2009年8月アーカイブ

Speaker System (indirect sound)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第6項・さらにもうひとつの音のタイプ 間接音型スピーカー」より

 ここまでにあげたすべてのスピーカーが、その鳴らす音の味わい違いはあっても、すべて、スピーカーからの音をそのまま直接聴くという点で共通している。これに対して、スピーカーから出た音の全部あるいは一部を、周囲の壁にぶつけて一旦反射させて、いわゆる間接音、反射音として聴かせるタイプのスピーカーがある。
 照明を例にとっても、直接光に対して間接照明は光がやわらかく、まんべんなく廻ることでわかるように、音もまた、一旦反射させて聴くと、鋭さがやわらげられると同時に、部屋ぜんたいに音がひろがって、場合によっては、どこから音が鳴ってくるか、音源の位置がわからなくなるような聴かせかたもできる。
 しかし照明の場合、第一に光を反射する壁面の反射率によって反射光の割合が変り、また第二に、反射光の色あいが壁面の色彩に支配される。これは音の場合も同様で、スピーカーの音が一旦壁にぶつかって反射してくると、壁面の音響的な色彩が、反射音の強さや音色に大きく影響を及ぼす。つまり間接音型のスピーカーは、たしかに音がやわらげられるが、反面、その部屋の構造や壁面の材質、工法などによって再生音が大きく影響を受ける。
 この理屈からとうぜんの結果として、反射型(間接音型)のスピーカーは、厳密な意味でのアキュレイトサウンドの範疇には入らないことがわかる。
 けれど、アメリカのBOSE社では、このことを計算に置いて、いろいろなタイプの部屋の壁面から反射音の色づけを補整するような、可変式のイクォライザー(音質補整器)を併用することを前提として、直接音型のスピーカーでは得られにくい一般家庭でのコンサートプレゼンス(コンサート会場で体験できるあの音のひろがり、音全体に身体が包まれるような効果)を再現する唯一のスピーカー、というふれこみで、独特のスピーカーを作っている。つまりBOSE社のスピーカーは、間接音型でありながら、その目ざすところはアキュレイトサウンドだという点で、いささか特異な存在だ。
          *
 これに対して、スウェーデンのソナーブや、イギリスのリン・ソンデック〝アイソバリック〟や、アメリカのアリソン、日本のビクター(GB1H)などが、ほんらいの間接音型として、数少ないがそれぞれにユニークな存在だ。
 また、これらと直接音型の中間的存在として、直接音を主体としながら、スピーカーの背面にも一部の音を出して、結果的に背面からの反射音をわずかに加えようという製品として、アメリカ・エレクトロボイスのインターフェイス・シリーズや、同じくアメリカのESSがあげられる。イギリスQUADのESLは、そういう効果をねらった製品ではないが、背面を広くあけて設置するようにという指定があって、結果的に部屋の反射音を無視できない構造だし、アメリカ・ビバリッジの大型スピーカーは、直接音と間接音の中間的な性格の音を聴くという独特の製品だ。
瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第5項・スペクタルサウンド クリエイティヴサウンドのもうひとつのタイプ」より

 スピーカーの鳴らす音の快さは、柔らかく耳あたりの良い音ばかりとは限らない。反対に、ナマの楽器ではとうてい出しえない大きな音量やスケールの大きな響き、部屋いっぱいに満ちあふれるような堂々とした迫力、といった、いわばスペクタクルな音もまた、スピーカーの鳴らすひとつの世界といえる。この種の音は、やはり、アメリカのスピーカー、それも、映画の都ハリウッドが、トーキーの発達とともに育てあげたいわゆるシアターサウンドにとどめを刺す。
 シアターサウンドといえば,はやり第一にアルテックの〝ザ・ヴォイス・オブ・ザ・シアター〟シリーズのA5やA7(こんにちではA7X)、ないしは、それを家庭用のデザインにアレンジした〝マグニフィセント〟などが代表製品としてあげられる。
 その本来の目的から、映画劇場のスクリーンのうしろに設置されて、広い劇場のすみずみまで、世紀の美男美女の恋のささやきから、雷鳴、大砲のとどろき、駅馬車の大群、滝の轟音......およそあらゆる音を、しかもかなりの音量で鳴らし分けなくてはならないのだから、家庭用スピーカーの快い音や、モニターのための正確な音とは、まったく別の作り方をしてある。とうぜん、一般家庭用のリスニングルームに持ち込まれることなど、メーカーの側では考えてもみないことだったに違いない。
 だが、朝に和食、昼に中華、夕にフランス料理を楽しむ日本人の感覚は、シアタースピーカーの音を家庭でも受け入れてしまう。4項であげたイギリス・ヴァイタヴォックスの〝バイトーン・メイジャー〟も、本来はシアター用スピーカーだ。ヴァイタヴォックスには、さらに大型の──というよりマンモス級の巨大な──BASS BINというスピーカーもある。むろんアルテックにもこの種の超弩級がある。このクラスになると、大きさの点だけでももう一般家庭には入りきれないが、バイトーン・メイジャーやA5、A7クラスを、ごくふつうの部屋に収めている愛好家は少なくない。JBLのプロ用スピーカーの中の〝PAシリーズ〟にも、この種の製品がいくつかある。
 これらのスピーカーは、言うまでもなく本来はスペクタクルサウンドのための製品だが、しかしおもしろいことに、日本のオーディオ愛好家でこの種のスピーカーを家庭に持ち込んで楽しむ人たち多くは、決してスペクタクルな音を求めてそうしているのではなく、逆にそういう性格をできるかぎりおさえ込んで、いわば大型エンジンを絞って使うと同じように、底力を秘めた音のゆとりを楽しんでいるという例が多い。
 けれど念を押すまでもなく、この種のスピーカーは、もっと広いスペースで、大きな音量で、まさにスペクタクルな音を轟々ととどろかせるときに、本来の性能が十分に発揮される。そしてこういう音を聴く快感は、まさにスピーカーの世界そのものだ。そしてそのためには、できるだけ広い空間、しかもその空間を満たす音量が周囲に迷惑をおよぼすことのないような遮音の対策が、ぜひとも必要だ。そういう意味でこの種のスピーカーは決して一般的なものとはいえない。ただここでは、スピーカーの鳴らす音の世界にそういう一面もあるという説明のために例をあげたにすきない。

Speaker System (creative sound)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第4項・快い音スピーカー クリエイティヴサウンドのひとつの型(タイプ)」より

 前項で例にあげたスペンドールのBCIIは、すべての音を概してやわらかく、豊かな響きを感じさせて鳴らすという点で、たとえばJBLの♯4343(レコードの音をそのまま裸にするようにありのまま聴かせる)の対極といえるような性格を持っているが、そのスペンドールをもっと徹底させてゆくと、たとえば同じイギリスのセレッションの、DITTON(ディットン)26や66などの音になってゆく。このBCIIとDITTONの境界線はとても微妙だが、しかしDITTONの音になると、客観的な意味での〝正確な(アキュレイト)〟再現というよりは、スピーカー独特の音の魅力ないしはスピーカーの音の色あいをかなり意識して、音を〝創って〟いる部分がある。もう少し別の言い方をすると、古くからレコードを聴いていた中年以上の人たちが、むかし馴染んでいたいわゆる電気蓄音器の音質は、ナマの楽器の音にはほど遠かったが、反面、ナマとは違う〝電蓄〟ならではの一種の味わいがあった。そうしたいわゆる上質のグラモフォン(蓄音器)の持つ味わいを伝統としてふまえた上で、快い響きで聴き手をくつろがせるような音を、こんにちなお作り続けているがセレッションのDITTON25や66だといえる。だから、上質の蓄音器(グラモフォン)の音を知らない人がいきなり聴いたら、DITTON25や66の音には、どこか違和感を感じるかもしれない。けれどこれはまぎれもなく、ヨーロッパの伝統的なレコード音楽の歴史をふまえた、ひとつ正統派の〝クリエイティヴサウンド〟なのだ。
 この延長線上にさらに、同じくイギリスの旧いメーカー、ヴァイタヴォックス(VITAVOX)社の、CN191〝クリプシュホーンシステム〟や、その弟分の〝バイトーン・メイジャー〟の音がある。前記セレッションの異色作デッドハム(DEDHAM)などもその範疇に入れてよいだろう。
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 これらの製品群は、こんにち新しい音の流れの中ではもはや少数派に属していて、右にあげた例の中でも一部のものは、製造中止になるのも時間の問題、などとさえ言われているが、しかし、こうした、スピーカーならではのレコード独特の世界の音、というものを、単純にしりぞけることは私はしたくない。
 正確(アキュレイト)な音のスピーカーは、プログラムソースからアンプまでを最上のコンディションに整備したとき、再生音とは思えないリアリティに富んだ音で聴き手を満足させるが、反面、古い時代の名演奏のコレクションをいまでも好んで聴く愛好家にとっては、新しい、クールな再生音のモニター系のスピーカーは、録音のアラをそっくり再現してしまったり、旧い録音の独特の味わいが聴きとれなかったりして、不満をおぼえるにちがいない。また、新しい録音を聴くときでも、ことさらアラを出さず、常に悠然と聴き手を包みこむような暖かく快い鳴り方をするこの種のスピーカー(イギリス人は、かつてハイフィデリティに対応させてこういう音をグッドリプロダクション=快い音の再生、と名づけた)を、いちどは聴いてみる値打ちがある。

Speaker System (accurate sound)

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第3項・アキュレイトサウンドはさらに二つの方向に分類される」より

 正確な音の再現を目ざして作られたスピーカーは、「モニタスピーカー(26項参照)」と名づけられた製品に多い。こんにちそれらの中でも世界的によく知られ、評価の高い製品として、たとえばJBLの♯4343や、KEFの♯105、あるいはヤマハNS1000MやテクニクスのSB7000などが例にあげられる。
 ところで、スピーカーに加えられた入力信号にできるかぎり忠実な再現、といっても、現実には、それがさらに二つの方向に分かれる。それは、音楽がすぐ眼の前で演奏されている感じが欲しいのか、それとも、良いホールのほどよい席で──演奏者から距離を置いて──聴く感じが欲しいのか、という問題だ。
 たとえばいま例にあげたスピーカーの中でも、JBLやヤマハは、どちらかといえば眼の前で演奏されている感じになるし、KEFやテクニクスは、ほどよい距離で聴く感じのほうに近づく。
 いうまでもなくこうした違いは、スピーカーの音よりもむしろレコードの録音の段階ですでに論じなければならない問題だが、しかし同じ一枚のレコード再生しても、スピーカーによって右のような違いを微妙に感じとることができる。ということは、原音、というイメージのとらえかたにも、大別してそのような二通りの態度がある、ということになるだろう。
 音を作る側、それを再生するパーツを作る側に、そうした態度の違いがあるのなら、とうぜんのことに、聴き手の側にも、そのいずれを好むかという好みの問題、ないしは音の受けとめかたの問題が出てくる。
 くりかえしになるが、眼の前で演奏している感じ、演奏者がそこにいる感じ、楽器がそこにある感じ、言いかえれば、自分の部屋に演奏者を呼んできた感じ、を求めるか。それとも、響きの良いホールないしは広いサロンなどで、ほどよい距離を置いて、部屋いっぱいにひろがる響きの美しさをも含めて聴く感じ、言いかえれば、自分がそういう場所に出かけて行って聴く感じが欲しいのか──。
 こうした違いを自分の中ではっきり整理しておかなくては、自分の望む音のスピーカーを的確に選びだすことが難しい。
 あまり高価でも大型でもないが、スペンドール(イギリス)のBCIIというスピーカーは、右の分類の後者──適度の距離を置いて美しい響きをともなって聴く感じ──の性格を色濃く持っている。だからもしこのスピーカーに、眼の前で演奏するような音の生々しさを求めたら、おそらく失望してしまう。ある人は「ピアノの音がひどくてがっかりしました」という。それは、ピアノをすぐそばで聴く感じを求めたからだ。逆に、演奏会場でのピアノを聴き馴れた人は、このスピーカーに大層満足する。
 部屋の条件という面からこのグループ──アキュレイトサウンド──のスピーカーに共通して言えることは、棚にはめ込んだりしないで周囲を適度にあけて、スピーカーがその性能を十二分に発揮できるように、設置の方法をいろいろくふうする必要のあることだ。つまりインテリア優先の場合には、避けたい──とまでは言いすぎにしても、このグループはあまり適当でない。あくまでも、シリアスな鑑賞のためのスピーカーだ。

ビクター SX-LC3

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

スピーカー作りでは、現在、我が国No.1のビクターの優れた小型スピーカーシステム。豊かなオリジナリティをもつ設計と、何より、音のバランス、質感の良さが光る。ツボを心得たバランスで、低音は充実しているが重すぎず、大事な中音域が厚い音だし、生き生きした音楽表現には血が通っている感じがする。

BOSE AM-5 III

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ボーズらしさが横溢した小粋なシステムである。この価格で、この音楽的効果はボーズならではの巧みさと言えるであろう。エッジが鮮やかでソリッドな質感もそこそこに味わえ、ワイドレンジ感の演出も巧みである。アイディアとセンスを手慣れた技術で実現する、現代の音の錬金術ならぬ錬音術がボーズである。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アクースティックラボというよりボレロと言ったほうがとおりがよかったが、今はこのステラ・シリーズがメインストリームである。有名だったボレロ・シリーズの名がもったいないが、ステラもそれに劣らない、よりモダーンなシリーズ。全体に高級機にシフトしたが、これは普及クラスの実力機で、明晰で透明な優れた音。

エラックCL330 JET AMBIENTE

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アルミ押し出し材によるモダーンでソリッドなコンパクトネスを全身にたたえたエンクロージュアによるエラックの傑作、300シリーズの中の上位機種である。JETユニット搭載はもちろんのこと、310より大きいウーファーを搭載するぶん、スケールが大きい再生音だ。外観にふさわしいカチッとした音が快適である。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ステラ・シリーズの中堅機だが、新素材振動板や贅沢な磁気回路の採用など、充分力の入った製品である。その音は彫琢が深く、明晰でシャープだが、決して神経質ではない。上質の音で音楽が躍動する優れたスピーカーシステムである。作りと仕上げの良いエンクロージュアも美しく、愛せる逸品である。

タンノイ Turnberry/HE

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

同社の高級クラシカル・シリーズであるプレスティッジ・シリーズのベーシックモデルである。25cm口径コアキシャル・ユニットは半世紀以上の伝統を持つ基本設計を踏襲するが、現代的な特性にリファインされている。同軸型らしい定位の明確さを持ち、ウェルバランスで重厚、しなやかな質感を併せ持つ。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ステラ・シリーズの高級機。この上に「ステラ・エレガンス」という最高機種があるが、あれは別物だ。事実上、これが同シリーズのトップモデルといってよいであろう。その名に恥じない優れたトールボーイ・システムで、ユニット構成はヴァーチカル・ツイン方式である。同社らしい音のまとめの巧みさが光る。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

かつて、スピーカーシステムで、これほど思い入れを表現した作品が存在したであろうか? また、これほどの手の込んだ工芸的なエンクロージュアも大戦後には存在しなかったであろう。スピーカーは楽器であると言い切ったフランコ・セルブリンの傑作。芸術的なスピーカーとしか言いようがない。

マッキントッシュ XRT26

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

傑作XRTシリーズの現役モデルであり、多分、これが最終モデルであろう。1980年のXRT20登場以来20年になるシリーズである。その技術的特徴は数多いが、いずれも他社に先駆けたものであることは意外に知られていない。マッキントッシュはアンプの存在が大きすぎてスピーカーはマイノリティだ。

ラックス D-7

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ラックスのD10の弟分で中級CDプレーヤー。20ビット・サインマグニチュード・マルチビット方式DACを搭載している。しっかりした骨格を持ち、しかも肉厚の音触が魅力的である。低音が豊かだが重くなく、よく弾み、高音はしなやかで芯もしっかりしている。HDCDデコーダー内蔵である。

アキュフェーズ DP-75V

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アキュフェーズの一体型高級CDプレーヤーだ。V型は最新モデルで1999年発売だが、すでに24ビット/192kHzに対応するDAC部を内蔵する。単体D/Aコンバーターとして独立して使える高性能機。同社らしい高度なディジタル・テクノロジーによる先見性を持つ実力機として高い評価を得るにふさわしい製品である。

Speaker System

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第2項・スピーカーの鳴らす音、二つの分類 アキュレイト・サウンドとクリエイティヴサウンド」より

 ここではデザインや価格の問題を抜きにして、スピーカーの「音」だけについて考えてみる。
「良いスピーカー」とは、必ずしも原音を再生するスピーカーばかりでないことに前項で触れたが、その意味をくわしく説明するためには、いま現実に市販されているスピーカーが鳴らそうとしている音がどういうものか、どんな考え方があるのか、を知るとともに、スピーカーを通じて音楽を楽しもうとしている聴き手の側が、どんなふうに聴き、どういう音を求めているのか、を対比させて考えてみるとわかりやすい。
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 まずスピーカーの鳴らす音(あるいはメーカーがスピーカーを作るとき、どういう音を鳴らしたいと考えているか)という面から、ごく大づかみに、二つのグループに分類してみる。それは、アキュレイトサウンド(正確な再現・註1)に対してクリエイティヴサウンド(創られた音)とでもいうべき両極の音、ということになる。
 レコードに録音された音。それがピックアップで拾い出され、アンプで増幅されて、スピーカーに送り込まれる。その送り込まれた電流(音声電流、とか入力信号などという)を、できるかぎり正確にもとの音波に変換しようという目的で作られたスピーカー。それが、いわゆるハイフィデリティ High Fidelity(高忠実度。ハイファイと省略されることが多い。忠実度がいかに高いか。言いかえれば入力信号にいかに忠実かという意味)のスピーカーだ。そして、市販されるスピーカーの大半は、このいわばオーディオの〝王道〟を目ざして作られている。
 これに対して、スピーカーを通してしか聴くことのできない音、言いかえれば、ナマの楽器では出せない音、を意識して、ナマとは違う音、スピーカーだけが作りうる音の魅力を、ことさら強調して作るスピーカーが、一方にある。ただ、はっきりさせておかなくてはならないのは、それが、ナマの(あるいはもとの)音楽の鳴らす音から、全然かけ離れた音であっては困るということだ。
 大づかみには、もとの音楽の鳴らす音にはちがいないが、それを、もとの楽器の出せないような大きな音量、逆に小さな音量で鳴らす、というのも、スピーカーにしか(というより録音・再生というプロセスを通じてしか)できないことだ。また、食事や歓談の妨げにならないよう、刺激的な音を一切おさえて、どこまでもまろやかに、ソフトに、耳ざわりの良い音で鳴らす、というのも、スピーカーだけにできることだ。あるいはまた、スペクタクルサウンドとでも言いたい壮大な、さらにはショッキングサウンドとでも言う迫力を聴かせることも、スピーカーなら可能である。
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 音楽の聴き方、受けとめかたに、一方で、シリアスな鑑賞の態度があり、他方に、おおぜいで歓談したりくつろいだりしながら楽しむ聴き方がある。スピーカーと一対一で、いわば読書するような形で音楽を鑑賞するには、前者の、いわゆるアキュレイトサウンドが向いているし、歓談やくつろぎのためには、後者のクリエイティヴサウンドを選ぶほうが楽しい。

註1
 アキュレイトサウンドというのは、最近のアメリカの若い世代の使いはじめた表現で、これは、第2項でふれたように、かつてのハイフィデリティに相当する。しかし、それが「Hi−Fi(ハイファイ)」という一種のスラングに近い言葉に堕落したことをおそらく嫌った結果だと思うし、また、以下に少しずつ解説するように、正確な意味での「原音再生」という考え方が、いまでは訂正されつつあって、この入力信号に対して正確な(アキュレイト)、という考え方のほうが好まれるのだと思う。たとえばアメリカのマーク・レビンソンも「私はモースト・アキュレイト・サウンドを常に心がけている」というような言い方をする。

Speaker System

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第1項・スピーカーを選ぶ前に」より

 スピーカーを選ぼうとするとき、大別すれば三つの要素をまず考える。第一は言うまでもなく音質。できるだけ良い音が欲しい。自分の好みに合った音を探したい。第二は大きさやプロポーション、そしてデザイン。第三は価格──。
 この三つの要素は、人によってどの項目を重視するか、その比重の与え方がちがう。オーディオのマニアなら、価格や大きさを無視して音質本位で選ぶかもしれない。しかしいくら音質本位といっても、あまり大きすぎたり、あまりにも高価であったりすれば購入をためらうかもしれない。また、インテリアデザインを大切にする人なら、、音質よりは見た目の美しさや、部屋に合うサイズやデザインを最も重視するだろう。
 このように比重の置きかたはひとさまざまであっても、ともかく、スピーカーの選択にあたって、①音質 ②デザイン(大きさ、プロポーションその他) ③価格、という三つの角度から検討を加えることが必要になる。
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 ところで、第一の要素である「音質の良さ」という問題は、その基準がきわめてあいまいのまま論じられている。オーディオの専門家に向かって、「良い音」とは? と質問してみると、たとえば「生(ナマ)の音をそっくりそのまま再現すること」というような答えが返ってくるだろう。生の音そっくり、ということを「原音再生」などという。だが、原音の再生というテーマは、良いスピーカーの基準のひとつにすぎない。しかもその基準ひとつすら、まだ100%満たした製品はない。
「良い音」とは、なにも原音の再生という狭いひとつの目標に限定してしまうことはない。聴き手を快くくつろがせる音。思わず手に汗をにぎるスペクタクルな音。歓談の邪魔をしないように低く静かに、そしてどこから鳴ってくるかわからないような気持の良い音......。いくつもの「良い音」がある。この本では、それらの点をできるだけ明確に分別してみよう。
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 大きさ、プロポーション、デザインを論じるためには、スピーカーの置かれる部屋のことを抜きに考えることはできない。スピーカーのタイプによって、床の上に直接置くべきタイプ、床や壁から離して設置しなくてはならないタイプ、棚にはめ込んだ方がいいタイプ、反対に周囲を広くあけて設置しなくてはならないタイプ......等さまざまの製品がある。いくらスピーカー自体が小型でも、周囲を広くあけて設置しなくてはならないのだとしたら、部屋の中で占有する空間を無視できなくなる。パネルのように薄いスピーカーにも、背面を壁から充分に離して設置しなくてはならないような製品がある。
 スピーカーの置かれる部屋は、インテリアという視覚面よりもいっそう、部屋の響き、という音質面でスピーカーの音を生かしも殺しもする。部屋の音響条件に合わせてスピーカーを選ぶ。しかもそれがインテリア的にもよく合うなら、選ばれたスピーカーの能力は最大限に発揮されるだろう。
 次のページから、それらさまざまの要素を、できるだけ有機的に関連させながら、スピーカー選びのヒントを探ってゆく。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

マークレビンソンのCDトランスポートとDACの組合せによるセパレート型プレーヤーである。セパレート型は発展型とも言えるが、もちろん、このコンビで完結する高い完成度を持っている。細密感とソリッドな質感を持つ深い音である。CDシステムとしての完成度が高いが、ヴァージョンアップにも対応する。

マッキントッシュ MCD751

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

マッキントッシュのCDトランスポートだが、同社のMDA700とのペアでも完成度は高い。もちろん、ディジタル出力は同軸、光TOSを備えているから他のD/Aコンバーターとの組合せも可能である。メカニズムはVRDSを採用している。マッキントッシュ・パネルで揃えると言う意味以上に上質なトランスポートである。

Monitor Speaker System

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第26項・『モニタースピーカー』とは?」より

 たとえば7項から11項までかなりのページを割いたJBLの4343のネームプレートには「スタジオモニター」と書いてある。また18項のヤマハNS1000Mの〝M〟はモニターの頭文字をあらわしている。17項のUREIもモニタースピーカーであることをはっきりと宣言している。20項のダイヤトーン2S305も、そしてこれらの例にとどまらず、ここ数年来、世界的に、ことにヨーロッパなどで、型名に「モニター」とはっきり書いたり、それほどでなくとも広告やカタログに「モニター用」と書く例が増えている。
 では「モニター」とは何か。実をいうと、はっきりした客観的な定義なり想定なりがあるわけではない。とうぜん、「モニタースピーカー」と名乗るための規格や資格が、明示されているわけでもない。極端を言えば、メーカーが勝手に「モニター」と書いても、取締る根拠は何もない。
 だが、そうは言っても、ごく概念的に「モニター」の定義ができなくはない。ただし、モニターにもいろいろの内容があるが......。
 その最も一般的な解釈としては、録音あるいは放送、あるいは映画などを含めたプログラムソース制作の過程で、制作に携わる技術者たちが、音を聴き分け、監視(モニター)するための目的にかなうような性能を具備したスピーカー、ということになる。
 粗面からこまかく分析してゆくと膨大な内容になってしまうので、この面を詳しく研究してみたい読者には、季刊「ステレオサウンド」の第46号(世界のモニタースピーカー)を参照されることをおすすめする。
 しかしひとことでいえば、すでに何度もくりかえしてきた「正確(アキュレイト)な音再現能力」という点が、最も重要な項目ということになる。ただし、いわゆるスタジオモニター(録音スタジオ、放送スタジオの調整室で使われるためのモニタースピーカー)としては、使われる場所の制約上、極端な大型になることを嫌う。また、プロフェッショナルの現場で、長期に亙って大きな音量で酷使されても、その音質が急激に変化しないような丈夫(タフネス)さも要求される。
「モニタースピーカー」には、こうした目的以外にも、スタジオの片隅でテープの編集のときに使われるような、小型で場所をとらないスピーカー、だとか、放送局の中継所などで間違いなく音が送られていることを単に確認するだけの(つまり音質のことはそううまさく言わない)スピーカーでも、プロが使うというだけで「プロフェッショナル用モニター」などと呼ばれることさえあるので、その目的について、少しばかり注意して調べる必要はある。
けれど、前述のスタジオ用のモニターは、一般的にいって、ほどほどの大きさで、できるかぎり正確に音を再生する能力を具えているわけで、しかも長期に亙っての使用にも安定度が高いはずだから、そうした特徴を生かすかぎり、一般家庭でのレコードやFMの鑑賞用として採用しても、何ら不都合はない理屈になる。
 少し前までは、スタジオモニターは「アラ探しスピーカー」などと呼ばれて、とても度ぎつい音のする、永く聴いていると疲れてしまうような音のスピーカーであるかのように解説する人があった。事実、そういうモニタースピーカーが、いまでもある。けれど、JBLやヤマハやKEFやUREI等の、鑑賞用としても優れたスピーカーが次第に開発されるようになって、こんにちでは、モニタースピーカーの概念はすっかり変わったといってよい。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アキュフェーズのSACDプレーヤーで世界初のセパレート型である。つまり初のディジタル出入力をもつSACDトランスポートであり、DACである。これはHS−Linkというディジタル・インターフェイスによるもので、同社のディジタル機器(DP75VとDC330)との接続でも威力を発揮する。SACDもCDも高品位な再生音だ。

ソニー SCD-1

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

世界初のDSD録音方式によるスーパーCD"SACD"を再生するプレーヤーである。開発者らしい力作で、高剛性メカニズムを採用した高級プレーヤーだ。アクセスタイムが少々遅すぎるのが気になるが、それもせっかちな人にとってであって、このくらいのほうがよいとも言える。CDもしっかりした質感で再生する。

