2009年7月アーカイブ

ラックス 5L15

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックスのプリメインアンプには、高級機としてSQ38FD/II、L−309V、そしてこの5L15のいわば新旧三世代のモデルが共存していることが大変に興味深く、オーディオの趣味性を強く捕える、いかにもラックスらしさがある。それにしても5L15は、ラックス育ちの現代っ子の音がするようだ。

デンオン PMA-700Z

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 最新技術内容を誇るプリメインアンプが数多く登場しているなかにあって、このモデルはすでに旧製品となったように思われるが、ゆったりと余裕があり、陰影の色濃い音を聴くと、何故かホッとした感じになるのが面白い。やはり、ある程度以上の完成度があるアンプは、時代を超越した独特な魅力があるようだ。

ヤマハ CA-1000III

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 CA−1000以来、すでに三代目になっているだけに、音もやや神経質な面があったCA−1000から、よりダイナミックなCA−1000IIを経て、現在の洗練された風格がある音に変わっている。整然と緻密な音を聴かせるこのモデルの音は、スケールも十分にあり高級スピーカーを余裕をもって駆動する。

ビクター JA-S75

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 同じビクターのプリメインアンプであるJA−S41と比較するとより新しく、上級モデルであるだけに、音の新鮮さより、むしろ洗練された完成度の高さと、しなやかさが感じられるようになっている。しかし、音楽に対する働きかけは、ビクターの製品らしくアクティブであり活気にとんでいるのはもちろんだ。

ヤマハ CA-R1

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 CA−2000/1000IIIを特別クラスとすれば、このモデルは事実上のヤマハのプリメインアンプの中心機種である。アンプとしての性格は、当然、一連のヤマハ製品らしさを備えているが、厳しく音を整理して端正に聴かせる上級モデルよりは、より開放感があり、おだやかさがあり、幅広い支持が得られよう。

ビクター JA-S41

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 現在のプリメインアンプでは、もっとも需要が多い価格帯に置かれたモデルだけに、単なる周波数レスポンスの拡大という方向ではなく、巧みに聴感上のレスポンスをコントロールして、アクティブに音楽を楽しむ方向でまとめてあるのは大変に好ましい。とくに、楽器らしさを感じさせる低音は気持よく聴ける。

マランツ Model 1250

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 セパレート型アンプに匹敵する性能をベースとしたこのモデルの音は、これぞマランツの音であり、大人の音である。2台のデッキを駆使できる独特のファンクション、マイクジャックなど、実用性が高い機能は、音楽を聴くということからよりアクティブに音楽を楽しむ方向で、はじめて魅力として生きてくる。

マランツ Model 1150MKII

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 マークIIに改良されてから、このモデルは、おだやかでバランスが良い音から鋭角的で反応が速く、彫りの深い緻密さのある音に大幅にグレイドアップされたように感じる。それだけに、音楽を聴くこと自体がかなりアクティブな方向に変わり、聴くというよりは、よりリアルに、より楽しめるようになった。

トリオ KA-7700D

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 プリメインアンプに左右チャンネル独立2電源方式とDCアンプ構成を最初に導入したトリオ製品のなかでは、新しいモデルだけに、その完成度の高さの点では上級モデルをしのぐものがある。とかくDCアンプ構成では、音が柔らかくなりやすいが、このモデルの直線的な音の表現はユニークとも思われる。

パイオニア SA-8900II

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 8000シリーズは、IIとなって完全に内容、外観とも一新されて、もっとも現代的なプリメインアンプとなった。左右チャンネル独立型の電源の採用をはじめ、上級シリーズである9000シリーズの面影のあるパネルフェイスなどがあり、音を含めても、このモデルのバランスの良さはトップランクにある。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ピカリングは、1946年にニューヨークでノーマン・ピカリング氏が創立したカートリッジメーカーで、独自のマグネティック型発電方式で注目された。'58年にはそのステレオ版を発表し、その後、ダスタマティック・ブラシとアース付スタイラスアッセンブリーを開発。そしてMM型、MI型(可動鉄芯・マグネティック型)を加え、'73年には超高域再生特性が要求されるCD4用4チャンネルカートリッジを海外ではじめて発売するだけの、高度な針先形状と振動系などの技術を備えていたことで注目集めた。
 この成果により、針先形状の研究と振動系の軽量化、発電方式の新構造化が一段と図られ、以後の広帯域型への発展のベースとなった。
 注目したいことは、ターンテーブルの軸受部にドーナッツ型磁石を設け、この反発作用でターンテーブルをフローティングするジャイロポイズ方式の開発だ。これが'76年発売のプレーヤーシステムFA145Jに採用された。この発展型が国産のマグネフロートである。
 トーンアーム関係では、アーム支持部に水平回転軸のみを設け、先端部に上下方向にスイングするカートリッジ取付け部をもつユニークなタイプを開発。これはピカリング型と呼ばれ、LP時代にはオイルダンプ型と人気を二分する存在であったことを懐かしく思い出されるファンも少なくないだろう。独自のMI型ともども、国内にコピー・ピカリングが出現したことを考えても、同社技術の影響力は大きい。
 625E−S2は、同社の伝統を最も色濃く継承するMI型で、S2はヘッドシェル付。滑らかでウォームなサウンドはアメリカンポップスなどに最適。
 625DJは、デリケートな扱いが要求されるカートリッジを、強く逞しく、ノンブレーカブルに変身させた個性派。重針圧、耐逆回転性、蛍光ポイント付針先、針先保護Vガードと装備は抜群。
 150DJは出力8mV、円錐針、2〜4gの重針圧、信頼性と経済性の両面から、DJから最も信頼されている定番モデル。ジュークボックスでの成果の反映か。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ハーマンカードンは、1952年創立のオーディオメーカーだが、'60年初頭に発売された同社のトップモデルで構成するサイテーション・シリーズで、一躍当時のステイタスモデルとして最高の評価が与えられ、国内でもマランツ、マッキントッシュに次ぐ高級機として評価された。この記念すべき製品が、サイテーション1/3プリアンプと2/4パワーアンプだ。当然、管球式の凝った設計の製品で、程よくソリッドで明解な音は、こだわりのないストレートさが魅力で、マランツにもマッキントッシュにもない独特の味わいだった。
 ソリッドステート時代になると、早くから半導体化が試みられ、サイテーションAプリアンプとBパワーアンプがソリッドステート時代の頂点に位置づけされるアンプとして開発され、後にキットフォーム化されたような記憶がある。
 その後、米国企業によくあるように経営面で紆余曲折があったが、'80年代初頭に動的歪みをテーマとして、過剰なNFは音質を害すると提唱したマッティ・オタラ氏が設計したパワーアンプ、サイテーションXXで高級市場に復活を果した。この製品の開発は、当時の新白砂電気で行なわれ、続いてXXP、XIIプリアンプ、XIパワーアンプがマッティ・オタラ氏の手を離れて発売された。
 超高級機ではないが、サイテーションの名は現在でも使われており、現在はホームTHX、ドルビー・プロロジックに加え、独自のAVサラウンドシステムを提唱している。これは、後方に独自のデュアルドライブ・ダイポール・サラウンド・スピーカーを設置し、これをサラウンドロジック・プロセッサーで制御することで、後方中央にファンタム・リアセンター・チャンネルを設け、後方/左/右の3チャンネルと、前方の3チャンネルの合計6本の音軸をもつ、ジム・フォスゲート氏が提唱する6音軸ステアリング方式を特徴とするシステムが、サイテーション7000である。

ボルダー 2010, 2020

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 今秋、従来のシリーズには隔絶したような超高級機がボルダーから登場。これは驚異的だ。
 2000シリーズと名づけられたこの新シリーズは、プリアンプ2010とD/Aコンバーター2020の2モデルで、基本構想は、リモートコントロールの全面的採用、左右チャンネルの完全独立化とコントロール/表示系の独立、3系統の電源部を内蔵した別筐体電源部による相互干渉の低減である。表示部とコントローラーのあるフロントパネルには、LED表示が採用されている。筐体上部には、左右チャンネルが独立した強固なハウジングがあり、背面からアンプ、DACをプラグイン固定する構造だ。
 注目は、DACも左右独立に専用ハウジングに収納されていることだ。シャーシ電位的には同一筐体であるため各部は共通だが、究極の左右チャンネル間干渉を避ける設計、とボルダーでは自信をこめて言っている。詳細は省くが、とにかく物凄い構想の超高価格機である。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 プリアンプでは、業務用的構想で入力セレクター部、アンプ部、電源部など各ブロックを独立した筐体に収めた ULTIMATE3、コンシューマー用に新設計されたL3AE、フォノEQを除いたL3AESがある。2番と3番ピンの極性切替付のバランス入力とバランス出力を備え、多彩な暗譜と組合せ使用が可能なことは使いやすく、またナチュラルで色づけのない音は、信頼感があり好ましい。

ボルダー 102AE

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 102AEパワーアンプは、同社発の薄型筐体採用のステレオ専用機で、102Mの原型モデルである。100W+100W/8Ωの定格ではあるが、スピーカー駆動能力は十分に高く、業務用としての利用は多いようだ。

ボルダー 500AE

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 500AEは、500Mのベースとなったモデルで、外装が異なるように、定格値は同じだが傾向はよりネイティヴで業務用機器的な、こだわりがなく伸び伸びと音楽を鳴らす歌い方では、このモデルの方が魅力的だ。

ボルダー 500M

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 500Mは、基本となる500から左右独立レベル調整、出力表示インジケーターを外した、純オーディオ仕様の500AEの、外装デザインを大幅に変更した同社のトップモデルだ。
 150W+150W/8Ω、BTL接続時500W/8Ωの定格をもち、業務用での高信頼度を活かした保護回路が完備された点は、とかく故障発生率の高い海外パワーアンプとしては異例のスタビリティを誇っている。また簡潔な内部配置で素早い修復ができるようになっていることにも注目したい。
 スピーカー駆動能力は、定格パワー値から予想するよりも十分に強力なものがある。無理にfレンジを欲張らず、ダイナミックな再生能力が感じられる音は、このモデルならではのおおらかさがあり、独特の味わいである。
 Mシリーズになり、業務用機器的な性質が薄らぎ、ディテールの再生能力や、聴感上でのSN比が向上し、本質的な回路構成のメリットが音として聴かれるのが本機の魅力だ。

ボルダー

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボルダーは、米国中西部ロッキー山脈の裾野に位置するコロラド州の都市の名称で、この地に生まれたジェフリー・P・ネルソン氏により、1984年にアンプメーカーとして創業されたが、活動開始は'82年ということだ。
 彼は、'72年に映画関係の音響部門に関連した事業として、自作のアンプなどを使ってレコーディングスタジオの経営をはじめ、'78年にはサンディエゴのパシフィック&エンジニアリング社で、マイクロプロセッサー制御の放送用NAB型カートリッジレコーダー用アンプ回路の開発に従事し、プロ機器に使われている回路をベースにした各種アンプの開発を行なっている。
 ボルダーとしての第一作が、160W+160Wのボルダー160で、'84年には高出力化、高信頼度保護回路採用のボルダー500に発展した。
 映画関係の音響出身であるだけに、細部にこだわらず、音楽の構図を大きく、外側から捉えた音とデザインはかなり個性的である。

BOSE 214, 314

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 新製品の214は、左右スピーカーの内側前面に、音響心理学に基づく独自のレイアウトしたステレオ・ターゲティング・トゥイーターを取り付け、広い範囲で正しいステレオイメージが得られるようにしたシステムだ。314は、214に加えて、後方側面にコンサートホールの空間を再現する為の7・5cmダイレクト・リフレクティング・トゥイーターをマウントすることで、間接音成分を増やすとともに、シャープな音像定位をも実現させる新技術が導入された、いかにもボーズらしい新製品だ。

BOSE 101MM

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 101MMは、'82年の誕生以来のロングセラーを誇る、ぺー図小型高性能スピーカー原点と考えられるモデルだ。901系の11・5cm全域型は、人間の可聴周波数帯域をカバーする最小のサイズとして決定された口径だ。ボイスコイルボビンはアルミ材で、その表面は特殊表面処理により絶縁されている。ボイスコイルには、縦横比4:1の四角断面をもつ米国特許のヘリカルボイスコイルを採用。磁気ギャップ内の磁気エネルギーの利用率が非常に高く、放熱効果も優れており、独自開発の高耐性接着剤のバックアップもあって、フルレンジの常識を破る強大なダイナミックレンジを実現している。また、国内特許が認められたLCRを組み合わせたパッシヴEQは、スムーズなfレンジを確保している。
 101MMは、業務用途に多用されているため、製品間のバラツキは極度に少ない。たとえば数年前のユニットと現在のユニット間でも、音質的な相違は皆無に等しいそうだ。また、各種アクセサリー類も完備しており、自由に屋外も含めた自由空間でオーディオを楽しめるパートナーとして、仕様の異なる101MMG/VM/SDVMなどとともにアクティヴに楽しめるシステムだ。

BOSE 121WB, 121

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 121WBは、WBシリーズの第一作としてすでに定評の高いモデルだ。モデルナンバー末尾にVが付くモデルはタテ型仕様で、化粧板の位置が異なる。
 121は、高域ユニットとアクースティマス方式の低域が組み込まれた242システムと組み合わせれば、121+242=363のように、363システムにステップアップすることも可能だ。
 また、マイカ混入型の新しいコーンを採用したことで、明解さが加わり、反応が一段とシャープになった。リジッドなエンクロージュアと独自のエアロフレアポートの低域再生能力が相乗効果的に働き、スピーカーの存在感をあまり意識させずに、想像を超えた低域再生能力が楽しめる、ボーズならではの意外性もすごく魅力的である。

BOSE 901SS

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 外観や仕上げに家具調を求めなければ、業務用901とでも表現できる901SSをおすすめしたい。これは、両サイドに独自の角度可変型ウィングを備えており、しかも8個のユニット側を前面として使うサルーン・スペクトラム方式と、逆向きにしたダイレクト/リフレクティング方式との使い分けも可能だ。ライヴネスは、ウィングの角度調整により、かなりの幅でコントロール可能という、901WBにはないユティリティの広さが特徴だ。また、強固なエンクロージュアによるソリッドに引き締まった、分解能の高いシャープな音は、これならではの魅力である。

BOSE 901WB

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 現在の901WBは、ウェストボロウ・シリーズの表面仕上げと細部のデザインのマイナーチェンジが施されたモデルで、専用スタンドPS9が別売で用意される。エンクロージュアは、比重が大きく硬度の高いMDF材が新しく採用され、響きが明るく、音の分解能が向上して、全域型独自の生き生きとした表現力豊かな音が楽しめるようになった。外形上は小型なシステムであるが、11・5cmユニット9個の振動板面積の合計は、34・5cm全域型ユニット1個分相当になり、想像以上の空気駆動能力を備えていることがわかるであろう。
 901に好適なリスニングルームは、程よくライヴで響きの美しい部屋が好ましい。そして聴取位置に対しての角度調整や、床からの高さ、両方のスピーカーの間隔などを調整し、最も響きが自然になる設置位置を決めてから、アクティヴEQをプリアンプのテープ系か、外部アクセサリー端子に入れて、サウンドバランスを調整すればよい。セパレート型アンプを使用する場合は、プリアンプとパワーアンプ間に入れる使用方法と聴き比べてみるとよいだろう。
 901WBの発展した使用方法として、小型高密度な特徴を活かして2段重ねにスタック設置にして使うと、一段と豊かなプレゼンスを余裕タップリに楽しむことができるだろう。

BOSE 901 Series

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボーズのフラッグシップモデルとして良い伝統を誇り、同社を代表するモデルが901シリーズである。コンサートホールでの直接音と間接音の比率は、数多くのホールで測定したデータからすると、直接音1に対して間接音が8の比率になることから、リスニングルームでコンサートホールの雰囲気を再現するために、前面に1個、背面に角度を付けて4個1組が2組の計8個をセットした独自のユニット配置法を採用。しかも、そ全ユニットには、ボーズで全域型に最適な口径と決定された11・5cmタイプを採用していることが特徴だ。また、自然な周波数特性を実現するために専用アクティヴEQが付属しており、低域から高域にかけての位相特性、周波数特性をスムーズなものとし、システム全体で見事な音場再生を可能としている。

BOSE

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボーズのスピーカーシステムはすべてDr.ボーズのユニークな音響理論に基づいて開発されている。その主なものはまず、ダイレクト/リフレクティング理論で、よい音には3要素があり、一つは全周波数のエネルギーバランス、二つめはどの方向からどれだけのエネルギーが来るかの空間的アスペクト、三つめは音源から出た音のエネルギーが聴取者に届くまでの時間である。この3要素をスペクトラル、スペイシャル、テンポラルと呼び、これらが家庭内でどこまで再現できるが、実際の演奏会場での音に近い再生ができるかどうかの鍵になり、そのために、直接音と間接音を調整し複雑に混合することで、自然なエネルギーバランスと方向性を作りだそうというわけだ。つまり、スピーカーの放射パターンを拡散させて間接音成分を増し、自然な音色と立体感を感じさせているわけである。
 次はステレオ・エブリウェア理論。これは、正しいステレオイメージを広範囲な聴取位置で得られるようにするための理論で、最初に到達する音よりも、後から到達する音を大きくしてマスキングさせようという考え方。ボーズではこのため、スピーカーユニットに特定の角度を付けて音響エネルギーと方向性をコントロールし、広いサービスエリアを実現している。
 アクースティマス方式は、小型エンクロージュアで強力な低域再生能力を獲得するボーズ独自の技術だ。共振と共鳴を利用し、低歪みで高いダイナミックレンジが得られる方式で、構造上、方向性を感じさせる高域輻射がなく、設置位置を選ばせない特徴は大きい。
 アコースティック・ウェイヴ・ガイド方式は、長大なチューブの内部に低域ユニットを取り付け、その前後両面に放射されるエネルギーを利用して、共振点の異なる2本のチューブ中の空気を共振させ、3オクターブもの広い帯域の重低音再生を可能とするものだ。
 それぞれの方式論は、米国特許が認められており、ボーズ製品に幅広く活用されている。

AR AR-310HO

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 最新作HOシリーズは、ハイアウトプットを意味する高能率型で、旧インフィニティのケアリー・クリスティ氏が独立した会社でARのために開発した、クリスティ・デザインの叡知を結集した力作で、細部に独自の音響処理が施された最先端技術の成果ともいえる傑作。キメ細かな音とダイナミックな音を巧みにミックスしたサウンドは、さすがに名手の手腕が光る印象だ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 AR303aは、AR3aの現代版。平均的な密閉箱となり低域は明るく、独特なソフトドーム型ならではの中・高域は素直。AR218Vは小型2ウェイ型で、フレッシュな鳴り方が魅力。AR338は、20cm3ウェイ型で非常に魅力的な好製品だ。スペクトラルEQのモデル6は、マーク・レビンソン氏が参加した開発だけに調整能力は非常に高く、任意にサウンドコントロールできるEQとして特筆に値するモデルだ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 プリアンプのモデル2、パワーアンプのモデル200も、リミテッド・シリーズの製品。素直な音のアンプで個性的な面が少ないが、内容は十分に濃く、安心して使えるスタビリティの高さと高級機ならではの陥落が音として聴かれるのは、さすがである。

AR Limited Model 3

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 リミテッド・モデル3は、マーク・レビンソンやジョージ・セクエラの両氏らが参加して開発されたARのリミテッド・シリーズのスピーカーシステムだ。静電型SPの魅力をダイナミックがたで具現化する構想は、そのデザインにも表われている。低域エンクロージュア上部の、2個のドーム型間に高域を配したレイアウト浅いよう。前面はパンチングメタルで覆われ、音の拡散に使われる。ナチュラルで、キメ細かく豊かな音は雰囲気が良く、音楽ファンには好適だ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 現在、ブックシェルフ型と呼ばれているスピーカーシステムはかなり幅広い範囲で使われているが、これは本棚に横位置で収納できる程度の小型エンクロージュアで、フロアー型に勝るとも劣らぬ低域再生能力を持たせることに成功した、米ARの創始者エドガー・M・ヴィルチュア氏の発明による、AR1をその最初の製品としたアコースティック・エアーサスペンション方式が原点である。
 小型エンクロージュアに、低域共振を可聴周波数以下にしたユニットを組み込み、小型ユニットで優れた低域再生能力を持たせようとする発想は、AR以前に東京工大の西巻氏により提唱され、細い木綿糸などで振動系を支持する糸吊りサスペンションが、一時期国内のアマチュア間で盛んに行われたことがある。これを30cm級のウーファーを使い、コーン振幅が大きくなる分だけ、磁気回路のプレート厚の2〜3倍の巻幅をもつロングボイスコイルと、それに対応するエッジ、スパイダーを組み合わせ、完全に気密構造のエンクロージュアに密閉して、内部の空気そのものを振動系のサスペンションとする方式が、ARの特徴だ。
 幅広ボイスコイル採用だけに能率は激減し、この低下に見合う強力なアンプが必要となる。時代は折よく半導体アンプの登場期で、真空管と比べ圧倒的にハイパワーが低価格で可能となったことがこの方式の確立に大きく寄与している。
 ARの代表作は64年発売の30cm3ウェイ機のAR3aで、20cm2ウェイ機AR4x,25cm3ウェイ機AR5などがラインナップされ、独自な形態のAR−LSTがその頂点に立つシステムであった。約30年の歳月が経過し、ARはこれも超高級スピーカーで高名なジェンセン・グループに属しているが、AR3aの復刻版が限定発売され、再びハイファイマーケットで、かつての名声が復活しつつある。

シナノ HSR-1000, HSR-510

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 電源重視設計は、アンプ関係では普及クラスのモデルでも音質に直接関係をもつだけに、常に論議されるところだ。
 しかし電源とは、アンプやCDプレーヤーなどの電源部も同じ表現で使われているが、その根源は電力会社から供給されている100V・50Hz/60Hzの商用電源である。これはわかっていても、意外に意識にはないのが実状であろう。
 古くから近くに柱上トランスがあるかないかで、基本的な音質が決定されることを知っている人は多い。だが最近のように、各家庭にパソコンが導入され、TV/オーディオ機器自体からの高周波ノイズ、インバーター方式の多用、電話などのプラグイン型電源、家電製品のマイコン制御、さらにTV電波など、数限りない電源劣化の要因が存在すると、電源の汚染によるオーディオの音質劣化は救いがたい状況にあるようだ。
 この電源を、歪みの少ない本来のサインウェイブとして使う機器が市販されている。信濃電気のハイパー・サインレギュレーター方式も、理想のピュア電源化を実現する製品だ。
 同社の方式はIWC方式と呼ばれ、ROMに基準となる理想的正弦波を記憶させ、1秒間に50Hzで5万1200回、60Hzで6マン1440回、出力電圧を瞬時に管理し、過渡変化に確実に対応可能な点が画期的といわれている。
 HSR1000と1000Sは、定格容量1kVAで、後者は200V電源から入力可能なタイプである。電源周波数は50Hz/60Hzが切替可能。複数台の同期運転も、光ケーブルでかうというユティリティの広さが魅力だ。
 HSR510は、定格500VAのコンパクトなモデルで、コンセント数4個、瞬時には15Aの電源供給能力を備え、小型のセパレートアンプまでならアナログ系統に使える電源だ。音の細部にこだわり、鮮明に表情豊かな音楽を楽しみたいときに、まず第一に考えたいピュア電源システムである。

パイオニア SA-8800II

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 パイオニアのプリメインアンプのなかでは、8000シリーズがもっとも大きなウェイトをもつ存在であり、性能、機能、音質、デザインなど、どのポイントをとってみても、もっとも多くの市場の要求に十分に満足のいく解答が得られることに最大のメリットがある。このモデルは、万人が望む汎用性が魅力である。

デンオン PMA-501

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーソドックスであり、やや保守的な路線を進んでいたデンオンのプリメインアンプは、要求に答えてか、このモデルの登場により、かなり今日的な姿に衣がえしたようである。このモデルは、質と量のバランス点を保ちながら、カートリッジのクロストークをキャンセルする機能をも備えているのがユニークだ。

ビクター SX-55

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 中級機の価格帯では、今やユニークな存在である完全密閉型エンクロージュア採用の、オーソドックスな3ウェイシステムである。新製品らしく音色は明るく、クリアーであり、低域の量感は密閉型ならではの厚みがある。SX−3以来のキャリアを活かした、いわば伝統的な利点がよくあらわれたシステムだ。

サンスイ SP-L150

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 Lシリーズ中では、中間位置にあるシステムである。性質は、シリーズ3モデル中ではもっともマイルドで、潜在的なクォリティの高さがトータルの音を支持しているような大人っぽさが特長である。音色は明るく、適度に厚みがありニューミュージックからクラシックにいたる幅広いジャンルに反応を示す。

パイオニア CS-616

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 2ウェイ型のCS−516と、3ウェイ型のこのCS−616の、いずれを選ぶかとなると、一般的には聴感上のバランス感からCS−516が選ばれるだろう。しかし、中域のレベルを少し下げたときのCS−616は、さすがに3ウェイらしく、中域が充実し、明らかに1ランク上の音を聴かせる。

ダイヤトーン DIATONE F1

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 思い切りのよい独特なデザインを採用したスピーカーシステムである。しかし、構成面はオーソドックスなコーン型ユニットを使う2ウェイ方式であり、高能率なシステムである。音色は明るく伸びやかであり、スケールも十分にある。とくに、しなやかで反応が速いトゥイーターは、見事な音を聴かせてくれる。

パイオニア CS-516

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のパイオニアのサウンドイメージを完全に覆した新鮮な音をもつ製品である。表現は線がシャープで鋭角的であり、細部にこだわらず、割り切ったストレートさは、いわば未完成な爽やかさである。オーディオは、とかく密室的になりやすいが、このシステムの明るい外向性の音は、健康そのものである。

ヤマハ NS-L225

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 3ウェイ構成のNS−L325を2ウェイ構成としたシステムだが、トゥイーターはコーン型とドーム型の特徴を備えた、やや特殊なユニットに変更されている。低域は量感が豊かであり、高域もクリアーで、音の鮮度はL325に勝り、滑らかでよくコントロールされた帯域バランスが、この製品の特長である。
井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 小口径メタルコーンと独特なワイヤー支持による振動板をモジュールとしてまとめた全域型ユニットは、現在でもひときわ輝く存在である。システム中で最も小型のこのジャンボは、モジュールのシンプルでユニフォームな音の魅力を聴くのに最適であり、オーラトーン的にも使える十分な性能を備えている。

JBL 4430, 4435

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART2」より

 4435は、安定感があり、適度にソリッドな質感を聴かせる低域をべースに、スムーズなクロスオーバーポイントのつながりを示す。エネルギー感がある中域と、シャープで張りつめた粒立ちをもつわずかに硬質な高域が、ほぼフラットなレスポンスを形成する帯域バランスをもち、明るく輝かしい音色が新鮮な印象である。
 低域は適度にソリッドさがあると前述したが、初期の4343のような重いゴリッとしたタイプではなく、低域の直接音成分のバランスがよく、アコースティックな楽器固有の質感も、エレキ楽器のやや無機的だがパルス成分が多く鋭い立上がりをもつエネルギッシュな特長をも、比較的ストレートに聴かせる。このあたりは、スタガー使用の片側のウーファーに100Hz以上をカットするフィルターが組み込まれているために、2本のウーファー間で適度な位相差が生じ、それが効果的に作用しているのかもしれない。
 中域はエネルギー感が充分にあるが、このタイプにありがちの固有音を伴った誇張感が少なく、音像をクリアーに輪郭をはっきりつけて聴かせる。高域はやや硬質の粒立ちを感じさせるタイプで、レスポンス的には聴感上で不足はなく、低域再生能力と巧みにバランスをとっているJBLのチューニング技術はさすがに見事なものだ。
 ただ細かく聴き込めば、国内製品に多い超高域にまでレスポンスが伸びた独特の雰囲気をもつプレゼンス感がないのがわかる。しかしこの差は、例えばMC型カートリッジの昇圧方法に、トランスを使うかヘッドアンプを使うかの違いに似ており、特別の場合を除いて問題にはなるまい。
 新開発のバイ・ラジアルホーンは、計測データが示すように、水平方向はもとより、スピーカーシステム共通の問題点である垂直方向の指向性パターンが優れているようで、システムの前で上下方向に耳を移動させてチェックしても、システムとしての帯域バランスがクリチカルに変わらず、ホーン開口部の下側あたりにブロードな最適聴取ゾーンがある様子だ。したがって、この最適ゾーンと耳の高さが同じになるように、実際の使用にあたっては、スピーカーとリスナーの相対的な位置関係を整える必要があるだろう。このあたりは、3ウェイ構成程度のやや大型のブックシェルフ型などで、縦方向にユニットが一直線上に配置されている場合でも、上下方向の指向性パターンが乱れがちで、最適聴取位置がスコーカーとウーファーの中間あたりの予想外に低い位置にまとまる例が多い。それに比べて4430/4435では、バイ・ラジアルホーンの特長をフルにいかして、ユニット配置とネットワークを設定した、いかにもモニターシステムらしい特性の見事さといってよいだろう。
 4435の音は、基本的には、4345に始まるスムーズで細やかな傾向があらわれだしたサウンドとは明らかに異なり、シャーブで解像力が高く、適度にリアリティがある輝かしいスタジオモニターの新しいサウンドが特長である。4435をコンシュマー用として考えても、この特長が魅力につながるだろうし、充分にコントローラブルな音である点も、使いこなしの上でメリットになるだろう。また、一般家庭用としては、ローボーイ型のプロポーションもメリットのひとつといえるだろう。

JBL 4344

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART2」より

 4344は、基本的にはワイドレンジ型のシステムであるが、各ユニットは、振動板材料の違いからくる質感的な違和感を感じさせずにスムースにつながっている。極端なワイドレンジ型というよりは、あくまでナチュラルな帯域、バランスが身上だ。以前の4ウェイシステムのシャープで鋭角的な解像力を特長とする明るさから、一段とこまやかで音楽のディテールを素直に聴かせる、フレキシブルな表現力をもつシステムに成長している。
 低域に関してこの4344は、このところ省エネルギー設計の打撃から立直りはじめた中級以上のプリメインアンプでも、比較的簡単にドライブでき、優れた低域再生能力を備えているといえるだろう。4343が登場した時点では、当時のアンプの低域ドライブ能力不足もあって、少なくとも200W+200Wクラス以上のパワーアンプを使わないと、低域のコントロールができなかった。その頃から比べると、4344の低域再生能力は隔世の感がある。
 アルニコ系磁石独特の軽くソリッドに引締まった低域の特長と、フェライト系磁石の豊かで低域から中低域にかけてスムースなエンベロープを聴かせる特長をあわせもつ低域が、この4344の開発の重要テーマだったと聞くが、ウーファーの改良と、エンクロージュアのチューニング技術の進歩で、実際にこのシステムを聴いた結果からも、この目的はほぼ達成されていると判断できる。
 4343は4ウェイ構成でありながら、予想より中低域の豊かさが少なく、ゴリッと重い低域と輝かしい中高域がバランスを保つ、個性的なバランスのスピーカーであった。これと比較すると、SFG磁気回路を深用した4343Bでは、解像力では4343に一歩譲るとしても、低域から中低域にかけての豊かでバランスのよいファンダメンタルトーンが新しい魅力となり、システムとしてのトータルなバランスは格段に向上したことが印象に新しい。4344では、新しいミッドバスユニット2122Hの受持帯域の高域側の特性と音質改善の効果と、エンクロージュアのチューニングの方向性の違いも相乗的に働いて、低域から中低域にかけてのリッチでクォリティの高い音のまとまりは、JBLの4ウェイシステムとしてトップランクのものだ。
 中高域から高域は、主にユニット関係の改善と、ネットワークのバックアップで、やや金属的な響きに偏ったダイレクトな表現から、音の粒子が一段と細かく滑らかな光沢をもつ、しなやかでスムースなタイプに発展している。
 したがって、4343をエネルギッシュで粗削りだが若々しい、爽やかでダイナミックな魅力とすれば、この4344は、それが熟成されて、まろやかな味わいがある一段と完成度の高い円熟した魅力を備えたということができる。それだけの深みがあるといえるだろう。
 全体の音の粒子が細かく滑らかなだけに、音場感的なプレゼンスは素直な遠近感を聴かせる。いわゆる「前に音が出る」JBLから、「奥行きのある」JBLへと、一段とリファインされたといえよう。

JBL 4430, 4435

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART2」より

 JBLは、4333、4350以来、モニターシステムにマルチウェイ化の方向を導入してきたが、昨年末、突如2ウェイ構成のスタジオモニターの新シリーズの製品を発表して、JBLファンを驚かせた。
 モニターシステムのマルチウェイ化は、たしかに、周波数レスポンス、指向周波数特性、歪率などの物理的特性を向上する目的にはたいへんオーソドックスな手法である。しかし、数多い構成ユニットをシステム化するにあたっては、バッフルボード上の配置からして問題になる。ユニットのレイアウトは、音響条件のみを優先してレイアウトしたとしても、4ウェイともなると発音源が散らばり、水平方向と垂直方向の指向周波数特性を均等に保つことは至難の技であり、モニターシステムに要求されるシャープな音像定位の確保が難しくなる。古典的モニターシステムの多くが、2ウェイ同軸型に代表されるユニット構造を採用しているのは、発音源が一点に近い利点をいかしたからだ。
 一方、現代のモニターシステムには、広い周波数帯域の確保や低歪率も重要な条件であり、最大音圧レベルを含み、この目的にはマルチウェイ化がもっとも妥当な解決策であるわけだ。
 JBLが〝43〟シリーズのモニターシステムで築いた技術を背景に、現代のモニターシステムに対する数多くの要求を完全に満たすものとして新しく開発されたのが、2ウェイ構成の〝44〟シリーズといえるだろう。
 再びモニターシステムの原点にかえって、新設計された44シリーズの最大の特長は、外観でも非常にユニークなハイフレケンシーユニット用のバイ・ラジアルホーンである。この新ホーンは、これまでの各種ホーンの欠点をほぼ完全に補ったもので、1kHzから16kHzにわたる広い周波数帯域で、水平と垂直の指向性パターンが一定し、ウーファーとのクロスオーバー周波数付近では、38cm口径のウーファーの指向性パターンと近似させるとともに、開口部の処理で第2次高調波歪が低減されているのが特長だ。簡単に考えれば、このバイ・ラジアルホーンが開発されて初めて、2ウェイ構成の新モニターシステムが完成されたといえよう。
 ユニット構成は、4430が38cmウーファーのオーソドックスなシングル使用の2ウェイ・2スピーカー。4435が、ダブルウーファーのスタガー使用の2ウェイ・3スピーカーである。4435で面白いのは、エンクロージュアキャビティは、それぞれのウーファーユニット専用で、ウーファーはエンクロージュア内部で音響的に隔離されている点である。
 使用ユニットは、両システムともに高域は共通である。コンプレッションドライバーには2421Aが採用されている。
 ウーファーユニットも一新された。4430には2235Hが1本、4435には、振動系は2235Hと同じだが、マスコントロールリングのない2234Hが2本使用されている。なお、4435の最初に輸入されたサンプル(編注=本誌No.61の新製品欄で紹介したもの)では、低域は2234Hと2235Hの異種ウーファーユニットの組合せであったが、正規のモデルは2234Hが2本に変更されている。
 44シリーズの電気的な特長は、クロスオーバーネットワークにある。現時点では回路、L・C・Rの定数的な使用方法は不明であるが、1kHzをクロスオーバー周波数とするハイパス側に、約3000Hzから高域に向かって6dB/オクターブでレスポンスが上昇する高域補強回路と、どの周波数で高域上昇を抑えるかを決める調整回路が組み込まれ、それぞれエンクロージュア前面のレベルコントロールで単独に調整できるようになっているものと思われる。
 ローパス側は、4430は標準的な使用法だが、4435では片側の2234Hは最低域専用で、100Hz以上はハイカットされるスタガー使用が特長である。
 4430のエンクロージュアは、サンプルシステムでは左右非対称型であったが、実際に輸入された製品では左右対称型に変わっている。4435も、前述のウーファーユニットの変更のほかに、バイ・ラジアルホーンの取り付け位置が変更されている。全体に、やや内側に移動され、その下側のウーファーユニットとほぼ一線上に並ぶように修正されている。このバイ・ラジアルホーンは、バッフルボードから開口部がかなり突き出しているが、これはドライバーユニットのダイヤフラム位置をウーファーのそれと合わせる目的によるものである。この手法は古くは、アルテックのA7システムで採用されているオーソドックスなタイプといえる。
 エンクロージュア型式はパイプダクトを使用するバスレフ型で、4430の内部構造の詳細は現時点では不明だが、4435はおおよその内部構造がわかっているので、イラストを参照されたい。
 4435のエンクロージュア内部構造の特徴は従来の4343、新4344と比較するとわかることだが、ウーファー上側に裏板とバッフル板を結ぶ前後補強棧が設けられていることだ。スピーカーシステムを開発する場合のエンクロージュアの一般的概念として、この種の補強棧を入れるということは、システムの中域エネルギーを必要とする場合に使うことが多い手法である。なお、吸音材は伝統的な25mm厚グラスウールで、1立方mあたりの重量が12kgのタイプが採用されている。
 44シリーズは、高域レスポンスが改善された2421Aと、指向特性のパターンが抜群に優れた新開発のバイ・ラジアルホーンにより、水平と垂直方向の指向性パターンを均一にするとともに、電気的に高域を補整し、エンクロージュア内部構造でクロスオーバー周波数付近のエネルギーを改善し、高耐入力ウーファーを組み合わせるといった正統派的な技術アプローチで開発されていることが特徴といえるだろう。

JBL 4344

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART2」より

 このところ、JBLでの新モニターシステムの開発テンポは、相当に早まっている模様である。一昨年、4343Bと4350Bの、ギャップを埋めるような印象をあたえた4345(4ウェイ構成で、JBLモニター初の46cmウーファー採用)を登場させて以来、約一年にして最新鋭の2ウェイ構成の4430/4435という2種類のモニターシステムを開発し、これにつづいてまたもや、〝43〟シリーズの新型4344が発表された。
 これらの製品開発を、モニターシステム創世期の4320以来の推移をも含めて考えてみると、いろいろと興味深いJBLモニターシステムの発展のプロセスがわかる。
 従来の〝43〟シリーズは、大別すると二つのグループに分けられる。一つは、スタジオモニターサイズの4320にはじまり、2ウェイもしくはそれの発展型である3ウェイ構成の4333Bにいたるグループ。もう一つは、前述の2〜3ウェイ構成とは構想の異なる、広帯域再生を目的としたグループで、具体的には4350を出発点とし、4341、4343、4343B、4345とつづく、マルチウェイ化の路線をゆく4ウェイ構成のモニターシステムがそれだ。
 この2グループは、同じ〝43〟シリーズの型番をもつモニターシステムとして統合されて発展してきたが、性格的にみればそこに明らかな相違がある。4320〜4333Bのグループは、録音スタジオの調整卓の両サイドに置いて検聴用に使われる、いわゆるスタジオモニターシステムである。それに対して、4350にはじまる4ウェイ構成のシステムは、検聴用というよりは、スタジオ内やホールなどで録音した内容をより多くの人々に聴かせる、いわばプレイバックモニターであるという違いがある。
 スタジオモニターとしての数多い実用例をべースとして、蓄積された技術とノウハウをもとに、最新の音響技術を長大限にいかして、モニターの原点にもどり、2ウェイ構成の新44シリーズが完成されたということは、JBLモニターの世代交替をつげるものであろう。事実、従来の43シリーズ中の3ウェイ構成を中心とするスタジオモニターサイズのシステムは、既に生産中止されている。これからはスタジオモニターの主力は、新〝44〟シリーズにバトンタッチされていくことになろうから、プレイバックモニター的な4ウェイ構成のシステムを〝43〟シリーズに残し、これも最新技術を導入した新モデルに順次置き換えなければならないことになる。つまり簡単に考えれば、いわゆるスタジオモニターは新〝44〟シリーズであり、プレイバックモニターのみを従来の43シリーズが受け継くといった考え方が基本的にJBLにあったのではないかと推察できる。
 現在再編成の時期を迎えている43シリーズの、4345に続く第2弾製品が、この4344である。
 4344は基本的な外形寸法こそ、最初の4343から変化はないが、スピーカーシステムとしては内容を一新した完全な新製品である。43シリーズ中の位置づけとしては、既発売の4345系の基本設計を受け継いでおり、4343Bの改良モデルというよりは、4345からの派生モデルということができる。
 4344のバッフルボード上のユニット配置は、4345を踏襲したレイアウトで、左右対称型のシンメトリー構成を採用している。4343で試みられたバッフルボードの2分割構造(中低域以上のユニットが取り付けられた部分のバッフルを90度回転して、横位置での使用を可能としている)は採用されず、完全にフロアー型としての使用を前提とした設計・開発方針がうかがえる。ちなみに、4343系と比較すると、ウーファー取り付け位置が上に移動し、バスレフダクトの位竃が大きく移動して、中低域ユニットの横となっている、という2点が大きな相違点だ。このユニット配置は、4343系のウーファーが、バッフルボードの下端に位置するため、実際の使用では床面の影響を受けやすく、使いこなしが難しかった点が改良されたことを意味する。
 エンクロージュア内部構造の相違も、4344が4343系とは完全に異なるシステムであることを物語るものだ。まず、中低域(ミッドバス)ユニット用の、バックキャビティの形状が全く違う。4343系では、バスレフポートとの相対関係から、奥行きが浅い構造であったが、4344ではほぼ四角形の奥行きが深い構造となり、補強棧を併用することで、バッフルと裏板にまたがって保持されている。
 また補強棧が多く使われていることも目立つ変化である。とくに、4343系と比較すれば、天板と底板に、横方向に大きな補強棧が使われているのが特徴である.、この補強棧の使用法は、低域の再生能力を改善する目的で使われる例が多く、国産のスピーカーシステムでは低域の改善方法として採用されている標準的な手法である。裏板の補強棧の使用法も4343系と大きく異なるが、エンクロージュア側板の補強棧が、横位置から縦位置に変更されていることも含み、エンクロージュアの鳴きを抑える方向ではなく、適度に響きの美しさをいかす方向のチューニングであることがわかる。これは、バッフルボードに約19mm厚の積層合板が採用されていることからも明らかなことである。積層合板がバッフル板に使用されたのは、正式に公表されたものとしては(筆者は以前JBLのエンクロージュアで、同じ型番のものでも、チップボードを使ったり、積層合板を使ったりしているものを見ている)、JBL初のことと思われる。
 ユニット関係は一新された。ウーファーは、従来の〝43〟シリーズで標準的に使用されてきた2231A、2231H系から、振動系を一新して、リニアリティの向上をはかり、2231Aで採用されたものと同様のマスコントロールリングをボイスコイルとコーン接合部に入れた2235H。中低域(ミッドバス)は、4345と同じコンベックス型センターキャップ付新コーン紙採用の2122H(従来の4343Bに使われていた2121Hのセンターキャップの形状はコーンケーヴ型という)。中高域のコンプレッションドライバーには、ダイヤフラムのエッジ構造が一新された2421Bが採用されている。2421Bで採用されたエッジ構造は、それまでの2420が、アルテック系のそれとは逆方向に切られたタンジェンシャルエッジであったのに対して、すでにパラゴン用の中域ドライバーとして採用されている376と同様な、JBLオリジナルの折紙構造のダイヤモンドエッジ付ダイヤフラムになった。2420系のコンプレッションドライバーにダイヤモンドエッジが採用されたのは、この2421Bが最初である。ホーンと音響レンズは4345、4343B等と同じ2307+2308の組合せだ。スーパートゥイーターは、4345の発表時に小改良を受けて高域特性がより向上したという、2405である。
 また、ネットワーク関係は、4345と同様に、プリント基板が採用されている。大容量コンデンサーに小容量フィルムコンデンサーを並列にする使用法や、アッテネーターのケースから磁性体を除いて歪を低減するなど、エンクロージュアとともに、技術的水準が非常に高い日本製品の長所が巧みに導入されていることが見い出せる。
 なお、既にユニット関係の資料で公表されていることだが、従来までの数多くのJBLスピーカーの使いこなしの上での盲点を記しておく。それは、JBLのユニットの端子は、赤が−(マイナス)、クロが+(プラス)であり、一般的なJISなどの観念からすれば、普通に接続すると逆位相で使っていることになる点だ。ここに、JBLサウンドの秘密の一端があるが、詳細は割愛する(どのくらい音が変わるかは、自分のスピーカーシステムの±の接続を左右とも逆にしてみれば確認できる。一度実験してみることをおすすめする)。

JBL 4341

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4ウェイ構成のモニターは、巨大な4350に始まり、4331、4333と同時期に、4341が登場する。4341は基本的には、4333に使用されたコンポーネントの3ウェイシステムに(ただし、ホーンは4331、4333で使われている2312より短かい2307に変わっているが)、25cm口径の2121ミッドバスユニットを加えた構成と考えられる。4ウェイ化にともない、エンクロージュアは同じバスレフ方式でも、台輪のついたフロアー型となっている。
 4341は、中期のモデルでは、ミッドバス用のバックチャンバー容積が増やされ、これが次のモデルの4343に受継がれるが、エンクロージュアの変更以外にユニット関係、クロスオーバー周波数の変更はなく、4350を除く、4ウェイ構成の原点がこの4341である。4341は、4ウェイシステムとしては──エンクロージュア面での制約もあり──予想よりも中低域の豊かさが少なく、レベルコントロールをフルに使って帯域バランスを調整する必要があるが、それでも4343と比較すると、スケール感が今一歩といった印象である。極言すれば、それは大人と子供の差、といった表現も可能なほどだ。しかし逆にいえば、ややスリムで、センシティブな印象が、このシステムの魅力であるといえないことはない。
 4341はその後、エンクロージュアに大幅な改良を受けて4343に発展し、ウーファーとミッドバスユニットにSFG磁気回路を採用した4343Bに至るが、これについては過去の本誌の記事に詳しいので、特に詳述しないでもよいだろう。この4343シリーズと4350、4350Bのギャップを埋めるモデルとして開発されたのが、46cmウーファー採用の4345であり、4345での成果を活かして、ウーファーを38cm口径としたものが、最新の4344である。
 一方、モニターシステムは、2ウェイ構成がスタンダードという声は、依然として根強くスタジオサイドには残っていた。この要求に答えて、従来にない新しいアプローチで開発された新シリーズが、4430、4435であり、従来の〝43〟シリーズの全てを一新した、まったくの新世代の2ウェイモニターの登場である。

JBL 4333B

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4333Aの黄金時代は約4年以⊥続くが、時代の影響が色々とJBLにも及んでくる。スタジオでの物凄いハイパワードライブの影響は、アルニコ磁石使用の磁気回路の減磁としてあらわれ、特にウーファーにおいてこの点が問題として指摘されるようになった。また資源的にも、時代の要求はフェライト磁石の採用を迫ることになる。
 これに対するJBLの回答が、1980年開発されたSFG回路である。SFG回路(シンメトリカル・フィールド・ジオメトリー)とは、フェライト磁石の減磁に強いメリットを生かし、磁気歪みを低減したJBL独自の磁気回路の名称である。
 SFG磁気回路を使う2231Hをウーファーに採用した新モデルが、4333Bである。4333Bの、フェライト系磁石を使う磁気回路独特の、厚みがあり、エネルギー感を内蔵した力強い低域には新鮮な印象を受けた。アルニコ系磁気回路では、重低音再生を指向すると、とかく、低域レスポンスがウネリがちで、低域から中低域にかけてのスムーズさを失いがちだが、SFG回路ではその点が問題なく、安定感のある豊かな低域エンベロープを聴かせる。これが4333Bの最大の特長であり、JBLモニターで最も周波数レスポンスがナチュラルな、完成度が非常に高い傑出した製品だ。

JBL 4333A

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 3ウェイ構成の最初の製品が、4333であることは、前述したが、本格的な3ウェイ構成らしい周波数レスポンスとエネルギーバランスを持つシステムは、4333Aが最初であろう。4333Aでは、エンクロージュア外観が変わり、バッフルボード上のユニット配置とバスレフダクト位置が大きく修正されるとともに、板厚もバッフル板を除き従来の約19mmから約25mmに増加している。
 使用ユニットは4333と変わらないが、エンクロージュアの強化により、重量感があるパワフルな低域をベースに、充実した中域とシャープに伸びた高域が、3ウェイ構成独特のほぼフラットな周波数レスポンスを聴かせ、システムとしての完成度は、ある意味で頂点に達した感がある。

JBL 4331A, 4331B

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4331以後、約二年弱経過して、エンクロージュアの改良を主として開発された4331Aが発表されるが、システムとしては、バランス上で高域が少し不足気味となり、3ウェイ構成が、新しいJBLモニターの標準となったことがうかがえる。
 その後、4331Aは、4331Bに変わるが、豊かな低音に比べ、高域が明らかに不足し、これは、2405を加え3ウェイ化する必要があるシステムといえるだろう。

JBL 4331

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

このシステムは、エンクロージュアのデザイン、使用材料の板厚などはほぼ4320、4325を受継いでいる。しかし、バッフルボード上のユニット配置関係の変更を受けている。つまり、3ウェイ化する場合の2405の位置が4320、4325時代とは異なり、ウーファー、ホーン、ドライバーと一直線上に配置されている。また、バスレフポートが2個から1個に変更された。ユニット関係も、音響レンズと2420ユニットを除き新型に置換えられている。
 まず、ウーファーは、ボイスコイル口径は同じ4インチではあるが、磁束密度が高い130A系の2231Aとなり(2215の11000ガウスに対し2231Aは12000ガウス)、ハイフレケンシー用のホーンが全長が長い(2307の約22センチに対し約29センチ)2312となったが、クロスオーバー周波数は、800Hzで4320と変わらず、システムのインピーダンスが、ソリッドステートアンプに対応して8Ωに変更されたのも人きな改良点である。
 容積の制約のあるエンクロージュアで低域レスポンスを充分に得る目的で、2231AはそれまでのJBLのウーファーと比べ振動系重量が増加していて、これによる能率の低下を磁気回路の強化とボイスコイル・インピーダンスを低くすることで補っている。近代スピーカーユニットとしては、きわめてオーソドックスな設計手法の採用と思われる。システムの出力音圧レベルは、93dB/W/mと発表されており、4320の国内発表値97dB/W/mに比べ4dBのダウンとなっている。しかし、4320の出力音圧レベルは、JBL発表値からの換算値であるため、現実には、前値ほどの能率低下ではない様子だ。ちなみに、EIA感度48dB(1ミリワット入力時、30フィート地点)と発表されている。
 4331は、4320と比較すると一段と低音の量感が増加しているほか、聴感上の帯域バランスはホーンが延長されたため、中域エネルギーが増大してよりフラットになった。しかし低域の音色は、やや重い傾向となった。このシステムもオプションのネットワークと2405を追加すれば、3ウェイ化できるが、4320の場合よりも軽度ではあるが、中域のエネルギーが弱まる傾向を示し、基本的に2ウェイ構成独特のチューニングが施されているのがわかる。
 この4331は、いわば、JBLモニターが、4320/4325までの2ウェイ構成をスタンダードとする立場から、3ウェイ構成に発展するプロセスに登場したモデルで、JBLモニターで、2ウェイ構成の魅力を残す最後のシステムといった意義が惑じられる製品である。
 なお、2ウェイ構成モデルの派生的なシステムとして、4331と同時にバイアンプ方式の4330が発表されている。そしてこの4330に対応する、3ウェイシステムのバイアンプ専用モデルが4332である。

JBL 4350

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 マルチウェイ化の発端は、4331や4333に先だって開発された、大型4ウェイ構成の4350の開発にあると考えられる。オーディオ帯域を、フラットなレスポンスとエネルギーバランスよく再生するスピーカーシステムを考えれば、低域、中低域、中高域、高域と4分割する4ウェイ構成が、最小の帯域分割数であり、位相特性的に考えれば最大の帯域分割数といえるだろう。
 JBLは、4350で初めて4ウェイ構成を採用するとともに、クロスオーバーネットワークに、一部エレクトロニック・クロスオーバーを導入した。4350では、低域と中低域以上をエレクトロニック・クロスオーバーで分割し、2台のパワーアンプでドライブする〝バイ・アンプ〟方式を採用している。このシステムの開発は、その後のJBLモニターの、マルチウェイ化と、バイ・アンプ方式という新しい方向への発展を示唆している。

JBL 4333

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4320、4325がレコーディングスタジオで多用されるようになると、スタジオ関係者の間では、使用体験を通して、次第に改良すべきポイントがクローズアップされてくることになる。
 それは、時代が要求する音楽の変遷に起因するモニタースピーカーへの要求条件でもあり、スピーカーシステムとしての完成度の高さを求める声でもあったわけだ。それを要約すれば、低域レスポンスの改善と、最大出力音圧レベルの向上が望まれていた。
 これらの要求に対するJBLの回答は、4320が登場して約二年後に、4331の開発としてあらわれる。
 4331は、JBLモニター初の3ウェイ構成を採用した4333と同時期に発表された。それまでのモニターシステムは、2ウェイ構成が最適とされていたが、JBLは4333を登場させることで、いわば常識を破り、この時期から、マルチウェイ化の方向が、JBLモニターにあらわれてきた点に注意したい。

JBL 4325

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4320に遅れること約一年で、新モデル4325が登場する。4325は、基本的に4320の改良モデルで、ウーファーがLE15系で、ボイスコイル・インピーダンスが4Ωの2216に代わり、高域ユニットとホーン/レンズは4320と同じタイプながら、クロスオーバー周波数を1200Hzに上げたのが異なった点だ。
 発表データ上では、低域のレスポンスが、4320の40Hzから、35Hzに下がっている。また聴感上では、クロオーバー周波数が上がっているため、中域のエネルギーが増加して、いわゆる明快な音になったのが、4325の特長である。しかし、ウーファーを高い周波数まで使っているために、エネルギー的には中域が厚くなっているものの、質的にはやや伴わない面があり、4320ほどの高い評価は受けなかったのが実状である。
 この4325の中域が明るく張り出す特長に注目して、スタジオモニターに採用したのが日本ビクターである。ちなみにCS50SMを一部採用していた日本コロムビアが、4320が登場した頃、タンノイ/レクタンギュラー・ヨークをモニタースピーカーに採用しているが、レコード会社のサウンドポリシーとモニタースピーカーの選択という意味では、興味深いことがらである。

JBL 4320

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 1960年代に入りJBLにプロフェッショナル・ディヴィジョンが設けられ、プロ用のスピーカーユニット群が先行して開発されるとともに、それらのユニットをシステム化した〝スタジオモニター〟スピーカーシステムが登場する。
 その第一弾製品が4320である。低域にLE15系のハイコンプライアンス型ウーファー2215Bを、高域にはLE85系の2420ドライバーユニットに、HL91ホーン/レンズと同等な2307ホーンと、60年代のHL91と比べ構造が小改良されたスラントタイプ音響レンズ2308を組み合わせた2ウェイ構成で、バスレフ型エンクロージュアが採用されている。クロスオーバー周波数は、C50SM時代の500Hzから800Hzになった。モニタースピーカーとしてより高い音圧レベルでの再生を要求されるために上げられたのであろう。
 当時の代表的レコーディング・モニターシステムはアルテック604E同軸型ユニットと612Aエンクロージュアの組合せであった。4320は、この604E/612Aシステムと比べる、同軸型独特のピンポイントな音像定位では一歩譲るが、豊かで軽い低音の量感と、エネルギーが充分にあり、輝かしい中高域から高域がバランスを巧みに保ち、シャープで新鮮なサウンドが身上であった。その音からは、JBLが新世代のプロフェッショナルモニターとしてこのモデルを登場させた理由が、一聴した瞬間に理解できた。それほどの魅力をもつモニタースピーカーであった。
 しかし4320も、細部にして聴き込めば、周波数レスポンスは、やや、ナローレンジ型であることがわかる。低域は、豊かで反応が速い中低域がべースであり、中域のクロスオーバー周波数あたりはわずかに抑えられ、ハイエンドが、ゆるやかに降下する高域とバランスを保つタイプである。
 4320は、国内で発売を開始されるやいなや、新しいモニターシステムを切実に求めていたレコーディングスタジオに急激に採用され、一躍コンシュマーサイドにも注目されることになる。
 余談ではあるが、当時、4320のハイエンドが不足気味であることを改善するために、2405スーパートゥイーターを追加する試みが、相当数おこなわれた。あらかじめ、バッフルボードに設けられている、スーパートゥイーター用のマウント孔と、バックボードのネットワーク取付用孔を利用して、2405ユニットと3105ネットワークを簡単に追加することができたからだ。しかし、結果としてハイエンドはたしかに伸びるが、バランス的に中域が弱まり、総合的には改悪となるという結果が多かったことからも、4320の帯域バランスの絶妙さがうかがえる。
 ちなみに、筆者の知るかぎり、2405を追加して成功した方法は例外なく、小容量のコンデンサーをユニットに直列につなぎ、わずかに2405を効かせる使い方だった。

JBL C50SM/S7 (S8)

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井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 JBLが初めてプロフェッショナル用モニタースピーカーを開発したのは、同社のスピーカーユニットが、高能率設計のD130に代表されるマキシマム・エフィシェンシー・シリーズから新開発のロング・トラベル・ボイスコイルと厚みの充分にある磁気回路プレートを採用した、リニア・エフィシェンシー・シリーズに代わった時点である。
 そのLEシリーズを代表するコンプリートなシステムが、S7R〝オリンパス〟であるが、これに使われているパシッヴ・ラジェーター(ドロンコーンのこと)を取除いたS7システムを、グレイフィニッシュのモニタータイプのエンクローシニアC50SMに組込んだC50SM/S7が、モニタースピーカーとしてJBL初の製品である。C50SM/S7は、その後のプロフェッショナル・シリーズとして知られる4320、4325を開発する、いわば原点となった存在だ。
 このC50SMエンクロージュアは形式が完全密閉型であるのがその後のモニターシリーズと異なる特長である。使用ユニットは、LE15AウーファーとLE85ドライバー+HL91ホーン/レンズの高域ユニットにLX5クロスオーバー・ネットワークを組み合わせた、S7システムであることは前述したが、バリエーションモデルとして、375ドライバー+HL93ホーンを高域に使うS8システムを見たこともある。

デンオン SC-107

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンマーク・ピアレス社製のユニットを採用した、SC−104につぐ第2弾のシステムである。エンクロージュアのデザインはリファインされて明るく家具調となり、3ウェイ構成の低音と高音が同種ユニットの並列使用であることが目立つ点である。このシステムは、ハイファイ志向といった音ではなく、音楽を楽しむためにつくられた印象が好ましい。スケールが豊かで、落着いた音だが、かなり激しい音もこなせる実力がある。

ロジャース LS3/5A

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 超小型の、ポータブル用モニターシステムで、英BBC放送のモニター用に採用されていることは、型番からも明らかである。本来の特長を活かすためには、低域をコントロールしてあるQUADの405パワーアンプなどがドライブ用に必要であり、しかも、1m以内の近接位置で聴かなければならない。ヘッドフォン的な聴き方だけに、組み合わせコンポーネントは高品質が要求され、さもなければ、見えるような臨場感は得られない。

ダイヤトーン DS-40C

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 トールボーイ型のバスレフ・エンクロージュアに、30cmウーファーをベースとし、コーン型トゥイーターを組み合わせた、モニターシステム的な印象の製品である。ウーファーには、独得な低歪化のための磁気回路が使われ、トゥイーターコーンの中央に軽金属キャップが付いているあたりは、新しい製品らしいところで、DS−50Cの重厚さにくらべれば反応が速く、鮮明で伸びやかな音が、このシステムのフレッシュな魅力である。

スキャンダイナ A-403

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカーシステムの中級機の価格帯では、一時のように海外製品の存在が目立たなくなっている。スキャンダイナのシステムも同じことで、トータルバランスが優れていることは認められても、魅力とは感じられなくなっている。これの解答とも思われるのがA403であり、構成が3ウェイ化されたことにより、中域のエネルギーが大幅に改善され、システムとしては飛躍的に向上した音となっている。注目したいシステムである。

ヤマハ NS-L325

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヤマハのスピーカーシステムのなかでは、モデルナンバーの頭にLが付いていることからも、従来のシステムとは異なった性格をもつ製品であることがわかる。構成は3ウェイ方式で、中域での十分なエネルギーレスポンスを得るとともに、より明るく、よりナチュラルなサウンドとするために、軽量コーンのウーファーとソフトドーム型トゥイーターが組み合わせされている。このシステムは、音を聴くより音楽を聴きたい雰囲気だ。

B&W DM5

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 B&Wが自社製ユニットを小型システムに採用した最新の製品である。このシステムは、英国的といわれるサウンドから、よりインターナショナルなサウンドに変わったのが、B&Wのシステムとして際立っており、活気にとんだ、伸びやかな音を聴かせることでは、最近の海外製品中でもとくに目立つ存在である。

サンスイ SP-L100

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 サンスイが最近発表したLシリーズの3機種のシステム中で、もっとも小型な製品である。構成は、コーン型ユニットによる2ウェイ方式だが、ユニットに重点的にコストがかけられてあるためか、基本的なクォリティが高く、開放感があり、ダイナミックさが魅力だ。テープ用小型モニターとしても使いたい。

サンスイ SP-G300

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 本格的なトールボーイ型フロアーシステムで、とかくこの種のシステムは、いかに大音量、高品質な音を再生可能かがポイントにされやすいが、このシステムの最大の魅力は、逆に家庭内の実用レベルで、クォリティが高く余裕があるフロアー型ならではの音が得られることであり、ホーン型らしからぬ滑らかさがある。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 英グッドマンのフルレンジユニットの名器AXIOM80や、超小型ブックシェルフ型2ウェイシステムとして世界的にショックを与えたマキシマなどの開発者E・J・ジョーダン氏と、同社の技術マネージャとして活躍していたレスリー・E・ワッツ氏の2人が理想の小型スピーカーの開発を目指し、1964年に創立したユニークなスピーカーメーカーが、ジョーダン・ワッツだ。
 同社の最大の傑作は、10cmアルミ合金コーン、ベリリウム銅線サスペンション、コーン径より大きい磁石を15cm角アルミダイキャストフレームに組み込み、フレームに音響負荷をかけたフルレンジ型のモジュール・ユニットだ。このユニットの全域型らしい、生き生きとした表現力豊かで反応のシャープな音は、非常に魅力的で、1個使用のA12、2個使用のA25、さらに4個使用のB50などで一躍注目を集めたことは記憶に新しく、その音が鮮明に想い出される。
 その後、超小型のジャンボ、一つのエンクロージュアでステレオ再生可能な8個使用のステレオラなどで一段と評価を高めながら、ユニークな陶器製花瓶型システムのフラゴンに至る。
 そして、トゥイーターを加えた2ウェイ型、ドロンコーン採用などのプロセスを経て、80年にはモジュール・ユニットMKIIIとなり現在に至っている。
 JH1000は、口径を12・5cmに拡大した、モジュール・ユニットと同構造の低域と、5・1cmメタルコーン型高域を、450Hz/6dB型で2ウェイ構成としたトールボーイのフロアー型で、現在の同社のトップモデルである。
 JH200は、新開発のダンパーレス特殊サスペンションの9cm全域型を、英国高級エンクロージュアメーカーとして定評の高いR・ホールダーが設計したエンクロージュアに収めた珠玉の小型システムともいえる新製品だ。本機は、全域型ならではの鮮度感が高く、爽やかで生き生きした音が印象的である。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ヘルマン・トーレンスがオルゴール製造のためにトーレンスSAを創立したのは1883年で、その後、蓄音器、ハーモニカ、電磁型ピックアップ、電気式レコードプレーヤー、トラッキングエラーレス・ピックアップ、ラジオから業務用円盤録音機、SP用オートチェンジャーなどを順次開発。60年代になるとEMTフランツ社と共同出資の形態をとるようになった。
 オーディオファンの間で一躍注目されるようになったのは、57年のTD124ベルト・アイドラー型フォノモーターの登場からだ。本機は、当時リファレンスとして評価の高かった英ガラード社の♯301アイドラードライブ型に比べ、圧倒的にワウ・フラッターが少なく、静かなターンテーブルとして究極のモデルといわれた。現在でも、現用モデルとして、愛用するファンは多いと思う。
 以後、TD124のオートチェンジャー版、ターンテーブルを非磁性体化したMK2と続くが、この当時が世界の王座に君臨していた栄光の時代であり、80年代のトーレンス・リファレンスが超弩級機としての頂点であろう。
 TD520RW/3012Rは、16極シンクロナスモーターを電子制御で使うダブルターンテーブル型ベルト駆動アームレスプレーヤーTD520RWに、ロングサイズのSMEの3012Rトーンアームを組み合わせたモデル。さすがにメカニズムの見事さは抜群で、要所を絶妙に押さえたトータルバランスの良さは感激ものだ。現代のリファレンス機として、アナログならではの音を楽しみたいときに、最も信頼性の高い素晴らしいシステムだ。セオリーどおりに微調整すれば、想像を超えた音が楽しめ、軽針圧型から重針圧型までのカートリッジとの対応性も穏やかである。
 TD318MKIIIは、同社の技術をベーシックモデルに結集した快心作。このところのアナログディスクの復活に的を絞った、素晴らしく良く出来た音の良い注目の新製品だ。

タンノイ Eaton

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 使用ユニットHPD295Aは、30cm口径のHPD315Aと同じ磁気回路を備えた、シリーズ中最も注目すべき製品。エンクロージュアが小型で、同軸ユニット採用であるだけに、音像の定位は抜群であり、比較的に近い距離で聴くステレオフォニックなプレゼンスは、他のシステムにはない魅力である。

トリオ LS-505

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 このシステムは、大口径軽量コーン紙採用のウーファーをベースとした3ウェイ方式であり、トゥイーターにリングダイヤフラムを使ったホーン型ユニットが採用され、低域との音色上のバランスを巧みにコントロールしているのが、システムとしての完成度を一段と高めているようだ。

ダイヤトーン DS-35B

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 本機は構成面からはDS28Bの後継機としてつくられたようで、ユニットの物理的な特性面、とくに低域の歪を減らす目的で、従来担い低歪化対策がおこなわれているのが特長である。低域の歪が少ない利点は、全帯域の音をナチュラルなものとし、アトラクティブではないが使いこんで良さがわかる音である。

デンオン SC-104

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 このところ輸入されたシステムを見ても、デンマーク・ピアレス社製のユニットを採用したシステムが急速に多くなっている。本機もピアレス社製ユニットの採用が特長であり、リーゾナブルなコストで、ヨーロッパ製品の魅力を味わえるのが楽しい。比較試聴では目立たないが、自分の部屋で好ましさがわかるタイプ。

ルボックス HS77 MK4

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 何よりもハンディで小型、軽量であることが嬉しい。オプションのパワーアンプを組み込めばあとはスピーカーを加えるだけでオーディオシステムとしても使えるのはヨーロッパ製品ならではのことであり、いかにも38cm・2トラックらしい、ややアンペックス的な力強い音は38cmならではのスケール感である。
井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 国内のポータブルカセットデッキと同等の外形寸法、重量をもちながら、19cm・2トラックで録再できるのは驚くべき事実である。家庭内はもちろん、生録用には絶対の強みがあり、SL録音ではこのデッキで録音した音がディスクにもなっている。性能、音質は、CR210とは比較にならぬ絶対の信頼感がある。

パイオニア RT-701

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 古き良きマグネコーダーの再来を思わせる個性的なデザインにまとめられた製品である。実際にラックにマウントしてみると使って良く、眺めても楽しい。音は巧みに帯域コントロールされ、4トラックオープンテープの魅力を十分に引出し、それでいて使いやすい音である点が好ましい。より発展を期待したい製品だ。

ソニー TC-K7

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 新しくモデルナンバーがシンプルになって登場した一連のコンポーネント中で、このK7は、事実上のソニーのカセットデッキのトップモデルである。操作系は、スイッチ型のプランジャーコントロールで快適に動作し、オプションのリモートコントロールも使用可能である。走行系は安定で、そのためカセットにおきやすい音質のゆれが少なく、ソリッドでスッキリした、いわば、カセットデッキの標準的な音が特長である。

パイオニア CT-97

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 カセットデッキでは、もっとも魅力のある製品が多い9万円台の価格帯に置かれたパイオニアのトップモデルである。基本型はCT−9であり、単にパネルフェイスを改良したモデルと思われやすいが、音質面では、聴感上の周波数帯域がよりワイドレンジ化されて、粒立ちも一段と細やかになっている。中域のエネルギー感と力強さを望むなら、むしろCT−9であるが、ラックに組み込み、システム中に入れるとなれば、CT−97だ。

アカイ GXC-730D

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 カセットデッキは、メカニズムを持っているから、価格別に見るとより高級なメカニズムが採用できる価格帯から、性能、音質ともに格段に上昇するもようである。一般的にカセットデッキとしての高級機である9万円台の製品が、このボーダーラインをこした価格帯であり、この730Dも、ある程度以上のクォリティを要求して製品選びをすれば、アカイを代表するに応わしい実力をもった製品であり、力強く緻密な音を聴かせる。

ヤマハ TC-800GL

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 とかくカセットデッキのデザインは類型的になりがちで、現在では、いわゆるコンポーネント型が主流を占めている。カセットデッキをシステムのなかに固定することは、デッキ本来のマイクを使う録音を重視すれば、好ましいことではない。この800GLは、タイプライターのような独得な形態と電池でも動作する特長を活かし、バーサタイルに使えるのが最大の魅力である。これで、ブレンドマイクがあれば、もっと楽しいはずだ。

ソニー TC-4300SD

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ソニーのコンポーネント型デッキは、このところ新機種に置き換えられている。この4300SDは新しい製品ではないが、予想外に良いデッキが少ない中級機の価格帯では、現在でも目立つ存在である。性能、機能、音質、操作性などとくに優れた特長があるわけではないが、オーバーオールのバランスがよく、長期間の使用でも安定して働く点は、カセットデッキがメカニズムを中心としているだけに大きな長所といわなければならぬ。

ビクター KD-2

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 生録用にもコンポーネント用にも使えるだけの十分な性能を持つポータブルデッキである。モールド製の外装は機能優先でラフ仕上げだが、室外の使用でかなり乱暴に使っても上部であり、傷がついてもさして気にならないのばこの種のデッキとしてかえって好ましい点である。とくに生録向きであり、2種に使いわけられるノイズリダクションは、バイノーラルには、ぜひ使いたい機能である。

ビクター UA-7045

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックのDD型フォノモーターであるTT−101と、本来は組み合わせて使うべく開発された、スタティックバランス型のトーンアームである。デザインは、オーソドックスに機能を優先しており、特別にデザイン的に処理された印象が少ない点が、かえってこのアームの魅力である。回転軸受の上部の同軸上にあるインサイドフォースキャンセラー、ロック可能なアームレスト、アームリフターなど機能は標準的である。

ビクター TT-101

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 高級フォノモーターのトップをきって登場したこのモデルは、リジッドなプレーヤベースとUA−7045アームを組み合わせたシステムとしての音の良さで注目を集めた製品である。ディジタル表示の回転数、1Hzステップの微調整機能など、最新の水晶制御フォノモーターらしいアクセサリーが大変に楽しい。

エンパイア 4000D/III

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 いわゆるベスト・バイの意味からは、価格的に逸脱するが、他では得られないトーンキャラクターをとれば、ベスト・バイともいってよいだろう。トータルのシステムのクォリティにより音が大幅に変化する傾向が著しい。このカートリッジが、シャープさと柔らかく陰影の色を濃く鳴らせば、かなりのシステムである。
井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 繊細で細やかな音をもち、いかにも鉄芯がないMC型らしいカートリッジだったFR−1E以来、改良がくわえられるたびに、音の密度が濃くなっているのがわかる。おだやかで完成度が高く、風格のある音と思われやすいが、最新のヘッドアンプとの組合せでは、中域のエネルギーが強く、ダイナミックで鋭角的な音を聴かせ、このカートリッジがもっているパフォーマンスの奥深さを感じることができよう。趣味性の濃い製品だ。

