型。

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