ビクター XP-DA999

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

エクステンデッドK2プロセッシングによるCD再生音の高品位かが実現するDACプロセッサーで、サンプリングレート96kHzにも対応する。入力12系統、出力9系統という豊富なファンクション持つディジタルセンターである。よく練られた音で、独特のしなやかさと甘美さを聴かせる暖かいディジタル音である。

マッキントッシュ MDA700

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

CDトランスポートMCD751と同時に開発された20bitDACで、ディジタルフィルターも20bit8倍オーバーサンプリング方式を採用している。アナログ・バッファーが効果的であるせいか、安定したグッド・リプロダクションを実現し、しなやかでなめらかな音触感と、彫りの深い陰影感と立体感を聴かせてくれる。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

これはまさにゴールドムンドの音である。硬質で輝かしく精緻だが、決して冷たくない。どこかに、ほんのり甘ささえ感じられる。かつて、この音をクリーミーな音と表現したが、レア・クリームのそれだ。ゴールドムンドのDACのなかでも、これは秀逸な逸品であると感じられた。2点は制約のためで、本当は3点。

マッキントッシュ C41

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

マッキントッシュのプリアンプの普及機種と言えるもので、先行発売されたC42の弟分的な存在である。簡略化されてはいるが、コントロールアンプとしての機能は備えているので、使いやすい利便性とクォリティが両立している。充分、マッキントッシュらしい味わいを持っているので、広く薦められる入門機だ。

マッキントッシュ C200

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

マッキントッシュの最新最高級プリアンプである。セパレート型だが電源だけが分離されているのではなく、電源+ディジタル・コントローラー部とアナログプリ部が分離されている。この形態の第2号機である。フォノアンプとMCとランスを内蔵するディジタル・コントローラーで、同社らしい見識が伺える逸品。

マッキントッシュ MC202

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

MC162に始まったマッキントッシュのパワーアンプのニューシリーズでトランスレスの普及型である。その型番が200Wのステレオアンプであることを示している。トランス付きの高級シリーズほどの高い価値観には欠けるが、ピラミッド型のエネルギーバランスは同社のサウンドで、より現代的と言える音。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

SRはゴールドムンドのエントリー・ラインと呼ばれるアンプのシリーズにつけられるイニシアル。50W×2の上質なパワーアンプでドライブ能力が高い。ハイエンドのマルチアンプやマルチチャンネル再生用のアンプとして何かと利用度の高い優秀なアンプである。すっきりとした硬質な質感だが、冷たくも無機質でもない。

マッキントッシュ MC352

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

300W×2のマッキントッシュ・ステレオパワーアンプの標準的な製品である。同社製品の例に漏れずコストパフォーマンスは抜群。もちろん、あのブルーメーター付きグラスパネルで、そのアイデンティティが持つ誇りと喜びを感じさせてくれるであろう。現代的重厚さは、透明で鮮度が高い見事な音である。

ボルダー 102M

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ボルダーのアンプとしては旧世代の製品ではあるが、現在も、まったく色褪せるものではない。シンプルでさりげない作りだから地味な存在だが、大変安定していて、音も陰影のある濃厚な描写を聴かせる。独特のウェットで温度感の高い暖かい音である。型名の末尾にMがつくが、ステレオ・パワーアンプである。

マッキントッシュ MC602

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

マッキントッシュのステレオ・パワーアンプの現役の代表機種である。600W×2のパワーと発表されているが、電源の余裕は1kWの出力をクリアーするほどで、同社のよき伝統にしたがって常に控えめなスペックである。信頼性の高い製品としての完成度は無類と言ってよく、美しいが無駄な贅のない傑作である。

マッキントッシュ MC1201

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

負荷に無関係に1,200Wを出力するモノーラルアンプ。同社のフラッグシップである。巨大なメーターがこのアンプの実力を象徴しているかのようだ。この大出力でありながら、鮮鋭でデリカシーをも感じさせるサウンドが素晴らしいパワーアンプで、見ても美しく圧倒的で、真に高い価値を持つアンプの最高峰である。

アキュフェーズ M-2000

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アキュフェーズのモノーラルパワーアンプで、2Ω負荷で1,000Wの実力を誇る。4Ωで500W、8Ωで250Wである。現在、同社のフラッグシップであるだけではなく、国産パワーアンプの最高峰に位置する製品である。木理の細かいすっきりした音触は、いかにも国産の製品らしい緻密さを持っている。

ボルダー 1060

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

1000シリーズは上位の2000シリーズに始まったボルダーの新世代ステレオ・パワーアンプで、8Ω時300W×2の出力を持つ。デザインも現代的でかつ重厚な風格に一新され、音も変った。旧シリーズの粘りと艶も捨てがたいものだったが、本機はより透明度の高いもので、すっきりした音触である。

NIRO 1000 Power Engine st

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

新しい国産メーカーの力作である。設計者が機械機構の専門家であるため、アンプを機構的に見つめ直し、徹底的に追求したこだわりの製品である。見るからにユニークな外観であり、メカニカル・ビューティを感じさせるもの。音も研ぎ澄まされた品位の高いもので、パワーエンジンと呼ぶにふさわしい力感がある。

デンオン PMA-2000III-N

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

プリメインアンプのスタンダードといってよいランクの製品で、ハイエンド機PMA−S1譲りの技術を継承するプリメインである。3世代にわたって完成度を高めてきたものだ。しっかりした音の造形の確かさと、音触の快感が得られる好ましいアンプである。電源部が充実しているので、音に厚みと深さがあるのがよい。

パイオニア A-D5X

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

この製品あたりを本格オーディオ(趣味のオーディオ)に使えるアンプの最低ラインと考えたい。今年の新製品であるが、周到な作りで、まずまず、合格ラインの音の品位を持つプリメインアンプだと思う。耳あたりのいい音でありながら芯も肉厚も決して脆弱ではない。音触もこのクラスとしてはリアルである。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ジェフ・ロゥランドデDG社唯一のインテグレーテッドアンプであるが、その良さが生きた、見るからにタイトでソリッドなアルミ削りだし筐体を持つ魅力的製品。中身は磨き抜かれたサウンドを聴かせるにふさわしい練達の回路技術と構造が詰まり、プリメインアンプの世界での孤高の輝かしい存在感は未だに色あせない。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アナログディスク・ファンには垂涎のプレーヤーであろう。少々モデルが多すぎて混乱するが、一台一台が手作りであるから、いろいろ作ってみたくなるのもわかるような気がする。なかでは、これはスタンダード・カタログ・モデルといんよいもので、カーボン製のワンポイント支持のロングアーム付きだが音も充分よい。
井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

世界最大の製造台数を誇る超ベストセラー・アナログプレーヤー。小型軽量ながら要所を押えたメカニズムと、TV、パソコン等の外乱のイズに非常に強い設計により聴かれる、予想以上に優れたアナログディスクの音に驚かされる。高級機でもノイズ対策が不完全なら、本機の再生音を超える音はまず不可能であろう。信頼性、安定度は抜群。

オルトフォン MC Jubilee

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

80年代前半のCD登場以降、アナログディスクの生産規模縮小にあわせ、多くのカートリッジメーカーも開発をやめてしまったのが、デンマークのオルトフォン社は、その後も連綿と開発を続けてきた。その成果が確実に現われたのがこのモデルで、最新カートリッジとして素晴らしいトラッカビリティと素直な音を聴かせてくれる。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

実に独特な洗練された音を持つイコライザーである。カートリッジの音を素直に聴かせるというよりも、このアンプの音で美化して聴かせるという趣である。平衡入出力端子のみを持つが、アダプターで不平衡にも対応する。同社共通の極めて個性的なアルミ削り出しのユニークなパネルと筐体は美しい。同社のアンプ・ファン向き。

クレル MRS

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

超弩級サブウーファーの登場である。価格も凄いが、性能も凄いものだから、一度使ったら病みつきになるだろう。純アルミ削り出しのエンクロージュアであり、アンプ内蔵のアクティヴ型である。ローパスは極めて細密にコントロールできるから、充分時間をかけて調整すれば、かなりの効果を発揮するものと思われる。

BOSE AMS1

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ボーズ社得意のサブウーファーとサテライトの組合せによる3Dスピーカーシステム「AM5III」を中心に構成されたCD&AM/FMチューナー・ミュージックシステムである。10万円以下で得られる音としては充分納得のいくものであるし、セッティングの自由度の高さと拡張性も持っているので趣味性も高い。

BOSE WBS1VR

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ウエストボロウ・シリーズのヴァリエーションの一つで、CD、AM/FMチューナー付きのミュージックシステム。スピーカーシステムが単体売りの121Vで、バーズアイメープル仕上げの縦型であるために、大人の雰囲気が醸し出されているが、置き場所によってはしかるべきスタンドが必要になろう。

B&O BeoSound 9000+BeoLab8000

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菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

B&Oの高級ミュージックシステムで、美しい綜合ステレオセンターに、これまた素敵なペンシル型アクティヴ・スピーカーシステムを組み合わせたものである。現代最高の洗練されたセンサブルなミュージックシステムと言って異論はあるまい。音も耳あたりの良さとハイファイの解像度の絶妙なバランスを持っている。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

B&Oのミュージックシステムとしては中級の組合せと言ってよいものである。ウーヴェルチュール・ステレオセンターは縦型のAM/FMチューナー付きCDプレーヤーである。これにBeoLab8000のジュニアモデルであるアクティヴ・スピーカーシステムBeoLab6000を組み合わせたもの。
菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
「TEST REPORT 2001WINTER 話題の新製品を聴く」より

 デンマークのオルトフォンは元気である。カートリッジの新製品を2000年にも発売した。アナログファンにとって同社の健在ぶりは嬉しい。
 新しいカートリッジの名前はコントラプンクト(KONTRAPUNKT)と呼ばれる。英語ではカウンターポイント(COUNTERPOINT)つまり対位法の意味である。J.S.バッハの没後250周年を記念して命名されたものだそうである。
 1999年1月に発売されたMCジュビリー(JUBILEE)で開発された空芯リングマグネットによるクローズド・マグネティック・サーキットや6N銀線コイルを移植してはいるが、この製品では大幅なコストダウンが実現し、価格は約三分の一にも下がった。カンチレバーはアルミで針先形状はファインライン・スタイラスだが、音はMCジュビリーに比べて、さほど聴き劣りはしない。それどころか、音楽によってはこちらの方が、メリハリがあって力のある表現で好まれると思われるほどである。たしかにMCジュビリーの持つ品のいいしなやかさや空間の漂いの微妙なニュアンスは聴けないから、クラシックの弦楽合奏などでは一歩譲らざるを得ないところもあるが......、ジャズは100%この方がいいと思う。メリハリがあって力感もあるからだ。低音もこの方が張りと弾力性に富んでいる。
 筐体は材料に違いがあるのかもしれないが、見た目にはMCジュビリーと同じ型である。色には違いがあって、かたや黒なのにたいし、こちらはチタンカラーの渋いメタリックカラーである。針圧は2・5グラムで聴いたがトレースは安定していてトラッカビリティは大変に高い。45/45の溝の左右の壁面に刻まれた位相が不揃いな大振幅でも難なくトレースしてのけた。この辺りのトラッカビリティとS/Nの良さは、MCジュビリーでも感じたことではあるが、明らかに1980年代初頭のアナログ末期のカートリッジの物理特性を上回っていて、この20年近い間技術進歩がわかる現代カートリッジだという実感がある。あのままアナログ時代が続いたらカッティングもまだまだ進歩したと思われるし、総合的な音の良さや文化レベルは、今より向上したのではないか......などと考えさせられたものである。こういう製品が出るたびに棚のLPを引っ張り出して聴き直したくなるのは筆者だけではないであろう。
井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
「TEST REPORT 2001WINTER 話題の新製品を聴く」より

 今年のインフィニティの新製品展開は非常に積極的で、インターメッツォ、インタールード、エントラの3シリーズ構成という多彩さだ。
 ここでは、インターメッツォを紹介しよう。このシリーズは、新シリーズ中の最高性能版で、4モデルにより構成されている。
 インターメッツォ2・6は、シリーズの中心機種で、比較的小型な2ウェイシステムだ。外観からわかるように、エンクロージュアは木材ではなく、なんとアルミダイキャスト製である。これは、形状を自由に選べる利点があり、デザインや音響的に理想的なエンクロージュアが実現できるという。
 さらに、注目すべきは、低域にパワーアンプを内蔵し、部屋の音響特性に合わせてアクティヴに調整するR.A.B.O.S.を採用したことだ。
 付属CDとマイクで部屋の固有レスポンスを調べ、3種類の値を特殊な計算尺から読取り、内蔵アンプにその値をセットするだけの容易な操作で、部屋空間に最適な低音再生を実現しようとするものだ。基本的には、部屋に固有の低域周波数でのピークを抑える働きをするものだ。
 ユニットには新開発のセラミック・メタル・マトリックス振動板(C.M.M.D.)を搭載。測定上は、相当すぐれた振動板のようだ。
 低域はアクティヴ型だが、高域はLC型ネットワークを採用し、その両方をパワーアンプで駆動するのが基本的使用方法。
 インターメッツォ1・2Sは、R.A.B.O.S.を搭載したサブウーファーで、口径305mmのC.M.M.D.コーンを採用。エンクロージュアはアルミダイキャスト製。
 2・6は、反応が速く、質感が細やかで、スムーズに音が伸びる特徴がある。R.A.B.O.S.は、相当に効果的で、部屋の響きが自然に感じられるメリットがある。1・2Sを加えれば、当然、重心の低いと堂々とした音になり、ここでもR.A.B.O.S.は、音と音場感の変化を聴かせ面白い。時間をタップリとかけて使い込んでほしい魅力の新製品である。

リン Katan, Ninka

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
「TEST REPORT 2001WINTER 話題の新製品を聴く」より

 リン・プロダクツは、創業時に一躍注目を浴びたアナログプレーヤーLP12で知られるようになったメーカーであるが、創業初期からスピーカーシステムにも独創性の高い製品づくりを行なっていた。例えば、実際の部屋での使用条件を重視して、部屋の壁の近くに置いたときに、最適の量感、質感が得られるシステムなどが、その好例であろう。
 今回、新製品として登場した2モデルのスピーカーシステムを紹介しよう。
 NINKA(ニンカ)は、新メディアのスーパーオーディオCD、DVDオーディオのマルチチャンネル再生を含むバーサタイルな要求に応えるべくして開発された、同社の最新のトールボーイ型システムだ。
 同時発売の小型ブックシェルフ型のKATAN(ケイタン)はユニット構成が標準的であるが、このニンカは、使用ユニットから見てもわかるように、トゥイーターの上下に、新設計の16cmウーファー2基を配置した、仮想同軸型、いわゆるバーチカル・ツイン方式を採用した同社の新しい中核モデルである。
 興味深いことは、ウーファーの振動板面積がケイタンにくらべて2倍以上になったため、エンクロージュア方式に密閉型が採用されていることだ。バスレフ方式よりは、低域のレスポンスはなだらかに下降するが、そのぶんは、エンクロージュア容積比で軽く2倍を超える余裕度を活かし、さらに2個に増強された振動板面積の増加でカバーした結果、低域のクォリティに優れる密閉型を採用したようだ。
 また、密閉型は、組み合わせるアンプにより低音の変化が少ない傾向があり、さらにバスレフポート内の空気流によって生じるポートノイズがなく、全帯域でクォリティ向上も、当然目指したものであるのだろう。
 ウーファーは、同社オリジナルのポリプロピレンコーン型でダイキャストフレーム採用の防磁カバー付き。TVブラウン管の防磁対策としての設計だ。
 トゥイーターは、新設計19mmドーム型で、口径が小さいだけに高域特性の向上ができるメリットがある。
 エンクロージュア構造は、6ヵ所の角形の窓をもつ、バッフル版と平行する補強材と、上下2枚のこれと直交した補強材とでバッフルと裏板を結合する入念な設計が行なわれた。これは内圧の高い密閉型で質的向上を狙った設計である。端子板は、バイワイアー接続対応型で、内蔵ネットワークを通さないマルチアンプ駆動対応のダイレクト接続も可能である。
 最近のバスレフ型全盛のときに、密閉型の音を聴くと、密度感が高くビシッと決る安定な音は充分に納得させられる強い説得力で楽しい。低域は必要にして充分な量感があるが、壁近くに置いてより真価が発揮されそうな印象。レスポンスはスムーズに伸び、鮮度感の高さも心地よく、安心して音楽の楽しめるパフォーマンスは一聴に値するものだ。
 ケイタンは、世界的に最激戦分野である小型2ウェイブックシェルフ型の戦略モデルとして、同社が投入した最新作である。注目したいことは、エンクロージュアが、バッフル前面の横幅が広く、裏板が狭い台形のプロポーションが採用されていること。これは、剛性の向上、内部定在波の抑制、吸音材の量を低減できるメリットがあり、かなりアクティヴで、表現力の豊かな音が聴かれるであろう。
 ユニットには、ニンカと同様に新開発されたウーファーとネオジウム磁石採用のトゥイーターを搭載。
 同社では、かなりマルチアンプ駆動を重視しているようで、このクラスでは珍しく、ケイタンにも、上級機同様のバイワイアリングやマルチアンプ接続可能な端子を備えている。
 エンクロージュア表面ツキ板処理の利点と形状効果も手伝ってか、かなりキビキビとした反応の速い、フレッシュな音が聴かれる。それも、色付けがなく、ナチュラルなレスポンスで、小型システムならではの小気味よさが魅力的だ。
井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
「TEST REPORT 2001WINTER 話題の新製品を聴く」より

 ジャーマン・フィジックスは、社名そのものが「ドイツの物理学」というだけあって、極めて論理的にスピーカーシステムを考え、そして具現化しているメーカーだ。だが、同社のトップモデル、ザ・ガウディのたとえようもない物凄さに見る人/聴く人は圧倒され、論理的な部分まで理解することが難しいように思われる。
 同社スピーカーの最も特徴な点は、水平360度方向に音を放射する、DDDベンディングウェイヴ・コンバーターユニットを、システムの中心に位置づけていることだろう。
 このユニットの原型は、MITのリンカーン・ウォルシュが、1970年前後に発明したウォルシュドライバーである。一般的なユニットが水平方向の特定範囲内に音を放射することにくらべ、このユニットは水面に石が落ちたときに同心円状に波紋が拡がるように、水平方向360度に音を放射することと、いわゆる分割振動で全帯域を再生しようとすることの2点が特徴で、まさしく逆転の発想といえるものであろう。
 分割新道を使うユニットは古くから数多く実用化され、古くは、独シーメンス、最近では同じく独マンガー研究所のBWT、また、国内ではヤマハのグランドピアノ型振動板採用のNSユニットがあるが、水平360度放射型は、このL・ウォルシュのウォルシュ・ドライバーが、その第1作であろう。
 非常にユニークで素晴らしい構想の作品ではあったが、振動板材料の選択が至難の業であったようで、この種の製品のつねで、いつか忘れられた存在になったように思われる。
 このウォルシュ型ユニットが、突然、あたかも彗星のように輝いてふたたび蘇ったのが、ジャーマン・フィジックスにおいてで、ピーター・ディックスが最新のコンピューター解析と最適のチタン箔素材の助けを借りて完成させたのが、このDDD(ディックス・ダイポール・ドライバー)ベンディングウェイヴ・コンバーターユニットである。
 円錐形の振動板最上部のボイスコイルからのエネルギーは同心円状に下方に伝わり、その伝搬速度と、すでに音になった空気の疎密波の音速を等しくすることで、位相の揃った音を空気中に放射することを可能とした、とのことだ。
 ザ・カーボンMkIIは、このウォルシュ型ユニット1個を、150Hz以上の準全帯域型として使い、その低域を上下方向に向い合った2この同社独自開発の新型ケヴラーコーン型ウーファーが受け持っている。
 エンクロージュアは、スペースシャトルの機体材料と、素材・接着剤まで同等としたカーボン繊維で表面が覆われており、表面木目仕上げのシステムであるボーダーランドとくらべると、12kg重くなっている。
 興味深いことに、本機には、抵抗モジュールを取付けて、450Hz〜1kHzを+2dBと+4dBにするブラックブリッジと6kHz〜15kHzを+2dBと+4dBとするレッドブリッジを備えている。
 水平360度放射型であるため設置場所の選択と部屋の音響的コントロールは、本機の本来の性能を引出そうとすると相当に高度なオーディオの腕がないと至難であろう。ただし、一般タイプとは完全に異なった、このシステムならではの音を楽しむのであれば、独自の4種類の抵抗モジュールでのコントロールを使わなくても、準全域型でクロスオーバーがないに等しい、見事にハーモナイズされたナチュラルな音と独自の空間を聴かせる、かけがえのない音の世界が楽しめることは事実だ。
 コントロールしだいで相当に幅広く音や音場感が変化するため、このような音と表現するのは至難ではあるが、スピーカーの存在感がなく、正面の壁が空間に溶け込んだような開放感は実に心地よく、まさに、ステレオフォニックな音の醍醐味の実例であろう。

BOSE LS12II

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

多チャンネル再生は、2ch再生とは完全に異なった音楽再生を可能とするが、各種各様な方式に対応した回路設計が使い難さになるようだ。各方式への対応を逆から捕え、それなりの成果が得られる独自の回路設計を採用した製品が本機である。細部にこだわらずに多チャンネル再生からモノ信号まで対応する機能は楽しい。

リン Linto

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

比較的に手頃な価格のフォノEQだが、さすがにアナログプレーヤーLP12で有名になった同社ならではの独自のレコードの味を聴かせる異例の存在である。TV、パソコンが同じ部屋にある場合は、電源の取り方、設置場所の選択が、本機で良い音を楽しむためのポイント。ISDNターミナルボックスも要注意。

イケダ Ikeda9 Supremo

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

フォノカートリッジの理想をMC型に集大成した世界に誇れる逸品カンチレバーレスで針先自体が発電コイルを動かす基本構造を熟成し、磁気回路を強化して発電効率と聴感上での高SN比を図ったアプローチは、オーソドックスな手法だ。魅力を引き出すためには、昇圧トランスの選択が重要。昇圧比には要注意である。

マイクロ SX-8000II System

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

超重量級ステンレス・ターンテーブルを中心に、アナログプレーヤーの理想形を集大成したピラミッド的存在。エアフロート軸受とディスクのエアー吸着を中心としたベルト駆動方式の成果は、まさに地に足が着いた音が聴かれる。重量級だけに設置場所の選択と設置方式で、音はいかようにも変る点に注意。

マランツ PM14SA

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

比較的にコンパクトにまとまった同社を代表するプリメインアンプ。筐体構造はダイキャストシャーシベースの異例の設計で、これは同社の高級機の標準仕様だ。高SN比設計のプリアンプとパワーアンプ前段には独自のモジュール構成デバイスHDAMを使い、そのハイスピードな応答性により、実にナチュラルな音を聴かせる。

ビクター AX-M9000+RM-RE9000

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

増幅系を別筐体とし、リモコン操作で制御する独自構想の参考作品から発展実用化した、異例なモノ構成プリメインアンプ2台とリモコン部で構成されるシステム。増幅系を増やせば多チャンネル再生は万全の構えだ。出力半導体1個毎に専用電源を備える独自の電源方式採用で、駆動力、SN比が高い点に独自の魅力がある。

NIRO 1000 Power Engine

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

大変に奇異に受け取れるデザインに目を奪われるが、信号経路最短とした構想がもたらした結果だ。筐体構造は、各ブロックを分割しフローティングをする世界初の構想が実に壮快で純A級動作8Ω/150W自然空冷の機構設計は見事だ。固有音が非常に少なく、高SN比を活かした独自の駆動力は異次元の音に聴きとれる。

パイオニア M-AX10

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

基本的には、4chパワーアンプではあるが、BTL接続の2ch高出力アンプ、各種デバイダーと組み合わせた2chマルチアンプ再生、さらに4ch使用と、大変に多機能を特徴としながら、基本性能を高次元で保っているのは見事。最大に魅力を引き出して楽しむためには、C−AX10は必要不可欠のペアで、マルチアンプ再生も容易だ。

テクニクス SU-C3000

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

同社ラインナップでは、中堅モデルに位置付けされるが、性能重視型的な純度の高い音に加えて、反応の速さ、表現力のフレッシュさなどの、聴いていて楽しくなる要素が加わってきたことが大変に嬉しい。基本性能が高いだけに、聴感上でSN比は充分に高く、新世代メディア独特の情報量の多さが音として聴かれるようだ。

パイオニア C-AX10

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

新世代メディア再生を前提とした非常にヴァーサタイルなアナログ/ディジタルプリアンプ。マルチチャンネル対応型としては、異例の高SN比設計で、オーソドックスな2ch再生では本格的に聴き込めるのは驚きだ。ディジタル技術を駆使した多機能ぶりは、まさに現代を代表するプリアンプらしく、聴いて観て楽しい。

dCS Delius

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

D/Aコンバーターというよりは、ディジタルプリアンプ的な機能が魅力的。業務用ベースの技術を活かしているだけに、安定度、信頼性の高さを基盤にした力強く豊かな音は、生の音楽を感じさせるこれならではの醍醐味がある。本来の魅力を活かすには、高剛性メカニズム採用のCDドライブとの組合せが必須条件である。

マランツ SA1

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

SACDプレーヤーのマランツ第1作。余裕タップリの豊かな情報量を活かした安定した音は、とかく線が細くなりがちの新メディアの音を、ひと味違った角度から聴かせてくれるようだ。CD再生の音も同社CD7系の音楽を楽しく聴かせる魅力を受け継いでいる。また、オーディオ的に聴きこんでも充分に期待に応える。

ソニー CDP-R10

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

独自の光ピックアップ固定型メカニズム採用が最大の特徴の超弩級CDトランスポート。基本形はCD登場当初の業務用CDプレーヤーCDP5000ではあるが、機構の見事さは格段に本機のほうが凄い。各社D/Aコンバーターの音をもっともナチュラルに聴かせるリファレンス・トランスポートの魅力は現在でも最高だ。

ソニー CDP-R10+DAS-R10

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

発売以来、すでに7年の歳月が流れてはいるが、CD再生のリファレンス機としての存在感は、いささかも失われていないのは見事。独自の重量級ピックアップ固定型機構のメカニズム的SN比の高さは、電気系ではカバー不可能である。DACは当初ほどの鮮鋭さは薄らいだが、むしろ、現在ではその安定感に魅力があり、信頼性の高さは抜群。

エソテリック X50w

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ワディア製DAC採用の2作目。シャープで透明度のあるエソテリック独特の音とは明らかにひと味違ったダイナミックさが最大の魅力。基本的に大変まとまりのよい音を聴かせるが、独自ピンポイント型脚部、置き場所および下に敷く音響ボードの調整で、低音の重心を下げれば、これぞ高級機と実感できる音が楽しめる。

パイオニア PT-R9

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

伝統的にリボン型ユニットを使い続けてきた同社の代表作。ベリリウム振動板採用は前例がなく、アルミ系金属よりも印象的に固有音は少ない。超高域再生の魅力は、単に超高域を伸ばすだけでなく、予想以上に低音再生能力と相関関係をもつことだ。上限20kHzのCDでも、PT−R9の威力は想像以上に凄い。