デンオン DL-103S

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 DL−103をベースに近代カートリッジらしい広帯域化をはかったこのモデルは、当初はネガティブな評価もあったが、ディスク側、アンプ、スピーカーなどクォリティが上昇するにつれて、本来の性能の高さが発揮されるようになった。いわゆるスタンダードカートリッジとしての信頼性の高さは、DL−103ゆずりで製品の安定度は抜群である。優れたヘッドアンプと組み合わせると、いかにも広帯域型で鮮度が高い音である。

グレース F-8L'10

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 カートリッジ、トーンアームの老舗としての伝統を誇るグレースの象徴としての役割を果してきた、F−8L発売10周年を期して発売された珍しい製品である。これを意味して型番の末尾に10がつけられているが、さすがに現代カートリッジらしく、多くのF8シリーズとは一線を画した反応が速く、鮮度が高い音をもっている。とかく高価になりがちのカートリッジのなかでは、その価格もリーゾナブルであり信頼度も十分に高い。

オルトフォン MC20

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 SPUシリーズをプロトタイプとして発展してきたオルトフォンの最新モデルである。構造面では、カンチレバーが二重構造の軽量型に変更され、専用のヘッドアンプをもつ点では、かなり現代的であり、音も、SPUの個性豊かなサウンドから、より現代的なスムーズなものに変わっている。

テクニクス SL-01

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 とかく高性能なプレーヤーシステムは、外形寸法的にも大型となりやすく、実用面で制約を受けることがあるが、このSL−01は、コンパクトにシステム化されたプレーヤーシステムならではの魅力を備えていることが特長である。滑らかで誇張感がなく、クォリティの高い音は、繊細なニュアンスの再生に相応しく高級カートリッジを組合せたい。

ビクター QL-7R

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 コンプリートなプレーヤーシステムにビクターが水晶制御のDD型フォノモーターを採用した最初の製品であり、ユーザー側からみても、かなり魅力的なモデルである。充実した中域をベースとしてナチュラルなバランスの良さをもち、安定した音の良いプレーヤーシステムとして完成度が高い製品である。

トリオ KT-9700

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 FMチューナーでは、キャリアを誇るトリオのトップモデルである。さすがにこのモデルのもつ性能は、FMチューナーのトップランクにあり、機能面を標準的に抑えたため、このコストで開発できたと思われる。内部のコンストラクション見ても、同価格帯の機種と比較して、はるかに充実したものがあり、音質面でも放送局側の送り出しプログラムソースのクォリティの差が、明確に感じとれるのは性能の裏付けである。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 オーディオ・フィジック社は、1985年にヨアヒム・ゲアハート氏により、ドイツのブリロン市で設立されたメーカーだ。同社は、電気的素子を使用しないで、滑らかな周波数特性と位相特性を実現することを主眼に、スピーカーシステムの開発を行なっていることが特徴だ。その理想を実現するため、DSP技術を導入することを発案し、イギリスのエセックス大学と共同で、数年前から研究開発中とのこと。最終的な製品の完成にはまだ時間がかかるようである。
 わが国に紹介された同社の最初のモデルは、小型2ウェイ機のブリロン1・0だ。本機は、強度アップと内部定在波処理のため独自の構造を採用したエンクロージュアが、後方にわずか傾斜するよう専用スタンドで支持されている。これは、同社が目標とする位相特性の整合性を図るためである。
 その理想をさらに追求したシステムが最新トップモデルのメデアだ。本機は、ドイツのヨーゼフ・W・マンガー氏が主宰するマンガー研究所で、20年以上にわたり独自に研究されてきた全帯域を非ピストンモーション化したベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)全域型ユニットを採用し、アクティヴ型ウーファーと組み合わせたシステムだ。
 BWTは、1967年に研究が始まり、'70〜'80にドイツ連邦政府から研究資金を受け、'74年に基礎が完成、'84年に現在のタイプとして完成されたユニットだ。基本は、現在のピストニックモーション型スピーカーの最大の問題点が過渡応答の悪さと、それに起因するパルス性トランジェントにあるとする、新スピーカーユニットの研究開発である。
 メデアは、BWTを前面に1個、左右に2個使用し、前面1に対し、左右2個の合計が0・5+0・5=1となる音響出力を持たせ、低域はアクティヴウーファーで補うシステムだ。ナチュラルで色づけが少なく、ストレスフリーな音が聴かれる点が魅力である。
 また、最新のスパークは、ブリロン1・0のフロアー型ともいえる、細く長い角パイプ状のエンクロージュアが特長の2ウェイシステム。7度の傾斜角は位相整合が目的だ。
井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 英国のヴァイタヴォックスは、1932年創業のスピーカーメーカーで、スタジオ、放送局、劇場などの主に業務用の分野で高い評価を受け、現在では軍需用を含め、本来の業務用スピーカーシステム分野で活躍しているようだ。ヘリコプターに搭載された超高感度、超強力な拡声装置はホーン型ドライバーの独壇場で、映画・TVなどの分野では米アルテック社のホーン型ドライバーユニットの活躍が知られているが、この英国版がヴァイタヴォックスということだ。
 CN191コーナーホーンは、 同社の伝統的なトップモデルで、現在でもこのような人手のかかるエンクロージュアが作られていることは想像を絶する異例なことといえよう。エンクロージュアは、モノLP時代に最小の容積で最高の低音再生能力をもつフォールデッドホーンと絶賛された、米国のポール・クリプシュ氏が発明したクリプシュホーンで、米EVパトリシアン600にも採用されたコーナー型低音ホーンである。
 スピーカーシステムは、壁面に付ければ低音再生能力は2倍となり、壁と床の交わる位置に置けばさらに2倍、2面の壁と床の交わる場所、つまり部屋のコーナーに置けばさらに2倍、というのが基本である。
 低域ユニットは、現在ではフェライト磁石採用の7・5Ω仕様AK157、高域ユニットは、アルニコ磁石採用の伝統的な15Ω仕様で、7・62cm口径アルミ合金振動板のS2ドライバーユニットと、従来のCN157を改良し、4セル型ディスパーシヴ型としたCN481新型ホーンを採用。
 NW500ネットワークで500Hzクロスオーバーとした2ウェイ方式で、インピーダンスは15Ω。感度は未公表だが100dB/1mほどはあるはずで、真空管アンプにはこれ以上のスピーカーシステムはないであろう。やや強度不足で音離れが悪かったホーンが一新され、本来の重厚さに新鮮さが加わった。 

「私のタンノイ観」

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井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・タンノイ」(1979年春発行)
「私のタンノイ観」より

 スピーカーシステムは、アンブなどのエレクトロニクスを応用したコンポーネントに比べると、トランスデューサーとして動作をするための、それぞれ独特のメカニズムをもち、固有のキャラクターが音に強く出やすく、定評が高いメーカーの製品は、おしなべて伝説的な神話が語りつかれているが、そのなかで、もっとも、オーディオ的な神話やミステリアスな事実が多く語られるのは、タンノイをおいて他にはないといってもよいだろう。
 その前身は、畜電池メーカーであったらしく、タンタルアロイを短縮してタンノイの名称をつけたといわれるこのメーカーは、英国のスピーカーメーカーとしては、ヴァイタボックス社と双璧をなす存在であり、しかも、デュアル・コンセントリック方式というユニークな構造をもつ同軸型2ウェイユニットのバリエーションを基本として永くスピーカーシステムを作りあげてきた点に特長がある。
 過去から現在にいたるタンノイを象徴するデュアル・コンセントリックユニットは、同じ構造をもつ3種類の製品中で、38cm口径のユニットであろう。かつての、ボイスコイルインピーダンスが15Ωであった時代の38cm口径、モニター15は、高域ユニットのレベルコントロールは固定型であったが、このユニットを使って、現在でもエンクロージュアを国産化して残っている大型のコーナー型バックローディングホーンエンクロージュアや、同様なタイプのG.R.F.がつくられ、ヨーロッバを代表するフロアー型システムとして、高級なファンに愛用された。とくに、モニター15の初期のモデルは、ウーファーコーンの中央のダストキャップが麻をメッシュ織りとしたような材料でつくられており、ダーク・グレイのフレーム、同じくダーク・ローズに塗装された磁気回路のカバーと絶妙なバランスを示し、いかにも格調が高い、いぶし銀のような音が出そうな雰囲気をもち、多くのファンに嘆息をつかせたものである。
 ソリッドステートアンブの世代となるとモニター15は、改良が加えられて、モニター・ゴールドに発展する。まず、ボイスコイルインピーダンスが8Ωとなり、ネットワークに高域のレベルコントロールと、当時としては大変にユニークなハイエンドのレスポンスをコントロールするスナッブ型のロール・
オフコントロールが加わり、ウーファーのf0も、約10Hzほど低くなって、一段とバーサタイルな使いやすいユニットに変わった。
 この当時から、海外製が価格的にも比較的に求めやすい状態となっていたために、レクタンギュラー型のヨークや、コーナー型のヨークといったバスレフ型エンクロージュア採用のモデルを中心として急激に数多くのファンに愛用されるようになった。もちろん、トップモデルのオートグラフは、依然として夢のスピーカーシステムであったが......。
 巷にタンノイの音としてイメージアップされた独特のサウンドは、やはり、デュアル・コンセントリック方式というユニット構造から由来しているのだろう。高域のドライバーユニットの磁気回路は、ウーファーの磁気回路の背面を利用して共用し、いわゆるイコライザー部分は、JBLやアルテックが同心円状の構造を採用していることに比べ、多孔型ともいえる、数多くの穴を集合させた構造とし、ウーファーコーンの形状が朝顔状のエクスポネンシャルで高域ホーンとしても動作する設計である。
 したがって、38cm型ユニットでは、クロスオーバー周波数をホーンが長いために1kHzと異例に低くとれる長所があるが、反面においては、独特なウーファーコーンの形状からくる強度の不足から強力な磁気回路をもつ割合いに、低域が柔らかく分解能が不足しがちで、いわゆるブーミーな低域になりやすいといった短所をもつことになるわけだ。
 しかし、聴感上での周波数帯域的なバランスは、豊かだが軟調の低域と、多孔型イコライザーとダイアフラムの組み合わせからくる独特な硬質の中高域が巧みにバランスして、他のシステムでは得られないアコースティックな大型蓄音器の音をイメージアップさせるディスクならではの魅力の弦楽器の音を聴かせることになる。それか、あらぬか、タンノイファンには、アコースティック蓄音器時代から長くディスクを聴き込んだ人が多く、オーディオコンポーネントとしてのラインナップは、カートリッジにオルトフォン、SPUシリーズ、アンプは、マッキントッシュの管球式コントロールアンプC−22とパワーアンプMC−275が、いわば黄金のトリオであり、ソリッドステートアンプでも、C−26とMC−2105の組み合わせが多く使用されていた。
 モニター・、ゴールドの時代がしばらく続いた後に、不幸にして、タンノイのコーンアッセンブリー製造セクションが火災にあい焼失するというアクシデントが起き、ブックシェルフ型の全盛時代でもあってその再起が危ぶまれたが、この逆境を乗切るかのようにつくられたものが、ハイ・パフォーマンス・デュアルの頭文字を付けた新モデルのシリーズで、この時点からユニット口径をあらわす単位がインチからセンチメートルに変わり、38cm口径ユニットは、385HPDと呼ばれるようになったが、これが現在のHPD385Aの前身である。
 新しいHPDシリーズは、ウーファーのコーン紙のカーブが変更され、f0が現代型のユニットの動向にマッチさせるために15〜20Hz低くなり、ボイスコイル構造が巻幅がヨーク厚より広いロングトラベル型に変わった。また、ウーファーコーン紙の裏側には、コーンの剛性を高めるために補強用のリブが取付けられたことも、このユニットの特長であろう。
 このHPDのシリーズになってからは、タンノイのスピーカーシステムは、大幅に再編成され、長期間トップモデルの座にあったオートグラフと、そのジュニアモデルG.R.F.が姿を消し、アーデンを筆頭とし、バークレイからイートンにいたるモデルナンバーの頭文字がアルファベット順になった5モデルでシリーズを形成するようになった。しかし、昔日のトップモデルであったオートグラフとG.R.F.を要求するファンの声が高まり、輸入代理店が現在のTEACに移換されてから、タンノイの了承を得て、このオートグラフとG.R.F.は、レプリカとして復沽することになる。
 タンノイの歴史として想い出される他のシステムでは、タンノイがユニットを供給して、エンクロージュアのみを自社製とする英ロックウッドのプロ用モニタースピーカーシステムのシリーズのソリッドに引締まった低域に特長がある一連の製品や、アメリカ・タンノイがエンクロージュアをつくった数多
くのアメリカ・タンノイのシステムがある。一時期輸人されたアメリカ・タンノイのモニター・ゴールド12を収めたブックシェルフ型マローカンの独特の英米混血の魅力ともいえるサウンドや米西岸で聴いたアメリカ・タンノイのベルベデールのJBLサウンドとも感じられるカラッと乾いた、シャープでエネルギッシュな音などが思い出される。
 このアメリカ・タンノイのかつてのカタログに、写真なしにのっていたコーネッタの名称からきたイメージが発端となり、製作したものが、ステレオサウンド本誌、マイ・ハンディクラフト欄に3回にわたり連載した幻のコーネッタのレプリカである。ちなみに、コーネッタのレプリカが完成した頃に、アメリカ・タンノイのコーネッタの写真を人手したわけだが、これが、あるか、あらぬか、ただのブックシェルフ型システムであったというのが、この幻のコーネッタ物語の終止符である。
 つねづね、何らかのかたちで、タンノイのユニットやシステムと私は、かかわりあいをもってはいるのだが、不思議なことにメインスピーカーの座にタンノイを置いたことはない。タンノイのアコースティック蓄音器を想わせる音は幼い頃の郷愁をくすぐり、しっとりと艶やかに鳴る弦の息づかいに魅せられはするのだが、もう少し枯れた年代になってからの楽しみに残して置きたい心情である。暫くの間、貸出し中のコーナー・ヨークや、仕事部犀でコードもつないでないIIILZのオリジナルシステムも、いずれは、その本来の音を聴かしてくれるだろうと考えるこの頃である。

パイオニア M-25

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 パイオニアのセパレート型アンプ群のなかでは、20シリーズの製品に、単純化、高性能化の方向がいちじるしい。M−25は、パワー的に不足感があったM−21の上級モデルであり、優れた高域特性を得るためにパワートランジスターにリングエミッター型と呼ばれる新タイプを採用している点に特長がある。滑らかで色付けの感じられないナチュラルで素直な音は、かなり躍動的に音楽を聴かせてくれる。クォリティ重視のモデルである。

QUAD 405

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 コンパクトで独特なコンストラクションとデザインをもつパワーアンプとして愛好家が多いQUADの第二世代のソリッドステートアンプとして登場したものが、この405である。100W+100ダブ区の性能を超小型の近代的なデザインにまとめたこの製品は、回路構成が独特であり、音も現代アンプの最先端をゆく鮮鋭さがあり、感覚的なひらめきがある。音場感を爽やかに拡げ、クッキリと音像が立つ実体感は凄い魅力である。

ダイヤトーン DA-A15

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ダイヤトーンのセパレート型アンプは、従来からもパワーアンプに、その機能的魅力を重視した簡潔なデザインが採用されていることに特長がある。このモデルは、コントロールアンプとの一体化をも含めた汎用性を狙ったデザインと、パワフルでストレートな音が巧みにバランスしたオーディオ的な魅力あふれる製品だ。

ヤマハ C-2

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 薄型コントロールアンプとしては、標準的な機能を備えた、いわば本格的なコントロールアンプと呼ぶに応わしいモデルであり、性格的にも高級モデルであるC−Iとコントラストをなす製品である。FETとトランジスター混合構成の増幅系は、応答性が速く、活き活きとして機敏な音をもつことでは、国内製品中で最右翼に位置づけることができる。何れ、関連製品であるFMチューナーなどが加われば、また魅力は倍増しよう。

ラックス CL32

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 薄型コントロールアンプとしては、もっともオーソドックスともいえる、最小限度の機能をもつクォリティ志向型の製品である。しかし、このモデルは、増幅素子に真空管を採用している点が大変にユニークな存在であり、別にキットフォームのモデルをもつのも、いかにもラックスらしさがある。現代アンプらしく物理的特性が優れ、音質的にも新しさがある点では、ラックス管球コントロールアンプ中では抜群の存在である。

ビクター P-3030

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 フラット型のプロポーションをもつ、コントロールアンプのなかでも、もっとも薄い製品が、このP−3030である。一般的に、シンプルなデザインのフラット型は、機能面でもディスク再生を重点的にし、必要最小限度まで省略することが多いが、このモデルは、ほぼ標準的な機能を備えているために、いわゆるセパレート型アンプらしい使用法よりも、メカメカしくないオーディオとして小型の利点を活かして使いたい。

ラックス SQ38FD/II

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 最新の技術を駆使した、いわば、電算機的なプリメインアンプが登場してくると、旧型アンプの存在価値が薄れるのが当然であるが、そこは、趣味としてのオーディオであるだけに、アナクロ的な典型ともいえる、古き良き時代の真空管プリメインアンプが、現在に生きているのも大変に楽しいことなのである。プロトタイプ以来10年に近い歳月を経過したこのモデルは、いわば、SL的な新しさであり、懐かしさがある音を聴かせる。
井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 本誌43号の特集テーマは、現在、国内に輸入されており、入手可能な海外製品と発売されている国内製品の数多くのオーディオコンポーネントのなかから、ベスト・バイに値するコンポーネントを選出することである。
 何をもって、ベスト・バイとするかについてはその言葉の解釈と、どこに基準を置くかにより大幅に変化し、単にスーパーマーケット的なお買得製品から、特別な人のみが使いうる高価格な世界の一流品までを含みうると思う。
 今回は、選出にあたり、ある程度の枠を設定して、本誌41号でおこなわれたコンポーネントの一流品と対比させることにした。その、もっとも大きなポイントは、業務用途に開発された製品は、特別を除いて対象としないことにしたことだ。これらの製品は、第一に、使用目的がコンシュマー用ではなく、そのもつ、性能、機能、価格など、いずれの面からみても、一般のオーディオファンが、容易に使いこなせるものではなく、また、入手可能とは考えられないからである。第二に、業務用として、優れた性能、機能をもつとしても、コンシュマー用としては、必ずしもそのすべてが好ましいとはかぎらないこともある。例えば、定評あるアルテックA7−500スピーカーシステムにしても、業務用に仕上げた色調やデザインは、どこのリスニングルームにでも置けるものではない。また、同じく、JBLのプロフェッショナル・モニターシステムである4350にしても、誰にでも、まず使いこなしが大変であるし、家庭内のリスニングルームで再生をする音量程度では、らしく鳴るはずがない。ハイパワーアンプとの組み合わせで、それもバイアンプ方式のマルチアンプシステムを使って、少なくとも小ホール程度の広い部屋で、充分な音量を出して、はじめて本来の鳴りかたをすることになる。このような使用法では、他には得られない性能をもっているために、製品としては当然ベスト・バイとなろうが、少なくとも一般のオーディオファンとは、関係がないカテゴリーでのベスト・バイである。
 また、高価格になりやすい一流品は、価格的な制約を除けばそれぞれに大変な魅力をもっているとはいえ、誰にとっても、ベスト・バイたりえないことは当然である。ここではコンポーネントのジャンル別に、価格的なボーダーラインを設定して、一流品とベスト・バイを区分することにしている。
 スピーカーシステムは、このところ国内製品の内容の充実ぶりが目立つジャンルである。例えば二〜三年以前であったら、10万円未満の価格帯で海外製品に優れたシステムが多くあったが、海外メーカーで自社開発のユニットをつくるメーカーが減少し、最近では個性的な製品が少なくなっている。10万円以上、15万円未満の価格帯が、現在ではベスト・バイ製品の上限に位置すると思う。昨年末以来、このランクに国内製品のフロアー型システムが各社から発売され、ユニット構成にも、従来には見られなかった個性があり新しい価格帯を形成している。現在では、7〜8万円以上ではフロアー型システムが主流を占めつつあるが、逆に比較的に小型で充分な低音が得られるブックシェルフ型システムのメリットが見直されてよいと思う。一方、5万円未満の価格帯では、最近注目されている超小型システムを含み、比較的小口径ウーファーを使った小型なシステムに、内容が濃い製品が多くなってきた。
 プリメインアンプは、従来からも、おおよそ15万円あたりが価格の上限であったが、これは基本的に現在でも変化はない。最近の製品の傾向からみれば、10万円未満の価格帯では、モデルチェンジがかなり激しく、それに伴なって質的な向上が著るしく、ややファッション的な印象が強くなっている。これにくらべると10万円以上の価格帯は、プリメインアンプの特別クラスで、最新の技術を背景に開発された新製品から、伝統的ともいえる長いキャりアをもつ製品までが共存し、かなり趣味性を活かして選びだすことができる。
 セパレート型アンプは、いわばアンプの無差別級的存在であり、性能、機能、価格などで幅広いバリエーションがある。ここでは、プリメインアンプを形態的にセパレート化したと思われるものは除くとしても、開発のポイントがセパレート型アンブ本来の質、量、二面のバランスに置かれたものは、とかく高価格となりやすく、一面的に質か、または量にウェイトを置いた製品は、比較的に入手しやすい価格にある。ここでは、ある程度、価格的な枠を拡げて選んでいるが、基本はやはり質優先型である。パワーアンプは、スピーカーシステムと対比すると、出力が多すぎるように思われるかもしれないが、最近のようにダイナミックレンジが広いディスクが登場してくると、平均的音量で再生していても、瞬間的なピークの再生の可否が大きく音質に影響を与えることもあり選んでいる。
 FMチューナーは、プリメインアンプと組み合わせる機種については、あえてペアチューナー以外を使用する必要がないほど、相互のバランスが現在では保たれている。ペアチューナーの性能が高くなっているのも理由であるが、現実のFM放送の質を考えれば、高級チューナーの使用は、効果的とは思われない、つまりプリメインアンプを選べば、自動的にFMチューナーは決まることになる。ここではセパレート型アンプに対応する製品を、最近のFMチューナーの傾向をも含んで選出することにした。
 プレーヤーシステムは、現在のコンポーネントのなかで、場合によればもっとも大きく音を変えるジャンルである。基本的には、システムを構成するトーンアーム、フォノモーター、プレーヤーべースなどが優れていれば、よいシステムになるが、例え個々の構成部品が抜群でなくても、システムプランでまとめられた製品は、好結果が得られるあたりが、システムならではのポイントである。実際に試聴をした結果から、各価格帯で、いわゆる音の良いプレーヤーを選出してある。また、価格的に少しハンディキャップはあるがオートプレーヤーにもマニュアルプレーヤー同等に良い製品がある点に注目したい。
 フォノモーター、トーンアームの単体発売品は、需要としては、さして多くないはずだが、選んだ製品の大半は、優れたプレーヤーシステムの構成部品であり、残りはそれぞれ単体として定評がある製品である。
 カートリッジは、主として現在の一般的なトーンアームと組み合わせた場合を考えて選んだ。最近の高性能化した製品は、特定のトーンアームとの組み合わせで本来の性能を発揮する傾向が強く、ユニバーサル型アームの形態をとってはいるが、むしろ専用アームとペアのピックアップアーム化している。これらは今回は除外した。
 テープデッキは、カセットデッキでは、システムに組込み固定するコンポーネント型は、現実にエルカセットが登場してくると10万円が上限である。しかし、ポータブルの小型機は、コンパクトであるだけに10万円以上でも概当することになる。オープンリールデッキは、30万円程度が上限であり、この価格帯では19cm・4トラック機に総合的に優れた製品が多い。ポータブル機は、機種が少なく、実質的な価格内ではベスト・バイというより、それしかないのが残念である。

サンスイ AU-707

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 AU−607の上級モデルとして登場したプリメインアンプである。左右チャンネル独立電源、パワーアンプのDCアンプ化など、市場の要求を満たすに十分な構成と、一貫して採用しつづけたブラックパネルが、製品としての完成度の高さを、十分にアピールしている。AU−607よりもパワーアンプされているために、独特のプレゼンス感は力感の裏側にかくれているが、しなやかに、よく弾む音は良いスピーカーが欲しくなる。

サンスイ AU-607

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のイメージを完全に変えたサンスイの新しいプリメインアンプである。デザイン、増幅系のブロックダイアグラムなどでも、現代アンプの最先端をゆく新しさがあるが、とくに、このモデルの独特とでもいえるプレゼンス豊かな音は、素晴らしい魅力である。物理的な性能の高さをベースとした漂うような音場感と、クッキリと細やかな輪郭で浮上らせる音像は、ナチュラルであり、QS方式での音場再生技術が活かされている。

ヤマハ CA-2000

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヤマハのプリメインアンプのトップランクのモデルとしてすでに定評を得ている製品である。とくに、パワーアンプ部はA級・B級動作切替と、AC・DCの増幅切替があり、これを組み合わせ使用すれば、実質的に4種類のアンプをもつのと等価的になる。性能が高いだけに、聴感上でも変化はかなり明瞭であり、この利点は他では望めないものがある。

タンノイ Arden

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のレクタンギュラー・ヨークの後継機種に相当する、英タンノイ社製のトップモデルである。使用ユニットがHPDタイプになり、とくに低域レスポンスの改善がおこなわれているため、いわゆるタンノイファンに好まれたサウンドと変化が感じられるが、より近代的な方向に発展しているのは明らかである。コンシューマー用としては量感タップリの低域は、実用レベルでは利点であり、制動を効かせるアンプ選びがポイントだ。

ヤマハ NS-1000M

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 数少ない完全密閉型のエアーサスペンション方式を採用した本格的なブックシェルフ型システムである。強力で伸びのあるウーファーをベースとし、ベリリュウム振動板を採用したこのシステムの音は、新素材の特長を生かした、クリアーで鮮度が高く、充分な距離にまで音をサービスできるのは、ホーン型に似た特長である。小音量でも音の姿、形が崩れず、大音量にも強い直線性の良さを活かすには余裕あるパワーアンプが必要だ。

B&W DM4/II

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 英国のスピーカーメーカーとしては、かなりユニークな存在であるB&Wの製品としては、いわば、中級機のランクに置かれたシステムである。構成は、20cmウーファーをベースとした、2ウェイ方式にスーパートゥイーターを加えたタイプであり、トゥイーターに、定評が高い、セレッション製のHF1300/IIを採用している点に注意したい。比較的に低い位置で聴いたときの、おだやかだがプレゼンスのある拡がりが好ましい。

ダイヤトーン DS-25B

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 いわゆるコンポーネントシステムに使うスピーカーシステムとしては、価格的にローエンドの位置にあり、見落としやすい製品である。ダイヤトーンが伝統を誇る、コーン型ユニット採用の2ウェイ方式、バスレフエンクロージュア入りのシステムだけに、バランスの良いレスポンス、明るく、活き活きとした表現力は、価格からはオーバークォリティであるともいえる。シャープな定位をもつ利点を生かしてテープのモニター用にも使える。

セレッション UL6

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井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ '77ベストバイ・コンポーネント」より

 ローボーイ型プロポーションをもつ小型なシステムである。構成は、セレッションの伝統を感じさせる、いわゆるドロンコーンを使った2ウェイ方式だが、このシステムの音色は、かなり明るく軽やかである。小型システムの弱点である許容入力は、かなり大きく、のびやかに飽和感のない音を聞かせるあたりは、新しいスピーカーらしい魅力である。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 この種のオーディオコンポーネントの試聴で問題になるのは、試聴テストの原点である、0dBをどこにセットするかである。基本的には、従来から私の個人的な孝えではあるが、試聴テストにはいわゆる使いこなしはしないこと、を条件にしてある。カートリッジをベースとして、そのカートリッジの最大限の性能を引き出すために、併用するプレーヤーシステム、もしくはトーンアームを選び出すことはもちろん可能ではあるが、すべてのカートリッジにたいして、同程度のウェイトをかけて使いこなすこと自体が難しいことである上に、これはいわゆる試聴テストの枠をこした、使いこなしの領域のものであると思う。試聴テストはあくまで同一の設定条件のなかで、各テスト製品がどのように変化をし、どのような音を聴かせてくれたかに徹すべきである。オーディオに限らず、すべてコンテスト的要素のあることは、同一舞台上での比較にすぎない。
 コンポーネントシステムのもっとも入口に位置するプレーヤーシステムのなかでは、カートリッジが、トランスデューサーとして音を決定する最大の要素であることに異論はない。しかし本来は、カートリッジとトーンアームが一体化しているピックアップアームを、バーサタイルな組合せが可能であるように、カートリッジとトーンアームに分割したのが現状であるだけに、カートリッジの試聴テストをおこなう場合には、どのプレーヤーシステム、もしくはトーンアームを使用するかが大きな問題点としてクローズアップされてくる。そのため、テストに先だって、現在市販されているプレーヤーシステムの代表的と思われるモデルを数多く集めて準備段階での試聴をおこなってみた。
 その結果は、経験を含めて予測されたように、各システム間の格差が大きく、音質的な違いがはなはだしく存在していることを再確認することができた。一方、単体で発売されているユニバーサル型のトーンアームは、現在かなりの機種があり、その性能も高くプレーヤーシステムに使用されているトーンアームよりも一般的に高性能なものが多い。

試聴に使用した装置
 そこで、まず、トーンアームの選択からはじめてみることにした。現在のプレーヤーシステムでは、数は少ないが2本もしくは2本以上のトーンアームが使えるモデルがある。そのなかから、3本のトーンアームが任意に取付可能なプレーヤーシステムとして、基本的な性能が高く、ユニークなデザインをもつマイクロのDDX1000を選ぴ、これにより、トーンアームの選択をおこなった。
 10種類程度の候補アームのなかから、このプレーヤーシステムに、アダプター形式で取付可能なものの試聴を繰り返し、最後に3機種のトーンアームが残った。それらは、重量級のアームとして、ダイナミックバランス型を採用した、FR FR64、軽量アームとして、ユニークなダンピング方式を採用した、デンオン DA307、それに中間的な存在である、ビクター UA7045である。マイクロ DDX1000に、これらの3本のアームをセットし、各種の性格が異なったカートリッジを組み合わせ試聴した結果、平均的に各種のカートリッジの個性を引き出した、ビクターUA7045を使うことに決定した。
 トーンアームの選択が終れば、次はフォノモーターの選択である。フォノモーターはトーンアームの選択に使ったマイクロDDX1000の使用も考えられるが、できたら、第3世代のDD型フォノモーターとして注目を集めているクリスタルロックのDD型を使うほうが、話題のフォノモーターであるだけに好ましく思われる。これで、かなり候補モデルは限定され、結果としては、今回の持廻り試聴のメリットである、各人各様の異なったシステムを使って、現在のカートリッジを試聴することの意味を含めて、幸いに、私の試聴予定が岡氏、岩崎氏の試聴後であり、使用されたプレーヤーシステムが判かっていたために、ほぼ自動的に、ビクター TT101を使用することになった。結果的には、トーンアーム、フォノモーターともに異なった条件で選択していったわけだが、同じビクターの組合せになったため、プレーヤーべースも、当然こうなればビクター製を使うことにしたほうが妥当と考え、TT101システムをカートリッジ試聴のベースとなるプレーヤーシステムとした。
 このプレーヤーシステムは、聴感上での帯域バランスが安定しており、周波数レンジでも、現在のカートリッジ試聴用として充分な広さがある。音の傾向は、低域の量と質のバランスが保たれ、安定した音であり、中域は充実しているが、中高域の一部にわずかながら輝きがあり、そのあたりでは、やや音の分離が他の帯域にくらべて気になる面が残る。高域は比較的に素直に伸びた感じがあり、強調感が少ないメリットがある。
 使用するアンプは、本誌臨増「世界のコントロールアンプ/パワーアンプ」での試聴結果をベースとして考えた結果、コントロールアンプ、パワーアンプともに、リファレンス用として使い、充分に性能を発揮した、マークレビンソン LNP2とマランツ モデル510Mを選ぶことにした。
 この組合せは、コントロールアンプ、パワーアンプともに現代のセパレート型アンプにふさわしい性能と音質を備えている。
 聴感上のSN比とクロストーク特性が優れ、パワーも、新しいレコードがもつピークを充分に再生できるだけの余裕がある。この組合せは、聴感上で、かなりワイドレンジ型の帯域バランスであり、低域、高域ともに、伸び切った音であるが、中域はやや薄い傾向がある。
 スピーカーシステムは、私の場合には、いつものように試聴場所をステレオサウンド試聴室としたために、JBL 4320を使うことにした。このスピーカーシステムは、このところレギュラーに本誌試聴室で使用しているために充分にエージングが済み、音が安定しているメリットがあることと、このシステムが中型フロアータイプともいえるブックシェルフ型と大型フロアー型との中間的存在であり、プレーヤーシステムの選択の一部条件としたテスター各氏の使用スピーカーシステムとコントラストをつける意味もある。
 JBL 4320は、このモデルをベースとして改良した4331と比較すると、やや聴感上の周波数帯域が狭く、帯域バランス上では、比較的に中域の量感があるのが特長である。低域は大型フロアーシステムのように伸ぴてはいないが、ブックシェルフ型やコンシュマー用の中型フロアーシステムよりは量感があり、高域も必要にして充分な伸びがあり緻密さがあるのが特長である。

使用レコード
 プログラムソースには、マイクロフォンからの信号をテープデッキを通さずに直接カッティングレースに送りこむ、ダイレクトカッティング盤を中心にして選ぶことにした。現在までに、ダイレクトカッティング盤として発売されたディスクのなかから、かつてコロムビアでカッティングした45回転のダイレクトカッティング盤を6枚、米シェフィールドレコードの第2集、第3集、それに最新盤を含めて3枚、その他に、日本フォノグラムから発売されている「ザ・スリー」を選んで今回のメインプログラムソースとした。
 合計123個のカートリッジは、編集部で各カートリッジメーカーに問い合せて決めたヘッドシェル、もしくは、もっとも相応しいと判断したヘッドシェルに取り付けてあり、各カートリッジの外形寸法的な違いからおきるオーバーハングの誤差は、取付時に調整してヘッドシェルのネック部分と針先位置間の寸法は一定にセットしてある。
 針圧は、カートリッジの試聴で、もっとも問題のある部分である。一般にカートリッジの針圧は、ある値からある値の間で指定してあることが多く、場合によれば、この他に標準的な針圧が発表されていることも多い。今回は、原則として指定針圧の幅のなかでの最大値にセットすることにした。この場合、最大値では、見かけ上で針先が沈み込み過ぎる状態になるときには試聴をおこないながら、ほぼ標準的と判断できる値にまで針圧を減らす方向でコントロールをすることにした。なおこの場合の針圧は、ビクター UA7045の針正目盛で読んでいるため、精密な針圧ゲージでの値とは、ある程度の誤差は生じていると思われるが、試聴結果に影響を及ぼすほどの誤差ではない。また、インサイドフォースキャンセラーは、今回は使用せず、常時、0位置にセットしてある。なお、当然のことながら標準としたプレーヤーシステムは、前後左右の水平度を確認し、できるだけニュートラルな状態として使用した。
 なお、低出力型のMCカートリッジには、昇圧用トランスが必要であるが、各モデルともに、メーカー、もしくは輸入代理店で指定したトランスを使用することを原則としており、一部の指定トランスがないモデルの場合には、ユニバーサル型の、昇圧トランスFR FRT4を使うことにした。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「マイ・ハンディクラフト タンノイ10"ユニット用コーナー・エンクロージュアをつくる」より

 完成したコーネッタのエンクロージュアには、295HPDとIIILZ MKIIの新旧2種のユニットを用意して試聴再確認をおこなうことにする。この場合、295HPDは、このユニットのデータを基準としてエンクロージュアが設計してあるため問題は少ないが、IIILZ MKIIについては、まったく振動系が異なるため、あくまでテストケースとして使用可能かがポイントになる。なお、IIILZ MKIIでは、低域に何らかのコントロールをする必要があるが、バスレフのポートの全面もしくは一部に吸音材を入れる方法か、板をポートの幅か高さに合わせてカットし、その量を調整する方法が考えられるが、今回は、ポート断面の半分に吸音材を入れた状態が、かなり好結果をしめした。
 295HPDをプロトタイプに入れると壁面を離れたフリースタンディンクの状態でも、低域から中低域にかけて量感が増し、中域が薄く聴える、いわゆるカブリをおこし、ネットワーク補正後でも、コーナー位置ではかなり低い周波数にウェイトをおいたバランスで、音としてはグレイドが高いものであったが、いわゆるタンノイの音のイメージとは、かなり異なった音である。
 最終モデルのコーネッタは、コーナー位置でオートグラフを想い出すバランスと音色を狙っただけに、低域が柔らかく量感があり、中域はわずかに薄く、高域が輝く、タンノイ的バランスの音である。しかし、ユニット自体がワイドレンジ型であるため、トータルの音は、柔らかく、キメが細かいソフトなものとなり、いわゆるタンノイの硬質な魅力とは、やや異なった現代型の音色である。この音はスケール感が大きく、コーナー型特有のピンポイント的なクリアーな音像定位と、充分に引きがある空間のパースペクティブを聴かせる特長があり、あきらかに、ブックシェルフ型エンクロージュア入りの295HPDとは、大きく次元が異なった別世界の音である。
 IIILZ MKIIにすると低域の伸びは抑えられるが低域はソリッドに引き締まり、中域が充実した密度が高く凝縮した音になり、タンノイ独得の高域が鮮やかに色どりをそえるバランスとなる。この音は、すでに存在しない旧き良きタンノイのみがもつ燻銀の渋さと、高貴な洗練さを感じさせる、しっとりとした輝きをもったものだ。まさしく、甦ったオートグラフの面影であり次から次へとレコードを聴き漁りたい誘惑にかられる、あの音である。
 カートリッジは、エレクトロ・アクースティックのSTS455Eや、オルトフォンのVMS20E、M15Eスーパーが柔らかく透明になるソフトでデリケートな音であり、オルトフォンのSPUシリーズが音のくまどりが鮮やかで密度が濃く格調の高い音となるが、とりわけSPU−Aが抜群の音である。アンプは、295HPDには50Wクラス以上のハイクォリティなソリッドステートタイプが現代的な伸ぴやかで粒立ちが細かい音で相応しく、IIILZ MKIIには、ソリッドステートタイプでも充分であるが、パワーアンプには、少なくとも30Wクラス以上の管球タイプを使うと磨きこまれたまろやかな、柔らかく拡がる音場空間をもった立派な音となって、素晴らしい音を聴かせる。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 合計123個の内外のカートリッジの試聴をおこなったが、もっとも重要なポイントとしてクローズアップされたことは、本質的な試聴を終えての感想ではなく、試聴以前のリハーサル的な試聴における、カートリッジとそれを組み合わせるトーンアーム、もしくはプレーヤーシステムとの間にある問題である。
 最近のプレーヤーシステムは、以前のような、プレーヤー構成部品であるカートリッジ、トーンアーム、フォノモーターを集めてプレーヤーべ-スに取り付けた、いわゆるアッセンブリー型プレーヤーが少なくなり、各構成部品がデザイン的にも、性能的にも有機的に結びついたプレーヤーシステムとしての完成度が高くなっている。
 それとは別に、DD型フォノモーターが商品化されて以来、プレーヤーシステムの焦点はフォノモーター中心に発展してきた。
 モーターの駆動力が、それまでのベルトを介さずに直接ターンテーブルをダイレクトに回転させる駆動方式の転換に主な意味があった第1世代のDD型から、ターンテーブルが1回転する間に回転数を制御するチェックアウトポイントの数を増加して、回転数をよりムラなくコントロールする、FGサーボに代表される第2世代のDD型。さらに、回転数の増減をプラス方向マイナス方向ともに制御可能であり、かつ、回転数の基準を正確なクリスタルを採用して規制をする現在の第3世代のDD型にまで発展してきた。
 たしかに、これらのターンテーブルの改良発展によって、結果的な音質が大幅に向上していることに異論はないが、プレーヤーシステムとしてトータルで考えると、ややトーンアームの問題が取り残されているように思われる。現在のプレーヤーシステム間の音の違いは、一般に考えられているよりははなはだしく大きく、同じカートリッジ同じディスクを使ってその差を比較すると、まさに驚くべき格差があり、少なくとも、現在すでに高水準にあるプリメインアンプと比較すると問題にならぬほど大きく、もっとも大きく音を支配するといわれるスピーカーシステムと比較しても、スピーカーシステムのように、設置場所によるコントロールが不可能に近いだけにこの差のもつ意味は、かなり大きいと受け取らなければならない。
 プレーヤーシステム間の音の差の原因として考えられるのは、その大半がトーンアームにあるようである。実際に、今回のカートリッジ試聴で最後までつねに問題として残ったのは、トーンアームの選択が妥当であったかどうかである。
 現在のカートリッジは、CD−4システムが発表されて以来、急速に性能が向上しているだけに、トーンアーム側はユニバーサル型を原則としている限り、大きなネックにさしかかっているようだ。ある意味では、広範囲なカートリッジの使用を前提とするユニバーサル型トーンアームは限界に達しているようである。トータルなシステムとして考えると、完成度が高まったとはいえ、なお、コンポーネントシステムのなかでは、プレーヤーシステムがもっとも多くの問題を残しており、音が良いプレーヤーシステムが出揃うまでにはかなりの時間が必要であろう。
 今回の試聴を終っての感想は、平均的にカートリッジの性能が高くなったという、月並みな結果であり毎度このような試聴をおこなうたびに感じることと同様な結果である。とくに、国内製品では、各メーカー間の個性が薄れて平均化しているのは、他のプリメインアンプやスピーカーシステムと同じ傾向であり、各メーカーの基本的な技術水準が向上して接近していることを物語るものであろう。このことは海外製品でも同様で、新しい製品は物理的な性能が高くなった反面に、音色的な個性は徐々に少なくなる傾向が感じられる。とくに、内外を問わず、CD−4システムに使用可能な高価格のモデルは、音が平均化する傾向が強いのは、大変に興味深い事実である。当然、コンポーネントシステムが高級なクォリティが高いものとなれば、平均化したなかでの差が大きな要素としてクローズアップされてくるが、平均的なコンポーネントシステムを使用するという条件があれば、その差はかなり縮まるはずである。
 今回の試聴では、テストの方法で書いたような条件を設定し、その場での音についてのリポートをすることにした。したがって、従来からの個人的な使用での先入観的な各カートリッジの音色は、まったく、今回の試聴リポートには関係なく、結果としては、経験上の音色とかなり異なったカートリッジも多い。おそらく、プログラムソース側でのディスク自体がかなり発展して質的な向上をしていることも原因であろうが、アンプ関係の性能向上も大きな要素となっていると思われる。また、今回の試聴により、従来から潜在的に、各カートリッジに感じていたことが、デメリット的に表面に問題として出てきた場合もあり、逆に、可能性としてメリットとなって、あらためて認識し、確認した例もある。やはり、カートリッジが、現在ではプレーヤーシステム、とくにトーンアームと分割されたひとつの部品として存在していることが、このように変化する要因であろうし、長期間使ってかなり判かっていたはずのカートリッジでさえも、的確に音が捕えきれない理由ではないかと思われる。
 今回の試聴で注意して聴いたポイントは、一般的なコンポーネントシステムに共通な、聴感上の周波数レンジ、周波数帯域内での量的と質的なバランス、ステレオフォニックな音場感、つまり、左右の拡がり、前後の奥行き、音像定位と音像の大きさなどがある。
 個人的な意見としては、コンポーネントシステムのなかではスピーカーシステムとアンプが基本であり、カートリッジを含めたプレーヤーシステムは、FMチューナーやテープデッキと同様にプログラムソースであると単純に考えるべきものと思う。現在のように任意にカートリッジが交換できるプレーヤーシステムでは、カートリッジはプログラムソースであるディスクとその内容によって決定するべきであろう。音的には現在のカートリッジはかなりの水準に達しているが、音楽を聴くことになれば、物理的な音としてのクォリティが高いとしても、それがすべてではない。例えば、多くの米国系のカートリッジでは、ドイツ系のオーケストラがもつ音色を充分に聴かせることが難しく、ドイツ系のカートリッジで、ロックやソウルのエネルギッシュでビートのあるリズムを聴くことは、どうにも場違いな感じが強い。しかし、このサイドに踏み込むと、用意するプログラムソースの幅が広くなり、細かく試聴を重ねていくだけの充分な時間も現実に不足するのは、試聴カートリッジの機種が多いだけに当然であろう。
 今回は、テスターが各人各様の試聴をする持廻り試聴でもあるために、基本となる音的な問題に限定して試聴をし、リポートをすることとし、音楽的な問題は、その、ほとんどを割愛することにした。
 試聴リポートに出てくる低域のダンピングという意味は、トーンアームを含んでの低域の量と質との兼ねあいに関係がある、感覚的なダンピングで、一般的なダンピングが効いた音などと表現されるものと同様に考えていただいてもよいと思う。また、聴感上のSN比とは、聴感上でのスクラッチノイズの性質に関係し、ノイズが分布する周波数帯域と、音に対してどのように影響を与えるかによって変化をする。物理的な量は同じようでも、音にあまり影響を与えないノイズと、音にからみついて聴きづらいタイプがあるようだ。また、高域のレスポンスがよく伸ぴ、音の粒子が細かいタイプのカートリッジのほうが、聴感上のSN比はよくなる傾向があった。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 スタントンは、米国系のカートリッジとしては、素直で標準的な音をもち、個性的な魅力を聴かせるタイプでないのが珍しい。
 681EEEは、音の粒子が細かくスッキリとして磨き込まれている。聴感上の帯域はフラットで爽やかによく伸びている。音に汚れがなく、滑らかで美しさがあるが、表情がおだやかで、やや控えめである。ヴォーカルは少し線が細く、キレイではあるが、力感が不足気味で実体感が薄らぎ、ピアノは澄んだ透明な感じが美しいが、迫力に乏しく、スケールが充分に感じられない。クォリティは充分に高く、音場感はホールトーン的によく拡がり、音像も平均的に立つ。このカートリッジは、力強い表現には向かないが、線が細くキレイな特長は、それなりにかなりの魅力があると思う。
 681EEは、EEEよりもスッキリとしてクリアーな音である。粒立ちはやや粗いが、SN比で気になることはない。帯域バランスはフラット型でカラリゼーションは少ないタイプである。低域は質感がよく音の変化がわかりやすい。ヴォーカルは、スッキリとして、ややハスキー調で子音を強調するが、バランスは崩れず、明るい感じがある。ピアノは、カッチリとした音で、響きも美しく、スケール感もある。細部のニュアンスを拾い出して美しく聴かせるところは、681EEEが優れるが、バーサタイルに使用する場合には、この681EEの方が、爽やかで明快な音をもち、音色が明るく開放感があって使いやすいと思う。
 680ELは、粒立ちが粗く、SN比が気になる。低域から中低域は腰が強く、エネルギーが充分にあって安定度は大きいが、中域以上は明快だが線が太く、しなやかに細部を拾い出して聴かせるわけにはいかない。
 680EEは、粒立ちは、681EEより粗くなり、SN比が少し気になる。帯域バランスはナチュラルで、全体の音はソリッドに引き締まり、適度に音にコントラストをつけて、フレッシュに聴かせる。低域は標準型で甘すぎず、安定しており、中域以上の音をよくサポートしている。ヴォーカルは、ストレートな感じで押し出しがよく、ピアノもカッチリとスケール感がある。
 600EEは、メリハリ型のクッキリとした音である。やや線が太く、骨組みがシッカリとして男性的な感じがあり、低域の腰が強く、エネルギーがタップリとあって堂々とした安定感のある音が特長である。ヴォーカルは子音を強調気味でハスキー調となるが、音像は大きく、前にグッと出て定位する。ピアノはアタックの力が強くダイナミックにスケール感があって、よく鳴る感じだ。トータルバランスはよく、安定した音をもつが、粒立ちは粗く、SN比が少し気になる。
 500AAは、全体に音にラフな感じがあり、充分の力感がないために、表面的に音にコントラストをつけて聴かせる傾向がある。中低域から低域は安定しているが、中域以上は粗く、やや硬調で、音の密度もあまり濃いタイプではない。

ソナス Red Label, Blue Label

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ブルーラベルは、全体にサラリとしたストレートな現代的な音をもっている。聴感上の帯域は標準的なバランスをもつが、メリハリが効いているために、ややハイファイ調にいかにも音の分離がよいように聴こえるタイプである。低域は、最低域が重く感じられ、その上が少し弱く、結果としてやや抑えられたように感じることもある。中低域は質感が軽く響きはキレイだ。性質は少しドライで割切りのよい特長がある。
 レッドラベルは、コントラストが強い押出しのよい音をもっている。メリハリが効いた明快な感じは開放感があり、力強く男性的である。この音はややラフではあるが力感があるために、ストレートな、もって廻らぬ、一種の説得力があり、好みにより結果は大きく分かれるタイプであろう。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 シュアーは、当初からMM型の発電方式を採用したカートリッジをつくりつづけており、ステレオ初期以来、つねに新製品は、数々の話題を投じている。音色は、適度にコントラストがついた、耳あたりがよく活気がありキレイに音を聴かせる、いわば演出型の音が他にない個性となっている。
 V15/IIIは、粒立ちはまず標準的という感じで、最近の高級カートリッジと比較すると、さして細かさは感じられない。帯域バランスは、低域から中低域に独得なスケール感を感じさせる音があり、中域から中高域にも、やや硬調な効果的に輝く個性がある。ヴォーカルは、ちょっと聴きには、スッキリと抜けてニュアンスが充分にわかる感じがあり、音像がクッキリと立つタイプであるが、聴き込むと、キリッとした輪郭がなく、ピアノはスケール感はあるが低音が甘くベトつき気味である。プログラムソースにはフレキシブルに対応して気持よく聴かせる特長がある。高級コンポーネントシステムよりも、中級以下のシステムの場合に見事な音を聴かせる傾向があるが、システムのクォリティが高くなると、薄味の華やかさになり、音がベタツキ気味になるのが興味深い。
 M95EDは、柔らかく耳あたりがよい音をもっている。中低域に量感があって、軽くよく響くが、やや粘る感じもあって奇妙にスッキリと爽やかにならない面がある。ヴォーカルは表情が甘く、声量がなく、オンマイク録音のように細部を見せるが、表現が表面的で実体感が乏しいようだ。ピアノはソフトで適度に輝くが、クリアーにカッチリとした音にならない。
 M91GDは、低域のダンプが適度であり、音の粒子は上級モデルよりも粗くなり、聴感上のSN比がときおり気になることがある。音の傾向は、M95EDよりもクリアーでスッキリとした感じがあり、暖かみがあり、ベトツキがなくなっている。低域は、量感があって、少し甘く感じられるが、弾力性もあってリズミックな表現も充分にこなすだけの力量がある。ヴォーカルは、子音を強調気味でハスキー調となるが、適度にコントラストをつける効果があり、力感もあるために、スッキリとクリアーな印象がある。ピアノは、スケール感もかなりあって、響きが美しく明快である。トータルバランスはかなりコントロールされて巧みにとられているために、音の魅力ではM95EDを上廻り、活気があり、リズミックに音を楽しく聴かせるメリットが大きい。
 SC35Cは、帯域が狭く、線の太いマクロ的に音をまとめるタイプだ。粒立ちは粗くノイズが耳ざわりである。低域から中低域にかなりエネルギーが感じられる、腰が強いソリッドなメリットをもつが、全体に音が大味にすぎて、細部の表現がかなり不足する。
 M75G/2は、粒立ちは粗いタイプだが、あまり聴感上のSN比が劣化しない特長がある。帯域はナローレンジ型で、全体に音の傾向は甘く柔らかい。普及型システムと使うと、安定した面白味がある音になる。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ピカリングは、LP時期からカートリッジメーカーとして有名で、ステレオになってからは、普及モデルから徐々に高級モデルに発展し、現在では一連のシリーズ製品として製品が多い。音色は、伝統的に明快で力強く、やや乾いたストレートな音を守っているのが特長である。
 XUV/4500Qは、音の粒子は、この種のタイプとしては、あまり微粒子型でなく芯がカッチリとした特長がある。帯域バランスは、かなりワイドレンジ型だが、低域は引き締まりソリッドで力強い。中低域は豊かさがあり響きもあるが、中域以上は、やや硬調で明快でスッキリとした魅力をもつが、乾いた感じがあり、艶が不足する場合もあろう。組み合わせるスピーカーシステムやアンプは、聴感上で、いかにもワイドレンジを感じさせる両サイドが上昇する傾向のタイプは避けるべきで、古いタイプのフロアー型や、両サイドが、ゆるやかに下降するレスポンスをもつAR的なブックシェルフ型スピーカーがよい。
 XV15/1200Eは、粒立ちは、XUVよりも粗いが充分なSN比はある。音の傾向は、ウォームトーン系で、低域から中低域の量感が豊かで拡がりを感じさせる響きがある。音色は明るく伸びやかさはあるが、表情がマイルドで、スッキリとした爽やかさが必要と感じる場合がある。全体に線を太く表現するため、音の輪郭はあまりクッキリとせず、音像も大きくなるタイプである。マクロ型に音をまとめ、安心して聴けるところが、このカートリッジの特長である。
 UV15/2000Qは、XUV/4500Qと同様にCD−4システムに使用できるモデルである。粒立ちは細かいタイプで、帯域バランス上、やや中域が薄い感じがある。低域はソフトで甘く、中域はやや硬く乾き気味である。ヴォーカルは落着いた感じだが、やや子音を強調気味でハスキー調となるがあまり気にはならない。全体に耳あたりがよく、おだやかであり、やや硬質の中域以上が適度のコントラストをつける良さがあるが、XUV/4500Qほどの力感が伴わないために表現不足となり、表面的になる傾向があり、抑揚が乏しく感じられる。音場感は、ホールトーン的な響きが拡がりを感じさせるが、音像はさほど明瞭に立つタイプではない。
 XV15/400Eは、上級モデルよりも粒立ちが粗くなり、ときには聴感上のSN比が気になることもある。低域のダンプは標準型か、少し甘いタイプである。聴感上の帯域は、このクラスとしてはよく伸びていて、低域の腰が強く中高域は明快で、やや乾いたピカリングトーンである。ヴォーカルは、子音を強調気味だがスッキリとした感じであり、ピアノは適度にスケール感があり響きもキレイである。低域に少し重い感じがあり、反応のテンポが遅く感じられる場合がある。
 V15MICROIV/ATは、粒立ちはラフで聴感上のSN比が気になるタイプである。線が太く、帯域が狭いバランスであるが、まとまりはよく安定感がある。価格からすれば力もあり、耳あたりがよく商品性は高い。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 SPU−A/Eは、指定されたSTA384トランスを使う。このトランスは、1・5Ω対20kΩの変成比をもつタイプだ。
 聴感上の帯域バランスは、低域から中低域にウェイトをおいた安定型であるが、音色はややウェットで重く、表情は控えめで、やや抑えられた感じがある。ヴォーカルは線が太くおだやかではあるが、中域の粒立ちが関係してハスキー調で子音を強調気味となり、力がなく音像が大柄になる。ピアノは、スケール感は充分にあり、ソリッドな感じがあるが、低域が甘く、ベタつき気味となり、表情が散漫になってリズムに乗らない面がある。音場感は、やや左右の拡がりが狭く、前後のパースペクティブも、さしてスッキリと表わせず音像がやや大きくなる。
 SPU−G/Eは、指定の1・5Ω対1・5kΩのSTA6600トランスを使う。A/Eよりも全体に音の輪郭がシャープとなり、音の彫りが深く緻密でクリアーである。聴感上では、低域が少し量的に多く、やや質感が甘い傾向があるが、中低域のエネルギー感がタップリあり、重厚で安定した、押出しの良い音である。音場感は、A/Eよりも、クリアーに拡がり、音像定位もシャープでクッキリと立つようになる。低域は、やや反応が遅く、ロックやソウル系の早いリズムには乗りにくいようだ。
 SPU−GT/Eは、低域のダンプが、SPUシリーズ中でももっとも甘口であり、聴感上のSN比も少し気になる。全体に線が太い音で、密度が不足し、表現が表面的になる傾向がある。低域は量感はあるが甘く、重い音で、ヴォーカルは、ハスキー調となり、やや、力感不足となる。
 SPUシリーズは、基本的構造が同じであり、音を大きく変える要素は、トランスである。指定トランスを使って聴いたが、今回は経験上での音と、かなり異なった音となった大半の原因は、このあたりにあると思う。
 SL15E MKIIは、STM72Qトランスを使った。全体に、やや硬調で、コントラストを付けて音を表現するが、適度に力があり、密度が濃いために安定した感じがある。ヴォーカルは、明快でハスキー調となり、ピアノは、硬調で輝やかしいタイプである。
 SL15Qは、粒立ちが細かく、軽く滑らかで現代的傾向が強い音だ。中低域は甘口で拡がりがあり、中高域は爽やかで柔らかさもある。ソフト型オルトフォンといった感じが強い。
 MC20は、最新モデルである。粒立ちは細かく、表情は、SL15Eよりも明るくゆとりがある。ヴォーカルは誇張感なくナチュラルでピアノもおだやかになる。全体にマイルドで汚れがなくキレイな音をもっている。
 M15E SUPERは、柔らかく豊かな音だが、中域から中高域は粒立ちがよくクりアーである。細部をよく引出し独得な甘く柔らかな雰囲気で聴かせる魅力は、大きい。
 VMS20Eは、M15Eよりも、全体にソフトな傾向が強く、力強い押し出しがなくムード的に音が流れやすく表情が甘い。

グラド FCE+, F-3E+, F-1+

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 グラドは、ステレオ初期に高出力型のMCカートリッジを出し、そのクォリティの高さにより、当時の高級ファンに愛用者が多かったが、最近では、マグネチックタイプの、いわゆるMI型の発電方式を採用した一連のシリーズのカートリッジで、安定した評価を得ている。
 F1+は、現在のグラドのトップモデルである。全体に歪感がなく、滑らかでソフトな音をもっているために、ちょっと聴きでは際立った印象を与えないが、クォリティは充分に高く、長期間にわたり聴き込んでいくと、だんだん魅力が出てくるタイプの音である。
 音の粒子は細かく、よく磨き込まれており、軽く滑らかで明るい音色をもっている。ヴォーカルは力強さを感じさせるタイプではないが、細かいニュアンスがわかり子音を強調せずにナチュラルである。ピアノはややスケールが小さくなる傾向をみせるが、ソフトで柔らかく、よく響き軽快に鳴るタイプである。
 ステレオフォニックな音場感はよく拡がり、前後のパースペクティブな感じもよく出すが、スピーカーとスピーカーの奥深く拡がるタイプである。音像は比較的クッキリと立ち、定位も安定している。
 F3E+は、中低域がかろやかで、よく響くところは、F1+と似ている。ただ、音の粒子は少し粗くなり、中域から中高域にかけて、わずかに強調感があるように感じる。全体の音の傾向は、明快でメリハリが効いた一種のリアルさがあり、F1+よりも音のコントラストがクッキリと付くが、中域が充実し低域がサポートをしているために安定感が感じられるのがよい。このクラスの製品としては力感があり、トータルバランスがよいが、低域はやや甘口である。
 FCE+は、海外製品としてはもっとも安いクラスの製品である。全体に中域を重視した比較的カマボコ型のレスポンスを感じさせる。低域はやや量的に抑えられており、締まったメリットがあるが、スケール感が小さくなるようだ。粒立ちは粗く、ヴォーカルはハスキー調となり、音像が大きくなる傾向がある。

ゴールドリング G900SE

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ゴールドリンクは英国系の数少ないカートリッジメーカーとして貴重な存在である。
 G900SEは、キメの細かい軽やかな音をもっている。とくに、中低域が独得な軽い響きでフワーッと鳴るのが楽しい。ヴォーカルは、ソフトな感触でマイルドに耳あたりがよく、子音をスッキリと出す。おとなしいがそれでいて芯があり、響きが美しく柔らかにハモルのは魅力である。ピアノはさしてスケール感がないが暖かくよく響く。ステレオフォニックな音場はよく拡がり、前後方向のパースペクティブをナチュラルに表現し、音像定位がスッキリとしている。リアルな音ではないが、感覚派のオーディオファンに好まれるタイプで、クォリティは高い。表情はちょっとクールな感じがあり、リファインされた女性的な印象がある。

EMT XSD15

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 本来は業務用に開発されたEMTの製品は、コンシュマー用としては特殊な存在で、独得なキャラクターをもっている音は標準的な音とはいえないが、オーディオ的な魅力は充分に持っていると思う。
 XSD15は、アダプターを使わずに一般のアームに取付可能となった、TSD15の変種製品である。今回は出力電圧がかなりあるためトランスなしで使用することにした。このカートリッジは音の密度が高く、重厚で力強い音をもっている。全体の音の傾向は進歩がいちじるしい現代のカートリッジのなかにあると、やはり古典的で粒立ちが粗く、細やかな表現は不得手なタイプである。音の輪郭をクッキリとコントラストをつけて聴かせる点では比較するものがないが、表情が硬く弾力的ではないために、リズミックに音が決まらないもどかしさがある。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 エンパイアのカートリッジは、発電方式に独得なマグネチックタイプのMI型を採用していることが特長である。音の傾向は、普及モデルから、高級モデルまでかなりの変化を見せるが、トータルバランスが優れ、洗練された都会的な感覚が共通の魅力である。
 4000D/IIIは、粒立ちが滑らかで細かく、聴感上の周波数レスポンスが充分に伸び切っていながら、あまり中域の薄くならないのが特長である。音の傾向は、軽く艶やかで、陰影が色濃く、グラデーションの微妙な変化を見事に表現する。ヴォーカルはバックとのコントラストがナチュラルにつき、ピアノはまろやかで艶めいて響く。他のカートリッジよりも楽器の数が多くなったような多彩な音色があり、ハーモニーがとりわけて美しく感じられる。音場感は広い空間を感じさせるように拡がり、パースペクティブな感じや、音像の立ちかたが自然である。
 4000D/Iは、D/IIIよりもかなり粒立ちが粗く、SN比が気になる、音の傾向は、コントラストがついたメリハリ型で、線は太く、ちょっと聴きには粒立ちがよく聴けるタイプである。性質は、かなり、カラリと開放的だが適度の抑えがきいて、伸びやかな明るさがある。若い未完成の魅力があり、マクロ的に音をまとめるメリットをもつ。
 2000Zは、最新のモデルで、かつての1000ZE/Xを継ぐ位置にある製品と思われる。粒立ちは細かくシャープであり、クールな感じのストレートな音である。トータルなバランスや音色はエンパイアであるが、スッキリと切れ込む音に、フレッシュで爽やかな印象がある。帯域バランスはこのクラスとしては平均的と思うが、中域のエネルギーがかなり強く押出しはよいが、ドライな感じが特長である。音場感は、スッキリと拡がり、音像もシャープにクッキリと定位する。現代のカートリッジらしい割切った小気味がよい音だが、エンパイアの高級モデルにある独得な完成度が高く洗練された雰囲気や味わいは、かなり薄らいだようだ。2000シリーズの他のモデルとも異なった、新しい傾向の音であることが面白い。
 2000E/IIIは、落着いた、おだやかな感じの音をもっている。音の傾向はウォームトーン系で、帯域バランスはよくコントロールされていて、高域・低域ともに過不足はなく、両サイドはなだらかにレスポンスが下降しているように聴かれる。低域は甘口で柔らかく、中低域に間接音成分が多い豊かな響きがあり、中域以上はさして粒立ちの細やかさはないが、磨かれている感じがあり、ソフトで耳あたりがよく、カラリゼーションは少ないタイプである。ヴォーカルは大柄になり音像が大きく、表情は甘くなり、大味である。全体のまとまりは優れるが音の鮮度は落ちる。
 2000Eは、E/IIIよりも音色が軽く、やや乾いた感じがある。帯域バランスは低域がある程度のところからシャープにカットされた感じがあり、中低域は軽く響き、中域以上は粗粒子だが硬くはならない。価格を考えるとE/IIIよりも魅力的である。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 エレクトロ・アクースティックのカートリッジは、ステレオ用として初期から完成度が高いMM型の製品があり、米シュアーと双壁をなした存在であった。音色は、やや乾いたソりッドなものであるが、最近では、滑らかさ、柔らかさが加わり、現代的傾向が見られる。
 STS655D4は、CD−4システム用のモデルで、音の粒子が微粒子型で滑らかさがある。低域はソフトで甘く、中低域あたりに間接音成分がタップリとつき、厚味はあまりないが、薄くしなやかで強調感がないナチュラルな暖かみがある。
 STS555Eは、粒立ちが細かく、適度の帯域バランスが保たれた安定した音をもつが、低域が甘く、中域の密度が不足しがちで、音がピタリと決まらない面がある。表情はストレートで、やや素気なく、抑揚を抑える傾向がある。ヴォーカルは柔らかくゆとりはあるが、細身となり軽くなる。ピアノはキレイだが、やや実体感が乏しい。音場感は、柔らかな拡がりがあるが、音像定位はあまりクリアーではない。
 STS455Eは、全体に柔らかく、甘い響きがあって、ゆったりとした雰囲気があるが、低域は甘く、悪くするとベトつく感じとなる。ヴォーカルは、適度にリアルさがある落着いた印象で、ピアノはスケール感豊かに響くが、いま少し明快さがほしい感じだ。性質はウェット型で、おだやかな良さがあるが、積極的な働きかけが、やや足りぬようだ。
 STS355Eは、全体の音が引き締まり力強く明快に音を決めていく魅力がある。帯域バランスはよくコントロールされているが、上級モデルよりはレスポンスが狭い。粒立ちは粗いタイプだが適度に輝きがあり、破綻を示さずに音を鋭角的に処理をする。表現は線が太く骨太でラフな感じもあるが、力感があるため安定感につながるメリットがある。エレクトロ・アクースティックの製品中では、プログラムソースやコンポーネントシステムとの対応性の幅はもっとも広く、安心して使えるカートリッジである。
 STS255−17は、音の粒子が上級モデルよりも粗くなり、聴感上のSN比が気になる場合もある。聴感上の帯域バランスは中域が充実した安定型だが、レスポンスはあまりワイド型ではない。低域はソリッドで腰は強いが、あまり伸びがなく、中域から中高域がやや硬調で骨太な感じがあり、艶が不足し乾いた感じだ。全体の音は、明快型でクリアーなタイプだが、ヴォーカルは、やや大柄でハスキー調になる。ピアノは、力はあるが、スケールが小さく硬質に輝く。クォリティは、この価格の平均的で、355系のジュニアモデルといった印象が強い。
 STS155−17は、粒立ちはかなり粗く、粒子が大きいが、適度に磨かれた丸味があり刺激的にはならない。帯域バランスは、中低域にウェイトをおいたカマボコ型のレスポンスをもち、高域は低域よりも急峻に下がっているようだ。全体の音の響きに柔らかさがあり、豊かで柔らかい音に加え、スッキリした低音感も、高級品らしい。

デッカ Mark V, Mark V/ee

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 デッカのカートリッジは独得な垂直と水平系の発電方式を採用し、マトリックスを使ってステレオ再生をするために、現在のカートリッジのなかでも個性派の筆頭であろう。
 MARKVは、ソリッドで硬質な独得の魅力がある音だ。聴感上のバランスはオーソドックスで安定感があり、音の芯がしっかりとしているため聴きごたえがある。ヴォーカルは少し硬いが、ピアノは際立った音で素晴らしいのだが、さしてスケール感はない。スクラッチをやや強調しがちで、ときには独自の変調性ノイズが気になることもある。
 MARKVeeはVよりも粒立ちが細かく、音色も軽く明るい。低域はやや甘くなったが、全体の表情はやわらかくなった。Vにくらべてデッカらしさは薄らいだが、グレイドアップされたことは事実である。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 MMC6000は、5000とともに、CD−4システムにも使用可能なモデルである。低域のダンプは甘いタイプで、音の粒立ちはかなり細かい。低域は甘口で重いが、中低域はかなり厚味があり、中域はやや薄く、高域は素直に伸びているようだ。
 ヴォーカルは、オンマイク的だが、あまりカッチリとした感じとはならず、ピアノは滑らかさがあるスッキリとした音で、暖かみもある鳴り方である。全体に、ウォームトーン系のソフトな音で、明るさもあり、伸びやかさもあるが、音の密度が薄い傾向があり、リアルさが不足するようだ。
 MMC5000は、音の粒子はMMC6000よりは粗くなるが、SN比は充分にある。全体に、MMC6000にくらべると、タップリと感じられた間接音成分が抑えられ、クリアーで音の鮮度が高くなり、音の輪郭が明瞭で正確な感じとなった。ただ、比較上では、やや線が太くなり、帯域の広さは減っているが、トータルのバランスはむしろMMC5000が上である。低域はソリッドな締まりがあり、中低域のエネルギーが充分にあり、質感がよい。
 MMC4000は、軽く爽やかで、粒立ちが細かくクールな魅力をもった音である。
 低域のダンピングは適度であり、重量感があるタイプではないが、弾力的であり、姿・形がクリアーに再現できる良さがある。中域は、どちらかといえば僅かに薄いと思われるが、ナチュラルであり、高域も滑らかでよく伸びている。ヴォーカルはやや小柄になるが、細やかなニュアンスが感じられ、ピアノは軽くキラメキ、独得な音色が感じられる。音をリアルに表現するタイプではないが、クォリティが充分に高く洗練されたソフィスティケートな雰囲気は、他のカートリッジでは得られない小イキな魅力である。
 MMC3000は、粒立ちが少し粗く、聴感上のSN比が悪くなることもある。全体に音が明快で腰の強い音をもつが、表情が固く表面的な表現に留まる印象がある。