リン AV5150 II

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

同社システム用の開発と思われるが、すでに汎用型サブウーファーとして、ひとり歩きをしている定番製品だ。個性の強いメーカーだけに、使い方や操作には、いささかの慣れが要求されるが、使いこなせば確実に期待に応えてくるれる信頼性、安定度の高さは、立派な製品の偽らざる証しだ。低音再生は実に面白い。
井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

スタジオモニター「TAD」の技術を集大成した非常に内容の濃いシステム。高域ユニットは前例のない構造のドライバーとホーンの組合せ、低域は鋳鉄一体型フレーム採用という物量投入ぶりは実に凄い。独自設計のネットワークは別売りであるが、パッシヴ型のベスト作。超高域リボン型を加えた音は予想を超え楽しく見事。
井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

メガフォン状振動板採用の全方向放射型全域ユニットを中心に、サブウーファーを加えた非常にユニークなトールボーイ型(?)。設置場所による音の変化は異例に激しく、セッティングが決ると、実に活き活きとした想像を超えた音を聴かせる。全域型ならではの、表現力豊かで反応に富んだ音は、これぞオーディオの感が深い。

パイオニア S-AX10

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

同社の業務用TAD系の技術をベースに、独自のリボン型高域を加えた新メディア対応のトールボーイ型。重量級のMEI製ベースの採用で重心位置を下げた効果は安定した低域にあらわれている。同社AX十シリーズのアンプと組み合わせたディジタルクロスオーバーによる異次元の音も味わえる現代型システムの典型。
井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

型番からはトールボーイ型を思わせるが、実は少し大きなブックシェルフ型の作品。モニター的な鮮明さをベースに、柔らかさ、豊かさを加えたシステムアップは見事。さすがにチューニング技術に卓越した同社ならではの感銘を受ける力作。適当に置いても、それなりに鳴り、追い込めば期待に応える能力の高さに注目。

テクニクス SB-M1000

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

開発年代は旧いが、基本構想に基づく超広帯域再生能力が、新世代メディアの登場で、一躍、スポットライトを浴びたようだ。当初は豊かではあるが軟調な低域であったが、アンプの駆動能力が向上すると反応が速く、充分な表現力が楽しめるようになった。ポイントは、高SN比のアンプと組み合わせること。一聴に値する傑作。

B&W NSCM1

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

基本的にはNautilus805に近似した構成ではあるが、ユニットはともに新設計で低歪化され、エンクロージュアも少し横幅が増し形状が変わったせいか、いかにも2ウェイ・バスレフ型を想わせる明るく豊かな音と、ラウンド型独自の音場感情報をタップリ響かせる独特の音は絶品。良く鳴り、良く響き合う音は時間を忘れる思い。

テクニクス SB-M800

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

独自の内側=アクティヴ/外側=パッシヴの低域再生方式採用の中堅モデル。高域再生能力は、文句なしの新世代ニューメディア対応のパフォーマンスを備える。優れた高SN比のアンプで聴くDVDの音は、一般的なプレゼンス優先型の音ではなく、音のディテールをサラッと引き出す、いかにも情報量の多い音である。

パイオニア S-PM2000

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

型番に2000を付けたミレニアム・システム。エンクロージュアは、約50年寝かせた材料で作り、それを約50年間使ったウィスキー醸造樽が原材料。さすがに約100年の歳月の熟成(?)を経たエンクロージュアが聴かせるかけがえのない音は、誰しもホッ!!とする、安らぎにも似た独得の味わいである。感銘深く、楽しい力作。

BOSE 363

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

101系の豪華版121をベースにした、独自のシステム構成に驚かされる意欲作。全域型の魅力を最大に活かした121の中域にアクースティマス低域と高域を加えた3ウェイ構成は同社初の試みだが、予想を超えた量感タップリの低音は、いかにもBOSEらしい。誰でも充分に納得できる活発なサウンドは実に心地よい。

パイオニア S-A7

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井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

新世代メディア対応の超広帯域レスポンスを狙って開発された同社の最新作。新採用のケブラーコーンの音色は明るく、心地よく弾む低音は量感も豊かだ。各ユニットはナチュラルにつながり、広帯域型ながら中域の量感が充分にあるのが魅力。外観、仕上げ、ユニット構成からは想像を超えた価格設定は目を疑うばかり。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SIMPLY−PHONOは、入力部に47kΩ、100Ω、50Ω、22Ω/100pFのインピーダンス切替が可能。回路構成は、初段がグリッドリークバイアスの3極管1段増幅、2段目との段間にCR型フォノイコライザー素子が組み込まれており、2段目はセルフバイアスの3極管増幅、それに続いてカソードフォロワーの出力段が設けられている。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 MISTEROは、今年同社のラインナップに加わったライン入力専用のプリアンプである。ローレベル入力を扱うプリアンプでは電源の整流回路に半導体を使用するとスイッチングノイズの影響を受けやすいが、このMISTEROでは整流管を使い、チョークインプット型の整流回路を採用していることに注目されたい。
 入力部には、窒素ガス封入型接点使用のリレーによる入力セレクターがあり、ダイレクトにECC82/12AU7のSRPP増幅段に信号が加えられ、この出力部にボリュウムコントロール、続く出力段が、ECC83/12AX7の片側を使うカソードフォロワーになっている。初段のバイアスにはリチウム電池を使った固定バイアスが採用され、常に安定したバイアス最適値が、高いリニアリティとSN比の向上に寄与している。信号kは純A級動作のノンNF設計で、オプションでSIMPLYと共通のMM型フォノカートリッジ用SIMPLY−PHONOイコライザーアンプを使うための、電源供給用DIN端子を具えている。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SIMPLY FOURは、出力段がEL34/6CA7の並列接続シングル純A級動作のプリメインアンプだが、前段用の双3極管12AU7が3本となり、このモデル独自の設計が施されている。パワーは14W+14Wに抑えられているように受けとれるが、この値のほうがむしろオーソドックスな定格だ。
 回路構成は、2段目がSRPP回路、終段は並列接続で、出力トランスのタップを使ってNFをかけるUL接続、電源部はSIMPLY TWOの2倍の容量の平滑コンデンサーが採用され、並列接続での電流増加に対処した設計だ。なお、出力段はセルフバイアスだが、バイアスは深く、前段のドライブ能力が強化されたことと相まってオーバーロード時には強く、かなりのパワーマージンを備えた設計である。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SIMPLY TWOは、そのモデルナンバーが示すように、単純なEL34/6CA7の純A級シングル動作のプリメインアンプである。基本型は、入力部に入力セレクターとボリュウムコントロール機能を持たせたパワーアンプで、フィードバック切替スイッチが付属しており、一種のキャラクターコントロールとして使用可能だ。また、別売のフォノEQ用の電源供給ソケットが付いている。定格出力は12W+12Wと必要最小限のレベルであるが、小口径フルレンジユニットや感度90dB以上の2ウェイシステムと組み合わせれば、一般の家庭用再生レベルなら実用上での問題は皆無に等しいであろう。いわゆる5極管的な、古くはペントード的な音といわれた傾向は見事に抑えられており、常に手元に置いておきたい印象のモデルである。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 Smart845はモノーラルパワーアンプで、大型直熱型3極管として最高の音質をもつと古くから言われてきた845の、純A級シングル動作で16Wの定格を得ている。デザイン的に目をひくのは、出力管の保護用と放熱効果を上げ、筐体温度の上昇を防ぐためのセラミックガードと、それを取り巻く筐体に独特の弧を描く美しいラインでデザインされたムクのイタリアンチェリー材との絶妙なコンビネーションだ。トリエーテッドタングステンの穏やかな明かりととも見事にマッチし、眺めるだけでも楽しい、この雰囲気は実に素晴らしい。
 A級シングル動作の845から受ける、純度が高く、透明感のある柔らかい音という印象とはかなり異なった、ナチュラルで心暖まるような、程よく豊かで力感のある音が、聴いてみて再び楽しくなる、このモデルならではの、かけがえのない魅力であろう。
 入力感度は0・165Vと、真空管アンプとしては異例に高く、パッシヴ型アッテネーターを介してのダイレクトドライブ使用にも全く支障はない。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 845ABSOLUTEは、同社を代表するW800×H290×D600mmの巨大サイズの真空管プリメインアンプである。興味深いことは、発表当初は前段にGTタイプの双3極管6SN7が使われ、終段の845は、純A級プッシュプル動作の製品も本国ではあるようだが、現在輸入されているモデルは、電圧増幅段が12AX7、12AU7に変更され、終段も845パラレルプッシュプル動作になっていることだ。
 ムクのイタリアンナッツ材や銅版を組み合わせた筐体構造は、非常にユニークではあるが見事なまとまりを見せており、真空管パワーアンプでの重要なキーポイントである出力トランスは、リッツ線を巻線に使った自社開発によるということで、また驚かされる。純A級パラシングル動作で39W+39Wの性能は、特に低感度スピーカーでなければ、家庭用として十分に満足できる定格値だ。別売オプションとしてPHONO−ONEフォノEQアンプも用意されている。

ユニゾンリサーチ

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ユニゾンリサーチは1988年に、手頃な価格で入手できる最高の性能の真空管アンプを設計することを目的として設立されたアンプメーカーだ。
 同社製品の設計を担当するジョヴァンニ・M・サチェッティ氏は、20年以上イタリアの学校で電子工学を教えてきた経歴をもつ人物で、16歳の頃から真空管アンプを手がけ、友人のアンプも設計・製作してきた。ソナス・ファーベル社のためにプリウス真空管プリアンプを設計したことでも知られている。A・アムブロシノ氏は、トリノ大学化学部、ボストン大学歯学部、さらにパドバ大学医学部を卒業という多彩な経歴をもった人だ。
 同社の製品は、オーディオアンプの概念を打破するような、各種の材料を組み合せたデザイン面でのユニークさに加え、シンプルな回路構成が採用されることが多い。特に3極管を直流的にシリーズに使うSRPP(シャント・レギュレーテッド・プッシュプル)回路を要所要所に使う設計も大変にユニークだ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 最新のSB−M1000/500は、トップモデルSB−M10000の構想を中堅機に導入した製品で、既発売のSB−M300を含め、フルラインナップがDDD方式低域採用の超広帯域、省設置面積のシステムになった。
 上級のM1000は4ウェイ7スピーカー4パッシヴラジエーター構成、M500は3ウェイ4スピーカー2パッシヴラジエーター型のトールボーイフロアー型である。

テクニクス SB-M300

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SB−M300は、SB−M10000の新重低音再生方式を驚異的低価格で実現した、同社ならではの思い切りの良い力作だ。

テクニクス SL-P860

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SL−P860プレーヤーも、上級機SL−P2000の特徴を受け継いだベーシック版で、内容の濃い高CP機。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 同社の中核モデルは、まずセパレートアンプでは、プリアンプはSU−C2000とパワーアンプSE−A2000で、ともに上級機の構想を受け継いでいるが、注目点はともにヴァーチャル・バッテリー電源を採用していることだ。

テクニクス SU-A900

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SU−A900は、MOSクラスAA回路、Rコア電源トランス、THCB防振構造筐体、ヴァーチャル・バッテリー電源など、上級機の成果を集大成したプリメインアンプだ。

テクニクス SL-P2000

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SL−P2000CDプレーヤーは、SアドヴァンストMASH・1ビットDAC、インストゥルメンテーション差動回路、クラスAA出力アンプバッテリー駆動と同等にクリーンなヴァーチャル・バッテリー方式電源、ディジタル光学系サーボなど、同社が全ジャンルの製品に提唱するサイレント・テクノロジーに基づいて開発された製品だ。

テクニクス SE-A7000

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SE−A7000パワーアンプは、A級電圧制御アンプとスピーカー駆動電流源となるB級アンプを組み合わせたMOSクラスAAパワーアンプ、新開発高音質マスターシリーズ電解コンデンサー、新無誘導抵抗、高剛性重量級で磁気輻射・機械振動の少ない筐体などが特徴だ。

テクニクス SU-C7000

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SU−C7000プリアンプは、伝送経路に混入する雑音を排除する鉛電池電源の採用が注目点。音量調整はカーボン抵抗体回転型の同社独自の高音質型。回路はクラスAA構成、筐体はTHCB防振構造採用である。

テクニクス SB-M10000

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 テクニクスの第1作「テクニクス1」スピーカーシステム以来、連綿として開発されてきた同社のスピーカーシステム。最近のDDD方式重低音再生を柱にした一連の新スピーカー群は、継続は力なりを具現化した同社の意欲作だ。
 その頂点に位置するSB−M10000は、超広帯域再生の実現に挑戦し、約5年の歳月をかけて完成させた、国難異性品ではヤマハのGF1以外にあまり類例のない、超弩級・超高価格なフロアー型スピーカーシステムだ。
 基礎研究は同社の技術研究所で始まり、目標とした電気・音響トランスデューサーとして完成させてから、次に音楽を聴くためのオーディオ用スピーカーシステムとして音響事業部が製品化するといった、日本の超大型企業ならではのプロセスを経て完成されたことでは、国内製品唯一といってよいビッグプロジェクトと成果だ。
 現在のCDソフトでは、低域は5Hzまで収音されており、これを再生するためには超大型システムとするか、アンプで低域を増強するかの二者択一となるが、同社では新重低音再生方式を開発することで、これをクリアーしている。一方、超高域側は、100kHzの再生を可能とした独自のリーフ型トゥイーターがすでにあるが、本機ではスーパーグラファイト振動板のドーム型で挑戦している。また、超広帯域化により聴感上で歪みが多く感じられることもあるが、エンクロージュア時代の低振動化、振動系各部の改良や駆動源の磁気回路にも新技術が導入されている。
 構成は4ウェイ型で、低域用のパッシヴラジエーター付ケルトン型ウーファーがキーポイントになる。口径は低域22cm、中低域18cmと異なるが、共通の特徴は低歪率型リニア磁気回路、エッジ前後非対称空気排除量を低減する6分割の凹凸プッシュプルエッジ、高域にも採用された振動板外周部に高内部損失材を配したピークレス振動板などの搭載だ。
 注目の新重低音再生方式とは、一個の密閉型エンクロージュアの前面と背面に駆動ユニットを置き、そのまた前後の前面と背面にパッシヴラジエーターを取り付けた密閉型エンクロージュアを設け、同相駆動するという構造を採用。これを同社ではデュアルダイナミックドライブ(DDD)方式と呼んでいるが、この方式は振動の打ち消し能力があり、エンクロージュアの振動を大幅に低減させながら重低音再生を可能としている。この方式により、超広帯域型システムとしては予想外に台形寸法は抑えられているが、さすがに重量は155kgと物凄いスピーカーシステムだ。ただし、運送を考慮し、上下2分割が可能となっている。
 柔らかくゆったりした、しなやかな低域は、重低音という表現とは異質だが十分に伸び切る。この低域と質感が揃った中低域以上はナチュラルで、スムーズなバランスだ。特に中域のエネルギーが十分にある点は素晴らしい。

テクニクス

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 テクニクスは1965年に、小さな組織で高級スピーカーシステムを作ろうという、大企業にしては非常に困難であり、非現実的な発想が実現してスタートしたブランドだ。当初はスピーカーのみという発想であったが、どのように優れたスピーカーであっても、それを駆動するアンプが必要であり、またプログラムソース側として、アナログプレーヤーやフォノカートリッジ、カセットデッキにまで開発範囲を拡げていく。そしてついにオープンリール・テープデッキ、それも業務用の頂点とされた76cmスピードのモデルまで開発するようになる。当時のテクニクス開発スタッフでも、これほど巨大なブランドになるとは想像もしなかったということだ。
 テクニクス誕生以前でも、松下電器つまりナショナル・ブランドから、大家電メーカーとしては異例の、時代の最先端をいく構想のスピーカーユニットが発売されていたことに注目したい。'54年に、彗星のように突然ナショナルから発売された、後に「ゲンコツ」の愛称で親しまれたフルレンジ型8P−W1だ。本機は、メカニカル2ウェイ振動板に球形ディフューザーをつけた斬新なデザインと、論理的な設計に基づいた、当時としては驚異的な特性の見事さで注目された。実際に使ってみて、その素晴らしいサウンドにまた驚かされ、一躍スピーカーのトップランクに位置づけられる傑作モデルとなった。
 しかしそれ以前にも、30cmコーン型ユニットの前面に多数の小穴を設けた発泡材(?)の覆いを付け、高域レスポンスをコントロールした、型名は忘れたがユニットがあった。実際に音を聴いたが、当時の一種独特のコーンの高域共振による騒々しさがなく、大変にナチュラルな音であったことも記憶に新しく、その後の一連のディフューザー付フルレンジ型が、8P−W1へのひとつのアプローチであったように思われる。
 このように、すべての部品を自らの手で開発する思想は古くからあり、これがテクニクスの誕生で技術集団として形成されたことで、大企業の幅広い分野をカバーするメリットがオーディオに結集し、他社にない独自のオーディオ理論が形成されたように思われる。

ソニー MDS-JA50ES

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 MDデッキのMDS−JA50ESは、従来よりDレンジの広い録・再を可能とするワイドビットストリーム技術と、新開発ATRAC用ICの採用をはじめ、トレイ部とベースメカ間を振動遮断する新機構や、異なったレベルのDBS、LD、CDの音量差を解消するディジタル録音ボリュウム、可変ディジフィルなど、ソニーの最新ディジタル技術を集大成したモデルだ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CDプレーヤーCDP−XA50ES/30ESは、光学固定方式、カレントパルスDAC、Rコアトランスに加え、ジョグダイアル操作の機能として新たに20kHz以上の帯域を合計9種類の遮断特性とする、可変係数ディジフィルを採用。ただ、微細な調整が可能だが、一方では悩みの種にならないだろうかと思わざるを得ない面もある。50ESのみ亜鉛ダイキャスト光ピックアップベースと、2電源トランスが追加される。

ソニー TA-FA70ES, TA-FA50ES

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 新製品TA−FA70ES/50ESは、終段にMOS−FETを使用した全FET構成回路の採用をはじめ、一次巻線を内側に変更した継ぎ目のない新円断面コア電源トランス、ツインモノ構成5分割筐体構造、機械的ストレスを解消した新構造、電源トランス下部のMDFダンパーなどの採用が特徴。70ESにはメタルコアモジュールによる平衡入力が備わる。

ソニー TCD-D10ProII

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ポータブルDATのTCD−D10プロIIは、アルミダイキャスト筐体採用の小型で信頼性の高いモデルだ。室外、室内を問わず、録音結果も優れ、最も信頼度の高い、レコーディングファンには必携の最優秀DATである。

ソニー DTC-2000ES

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DATのDTC2000ESは、DATとしては珍しく4ヘッド・4DDモーターメカを搭載。モニターヘッドによる録音同時モニターが可能だ。また、DAC出力の24ビットデータをディジフィル処理し、16ビットフォーマットを守りながら20ビット相当の録音を可能としたスーパー・ビット・マッピング(SBM)を採用している。さらに、44・1kHzでのアナログ録音が可能など、現時点で最高の性能・機能を備えたDATのリファレンスモデルである。

ソニー TC-KA7ES

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 カセットデッキTC−KA7ESは、現在やや注目度が薄らいでいる中堅機ではあるが、さすがに録音機での伝統を誇るソニーらしく、デュアルキャプスタンDD駆動メカの供給・巻取り双方のキャプスタンモーター軸受にサファイアを使用し、長期走行安定度を向上。加えて、Rコア2電源方式、銅メッキFBシャーシの採用など、手堅いESならではの処理が行なわれ、この十分な技術が投入された成果は大だ。

ソニー CDP-XA7ES

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CDプレーヤーCDP−XA7ESは、光学固定方式採用の初の中堅機で、フル・フィードフォーワード・ディジフィル、FET駆動DCサーボ出力アンプ、スタティック点灯FL表示管などを備え、手堅く安定した音は正統派で、幅広いソースに確実に応答を示す音だ。

ソニー TA-NR1

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 パワーアンプTA−NR1は、純A級Trモノーラルパワーアンプで、NR10のベースとなったモデルだが、全帯域にわたり独特の硬質の光沢をもつ音がビッシリと詰った純度の高い音を聴かせる。これは、上級種とは異なる本機ならではの魅力であり、最もソニーらしい音が聴かれる珠玉の名作だ。

ソニー CDP-X5000, TA-F5000

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CDプレーヤーCDP−X5000とプリメインアンプTA−F5000は、さりげなくグレードの高いオーディオを楽しみたいファンへのソニーの回答であろう。コンパクトなモデルながら、CDは光学固定方式、カレントパルスDAC、外部振動打消し偏心インシュレーター、アンプはツインモノ構成、MOS−FETパワー段、楕円断面コア・トロイダル電源トランス採用など、細部にこだわらず要所を押さえた、程よく息の抜けるサウンドは大人の味わいがあり、ソニー製品中ではひと味違った安心して音楽が楽しめる製品だ。

ソニー SS-R10

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SS−R10は、従来のトップモデルSS−GR1が、ドーム型ユニット採用のスピーカーとして頂点を狙って開発され、所期の目的が達成されたため、次なる未知の領域を求めて静電型にチャレンジし、完成したモデルである。
 静電型は、基本的にフルレンジ型として使えることとトランジェント特性に優れ、現状では最も理想のトランスデューサーではあるが、現在のパワーアンプが低電圧・大電流のソリッドステート型なのに対して、極端に超高電圧かつ、ほとんど電流を必要としない、いわば電圧のみに依存する変換器であり、この両者をいかに効率良く結びつけるかに最大の問題があるようだ。つまり、変換器(トランスデューサー)として理想の変換結果が得られるが、最大音圧レベルが低いことを、どのようにクリアーするかが最大のテーマとなる。
 逆説的に考えれば、非常に特徴的な変換器では、すべての幅広いプログラムソースに対応する必要はなく、特別なジャンルでならこれならではの、かけがえのない音や音楽を再生できればよいと、潔く割り切ることもハイエンドオーディオでは認められなければならない、とも考えざるを得ない両刃の剣的な性質を、静電型は備えているのである。
 SS−R10は3ウェイ構成で、指向性の改善と各帯域ごとの最適設計が可能なことをメリットとした開発だ。ネットワークはソニー伝統の18dB型で、ユニット正相接続とすること、最低の素子数とし、ユニットの特性を損なわないことを条件としている。ネットワーク出力には昇圧トランスが必要で、アンプ負荷が重くなるため並列抵抗を入れて、システムインピーダンスを4Ωとし、インピーダンスカーブを普通のスピーカーなみとしているとのことだ。固定極はエポキシ樹脂を自動塗装設備により流動侵積塗装を施すことで絶縁耐圧を高め、固定極と振動膜を支えるフレームには、アクリル樹脂を採用している。
 バイアス電圧は、ダイオードとコンデンサーを積み重ねたコックフロフト・ウォルトン回路で取り出し、バイアス電圧変動を防ぐツェナーダイオードによる定電圧回路の採用で、高域1・8kV、中域3・9kV、低域8・8kVという安定した高い電圧を得ている。低域は2段重ねのタンデム型で、空気付加質量を半分とすることで出力音圧を6dBアップ。これによるf0の上昇は、膜テンションで調整している。
 全体に手堅く、正統派の設計で徐々につめていくアプローチは、技術的に最先端に挑戦するソニーとしては「イッツ・ア・ソニー」という印象が少ないが、静電型に初挑戦し、十分な成果が得られたことは認めたい。だが、ブラウン管製造技術を活かした昇圧トランスレス化ぐらいは望みたくなるのは、技術集団のソニーを認めていればこその願いである。

ソニー TA-NR10

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 TA−NR10は、シリーズ製品のTA−NR1をベースに出力段をカスタムメイドMOS−FET化し、純A級100W/8Ωとした上級機種。電源は重量10kgの巨大トロイダルトランスとスタッキング構造の分割・積層型電解コンデンサーによる構成だ。また、純銅製放熱版の採用をはじめ、ハイカーボン鋳鉄シャーシを用いた筐体には、スピーカーの音圧、床振動を低減させる音響的チューンが施されている点がユニークだ。
 非常に力強くマッシヴな低域をベースに、伸びやかで、ナチュラルに高域に向かってレスポンスが伸び、表現力にも豊かさがある。ER10との組合せで、かつてのTA2000+TA3120F的な、現代のリファレンス・セパレート型アンプとして、じっくりと聴き込んでほしいモデルである。

ソニー TA-ER1

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 TA−ER1プリアンプは、独立電源部をもつバランス優先設計の超広帯域・超高SN比が特徴の、現代最先端のプリアンプだ。バランス入力端子と高平衡度バランスアンプを直結し、入力信号を直ちに差動合成する考え方は、ノイズ打ち消し効果が高く、通常120dBの信号伝送系SN比を170dBに高めているという。また、信号ロスを低減するため、入力インピーダンスは4MΩと異例に高い。加えて、不平衡入力の平衡アンプによる増幅、ホット/シールド切替を同時に行なうパラレルスイッチ機能、リモコン可能な真鍮削出し筐体収納のコンダクティヴプラスチック・アッテネーターの採用などが特徴。出力段はMOSダイレクトSEPP方式で、駆動能力の安定化と強化が特徴だ。
 MM/MC対応フォノEQは、MC用に昇圧トランスを搭載。リモコンボリュウムは超音波セラミックモーター駆動で、停止時には制御系的にもメカニズム的にもすべて解除状態となる。

ソニー CDP-R10, DAS-R10

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CDP−R10+DAS−R10のセパレート型CDプレーヤーは、最もソニーならではの技術集団の成果が見事に表われた傑作であろう。
 ディスク型プレーヤーでは、古くはエジソンの蝋管蓄音機以来、信号を読み出す部分──アナログディスクではカートリッジ、CDでは光ピックアップ──を移動させることが伝統的に行なわれ、これが常識となっていた。ところがソニーは、CD開発メーカーであるだけに、初期の業務用CDプレーヤーCDP5000で、早くも光ピックアップを固定し、ディスクを移動させるコペルニクス的展開の、ソニーでいう光学固定方式を完成させている。これをベースにメカニズムを見直し、現代の最先端技術で開発されたのが、CDP−R10に採用された光学固定方式メカニズムである。
 超重量級アナログプレーヤーに相当する、表面がわずかに凹んだアルミ合金ターンテーブルに、ディスクをマグネットチャッキングプーリーで固定し、間歇的にディスクを移動させるノンサーボ・スレッド機構により、サーボを使わずディスクを移動させている。また、重量級のターンテーブル・モーターなどが載ったベースは、5点支持・磁気吸着の軸受けブロックで鏡面仕上げのレール上を移動するが、重量が大きく、磁気吸着されているため、外部振動に強いメリットも大きい。アナログディスクの超重量級ターンテーブルと同様に、CDP−R10の巨大なディスクを載せたこ移動ベースは、通常型に比べ圧倒的にメカニズムSN比がよく、ディスクに記録された情報を最も正確に読みとれることでは、類例のない究極の機構である。
 DAS−R10は、電圧で表現されたパルス例を電流パルスに変換するカレントD/Aコンバーターを採用している。これは、音楽信号を電流の揺らぎや演算ノイズからの直接妨害からガードする特徴がある。また、演算能力の高いDSPを8個並列使用で誤差の少ないFIRディジタルフィルターや、全アナログ信号系のディスクリート部品構成を採用するなど、CDP−R10とのペアにふさわしい現代のリファレンスモデルだ。