AKG P6R, P6E, P7E, P8E

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 従来のPU3E/4Eにくらべると、今回の一.連のシリーズ製品は、自社で充分に時間をかけて開発したオリジナルタイプであり、他社にない独得の渋い音をもっているのはAKG独得の個性と思われる。
 P8Eは、音の粒子が細かく芯がカッチリとしている。音色は、やや重いタイプで落着いた安定感があり、中高域に控え目な輝かしさがあるが、表面的にならないのがよい。音場感はこのクラスとしては平均的だが、音像はクッキリ型で前に立つタイプである。トータルのクォリティは高く、適度に硬質で冷たい輝きがある音が特長である。
 P7Eは、低域のダンプ、粒立ちともに標準型で安定感があり、トータルなバランスではP8Eを上廻るものがある。低域は重いタイプだが腰が強く、姿・形がよく、中低域も量・質ともに充分なものがある。中高域は、やや硬質だが浮き上がらず、適度な魅力となっている。性質は、ちょっと聴きにはマイルドに感じるが、かなりの自己主張を内側に持っているようだ。全体に、重さ・暗さがある音だが、暖かさ・力強さがあり、独得な個性的魅力をもっている。
 P6Eは、音の粒子がP7Eよりは粗くなり、ときおりSN比が気になることもある。低域は引締まり、全体の音はP8E/7Eよりも力感があり、腰が強くクールで押出しがよい。いわゆる明快でカッチリとした音であるが、安定感があり、表面的にならず、性質がおだやかであるために、渋い重厚さにつながった音と感じられる。
 ヴォーカルはP7Eよりも力強く、実体感があり中域が充実して、堂々と歌う感じがある。ピアノはスケール感が充分にあってクリアーに力強く響く。
 全体に、P8E、P7E、P6Eと音の粒子が段階的に粗くなってくるが、全体のまとまりと力強さは逆に増してくるようである。数少ないヨーロッパ系のカートリッジとしては、音の芯が強く、力感がある点では、最右翼に位置する製品だ。
 P6RはP6Eと似た面が多いが、全体にやや性質がおだやかであり、高域の伸びが少し押えられた感じがある、全体に少し線は太く、マクロ的に音をまとめる傾向があり、安定感があるのが、このカートリッジの特長である。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ADCのカートリッジは、初期にはMM型の発電方式を採用したモデルがあったが、その後、発電方式をこの社独自に開発したIM型に変更し現在に至っている。度重なる改良で構造・内容は高度になり、完成度が高い一連のシリーズ製品に発展している。音色は滑らかで、落着いた陰影の色が濃く、大人っぽい、磨き込まれたという感じの魅力がある。
 SuperXLM MKIIは、ADC最初のCD−4システムに使用できるモデルであり、最新の製品である。音の傾向は、比較的にカラリゼーションが少ないワイドレンジ型で、XLM MKIIよりも全体に引き締まり、クリアーで抜けがよく、音の芯もシッカリとしている。低域は明快でソリッドな点は、VLM系の発展型という印象があるがスケール感はさほどでもなく、腰が甘いタイプである。ヴォーカルはスッキリとして細身になり、子音を強調する傾向があり、ピアノもXLMよりもメリハリが効いて輝かしい。音場感の拡がりは標準的で、音像は比較的クリアーに立つタイプである。
 XLM MKIIは、ウォームトーン系の音で、表情がおだやかで落着いている。中低域には独得な柔らかい滑らかな艶がある響きがあり、拡がりがある。低域はやや甘いが弾力があり、中域以上の粒立ちが滑らかで、ゆったりとくつろいだ雰囲気があり、ベルベットトーンと呼ぶに相応しい艶がある。音場感はホールトーン的な拡がりで、音像は少し大きくなるようだ。
 VLM MKIIは、粒立ちはXLMよりも僅かに粗いがSN比が気になるほどではない。音は寒色系のソリッドでクリアーなタイプで、表情はフレッシュで反応が早く、とくに低域の腰が強く、姿・形が明瞭なことは抜群で素晴らしい。音場感はスタジオ的にスッキリとし、音像がクッキリと立つ。ともかく、力強くエネルギッシュな音は一聴に値する。
 QLM36MKIIは、VLM系の音である。粒立ちはやや粗く、僅かだがSN比が気になるようだ。音の傾向は、やや乾いた明快型で帯域がVLMより狭く、低域の量・質ともに及ばぬため、スケールが小さく、硬調な音といってよい。音場感は、小さなスタジオ的で音像は立つが、拡がりは不足する。
 QLM32MKIIは、やはり、VLM系の音である。粒立ちは36よりも粗く、SN比が気になる。音の傾向は、明快で乾いた感じがあり、コントラストをつけたメリハリ型の表現である。ヴォーカルは、ドライでソリッドであり、ピアノは硬質でカッチリとしているがスケール感はあまりない。価格を考えれば、トータルな魅力は36より上だ。
 QLM30MKIIは、XLM系の音で低域から中低域が柔らかく量感があり、おだやかな印象がある。これにたいして、中域から中高域は、やや硬調で音の輪郭を浮彫りにする傾向があるが、サポートをする低域が安定しているために、あまりバランスを崩さず、適度に音にコントラストをつける効果として働いているようだ。帯域バランスはナローレンジ型だが、無理がなく好ましい感じである。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 QDC1eは、音の粒子が細かく磨き込まれていて、カラリゼーションが少なく、ストレートでクールな印象がある。聴感上の帯域バランスは巧みにコントロールされていてナチュラルであり、とかく欠陥を見せやすい中低域から低域の音の姿・形が大変に見事である。ヴォーカルは軽やかに、ナチュラルであり、伸びやかである。ピアノは表情が豊かによく弾んで鳴る。
 ステレオフォニックな音場感はタップリと広い空間を感じさせ、パースペクティブも充分に再現する。音像定位はクッキリとシャープだが、鋭角的に過ぎることはない。プログラムソースにたいする反応は早いタイプで、キビキビとしデリケートでもある。表情はフレッシュで、いきいきとし澄みきった朝の空のような印象がある。

ビクター Z-1E, Z-1, X-1

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ビクターのカートリッジは、他のスピーカーシステムやアンプの音の傾向とはやや異なった、おとなしく柔らかな音であったが、X1の発売以来、音色が明るくなり、力強さが加わってきて、その内容は一段と向上して完成度が高くなっている。
 X1は、CD−4システム用のカートリッジだが、CD−4専用の枠をこえて、一般の2チャンネル用に充分使用できることを示した第一号機といってもよい製品である。低域のダンピングは適度で、粒立ちはやや細かいタイプである。音色は明るく、中低域がクリアーに拡がるため、全体の音がベトつかない特長がある。聴感上の帯域バランスはワイドレンジ型でよく伸びており、低域がこの種のカートリッジとしては質感がよく、姿・形がよいために、中高域の輝かしさが表面的にならず、クリアーで、クールな特長として活かされている。
 ヴォーカルは少し子音を強調気味で伸びやかさが欠ける面はあるが、ピアノはかなりスケールがあって鳴る。音の性質はアクティブで、ストレートな表現を得意とするが、これが、このカートリッジの特長である。音場はよく拡がるが、音像はあまり前に出てくるタイプではない。
 Z1は、X1にくらべると、やや硬質のメリハリの効いた音をもっている。
 聴感上の帯域バランスは、さしてワイドレンジとは感じさせない。低域にくらべ、中低域がやや甘口であり、中高域は少し粗い傾向がある。ヴォーカルは、アクセントをかなり付ける感じがあり、ドライな印象がある。ピアノは輝きはあるが、やや硬調である。音の腰が強いタイプで、力強さも感じられるのだが、どうも音がピタリと決まらず、表現が表面的になりやすい。このカートリッジは、コントラストをクッキリと付ける効果型の音であるために、性質がおとなしいソフトドーム系のブックシェルフ型スピーカーと上手に使うと、音の輪郭の明瞭な音が得られると思う。
 Z1Eは性質はZ1と似ている。アクティブに音を説明してくれるタイプの音で、演出はかなり効果的で面白い。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 205CIILは、低域のダンプが適度であり、音の粒子も滑らかで細かいタイプである。全体に、汚れがなく耳あたりがよいソフトで爽やかな音をもった、素直な性質のカートリッジという印象である。聴感上の帯域バランスは、ナチュラルさがあるワイドレンジ型で、低域はやや甘口、中低域あたりに柔らかく響く間接音成分が感じられて、トータルな音の表情をおだやかなものとしている。ヴォーカルは、声量が下がった感じとなり、おとなしく、子音を強調せずスッキリとしている。ピアノはクリアーだが甘い感じがあり、やや広いスタジオ録音的に響く。性質はおとなし素直で控えめである。
 205CIIHは、Lとくらべると全体に音がソリッドであり、温度が下がったような爽やかな感じとなる。ヴォーカルは、力があり線が少し太くなるが、音像はクッキリと前に立ち、子音を少し強調するが、実体感につながる良さと受け取ることができる。ブラスの輝き、ピアノの明快さ、スケール感も充分にあり、安定した音として聴かせる。音場感はLにくらべスタジオ的に明確に拡がり、定位する。細やかで柔らかいニュアンスを聴きとるためにはLがよいが、力強さをとればHの方が上だ。
 205CIISは、低域のダンプが少し甘いタイプである。帯域バランスは、やや中域が薄く、ソフトで豊かな中低域と、ややソリッドな中高域がバランスしている。ヴォーカルは、ハスキー調でやや硬く、オンマイク的な感じとなり、ピアノはスケールはあるが力がなく、ソフトな低音とカッチリとした中高音といったバランスになる。CD−4システムに使用するカートリッジとしては、中高域の音の芯が強いメリットがあるが、低域が甘く、反応が遅いのが気になる。このままでも、中域に厚味があれば、全体の音がクリアーに締り良い音になるのだろうが、ここがやや残念なところである。
 405Cは、歪感がなく、粒立ちが細かい滑らかな音をもっている。音の性質は、おとなしく、クォリティが高いが、やや音楽への働きかけがパッシブであり、控え目で美しいが、ヒッソリとした感じで活気に乏しいのが気になるようだ。聴感上の帯域バランスは、中域がやや薄く、低域もスンナリとして甘口であり、ちょっと聴きには、さしてワイドレンジ型とはわからない。ヴォーカルは、オンマイクにかなり細部を引き出して聴かせるキレイさがあるが、声量がない感じがあり、ピアノもスッキリとしているが実体感が薄れる。基本的には、汚れがなく美しい音をもつために、音量を上げて聴いたときのほうが、音に力がつき活気が出るタイプだ。
 270CIIは、低域のダンプがソフト型で甘口である。音の粒子は、他のテクニクスのカートリッジにくらべると粗く、SN比が気になることもある。低域が甘く、中域から中高域に輝きがあり、ヴォーカルはハスキー調となり、音像が前にセリ出してくる効果はあるが、力感が伴わないために、表面的な押し出しのよさになっている。

スペックス SD-909

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 スペックスのMC型カートリッジは、音の腰が強く、ストレートな男性的な力強い音をもっているのが特長である。
 SD909は、低出力型であり、SDT77トランスを使用する。このカートリッジは、中低域がしっかりしているために音に安定感があり、力感が充分に感じられる。ピアノはいかにもグランドピアノのようにスケール感があり、ヴォーカルはあまり子音を強調せず、押出しがよく迫力がある。ステレオフォニックな音場感は固い壁の小ホールで聴くような感じで、音像は少し大きくなる傾向があるが、音の腰が強くエネルギー感が充分にあり、低音の姿・形をクリアーに表現するのは大変に好ましい。音の性質が健康で明るく、ストレートに割切って音を聴かせる魅力がある。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ソニーのカートリッジは、LP時期のコンデンサーピックアップ以来、時折高級モデルが発表される程度で、これがソニーのカートリッジだ、という認識にまでは至っていなかったが、最近のXLシリーズになって一躍完成度が高まり、モデルも増加して製品として充実したものになってきたように思われる。
 XL45は、粒立ちが細かく、低域のダンプは少しソフトと感じた。聴感上の帯域バランスは、中低域に量感があり、空間の広さを感じさせる響きがある。中域は僅かに薄い傾向をみせるが、高域は素直に伸びている。カラリゼーションが少なく、淡白でスンナリとしたナイーブ型の感じがあり、音の芯にカッチリとしたところはないが、滑らかなメリットがある。
 音場の拡がりは、ややホールトーン型で空間の広さか感じられ、音場はスピーカーの後に拡がるタイプで、音像が前に立つ傾向は少ない。現代型で品がよく、少しクールな大人っぽさが特長といえよう。
 XL35は、全体に音に活気があり、若々しい印象があり、音像がクッキリと立つ音をもっている。中低域のエネルギー感が充分にあり、安定しているために、クリアーな中域から中高域の音が適度のコントラストをつけて、ピアノも良い意味でのキラメキがある。また、ヴォーカルもリアルさがあり、あまりハスキー調にならぬ良さがある。音に力強さと厚みがあるために、現代的なストレートな表現が活かされて一種の個性になっているのがよい。
 XL25は、XL35と同系の音をもっている。粒立ちは少し粗い感じで、SN比が気になることもある。聴感上の帯域バランスはXL35より狭いが、全体に音が締まりソリッドな魅力がある。柔らかく響く中低域と、腰が強い低域をもつため、やや線は太いが安定感があり、力強く、性質はガラリとして男性的である。
 XL15は普及モデルで、粒立ちが粗く、XL25よりもSN比が悪くなる。トータルバランスは適度で、かなりコントラストの付いた表現をするが、大きな破綻はみせず、巧みにマクロ的に音をまとめるため、音には安心してきける良さがある。

ソノボックス SX-3E

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ソノボックスはカートリッジ専業メーカーとしては歴史が古く、モノ当時から地味ではあるが、独得な構造のカートリッジを作りつづけている。
 SX3Eは低域から中低域にタップリとした量感があり、ウォームトーン系の柔らかくおっとりとした落着いた音をもっている。低域は量感があるため甘く感じられるが、スケール感は充分にある。ヴォーカルは少し大柄になり、安定感はあるが力感不足で、迫力に欠ける印象がある。音の性質はおだやかでマイルドな良さがあるが、エイトビートの曲のようにリズム感を要求する場合には、テンポが遅くなったように感じることがある。音に汚れがなく安定感があるために、クラシックのオーケストラなどを落着いて聴くような使い方がマッチしているようだ。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 サテンのカートリッジは、超精密工作をベースとした、高出力MC型であり、その構造・方式にオリジナルなものが多く採用してあり、その音も、他の製品とは一線を画した、ディスク再生の枠をこえたものとして定評がある。なお、サテン製品については、オプションのSR60ダンピング・アダプターを併用することにした。
 M18BXは、サテンの18シリーズのトップランクのモデルで、かつサテン最新の製品である。従来のスッキリと抜け切った色付けがないサテンの音から想像すると、この18BXは、ちょっと聴きには、素直でおとなしい音と受け取れるだろう。この音は、表情がおだやかで落着いており、素直でサラサラとしたナチュラルさがある。プログラムソースには、素直に反応を示し、その内容を拾い出すために、ダイレクトカッティング盤のメリットをもっともよく聴かせてくれたカートリッジである。組合せコンポーネントシステムのキャラクターをリアルに感じさせる面があり、このカートリッジの性能をフルに引き出すためには、かなりの経験とクォリティの高いシステムが要求されるように思われる。
 M18Xは、BXよりも、明快でスッキリとしたMC型らしい音である。表情がクールでストレートであり、コントラストが明瞭につき、低域にも力強さがあるために、充分に聴きごたえがするタイプの音だ。音場感はよく拡がり、音像がクッキリと前に立ち、空間の広がった感じがある。音楽への働きかけは18BXよりもアクティブで、一般的な使用では、むしろこの18Xのほうが大きな効果が期待できよう。
 M18Eは、18Xよりも、音に丸味があり、低域から中低域に量感があるため、マイルドな表情のMC型としての特長がある。中域から中高域はクリアーで抜けがよく、ヴォーカルはクッキリとアクセントがついて、ややハスキー調となり、オンマイク的な効果があるが、強調感というほどではない。音場感は18Xと同様によく拡がるが、18Xのスッキリとした広さにたいして、フワッと柔らかく拡がる感じである。
 M117Xは、全体に音のスケールを小さく表現する傾向がある。ヴォーカルは、ハスキー調で口先で歌う感じとなり、ピアノは右手がクリアー、左手がソフトでスケール感が充分に出ない。スッキリとした感じは、18シリーズほどではないにしても、充分にありながら、安定した音として決まらないのは低域から中低域の量と質の問題であろうか。
 M117Eは、音の粒子がサテンのモデル中では粗くなり、聴感上のSN比は一般的な感じである。全体に、音はクリアーで明快なタイプだが、聴感上の帯域バランスが充分にコントロールされ、とくに中域が充実している良さがある。低域から中低域に厚味があり、響きが豊かで安定感がある。ヴォーカルはハスキー調だが力があり、ピアノはキラメキ型だが甘さがあってよい。性質が素直で健康であり、表情もナチュラルな良さがある。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 PC1000/IIは、現代カートリッジの性格が強い製品である。聴感上の周波数帯域は広く、よく伸びており、低域の質感が甘く、ベタつかないよさがある。
 低域のダンプは標準的で、この種のカートリッジとしてはよくコントロールされている。音の粒子は細かく、よく磨かれているために、強調感がなく、滑らかで汚れがないメリットがある。ステレオフォニックな音場感はよく拡がるタイプで、空間の拡がりが充分感じられ、パースペクティブな感じもよい。ヴォーカルなどの音像は前にクッキリと立つタイプではないが、定位はナチュラルで安定している。
 性質はおだやかでゆとりがあり安定感があるが、やや表情を抑える傾向があって、大人っぽい落着きがこのモデルの特長である。
 PC550Eは、音の粒子はPC1000/IIのような微粒子型とくらべると粗いが、聴感上のSN比で問題になるほどのことはない。低域のダンピングは適度で甘くなりすぎず、中低域の量感があって、ゆったりと拡がる空間を感じさせる間接音が感じられる。この感じは、PC1000/IIとよく似た点だ。
 ヴォーカルは明快な感じでリアルさがあるが、子音を強調する傾向はなく、ピアノのスケール感もかなり感じさせる。
 全体に、性質はおだやかで、安定して幅広いプログラムソースをこなすのは、このカートリッジのメリットであるが、やや表情がおっとりとした面があって、エネルギッシュに音を決めてくるロック系やソウル系の音楽の場合には、やや物足りない感じがないでもない。ウォームトーン系で耳あたりがよく、キレイに響く音が特長である。
 PC330は、低域もよく締まリ、他の2モデルとくらべると、やや寒色系の音としてまとめてあるのが目立つ点だ。聴感上の周波数帯域はPC550Eより狭く感じるが、明快でクリアーな音色はストレートな良さがある。全体にソリッドな音であるために、音場感はややスタジオ的となり、エネルギー感はかなりある。低域の腰が強く安定した感じが好ましい。

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 OMC38−15BQは、低域のダンプが適度であり、音の粒子はやや粗く感じられるが、ヴォーカルの子音を強調せず、スッキリとクリアーにコントラストをつけて表現する、オーソドックスなMC型の魅力があり、個性が表面的にあらわれない立派な音である。やや、全体の表情がリズミックでない面もあるが性質は素直で、音場感は拡がりがあり、音像はクリアーに立つタイプである。
 OMC38−15AQは、15BQよりもおだやかなウォームトーン系の音である。中域はやや硬調で、ヴォーカルはハスキー調となりやすい。低域は15BQよりも量感があり豊かだが、密度は少し薄くなる。全体に音の輪郭はシャープではなく、線が太くなるが、純鉄がもつ独得の暖かさに似た印象があって落着いた雰囲気が感じられる。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 マイクロのカートリッジは、ステレオ初期のMM型1007シリーズを最初の製品として発売して以来、発電方式もMC型、VF型などのモデルがあったように、音色の傾向も、時期によりある幅で変化をしたが、最近の一連のシリーズではMM型を中心に完成度を高め、音色も落着いた大人っぽい印象が高級モデルに感じられるようになってきている。
 LM20は、MM系カートリッジのトップモデルである。中低域から低域はやや甘口ではあるが、質感もよく、ゆったりと余裕をもって響く特長がある。聴感上の周波数レスポンスは、とくにワイドレンジとは感じないが、トータルのバランスがよく安定感がある。粒立ちは全域にわたって細かいタイプで、クォリティは高い。
 ヴォーカルは素直で、細やかさがよく出て、あまり子音を強調する傾向はないのがよい。ピアノは響きが美しく、やや甘い感じにはなるが、スケール感も充分にある音だ。音の性質は、米国系のカートリッジにくらべれば淡白ではあるが、大人っぽいゆとりが感じられる。ステレオフォニックな音場はよく拡がるが、ややホールトーンのような響きがあり、音像は自然に定位している。この音は音と対決して聴くタイプではなく、ゆったりと落着いて音楽を聴くタイプで、プログラムソースの幅も広く、柔らかさ滑らかさが魅力である。
 LC40は、MC型で指定トランスがないため、FRのFRT4を3Ωにして使った。全体の印象はLM20よりも爽やかでクリアーな音であり、細部をよく表現するが、低域から中低域に豊かさがあるため安定感がある。粒立ちがよく、磨き込んであるために、適度の艶があり、汚れが少ない。ヴォーカルは、やや音像が大きいが誇張感がなく、らしさがあり、音場感はLM20同様によく拡がるタイプだ。クリアー志向が多いMC型のなかでは、マイルドな表情がメリットである。
 PLUS1は普及モデルだが、トータルバランスがよく上手にまとめられている。粒立ちは、やや粗く、聴感上のSN比が少し気になる。低域は量的に多く、甘口だが小型スピーカーには適度のバランスだ。

Lo-D MT-202E

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 MT202Eは、カンチレバーの支持機構に独得な宝石ピヴォット方式を採用しているのが特長である。マグネットには、サマリウム・コバルトを採用し、C型ヨークという新開発の磁気回路によるムービング・マグネット型のカートリッジである。
 聴感上の帯域バランスはかなりコントロールされているが、低域から中低域の質感が甘く、音の芯が弱いために、やや安定感を欠く傾向があるようだ。中域から中高域は粒子が少し粗い感じで、このクラスのカートリッジとしてはスクラッチノイズの質が問題になるかもしれない。ステレオフォニックな音場感は、壁の柔らかいホールで聴くように、拡がりはあるがベースやドラムスのような低音のエネルギーが多い楽器は距離感があり、ヴォーカルは、音像はクリアーに立つが、ハスキー調となり乾いた感じになるようだ。全体に、いま少し音に強さがあれば、フォーカスがピタリと決まりそうである。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 JT555は、ソフトで粒立ちが細かく滑らかな音である。全体に音を軽く柔らかく表現するために、汚れがなくキレイであるのはよいが、やや性質が消極的で実体感や力感不足の面があり、コントラストがつきにくいようだ。ヴォーカルはクッキリとは立たないがナチュラルな軽さがあり、プログラムソースの性質によっては誇張がないメリットにつながるようだ。
 JT333はJT555にくらべ、音に若さがあり、反応も早く、スッキリとストレートに音を出してくる良さがある。音の粒子は細かく、かなり磨かれており、柔らかで耳あたりがよく性質も素直である。バランスは、全域にわたりよくコントロールしてあるが、低域が少し甘く、いま少し腰が強い表現が欲しい印象である。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 F8Cは、数多くのF8シリーズのトップモデルと考えてよい製品である。低域のダンプはほぼ標準的で、粒立ちはやや細かい感じがある。全体に、クリアーで爽やかな音であり、軽快さを狙った音であろう。表情はスタティックで、スッキリとしているが、適度に甘さがあり、やせた音にならぬのがよい。
 F8Eは、低域が少し甘口で、粒立ちは細かく、Cよりも表情はマイルドである。中低域は豊かで響きがあり、スケール感はCよりも大きく、聴きやすく滑らかでゆったりとした雰囲気がある。性質は、かなりデリケートで細かい音をよく拾い、音像は小さくクリアーに立つタイプである。
 F8Mは、低域のダンプが甘口で、中低域が豊かに拡がる傾向はEと似ているが、中域以上の線が少し太く、音にコントラストをつけて表現するあたりが異なっている。帯域バランスは、中域が薄く、高域がやや上昇した感じがあり、再生音楽を効果的に聴く面白さがあるようだ。音の鮮度はかなり高く、スッキリとしている。
 F8Lは、粒立ちはやや粗く、聴感上のSN比が他のモデルよりも悪くなる。音は安定感があリ落着きがあるが、現在の水準ではややソフトフォーカス気味で、クリアーさ、細やかさが不足する。聴きやすく安定しているが、反面、フレッシュでイキイキした表情が欲しくなる感じだ。
 F8L10は、F8シリーズ発売10周年を期して、F8シリーズの成果を集大成したモデルとして発売されたカートリッジである。粒立ちは現代的に細かいタイプとなり、低域のダンプはLよりも甘口である。音色は明るくニュートラルであり安定感があるのが目立つ点だ。Lに少し感じられたベールがかった感じがスッキリと取れて、クリアーになり、表情が豊かで、新しい第2世代のF8Lとして、標準型で信頼感がある音である。クォリティが高く、トータルバランスが優れているのが、このモデルのメリットである。
 F9Eは、全体に細身でクリアーな音をもっている。低域は甘口で、中域以上がスッキリとしているが、スケール感が小さくなり、全体をサポートする力感不足で、表現が表面的に流れて音が安定しない面がある。
 F9Lは、落着いて安定感がある音をもっている。中低域はおだやかさがあり、拡がりがある。ヴォーカルは、子音を低い帯域で強調する傾向があるが、低域が安定し量感があるため、音の重心が低く、力強さが感じられる。ピアノはソフトにホールトーンを伴って鳴り、スケール感がある。音場感、音像定位は標準型と思われる。
 F9Uは、低域のダンプがLよりもソフトとなり、全体のおだやかな印象もさらに上廻っている。但し、中域以上の粒立ちはカッチリとして芯が強く、明快で線は太いが安定度は充分にあり、全域を通して汚れが少なく、耳あたりがよい。とくに、低域から中低域の腰が強く、力があるため、EやLよりも重心が低く、押出しがよい特長がある。
 F9Pは、やや、音の粒子は粗いが、芯が強くカッチリとした力強さがあり、これといった強調感がなく、色付けが少ないメリットをもつが、表情は抑え気味で、安定はしているものの反応の鋭さがほしい場合がある。聴感上の帯域バランスは、中域が充分にあるが、ややナローレンジ型である。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 FRは、磁芯を使わないMC型専門メーカーとして発足し、音の細やかさ滑らかさで高い評価を得てきたが、製品にMM型を加え、改良されるにしたがって、音に厚味が加わり、力強く落着いた、完成度が高い音になってきたように感じる。
 FR1MK2は、粒立ちが細かく、滑らかに磨きこまれているために、透明度があり、柔らかく爽やかな音を聴かせる。低域のアタックは少し丸味があり、中低域は豊かでよく響くタイプである。表情はマイルドで、音にあまりコントラストをつけず、薄陽のさした風景のような感じのデリケートな滑らかさと、柔らかな響きの豊かさを兼備したクォリティの高さが魅力である。
 FR1MK3は、MK2にくらべ、中低域の響きはやや抑えられるが、音の芯が明瞭になり、軽くクリアーで爽やかな感じが出てきた。聴感上の帯域バランスは、MK2よりも一段とフラットに感じられ、低域はよくダンプされ、腰が強く明快であり、中高域から高域の粒立ちが微粒子型で芯がシッカリしており、音のディテールが見事に再生され、フレッシュで反応は早いタイプである。このタイプではとかく中域が薄くなりやすいが、MK3は中域が充実していることが大きなメリットである。表情はやや素気ない感じがあり、現代的なクールな感じと受け取れる。
 FR5Eは、全体に、音を美しくキメ細かく聴かせる特長がある。音の粒子は細かく滑らかで、音の細部を引き出して聴かせるところは、MC的なMM型といった印象がある。音像は小さくクッキリと立ち、フレッシュでイキイキとした表情がある。クォリティが高くキレイに音を表現するところは、やや女性的であり、高級コンポーネントシステムと組み合わせて使うと、見かけよりも芯がカッチリとし、鮮度が高いメリットが引き出されると思う。
 FR6SEは、FR5Eを女性的とすれば男性的な感じが強いカートリッジである。全体に、音の芯が強く線を太く表現し、適度の力感がこれをサポートし、安定感がある。低域は量感がありやや甘口だが、中低域は豊かでよく響くタイプである。音を外側からシッカりと掴み、細部にこだわらずまとめる性質は、FR5Eと対照的で面白い。
 FR101SEは、系統としてはFR6SE系の音である。低域のダンプは標準型で量感もあり、中低域に耳あたりよく響く豊かさがある。ヴォーカルは少しハスキー調となるが、まとまりはよく、現代的なクールさがある。反応は早いタイプで鮮度が高く、表情はFRのカートリッジ中もっとも若い感じだ。
 FR101は、低域は101SEより一段とソリッドになり、汚れがなく、全体に音を明快にカッチリと聴かせる。低域から中低域の腰が強く、しかも弾力性があり、エネルギー感が充分にある。とくに、この中低域は適度の甘さがあるのがよい。思い切りよくストレートな表現は、かなり魅力的である。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ES70EX/IIは、単体の市販カートリッジとしてはローコストな、CD−4システムに使用可能な点が特長である。全体にこの種のワイドレンジタイプ共通の低域が甘口で、間接音成分をタップリとつけて鳴るが、粒立ちは細かく、汚れが少ないメリットをもっている。高域がアラくなりやすい普及型ブックシェルフスピーカーとの組合せで好結果が期待できそうだ。
 ES70S/II。低域は、ダンプされて締っており、70EX/IIとは対照的な低音である。スケール感は少なくなるが、音に活気かあり、早いテンポのプログラムソースにリズミックに乗れる点が好ましい。ヴォーカルはやや粗いが、音像がクッキリと前に出て浮かび上がり、コントラストが付くのは面白い。価格対クォリティの比も充分にある。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 デンオンのカートリッジは、SPの頃から業務用として開発され、現在の主力製品であるDL103およびDL103Sも放送を中心とした業務用の使用がほとんどで、製品としての信頼度や安定度が高く、製品間のバラツキがないことがもっとも大きな特長である。
 DL103は、低出力MC型で、AU320トランスを使用する。このカートリッジは定評が高いモデルだけに、安定したオーソドックスな音をもっている。現在のワイドレンジ型カートリッジとくらべれば、やや音の粒子は粗く、聴感上のSN比が気になることもある。聴感上の帯域バランスはナチュラルで過不足がなく、カラリゼイションが少ないために、この音を聴くとやはり業務用の標準カートリッジらしい風格が感じられる。音の輪郭はクリアーだが、線は少し太いタイプである。性質はマジメ型で落着いた印象を受けるが、表情はやや抑えられるようだ。プログラムソースとの適応性が広く、広範囲の使用に安定した音を再生するところが、よくも悪くも特長である。
 DL103Sは、103とくらべて粒立ちが細かく、より色付けが少なく、ワイドレンジ型である。聴感上の帯域バランスは、低域が甘口で、中低域あたりにタップリと間接音成分があってよく響き、中域はやや薄めで、高域はナチュラルによく伸びている。ヴォーカルのニュアンスをよく引き出し、ピアノも少し軽い感じにはなるが、スケール感があってよく響く。音場感はDL103よりも左右に拡がり、前後方向のパースペクティブを聴かせるが、音像はさしてクッキリと前に立つタイプではない。滑らかで歪感が少ない音だが、力感や実在感は、むしろDL103のほうがよい。トランスを使わずヘッドアンプの良質なものを使ったほうが、音の密度が濃くなり、爽やかで鮮度が高い現代型の音になるようだ。最新録音のプログラムソースとワイドレンジ型スピーカーを使う場合には、DL103よりもこの103Sのほうがはるかに結果がよい。
 DL107は、主に業務用として開発されたMM型で、現在の109シリーズのベースとなったモデルである。低域はダンピングが甘く、高域が上昇しているようなバランスをもつために、音のコントラストがクッキリとつき、華やかな感じの音である。
 DL109Dは、4チャンネルシステムに使用するワイドレンジ型のモデルである。粒立ちが細かく滑らかであり、低域が少し甘口であるが、中高域に輝きがあり、ヴォーカルは細かくなるが音像がよく浮び上がり、ピアノはスケールは小さいがクリアーに響く。音場感は広い空間を感じさせるタイプで、音像はクッキリと前に立つ。全体の表情はおだやかで、クォリティもかなり高い音である。
 DL109Rは、109Dとくらべ、粒立ちは少し粗くなるが、低域の腰が強く、音に厚味があり、力強い特長がある。音の輪郭が明瞭で、クッキリと音像は前に立づ。表情が若く活気があるのは109Dより面白い。

コーラル 777E, 666EX

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井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 666EXは、中低域の量感が豊かで質感の表現が甘くなり、全体の印象はややウェットなタイプと感じられる。表情がおだやかなのは特長となるが、音楽がややムード的に流れる傾向があり、重い音を軽く表現する面がある。音場感はよく拡がるが、定位は明快なタイプではなく、広いホールのライブレコーディングを聴いているようだ。いま少し、アクティブな感じが欲しくなる音だ。
 777EはMC型で、T100トランスを使用した。この音は基本的にはウェット型だが、中域の粒立ちが少し粗いようで、ヴォーカルではややハスキー調となり、押出しがよく迫力がある。ただ、低域は表情が甘く、質感を重く聴かせるために、どうにも音が決まりづらい面があり、中域の特長が活かしきれないのが残念な点だ。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 C550Mは、中域の粒子が粗いようでちょっと聴きにはスッキリとした音とも受取れるが、聴感上のSN比が気になることもあり、ヴォーカルもニュアンスの再現が不足するようだ。これにくらべ、中低域あたりから低域はソフト型だが量感があって全体の音の表情を、おだやかで、耳ざわりのよいものとしている。
 C404Xは、エレクトレット・コンデンサータイプだが、低域が豊かでスケール感があり、全体の音のクォリティは高い。音の性質は素直で、プログラムソースにたいして軽くしなやかに反応を示し、表情は、しっとりとした滑らかさがあって、やや、広いホールの良い席で音楽を聴いているような印象がある。ヴォーカルは、あまり、子音を強調せず、軽くナチュラルな感じが好ましい。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 オーディオクラフトのカートリッジAC10Eは、全体の音の傾向として、最近同社から発売されたコントロールアンプAC3001と似た音をもっている。
 聴感上の帯域バランスは、無理がなく自然にコントロールされ、歪感がなく、おだやかで、大人っぽい印象があるのが特長である。全体に音の粒立ちは細かいタイプで、滑らかな柔らかさがあり、艶やかさもあるために、表情はおだやかである。低域から中低域にかけての質感は甘く、軽い音であるために、ビートが効いたリズミックなプログラムソースではやや不満が残るが、逆に、適度に音場感を感じさせるような適度の間接音が全体の音をフワリと包んで響くあたりはメリットと思う。音と対決して聴き込むタイプではないがマイルドな性質は好ましい感じである。
井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 AT15Eは、ソリッドで力強く、クリアーな音である。粒立ちはこのクラスの標準だが、芯が強くシッカリしているのが目立つ。帯域バランスはナチュラルで、よくコントロールされ、とくに低域がよく伸ぴ、腰が強く引き締まったソリッドな音であることが、国内製品としては珍しい。中域もエネルギーがタップリとあり、薄くならず、高域も必要にして充分な伸びがあり、無理に伸ばした感じがない。表情は、国内製品としては大きくダイナミックであり、押出しがよい。音場感は左右に拡がるがパースペクティブな引きが少なく、音像は前に出てくるタイプだ。中低域の響きがよく、雰囲気もよく出すが、性質はややドライなタイプで、男性的な割り切った魅力がある。
 AT15Saは、15Eとは同系のモデルナンバーをもつが、音的にはまったく異なった製品である。粒立ちは細かく、表情はおだやかで大人っぽさがある。低域は甘口であり、中低域はまろやかに響き、豊かさがある。ヴォーカルは子音をやや強調するが、ソフトで耳あたりよく、ピアノは暖かみがあり、適度の間接音を伴って響く。音場感はスピーカー間の奥深く後に拡がるタイプで、ゆったりと聴くためには相応しい。性質は、15Eとは対照的に、ややウェット型である。
 AT14Eは、15Eよりも粒子は粗くなり、全体の印象では軽く反応が早いキビキビした表情があり、音の鮮度が高いメリットがある。低域は腰は強いが、やや15Eよりも柔らかく量感があり安定している。中域から中高域は、明快で音にコントラストを付け、硬質なストレートな魅力となっている。感覚的にフレッシュで、割り切った音は、力感もあり、リアルで楽しい。
 AT14Saは、粒子を細かくし、線が細くなったAT14Eといってよい。低域から中低域が豊かで柔らかく、中高域は輝く感じがあり、全体の印象はワイドレンジのハイファイ型である。
 AT13dは、15や14系とは異なった、中域を重視した安定感があるバランスの音である。音色の傾向はウォームトーン系で、低域には量感があり柔らかく、中低域も充分にあるため安定感がある。中域以上はやや粒立ちが粗く、高域は適度にコントロールして抑えてある。ヴォーカルはやや大柄になり、音像の立ちかたは平均的水準だろう。適度のスケール感をもち、マクロ的に音をまとめるため、小型スピーカーシステムには適していると思う。
 AT11dは、13dよりも中低域が軽く響き、全体は適度にメリハリが効いたウォームトーン系で、トータルバランスがよく汚れが少ないため、幅広いプログラムソースをこなす特長がある。強調感が少なく、音像はナチュラルに立つタイプだ。
 AT20SLaは、AT15Eのグレイドアップモデルといった音で、低域が締まり、音の芯が強く、充分に洗練された高いクォリティをもっている。音像はクリアーに立ち、音に透明感があり、爽やかで明るい。

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 一流品という表現は、各分野で幅広く使用され、高級品の表現とも混用されているため、改まって一流品とは、と考えてみると、何が一流品かの判断は大変に難しいものがある。
 ちなみに一流の意味を手許にある岩波版『国語事典』で調べてみると、その意味は①その世界で第一等の地位を占めているもの、②技芸などでの一つの流派、③独特の流儀、とあり、高級とは、等級や程度の高いこと、とある。意味上での幅は、高級にくらべ、一流のほうが広く、簡単に考えればその世界で第一等の地位を占めているもの、とする㈰の意味だけと考えやすいが、オーディオ製品に限らず、趣味、趣好の世界では、①に劣らず、②または③のもつ意味も、かなり重要なポイントであろう。
 オーディオ製品に焦点を絞って世界の一流品を考えてみれば、世界的に、各地で開発され商品化された製品が、いちはやく輸入され、場合によっては日本市場のほうが優先することもあるほど活況を示しており、ほぼ完全に、世界中のオーディオ製品が、現実に手にとって見ることができ、その音を聴ける現状では、アンプ、スピーカーシステム、テープデッキといった各ジャンル別での世界的な製品の動向が、何を一流品とするかにあたっては、最大のポイントとなり、各ジャンル別に一流品と判断する、いわば0dBのラインが異なってくるはずである。
 一流品の条件として、一般的な、デザイン、仕上げ、精度、性能、機能、などのベーシックなポイント以上に、まず各ジャンル別に、海外製品、国内製品の概略の動向や実情をチェックする必要があると思う。
 まず、入力系、つまりプログラムソースを受持つテープデッキ、チューナー、それにプレーヤーシステムから、それぞれのジャンルでの特長を考えたい。
 テープデッキでは、現在カセット、オープンリール、それに新登場のエルカセットの3種に限定してよく、カートリッジテープについては、もはやオーディオから除外してよいだろう。
 フィリップスで開発されたカセットテープは、予想以上にソフト、ハードの両面から急速に発展し、取扱いの容易なメリットは、多くのユーザーの支持を受け、現存のテープブームの基盤となるほどの位置を占め、末端では、オーディオ製品というよりは、むしろ、日用品化しているといってよい。海外製品と国内製品の力量の比較は、性能・機能面で圧倒的に、国内製品が強く、デザイン面で強い海外製品も、ことこのジャンルでは機種が少なく、性能面でも劣り、とても互格の競争力はない。また、ソフト側のテープでも、海外製品は、高性能化の立遅れがあり、市場は国内製品の独占状況にある。
 国内製品は、各メーカーともに高い水準にあるが、高価格、高性能なカセットデッキでは、オリジナリティの高いナカミチの製品が群を抜いた存在であり、海外でも非常に高い評価を得ている。やや特殊な、というよりはカセット本来のコンパクトで機動性があるポータブルタイプの製品では、西独ウーヘルの超小型機がユニークな存在で目立っている。
 エルカセットは、国内で開発された新しいタイプで、世界的な支持を受けるか否かは、今後にかかっており、世界の一流品となると時期尚早の感が深いタイプである。独得のオートマチック動作が可能で、テープトランスポート系の優位さをもつ面では、従来のテープとは、やや異なった方向の新しいプログラムソースとしての発展を期待したい。
 オープンリールテープは、4トラックタイプと2トラックタイプにわかれるが、2トラックタイプが、高級テープファンに愛用され、4トラックタイプは、やや低調というほかはない。しかし、このタイプが、本来のメリットを失った結果ではなく、カセットの需要増大による、需要の減少と、それを原因とする新製品開発が少なくなったことの相乗効果によるもので、魅力のある製品が出現すればオーディオのプログラムソースとしては、カセットとは比較にならぬ大きなメリットがあるタイプである。
 2トラックタイプは、38cmスピードが主流を占めるが、19cm速度が、ランニングコストを含めて、もう少し注目されてよいだろう。ローコスト機は、カセット高級機と同等の価格であり、両者の性能だけを比較すると、かなりの矛盾が感じられる。また、海外製品と国内製品を比較すればコンシュマーユースに限れば、海外製品は、カセットほどではないが製品数は少ない。しかし、外形寸法が小さく重量が軽い特長をもつモデルが多く、アクティブに音源を求めて移動する録音本来の目的に使う場合に大変な利点がある。とくにマルチ電源を使うポータブルタイプでは業務用のモデルを含めて国内製品に求められない機種に、いかにも一流品らしいものがある。国内製品は、大型重量級のいわゆる豪華型が高級モデルに多く、移動には自動車が必要というものばかりであり、そのなかにあって、ソニーのポータブル機は、やや重量はあるが、性能は同じタイプの海外製高級機に匹敵する、唯一の存在である。
 チューナー関係では、限られた超高級モデルを除いて、国内製品が、総合的に高い位置にある。趣味的にみれば、高価格な製品のなかに質、実ともに一流品ににふさわしいモデルが点在しており、かなり趣味性をいかして一流品が選べる分野である。
 プレーヤーシステムでは、システムとしてはまったく性能面で海外製品の出る幕はなくなってしまった。最近の高価格なシステムに採用されている水晶制御のDD型は、音の安定度がさらに一段と向上し、この面では大変に素晴らしい。しかし、デザイン面とオート化の点では、今後に期待すべきものが残る。
 カートリッジ関係では、MC型は国内製品、MM型やMI型などのハイインピーダンス型は、海外製品というのが概略の印象であるが、最近、MM型を中心とした国内製品の性能が急速に上昇して、こと物理特性では海外製品に差をつけている。今後いかに、音楽を聴くためのカートリッジとして完成度を高めるかに少しの問題があるようだ。MC型は、海外製品はオルトフォン、EMTの2社のみであり、製品の多い点では国内製品が圧倒的であり、また、発電方式のメカニズムのオリジナリティでも各社それぞれに優れたものがある。ちなみに国内製品のMC型は、世界的に定評が高く、コンシュマー用をはじめ、試聴用としても数多く使用されている。全般的にカートリッジは、小型、軽量で輸入経費が少なく、海外製品が価格的にも、国内製品と対等に競争できる、やや特殊なジャンルで、性能もさることながら音の姿、かたち、表現力が一流品としては望まれる点である。
 アンプ関係は、プリメインアンプが主流の座を占め、国内製品は、その製品数も非常に多く、モデルチェンジが大変に激しく、その内容も確実に向上している。しかし、パワーアップ化の傾向が著しいジャンルだけに、外形寸法的な制約があって、必然的にパワーには限界を生じるはずである。最近の傾向としてセパレート型アンプの価格が下降し、プリメインアンプの高級機とオーバーラップした価格帯にあるため、一流品の選択は難しく、デザインを含めて質、量ともに、セパレート型アンプに匹敵するものが要求される。海外製品は、例外的な存在だけで平均レベルは、国内製品が圧倒的である。
 総合アンプ、つまりレシーバーでは、コンポーネントシステムとは方向が異なった印象の製品が多く、数量的にも国内市場での需要は少なく、やや特殊な例を除いて一流品らしき製品がないのは大変に残念なことである。高度な内容をもつプリメインアンプとチューナーを一体化した、一流品らしいレシーバーの出現を期待したい。
 セパレート型アンプは、海外製品、国内製品ともに活況を呈している。本来は制約がない無差別級のアンプであるだけに、現在のモデルは、多様化し、一律に考えることは不可能である。オリジナリティが高い製品から選択すれば、大半は世界の一流品に応わしいモデルともいえよう。
 スピーカー関係は、高価格な製品では圧倒的に海外製品が強く、そのすべてが文字どおりの世界の一流品であり、一流品でなければ存在しえないことになる。国内製品は、このところ急速に内容が充実しはじめ、価格帯によっては、一流品らしさのあるモデルが出はじめている。使いこなしを要求されるジャンルであり、そのモデルがいかに多くの可能性を持っているかがオリジナリティを含めて一流品に必要な最大条件である。

ルボックス A700

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 同社のトップモデルとして作られたモデルで、業務用のスチューダーデッキなどに見られる、テープトランスポートにエレクトロニクスを多用する傾向を、このモデルも採用している。基本的な構想は、HS77MK4と同じであるが、キャプスタンモーターが水晶発振器の信号を基準とする速度制御方式となり、テープテンションにもサーボ方式が採用されている。トラック方式は、当然のことながら2トラック・2チャンネルで、最大使用リール10号、テープ速度は19cmと38cm、エレクトロニクス関係では、アンプ系がフォノイコライザーまでを内蔵した、いわばプリメインアンプといった構成であるのはHS77MK4と同様である。テープ走行系のコントロールは、大変にテープを使う側の立場を考えた、いわばテープファン好みの細かい配慮が見受けられるあたり、さすがに伝統のあるメーカーならではの素晴らしさである。このモデルは、業務用のスチューダーを思わせる、清澄で滑らかな音をもち、品位が大変に高く、この面ではHS77MK4と対照的である。

ルボックス HS77 MK4

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 テープデッキといえば、米アンペックス社とスイス・スチューダー社の製品が、テープデッキのファンにとっては東西を代表する名門ということができる。ルボックスは、スチューダーと兄弟関係にあるブランドで、古くは管球タイプのモデルG36や、ソリッドステート化されて以後、数度にわかたり改良の手が加えられたA77がよく知られている。
 HS77MK4は、A77MK4が4トラック・2チャンネル方式であるのに対し、2トラック・2チャンネル方式であり、テープ速度が19cmと38cmに変わったモデルである。このモデルは、型番からもわかるように、ソリッドステート化されて以来、基本型は変化せずマイナーチェンジが絶えずおこなわれて、つねに、いわゆる2トラック38cmデッキのスタンダードとして、時代に変わっても安定した性能と音質をもっていることは驚くべきことである。
 ヘッド構成は3ヘッド方式、それにACサーボ型のアウトロータータイプ・キャプスタンモーターに2個の6極アウトロータリー型リールモーターを組合せた、いわば標準型で、機能面でも国産デッキのような多彩さはなく、チューナーなどの入力をセレクトでき、パワーアンプを内蔵しているあたりは、テープレコーダーとして、このデッキ1台を中心としてコンポーネントシステムができる特長がある。
 この種のデッキとしては比較的に小型で軽量であり、運搬にもしいて車の使用がなくても運べるのは少なくとも国産デッキにない大きな魅力である。HS77MK4になって、従来のルボックスのサウンドとはやや変わっているように思われる。最近のヨーロッパのオーディオ製品の音がかなりアメリカ指向となっているように、このデッキもアンペックスを思わせるような、活気がある力強いダイナミックな傾向の音が感じられる。いわゆる2トラ38らしい爽快な音で、これが、さらにこのデッキの魅力をましていると思う。

サテン M-18BX

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 すでに定評がある超精密工作を基盤としてつくられる純粋なMC型で、ダンパーにゴム材を使用していない特長がある。M18BXは、ベリリウムカンチレバー採用のトップモデルで、いわゆるカートリッジらしい音をこえた異次元の世界の音を聴かせる製品だ。

ソニー XL-55

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ソニーには、従来もMC型の製品があったが、 XL55は自社開発の最新モデルである。発電方式は、コイルの巻枠に磁性体を使わないタイプで、コイルには独得な8字型をしたものが、左右チャンネル分として組合されている。カンチレバーは、軽金属パイプと炭素繊維の複合型で軽量化され、CD−4方式にも対応できる。針圧は、やや重いタイプで、音の重心が低く、安定した力強い音が特長。性能は現代的ながら音質的に表面にそれが出ないのが良い。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 巻枠に磁芯を使わない純粋のMC型カートリッジとして登場したFR1、それを改良したFR1MK2を経て、さらに一段と発展したFRのトップモデルがFR1MK3だ。
 発言方式は、かつての米フェアチャイルドやグラドの発展型ともいうべき、FRの独自のタイプである。柔らかく、粒立ちの細やかな音である。やや大人っぽい完成度の高さが魅力であるが、性質がニュートラルで、音の輪郭を正確に画き、素直に反応するスムーズさはこのカートリッジならではのものがある。

デンオン DL-103S

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 スピーカーシステムやアンプ関係では、海外製品と国内製品は価格的に格差があり、市場で対等に戦うことはないが、ことカートリッジについては、価格、性能ともにあまり差はなく、他の分野にくらべて海外製品がかなりの占有率をもっている、やや特殊なジャンルである。しかし、発電方式をMC型に限定すれば、海外製品は欧州系のオルトフォンとEMTのみで、現在はこの2社以外にMC型を生産しているメーカーはない。これに対して国内製品は、圧倒的に銘柄が多く、その機種が多く、世界でもっとも多くMC型を生産している。国内製品のMC型は、すでにかなり以前から海外の高級ファンの一部に愛用されている。
 デンオンのMC型は、十字型の独得な磁性体の巻枠を採用した、やや高いインピーダンスをもつタイプだ。発電方式そのものが明解であり、二重カンチレバーによる軽量化を最初から採用している。第一作のDL103は、NHKをはじめ放送業務用に採用され、製品が安定し、信頼度の高さでは群を抜いた、いわば標準カートリッジといえるモデルだ。
 DL103Sは、103を改良し超広帯域化した製品で、最近の質的に向上したディスク再生では、聴感上のSN比が優れた、いかにも近代的カートリッジらしいスッキリと洗練された音を聴くことができる。製品間の違いが少ないため、信頼度が高い新しい世代のカートリッジを代表する文字通りの一流品だ。

ダイヤトーン DP-EC1

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 プレーヤーシステムには、現在のように高度なメカニズムやエレクトロニクスが使用できる時代になっても、オートプレーヤーは正統派のコンポーネントではないとする考え方が残存しているようである。たしかにメカニズムを使うオート方式は、たとえばアームの動きひとつとってみても、いまだに手で操作したような、感覚的なスムーズさが得られないことが多いのは事実だが、オート化したための性能低下や、カートリッジの針先やディスクへの影響は、国内製品に限れば普及品といえども皆無である。
 DP−EC1は、エレクトロニクス・コントロールを意味する型番をもった、最新の技術を導入したフルオートプレーヤーシステムである。デザインはスリムな薄型にまとめられ、色彩的にも明るく、とかく重厚なデザインが多い高級モデルのなかでは、軽快さが特長である。機能面では、ディスクの有無、ディスクサイズと回転速度の自動選択が、光線を利用して純電気的にコントロールされ、アームの水平方向の移動速度は適度に早く、リフターの動作、アームの反転ともに連続的に休まず、滑らかに動作する。メカニズム使用の方式に慣れた感覚では、早く確実に動くために、ややドライに感じられるかもしれないが、逆に、これがエレクトロニクス・コントロールらしい新鮮な魅力である。システムトータルの音も現代的で、反応が早く、帯域の伸びた感じがあり、基本的なクォリティが充分に高いために、高級カートリッジの微妙なニュアンスの魅力をよく出して聴かせる。

ソニー ST-A7B

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 現在の高級チューナーとして、とくに驚異的な内容を誇る製品ではないが、デザイン、性能、機能などの総合的なバランスが大変に優れたモデルである。
 デザインは、ソニー製品の特徴である機能美をもったもので、仕上げも入念であり、各コントロールのフィーリングも一流品らしくコントロールされている。最近の高級チューナーといえば、シンセサイザー方式の導入や、水晶発振器の信号を基準として局部発振回路を100kHzおきにロックする、クリスタルロック方式が採用されることが多いが、シンセサイザー方式の重心周波数がディジタル表示される未来志向型といった感じはかなり面白いが、スイッチを使っておこなう選局は実感が薄く、どうも選局をしたという感覚的な確認が乏しい。
 ST−A7Bでは、クリスタルロック方式を採用し一般的な走り幅が広いダイアルをもちながら、シンセサイザーチューナー的な、ディジタル周波数ディスプレーをもっているのが大変に楽しいところである。たしかに、選局ということだけでは不要かもしれないが、チューニングツマミを回して選局するという、かなり人間的な感覚と、新しい世代のチューナーを象徴するようなディジタルディスプレイと共存は、まさしく趣味としてのオーディオならではのものといった印象である。また、とかく高級チューナーは、FM専用とする傾向があるなかに、完全に独立したAMチューナー部があり、FMダイアルの片隅みに小型のダイアルが目立たず付いているのも好ましい。

ラックス M-6000

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 200Wをこすハイパワーアンプは、オーディオコンポーネントというよりは、マシーンを思わせる業務用機器として開発されたモデルが、そのすべてといってもよい。これらのパワーアンプは、一般的に19インチ・ラックサイズのパネルをもち、デザイン、重量、外形寸法のいずれをとっても、実際に家庭内で使用してみると、予想外にその存在を誇示し、ある種の違和感はまぬがれないようである。
 M6000は、そのなかにあって300W+300Wという、現時点でのこの種のアンプの上限ともいえる巨大なパワーを備えながら、当初からコンシュマーユースとして企画され、製品化された異例なパワーアンプである。
 たしかに、実質的な外形寸法、重量は、いわゆるコンシュマーユースの枠をこしてはいるが、デザイン的に考慮されているために、感覚としては大きく感じられず、家庭内に置いて、さして違和感が生じないメリットは大きい。機能面でのメーターとLEDを使ったピークインジケーターの組合せによるパワー表示、リモートコントロールでリレー制御によっておこなう電源のON・OFFなど、高級パワーアンプに応わしいものが備わり、音質的にもハイパワーアンプにありがちな粗い面がなく、平均的な音量では柔らかく、細やかな音を聴かせながら、ピーク時には並のアンプでは想像できない穏やかながら底力のあるエネルギー感を再現する。趣味としてのオーディオに徹したラックスならではのハイパワーアンプだ。

ヤマハ CR-1000

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 国内では、レシーバー、とくに高級レシーバーの需要は皆無に等しいとされているが、逆にいえば高級ファンの要求を満たすにたる製品がないことも、ひとつの重要なポイントであることは、意味はやや異なるが、4トラック・オープンリールデッキのジャンルと共通性があるといえよう。
 CR1000は、デザイン、性能、音質などの総合的な面で、高級レシーバーと呼べる稀な存在である。ヤマハ独得なシルバーパネルと白い栓の木を使ったキャビネットは、巧みに調和がとれ、仕上げも高級モデルに応わしい精度の高さがある。内容面では、CT800というチューナー異常の性能をもつFM受信部と、CA1000プリメインアンプと同等のオーディオアンプ部を組合せているが、音質面では、構造面の違いだろうか、いかにも高級レシーバーともいえる安定した密度の高い音で、必要にして充分の聴感上の帯域、力感、粒立ちのよさなどをもっている。かなりの高級スピーカーシステムをドライブしても、それぞれの、らしい個性を引出して聴かせる内容の高さと安定感は、むしろ専用チューナーとプリメインアンプの組合せをしのぐものがある。わかる人が使う高級レシーバーとしては、まさしく第一級の製品だ。

ヤマハ CT-7000

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ヤマハは、新プリメインアンプのCA2000、1000IIIで、ソフィスティケートしたアンプという表現をPRに使っているが、この表現にもっとも応わしいものは、ヤマハならずともオーディオ製品のなかでCT7000をおいて他にないであろう。開発時点で、時代を先取りした高度な性能、機能を洗練されたデザインの内に収め、仕上げ、加工精度などの細部をみても別格のものがある。現在のヤマハのコンポーネントシステムのなかでも、このモデルは隔絶した位置にあるが趣味のオーディオ製品としてこれ以上いいしれぬ魅力を秘めたモデルはあるまい。

サンスイ SP-G300

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 新しい価格帯に登場したフロアー型スピーカーシステムである。構成は、ユニークな、同口径で異った性質の2本のウーファーを並列駆動する低音、本格的なコンプレッション型ドライバーユニットと音響レンズつきホーンを組合せた高音を採用した2ウェイ・バスレフ型である。
 低域、高域ともに、充分に伸びた聴感の帯域は、近代型モニターシステム的であり、とくに低域の音の姿、かたちをナチュラルに表現し、スケール感が大きいのは、フロアー型ならではの魅力である。また、ホーン型ユニットが受持つ帯域は、いわゆるホーン的な感じが皆無で、特定のカラリゼーションがないのは珍しい。音でなく、音楽を楽しむスピーカーである。

ヤマハ C-I, B-I

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 海外製品、国内製品ともに、セパレート型アンプのジャンルでは、新製品が意欲的に開発され、発表されているが、高級セパレート型に限ってみれば、すでに最新モデルではなくなったとはいえ、ヤマハのセパレート型アンプのプレステージモデルである、コントロールアンプCIとパワーアンプBIは、大変にユニークな存在であることに変わりはない。
 ヤマハが、文字どおりに世界に先駆けて開発したオーディオ用のバーティカルタイプ・パワーFETをパワー段に、並列接続ではなく、いわゆるシングルプッシュプルとして使い、150Wのパワーを確保し、しかも、前段の信号増幅系はすべてFET構成という、パワーアンプのBIは、回路構成のユニークさ、機構設計のオーソドックスさなど、どの面をとっても本格的な高級セパレート型アンプらしい。
 基本的なデザインは、米アルテックの業務用アンプなどと共通性があって、フロントパネルを持たない、機能優先の単純な魅力があり、オプションのピーク指示型メーターをもつ、コントロールパネルを付ければ、一般的なこの種のパワーアンプのスタンダードなタイプとなり、加えて5系統のスピーカーシステムがレベル調整付で使用可能という2面性は、大変に興味深いところだ。また、メーター付のコントロールパネルUCIは、専用ケーブルを使用すれば、BIから離してリモートコントローラーとしても使用できる特長がある。
 BIは、いわゆるFETアンプらしい音が表面的に感じられず、充分にコントロールされたトランジスターアンプと、あまり音質的な隔りがないところが特長である。聴感上の帯域バランスはナチュラルで、音の粒立ちが明快であり、粒子の角が適度に磨かれており、力強く、音を整然と整理して聴かせるタイプである。低域に力感があり、硬さ、柔らかさを対比して表現できる質感の再現性に優れ、中域でも音像の輪郭をシャープに見せるクリアーさが好ましい。表情はやや硬く、聴く側にある種の緊張感を要求するが、格調の高さは一流品ならではのものがある。
 コントロールアンプCIは、BIにやや遅れて登場した、やはり全信号増幅段をFET構成とした特長のほかに、本格的なコントロールアンプとして、ほとんど要求を満たすことが可能な、驚くほどの多機能を備えた製品で、コントロールアンプとしてこれほど重量があるモデルは他にないといってよい。
 連動誤差を抑え、かつスムーズに音量をセットできるスイッチ型でない、連続可変型のボリュウムコントロール、高音、中音、低音にわかれたトーンコントロール、連続可変型ラウドネスコントロール、ピーク指示型で多用途なレベルメーター、さらに、ピンクイズとサインウェーブの発振器など、ある種の簡単な計測まで可能という機能の幅は大変に広い。
 CIは、デザイン、機能がメカニックなことにくらべると、予想に反して非常に透明度が高い、澄み切った音である。音の反応はかなり早く、BIよりも、音色が明るく、伸びやかさが魅力的である。

ボザーク B-410 Moorish

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 コンポーネントアンプが高性能化し、ハイパワー化してくると、それらの高級アンプをつかってドライブするスピーカーシステムのほうは、名器として定評が高い大型システムが次々と姿を消して、世界的にみてもこれぞというスピーカーシステムは数えるほどしか残っていないし、新製品として登場する例も異例といえるほど少なくなった。
 米・ボザーク社の代表製品である、B−410コンサートグランドは、現在も生き残っている数少ない伝統的な大型フロアーシステムである。構成ユニットは、低音に30cmウーファー・B−199が4本、中音16cmメタルコーン型スコーカー・B−209Aが2本、高音5cmメタルコーン型トゥイーター・B−200Yを8本使った3ウェイ・14スピーカーのマルチウェイ・マルチスピーカーシステムの代表作である。
 ボザークのユニットは、B−410に使用されている専用ユニットが3種類と、他に全域用の20cmメタルコーン型・B−800の4種類があるだけで、創業以来、基本的な設計変更もなく、一貫して、優れたユニットは一種類、といわんばかりに同じユニットを作り続けている。ウーファーコーン紙には、羊毛を加えた独得なタイプが使用され、例外的に複数個の使用でも特性が崩れない特長があるといわれている。ウーファー以外の3種類のユニットは、コーンが継目のない軽合金製のメタルコーン型であることが特長であり、表面に特殊なゴムをコーティングして金属の共鳴を抑えているから、一般のパルプでつくったコーン紙と見誤ることもあるであろう。
 ボザークのスピーカーシステムは、普及機を除いてすべてこの4種類のユニットを組合せてつくられているが、クロスオーバーネットワークは、もっともシンプルな6dB/oct型である。このネットワークも同社のシステムの特長で、位相特性が優れ、聴感上でもっとも好結果が得られるとことだ。基本的に各専用ユニットが広帯域型であることにより、傾斜のゆるやかな6dB/oct型ネットワークの採用を可能としていると思われる。また、高音、中音のレベルコントロールを装備せず固定型であるのは、大変に使いやすいメリットになっている。
 コンサートグランドシリーズは、デザインにより、B−410がクラシックとムーリッシュ、B−310Bコンテンポラリーの3種類があり、ユニット配置は下側から低音用が2本づつ2段に並び、その上に中音用が横一列に2本、高音用は縦一列に8本が中央に置かれているが、B410クラシックだけが、左右専用型の対称配置である。
 このシステムは、エネルギー感が充分にあり、密度が濃く重厚な音が魅力である。とくに低域のレスポンスが伸び、腰の強い重低音を再生できるのは、この種の大型フロアーシステムならではの感がある。また、音量の大小によって聴感上のバランスが変化せず、小音量でも小型スピーカーと同様に扱うことができる。一般に数多くのユニットを使うシステムでは、音像定位で問題を生じやすいが、小音量のときでも音像がシャープに立つのは、このシステムの特筆すべき点だ。

ロジャース LS3/5A

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 英国のスピーカーシステムには、モニターの名称をつけた製品が多いが、英国放送BBCで採用している正式なモニターシステムとしては、KEFのLS5/1Aがよく知られている。ロジャースのLS3/5AもBBCモニターとして採用されている超小型のシステムである。
 LS3/5Aは、低域はさほど伸びていないが腰が強くクリアーな低音であるために、聴盛上の不足はあまり感じない。また、2ウェイシステムであるがウーファー口径が小さく、トゥイーターとのクロスオーバーが低いために、中域がしっかりとしているのが特長である。ステレオフォニックな音場の拡がりは、英国の近代型システムの独得の魅力だが、このシステムも音像定位がクリアーでピシッと焦点を結んだように立上がり、まるで、音を聴くというよりは音像が見えるようにクッキリとしている。クォリティは大変に高く、アンプ、カートリッジのキャラクターをストレートに見せるあたりはやはりモニターである。

ラウザー TPI Type D

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 スピーカーシステムが、ブックシェルフ型全盛になり、ウーファー、スコーカー、トゥイーターなどの専用ユニットを組合せるマルチウェイ方式が大勢を占めようが、LP時代から一貫して中口径のフルレンジユニットのみを作り続けている英国・ラウザー社は、現在では貴重な存在といえよう。
 数ある同社のスピーカーシステムのなかで、長い伝統を誇る機種は、独得なデザインをもったTP−Iであろう。このデザインは、TP−Iが珍しいエンクロージュア形式を採用しているためで、ドライブユニットの前面には比較的短かいフロントホーン、背面は折たたみ型で全長が長いバックローディングホーンをもつ、いわば複合型ホーンエンクロージュアを、さらにコーナー型とし、部屋のコーナーに設置したときに両側の壁面と床の三面を積極的に低音用のバックローディングホーンの延長として使うタイプだ。
 使用ユニットは、振動系にラウザー独得のサブコーンつきの白いコーン紙を使う数あるユニットのなかでは強力型のPM−3である。このユニットは、あたかもSP時代の英国・フェランティ社のユニットを思わせるような超大型磁気回路にスピーカーフレームがとまっているような珍しい製品で、同社のPM−6ユニットなどにくらべると、ひとまわり大きなディフューザーつきである。このシステムの独得な音は、まさしく他のシステムでは得られぬ、かけがえのないもので、いわば麻薬的な魅力といったらよいだろう。

マランツ Model 1250

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 最近の多様化したセパレート型アンプの登場によって、プリメインアンプはその本来の意味を問われることになり、とくに高級プリメインアンプにともすればプリメインアンプとセパレート型の境界線に位置するだけに、かなり苦しい立場に立たされているように感じられる。マランツ#1250は、基本型をコントロールアンプ#3600とパワーアンプ#250Mにとり、一段とリフアインされた内容をもっているために、質的にも量的にも、はるかに価格が高いセパレート型アンプに匹敵するものがある。機能面は、とくにテープ関係が#3600より一段と実戦的なものに発展し、使いやすく、大型フロアースピーカーを充分にドライブするプリメインアンプの本格派である。

ピカリング XUV/4500Q

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 エンパイア 4000D/IIIと双璧をなす米国系のトップランクの製品である。聴感上の帯域は、いかにもワイドレンジ型らしく伸び切っており、粒立ちが細かく、鋭角的に切れ込みのよい音を聴かせる。とくに低音が力強く、ソリッドな点では抜群である。音質上で、エンパイア 4000D/IIIと好対照を示す一流晶中の一流品である。

ピカリング XSV/3000

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ピカリング最新の2チャンネルカートリッジのトップモデルである。音質はXUV/4500Qよりも伝統的なピカリングらしさがある。音のコントラストをクッキリとつけ、力強く、エネルギー感のあふれた男性的な魅力があり、質的にも充分に磨かれているために、音の重心が低く、安定感がある。反応は、かなり早く、いかにも新しいカートリッジらしさがある。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 テープデッキ関係はいうに及ばず、ディスクを中心とする、いわゆるコンポーネントシステムでも、カセットデッキなしでは何事も語れないともいえるほど、カセットデッキは普及し、ラジオカセットやモノーラルの小型レコーダーまでを含めれば、もはやカセットは、オーディオではなく、日用品となったといってもよいであろう。
 この数多くのカセットデッキやテープレコーダーの頂点に立つものが、ナカミチ1000である。ことオーディオコンポーネントの分野に限っても、カセットデッキの極限に挑戦し、市販のオープンリール38センチ・2トラックデッキに迫り、追抜く、性能と音をもつといわれたこのモデルの存在は、それだけでも大変に素晴らしいことであるし、その性能の高さと音質の良さが、カセットデッキが、オーディオのプログラムソースとして使用可能であると、それまで不信感のあった無数のユーザーの信頼を得ることができ、数多くのメーカーを刺激して、今日のカセットデッキ全盛の時代を招いた原動力になっていると思う。
 録音モニター可能な3ヘッド構成、ワンタッチで軽快に作動するテープ走行系のコントロールボタン、センターチャンネルマイク、ドルビーをはじめとするノイズリダクションやリミッター類といった機能に加えて、ヘッドアジマス調整用の発信器と、LEDを使う調整チェック装置など、テープを使うユーザー心理を見抜いた卓越した設計が随所に見られる。やはり、世界の高級ファンにこの高価格をもちながら認められ、愛用されているのは、まさしくこのデッキの実力以外の何ものでもない。
 700は、基本型を1000に置き、デザインを変えて、コストダウンしたデッキである。ナカミチとしては第2位にランクされるモデルであるが、カセットデッキとしては、文字通り高級デッキであることに変わりはなく、価格を考えての実質的な魅力は、一般的には700のほうが、むしろ多いはずである。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ソリッドステートアンプ全盛とも思われる米国でも、一部では真空管アンプの要望は絶えることがなく、新設計のモデルが新しい世代の真空管アンプとして登場している。デンオンのセパレート型アンプのトップモデルとして開発されたコントロールアンプPRA1000BとパワーアンプPOA1000Bも、昔なつかしい、管球アンプではなく、現代のソリッドステートアンプの技術を、独得な性格をもった増幅素子である真空管に導入してつくられた新世代の真空管アンプである。
 コントロールアンプPRA1000Bは、フロントパネル下側にヒンジつきパネルをもつシーリングポケットをもち、常用するコントロール以外は、この内部に収納した簡潔なデザインに特長がある。性能面では、SN比が高く、フォノ入力およびAUX入力などのハイレベル入力部分の許容入力が大変に高く、それでいて左右チャンネルのクロストークが非常に少ない、いわば真空管の特長を活かし、欠点を抑えた、現代的な設計である。
 パワーアンプPOA1000Bは、かつてのマランツの名器として定評高かった#9Bを、現代的にモディファイした印象を受ける、管球アンプらしい素晴らしいデザインと仕上げが魅力である。出力管には、東芝の6G−8Bをプッシュプルとし、カソードNF巻線付の広帯域型出力トランスとのコンビで、100W+100Wのパワーを得ている。いわゆる並列接続でない、シングルプッシュプルのパワーアンプとしては、もっとも大きなパワーであろう。
 パネル面の2個の大型メーターは、ピーク指示型で、高域は、50kHzまで平坦な指示が可能であり、指針の動きも大変に良い。このアンプは、いわゆる管球アンプらしい情趣のある音はまったくなく、ストレートで力強く、充分に拡がった音場感タップリの音を聴かせるあたりが、新世代の管球アンプらしい独得な魅力である。デザイン、性能、音質ともに、世界の一流品である。

デンオン DP-7700

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 デンオンのプレーヤー関係の製品は、もともと同社が放送局用をはじめとして、業務用のプレーヤーシステムやテープデッキを手がけているだけに、堅実で安定度が高く、耐久性に侵れた特長がある。
 一般のコンシュマー用のプレーヤー関係の製品は、ターンテーブル内側に独得の磁性体を塗布し、これに記録した磁気パルスをヘッドで検出し、速度制御をするダイレクトドライブ・フォノモーターDP5000を登場させて以来、ユニークな操作性の高いデザインと侵れた性能、さらに音質の良さでもっとも信頼性のあるプレーヤーシステムとして、一連のシリーズ製品はそれぞれの価格ランクで高い評価を得ている。しかし、最近の第三世代のダイレクトドライブ方式といわれる、水晶発振器を基準信号として高精度、高安定度に速度制御をおこなうタイプの製品が数を増してくると、デンオンからもトップモデルとして、このタイプの製品の登場が待たれるのは当然のことである。その意味では、水晶発振器制御型のフォノモーターDP7000を使ったプレーヤーシステムのDP7700は、期待をになって登場したデンオンらしいトップランクのモデルである。トーンアームは、ユニークな機構をもったDA307、プレーヤーぺースは大型で重量級のタイプである。近代的な高級カートリッジの性能を充分に引出し、素直に反応を示し、定評あるダイレクトドライブ型モーターは、水晶発振器制御で一段と静かになり、トルクも高くなっている。デンオンらしい製品である。

デイトンライト SPS MK3

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 このモデルは、AGI#511と同じ性格をもったカナダのデイトンライト社製のシンプルなプリアンプである。一般的なネジを使わずに、独得なクランパー1個を外せば、簡単に内部の一枚基板構成のアンプが取出せるユニークな構造が斬新である。SPS MK3は、AGIにくらべると表情が穏やかで、スッキリと滑らかな音をもち、洗練されたディスクらしい音の出し方が興味深い。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 海外で業務用としてプロが使用し、その信頼に答えることができるオープンリール型のポータブルデッキとしては、スイス製のナグラとステラボックスの2社の製品しか存在しないはずである。
 ステラボックスの製品は、現在SP7型が基準モデルとなっている。このモデルの特長は、小型軽量であることにあり、外形寸法270×78×215mm(W・H・D)、重量が電池を含めて3・3kgというから、セミプロ機としてプロからアマチュアまで幅広く使用されている、西独ウーヘル社の4200ステレオリリポートICよりも、さらに小型軽量であり、国産のカセットタイプのポータブルデッキと比較しても、特例を除いて小型軽量である。
 SP7(S−19−38)は、標準モデルであるSP7(S−19)を、19cmと38cmの2速度型に改良したモデルで、ともに2トラック・2チャンネル方式である。ヘッド構成は、当然のことながら3ヘッドタイプで、そのままでは使用リールは最大5号で、38cm速度で使用する場合には録音時間がきわめて短く不便であるが、アダプターを使用すれば10号リールの使用が可能である。ステラボックスの魅力は、ともかく超小型軽量でオープンリールならではの録音・再生ができる点にある。機能的で簡潔なデザイン、整理されたコントロール、小さな高級品ともいえる優れた加工精度と仕上げなど、どの面から見ても、使わなくとも持っていたいという、趣味的な奥深い魅力をもった素晴らしいデッキである。