ソニー

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 個人にとってブランドのもつ価値観というものは、どのような製品に巡り合い、それがどのようなオーディオ製品であったかにより大幅に変わるようである。
 とかく趣味の世界には、実際に使ったことがなくても、本やカタログなどを詳細に調べ、同好の士と夜を徹して語り明かし、ユーザー以上に製品のことを熟知しているという趣味人も多い。それはそれでよいのだろうが、オーディオ、カメラ、時計など、物を通じて楽しむ趣味の場合には、対象となる製品は基本的に人間が人間のために作った優れた工業製品であるべきだと考えるため、最初に巡り合った製品が、そのメーカーやブランドの価値を決定することになるようだ。
 ソニー製品との出会いは'50年代以後であるから、個人的には比較的に新しい。日本初のステレオ・オープンリール・テープレコーダーとして歴史に残るTC551が、実際に手を触れ、録音し、音を聴いた最初のソニー製品である。当時の管球式としては非常に厚みがある力強い音と、程よいシャープさをもつ音で録音・再生できたテープレコーダーならではの魅力は、一種のカルチュアショックで、このために、その後、各種のレコーダーやマイクロフォン、検聴用ヘッドフォンに凝ることになった。
 現在のソニー・トーンの原型は、ソリッドステート初期の業務用オープンリールデッキで、ダイヤトーン2S208をFM局のスタジオで聴いた折の音の純度を可能な限り上げ、物理的特性を時代のトップランクとして入出力を可能な限り等しくする、といった非常に明解な技術優先の思想が感じられる音だ。
 この時代の最先端をいく技術を集約して製品に注入し、プログラムソースに入っている音は情報量としてすべて引き出して聴こうという考え方は、ハイエンドオーディオの世界では、とかく趣味性に乏しく、感性に欠けるとされがちだ。しかし、勘や経験に頼らず、論理的にオーディオを追及すれば、必然的にこの考え方に帰結するし、納得できるものだ。こうした技術を最優先とするオーディオへのアプローチは、たとえ結果としての音が理詰めで論理的とか、緊張感を強いられるなどと言われようが、個人的には非常に潔く、むしろ心地よく感じられる。
 半導体アンプ初期の技術を結集して開発されたプリメインアンプTA1120、パワーアンプTA3120に始まったESシリーズ製品は、歪み感が非常に少なく、クリアーで抜けがよく、音の輪郭をクッキリと聴かせる、ソリッドステートアンプならではの魅力を引き出したものとして世界的に高い評価を受け、ソリッドステートアップの頂点に君臨するブランドとして定着した。
 この見事な音質は、最先端技術を駆使し、単に再生のみでなく、録音・再生を通して積極的に製品の追及を行なうという、ソニーならではの特徴が色濃く出た見事な成果といえるであろう。
 ソニーならではの、最先端技術を基に挑戦した製品には非常にユニークなものがある。たとえばモノーラルLP初期のアーム一体型のインテグラル・チャージ型コンデンサー・ピックアップ、名器と呼ばれたC37Aコンデンサーマイクなどだ。この管球式C37Aが、世界初のトランジスター式コンデンサーマイクC38を生むことになる。
 テープデッキ、フォノカートリッジ、トーンアーム、ターンテーブル、アンプ関係では常に各時代の最先端技術を開発し、世界のソニーの名をほしいままにしているが、ことスピーカーシステムとなると、初期の作品で低歪みを提唱したULMシリーズをはじめ、優れた性能と優れた音質間の非整合性に悩み続けた。しかし、'70年代のPCMが公開された頃の3ウェイシステムSS−G7、続くSS−G9などの独自のプラムライン配置のフロアー型システムで、スピーカーのソニーの第一歩を記した。そして、平面振動板採用のAPMシリーズを経て、ラウンドエンクロージュア採用のSS−GR1を登場させ、さらに静電型にチャレンジした結果が、今年の新製品SS−R10である。
 とにかく目標を定め、そこに集中したときの開発力の物凄さは、数多く存在する技術集団中でも抜群に強力で、短期間に驚くほどの成果を挙げた例は枚挙にいとまがない。
 EIAJ・PCM、CD、DAT、MDなど、特にディジタル機器で最もソニーの特徴が発揮されているようだが、逆に、急速に開発が進行するため、CD初期の一体型CDプレーヤーと単体DAC間のアブソリュートフェイズの混乱、急激に促進したが息切れをしたLカセットなど、取りこぼしが出たことも否めない事実のようだ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ナカミチでは、DRAGONのネーミングに特別な思い入れがあるようで、不可能なこと、無だなアプローチと片づけられるテーマに決定的解決法を手にし、世に送り出す製品に、この名称が与えられる。CD時代の現代にこの名機を復活させた製品が、DRAGON−CDとDRAGON−DACである。
 DRAGON−CDは、独自のミュージックバンクCD連装メカニズムを、エアータイト構造の筐体内部にフローティング懸架する振動遮断構造を実現したモデルで、独立した電源部に表示系が組み込まれている。この振動遮断方式は、空気振動、床振動、電磁誘導、高周波雑音など、すべての外乱をシャットオフする異例の構想を現実のものとした、まさにDRAGONの名称に値するものだ。
 DRAGON−DACは、DRAGON−CDの電源部を共用し、そのディジタル出力端子専用の唯一無二のパートナー、とナカミチが表現するDAC。
 7枚のディスクを収納するミュージックバンク機構は、隣接ディスクに交換するのに2・5秒のクイックアクセスを誇り、ナチュラルで誇張感がなく清澄で、活き活きとした表現力のある音は、聴き込むほどに魅力的になるようだ。

ナカミチ

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ナカミチは、1958年に東京都豊島区で創立者・中道悦郎氏により設立された中道研究所からスタート。官公庁から研究開発を受託し、電子、電磁、音響機器などの研究開発を開始したのが、その第一歩である。
 ナカミチ・ブランドでの製品は、磁気ヘッドの開発に始まる。創業者が旧海軍技術将校で音好きであったことが一段と高じて、テープレコーダーの開発を手がけ、オープンリール型の、国内では「フィデラ」というブランドのタテ置型の小さなモデルを完成。一方では海外向けOEM製品も手がけ、フィッシャーやハーマンカードンに、テープメカニズムや磁気ヘッドを供給していた。
 その後、オイルショックや日本の大手メーカーが本格的に米国進出を始めてOEMが低調化した頃、現社長の中道仁郎氏が、世界初の3ヘッド方式カセットデッキ♯1000を自らの手で開発。アメリカで当時1000ドルの超高級カセットデッキとして発売したのが、後に超高性能カセットデッキとしてカセットの王座に君臨した1000シリーズのスタートである。続いて同じ年に、手動アジマス調整機構付の、1000とはデザインを一新してヨーロッパ調にした700、'74年にポータブル型550、'75年に傾斜型のミキサーアンプ調2ヘッド型600が製品化された。そしてアメリカ市場でも高級カセットデッキが認められるようになり、国内でもその優れた性能と音質により、カセットデッキをハイファイ機器として定着させた原動力は、ナカミチの音の魅力だといってよい。
 基本的に、純粋な技術集団的なところがあり、創業の原点である人のマネをしないベンチャー精神が、会社組織になってからも根強くあるようだ。不可能を可能にするナカミチならではのユニークな発想と、それを実現するだけの技術能力の高さがあることは、国内メーカーのなかでも異例の存在である。
 '76年ごろからアンプ関係も製品に加わり、2ヘッド型の580、105W+105Wのレシーバー730、'79年にはハーフスピードを加えた680が発表された。そして高級カセットデッキの頂点を極めた1000IIの改良型、1000ZXLをトップモデルに、次いで700ZXLがラインナップされ、'82年には再生ヘッド自動アジマス調整、再生オートリバース型のDRAGONが登場する。
 この頃の製品でユニークなのは、'81年発売のディスクの偏芯を自動調整するTX1000アームレスプレーヤーで、これは後にDRAGON−CTに受け継がれた。
 一方アンプ関係も、'86年のステイシス回路採用のステレオパワーアンプPA50/70、プリアンプCA50/70、CDプレーヤーOMS50II/70IIが登場した。

マランツ CD-16D

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CD16Dは、モデルナンバーから考えると従来のCD16SE系のモデルと思われやすいが、基本的にはCD17Dの上級機として開発されたモデルだ。CDドライブメカニズムも、リニアトラッキング型ディジタルサーボ採用のCDM12・1が採用されており、かつてのCD16の価格帯に位置づけられるモデルである。
 気宇面では、モデルナンバーの末尾にDのイニシャルがあるように、CD17D、CD23D LTDに続く、第3番目のディジタル入出力端子を採用したマランツの一体型CDプレーヤーになる。
 このモデルの特徴は、アナログ出力部にタスキ掛けにNFがかけられた新構成のHDAMを採用しているため、本質的にバランス出力を優先する設計になっていることだ。従来の同社のNF巻線付出力トランスによるバランス出力部とは、完全に異なる点に注意されたい。
 アンバランス出力は、バランス出力部の片側を使うが、音質的にはアンバランス出力の方がナチュラルで穏やかな音を聴かせる。これに対して新設計のバランス出力では、反応が素早くシャープで、分解能の高い音が聴かれ、安定度重視の重厚な音を特徴とした従来同社の出力トランス採用バランス出力とは歴然たる違いがある。
 どちらを好むかといえば、それぞれに魅力的な部分があり、判断に迷うが、世界的に中高級機の入出力がバランス型優先になっている時代背景を考えれば、本機のバランス回路のほうを現時点はスタンダードと考えたい。
 低域レスポンスが十分に伸びていながら分解能が高く、エネルギー感に満ちた低音が楽しめる。これに、従来モデルに比べて一段とスムーズにハイエンドに向かって伸びた高域がバランスした音は、すでに事実上ディスコンになっているCD15と比べても、いかにも新製品らしい。この爽やかさと反応の素早さは、価格を超えて新鮮な音の魅力として浮上してくる。試聴したモデルは最終仕様ではなく、さらに追い込んだ状態で生産されるということだ。

マランツ CD-23D LTD

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CD23D LTDは、CDM9PROの生産中止に伴う200台限定モデルで、CD23のチューンナップ機として発売される。
 もともとCD23はミュージックリンク・システムのために開発されたCDプレーヤーではあるが、キュービックでオリジナリティ豊かなユニークなデザインをもつ高級機である。最近のように管球式アンプが増えてくると、平均的なコンポーネント型CDプレーヤーではデザイン的に違和感があり、音質的にもナチュラルな帯域バランスとアナログライクな音の魅力が活きてくる。
 このLTDモデルは、筐体正面のメーター部の照明色が、濃いブルー系からかなり淡いブルー系に変更され、トップカバーの色調も濃くなった。機能的には、ディジタル入力部が新しく設けられ、汎用性が高められている。従来のCD23と比べて、サラッとした感覚のリファインされた音に変った印象を受けるが、現時点ではまだ最終仕様の状態ではなく、さらに一段と追い込まれることになるだろう。

マランツ CD-16SE

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CD16SEは、CD16のスペシャルエディションで、CD15ほどの重厚さ、密度感はないが、広帯域型のfレンジと、粒立ちがよくシャープに反応するスピード感は、このモデル独自の魅力。また、本機に採用のCDM4MDをはじめ、CDM9PROなどメカニズムが製造中止になり、独自のスイングアーム方式1ビーム・メカニズムの在庫分も残り少なく、次第にCDM12/14などリニアトラッキング方式3ビーム型に移行されようとしている。その意味でも貴重なモデルだ。

マランツ SC-23, MA-23

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SC23プリアンプとMA23モノーラルパワーアンプは、DAC1でスタートした他に類例の少ない小型・高密度のモデルで、シリーズ化された同社独自のミュージックリンク・シリーズのモデルである。SC23は、パッシヴアッテネーターSL1の筐体に本格派プリアンプを組み込んだライン入力専用機で、出力段にはフィリップスLHH2000で初採用されたNF専用巻線付のバランス型出力トランスを備えたモデルだ。MA23は、AB級50W定格の超小型パワーアンプ。シリーズ製品には、SPレコード用の3種類のEQを備えた、MC昇圧トランス内蔵、NF−CR型フォノEQのPH1、トップローディングの小型高級CDプレーヤーCD23D LTDがあり、さり気なく高いクォリティの音を楽しむには好適なラインナップだ。
 シリーズ共通の音の特徴は、あまりにオーディオ、オーディオせずに安心して音楽が楽しめるだけのコントロールされたfレンジと、伝統的に電源を重視するマランツらしく、十分に広いダイナミックレンジをもち、質感に優れたサウンドが、大人のテイストを感じさせる。

マランツ CD-17D

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CDプレーヤーのCD17Dは、一体型モデルとしては初のディジタル入力をフロントパネルに備えた製品で、最近急速に需要が増したMDポータブル型やDATにも対応したことに特徴がある。ディジタル入力系は光2系統(フロント/リア)、出力は光と同軸の2系統あり、ディジタルボリュウムコントロール機能も備える。
 CD駆動ユニットは、新リニア型CDM12・1と新サーボ/デコーダーIC・CD7採用のディジタルサーボが特徴。DAC部はデュアルビットストリームDAC7、ディジタルフィルター部はSM5841Dの20ビット8fs型だ。
 アナログ部は新HDAM採用で、数MHzまで高周波ノイズは差動増幅でキャンセルされ、22・05kHz以上はアクティヴフィルターで十分に抑圧される。すっきりとよく伸びたfレンジとシャープで反応の速いフレッシュな音は、この価格帯としてユニークな存在といえよう。

マランツ PM-16

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 PM16プリメインアンプは、回路的にはSC5+SM5の成果を導入した新HDAM+FETバッファーによる4連アクティヴボリュウム、新設計の超高速OPアンプを使った1段電圧増幅+3段ダーリントン電流増幅と高周波用Trのシングルプッシュプル出力段という構成で、マルチフィードバックに対応可能な高域時定数が少ないメリットをもつ。
 また、音質上問題となる出力部の補償コイルを削除し、広いパターンエリアと最小のエミッター抵抗で優れたパワーリニアリティを実現している。大型Rコア・トロイダルとランスと定箔倍率電解コンデンサーによる低インピーダンス電源部には、ダイオードノイズを抑える独自のノイズキラー素子を採用。他に、MM/MC対応フォノEQ、アクティヴフィルター式NFBトーンコントロールなどを備える。注目点は、リモコン対応でのマイコンのディジタルのイズによる音質劣化の問題がクリアーされ、本格派のプリメインアンプとして同社初のリモコン対応化が図られたことだ。
 PM16の音は、十分に伸び切った広帯域型のfレンジと、聴感上でのSN比の高さが特徴だ。特に奥行き方向に見通しのよいパースペクティヴとナチュラルに立つ音像定位感は、基本的特性に優れ、さらにオーディオ的にリファインされたアンプのみが聴かせる、わかりやすい音質上のメリットである。

マランツ PM-15

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 PM15はPM99系の発展型で、大型筐体と電源部強化により、マッシヴで豊かな音が聴かれる。並のセパレート型では及びもつかない高度なパフォーマンスを備えており、SP駆動能力は、さすがにマランツらしく実に強力だ。

マランツ SC-5, SM-5

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SC5プリアンプとSM5パワーアンプは、不可分の関係にあるセパレートアンプだ。というのも、SC5の独立電源部には鉛バッテリーが電源の一部として組み込まれており、SM5の前段増幅回路用の外部電源としても必要に応じて使用可能であるからだ。
 SC5の基本構成は、プリメインアンプの超弩級機PM15に至るアンプ開発での成果をセパレート型に導入したもので、同社独自のハイスピード、高SN比、高安定度を誇る新HDAM(電圧増幅モジュール)を増幅系に採用している。音質に直接関係のあるボリュウムには、アルプス社製超高精度ボリュウムを業界初採用、それも4連型で独自の高SN比を誇るアクティヴボリュウムコントロールとしている。
 SM5は、PM15のパワー部を発展させた、高周波用大型パワーTrのパラレルプッシュプル回路が終段に採用され、100W+100W/8Ω時、200W+200W/4Ω時のパワーリニアリティを備え、BTLモードでは400W/8Ωの定格出力となる。このように2台のSM5に対しても、電源部bb5は十分な電源供給能力を備えている。
 SC5+SM5の組合せでの音は、従来のセパレート型とは一線を画したナチュラルで余裕のある音が楽しめ、特にBTL時の音質は例外的に見事だ。

マランツ Project T-1

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 プロジェクトT1は、超高級機を基本的に一人の技術者が開発するという、ソウル・B・マランツ氏の製品づくりを現在にリバイバルした開発で、現社長の株本辰夫氏の、いわば独断と偏見に満ちた原点復帰の大英断により開発が始まった。日本のオーディオ史上でも、ヤマハの巨大フロアー型システムで、プリアンプまでシステム構成化したGF1のプロジェクト以外に類例のないものであろう。
 管球式パワーアンプの原点に帰り、最も音質的に優れた直熱型3極管300Bと、大型送信管の形態をもつがA級増幅用に特別に開発された845が、現在主に中国で再生産されていることを基盤にした開発である。
 非常にユニークな点は、通常は出力管としての使用例が多い300Bを、初段と2段目にトランス結合でプッシュプル、つまりバランス型アンプ構成とし、終段を845PPにしていることだ。また整流管には、このクラスともなれば水銀蒸気整流管が使われるが、このタイプ固有のノイズ発生を避けるために、あえて845を2極管接続として使用した、細心の注意を払った設計となっている。
 一般的に見逃されやすいが、本機は入力・段間の2段と出力にトランスを採用したトランス結合型である。見掛け上、真空管が増幅していると誤解されているが、増幅率の極めて低い300Bはほとんどど増幅率を持たず、単純にインピーダンス変換器としての動作をしており、増幅度のほとんどすべてをトランスによる昇圧比で得ていることが、このモデルの最大の特徴だ。これは、類稀な音質の優れたアンプであることの所以でもある。
 直熱3極管のヒーターは、すべて定電流型電源によるDC点火だ。これは、定電圧型に対して、真空管生産のバラツキが吸収され、ヒーターを定常状態とすることが可能というメリットがある。なお、前段用300Bの高圧電源にも整流管5U4Gを使用、ヒーター整流回路のダイオードや制御回路のノイズ対策は万全を期した設計だ。
 このプロジェクトT1は、感度87dBで超重量級ウーファーコーン採用のB&W801S3を軽々と鳴らす。重さ、鈍さが皆無で、ゆったりと余裕をもって鳴らし、かなりのピークレベルにも対応する。このアンプは、真空管、半導体のいずれをも超えた、今世紀最後を飾るオーディオの歴史に残る金字塔を、マランツ・ブランドは再び築いたという印象の、感嘆すべきモデルである。

マランツ

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 マランツは、ごく少数の人のためにソウル・B・マランツ氏が米国ニューヨークで創業したアンプメーカーである。しかし、最近のCEショウなどで見受けられるような、非常にアマチュアライクというか、単純なシャーシの上に部品を配置しただけというようなプリミティブな製品ではなく、当初から現在の管球式アンプとして見ても、すでに見事な工業製品であり、機能的なデザイン、仕上げが行われていたことは、その優れた音質以上に驚くべき事実である。
 たとえば独立電源を採用したエレクトロニック・クロスオーバーは、モノーラル時代の同社初期に発売されたモデルではあるが、2ウェイ構成でローパス側とハイパス側が、それぞれ100Hzから7kHzまでの11ポジション設けられており、それぞれのレベルコントロールには+10dB、−10dB,OFFの表示がある。
 これは、現在のスピーカーに対しても適切な周波数選択で、特に独立してハイパスとローパスが調整できるということは、電気のエンジニアが机上で考えた結果ではなく、現実のスピーカーなるものの特質を十分に知った、むしろスピーカーエンジニアの作品とでも考えたい見事な設計だ。
 それにもまして驚かされることは、ステレオ用として例のマランツ木製ケースに2台並べて組み込んでみると、マランツ独自の削出しツマミを4個スクェアに配置し、その間にパイロットランプを配置したデザインとなり、この時点ですでにあのマランツ♯7のデザインとレイアウトが決まっていたかのような印象を受けることだ。オーディオデザインは、純粋に機能に徹したときに、誰しもが十分に納得でき、かつ非常に個性的な美しさになるという、ひとつの好例だ。
 彼が独自のデザインセンスをもっていたことは、♯2パワーアンプのユニークなパンチングメタルのカバーにも感じられることだ。趣味のオーディオ本来の見て美しいデザイン、仕上げ、レイアウトが施されているモデルは、その印象に絶妙にマッチした音質、音楽性を備えている、と古くから語り継がれてきたことのひとつの証しでもあり、マランツならではの想い入れが募るところである。
 現実に、私が最初に手にしたモデルは♯7プリアンプで、それ以後、それなりに収集癖があるらしく、かなりのモデルが現在でも周囲に置いてあるが、動作をさせ音を聴かなくても、それが置いてあるだけで楽しくなるのは不思議な魅力である。中には、未だに音を出したことのないモデルも相当数あるようだ。
 デザインで見るマランツらしさは、♯7Tで終り、♯500を経て、♯510/250、♯3600あたりで新デザインとなり、それ以後は日本マランツ生産に変った。♯7、♯7Т系は、♯1250で復活し、伝統的な強力電源を採用。当時、駆動のむずかしかったJBL4343が駆動できるアンプとして、伝統を受け継いだイメージの音とともに注目され、一時代を作った。
 当初はプリアンプに特徴のあるブランドといわれたが、♯9Bあたりから半導体時代に移行するにつれて、次第にパワーアンプに重点が置かれるようになった。そして、強力電源による高いスピーカー駆動能力がシンボルになるようになり、その最後の到達点が、最新の超弩級管球モノーラルパワーアンプ、T1プロジェクトではなかろうか。
 技術最優先の傾向を持ちはするが、これは高安定度、高信頼度の根源であり、常に機能的で、簡潔で、クリーンなデザイン・仕上げが施された製品が送出されてきた。それらは単なるアンプではなく、人間が音楽を楽しむためのアンプであるべきだ、とする考えが、マランツ本来の価値観なのであろう。現実に、同社ほど多くの時間をかけ、細部にわたる仕上げを、高い安定度を持たせながら追及するメーカーは、少ないように思われる。

ラックス D-700s

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CDプレーヤーD700sは、国内製品としてはユニークなHDCD専用デコーダーを初採用したモデルだ。とレイブには外部光遮断構造と、ローディングされると自動的にトレイを固定し、振動発生を防止する機構を備える。モーターは漏洩磁束を遮断する構造のリーケージ・アイソレート型、電源部にはピックアップのサーボ回路の電流変動を遮断する2次5巻線の分割電源を採用している。
 DACは、音楽の躍動感と音場感の再現性にはマルチビット型に利点があるとの判断から、サイン・マグニチュード方式リアル20ビットD/Aコンバーターを採用している。この方式はゼロクロス歪がないメリットがあり、分解能の高いマルチビットの音は、低域の質的向上に寄与し、豊かで生き生きとした音楽を聴くことができるとされている。

ラックス L-507s. L-505s

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 プリメインアンプL507s/505sは、出力メーター付のシリーズ製品で、プリアンプとパワーアンプは分離使用可能だ。MM/MCフォノEQ付。2系統のバランス入力(505sは1系統)はアンバランス変換され、トーンアンプ、バランス・音量調整を経てフラットアンプ経由シングル・スタガー・サーキット(SSC)のパワーアンプに送られる。
 特徴は2機種共通で、定格出力がそれぞれ100W+100W/8Ω、70W+70W/8Ωと異なるが、重量は20kg、19kgと僅差である。

ラックス C-7, M-7

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 C7は、ボリュウムコントロールと電源の一部を除き、ブロックダイアグラム的にはC10と同じ構成のプリアンプ。M7も、終段をPc150W級Trを3個並列とした、B10の+側のみを独立させた通常型アンプとなっている。

ラックス B-10

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 B10は、同社初の出力段をブリッジ構成としたモノーラルパワーアンプで、500W/8Ω、1kW/4Ωの巨大な定格出力をもっている。
 基本構成は、入力部にアンバランス/バランス入力切替スイッチと0、−6、−12、−20、−∞の6段階の独立固定抵抗切替型アッテネーターがある。これに続き、C10と同様な構成のバランス型バッファーアンプがあり、出力段もC10の出力アンプと相似のCSSC回路によるパワーアンプで、出力段は+用−用にPc200W級のマルチエミッター型トランジスターを6個並列使用である。NF回路もC10と同様のODβ回路を採用している。
 電源部は、800VAのEI型電源トランスとカスタムメイドの22000μFを4個使用。バッファーアンプ電源などは、ハイイナーシャ電源を採用している。
 筐体構造は、内部に独立電源ルームを設けたクリーン電源を中心とする、不要振動と電磁・高周波ノイズを遮断するラックス流配置で、シャーシベースは重量級FRP製、脚部は5点設置型を採用している。
 また、大型120×100mmパワーメーターや、3種類に使い分けられるオリジナルスピーカー端子をはじめ、カスタムメイドの部品が数多く採用され、さらに非磁性体抵抗、銅製バスバー、6N配線材、70μガラスエポキシ基板など、超高級機らしい贅沢な物量投入によりベストな音質を引き出し、音楽表現に貢献しているようである。