シュアー V15 Type III

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 V15以来つねにシュアーのトップモデルの位置を占める定評の高い製品である。独得の表現は、いわば油絵的で、音楽を楽しく聴かせる演出力のあることでは、この製品の右に出るものはあるまい。普及型の装置でも素晴らしい効果があり、カートリッジを替えて音がこれほど変わるかと驚かされる。国内でも海外製品のベストセラーであり愛用者は抜群に多い。

キャバス Brigantin

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ヨーロッパの大型フロアーシステムは、大半が英国の製品であり、それも伝統的な永いキャリアーを誇るモデルが多いなかにあって、フランス・キャバス社のトップモデル、プリガンタンは、設計時点が新しい大型システムとして珍しい存在である。
 38cmウーファーと中音、高音にドーム型を採用し、各ユニットは、音源を垂直線上に揃えたステップ状のバッフル板に取付け、位相を合わせているが、早くからORTFのモニターシステムで、この方式を使っている同社らしいところだ。このシステムは、粒立ちが細かく、充分に磨き込まれた滑らかな音である。反応が軽快で早く、独得な華やいだ明るさが魅力的で、艶めいた雰囲気を漂わせる。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 オーディオテクニカのカートリッジは、創業期のAT1からAT7にいたる第一世代の製品にくらべ、VM式と同社で呼ぶ2個のマグネットを2チャンネル方式の左右の音溝専用に使う、デュアルマグネット方式を採用したAT35以来、その市場を国内から世界に拡げ飛躍的に発展した。
 AT20SLaは、一時期、米エレクトロボイス社の最高級カートリッジを手がけた、国際的な実績をベースにしてつくり出された特選品という表現が応わしい同社のトップモデルである。基本的には、AT15Saの選別したタイプとして発表されているように、本来の意味での手工芸品的な魅力があり、精密工作を要求されるカートリッジならではの感覚的な付加価値が大変に大きい。

エンパイア 4000D/III

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 軽針圧、広帯域型に設計された、米エンパイア社のトップモデルである。4チャンネル方式のCD−4システムに対応可能だが、むしろ一般の2チャンネルシステム用として、米国系カートリッジのトップをゆくモデルであり、とくに高級ファンに愛用されている。聴感上では、粒立ちが細かく、滑らかに磨き込まれた音をもち、ちょっと聴きには、さしてワイドレンジ型を感じさせないが装置が高級になるほど真価を発揮するという面白い性質がある。音の陰影を色濃く聴かせ、都会的な洗練されたこの音は、他では得られぬ独得のソフィスティケートされた魅力である。

パイオニア Exclusive F3

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 FMチューナー、とくに高級チューナーは、基本的な性能もさることながら、デザイン、仕上げの面でも、セパレート型コントロールアンプやパワーアンプと同格のウェイトをもつことが要求される。この意味においては、F3はもっとも貫禄のあるデザインをもった一流品と呼ぶに応わしいものがある。
 豪華という感じそのものの木製キャビネットは、この部分だけの価格を考えてみても普及型チューナー1台分に相当するだろう。FMフロントエンドは、パイオニアが先鞭をつけたPLL採用のロック同調方式を採用し、受信周波数は100kHzごとにロックされ、ステップ的に指示をするチューニングメーターで選局は容易に、しかも確実にできる特長がある。またダイアル系のメカニズムが滑らかで、同調のフィーリングは、適度の重さがあり、いかにも同調をしたという実感が得られるタイプである。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 高級アマチュアから業務用のプロまでに愛用され、性能が比較的に高く、安定し、耐久力があり、誤って落しても壊れないで動作をすることでは、西独ウーヘルの製品は驚くほど高い信頼感をもっている。
 4200REPORT ICは、オープンリールタイプで、フルトラック・モノーラル方式のモデル4100REPORTを、2トラック・2チャンネル方式のステレオタイプにした製品で、最新のモデルは、型番は変わっていないが、随所にマイナーチェンジの跡が見受けられ、絶えず改良が加えられているのがわかる。
 ヘッド構成は2ヘッドタイプであり、テープ走行系のモーターは1モーター方式という、単純な方式を採用しているが、テープ速度は、19cm、9・5cm、4・75cmと2・4cmの4スピード方式で、録音の目的により使いわけて、最大5号リールまでしか使えない点を巧みにカバーしている。テープ走行系のコントロールは、レバータイプで確実に動作し、機能面ではIC化したステレオのパワーアンプを備え、モニター用のスピーカーを1個内蔵している。
 外形寸法は、285×95×227m(W・H・D)、重量は3・8kgと、国内製品の平均的なポータブル型ステレオ・カセットデッキと同等であり、とくに重量が軽いのがポータブル機としては大きなメリットである。これも、ケースに航空機用の材料であるエレクトロンを使用している利点である。また、電源関係は、乾電池、充電可能の専用電池、自動車バッテリー、それに充電器兼AC電源としてデッキ内部に収納できるパワーユニットのマルチ方式であるのは、大変に使いやすい点である。カセットデッキ並の大きさのオープンリール・2トラックデッキとして、使ってみて楽しいデッキテある。

ウーヘル CR210

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 超小型ポータブル・カセットデッキとしてユニークな存在であったステレオ124を改良した、いかにもカセットレコーダーという言葉に応わしいモデルである。外形寸法は、185×57×180mm(W・H・D)、重量、電池なしで2kg、単2型電池を6個使用して、約2・5kgてある。機能は、片道録音、往復再生が可能であり、それもリレーを使った電磁コントロールで、操作は軽快であり、テープ走向方向はメーター指示される。クロームテープの自動切替、テープ量を確認するための窓と照明ランプ、自動録音レベル調整に、モノではあるがコンデンサーマイクとスピーカーを内蔵しているため、本機だけで録音・再生がおこなえるメリットがある。電源関係は、4200 REPORT ICと共通なタイプで、乾電池、電池、自動車バッテリー、充電機兼AC電源の4ウェイである。入出力端子は、欧州製品共通のDIN端子で、操作性が優れ、確実な利点はあるが、米国系のピンプラグやホーンプラグとの互換性には、やや難点を生じる面がある。アク七サリーは豊富で、別売として薄茶色の美しいバッグがあるのも大変に楽しい。超小型、軽量モデルだけに、カセットならではの魅力が製品自体にあり、使っても楽しいデッキである。
井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ブックシェルフ型スピーカーシステムの創始者である米AR社のブックシェルフ型システムのトップモデルである。基本的には、長くARの中心機種として高い評価を得ているAR−3a型を発展させたシステムと考えられるが、このシステムのもっとも大きな特長は、ウーファーのレベルコントロールをもつことであろう。設置条件の変化に応じて3段に変化するこのコントロールは、かなりの幅で、トータルなシステムのバランスを変えることができる。
 ハイパワーアンプとの組合せで、広い部屋で使えば驚くばかりの豊かな低低域が再生されるが、細やかさの表現でも、並のブックシェルフ型では及びもつかない繊細さも充分に聴かせてくれる。

AGI Model 511

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井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 セパレート型アンプのジャンルは、プリメインアンプにくらべれば、制限や制約がない、いわば無差別級の分野であり、最近では、ことに多様化、多角化した製品が数多く登場している。
 AGI#511は、セパレート型アンプとしては、業務用アンプに採用されることが多い、いわゆるユニットアンプ形式のプリアンプで、多機能を誇る高級コントロールアンプから、最少必要限度の機能を残して単純化した、シンプルな構成が特長である。
 デザインは、現在のこの種のモデルの流行である薄型ではなく、標準的なコントロールアンプのパネルサイズの左右を短縮したタイプであり、コントローラーは、ボリュウム、バランス以外は、2系統のプッシュボタンスイッチだけというシンプルなものだ。構造は、増幅部分、電源部分を一枚の基板上に構成するタイプであるが、使用部品、材料は厳選された高度なものが採用され、外側の金属製ケースの板金加工の精度は、海外製品としては異例に高いものである。
 この#511は、米国系の最近のアンプの傾向であるスルーレイトを高める基本設計を採用しているが、音質は大変にクリアーで、力強く、音づくりというような虚飾がまったく感じられない。反応は非常に早く、思い切りの良い音を出すために、ディスク的な意味での良い音というよりは、テープでの38センチ・2トラックデッキの音に似た鮮度の高さが、他のアンプにない独得の魅力である。
黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か」より

 ──まさか「ステレオサウンド」を読むほどの方には、そんな方がおいでになるとは思えないけれど、一般的には、プレーヤーで音が変るの? という人が多いよ。
 ──うん、たしかに、多いね。ターンテーブルが同じようにまわっているんだから、音がそんなに変るはずがないと考えているのかもしれないな。でも、そのように考えている人が多いのには、それなりに理由があると思うんだ。つまり、音が変るといったって、たとえばスピーカーやカートリッジをかえたときのような変化はないからね。
 ──そう、だから、表面的にはわかりにくいということもいえるんじゃない。たとえばだよ、町を歩いている人をみて、あの人は美人だとか、あの人の着ているスーツはいかにも上等そうだとか、あの人はずいぶん背が高いなとか、そういうことはわかるけれど、今すれちがった人が病気にかかっているのかどうかなんて、とてもわからないし、わかろうともしないものね。夏休みで海にでもいったのだろう、まっ黒にやけていて、みるからに健康そうだけれど、もしかすると胃がわるかったりするかもしれないし......
 ──なるほど、シロートにはプレーヤーシステムの音の差がわかりにくいということになるのかな。
 ──いや、そうじゃないよ、シロートもクロートもない、こっちがそのつもりでみれば、わかることだけれど、普段は、顔かたちとか、背の高さとか、着ているものとかに、どうしても目をうばわれてしまうだろう。
 ──それでは、試聴にあったっては、そのつもりになってことにのぞんだというわけか。さしずめ、美人コンテストの審査員の目ではなく、内科の医者の目でみたことになるね。
 ──まあ、無理にこじつければ、そういうことになるかな。
 ──それで、どうだった。何人に聴診器をあてたの。
 ──聴診器をあてたといういい方は、どうもひっかかるな。ただきいただけだよ。いつものように下手な字でメモをとりながらね。きいたは、二十二機種だった。すくなくともぼくにとっては、それぞれのプレーヤーシステムごとの音のちがいが、ごく本質的なところでのものだったから、ききやすかったな。いいプレーヤーシステムはカートリッジがかわっても、それなりにそれぞれのカートリッジのよさをひきだしていたし、問題があるなと思ったのは、カートリッジがかわって急によくなるなどということはなかったな。
 ──それで、その二十二機種をきいての、おおまかな感想を、まずきこうか。
 ──そうだな、思った以上に、健康な人がすくなかったというべきかな。
 ──しかし、よくいわれるように、オーディオは趣味の世界のものだろう。だとすれば、きみが問題ありとしたものに対して、他の人は高い評価を与えるかもしれないじゃないか。
 ──オーディオは趣味の世界のものだということは、よくいわれるし、たしかにそう思える部分もなくもないと思うけれど、そのことがいわれすぎることに、ぼくはひっかかるんだよ。逆にうかがうけれど、趣味の世界のものだといってしまえるようなところまで、今のオーディオはいっているのかな。
 ──いや、この議論は、なかなかおもしろそうだけれど、本題からはずれすぎるので、また別の機会にということにしようよ。
 ──うん、そうしよう。ただ、ぼくがプレーヤーシステムについていいたかったことと、そのこととは、無関係ではないんだ。スピーカーなり、カートリッジなり、あるいはアンプにしてもそうかもしれないけれど、その音について、趣味の世界のこととして、つまり好き嫌いで語れるところがなくもないと思うんだけれど、プレーヤーシステムの音については、その部分が極端に少ないように思うな。たしかに、それぞれのプレーヤーシステムにそれぞれの音があって、Aのプレーヤーシステムの音が好きだという人もいれば、Bのプレーヤーシステムの音の方がいいという人もいると思うけれど、でも、音のキャラクターについて考える以前に、まず音のクォリティについて考えざるをえないのが、プレーヤーシステムだと思う。ずっとそう思っていて、はからずも今回の試聴で、その考え方を確認したような気持だな。
 ──いいたいことはわからなくもないが、もう少し具体的にいてくれないかな。
 ──ひとことでいえば、基本性能がしっかりしていなければどうしようもないということになるかな。またさっきのたとえをつかわせてもらうとすれば、容姿の点で幾分いたらない点があった場合、それを愛矯でカヴァーするというようなこともあるのかもしゃないけれど、胃に潰瘍ができていたら、いくらニコニコしてもしかたがないものね。
 ──まあ、それはそうだけれど......
 ──つまり、表面的なとりつくろいが通じにくいということだよ。
 ──きいていれば、そこところがあらわになると......
 ──そう。
 ──それで、試聴にあたって使ったレコードは......。
 ──以前にも、たしかスピーカーの試聴のときにつかったレコードなんだけれど、ヨハン・シュトラウスのオペレッタ「こうもり」の全曲盤なんだ(グラモフォン MG8200〜1)。カルロス・クライバーの指揮した、一九七五年に録音されたレコードの、第二面の冒頭のところを三分ほどきいた。第二面の冒頭のところというと、ロザリンデ(ユリア・ヴァラディ)とアデーレ(ルチア・ポップ)の会話があって、そこにアイゼンシュタイン(ヘルマン・プライ)が加わり、そのまま三重唱に入れこむ──というところで、その三重唱の途中まできいたことになるんだけれど......
 ──レコードは、それだけ?
 ──そう。
 ──いつもは、何枚かきくんじゃなかったの?
 ──時間的に余裕があれば、さまざまなレコードをとっかえひっかえきいてもよかったのだけれど、その点でむずかしかったのと、それに、これまではなしてきたような理由から、何枚もきかなくてもいいと思ったからなんだ。
 ──なるほど。
 ──実は、はじめは、傾向のちがう音楽をおさめた三枚のレコードをきいていたんだけれど、三枚きくことはないと思ったんだよ。なんといっても、一台のプレーヤーシステムに三つのカートリッジをつけかえてきくわけだからね、作業としても大変だったわけさ。カートリッジことの変化があきらかになる方が、この場合には大切で、それがこれでレコードがふえてしまうと、煩雑になりすぎるという編集部側の考えもあったしね。
 ──それで、ポイントはどこにしぼってきいたわけ?
 ──ポイントをしぼったというわけでもないんだ。むしろポイントは、おのずとしぼられたというべきだろうな。つまり、試聴に先だって、ここがポイントだからということで、その点にことさら耳をそばだてたということではないんだよ。きいて、ききながらとったメモを読みかえしてみたら、一種の共通因数とでもいうべきものがみえてきたといった方が正直ないい方になるだろうな。思いこみを持って試聴にのぞむのが嫌だったからね。
 ──もう少しまわりくどくなく、ストレートにいってくれないかな。
 ──いや、あらかじめポイントをきめていたわけではなく、きいているうちにポイントがうかびあがってきたということさ。
 ──わかった。で、そのポイントを具体的にいってくれないかな。
 ──ひとつは、音像が過剰に大きくなっていないかどうかということで、もうひとつは、ひびきの力だな。結局、具合のよくないプレーヤーシステムというは、ひとことでいえば、ひびきに力がないんだ。そために音像が肥大するということもあるだろうし、こっちにおしだされてくるべき音がひっこんでしまうということもあったようだな。
 ──きみのいうひびきの力というのは、音の強さのこと?
 ──いや、むろんそれも含まれるけれど、それだけではないんだ。たとえば、今度使ったレコードに即していえば、三重唱に入る前のセリフのところで、アイゼンシュタインが凍えではなすところがあるよね。ああいうところの声は、ひびきに力がないと、あいまいになっしまう。だから、音の強さは当然示されるべきなんだけれど、それと同時に強い音とはいえない音が、しっかりささえられているかどうかが問題になると思うんだ。ひびきの力というのは、そのことなんだけれどね。
 ──わかるような気がするよ。そういわれてみると、プレーヤーシステムによる音の変化が基本的なところでの変化だということも、納得できるな。
 ──あらかじめわかっていたことではあるんだけれど、今度、試聴をしてみて、あらためて、プレーヤーシステムのコンポーネントの中での重要性について考えさせられてしまったよ。
 ──限られた予算内でなんとかしていこうと思うときに、どうしてもプレーヤーシステムは後まわしになるというか、予算を他のところにまわしがちだからね。
 ──いや、それはいちがいにいえないよ。本当にわかっている人は、まずプレーヤーシステムからと考えているかもしれないからね。今度の試聴では、機能面については、ぼくのうけもちでなかったので、なにもふれなかったけれど、その点でも、さらに積極的にさまざまな試みがなされていいように思うな。
 ──それはそうだけれど、きみのはなしをきいていると、まず音の面で、より一層充実することの方が先じゃないの?
 ──それはそうだ。なんといったって、プレーヤーシステムは、コンポーネントの土台だからね。そこがしっかりしていなければ、いかにいいカートリッジをつかい、いいアンプをつかい、いいスピーカーシステムをつかっても、極端なことをいえば、砂上の楼閣になりかねないからね。
 ──ずいぶんおどかすじゃないか。
 ──いや、おどかしているわけじゃないよ。事実をいっているだけだよ。
 ──それで、しめくくりの言葉は、どうなるわけ?
 ──プレーヤーシステムに対してより一層のご注目を!──ということになるだろうな。むろん、これは自分に対していう言葉でもあるんだけれど。

パイオニア XL-1650

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

 音像は大きめだ。とりわけ張った声に誇張感がある。ひびきの微妙な推移・変化がききとりにくい。もう少しシャープな反応が示されてもいいだろう。このプレーヤーシステムにはあわないカートリッジか。

 すっきりしたよさはあるが、全体にそっけなさすぎるように思う。音像は小さめだが、細部にこだわりすぎているといえなくもないようだ。歌い手の呼吸が誇張ぎみに示されている。

 きつさはない。しなやかとはいいがたいが、ひびきに脂がつきすぎていないもはいい。ただ、ひびきに、もうひとつこくがないので、どうしても表面的になる傾向があるのがおしい。

サンスイ SR-838

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

 シュアーではききとりにくかった背後でひびくホルンがききとれる。オーケストラのひびきはむしろせりだしぎみだ。ひびき全体にべとつきが感じられなくもない。音像が大きめなのはシュアーと同じ。

 音像は小さくまとまるが、オーケストラのひびきを分解してきかせる傾向があり、幾分つきはなしたようなつめたいところがある。声に、もう少しうるおいがほしい。はった声が硬くなる傾向がある。

 音像は大きめ。したがって歌唱者は、かなり間にでてきた感じになる。音楽の表情は強調されがちだ。弦のひびきには、もう少しまろやかさがほしい。積極的なところをもってよしとするかどうか。

シュアー V15 Type IV

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●シュアーV15/IVの基本的性格
 これまでのシュアーの音を頭においてきくと、シュアーもずいぶんかわったなとつぶやくことになるだろう。ひとことでいえば、きめがこまかくなった。それでいて、シュアー本来の──といっていいのうかどうか、つまり決してじめつかないで、生気にとんだところはのこされている。傾向としては、ひびきをくっきり示すタイプといえよう。ただ、特に低域の本当に腰のすわったエネルギー感とでもいうべきもの提示は、かならずしも得意ではないようだ。その点でことさらの不足を感じるということではないが、幾分表面的になる傾向がなくもない。すっきりさを志向したカートリッジと考えていいだろう。

デンオン DL-103S

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●デンオンDL103Sの基本的性格
 味もそっけもない──という否定的ないい方も、多分、不可能ではないだろう。ことさらひびきの表情をきわだてるタイプのカートリッジではないからだ。ただ、このカートリッジのきかせる音は、いつでも、大変に折目正しい。いつまでたっても、足をくずさずに、正座しつづける男のようだ。しかし、語尾を笑いであいまいにしてしまう男のはなしより、しっかりした声でいうべきことを、しかも感情をおさえぎみにはなす男の方が信用できると思うこともなくはない。しっかりしていて、あいまいさを残さない。どちらかといえば寒色系の音で、ひびきの角をしっかり示す。見事なカートリッジだ。

オルトフォン MC20

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黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20の基本的性格
 非常にいいところをもっているカートリッジだが、そのよさをいかすのには、なかなかむずかしいところがありそうだ。プレーヤーシステムによっては、音像が肥大することがある。それはおそらく、このカートリッジの持味のひとつであるひびきのなめらかさと無関係ではない。したがってこのカートリッジにおけるなめらかさは、諸刃の剣というべきかもしれない。暖色系の音で、なめらかで、まろやかで、だから、そのよさがそのまま示されたときにはいいが、音像を肥大させる方向に働くと、ひびきは、メリハリがたたなくなり、あつくるしくなる。よさをひきだすには、充分に慎重に使うべきだろう。

オンキョー M88

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 オンキョーM88は28cm口径ウーファーという、このクラス(1本5万円未満)最大のウーファーをベースにした3ウェイシステムで、10cm径のコーン・スコーカーと、新しいユニークなトゥイーターから構成されている。バランス、再現能力は大変優秀で、きわめて実質的価値の高い製品だ。明るく朗々とした響きには押しつけがましいところがなく、それでいて力を要求される音楽にも、十分な対応を聴かせてくれる。

ビクター Zero-3

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ビクターZERO3は、小型3ウェイシステムの成功作で、ZERO5をそのままスケールダウンしたような外観をもつ。しかし、内容は負けず劣らず、むしろ部分的改善が生きていることがわかる。大変緻密な再生音で、かつ全体に聴き手を魅了する美しい色彩感が効果的だ。このクラス(1本5万円未満)のスピーカーとしては、きわめて高い完成度と優れた個性的魅力をもつ。

トリオ LS-202

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 トリオLS202は、中型システムのスケールに近いもので、ユニット構成は3ウェイ。ウーファーは25cm口径。スコーカー、トゥイーターもコーン型だ。リアリティのある、がっしりした再生音だが、時として表情が硬く、柔軟性、しなやかな質感の再生の点では、弟分のLS100に譲るようだ。しかし、音の密度の高さ、ワイドレンジの充実感では、第一級のシステム。

デンオン SC-304

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 デンオンSC304は、中型システムといえるもので、ユニット構成は3ウェイ。ウーファーは25cm口径だから、このクラスとしては大きい。スコーカーは10cmコーン型、トゥイーターはドーム型だ。ワイドレンジで解像力のよい再現が得られるが、中高域にやや未完成なアンバランス感がつきまとうのが惜しい。しかし、それもパルシヴなジャズやロックではまったく気にならず、明るい迫力が魅力的だ。

ヤマハ NS-100M

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ヤマハNS100Mは、3ウェイシステムを、ややスリムなプロポーションに凝縮した本格的なシステムで、ウーファーは20cm口径、スコーカー、トゥイーターはソフトドームを採用している。ワイドレンジだが、それを特に感じさせることのないのはバランスのよさのためで、どんな音楽を聴いても、十分その表現を生かす能力をもった優れた成功作。

ダイヤトーン DS-32B

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ダイヤトーンDS32Bは、このクラス(1本5万円未満)としては最大のシステムだ。25cm、10cm、5cm各口径のオールコーンシステムは、同社の長年の技術の蓄積の上に成立った、けれんみのないものであるが、さすがにスケールの大きなワイドレンジの再生が可能で、ハイパワーでドライヴすると圧倒的迫力を十分楽しめる。

ビクター SX-3III

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ビクターSX3IIIは、改良を重ねてきたロングセラーの製品で、25cmウーファーとソフトドーム・トゥイーターという構成は、オリジナルから一貫して変らない。ユニークな外観もそのままで、根強い人気を持っている。豊かな低域、中高域のしたたかな再現能力は、現在でも立派な現役システムとして評価できるものだ。

ラックス MS-10

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ラックスMS10は縦長の特異なプロポーションを持ったもので、大きさからは中型に近いブックシェルフシステム。20cmウーファーとドーム・トゥイーターの2ウェイで、新素材のウーファーはなかなか、コクのある中低域を聴かせる。決して明るい現代的な音とはいえないが、クラシック音楽のファンには、このシステムの陰影の再現力が好まれるであろう。

トリオ LS-100

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 トリオLS100はごく新しい製品で、トリオの永年のスピーカー作りの中で、最も成功した製品といえるだろう。25cmウーファーと4cmの平面型トゥイーターの2ウェイ構成で、キメの細かい繊細な味わいと、このクラスとしては最大級のスケールの大きさも十分に再現する表現力の大きなシステムである。このサイズから想像できない豊かな臨場感に溢れる音が楽しめる。

ヴィソニック David 5000

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ヴィソニック・ダヴィッド5000は、ミニスピーカーあるいはコンパクトスピーカーのジャンルに入る。デスクに置いて聴くもよし、壁につけて置けば結構低音感も味わえる。ダヴィッド50からすると、ずっと素直で自然になり、小口径の特質の生きた指向性のよさが、美しいステレオフォニックなプレゼンスを再現する。

ダイヤトーン DS-25BMKII

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ダイヤトーンDS25B/IIは、25cmウーファーと5cmトゥイーターのオーソドックスな2ウェイで、かなりスケールの大きな再生音を聴かせてくれる。それだけに、やや透明度、柔軟性といった品のよさに欠ける嫌いがある。力強い低音と輪郭の鋭い高音域を埋める、中低域、中高域の柔らかさと豊かさが不足するためだろうが、明解な軽やかな音を好まれる人には向いている。

デンオン SC-101

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 デンオンSC101は、きわめて質のよい小型ブックシェルフで、その明るく透明な音の美しさは、このクラス(1本5万円未満)の中でも特に優れたものといえるだろう。20cmウーファーとドーム・トゥイーターの2ウェイで、レンジもかなり広く、バランスは美しくまとめられ、すべての音楽をいい意味での〝精緻な箱庭〟として楽しく聴かせてくれる。

ビクター SX-7II

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ビクターSX7IIは、オリジナルから5年以上経ち、その間、リファインを続けて現在に至る完成度の高い製品だ。30cm口径ウーファーをベースに、スコーカー、トゥイーターにソフトドームを使った3ウェイ構成で、密閉型エンクロージュアはかなりの大型である。透明度の高い中域から高域にかけての再生能力は高いし、低音の明解な響きも立派である。

セレッション UL6

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 セレッションUL6はユニークな小型システム。変形エンクロージュアに、16cm口径ウーファーと3cm口径ドーム・トゥイーターの2ウェイ構成を収め、パッシヴラジエーター方式をとっている。小型ながら、大型システム的なリニアリティの高い再現力を持ち、絞った音像再現を聴かせる。セレッションとしては異端児的な存在だが、非常に魅力のあるシステムだ。

デンオン SC-307

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 デンオンSC307は、かなり大型のブックシェルフシステムで、現在のところ同社のスピーカーシステム中の最高モデルである。25cm口径ウーファーを2つ使い、10cm口径スコーカー、5cm口径トゥイーター×2という5ユニットの3ウェイ構成である。マルチユニット構成ながら全体の音のまとまりは悪くない。かなりスケールの大きい大音量再生を楽しむことができる。

JBL 4301BWX

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 JBL4301BWXは、アメリカのJBLプロフェッショナル・モニターのラインアップ中、最小・最低価格モデルである。20cm口径のウーファーと3・6cm口径のトゥイーターからなるオーソドックスな2ウェイシステムだ。JBLのシステムらしい、明解な音の解像力、よく弾む低音と、小型ながら豊かな音の量感が、いかにもリトルジャイアンツの愛称にふさわしい。

ロジャース LS3/5A

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ロジャースLS3/5Aは、コンパクトスピーカーシステムに属する小型のモニターで、ウーファー口径は10cm、これに2cm口径のドーム・トゥイーターを組み合わせた2ウェイ構成をとる。その外観の小ささからは異質の、、がっしりと絞った確度の高い音像が再現されるが、かといってその音像の明確さに触発されて音量をあげるには限度があることも否めない。

サンスイ SP-LE8T MKII

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 サンスイSP−LE8T/IIは、JBLのフルレンジユニットの傑作LE8Tを、サンスイ製のバスレフ型のエンクロージュアに収めたもので、最もシンプルな構成によるシステムといえるだろう。マルチウェイほどのワイドレンジは無理だが、このシングルユニットの再現能力には、現在でも立派に通用する説得力があって、抜群の定位と自然なバランスは得難いものだ。

セレッション Ditton 15XR

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 セレッション・ディットン15XRは英国セレッションの普及モデルとして人気のある製品。20cm口径ウーファーと2・5cm口径のドーム・トゥイーターによる2ウェイ構成に、ウーファーと同径のパッシヴラジエーターを加えている。からっとした音離れのよいシステムであるが、中域の充実感をもう一つ要求したくなる。

フィリップス RH541

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 フィリップスRH541はやや特殊なシステムで、コンパクトなエンクロージュアに18cmウーファーと2・5cmドーム・トゥイーターの2ウェイ。さらに実効出力30Wのパワーアンプを内蔵する。そしてウーファーのコーン紙の加速度検出によるモーショナルフィードバック方式によるドライビングである。個性的な音色だが、さすがに風格のあるムードを感じさせる。

KEF Model 303

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 KEF303は、英国のKEF社のシリーズ中、最もポピュラーなランクの小型ブックシェルフ。20cmウーファーと3・3cmメリネックス振動板採用のドーム・トゥイーターからなる2ウェイで、きわめて合理的なコストダウンモデルながら、その音の素晴らしさは特筆に値する見事なものである。大きいスケールの再生を望まなければ何にでも安心して使える傑作だ。

オンキョー M90

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 オンキョーM90は、オンキョーの常として、同クラス中で最大のウーファー口径を採用している。32cmウーファーをベースとした3ウェイ。同社最新シリーズ共通のユニークなDDトゥイーターをもち、きわめて繊細でのびのある高音域が聴かれる。全帯域の音の質感の統一の点でもう一息だが、よくまとめられたシステム。

デンオン SC-306

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 デンオンSC306は3ウェイ・4ユニット構成のブックシェルフの本格派。ウーファーの口径は30cmで、4kHz以上を受け持つトゥイーターが2つ使われ歪とリニアリティの改善を計っている。全帯域にわたって音の質のコントロールがよく整い、癖のない自然な音色再現が得られる。小入力から大入力への直線性も優れ、音量の変化にともなう音色変化も少ない。

ダイヤトーン DS-35BMKII

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ダイヤトーンDS35B/IIは、このクラス(1本5万円〜10万円)として最も低価格といえる位置にあるが、その再生音は、このクラスを代表するといってよい充実したものだ。よく練り上げられたシステムといえるだろう。確度の高い明解な解像力をもち、よく弾む,豊かな低音に支えられた中、高域は明るく緻密である。周波数特性の広さは、よく最新のレコーディングのレンジをカバーする。

ハーベス Monitor HL

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ハーベス・モニターHLは、英国のシステムしらい品のよさと格調の高い音が光る。この種の英国システムは多いが、中でもこの2ウェイシステムは、最も精緻な音の解像力を聴かせるようだ。スケールの大きな大音量再生には向かないが、レコード音楽の醍醐味を満たすには十分な再現能力をもつ。

テクニクス SB-8000

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 テクニクスSB8000は、4ウェイ・4ウェイ構成のフロアー型システムで、36cm口径のウーファーをベースとしたワイドレンジ、ハイリニアリティな高性能システムである。リニアフェイズ理論によりユニットをずらせて取付けられているが、たしかに4ユニットの再生にもかかわらず定位やプレゼンスはよい。

セレッション Ditton 25

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 セレッション・ディットン25は、トールボーイ・スタイルのフロアー型システムで、このクラスの外国製の中では、かなりの大型といえる。ドロンコーン付で、4ユニットによる3ウェイ構成だが、セレッションらしい肉付きのある音だ。ウーファーの品位が高く、フロアー型にありがちな音源の低さがないし各ユニットの配置も近い。

Lo-D HS-90F

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 Lo-D・HS90Fは、メタルコーンに発泡樹脂を充てんして平面振動板とした、Lo-Dのオリジナリティ溢れる製品。ウーファーは30cm、スコーカーは5cm、トゥイーターは2cm口径の3ウェイ構成。大型ブックシェルフシステムとして、物理特性は最高水準を示すし音も耳なじみのいいもの。

BOSE 901 SeriesIV

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ボーズ901IVは、アメリカのボーズ社のユニークなシステム。IV型になって著しく改善された音が印象的だ。11・5cm口径のフルレンジスピーカーを9個、それも正面は1個だけで、8個は背面につけられているという独特のものだが、付属のアクティヴイコライザーをうまく使い、壁から少し離して置くと抜群の成果が得られる。
菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 エレクトロボイス・インターフェイスCIIは、アメリカのスピーカーらしい迫力ある音が魅力。名門エレクトロボイスのスピーカーらしい豊かな個性を持っている。25cm口径ウーファー、16cm口径スコーカー、ドーム・トゥイーターの3ウェイ。

ヴィソニック Explus 2

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ヴィソニック・エクスパルス2は、25cm口径ウーファーとソフトドーム・スコーカー、トゥイーターの3ウェイ構成のフロアー型システム。いかにもドイツの製品らしいデザインと音が個性的で好ましいシステムだ。きちんとコントロールされた質感とバランスは、いかにもお行儀がよく少々遊びの雰囲気に欠ける音のたたずまいだが、毅然とした趣きを高く評価したい。

パイオニア S-955

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 パイオニアS955は、長い間練り上げたスピーカーで、リボン・トゥイーター、ドーム・スコーカーといった各タイプのちがう高級ユニットを巧みに組み合わせ調整した、3ウェイ大型ブックシェルフだ。最高級ブックシェルフの名にふさわしい高品位の再生音と余裕のある再現能力を持つ。

JBL 4311BWX

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 JBL4311BWXは、従来の4311Aのウーファーの磁気回路をアルニコからフェライトに変更、それにともなってSFG(対称磁界型)回路を採用したニューモデルである。30cmウーファー・ベースの3ウェイ・3ユニット構成で、オールコーンタイプのオーソドックスなもの。輪郭の鮮やかな毅然とした音の雰囲気。

スペンドール BCII

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 スペンドールBCIIは、英国製のブックシェルフタイプとして多くのファンを持っている。実に瑞々しい魅力的な音の世界を聴かせてくれるスピーカーで、ウーファーは20cm口径、それに3・8cm口径のドーム・トゥイーターと、さらに小口径のスーパートゥイーターを追加した3ウェイシステムである。繊細透明な品位の高い音だ。

KEF Model 104aB

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 KEF104aBは、オリジナルをリファインしたモデルだ。構成は、ドロンコーン付で、ウーファーは20cm口径、トゥイーターは2・7cmドーム型である。すっきりとしたワイドレンジの端正な音は、少々神経質なところもあるが、骨組の間違いのない確度の高いバランスだ。

パイオニア S-933

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 パイオニアS933は、S955の普及モデルと見れるが、最高級ブックシェルフとして同社のプレスティッジといってよい力作である。リボン・トゥイーター、ドーム・スコーカーに32cm口径ウーファーという3ウェイ構成のバランス、全体のトーンクォリティの品位の高さは第一級品である。

ゲイル GS-401A

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ゲイルGS401Aは英国の製品で、このシステムは20cm口径ウーファーを2つ使い、スコーカーに10cmコーン、そしてドーム・トゥイーターという3ウェイ構成をとったブックシェルフ型である。一味ちがう雰囲気をもった音の世界はエキゾティックだが、全帯域のクォリティの統一やバランスに、やや未完成なところが感じられる。

ヤマハ NS-1000M

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ヤマハNS1000Mは、まさに当社のスピーカーシステムを代表するプレスティッジ製品だ。3ユニット・3ウェイの大型ブックシェルフシステムで、プロのモニターとしても十分に責任を果すタフネスと、音の精緻さをもっている。プログラムソースの情報は正確に、緻密さと豊かさを、そして力強さを明確に再現するシステム。

KEF Model 105 SeriesII

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 KEF105IIは、ユニークな形状のリニアフェイズ・スピーカーで、ステレオフォニックな定位感や拡がり、奥行きといった、レコード録音の特質を忠実に再現する。高域にやや小骨っぽさがあるのが時として気になるが、バランス、質感ともに現代第一級のシステムといえる。

セレッション Ditton 662

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 セレッション・ディットン662は、シリーズ中、最大・最高価格の製品で、33cm口径ウーファーをベースにした3ウェイ・3ユニット構成となっている。ドロンコーン(ABR)は、同社のお家芸ともいえるものである。ややシャープさに欠けるが、柔らかく豊かな響きは、より明るさを増し、立派なシステムになっている。

スペンドール BCIII

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 スペンドールBCIIIは、小味なBCIIのスケールアップ・モデルといえるものだが、30cm口径ウーファーをベースにした4ウェイシステムの再生音は、さすがにBCIIの、箱庭的よさもわるさも脱却している。しかし大型システムとしては、やはり力より端正な質感と深い情緒に特色がある。

ソニー SS-G9

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ソニーSS−G9は、38cm口径のウーファーをベースにした4ウェイ・4ユニット構成の大型フロアーシステム。堂々とした体躯にふさわしい豊かな表現力をもち、スケールと情報量の大きさは特筆に値する。4ウェイのバランスもよくとれていて、質的な連りにも不自然さがない。
菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 AR・AR9は、4ウェイ・5スピーカーのトールボーイ型で、ユニークなエンクロージュア構造をもったアコースティックサスペンション型。一時代前のAR3aに代表される音とはかなり趣きを異にし、より明るく軽く響くようになった。滑らかで力のある音の質感は広く音楽の性格に合う。

QUAD ESL

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 QUAD・ESLは、3ウェイ・5エレメントのエレクトロスタティック型システムで、繊細な趣きを主とする弦の合奏やチェンバロの音楽などでは、その流麗優美な音楽の特色がよく生きる。ユニークなデザインとともに長く市場に存在し続ける名器といってよかろう。

JBL L150

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 JBL・L150は、JBLの新製品。79年暮の発売。3ウェイ・3ユニットでドロンコーン付のトールボーイタイプである。精緻な音像の再現能力はいかにもJBLらしい。小音量でもぼけず、大音量再生は、家庭ほどの部屋なら間近かの生演奏に匹敵するレベルまで安定して可能である。

ダイヤトーン 2S-305

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ダイヤトーン2S305は、おそらく現役国産システム中、最も長い歴史をもち、国産スピーカーの数少ない名器として君臨しているものだ。30cmウーファーと5cmコーン・トゥイーターの2ウェイという、いまやごく平凡なユニット構成ながら、スタジオモニターらしい妥当なバランスをもつ。

ヤマハ FX-3

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菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

 ヤマハFX3はベストセラーのNS1000Mに準ずるユニット構成の3ウェイ。36cm口径とウーファーは大きくなっているが、スコーカー、トゥイーターは同口径のベリリウム振動板をもつ。しかし全く同一のものではないらしい。かなり迫力ある表現力の豊かなシステムで、フロアー型としてのゆとりを聴かせる。

QUAD ESL

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「25項・形状と使いこなしの面でこれまでのどれにも属さないイギリスQUADのESL(エレクトロスタティック・ラウドスピーカー)」より

 イギリスという国は、22項のヴァイタボックスもそうだがたとえば二十年以上、といった永い年月、モデルチェンジせずにものを作り続けるという面を持っているが、QUAD・ESLもまた、1955年以来作り続けられている。おそろしく寿命の長いスピーカーだ。
 だが、CN191の音がこんにちの時点ではすでに古くなっていることを、愛好家の側では十分に承知していて、しかしその音の魅力ゆえに愛用されているのに対して、QUAD・ESLは、およそ四半世紀を経たこんにちなお、古くなるどころか、逆に、その音のいかに新しいか、というよりもいかに時代を先取りしていたかが、次第に多くの人々に理解されはじめ、むしろ支持者の増える傾向さえあるという点で、オーディオ製品の史上でも稀な存在といえる。それはESL(エレクトロスタティック=静電型、またはコンデンサー型ともいう)、独特の方式のためだった。
 向い合った二枚の電極の、一方を固定し他方を可動極(振動板)とし、直流の高い電圧(成極電圧という)を加えると、電極は静電気を蓄えて互いに吸引しあう。そこにアンプから音声電流が加えられると、電極には互いに吸引・反撥の力が生じて、可動極側が振動する形になり、音波を作り出す。これがエレクトロスタティック型の基本原理で(この方式をシングル型といい、QUADの場合はプッシュプル型を採用している)、その独特の方式は、ここ数年来、アンプをはじめとして周辺機器やプログラムソースの音質の向上するにつれて、その真価を広く知らせはじめた。ただ、パネルヒーターのような厚みのない薄型であることにもかかわらず、前後両面に音波を生じるために、背面を壁に近づけることは原則として避けなくてはならない。できることなら、上図のように部屋を二分して前後の空間を等分するか、せめて三等分として前方に2、後方に1といった割合に設置することが要求される。部屋の最適の広さは約50㎥以上が望ましい......というように、大きさの割に設置の条件がやかましく、意外にスペースを占有してしまう。二枚のスピーカーを、真正面一列に向けるのでなく、八の字状に聴き手の耳に正面を向け、その焦点のところで聴取すると、透明で繊細な感じの、汚れのないクリアーな音質と、ステレオの音像のピシリと定位して、たとえば歌い手がスピーカーの中央に立っているかのようなリアリティを聴きとることができる。
 音量があまり望めないといわれているが、スピーカーの正面2メートル程度の距離で鑑賞するかぎり、たとえばピアノのナマの音量、のような大きな音量を要求するのは無理にしても、けっこう十分のボリュウム感を味わうことができる。
 なお、構造上(成極電圧形成のため)、ACの電源が必要だが、消費電力は僅少なので、一旦入れたら(音を聴かないときでも)AC電源を入れっぱなしで切らないほうがよい。
 このESL一組では、打楽器やピアノの打鍵の叩きつけるような迫力は望めないが、二本をスタックにして使えば、意外にパワフルな音も得られる。マークレビンソンの〝HQD〟システムに採用されているのがその例だ。

スピーカーシステム:QUAD ESL ¥195,000×2
コントロールアンプ:QUAD 33 ¥98,000
パワーアンプ:QUAD 405 ¥148,000
チューナー:QUAD FM3 ¥98.000
プレーヤーシステム:トーレンス TD126MKIIIC/MC ¥250,000
ヘッドアンプ:トーレンス PPA990 ¥100,000
スリーブ:QUAD ¥15,000
計¥1,099,000
瀬川冬樹

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・マッキントッシュ」(1976年発行)
「私のマッキントッシュ観」より

 私のマッキントッシュ観に影響を与えた二冊の雑誌を思い浮かべる。その一は月刊『ラジオ技術』昭和31年4月号。もうひとつは季刊『ステレオサウンド』第三号(昭和42年夏号)である。
 昭和31年の2月、フランク・H・マッキントッシュは日本を訪問している。マッキントッシュ・アンプの設計者でありマッキントッシュ社の社長として日本でもよく知られていたミスター・マッキントッシュが、何の前ぶれもなしに突然日本にやって来たというので、『ラジオ技術』誌のレギュラー筆者たちが急遽彼にインタビューを申し込み、そのリポートが「マッキントッシュ氏との305分!」という記事にまとめられている。こんな古い記事のことをなんで私が憶えているのかといえば、ちょうど同じこの号が、おそらく日本で最初にマルチアンプ・システムを大々的にとりあげた特集号でもあって、「マルチスピーカーかマルチアンプか」という総合特集記事の中には、私もまた執筆者のはしくれとして名を連ねていたからでもあるが、しかしこのころの私はまた『ラジオ技術』誌のかなり熱心な愛読者でもあって、加藤秀夫、乙部融郎、中村久次、高橋三郎氏らこの道の先輩達によるマッキントッシュ氏へのインタビュウを、相当の興味を抱いて読んだこともまた確かだった。
 しかしその当時、マッキントッシュ・アンプの実物にはお目にかかる機会はほとんどなかった。というよりも日本という国全体が、高級な海外製品を輸入などできないほど貧しい時代だった。オーディオのマーケットもまだきわめて小さかった。安月給とりのアマチュアが、いくらかでもマシなアンプを手に入れようと思えば、こつこつとパーツを買い集めて図面をひいて、シャーシの設計からはじめてすべてを自作するという時代だった。回路の研究のために海外の著名なアンプの回路を調べたり分析して、マランツやマッキントッシュのアンプのこともむろん知ってはいたが、少なくとも回路設計の面からは、それら高級アンプの本当の姿を読みとることが(当時の私の知識では)できなくて、ことにマッキントッシュのパワーアップに至っては、その特殊なアウトプットトランスを製作することは不可能だったし、輸入することも思いつかなかったから、製作してみようなどと、とても考えてもみなかった。そうしてまで音を聴いてみるだけの価値のあるアンプであることなど全く知らなかった。これはマッキントッシュに限った話ではない。私ばかりでなく、当時のオーディオ・アマチュアの多くは、欧米の高級オーディオ機器の真価をほとんど知らずにいた、といえる。実物はめったに入ってこなかったし、まれに目にすることはあっても、本当の音で鳴っているのを聴く機会などなかったし、仮に音を聴いたとしても、その本当の良さが私の耳で理解できたかどうか──。
 イソップの物語に、狐と酸っぱい葡萄の話がある。おいしそうな葡萄が垂れ下がっている。狐は何度も飛びつこうとするが、どうしても葡萄の房にとどかない。やがて狐は「なんだい、あんな酸っぱい葡萄なんぞ、誰が喰ってやるものか!」と悪態をついて去る、という話だ。
 雑誌の記事や広告の写真でしか見ることのできない海外の、しかも高価なオーディオパーツは、私たち貧しいアマチュアにとって「すっぱいぶどう」であった。少なくとも私など、アメリカのアンプなんぞ回路図を調べてみれば、マランツだってマッキントッシュだってたいしたもんじゃないさ、みたいな気持を持っていた。私ばかりではない。前記の『ラジオ技術』誌あたりも、長いこと、海外のパーツについて正しい認識でとりあげていたとは思えない。そういう記事を読んでますます、なに、アメリカのオーディオ機器なんざ......という気持で固まってしまっていた。
 昭和30年代のなかばを過ぎたころから、自分のそういう感じ方が偏見以外の何ものでもなかったことを、少しずつではあったが知らされはじめた。たいしたもんじゃない、と思いこんでいたオーディオ・パーツが、少しずつ日本にも紹介されはじめ、それを実際に見、聴きしてみると、むろんそれらすべてがとはいえないまでも、海外でも一流と定評のあるオーディオ機器は、我々日本人の感覚で眺め、触れ、聴いてみてもまた、立派な製品であることが十分に理解できた。そうして私は、マランツの#7を購入し、JBLのスピーカーを、次いでアンプを購入し、シュアーのカートリッジに驚かされ、それまでの反動のように海外の高級パーツにのめり込んで行った。昭和30年代の終りごろから、私にもそれらのパーツが、やっとの思いではあってもともかく買えるだけの身分になっていた。しかしそれでもまだ、マッキントッシュのアンプについては、私はその真価を知らなかった。
 昭和41年の終りごろ、季刊『ステレオサウンド』誌が発刊になり、本誌編集長とのつきあいが始まった。そしてその第三号、《内外アンプ65機種--総試聴》の特集号のヒアリング・テスターのひとりとして、恥ずかしながら、はじめてマッキントッシュ(C--22、MC--275)の音を聴いたのだった。
 テストは私の家で行った。六畳と四畳半をつないだ小さなリスニングルームで、岡俊雄、山中敬三の両氏と私の三人が、おもなテストを担当した。65機種のアンプの置き場所が無く、庭に新聞紙をいっぱいに敷いて、編集部の若い人たちが交替で部屋に運び込み、接続替えをした。テストの数日間、雨が降らなかったのが本当に不思議な幸運だったと、今でも私たちの間で懐かしい語り草になっている。
 すでにマランツ(モデル7)とJBL(SA600、SG520、SE400S)の音は知っていた。しかしテストの最終日、原田編集長がMC--275を、どこから借り出したのか抱きかかえるようにして庭先に入ってきたあのときの顔つきを、私は今でも忘れない。おそろしく重いそのパワーアンプを、落すまいと大切そうに、そして身体に力が入っているにもかかわらずその顔つきときたら、まるで恋人を抱いてスイートホームに運び込む新郎のように、満身に満足感がみなぎっていた。彼はマッキントッシュに惚れていたのだった。マッキントッシュのすばらしさを少しも知らない我々テスターどもを、今日こそ思い知らせることができる、と思ったのだろう。そして、当時までマッキントッシュを買えなかった彼が、今日こそ心ゆくまでマッキンの音を聴いてやろう、と期待に満ちていたのだろう。そうした彼の全身からにじみ出るマッキンへの愛情は、もう音を聴く前から私に伝染してしまっていた。音がどうだったのかは第三号に書いた通り。テスター三人は揃って兜を脱いだ。しかもそれから約二年後、トランジスターの最高級機MC--2105を聴いて再びマッキントッシュのすごさを知らされた。
 マッキントッシュの音やデザインの魅力については、いまさら私が、ましてこの特集号で改めて書くことはあるまい。要するにそれほど感心したマッキントッシュを、しかし私は一度も自家用にしようと思ったことがない。私は、欲しいと思ったら待つことのできない人間だ。そして、かつてはマランツやJBLのアンプを、今ではマーク・レヴィンソンとSAEを、借金しながら買ってしまった。それなのにマッキントッシュだけは、自分で買わない。それでいて、実物を眺めるたびに、なんて美しい製品だろうと感心し、その音の豊潤で深い味わいに感心させられる。でも買わない。なぜなのだろう。おそらく、マッキントッシュの製品のどこかに、自分と体質の合わない何か、を感じているからだ。どうも私自身の中に、豊かさとかゴージャスな感じを、素直に受け入れにくい体質があるかららしい。この贅を尽した、物量を惜しまず最上のものを作るアメリカの製品の中に、私はどこか成金趣味的な要素を臭ぎとってしまうのだ。そしてもうひとつ、新しもの好きの私は、マッキントッシュの音の中に、ひとつの完成された世界、もうこれ以上発展の余地のない保守の世界を聴きとってしまうのだ。これから十年、二十年を経ても、この音はおそらく、ある時期に完結したもの凄い世界ということで立派に評価されるにちがいない。時の経過に負けることのない完結した世界が、マッキントッシュの音だと思う。

JBL 4350A(組合せ)

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瀬川冬樹

スイングジャーナルより

 本誌試聴室で鳴ったこの夜の音を、いったいなんと形容したら良いのだろうか。それは、もはや、生々しい、とか、凄味のある、などという範疇を越えた、そう......劇的なひとつの体験とでもしか、いいようのない、怖ろしいような音、だった。
 急いでお断りしておくが、怖ろしい、といっても決して、耳をふさぎたくなるような大きな音がしたわけではない。もちろん、あとでくわしく書くように、マークレビンソンのAクラス・アンプの25Wという出力にしては、信じられないような大きな音量を出すこともできた。しかしその反面、ピアニシモでまさに消え入るほどの小さな音量に絞ったときでさえ、音のあくまでくっきりと、ディテールでも輪郭を失わずにしかも空間の隅々までひろがって溶け合う響きの見事なこと。やはりそれは、繰り返すが劇的な体験、にほかならなかった。
 JBL#4350は、発表当初からみると、ずいぶん音の傾向が、以前よりよく揃っているし、バランスも向上している。
 初期の製品は、中高域を受け持つホーンのエイジングが進むまでは、ホーンの中に多少の吸音材をつめ込んだりして、この帯域を抑えなくては少々やかましい感じがあったのだが、最近のWXAでは、そのままでほとんどバランスが整っていると思う。
 JBLのこの43......ではじまるモニター・スピーカーのうち、4333A、4343のシリーズは、入力端子部の切換えによって低・高2chのマルチ・アンプ(バイ・アンプリファイアー)ドライブができるようになっているが、いうまでもなく4350は、最初からバイ・アンプ・オンリーの設計になっている。だが、この下手をすると手ひどい音を出すジャジャ馬は、いいかげんなアンプで鳴らしたのでは、とうていその真価を発揮しない。250Hzを境にして、それ以下の低音は、ともすれば量感ばかりオーバーで、ダブダブの締りのない音になりがちだ。また中〜高音域は、えてしてキンキンと不自然に金属的なやかましい音がする。菅野沖彦氏は、かってこの中〜高音用にはExclusiveのM−4(旧型)が良いと主張され、実際、彼がM−4で鳴らした4350の中高域は絶妙な音がした。しかし今回は、M−4と同じく純Aクラスの、マークレビンソンML−2Lを使ってみた。問題は低域だが、これは、少し前に、サンスイのショールームで公開実験したときの音に味をしめて、同じML−2Lを2台、ブリッジ接続して使うことにきめた。こうすると、1台のとき25Wの出力がいっきょに100Wに増大する。ことに4350の低音域は4Ωなので、出力はさらに倍の200Wまでとれる。ブリッジ接続したML−2Lは、高音域では持ち前のAクラス特有のおそろしく滑らかな質の良さはやや損なわれる。が、250Hz以下で鳴らす場合の、低域の締りの良いことはちょっと例えようのない素晴らしさだ。ブリッジ接続による十分に余裕ある大出力と、4350をふつうに鳴らした低音を聴き馴れた人にはウソのように思えるおそろしく引き締った、しかし実体感の豊かなというより、もはやナマの楽器の実体感を越えさえする、緻密で質の高い低音は、これ以外のアンプではちょっと考えられない。なおことのついでにつけ加えておくと、ML−2L自体が発表当初にくらべて最近の製品ではまた一段と質感が改良されている。
 低音にくらべて高音の25Wが、あまりにも出力が少なすぎるように思われるかもしれないが、4350の中〜高音域は、すべてきわめて能率の高いユニットで構成されているので、並みのブックシェルフを100Wアンプで鳴らした以上の実力のあることを申し添えておく。実際に、「サンチェスの子供たち/チャック・マンジョーネ」の序曲を耳がしびれるほどのパワーで鳴らしてみたが、アンプもスピーカーも全くビクともせず聴き手を圧倒した。
 ここまでやるのだから、入口以後のすべてをマークレビンソンの最高のシステムでまとめてしまう。ここで特筆したいのは、プリアンプの新型ML−6Lの音の透明感の素晴らしさと質の高さ。完全モノーラル構成で、入力切換とボリュームの二つのツマミだけ。それがしかも独立して、音量調整に2個のツマミを同時にぴったり合わせなくてはならないという操作上では論外といいたいわずらしさだが、それをガマンしても、この音なら仕方ないと思わせるだけのものを持っている。
 もうひとつ、こんなバカげたことは本当のマニアにしかすすめられないが、ヘッドアンプのJC−1ACを、片側を遊ばせてモノーラルで使うというやりかた。結局、2台のヘッドアンプが必要になるのだが、音像のしっかりすること、音の実体感の増すこと、やはりやるだけのことはある。こうなると、今回は試みなかったがエレクトロニック・クロスオーバーLNC−2Lも、本当ならモノーラルで2台使うのがいいだろう。
 プレーヤーはマイクロ精機が新しく発表した糸ドライブ・システムを使う。ある機会に試聴して以来、このターンテーブルとオーディオクラフトのトーンアームの組み合せに、私はもうしびれっ放しのありさまだ。完全に調整したときの音像のクリアーなこと、レコードという枠を一歩踏み越えたドキュメンタルな凄絶さは、こんにちのプレーヤー・システムの頂点といえる。最近になって、これにトリオのターンテーブル・シートを乗せるのがもっと良いことに気づいた。また、もしもオルトフォン系のロー・インピーダンス・カートリッジに限るのなら、アームの出力ケーブルを、サエクのCX5006TYPEBに交換するといっそう良い。この組み合せを聴いて以来いままで愛用してきたEMTのプレーヤーのスイッチを入れる回数が極端に減りはじめた。
 ただし、こういう組み合せになると、パーツを揃えただけではどうしようもない。各コンポーネントの設置の良否、相互関係、そして正しい接続。これだけでも容易ではない。また、パワーアンプだけでも消費電力が常時2.4kW時にのぼるから、AC電源の確保も一般的といえない。そして、これだけの組み合せとなると、ACプラグの差し込みの向き(極性)を変えても音の変るのがはっきりとわかり、全システムを通じて正しい極性に揃えるだけでも相当な時間と狂いのない聴感が要求される。
 これらについて詳細は、RFエンタープライゼスの向井氏、マイクロ精機の長沢氏、オーディオクラフトの花村氏(社長)、山水JBL課の増田氏らが、それぞれ実際上の的確なヒントを与えてくださるだろう。

組合せ価格一覧表
カートリッジ:オルトフォン MC30 ¥99.000
トーンアーム:オーディオクラフト AC-4000MC ¥67.000
ターンテーブル:マイクロ RX-5000/RY-5500 ¥430.000
ヘッドアンプ:マーク・レビンソン JC1AC ¥145.000×2
チャンネル・デバイダー:マーク・レビンソン LNC2L ¥630.000
プリアンプ:マーク・レビンソン ML6L ¥980.000
パワーアンプ:マーク・レビンソン ML2L ¥8000.000×6
スピーカー:JBL 4350AWX ¥850.000×2
計¥8.996.000

チューナー セクエラ Model 1 ¥1.480.000
オープン・デッキ マーク・レビンソン ML5 ¥未定
合計¥10.476.000+α

試聴ディスク
「サンチェスの子供たち/チャック・マンジョーネ」
(アルファレコード:A&M AMP-80003〜4)

「ショパン・ノクターン全21曲/クラウディオ・アラウ」
(日本フォノグラム:Phlips X7651〜52) 

ラックス CL32

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菅野沖彦
 
スイングジャーナル 1976年12月号
「SJ選定新製品試聴記」より

 世はフラット・プリ・アンプの大流行である。火をつけたのはアメリカのマーク・レビンソンだといってよいだろう。以来、アメリカには全くなんの影響をも与えていないのに、日本では大流行してしまった。この辺にも日本メーカーの性行が如実に現われているといえるのではないか。それは、ともかく、今度ラックスから発売になった、このCL−32も、プロポーションとしてはフラット・TYPEである。しかし、このフラット・アンプは同じフラットでも少々中味が異る。
 どう異るかというと、これは管球式のプリアンプなのである。このアンプを見て、その外観から、これが管球式のアンプとわかる人はいないだろう。実にすっきりしたデザイン、美しいパネルの仕上げ、見た眼にも極めて洗練された感覚がみなぎっている。真空管式のアンプ回路についてはもっとも豊かな蓄積とノウハウを持っているいってよいラックスだが、現時点で新たに、球のプリ・アンプが新製品として登場したバックグランドはなんなのであろう。いろいろ推測することが可能だが、その最大の理由は、なんといっても、ラックスの技術陣が、真空管を使いこなすことの自信にあるといってよいのではないだろうか。日進月歩のエレクトロニクスのテクノロジーのプロセスにおいて、常にニュー・フェイスとして紹介されるディバイス、つまり、各種のトランジスタは、それなりに素子として優れている点も持っている。しかし、新しい性格をもった素子が、本来の力を発揮するためには、その素子に最も適した使われ方がされなければならない。つまり、回路的に十分検討がなされ、多くの実験を経て、アンプの役目であるインプットとアウトプットの現実の条件の中で、いかに動作して、よい音を再生し得るかという試練を経なければならないと思う。その意味からいえば、真空管という素子は、もう古いと思われるほど、知り尽されたものであり、あらゆる回路技術が結びついて、その性能と性格の特色については練りに練られた素子だといってよいだろう。長年のアンプ専門メーカーとしてのキャリアを持つラックスにとって真空管は、まさに自家薬籠中のものだといえるだろう。もう一つの考えられる理由としては、これがキットでも発売されるということだ。もっとも、キット売りは後から出た案かも知れないので、勝手な推測は慎しむことにしておこう。
 とにかく、このCL−32は、大変に音のよい魅力的なプリ・アンプであって、現状で、プリ・アンプのもっている音への要求をよくみたしてくれるものだ。つまり、私の要求する、暖かさ、つぶだちのよいアキュラシー、音の積極的な表現、弱音から強音への広い質的安定感と、高い物理的S/N、こうした条件に、ほぼ、要求通りに応えてくれるのである。どうも、最近の新しいプリ・アンプは、音の品位が高く歪み感がないと思うと、雰囲気が重苦しかったり、フワーと軽やかに音場が拡がると思うと音が華やか過ぎたりといった具合で、なかなか思うように鳴ってくれないのである。こちらの要求が高くなっているためで、決して新型のアンプが悪いわけではないと思うが、このアンプを聴いて、そうした特別な傾向を強く感じずに、しかも、十分聴き応えのある音像の明確さと豊かな音場の雰囲気再現に満足させられたのだった。機能は簡素化されトーンコントロールはついていないが、実用上必要なものは不足がない。リニア・イコライザーと称するラックス独特のイコライザー・コントローラーがあって、少々のプログラム・ソースのキャラクター補正には事欠かない。最近続々発売される優れたプリ・アンプの中でも、特に強く印象に残った製品だった。
 また前述したように、別に組立てキットとして発売されているA3032という製品がある。ハンダゴテを握れる人で、暇と興味のある人は、これを組むことも楽しいのではないだろうか。特に、専門知識がなくとも、添付されているインストラクション・ブックに忠実に組立てていけば、まず、CL−32と同等に仕上りそうだ。私自身は、組んでいないので、100パーセントの自信をもって言えないが、ラックスのキットの信頼性は高いし、自分で作る楽しみはまた、格別であろう。万が一、手に負えなくとも気安く完成まで導き手助けしてくれるという。それが良い音を出せば、喜びも一入(ひとしお)大きいだろう。

「私のタンノイ観」

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菅野沖彦

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・タンノイ」(1979年春発行)
「私のタンノイ観」より

「タンノイ」という名まえは、オーディオに関心がある方で知らない人はいないだろう。特に、日本では、タンノイ・ファンは昔からたいへんに多く、英国の伝統あるスピーカーメーカーにふさわしいイメージが定着している。
 私なども、タンノイのスピーカーは聴く前から名器で必ず、いい音がするはずだという気持をもっていた。
     ※
 タンノイという会社は、非常にはっきりしたコンセプトを持っている。終始一貫、デュアル・コンセントリックと称する同軸型ユニットを使い、ユニットの種類はごく少数、そしてエンクロージュアにはさまざまなバラエティーをもたせて、システムとして完成させるという考え方だ。
 ユニットというのは、ボイスコイルとコーンと、磁気回路からなるハードウェアだが、エンクロージュアというのはスピーカーの世界の中でも独特な神秘性を持っていて、ソフトウェア的な要素が強い。たしかに、エンクロージュアは音響理論的には明確な設計方式の存在するものではあるが、それを現実化する製造段階や調整には、かなり神秘性がひそんでいる。その辺が電気理論とはまったく違うところでそういうバックグラウンドから生れるエンクロージュアが音と結びついて、スピーカーの魅力をつくりだしている要素が強い。そこで、シンプルなユニットを使って、いろいろなエンクロージュアでシステムをまとめていくというタンノイの体質や行き方が、いかにもスピーカーメーカーらしい、音の探求者らしい行き方として受け取られたことは事実だろう。
 また、創始者ガイ・R・ファウンテンの名前を表に打ち出して、〝オートグラフ〟であるとか、〝G・R・F〟といったネイミングを持つシステムを発表してきたことにも、スピーカーの持つ神秘性と共に、その陰にある、人間の能力と精神を感じさせ、ここにもタンノイらしい行き方を強く感じる事が出来た。このような同社の方針が、総合的にタンノイに対する一つのレピュテーションを作り上げてきたのではないだろうか。
     ※
 音というものは必ずしも、人間の聴覚だけに訴えるのではなく、視覚的な面の影響も少くない。これを先入観というと悪く聞こえるかもしれないが、見た目の美しさや風格を含めた総合的な観念でトータルな音の印象が聴き手の中に生れるものだ。例えば、どんなにすばらしい音響効果のホールでも、ドタ靴を履いて菜っ葉服を着た人達の集りのオーケストラだったら、たとえ演奏が良くてもあまり気分のいいものではないだろう。また、食べ物でもそうだ。どんなに美味な刺身でも、発泡スチロールのペラペラの皿の上に盛って出されたらどうだろう。それと同じで、オーディオというものもトータル・レセプションだからこそ、最初からそういう受け取り方をしなくては、楽しさ、おもしろさはずいぶん少なくなってしまうと思うのだ。それだからといって、ハードウェアとしての理論をないがしろにしたり、エンジニアリングを無視してもいいということではない。そういうものは、あくまでも肝心の芯として重要なのだが、それだけですまされたり、それで十分という粗雑な感性の人達が音を本当にエンジョイするとは思えないのである。また、音楽を聴く道具がそんなに寒々しいものばかりでは人間が一生、命をかけての趣味としても淋しい限りである。
 そういう意味でトータルなオーディオというのは、人間の総合的な感覚と知性の対象として価値高きものでなければならないだろう。したがって、タンノイのように一つの信念を持った人間が本当に自分たちの信じるものを理想的なかたちにまとめあげて、少量であっても丹念につくって売っていくという姿勢のメーカーの製品が、名器として受け取られた事は当然だと思う。
     ※
 歴代のタンノイ製品というものは、アピアランスもたいへんクラシックでレコードを聴くムードにぴったりのものだ。また、スピーカーの出来具合や、ハードウェアとしての側面からつっこんでも、当時の技術水準で考えれば、これだけの同軸型ユニットというものは他に得難い高水準のものだったわけである。このようにタンノイの製品というものは、技術レベルで見ても最高級であり、スピーカーシステムとしての一つのまとまったトータルな作品としての完成度も、たいへんに品位の高いものであった。
 もともと英国は音楽のマーケット、〝リスナーズ・マーケット〟として世界の中心地だった。英国は音楽を鑑賞する国というイメージがたいへん強く、クラシック音楽の歴史を知る人にとっては、作曲家は不毛であっても、多くの作曲家や演奏家のデビューの地としての英国のイメージは強い。そういう歴史的性格をもつ国であるだけに、昔から音楽再生、すなわちレコード音楽もたいへん盛んであった。レコード・レーベルの名門も英国にはたいへん多い。そういう事情からも、レコード音楽とオーディオ機器という点でも、他のヨーロッパ諸国と比べても少し違う、一際、レコード好き、オーディオ好きといういわば、エンスージアスティックなイメージをつくってきたと思う。そういう英国に生れた最高級スピーカー、タンノイが日本で絶大な信頼ばかりでなく、むしろ神格化された存在にまでなっていったことは理解できるような気がするのである。
 これは推察だが、エンジニアとしてガイ・R・ファウンテンがスピーカーを開発した当時、実際にスピーカーから聴くことができたのは、ほとんどがレコードの音だったのではないだろうか。また、音楽好きのエンジニアの彼自身は生の演奏会と共にアコースティックのころからレコードを聴いて育ってきたのに違いない。
 英国には、たくさんの素晴らしい生の音楽に接する機会があるから、生の音楽とアコースティックのレコードのサウンドとの間に、レコード好きの彼の、頭の中には相互的にバランスをとる回路が出来上りその耳で自分の作るスピーカーを聴いて、自然な音感覚にまとめるという経過をたどってできあがったタンノイのスピーカーだから、昔からレコードを聴き続けてきているレコードファンの耳になじみのいい質感を持って響いたとも考えられるだろう。
 これはタンノイ社自身、今も盛んに言っていることなのだが、コンサートのような音を家庭で響かせようということだ。しかし、これは原音再生という意味とは少し違う。あくまで、コンサートを聴いているというイメージに近い響きだと思う。レコードの世界に変換した原音なのである。そういうまとめ方の音は、レコード音楽愛好家が好みそうな音であるし、実際われわれがいま聴くと、悪くいえば古くさいなという感じもあるが、しかし、懐かしい、郷愁を感じるような、あるいは居心地のいい響きを持っている。
 タンノイは確かに、一種独特のキャラクターを持っているのだが、それはレコード音楽の歴史とともに歩み続けてきたキャラクターであり、昨日、今日、突如として生まれた妙に無機的なキャラクターとか、何か頼りない、風が吹き抜けるようなキャラクターではない。それは機械的ななかにもどこかなじみのいいキャラクターといえるものを持っている。それは純粋に変換器としての物理特性を表に出してくるものではなく、いかにもラウド・スピーカーという語感にふさわしい実在感のある音を出してくる。
 しかし、タンノイのような行き方が通用する時代と通用しない時代という、時代の流れがタンノイにも大きな影響を及ぼしていることは事実である。一方では自分たちの信じる理想的なものを、少数ではあるが丹念につくり上げていくという基本精神は、現在のタンノイにも脈々と流れているはずだが、時代の要求に応じる量産的体質に転換しつつあるのを見る事は、我々、古きタンノイを知る人間にとっては一抹の淋しさを禁じ得ない。現代のジョンブルが、いかなる方向を模索して活路を見出すか、これからのタンノイに姿を見守ろう。

「私とタンノイ」

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瀬川冬樹

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・タンノイ」(1979年春発行)
「タンノイ論 私とタンノイ」より

 日本酒やウイスキィの味が、何となく「わかる」ような気に、ようやく近頃なってきた。そう、ある友人に話をしたら、それが齢をとったということさ、と一言で片づけられた。なるほど、若い頃はただもう、飲むという行為に没入しているだけで、酒の量が次第に減ってくるにつれて、ようやく、その微妙な味わいの違いを楽しむ余裕ができる──といえば聞こえはいいがその実、もはや量を過ごすほどの体力が失われかけているからこそ、仕方なしに味そのものに注意が向けられるようになる──のだそうだ。実をいえばこれはもう三年ほど前の話なのだが、つい先夜のこと、連れて行かれた小さな、しかしとても気持の良い小料理屋で、品書に出ている四つの銘柄とも初めて目にする酒だったので、試みに銚子の代るたびに酒を変えてもらったところ、酒の違いが何とも微妙によくわかった気がして、ふと、先の友人の話が頭に浮かんで、そうか、俺はまた齢をとったのか、と、変に淋しいような妙な気分に襲われた。それにしても、あの晩の、「窓の梅」という名の佐賀の酒は、さっぱりした口あたりで、なかなかのものだった。
          *
 レコードを聴きはじめたのは、酒を飲みはじめたのよりもはるかに古い。だが、味にしても音色にしても、それがほんとうに「わかる」というのは、年季の長さではなく、結局のところ、若さを失った故に酒の味がわかってくると同じような、ある年齢に達することが必要なのではないのだろうか。いまになってそんな気がしてくる。つまり、酒の味が何となくわかるような気がしてきたと同じその頃以前に、果して、本当の意味で自分に音がわかっていたのだろうか、ということを、いまにして思う。むろん、長いこと音を聴き分ける訓練を重ねてきた。周波数レインジの広さや、その帯域の中での音のバランスや音色のつながりや、ひずみの多少や......を聴き分ける訓練は積んできた。けれど、それはいわば酒のアルコール度数を判定するのに似て、耳を測定器のように働かせていたにすぎないのではなかったか。音の味わい、そのニュアンスの微妙さや美しさを、ほんとうの意味で聴きとっていなかったのではないか。それだからこそ、ブラインドテストや環境の変化で簡単にひっかかるような失敗をしてきたのではないか。そういうことに気づかずに、メーカーのエンジニアに向かって、あなたがたは耳を測定器的に働かせるから本当の音がわからないのではないか、などと、もったいぶって説教していた自分が、全く恥ずかしいような気になっている。
          *
 おまえにとってのタンノイを書け、と言われて、右のようなことをまず思い浮かべた。私自身、いくつものタンノイを聴いてきた。デュアル・コンセントリック・ユニットやレクタンギュラーG・R・Fに身銭を切りもした。だが、ほんとうにタンノイの音を知っているのだろうか──。ふりかえってみると、さまざまなタンノイの音が思い起こされてくる。
 はじめてタンノイの音に感激したときのことはよく憶えている。それは、五味康祐氏の「西方の音」の中にもたびたび出てくる(だから私も五味氏にならって頭文字で書くが)S氏のお宅で聴かせて頂いたタンノイだ。
 昭和28年か29年か、季節の記憶もないが、当時の私は夜間高校に通いながら、昼間は、雑誌「ラジオ技術」の編集の仕事をしていた。垢で光った学生服を着ていたか、それとも、一着しかなかったボロのジャンパーを着て行ったのか、いずれにしても、二人の先輩のお供をする形でついて行ったのだか、S氏はとても怖い方だと聞かされていて、リスニングルームに通されても私は隅の方で小さくなっていた。ビールのつまみに厚く切ったチーズが出たのをはっきり憶えているのは、そんなものが当時の私には珍しく、しかもひと口齧ったその味が、まるで天国の食べもののように美味で、いちどに食べてしまうのがもったいなくて、少しずつ少しずつ、半分も口にしないうちに、女中さんがさっと下げてしまったので、しまった! と腹の中でひどく口惜しんだが後の祭り。だがそれほどの美味を、一瞬に忘れさせたほど、鳴りはじめたタンノイは私を驚嘆させるに十分だった。
 そのときのS氏のタンノイは、コーナー型の相当に大きなフロントロードホーン・バッフルで、さらに低音を補うためにワーフェデイルの15インチ・ウーファーがパラレルに収められていた。そのどっしりと重厚な響きは、私がそれまで一度も耳にしたことのない渋い美しさだった。雑誌の編集という仕事の性質上、一般の愛好家よりもはるかに多く、有名、無名の人たちの装置を聴く機会はあった。それでなくとも、若さゆえの世間知らずともちまえの厚かましさで、少しでも音のよい装置があると聞けば、押しかけて行って聴かせて頂く毎日だったから、それまでにも相当数の再生装置の音は耳にしていた筈だが、S氏邸のタンノイの音は、それらの体験とは全く隔絶した本ものの音がした。それまで聴いた装置のすべては、高音がいかにもはっきりと耳につく反面、低音の支えがまるで無に等しい。S家のタンノイでそのことを教えられた。一聴すると、まるで高音が出ていないかのようにやわらかい。だがそれは、十分に厚みと力のある、だが決してその持てる力をあからさまに誇示しない渋い、だが堂々とした響きの中に、高音はしっかりと包まれて、高音自体がむき出しにシャリシャリ鳴るようなことが全くない。いわゆるピラミッド型の音のバランス、というのは誰が言い出したのか、うまい形容だと思うが、ほんとうにそれは美しく堂々とした、そしてわずかにほの暗い、つまり陽をまともに受けてギラギラと輝くのではなく、夕闇の迫る空にどっしりとシルエットで浮かび上がって見る者を圧倒するピラミッドだった。部屋の明りがとても暗かったことや、鳴っていたレコードがシベリウスのシンフォニイ(第二番)であったことも、そういう印象をいっそう強めているのかもしれない。
 こうして私は、ほとんど生まれて初めて聴いたといえる本もののレコード音楽の凄さにすっかり打ちのめされて、S氏邸を辞して大泉学園の駅まで、星の光る畑道を歩きながらすっかり考え込んでいた。その私の耳に、前を歩いてゆく二人の先輩の会話がきこえてきた。
「やっぱりタンノイでもコロムビアの高音はキンキンするんだね」
「どうもありゃ、レンジが狭いような気がするな。やっぱり毛唐のスピーカーはダメなんじゃないかな」
 二人の先輩も、タンノイを初めて聴いた筈だ。私の耳にも、シベリウスの最終楽章の金管は、たしかにキンキンと聴こえた。だがそんなことはほんの僅かの庇にすぎないと私には思えた。少なくともその全体の美しさとバランスのよさは、先輩たちにもわかっているだろうに、それを措いて欠点を話題にしながら歩く二人に、私は何となく抵抗をおぼえて、下を向いてふくれっ面をしながら、暗いあぜ道を、できるだけ遅れてついて歩いた。
          *
 古い記憶は、いつしか美化される。S家の音を聴かせて頂いたのは、後にも先にもそれ一度きりだから、かえってその音のイメージが神格化されている──のかもしれない。だが反面、数えきれないほどの音を聴いた中で、いまでもはっきり印象に残っている音というものは、やはり只者ではないと言える。こうして記憶をたどりながら書いているたった今、S家に匹敵する音としてすぐに思い浮かぶ音といったら、画家の岡鹿之介氏の広いアトリエで鳴ったフォーレのレクイエムだけといえる。少しばかり分析的な言い方をするなら、S氏邸の音はタンノイそのものに、そして岡邸の場合は部屋の響きに、それぞれびっくりしたと言えようか。
 そう思い返してみて、たしかに私のレコード体験はタンノイから本当の意味ではじまった、と言えそうだ。とはいうものの、S氏のタンノイの充実した響きの美しさには及ばないにしても、あのピラミッド型のバランスのよい音を、私はどうもまだ物心つく以前に、いつも耳にしていたような気がしてならない。そのことは、S氏邸で音を聴いている最中にも、もやもやとはっきりした形をとらなかったものの何か漠然と心の隅で感じていて、どこか懐かしさの混じった気持にとらわれていたように思う。そしていまとなって考えてみると、やはりあれは、まだ幼い頃、母の実家であった深川・木場のあの大きな陽当りの良い二階の部屋で、叔父たちが鳴らしていた電気蓄音器の音と共通の響きであったように思えてならない。だとすると、結局のところタンノイは、私の記憶の底に眠っていた幼い日の感覚を呼び覚ましたということになるのか。
 S氏邸のタンノイからそれほどの感銘を受けたにかかわらず、それから永いあいだ、タンノイは私にとって無縁の存在だった。なにしろ高価だった。「西方の音」によれば当時神田で17万円で売っていたらしいが、給料が8千円、社内原稿の稿料がせいぜい4〜5千円。それでも私の若さでは悪いほうではなかったが、その金で母と妹を食べさせなくてはならなかったから、17万円というのは、殆ど別の宇宙の出来事に等しかった。そんなものを、ウインドウで探そうとも思わなかった。グッドマンのAXIOM--80が2万5千円で、それか欲しくてたまらずに、二年間の貯金をしたと憶えている。このグッドマンは、私のオーディオの歴史の中で最も大きな部分なのだが、それは飛ばして私にとってタンノイが身近な存在になったのは、昭和三十年代の終り近くになってからの話だ。その頃は、工業デザインを職として、あるメーカーの嘱託をしていたので、少しは暮しが楽になっていた。デザインが一生の仕事になりそうに思えて、もうこの辺で、アンプの自作から足を洗おうと考えた。部屋は畳のすり切れた古い六畳和室だったが、当分のあいだ装置に手を加える気を起さないためには、ある程度以上のセットが必要だと考え、マランツ・セブンと、QUADのII型(管球式モノーラル・パワーアンプ)を二台という組合せに決めた。プレーヤーはガラードの301にSMEを持っていた。そこでスピーカーだが、これは迷うことなくタンノイのDC15にきめた。その頃、秋葉原で7万5千円になっていた。青みを帯びたメタリックのハンマートーン塗装のフレームに、磁極のカヴァーがワインレッドの同じくメタリック・ハンマートーン塗装。いわゆる「モニター・レッド」の時代であった。ただ、エンクロージュアまではとうてい手が出せない。G・R・Fやオートグラフは、まだほとんど知られていなかった。まして、怪しげなエンクロージュアに収めればせっかくのタンノイがどんなにひどい音で鳴るか、こんにちほど知られていない。グッドマンのAXIOM--80で、エンクロージュアの重要性を思い知らされていた筈なのに、タンノイの場合にそのことにまだ思い至っていなかったという点が、我ながらどうにも妙だが、要するところそこまででもう貯金をはたき尽くしたというのが真相だ。そして、このタンノイが、ごく貧弱ながらもエンクロージュアと名のつくものに収まるのは、もっとずっと後のことになる。
 イギリス人は概して節倹の精神に富んでいると云われる。悪くいえばケチ。ツイードの服も靴も、ひどく長持ちするように出来ている。それか機械作りにもあらわれて、彼らは常に、必要最小限のことしかしない。たとえばクォードのアンプ。その設計者ピーター・ウォーカーは言う。「我々にはもっと大がかりなアンプを作る技術は十分にある。が、一般の家庭で、ごくふつうの常識的な愛好家がレコードやFMを楽しもうとするかぎり、いまのアンプやチューナー以上に大規模なものがなぜ必要だろうか。むしろ我々はいまの製品でさえ必要以上のクォリティをもっているとさえ思っている」と。
 タンノイのDC15──正確に書けばデュアル・コンセントリック・モニター15  Dual-Concentric Monitor 15 (同軸型15インチ2ウェイユニット)──は、よく知られているように、15インチのウーファーの中央、ウーファーの磁極の中心部を高音用のホーンが突き抜けて、磁極の背面にホーン・ドライヴァーユニットのダイアフラムとイクォライザーを持っている。そのことだけをみれば、アルテックの604シリーズと全く同じで、その基本は遠く1930年代に、ウエスターン・エレクトリックの設計にさかのぼる。
 だがそこから先が違っている。アルテック604は、トゥイーター用にウーファーと別の全く独立した磁極を持っていて、トゥイーターの開口部にはこれもまたウーファーとは全く切離された6セルのマルチセラーホーンがついている。つまり604では、ウーファーとホーントゥイーターは、材料も構造も完全に別個に独立していて、それを同軸型に収めるために、まるでやむをえずと言いたい程度に、ウーファーの磁極(センターポール)の中を、トゥイーターのホーンが貫通しているだけだ。
 ところがタンノイは違う。第一にトゥイーターのマグネットとウーファーのそれとが、完全に共通で、ただ一個の磁石で兼用させている。第二に、トゥイーターのホーンの先端の半分は、ウーファーのダイアフラムのカーヴにそのまま兼用させている。この設計は、おそろしく絶妙といえる反面、見方をかえればひどくしみったれた、まさにジョンブル精神丸出しの構造、にほかならない。クォードII型パワーアンプのネームプレートを止めている4本のビスが、シャーシの裏をかえすとそのまま、電解コンデンサーの足を止めるネジを兼ねていることがわかるが、このあたりの発想こそ、イギリスのメカニズムに共通の、おそるべき合理精神のあらわれだといえそうだ。
 しかもタンノイは、この同じ構造のまま、サイズを12インチ、10インチと増やしはしたものの、アメリカ・ハーマンの資本下に入る以前までは、ほとんど20年間以上、この3種類のユニットだけで、あとはエンクロージュアのヴァリエイションによって、製品の種類を保っていた。
 そう考えてみれば、タンノイの名声は、その半分以上はエンクロージュアの、つまり木工の技術に負うところが多いと、いまにして気がつく道理だ。
 オートグラフやG・R・Fの例を上げるまでもなく、中味のユニットよりもエンクロージュアのほうが高価、というスピーカーシステムは、タンノイ以外にも、またアメリカでもイギリスでも、モノーラル時代にはそれほど珍しいことではなかった。たとえばJBLハーツフィールド、EVのパトリシアン、ヴァイタヴォックスCN191クリプシュホーン......。だがしかし、ユニットの価格とエンクロージュアの価格との比率という点で、オートグラフ以上のスピーカーシステムは、かつて誰もが作り得なかった。イギリスで入手できるオーディオ製品のカタログ集ともいえるハイファイ・イヤーブック(HiFi year book)によれば、オートグラフはかなり永いこと英貨165ポンドだが、その中でDC15の占める価格はわずかに38ポンド。ユニットの3・3倍の価格がエンクロージュアだ。しかも図体がおそろしく大きいから、日本に輸入されたときにはこの比率はもっと大きくなる。ユニットが7万5千円の当時、オートグラフは45万円近かった筈だ。
 いまでこそ、エンクロージュアは単にスピーカーの容れ物ではなく、スピーカーシステム全体の音色を大きく支配していることを、たいていの人が知っている。その違いの大きさについて、心底驚いた体験をしたことのない人でも、少なくとも知識として知っている。
 けれど、昭和30年代から40年代にかけて、まだ日本全体が本当に豊かといえない時代に、スピーカーユニットにペアで15万円は支出できても、それを収めるエンクロージュアにあと80万円近く(オートグラフでないG・R・Fでさえ、ユニットごとのペアだとざっと60万円)を追加するというのは、よほどの人でなくては苦しい。そして、エンクロージュアは容れ物、という観念がどこかに残っているし、そうでなくとも、図面を入手して家具屋にでも作らせれば、ひとかどの音は出る筈だと、殆どの人が信じこんでいる。タンノイの真価の知られるのが、ことに日本でひどく遅れたのも仕方なかったことだろう。そのタンノイの真価を本当に一般の人に説得したのは、オーディオやレコードの専門誌ではなく、五味康祐氏が《芸術新潮》に連載していた「西方の音」であったのは、何と皮肉なことだったろう。そうしてやがて、西方......を孫引きするような形で、わけ知り顔のタンノイ評論が、オーディオ専門誌にも載るようになってくる......などと書くと、これはどうも薮蛇になりそうだが。
 あれはたぶん、昭和43年だったか。当時、音楽之友社が、我々オーディオ関係の執筆者たちに、お前たちも一度、アメリカやヨーロッパのオーディオや音楽事情を目のあたりにみてくる必要がある、といって、渡航資金に原稿料をプールしていてくれたことがあった。それは一応の額に達していた。
 ところで、前述の私のDC15は、その後、内容積が約100リッター足らずという、ごく小さな(ただし材質だけはやや吟味した)位相反転型のエンクロージュアに収まっていたが、これではどうにも音がまとまらない。かといって、レクタンギュラー・ヨークのクラスでは、わざわざ購入するのはおもしろくない。私の部屋は六畳のひと間に机から来客用のイスまでつめこんで、足のふみ場もない狭さだったが、それでもオーディオにはかなり狂っていて、JBLのユニットを自分流にまとめた3ウェイをメインとして、数機種のスピーカーシステムがひしめいていた。その頃、オートグラフの素晴らしさはすでによく知っていたが、どうやりくりしても私の部屋におさまる大きさではない。G・R・Fでもまだむずかしい。ところが、大きさはレクタンギュラーヨークと殆ど同じの、レクタンギュラーG・R・Fというのがあることを知って私の虫が突然頭をもたげて、矢も楯もたまらずに、前記の音楽之友社の積立金を無理矢理下ろしてもらって、あの飴色の美しいG・R・Fを、狭い六畳に押し込んでしまった。おかげでアメリカ・ヨーロッパゆきは私だけおジャンになったが、さてあのとき、どちらがよかったのかは、いまでもよくわからない。
 しかし皮肉なことに、このころを境にして次第に、自分の求めている音が自分自身に明確になってくるにつれて、ホーンバッフルの音は私の求めている音ではない、という確信に支配されるようになった。良いホーンロードの音は、たしかに、昔の良質の蓄音器から脈々と受け次がれてきたレコードの世界をみごとに構築する説得力はあったが、私自身はむしろ、そういう世界から少しでも遠いところに脱皮したかった。ホーンロード特有の、中〜低音域がかたまりのように鳴りがちの傾向──それはことに部屋の条件の整わない場合に耳ざわりになりやすい──が、私の求める方向と違っていたし、高音域もまた、へたに鳴らしたタンノイ特有の、ときとして耳を刺すような金属室の音が、それがときたまであってもレコードを聴いていて酔わせてくれない。
 お断りしておくが、オートグラフを、少なくともG・R・Fを、最良のコンディションに整えたときのタンノイが、どれほど素晴らしい世界を展いてくれるか、については、何度も引き合いに出した「西方の音」その他の五味氏の名文がつぶさに物語っている。私もその片鱗を、何度か耳にして、タンノイの真価を、多少は理解しているつもりでいる。
 だが、デッカの「デコラ」の素晴らしさを知りながら、それがS氏の愛蔵であるが故に、「今さら同じものを取り寄せることは(中略)私の気持がゆるさない」(「西方の音」より)五味氏が未知のオートグラフに挑んだと同じ意味で、すでにこれほど周知の名器になってしまったオートグラフを、いまさら、手許に置くことは、私として何ともおもしろくない。つまらない意地の張り合いかもしれないが、これもまた、オーディオ・マニアに共通の心理だろう。
 そんなわけで、タンノイはついに私の家に落ちつくことなしに、レクタンギュラーG・R・Fは、いま、愛好家I氏の手に渡って二年あまりを経た。ほんの数日まえの夜、久しぶりにI氏の来訪を受けた。二年に及ぶI氏の愛情込めた調整で、レクタンギュラーG・R・Fは、いま、とても良い音色を奏ではじめたそうだ。私の家の音を久しぶりに聴いて頂いたI氏の表情に、少しの翳りも浮かばなかったところをみると、タンノイはほんとうに良い音で鳴っているのだろうと、私も安心して、うれしい気持になった。

デンオン SC-101

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このサイズではいわゆる重低音を望むのは無理であるのは当然だが、リスナーの目よりやや低めで廃品を固い壁に近寄せて設置すれば、低音の量感も一応補われる。中〜高域にわずかに張りがあって、それは一見線の細いようにも感じさせるが、反面、高域端(ハイエンド)にかけてくせが少なく素直で、レインジも十分広いため、質の良い艶が感じられ、実況録音(ライヴレコーディング)などの雰囲気もなかなかよく出る。アンプとの適応性はあまり神経質でなく、価格相応のローコストアンプでもよさは一応抽き出せる。ただ、カートリッジはエラックのようにやや個性の強い音の場合、中〜高域が少し張りすぎる傾向もある。
 同価格帯のライバル機種の中では、オンキョーM55ほどの重量感は出ないがヤマハNS10Mよりはもう少しこってりした味わいがある。反面、ヤマハやビクターのあの明るい軽やかさと比較すると、いくぶんほの暗い感じも受ける。音楽はポップスからクラシックまで、広い傾向に適応できる。

総合採点:9

❶音域の広さ:6
❷バランス:7
❸質感:6
❹スケール感:5
❺ステレオエフェクト:6
❻耐入力・ダイナミックレンジ:6
❼音の魅力度:7
❽組合せ:普通
❾設置・調整:やさしい
瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ❶の「音域の広さ」は、測定上とは別に、聴感上、音域が広く感じられるかどうか、をあらわす。❷の「バランス」もこれに関連があり、特定の音域の強調等で、聴感上の音域が狭く感じられることがある。
 バランスの整っているという点は私の最重視項目で、すへての音楽で、特定のクセがついたり不自然に聴こえるのは困る。
 音の鮮度の高い感じ。歪が少なく磨き上げられたようなクリアーな音。そういう要素を「音の質感の良さ(❸)としている。どこか薄汚れたような品位の低い音、曇り空のようなどんよりした生気のない音、は質感の点数が低い。
 たとえば優れたピアノ録音を再生したとき、眼前にグランドピアノのあの胴体の大きさが十分に展開されるかどうか。ひと言でいえばそれが「スケール感(❹)だ。また、オーケストラ等が十分にスケールと広がりを保ちながらソロ楽器やヴォーカルが、その広がりの中にピタリと定位し、発音源の大小の対比が明確に聴きとれ、さらには奥行きまで感じとれるような音を「ステレオ効果(❺)」の再現がよい、という。
「耐入力、ダイナミックレンジ(❻)では、文字どおりどこまでパワーが安定に入れられるか、と共に、その逆に、音量を絞ったとき、ピアニシモのとき、などでも、バランスをくずさず、クリアネスを保っているものをよしとする。
 以上の各項目のいかに点数がよくとも、そこにもうひとつ「音の魅力(❼)が加わらなくては、私は良いスピーカーだといわない。鳴りはじめた音に、つい、聴き惚れてしまうような、つい惹き込まれて一枚もう一枚と、次々にレコードを聴きたくさせるような音の魅力。これのあるのは本物の良いスピーカーであることを、永い体験の上から確信している。
 最後の二項は、以上の総合的な性格を抽き出すための組合せの難易と設置および調整の難易度をあらわす。特定のアンプや特定のカートリッジでなくては、そして入念に最良の設置条件や調整のポイントを探さなくては、そのスピーカーの魅力が十分に抽き出しにくいというような場合には、よほどそのスピーカーに惚れ込んでいなくてはできない。そうでないことが望ましいが、しかし中には、そういう作業の末に、思いもかけない魅力で鳴り出すスピーカーが数少ないながら存在する。そういうポイントを探り出すために、相当入念に試聴をしたつもりである。

採点項目
❶音域の広さ
❷バランス
❸質感
❹スケール感
❺ステレオエフェクト
❻耐入力・ダイナミックレンジ
❼音の魅力度
❽組合せの自由度
❾設置・調整

BOSE 901 SeriesIV

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瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「24項・ボーズ901/SERIESIV 独特の理論でつくられている間接音重視型」より

 間接照明──光源が直接目に入らないように、一旦、壁面や天井に反射させる照明──は、光が部屋ぜんたいをやわらかく包む。このたとえはすでに6項でも使ったが、アメリカのボストン郊外にあるユニークなメーカー、BOSE(ボーズ)の製品は、それと同じ原理で作られた独特のスピーカーだ。中でもこの901型は、同社を代表するモデルで、すでに四回に亙る改良の手が加えられた最新型だ。実物を目にすれば、エンクロージュアが小さいことが意外に思われるかもしれない。音を聴けばなおさらのことで、この小さなエンクロージュアから、びっくりするほど豊かな低音が朗々と鳴ってくる。それでいて、このエンクロージュアの中には、大型のスピーカーユニットはひとつもついていない。直径10センチ(4インチ)という小型ユニットが全部で9本。すべて同じもので、低音専用とか高音専用とかいう区別のない、いわゆるフルレンジ(全音域)型である。
 この9本のユニットのうち、1本だけは正面を向いているが、残りの8本は背面にとりつけられて、それがすべて壁面に反射した間接音で聴き手の耳に達する。言いかえれば、スピーカーユニットから出る音の11%が直接音として、残りの89%が間接音として耳に到達する。これは、このスピーカーの設計者であるドクター・ボーズが、コンサートホールでの音の聴き手に到達する割合を調査して得た結論から抽き出した独特の理論だ。この理論に対して、レコードに録音された音自体にすでにホールの反響音が含まれているのだから、そこからあとの再生装置で反射音をつけ加える必要はないという反論があるが、むしろ901の鳴らす音は、そんな反論に疑いを抱かせるほど、ときとして魅力的だ。
 左右二台のスピーカーを、専用スタンドにとりつける。反射音を有効に生かすためには、スピーカーの背面が、極端に音を吸収するような材質や構造であってはいけない。従来までの901型は、この店で、ふすまや障子など吸音面が多い日本の家屋では、なかなかうまくその良さを生かせなかった。しかしTYPEIVに改良されてからのニューモデルは、よほど極端な吸音面でないかぎり、ほとんど問題なく使えるようになっている。
 ひとつ大切なことは、このスピーカーは単独でなく、専用のイクォライザーアンプを必ず併用すること。このイクォライザーは、アンプのTAPE OUTとTAPE INの端子のあいだに接続する。そしてイクォライザーアンプのスライド式のツマミを左右に調整しながら、聴感上、低音と高音のバランスの最も良いと思われるポイントを探す。このツマミは、好みに応じて常用してもよいし、一旦調整ののちは固定してもよい。いずれにしてもイクォライザーをON−OFFしてみると、その変化の大きさに驚かされる。スピーカー背面と壁面との距離、そして左右のスピーカーの間隔のとりかたは、部屋の響きや大きさに応じて、聴感上最良の位置を探す。これは901を使いこなす際の大切な作業だ。また、反射音を有効に生かすためには、スピーカー周辺に大きな家具その他ものを置かないことを心がける必要がある。最良点に調整したときのボーズ901の、ひろがりのあるやわらかな響きは独特だ。

スピーカーシステム:BOSE 901 SeriesIV ¥340,000(ステレオペア)
コントロールアンプ:ヤマハ C-2a ¥170,000
パワーアンプ:マランツ Model 510M ¥525,000
チューナー:ヤマハ T-2 ¥130.000
プレーヤーシステム:パイオニア PL-L1 ¥200,000
カートリッジ:オルトフォン Concorde30 ¥29,800
計¥1,394,800

SME 3012-R Special

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 凝り性のオーディオ愛好家はむろんのこと、メカにはそんなに興味のないレコード愛好家のあいだでも、絶大の信頼をかち得てまさに一世を風靡したSMEも、ここ数年来、次第に影が薄くなって、最近ではむしろ日本の愛好家の話題にはのぼりにくい製品になりかけていた。
 理由ははっきりしている。アメリカ、イギリスをはじめとして欧米諸国では、近年、アームもカートリッジも、超軽量化、ライトマス化に一斉に動いている。この流れの中でSMEもまた、軽量化に不利な3012を製造中止して、短いほうの3009でさえ、いっそうの軽量化のために、シリーズIIインプルーヴド型をへて、シリーズIIIにまで脱皮した。このSIII型を、正しく調整したときの音質は、決して悪くない。いや、悪くないどころか、独特の、風格と品位を感じさせる美しい音を聴かせる。その点は意外に知られていないし、評価もされていない。それはおそらく、カートリッジ交換のしにくさが大きく影響している。
 たしかに、理論的には新しいSMEに、優れた点はいくつもある。構造もデザインもユニークで、よく消化されている。だが、どことなく馴染みにくい形。何となく扱いにくく調整の難しそうな格好......。だがそのことよりも、カートリッジの交換がしにくいこと、というより日本ですっかり広まってしまったプラグイン式のカートリッジのヘッドシェルにとりつけてあるカートリッジが、現在のSMEにはそのままではとりつけられない、という理由のほうが、愛好家たちから敬遠された最大の理由ではないだろうか。そのプラグイン式シェルは、もとはオルトフォンが作った形だが、それを広く日本に普及させたのは、SMEの旧型で、そのSMEが自ら、軽量化の妨げになるという理由で便利なコネクターを捨ててしまい、その結果、日本の愛好家からそっぽを向かれてしまったのだから、皮肉な話だ。
 そのSMEが、何を思ったか、あの3012を、再び市販するという。え! うそじゃないの? と一瞬思ったが、目の前に置かれた製品を眺めて、いじりまわしてみると、これは冗談でもなければ、単純な懐古趣味でもなく、SMEが、3012を現代に復活させるべく、本気になって設計し直した、いわば新型の優れたアームであることが、次第に理解されてくる。
 初期の3012の最大の特徴は、アーム主部にステンレスパイプを使ったこと。ステンレスパイプは、へたに使うと固有の共鳴音が、嫌なくせを音につけ加えやすいが、今回の新型では、内部にバルサ材で巧妙な制動が加えられているとのこと。そして、初代3012で最もめんどうだったラテラルバランスの調整部分に、全く新しい考案のメカニズムがとり入れられた。この構造と工作精度は非常に見事で、実にじっくりと、ガタつきがなく滑らかに調整ができる。こ部分ひとついじってみても、この3012Rという新型が、SMEとしても本腰を入れた製品であることがわかる。こまかな構造は写真の解説、及び本誌57号503ページの「ホットニュース」欄、それに広告欄などを併せてご覧頂くほうが早い。それよりも、気になるこのアームの音についてご報告するのが、私の役割だろう。
 ホンネを吐けば、試聴の始まる直前までは、心のどこかに、「いまさらSMEなんて」とでもいった気持が、ほんの少しでもなかったといえば嘘になる。近ごろオーディオクラフトにすっかり入れ込んでしまっているものだから、このアームの音が鳴るまでは、それほど過大な期待はしていなかった。それで、組み合わせるターンテーブルには、とりあえず本誌の試聴室に置いてあったマイクロの新型SX8000+HS80にとりつけた。
 たまたま、このアームの試聴は、別項でご報告したように、JBLの新型モニター♯4345の試聴の直後に行なった。試聴のシステム及び結果については、400ページを併せてご参照頂きたいが、プレーヤーシステムはエクスクルーシヴP3を使っていた。そのままの状態で、プレーヤーだけを、P3から、この、マイクロSX8000+SMEに代えた。カートリッジは、まず、オルトフォンMC30を使った。
 音が鳴った瞬間の我々一同の顔つきといったらなかった。この欄担当のS君、野次馬として覗きにきていたM君、それに私、三人が、ものをいわずにまず唖然として互いの顔を見合わせた。あまりにも良い音が鳴ってきたからである。
 えもいわれぬ良い雰囲気が漂いはじめる。テストしている、という気分は、あっという間に忘れ去ってゆく。音のひと粒ひと粒が、生きて、聴き手をグンととらえる。といっても、よくある鮮度鮮度したような、いかにも音の粒立ちがいいぞ、とこけおどかすような、あるいは、いかにも音がたくさん、そして前に出てくるぞ、式のきょうび流行りのおしつけがましい下品な音は正反対。キャラキャラと安っぽい音ではなく、しっとり落ちついて、音の支えがしっかりしていて、十分に腰の坐った、案外太い感じの、といって決して図太いのではなく音の実在感の豊かな、混然と溶け合いながら音のひとつひとつの姿が確かに、悠然と姿を現わしてくる、という印象の音がする。しかも、国産のアーム一般のイメージに対して、出てくる音が何となくバタくさいというのは、アンプやスピーカーならわからないでもないが、アームでそういう差が出るのは、どういう理由なのだろうか。むろん、ステンレスまがいの音など少しもしないし、弦楽器の木質の音が確かに聴こえる。ボウイングが手にとるように、ありありと見えてくるようだ。ヴァイオリンの音が、JBLでもこんなに良く鳴るのか、と驚かされる。ということきは、JBLにそういう可能性があったということにもなる。
 S君の提案で、カートリッジを代えてみる。デンオンDL303。あの音が細くなりすぎずほどよい肉付きで鳴ってくる。それならと、こんどはオルトフォンSPUをとりつける。MC30とDL303は、オーディオクラフトのAS4PLヘッドシェルにとりつけてあった。SPUは、オリジナルのGシェルだ。我々一同は、もう十分に楽しくなって、すっかり興に乗っている。次から次と、ほとんど無差別に、誰かがレコードを探し出しては私に渡す。クラシック、ジャズ、フュージョン、録音の新旧にかかわりなく......。
 どのレコードも、実にうまいこと鳴ってくれる。嬉しくなってくる。酒の出てこないのが口惜しいくらい、テストという雰囲気ではなくなっている。ペギー・リーとジョージ・シアリングの1959年のライヴ(ビューティ・アンド・ザ・ビート)が、こんなにたっぷりと、豊かに鳴るのがふしぎに思われてくる。レコードの途中で思わず私が「おい、これがレヴィンソンのアンプの音だと思えるか!」と叫ぶ。レヴィンソンといい、JBLといい、こんなに暖かく豊かでリッチな面を持っていたことを、SMEとマイクロの組合せが教えてくれたことになる。
 3012Rを、この次はもっといろいろのターンテーブルシステムとカートリッジと組み合わせる実験を、ぜひしてみなくてはならないと思う。その結果は、いずれまた、ご報告しなくてはならなくなりそうだ。

JBL 4345

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 JBL♯4345の量産モデル第一便が、ついに到着した。それを、ステレオサウンド試聴室で、真っ先に試聴できる好運に恵まれた。その音は、予想に違わず、みごとな出来栄えに仕上っていた。
 名器♯4343の「次期モデル」とも、また「改良型」とも「上級機」とも噂されていた♯4345については、すでに本誌56号419ページに、発表以前に本誌の掴んだ情報から推測したイラスト付の速報が載った。その本誌発売直前の昨年9月8日に、ホテル・ニューオータニで業界関係者を対象としてセミナー形式の発表会が開催されたが、講師として来日したJBLプロフェッショナル・ディヴィジョンのゲイリー・マルゴリスは、本誌のイラストのあまりに現物に近いことに、目を丸くして驚いていた。この発表は、ほんごくアメリカより早く、世界に先駆けて日本だけで行なわれたそうだが、これを皮切りに、日本の主要都市で、業界関係者を主な対象として発表会が続けられ、そのあと、10月の全日本オーディオフェアで、一般に公開されている。
 が、これら一連の発表に用意された一組だけの♯4345は、一部分未完成の全くのプロトタイプで、実際の製品化は'81年の春以降に正式発表すると予告されたまま、今日までの数ヶ月、何ら詳しい情報が得られぬまま、愛好家の気をもませていた。その♯4345の、待ち望んだ到着である。
 ♯4343と並べてみると、ずいぶん大きく、しかもプロポーションのせいもあってか、ややズングリした印象だ。♯4343は、初対面のときからとてもスマートなスピーカーだと感じたが、その印象は今日まで一貫して変らない。その点♯4345は、寸法比(プロポーション)も、またそれよりもいっそう、グリルクロスを外して眺めたときのバッフル面に対するユニットの配置を含めて、♯4343の洗練された優雅さに及ばないと思う。この第一印象が、これから永いあいだに見馴れてゆくことで変ってゆくのかゆかないのか、興味深いところだ。
 ♯4343とくらべて、エンクロージュアの高さはほとんど変らないが、スカート(「台輪」とも「袴」とも呼ばれる脚部」の分(約2インチ=5センチ)だけ増しているが、横幅は約13センチ、奥行きは9・5センチ(グリルクロスをつけた状態)と、それぞれ増している。目の前に置かれてみるとずいぶん大きく、いくぶん威圧的でさえあって、試聴室が小さくみえる。馴れの問題かもしれないが、そればかりではないだろう。♯4343も、それ自体は決して小さいスピーカーではないが、それでも、仮に6畳の和室にでも、収めようと思えば一応は収まりのつくサイズであるのにくらべると、♯4345の占めるスペースは、それよりもふたまわりぐらい大きい感じで、相当に大きな空間を用意しなくては、自然な形では収まりにくいといそうだ。
 逸る胸をおさえる心地で、まず、横に並べた♯4343をしばらく鳴らしてみる。いかに場数を踏んだ人間でも、初めての、しかも期待の製品を聴こうとなると、どうしても、昂奮を抑えきれないが、しかしそういう心理状態では音をあるがままの姿で受けとめることもできなくなってしまう。心を鎮めるためにも、そしてまた、自分の感覚が妙に高ぶって尺度が狂っていたりしないかどうかを確かめるためにも、もう十分に聴き馴れた♯4343を、聴いておくほうがいい。
 ──どうやら大丈夫のようだ。聴き馴れた♯4343の音がする。さあ、これにくらべて、どんな音が鳴ってくるのだろうか......。
 実をいえば、昨年の東京での発表の際、ほんの僅かの時間を縫って、サンプルの♯4345を、我家に持ち込んで鳴らしている。だから全くの初体験というわけではないが、そのときのプロトタイプは、内蔵のLCネットワークの一部分が未完成で、バイアンプ(マルチアンプ)ドライブ専用の形となっていたで、今回の製品とは条件が違う。加えて、量産モデルではミッドバスのコーンの中央が、見馴れた♯4343の凹型(コーンケイヴ型)ではなく、凸型のキャップに変っている。おそらくプロトタイプとは音も違うだろう。となればやはり、ほとんど初対面同様だ。
 まず内蔵ネットワークだけの、バイアンプでないふつうの接続で鳴らしてみる。アンプはマーク・レヴィンソンのML7(最新型のコントロールアンプ)にML2L二台。プレーヤーはエクスクルーシヴP3に、オルトフォンのMC30。トランスはコッターのMK2/TYPE L。
 第一声は、わざと極力おさえた音量で聴いてみる。いいバランスだ。いま封を切ったばかりの全くの新品なのに、鳴らし込んだ本誌常備の♯4343BWXよりも、中〜高域が滑らかで、とろりとこなれている印象だ。むろん、その性格は♯4343とよく似ている。とうぜんだろう。中高音域及び最高音域のユニットは、それぞれ♯2420、♯2405で、♯4343の構成と全く同じなのだから。ただし、♯2405は、ダイアフラム・アッセンブリーに新しい技術がとり入れられて、ハイエンドのレスポンスがいっそうフラットで滑らかになったとJBLでは発表している。また、新設計のネットワークのおかげで、全音域にわたって、音のつながりが円滑になり、優れた特性を得ることができた、とも発表されていて、そことは、公表された周波数レスポンスにもはっきりあらわれているが、その特性をみるまでもなく、この音を聴けば、全体に柔らかくくるみ込まれるように、刺激性の少ない音のまろやかさは、誰の耳にでもはっきりと改善が認められるにちがいない。♯4343の新しいうちは、♯2405の超高音域が出しゃばりがちなのだが、♯4345ではそのようなことがない。試聴用に聴き馴れたフォーレのヴァイオリンソナタ(グリュミオー/クロスリー=フィリップス9500534/国内盤X7943)の第二楽章。アンダンテ、二短調の艶麗の旋律が相当にいい感じで鳴ってくれる。
 これはいい、と、少し安心してこんどは大パワーの音を聴いてみる。カラヤンの「アイーダ」。第三面、第二幕凱旋の場。大合唱に続く12本のアイーダ・トランペットの斉奏そして......このきわどい部分が、ほとんど危なげなく、悠揚せまらざる感じで、しかし十分の迫力をもって聴ける。この低音の量感と支えの豊かさは、大口径ウーファー、そして大型エンクロージュアでなくては聴けない。
 それなら、と、次にエリー・アメリンクの歌曲集を一〜二曲、聴いてみる。アメリンクは、私の最高に好きな歌手ではないが、この必ずしも熱心でないアメリンクの聴き手でも、ふっと聴き惚れさせる程度に、しっとりと滑らかで上質の響きに引き込まれる。伴奏のピアノの音が、実にふくよかだ。♯4343では、ちょっとこういう雰囲気は出にくかったはずだ──ちょっとだけ、♯4343を聴き直してみようか。
 現金なもので、♯4345をしばらく聴いてしまった耳には、♯4343のピアノの音は、何となくコンコンした固有の響きがつきまとうように聴こえはじめる。音量を絞ったときのピアノのスケール感が、♯4345にくらべてグンと小さく感じられてしまう。これだから、一度でも、よりよい音を聴いてしまうというのは困るのだ。
 何枚かのレコードを、さらに聞いてゆく。途中で、パワーアンプをスレッショルドのステイシス2に代えてみる(ほんとうはステイシス1を用意してもらいたかったのだが、都合で不可能だった)。前述のように、昨年の9月9日の夜、我家でバイアンプ・ドライヴで試みた際には、レヴィンソンのML2Lでよりも、ステイシス1と2と組合せのほうが、結果がよかった。けれど、今回のサンプルで、しかもバイアンプでなく内蔵のLCネットワークによるかぎり、私の耳には、レヴィンソンML2Lでのドライヴのほうが、音のニュアンスが豊かで、表現の幅が広く、ずっと楽しく聴けた。
 ひととおりの試聴ののち、次にバイアンプ・ドライヴにトライしてみた。ステイシス2を低域用、ML2L×2を中域以上。また、低域用としてML3Lにも代えてみた。エレクトロニック・クロスオーヴァーは、JBLの♯5234(♯4345用のカードを組み込んだもの)が用意された。ちなみに、昨年のサンプルでは、低音用と中〜高音用とのクロスオーヴァー周波数は、LCで320Hz、バイアンプときは275Hz/18dBoctとなっていたが、今回はそれが290Hzに変更されている。ただし、これはまあ誤差の範囲みたいなもので、一般のエレクトロニック・クロスオーヴァーを流用する際には、300Hz/18dBoctで全く差し支えないと思う。そこで、念のため、マーク・レヴィンソンのLNC2L(300Hz)と、シンメトリーのACS1も併せて用意した。
 必ずしも十分の時間があったとはいえないが、それにしても、今回の試聴の時間内では、バイアンプ・ドライヴで内蔵ネットワーク以上音質に調整することが、残念ながらできなかった。第一に、ネットワークのレベルコントロールの最適ポジションを探すのが、とても難しい。その理由は、第一に、最近の内蔵LCネットワークは、レベルセッティングを、1dB以内の精度で合わせ込んであるのだから、一般のエレクトロニック・クロスオーヴァーに組み込まれたレベルコントロールでは、なかなかその精度まで追い込みにくいこと。また第二に、JBLのLCネットワークの設計技術は、L150あたりを境に、格段に向上したと思われ、システム全体として総合的な特性のコントロール、ことに位相特性の補整技術の見事さは、こんにちの世界のスピーカー設計の水準の中でもきめて高いレヴェルにあるといえ、おそらくその技術が♯4345にも活用されているはずで、ここまでよくコントロールされているLCネットワークに対して、バイアンプでその性能を越えるには、もっと高度の調整が必要になるのではないかと考えられる。
 ともかくバイアンプによる試聴では、かえって、音像が大きくなりがちで、低音がかぶった感じになりやすく、LCのほうが音がすっきりして、永く聴き込みたくさせる。
 ほんとうに良いスピーカー、あるいは十分に調整を追い込んだバイアンプでの状態での音質は、決して、大柄な迫力をひけらかすのでなく、むしろ、ひっそりと静けさを感じさせながら、その中に、たしかな手ごたえで豊かな音が息づいている、といった感じになるもで、今回の短時間の試聴の枠の中では、本来のLCネットワークのままの状態のほうが、はるかにそうした感じが得られやすかった。
 本体の置き方としては、今回は、何も台に乗せずに床の上に直接置いた。背面は、固い壁に近づけたりやや離したりしてみたが、♯4343ほどシビアに反応するようなことがなく、置き方条件の差には、♯4343よりもタフなところがあるように思えた。ただ、昨年9月の我家での試聴の際には、ごく低い(約2・5センチの)堅木の棧を用意して、床からわずかに持ち上げて(背面は壁にぴったりつけて)設置した状態が良かった。その際立ち会っていたJBLのG・マルゴリス氏も、その状態が良いと賛意を表した。これらの点は、試聴室の音響条件によっていろいろと試みるべきだと思う。
 一応のバランスのとれたところで、プレーヤーを、P3から、別項のマイクロSX8000とSMEの新型3012Rの組合せに代えてみた。これで、アッと驚くような音が得られた。が、そのことはSMEの報告記のほうを併せてご参照頂くことにしよう。
黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 ウェストコースト的とか、イギリス的とか、はたまた日本的とか、ともかく的という言葉をつかって十把ひとからげにしてああでもないこうでもないと、わかった風なことをいいたててみても、本当ところはなにひとつはっきりしない。
 実は、この的という言葉は、なかなかどうしてくせもので、あつかいがむずかしい。よほどうまくつかわないと、意味があいまいになってしまう。なんだこの文章は、なにをいいたいのかよくわからない──と思ったら、よくよくその文章をながめてみるといい。きっとその文章には、的、ないしはそれに類した言葉が、あちこちでつかわれているにちがいない。
 そういうあいまいなところが的という言葉にはあるので、つかう方としてはつかいやすいし、安直につかってしまいがちである。たとえば、なるほどこの音はドイツ的だ──といった感じで、つかってしまいがちである。そのようにいわれた方としては、半面では、なるほどドイツ的なのか──と思い、残る半面では、実際のところ、ドイツ的とはどういう音なのであろう──と思うことになる。つまり、ひとことでいえば、わかったようでいてわからない。
 それぞれのスピーカーには生れ故郷がある。アメリカのウェストコーストで生れたスピーカーもあれば、イギリスで生れたスピーカーもある。したがって当然(といっていいのかどうかはわからないが)、ともかく、生れ故郷のちがいが音のちがいに、なんらかのかたちで、影響している。いかなる理由でそういうことになるのかは、よくわからない。いろいろまことしやかな理由で説明してくれる人もいなくはないが、これまでに説明されて納得できたことは一度もない。
 産地がちがえば、ミカンの味もちがう。これはあたりまえである。しかし、なんでスピーカーの音がちがうのであろう。スピーカーはミカンでないから、土地や気候のちがいがそのまま音に反映するとは考えられない。にもかかわらず、ウェストコーストのメーカーでつくられたスピーカーでは、誰がきいてもすぐにわかるようなちがいがある。
 そのちがいは、否定しようのない事実である。ここでは、さしあたって、ちがうという事実だけを問題にする。なぜ、いかなる理由でちがうのかは、ここでは考えないことにする。さもないと、ことは混乱するばかりである。はっきりさせたいのは、どのようにちがうかである。
 それぞれのレコードにも生れ故郷がある。ドイツで録音されたレコードもあれば、ニューヨークで録音されたレコードもある。このレコードについても、スピーカーと似たようなことがいえる。このことについては、多少なりともひろい範囲でレコードをきいている人なら、すでに確認ずみのはずである。さわやかだね、この音、やっぱりウェストコーストのサウンドだね──といったようなことを口にする人は多い。ここでは、そういうレコードの音とスピーカーの音を、ぶつけてみようと思う。ウェストコーストで録音したレコードをウェストコーストのメーカーでつくられたスピーカーできき、その後、故郷をちがえるレコードをそのスピーカーできいてみて、どのように反応するのかをききとどけてみようというわけである。
 理想をいえば、ウェストコーストで録音されたレコードをいかにもウェストコーストで録音されたレコードらしく、イギリスで録音されたレコードはいかにもイギリスで録音されたレコードらしくきかせるスピーカーが、このましい。しかし、それはやはり理想でしかなく、多くのスピーカーは、なんらかのかたちで、そのスピーカーのお国訛りを、ちらっときかせてしまう。愛矯といえばいえなくもないが、つかう方からすれば、その辺を無視するわけにはいかない。いかなるもちあじを魅力とするスピーカーなのかをしかとみとどけてつかえば、それだけそのスピーカーを積極的につかえるはずである。
 世間ではしばしば、クラシック向きスピーカーとか、ロック向きスピーカーといったような区分がおこなわれ、それはそれなりに多少の意味がなくもないが、ここでは、生れ故郷をちがえるスピーカーがどのようにちがう音をきかせるのか、その辺にポイントをおいて、きいてみた。
 さしあたってここでは、さまざまなスピーカーに対して、「あなたは、どの国の出身のレコードの再生がお得意なのででしょうか?」と、たずねてみたことになる。スピーカーの答えは、さて、いかなるものであったか──。
黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 スピーカーで音の世界めぐりをしてきて、最後に日本のスピーカーを2機種きいた。そこでまず感じたのは、ともかくこれは大人の音だということであった。充分に熟した音であり、かたよりがないということである。立派だと思った。どの国出身のレコードでも、つつがなく対応した。ヤマハのNS1000MとビクターのZER05FINEでは、価格の差があるので、そのクォリティについては一概にはいえないとしても、おのれの個性をおさえて、それぞれの方法でさまざまな音楽に歩みよろうとしている姿勢が感じられた。大人の音を感じたのは、おそらく、そのためである。
 とりわけ、ヤマハのNS1000Mは、立派であった。それぞれに性格のちがう音楽のうちの力を、しっかりと示した。ただ、たとえば、マーティ・バリンの歌の、粋でしゃれた感じをこのましく示したかというと、かならずしもそうはいえなかった。さまざまな面で、はきり、くっきり示しはしたが、独特のひびきのあじをきわだたせたとはいいがたかった。したがって、このマーティ・バリンだけを例にとれば、JBLのL112とか、あるいはボーズの301MUSIC MONITORの方がこのましかったということになる。ビクターのZER05FINEについても、同じようなことがいえる。
 こうやって考えてくると、ヤマハのNS1000Mにしろ、ビクターのZER05FINEにしろ、日本出身のレコードでそのもちあじを特に発揮したわけではないから、外国のスピーカーたちとちがって、お国訛りがないということになる。お国訛りというのは、いってみれば一種の癖であるから、ない方がこのましいと、基本的にはいえる。ただ、場合によっては、そういうスピーカーの癖が、レコードの癖と一致して、えもいわれぬ魅力となることもなくはない。シーメンスのBADENのきかせたニナ・ハーゲンやクラフトワークのレコードの音がそうであり、エリプソンの1303Xがきかせたヴェロニク・サンソンのレコードの音がそうである。
 癖があるのがいいのかどうか、とても一概にはいいきれない。同じ価格帯で比較したら、日本のスピーカーの多くは、平均点で、外国産のスピーカーを大きくひきはなすにちがいない。さしずめ、日本のスピーカーは3割バッターといたところである。そこへいくと、外国のスピーカーの多くは、ねらったところにきたらホームランにする長距離打者といるであろう。
 ただ、この場合、ききてであるかぼくが日本人であるために、日本のスピーカーのお国訛りが感じとれないとういこともあるかもしれないので、はっきりしたことはいいにくいところがあるが、日本のスピーカーは、ドイツのシーメンスのBADENをドイツ的というような意味で日本的とはいいにくいように思うが、どうであろうか。
 くりかえして書くが、、ヤマハとビクターのスピーカーは、大滝詠一やブレッド&バターのレコードもこのましくきかせたが、それと同じようにハーブ・アルバートやマーティ・バリンのレコードもこのましくきかせた。その意味で安心してつかえるスピーカーではあるが、きらりとひかる個性にいくぶん欠けるといえなくもないようである。

B&O Beovox S80

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黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 青い音とでもいうべきであろうか、すっきりした、透明度の高い音である。ほかの国のスピーカーからは感じとれない、独自の、しかし耳に心地よい音である。
 レコードは、いくぶんこじつけめくが、アバの『スーパー・トゥルーパー』とパット・メセニーの『アメリカン・ドリーム』をきいてみた。そしてここでもやはり、なるほどと納得する結果になった。アバの歌は、いずれも、巧みなサウンド設計に支えられていると思うが、そのことがよくわかるきこえ方をした。それに、アバの歌では、歌い手たちの声がいくぶん楽器的にあつかわれていて、声そのものが。情感を背負うことはあまりないことも、ここでは幸いしていたようである。
 たとえばヴェロニク・サンソンの唱などをきくと、エリプソンの1303Xできいた場合とまるでちがって、肌ざわりのつめたいものになる。その辺にこのスピーカーの特徴があるといえよう。ハーブ・アルバートのトランペットの音は、本来のあじわいとはすくなからずちがうが、あたかも涼風が頬をなでていったように感じられ、これはこれでわるくないと思わせた。
 パット・メセニーのレコードでは、キーボードによる低い音が過度にふくらむことなく、このましかった。サウンドのフィーリングが音楽のフィーリングとぴったりあっていたようである。

エリプソン 1303X

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黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 ひとことでいえば、瀟洒なスピーカーということになるであろう。スリムなボディから、いかにもフロア型スピーカーならではの、たっぷりしたひびきがきこえてきた。音は、しなやかであり、ふっくらしていて、ソフトであった。
 ここでは、ヴェロニク・サンソンのレコードと、ミッシェル・ポルナレフのレコードをきいてみたが、とりわけヴェロニク・サンソンのレコードのきこえ方が、すこぶる見事であった。インストルメンタルによるバックがもう少し鮮明であってもいいのではないかと思ったりしたが、声のなまなましさは、なんともはや驚くべきものがあった。
 ハーブ・アルバートのレコードなどでも、音楽の切れあじの鋭さの提示ということでは多少の不満が残ったとしても、ひびきに独特のあかるさがあるで、音楽の性格をききてに感じとらせることができた。
 しかし、このフランス出身のスピーカーは、ハードな音楽はあまりきかないで、きくのは女声ヴォーカルが多いというような人には、うってつけかもしれない。このスピーカーの音は、力でききてに迫る音ではなく、そこはかとない雰囲気でききてににじりよるような音である。ただ、にじりよられても、音の湿度は高くなく、ひびきとしてあかるいので、嫌味にはならない。
黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 シーメンスのBADENとヴィソニックのDAVID5000では、大きさも、それに価格も極端にちがうので、とても一緒くたに考えられないが、でも、ふたつとも、まぎれもなくドイツ出身のスピーカーであることが、一聴してわかる。その意味で、まことに特徴的である。ドイツのスピーカーをきくのであるからと、クラフトワークの『コンピューター・ワールド』とニナ・ハーゲンの『ウンバハーゲン』を中心に、ここではきいた。
 シーメンスのBADENできいたニナ・ハーゲンは、圧倒的というべきであろうか、なんともすさまじいものであった。ききてに迫る音のエネルギーの噴出には、きいていてたじろがざるをえなかった。このレコードは、これまでにもいろいろなスピーカーできいているが、それらと、ここでシーメンスのスピーカーできいたものとは、決定的にちがっていた。リズムのうちだす音の強さは、さて、なににたとえるべきであろう。鋼鉄のごとき強さとでもいうべきであろうか。
 クラフトワークのレコードできけた音についても、同じようなことがいえる。そうか、このグループはドイツのグループであったのだなと、あらためて思った。そういう音のきこえ方であった。音場的にかなりのひろがりは感じられたが、そのひろがった間をぎっしり強い音がつまっている感じであった。このスピーカーの音の力の示し方は、独自であるが、すばらしいと思った。
 ところが、たとえば、ハーブ・アルバートのレコードなどをきくと、たしかに音の輪郭をくっきりあいまいにせずに示すあたりはすばらしいのであるが、このレコードできけるはずの本来の軽快さやさわやかさからは、遠くへだたったものになっていた。どことなくPA的になっているとでもいうべきであろうか、微妙なニュアンスの感じとりにくいはがゆさをおぼえた。
 シーメンスのBADENというスピーカーの音の特徴は、あぶなげのない、そしてあいまいさのない、いうべきことをはっきりいいきったところにある。きいていて、すごいと思うし、それなり説得力もある。しかし、すべての音楽を、そしてすべてサウンドを、自分の方にひきつける強引さが、ときにうっとおしく感じられることもなくはないであろう。そういうことを含めて、たしかにドイツのスピーカーであると思わせる音をきかせたということになる。
 小さなDAVID5000についても、似たようなことがいえる。コマーシャルを真似て、DAVID5000は小さなドイツです──などといってみたくなる。小さな身体にエネルギーがみちみちているといった感じである。よくもこの小さな身体からこれだけダイナミックな音をだすものであると感心した。クラフトワークのレコードなどでも、音楽的特徴は、一応つつがなくききてに示した。なかなかたいしたものである。
 このDAVID5000の泣きどころは、声のようである。声が、概して、がさつきぎみであった。しかし、その一方で、ソリッドな音を、くずれをみせずに示しているのであるから、あまりないものねだり的なことはいいたくない気持である。
 いずれにしろ、シーメンスとヴィソニックで、ドイツの人が好むにちがいない音の力を堪能した。

ロジャース PM110SII

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黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 重い音への対応ということでは、このロジャースのPM110SIIは、これまでのイギリス出身のふたつのスピーカー、スペンドールのBCIIKEFの303と、かなりちがう。このスピーカーの大きさからは考えられないような低い、そして重い音がでるのには、感心させられた。しかも、ここで示される低音には、ぼけた感じがない。それがこのましい。
 たとえば、デイヴ・エドモンズの『トワンギン』できける音楽の、敢えていえばロックとしての迫力とでもいうべきものは、実に見事に示した。そのかぎりにおいて、これは、これまでのイギリス出身の2機種にまさる。この表情の変化なども、大変になまなましく示した。ただ、問題がひとつある。表現の重心が中高域より中低域にかかりすぎているためと考えるべきか、いずれにせよ、シャカシャカいう音よりドンドンいう音の方が拡大されがちなことである。
 きいてみたレコードの中で、特にきわだって結果のおもわしくなかったのが大滝詠一の『ロング・バケーション』であった。音像が拡大されがちなことと関係して、声そのもののなめらかさはあきらかになっているとしても、声は楽器の音にうめこまれがちで、きいていて重くるしさが感じられる。そいうきこえ方というのは、この音楽のめざす方向とうらはらのものといえよう。
 似たようなことのいえるのが、ハーブ・アルバートの『マジック・マン』であった。ここでのきこえ方は、お世辞にも颯爽としているとは表現しがたいものであった。たしかに、低音のきこえ方などには独自ものがあり、アルバートのトランペットの特徴ある音色を巧みに示していたが、音楽がさわやかに走る気配を感じとらせにくいものであった。
 本来なら、スライ&ロビーの『タクシー』あたりが、もう少し軽くきこえてほしいところであったが、音楽としてもったりしたものになってしまった。そのようなことから、このスピーカーは、いまのサウンド、あるいはいまの音楽、とりわけここできいたようなレコードにおさめられている音楽にはあわないスピーカーといえるのかもしれない。ご存じの方も多いと思うが、ロジャースのスピーカーは、総じて、クラシック音楽を中心にきく人の間に支持者が多い。たしかに、この腰のすわった、それでいてきめこまかいところもあるスピーカーの音が効果的なレコードもあることはわかるが、すくなくとも今回きいたようなレコードでは、ロジャースのスピーカーのよさがいきなかったといってよさそうである。
 スピーカーの音としていくぶん暗めであるのは、イギリス出身のスピーカーに共通していえるわけで、このロジャースのPM110SIIについてもそことはあてはまるが、それに加えて、このスピーカーでは、もうひとつ音ばなれがすっきりしないために、全体としてさわやかさの不足したものとなったようである。
 いまの音楽は、ウェストコースト出身のレコードできかれる音楽にしろ、イギリス出身のレコードできかれる音楽にしろ、一種の軽みを共通してそなえていると思われるが、その点での反応でいささかものたりなさを感じさせた。

スペンドール BCII

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黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 このスペンドールのBCIIというスピーカーは、しばしばクラシック向きといわれる。たしかに、このスピーカーのもちあじであるきめこまかさは、繊細さを求めるクラシック音楽をこのましくきくのに、うってつけである。それに、SS編集部の良識派のMくんがいみじくもいったことであるが、おそらくこのスピーカーをつくった人たちは、ここで試聴につかったようなレコード、たとえばデイヴ・エドモンズの『トワンギン』のようなレコードは、きいたことがないにちがいない。しかし、デイヴ・エドモンズの『トワンギン』の中には、1968年にロンドンで録音された曲が収録されている。そうなれば、今回の意図からして、ここできいてみることになる。
 それで、結果はどうであったかということになるのだが、納得できる音をきくことができた。なるほどと思えた。デイヴ・エドモンズの音楽をパブ・ロックといっていいのかどうかはわからないが、この音楽の、あかるくはれやかになりようのない性格を、なかなか巧みに示した。ひびきのスケールがきわだって大きいとはいいがたいが、それなりの音楽の力感といえるようなものは提示したというべきであろう。
 これはイギリス出身のスピーカーに共通していえることであるが、サウンドは、いくぶんうつむきかげんで、多少暗い。その多少の暗さが音に陰影をつけることにもなっているようである。
 このスペンドールのBCIIを、たしかにイギリス出身のスピーカーであると思ったのは、イギリスで録音された、つまりイギリス出身のレコードをきいたときでなく、むしろアメリカのウェストコースト出身のレコード、たとえばハーブ・アルバートのレコードなどをきいたときであった。アルバートのトランペットの音は、かげりの中にあった。エレクトロボイスのスピーカーできいたときほどの違和感はなかった。その辺がイギリスのスピーカーの興味深いところである。レコードヘの歩みより方が巧妙である。
 それぞれのレコードがきかせる音楽の「らしさ」への対応がうまいということになるであろう。
 スライ&ロビーの『タクシー』のようなレコードにしても、乾ききらないどことなく湿りけを残したひびきを、ききてに感じさせるような音をきかせる。ひびきは、再三書いているように暗く、多少の湿気もあるのであるが、ついに重くひきずったようにならない。つまり、ある種の軽みの表現にもすぐれたところがあるということである。
 そために、このスピーカーは、いまの時代のサウンド、あるいは今様な音楽にも、無理なく対応しているとみるべきであろう。このイギリス出身のスピーカーは、なかなかどうしてヤング・アット・ハートである。一応ものわかりもよく、それなりの実力をもあり、気分的に若いとすれば、つかう方からすると、気をつかわないでつかえるということで、それはむろんスピーカーとしては美徳である。
 このスピーカーには、もうひとつ、このましいところがある。おそらく、ひびきのきめのこまかさに関係してのことと考えるべきであろうが、言葉のたちあがりが鮮明である。歌を中心にきく人にはうってつけのスピーカーといえるのではないか。

KEF Model 303

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黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 これはいいスピーカーである。スペンドールのBCIIもすぐれたスピーカーであったが、やはりこのスピーカーと較べると、いくぶん大人っぽいところがあった。このKEFの303の方が、いまの音楽、いまのサウンドをきくには、あっている。ひびきがひときわフレッシュである。ただ、あらためていうまでもないと思うが、スケールの大きいな音楽を恰幅よく示すタイプのスピーカーではない。それに、こもまたイギリス出身のスピーカーであるから、ひびきは暗めである。スペンドールのBCIIよりはいくぶんあかるいようであるが、あのアメリカのウェストコースト出身のスピーカーに較べれば、やはり暗いといわざるをえない部分がある。その分だけひびきのきめがこまかいとしても、聴感上は暗いというべきであろう。
 デイヴ・エドモンズの『トワンギン』で特徴的な、高い方でのいくぶんざらついた音への対応のしかたは、きいて、なるほどと思うものであった。きれいにみがきあげられたとはいいがたい音の、汚れた音であるがゆえの生命力とでもいうべきものを、なまなましく示した。これはイギリス出身のスピーカーに共通していえることでもあるが、このKEFの303でも、声がヴィヴィッドに示されたのが印象的であった。
 そのために、アメリカのウェストコースト出身のレコードであるマーティ・バリンのレコードを、ここでまたきいてみたいと思った。きいてみたら、なかなかいい感じであった。バリンのかすれた声をうまく示した。しかも、バリン納谷、ウェストコースト出身のスピーカーできいたときには感じとりにくかった大人っぽい雰囲気があることがわかった。いくぶんかげりのあるひびきの中に、バリンのスリムな声がすっきり定位して、なかなかいい感じであった。
 スライ&ロビーの『タクシー』もよかった。シャカシャカした音とソリッドな音の対比を充分につける能力をそなえたスピーカーであるから、このレコードできける音楽の特徴を示すことにおこたりはなかった。このスピーカーの音は、たとえ多少のかげりがあるとしても、重くぼてっとはしていないので、このレコード『タクシー』におさめられているようなサウンドにもうまく対応できるということのようである。
 ハーブ・アルバートのレコードも、、好結果をおさめた。むろん、「ベサメ・ムーチョ」でリズムをきざむ深いひびきの提示には、無理があった。しかし、それとても、一応それらしく示した。したがって、音楽をはこんでいくリズムのきざみは、ききてに感じとれるわけで、音楽としてきいている分には、ことさら不満をおぼえなかった。つまり、そのことから、このKEFの303というスピーカーが、その音楽的まとまりをこのましく示すスピーカーということがいえるにちがいない。
 大滝詠一のレコードでも、音がききての側に迫ってくる力は感じられなかったもの、すっきりした音場感を示し、大滝の声の特徴もよくあきらかにしていた。音のだし方にいくぶんひかえめなところがあるとしても、上品な音の、つかいやすいスピーカーのようである。
黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 これもまたアメリカのスピーカーであるが、エレクトロボイスは、アメリカのミッド・イーストを代表するメーカーである。このスピーカーのだす音を、ほんの1分もきけば、そのことは、誰にでもわかるはずである。ひとことでいうと、都会の音──とでもいうことになるであろうか。辛口の音である。ウェストコーストを出身地とするスピーカーの、あのあかるく解放感にみちみちた音とは、ひとあじもふたあじもちがう音である。同じアメリカのスピーカーでも出身地がちがうのであるから、JBLアルテックをきいたレコードとはちがうレコード、つまりビリー・ジョエルやトーキング・ヘッズのレコードを、かけてみた。
 ビリー・ジョエルやトーキング・ヘッズのレコードをきいてみて、なるほどと納得のいくことが多々あった。トーキング・ヘッズの音楽のうちの棘というべきか、鋭くとがったサウンドを、このエレクトロボイスのスピーカーは、もののみごとに示した。もし、時代の影といえるようなものがあるとすれば、そのうちひとつがトーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』できける音楽のうちにあるのかもしれない。そういうことを感じさせる、このエレクトロボイスのきこえか方であったということになる。
 ビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』は、音楽の質からいっても、性格からいっても、トーキング・ヘッズのレコードできけるものとずいぶんちがうが、きこえた音から、結果的にいえば、似たところがあるといえなくもない。つまり、リズムの示し方の、切れの鋭さである。いや、もう少し正確にいえば、リズムの切れが鋭く示されているというより、リズムの切れが鋭く示されているように感じられるということのようである。
 そのように感じられるのは、おそらく、このスピーカーの音が、ウェストコースト出身のスピーカーのそれに較べて、いくぶん暗いからである。
 しかし、音が暗いといっても、このスピーカーの示す音には湿り気は感じられない。音は充分な力に支えられて、しゃきっとしている。ひびきの輪郭がくっきり示されるは、そのためである。
 ハーブ・アルバートの『マジック・マン』のきこえ方などは、まことに印象的であった。アルバートによるトランペットの音がいつになくパワフルに感じられた。トランペットの音の直進する性格も充分に示されていたし、リズムの切れもよかった。音場感的にもひろがりがあってこのましかった。ただ、ひびきが、からりと晴れあがった空のようとはいいがたく、いくぶんかげりぎみであった。そういうことがあるので、ウェストコースト出身のスピーカーできいたときの印象と、すくなからずちがったものになった。
 こうやって考えてくると、このスピーカーの魅力を最大限ひきだしたのは、どうやら、トーキング・ヘッズのレコードといえそうである。そこで示された鋭さと影は、まことに見事なものであった。

BOSE 301 Music Monitor

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黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 このスピーカーはいい。価格を考えたら大変にお買得である。
 むろん、スケール感がほしいとか、腰のすわった低音をききたいとか、あれこれむずかしい注文をだしても、このランクのスピーカーに対応できるはずもないが、きかせるべき音を一応それらしく、あかるい音で、すっきりきかせる。小冠者、なかなかどうしてようやるわい──といった感じである。きいていて、いかにもさわやかで、気分がいい。
 このボーズ301MUSIC MONITORのきかせる音は、ひとことでいえば軽量級サウンドである。それにしても、吹けばとぶような音ではない。しんにしっかりしたところがあるので、音楽の骨組みをあいまいにしない。そこがこのスピーカーのいいところである。なかなかどうしてようやるい──と思えるのは、そういういいところがあるからである。
 ハーブ・アルバートのレコードのB面冒頭には、しゃれたアレンジによる「ベサメ・ムーチョ」がおさめられているが、それなどをきいても、いくぶん小ぶりな表現ながら、細部を鮮明に示して、あざやかである。このアルバートによる「ベサメ・ムーチョ」は、深いひびきのきざむリズムにのってはこばれるが、あたりまえのことながら、本当に深いひびきは、このスピーカーではきけない。それをきこうとしたら、やはりどうしても大型のフロアースピーカーのお世話にならなければならない。しかし、このボースの301MUSIC MONITORは、その深いひびきの感じを、一応、それらしく示す。
 音場的なひろがりの面でも、このスピーカーは、あなどりがたい。ハーブ・アルバートのレコードが、せまくるしくあつくるしくきこえたら、きいていてやりきれなくなるが、その点で、このスピーカーの示す音場とひびきの質は、このましい。あくまでもさわやかであり、すっきりしている。このスピーカーもまた、ウェストコースト・サウンドの特徴をそなえているといっていいように思う。
 マーティ・バリンのレコードもよかった。うたわれた言葉はシャープにたちあがる。ただ、難をいえばリズムをきざむソリッドな音に力が不足している。そういうこのスピーカーのいくぶんよりよわいところが、ランディ・マイズナーのレコードではより強く感じられるとしても、決して湿っぽくなったり、ぐずついたりしないひびきのこのましさがあるので、致命的な弱点とはいいきれない。
 アルバートのレコードにしても、バリンのレコードにしても、マイズナーのレコードにしても、大滝詠一のレコードにしても、音がべとついたり、ぼてっとしたりしたら、それぞれのレコードできける音楽の本質的な部分がそこなわれ、その音楽の最大のチャーミング・ポイントをたのしめないことになる。すくなくともそういうことは、このボーズの301MUSIC MONITORではない。
 もし環境の面で許されるなら、パワーを少し入れてやると、ひびきの力感に対しての反応もよりこのましくなるであろうし、このフレッシュな音をきかせるスピーカーは、魅力充分といえそうである。

アルテック Model 6

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黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 JBLのL112をきいた後でこのスピーカーをきいて、そうか、そうであったな、これもまたウェストコースト出身のスピーカーであったなと思わないではいられなかった。それほど、JBLのL112とこのアルテックのMODEL6とでは、ちがう。したがって、そういことがあるので、出身地別でスピーカーに安易にレッテルをはることはつつしまなければならない。ことはまことに微妙である。よほど用心してかかる必要がある。さもないと、とんでもない誤解をしてしまいかねない。
 しかし、このアルテックのMODEL6もまた、まきれもなく、アメリカのウェストコースト出身のスピーカーの特性をそなえている。それがなにかといえば、ひびきのおおらかさである。ひびきのおおらかさはJBLのL112でも充分に感じられたものであるが、それとこれとのいずれでよりきわだっているかというと、このMODEL6においてである。ただ、すぎたるはおよばざるがごとし──ともいう。このスピーカーの音は、たしかにおおらかではあるが、おおらかにすぎたといえなくもない。
 たとえば、マーティ・バリンのレコードで、例の「ハート悲しく」をきくと、JBLのL112できいたときより、陽気な歌に感じられる。ひびきが、おおらかで、率直な分だけ、この歌の影の部分が薄くなったというべきであろうか。バリンの声には独自のかすれがあるが、それを充分に感じとれるとはいいがたい。その辺にこのスピーカーの多少の問題がある。
 しかし、JBLのL112とこアルテックのMODEL6では、価格の面でわずかとはいいがたい差があるから、同列において四の五のいったら、アルテックのMODEL6に対してフェアでない。判断する場合には、その価格の面での差を割引いて考える必要があるものの、スピーカーの音の性格として、鋭角的なひびきより丸みのあるひびきの表現にひいでているということはいえるにちがいない。
 たとえば、ランディ・マイズナーの『ワン・モア・ソング』をかけたときのサウンドなどは、ききてをのせる。中域の音が充実しているからであろう。そのストレートなサウンドは、爽快である。ただ、これは、このランディ・マイズナーのレコードでも、マーティ・バリンのレコードでも、そして大滝詠一のレコードでもいえることであるが、総じて、声より楽器の音の方がきわだちぎみで、声、ないしはうたわれている言葉は、ともすると楽器のひびきの中にうめられる傾向がある。
 ハーブ・アルバートのレコードもわるくない。アルバートによって吹かれたトランペットの音が、その特徴をきわだてているとはいいがたいが、音楽の力感をよく伝える。そのようなことから、このスピーカーの音のもちあじを、こだわりのない率直さということもできるであろう。
 音楽の力強さをすとんと示すが、ひびきの微妙なところにこだわる人は、そこにものたりなさを感じるのかもしれない。しかし、このスピーカーのきかせる音には、俗にウェストコースト・サウンドといわれる独調のひとつである解放感があることはまちがいない。