ラックス C-10, C-7

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 C10プリアンプは、同社がスーパー・アルティメイト・アッテネーターと呼ぶように、アナログ回路用としてはまさに究極という表現にふさわしい、凝りに凝った超物量投入型の、空前絶後の最後のチャレンジともいえる物凄いボリュウムコントロールである。
 4連58接点ロータリースイッチにより、各ポジションで常に抵抗2本のみに信号を通す回路構成のこのアッテネーターは、単純なパッシヴアッテネーターとして発売すれば数十万円といわれるほど超高価格であるとのことだ。アッテネーターによる音楽の生命感が失われることを極限まで低減した、最高級バランス型アッテネーターである。
 このC10プリアンプの基本構成は、ライン入力専用のバランス優先設計で、入力は、まずトーンコントロールアンプに入り、この出力にバランスコントロールアンプが置かれる。これに続いて音量調整アッテネーター、ミューティングを通り、バッファーアンプ、フラットアンプとなる。この出力に位相切替、バランス出力/アンバランス出力切替がある。
 出力アンプには、全段直結コンプリメンタリー・シングル・スタガー・サーキット(CSSC)を採用し、高域の位相補整を最小限にとどめている点が特徴だ。また、これを+用−用に使い、完全バランスアンプ化していることにも注目したい。このCSSC回路は、ラックスの最新パワーアンプとも相似の構成で、組合せ使用時には「パワーアンプ・ドライバー」として十分に威力を発揮する出力段であるとのことだ。
 CSSC回路に信号を送るバッファー段は、コンプリメンタリー・バランス構成のディスクリート型で、初段が接合型FETをコンプリメンタリーで使用したソースフォロワー構成、2段目はTrのコンプリメンタリー使用によるエミッターフォロワー構成である。なお、全帯域にわたる音色を統一するため、100%DC帰還で直流安定度を確保し、交流NFについては伝統的なノウハウである回路ごとに最適NFBをかけるODβ(オプティマイズド・デュアル・NFB)方式が採用されている。
 電源部に関しては、多量のNFBを使用する一般的なタイプでは出力制御に時間差を生じ、俊敏に変動する音楽信号により出力電圧が振られることを避けるため、まず基本となる電源トランスには大容量タイプを使ってACのレギュレーションを高めておき、さらに2次側を左右独立巻線として分離した上で、独自のカスタムメイド大容量コンデンサーの採用により瞬時供給能力を向上させることで、必要最小限のNF量とするハイ・イナーシャ電源としている。
 また、外部独立電源とした場合、ときどき瞬時供給能力が低下しがちなことを重視して、同一筐体内に電源部を納めながらも、漏洩フラックスを徹底して遮断する、独立電源ルームを設けていることも特徴のひとつだ。このルームは、機械的にもフローティングされ、電磁・高周波ノイズおよび振動イズなど、ノイズ全般について万全が期されている。
 筐体は、フラットアンプ、トーンコントロールアンプ、ファンクションコントロール、電源部のレイアウトのしかたに各社各様の設計思想が明瞭に出る興味深い点で、当然のことながら内部配線のまとめ方も直接音質を決定する重要な部分である。この点も、ラックスが永年のアンプづくりのノウハウの結果と自信をもっていうだけに、一家言あるものだ。トーンコントロールはラックス型NF回路で、周波数特性のウネリがなく、低域300Hz、高域3kHz(±8dB)。ラインストレートスイッチでバイパスも可能だ。
 機能面では、パワーアンプの電源のON/OFFをする専用ワイアードリモコン端子、AC極性インジケーター、電源OFF時にチューナー入力がテープ出力端子に出力されるチューナー録音優先回路などを備えている。
 パワーアンプB10との組合せでの音は、B10の方が先行開発され、それをベースにC10が開発されたこともあって相乗効果的に働いているようで、程よくセンシティヴで、素直にプログラムソースの音を捉えて聴かせる。B10でもそうだったが、低域のスケール感がより大きくなり、潜在的なエネルギー感がタップリある。したがって、プログラムソースの良否を洗いざらい引き出して聴かせる傾向は少なく、それなりに音楽として聴かせるだけの懐の深さがあるようだ。音楽的な表現力は、当然ラックスらしい印象で、また、そうでなければならないが、いわゆる間接的表現という印象を意識させないレベルにまでダイナミクスが拡がり、余裕のある大人の風格を感じさせるようになったようだ。
 本機の姉妹モデルとして、近々C9が発表されるが、スーパー・アルティメイト・アッテネーターが、一般的には超高級ボリュウムコントロールと呼ばれているカスタムメイドの4連ボリュウムに変更される以外は、完全に同一の内容を備えている。一般的に考えれば、このモデルがスタンダードプリアンプで、C10は、スーパープリアンプと考えるべきだろう。

ラックス

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 一般的に、オーディオに興味を持ち、有名ブランドのある製品を購入して、そのブランド固有の特徴、魅力が自己の内側に実感的に一種の観念として存在するようになるのは、学生時代以後というのが、私のように昭和一桁生まれの種族では普通である。だが、このラックスに関しては特別で、父親が現在でいえばオーディオファンであったため、門前の小僧的に幼少の頃より見聞きしていたからだろう。その他のメーカーとは異なった印象がある。
 2個のスパイダーコイルが機械的に動く高周波コイルは不思議な構造物、という印象が現在でもある。そして学生時代にはすでに超高級部品メーカーとなっていて、確か赤白青の表紙が付いた、分野別に色分けされた素晴らしいカタログにめぐり逢った。現在でも不可能なぐらいの驚くほど見事な精度、仕上げのツマミ類、切替スイッチ、各種のトランスなどを、超高価格であっただけに何年もかけて苦労して入手し、楽しんだが、時には失望に陥ることもあった。それはカドミウムメッキのSZ/SU型出力トランスで、素晴らしいその仕上げは、指を触れると指紋が付着して変色し、次に錆びてくるのである。
 これは美しいものは移ろいやすいと受けとれば、ある意味では非常にオーディオ的だ。スピーカーに限らず、アンプでも使っている間に、ある特定の数時間はショックを受けるほど絶妙な音を聴かせるが、二度と再び、その音は甦らない経験と似ている。
 ラックスでは「音楽とエレクトロニクスの仲立ち」となる製品づくりがポリシーといっているが、これは一種の恥じらいを含んだ表現のようで、その本質は人間とのかかわり合いを強く感じさせる物のつくり方にならざるを得ない、独特のメーカーの体質をDNA的に備えていることの証しだと考えたらどうなのだろうか。
 現実の製品でいえば、超弩級パワーアンプとして1975年に発売されたM6000の、フロントパネル後部に凹みをつけた独自のデザインは、ラックスの前身が額縁店であったことを思い出させる。また、フロントパネルのボリュウムコントロールのツマミ周辺にもスリットを大きくあけ、段差を付けて立体的に見せたデザインにも、同様の印象を受ける。さらに、M6000のラウンド形状をとったチムニー型放熱板は、鋭角的な一般の放熱板と比べ、人間に優しいヒューマンなデザインである。
 音の傾向も、輪郭を強調しコントラストをつけて聴かせる傾向は皆無だ。表面的にはしなやかで柔らかく、豊かで、やや間接的に音楽を表現するが、音の陰影のローレベル方向のグラデーションの豊かさは見事で、この部分にラックスは非常にこだわりを持っているのであろう。
 もともと相当に趣味性の強いメーカーであるだけに、経営面は紆余曲折があったが、昨年久しぶりに発表したブリッジ構成採用のハイパワーアンプB10では、基本的な音の姿形は変わらないが、従来にはなかった強力なエネルギー感が特に低域に備わっており、オーディオアンプとして格段に大人の風格が感じられるようになった。これは、ラックスファンとしては見逃せない、新しい魅力の誕生といえるだろう。
 優れた特性のアンプを、人間が音楽を楽しむためのラックス流オーディオアンプとして磨き上げていく──この人間とオーディオのかかわり合いを大切にしたエレクトロニクスと音楽の仲立ちとなるための製品づくりは、やはりかけがえのないものだ。

ダイヤトーン DS-205

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS205は、当初Aシリーズの高級機と聞いていたが、型名は伝統的な放送用モニターに準じたものに変った。側面は大きく弧を描く積層合板製で、これをバッフルと裏板で結合し、これに天板と底板を嵌めこむ構造は、簡潔だがかなり高度な木工技術の成果であろう。20cmアラミドコーン型ウーファーは、DS−A3系の振動板とアルニコ・ツボ型磁気回路を採用したもので、明快なサウンドを志向した低域として同社初の設計だ。高域は2S3003系のDS8000出使われた5cmB4Cコーン型。2S3003系を、より豊かに柔らかくパワフルにした印象の音は、清澄な印象もあり、非常に興味深い意欲作だ。

ダイヤトーン DS-2000ZX

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS2000ZXも、従来のZモデルから全面的にフレッシュアップされた新製品だ。ユニット構成は、伝統的なアラミドハニカムコーン採用の30cm低域、6cmB4C・DUDハードドーム型の中域、2・3cmB4C・DUDドーム型高域と変更はないが、各ユニットは基本的な部分から見直され、かなり大幅にクォリティアップされたようだ。低域は、ややタイトなアラミドハニカム振動板特有の音から、最低域までスローダウンして伸びる密閉型独自の性質がより聴きとれるようになった。特に低域ユニットのネットワークではカット不可能な中域〜中高域成分が巧みに処理され、クリアーさが一段と増しているため、鮮やかで歪みの少ない低域に力が増して、いかにも高級機らしい貫禄のある低音再生となった。
 中域は、低域とのつながりが厚くなり、B4C・DUD型の威力が一段と明瞭に発揮されている。特に分解能に優れ、シャープに付帯音なく伸びるダイナミックレンジ的な余裕度は、前作にないものだろう。中域ユニットとチューニングのリフレッシュで、高域ユニットも細部が改良されているらしく、やや硬質な面があった前作と比べ、しなやかさ、伸びやかさが加わり、固有の鳴きが低減されている点に注意したい。全体的に格段に内容が濃く、音的にもリファインされて完成度が向上。仕上げも美しくなりながら、予想に反して価格は大幅に低減されているのも異例のことで、このモデルに対する想い入れの深さの証であろう。

ダイヤトーン DS-200ZX

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 '96年の最新注目モデルは3機種。まずDS200ZXは、DS1000ZX以来、従来モデルに改良を加え、DVDに代表される将来のハイサンプリング・ハイビットのプログラムソースに対応できるようリファインされてきたZXヴァージョン化が、同社のベーシックシステムDS200ZAに及んだ新製品だ。
 全体のデザインは、従来の安定感はあるが地味な存在といった印象が薄らぎ、新鮮な印象が加わったが、基本構成は変らず、ややエンクロージュアの奥行きが伸びただけだ。使用ユニットは、16cm低域、2・5cmDUD型ともに大幅に手が入れられている。特に高域のDUD型は、振動板材料がボロン化チタン材に変更され、その音色は見事な変化を遂げている。エンクロージュアは、前作を受け継ぐバスレフ型だが、木組み構造が変更され、全体に剛性感が高く、響きが明るくなっていることに注目したい。
 また、バスレフ型のチューニングにも手が加えられた。とかくこの種の小型システムは狭い場所に押し込められやすく、予想以上にブーミーでカブリ気味な低音となる点に注意が払われている。これがエンクロージュアの響きと相乗効果的に働き、明るくダイナミックになる低域が、この新モデル固有の美点だ。比較的明るくのびのびとは鳴るが、国内版ポップスなどでは、ややもすると騒々しくなりがちなシステムが多い中にあって、価格を超えた正統派の小型高級システムといった性格は実に小気味がよい。

ダイヤトーン DS-A5

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS−A5は、Aシリーズ本来のエンクロージュア構造と材料に凝った魅力の小型高級システムだ。低域13cm、高域4cmの2ウェイ方式バスレフ型で、小粋な音とでも表現できる独特のサウンドが新鮮な味わいだ。

ダイヤトーン DS-A3

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS−Aシリーズは、従来までの同社のブックシェルフ型やフロアー型システムとはひと味違ったエンクロージュアづくりを最大の特徴とした、大変に興味深いシリーズである。
 DS−A3は、2S3003系の両サイド・ラウンド形状バスレフ型エンクロージュアを採用。コーン型の振動板として、高域・低域ともにアラミド(ケヴラー)を使用し、物理値的な等音速の利点を活かして音色的な統一性を狙った、ハイクォリティな小型システムだ。バスレフ開口部は楕円型で断面積が大きく、最低音がいかにも開口部から放射されるような、つまりバスレフ開口部が第三のユニット的に動作しているのがわかるような、弾力的で、明るく伸びやかな低音が、このシステムの最大の魅力であろう。

ダイヤトーン DS-600ZX

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS600ZXは、DS900EXを信頼感のある安定した兄貴分とすれば、のびのびと陽気で楽しい性格の弟分といった存在だ。基本のユニット構成は高域を除き相似しているが、エンクロージュアがバスレフ型であるため、反応が速く活気のある豊かな低音は、明らかな性格の違いである。27cm低域は、16cm径と比べて約2・8灰の振動板面積があり、空気を確実に捉えて駆動する低音の力強さ、豊かさ、迫力は、とても小口径型では味わえない、いかにも振動板面積の大きいウーファーならではのものだ。

ダイヤトーン DS-900EX

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS900EXは、DSシリーズ当初から中核を形成してきた30cm低域ベースの3ウェイブックシェルフ型の系譜を受け継ぐモデルだ。現在の小口径低域全盛時代にあって30cm低域はさすがに大口径だが、小口径型の低音感とは別次元の、本物の低音再生ができることが最大の魅力だ。ソリッドなモニター的性格は皆無に等しく、この程よい開放感と明るい音色は、幅広いプログラムソースに対応可能で大変に使いやすい。

ダイヤトーン DS-1000ZX

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS1000ZXは、磁気回路のプレート部でユニットを取り付けるダイレクトマウント方式の中・高域、磁気回路とフレームを強固に結合するDMM構造の低域というように、メカニズム的に従来のユニット構造を大幅に改善したユニットを採用し、'83年登場したDS1000系の最新モデルだ。同じユニット構成で改良に改良を加え、メカニズムとして十分な熟成期間を経ているだけに、一段と豊かさを増した印象だ。3ウェイならではの緻密さとエネルギー感のある中域を中心にした音のクォリティの高さが魅力。聴感上でのSN比も高く、音のディテールの優れた再生能力と奥深く見通しの良い音場感情報の豊かさは、このクラスとしては例外的なパフォーマンスを備えている。華やかさは少ないが、ダイヤトーンらしい信頼性が高いという印象は、まさにベストセラーモデル中のベストセラーと確信させられる。

ダイヤトーン 2S-1601

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 2S1601は、ダイヤトーン50周年を記念して登場した、低域と高域にアラミドコーン採用の等音速2ウェイDS−A3をベースに、ユニットとエンクロージュアを極限までチューンナップし、小スタジオや放送局用小型モニターとして現場の信頼に応えるだけの性能にまで追い込んだ、一種のニアフィールドモニターである。したがって、サウンドキャラクターは、DS−A3の芳醇な音とは異なり、ソリッドで引き締まった質的な高さが特徴だ。

ダイヤトーン DS-8000N

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS8000Nは、クロスオーバー特性可変の独立ネットワーク方式を採用したモデルで、同社初の38cm径紙コーンによる低域と、Aシリーズで開発された新アラミドクロスコーンの中域、2S3003直系のB4Cコーン型高域の3ウェイフロアー型システム。内容は非常に濃く、モニター的にも、家庭内での定音量再生でもバランスを崩さず、伸びやかに鳴る鳴りっぷりの良さは格別だ。なお、クロスオーバー固定型のベーシックモデルも用意されている。

ダイヤトーン DS-V9000

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS−V9000は、磁気回路の歪みを低減する独自のADMC方式により、一段と振動系の能力を発揮させるようにした新フラッグシップVシリーズの4ウェイ密閉型システムだ。エンクロージュアには各種の天然材を適材適所に採用した同社としては異例の設計と、もの凄い物量投入型の豪華な使用ユニットに注目したい。大人の風格を感じさせる、使いこんではじめて魅力のわかる名機だ。

ダイヤトーン 2S-3003

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ディジタルプログラムソースに対応する新放送局用モニターとして、小型高密度設計で最大音圧レベルを大幅に向上したモデルが2S3003。低域はネットワークレスの全域型で、高域を低いクロスオーバーから使うコーン型2ウェイ方式は、2S305を受け継ぐ設計だ。定機器のアラミドハニカムコーンと、究極の振動板といわれるピュアボロン(B4C)コーン型の組合せにより、見事な音の純度の高さとダイナミックな表現力の豊かさが聴かれる。

ダイヤトーン

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 三菱電機ほどの大企業が、すでに50年間オーディオ用のスピーカーシステムを開発し続けてきた例は他社にはない。
 その発端は、戦時中に東工大で開発された酸化鉄系のオキサイドパウダー(OP)磁石を製造していたが、戦後になって、その平和利用の一つとしてスピーカーの製造が発想されたことに始まる。好都合なことにNHK技研のバックアップで、ラジオ用としては異例に高域が伸びた全域型を完成。そして整合共振理論に基づくコーン制御により、後のベストセラーモデルP610の原形P62Fを生む。
 さらにNHK技研と共同開発により、2S660/205放送用モニターシステムの完成へと続き、厳しい基準であるBTS(放送技術規格)をクリアー。1958年には有名な2S305が完成し、コーン型2ウェイ放送モニターシステムの形態が確立された。
 一方、計測データの必要性から民間初の無響室が1953年に設置された。それまではカット・アンド・トライで、コーンのコルゲーションの位置を検討するのにも莫大な時間が必要であったことを、本誌企画のダイヤトーン三代記のインタビュー取材で、当時の設計スタッフから聞いた記憶がある。
 民生用スピーカーシステム開発の第1号機DS32Cの内容が2S305系ユニットであったことも、スピーカーシステムの設計に当って、平坦な周波数特性を現在でも最優先させているダイヤトーンならではのことだ。こうした、最も完成度が高く信頼できるユニットでシステムアップすることは、まさしく正統派の設計・開発である。
 放送用モニターの2S305、2S208という2ウェイ型や、全域ユニットP610の開発過程で得られた技術データとノウハウをもってすれば、民生用システムの開発は比較的に容易であったと思われる。
 民生用として'68年に発売されたDS11S/12S/31C/32Cは基本的に2ウェイ型で、これに続いて3ウェイ型のDS33B/34Bが発表された。そして、スーパーダイヤトーン・シリーズとしてハイエンドを狙う3桁ナンバーのDS251/301が、3ウェイ、4ウェイ型として登場し、ラインナップを拡げていくことになる。
 これらの一連の製品は、非常にフラットなf特をもっていたため、2S305の特性とオーバーラップし、定規で直線を引いたようなf特といわれた。また、3桁シリーズにはスーパートゥイーターが採用され、超高域レスポンスが表示されたこともあって、ダイヤトーン≒フラットレスポンスというイメージが一段と強調されたように思われる。
 優れたスピーカーシステムは、基本特性に優れたユニットとエンクロージュアの組合せが、まず基盤としてあり、これを無限ともいえる時間をかけてヒアリングし、システムを磨き上げていってはじめて完成する、ということが、当時から同社の伝統であるようだ。そのために、優れた振動板を求めてアラミドハニカム、ボロン化チタン、B4Cなどを開発する一方で、駆動歪みを低減するADMC磁気回路を開発するなど、常に基本からリセットして開発が始まっている。こうした製品作り姿勢が、製品に対する信頼感を高めているが、技術集団的なイメージがあまり感じられないことは、大変に興味深いことである。

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 新製品のCOMPOSITIONSは、同社の技術をAV関連SPに結集した開発が明瞭な製品。全域型ユニット的なコーン型を複数個使う手法は、オーソドックスだが、これぞインフィニティということになると、従来とは異なる指向性のモデルであろう。
 KAPPA6・2iは、程よいオーディオマインドをもつ見事な中堅機だ。

インフィニティ IRS-Sigma

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 最新のIRS−SIGMAは、RENAISSANCEシリーズとIRSシリーズの接点に位置づけられるシステムで、ユニット構成やネットワークを見れば、それは一目瞭然だ。全体としては非常に巧みにつくられた見事なシステムである。趣味のオーディオのスピーカーとしては、これならではの魅力は少ないが、逆に言えば安心して使えるという意味で、素晴らしいシステムだ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 RENAISSANCE90は、現代的にソフィスケイトされた素晴らしいソノリティを聴かす、実に魅力的なモデルである。音の陰影を色濃く再現し、誇張感なく音楽を聴かせる、という意味では同社の最高傑作で、まさに粋のわかる人のためのモデルといえよう。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 KAPPA7・2iは、このサイズとしてはスケール感も大きく、必要にして十分な性能・音量をもつが、8・2iが見事であるだけに、設置条件に制約がある場合に推奨したいモデルである。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 KAPPA8・2iは、上級機の9・2iとともに非常に価格帯満足度の高い同社の新しいモデルだ。先代譲りの高度に熟練したエンジニアのヒラメキといった、絶妙なシステムチューニングは類例のない見事さだ。このシステムは最も信頼度が高く、オーディオマインドを絶妙にくすぐるサムシングをもつシステムとして文句なしに推奨できる製品だ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 IRS−EPSILONは、かつてのGAMMAに位置づけられるモデルだが、低域ユニットが2個から1個になった。その低域は、IMGコーンの30cmユニットで、磁気回路が強化されて駆動力を増し、さらに独自のサーボ制御を採用している。中低域は平面振動板の精度を上げ、磁気回路を見直した新L−EMIM型、中域も同様に高能率化したHE−EMIM、高域はHE−EMITで、全ユニットはGAMMA当時とは異なり、一段と高精度・高能率化された新タイプに変っている。
 付属のサーボコントロールユニットは、調整が簡単で使いやすくなったが、GAMMAのように微妙な調整ができないことに少々の不満は残るようだ。
 IRSシリーズは、基本的にダイポール型放射をするが、本機になって背面の音圧をコントロールし、正面の特性を向上させようというコントロールド・ダイポール・スピーカーという考え方が新しく導入された。つまり、ユニット背面に音響ロードをかけてコントロールする技術が応用され、スピーカーシステムと対峙して聴取する位置でのフィデリティが改善されている。
 しかし、逆に考えれば、本来ダイポール特性をもつユニットの背面の放射をコントロールするということは、ホーン型やコーン型などの前面にのみ音を放射するユニットに近似させることとなり、これが、振動板前後の空気の圧力が同じ条件になることがベストな、平面振動板のメリットを損なうことになりはしないかという疑問が生じる由縁でもある。背面放射を制御する考え方は大変に合理的とは思われるが、短絡的に考えれば、ダイポール型のEMIユニット本来の魅力が、この手法により薄らいだ印象があることはいなめない。
 IRS−EPSILONは、平均的に使いやすくなったことは見事なリファインであるが、これならではの魅力も、その分だけスポイルされた点をどう考えるかが問題だろう。

インフィニティ IRS-V

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 IRS−Vは、インフィニティが考える理想のスピーカーシステムを具現化した製品ともいえる超弩級システムだ。とくに注目したいことは、低域、中域、高域の最小限の3ウェイ構成を採用し、かつ各専用ユニットは、上下方向に一列に並ぶ、いわゆるインライン配置とされていることだ。この配置は、水平方向の指向周波数特性は広いが、上下方向には逆に狭いという特徴がある。これは、一般的な大型スピーカーで問題となるサービスエリアが限られること、トールボーイ型システムでは椅子に座ったときの耳の位置に、ベストなサウンドバランスの音軸が来ないことへの、ひとつのアプローチの結果であるのだろう。
 低域は2kWの専用アンプ内蔵、中域はEMIM×12個、高域はEMITを前面に24個、背面に12個の合計36個使った超大型システムである。

インフィニティ

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 インフィニティは、1968年にアーノルド・ヌデール、ケアリー・クリスティ、ジョン・ユーリックの3氏によって創設されたスピーカーメーカーだ。
 同社の第1作は、中域以上に静電型フルレンジユニットを使い、低域に18インチ(45cm)コーン型ウーファーをエンクロージュアの床面に向けて取り付け、これをサーボコントロール方式で制御する、サーボ・スタティック1である。このシステムは、低域を左右チャンネルに使ういわゆる3D方式であるため、比較的コンパクトで、なおかつ静電型ユニットで中域以上を再生するため、コントロールの容易なシステムだ。
 この第1作が静電型+サブウーファーという構成であったことは、以後の同社の製品開発に直接結びついているようだ。静電型のトランジェント特性は、優れてはいるが構造上振幅がとれず、最大出力音圧レベルが低いこと、振動板の両側に音を放射するダイポール型で、前面と背面では位相が180度異なること、などの特質から、ダイナミック平面振動板の開発が始められた。
 エレクトロ・マグネティック・インダクション(EMI)型と名づけられた、極薄のフィルム状振動板に直接、薄膜状のボイスコイルを貼り合せ、その両側に小型磁気回路を並べた構造、つまり静電型ユニットをそのままダイナミック型に置き換えたような構造のユニットだ。
 '80年には、インフィニティ・リファレンス・スタンダードの頭文字をモデルナンバーとするIRSが発売され、EMI型ユニット+サブウーファーの基本構成が確立された。このIRSシリーズは、現在まで続いているインフィニティのスペシャルモデルである。かなり以前から同社の製品は国内に輸入されていたが、注目を集めるようになったのは、'80年代後半のKAPPAシリーズが発売された頃からだ。IRSシリーズには、フラッグシップのIRS−Vを筆頭に、IRS−β/γ/δなど一連の高級機がラインナップされたが、KAPPAシリーズの9/8/7は、非常に高い価格対満足度をもつモデルとして高い評価を受け、インフィニティ・ブランドを国内市場に定着させる原動力となったようである。
 その後、'89年にアーノルド・ヌデール氏が会社を去り、独立してジェネシスを創立。2代目社長をケアリー・クリスティ氏が受け継いだが、'93年には同氏も独立し、クリスティ・デザインを創立。現在はヘンリー・J・サース氏が社長。しかし、長期にわたり開発責任者であったケアリー・クリスティ氏は、新しいシグネチュア・シリーズの開発をすることになっており、その製品には同氏のサインが記されることになるようだ。
 なお、インフィニティはハーマン・グループの傘下にあり、一段と内容を強化するため、設計部門に広く世界から人材をスカウトしているようで、今後の動向にも大いに期待したいと思う。

オーレックス ST-720

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 シンセサイザー方式のFMチューナーとしてはオーレックスの第2弾製品である。価格的には、複雑な構成のために10万円をわずかにこしてはいるが、デジタル表示の未来志向型のチューナーとしては、充分に魅力的な価格であるの楽しい。
 選局は、カード式の変形ともいえる4組のFMユニット(周波数メモライザー)の内部にFMピンボードを規定に従ってあらかじめ希望局の周波数に合わせてセットすれば機械的に周波数はメモリーで気、このユニットにラベルを貼り局名を表示できる。
 マニュアルは、10MHzの桁で70か80を選択し、1MHzと0.1MHzは8、4、2、1を加算して0〜9を選択する方式で、最初は難解に思われるが慣れれば明解であるため、問題はない。プリセットチャンネルスイッチは4個のFMユニット用と、マニュアル用の5組あり、マニュアルはあらかじめセットしておけば、第5のFMユニットとしても使用できる。ファンクションとしては、国内の放送バンド以外の周波数をマニュアルでセットした場合になどに、点滅して警告するチューニング・エラー表示ランプやエアチェックのレベルセッティングの目安となる50%変調と100%変調に相当するレベルの信号が出力端子に出せるエアーチェック・レベルスイッチなどを備え、この種のチューナーに、ふさわしいものとしている。

オーレックス SB-820

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーレックスの新製品は、プリメインアンプとしては高級機に属する10万円以上、15万円までの価格帯に投入されたモデルで、パワーは82W×2と、このクラスとしては平均的であるが、とくにテープ関係の機能を重視しているのが特長である。
 外観は、フラットフェイスのフロントパネルに大型のボリュウムコントロールをもつ、かなり現代的な傾向を捕えたデザインである。トーンコントロール関係やフィルター類は、各2周波数を選択でき、このクラスの標準型といえるものだが、フィルターの高域に20kHz、低域に10Hzがあるのは、例が少ない。テープ関係は、リアパネルに2系統の入出力端子をもつ他に、ボリュウムの下側にジャックタイプのテープ3を備え、レバータイプとロータリータイプがペアとなったテープモニタースイッチとロータリータイプのデュープリケイトスイッチがあり、3系統のテープデッキを多角的に活用できる点は注目したい。
 回路構成は、差動2段の3段直結A級イコライザー、FET差動1段の2段直結NF型トーンコントロール、NF型フィルターアンプが、プリアンプ部分であり、パワーアンプは初段の差動アンプがカスコード接続になっている差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCLで、パワートランジスターは並列接続でない、いわゆるシングル・プッシュプルである。このモデルも、オーレックス独自のCADISによる一台ごとの実測データがついている。

ラックス M-2000

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この新製品はM−6000、M−4000と続いて発表されてた一連のハイパワーアンプに続く、第3のパワーアンプであり、基本とする設計思想もまったく同様なものである。発表された規格も、M−4000と比較してパワーが120W×2であることを除いてほぼ同等であり、外観上も棚などに置かれてあると区別はつきがたい。ただ、外形寸法上で奥行きが、11・5cm短いのが両者の大きな違いといえよう。
 回路構成は、差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCLで、出力段のパワートランジスターは、並列接続のパラレル・プッシュプル構成である。入力回路には単独のエミッターフォロワーがある。電源部は左右チャンネルの出力段用に別系統の電源が用意され、2個の2電源用電解コンデンサーを使用している。ドライバー段を含む他の増幅段用には、定電圧電源からの電圧が供給されている。
 フロントパネルにある2個のレベルセット用ボリュウムは、1dBステップのディテント型で、とくにチャンネルアンプなどに使う場合には好ましいものだ。付属回路には、LED表示のピークインジケーター、平均レベル表示のVUメーターと0dB〜10dBのメーター感度切替スイッチがある。
 M−2000は、M−4000にくらべると全体にひかえめな印象の音である。しかし音の粒子は細やかなタイプで、ローレベルの音が美しい。これをC−1010と組合わせると、音に活気が加わりスッキリとした爽やかな音になるのが印象的である。直接、C−1000とは比較しないが、C−1010のほうが明るくフレッシュな音をもつように思われる。

ラックス C-1010

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスの新しいソリッドステート・コントロールアンプは、そのモデルナンバーと外観からも判るように、既発売のC−1000コントロールアンプに続く機種で、いわゆる性能を落したジュニアタイプではなく、発表された規格を見てもまったく同等で、いわば実戦型のニューモデルだ。
 フロントパネルで、C−1000と変った点は、ボリュウムコントロールのツマミについていたタッチミュートが除かれた点で、これに伴って、タッチミュートのインジケーターランプがなくなっている。
 回路構成は、高域のリニアリティの改善と安定性とSN比の向上を狙った設計で、イコライザーが、ディファレンシャル・ダイレクトカップル方式と呼ぶ差動1段で、出力段がA級インバーテッド・ダーリントン接続のプッシュプル構成でテープデッキを負荷しても性能が落ちない特長があり、歪率が0・006%と低い。中間アンプも、イコライザーと同様な考え方のカスコーデッド・ダイレクトカップル方式であり、トーンコントロールは、LUX方式NF型だ。フィルターアンプは2石構成の定電流駆動のエミッターフォロワーで、不要な場合は信号系からカットされる。
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

上杉佳郎様

 今日はまことに、痛快でした。まず、その痛快な時をすごさせていただいたことに、お礼を申しあげたいと思います。痛快さは、当然のことに、上杉さんのきかせてくださった音、ひいては上杉さんの人柄によっています。
 三十インチ・ウーファーが横に四本並んだところは、壮観でした。それを目のあたりにしてびっくりしたはずみに、ぼくは思わず、口ばしってしまいました、なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか。そのぼくの失礼な質問に対しての上杉さんのこたえがまた、なかなか痛快で、ぼくをひどくよろこばせました。上杉さんは、こうおっしゃいましたね──オーディオというのは趣味のものだから、こういう馬鹿げたことをする人間がひとりぐらいいてもいいと思ったんだ。
 おっしゃることに、ぼくも、まったく同感で、わが意をえたりと思ったりしました。オーディオについて、とってつけたようにもっともらしく、ことさらしかつめらしく、そして妙に精神主義的に考えることに、ぼくは,反撥を感じる方ですから、上杉さんが敢て「馬鹿げたこと」とおっしゃったことが、よくわかりました。そう敢ておっしゃりながら、しかし上杉さんが、いい音、つまり上杉さんの求める音を出すことに、大変に真剣であり、誰にもまけないぐらい真面目だということが、あきらかでした。いわずもがなのことをいうことになるかもしれませんが、上杉さんは、そういう「馬鹿げたこと」をするほど真剣だということになるでしょう。
 したがってぼくの感じた痛快さは、その真剣さ、一途さゆえのものといえるようです。実に、痛快でした。
 神戸っ子は、相手をせいいっぱいもてなす、つまりサーヴィス精神にとんでいると、よくいわれます。いかにも神戸っ子らしく、上杉さんは、あなたがたがせっかく東京からくるというもので、それに間にあわせようと思って、これをつくったんだと、巨大な、まさに巨大なスピーカーシステムを指さされておっしゃいました。当然、うかがった人間としても、その上杉さんの気持がわからぬではなく、食いしん坊が皿に山もりにつまれた饅頭を出されたようなもので、たらふくごちそうになりました。
 ただ、そのスピーカーを設置されてから充分な時間がなかったためでしょう、きかせていただいた音に、幾分まとまりのなさを感じたりもいたしましたが、上杉さんが求められたにちがいない、こせついたところのないひろびろとした音を、ぼくはこの耳でたしかめることができました。テレビの人気番組のタイトル風に申しあげれば、ドンとやってみようといった感じでならさた音で、そための気風のよさがあったように思われました。それしてそれは、神戸っ子としての上杉さんにふさわしいものといっていいものだったようです。
 ぼくにとってひとつだけ残念だったのは、この機会に、上杉さんのつくられた、いわゆるウエスギ・アンプがどんなものか、きかせていただきたいと思っていたのに、たしかにウエスギ・アンプでならしてはくださったのですが、スピーカーが、すくなくともぼくにとってあまりに異色のものだったので、その特徴を見さだめられなかったことです。またの機会に、あらためて、きかせていただきたく思います。
 ヴォルフのメーリケ歌曲集のレコードをかけて下さったのには、驚きました。それもまた、ぼくがヴォルフの歌曲が好きだと見ぬいての、神戸っ子ならではのもてなしだったでしょうか。そのレコードでの、ピアノの、どこにも無理のない、ふっくらした響きは、すてきでした。
 上杉さんは、お目にかかっての印象や、三十インチ・ウーファーを4本もつかってのスピーカーシステムをおつくりになることから、大きなもの、ダイナミックなものを求められていらっしゃるのかと、つい思ってしまいがちですが、一概にそうとはいえないようだということが、さまざまなレコードをきかせていただいているうちに、わかってきました。きかせていたたいた音は、まだ上杉さんのものになりきっていないという印象はのこりましたが、そこで上杉さんがならそうとしていらっしゃるものには、ある種のこまやかさもあったようでした。
 今日は、心からのおもてなし、本当にありがとうございました。ご自愛を祈ります。

一九七六年一月二十七日
黒田恭一
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 上杉氏のリスニングルームには2組の大型スピーカーシステムがある。そのひとつは、コーナー型システムとして典型的な存在であった、いまはなきタンノイのオートグラフであり、いまひとつは、それ自体が大型システムであるオートグラフが中型システムと見誤るほど巨大な、超弩級4ウェイシステムである。
 このシステムは、ヨーロッパのシアター用システムとしてユニークな構造をもつシーメンスのオイロダインを中心として構成したもので、低域補強にエレクトロボイスの巨大な76cm口径のウーファー30Wを2本(1ch)、高域補強にテクニクスのホーン型トゥイーターを組み合わせている。
 オイロダインは、この種のシステム共通の特徴として、いわゆる現代的なワイドレンジタイプでないことが、あの見事なまとまりをみせる。彫りが深く力強い音の裏付けと考えられるが、さらに発展させるとなれば、低域と高域のわずかなレスポンスを伸ばすために、オイロダインにみあうクォリティを備えた超高級ユニットを組み合わせることが必要となる。とくに、低域は重要なポイントであり、部屋に入るという制約上からは、超大口径ウーファーの使用がオーソドックスの方法と思われる。
 エレクトロボイスの30Wは、米国でもハートレーの286MSと並ぶ巨大なユニットで、もともと同社のかつてのパトリシアン800用につくられたもである。
 エンクロージュアは、外形寸法が180×170×60cm(W・H・D)あり、重量は、約390kg(ユニット含)もあるが、構造上は2分割されており、上側のエンクロージュアにテクニクスのトゥイーターとオイロダインが横一列に取付けられ、下側のエンクロージュアは密閉型で30Wが2本入っている。クロスオーバー周波数は、トゥイーターとオイロダインの高域との間が8kHz、オイロダインの低域と高域は5kHz、12dB/oct.のLC型、オイロダインの低域と30Wの間はエレクトロニック・クロスオーバーで、ハイパスが12dB/oct.、ローパスが18dB/oct.で、150Hzになっている。
 アンプ系は、多数の内外のセパレート型があるが、現用機は当然のことながらプリアンプU・BROS−1と、CR型のチャンネルデバイダー、それに4台の845シングルのパワーアンプUTY−1である。レベルセッティングは無響室特性と実際のリスニングルーム内での実測特性とを基準にして決定されているようで、このあたりはデータを重視する上杉氏らしいところと思われた。
 プログラムソースはディスクが中心で、4系統のプレーヤーシステムは1系統を除いて2本のアームがセットされており、テープデッキではスチューダーB62、FMチューナーではセクエラMODEL1をもっぱら愛用されている。
 上杉氏のシステムは、感覚的に流れず、実測データを基準にしてセットアップしてあることが重要なポイントで、メインとなっている4ウェイシステムは使いはじめたばかりで、現在は写真のように置かれているが、今後は分割されたエンクロージュアの利点をいかして、レイアウトも大幅に変わっていくことだろう。いずれにせよ、このシステムのスケールの大きなこだわりのない響きは、いかにも上杉氏らしい豪快さにあふれたものである。
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

柳沢功力様

 敢てふたつにわければ、外にむかっている音と内にむかっている音とが、あるような気がします。外にむかっている音は、その音をだしている人をだすねてきた人を、両手をひろげ歓迎するということで、人恋しい音ということができるようです。当然のことに、そういうい音は、たとえばベートーヴェンの後期のクヮルテットのような求心的な性格をもった音楽より、同じ室内楽でも、管楽器のアンサンブルによるものなどの方がふさわしいといえるのかもしれません。
 それに反し、内にむかった音は、ひとりで静かにきくことこそこのましいものといえるでしょう。したがってそこできかれる音楽も、そういう音の性格にかなったものとなるのかもしれません。
 今回ぼくは、取材ということで、井上さんや、坂さん、それに編集長の原田さんをはじめとした多勢の方とご一緒におうかがいしましたので、どうしても、雰囲気としておちつかず、それがなにより、残念でした。と申しますのは、今日、柳沢さんにきかせていただいた音は、ひとりで、静かにきくための音──と、ぼくには感じられたからです。どう考えてもそれは、沢山の人がいる部屋できかせていただくのにふさわしい音とは、思えませんでした。
 きっと柳沢さんは、おひとりで、静かに、どちらかといえば騒がしいところのない音楽を、いつもきいていらっしゃるのではないかとも、考えたりいたしました。
 ぼくもむろん、たとえば室内楽をきくような時は、音量をひかえにして、内にむかって沈潜できるようにして、ききます。しかしその一方で、友人がたずねてくれた時に、一緒にたのしくきけるような、先の区分にしたがえば、外にむかった音をも求める気持があり、その点でいささかふんぎりのわるいところがあります。そういうことがあるものですから、柳沢さんの、音づくりの上での徹底ぶりに、感心せざるをえませんでした。その音は、もし言葉にするとすれば、SOUNDS FOR MYSELF とでもいうべきなのかもしれません。
 レコードで音楽をきくのがたのしいのは、ひとりで、好きな時に、その時ききたいと思う音楽を、好きなようにきけることにあると思います。そういうレコードで音楽をきくことのこのましさの一面を、柳沢さんは、徹底して追求していらっしゃるように、ぼくには思えました。
 むろん、そうしたことは、今日、柳沢さんがきかせてくださった音から、ぼくが感じたことです。その音は、トランクィロな(穏やかな、平和な)美しさにみちていたということもできるでしょう。人間的にがさついたところがあるためかとも思いますが、ぼくがこの自分の部屋でふだんきいている音には、そういうところがあまりないので、いささかの驚きをもって、柳沢さんの音をきかせていただきました。
 それにしても、音というのは、不思議なものですね。なんと雄弁に、その音を求めた人を、ものがたることでしょう。むろんお書きになったものは読ませていただいたことがありますが、これまで、これといったことをお話したこともない柳沢さんですが、今日、お宅にうかがい、その音をきかせていただき、そうなのか、柳沢さんという方はこういう方だったのかと思うことができました。あらためて、音というものの不思議さを、思ってみたりいたしました。
 ぼくは戦闘的な人間だから──と、柳沢さんは、ご自身でおっしゃっていましたね。その戦闘的な面の柳沢さんは存じ上げませんが、今日きかせていただいた音から、ぼくはぼくなりに、柳沢さんは、静かな、落着いた美しさに憧れる方ではないかと、勝手に思ったりいたしました。もっとも、ひとりで、静かに、おだやかな美しさを追い求めることができるというのは、本当の強さがあればこそで、だからこそ、「戦闘的な」柳沢さんもありうるのかもしれません。これは、まあ、ぼくの推測でしかありませんが。
 今日は、静かな、柳沢さんの音楽の場に、多勢でおしかけて、ごめいわくをかけたのではないかと、心配しております。
 また機会がありましたら、今度はひとりでおうかがいして、ゆっくり、静かに、柳沢さんの音をきかせていただきたいと思っております。
 どうも今日は、いろいろいありがとうございました。

一九七六年一月十日
黒田恭一
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 柳沢氏のスピーカーシステムは、マルチアンプでドライブされている。使用ユニットは、アルテックが中心で、ウーファーが38cm型の416A、スコーカーが804Aドライバーユニットと511Bセクトラルホーンのコンビ、トゥイーターはパイオニアのリボン型ユニットPT−R7である。
 ウーファーの416Aは、現在の416−8Aの前身で、ボイスコイルのインピーダンスが16Ωであることをのぞいて性能は変わらない。エンクロージュアは大型のバスレフ型620Aで、もともとアルテックの最新の同軸型全域ユニット604−8G用であるため、416Aの取付けはかなり苦労されたようだ。というのは、フレーム構造が、416Aはバッフル板の後から取付けるタイプであるが、604−8Gは前面から取付けるタイプと、異なっている。そこで、416A用ガスケットを利用して前面からの取付けを可能としたとのことだ。
 ドライバーユニットの804Aは耳慣れないモデルであるが、806Aの前身であり同等の性能をつものと考えられる。柳沢氏は、このユニットのダイアフラムを一度シンビオテック・タイプの16Ω特註品に交換し、さらに現用しているものは、高域レスポンスが改善された最新型の604−8Gに採用されているタイプに置き換えてある。
 セクトラルホーンの511Bは、現在ではマットブラック塗装に変わっているが、古くから愛用されているために、鮮やかなメタリック調のアルテックグリーンに塗られ、ホーン内部の仕上げも入念に工作がされていて、とても同じモデルとは思われないほどに印象がちがっている。このホーンは、視覚的な面とホーンの共鳴音を避けるために、木製のケースに入れてダンプしてある。
 アンプ系は、コントロールアンプがマランツの管球タイプ♯7である。チャンネルデバイダーはソニーTA−4300Fで、クロスオーバー周波数は8kHzと600Hz、スロープは18dB/oct.である。パワーアンプ群は、高音用がパイオニアEXCLUSIVE M4、中音用にマッキントッシュMC2105、低音用はモノ構成の管球タイプである♯9×2である。
 プレーヤーシステムは全部で3系統あるが、メインシステムにつながれるのはトーレンスTD124に柳沢氏自作のトーンアームとオルトフォンSPU−Aの組合せと、ガラード301にFR FR−54とオルトフォンSPU−Aのコンビの2台である。もう1系統はラックスPD121にFR FR−54とシュアーV15/IIIを取付けたシステムである。
 テープデッキはルボックスHS77、チューナーはマランツ♯10Bがメインだ。
 その他のアンプにはマッキントッシュC26、マランツ♯15、チューナーではマッキントッシュMR77と、パイオニアEXCLUSIVE F3がある。
 いずれ中音用アンプをマランツ♯15に置き換えて、マッキントッシュのラインナップを独立させ、ラックスのプレーヤーと組み合わせて、試聴用などのスピーカーをドライブするために使いたいとのことである。
 柳沢氏の音は、アルテックを使いながら、いわゆるアルテックサウンドは異なった音にまで発展させている点に特徴がある。

スペックス SD-909, SDT-77

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 スペックスからは、MC型のSD−909である。このカートリッジは、共振を防ぐために、カートリッジのボディに、航空機用の軽合金を使い、共振点の異なる2つの材質が共振を打ち消す構造である。
 振動系は、78・5%PCパーマロイを使った巻枠に巻いたコイル、つまり発電系と、カンチレバーの振動支点が一致するワンポイント支持方式を採用し、温度変化にたいして一定のダンピング係数を保つために、異なった性質の材料を2枚合わせてプッシュプル方式を採用している。
 SD−909は、MC型で、精密な作業をおこなうために、少数生産でつくられ、一日に21個しかつくれないとのことだ。
 SD−909などの低出力MC型カートリッジの昇圧用トランスとして、スペックスでは、SDT−77が用意されている。このトランスは、SDT−180newのトランス本体をベースとし、より使いやすくよりスペースをとらない小型にするために、かずかずの改良が加えられている。
 この種の昇圧トランスは、入力インピーダンスのマッチングを、切替によっておこなうのが一般的であるが、ここでは、切替不要の独得のトランス設計により、2〜50Ωのインピーダンス範囲では、切替なしで使用できるとのことである。
 SD−909を、SDT−77をペアにして使ってみる。従来からも、スペックスのMC型カートリッジは、音色が明るく、力強い音を特長としていたが、SD−909は、この系統を受継ぎながら、さらに、音の密度が高くなり太い線も表現できるMC型としてユニークであると思う。

オーレックス C-550M

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井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このカートリッジは、発電方式は、MM型であるが、振動系のカンチレバーにカーボンファイバーを採用している。カンチレバーは、グラスファイバーの0・37mm径のソリッド材を使用し、針先には、オーレックスで開発したエクステンド針を使っている。このタイプは、音溝との接触が、カッティングレースのカッター針に近い、ラインコンタクトタイプで、高域の分解能が優れ、接触面積が大きいために、針先、音溝両方の摩耗が少ない特長がある。この針は、ダイヤモンドと同等の硬度をもつコランダム結晶を研磨している。
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

菅野沖彦様

 お宅にうかがう途中で気がついたのですが、菅野さんのお宅におしゃまするのは、ほぼ二十年ぶりといういうことになります。二十年といえば、ふた昔、当時はまだ菅野さんも今のようなお仕事をなさっていなくて、ぼくはまだ学生でした。かつて知人につれられてうかがったお宅が、そうだ、あれは菅野さんのお宅だったんだといった感じで気がついたのは、不思議なことに、比較的最近になってからのことです。その思いだしたいきさつについてはいつかお話しましたね。
 その二十年前にうかがった時にきかせていただいた、バリリをリーダーとする、ウィーンの音楽家たちによるモーツァルトの「ポストホルン」セレナードの、ウエストミンスターのレコードの音が、今も、なまなましく耳の底にのこっているような気がいたします。当時、ぼくもさっそくそのレコードを買い求め、家できいてみましたが、菅野さんのお宅でのような音がでるはずもなく、こういうことを雲泥の差というのかと思ったりいたしました。その時がオーディオというものをあらためて意識した最初の機会だったかもしれません。
 今度もまた、かつての「ポストホルン」セレナードの場合と、いささか質はちがうにしても、きかせていただいた音は、ぼくをうらやましがらせるに充分なものでした。その音は、もしぼくなりに言葉におきかえさせていただくとすれば、豊麗な音ということになるかもしれません。やせほそったところも、ひからびたようなところも、まったくない、いかにも豊かなものと思えました。
 率直に申しあげて、ぼくは、最初のレコードをきかせていただいた時、すでに、ああ、これは菅野さんの音だな、と思いました。すくなくとも、今日、お宅できかせていただいた音と、ぼくが感じている菅野沖彦という華麗なキャラクターとは、もののみごとに一致しているように思われました。菅野さんがお吸いになっていたパイプ・タバコのかおりとか、お部屋の広さゆえでしょうことさら大きくは感じられないグランド・ピアノとか、そういうものがかもしだす気配と、いわゆる俗にいわれるリスニングルーののものというより、やはり立派な応接間のものというべきでしょうが、菅野さんの音とは、なんと見事に一致していたことでしょう。
 菅野さんの、菅野さんならではの、相手の気持を思いはかっての親切さ、言葉をあらためれば、サービス精神というべきでしょうか、そのために、菅野さんは、さまざまな性格のレコードをかけて下さいました。それらの、たとえばバックハウス、ベーム、それにウィーン・フィルハーモニーによるブラームスからポール・モーリアまでのさまざまなレコードのいずれもが、過不足なく豊麗にひびき、それぞれがチャーミングだっことに、正直のところ、ぼくは驚きました。
 と申しますのは、特にスピーカーについていえるようですが、音のキャラクターによってあうスピーカーとそうでないスピーカーがあるということは、しばしばいわれるようですが、お宅できかせていただいた音から判断するかぎり、そういう不都合を、すくなくともぼくは、感じなかったからです。たたいてでた音も、こすってでたお供、豊麗によくひびいていたように思われました。その点でも、きかせていただいた音は、ぼくに羨望の念をいだかせるに充分なものでした。いい音だなと思いました。
 その羨望の念、いい音だなと思う気持は、菅野さんがおのりになっているポルシェを見て、すてきだなと思うのと、ぼくにおいては、やはり似ているところがあります。
 しかしそこがまさに、いかにも菅野さんらしいところといえるのかもしれません。中途半端、不徹底なところが、菅野さんのなさることにはありません。おのりになる自動車、くわえられるパイプ、そして耳にされる音といったことで、ちぐはぐがないことに、あらためて感心しました。それがなかなかできないことだということは、ぼくにもわかります。そのむずかしいことを徹底してなさっているところに菅野さんらしさがあると思います。きかせていただいた音が、まったくそのような音でした。
 帰ってきてから、さっき、お宅できかせていただいたバックハウスのブラームスのレコードを、この部屋でかけてみました。当然のことに、まったくちがう音がしました。音というのはおもしろいものだなと思いました。
 少し前にお身体をこわされ、心配しておりましたが、もうすっかりよろしいとのこと、なによりです。今後もお身体にお気をつけ下さいますよう。

一九七六年一月十三日
黒田恭一
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 大型スピーカーシステムは、それが大きく見えないようなスペースの充分にある部屋で使うことが理想的という声をよく耳にするが、現実のわが国の生活環境ではなかなか実現することは至難である。
 菅野氏のリスニングルームは、この面から考えると理想的なスペースがあり、メインスピーカーシステムのJBL3ウェイシステムが、その存在を意識させずに置かれている。スピーカーシステムは3系統あり、2チャンネル用にJBLの大型3ウェイと、プロフェッショナル・モニターシステム4320に2405トゥイーターを加えたシステムがあり、4チャンネル用にJBLのディケードシリーズのL26がある。
 メインとなるスピーカーシステムは、ウーファーがJBLプロフェッショナルシリーズの2220、スコーカーがJBL375ドライバーユニットと537−500音響レンズ付ホーンの組合せ、トゥイーターがJBL075である。
 ウーファー用のエンクロージュアは、横位置にしたパイオニア38cm用バスレフ型エンクロージュアLE−38だが、フロンドグリルが組子に変わっているために、JBLの特別仕様エンクロージュアのように思われた。また、中音用の音響レンズ付ホーン537−500は、ユニークな構造とデザインをもつ製品で、一時製造が中止されていたが、最近になってモデルナンバーがHL88と変わり、再発売されている。
 JBLの3ウェイシステムを駆動するチャンネルアンプシステムは、コントロールアンプJBL SG520、チャンネルデバイダー ソニー TA−4300F、パワーアンプの高音用オンキョーINTEGRA A−717のパワー部、中音用パイオニアEXCLUSIVE M4、低音用アキュフェーズM−60×2のラインナップである。
 コントロールアンプは、現在はJBLのSG520であるが、マランツ♯7Tも併用されるようだ。パワーアンプは、スピーカーユニットとの音質上のマッチングを重視して数多くのアンプのなかから選択され、その時点でもっとも好ましいアンプを使用されている。
 プレーヤーシステムは、フォノモーターとトーンアームが、テクニクスSP−10MK2とEPA−101Sの組合せ、カートリッジはエレクトロ・アクースティックSTS455Eである。なお、テープデッキはプロフェッショナルの名門スカリーの280B−2である。
 プログラムソースがdbxの場合には、システムのラインナップが一部変わり、コントロールアンプがマランツ♯7Tとなり、dbx122デコーダーが加わる。この場合のプレーヤーシステムは、デンオンDP−3700Fで、カートリッジは同じエレクトロ・アクースティックSTS555Eに変わる。
 氏のリスニングルームでのdbxシステムの音は素晴らしい。まったくの静寂のなかから突然に音楽始まるために、慣例的なノイズによるレベルセットはまったく不能である。オーディオラボ製作のdbxレコード「アローン・トゥゲザー」は、音楽として実に楽しく、この種の新方式は使う人により結果が大幅に変化する好例に思われた。
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

瀬川冬樹様

 今日、お宅できかせていただいた音、あの音を、もしひとことでいうとすれば、さわやかさという言葉でいうことになるでしょう。今日はしかも、冬にしてはあたたかい日でした。そよかぜがカーテンをかすかにゆらすなかできかせていただいた音は、まさにさわやかでした。かけて下さったレコードも、そういうとにふさわしいものだっと思いました。やがて春だなと思いながら、大変に心地よい時をすごさせていただきました。あらためてお礼を申しあげたいと思います。ありがとうございました。
 普段、親しくおつきあいいただいていることに甘えてというべきでしょうか、そのきかせていただいたさわやかな音に満足しながら、もっとワイルドな音楽を求めるお気持はありませんか? などと申しあげてしまいました。そして瀬川さんは、ワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」の合唱曲をきかせてくださいましたが、それをかけて下さりながら、瀬川さんは、このようにおっしゃいました──さらに大きな音が隣近所を心配しないでだせるようなところにいれば、こういう大音量できいてはえるような音楽を好きになるのかもしれない。
 たしかに、そういうことは、いえるような気がします。日本でこれほど多くの人にバロック音楽がきかれるようになった要因のひとつに、日本での、決してかんばしいとはいいがたい住宅環境があるというのが、ぼくの持論ですから、おっしゃることは、よくわかります。音に対しての、あるいは音楽に対しての好みは、環境によって左右されるということは、充分にありうることでしょう。ただ、どうなんでしょう。もし瀬川さんが、たとえばワーグナーの音楽の、うねるような響きをどうしてもききたいとお考えになっているとしたら、おすまいを、今のところではなく、すでにもう大音量を自由に出せるところにさだめられていたということはいえないでしょうか。
 なぜ、このようなことを申しあげるかといいますと、今日きかせていただいた音が、お書きになったものからや、さまざまな機会におはなしして知った瀬川さんと、すくなくともぼくには、完全に一致したものと感じられたからです。まさにそれは、瀬川サウンドといえるもののように思われました。
 ぼくはいまだかつて(ふりかえってみますともうかなりの回数お目にかかっているにもかかわらず)、瀬川さんが、馬鹿笑いをしたり、声を尖らしたり、つつしみにかけたふるまいをなさったりするのに接したことがありません。ぼくのような、血のけが多いといえばきこえはいいのですが、野卑なところのある人間にとって、そういう瀬川さんは、驚きの的でしたが、今日、その瀬川さんの音をきかせていただいて、なるほどと、ひとりでうなずいたりいたしました。きかせていただいた音にも、馬鹿笑いをするようなところとか、声を尖らすようなところとか、あるいはつつしみにかけたふるまいをするようなところは、まったくありませんでした。敢てそのきかせていただいた音を音楽にたとえるとすれば、短調のではない、長調の、そう、ヴィヴァルディのというより、テレマンのというべきでしょう。緩徐楽章の音楽ということになるかもしれません。そこには、それにふれた人の心をなごませるさわやかなやさしさがあるように思えました。
 タバコをすわない瀬川さんのお部屋には、タバコのみの部屋の、あのなんともいえないやにくささがまったく感じられませんでした。それがはじめわからなくて、なんとも不思議な気持がしました。そのタバコのやにくささの感じられないことが、さらに一層、きかせていただいた音のさわやかさをきわだたせていたということも、いえなくはないのかもしれません。もしぼくは経済的に余裕があったら犬を沢山飼ったりするのかもしれませんが、瀬川さんだったらきっと、そういう時、ばら園をつくられたりするのかもしれないと思ったりいたしました。そのようなことを考えさせる瀬川さんの音だったといえなくもないようです。
 お忙しくて、まだ、ぼくの家においでいただけないでおりますが、いつか、機会がありましたら、ご一緒にレコードでもききながら、おはなしできたらと思います。ただ、そのためには、おいでいただく前にぼくは、空気清浄器を購入して、部屋のタバコのけむりでにごった空気をきれいにしておかなくてはなりません。
 今日は、瀬川さんの音をきかせていただいて、胸いっぱい深呼吸をしたような気持になり、今、とてもさわやかな気持です。ありがとうございました。