JBL L112

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黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 JBLはアメリカ・ウェストコーストを代表するメーカーである。なるほど、この音像をいささかもあいまいにならずくっきり示す示し方、それに力感のあるサウンド、それでいてあくまでさわやかであることなどは、これぞウェストコースト・サウンドといいたくなるようなものである。ひびきのきめのこまかさがもう少しあればと思わなくもないが、しかし、それがかならずしも弱点とはいいがたいところに、このスピーカーの魅力があると考えるべきであろう。
 ランディ・マイズナーの『ワン・モア・ソング』などでは、リズムのきざみに、いわくいいがたい、本場ものの独自の説得力とでもいうべきものが感じられる。高域は、さらに一歩進めば、刺激的な音になるのであろうが、その手前にふみとどまって、すっきりした、ふっきれたサウンドをうみだしている。こういうレコードは、こういうスピーカーでききたいなと思わせる、ここでのきこえ方であった。
 マーティ・バリンの『恋人たち』も、とてもすてきにきこえた。そのレコードのうちの、テレビのコマーシャルでつかわれているA面の冒頭に入っている「ハート悲しく」をきいたのであるが、子音をたてた音のとり方や、歌の、粋で、ちょっときどった、それでいて孤独の影のうちにある気配を、もののみごとに示して、なるほど、このレコードは、こういう音できくべきなんだなと思わせた。このスピーカーの音は、あくまですっきりさわやかであるから、多少音像が大きめになっても、ぼてっとしない。
 マーティ・バリンの場合と似たようなことのいえるのが、大滝詠一の『ロング・バケーション』であった。このスピーカーにおける音のキャラクターの面での大らかさが、ここではさいわいしていたとみるべきであろう。スピーカーからでてくる音は、湿度が低く、からりと乾いているから、抒情的な歌もじめじめしない。
 ただ、大滝詠一の『ロング・バケーション』できけるような性格の音楽なら、このJBLのスピーカーの音にも申し分なくフィットするが、日本の歌でも、たとえば演歌のようなものではどうなのであろうと考えなくもなかった。このスピーカーの音がふっきれているだけに、もしかするとあっけらかんとしたものになってしまうのかもしれない。
 ハーブ・アルバートの『マジック・マン』のレコードは、すべてのスピーカーできいてみたが、ここでのきこえ方は、それらのうちのベストのひとつであった。こういう性格の音楽とサウンドでは、このスピーカーは、そのもちあじのもっともこのましい面をあきらかにする。アルバートの吹くトランペットの音は、まことに特徴があって、誰がきいても、あっ、これはアルバートとわかるようなものであるが、その音の特徴が、このスピーカーでは、いとも鮮明に示された。
 それに、トランペットの音の直進する感じも、ここではよくききとれ、ききてに一種の快感を与えた。音楽の走りっぷりのよさを実感させる音であり、きいていて、なんともいえずいい気分であった。
 このスピーカーの音は、ひとことでいえば解放的で、すべての音が大空めざして消えていくといった気配であった。さわやかさは、なににもかえがたい魅力といってもいいであろう。
菅野沖彦

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
特集・「第3回《THE STATE OF THE ART 至上のコンポーネント》賞選定」より

 FR7fというカートリッジは、いうまでもなく、前作FR7の姉妹機で、いわばそのMKIIではないからこそ、fという別名を与えたというだろうが......FR7でもそうだったのだが、このカートリッジは、現在のカートリッジのコンセプトへの真向からの挑戦ととれるもので、構造的にも音的にも実にユニークなオリジナリティとフィロソフィの明確な作品であって、「そういってはなんだが、どんぐりの背比べよろしく、ムービング・マスや自重の軽量化や、軽針圧の限界競争などにうつつをぬかしている、そこらへんのありふれたカートリッジとはわけが違うぞ!!」とでもいいたげな内容と外観をもっている。たしかに、このカートリッジは、並のカートリッジとは一味も二味もちがった、コニサー好みの魅力的なものなのだ。推測だが、このカートリッジは、とても商品として量産のきくものとは思えず、一つ一つが丹念につくられた精密機器だけがもつ風格をもっている。血の通った名器と四分にふさわしい。7fの基本構造は、前作7と同じで、2マグネット4極構成の磁気回路によるプッシュプル発言方式。可動コイルは、カンチレバーに直接取り付けられ、鉄芯はもちろん、巻枠さえ持たない完全空芯タイプというユニークなものである。インピーダンスは2Ωという低いもので、出力電圧は0・15mV〜0・2mVである。その他数え上げれば、数々の特長を上げることができるが、いたずらに新素材を使ったり、スペックをよくすることを目的としたテクノロジーのスタンドプレイは、ここには見当らない。カートリッジとレコードを愛し、見つめ、いじり、考えに考えた一人の人間の眼と耳が、練達の技を通して具現化した執念の作品がこれなのだ。これほど主張の強いオーディオ製品はそうざらにはあるまい。特に、昨今のデータ競争によって平均化され、無個性化される傾向の強い環境の中では、一際目立った個性的な存在なのである。音を聴けばこのことがさらに、さらによく理解できるであろう。こんな音が? と驚くほど、かつて聴き得なかった音までを、レコード溝の奥深くから、さらって聴かせるといった雰囲気で、出てくる音の輪郭の明確さ、音像の実在感の確かさ、曖昧さのない張りのある質感は、少々圧迫感があり過ぎるほど、あくまで力強く、濃厚である。血の通った音という表現は私好みだが、まさにこのカートリッジにこそ、この表現はふさわしい。それも熱い血潮だ。かつてオルトフォンのSPU全盛の時代にあって、今はなくなった音を、レコード・オーディオ通の諸兄ならご記憶であろう。そう、同好の士なら解っていただけるであろう、あのレコード独特の聴き応えのたしかな音の質感である。あれが、このところスピーカーから聴こえてこなくなって久しいとは思われないだろうか? その代りに、繊細、透明、軟らかく、軽やかな、さわやかな音は豊富に聴けるようになったと思う。艶も輝きも聴こえないといったらうそになる。
 しかし、あの弾力性のある真の艶と輝きの実感、厚い音の温度は、今聴くことは難しい。それがあるのだ。それを聴かせてくれるのが、このカートリッジなのだ。前作7が出た時、私は、この音を聴き得て飛び上ったが、惜しむらくは、トレース能力に難があったことも確かである。7fはこれが向上し、たいていのレコードはOKとなった。自重30gの重量級カートリッジだからこそ、2〜3gの針圧だからこそといった音がする。これは、今の軽量級支持者がもっともっと考えるべき問題提起なのである。いいことばかりではない。こうした構造をとれば、よくもあしくも特長が現われ、それが個性となる。要は、この個性を好むか否かであろう。角度を変えて欠点をほじり出せばきりがない。勇気のある製品なのだ。だからこそ、ステート・オブ・ジ・アートに選ばれるにふさわしい。
瀬川冬樹

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
特集・「第3回《THE STATE OF THE ART 至上のコンポーネント》賞選定」より

 オーディオクラフトのアームは、こんにちのAC3000MC型に至るまでに、大きく2回のモデルチェンジをしている。最初はAC300(400)型。アルミニュウムを主材としたプロトタイプで、こんにちふりかえってみると、調整のしにくさや、組合せの条件によっては調整不能のケースを生じる場合もあるなど、難点もいくつかあるが、私自身は、この最初のモデルを試聴した時点から、「音の良いアーム」という確信を持って、自分の装置にいち早くとり入れた。
 ただ、この初期のモデルは、調整のしかたに多少の熟練あるいはコツのようなものが必要であったため──私自身は調整にさほど困難を感じなかったにもかかわらず──多くのユーザーを悩ませたらしい。
 おもに調整のしやすさに重点を置いた改良型がAC300(400)C型で、しかしこのモデルでもまだ、おおぜいの愛用者を納得させるには至らなかったようだ。
 MC型のカートリッジが、〝流行〟といわれるほど広まりはじめて、その、MM一般に比較すると平均的にみてコンプライアンスがやや低いという特性を生かすには、アーム全体のことさらの軽量化は音質の点で必ずしも好ましくないことを、私も感じていたが、その点に着目して、軽いアルミニュウムのかわりに、真鍮を主体とし、加えて各部にいっそうのリファインを加えたのがAC3000(4000)MC型で、これはこんにち私の最も信頼するアームのひとつになっている。
 実をいえば、前回(昨年)のSOTAの選定の際にも、私個人は強く推したにもかかわらず選に洩れて、その無念を前書きのところで書いてしまったほどだったが、その後、付属パーツが次第に完備しはじめ、完成度の高いシステムとして、広く認められるに至ったことは、初期の時代からの愛用者のひとりとして欣快に耐えない。
          *
 現在のAC3000MCは、周知のようにアームパイプ、ヘッドシェル、ウェイト類その他のパーツが非常に豊富に用意され、こんにち日本で入手できる内外のカートリッジの大半を、それぞれ最適値に調整できるように配慮されている。使用者ひとりひとりが、自分の所有するカートリッジに対して、自分の考えどおりの動作条件を与えることができるわけだが、言いかえれば、カートリッジとアームの性質を多少は心得ていないと、とんでもない動作条件を与えてしまうおそれ、なきにしもあらずで、この点、カートリッジとアームの原理を、多少わきまえた人でないと扱いこなしにくいという面はある。
 ただしこの点に関しては、メーカー側で、カートリッジ個々に対してのパーツ選び方と調整のしかたのスタンダードを、パンフレットのような形でユーザーに命じしてくれればよいわけで、メーカーに対しては、パーツを増やすと共に、ぜひとも使用法についての懇切丁寧なアドヴァイスを、資料の形で整えることを望んでおきたい。
          *
 余談かもしれないが、社長の花村圭晟氏は、かつて新進のレコード音楽評論家として「プレイバック」誌等に執筆されたこともあり、音楽については専門家であると同時に、LP出現当初から、オーディオの研究家としても永い経験を積んだ人であることは、案外知られていない。日本のオーディオ界の草分け当時からの数少ないひとりなので、やはりこういうキャリアの永い人の作る製品の《音》は信用していいと思う。
 愛用者のひとりとしてひと言つけ加えるなら、現在の製品に対して、いっそうの改良を加えることは無論だが、それ以上に、加工精度と仕上げの質をいっそう高めることが、今後の急務ではないかと思う。真のSOTAであるためにも。

UREI Model 6500

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 一見して、プロフェッショナルな製品であることがわかる。これからみるとマークレビンソンの製品などは、きめの細かいコンシュマー用であることが明白だ。作りといい、デザインといい、タフネス一点張りのもので、そのコンストラクションの剛性の高さは特筆に値する。275W+275W(8Ω)のパワーをもち、安全対策はよく出来ている。まさに、ヘヴィデューティ機であることが、その全体から感じられる。ファンによる強制空冷システム。

音質の絶対評価:7.5

スレッショルド Stasis 1

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 スレッショルド社のプレスティジ製品であり、ステイシス・シリーズのトップモデルである。現実は、ほぼ受注生産に近いもと思われるが、これだけのアンプを開発する同社の実力は凄い。200Wのモノーラルアンプで、テクノロジーと物量のすべてはクォリティに奉仕する。パワーではステイシス2と同じだが、モノアンプでありながら、重量は逆に重い。つまり、2倍以上ということになる。独特なレスポンスをもつメーター付。

音質の絶対評価:10

スレッショルド Stasis 2

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ステイシス・シリーズ中の代表機種といっていい存在である。200W+200Wのパワーをもち、スピーカーのインピーダンス変動にはきわめて安定した動作をもつ。シンメトリック・コンストラクションによる剛性の高い本体とパネルの作りは、さすがに最高級品の名に恥じないものがある。ピークパワーインジケーターを中心にまとめられたデザインは、大変現代的で美しく、しかも軽々しさがまったくない落着いた雰囲気をもつ。

音質の絶対評価:9 

スレッショルド Stasis 3

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 スレッショルド社は、新しいアメリカのメーカーの中で最も製品の信頼性が高く、あらゆる点で高い次元にある会社だ。ステイシス・アンプという独創的な回路技術を開発し、製品のシリーズを一新した。この製品は、その中の最も下位に位置するものだが、もちろん単体パワーアンプとしての最高級品であることに変りはない。100W+100Wのステレオアンプで、美しいデザインイメージと高い仕上げはシリーズ共通のものだ。

音質の絶対評価:8.5 

スレッショルド SL10

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 内容は別稿の通りで私はあまり好まないアンプだが、回路技術、デザインについては高く評価したい力作である。コンストラクション、仕上げの緻密さ、センスのよさ、オリジナリティの点などでも立派な製品であると思う。パネル、ツマミの仕上げ、形状のユニークさ、そして、その美しさは特筆すべきものだと思う。ただ、この音の質感・感触は、どうしても私の感覚にぴったりこないのが残念である。

音質の絶対評価:7

タンベルグ 3003

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ノルウェイのタンベルグ社の製品で、150W+150Wのパワーをもちながら、フラットな、さりげない大きさにまとめられている。デザインは現代感覚に溢れたもので、そのヒートシンクをパターンとして利用した、トップパネルの美しさは特筆に値する。全体のメタリックな仕上げの質感も高く、すっきりしたイメージは他に類例がないほどだ。コンセプトとしては、それほど大上段にふりかざしたところのないアンプである。

音質の絶対評価:8.5

タンベルグ 3002

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ノルウェイのタンベルグは、テープデッキ・メーカーとして実績をもつメーカーで、製品の品位は高い。しかし、かといって、決して超マニアックな高級品というのではなく、ヨーロッパ・メーカーらしいセンスで、すっきり美しくまとめられたプリアンプである。現代的なやや冷たい感触をもった製品で、重厚感には欠ける。仕上げは大変美しくきちんとしている。ペアのパワーアンプ3003ほど魅力はないが......。

音質の絶対評価:7

スチューダー A68

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 スイスのスチューダーの製品は、デッキのイメージの高さで期待が集まるだろう。スチューダーはプロ機器のメーカーで、コンシュマー機器はルボックス・ブランドで別に存在する。A740というルボックスのアンプが、これに相当する。100W+100Wのパワーは、モノーラル接続では350Wを取り出すことができる。ラックにマウントすることによって、いかにも格調の出るパネルを持ち、作りも剛性が高い。

音質の絶対評価:7

SAE X-25A

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 新しいSAEアンプ・シリーズの最高峰が、このX25Aで、パワーは250W+250W。ハイパーソニック・クラスAという、ノンスイッチング回路を採用する、未来派指向のアンプというが、この製品の主張である。デザインは秀逸で、現代感覚と重厚さを合わせ持ち、その仕上げの質も高い。こういうメーカー存在は大切だ。日本のメーカーの進出の犠牲にならないようにしたいものである。パワーインジケーター付。

音質の絶対評価:8.5

SAE Mark 2600

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 アメリカのSAE社は比較的新しいメーカーであるが、意欲的な高級アンプで健闘している。このモデルはXシリーズの前に同社のアンプ群の中での最高機種として評価の高いもの。400W+400Wのパワーをもち、ブラック・フィニッシュの精悍なパネルフェイスは魅力的だ。現代アンプらしい鮮烈なイメージをもち、Xシリーズ登場の現在も決して色あせることはない。パワーハンドリングではXシリーズと共存する意味をもつ。

音質の絶対評価:7.5

ルボックス A740

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 スチューダーのA68の相当品的存在。ただしこちらの方が価格は高い。たしかに、メーターなどがついている分、お金はかかっているはずだ。それとも、輸入元による値づけのためか......。いかにもヨーロッパのプロ機のムードからきたアンプで、決して、ファミリーユースのデザインイメージではない。100W+100Wのステレオアンプである。その生れ血筋からすると、もう一つ欲をいいたいアンプだ。

音質の絶対評価:7.5

QUAD 405

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 クォードが、新しい時代に対応して303の後継機種として出したのが、この405である。100W+100Wのパワーを、きわめてコンパクトなサイズにまとめ上げたあたりはクォードらしい。発想のちがうエンジニアリングといってよいであろう。メーターはもちろん、なんのアクセサリー機構もついてはないが、大変洒落た雰囲気さえ感じさせるパワーアンプで、武骨な製品の中では一際目立った粋な味わいがある。

音質の絶対評価:8.5

QUAD 303

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 もうクラシックといってもよいほど長い生命をもっているアンプだが、いかにもクォードのコンセプトが横溢している。45W+45Wというパワーはたしかに物足りないし、現実には、使いやすいとはいえないだろうが、最近の多くの乱雑な製品が見習うべき教訓をもっている製品だ。大勢を占めるオーディオアンプの行き方とは全く異なるものなで、現時点でのこのアンプの評価を、他社製品と並べて行なうことはできない。

音質の絶対評価:7

QUAD 44

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 33と303のコンビの新しい上級機として用意されたのが、44と405の組合せである。コンセプトは一貫しており、決して、大げさなメカメカしさを感じさせない、洒落たセンスに溢れている。オプションとしてMCカートリッジ用入力モジュールなども用意されている。こういう行き方の製品は日本には絶対にないし、また、出来ても育たないだろう。B&O製品ともども、世界のオーディオ界の貴重な存在だ。

音質の絶対評価:7

QUAD 33

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 独特なオーディオコンセプトをもつクォードの個性的な製品だ。オーディオを主役とせず、音楽を楽しむための道具として目立たず、美しくという考え方がよく出ている。見方によっては、少々おもちゃっぽいところもなくはないし、メカマニアには全くアピールしないものかもしれないが、センスとしては高く買いたい。コントロール類の使い勝手も、クォードらしい気軽さとシステマティックな考え方で統一されている。

音質の絶対評価:5.5
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 見るからに合理的に作られていて、このアンプメーカーの思想が手にとるようにわかる。まったくのブラックボックスで、目にとまるのは、パワースイッチのみ。中味も、きわめてすっきりした回路構成で、シンプル・イズ・ベストのコンセプトに基づいているハイブリッド・アンプである。出力段は6CA7のプッシュプルである。出力インピーダンスは4、8、16Ωに確実にマッチングがとれる。ユニークなアンプだ。

音質の絶対評価:7
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 実際に、この値段を出して買うモノとして、この程度の作り、仕上げでよいものなのだろうか? こう感じさせる製品が海外製には多すぎる。いくら特性が優れていても、音がよくても、これではそれらのよさも生きてこない。人間の感覚はトータルなものだからである。このアンプだけことではないし、もっとひどいものもある。輸入するにあたって考えるべき問題だと思う。技術者の自分用のアンプといった域に止る製品。

音質の絶対評価:7.5
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 マイケルソン&オースチン・アンプ艦隊の旗艦である。200Wの大出力を誇るモノーラル管球パワーアンプ。シャーシはTVA1のものを利用しているが、これが片チャンネル分だけでぎっしりということからも、そ重量ぶりが分る。回路はTVA10を発展させたものらしく、NFBをかけない独自の方式が採られている。これをステレオ用に2台並べてみると相当な迫力で、いかにも管球アンプ派をよろこばせそう。

音質の絶対評価:7.5
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 同社の代表機種として、すでに多くの機会に紹介され好評のアンプだ。私もステレオサウンド誌上で何度も、そのよさについては書いてきた。70W+70Wのパワーは、このパワー管としてはマキシマム・パワーに近く、この点で耐久性が気にならないではないが、俗にいう管球アンプらしさを超えたパフォーマンスが魅力の製品。創りはしっかりしているが、仕上げは高いとはいい難いく、欲をいうと、もう一つ緻密な味わいがほしい。

音質の絶対評価:9
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 イギリス生れの管球式アンプリファイアーで、出力は50W+50Wという値。これも、いまやマニア好みの管球式として貴重な存在だし、この上のTVA1と比較するとやや物足りないにしても、ファンには喜ばしい存在だろう。パワートランスとアウトプットトランスをシャーシ両端に配したマイケルソン&オースチン・アンプ共通のレイアウトをもち、ダストカバーは全体を覆う。よく選ばれたパーツによる、手造りのアンプらしい趣をもっている。

音質の絶対評価:7.5

マッキントッシュ MC2500

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菅野沖彦

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
特集・「第3回《THE STATE OF THE ART 至上のコンポーネント》賞選定」より

 マッキントッシュのMC2500は、同社の最新・最高の製品として、昨年(一九八〇年)発売された、超弩級アンプである。このアンプのパワーは、片チャンネル500Wという公称値で、実測では600Wオーバーという強力さである。しかもそれが、単にパワーの大きさにとどまらず、ローレベルからのリニアリティや、音の緻密さ、繊細感が瑞々しい雰囲気の再現とともに第一級の品位をもっているのである。
 MC2500は、今から約13年前に、マッキントッシュのパワーアンプの最高峰として君臨した、MC3500のピュア・ディグリーである。管球式のモノーラルアンプで350Wのパワーを誇ったこのアンプは一九六八年の発売で、20Hz〜20kHzのバンドウィズス、0・15%の歪みをフルパワーまで保証された、まさに当時の王者各のアンプであった。もちろん、同社の伝家の宝刀であるアウトプット・トランスフォーマーの特別に巨大なものが使われ、1Ω〜64Ωまでものインピーダンス・マッチングが得られる代物に目を見はったものだ。これとほぼ同形のシャーシにトランジスター式ステレオアンプとして構成された製品が、MC2300であって、この製品の登場とともに、MC3500は、その位置をトランジスター式ハイパワーアンプに譲り渡すことになった。
 MC2300は、300W+300Wのパワーで、トランジスター式ながら、依然としてアウトプット・トランスをもち、信頼性と安定性に充分な配慮がなされている点は、他のマッキントッシュアンプ同様である。このアンプの登場によって、マッキントッシュの全製品が、トランジスター化されたわけだが、一九七三年というこの時期は、大変遅い転換であり、同社の信頼性を第一に考える慎重な姿勢が現われているといえるだろう。
 以来、7年目に登場したが、このMC2500であって、80年代の幕開けに、MC3500の孫に当るMC2500が、マッキントッシュ艦隊の旗艦となったわけだ。3代にわたって、共通のデザイン・イメージをもつ、こトップモデルは、内容もまた、脈々と流れるマッキントッシュのアンプ作りの一貫した技術個セプトとノウハウの上に実現したものであって、この姿一つとっても、マッキントッシュが、いかに信頼性の高い筋金入りのメーカーであるかが理解できるであろう。創立以来35年、同社は、現在アメリカで、真の意味での独立企業として、最も古い伝統と、新しいテクノロジーをもち、積極的に開発とマーケティングに取り組んでいるメーカーの数少ない一つである。多くのアメリカのオーディオメーカーが、経済的に独立できず、古いメーカーは、ただ伝統の上にあぐらをかき、まるで老人のような体質になってしまったり、あるいは経験不足の新しいメーカーが、やたらに新しいテクノロジーだけを振りかざし、信頼性のない素人づくりのような製品を馬鹿げた高い値段で売ってみたりする中で、マッキントッシュ社は、確かな手応えの高級機器を、プロの名に恥じない完成度をもってわれわれに提示してくれるメーカーとして、今や貴重な存在なのだ。
 MC2500は、そうした同社の代表製品にふさわしい充実したもので、500Wオーバーのパワー、モーラルでは1kWを超える大出力を、高効率で得、しかも20Hz〜20kHzにわたって0・02%の歪みを保証している。118万円という価格は決して安くはないが、因みに、他の同級アンプの内容、価格と比較してみるならば、これが破格といってよい安さであることもわかるだろう。ましてや、一度このアンプを目前にして、使ってみるならば、もうお金にかえられない喜びと、充実の気持に満たされるはずだ。MC3500、MC2300と、常にその時代の最高のパワーアンプの後継にふさわしく、あらゆる点で、現代最高のパワーアンプの風格に満ちている。

マッキントッシュ MC2500

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 500W+500Wのパワーをもつステレオアンプで、これは最低保証値。実際は600Wオーバーの実力をもつマッキントッシュ・アンプ・シリーズの旗艦である。その内容からすると、これでも最もコンパクトである。MC3500以来の伝統的デザインイメージを保ち、自他ともに王者の貫禄を示す。高度な技術(開発生産両面)と長いキャリアをもつ同社にして可能な内容価値と風格をもつものだろう。ピークホールド機能をもつ大型メーターつき。

音質の絶対評価:10

マッキントッシュ MC2205

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 マッキントッシュのアンプ代表機種で、200W+200Wのパワーが、パワーガード・サーキットで安定して供給され、サチュレーション・フリーである。400Wモノーラルアンプとしても使える。あのブルー・メーター、グラス・イルミネーションの美しさは、古い新しいを超越した美しいものであるばかりでなく、ガラスを割らない限り、その美しさは半永久的に持続する。現在最も信頼性と完成度の高いパワーアンプの一つだろう。

音質の絶対評価:9

マッキントッシュ MC502

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 マッキントッシュとしては異例の薄型のプロポーションを採用したアンプで、50W+50Wのステレオアンプ。グラス・イルミネーションは全く同じで、金文字がパワー・オンでグリーンに美しく変色する。ブルー・メーターはないが、明らかにマッキントッシュのアンプであることは一目瞭然。パワーガードが威力を発揮し、まずクリップ音は出てこない。モノ接続で150Wアンプとなる。伝統のアウトプットランスは持たないAB級。

音質の絶対評価:8.5

マッキントッシュ C32

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 同社のプリアンプの最高峰がこの製品だ。はっきりいって、エキスパンダーは余計なもので、このアンプを使う人たちの音への要求と、この機能はちぐはぐだと思う。これは日本人とは異なる発想としか思えない。しかしこれをスイッチ・オフして使わないとしても、このアンプの魅力は、いささかも損なわれない。C29とはひと味違った楽音のニュアンスが、ここには聴ける。29同様、大人の風格と、王者の貫禄をもったプリアンプ。

音質の絶対評価:10

マッキントッシュ C29

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 現在アメリカのオーディオメーカーの中で最もメーカーらしい信頼性と安定性で製品の高性能・高品質を保っているのはマッキントッシュだと思う。この製品にもそれが現われていて、バランスのとれた感覚と設計技術がうかがえる。部分的には決してマニアックではないし、流血革命派のような気負いもない。しかし、ここにはメーカーとしてのキャリアが、最新技術と伝統をバランスよく製品に生かした高品位の大人の風格がある。

音質の絶対評価:10 

マッキントッシュ C504

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 同社として初の薄型のプロポーションをもったプリアンプだ。伝統あるガラスパネル・イルミネーションを踏襲しているので一目瞭然、同社の製品であることがわかる。エモーショナル・レスポンス・フォー・ミュージックを大切にする同社の考え方は、このグラス・イルミネーションに現われている。比較的手頃な価格でマッキントッシュ・フィーリングを所有出来るアンプで、パワーアンプMC502とのバランスが大変よい。

音質の絶対評価:8.5

マークレビンソン ML-7L

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
特集・「第3回《THE STATE OF THE ART 至上のコンポーネント》賞選定」より

 マーク・レビンソンのアンプは、これ以前のML6に至るまでにも、型番こそ大きく変えはしなかったもののその内容は、ほとんど一年を経ずして何らかの改良が加えられていて、こまかく見るかぎり製造の時期によっては全く別もののような音質の違いを聴かせる。
 けれどML7は、そうしたこまかな音の変化ではなく、誰の耳にももう明らかに、大きな変りようを示した。それも当然で、ML6までの永いあいだ、レビンソンのプリアンプは、増幅回路にマッチ箱ほどの小さな密閉型モジュールアンプを一貫して採用し続けてきた。それがML7に至って、ついに、この永年のモジュールをやめて、露出型のプリント配線基板の上に、無理なく高級パーツを配置した大型モジュールに変更された。これは、最近になってチーフ・エンジニアとして迎えられたトム・コランジェロの主張によるものだといわれている。コランジェロの手はML6から加えられていたらしいが、ML7の新モジュールになって、はじめてその本来の意図が生かされたと考えられる。ML7によって、レビンソンが第2世代に入ったといわれるゆえんであろう。
          *
 ML7の音質は、従来のレビンソンの一連の製品とくらべて、はるかに充実感が増して力強い。とくにML6とは非常に対照的だ。ML6の音は、とても柔らかく、一聴して千歳であり、どこか女性的と言いたいような、しなやかな印象がある。ML7を聴くと、まるで正反対に、全音域に亘って音がみなぎり、よく埋まっていて、帯域上での欠落感がほとんどない。ML6には、本来力強く直截的に鳴るべき音でも、エネルギーをやや弱めて独特のニュアンスをつけ加える傾向があった。それは弦楽器の表現などにある種の雰囲気を持たせて、ときに麻薬のように利いてくる。私はその音にかなりしびれていた。が、その部分を嫌う人に言わせると、音の力が弱い、あるいは、なよなよしている、などのネガティヴな表現ともなったようだ。
 その点、ML7にはそういう評価が聞かれないだろうと思う。音のすべてが、スッと、何も力まず、といってことさら弱めたり味をつけたりもせず、まるでそのまま、といった自然さで出てくる印象だ。強い音は強く、直截的な音は直截的に、それでいてしなやかな味わいや雰囲気のある音はそういう味わいで。
 ......というと、ML7の音は、まるでアンプの理想像(加えられた電気信号を少しも歪めずに増幅する)を実現させてしまったかのように思われそうだが、その時点でいかに完全無欠のように思われる音でさえも、次にもっと優れたアンプが出現すると、そこで改めて、欠けていた部分に気づかされる、という形をとる。ここがアンプの難しくも面白いところだ。
 ML7を、同じレビンソンのML2L(モノーラル・パワーアンプ)と組合せると、まったく見事な音が鳴ってくるが、パワーアンプ単体としては、これもまた現代の最尖端をゆくひとつと思われるスレッショルドの「ステイシス1」と組合せる(少なくとも私個人の聴き方によれば)、何となく互いに個性を殺し合うように聴こえる。ということは、やはり、ML7にも相当の個性があるという証明になるだろう。
          *
 すでに発表されているように、イクォライザー(フォノアンプ)モジュールには、一般のMM型にゲインを合わせたL2と、ハイゲインのL3とが用意されていて、なおL2はゲイン切換えによって高出力MCがそのまま使える。しかし私のテストでは、どうもローゲインのままでの使用が最も音質が良いように感じられた。が、なおこの点についてはもう少し追試を重ねてから詳しくご報告したいと思う。

マークレビンソン ML-2L

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 Aクラス動作で25Wのモノーラルアンプがこの大きさ! いかにもMLらしい大胆な製品である。やりたいこと、やるべきことをやるとこうなるのだ、といわんばかりの主張の強さがいい。そして2Ω負荷100Wを保証していることからしても、アンプとしての自信の程が推察できるというものだ。パネルはML3に準じるが、ヒートシンクが非常に大きく、上からの星形のパターンが目をひく。2台BTL接続端子がついている。

音質の絶対評価:9

マークレビンソン ML-3L

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 マーク・レビンソンのパワーアンプらしい風格をもった製品。200W+200W(8Ω)のステレオアンプで、見るからに堂々たる体躯のシンメトリック・コンストラクション。前面パネルにはパワースイッチだけがセンターに、その真上に、あのモダーンなロゴがプリントされている。両サイドのハンドルを含め、シンプルながらきわめてバランスのよい美しさである。これぞ、パワーアンプという雰囲気だ。

音質の絶対評価:8.5

マークレビンソン ML-6AL

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 左右独立、それも電源からボリュウムコントロールまでという徹底ぶりだ。その勇気と潔癖症には脱帽するし、こういう製品が一つぐらいはあってもよいと思う。しかし、これはもう一般商品とはいえないし、プロ機器としては、さらに悪い。本当は業務用こそ、誰が使っても間違いなく、容易に使えて、こわれないものであるべきなのだ。この製品の登場は業務用機器のメーカーではないことを立証したようだ。

音質の絶対評価:7.5

マークレビンソン LNP-2L

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 いかにもマニアックなクォリティに満ちた製品で、見てもさわっても、音を聴いても、他製品とは全くちがう肌ざわりを感じる。これは明らかに業務用機器のもつ質感である。その意味では、きわめて高い可能性をもった機器なのだ。しかし、ハイファイ製品(良い意味で)は、それが、さらにリファインされていなければならない。プロ機器が常に一般機器の上とは限らないのである。もう一つ大人になってほしい製品だ。

音質の絶対評価:9

マークレビンソン ML-7L

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 LNP2Lより、さらに生硬な印象をうけるが、音は別稿の通り立派なものだ。ただし、マーク・レビンソンの一連の製品についていえることだが、明らかに一般ハイファイ・マニアを相手にしながら、プロ機器仕様とデザインを決めこんでいるのはどうかと思う。車でいえば、トラックやブルトーザーのようなデザインばかりではないか。中ではLNP2Lが一番まともだが、決して使いやすくもない。

音質の絶対評価:9

マランツ Sm-1000

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 マランツのパワーアンプ・シリーズの旗艦として、かつての500シリーズに代って登場した製品である。400W+400W(8Ω)、650W+650W(4Ω)のパワーを誇る。ラックマウント金具をサイドに持つが、これは木製のキャビネットにも入るはずだ。センスのよいメーターの色調、仕上げの高いパネルなど、高級アンプにふさわしい風格を備える。豊富なスピーカー切替ファンクションをもっている。

音質の絶対評価:8.5

マランツ Sm-9

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 Sm6の上級機種で、これはマホガニー・キャビネットに収められている。150W+150W(8Ω)のパワーをもち、Sm10とはわずかな価格差だが、コンセプトの異なるアンプ。マランツのシリーズは豊富で、それぞれの要求にキメ細かく対応しようというメーカーの意欲が感じられる。これも一段と高級感をもったマランツ伝統のイメージを踏襲し、現代的にリファインした美しいデザインと仕上げをもっている。

音質の絶対評価:8

マランツ Sm-10

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 120W+120WのパワーはAB級で8Ω負荷時、別に切替でA級30W+30W(8Ω)、350Wモノーラルアンプとしても使えるDCアンプ。モノーラルアンプを2台カップルして、ステレオユニット化した構造が外観からもわかるし、これがデザインの基調ともなっている。作りも仕上げも美しく、往年のマランツのイメージをよく生かした製品だ。Smシリーズの中でもユニークな存在で、個人的にも好きな製品である。

音質の絶対評価:8.5 

マランツ Sm-6

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 AB級120W+120W(8Ω)、A級動作で30W+30Wのパワーハンドリングは、上級機種Sm10と同規格であるが、こちらはデザインもコンストラクションも違う。パワーメーターつきパネルフェイスはSm7や9と共通イメージのマランツの現代の顔である。といっても、もう伝統的といってもよいイメージだ。木製キャビネットは別売り。美しい仕上げだし、メーターの色彩も華麗で使う楽しみをもっていてよい。

音質の絶対評価:7

マランツ Sc-9

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 Sc6の項で述べたことがそのままここでも当てはまる。相当ごちゃついたパネルレイアウトで、この点ではSc6のほうが好ましい。しかし、それだけに、この多機能性はマニアを楽しませるし、使いこなせば効果は大きい。
 伝統のマランツのパネルイメージは貴重な宝といってよい。これを0からデザインしたら、これだけの風格や魅力を生むことは、まず不可能だろう。亜流の多くが、そのことを示している。

音質の絶対評価:7

マランツ Sc-6

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 マランツのイメージを引継ぎながら、現代的にリファインしていくという難しい仕事に、真正面から取り組み健闘している現代マランツ製品で、そのスタッフの努力は多とするに足ると思う。このSc6も、誰が見てもマランツだと一目でわかるアイデンティティが好ましい。フルファンクションと、まずまずのクォリティをもっていて、この値段というのは、総合的に、かなり高く評価したいところである。

音質の絶対評価:7.5

JBL SA640

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 JBLのお家芸T型サーキットを使用した新製品で、100W+100Wのステレオアンプ。ブリッジ接続で400Wモノーラルアンプとしても使える。この場合どういうわけか音質が改善されるというのがJBL、ユーザー共々の感想だ。何の変哲もないただのブラックボックスに近い仕上げで、作りもそれほど緻密ではない。JBL製品らしからぬ魅力のなさで、プロシリーズ・アンプの方が、まだ色気があるという不思議さ。

音質の絶対評価:9 

JBL SG620

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 中味については別稿で詳しい通り、優れたプリアンプである。しかし、かつの銘器SG520を想い出さずとも、この製品はJBLらしからぬ不出来なデザインだと思う。ゴムのつまみを使うなど、こってはいるが、決して美しくはないし、プレシジョンなイメージがない。むしろ、汚らしいという感じさえある。デザイン感覚だけではなく、作りの質の低下は往年に比して著しいものがあり、日本製への対抗力が疑わしい。

音質の絶対評価:9

ハーマンカードン M770

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 65W+65Wのパワーで、いかにも量産メーカーらしい手なれた作りを見せる。スピーカー切替はA、B、A+Bの3通りで、パネルにはLEDによるパワーインジケーターをもつ。価格からいっても、独立型パワーアンプとしては普及タイプで、同社のプリアンプP725とペアで、本格派のムードを楽しもうという向きに好適な製品だろう。本来はプリメインアンプの範疇であるべきアンプである。

音質の絶対評価:6.5

ハーマンカードン P725

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 作りのうまさで、小器用にまとめられてはいるが、これならプリメイン・アンプでよい。独立型のプリアンプをこういう形で作って売るというのは、ただスタイルだけをセパレートアンプにしたいというマニアの誤った考え方に迎合するもので、私は否定的だ。ファッショナブル・プリアンプとでもいうべきものだろう。しかし、出来は優れていて、この価格でよくこれだけのものをまとめあげたと思う。

音質の絶対評価:6

ハフラー DH-200

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 プリアンプではいかにも素気ないハフラーも、パワーアンプは趣きが異なって、なかなか美しいまとまりをみせる。相変らず何の飾り気もないし、特にパワーアンプは飾りようがないが、一見した印象でも、これは美しい。100W+100Wのステレオアンプで、左右にヒートシンクを配したシンメトリカル・コンストラクションがバランスのよい姿態を見せている。スピーカー切替、入力レベル調整、フィルター類の一切はない。

音質の絶対評価:6.5

ハフラー DH-101

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ハフラーのアンプは、考え方が根本的に違う。この考え方なら、しいてセパレートアンプを作らずに、プリメインアンプとして合理的に、すっきりまとめるべきだと思う。必要なことはこれだけだといわんばかりに、簡素につき離すように感じられ、使いたいという意欲が湧かないのである。見た目にも決して美しい製品ではないし、趣味性や情熱が感じられない。これでは、日本メーカーにつぶされても文句はいえまい。

音質の絶対評価:6
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 イギリス生れの管球アンプで、モノーラル構成で100Wの出力をもつ。その名の通り、エソテリックなムードをもっているが、ややアマチュアライクな未熟さもある。これが、この種の製品の面白いところでもあり、味でもあるから、こうした製品もあってよい。同じ管球式でも、ラックスが作るとこうはならないだろう。もちろんアウトプットトランスで、インピーダンスは4、8Ω/16Ωのマッチングがとれる。

音質の絶対評価:7.5

アンプリトン TS5000

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 57W+57Wのセルフバイアス方式による管球式ステレオアンプで、生れはフランス。バルブ・セクションとトランス・セクションを二分し、バルブ・セクションのみブラック・メッシュのメタルフードをもつ。あとは、シャーシ、トランスカバーも、クロームメッキ仕上げだ。パワーはKT88のプッシュプルだ。いかにも管球アンプのファン好みの作りではあるが、緻密さに一つ欠けるのが惜しい。

音質の絶対評価:6.5

アンプリトン PR50

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 フランス製のアンプというと、かなり前衛的なデザインかと思いきや、これはまた何の変哲もないアマチュア製の機能本位の作りの域を出ない。管球式なら、それなりのクラシックな風格をもったものであれば、また別の魅力も感じられるものを......。ごくドライなラックマウント・サイズのパネルに電源スイッチとツマミが3個。表示も英語で、フランスらしきものは何もない。夢と憧れをさがしても見当らない素気なさであった。

音質の絶対評価:7.5 

アムクロン M600

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 600Wのパワーを捻り出すモノーラルアンプだ。4Ω負荷なら1kWを軽く出す強力さである。もし必要とあれば、これを2台使用して8Ω負荷で2kWを出すM2000というモデルに発展する。各種の保護回路をみても、入力のプラグイン・ボードの差換えによる多目的使用への対応性からしても、完全にプロ仕様の製品だ。まず、6畳や8畳の部屋に置くことはあるまいから、デザイン云々の埒外であろう。

音質の絶対評価:6

アムクロン PSA2

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 250W+250Wのパワーアンプで、モノーラル仕様では800W(8Ω)出るという。冷却ファンつきだし、プロ用として、種々のプロテクターを備え、タフネスとミス・ユースに対処している。発光ダイオードのピーク・インジケーターを中心にデザインされた、メカニカルなパネルフェイスをはじめ、頑丈そのもののコンストラクションで、目的に叶った開発姿勢のうかがえるアンプ。その意味で信頼性は高そうだ。

音質の絶対評価:6

アムクロン DC300A IOC

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 プロ用のアンプだけあって、ミス・ユースに対する対策は万全である。ステレオで155W+155W、モノーラルで310Wのパワーを引き出せる。スピーカー切替はなく、左右独立でレベルコントロール可能である。パルス性雑音リミッターというユニークなノイズ・リミッターを持つのも、いかにもプロ用らしい。いかにも機械らしい飾り気のないもので、仕上げや作りは決して繊細ではなく、むしろ、あらあらしい。

音質の絶対評価:7.5

アムクロン SL1

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 公称データはやたらによいプリアンプで、歪率は、ハーモニックス、IMともに通常の1桁2桁下だ。しかし、音はその通り桁違いによいとは感じられない。機能的には、業務用として設計されているので、一般には使いよい製品とはいえないし、デザインや作り、仕上げも決して魅力や味わいのあるものではない。これこそ、ラックマウントで使うべきもので、音楽鑑賞用としては少々冷たく、荒っぽいといわざるを得ない。

音質の絶対評価:7

AGI Model 511

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 いかにもアメリカのプリアンプらしい、マランツの伝統を踏襲したものだ。より簡略化し、フォノ1系統、ラインレベル入力4系統をプッシュボタンでまとめ、これとシンメトリックに配したダビング機能、モードセレクターのプッシュスイッチ類、大型のマランツ・ツマミの音量とバランスの2個を左右に配したデザインは秀逸。トーンコントロール類は一切ない。いいかえれば青臭いマニアライクな製品ともいえる。

音質の絶対評価:7

アドコム GFA-1

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 見るからに、アメリカのヤンガー・ジェネレーションを感じさせられる雰囲気をもっている。ビスは丸出しで、不レムに鉄板をただ当てつけたというスタイルだ。それに黒塗装、スクリーン・プロセスのモダンなロゴのプリントといった様子は、まるで、倉庫かガレージといった感じである。信頼性のほうはどうなのだろうという気にさせられる。200W+200Wの高効率アンプで、冷却ファンつきだ。

音質の絶対評価:8

ヤマハ BX-1

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 100Wパワーのモノーラルアンプで、ピュアカレント・サーボアンプ回路採用とあるが、内容的にも充実したマニアックなアンプである。モノーラル・パワーアンプとして、これ以前に出たB3の系統といえるが、実力的には価格差以上ものをもつ。配線ロスの少ないコンストラクションは、アンプとして純血派であるが、緻密な仕上げを含めて、大人の風格も持っている。完成度の高い製品である。

音質の絶対評価:9

ヤマハ B-5

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 見るからに美しく、すっきりと、しかも落着きと重味を感じさせる質の高さが、外観に滲み出ている。ブラック・フィニッシュの色調仕上げもキメが細かく、好ましい質感で仕上げられている。オブジェとしてみても美しく、B6と並べて楽しめる。オーソドックスな完成度の高いアンプである。240W+240Wのパワーも、独立パワーアンプとして本格派で、内部のコンストラクションも整然としていて質が高い。

音質の絶対評価:8.5

ヤマハ B-6

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 実にユニークでオリジナリティに溢れたパワーアンプである。こういう製品を作るヤマハに拍手をおくりたい。決して使いやすくもないし、必然性があるとも思えないが、フリーな感覚があってもよい。ピラミッド型、しかも、コンパクトで、200W+200Wのパワーをもつ。魅力的だ。多少内容に不満があっても、技術的興味とデザインのユニークさにカバーされて、愛着をおぼえる製品である。

音質の絶対評価:7

ヤマハ C-2a

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 仕上げも作りも立派な緻密な製品で、ブラックフィニッシュながら、スマートな印象を受ける。デリカシーのあるアンプ。MCヘッドアンプ内蔵DCアンプ構成の先進的なプリアンプだが、外観にも音にも気張ったところがなく、大人の雰囲気をもっている。こういう製品はロングライフになり得るだろう。コントロール類も使いやすく、感触も洗練されている。地味だが落ち着いた風格を感じさせる次元の高い完成度をもっている。

音質の絶対評価:8

ヤマハ C-6

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 A級ピュアカレント・サーボアンプ方式を採用したヤマハの新しいコンセプトによる製品で、デザインも、それなりに若返ったイメージである。豊富なファンクションをもったフル機能のコントローラーとしてユティテリティは大きい。全体にブラック仕上げは美しいが、品位と格調はそれほど高くない。価格からしても、独立型プリアンプの普及型であり、その限りにおいてはよく出来ている製品だ。

音質の絶対評価:6.5
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 もう4年前に発売になったテクニクス・アンプの旗艦としての存在。出力は350W+350W(8Ω)で、スピーカーは4系統使える。独特な、クラスA+と称する回路で、A級、AB級の中間的な動作でノッチング歪のない設計。さすがに、その堂々たる体躯で貫禄充分だが、雄々しさやヒューマンな暖かみのあるものではない。どちらかというと端整で、少々冷たい感触を受ける。悪くいえば、やや陰湿なのである。

音質の絶対評価:8
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 200W+200WのニュークラスAアンプで、スピーカー切替は2系統と、A+Bの3点。ローレベルの読みやすい大型パワーメーターを装備、これがパネルフェイスの基本となっている。テクニクス・アンプに共通の、日本的ともいえる、さっぱりしたデザインイメージが、どこか音と共通するニュアンスを持っている。決して重厚感や、強い個性的主張のあるほうではない。この辺がよきにつけあしきにつけ印象の薄い原因。

音質の絶対評価:7.5
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 120W+120W(8Ω)のパワーアンプで、スイッチ切替で30W+30Wにパワーを押え、メーター・イルミネーションを消して省エネ使用ができる。スピーカー切替2系統。テクニクスのパワーアンプの中では最も新しく、普及タイプともいえるが、総合的に完成度が高い。ただし、ややスピーカーを選ぶ傾向があるようだ。大型のパワーメーターはVU的な動きでピーク指示はしない。デザインセンス、仕上げは中の上。

音質の絶対評価:8.5 
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 超弩級のプリアンプである。一目見ただけでは、とても理解し切れないコントローラーが所狭しと並んでいる。ここまで出来るぞという姿勢の表現だから、こうなるのも仕方なかろう。それにしても凄いプリアンプを作ったものだ。値段も重量(38kg強)も世界有数のプリアンプである。こうなると批評の埒外で、ただ圧倒されるのみ。一度のみこんで整理してみると意外に使いやすいのだが、使いこなすチャンスは滅多にない。

音質絶対評価:7.5
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 一目でポジションがよくわかるという理由は理解できなくないのだが、この縦長のツマミには抵抗を感じてしまう。使いやすさでは文句ないが、バラバラと互いにそっぽを向いている様は美しくない。サブパネルを閉じれば、すっきりと必要なものだけがメインパネルにあるという合理性に、音楽機器としての情緒性もブレンドしてほしいところ。パネルとツマミの色のバランスも成功しているとはいえない。貫禄が不足だ。

音質の絶対評価:7
菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 すっきり、さっぱりといえばよい表現になる。どうも、こういう厚みや暖かさにかける機械は個人的には好きになれないのである。プリアンプというものは、レコード音楽の演奏にあたって、プレーヤーとともに直接、手で操作する機会の多いものだけに、もっと夢のある、楽しさを感じさせてくれるものであって欲しいのだ。こういう生硬なフィーリングは音楽をプレイする心情とはうらはらなのである。悪趣味よりはずっとよいが......。

音質の絶対評価:8

「My Best3」

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「'80ベストバイコンポ209選」より

●スピーカー
 オーディオ機器の音質の判定に使うプログラムソースは、私の場合ディスクレコードがほとんどで、そしてクラシック中心である。むろんテストの際にはジャズやロックやその他のポップス、ニューミュージックや歌謡曲も参考に試聴するにしても、クラシックがまともに鳴らない製品は評価できない。
 ところがその点で近ごろとくにメーカー筋から反論される。最近のローコストの価格帯の製品を買う人は、クラシックを聴かない人がほとんどなのだから、クラシック云々で判定されては困る、というのである。クラシックのレコードの売上げやクラシックの音楽会の客の入り具合をみるかぎり、私には若い人がクラシックを聴かないなどとはとうてい信じられないのだが、しかし、ともかく最近の国産のスピーカーのほとんどは、日本人一般に馴染みの深い歌謡曲、艶歌、そしてニューミュージックの人気歌手たちの、おもにTVを通じて聴き馴れた歌声のイメージに近い音で鳴らなくては売れないと、作る側がはっきり公言する例が増えている。加えて、繁華街の店頭で積み上げられて切替比較された時に、素人にもはっきりと聴き分けられるようなわかりやすい味つけがしてないと激しい競争に負けるという意識が、メーカーの側から抜けきっていない。
 そういう形で作られる音にはとても賛成できないから、スピーカーに関するかぎり、私はどうしても国産を避けて通ることが多くなる。いくらローコストでも、たとえばKEFの303のように、クラシックのまともに鳴るスピーカーが作れるという実例がある。あの徹底したローコスト設計を日本のメーカーがやれば、おそろしく安く、しかしまともな音のスピーカーが作れるはずだと思う。
 KEF303の音は全く何気ない。店頭でハッと人を惹きつけるショッキングな音も出ない。けれど手もとに置いて毎日音楽を聴いてみれば、なにもクラシックといわず、ロックも演歌も、ごくあたり前に楽しく聴かせてくれる。永いあいだ満足感が持続し、これを買って損をしたと思わせない。それがベストバイというものの基本的な条件で、店頭ではショッキングな音で驚かされても、家に持ち帰って毎日聴くと次第にボロを出すのでは、ベストバイどころではない。売ってしまえばそれまでよ、では消費者は困るのだ。
●アンプ・FMチューナー
 アンプやチューナーの音質は、その点もっとまともで正攻法で作られる。したがって、国産のローコスト機の中に、良い製品をかなり見出すことができる。だが単にまともであるだけでなく、やはり音楽を生きた姿で蘇らせ、聴き手に音楽を聴く喜びを持続させてくれなくては、真の良い音とはいえない。こんにちの技術では、プリメイン一体型でも相当に水準の高いアンプは作れる。それをあえて分割し、割高を承知でプリメインでは不可能な電子回路の限界に挑むのがセパレート。私はそう考えているから、セパレートタイプに対する要求は一段ときびしい。しかもなお、数多くの製品の中から、あえてわざわざその製品を選び出すだけの明確な魅力が、音質にも外観にも現われていないくては、セパレートを入手する満足感が薄れる。
●プレーヤーシステム
 プレーヤーシステムは難しい。今回別項で高価格帯グループの比較試聴をしてみて、その思いのほかの音質の差を体験してみると、最近の新製品競争で生まれてきた大半の製品を、本当によく聴き比べたとは私は言えない。この部門は投票を棄権したいくらいだ。ただ、メーカーのこれまで実績や、シリーズの中の何機種かを試聴した体験とで、かろうじて選び出したという形。
●カートリッジ
 カートリッジは、スピーカーと別の意味で国産にどうしても冷たい態度をとりたくなる。それは価格である。輸入品と国産品の価格差がほとんどないというのはどこかおかしい。価格体系さえ修整されるなら、国産カートリッジは音質の点では相当な水準に達している。
●カセットデッキ
 カセットデッキは、個人的にテストの機会がほとんど与えられていないので棄権させていただいた。
          *
 投票結果が一覧表になってみると、例によって自分としては入れたかった製品が入選してなかったり、逆に思わぬ製品が入ってたりする。多数決制では多少矛盾は止むをえないことだろう。

●スピーカーシステム
 JBL 4343B(WX) ¥720,000 (730,000)
 JBL L150 ¥250,000
 KEF Model 303 ¥62,000
●プリメインアンプ
 ケンウッド L-01A ¥270,000
 ラックス L-58A ¥149,000
 サンスイ AU-D607 ¥69,800
●コントロールアンプ ¥
 マークレビンソン LNP-2L ¥1,460,000
 マークレビンソン ML-6L ¥1,460,000
 アキュフェーズ C-240 ¥430,000
●パワーアンプ
 ルボックス A740 ¥598,000
 マイケルソン&オースチン TVA-1 ¥560,000
 アキュフェーズ P-400 ¥410,000
●プレーヤーシステム
 マイクロ RX5000 + RY-5500 ¥470,000
 パイオニア Exclusive P3 ¥530,000
 EMT 930st ¥1,258,000
●カートリッジ
 デンオン DL-303 ¥45,000
 オルトフォン MC20MKII ¥53,000
 オルトフォン MC30 ¥99,000
●FMチューナー
 パイオニア Exclusive F3 ¥250,000
 アキュフェーズ T-104 ¥250,000
 ケンウッド L-01T ¥160,000
●カセットデッキ
 テクニクス RS-M88 ¥145,000
 サンスイ SC-77 ¥73,800
 ヤマハ K-1a (B) ¥98,000

スタックス DA-100M

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 100WのA級モノーラルアンプで、AB級でもパワーは同じに抑えられている。AB級動作では、その分、省エネにつながるはずだ。放熱はヒートシンクを使わず、ヒートパイプによる。いかにもスタックスらしいユニークさをもっている。デザインや仕上げは取り立てていうほどのこともなく、むしろメーカー製らしい魅力のないところを平然と打ち出すあたり、アメリカの新生小メーカーと共通の野暮と驕りが感じられる。

音質の絶対評価:8.5

スタックス CA-X

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 スタックスはユニークな技術をもったグループで、いかにも専門メーカーらしいアイデアと執念で独善的に製品をまとめ上げる。このプリアンプもパワーサプライが左右独立して、さらに左右独立のイコライザー、コントローラーとも上下にセパレートという潔癖ぶりで、デザインも、それがそのまま現われたというそっけなさ。夢もセンスもない、ただひたすら機械としての必然性に徹するのがスタックスの魅力というべきだろう。

音質の絶対評価:7

パイオニア M-Z1

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 あらゆる点でユニークなパワーアンプである。独自の回路により、NFBを避けて音の鮮度を図った発想だ。60Wのモノーラルアンプで、そのボディは、プリアンプ、プリプリアンプと共通のタテ長のプロポーションでシステムイメージをもたせている。プリアンプでは不自然さを指摘したそのプロポーションも、パワーアンプでは問題するに当るまい。ガラス越しに見えるピークインジケーター、トランスも面白い。

音質の絶対評価:9

パイオニア C-Z1

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 Zシリーズとして登場した、ノンNFBアンプのプリアンプ。パワーアンプM−Z1と共通のプロポーションにまとめたシステム・デザインだが、必ずしも、これが使いやすさにつながるともいえないようだ。ガラス越しにブロックダイアグラムが見え、これにダイオードが点灯するというマニア好みの味つけは楽しいし、好ましい。ヘアライン・ブラックフィニッシュが、少々緻密感とデリカシーを損なっているのが惜しい。

音質の絶対評価:8.5

マッキントッシュ XRT20

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 マッキントッシュといえばアンプメーカーの名門として知られ、その製品の高性能と信頼性、そして美しい仕上げ、デザインの風格はファンの憧れの的である。しかし、同社がもう8年も前からスピーカーシステムを製造し、発売していることはあまり知られていない。ここに御紹介するXRT20という製品は、同社の最新最高のシステムであるが、すでに昨1980年1月には商品として発売さていたものなのだ。したがって、いまさら新製品というには1年以上経た旧聞に属することになるのだが、不思議なことに日本には今まで紹介されていなかったのである。1年以上も日本の輸入元で寝かされていたというのだから驚き呆れる。
 私は、このXRT20のプロトタイプを、一昨年──1979年の秋──ニューヨークへ録音の仕事で行った時、同州・ビンガムトンのマッキントッシュ本社で聴くことができた。その時の音の素晴らしさは、ちょっと信じられないほどだったが、続いて今年の1月、同社の社長であるゴードン・J・ガウ氏の自宅で、じっくり聴く機会を得て再度確認。今は我家に設置して日夜、狂ったようにレコードコレクションの聴き直しに没頭している状態である。私の長年のオーディオ生活で、こんなに興奮し、改めてオーディオへの情熱を喚起され、レコードを聴く幸せを今さらながら味わいなおしたのは初めての経験である。
 このスピーカーシステムは、今までのシステムが決して出せなかった音を出す。その音には自然の音、生の楽器のみに聴き得た感触がある。音場のプレゼンスの豊かさはこのシステムの一大特長で、オーケストラがまさに眼前に展開するようだ。拡がり、奥行き、細部のディフィニションと全体の調和の見事さは、解きとして我耳を疑うほどで、スピーカーから音楽を聴いているという意識が失なわれてしまうことがある。
 マッキントッシュというメーカーは、常にその時代における最大パワーを誇るアンプを、最高のクォリティで提供してきたメーカーであることは御承知の通りである。したがって、マッキントッシュのスピーカー・ラインアップの最高の位置にあるこのXRT20は、それにマッチした強力なものであるはずだし、事実、ジャズやロック系の音楽を鳴らしてみると、こことがはっきり証明される。底力のあるベースを土台に圧倒的なハイレベルで轟くのだ。
 しかし、このようなヘヴィ・デューティのタフなスピーカーシステムというものは、ガンガン鳴らすと圧倒的な迫力は得られても、小入力で繊細なニュアンスを大切にする音楽には向かないというのが、我々の常識であった。そして、反対に、そうした繊細なニュアンスをキメ細かく再現するスピーカーシステムというものは、まず、大音量でパルシヴな波形を主体とするジャズやロックは無理というのが普通である。たとえば、エレクトロスタティック・スピーカーがそうだ。並のスピーカーでは絶対出せない透明繊細な弦楽器などのニュアンスは出してくれるのだが、大振幅がとれないために、打楽器の迫力などは到底望めないのである。
 このXRT20は、私が初めて出会った、その両面を高い次元で満たすことのできるスピーカーシステムであった。小音量で弦やチェンバロを聴いている時には、その透明繊細な、しなやかな音からは、とてもジャズやロックなどの大音量再生が可能とは想像できない音である。ところが、一度、ボリュウムを上げ出すと、パワーアンプに余裕さえあれば、どこまで上げても音くずれがなく、力感に溢れたエキサイティングな再生音を楽しむことができる。しかも、この時でさえ持ち前の音透明度、繊細感を失わないのは不思議とも感じられるほどで、そのリニアリティの高さは信じられないほどだ。20Hz〜20kHzに及ぶ帯域を金土うなエネルギー分布でカバーしながら、決してワイドレンジを感じさせる誇張的鳴り方はしない。いわば物理特性が裸で感じられるような鳴り方ではないのである。
 一般に、物理特性だけを追求し、技術的な能書きの多いスピーカーほど優れた測定データは示しても、感覚的、情緒的に満されないものが多いものだ。つまり、音楽的魅力が感じられないのである。ただ物理特性だけを追求して、即、聴いてよいスピーカーができるとは限らないことは、今さらいうまでもないことだろう。現時点で解っている技術的問題点はあくまで追求すべきであるが、全体の姿を見誤ると、必ずどこかにアンバランスをきたし、音が無機的になるものだ。
 このXRT20の音は決してそのような無味乾燥な、つまらないものではないのは、大きな喜びであり驚きでもある。ある人がこの音を聴いて、〝本物です!! これは本物の弦楽器です!!〟と飛び上ったし、また、ある人は〝この音は、生の音を識り、ありとあらゆるスピーカー遍歴をした人ほど正しく評価するでしょう〟ともいった。つまり、強烈な毒性や、人工的な色彩感のない音でありながら、決して非情緒的な音ではないのだ。レコーディングされた楽器の音の個性的質感や味わいをちゃんと出すからである。
 優れた録音と演奏のオーケストラを聴くと、従来のスピーカーが鳴らすことのできなかったあの弦の合奏のヴェルヴェットのようなテクスチュアが、輝くばかりのブラスの色彩感が、そして、腹にこたえるようなグラン・カッサの響きが、実にリアルに美しく再現されるのだ。楽器の音色の忠実な再現だけにとどまらず、その音楽表現のこまかなニュアンスまで、他のスピーカーでは聴き得なかった微妙さと豊かさで鳴らし分けるのには感嘆せざるを得ない。弦のプルトが、ふうっとテンダーに、ソットヴォーチェするところなど、その気配さえ感じられる。フィリップス・レーベルの最近とみに快調な優秀録音によるネヴィル・マリナーやコーリン・デイヴィスのハイドンの交響曲シリーズ、そしてまた、同じくデイヴィスのディジタルレコーディングによる〝展覧会の絵〟など、あるいは、小沢征爾の〝春の祭典〟等々......があたかも録音時のモニターの向う側へ行ったように自然で美しく響く。その瑞々しい音体験、音楽体験に身体中がゾクゾクするほど至福の思いをさせられる。転じて、SJの最優秀録音賞に選出されたアリスタ・レーベルのスコット・ジャレットの〝ウィズアウト・ライム・オア・リーズン〟や、私の録音したトリオ・レーベルの〝マイ・リトル・スウェード・シューズ〟など一連のジャズを聴くと、とても同じスピーカーとは思えぬ表情で圧倒的大音量のパルシヴな再生を身体中で浴びることも出来るのだった。このスピーカーシステムは、明らかにレコード音楽の表現の忠実度と可能性を、一歩も二歩も前へ進めてくれるものといえるであろう。
 具体的な例を書き連ねていたらきりがないから、この辺で止めるが、これらの劇的ともいえる音の体験と、素敵な演奏をありのまま所有し得る実感は、私自身を夢中にさせずにおかないのだ。そして、この一月余りの間に我家を訪れた私のオーディオ仲間やメーカーの人達、ジャーナリスト達のすべてからも異口同音に感動の言葉が聞かれた。中でも、オーディオ体験が豊かで真摯な人ほど、感動の度合いが大きく感じられたのも興味深いことであった。解る人には解る音なのだ。
 XRT20は、写真で見られるように、実にユニークな形態をもったシステムで、ウーファーとスコーカーを収めたエンクロージュアと、トゥイーターを収めたアレイに分れている。30cmウーファーが2基に20cmスコーカーが1基、そして2・5cmトゥイーターが実に24基という構成の3ウェイシステムだ。ウーファー、スコーカーセクションは、約1mの高さ、65cmの幅、32cmの奥行きのエンクロージュアで、バッフルボードの両サイドが斜めにカットされディフラクションフリーのシェイプをとる。トゥイーターセクションは約2m(195・9cm)の高さ、27cmの幅、4・6cmの厚さのフラットなアレイで、これは、壁へ取付ける方式と、オプションのステーによりウーファーのエンクロージュアに取り付ける一体式との両方が選べるようになっている。壁取付がベストだと思うが、壁面の形状で不可能な場合や、壁にネジを切り込むのが嫌な人は一体式で十分な効果が得られる。ウーファー、スコーカーはコーン型、トゥイーターはドーム型である。
 このXRT20の発想は、今から20年以上も前にゴードン・ガウ氏の頭にあった。当時から氏はハーバード大学の研究室との共同研究で、現在のXRT20の原形ともいえる2m長のリボントゥイーター・アレイの試作をしているのである。リスニングルーム内に高域のエネルギーを最小の歪で均等に分布させること、音質に癖のない振動系を使い、かつ大パワー入力に耐えさせること、これが彼の、トゥイーター設計の目標であったという。そして、低域は20Hzまでを理想とし、少なくとも25Hzは保証すること。適正なレベル差と位相差を保つため、ユニット構成に加えてレスポンス・タイム・ネットワークを設計することによって多々しい立体音場の再生を可能にすることなどの設計ポイントが定められ、同社のスピーカーエンジニア、ロジャー・ラッセル氏の献身的協力を得て完成されたのがこのXRT20なのだ。音の波状と位相特性の研究に関する一大成果である一方、このシステムのパワーハンドリングは、RMSサインウェイヴで300Wという強力さである。クロスオーバーは250Hzと1・5kHzとなっているから、このトゥイーター・コラムは1・5kHz以上の連続信号を300W入力しても大丈夫ということだ。事実、私は同社の500W+500Wアンプをフルパワーで鳴らしてみたがビクともしない。付属のパワーインディケーターが2つあり、黄色が全帯域、赤が高域なのだが、ごくたまに黄色が点灯する程度だった。ミュージックパワーならMC2500の実質パワー、650Wオーバーのフルドライヴに充分耐えることだろう。もちろん入力オーバーに対してはヒューズで守られている。これは、マッキントッシュ社が最も大切にしている製品の信頼性に基づくものであり、充分な許容入力をもたせ、かつオーバードライヴによりスピーカーが破損することに万全の対策を施したものだろう。スピーカーを破損させるようなアンプは絶対に作らないという同社の体質がここにも形を変えて現われている。
 24個のドームトゥイーターによるアレイは視覚的にも内容的にも、個のシステムの一大特徴といえる。これは、すでに述べたように高域のハイパワードライヴと低歪を達成する意味と同時に、もう一つ重要な意味がかくされているとマッキントッシュはいう。それが、真のステレオフォニック、つまり、3ディメンション・サウンドスペースを伝送することなのだ。選択され、特性のそろったユニットを、このように配置することと適切な位相補整回路を組み合わせ、タイムアライメントをとることにより、システムから放射される音の波状は、きれいに位相のそろった円筒状の波となり、きわめて良好な指向特性と平均したエネルギー分布が得られる。20Hz〜20kHzまでの帯域エネルギーが床から天井まで均等に拡散されることの効果は大きい。したがって、このスピーカーシステムのエネルギー密度は、距離の自乗に反比例して減少するのではなく、ただ距離に反比例するようになっている。こういうスピーカーは、それほど音量を上げなくても充分な音量感が得られることになるわけで、事実、正しいステレオフォニック録音のプログラムソースでは、馬鹿でかい音量にして聴かなくとも、豊かな空間感で満足させられるものなのだ。特にこのシステムの場合、1・5kHzという低いクロスオーバーを採用していることが注目に価する。2・5cm口径のドームトゥイーターに1・5kHz以上を受け持たせたところが(マルチユニットでこそ可能)ユニークである。マルチユニットというは、大抵の場合位相を乱し、定位の悪いシステムになりがちなのだが、これは例外的成功例といえるだろう。同一平面、同一垂直軸上に並べたところが成功の鍵といえそうだし、さらにこのトゥイーター・アレイに対するウーファーセクションの構成とタイムアライメントが実にうまくいっているようだ。また、IM歪の少なさは、まるでマルチ・アンプ駆動のようでこれだけ重厚な低音域でかぶり感がまったくないのが不思議なぐらいである。
 このようなシステムであるから、これは、販売店の店頭などで手軽に聴けるはずもない。その手のスピーカーとは生れも育ちも違う。価格もそれなりに高価だし、これこそ質の高い技術サービスの受けられる専門店の存在を必要とするし、質の高い愛好家によって真価を発揮するスピーカーシステムだといえるだろう。
 XRT20を完全に調整するのはそう簡単ではない。まず、設置は背面に壁がほしい。そして、コーナーにぴったり置かないことだ。幅が充分あれば、トゥイーター・アレイ2本を、それぞれ横幅の1/3の所にくるように設置し、その外側にウーファー・エンクロージュアを置く。こうすることにより、トゥイーター・アレイで3分割された壁面にステレオフォニックな空間が左の面、中央の面、右の面と拡がり、かつ、奥行きをもって再現されることになる。オペラのステージの立体感の再現など、まさに劇的といって誇張ではない素晴らしいものだ。もし横幅が充分でなければ、トゥイーター・アレイを外側にウーファー・エンクロージュアを内側に置いてもよい。別売りのMQ104というイクォライザーにより、部屋とその設置場所によるピーク・ディップを調整することは是非必要であり、おすすめしたい。この仕事は、1/3オクターヴバンドのピンクノイズ・ジェネレーターとキャリブレイトされたマイクロフォンとメーターで測定しながら行なうもので、専門家のサービスを要する。もちろん、自信のある方は御自分で試みられるのも面白かろうが、この仕事はかなりの経験と才能を要するだろう。下手に調整を行なうと台無しにする恐れもあり、そんな事なら、何もしないほうがよい場合もある。
 久々に素晴らしいスピーカーに接することができた。仕上げその他にマッキントッシュのアンプの次元と比較すると不満の残る点も少なくないが、この音を聴けば我慢しようという気にもなってくるから不思議なものだ。マッキントッシュの実力に脱帽である。

オンキョー Integra M-509

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 オンキョー始まって以来の高級アンプとして登場しただけあって、実力豊かな力作である。200W(8Ω)のパワーは4Ωで280Wを保証される。歴代の同社のパワーアンプのデザインイメージを踏襲したブラック・フィニッシュ、大型パワーメーターのパネルフェイスだが、これは一廻りスケールが大きく立派な作りである。高級アンプにふさわしい風格が感じられて好ましい。本格派と呼べるパワーアンプである。

音質の絶対評価:9.5

オンキョー Integra M-506

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 120W+120Wの出力をもったパワーアンプで、4Ω負荷160Wも保証される。大型のパワーメーターを基調にデザインされたブラック・フィニッシュのパネルは仕上げがよいので、価格以上の高級感を感じさせる。スイッチ・オンで、メーター照明がオレンジ系から動作状態を色の変化で伝えるなどの洒落っけも持っている。売物Wスーパーサーボと称するサーボオペレーションを採用した効果が認められる。

音質の絶対評価:8.5

オンキョー Integra P-309

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 P306の上級機として登場したこのプリアンプは、内容的に明らかにリファインされているし、オンキョーとしては力の入った高級機らしい高級機だ。ブラック・フィニッシュはマチエールの美しい、高い仕上げで、細かいコントロール類はサブパネル内に収めた、すっきりしたデザイン。ウォームアップの状態を視覚的に確認できるインジケーターをつけるなど、なかなかマニアックだが、ちょっとやり過ぎの感じもある。

音質の絶対評価:8

オンキョー Integra P-306

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 単体のプリアンプとしてはコストパフォーマンスのよさで高く評価されている。たしかに、この音で10万円という価格は安いといえるし、作りや仕上げも決して悪くない。ハイゲインEQ式のMC入力回路も、なかなか使えるクォリティをもっているし、ダイレクト・トーンコントロール、スーパーサーボなど、オンキョーのお家芸をもり込んだ充実した製品だ。ごく標準的なパネルレイアウトも好ましい。

音質の絶対評価:7

ラックス M-4000A

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 オリジナルM4000が、4000Aとなったもので、かなり長い期間市場にある。180Wの出力をもつオーソドックスなアンプだが、デュオベータ回路が採用されてリファインされた。デザイン、作りも高級アンプにふさわしいもので、かなり力作だと思う。パネルは大型メーターを基調に美しくまとめられ、ピーク指示もVU指針と併読できる。後部に大きく突出したヒートシンクの間に埋れたスピーカー端子はなんとも不便。

音質の絶対評価:7

ラックス M-300

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 AB級、A級の動作切替が可能で、パワーはそれぞれ、170W+170W、40W+40W(8Ω)取り出せる。もちろんこれは、トランジスター式の現代アンプである。木枠に収められたパネルは、デザインもフィニッシュも美しく、いかにもラックス製品らしい精緻さを感じさせてくれるものだ。こういう美しい仕上げを見るにつけ、一部の、外国製アンプの汚らしさにはあきれるばかりである。デュオベータ、プラスX回路採用。

音質の絶対評価:7.5

ラックス MB3045

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 管球式のモノーラル・パワーアンプで、60Wの出力をもっている。このぐらいのパワーがあれば現代の広Dレンジのプログラムソースも、まずまずカバーすることができる。真空管自体をはじめとして、往年の常識を越えた高性能管球式アンプといえるもので、別売のキットとともに、オーディオ界に嬉しい存在だ。心情的にはシャーシの薄さのためか、プロポーションが悪く、もう少し重厚さと暖かみがほしいところ。

音質の絶対評価:8

ラックス MQ68C

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 管球式のパワーアンプを維持してくれているラックスは貴重な存在。アウトプット・トランス2個と電源トランスをシンメトリックに配したシャーシ構成は美しい。NFBを0dBと16dBに切替ができるなど、マニアライクなアンプとして好感が持てるもの。全体のセンスが、もう一つハイセンスだといいと想うのだが、どうもトランスの名版などの色が安っぽく興をそぐ。25Wという出力も仕方がないとはいえ少々小さい。

音質の絶対評価:8

ラックス C-5000A

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ラックスのプレスティジ・コントロールアンプらしく、さすがに、重厚な雰囲気を感じさせる仕上りだ。伝統的なラックスのパネルデザイン、デュオベータ回路採用の高品位なパーツによる高級機らしい風格を備えている。コントロールセンターとしての機能も完備しているし、各コントローラーの操作性、フィーリングも高い。MCカートリッジ入力端子は、昇圧トランス式というのもマニアライクなユニークさだ。