一九七六年一月十四日
黒田恭一
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 瀬川氏のリスニングルームには、二組のスピーカーシステムがあり、それぞれヨーロッパとアメリカを代表する中型の業務用モニターシステムであるのが大変に興味深い。
 KEF LS5/1Aは、英国系の最近のモニタースピーカーの見せる傾向を知るうえでは典型的な存在である。エンクロージュアのプロポーションが、横幅にくらべて奥行きが深く、調整室で椅子に坐ったときに最適の聴取位置となるように、金属製のアンプ台を兼ねたスタンド上にセットしてある。このシステムをドライブする標準アンプは、ラドフォード製の管球タイプのパワーアンプで、アンプ側でスピーカーシステムの周波数特性を補整する方法が採用されている。
 ユニット構成は、38cmウーファーとセレッション系のトゥイーターを2本使用した変則2ウェイシステムで、一方のトゥイーターはネットワークで高域をカットし、中域だけ使用しているのが珍しい。38cmウーファーは、一般に中域だけを考えれば30cmウーファーに劣ると考えやすいが、KEFの場合には38cm型のほうが中域が優れているとの見解であるとのことだ。このシステムは比較的近い距離で聴くと、驚くほどのステレオフォニックな空間とシャープな定位感が得られる特徴があり、このシステムを選択したこと自体が、瀬川氏のオーディオのありかたを示すものと考えられる。
 JBLモデル4341は、簡単に考えればモデル4333に中低域ユニットを加えて、トールボーイ型エンクロージュアに収めたモニタースピーカーといえ、床に直接置いて最適のバランスと聴取位置が得られるシステムである。ユニット構成は、2405、2420ドライバーユニット+2307音響レンズ付ホーン、2121、2231Aの4ウェイで、中低域を受持つ2121は、ユニットとしては単売されてはいないが、コンシュマー用のウーファーLE10Aをベースとしてつくられた専用ユニットと思われる。
 かねてからJBLファンとして、JBLのユニットでシステムをつくる場合には、必然的に4ウェイ構成となるという見解をもつ瀬川氏にとっては、モデル4341の出現は当然の帰結であり、JBLとの考え方の一致を意味している。それかあらぬか、システムの使いこなしについては最先端をもって任ずる瀬川氏が、例外的にこのシステムの場合には、各ユニットのレベルコントロールは追込んでなく、メーカー指定のノーマル位置であるのには驚かされた。なお、取材時のスピーカーはこのモデル4341であった。
 アンプ系はスピーカーシステムにあわせて2系統が用意されている。1系統は、マークレビンソンLNP2コントロールアンプとパイオニアEXCLUSIVE M4、他の1系統は、LP初期からアンプを手がけておられる富田嘉和氏試作のソリッドステート・プリアンプとビクターJM−S7FETパワーアンプとのコンビである。プレーヤーシステムは、旧タイプのTSD15付EMT930stと、ラックスPD121にオーディオクラフトのオイルダンプがたトーンアームAC−300MCとEMT TSD15の組合せであり、テープデッキは、アンペックスのプロ用38cm・2トラックのエージー440コンソールタイプを愛用されている。
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

岩崎千明様

 ぼくの頭の中での、岩崎さんのイメージは、永遠の少年です。永遠の、青年ではなく、少年です。さらにいわせていただくとすれば、永遠のいたずらっこということになります。その方がぼくのイメージに近いようです。ぼくよりはるかに年上の方をつかまえて、永遠のいたずらっこもないと思いますが、今度はじめてお宅におうかがいして、その印象をますます強めました。
 岩崎さんは,たずねてきた人間の目からかくそうとなさって、おちていた紙くずをひろいあげ、それをどうなさるのかと思ったら、おすわりになっていた椅子の下におしこまれましたね。それは、多分、オトナのすることではなく、少年、それもいたずらっこのしそうなことです。そういう岩崎さんがぼくは大好きなので、これはどうやらファン・レターのようになってしまいそうです。
 パラゴンが、パラゴンらしからぬといっていいのでしょうか、大変に思いきりのいい、さわやかで力のある音をきかせてくれたのに、驚きました。きかせていただいているうちに、仕事でおじゃましたのも忘れて、きこえてくる音楽にのせられてしまいました。
 岩崎さんというと、誰もがまず第一に、大音量できく方というので、ぼくもかつては、その噂で岩崎さんを知りました。でも、不思議ですね、お宅できかせていただいた音は、たしかに尋常の音量ではなかったのですが、すくなくともぼくは、それが大音量だということをまったく意識しませんでした。普段岩崎さんがよく、できるだけ近くでききたい、小さい音もちゃんとききたいとおっしゃる意味が、音をきかせていただいて、なるほどこういうことなのかと納得できました。
 大きな音で、しかも親しい方と一緒にきくことが多いといわれるのをきいて、岩崎さんのさびしがりやとしての横顔を見たように思いました。しかし、さびしがりやというと、どうしてもジメジメしがちですが、そうはならずに、人恋しさをさわやかに表明しているところが、岩崎さんのすてきなところです。きかせていただいた音に、そういう岩崎さんが、感じられました。さあ、ぼくと一緒に音楽をきこうよ──と、岩崎さんがならしてくださった音は、よびかけているように、きこえました。むろんそれは、さびしがりやの音といっただけでは不充分な、さびしさや人恋しさを知らん顔して背おった、大変に男らしい音と、ぼくには思えました。
 オーディオに多少なりとも興味がある人間ならうらやましがらずにいられないような名器が、いささかも仰々しくならずに、本当になにげなく、あっちにもこっちにもおかれてあるのを見て、またぼくは、永遠のいたずらっことしての岩崎さんを考えてしまいました。それというのも、こっちにしたらほしくてしかたがないと思っていた模型機関車やなにやかや沢山持っていて、しかし育ちのよさゆえかそれをことさら見せびらかすようなこともしなかった子供時代の友人のことを思いだしたからです。彼もまさにいたずらっこでしたし、がき大将でした。いたずらっこにはいたずらっこならではのさわやかさがあります。そのさわやかさが岩崎さんのきかせてくださった音にはありました。
 クラシックのレコードをかけてびっくりさせようと思って、買ってはきたんだけど、わざとらしいからやめたよ──、そうおっしゃって笑った岩崎さん笑い顔、あれは、いたずらっこの笑い顔そのものだと思いました。しかし、オーディオのような趣味の世界では、そのいたずらっこの精神こそが大切なんではないかと、かねてからぼくは考えておりましたが、ぼくの考えはまちがいではなかったようだと、あらためて思いました。
 最後に、ひとつだけ、申しあげておきたいことがあります。出して下さったケーキ、大変おいしくいただきましたが、いかにも大きすぎました。音の大きさに比例しての超弩級の大きさでした。さっき、帰ってから、胃薬をのみました。
 今日は、特に寒い日でしたが、永遠の少年の熱気にあてられたためでしょうか、不思議に血がさわいで、身体がほてります。でも、寒い日は、たしか喘息によくないはずです。ぼくの母も喘息持ちなので、その苦しみがわかるため、岩崎さんがせきこまれるとはらはらします。まだまだ寒い日がつづくと思われます。どうぞお身体にお気をつけ下さいますよう。また、岩崎さんの音をきかせていただける機会があればいいなと思っております。

一九七六年一月一二日
黒田恭一
井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 岩崎氏はふたつのリスニングルームを使いわけている。そのひとつは、JBLのパラゴンが置かれた部屋である。パラゴンの両翼には、アルテックの620Aエンクロージュアに入った604−8Gが乗せてあり、その両側にはJBLのハークネス、その対称面には、同じくJBLのベロナが置いてある。スピーカーユニットは、JBLのプロフェッショナル用をはじめ、アルテック、ボザークなどが転がっており、大型のセパレート型アンプや、プレーヤーシステムまでが山積みになっている。それらはエキゾチックな家具とともに、部屋の空間のなかを自由奔放に遊び回っている子供のように存在しているが、何とも絶妙なバランスを見せているのは不思議にさえ思われた。
 メインシステムであるJBLパラゴンは、低域までがフロントローディングホーンとなっている。いわゆるオールホーン型システムで、ステレオ用がひとつの素晴らしいデザインに収まっており、ユニークな円弧状の反射板をもっているために、独得なステレオのプレゼンスが得られる個性的なシステムだ。
 プレーヤーシステムは、いわゆるプレーヤーシステムの枠をこえた構造をもつマイクロのDDX−1000ターンテーブルと、MA−505の組合せであるが、その置かれている場所は、予想外にパラゴンの中央部の上である。ハイレベル再生では最右翼と思われる岩崎氏のリスニングルームであるだけに、いささか意外とも思われたが、この場所がこの部屋でもっともハウリングが少ない場所とのことである。
 アンプ系は、数あるアンプ群のなかからコントロールアンプには、本来はミキサーとして業務用に使われるクヮドエイトLM6200Rのフォノイコライザーを、パワーアンプには、パイオニアEXCLUSIVE M4のペアである。
 この部屋で聴くパラゴンは、聴き慣れたパラゴンとはまったく異なった音である。エネルギーが強烈であるだけに、使いこなしには苦労する375や075が、まろやかで艶めいて鳴り、洞窟のなかで轟くようにも思われる低音が、質感を明瞭に表現することに驚かされる。2、3種のカートリッジのなかでは、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」のレコードのときの、ノイマンDST62は、感銘の深い緻密な響きであった。パラゴン独得なステレオのエフェクトが、聴取位置が近いために効果的であったことも考えられるが、アンプの選択もかなり重要なファクターと思われる。やはり、このパラゴンの本質的な資質をいち早く感じとり、かつて本誌上でパラゴンを買う、と公表された岩崎氏ならではの見事な使いっぷりである。また、大音量の再生は「美しいローレベルの音を、よく聴きたいためにほかならない」との氏の回答も、オーディオの真髄をつくもである。
 いまひとつのリスニングルームは、アンティークなムードの漂う部屋で照明も仄かであり、マントルピースのサイドに置かれたエレクトロボイスのエアリーズは、煙に燻されて判別しがたいくらいである。マランツ♯1と♯2、♯7と♯16のあるこの空間は、古きジャズを愛する岩崎氏にとって、メインのリスニングよりもむしろ憩いの場であるのだろう。
黒田恭一

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 まず、スピーカーがふたつ、目に入る。アンプやプレーヤーも、どこかにあるにちがいないが、それはこの際、どうでもいい。ふたつのスピーカーを見れば、それだけでもう、その部屋主が音楽をきく人だとわかる。再生装置で汽車の音ばかりをきいている人だっていなくはないだうが、大半の人は、再生装置をレコードで音楽をきくための道具としてつかっているのは事実だがら、その部屋の主が音楽をきく人と見さだめていい。いかなる音楽? しかし、それは、たいして問題ではない──と、一応ここでは、いっておくことにしよう。
 部屋の主はいう、いやあ、この音にかならずしも満足しているわけではないんだよ。訪問者は、なぜだろうといった表情で、部屋の主の顔を見る。たずねられている意味をいちはやく察した部屋の主は、なんとなく音がもうひとつしゃきっとしなくてね、本当ならスピーカーを、今度出た△○×にかえたいと思っているんだけれど、なかなかままならなくてねといい、語尾を、かすかな笑いのうちにとかす。
 訪問者は、了解する。そしてしかる後に、しかし、これで充分いい音じゃないかと、時に本機で、時に社交辞令でいう。訪問者も、いい再生装置を手にいれるには、すくなからぬ出費を覚悟しなければならないことを、すでに知っている。したがって、あの△○×はいいらしいけれど、けっこうな値段だねと、相槌をうつ言葉も、おのずと実感にみちたものとなる。
 再生装置はものだから、当然、それを自分のものとするためには、金がかかる。おおむね、いいものは、高い。会話の様子から、スピーカーの△○×は、かなり高価なものらしい。「ままならない」のは、どうやら、それを手にいれるための金のようだ。スピーカーの△○×とて商品だから、金さえ支払えば、自分のものとなる。そしたいと思いながら「ままならない」不如意を、部屋の主は、暗にいいたかったにちがいない。むろん、多少の礼儀をわきまえている訪問者は、金さえあればいい音がだせるっていうわけでもないだろうなどとは、決していわない。
 つまり、部屋の主が口にしたのは、一種のエクスキューズだ。多少むごいいい方にならざるをえないが、その部屋の主の言葉をくだいていうと、こうなる──ぼくはこの音に満足しているわけではない、すなわちぼくの音に対しての美意識はとうていこの程度の装置では満足できない、そこでさしあたってスピーカーを△○×にかえれば少しはよくなるだろうと思っているが、それを入手するための金が今ない、それだからやむをえずこういう音できいているだけだ、金さえあれば、ぼくの音に対しての美意識、ないしは音に対しての趣味のよさをきみに示せるのに、はなはだ残念だ。
 しかし、本当に、そうか。金さえあれば、すべてが解決するのか。そうは思わない。部屋の主と訪問者の会話では、肝心なことが欠落している。
 再生装置はものだ。ものゆえに、それを入手するための金がかかる。だからすべてが金のせいにされてしまう。とんでもないことだ。いかなるものでも、ものは、つかわれることを、さらにいえば、うまくつかわれることを、待っている。そしてものは、そのつかわれ方で、つかいてである人間を語る。部屋の主が、現在彼の使用中の再生装置をうまくつかっているかどうかは、知らない。ただ、「なんとなく音がもうひとつしゃきっとしなくてね」といっていることから判断すれば、彼はうまくつかっていないのかもしれない。
 うまくつかっていないということは、機械の方にもいたらぬ点があるとしても、つかいてである部屋の主がつかいきれていないということで、だとすればたとえスピーカーが△○×になったとしても、似たような言葉が彼の口からでてくる可能性がある。なぜそういうことがおこるかといえば、すべてを金のせいにしたからだ。たしかにものである再生装置を入手するために金が必要だから、まったく無関係とはいえないが、それがすべてではない。本来、問題にされるべきは、なにをつかうかではなく、どうつかうかだろう。
 しかし、不幸にも、なにをつかっているかは、言葉にしやすい。へえ、きみは△○×をつかっているの、すごいなあ──という会話は、いとも容易で、よく耳にする。しかし、その△○×からどういう音をだしているかは、実際にきいてみないと、わからない。言葉にしにくい。だから、なにをつかっているかだけが問題にされ、どうつかっているか、つまりどういう音をきいているかは、語られない。
 同じ△○×のスピーカーだって、たとえそれ固有の音があるとしても、つかわれる場所がかわれば、そしてつかいてがかわれば、かわる。そのことは、アンプについてだって、カートリッジについてだっていえる。変化の要因は多々ある。ということは、すでにしばしばいわれていることで、あらためていうまでもないようなものだが、だからこそ、そこに、ものをつかうわざが介入するということを、確認のために、敢ていっておきたい。
 先の部屋の主の言葉にいじましさがついてまわったのは、おのれのものをつかうわざを棚にあげて、責任のすべてをものにゆだねたがゆえだった。ききてにとって肝心なのは、再生装置というものではなく、あくまでも音だ。ひとことでいってしまえば、ものである以上、それはつかいてによって、名器にもなれば駄器にもなる。
 オーディオ評論家ときえども、金のわく泉をもっているわけではないから、当然のことに、経済的な制約の内にある。あのアンプがほしいと思いつつ、その制約ゆえに入手できないでいるかもしれず、広いリスニングスペースを求めつつ、はたせないでいるかもしれない。ただ、ものである再生装置をつかうわざについてエクスキューズをいうことは、彼らには許されていない。つまり彼らはそれをあつかうプロだからだ。事実、おたずねした八氏のひとりとして、その種のことを口にした方はいなかった。当然のことながら、先の部屋の主のごときいじましい言葉は、どなたも、おっしゃらなかった。だからといって、ふりかぶって、これこそがわがサウンドなりといった感じでもなく、八氏が八氏とも、淡々とそれぞれの音をきかせて下さった。それが、特に、印象に残った。そこには、プロの、プロならではのさわやかさがあった。
          *
 音をつめることのできる缶詰があればいいのにと思う。ピアニストがそのピアノでならした音は、時と所をへだてたところで、まあ、さまざまな問題があるとしても、レコードと、それを音にする再生装置という重宝な道具があるので、きくことができる。すくなくとも、ホロヴィッツの音とポリーニの音をききわけられる程度の音で、すくなくとも今のレコードは、きかせてくれる。しかしポリーニの音の入っている同じレコードでも、Aという人がならす音とBという人がならす音では、ちがってくる。そのためにことはややこしくなる。
 Aという人の音がどうで、Bという人の音がどうかをいうためには、いきおい言葉にたよらざるをえなくなる。たとえば、Aはポリーニのレコードをやわらかい音できいていた、といったように。やわらかいといったって、その意味するところひろいから、なかなかうまく伝わらない。やわらかさの基準がどこにあるのか、それだってすでに個人差があることだから、正確に伝わると思う方がおかしいのかもしれない。結局は、おおまかな輪郭しか伝わらないような気がするが、それでもできるかぎりのことをしようと、せいいっぱいの努力をする。
 このことは、個々のスピーカーやアンプの音を言葉にする際にもいえるが、ただここでは、ある人間によってならされた音についてという限定内で、はなしをすすめようと思う。
 一枚の写真がある。ポリーニがピアノにむかっている。なにをひいているのかなと思うが、わかるはずもない。写真は音を伝えないからだ。どういう曲のどこをひいているのかさえわからずむろんどんな音がそこでしていたのかさえわからない。ヒントは、その写真を見た人の記憶の中にしかない。多分ポリーニは、この時も、あのような音でひいていたのだろうと、かつて自分が、レコードでだろうとナマでだろうときいたポリーニの音を思いだすだけである。
 もう一枚の写真がある。オーディオ評論家のA氏が椅子にすわっている。彼はレコードをきいているらしい。そばにポリーニのひいたショパンの「前奏曲集」のジャケットがある。かかっているのは、多分、そのレコードだろう。A氏がだしていた音は、四角だったの三角だったのという、しかるべきコメントもそえられている。そのコメントを読もうと読むまいと、A氏の音を推測する手がかりが、そこにある。彼がどういう装置できいているかが記載されているからだ。このカートリッジはああいう音、このアンプはああいう音、このスピーカーはああいう音といったように、記憶をたよりのたし算が、そこでおこなわれる。
 しかもその場合、大変に具合のわるいことに、それぞれの、たとえばスピーカーならスピーカーの、置き場所、ききてに対しての角度、あるいはそれがつかわれる部屋のひろさや性格といったさまざまな要因でかわる変動の幅は、無視される。しかしその変動の幅は、先にのべたように、つかう上でのわざが介入しうるほど、大きい。そうしたことが個々の、つまりスピーカーについても、アンプについても、カートリッジについても、さらにプレーヤーについてさえいえるとなれば、記憶をたよりのたし算の結果から推測した音と、実際になっている音との差は、はなはだ大きなものとなる。
 不幸なことに、雑誌という印刷物にのせられるのは、言葉と写真だけだ。つまり四角にたよったものしか伝えられない。レコードをきいているA氏の写真は、たしかに雑誌にのせることができる。またA氏が現在使用中の再生装置も、写真でなり、文字でなりで、のせることができる。さらにA氏の音をきいた人間の感想も、のせられなくはない。しかし、その音そのものは、音をつめることのできる缶詰でもできないかぎり、伝えることは不可能だ。
 そこで、このカートリッジはああいう音、このアンプはああいう音といった、記憶をたよりのたし算をすることになるが、そのたし算は、人間によってつかわれたときにはじめてものとして機能しはじめるという、もののものならではの特性を無視してのもので、計算ちがいにおちいる危険がある。ものは、本来、それをつかう人間とのかかわりにおいて考えられるべきだろうが、そのたし算は、そこのところをそぎおとして、ものでしかないものにたよりすぎているところに、あぶなっかしさがある。
 このスピーカーならああいう音といった予断が、ぼくにも多少はあった。しかしそうしたぼくのぼくなりの予断を、オーディオ評論家八氏は、いとも見事に、くつがえした。彼らは、再生装置というレコードをきくための道具を、完璧に手もとにひきつけ、自分の音をそこからださせていた。このスピーカーならああいう音という、一種の思いこみにかなわぬ、つまりそれがもつ一般的なイメージから微妙にへだたったところでの、それぞれの音だった。しかし、それがそれ本来の持味、特性を裏切っていたというわけではない。
 したがって彼らは、それぞれの機械を、名調教師よろしく、申し分なく飼育してしまっていたといういい方も、可能になる。
 しかし、彼らは、なにゆえに、おのれの装置を調教したのか。おそらく、目的は、調教することにはなく、その先にあったはずだ。いや、かならずしもそうとはいえないかしれない。一般的にはあつかいにくいといわれている機器を、敢て、挑戦的な意味もあって、つかいこなすことによろこびを感じることもあるだろう。その場合の、つかいにくいとされている機器は、暴馬にたとえられる。暴馬を調教するには、当然それなりのよろこびがあるにちがいない。
 ここでひとつあきらかになることがある。それはオーディオ評論家とは、再生装置の調教師であり、同時に、騎手でもあるということだ。
 その言葉にそってはなしをすすめるとすれば、彼らの調教の目的をたずねる言葉は、必然的にこうなる──あなたは、そのあなたが調教した馬にまたがって、どこに行こうとしているのですか?
 目的地は、人それぞれで、ちがう。ちがってあたりまえ。同じだったらおかしい。その目的地のことを、ばくぜんと、「いい音」といったりする。「いい音」? なるほど、そういういい方もある。しかし、ある人にとっては「いい音」が、別のある人にとっても「いい音」であるとはかぎらない。絶対的な「いい音」なんて、さしあたって、ないと考えた方がよさそうだ。
 そうなると、「いい音」といういい方が、一定の目的地をいう言葉たりえないことがはっきりする。しかし、馬は、いずれにせよ、のるために調教するのだから、のってどこかにいくのかがわかっていなければならない。馬に、Quo vadis, Domine? とたずねられても、馬に Domine と呼ばれた人間に、こたえようがなくては、やはり困る。
 さて、目的地は、どこか。もう一度、たずねてみる。同じ言葉がかえってくる。「いい音」。「いい音」が、この場合に可能な、唯一の言葉だろう。したがって、どんな「いい音」か、つまり「いい音」といういい方でいいたがっている目的地の固有の名前は、質問者の方でさがさざるをえない。「いい音」とこたえたその回答者の主体とのかかわりあいで、考えなければならない。Aのいう「いい音」と、Bのいう「いい音」では、あきらかにちがう。
 たとえば、Aは大きな音できくことが多く、Bは普段小さな音できいているとすれば、それはすでに、そのふたりの音に対しての嗜好を、あきらかにしている。Aはジャズをきくことが多く、Bはバロックなどの比較的しずかな音楽をきくことを好むとすれば、それもまたそれぞれの音に対しての好みを表明していることになるだろう。大きな音でジャズをきくことを好むAのいう「いい音」と比較的音量をおさえめにしてテレマンのトリオ・ソナタなどをきくことを好むBのいう「いい音」では、同じはずがない。
 馬に鞭をあて、いてつくような北国の夜をめざすのか、それともオレンジの花咲く南の国をめざすのか。「いい音」は雪の上にあることもあり、さんさんとふりそそぐ陽の下にあることもある。
 そしてここでひとつ、思いだしておきたいことがある。プレーヤーから出たコードをアンプにつなぎ、アンプからのコードをスピーカーにつなぎ、その後、レコードをかければ、まず、音はでる。むろんアンプのスイッチはオンになっている。音はでてきてあたりまえ、でてこなかったらおかしい。それもたしかに音だが、その音は、たまたま出てきた音だ。別のいい方をすれば、その音は、再生装置というものが勝手にだした音でしかない。その音に、つかいてはほとんど介入していない。装置の音であっても、つかいての音はいいがたい。
 たとえ装置をえらぶ段階で、つかいての音に対しての嗜好が選択に反映したとしても、ことは、そこで終ったわけでなく、そこからはしまる。ある機器をその人にえらばせたそれなりの理由があるなら、その理由にそって、その機器をおいこんでいかなければならない。その機器がそれなりにおいこまれた時、そこでなる音は、機械の音といっただけでは充分でない、つまりつかいてのものとなる。つかいてはやはり、馬にひきずられて野原を走りまわるべきではなく、馬にまたがって、目的地をめざすべきではないか。
 たまたまなった音でいいのわるいのいっても、さして意味はない。
 オーディオ評論家八氏のきかせてくださった音は、十全に調教された馬の音だった。北をめざしている馬もあり、南をめざしている馬もあり、東や西、あるいは空にまいあがろうとしている馬もあったようだ。当然ながら、ぼくにもぼくなりの音に対しての好みや考えがあり、そのすべてに共感したというわけではなかった。しかし、ただ──
 そう、ここが肝心なところだ。徹底したものは、それに共感するかどうかは別にして、常に、ある種の説得力をもつ。その説得力が、オーディオ評論家八氏のきかせてくださった音にあった。
 再生装置から音をだす時に、そのつかいての心をよぎるのは、「いい音」を求めての、いってみれば憧れである。ぼんやりした憧れなら、ただそれだけのことで、どうということもない。しかし、それがひとたび、つかいての行動を呼ぶと、憧れは目に見えない、そして耳にもきこえない、しかし否定しがたい力をもって、いずこにかむかう馬速度をあげる。疾走する馬は美しい。その美しさが、人をうつ。そうか、彼は、着たにいきたいんだな、きっと、あの北国の夜空を見たいんだな──と、思ったりする。
 そこではじめて、しかしぼくは南にむかう──という言葉も、可能になる。彼にとっての「いい音」という固有の目的地が、その音にすでにきけるからだ。ということは、そこでなっている音が、かくかくしかじかというメーカーのかくかくしかじかという型番の機器の音ではなくなり、その人の音になっているからだ。
 その馬の調教のノウハウ、つまり調教法は、さまざまあり、人それぞれで大変にちがう。特別にことさらの調教法なんてないよ──という人だっている。すでにできあがっている機器に、たとえば抵抗やコンデンサーをつけたりするような、敢ていえばハード的な調教から、スピーカーの角度をほんのわずかかえるといった微妙な調教まで、まさにさまざまだ。
 しかしそのことについて、ここでは、ふれない。なるほど、ここをこうしたからこうなるのかといったようなことをいうには、すくなくともぼくにはデリケートすぎることのように思えるからだ。そして同時に、調教法は、必然的に、その目的地との関連で考えられるべきだろう。ただちょっと暇な折に、林の中を歩きまわりたいだけなんだといって、馬を自分のものとする人だっているはずで、そういう人には、多分、ことあらためての調教など、不必要だろう。
 普遍的な、誰にも、どのような状況にも通用しうる調教法など、ないのかもしれない。とすれば、ここで、今回その音をきかせていただいたオーディオ評論家八氏の調教法を、したり顔にお伝えしたとしても、なんの意味もない。彼らは彼ら、ぼくはぼく──と、なまいきかもしれないが、ぼくは思った。彼らには彼らそれぞれの目的地があり、ぼくにはぼくの目的地がある。調教法が目的地との呼応によってあみだされるとすれば、ぼくはほくなりに考えなければならない。ここで先達にすがっては、ぼくの憧れは、水っぽくなってしまう。
 しかし、はたして、目的地は、不動か。いや、言葉をあらためる。はたして、目的地を、不動不変と思っているかどうか。
 目的地は不動であってほしいという願望が、たしかに、ぼくにもある。目的地が不動であればそこにたどりつきやすいと思うからだ。あらためていうまでもなく、目的地は、いきつくためにある。その目的地が、猫の目のようにころころかわってしまうと、せっかくその目的地にいくためにかった切符が無効になってしまう。せっかくの切符を無駄にしてはつまらないと思う、けちでしけた考えがなくもないからだろう。山登りをしていて、さんざんまちがった山道を歩いた後、そのまちがいに気づいて、そんしたなと思うのと、それは似ていなくもないだろう。目的地が不動ならいいと思うのは、多分、そのためだ。ひとことでいえば、そんをしたくないからだ。
 目的地はやはり、航海に出た船乗りが見上げる北極星のようであってほしいと思う。昨日と今日とで、北極星の位置がかわってしまうと、旅は、おそらく不可能といっていいほど、大変なものになってしまう。
 ただ、そこでふりかえってみて気づくことがある。すくなくともぼくにあっては、昨日の憧れが、今日の憧れたりえてはいない。ぼくは、他の人以上に、特にきわだって移り気だとは思わないが、それでも、十年前にほしがっていた音を、今もなおほしがっているとはいえない。きく音楽も、その間に、微妙にかわってきている。むろん十年前にきき、今もなおきいているレコードも沢山ある。かならずしも新しいものばかりおいかけているわけではない。しかし十年前にはきかなかった、いや、きこうと思ってもきけなかったレコードも、今は、沢山きく。そういうレコードによってきかされる音楽、ないしは音によって、ぼくの音に対しての、美意識なんていえるほどのものではないかもしれない、つまり好みも、変質を余儀なくされている。
 主体であるこっちがかわって、目的地が不変というのは、おかしいし、やはり自然でない。どこかに無理が生じるはずだ。そこで憧れは、たてまえの憧れとなり、それ本来の精気を失うのではないか。
 したがってぼくは、目的地変動説をとる。さらにいえば、目的地は、あるのではなく、つくられるもの、刻一刻とかわるその変化の中でつくられつづけるものと思う。昨日の憧れを今日の憧れと思いこむのは、一種の横着のあらわれといえるだろうし、そう思いこめるのは仕合せというべきだが、今日音楽、ないしは今日の音と、正面切ってむかいあっていないからではないか。
 目的地がかわらざるをえない要因は、再生装置の側にもある。たしかに新しいものがすべていいとはいいがたい。すでにすぎた時代につくられたものの中に、新しくつくられたものにはないよさをそなえたものがあるのは、まごうかたなき事実である。しかしその反面、新しくつくられたものならではの可能性をもったものがあるのもまた、まぎれもない事実だ。そういう、歓迎すべき新しくつくられたものは、そのつかいてに、そうか、ここまでいけるのかといったおもいをいだかせ、今まで以上の、ずっと先に、目的地を設定する夢を与える。
 昨日まで、あそこまでしかいけないものと思いこんでいたのに、その新しく登場した機器によって、それよりずっと先に目的地をおけるようになるというのは、よろこばしいことだ。
 さまざまな、昨日の、あるいは今日の音楽、ないしは音にふれながら、人それぞれ、憧れをかえていく。その変化の様は、ちょうど黄昏時の空のようで、変化しているようには見えないものの、刻々とかわっていく。そして、こういう音楽、こういう音をきくのだったら、もっとシャープな音のでる装置がほしいなと思ったりする。しかし、憧れがそのまま際限なくふくらむというわけではない。装置の方で、憧れの自然増殖をゆるさない。したがって、目的地は、際限なくふくらもうとする憧れと、実際問題として装置が可能にする限界との接点にあるということになる。
 目的地を北におくか、それとも南におくか、その、いってみれば座標軸の決定にあたっては、憧れの大きさや質などが、大きな要因となることは、あきらかだ。
 そうなってくると、その人の目的地の設定場所は、その人の音楽のきき方にかかわらざるをえない。しかしむろん、あなたは音楽をどうきいていますか──というのは、愚問以外のなにものでもない。どうきいているって、どういう意味?──と反問されるのがせきの山だ。これは、あなたはどうやって生きていますか? という質問と似たところがあって、こたえは言葉にしにくい。そして、もし非常な努力の末、たとえそれを言葉にしたとしても、言葉にしたとたんに、しらじらしくなってしまいかねない。
 結局は音楽のきき方とかかわるからこそ、音が、その音をだした人を語ることになるのではないか。だから、音は、こわい。
 ここで肝心なのは、どういう音楽をきくかではなく、音楽をどうきくかだ。問われるべきは、WHAT ではなく、HOW である。そのきき方によって、憧れの、姿も、背丈も、かわってくる。同じポリーニのひいたショパンをきいたからといって、万人が同じようにきいているとはいえない。上野の文化会館で隣りあわせにすわって、同じ音楽をききながら、同じにはきいていないわけで、そこでのへだたりが、再生装置をつかっての音、つまり再生音について思いいだく際の憧れの質的・量的差となってあらわれる。
          *
 ぼくがおたずねした八人の部屋の主は、△○×のスピーカーをほしかっていて、しかし「なかなかままならなくてね」といって苦笑いした部屋の主とは、ちがう。さまざまな面で、大変にちがう。基本的には、一方がアマチュアで、もう一方がプロフェッショナルだということがいえるのだろうが、ぼくのおたずねした八人の部屋の主には、それをことさら誇ったというわけではないが、自信に裏うちされたさわやかさがあった。
 ただ、△○×のスピーカーをほしがっている部屋の主もいいそうなことで、八氏がそれぞれ、えらんだ言葉、あるいはニュアンスなどでは微妙にちがっていたが、口にした言葉がある。オーディオというのは趣味の世界のものだから──といった意味の言葉だ。ぼくもその考えには、おおいに共感する。人それぞれで、その後につづく言葉もかわってくるわけだが、いずれにしろ、オーディオがことさら仰々しくいわれたり、考えられたりするのには、ぼくも、反撥をおぼえる。
 たしかにオーディオは多くの人にとって趣味だ。だから、こむずかしく考えることはなく、適当でいいんだ──ということもできるし、逆に、だから、仰々しくなる必要はないが、せいいっぱい誠実につきあうべきだ。──ということもできる。ふたつの極にわかれての反応が可能になる。
 本当は、趣味だからといって、たかをくくるとことはできない。趣味は、それを趣味としている人を、長い年月のうちに、それらしくしていく。切手蒐集家には切手蒐集家の顔があり、盆栽が趣味の人には、いかにもそれらしい表情がある。しかもオーディオは、まさに目に見えない音として、われわれの日常生活の中にしのびこみ、その音をきく人を、じわじわと、無言のうちに(!)、ゆりうごかす。
 趣味でしかないとしても、趣味だからといってたかをくくれないところがある。オーディオ・メーカー好みのキャッチフレーズ風ないい方をすれば、いい音をきいている人はいい顔をしている──といったことさえ、そこではおこりかねない。
 オーディオというのは趣味の世界のもだから──といった、オーディオ評論家八氏の言葉は、当然、その辺のことをふまえてのもだったにちがいない。趣味の世界のものだからということで、たかをくくっての言葉ではなかった。たかをくくった人間に、目的地をさだめての旅だちなどできるはずもない。彼らは、なにげない顔をしていたが、せいいっぱい誠実に、できるかぎりの努力をして、彼らの音をつくっていったにちがいなかった。
 しかし、彼らとて、今、目的地にたっているはずもない。ただそこできいた音は、すばらしいことに、今の目的地がどこかを、それをきいた人間にわからせるものだった。その意味で、彼らの音は、まさに憧れが音になったものだったといえよう。その音が、たまたまなった音ではなく、彼らがならそうとしてならした音だったからだ。
 当初、ぼくの期待は、ちょっとやそっとではきくことができない、俗にいわれる名器の音がきけるということにあった。それがたのしみで、この企画の訪問者の役割をひきうけた。
 しかし、ぼくは、あきらかに、うかつだった。ぼくは、名器の音など、なにひとつきかせてはもらえなかった。ぼくがきいたのは、A氏というオーディオに強い関心をもち、またそれに通じている男の音だった。そこでは、あたらの名器も、一枚の鏡と化し、Aという人間を、そしてその夢と憧れを、ものの見事にうつしだしていた。いい音ですね──などというのさえはばかれるほど、みごとにみがきあげられて、鏡は、その前にたつ男をうつしだしていた。
 そこでは、憧れが、響いていた。燃えあがる憧れもあり、沈みこむ憧れもあった。そしていずれも、その憧れにふれた人を感動させるに充分なだけ美しかった。
 ぼくは、八通りに響く憧れを、きいた。
井上卓也

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より

 ホーン型を中域以上に使う大型2ウェイシステムは、従来からスタジオモニターとして伝統的に使われてきたシステムではあるが、紙コーンの低域と、軽金属振動板採用のドライバーユニットとホーンを組み合わせた中域以上とでは、音色、感度、指向特性などが根本的に異なり、システムアップが非常に難しく、その成功例は想像以上に少ないようだ。
 とくにクロスオーバー付近では、特性を重視すれば音質、音色に違和感を生じ、平均的にはクロスオーバー域の音圧を弱めに設定して、音質、音色をコントロールする手法が用いられるようだ。
 また、大型ホーンで音像が前後方向に移動する例が多く、ある程度、システムとの距離をおいて聴く必要もあるようだ。
 しかし、基本的に高感度システムであるため、センシティヴで反応が速く、ダイナミックでパワフルな音が聴かれるために、少々個性型ではあるが、この種の音にハマると立直れない麻薬的な魅力があり、個人的には卒業したつもりではいるが、非常に危険な存在である。
 ホーン型スタジオモニターとして、私が世界の双璧と考えるシステムが、パイオニア/エクスクルーシヴ2404とウェストレイクBBSM15だ。両者の選択には悩ましいものがあるが、構成が単純な2ウェイ型であり、なおかつ、こめウェスタン以来の伝統的技術を抜本的にリフレッシュしたユニットを、低域、高域に採用し、音像の前後移動のない大型ホーンと組み合わせた、エクスクルーシヴ2404のシステムプランは、文字通り世界最高のシステムである。
 今年春には、本機に採用された新TAD系ユニットが単体として発売されるようになり、世界のモニタースピーカーメーカーに採用されるという噂もしきりというのが現状のようだ。個人的な見解では、低域は38cm2個が必須条件ではあるが、現在、市販されているスピーカーシステムのなかから選択しなければならないとすれば、2404しかないだろう。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ステレオ初期に、一点支持型トーンアームの先端にカートリッジを固定した、非常に未来志向型のステレオユニポイズを発表したピカリング社は、モノーラルLP時代からカートリッジの名門として高い評価が与えられた専門メーカーだ。そしてステレオLP時代となった'61年に、当時のピカリング社の社長であったW・O・スタントン氏が、同社のトップランクモデルに特別にスタントンのブランドを与えたことが、そもそものスタントン・ブランドの誕生である。同社カートリッジの発電方式は、MM型を中心にIM型も加えた、まさに適材適所の自由な設計が特徴だ。
 スタントンの評価を最初に高めたモデルが、'69年発売のIM型681EEで、その暖かみがありシャープな音は記憶に新しい。後に500、600シリーズが加わる。また、ディスクにブラシを接触させ、振動系の安定度を向上させるダスタマティックも注目された。
 '80年になると、MM型のコイルを極限まで減らしたローインピーダンス(3Ω)の製品980LZSを発表した。このタイプは、すでに業務用としてはグレース、オーディオテクニカで製品化されていたが、基本的にはヘッドアンプ専用でトランスにはマッチしない。これ以後は針先形状が問題とされた時代で、同社ではステレオヒドロンが、その回答だ。
 WOS100は、チタンコートのボディに設計者W・O・スタントンのシグネチュアを刻んだ同社技術の集大成モデル。ブラシ付3・3mV出力のエネルギッシュで力強く、繊細さも見事なモデルだ。
 681EEE MKIIIは、681系の最新版。チタンコートボディ、サファイアコート・カンチレバーに菱形形状チップを採用している。
 トラックマスターELは、逆回転の頭出しにも耐える振動系とスタイラスに蛍光塗料コート・ヘッドシェル一体型だ。

テレフンケン M28C

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 2トラック・38cm型のデッキは、有名ブランドの海外製品が次々とその価格が上昇し、少なくともプロ用にも使える製品で、アマチュアに仕えそうなデッキは皆無にひとしくなった。M28Cは、業務用デッキとしては、小型、軽量であり、価格的にも、無理をすれば入手可能な範囲にあることが魅力的である。

ソニー TC-5550-2

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 国内製品としては、現在唯一のオープンリール・ポータブルデッキである。サーボコントロールされる走行系はさすがに抜群の安定度を誇り、ワウ・フラッターも大変に少ない。歪み感がなく、スッキリとした粒立ちの良い音は、やはり、2トラック・19cmならではのもので、生録音などでの音場感はナチュラルに拡がり、とくに前後方向の奥行きをクリアーに聴かせる。やや重いのが気になるが、38cmが使えればと望みたくなる。

ソニー EL-7

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 エルカセットデッキは、現在まだ定着した存在ではないが、カセットデッキのマスターレコーダーとして充分に使える性能がある。このモデルは、何よりも小型であり、ドルビーを積極的に使える感度調整をもつ点が好ましい。走行系はカセットとは比較にならぬ安定度があり、音ゆれが少ないのはさすがである。

サンスイ SC-3

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 海外市場では、以前よりサンスイはカセットデッキを販売しているが、このSC−3は、同社初めての国内販売に踏みきったカセットデッキである。5万円台のデッキは、比較的に実力をもつ製品が多いが、適度に帯域コントロールしたこのデッキの音は、使いやすく、それでいてかなりの活気もある。

オルトフォン RMG212

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 最近の性能が向上したトーンアームでも、SPU/Gが、やや特殊なカートリッジだけに、充分の性能が引出せるとは限らない。このモデルは、完全に専用アームとしての存在に魅力のポイントがあり、優雅に弧を描くS字アームの曲線、音質など、SPU/Gファンには欠かせない魅力をもつトーンアームである。
井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 現在市販されている、この種のトーンアームとしては、異例に長期間の製品寿命を誇る製品である。基本型は、放送業務用のターンテーブルがステレオ化された時代に業務用のステレオトーンアームとして開発されたために、アーム基部からアンプをつなぐ、専用コードはなかったが、後になって改良され現在のようになっている。付属機構は、目的からいって何もなく、安定した音と長期間にわたる性能維持が狙いの製品である。

グレース G-545F

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 カートリッジ、トーンアームでは、もっとも長い伝統をもつグレースの代表製品となると、やはり最新モデルではなく、G−545Fをあげなくてはならない。たしかに、高価格化しているトーンアームのなかでは、目立たぬ存在であるが、信頼性、安定度、仕上げなど、他を寄せつけぬ完成度の高さが感じられる。

SME 3009/S2 Improved

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 最近では、オーディオ製品の性能が止まるところを知らぬように向上し、次々に最新技術を導入したモデルが登場しているが、趣味的な面から考えると、実用性が前面に押し出されてきたために、直ぐに使える性能が高いものが多く、当面は使う予定はないが、手もとに置いて眺めるだけで楽しいという製品は皆無に等しい。この点では、SMEのトーンアームは、例外的な存在であり、デザイン、性能、機能、精度を含めて抜群である。

デンオン DP-7000

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 業務用ターンテーブルでは定評があるデンオンのコンシューマー用フォノモーターのトップモデルである。水晶制御による増速・減速のサーボシステムによりコントロールされるターンテーブルは、実際に使用して快適であり、とくに、スムーズに停止する止りっぷりは見事であり、音質的にも十分の信頼性がある。

ビクター TT-81

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 TT−101のジュニアモデルとして開発された、いわゆるクォーツロックのダイレクトドライブ・フォノモーターである。TT−101には、モーターにコアレスタイプが採用してあるが、このモデルでは鉄芯入りの一般型となり、回転数の表示は、ストロボスコープに変わっている。基本性能は、TT−101に匹敵する高さがあり、音が良いプレーヤーシステムを製作する場合のベースとして使えば、十分に要求に答えられる製品だ。

AKG P8ES

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 AKGのカートリッジは、最近になってから開発された現在のシリーズが第二世代の製品である。このモデルは、AKGの最高級製品であり、現代的な高い性能をもつが、とくにヴォーカルでの、ナチュラルで、エレクトロニクスの介在を感じさせないような、濡れた、みずみずしさはかけがえのない魅力である。

オルトフォン SPU-G/E

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 本来は業務用システムのプレイバック用に開発されたモデル。シェルと一体型で、AとGにわけられているのはこの背景を物語っている。本機がベースの改良モデルが常に存在しても未だ現役として充分の実力をもっているのは珍しい例で、今後いつまで残るかが、SPUファンとしては心配のたねである。

ピカリング XSV/3000

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 モノーラル時代以来の古きカートリッジメーカーであるピカリングの製品は、CD−4方式対応型のXUV/4500Qで非常に高い評価を得たが、このXSV/3000は、レギュラーなステレオ用に開発されたトップモデルである。洗練され現代的になったとはいえ、腰が強くクッキリと粒立つピカリング伝統の音は、このモデルも充分に受け継いでおり、直線的に表現する独特の魅力は、他では求められない素晴らしさがある。

シュアー V15 Type III

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ステレオ初期以来、シュアーのカートリッジは、つねにその時代のオーディオファンの支持を得てきたが、とくに、このV15TYPEIIIほど数多くの愛用者をもつカートリッジは他にあるまい。パフォーマンスから考えても、発売時点でこそ、ラミネート型のポールピースの採用は注目を集めたが、現時点では、さらに優れた製品が存在しているはずである。それでも標準カートリッジ的に使われるのは信頼性の高さ、音の魅力であろう。
井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオテクニカのカートリッジは、一連の数多くのモデルがあることに特長があるが、ローコストからトップモデルにいたる音的・性能的な分類とコントロールは、海外製品に勝るとも劣らぬ見事さが感じられるようになった。このAT−14Eは、同社の中心モデルともいえる存在であり、素直に色づけのない音を力強く聴かせてくれるのが大変に好ましい。トーンアームの組合せもクリティカルでなく、バーサタイルに使える製品だ。

テクニクス SL-1600

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DD型フォノモーターを最初に開発しただけに、テクニクスは、DD型とオートプレーヤーの組合せでも当初から積極的であった。国内製品のオートメカニズムとしては最も完成度が高いテクニクスの方式と、DD型フォノモーターを結合したこの製品は、さすがにバランスが優れ、実用面の利点は非常に高い。

ビクター JL-B37R

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 とかくローコストなプレーヤーシステムは、デザインや方式が表面に出て、基本性能が劣化しやすいが、その点、このモデルは、性能を重視して簡潔にデザインされている点が好ましい。プレーヤーシステムの音の差は驚くほど大きいが、ローコストで音の良いプレーヤーシステムの代表作が、このモデルである。

ダイヤトーン DP-EC1

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 B&Oのエレクトロニクスコントロールのフルオートプレーヤーシステムが登場して以来、このタイプのオート化が望まれていたが、通常型のトーンアームとのコンビで製品化した最初の製品が、このDP−EC1である。演奏中にストップとリピートのボタンを押せば、アームはレストに戻らず最外周から再び演奏をはじめるあたりは、従来のメカ方式では得られない本機の利点であり、まさしく新時代のプレーヤーらしさが魅力的だ。

ダイヤトーン DP-EC2

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 EC1に続く第二弾のエレクトロニクスコントロールのフルオートシステムである。光線を使うレコードの盤径選択は30cm盤と17cm盤に限られたが、アームがドライとも表現できるように、途中で考え、止まることなくコントロールされるあたりは、まったく小気味よい。音は、いわゆる反応が速いタイプである。

サンスイ SR-838

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 デザイン的には上級機のSR−929を踏襲しているが、開発当初より性能の高さと、音質の良さのバランスに置いているだけにシステムとしてのクォリティは上級機以上のものがある。トーンアームは長方形の回転軸受使用の一般型に変わり、ベースと結合をリジッドにしているのが音質向上に効いている。

ヤマハ YP-D7

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 フォノモーターの瞬間的な負荷変動を、反応速く制御することをポイントとして開発されたこのモデルは、プレーヤーシステムの問題点であるトーンアームに新しい構想が盛込まれている。ヤマハでは、すでにローコストのDD型プレーヤーYP−511で、プレーヤーベースとトーンアームの取付部に鉛のウェイトを取付ける方法が採用されているが、ここでも物凄くリジッドなアームベースを使い音質の改善をはかっている。

パイオニア XL-A700

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DD型フォノモーターの第三世代ともいうべき、水晶制御のフォノモーターとメカニカルなフルオートシステムとを組み合わせた時代の最先端をゆくシステムである。重量級のターンテーブル、単体としてみても良くできたトーンアームをもつこのモデルは、オートマチック動作の快適さを安心して味わえる特長がある。

マランツ Model 150

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 マランツのFMチューナーは、管球型の超高級機モデル10B以来、そのトップモデルにはスコープディスプレイを備えることがルールであるが、現在のモデル150もその伝統を受継いでいる。チューナーとスコープは、実際に使ってみないとわからない魅力的なペアであり、一度使うと手放せない存在にすらなる。

ラックス T-110

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 フラットで薄型のコントロールアンプが多くあるため、いずれペアとなる薄型のチューナーが登場すると予想されるが、FMチューナー単体として、フラットな製品を開発したのは、このモデルが最初であろう。チューナーをプレーヤーシステムと同じプログラムソースと考えれば、このモデルのもつ外形寸法は、プレーヤーの下側に重ねて置くのに好適であり、スペースファクターが優れていることは、実用上のメリットである。

ヤマハ CT-1000

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヤマハのトップモデルとして十分な実力を持ったCA−2000、それにより完成度を高めたCA−1000IIIのペアとなるチューナーである。価格と比較して、内容、外観、仕上げなどは、はるかに高級機のランクにあり、現在のFM放送のクォリティを考えれば、特別の例を除き必要にして十分以上の性能を持っている。

サンスイ TU-707

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 シリーズ製品として甲乙がつけがたい個性的なプリメインアンプ、AU−607707のペアとなるチューナーである。とかく、類型的になりやすいチューナーのなかでは、幅広くとったダイアル面の白に近い淡黄色とブラックフェイスのパネルとのコントラストがクッキリとつき、このユニークさが、かなり楽しい。

サンスイ BA-2000

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 サンスイのセパレート型アンプのなかでは、最新のモデルであるだけにデザイン的にもシャープさがあり、比較的にコンパクトにまとまっているのが魅力だ。音の性質もパワフルに推し出すタイプの上級機種とは全く異なった、応答性の速さとステレオフォニックな音場感を広く聴かせる新鮮さがある。

デンオン POA-1001

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 マランツがソリッドステートパワーアンプの初期に採用した、2台のパワーアンプを機械的に結合してステレオアンプとする独得の発想が、現在のマランツよりもデンオンに受け継がれているのが大変に興味深い点である。パフォーマンスは、100W+100Wであり、量よりも質を優先する本来の意味でのセパレート型アンプらしさが感じられ、管球型POA−1000Bゆずりのレスポンスが速い出力計の支持は小気味よい。

ラックス MB3045

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオ用に新しく開発した出力管とドライバー管を採用しているのが、このMB3045の最大の魅力であろう。モノーラル構成のパワーアンプには、ダイナコMKVIがあるが、三極管でそれに匹敵するパワーを得ているのは、現在でも、過去でも、この製品の他に例はないはずである。いわゆる管球アンプらしい音よりは、パワフルであるだけに、マッシブであり、最新のディスクの利点を十分に聴かせるだけの性能がある。

マランツ Model 510M

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 250W+250Wのパフォーマンスを、かなりコンパクトな寸法にまとめたマランツの第二世代のハイパワーアンプである。コンストラクションは、外観から受ける印象を完全に覆す見事さであり、電源部は、ハイパワーアンプらしい底力が感じられる。標準アンプ的に使えるマランツの伝統をもつ音は信頼度が高い。

ラックス 5M21

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 まったくのイメージチェンジをした、シンプルで機能的なデザインに装いを変えた、ラックスのラボラトリー・リファレンスシリーズのパワーアンプである。歪み感がない滑らかでナチュラルな音は、従来とは一線を画したダイナミックな表現を可能としているが、そこにラックスらしさが残っているのが好ましい。

サンスイ CA-2000

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 セパレート型アンプは、本来はコントロールアンプ、パワーアンプともに、完全に独立した存在であり、汎用性があるべきではあるが、実際には、ペアとなるべきそれぞれの組合せで最高のパフォーマンスを示すことのほうが好ましい。このモデルも、BA−2000とのペアで現代アンプらしさが発揮できる。

ラックス 5C50

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックス新しいラボラトリー・リファレンスシリーズのコントロールアンプであり、シリーズの名称が示すように、最新の技術動向を反映して、アンプ系のDCアンプが全面的に採用されている点に特長がある。ペアとなるパワーアンプもDCアンプであるために、入力に直流分が混入しているとスピーカーを破壊しかねないため、完全な保護回路と表示ランプを備えているのは、実用上での大きな利点である。

AGI Model 511

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 パネルフェイスは流行の薄型ではないが、機能は単純化され、トーンコントロール、フィルターはもたない。増幅系は整然としたプリントボード上に配置され、視覚的にも美しく、見るからに現代アンプらしい応答性の速い音がしそうな雰囲気が感じられる。ともかく、ダイレクトなサウンドは大変に快適である。

ヤマハ CA-X11

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 CA−X1をベースとし、より上級モデルのCA−R1的な蛍光を採り入れて改良されたプリメインアンプである。機能面でも、より一段と充実し、性能面でも、ほぼ1ランク上の製品となっている。レスポンスがフラットで伸びやかとなり、音の粒子が細かく、より緻密になったため、普及価格の高級機といえる機種だ。

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