音質の絶対評価:7.5

ラックス C-300

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 オーソドックスながら、新鮮味も持っているコントロールアンプ。内容と外観が、ともにそうしたイメージで統一されている。デュオベータ、プラスX回路採用の現代的なプリアンプであるが、その発想そのものは、きわめてオーソドックスな歪みの低減思想である。ただ、このクラスのプリアンプとなると、もう一つ、個性的魅力が伴わないと、単体プリアンプとしての風格の点で物足りないということになる。

音質の絶対評価:6.5

ラックス CL34

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 管球式のコントロールアンプだが、外観からはそれと判明する雰囲気はない。デザインとしては特に木枠が野暮で、色も含めて、およそ美しさが感じられない。天板の部分を高くするなど、手間をかけて、かえって悪くしたという気もする。デュオベータ回路を管球式に使った新設計のアンプで、パネル操作類もよく整理されながら、コントロール機能を備え、感触も快い。フラットなプロポーションをもっと生かしてほしかった。

音質の絶対評価:6

Lo-D HMA-9500MKII

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 いかにもパワーアンプらしいメカニカルなコンストラクションをそのままカバーなしでまとめたもの。前面両端にがっしりとした取手がつけられている。左右シンメトリックなヒートシンクがデザインの決め手となる。剛性の悪いぺらぺらな天板などで興をそがれることがない、この行き方は個人的に好きなものだ。120Wの出力を持ち、余計なスイッチは一切ない。ついているといえばサブソニックフィルターだけ。重厚な雰囲気。

音質の絶対評価:7

Lo-D HMA-8500

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ステレオで100W+100Wの出力、モノーラル接続で200W出力のパワーアンプである。スピーカー切替スイッチ、BTL接続スイッチがついている。大きなメーターをデザインの基調としたもので、無難なまとまりを見せている。あまり高い剛性感は感じさせないし、価格相応の仕上げだと思うが、押し出しはなかなか立派であり、使う喜びは味わえよう。ノンカットオフ・サーキットを採用している。

音質の絶対評価:8

Lo-D HCA-8000

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 単体プリアンプとして、普及価格の製品だが、同社としてはプリメインアンプをラインアップしているのだから、あえて存在の必然性がうたがわしいと思う。外からみても、音を聴いても、これならプリメインアンプと違うのはスタイルだけという印象が強い。つまり、高級感や魅力は発見しにくいということで、総合評価としても苦しい。ユニークなデザインと使い勝手のオリジナリティでもあれば別だが......。

音質の絶対評価:5

ケンウッド L-08M

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 L06Mの上級機種で、同じくモノーラルアンプである。170Wの出力を持ち、別売の追加電源が用意されているというユニークなものである。これによって、アンプの心臓を強化して音の品位を改善しようというマニアックなコンセプトである。もちろんシグマドライブを方式を採用している。デザインはユニークなもので、ゴム足がなかったらどう置いてよいか迷うだろう。好き嫌いは別として大変面白いし現代的で美しくもある。

音質の絶対評価:8.5

ケンウッド L-06M

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 トリオが力を入れているシグマドライブ方式のモノーラルアンプで、120Wの出力をもつ。DCアンプ構成で、内外ともに最新アンプらしい斬新な雰囲気をもっている。少々冷たく感じられるが、パワーアンプとしての一つの方向ではある。ただの立方体という味気なさを逆手にとってすっきりとまとめている。コントロール機能をもたないパワーアンプだから、こうしたコンセプトも否定できないだろう。もちろんメーターもない。

音質の絶対評価:8

ケンウッド L-08C

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 すっきりと現代的なデザインにまとめられているし、設計思想も斬新で、いかにもデザイナーの仕事らしい仕事ではある。しかし、滲み出るような質感の高さや、緻密な仕上げの高級感といったものがなく、どこか、モダンな感覚が、その裏腹にもっている安っぽさや殺風景な面のほうが強く感じられ、私個人としては魅力を感じない。操作性も少々気取り過ぎていて、かえって扱いにくい面もあり、フィーリングに重厚さはない。

音質の絶対評価:5

エスプリ TA-N900

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ソニーの特別に高級なプレスティジ製品エスプリ・ブランドのパワーアンプだ。内容は別稿の通りかなりのもだが、見たところは、何の変哲もないぺたんこの金属箱で、夢や、使う喜びが感じられるものではない。2〜8Ω負荷に対して200W+200Wのパワーを保証したモノーラルアンプ。ノンスイッチングのA級パワーステージには、NFBも使っていない。電源はパルスロック型。内外ともにモダンで透徹なイメージのアンプ。

音質の絶対評価:9

パイオニア Exclusive M4a

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 M4をリファインしたモデルなので、マーケットにおけるキャリアの長い高級アンプ。A級で50Wのパワーだが、実力は相当なもの。緻密で美しい仕上げは、内外ともに高い次元の感じられる製品である。木枠に入った落着いたムードは、日本間においても違和感がなさそうなもので、いかにも日本の製品らしいキメ細かさをもっている。A級のため発熱が相当なもので、冷却ファンの音が気になるのが惜しい。

音質の絶対評価:8.5

パイオニア Exclusive C3a

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 今やクラシックといってもよい、オーソドックスな操作レイアウトをもったコントローラーで、その仕上げは緻密である。パーツ類も厳選され、細部まで丹念に作られた高級品らしい風格をもっている。ただ、製品として強い個性的魅力に乏しく、やや凡庸な印象が、このアンプの存在を内容に比して地味なものにしてきたようだ。オリジナル設計の古さは否定できないが、リファインされたa型は現役として立派に存在理由をもつ。

音質の絶対評価:8

オーレックス SC-88

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 非常に剛性の高いコンストラクションで、左右一対のヒートシンクをシンメトリックにつかったどっしりした風格をもつ。いかにもパワーアンプらしい重量感が好ましい。240W+240W(8Ω)のパワーをもち、スピーカー切替などファンクションはもたない。純血派のコンセプトでまとめられた、作り手の力の入れ方がよくわかる製品だ。パーツも、作りも、仕上げも入念で、妥協のないものだ。

音質の絶対評価:7

アキュフェーズ P-400

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 B級A級切替のできるパワーアンプで、8Ω負荷時にそれぞれ200W、50Wのパワーを引き出せる。また、モノーラル接続では、ほぼ倍のパワーとなる。ピークホールドの可能なメーターの精度は高く読みとりやすい。ステレオ両チャンネルが電源から独立し、MOS・FET使用のDCアンプという、アキュフェーズとしてはP260とともにより新しい設計のセカンドジェネレーション・アンプと見ることができるものだ。

音質の絶対評価:9.5

アキュフェーズ P-300X

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 姉妹機P300Sのリファイン・モデルと見ることもできるが、内容は別物だし、デザインイメージもフェイス・リフトされている。4Ω負荷で200W+200Wが保証されている。8Ω負荷では150W。あらゆる点で、P300シリーズを土台にしただけあって、充分信頼性の高いものだし、物理特性も、よくリファインされている。モノ接続が簡単にできて8Ωで400Wとなる。メーターはピーク、ピークホールドで見やすい。

音質の絶対評価:9

アキュフェーズ P-260

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 アキュフェーズらしいといえばいえるが、あまり重厚なデザインではない。MOS・FETを使ったDCアンプで、A級、B級の切替ができる現代アンプ。B級130W、A級30Wというパワーは、単体パワーアンプとしては標準的で使いやすい。出力直読、ピークホールドのできるメーターを備えているが、照明色調ともに、本格派というよりはデザイン的である。それも、少々センスが安っぽいのが惜しまれる。

音質の絶対評価:7

アキュフェーズ C-240

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ボリュウムとバランス・コントロールだけが回転式で、あとはすべて、プッシュ式という新鮮なアイデアで登場した高級プリアンプ。C230という弟分でもこのデザインを踏襲していることからみても、アキュフェーズのプリアンプの代表的な顔として、今後もこのマスクが続くだろう。コンピューター・エイジにはふさわしいとはいえるだろうが、それだけに、反面、音楽表現に連る心情性は希薄な印象。しかし中味は凄い。

音質の絶対評価:8.5
菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 FR−64S/66Sのコンセプトを支軸にして、よりコンベンショナルで使いやすいユニバーサルなアームがこの64fxである。アーム材料はステンレスからアルミに変り、表面層を熱処理によりQダンプしている。中心部質量集中思想で作られ、総重量は重く実効質量は軽くというアーム設計になっている。全体はブラックフィニッシュで質感も美しく、加工精度も高い。精度の高いスプリングにより針圧をかけるダイナミック型。

EMT TSD15

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 このカートリッジでは、EMT独自のコネクター規格によるものだから、一般のトーンアームには取付けて使うことが出来ない。その場合にはXSD15を選ぶようになっている。同社のトーンアーム929か997と共に使うカートリッジだ。豊潤剛健な音質で、バランスは重厚で安定したものだ。デリカシーや透明度といった、軽量のコンプライアンス型では得られない充実したサウンドが好みの分れるところだろう。高貴な風格だ。

テクニクス SL-15

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 テクニクスが開発したSL−10を基盤に、さらに充実させ使いよくしたフルオート・プレーヤーシステムで、プレーヤーの世界に新しい一つの分野を開拓した、イージーハンドリングでハイパフォーマンスを狙ったもの。自動選曲は10曲までプログラム可能である。何から何までオートマティックに動作してくれる(レコード反転はしないが)便利さと、各パーツのクォリティがよくバランスした画期的なシステムである。

ビクター QL-Y7

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プレーヤーシステムとしては、ビクターの現シリーズ中の最高モデルである。カートリッジはついていない。メカニズムはセミオートタイプで、電子コントロールのダイナミックバランスタイプのトーんー無をもつ。一種のサーボコントロールにより、アームの受ける機械的な不安定要素を制御して、安定したトレース能力と音質を得ている。FGサーボのコアレスDCモーターによるクォーツロック・ダイレクトドライブ方式。

マッキントッシュ MC2205

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 マッキントッシュのパワーアンプのシリーズ中の代表機種である。例のグラスイルミネーションパネルをもつアンプとして、現在のところ最大のパワーをもった製品だ。パワーガードサーキットにより、ノンクリッピングのドライブが可能で、伝統のアウトプットとランスの使用により、高効率、高信頼度をもっている。暖かく重厚な音の品位の高さはマッキントッシュアンプならではのもので〝価値ある製品〟といえる。

パイオニア M-Z1

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 Zシリーズのパワーアンプで、独特の奥行きの深いプロポーションを共通してもっている。ノンNFB思想によって開発されたのが、このZシリーズ共通のコンセプトである。このアンプも、実際上はNFBループをもたないストレートアンプであって、音もきわめて直裁感に満ちていて、屈託のないものである。純Aクラスアンプで、出力は大きくないが、音の力感は充実している。独創性と完成度が、高い次元で一致した優れた製品だ。

アキュフェーズ C-200X

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 高級アンプメーカー、ケンソニック社のデビュー作品としてC−200は生れた。第2世代としてC−200Sとなり、このC−200Xは第3世代にあたる。原形を踏襲しながら、パネルデザインもリファインされているが、内容的にも一新されたアンプである。きわめて高品位のコントロールアンプで、その滑らかで、豊潤なサウンドは第一級のものだと思う。品位、信頼性の点で、現在の国産製品の最高度のものだろう。

サンスイ AU-D707F

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 サンスイのプリメインアンプ群は、このAU−D707Fをもって代表機種とする。数年間にわたってリファインをしつづけてきた最新モデルは、フィードフォワード・サーキットによって、もっとも現代的なアンプとして生れかわった。伝統のブラックパネルの他に、Fシリーズになってからはシルバーパネルも用意されたが、その豊かで、充実したサウンドは、旧製品以来のよさを維持しながら、一段とフレッシュな瑞々しさを加えている。

JBL L300A

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 JBLのスピーカーシステムとして、代表的な存在といってよいであろう。プロユースの4333シリーズに相当する内容のコンシュマー用であり、外観フィニッシュもずっとファニチュア的雰囲気が濃く、好感のもてるものだ。38cmウーファー、音響レンズ付ホーン型スコーカー、ホーン型トゥイーターの3ウェイ・3ユニット構成で、エンクロージュアはパイプダクトのバスレフ方式をとる。明解精緻なJBLサウンドだ。

パイオニア S-933

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ブックシェルフとしては高級大型システムに属する。32cmウーファー、6.5cmドーム型スコーカー、リボン型トゥイーターの3ウェイ・3ユニット構成をとり、エンクロージュアはバスレフタイプである。朗々とした明るい響き中にも、緻密な音像のエッジが明快に再生される。コーン、ドーム、リボンと各ユニットの構造のちがいを、巧みに調和させ、質感もよく統一されているのが見事である。

ビクター Zero-5Fine

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 意欲的な開発姿勢もさることながら、よくまとまった個性的スピーカー。コーン型ウーファー、ドーム型スコーカー、リボン型トゥイーターという組合せがユニークだし、帯域バランスを、質的にもよく統一した技術が光る。30cmウーファーがベースだけに、低音の豊かな支え、よのびたワイドレンジのスケール感が魅力。許容入力も余裕たっぷりで、かなりの大音量再生も可能であるから、音楽の表現力も大きい。

ヤマハ NS-460

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 全きバランスと、肌ざわりのよい質感、親しみやすくおだやかな雰囲気の中にも、適度な鋭さを合わせもった佳作である。構成は25cmウーファーと6cmトゥイーターの2ウェイのバスレフ型。トゥイーターは、コーンとドームの複合的性格をもっている。大きさとしては、中型に属するが、高能率で使いやすい。50〜70W程度のプリメインアンプとの組合せで使うのがよい。万人向きながら、マニアの耳にも十分応え得るもの。

クワドエイト LM6200R

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 いま、わが家でもっとも多く使っているプリアンプが、この米国の業務用メーカーのクォードエイト社の作る本格的なプロフェッショナル用ポータブルミクサーLM6200にフォノイコライザーのプリント基板を組み込んだ特別型LM−6200Rだ。
 本来それぞれにレベルコントロールを独立にそなえている6回路のマイクミクサー回路と、バッファーアンプを内蔵し、マスターコントロールをつけたもので、VUメーターを別のパネルで備えて、全体をキャリングケース(可搬型)に収めてある。価格は76万円と、かなり高価だが、本来プロ用のミクサーだから高くて当り前。大型の36回路コントロール・テーブルは1千万円もするくらいで、そのミニチュア型なのだから。ところで、このLM−6200Rはマイク回路はマッチング用入力トランスが入っているが、フォノ回路はそれがないのでSNはまあまあで、おなじみのマークレビンソン並みだ。でもMC型カートリッジをヘッドアンプやトランスなしでストレートで使えることは、もちろん。その時でも、ノイズは大して気にならないほどだ。
 さてこのクォードエイトLM−6200Rは、トーンコントロールはむろん、フィルターも一切ついていないから、実質的にイコライザー回路だけの単純な構成だ。それだけに音質の方は、きわめてストレートで、一切の変形も歪もない。このアンプの堂々とした力強さでクリアーな透明感は、マランツの幻の名器といわれたプリアンプ、モデル7を、もっと澄み切った音としたものといえば、もっとも近い。だから、今までモデル7を使っていたのに、LM−6200Rを使い出したとたん、モデル7はめったに使わなくなってしまった。
 最近接したプリアンプの中で、もっとも印象的だったのはアンプジラと、ペアとなるべきプリアンプ「テドラ」だが、テドラはそのパネルのデザインが独特で扱い難い。いわゆる美的感覚にのっとった所産ではなく、マニア好み一辺倒だ。LM−6200Rは実用一点張りだが、それなりの合理性が信頼感につながる。ただフィルターがないので、パワーアンプのスイッチを低域に入れる前に、プリアンプをONにしておくこと。

QUAD 33, 303

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 このアンプだけは、他のものと違って少々くつろいだ選択基準にのっとっている。つまり、朝に夕に、息を抜いたひとときに気軽にスイッチを入れてレコードを楽しむためのアンプとでもいえようか。特に、そうしたときに「音に対決する」といった息づまるような聴き方でなく、音楽を楽しめるコンデンサー・スピーカーを選んで、これを実用的に鳴らすことを考慮した時に必ず浮上するのが英国のアコースティック・インダストリー・マヌファクチャー社のコンデンサー・スピーカーQUAD(クォード)ESLであり、それをドライブするためのアンプとしてのクォード・トランジスタ・プリアンプ33、パワーアンプ303なのだ。
 ごく一般的な音楽の高級ファンの場合「永く聴いても疲れることのない装置」が強く望まれるものだ。QUADのシステムはこうした要求にぴったりであろう。聴く位置は固定されるが音像の確かさもすばらしいし、その品質は価格からは想像できない。まして最近のポンド下落の折で、日本での価格はこれからも高くなることはあるまい。
 クォードのアンプとして、オーディオマニアであれば、管球式のステレオ用プリアンプ・モデル22とパワーアンプ・モデル2を2台というのが、いつわらざる本音だろうし、今日、やや骨董的な価値も出てきて、マニアであればあるほど大いに気になるアンプであろう。
 ただ、今ではこれを探すのは労多く、価格的に割高のはずだ。トランジスターで間に合わせようというわけではないが、303と33でもいい。内容を見れば米国製の同価格の製品とくらべてみるとよく判ろうが、驚くほど綿密に、精緻に作られ、まるで高級測定器なみだ。プリント板の差換えでフォノイコライザーやテープイコライザーを変えられるようになっている所もいい。アンプの再生クォリティーは、今日の水準からは決して優れているというわけではないが、しかしESLを鳴らすには、この303の出力は手頃だし、最新パワーアンプ100/100ワットの405のお世話になることもあるまい。価格対内容では世界有数の製品だ。
岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 デンオンはこの数年来、高級プリメインアンプでもっとも成功しているブランドだ。昨今話題となっているステレオ右、左のクロストーク特性においても、製品の新型に2電源トランスを用いてアピールしている他のメーカーのような処置は何んらとっていないのだが、実際にはデンオン・ブランドのプリメインアンプのクロストーク特性ほど優れて、2電源の他社製をはるかにしのぐ。ステレオ初期から「ステレオ」用としての基本特性である左右セパレーションを重視しているから当り前であって、何をいまさらというのが、デンオンを作る日本コロムビアのメーカー側の言い分だ。当然である。
 コロムビアの昔の製品に「ステレオ・ブレンド・コントロール」というつまみが付いていたが、左右を混ぜてステレオからモノーラルの間を可変にし、2つのスピーカーの間の拡がりを変えているわけだが、こうしたステレオコントロールを付けるには、始めからステレオのクロストークを十分良くしておかなければならず、それがデンオンアンプのステレオ用としての優秀性を築いてきたのだろう。
 このように基本特性の優秀性はデータの上にはすぐ出てこないけれど、本当のアンプの良さを示すものといえよう。話題になって初めて、ある部分がクローズアップされる。本当に良い製品は、こうした部分的な面が解析されると、すでに手を打ってあって、いつの時代でも優秀性がくずれない。デンオンの新しい管球アンプ1000シリーズは、管球という昔ながらのディバイスを再認識して現代の技術で作り上げた高級品といわれる。つまり、トランジスタ技術を活用した新しい時代の管球アンプなのである。
 だから6GB8という超高性能高能率パワー管を採用し、100ワットという驚くべき出力をとり出し、しかも最新トランジスタアンプ並みの高い電気的特性を保っているだろう。その音は、無機的といるほど透明感があふれ、常識的な管球アンプの生あたたかい音では決してない。プリアンプを含め、いかにもフラット特性の無歪の道のサウンドスペースを創っているといえそうだ。

アキュフェーズ M-60

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 ケンソニックは、トリオのトップクラスの技術者がグループを作って始めた新進メーカーだ。高級品を選んで作るという姿勢がとても好ましく、いかにもハイファイメーカーとしての基本姿勢そのものをメーカーの体臭として感じとれる。最新に作った製品P−300を始め、すべてのパワーアンプ、プリアンプがすべて海外市場で最高の賛辞を受けた実力ぶりも高く評価できる。特に日本での高級アンプが、価格的にベラボーな高価格が多かった2年前の初期から、他社とは違って実質的価格を打ち出しており、これがまたハッタリのない実力を感じさせるゆえんだ。それというのも、ケンソニックは当初から海外市場を大きなマーケットとしてこそ成り立つことを考えていたためであろう。価格的に、日本市場で極端な割高な海外製品の価格を相手とせず、その本国での価格、つまり実質価格を相手として、ケンソニックのすべての製品価格の基準としている。この辺が内容にふさわしく、海外ライバル製品に対してはるかに割安で、高級製品としても高い商品価値をそなえている理由だ。
 ケンソニックの最新製品はM60と呼ばれる300ワットのモノラルアンプだ。1台28万円、従ってステレオで56万円となるが、300Wのステレオ用となると製品は海外製を見わたしても多くない。マッキントッシュMC2300を始めSAEの2500、マランツ510など250ワット・ステレオが多い。国内製品でもラックスのM6000が唯一で、山水BA5000も250ワット・ステレオだ。M60は、だから300ワットのステレオ用でも、これでももっとも低価格アンプということになる。M60はこうした大出力なのに、驚くほど静かな音が特長だ。静かといっても、一たんボリュームを上げるとフォルテでは床を鳴らし、家をゆるがせるだけのすごいエネルギーを出せるのは、もちろんだ。しかし普段は、これで300ワットかと思うほど静かなのである。とても自然でその音はナイーブですらある。ちょっと女性的なほどだ。しかし、その芯はむろんケンソニックのすべてのアンプのように、ガッチリした力強い筋金入りで、それはここぞというときにのみ、頭をもたげるのだ。

マランツ Model 510M

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 わが家には、いつでもスイッチさえ入れれば動作してくれるアンプが何台もあって、その多くは何んらかのスピーカー・システムが接続されている。スイッチさえ入れ、プリアンプをつないでボリュームを上げれば、すぐ音が出る。ところで、こうしたアンプのうちで、もっともスイッチを入れるチャンスの多いのはマランツのモデル2というパワーアンプだ。これは6CA7というフィリップス系のパワー管のプッシュプル接続パワー段で40ワット出力のモノーラルアンプであって、後にこれを2台結合して同じ寸法のシャーシーに収めるため出力トランスを少々小さくして35W/35Wとしたのが、有名なステレオ用モデル8Bである。さて、この管球アンプは多くの管球アンプ海外製品の中でも、もっとも音の良いアンプだ。堂々たる量感あふれるこの低音は、一度聴くと手離せなくなる。これに匹敵する製品はいくら探しても見当らず、マッキントッシュのアンプですら、300/300Wの超出力MC2300以外ない。
 永い間、このアンプに相当するものがなくて、これに近いのが同じマランツが昔作ったソリッドステートのモデル15とそのパワーアップ型、モデル16であった。モデル15の方が、かなりおとなしい中音でオーソドックスなマニア好みはするだろう。共に低音の力強さはマランツ独特のものだ。特にモデル16は今日的な意味でのクリアーな透明感があって、ある意味ではモデル2よりも好みの音である。パワー80/80が、あとから100/100ワットにパワーアップされたとはいえ、現代のアンプとしては少々力不足はいなめない。音マイク録音のすさまじい立上がりの最新録音では、クリアーな音も越しくだけになってしまうのだ。
 マランツの最新型510Mは265/265Wの超出力で、その割にコンパクトなサイズ。それは100/100ワットのモデル16の50%増程度、重量も2倍ぐらいなものだ。クォリティーは、まさにモデル16をはるかに上まわる電気特性で、より透明で鮮明なサウンドがいかにも最新型だ。

テクニクス 60A, 70A

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 2年ほど前から、米国の新しい小さな電子メーカー、マークレビンソンのプリアンプの優秀性が話題となっている。プリアンプといっても、フォノイコライザー回路を独立させて、それに左右独立の音量調整用ボリュームをつけた形の、純粋にディスク再生のための文字通りのプリ(補助)アンプであって、トーンコントロールやフィルターさえ付いていないが、雑音発生量が極度に抑えられていて、いわゆるSN比は今までの常識よりはるかによい。そのために小さなレベルでの再生がきわだってクリアーでスッキリしている。こまやかなニュアンスもよく出る。こうした点が、高級マニアの注目するところとなった。ただ、あまりに高価で、VUメーターのついたのが90万円を軽く越し、メーターなしの超薄型のでも50万円を越すという驚くほどの価格だ。誰にでも買えるものではないが、この高価格なのが又、新たな話題となって、ますます注目されるという2重のプラス(?)を生んでいる。ただし、うまい商品であるし、商売でもあろう。
 商品としての巧妙さは、また逆にその裏をかかれることにもなるが、持ち前の電子技術を誇る日本のメーカーが黙ってみているはずがない。この半年に、マークレビンソンのフォノイコライザー・アンプを狙った製品がいくつか出てきた。その一番バッターがテクニクスの70Aだ。外観的にはよく似たアンプで、SNもかなりよく、性能的にはテープモニターを2系統プラスしている。音の方も、より暖か味ある日本のマニア好みの音だ。肝腎のSNの点で、もう一歩という所だが、7万円という価格からは止むを得ないのだろう。プリント回路の質的な面で、もう少し良ければなあと望むのは欲ばりすぎかも知れないが、パワーアンプ60Aの出来具合のすばらしさにくらべて、プリの内側はちょっと淋しい。パワーアンプ60Aは、8万円という価格の中で外観、内容とももっともユニークかつ魅力を持ったアイディアと個性にあふれた製品だ。組合わせて聴くと、おとなしい音は大人のマニア向けという感じで生々しく、自然な響きが質の高さを示す。

パイオニア C-21, M-22

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 パイオニアが驚くべきシリーズの新製品を出した。M−22パワーアンプ、C−21コントロールアンプ。それにディバイダーアンプも加わっている。最近流行の薄型プリアンプC−21は、内容の方もフォノイコライザー回路を独立させたもので、パネルにはボリュームコントロールのつまみが左右別々に出ているだけだ。つまり外観通りに簡略化された回路設計を基本として、その部品を最上級のものでかため、プリント回路のパターンも完成度の高いものだ。こうした傾向は信号の純粋性を保ち、歪をおさえSN比を究めるという基本姿勢をそのまま製品に反映させた点で、車でいうなら、走るために徹底したレーシングマシーンみたいなものだ。ひとつの目的にぴたりとねらいを定めて、他を一切排除した設計。アクセサリーや余分の回路、スイッチを省いた設計である。だからC−21のSNは驚くほどで、例のマークレビンソンのプリアンプを上まわるほど優れている。歪特性も同様だ。最新の設計思想で貫かれているのだ。
 個の思想がオーディオに入ってきたのは、まだ最近の1年程度だが、パイオニアのようなもっともポピュラーと見做されていたメーカーから、こうしたハードな姿勢の製品がシリーズ20として出されたことは注目に価しよう。驚くべきことだ。M−22はC−21と同様に、質的な良さを純粋に求め、製品化したわけだ。つまりエクスクルーシブシリーズ中、もっとも好評のM4をそのまま、ひとまわりパワーダウンして価格を1/3に下げて達した驚異的製品だ。30/30ワットという出力は、今日のハイパワー時代には逆行する小出力ぶりだ。ブックシェルフ型隆盛の今日の平均的なスピーカー商品に対して、M−22はその実力を発揮することはあるまい。しかしスピーカーが良質であって質的に高級であれば、必ず今までのアンプとは格段に質が高いことを知らされよう。M−22は、だから本当に良いものを求め、しかし余りあるほどの資力のないマニアにとって、この上ないアンプとなるに違いない。このシリーズにディバイディングアンプが加えられており、M−22を中高音用にも使えるのは+αだ。

マイクロ SX-8000

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 マイクロが専門メーカーらしいマニアックなターンテーブルの製品に徹したポリシーをとって生み出した最高級品がこれ。20kgのステンレス製ターンテーブルを糸あるいはベルトで駆動するが、駆動モーター部とターンテーブルアッセンブリーはセパレート型。重いターンテーブルのシャフトはエアーで負担を軽くし、ノイズも軽減し耐久性を確保している。ハウリング対策さえ解決すれば、このターンテーブルならではの澄んで確固たる音が聴ける。

タンノイ Autograph

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 デュアル・コンセントリックK3808ユニットは別名スーパーレッドモニターと呼ばれる38cm口径の同軸型2ウェイである。これを、複雑な折り曲げホーンの大型エンクロージュアに収めたもので、オリジナルは、タンノイの創設者、G・R・ファウンテン氏のサイン(オートグラフ)を刻印してモデル名とした名器。これを日本の優れた木工技術で復元したものが、現在のオートグラフ。高次元の楽器的魅力に溢れた風格あるサウンド。

マッキントッシュ XRT20

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 24個のトゥイーター・アレイをもつ、3ウェイ27ユニット攻勢というユニークなシステム。緻密な計算と周到な測定技術によって開発された抜群の指向特性によるステレオフォニックな音場再現、驚異的なリニアリティによDレンジの大きなハイパワードライブ、広帯域の平坦な周波数特性など、物理特性でも最高水準のものだが、その音の品位の高さ、自然な楽器の質感や色彩感の再生は群を抜く、実に高貴な音だ。

マッキントッシュ C32

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 アメリカのマッキントッシュ社のプリアンプ中の最高機種である。多機能なコントロールマスターであり、5分割のイクォライザー、エキスパンダー、ヘッドフォン用パワーアンプなどをもつ。デザイン、仕上げの美しさ、高級感は最高峰で、オーディオファンの夢を実現したといえるだろう。そしてまた、音の素晴らしさ、操作類のプロ機器なみの配慮による円滑さなど、目に見えないところにこそ周到な作りがなされている。

スレッショルド Stasis 1

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 比較的新しいメーカーながら、スレッショルド社は堅実な製品づくりで信頼性が高い。技術的な内容とデザイン、創りの入念さなどがよくバランスしている最高級品である。中でも、このステイシス1は、同社のパワーアンプ中で最高の製品で、世界的レベルでみても堂々たる存在。200Wのモノーラルアンプで、実に大胆に物量を投入して最新のテクノロジーと合体させている。密度の高い、こくのある音は音楽の品位をきちんと出す。

EMT 930st

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プロ用のプレーヤーシステムとして特殊な存在だが、EMTとしては927Dstに比べて、コンベンショナルな放送局用である。TSD15カートリッジ専用で、トーンアームは同社の929を使っている。アイドラードライブの3スピードというオーソドックスなターンテーブルの信頼性と性能、音質の品位は高い。イクォライザーアンプを内蔵し、出力はラインレベル/インピーダンスで取出せるようになっている。

ナカミチ Nakamichi 1000ZXL

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菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 カセットデッキの最高峰といってよい、ナカミチらしい力作である。マイク/ライン録音にあらゆる面から対処し、テープへのバイアス、イクォライザー、レベルは、マイコンにより全自動化されている。マニュアルでは、イクォライザー2段、バイアス3段切換えだ。録音15曲のコーディング、再生30曲のメモリー選曲、タイマー、ピッチコントロールなど至れり尽くせりの高性能デッキで、まさにカセットのリファレンスにふさわしい。

マークレビンソン ML-7L

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黒田恭一

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「いま私のいちばん気になるコンポーネント ML7についてのM君への手紙」より

 M君、先日は、雨の中を、ありがとう。おかげで、まことに刺激的な時間を、すごすことができました。
 いくつかいいコントロールアンプがあるのできいてみますか?──というきみの声を、ローレライの声をきく舟人のような気持で、ききました。大変に誘惑的な、抵抗したくともできない、きみの申し出でした。きかせてくれるというのなら、ご親切に甘えてきかせてもらってもいいであろうと、ぼくはぼくなりに納得し、でも、きみのいう「いいコントロールアンプ」がいかなるものか並々ならぬ興味を感じ準備万端おこたりなく、きみの到着を待ちました。
 しかし、まさかきみがきかせてくれるコントロールアンプの中に、マーク・レヴィンソンのML7が入っていようとは、考えてもみませんでした。ぼくは、きみも知っての通り、これまでのマーク・レヴィンソンのコントロールアンプに対して、批判的などとおこがましいことはいいませんが、肌があわないとでもいいましょうか、値段のことは別にしても、これはぼくのつかうコントロールアンプではないなと思っていました。ひとに音の点で、そのきわだった美しさはわかっても、ぼくにはなじみにくいところがあったからにほかなりません。
 なんといったらいいのでしょう。すくなくともぼくがきいた範囲でいうと、これまでマーク・レヴィンソンのコントロールアンプのきかせた音は、適度にナルシスト的に感じられました。自分がいい声だとわかっていて、そのことを意識しているアナウンサーの声に感じる嫌味のような藻が、これまでのマーク・レヴィンソンのコントロールアンプのきかせる音にはあるように思われました。針小棒大ないい方をしたらそういうことになるということでしかないのですが。
 アメリカの歴史学者クリストファー・ラッシュによれば、現代はナルシシズムの時代だそうですから、そうなると、マーク・レヴィンソンのアンプは、まさに時代の産物ということになるのかもしれません。
 それはともかく、これまでのマーク・レヴィンソンのコントロールアンプをぼくがよそよそしく感じていたことは、きみもしっての通りです。にもかかわらず、きみは、雨の中をわざわざもってきてくれたいくつかのコントロールアンプの中に、ML7Lをまぜていた。なぜですか? きみには読心術の心得があるとはしりませんでした。なぜきみが、ぼくのML7Lに対する興味を察知したのか、いまもってわかりません。そのことについてそれまでに誰にもいっていないのですから、理解に苦しみます。
 たしかに、ぼくは、君のご推察の通り、ML7Lに対して、並々ならぬ興味を抱いていました。ぼくがML7Lのことを気になりだしたのは、例によって、いたって単純な理由によります。本誌56号の三九八ページから次のページにかけて山中さんが書いておられた文章を読んだからです。
 山中さんは、このように書いていました──「新しいML7は、そうした従来のモジュールシステムにいっさいとらわれず、モジュール基板からまったく新しい発想で開発された点が最大の特長であり、現在のMLASのチーフ・エンジニアであるT・コランジェロのオリジナルな設計に基づいている。したがって配線レイアウトが新しいポリシーで統一され、現在のMLASスタッフの目指す理念が具体化した意味で、第二世代の......という表現がもっともふさわしいと思うのである。」
 この文章の中でもっともしびれたのは、「第二世代の......」というところです。それを読んで、そうかこれはあのマーク・レヴィンソンではないんだなと思いました。そして、山中さんのその文章でのしめくくりの言葉、「恐るべきコントロールアンプの登場といえよう」で、ぼくの好奇心は炎と化したようでした。
 さらにもうひとつ、山中さんの文章には、気になることがありました。「T・コランジェロ」という、MLASのチーフエンジニアの名前です。コランジェロというのは、どう考えても、イタリア系の名前です。ぼくには悪い癖があって、ジュゼッペ・ヴェルディの国の人間、あるいはその国の血をひく人間は、ことごとくすぐれていると思いたがるところがあります。そのために失敗することもありますが、「T・コランジェロ」という名前を目にして、これはあのヴェルディの国の人間のつくったものかと、炎と化した好奇心に油をそそぐ結果になりました。
 そうこうしているうちに、本誌58号では、このML7Lが、いちはやくというべきでしょうか、「ザ・ステート・オブ・ジ・アート」にえらばれました。その時点では、まだML7Lの音をきいていなかったのですが、自分でも理解できないことながら、さもありなんと思ったりしました。
 そのような経過があって、ML7Lに対する好奇心がまさに頂点に達したところに、きみがぼくにきかせるためにそのコントロールアンプを持ってきてくれたことになります。これはちょうど、かねて噂をきいて一度は会ってみたいと思っていた美女に、思いもかけぬところで紹介されたようなものでした。「ほう、あなたが噂にきこえたML7Lさんでしたか。はじめまして......」などと、どぎまぎしてしまいました。
 ML7Lは、写真から想像していたより、はるかに小さく感じられました。幅は、48・3センチですから、LNP2Lなどと同じなのに、とても小さく感じられました。なにぶんにもコントロールアンプですから、大きい必要はないわけで、ML7Lが小さく感じられたということは、ぼくにとってこのましいことでした。
 人間には、大きさに憧れるタイプと、小ささに憧れるタイプのふたつがあるようです。ぼくはどちらかというと、後者のタイプのようです。ぼくの一応の愛用カメラは、技術不足のためにこれまでに一度としてまともにとれたことがないのですが、ミノックスです。そして、SLの走るのを写真でとったり録音したりするより、メルクリンを走らさせる方をこのみます。実用的価値などあるはずもないと思いながら、あいかわらず、宝クジにでもあたったら(もっとも、宝クジは、買わなければ、あたりっこないのだけれど)、まっさきに買いたいと思いつづけているのがあの手のひらにのるオープンリールデッキ、ナグラのSNNです。
 そういうことがありますので、ML7Lを小さく感じたということは、ぼくにはよろこばしいことでした。いかにも頭脳明晰という印象でした。ぼく自身が大男とはいいがたい身体つきなために、大男総身に知恵が回りかねという俗説を、どうやら胸の底で信じているようです。そういえば、好きな音楽家も、どちらかといえば小柄な人が多いようです。とはいっても、その人が小柄だからその人の音楽が好きになったというわけではいないのですが。
 しかし、むろん、コントロールアンプですから、みため、あるいはスタイルは、二の次です。やはり肝腎なのは音です。
 あれでかれこれ二時間近くもML7Lをきかせていただいたことでしょうか。なんともいいがたい、ひとことでいうとすれば、まさに満足すべき音でした。うっとりとききほれました。M君は「色っぽい音」と表現されましたが、なるほどと思いました。そのとき、実際に音をきかせてもらって、それまで晴れた空でときおり太陽をかくす雲のように気になっていたかすかな不安が、消しとびました。そのかすかな不安というのは、本誌58号一七六〜七ページで瀬川さんがお書きになった文章によって、ぼくの胸のうちに芽ばえたものでした。
 瀬川さんは、このように書いていらっしゃいました──「ML7を、同じレビンソンのML2L(モノーラル・パワーアンプ)と組合せると、まったく見事な音が鳴ってくるが、パワーアンプ単体としては、これまた現代の最尖端をゆくひとつと思われるスレッショルドの『ステイシス1』と組合せると(少なくとも私個人の聴き方によれば)何となく互いに個性を殺し合うように聴こえる。」
 ぼくのところのパワーアンプは、ごぞんじの通り、いまではもう『現代の最尖端をゆく」とはいいがたい、しかしステイシス1と同じメーカーの、4000Aです。これは置き場所にも困るまさしく大男ですが、総身に知恵がまわりかねているとは思えません。勝手なものですね。結局は、自分がいいと思えれば、どっちでもいいということなのかもしれません。なんとも節操のないことです。
 ぼくのパワーアンプは、スレッショルドでも、ステイシス1ではなくて4000Aであるからと思いながらも、瀬川さんの言葉は気になっていました。しかし、音をきいて、そかすかな不安は、消しとびました。なにぶんにもぼくはML7LをML2Lとつないだ音をきいていませんから、それとこれとの比較はできませんが、ML7L+スレッショルド4000Aの音に、ぼくは満足しました。
 ぼくがどのように満足したか、それを、あのときも、いたらぬ言葉で、あれこれおはなししましたが、ここにもう一度、整理して書いておくことにしましょう。
 満足というのは、おそらく、きき方にかかわります。そして、きき方とは、音楽への、ひいては音へのこだわり方であろうと、ぼくは考えます。なにゆえにこだわるかといえば、対象、つまり音楽、あるいは音への、ひとことでいうと愛があるからでしょう。このところは、こうではなく、もう少し美しくきこえるはずであるがと思ったときに、いま現在きこえている音に対しての不満が生れます。ドン・ジョヴァンニの栄光も不幸も、女性を愛しすぎたことに起因していると考えるべきでしょう。音楽を、ないしは音を愛していなければ、まあこんなものさといってすましていられるでしょう。
 こうではなく──と思うのは、困ったことに、新しくていいレコードをきいたときに多いようです。一方ではいいレコードだなと思い、もう一方で、こうではなく、もっとよくきこえるはずであるがと思うと、胸の中の不満の種がすっくりと芽をだします。あの、きみがML7Lをもってきてくれた雨の日に、ぼくは胸の中の不満の種をなだめるのに手をやいていました。
 きっとおぼえていてくれていると思いますが、あの日、ぼくは、「パルシファル」の新しいレコードを、かけさせてもらいました。カラヤンの指揮したレコードです。かけさせてもらったのは、ディジタル録音のドイツ・グラモフォン盤でしたが、あのレコードに、ぼくは、このところしばらく、こだわりつづけていました。あのレコードできける演奏は、最近のカラヤンのレコードできける演奏の中でも、とびぬけてすばらしいものだと思います。一九〇八年生れのカラヤンがいまになってやっと可能な演奏ということもできるでしょうが、ともかく演奏録音の両面でとびぬけたレコードだと思います。
 つまり、そのレコードにすくなからぬこだわりを感じていたものですから、いわゆる一種のテストレコードとして、あのときにかけさせてもらったというわけです。そのほかにもいくつかのレコードをかけさせてもらいましたが、実はほかのレコードはどうでもよかった。なにぶんにも、カートリッジからスピーカーまでのラインで、そのときちがっていたのは、コントロールアンプだけでしたから、「パルシファル」のきこえ方のちがいで、あれはああであろう、これはこうであろうと、ほかのレコードに対しても一応の推測が可能で、その確認をしただけでしたから。はたせるかな、ほかのレコードでも考えた通りの音でした。
 そして、肝腎の「パルシファル」ですが、きかせていただいたのは、前奏曲の部分でした。「パルシファル」の前奏曲というのは、なんともはやすばらしい音楽で、静けさそのものが音楽になったとでもいうより表現のしようのない音楽です。
 かつてぼくは、ノイシュヴァンシュタインという城をみるために、フュッセンという小さな村に泊ったことがあります。朝、目をさましてみたら、丘の中腹にあった宿の庭から雲海がひろがっていて、雲海のむこうにノイシュヴァンシュタインの城がみえました。まことに感動的なながめでしたが、「パルシファル」の前奏曲をきくと、いつでも、そのときみた雲海を思いだします。太陽が昇るにしたがって、雲海は、微妙に色調を変化させました。むろん、ノイシュヴァンシュタインの城を建てたのがワーグナーとゆかりのあるあのバイエルンの狂王であったということもイメージとしてつながっているのでしょうが、「パルシファル」の前奏曲には、そのときの雲海の色調の変化を思いださせる、まさに微妙きわまりない色調の変化があります。
 カラヤンは、ベルリン・フィルハーモニーを指揮して、そういうところを、みごとにあきらかにしています。こだわったのは、そこです。ほんのちょっとでもぎすぎすしたら、せっかくのカラヤンのとびきりの演奏を充分にあじわえないことになる。そして、いまつかっているコントロールアンプできいているかぎり、どうしても、こうではなくと思ってしまうわけです。こうではなくと思うのは、音楽にこだわり、音にこだわるかぎり、不幸なことです。
 ML7Lをきかせてもらっていたときのぼくは、傷の痛みに悩んでいるアムフォルタスが麻酔薬をうたれたようなものでした。束の間、痛みを忘れ、そうなんだ、こうでなくては、とつぶやきつづけていました。
 ML7Lの音には、ぼくが「マーク・レヴィンソンの音」と思いこんでいた、あの、自分の姿を姿見にうつしてうっとりみとれている男の気配が、まるで感じられません。ひとことでいえば、すっきりしていて、さっぱりしていて、俗にいわれる男性的な音でした。それでいて、ひびきの微妙な色調の変化に対応できるしなやかさがありました。そのために、こだわりが解消され、満足を味ったということになります。
 しかし、たとえそのとき満足しても、それでよかったよかったということではありません。アムフォルタスに麻酔薬がきいていたのは、なんといってもほんの二時間です。後をどうしてくれるんだと、きみにからんでもはじまりません。あのフュッセンの雲海をみつづけるためには、ぼくにとって少額とはいいかねる出費を覚悟しなければなりません。それにしてもML7Lの値段は、お金持にとってはなんでもないのかもしれないけれど、ぼくのような、金持でもなく、ほしいものばかりやたらにある人間にとっては、感動的です。涙がでます。
「どうしますか?」と、きみは、にやにや笑ってたずねました。どうするもこうするもない、ぼくはいま、一ヵ月ほどのヨーロッパ旅行を前にして、それでなくとも金がないのだから、買いたくとも買えるはずがないわけです。
 そして、あの日、きみには、ひとまずML7Lを持って帰ってもらいました。そのあとのぼくがいかにもんもんとしたかは、ご想像にまかせます。そして、あれから一週間ほどして、きみは電話をくれました。この電話が決定的でした。きみとしてはジャブのつもりでだした一打だったのでしょうが、そのジャブがぼくの顎の下をみごとにとらえました。ぼくとひとたまりもなくひっくりかえってしまいました。「やっぱり買うよ、俺、ML7Lを」と、電話口で、ぼそぼそといってしまったのです。
 もしかするときみは、ぼくになにをいったのか、おぼえてさえいないのかもしれません。念のために、ここに、書いておきます。きみは、こういったんです──「田中一光先生がML7Lをお買いになるんだそうですよ」。このひとことはききました。そうか、田中一光氏が買うのか──と思いました。
 ぼくは、光栄なことにぼくの本の装幀を田中一光氏にしていただいて、仲間たちから、なかみはどうということもないけれど装幀がすばらしいといわれて、それでもなおうれしくなるほどの田中一光ファンですが、まだ一度もお目にかかったことがありません。でも、直接お目にかかっているかどうかは、さしあたって関係のないことで、その作品やお書きになったものから、ぼくの中には、厳然と田中一光像があって、その田中一光氏がML7Lを使うとなれば、よし、ぼくもがんばってということになります。このときのぼくの気持は、アラン・ドロンが着ているからという理由で、その洋服を着てみようとするできそこないのプレイボーイの気持に似ていなくもありませんでした。
 いずれにしろ、決心のきっかけなんて、他愛のないものです。よし、ぼくもML7Lを買おうと決心した、つまり、清水の舞台からぼくをつき落としたのは、きみのひとこと「田中一光先生がML7Lをお買いになるんだそうですよ」だったということになります。
 そのあとで、きみは、さらに追いうちをかけました。「MCカートリッジ用のL3ハイゲイン・フォノアンプはどうしますか?」と、心優しいきみはいいました。ごぞんじの通り、ぼくはまだ、MCカートリッジ用のL3ハイゲイン・フォノアンプの音をきいていません。それをつけることによって、それでなくとも高価なML7Lがさらに高価になることはわかっていますが、最近は、MCカートリッジしか使わないので、L3ハイゲイン・フォノアンプをつけてもらおうと思いました。ひとたび清水の舞台からつきおとされたのであるから、どこまでだってとびおりてやる──というのは上段で、コントロールアンプの音があのようであるのなら、一種の信頼が、未聴であるにもかかわらず、L3ハイゲイン・フォノアンプをくみこんだかたちでつかおうと、ぼくに思わせたにちがいありません。
 人に対しても、ものに対しても、疑うというのは、ぼくのこのむところではありません。それに、ML7Lの音があまりにも見事であったので、L3ハイゲイン・フォノアンプに対しても、未聴であるにもかかわらず、信用したということのようです。もし期待通りの音でなかったら、自分の不覚を恥じるよりありませんが、まさかそんなことはないであろうと、いまは思っています。
 明後日、ぼくは、ヨーロッパにでかけます。おかげで、すっからかんの財布をポケットに出かけなければなりませんが、やむをえません。一ヵ月後に帰ったころには、ハイゲイン・L3フォノアンプのくみこまれたML7Lがとどいていることでしょう。おちおちヨーロッパを歩きまわってもいられない気持ですが、予定したことなので、でかけます。
 帰ったら、一度、ML7Lの音をききにきて下さい。したたかなきみに、これぞ世界一の音といわせるような音をきかせますから。

トーレンス Reference

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 EMTの927Dstと、偶然のように殆ど同じ価格だが、EMTは、同社のTSDシリーズのカートリッジ専用であるのに対して、こちらは、好みのアームやカートリッジをとりつけられるユニバーサル・ターンテーブルシステム。レコードの音溝を針先でたどるという、メカ的なプリミティヴな方式を守るかぎり、メカニズムに十二分の手を尽したプレーヤーシステムは、それ相応の素晴らしい音質を抽き出してくれるという証明。

EMT 927Dst

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 いまは消えてしまった16インチ(40cm)ディスクを再生するための大型プレーヤーデッキだが、標準の30センチLPをプレイバックしてみても、他に類のない緻密でおそろしく安定感のある音質の良さが注目されて、生き残っている。大型のダイキャストターンテーブルの上にガラス製サブターンテーブルを乗せたのが927Dst。プラスチック製はただの927st。しかし音質面では、ガラス製のDstにこそ、存在価値がある。

マークレビンソン LNP-2L

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 1973年に、レヴィンソンが、テープに録音するためのミニ・ミクシングコンソールのような目的で作ったのがLNP−2で、その後何回も小改良が加えられて、こんにちに至っている。別にML−6ALやML−7Lのような、機能を最小限に抑えて極限まで性能を追求した製品もあるが、大幅なゲイン切換やトーンコントロールその他、レコード観賞に必要な機能を備えたコントロールアンプとして、今日これ以上の音を聴かせる製品は他にない。

JBL D44000 Paragon

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ステレオレコードの市販された1958年以来だから、もう23年も前の製品で、たいていなら多少古めかしくなるはずだが、パラゴンに限っては、外観も音も、決して古くない。さすがはJBLの力作で、少しオーディオ道楽した人が、一度は我家に入れてみたいと考える。目の前に置いて眺めているだけで、惚れ惚れと、しかも豊かな気分になれるという、そのことだけでも素晴らしい。まして、鳴らし込んだ音の良さ、欲しいなあ。

JBL 4343B

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 発売後五年あまりを経過し、途中でBタイプ(フェライト磁石)に変更のあったりしたものの、こんにち世界じゅうで聴かれるあらゆる種類の音楽を、音色、音楽的バランス、音量の大小の幅、など含めてただ一本で(完璧ということはありえないながら)再生できるスピーカーは、決して多くはない。すでに#4345が発表されてはいるが、4343のキャビネットの大きさやプロポーションのよさ、あ、改めて認識させられる。

EMT XSD15

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 EMTのカートリッジTSDシリーズは、ほんらい、同社のプレーヤーデッキに組合わされるいわばプレーヤーシステムの系の中のパーツであり、単売のカートリッジだと考えないほうがいいが、それでもTSDの魅力の半面なりを味わいたいという向きのために、オルトフォン/SME型のコネクターに代えたXSDが用意されている。この音の魅力を生かすには、アームやプレーヤーシステムの選び方が相当に制限される。

デンオン DL-303

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 永く続いた103シリーズのあと、最近のカートリッジ設計の主流ともいえるローマス化をはかって企画されたのが303のシリーズで、現在、301、303、305の三機種が揃っているが、DL−301はヤング層の好みをことさら意識しすぎ、DL−305は303の繊細さに何とか力を加えようと力みすぎ、、みたいに(私には)思えて、ことさらの音作り意識の加わっていないDL−303が、やはり最良の出来栄えだと思う。国産MCのベストに推す。

デンオン DL-103

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 おそらくオルトフォンのSPUに次いで寿命の長いカートリッジだろうか。永いあいだ1万6千円、その後1万9千円に改訂されたものの、FM放送用として入念に設計され、長期間作り続けられた安定性と信頼性は、その後数多く出現したいわゆる1万9千円MCカートリッジの攻勢を寄せつけない。最新型と比較すれば、音がやや太く重いが、MCとしては出力が大きく扱いやすく、良いアームと組合せれば、この音は立派にひとつの個性だ。

トーレンス TD126MKIIIBC

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 スイス・トーレンス社のターンテーブルは、TD125以来、150、160などすべて、亜鉛ダイキャストの重いターンテーブルをベルトドライブで廻すという方式で一貫している。同社ではS/N比の向上の点でのメリットを強調しているが、DDを聴き馴れた耳でTD126の音を聴くと、同じレコードが、あれ? なんでこんなに音が良いのだろう! と驚かされる。音の良さの理由は私には正確には判らないが、ともかくこれが事実なのだ。

アキュフェーズ T-104

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ほんらいは、コントロールアンプC−240、パワーアンプP−400とマッチド・ペアでデザインされた製品。三台をタテに積んでもよいが、横一列に並べたときの美しさは独特だ。だがそういう生い立ちを別としても、アナログ感覚を残したディジタル・メモリー・チューニング、リモートコントロール精度の高いメーター類などは信頼性が高い。そしてそのことよりもなおいっそう、最近の同社の製品に共通の美しい滑らかな音質が魅力だ。
瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 トランジスターの素子も回路技術も格段に向上して、素晴らしい音質のアンプが作られるようになったこんにち、効率の悪い、発熱の大きい、ときとして動作不安定になりやすい管球アンプをあえて採るというからには、音質の面で、こんにちのトランジスターアンプに望めない+アルファを持っていること、が条件になる。TVA−1の音はどちらかといえば女性的で、艶やかさ、色っぽさを特長とする。ふくよかでたっぷりして、ほどよく脂の乗った音。

アキュフェーズ P-300X

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 この社の第一世代の製品ともいえるC−200、P−300、そして小改良型のC−200S、P−300Sのシリーズに関しては、音質の点でいまひとつ賛成できかねたが、C−240、P−400に代表される第二世代以後の製品は、明らかに何かがふっ切れて、このメーカーならではの細心に磨き上げた美しい滑らかな音質がひとつの個性となってきた。P−300Xは、そこにほんの僅か力感が増して、C−200Xと組合わせた音の魅力はなかなかのものだ。

アキュフェーズ E-303

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プリメインタイプの最高機をねらって、著名ブランドがそれぞれに全力投球している中にあって、発売後すでに3年近くを経過しながら、E303の魅力は少しも衰えていない。特別のメカマニアではなく、音楽を鑑賞する立場から必要な出力や機能を過不足なく備えていて、どの機能も誠実に動作する。ことにクラシックの愛好家なら、その音の磨き上げた美しさ、質の高さ、十分の満足をおぼえるだろう。操作の感触も第一級である。

テクニクス SU-V6

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 電子回路の部品や技術が日進月歩して、ローコストで音の良いアンプが容易に作られる時代になったものの、極限までコストダウンして、しかも性能をどこまで落とさずに作れるか、というテーマに関しては、やはり「挑戦する」という言葉を使いたくなるような難しさがある。SU−V6はそれに成功した近来稀な製品。鳴らし出してから本調子が出るまでにやや時間のかかるのが僅かの難点。そして、外観の野暮なこと。だがそれを補って余りある内容の良さ。

ロジャース PM510

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 LS3/5Aは英国BBC現用の最も小さいモニタースピーカーだが、同じシリーズで最も大きいのがLS5/8。これにはバイアンプドライブのパワーアンプシステム(QUAD製)が附属しているが、それを、普通のLCネットワークに代えて、扱いやすくしたのがPM510。クラシック全般、中でも弦合奏やオペラ等の音や声の音色や音場の自然さ、美しさ、という点で、いまのところ頂点のひとつにあるスピーカーと言ってよい。

ロジャース LS3/5A

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 周知のように英国BBCの開発になるミニモニターだが、同局の認可をとってロジャースとオーディオマスターの2社から、製品が市販されている。大きさからいって、スケール雄大といった音はとても望めない反面、精巧な縮尺模型を眺める驚きに似た緻密な音場再現と、繊細な弦の響きなど、他に類のない魅力だろう。KEF303を、安心して家事のまかせられる堅実女房とすれば、こちらは少し神経質だが魅力的な恋人、か。

JBL 4301B

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 #4350、#4345、#4343等を頂点とするJBLスタジオモニターシリーズの末弟。KEF303同様に20cmウーファーとコーン型トゥイーターの2ウェイ。だが音質は対照的で、ジャズ、フュージョン、ロック等の叩き込んでくるパーカッションの迫力は、小型とはいえやはりJBL。明るい軽快なカリフォルニア・サウンド。ちょっと小粋で魅力的なスピーカーだ。

KEF Model 303

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「'81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 20cmウーファーとドーム型トゥイーターの2ウェイ。キャビネットはプラスチック成型を主体とし、外装はストレッチクロスでぐるりと囲んで、徹底的にコストダウンした作り方。レベルコントロールもついていない。が、その分だけ音質はさすが、で、バランスよく、大入力にも耐え、どちらかといえば地味な音色だが音楽を選ばず楽しませる。最近の製品はストレッチクロスの色が6色用意され、好みによって選べる。

アキュフェーズ M-100

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 500W? へえ、ほんとに出るのかな。500W出した音って、どんな凄い音がするのかな......と、まず思うだろう。
 いかにもその期待に正確にそして誠実に答えるかのように、M100には、8Ω負荷の際のピーク出力を数字で表示するディジタル・パワーディスプレイがついている。そして、鳴らしはじめのあいだは、つい、耳よりも目がそちらの方に気をとられてしまう。刻々と移り変わる数字に目をうばわれていると、ふと、音を全然聴いていないことに気づいて愕然とさせられる。
 そして、おそらく誰もが、このアンプの音質を虚心に聴き分けることのできるようになるためには、パワーディスプレイの存在の珍しさが、意識の中から消え去ってからでなくてはダメだと思う。それくらい、このディスプレイは楽しい。
 出力のディスプレイは、次の4レンジに読みとりを切り換えられる。
  0・001W〜0・999W
  0・001W〜9・99W
  0・1W〜99・9W
  1W〜999W
 ごく絞った音量で鳴らしているときは、0・001Wのレンジで十分だ。過程で、静かに音楽鑑賞をするときの出力は、ちょっと拍子抜けするほど小さいことが読みとれる。0・001W近辺でけっこう大きな音が鳴らせることがわかる。
 しかし、たとえばコンボ・ジャズの録音の良いレコードを、あたかも目の前で演奏しているかのような実感で味わおうとすると、出力は、途端に、10W、50W、100W......と大きく動きはじめる。あ、と思った瞬間に、インジケーターの数字は200を軽く越えて、350、400、450......と指示する。500Wという数字から恐るべき音量を期待していると、軽く裏切られる。それは当然なのだ。私たちはつい最近まで、200Wから400Wのアンプを日頃常用したりテストしたりしてきて、実演に近い音量に上げたときには、200Wの出力がすでにものたりないことを体験している。500Wといったって、それは、200Wにくらべて3dB強、最大音量に余裕が出来ただけの話、なのだから。そういいう意味では、こんにち、すでに500Wどころか、1kWでも2kWでも、もし安定度と音質の良さの保証がありさえすれば、いますぐにでも欲しいのだ。
 単にハイパワーというだけなら、すでに実験機、試作機を含めて、私たちは体験しているし、PA用のアンプでは、音質は少々犠牲にしてでも、トータル数kWないし数十kWという出力はいまや日常の話になっている。けれど、過程で音楽をふつうに鑑賞するときの平均音量は、むしろ1W以下、ピアニシモでも0・001Wよりもさらに下、などというのがふつうだ。そういう極小出力で、十分に質の高い、滑らかな歪の少い、透明度の高く魅力的な音質を確保しながら、一方でどこまで高出力を出せるかというのが、これからの本当のハイパワーアンプのあり方だ。アキュフェイズM100は、そ命題に本気で応えた、本当の音楽鑑賞用のハイパワーアンプだといえる。
 そのことは、次のような比較ではっきり聴きとれる。
 比較の対象として、同じアキュフェイズのステレオ・パワーアンプの最高級機P400(200W+200W)を、もう一方に、M100より一歩先んじて発表されたマッキントッシュの同じく500Wアンプ(ただしこちらはステレオ構成)MC2500をそれぞれ用意した。プリアンプは、アキュフェイズのC240、マッキントッシュC29、それにマーク・レヴィンソンML7。これらを交互に組み代えて、音を比較する。
 まずアキュフェイズどうし。プリはC240に固定して、P400とM100(×2)の比較──。
 M100のディスプレイで、ピーク出力で50ないし80W、つまりP400の最大出力を十分に下廻る余裕のあるところで音量をほぼ同大にして比較してみるが、たとえば交響曲のトゥッティや、ピアノ独奏の最強音のところで、M100の悠然とどこまでもよく伸びる音を一旦耳にしてしまうと、P400の音が、どことなくピークで飽和しているような、音の伸びがどこかで停まってしまうあるいは抑えられてしまうかのような、印象として聴きとれる。そしてピアノの打鍵音の実体感が、M100の方が優れている。引締って、くっきりと形造られ、しかも硬質でなく十分弾力的だ。
 次にもう少し小さなパワー、M100のディスプレイがピークでも5〜6Wまでしか示さないような、ごく日常的な音量で比較してみる。それでも、M100の質の高さはすぐに聴き分けられる。音に何となくゆとりがある。私自身でも何度か例えとしてあげた話のくりかえしになるが、大型乗用車をぐっと絞って走らせたような力の余裕、底力、を感じさせる。
 ただ、P400にも良いところはある。弦のこまやかな合奏などのところで、いっそう繊細だ。それはM100よりもう少し女性的な表現といえないこともない。悪くいえば線が細いといえるのかもしれないが、裏がえしてみればいっそうナイーヴな表現をするともいえる。
 このまま(つまりプリアンプがC240のまま)、パワーアンプだけ、マッキントッシュMC2500にしてみる。音の性格が、アキュフェイズとはまるで反対だから、組合せとしてはベストとはいえないが、一応、同条件でのパワーアンプどうしの比較にはなる。
 たとえばピアノ・ソロ。M100よりも彫りが深く、一音一音のタッチがくっきりと際立つ。そして強打音での伸びがM100よりも力強い。ピアニストの指の力が増したような、ことにP400と比較すると、女性ピアニストと男性ピアニスト、ぐらいの差がつく。差のあることはわかるが、必ずしもどちらが良いかは速断できない。MC2500のほうが、少し元気すぎるともいえなくないが、しかしP400は逆に控えめすぎるともいえる。となると、M100がちょうどよいのか──。これはどうも、C240との相性の問題もありそうで、ピアノ独奏に関しては、案外、C200XとM100あたりの組合せがよいのかもしれないと思った。残念ながらC200Xを用意していなかったので、確認はできなかった。
 ところでMC2500だが、ピアノではともかく、交響曲では首をかしげた。使ったレコードは、アムステルダム・コンセルトヘボウだったが、それが、アメリカ系のたとえばシカゴ交響楽団とまではいいすぎかもしれないにしても、ちょっと、ヨーロッパの音にしては抑制と渋味が不足している、あるいは、明るすぎる音に仕上って聴こえる。
 このあと、プリアンプをレヴィンソンML7に変えて同じく3台のパワーアンプの比較をした。プリアンプの変ったことによって、組み合わせた結果の音の味わいは変ったが、パワーアンプ相互の音のニュアンスの差は、前記の印象と大筋において違わなかった。
 プリアンプをマッキントッシュC29に変えての試聴では、MC2500の音がぐんとピントが合って、音の色調が当然とはいえ、よく揃い、マッキントッシュの新しい世代のサウンドに、ちょっと感心させられた。反面、アキュフェイズのパワーアンプに対しては、マッキントッシュの華麗、アキュフェイズのナイーヴ、互いの個性が殺し合って、これは明らかにミスマッチだった。
 さきほどのピークパワー・ディスプレイの数字は、ホールドタイムが0・5秒、3秒、30分に切り換えられる。そしてホールドしているあいだにも、より大きなピークが入ってくれば、即座に応答して表示する。0・5秒では刻々と変化する出力上下の幅がいかに大きいかを直感的に読みとれる。3秒になると、もう少しゆっくりと、考えるヒマを与えてくれる。30分のホールドは、レコード片面を通して、最も大きな出力を表示してくれる。この機能はすばらしく便利で、前述のように、つい音を聴くことを忘れさせるほど、最初のうちは見とれてしまう。
 いったい、どこまでの出力が出せるものかと、ハイパワー限界のテストをしてみた。こういうテストは、もしもクラシックで、ピーク500Wを出そうとしたら、ふつうの部屋ではとても耐えられない音量になってしまう。むしろ、最近の録音の良いジャズやフュージョンの、むしろマイナー・レーベル(たとえばオーディオ・ラボやシェフィールドなど)のほうが、一瞬のピーク出力が制限されずにそのままカッティングされている。いいかえれば、音量感の上ではむしろ意外なところで、出力の表示は数百Wを軽くオーバーシュートして、びっくりさせられる。
 ともかく、今回の本誌試聴室の場合では、640Wまでを記録した。これ以上の音量は、私にはちょっと耐えられないが、アンプのほうは、もう少し余裕がありそうに思えた。500Wの出力は、十二分に保証されていると判断できた。
 しかし、M100の本領は、むしろ、そういういパワーを楽々と出せる力を保持しながら、日常的な、たとえば1W以下というような小出力のところで、十分に質の高い音質を供給するという面にあるのではないかと思われる。
 そのことは、試聴を一旦終えたあとからむしろ気づかされた。
 というのは、かなり時間をかけてテストしたにもかかわらず、C240+M100(×2)の音は、聴き手を疲れさせるどころか、久々に聴いた質の高い、滑らかな美しい音に、どこか軽い酔い心地に似た快ささえ感じさせるものだから、テストを終えてもすぐにスイッチを切る気持になれずに、そのまま、音量を落として、いろいろなレコードを、ポカンと楽しんでいた。
 その頃になると、もう、パワーディスプレイの存在もほとんど気にならなくなっている。500Wに挑戦する気も、もうなくなっている。ただ、自分の気にいった音量で、レコードを楽しむ気分になっている。
 そうしてみて気がついたことは、このアンプが、0・001Wの最小レンジでもときどきローレベルの表示がスケールアウトするほどの小さな出力で聴き続けてなお、数ある内外のパワーンアンプの中でも、十分に印象に残るだけの上質な美しい魅力ある音質を持っている、ということだった。夜更けてどことなくひっそりした気配の漂いはじめた試聴室の中で、M100は実にひっそりと美しい音を聴かせた。まるで、さっきの640Wのあの音の伸びがウソたったように。しかも、この試聴室は都心にあって、実際にはビルの外の自動車の騒音が、かすかに部屋に聴こえてくるような環境であるにもかかわらず、あの夜の音が、妙にひっそりとした印象で耳の底で鳴っている。
 モノーラル構成2台で100万円、というのは、決してささやかとはいえない。2台の重量の合計が83kg。そのことよりも、10W近辺まで純A級で動作するという回路構成から、消費電力は無信号時でも250W(2台だから500W!)と、無視できない価である。ピーク出力時では、仮に一瞬であっても、8Ω負荷500W出力で840W(×2)を消費するから、それ相当の覚悟をしないと、なかなか自分のラインにはとりこみにくい。しかし、冷却ファンなしでも、発熱は想像よりずっと少ない。ファンを追加もできる構造だが、家庭用としては不必要ということだし、ファンなしで済むということは、無用の機械雑音に悩まされずに済むということで、神経質な愛好家にも歓迎されることだろう。

JBL L150A

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 発売後約1年半を経たL150の小改良型で、改良のポイントは、第一にグリルクロスを外してみるとすく目につくが、ドームトゥイーターが、旧型の黒い色からアルミニウム系の金属質の色に変っている。おそらくL112のトゥイーターと同等かまたは同じ技術で作られていると思う。
 第二は内蔵の分割回路の改良とのことで、これは外からはみえない。
 たまたま、別項で紹介しているアキュフェイズの500W(M100)の試聴と重なっていたので、遊びついでに、エージングをかねて、思い切りパワーを放り込んでみた(マイ・リトル・スウェード・シューズ/西 直樹 トリオPA9209)。M100のピークインジケーターが、一瞬、640W! を指示するほどの、といっても、目の前で演奏している、あるいは演奏者たちの間に入れてもらったような音量。しかし鳴り終えてしばらくは耳がジーンと鳴っているような、いささかショッキングな音量で一曲聴いてみるが、実に整然とバランスが整って、安定感があり、ユニットがハイパワーで飛ぶのではないかなどといったおそれは少しも感じさせない。ウッドベースはよく引き締って、しかし量感と弾みがあるし、ピアノの打鍵の切れこみ、ドラムスの叩き込んだエネルギーと音離れのよさ、実に爽快な一瞬を味わった。
 このあと、もっとふつうのアンプに戻してフュージョンその他のポップス、ヴォーカル等を聴いたが、抑制の利いたややクールな鳴り方で、全体にバランスのよく整っていること、旧型ではトゥイーターの上限に少しクセっぽい音のあったがよく取り除かれていること、総体に改良のあとははっきり認められた。
 ただ、旧型が、ときに少々きわどい音を鳴らしながらも、その反面として、難しいクラシックの弦の音にさえも、一種の魅力的な味わいを示したのに比較すると、総体に音がやや艶消しの質感、あるいは乾いた方向に調整されているので、結局、新製品はポップス系をよりよく再現する方向に徹したのではないかと想像した。
 設置のしかたはとても楽で、特別に台を用意せずにゆかの上にそのまま置いても、低域の音離れもよいし、背面は共振のない固い壁ならむしろぴったりつけてしまってさしつかえない。

ルボックス B710

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瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 たとえば、カートリッジを比較の例にあげてみると、一方にオルトフォンMC30又はMC20MKII、他方にデンオンDL303又はテクニクス100CMK3を対比させてみると、オルトフォンをしばらく聴いたあとで国産に切換えると、肉食が菜食になったような、油絵が水彩になったような、そういう何か根元的な違いを誰もが感じる。もう少し具体的にいえば、同じ一枚のレコードの音が、オルトフォンではこってりと肉付きあるいは厚みを感じさせる。色彩があざやかになる。音が立体的になる。あるいは西欧人の身体つきのように、起伏がはっきりしていて、一見やせているようにみえても厚みがある、というような。
 反面、西欧人の肌が日本人のキメ細かい肌にかなわないように、滑らかな肌ざわり、キメの細かさ、という点では絶対に国産が強い。日本人の細やかな神経を反映して、音がどこまでも細かく分解されてゆく。歪が少ない。一旦それを聴くと、オルトフォンはいかにも大掴みに聴こえる。しかし大掴みに全体のバランスを整える。国産品は、概して部分の細やかさに気をとられて、全体としてみると、どうも細い。弱々しい。本当のエネルギーが弱い。
 B710とナカミチ1000ZXLとの比較で、まさにそういう差を感じた。そしてここでテープまで変えると、その差はいっそう大きく開き、ナカミチにはTDKのSA又はマクセルのXLIIを、そしてB710には、今回小西六がアンペックスと提携して新発売するマグナックスのGMIIを、それぞれ組み合わせると、国産はハイ上がりのロー抑え、いわゆる右上り特性の、ややキャンつきぎみの細身の音に聴こえるし、ルボックスはその正反対に、中〜低域に厚みのたっぷりある、土台のしっかりした、ボディの豊かな音に仕上る。そしてとうぜんのことに、こういう音はクラシックの音楽を極上のバランスで楽しませる。総体に、派手さをおさえて音を渋く、落ち着きのある色合いを聴かせるのだが、こういう音は、残念ながらこれまで国産のどのデッキからも聴くことができなかった。
 試聴はほとんどドルビーONの状態。そしてメカニズムその他の詳細については、残念ながら紙数の制約のため割愛せざるを得なかった。

パイオニア Exclusive M4

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 良いアンプとは、いったいなんだろう。「良い」という意味は多くある。電気的特性の良さはアンプにとって最低条件だとよくいわれる。電気的特性が良くないのでは、良い音がするわけないともいわれる。しかし、逆に良い音のアンプなのに電気的特性は現代の最新普及価格帯の総合アンプに劣るものもある。いや最近の5万円台のアンプは歪0.1%を下まわり、海外製のひとけた上の優秀なアンプよりも性能表示は優れている。しかし、音は必ずしも電気的特性に伴わない。今日のアンプの音が悪いというわけではないが、電気諸特性がずっと良いのに音を聴くと大したことないのも少なくないのである。
 ところで、こうして記していると結論が出なくなってしまいそうだが、ただアンプをみつめるのでなくて、スピーカーを接続して初めてシステムとして動作することに目をつけて、スピーカーの方から逆に見た方がよいのではないかと思われる。つまりスピーカーをよく鳴らすことが、よいアンプの条件として判断しようというわけだ。
 ところで、アンプ以上に良い悪いの判断が難しいのがスピーカーだが、高価な高級品ほどよく鳴らすのがむずかしいものである。わが家には昔作られた、昔の価格で1000ドル級の海外製高級システムから、今日3000ドルもする超大型システムまで、いくつもの大型スピーカーシステムがある。こうした大型システムは中々いい音で鳴ってくれない。トーンコントロールをあれこれ動かしたり、スピーカーの位置を変えたり。ところが、不思議なのは本当に優れた良いアンプで鳴らすと、ぴたりと良くなる。この良いアンプの筆頭がパイオニアのM4だ。このアンプをつなぐと本当に生まれかわったように深々とした落ちつきと風格のある音で、どんなスピーカーも鳴ってくれる。その違いは、高級スピーカーほど著しくどうにも鳴らなかったのが俄然すばらしく鳴る。昔の管球式であるものは、こうした良いアンプだが、現代の製品で求めるとしたらM4だ。A級アンプがなぜ良いか判らないが、M4だけは確かにずばぬけて良い。

GAS Ampzilla

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岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 米国の新進アンプ・メーカーにグレート・アメリカン・サウンド社という特異な高級製品を作るメーカーがある。いかにも大げさな社名だが、作るアンプの製品名が「アンプジラ」。まるでゴジラみたいなアンプだが、'76年中には出力300ワットの物すごいのを作るといい、その名はズバリ「ゴジラ」。特異な体質のメーカーという理由は、こうした名づけ方からも推察されるのだが、こんな名前をつけられた製品は、どんなにかハッタリに満ちたものかといぶかしい眼でみられてしまうに違いない。特に日本のマニアのように、かなりまじめでオーソドックスな感覚の持ち主には、あまり好ましい先入観念は持てっこない。ところが、である。これらのどぎつい名前のアンプは、その名前からの印象とはまったく違って、きわめて正統的な設計をされ周到に作られており、そのサウンドもまた驚くほどすばらしいもだ。日本に入ってまだ半年も経たないのに、その優秀性がきわめて短時間に轟きわたり金にゆとりある高級ファンの間にちょっとしたブームさえまき起こしている。
 その中をみると、回路設計の簡潔なこと。使われている部品が重点的に最高品質を用いることに徹底している。アースは太い線ではなく、ぶ厚い銅帯を用い、ハンダ付けだけでなくボルト締めを重ねている。放熱には細心の留意をされ作られているが放熱版材料はぜいたくではない。さて、この「アンプジラ」を設計したボンジョルノ氏は多くの高級アンプを設計したキャリアもあり、初めて自尽のブランドで商品化しただけに最高を狙ったという。だがこのアンプは今回の選択から意識的に外した。理由は、間もなくより優れた設計のサーボ・ループ方式に変更されるといわれるからだ。現在、A級ドライバーを含むDCアンプだが、もっと良くなってからにしよう。ただ、アンプジラの持つ特長の数々は、現代アンプの技術的な象徴といえることは確かだ。

アキュフェーズ C-200X

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 アキュフェーズのオリジナル・デビュー製品、C200のマイナーェンジのパネルデザインだが、中味は、メイジャーチェンジで生れ変ったもの。アキュフェーズらしい堅実だが、少々野暮な顔つきが特徴。しかし癖や嫌味がなく、仕上げのクォリティが高いので、長年使って、あきないはずだ。内容にほれ込めば、あばたもえくぼとなるだろう。価値ある製品だ。操作性も向上して、内容の充実にふさわしい質の高さだ。

音質の絶対評価:9

アキュフェーズ C-230

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菅野沖彦

'81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「'81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ブッシュボタン式の使いやすいパネルレイアウトは、上級機C240と共通のイメージだが、私は、あまりこのパネルは好きではない。決してセンスがよいとは思えないし、高級感があるわけでもない。もちろん、アキュフェーズらしい美しい作りだし、仕上げの質も高いのだが、魅力が感じられないのだ。機能性とオリジナリティは認めた上で好みの問題だ。操作性、感触は質が高く、緻密なクォリティを感じさせるものだ。

音質の絶対評価:7.5
瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

音質について
 良くできた製品とそうでない製品の聴かせる音質は、果物や魚の鮮度とうまさに似ているだろうか。例えばケンウッドL07Dは、限りなく新鮮という印象でズバ抜けているが、果物でいえばもうひと息熟成度が足りない。また魚でいえばもうひとつ脂の乗りが足りない、とでもいいたい音がした。
 その点、鮮度の良さではL07Dに及ばないが、よく熟した十分のうま味で堪能させてくれたのがエクスクルーシヴP3だ。だが、鮮度が生命の魚や果物と違って、適度に寝かせたほうが味わいの良くなる肉のように、そう、全くの上質の肉の味のするのがEMTだ。トーレンスをベストに調整したときの味もこれに一脈通じるが、肉の質は一〜二ランク落ちる。それにしてもトーレンスも十分においしい。リン・ソンデックは、熟成よりも鮮度で売る味、というところか。
 マイクロの二機種は、ドリップコーヒーの豆と器具を与えられた感じで、本当に注意深くいれたコーヒーは、まるで夢のような味わいの深さと香りの良さがあるものだが、そういう味を出すには、使い手のほうにそれにトライしてみようという積極的な意志が要求される。プレーヤーシステム自体のチューニングも大切だが、各社のトーンアームを試してみて、オーディオクラフトのMCタイプのアームでなくては、マイクロの糸ドライブの味わいは生かされにくいと思う。SAECやFRやスタックスやデンオンその他、アーム単体としては優れていても、マイクロとは必ずしも合わないと、私は思う。そして今回は、マイクロの新開発のアームコード(MLC128)に交換すると一層良いことがわかった。
 
デザインと操作性
 単に見た目の印象としての「デザイン」なら、好き嫌いの問題でしかないが、もっと本質的に、人間工学に立脚した真の操作性の向上、という点に目を向けると、これはほとんどの機種に及第点をつけかねる。ひとことでいえば、メカニズムおよび意匠の設計担当者のひとりよがりが多すぎる。どんなに複雑な、あるいはユニークな、操作機能でも、使い馴れれば使いやすく思われる、というのは詭弁で、たとえばEMTののレバーは、一見ひどく個性的だが、馴れれば目をつむっていても扱えるほど、人間の生理機能をよく考えて作られている。人間には、機械の扱いにひとりひとり手くせがあり、個人差が大きい。そういういろいろな手くせのすべてに、対応できるのが良い設計というもので、特性の約束ごとやきまった手くせを扱い手に強いる設計は、欠陥設計といえる。その意味で、及第点をつけられないと私は思う。適当にピカピカ光らせてみたり、ボタンをもっともらしく並べてみたりというのがデザインだと思っているのではないか。まさか当事者はそうは思っていないだろうが、本当によく消化された設計なら、こちらにそういうことを思わせたりしない。
 そういうわけで、音質も含めた完成度の高さではP3。今回のように特注ヘッドシェルをつけたり、内蔵ヘッドアンプを使わないために引出コードも特製したりという異例の使い方で参考にしたという点で同列の比較は無理としてもEMT。この二機種の音質が一頭地を抜いていた。しかし一方で、操作性やデザインの具合悪さを無理してもいいと思わせるほど、隔絶した音を聴かせたマイクロ5000の二重ドライブを調整し込んだときの音質の凄さは、いまのところ比較の対象がない。とはいってもやはり、この組合せ(マイクロ5000二重ドライブ+AC4000または3000MC)は、よほどのマニアにしかおすすめしない。
 これほどの価格でないグループの中では、リン・ソンデックの、もうひと息味わいは不足しているが骨組のしっかりした音。それと対照的にソフトムードだがトーレンス+AC3000MCの音もよかった。またケンウッドの恐ろしく鮮明な音も印象に深く残る。
黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 二本で五万円のスピーカーと、一本が五十万円もするスピーカーとを一緒くたにして、どっちがいいとかわるいとかいっても、意味がない。高価なスピーカーでも、ハシにもボーにもかからないものがるとしても、一応は、一本で五十万円もするスピーカーの方が、二本で五万円のスピーカーより、ききやすいといえそうだ。しかし、一本五十万円のスピーカーを買わずに、二本五万円のスピーカーを買えば九十五万円残る。九十五万円あれば、一枚二五〇〇円のレコードが三八〇枚も買える。一本五十万円のスピーカーが二本五万円のスピーカーよりレコード三八〇枚分のたのしみを与えてくれるかというと、ことは、いとも微妙になる。三八〇枚のレコードといえば、毎日三枚ずつきいても、ほぼ一二六日かかる分量だ。おおよそ四ヵ月あまり、毎日、新しいレコードをききつづけるというのは、なんともたのしいことだ。
 もっともこれは、質的な問題を量的な問題におきかえての、これといった足場のない考えでしかないが、そんなことを、ふと考えたくなるような価格差が、今回とりあげたスピーカーにあった。スピーカーとて、安ければ安いにこしたことはないが、どうも、そうは問屋がおろさないようで、やはり、高価格なスピーカーにこれはと思って耳をそばだてるようなものが多かった。まあ、当然のなりゆきというべきだろう。
 試聴中に、これならと思い、メモ用紙のすみに○印をつけたスピーカーを、継ぎに、ずらっと列記することにする。あらためていうまでもなく、安いスピーカーから高いスピーカーの順番になっている。
 もっとも、これらが「ベスト」というわけではないし、「私が推薦するスピーカーシステム」などといえるものでもない。この値段でこれだけきければ、まあまあじゃないか──といった、妥協の気持もあっての選択だ。いずれにしろ、オールマイティなどということはありえないわけだし、有限の、しかもかなりきびしい制限のある財布の中の金をつかって、決して安価とはいいがたいものを買い求めなければならないわけだから、どこでどう妥協するが問題だ。
 しかし、その中でも、JBL/4343は、普段、自分でつかっているものなので幾分気はひけるからそれないでおくとして、マランツ/Model920ヤマハ/FX1には、特に心をひかれた。マランツの、もってまわらない、すっきりした反応は、大変このましかった。このスピーカーは、多分使いやすいスピーカーといえるのではないだろうか。ヤマハには、高い方の一部にちょっと癖がなくもないようだが、このスピーカーがきかせてくれた質的に高い音は、なかなか魅力的だった。もう少し安ければいいのにな──というのが、いつわらざる感想だ。それにもうひとつ、安い方では、JRのJR149を、あげておこう。このスピーカーの音でいいところは、ひびきがくぐもらないところだ。見ためはちょっと風変りだが、でてくる音は実にまっとうだ。

ビクター S-3000

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶くっきりと示されるピッチカート。木管のひびきにもう少し繊細さがほしい。
❷あいまいにならず、輪郭がしっかり示されるところがいい。音に力がある。
❸特にデリケートとはいえないが、ひびきの特徴によく対応できている。
❹第1ヴァイオリンのたっぷりしたひびきがいい。低音弦もふくらまず。
❺もりあがりに力があり、迫力をよく示す。アタックも充分だ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像的なまとまりがよく、ひびきに力のあるのがいい。
❷これみよがしにならずに、くっきりと示すこのましさがある。
❸「室内オーケストラ」としてのまとまりのよさがある。
❹対応が自然で、誇張のないのがこのましい。
❺とりわけ繊細というわけではないが、さわやかさがある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶定位がいい。人間関係の鮮明な提示はなかなかだ。
❷接近感には多少誇張が感じられるが、不自然ではない。
❸声は硬めながら、オーケストラとバランスは悪くない。
❹セリフでの声も、うたってはった声も、硬くなりがちだ。
❺きわだって鮮明とはいいがたいが、必要充分に各ひびきを示す。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶余分なひびきをひきずっていないために、すっきりしている。
❷奥の方でのひびきが、くっきりと、たちあがる。
❸ひびきの細部にあいまいさがない。
❹ソット・ヴォーチェでは、声のキメ細かさの不足が感じられる。
❺のびにしなやかさが不足するものの、誇張がない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンというひびきの硬質な性格がよく示されている。
❷声のまろやかさがもう少し示されることが望まれる。
❸浮遊感ということではもう一歩だ。ひびきがくっきりしすぎる。
❹ひびきの輪郭がつきすぎている。狭くるしさは感じないが。
❺力のある音がもりあがり、迫力のあるクライマックスとなる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひっそりとした気配にいくぶん不足している。
❷この音はもう少しなにげなくひびいてもいいだろう。
❸下の方でひろがっているひびきで、実在感に多少欠ける。
❹かなりきわだつ。ひびきの光り方としては、もう一歩だ。
❺うめこまれているとはいえないが、ききとりにくい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶あいまいにならない。くっきりした提示はこのましい。
❷ひびきの上でのアクセントを充分に示して効果的だ。
❸ひびきはじゅうぶんに乾いている。すっきりしたところがいい。
❹ドラムスのひびきも、言葉のたち方もこのましい。
❺バック・コーラスの効果は充分に発揮されている。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は、ふくらみすぎず、ひびきに力があっていい。
❷オンでとったなまなましさを示し、しかし過剰にはなっていない。
❸消える音の尻尾もよく示し、スケール感をもたらすのに有効だ。
❹細かい音の動きに対しての対応はシャープで、迫力がある。
❺音像的な対比に不自然さがなくていい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきが横にひろがりすぎないので、アタックの強さを感じやすい。
❷つっこみは力があるが、ひびきが刺激的にはなっていない。
❸ひびきが積極的に前にはりだして、効果的である。
❹後方へのひきは充分だ。広々とはしないが、音の見通しはいい。
❺音のエネルギー感をよく示すので、めりはりがつく。

座鬼太鼓座
❶くっきりと左奥から、なまなましさをもってきこえてくる。
❷尺八のひびきに脂っぽさがなくて、すっきり示される。
❸きこえ方はかすかだが、ひびきに輪郭がある。
❹スケール感ということでは、いま一歩だが、力感は充分だ。
❺このひびきの硬質なところがよく示されて、有効だ。

スペンドール BCII

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるいさわやかな音のピッチカートだ。少し細すぎるかもしれない。
❷輪郭はしっかりしているが、ひびきにもうひとつ力がほしい。
❸それぞれのひびきの特徴を鮮明に示してこのましい。
❹第1ヴァイオリンの音にもう少し艶がほしい。低音弦のまとまりはいい。
❺もりあがり方に無理はない。クライマックスで示される力も一応のものだ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ひびきはさわやかで、音楽的なまとまりもいい。
❷音色的な対比は鮮明だが、ふかぶかしたひびきがほしい。
❸「室内オーケストラ」ならではの軽やかさは示す。
❹きわめてさわやかだ。すっきりとした提示はこのましい。
❺鮮明だ。軽く、キメ細かいひびきがいきる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶定位は大変にいい。一種なまなましさもある。
❷言葉が、重くならず、しかもすっきりたつ。
❸少し後にひきぎみのロザリンデとクラリネットの対比がとてもいい。
❹はった声がしなやかさを失わないのはいい。表情の誇張がない。
❺うたいてとオーケストラとのバランスがよくとれている。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶ひびきに軽やかさと敏捷さがあるために、不自然さがない。
❷声量をおしたからといって、言葉が不鮮明になったりしない。
❸残響がまったく切りおとされているというわけではないが、言葉は鮮明だ。
❹各声部のからみを不明瞭になることなく示す。
❺声のしなやかさを示しつつ、自然にのびる。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンの硬さとポンの柔らかさの対比を充分につける。
❷後方からのきこえ方は、ひろがりを感じさせてこのましい。
❸浮遊感は充分だ。ひびきにべとつきがないためといえよう。
❹充分に前後のへだたりがとれている。ひろがりの点でも不足ない。
❺ピークでは少しきついが、ぬけはいい。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶はるけきひびきが、静かに、ひろがり、さわやかだ。
❷その中央から、次第に姿を拡大してくるギターのひびきが効果的だ。
❸くっきりとひびきの輪郭を示して、まことに効果的である。
❹ここでのひびきに輝きがある。アクセントをつけている。
❺うもれない。しかし、きわだちすぎない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきの特徴をすっきりと示す。
❷もう少し力強くてもいいが、一応の効果はあげる。
❸ひびきは、乾いているが、薄くないのがいい。
❹くっきりはずんだひびきで示されるドラムスがいい。
❺バック・コーラスによる言葉のたち方は自然だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像的にかなりふくらむ。少しふくらみすぎか。
❷オンでとったなまなましさがあり、しかし極端にならないのがいい。
❸音の消え方の提示にこだわりすぎているのかもしれない。
❹少し甘い。ひびきそのものに力不足なところがあるからだろう。
❺音像的な対比ということでは、充分とはいいがたい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきに、腰のすわった力があれば、さらにはえただろう。
❷一応つっこんではくるが、ひびきは金属的になりがちだ。
❸拡大して示すものの、せりだしてはこない。
❹前後のへだたりを示し、見通しの点でも悪くない。
❺アタックの強さを示しきれず、めりはりがつきにくい。

座鬼太鼓座
❶すっきり示す。程よい距離感も示せている。
❷ひびきのキメ細かさが、ここでは有効な働きをしている。
❸一応きかせはするが、輪郭はあいまいだ。
❹スケールのゆたかさは、ついに示しきれない。
❺きこえはするが、ひびきのアクセントたりえない。

ルボックス BX350

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶からっとしたひびきで示されるピッチカート。あいまいさのないのがいい。
❷くまどりたしかな、力をもったスタッカートだ。音に力がある。
❸拡大して示しはするが、ひびきの特徴をよくとらえている。
❹腰のすわった第1ヴァイオリンのひびきはなかなか魅力的だ。
❺クライマックスは力にみちているが、弦にはもう少ししなやかさがほしい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像はくっきりしている。たしかなひびきがいい。
❷必要充分に音色的対比を示してこのましい。
❸さわやかさが感じられる。ひびきのふくらみすぎないのがいい。
❹これみよがしにならず、きれいに示す。
❺フルートのひびきがさわやかでいい。あいまいにならないよさがある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶舞台のひろがりを感じさせるひびきだ。声は少し硬めだが。
❷接近感を、無理なく、自然に、なまなましく示す。
❸声とオーケストラのバランスは折目正しく、すっきりさわやかだ。
❹うたう声も硬めだが、言葉のたちあがり方はいい。
❺声と楽器のひびきのとけあい方が自然だ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶定位がいい。横一列に並んでいる感じがわかる。
❷余分なひびきをひきずっていないので、言葉は鮮明だ。
❸言葉の輪郭をくっきり示すが、几帳面にすぎるかもしれない。
❹ソット・ヴォーチェになった時に、もう少し声のまろやかさがほしい。
❺音の消え方が幾分段取り的になりがちだ。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的にも、音場的にも、充分にコントラストがついている。
❷奥へのひびきが充分で、シンセサイザー固有のひびきへの対応もいい。
❸浮遊感は必ずしも充分とはいえない。提示される空間は広い。
❹前後のへだたりがとれている。ひびきの明るさがいい。
❺ピークで示される力は充分だ。ひよわにならないよさか。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶奥の方で左右に、かすみがたなびくようにひろがる。
❷❶の中央から力をもったひびきで次第に前におしだしてくる。
❸ひびきの特徴を確実におさえたよさがある。
❹ひびきに充分な輝きがあり、効果的だ。
❺うめこまれてはいないが、ことさらきわだつわけではない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶くっきり思いきりのいいひびきが、ここでいきる。
❷サウンドに厚みが感じられ、ここで求められる効果が感じとれる。
❸ひびきの特徴の示し方にあいまいさがなく、このましい。
❹ドラムスのつっこみは、力があり、みごとだ。
❺言葉は、いささかもあいまいにならず、すっきりたつ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶中身がぎっしりつまった筋肉質なひびきのよさがいきる。
❷オンで録音したが故のなまなましさを示すが、誇張感はない。
❸必ずしも消える音の尻尾を充分に示すとはいえない。
❹細かい音の動きに対しての反応はシャープで、効果的だ。
❺不自然な音像差がなく、ひびきに力が感じられる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックの強さを充分に感じさせてこのましい。
❷ブラスのつっこみは、鋭く、前にでる。
❸前に力をもってはりだして、効果的である。
❹後方へのへだたりがとれ、音の見通しはきわめていい。
❺力感があり、くっきりとめりはりをつける。

座鬼太鼓座
❶自然な距離感を、無理なく示す。しかもすっきりとした提示だ。
❷尺八のひびきとしては、いくぶん異色ながら、まずまずだ。
❸ここでのひびきの輪郭を強調しすぎているかもしれない。
❹ひびきは力をもって特徴的だが、大太鼓らしさは稀薄だ。
❺くっきりと示して、充分に効果をあげる。

セレッション Ditton 33

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ひびきが薄い。ピッチカートは音が糸の上をわたっているかのようだ。
❷ひびきはふくらみがちで、本来の力に不足する。
❸フラジオレットのひびきがその特徴を強調する。
❹多少これみよがしに第1ヴァイオリンがひびく。表情を誇張ぎみだ。
❺高音弦が幾分メタリックにひびき、迫力に欠ける。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、かなり大きくふくらむ。
❷音色的特徴を拡大して示す傾向がなくもない。
❸ひびきがふくらみすぎる。もう少しキメ細かさがほしい。
❹ひびきの特徴を示しはするが、これみよがしになりがちだ。
❺ソロをとる楽器がきわだって前にでる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声は風呂場の中のようにきこえて自然でない。
❷接近感をこれみよがしに示すが、音像は大きい。
❸うたった声も風呂場の中のようだ。クラリネットは音色を誇張する。
❹声のなめらかさがなく、はった声はメタリックになる。
❺ひびきをばらばらに示して、とけあう感じが不足する。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の音がふくらみがちで、鮮明さに欠ける。
❷あたかも声が余分なひびきをひきずってきているかのようだ。
❸言葉のたち方が充分でないところがある。
❹ひびきに軽やかさがたりないので、明瞭とはいいがたい。
❺のびてはいるが、自然なのびとはいいがたい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色対比を、これみよがしに示すにとどまる。
❷奥へのひきはとれるが、クレッシェンドに自然さが欠ける。
❸浮遊感は一応示すが、提示される空間は、むしろ横にひろがりがちだ。
❹前の音と後の音との間で質的に違うところがある。
❺ピークでは硬く、メタリックなひびきになりがちだ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのひびきは、かすかとはいいがたく、かなり積極的だ。
❷ギターの音像が大きいので、せりだしてくる効果がいきない。
❸ひびきに力がないので、空虚さがついてまわる。
❹きわめて特徴的なひびき方をする。このひびきがきわだつのは事実だが。
❺くっきり、きわめて特徴的にくっきり示される。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶バスが強調されがちで、そのためにさわやかさに欠ける。
❷ここで求められる効果は示すが、いかにもひびきが重い。
❸ひびきが充分に乾いているとはいいがたい。
❹ドラムスのひびきは、ひきずりがちでシャープさがたりない。
❺言葉がもう少しすっきりたってくれた方がいい。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像が極端に大きい。ひびきに力がほしい。
❷いくぶん拡大気味に示すが、なまなましいとはいいがたい。
❸音の尻尾は充分に示すものの、それがスケール感の提示にはならない。
❹反応がさらにシャープなら、より一層の迫力をうみだせるのだろうが。
❺音像的な対比の点で少なからぬ問題がある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきのひろがりは示すが、ドラムスのつっこみに鋭く反応してほしい。
❷太くひろがってきこえてくるので、本来の効果から遠い。
❸大きく横にひろがるものの、はりだすわけではない。
❹もうひとつひきが充分でない。ひびきの目がかなりつんでいる。
❺ひびきがさらにこりっとするといいのだろうが。

座鬼太鼓座
❶尺八は比較的近いところにいる。音像も大きい。
❷脂っぽくなっているわけではないが、かなりふくれている。
❸きこえる。音の輪郭はさだかでなく、ぼやけがちだ。
❹ひびきはひろがるものの、力感の提示で不足する。
❺このひびきに硬質なところがあるとさらに効果的なのだろうが。

B&W DM4/II

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるい、すっきりしたピッチカート。ひびきに力がある。
❷くっきりと、力がある音をきかせて効果的だ。
❸各楽器の特徴あるひびきを鮮明に示す。
❹第1ヴァイオリンのひびきにもうひとつキメこまかさがほしい。
❺クライマックスへのもりあげ方にはあまり無理を感じさせない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音に力は感じられるが、音像は大きめである。
❷音色的な対比、あるいはバランスといった点で好ましい。
❸いくぶん響きが、拡大しがちで、さわやかにかける。
❹きわだつが、わざとしらさがついてまわる。
❺はりだし気味であり、多少誇張感がある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶表情を強調ぎみに示す傾向があるが、鮮明ではある。
❷接近感をよく示しはするが、オン・マイク的である。
❸クラリネットの音色の特徴は強調して示される。
❹はった声は、硬くならないが、声本来の艶がなくなる。
❺個々の響きを分解して示す傾向がある。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶凹凸はないが、響きがぼってりしがちである。
❷声量をおとしたことに呼応して、言葉のたち方が弱くなる。
❸残響の強調がマイナスに働いて、言葉の細部があいまいになりがちだ。
❹各声部のからみが鮮明に示せているとはいえない。
❺のびてはいるものの、いくぶん不自然なところがある。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的なへだたりを特にきわだたせる。
❷クレッシェンドのしかたが、多少わざとらしい。
❸響きは横にひろがるが、奥行きが不充分で、浮遊感もたりない。
❹前後のへだたりはかならずしも充分とはいえない。
❺階段を一段ずつあがるようにふくらむ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶横に力をもってひろがったひびきには一種のたくましさがある。
❷ギターの音像は、さらに小さくすっきり、中央に定位するのが望ましい。
❸ひびきの輪郭があいまいになりがちなので、はえない。
❹かなりはりだす。このひびきの特徴を拡大して示す。
❺きこえることはきこえるが、めだつとはいえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶響きの重心が低い方にかたよっている。
❷必ずしも厚みを示すことにはならず、ばらばらになりがちだ。
❸べとつかないのはいいが、さわやかとはいえない。
❹響きに力が不足しているので、十全な効果をあげえない。
❺言葉のたち方が弱く、バック・コーラスの効果も不充分だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶大きな箱の中でひびいているかのようにきこえる。
❷必ずしも強調感があるとはいえないが、もう少しなまなましさがほしい。
❸消えていく音をきわだたせる傾向がある。
❹反応がシャープでないために、あいまいになる。
❺特に音像的なバランスに自然さがたりない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶響きの切れが鈍いためか、もったりとする。
❷積極的ではあるが、響きに力がたりないので、刺激的になる。
❸かなり前の方にはりだすが、もう少しくっきりしてほしい。
❹奥行きが充分にはとれず、音の見通しがあまりよくない。
❺響きがぼやけ気味のためか、めりはりの点でもうひとつだ。

座鬼太鼓座
❶かなり前の方にはりだしていて、距離感があいまいになる。
❷脂っぽさはないが、尺八の音色を十全に示しているとはいいがたい。
❸きこえることはきこえるが、いくぶんあいまいだ。
❹響きに、かさかさしたところがあり、力強さがたりない。
❺音色的な対比の点で必ずしも充分とはいえない。

ボリバー Model 18

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるくすっきりきこえるピッチカート。
❷奥の方でくっきりと示される。力強いとはいえないが。
❸個々のひびきに一応対応するが、積極的とはいいがたい。
❹低音弦のピッチカートはふくらみすぎる。
❺クライマックスでは、ひびきが空虚になり、刺激的になる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像が大きめで、響きにまろやかさがたりない。
❷ファゴットが、どういうわけか、ひっこみがちである。
❸響きが、ふくらみずき、重くなる傾向がある。
❹ひっこんで、はえない。さわやかさがほしい。
❺音色的な対比が、さらにすっきりついてもいいだろう。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声の自然なのびは示す。表情は幾分濃くなる。
❷接近感は示すが、音像が大きいので、充分な効果をあげるとはいえない。
❸声がひっこみ、クラリネットがふくらんで、バランスに問題がある。
❹はった声が硬くならないのはいいが、艶をなくす傾向がある。
❺響きはよくブレンドしているが、効果的とはいえない。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方のパートが、きわだつ傾向がある。
❷声量をおとしたことが、強調されるように感じる。
❸残響がまといついているとでもいうべきか。
❹鮮明さが不足するために、響きの綾がはっきりしない。
❺のびてはいるが、必ずしも効果的とはいえない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比はついているが、音場的にいかにも狭い。
❷後へのひきが充分でないために、効果があがらない。
❸ひびきが充分に浮いているとはいいがたい。
❹横へのひろがりは示すが、前後のへだたりはつまりぎみである。
❺ひびきの力のないことが、マイナスに働いている。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ここでのひびきにしては湿度は高すぎるようだ。
❷ギターの音像は大きめなために、せりだしの効果がいきない。
❸もう少しくっきり示されないと、あいまいになる。
❹きこえるものの、ひびきに輝きがたりない。
❺一応きこえはするが、うめこまれがちで、はえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースの響きが強調されて、12弦ギターの響きの特徴がいきない。
❷響きの重心が低い方にかかりがちで、さわやかさにかける。
❸響きの乾き方が不足だ。全体に重くひきずりがちである。
❹ベース・ドラムは重くひびいて、充分な効果をあげえない。
❺言葉のたち方が、不充分である。バック・コーラスの効果は稀薄だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶入れものの中でのように響いて、力感が感じられない。
❷もうひとつ鮮明に、くっきり示してもいいだろう。
❸音の消える尻尾は、不鮮明で、はっきりしない。
❹鋭く反応できているとはいいがたい。下にいくほどひきずりがちだ。
❺音像的に差がありすぎるので、不自然である。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶響きは、切れが鈍く、重い。もっとシャープでもいいだろう。
❷どういうわけか、細く、弱々しくなる。
❸響きに本来の力が不足しているので、効果がいきない。
❹さまざまな響きがいりまじって、音の見通しがつきにくい。
❺もう少しめりはりがくっきりついてもいいだろう。

座鬼太鼓座
❶奥へのひきがとれないためか、かなり前の方にでてくる。
❷尺八の音は、もう少し乾いて、脂っ気のない方が望ましい。
❸きこえることはきこえるが、くっきりととはいいがたい。
❹一応の響きの広がりは示すが、スケールゆたかにとはいいがたい。
❺この響きの特徴である硬質さが充分に示せているとはいえない。

デンオン SC-105

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるくひびくピッチカートの音。木管の音色の特徴もよく示す。
❷くっきりきこえる。響きの重さを強調しないよさがある。
❸さまざまなひびきの特徴を鮮明に示す。
❹キメこまかなひびきをきかせる第1ヴァイオンのフレーズ。
❺刺激的にならず、一応のゆたかさもあり、好ましい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は小さく、くっきりして、さわやかである。
❷音色的な対比を、誇張感なく、さわやかに示す。
❸「室内オーケストラ」の響きの特徴をよく伝える。
❹薄味ながら、すっきりと示して、効果的だ。
❺独特の鮮明さがあるものの、ことさらはりだしてはいない。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声に強調感がなく、自然に、のびやかにきこえるのがいい。
❷接近感をくっきり、誇張感なく示すのがいい。
❸クラリネットの音色はまろやかでこのましい。
❹はった声は硬くなりがちだが、通常の声はしなやかでいい。
❺バランスが自然で、響きの明るいのがいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶上下の音のバランスがいいので、凹凸がない。
❷声量をおとしたことを、特に意識させない。
❸残響の強調がないために、すっきりときこえる。
❹響きはいくぶん重めだ。もう少しぜい肉がとれてもいい。
❺自然なのびで、すっきりとまとまっている。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色対比も、音場的対比も、充分に示されている。
❷ひびきは、不自然になることなく、ひっそりとしのびこむ。
❸ひびきのとびかい方に軽さがあるので、広々と感じられる。
❹前後のへだたりは、充分に示しえている。
❺ある種の鮮明さは保つものの、ピークではきつくなる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひびきの透明感はある。ひろがりを示しえている。
❷ギターの音像が大きくふくらんでいないのがいい。
❸ふくらみすぎず、くっきり示されて、きわめて効果的だ。
❹輝きをもって響いて、充分に効果的である。
❺うめこまれることなく、きわだってきこえる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶上下のバランスがよく、12弦ギターの特徴をよく示す。
❷独自の効果によく対応して、効果をあげる。
❸響きは乾いていて、反応もシャープである。
❹ベース・ドラムの、力があって重くならない音がいい。
❺言葉はよくたって、鮮明だ。バック・コーラスの効果も示す。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ふやけることのない響きで、力強さをよく示す。
❷なまなましさを感じさせはするが、誇張感はない。
❸音の消え方には、独特の自然さがあって好ましい。
❹シャープに反応できているので、迫力も一応示す。
❺音像的対比の点でもさしたる問題はない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶軽い音で鋭く反応しているので、ききやすい。
❷つっこみの鋭さは充分に示されているが、力感の点では多少不足だ。
❸必ずしも積極的とはいいがたいが、一応の効果はあげる。
❹奥行きがとれていて、音の見通しがつきやすい。
❺めりはりをくっきりつけて、あいまいにならない。

座鬼太鼓座
❶奥行きがとれているので、広がりが感じられる。
❷尺八の響きの特徴をよく示して、好ましい。
❸過不足なく自然なバランスでききとれる。
❹一応のスケール感も示し、消える音の尻尾も明らかだ。
❺くっきりきこえて、効果をあげている。

ヤマハ NS-10M

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートの響きは、薄く、細く、力に不足している。
❷あいまいにはなっていないが、低音弦の力が感じとれない。
❸フラジオレットの特徴的な響きは、はっきりしない。
❹第1ヴァイオリンの響きに艶がなく、かさかさしている。
❺かん高い響きで、刺激的になり、なめらかさがたりない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像が大きくないのがいいが、ピアノ本来の力が感じられない。
❷音色的対比は、薄味だが、くっきりついている。
❸ふくらみすぎないのはいいが、響きがいかにも粗い。
❹すっきりときこえはするが、いかにも薄味である。
❺音色対比をくっきりつけて、さわやかである。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶接近感を充分に示すが、風呂場の中の響きのようだ。
❷まずまずというべきだろう。定位もいい。
❸響きが乾きすぎるためか、キメが粗くなる。
❹硬く、細く、刺激的になるのがおしまれる。
❺オーケストラ本来の響きの広がりに不足する。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶すっきり横に並んでいるとは感じとりにくい。
❷不鮮明にはなっていない。響きのたちも悪くない。
❸残響を強調していない好ましさがある。
❹明瞭ではあるが、響きが、もう少しとけあってもいい。
❺響きののびは、充分で、ある程度のしなやかさがある。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶広がりは必ずしも充分とはいえない。音色対比もいま一歩だ。
❷もう少ししなやかさがほしい。響きが硬い。
❸浮遊感がもう少しあるといい。めりはりをつけすぎているためか。
❹前後のへだたりは示されず。横にはひろがるが。
❺ピークでは、やはり刺激的な響きになる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶響きに透明感はあるが、広がりがたりない。
❷音像的に横に広がるので、効果的とはいいがたい。
❸響きのふくらみが不充分なため、本来の効果から遠い。
❹きわだってきこえて、エフェクティヴである。
❺うめこまれないで、響きの特徴を示す。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースが不足ぎみなで、ギターの音がきわだつ。
❷ひびきの厚みはかならずしもあきらかになっていない。
❸はっきりときわだつ。低い音とのバランスは必ずしもよくない。
❹乾いているというより、薄く、軽すぎる。
❺刺激的なひびきになり、バック・コーラスの効果が稀薄だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶入れものの中でひびいているかのようだ。
❷指が弦の上をすべる音はきこえる。一応のなまなましさがある。
❸響きの消え方は、ほとんどききとれない。
❹くっきり示しはするが、力感にとぼしい。
❺あたかも別の楽器ででもあるかのようにきこえる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ドラムスのアタックの強さが充分に示されない。
❷鋭さと、響きの輝きはあるが、刺激的になる。
❸充分にはりだしてはするが、わざとらしさがついてまわる。
❹後へのひきが充分にとれているとはいえない。
❺あいまいにならないのはいいが、迫力は感じとりにくい。

座鬼太鼓座
❶ひきがもうひとつたりない。比較的手前できこえる。
❷ひびきが脂っぽくなっていないところはいい。
❸一応はきこえはするが、きわめてかすかだ。
❹響きの消え方は、ほとんどききとれない。
❺かすかにきこえはするものの、なまなましさにとぼしい。

JR JR149

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきはあかるい。音色の対比は充分についている。
❷力強さに不足するところがあるが、ひびきのくまどりはたしかだ。
❸それぞれの特徴的な音色をすっきりと提示する。
❹低音弦のピッチカートが幾分ふやけがちなのがおしい。
❺迫力の点でもう一歩だが、鮮明なよさがある。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像が大きくならないが、ひびきのゆたかさに欠ける。
❷音色的対比は充分についていて、鮮明だ。
❸ひびきがふやけないので、「室内オーケストラ」の感じをよく示す。
❹これみよがしにならず、しかもすっきりと示されていて好ましい。
❺鮮明であり、さわやかで、よく対応できている。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶余分な音がまといつかず、すっきりときこえるよさがある。
❷さわやかに提示されて、声のなまなましさを感じさせる。
❸声と各楽器の音色的なバランスは、このましい。艶に不足するが。
❹声が幾分細くきこえて、はった声はかんだかく感じられる。
❺オーケストラのひびきの細部をさわやかに示す。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶すっきりしているが、ひびきが乾きすぎていないのがいい。
❷声量をおとした感じが、くっきりと示される。
❸残響をほどよくたち切って、言葉をたたせている。
❹個々のパートの音のからみをかなり鮮明に示す。
❺自然なのびやかさがあり、しかもしなやかだ。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比は充分についている。音場的にもまあまあだ。
❷クレッシェンドも自然で、きれいにまとまる。
❸すっきりとしていて、しかも乾きすぎていないのがいい。
❹前後のへだたりが充分にとれているのでひろびろと感じられる。
❺しのびこみ方はひっそりとしていて美しい。ピークも一応こなす。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶にごり、しめりけのないひびきが、後方で、心地よくひろがる。
❷❶の音との対比が充分についていて、せりだし方は実に効果的だ。
❸音の輪郭がはっきりしているので、流れの上でのアクセントたりうる。
❹このひびきの特徴である輝きがきれいに示される。
❺すっきりきこえる。わざとらしくならないのがいい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースとのバランスがいい。12弦ギターの特徴をよく示す。
❷ここで求められている効果をつつがなく示す。
❸すっきり、ぬめりのないひびきで、示されている。
❹ひびきに力があり、言葉のたち方にも問題がない。
❺バック・コーラスの効果もよくいかされている。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶迫力は誇示しないが、一応の力は伝える。
❷過度にならないよさというべきか。ほどほどのなまなましさだ。
❸消える音の尻尾の提示は充分とはいえない。
❹シャープに反応して、充分な効果をあげている。
❺対比は、実に自然で、無理がなく、好ましい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶鋭さは特徴的だ。もう少し力強くてもいいが。
❷輝きは申し分ないが、力の提示はもう一歩だ。
❸いくぶんつつましげではあるが、一応有効だ。
❹後方へのひきがとれていて、見通しはいい。
❺あいまいになることなく、めりはりをつける。

座鬼太鼓座
❶自然な距離感を示し、したがってひろがりも感じられる。
❷尺八の音色的特徴をさわやかなひびきで示す。
❸きこえるものの、ことさら誇張はしない。
❹スケールゆたかなひびきとはいいがたい。
❺かすかであり、しかも自然で、アクセントたりえている。

スペンドール SA-1

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ひびきはあるかいが、薄く、細すぎるということもできるだろう。
❷くまどりはついているが、やはりもう少し力がほしい。
❸特徴的なひびきの対応のしかたにはかなり敏感なところがある。
❹第1ヴァイオリンのフレーズにたっぷりしたところが不足している。
❺本来の迫力を示しえず、クライマックスでヒステリックになる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像がふくらまないのはいいが、ひびきがやせている。
❷音色的な対比を、薄味なひびきだが、充分に示す。
❸細やかなあじわいはあるものの、しなやかさが不足している。
❹すっきりさわやかで、大変に好ましい。
❺さらにしなやかなところがあればいいのだが。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶余分なひびきがついていないなまなましさがある。
❷接近感をくっきり示すこのましさがある。定位はきわめていい。
❸クラリネットのひびきはもう少しまろやかでたっぷりしていてもいい。
❹はった声が硬くならないのは大変にいい。ただ、細めだ。
❺バランスがいいので、ききやすい。鮮明なよさもある。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶並び方に凹凸がなく、すっきりしていて、定位に問題はない。
❷声量を落としたのがわざとらしくならずに、その効果がいきている。
❸言葉のたち方は十全で、あいまいさはない。
❹各パートのからみを、すっきりと、あいまいにならずに示す。
❺自然なのびがある。無理のないところがいい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的にも、音場的にも充分にコントラストがついている。
❷クレッシェンドにとってつけたような不自然さのないのがいい。
❸ひびきの浮遊感は充分だ。せまくるしくなっていない。
❹前へのせりだしはいくぶん不足するが、奥へのひきは充分だ。
❺ピークになると、とたんにひびきがとげとげしくなる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶白っぽいひびきでの後方でのしろがりは美しい。
❷もう少しくっきりひびいてもいいだろう。音に力がほしい。
❸ききとれるが、低い方のひびき方に空虚さがある。
❹輝きという点で、いくぶんものたりないところがある。
❺きこえなくはないが、うめこまれがちである。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶音にもうひとつ力がないので、軽くなりすぎている。
❷ここで求められている効果が充分に発揮されていない。
❸ひびきがいかにも薄く、力不足なのがおしい。
❹ベース・ドラムの音が乾きすぎていて、パサパサしている。
❺言葉のたち方は一応だが、楽器とのバランスがよくない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶あたかも何かの入れものの中でひびいているようだ。
❷一応示しはするものの、本来のなまなましさはない。
❸消える音の尻尾は、ほとんどききとれないといってもいいほどだ。
❹ひびきそのものに力がないためだろう、あいまいになりがちだ。
❺音像対比の点で、少なからず問題がある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックの強さの提示が充分でないために、めりはりがつきにくい。
❷ブラスのきこえ方が、ヒステリックになっている。
❸一応前の方にはりだすことははりだすが、空騒ぎめく。
❹へだたりはとれているものの、トランペットのひびきはかん高い。
❺あいまいではないが、反応は甘くて、しまらない。

座鬼太鼓座
❶一応の距離感は示せて、ひろがりは感じられる。
❷脂っぽさはないが、尺八らしさが充分とはいえない。
❸きこえることはきこえるものの、何の音かさだかでない。
❹さらにスケールゆたかにひびいてほしい。
❺いくぶんここで音は、くすんできこえる。
黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶自然にひびくピッチカート。強調感のないのがいい。
❷あいまいにならず、力を感じさせる低音弦のひびきがきける。
❸フラジオレットの音色はきわだたず、ひかめにしかきこえない。
❹たっぷりしたひびきの第1ヴァイオリン。ピッチカートはふくらむ。
❺クライマックスにいたるクレッシェンドは自然で、無理がない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音のまろやかさが、特徴的であり好ましい。
❷音色対比がきわめて自然で、しかも鮮明である。
❸響きのとけあいが、よく示されて、ききやすい。
❹響きに自然なのびやかさがあり、好ましい。
❺木管楽器のしなやかな響きをよく示す。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声のまろやかさを、誇張感なく自然に示す。
❷強調感なく、しかも広がりが感じられる。
❸各楽器の響きのとけあい方がいい。声とのバランスもこのましい。
❹はった声が硬くならず、はなはだききやすい。
❺バランスが自然で、無理なく、さまざまな響きがとけあう。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶凹凸の感じられないのはいいが、響きは重い。
❷言葉はあいまいにならないものの、全体に重い。
❸残響の誇張はなく、声のまろやかさをよく示す。
❹鮮明さということで、ものたりないところがある。
❺のびやかで、しなやかで自然なのびを示す。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比をくっきり示すが、音場的にはせまくるしい。
❷音のしびこみは、きわめてしなやかでいい。
❸浮遊感があり、スタティックにならないよさがある。
❹もう少しへだたりが示されてもいいだろう。
❺ピークは、力をもって、おしだしてくる音によっている。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶響きに軽みがたりない。広がりの点でももう一歩だ。
❷もともとの音像は大きめだが、せりだしてきかたはない。
❸響きが自然なふくらみを示し、効果的である。
❹すっきりときわだってきこえて、成果をあげる。
❺これみよがしにではないが、きこえる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶響きがまろやかではあるが、ここで特徴的な音色を示す。
❷腰のすわった音で、響きの厚みと、力とを明らかにする。
❸響きは決して湿っていない。効果的である。
❹力のある音がいい。言葉もたって、ききやすい。
❺声と他の楽器のバランスが自然でこのましい。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶筋肉質の音で、力感ゆたかに示される。
❷部分拡大になりすぎていないところがいい。
❸響きの消え方は、充分とはいえず、ものたりない。
❹細かい音の動きには充分に対応できている。
❺音色的対比は充分だが、音像対比の点でものたりない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックの強さは示すが、響きは重い。
❷力感のあるブラスで、かなりの効果をあげる。
❸きわだたせるものの、刺激的にはならない。
❹響きのめがつみすぎているために、はれやかさが不足する。
❺ぼてついてはいないが、さらにシャープでもいいだろう。

座鬼太鼓座
❶一応の距離感はとれて、広がりが感じられる。
❷響きがキメ細かく、しかも尺八らしさを示して好ましい。
❸特にきわだってはいないが、一応ききとれる。
❹このスケールゆたかな響きには、対応しきれていない。
❺充分にきこえる。しかもエフェクティブである。

サンスイ SP-L150

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶しめったピッチカート。もう少しくっきりひびいてもいい。
❷ひびきがふくらみぎみなので、くっきりしない。
❸音色的な対比がもうひとつすっきり示されるべきだろう。
❹第1ヴァイオリンのひびきがかさかさしがちだ。
❺ひびきに一応の力はあるが、高い音が刺激的になる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、いくぶん大きめである。
❷音色的な対比を示すものの、もう少しキメ細やかでもいいだろう。
❸響きが重くなっていないところはいいが、多少硬めだ。
❹もう少ししなやかさがあるとさらに効果的だろう。
❺鮮明ではあるが、柔らかさが望まれる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声にもう少しまろやかさがあるといいのだが。
❷接近感を強調ぎみに示す。表情はかなりオーバーだ。
❸クラリネットの音色がロザリンデの声におさえぎみである。
❹はった声は、かたくなり、金属的になる傾向がある。
❺もう少しさまざまな響きのとけあい方がしめされるといい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声がいくぶん強調気味になる。
❷声量をおとしたところから、言葉が鮮明さを欠くようになる。
❸残響をひきずっていないところは好ましいのだが......。
❹各パートの織りなす綾がもうひとつすっきりしない。
❺一応ののびは示されるものの、しなやかさがほしい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的対比が充分について、かなり効果的である。
❷くまどりがいくぶんきつすぎるための不都合がなくもない。
❸響きは浮遊するものの、キメがいくぶん粗い。
❹もう少し前後のへだたりがくっきり示されるといいのだが。
❺音のしのびこみは自然だが、ピークはきつい音になる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶もう少し響きに透明感がほしい。広がりもいま一歩だ。
❷中央からきこえるが、音像ははじめからひろがりぎみだ。
❸広がりがたりないので、効果ということで、ものたりない。
❹響きの輝きをよく示し、全体の流れの中でのアクセントたりえている。
❺うめこまれずに、くっきりと示されている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターの響きの特徴をよく示していて効果的だ。
❷ここで求められている効果は充分に示す。
❸響きが乾いているので、さわやかな印象を与える。
❹ドラムスの切れの鋭さはなかなかいい。言葉のたち方もいい。
❺言葉すっきりとたって、あいまいさがない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶一応の力感は示すものの、スケールの豊かさがほしい。
❷なまなましくはあるが、部分拡大的になっている。
❸音が消える時の尻尾がもし少しはっきり示されてもいいだろう。
❹シャープに反応して、一応の効果はあげる。
❺音色的には充分だが、音像的には多少問題がある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶はなやかな響きをきかせはするが、力感はもうひとつだ。
❷つっこみは鋭い。ただいくぶん硬質にすぎる。
❸響きの極端なクローズ・アップを明確に示す。
❹後へのひきがさらに鮮明なら、よりはえただろう。
❺めりはりはくっきりつけま。さらにシャープでもいい。

座鬼太鼓座
❶かなり前にはりだしている。ひきがたりない。
❷脂っぽさがないのはいいが、響きのキメが粗い。
❸ききとれる。しかし不必要に誇張はしていない。
❹消え方が充分に伝わっているとはいえない。
❺きわめて効果的にくっきりとききとれる。

ダイヤトーン DS-30B

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきに力がなく、かさかさした感じになる。
❷低音弦のひびきの特徴が充分に示されているとはいいがたい。
❸フラジオレットのひびきが、薄く、うきあがって感じられる。
❹ピッチカートはふくらみぎみで、第1ヴァイオリンのフレーズに艶がない。
❺高い方の音が刺激的になり、大オーケストラ本来の力強さに欠ける。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、いくぶん大きくなりがちだ。
❷音色対比充分。さわやかな音色がいい。
❸響きに軽やかさと透明感があって、さわやかだ。
❹第1ヴァイオリンの響きのすっきりと示されるところがいい。
❺鮮明であり、誇張感がなく、自然なしなやかさがある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声はいくぶん残響がついて、従って音像はふくらみがちだ。
❷アイゼンシュタインは、くっきり中央から接近する。
❸クラリネットの音色は少しかさかさするが、すっきりしたよさはある。
❹はった声は幾分硬めだが、ききにくいというほどではない。
❺きわだって鮮明にきこえる。バランスがいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声がふくらんで前にせりだしがちだ。
❷言葉の角がまるくなって、いくぶんあいまいだ。
❸残響が強調気味なために、響きの鮮度がよくない。
❹もう少しすっきりと響きが切れるといいだろう。
❺のびてはいるものの、多少不自然なところがある。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比は充分だ。もう少し広がりが感じられるとなおいい。
❷すっきりと、きわだって、効果的にきこえる。
❸軽さをもって個々の響きは、とびかう。
❹せまくるしさを感じさせないのが好ましい。
❺ピークでは、やはり多少響きがとげとげしくなる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶響きに透明感のあるのがいい。広がりも感じられる。
❷音色的な対比を充分につけて、せりだすが、せりだし方は自然だ。
❸くっきりときわだってきこえ、響きの特徴を充分に示す。
❹響きのきらびやかさが過不足なく示されている。
❺うめこまれることなく、好ましく示されている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶すっきりした12弦ギターのひびきが充分に効果的だ。
❷ひびきそのものは軽いが、効果をそこねていない。
❸重くなったり、湿ったりしていないのが好ましい。
❹ドラムスのひびきの意味をあきらかにしているが、ひきずらない。
❺言葉のたち方はかなりシャープでこのましい。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶一応の力を示し、スケール感もある程度感じられる。
❷ことさらなまなましいとはいえないが、鮮明である。
❸必要最小限の消える時の響きを明らかにする。
❹くっきりと、あいまいにらならずに、対応できている。
❺コントラストは、不自然になっていない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶もうひとつ響きに切れの鋭さがほしい。
❷力不足というべきか、響きがとげとげしくなっている。
❸一応の効果はあげるものの、有効とはいえない。
❹後へのひきは感じられるものの、効果的とはいえない。
❺ふやけてはいないが、めりはりのつけ方が不充分だ。

座鬼太鼓座
❶広がりは感じられるが、少し前にですぎている。
❷尺八らしさを感じさせる響きをきくことができる。
❸ごくかすかにきこえるにとどまり、きわだたない。
❹消え方は、一応示されるものの、薄味だ。
❺きわだってくっきりきこえて、効果的である。

ビクター SX-11

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートの音にかすみがかかっている。音色対比はついている。
❷あいまいにらなず、奥の方にひけてもいるが、鮮明さははもう一歩だ。
❸フラジオレットの効果は、他のひびきにうめこまれて、はっきりしない。
❹ピッチカートのひびきが過度にふくらみすぎている。
❺たっぷりと腰のすわったひびきだが、もう少し鮮明でもいい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像はかなり大きい。表情を強調しがちだ。
❷ファゴットの響きがあいまいになる傾向がある。
❸総体的に響きが重くなりすぎて、「室内オーケストラ」らしさが不足だ。
❹表情がどうしてもわざとらしくなってしまう。
❺くっきり示しはするが、とってつけたようなところがある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶響きは風呂場の中でのようにきこえる。
❷接近感をいくぶん誇張気味に示す。わざとらしい。
❸声が前にたって、オーケストラの響きがひっこみすぎる。
❹はった声が、どうしてもメタリックなものとなる。
❺きこえはするものの、音色的に多少異質だ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶右からの響きがふくらみ、左がひっこむ。
❷声量の差がもう少しはっきり示されてもいいだろう。
❸残響をひきずりすぎるためか、言葉がたちにくい。
❹響きそのものに、もう少し軽みがほしい。
❺のびることはのびるが、とってつけたようなところがある。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色対比は、かなりくっきり、わかりやすくつく。
❷後方からくるが、響きは重く、しめりがちである。
❸響きは、浮遊せずに、しめりがちである。
❹音色的に、いくぶんかげりがちで、はれやかさが不足している。
❺力づくで前にでてくる。ピークは刺激的だ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶広々とした気配が不足している。透明感もたりない。
❷くまどりがきつすぎないか。せりだし方は積極的だが。
❸響きがまとまりすぎていて、広がりがたりない。
❹きこえるが、誇張感がないとはいいがたい。
❺他の響きの中にうめこまれがちで、効果が示されにくい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースの響きが強調されすぎているというべきだろう。
❷響きの厚みは示されるものの、イーグルスのサウンドとしては異色だ。
❸響きは、乾ききらず、重く、力をもっている。
❹ひきずりがちだ。シャープな反応がほしい。
❺言葉がたちにくい。いくぶんごりおし気味になる。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶力はあるものの、迫力を誇張気味である。
❷この部分の響きの特徴は、必ずしもきわだたせない。
❸響きの骨だけを示しているとでもいうべきか。
❹一応の動きは示すものの、反応はシャープとはいえない。
❺音像的に差がありすぎて、多少不自然だ。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶重く、切れが鈍いところがあり、はえない。
❷力は十全に示すものの、音の見通しがつきにくい。
❸はなはだ積極的にはりだすものの、効果的とはいえない。
❹へだたりがもう少し感じられればいいのだろうか。
❺リズムが重く、印象として鈍いものとなる。

座鬼太鼓座
❶かなり前の方にでてきて、距離感がほとんどない。
❷尺八らしい響きの特徴がでにくい。
❸ごくかすかにしかきこえず、ものたりない。
❹力はあるものの、響きに広がりが不足している。
❺ききとれるが、対比感は稀薄というべきだろう。

JBL 4343

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ひびきにあかるさがあり、鮮明で、あいまいさがない。
❷奥の方で力をもって、輪郭たしかに提示される。
❸個々のひびきへの対応のしかたがしなやかで、無理がない。
❹たっぷり、余裕をもったひびきで、細部の鮮明さはとびぬけている。
❺ひびきに余裕があり、クライマックスへのもっていき方はすばらしい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像はくっきりしていてい、しかもピアノのまろやかなひびきをよく示す。
❷木管のひびきのキメ細かさをあますところなく示す。
❸ひびきはさわやかにひろがるが、柄が大きくなりすぎることはない。
❹しなやかで、さわやかで、実にすっきりしている。
❺ひびきの特徴を誇張しない。鮮明である。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶アデーレとロザリンデの位置関係から、ひろがりが感じられる。
❷声のなまなましさは他にあまり例がないほどだ。
❸声のつややかさが絶妙なバランスでオーケストラのひびきと対比される。
❹はった声もしなやかにのびていく。こまかいニュアンスをよく伝える。
❺オーケストラの個々のひびきを鮮明に提示する。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶ひびきに妙な癖がないので、すっきりと鮮明だ。
❷声量差をデリケートに示し、言葉はあくまでも鮮明だ。
❸残響をすべてそぎおとしているわけではないが、言葉の細部は明瞭だ。
❹ソット・ヴォーチェによる軽やかさを十全に示す。
❺声のまろやかさとしなやかさ、それにここでの軽やかさを明らかにする。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ポンという低い音の音色的特徴を誇張するようなことは、まったくない。
❷シンセサイザーのひびきのひそやかなしのびこみはすばらしい。
❸ひびきはこのましく浮びあがり、飛びかう。
❹前後のへだたりが充分にとれ、ひろがりが感じられる。
❺もりあがり方に不自然さはまったくなく、ピークは力にみちてみごとだ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひそやかな音のしのびこみ方が絶妙だ。透明なひびきのよさがきわだつ。
❷ギターの進入と前進、途中での音色のきりかえが鮮明。
❸このひびき特徴をあますところなく伝える。
❹わざとらしさがない。ひびきはきらりと光る。
❺ギターとのコントラストの点でも充分だ。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶反応の鋭さによってさわやかなサウンドがもたらされる。
❷充分なひびきの厚みが示され、効果的だ。
❸ハットシンバルが金属でできていることをひびきの上で明快に示す。
❹ドラムスによるアタックは鋭く、声との対比もいい。
❺言葉のたち方は自然で、楽器によるひびきとのコントラストも充分だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はふくれすぎず、くっきりしている。
❷不自然な拡大・誇張はないが、充分になまなましい。
❸消え方をすっきりと示す。しかしこれみよがしにはならない。
❹反応は、シャープであり、しかも力強い。
❺音像的な対比にはいささかの無理もない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックの強さを示し、しかもひろがりも感じさせる。
❷ブラスは、輝きと力のある音で示され、中央をきりひらいていくる。
❸横に拡散しすぎることはないが、力のあるひびきでききてをおそう。
❹後へのへだたりはすばらしい。見通しも抜群だ。
❺リズムの提示は、力感にみちていて、このましい。

座鬼太鼓座
❶ほどよい位置から、しかし鮮明にきこえてくる。
❷尺八の特徴的な音色をよく示し、独特のなまなましさを感じさせる。
❸きこえて、輪郭もあるが、これみよがしではない。
❹充分にスケールゆたかだ。この大太鼓のただならぬ大きさを感じさせる。
❺充分に効果的にきこえて、雰囲気ゆたかなものとしている。

ヤマハ FX-1

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶すっきり、さわやかに提示する。ひびきとしてのまとまりはいい。
❷低音弦のスタッカートが過度にせりださないのがいい。
❸誇張感がまるでなく、鮮明にひびきの特徴を示して、見事だ。
❹第1ヴァイオリンのフレーズのキメこまかさはすばらしい。
❺しなやかなひびきで、力をもって充分にもりあげる。力強く鮮明だ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノは、力をもって、ゆたかにひびく。音像もほどほどだ。
❷さわやかなひびきでそれぞれ音色を鮮明に示す。
❸ひびきが大きくふくらみすぎないのはいい。
❹ここで感じられるキメ細かさはさわやかだ。
❺とりわけフルートの音色はこのましい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶すっきりした無駄のない声の提示は大変になまなましい。
❷接近感の示し方にも無理や誇張がない。
❸声とオーケストラの位置関係、音色対比等、見事だ。
❹声のなまなましさは特徴的だが、はった声は幾分硬くなる。
❺オーケストラと声のバランスはいとも自然だ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶声のまろやかさをたもちつつ、鮮明だ。
❷声量の変化を不自然にならずに示してこのましい。
❸余分なひびきをひきずっていないので、言葉の細部をくっきり示す。
❹各声部のからみあいは、あいまいになることなく、明瞭に示されている。
❺自然なのびやかさがあり、誇張感は皆無だ。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶透明感のあるひびきで、すっきりと対比される。
❷奥の方からのシンセサイザーのひびきは、実にすっきりしている。
❸浮遊感の点で申し分ない。飛びかい方もまず十全だ。
❹前後のへだたりを充分に示し、広々とした空間を提示する。
❺ピークへのもりあげは確実で、圧倒的な迫力を感じさせる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶充分に透明なひびきが前後左右にすっきりとひろがり、すばらしい。
❷❶との対比の上でのこのひびきの特徴を十全に示している。
❸くっきり、輪郭明らかに提示して、効果的だ。
❹透明度の高いひびきで、輝きをすっきり示す。
❺ギターのはりだし方も自然で、対比の面でも有効だ。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶さわやかなサウンドは、ここできける音楽によくあっている。
❷ひびきがいささかも重くなることがなく、充分に厚みを示す。
❸ハットシンバルのひびきのすっきりしたぬけはすばらしい。
❹ドラムスの切れ味鋭いつっこみがみごとだ。
❺バック・コーラスの声の重なり具合を鮮明に示す。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶くっきり提示され、ひびきがふくらまないのがいい。
❷ひびきの中味がぎっしりつまっているので、なまなましい。
❸消える音を誇張はしないが、すっきり示している。
❹細かい音の動きに対しての反応は、実にシャープだ。
❺さまざまな面での対比ではほとんど不自然さは感じられない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきにあいまいさがなくくっきりしているのがいい。
❷ブラスのひびきは、それ本来の輝きをもって、つっこんでくる。
❸拡散しすぎず、積極的に前にでてきて、効果的だ。
❹後へのひびきは充分にとれていて、広々と感じられる。
❺ひびきが明るく、はずみがあるので、くっきりめりはりがつく。

座鬼太鼓座
❶充分に奥の方にひけていて、しかも鮮明だ。
❷音色的に問題がないばかりではなく、吹き方までわかるかのようだ。
❸必要充分なきこえ方をして、まずいうことはない。
❹ことさらスケール感を強調はしないが、迫力にとむ。
❺ふちをたたいていると思える音の性格をよく伝えている。

オンキョー Scepter 500

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるくすっきりとしたピッチカートだが、もう少し力がほしい。
❷くまどりたしかな低音弦のスタッカートで、強調感のないのがいい。
❸音色の特徴をわざとらしくなく示してさわやかだ。
❹第1ヴァイオリンのびびきはキメこまやかだ。
❺しなやかさをたもったまま迫力のあるクライマックスをきずく。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、いくぶん大きめだ。ピアノならではの力を示してほしい。
❷音色的な対比をキメ細かく、しなやかに示す。
❸「室内オーケストラ」らしいひびきのまとまりがあるとなおいい。
❹この第1ヴァイオリンのひびきへの対応はみごとだ。
❺木管楽器の音色を細やかに、さわやかに示す。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声のキメ細かいのはいいが、音像は大きめだ。
❷かなりオンでとっている感じがする。子音がめだちがちだ。
❸声とクラリネットのコントラストは、自然でいい。
❹はった声もまろやかさをたもってこのましい。
❺三者三様の声とオーケストラとのバランスがいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶ひびきに過度の肉がついていないので、凹凸はない。
❷声量をおとしたからといって、言葉の細部があいまいになっていない。
❸ひびきに軽やかさがたもたれているので、さわやかだ。
❹低い方のパートがいくぶんふくらみがちだが、明瞭さはたもたれている。
❺「ラー」は、自然にのびて、しなやかでいい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンという高い音の硬質な性格が、さらに徹底して示されるべきだろう。
❷シンセサイザーによるひびきは、いくぶん湿りけをおびてきこえる。
❸充分にひびきが浮きあがっているとはいいがたい。
❹前後のへだたりはとれ、個々のひびきはかなり質的に高い。
❺キメ細かさ優先だが、ピークでは迫力を示す。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひびきのひろがり方は、実に微妙だ。キメもこまかい。
❷もう少し積極的にはりだしてきてもいいように思う。
❸まろやかなひびきで、輪郭をあきらかにする。
❹キメ細かなひびきにより、輝きを明らかにする。
❺ことさら輝きを主張することはないが、うめこまれてはいない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶低い方のひびきがふくらみぎみだ。もう少しこりっとしてもいいだろう。
❷厚みを示すより、ひびきは横にひろがりがちだ。
❸ひびきの乾き方ということでは、もう一歩だ。
❹ドラムスは、重めのひびきにより、切れが鈍い。
❺声は、総じて、楽器のひびきにおされがちだ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は大きく、ひびきの中味が空洞化しているかのようにきこえる。
❷オンでとったことを強調するが、なまなましさにはつながりにくい。
❸消える音の尻尾を拡大して示す傾向がある。
❹細かい音に対しての反応ということでは、いま一歩だ。
❺両ベーシストの、音色的対比はよく示すが、音像的対比では不充分だ。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶切れ味鈍く、アタックの強さが示しきれていない。
❷ブラスのつっこみ方がやはり甘くなる。
❸フルートによるひびきは、拡散しがちだ。
❹奥行きはとれているが、ひびきはかげりがちだ。
❺充分な反応は示すが、リズムの刻みに鋭さがほしい。

座鬼太鼓座
❶尺八までの距離感は充分に提示できている。
❷音色的にも尺八の尺八ならではの特徴を明らかにしている。
❸輪郭をぼかすことなく、このひびきをききとらせる。
❹スケールゆたかにきかせはするが、消える音を明示するとはいいがたい。
❺ここでのひびきの硬質な性格をよく示している。

アルテック Model 19

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶くっきりした、力のあるひびきで示されるピッチカート。
❷たっぷり余裕のある低音弦のスタッカートはなかなかいい。
❸くっきりと、あいまいにならずに特徴あるひびきを示す。
❹第1ヴァイオリンのひびきのたっぷりした提示は独特だ。
❺力をもったクライマックスのひびきは圧倒的だ。力にみちている。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノのひびきのゆたかさを示すが、音像は大きめだ。
❷音色的な対比を示しはするが、もう少し小味でもいい。
❸音楽的な身振りが、やはりどうしても大きくなる。
❹一応特徴は示しはするが、さわやかとはいえない。
❺木管のひびきがたくましくなる傾向がある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶細かい表情をそれなりに示して、拡大しないよさがある。
❷接近感は明らかになるが、雰囲気ゆたかとはいいがたい。
❸声が硬くなる。クラリネットの音色はこのましい。
❹はった声は、さらに硬くなり、金属的になるきらいがある。
❺オーケストラのひろがりを感じさせ、声とのバランスもいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声が前にでる傾向があり、すっきりさに欠ける。
❷声量の変化を極端に示す。言葉のたち方は充分でない。
❸残響をひきずりがちなため、ひびきに肉がつきすぎる。
❹各声部の音の動きが多少重く感じられる。敏捷さがほしい。
❺最後の「ラー」でののびは、自然で、このましい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンという高い音とポンという低い音との対比は充分だ。
❷シンセサイザーのひびきはきわだって奥の方からきこえる。
❸浮遊感は充分とはいいがたい。もう少し軽くてもいい。
❹前後のへだたりは充分にとれて、ひろがりを感じさせる。
❺力をもってもりあがるピークは迫力がある。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶透明ではあるが、暖かい、かなり上質のひびきだ。
❷対比は充分について、ギターはかなり積極的に前にでる。
❸びひきとしてのまとまりがよく実在感もある。
❹光りをもって、くっきりと提示され、有効だ。
❺他のひびきの中にうめこまれがちで、効果の点で充分とはいえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきはさらにさわやかでもいいだろう。
❷ひびきの厚みを力をもって示している。
❸必ずしもさわやかとはいいがたいが、音色的特徴は示す。
❹ドラムスの音は、少し重めだが、アタックの鋭さは示す。
❺楽器のひびきの方がきわだちがちである。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶力は充分だが、音像的には大きくなりがちだ。
❷クローズアップの迫力をなまなましく示す。
❸消え方も明らかにし、スケールもゆたかだ。
❹充分シャープに反応できているのがいい。
❺他の点では問題ないが、音像対比では多少ひっかかる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶おしこんでくるような力のある音が特徴的だ。
❷ブラスは、腰の強いひびきで、直進してくる。
❸過度に横にひろがることなく、積極的に前にはりだす。
❹一応のへだたりもあり、見通しも充分だ。
❺力強くリズムが刻まれ、めりはりをつける。

座鬼太鼓座
❶一応の距離はとれているが、ホール・トーンのごときものが感じられる。
❷音色的には、もう少し繊細で枯れていてもいいが。
❸くっきりと、あいまいにならず示されている。
❹中味がぎっしりつまった、スケールゆたかなひびきだ。
❺❹ひびきとの対比の上で充分に成果があがっている。

JBL L200B

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黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートの音は、くっきり、輪郭たしかに立つ。
❷低音弦のスタッカートの力は感じさせる。
❸くっきりとそれぞれのひびきの特徴を示す。
❹第1ヴァイオリンのフレーズにもう少しキメこまかさがほしい。
❺腰のすわった音でクライマックスを迫力にとんだものにする。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶力を感じさせるひびきで、ピアノは中央にくっきり定位する。
❷音色対比の提示にいささかのあいまいさもない。
❸多少ひびきのキメが粗い。もう少ししっとしてもいいだろう。
❹ひびきのしなやかさがたりない。誇張しない良さはあるが。
❺鮮明ではあるが、キメこまかさに欠ける。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶くっきりと音像を示す。言葉の表情をきわだたせる。
❷アイゼンシュタインの接近感を、思いきりよく、すぱっと示す。
❸クラリネットのひびきの特徴を、きわめて明快に提示する。
❹声は全体的に硬めだが、特にはった声は金属的なひびきになる。
❺さまざまなひびきの個性を、くっきり示す。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声が強調ぎみに示されて、不自然だ。
❷声の強弱を拡大して示す。とってつけたようなところがある。
❸余分なひびきがつきすぎていて、言葉のたち方は不充分だ。
❹微妙なひびきに対しての反応でものたりないところがある。
❺「ラー」はとってつけたようにのびる。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンの硬質な性格をよく示し、音場的な対比も充分だ。
❷シンセサイザーのひびきのクレッシェンドはみごとだ。
❸一応の浮遊感を示し、提示される空間も狭くるしくない。
❹前後のへだたりは充分にとれて、音の飛びかい方もいい。
❺ピークは力をもっていて、圧倒的な迫力を示す。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶重力を感じさせないひびきの奥の方でのひろがりはきわめていい。
❷ギターの音色のきりかえを充分に示して、ひびきそのものも積極的だ。
❸あいまいにならず、実在感たしかにひびく。
❹さらにキメ細かいひびきであってほしいが、充分に光る。
❺せりだしてくるギターとの対比はなかなかいい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターの音色をよく示し、フレッシュだ。
❷ひびきの厚みをよく示し、効果は歴然だ。
❸ここできこえるハットシンバルのひびきはなかなか有効だ。
❹ドラムスは、切れ味鋭く、アタックの強さもいい。
❺バック・コーラスの、声としては乾いたひびきがよく伝わる。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は大きくふくらむ。もう少しひきしまるべきだろう。
❷オンのなまなましさを伝えるが、いくぶん誇張ぎみだ。
❸消える音の尻尾を拡大ぎみに示す傾向がある。
❹細かい音に対して反応はさらにシャープであってほしい。
❺両ベーシストの対比は、ほぼ順当である。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶リズムがシャープに切りこんでくるので効果的だ。
❷ブラスのつっこみは、音色的にも、力の点でも、まずまずだ。
❸フルートによるひびきが横にひろがらないのはいい。
❹奥行きもたっぷりとれて、ひろびろとしている。
❺ひびきにふやけがないので、めりはりはよくついている。

座鬼太鼓座
❶尺八までの求められる距離感は明らかにされる。
❷尺八のひびきとしては、やはり脂がつきすぎている。
❸もとが大太鼓の音だということを感じさせる。
❹消える音を示しはするが、スケールゆたかとはいいがたい。
❺ふちをたたいているとは思える音は、それしらく示しされる。

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