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Date: 9月 21st, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その1)

剛性追求の波は、1970年代後半からアナログプレーヤーに関しても始まっていた。
SAECのダブルナイフエッジという構造と実際の製品としてのトーンアームは、
剛性追求のモノといえた。

SAECは1981年ごろに、プレーヤーキャビネットSBX3を出した。
材質は高剛性重金属とあるだけ。
見た目は、完全に金属の塊りであり、
このプレーヤーキャビネットに似合うトーンアームはSAECの製品以外にはない、
という感じさえ漂っていた。

キャビネットの手前上部にはスリットがある。
このスリットに立方体のブロックがはめこんであり、位置を左右に移動できる。
たしか共振点をコントロールするためのものだったはずだ。

SBX3の重量は使用するターンテーブルによって取付け穴の大きさが変るため、
40〜45kgとなっていた。

トーホーからは砲金製のキャビネットも出ていた。
ビクターのターンテーブル用がTV30、デンオンのターンテーブル用がTC20だった。

SAECのSBX3以前にも、金属の塊といえるキャビネットはあった。
東京・吉祥寺のオーディオガラの鉄製のモノがそうだった。
SBX3より、もっと武骨な金属の塊だった。
重量は70kgくらいあったはずだ。

このころゴム系の柔らかい素材は曖昧につながるということで、
一部のメーカーでは排除する、もしくは極力使わない動きがあった。

サテンのカートリッジは、そのことを早くから謳っていた。
サテン独自の発電機構によるMCカートリッジにはゴム系のダンパーは使われていない。

Date: 9月 21st, 2016
Cate: オーディオ評論

ミソモクソモイッショにしたのは誰なのか、何なのか(先生という呼称・その2)

ラジオ技術1957年5月号に「誌上討論会 OTL是非論」が載っている。
十人の方が、それぞれにOTLアンプに対する私論を述べられている。

OTLアンプは無線と実験1951年4月号に、最初に登場している。
アメリカの技術誌にOTLアンプが発表される八ヵ月前のことだそうだ。
つまり日本の方が、OTLアンプに関しては先駆けていたともいえるし、
それは日本が当時は貧乏国で、満足な出力トランスを用意するのが大変だから……、
ということも関係している、とのこと。
(OTLアンプの最初の発表者、乙部融郎氏がそう述べられている)。

「誌上討論会 OTL是非論」には、それぞれの書き手の肩書きが文末にある。
 木塚茂(アマチュア)
 田丸一彦(田丸研究所)
 乙部融郎(アマチュア)
 今西嶺三郎(今西研究所)
 瀬川冬樹(LP愛好家)
 浅野勇(プリモ音響KK技術部長)
 高城重躬(音楽家・音響技術者)
 山根雅美(福音電機技術部)
 鴨治儀秋(東通工)
 加藤秀夫(加藤研究所)

括弧内の肩書きは、ラジオ技術編集部が勝手につけたわけでもないだろう。
おそらくそれぞれの書き手の自己申告によるものと思われる。

瀬川先生は「LP愛好家」である。

Date: 9月 21st, 2016
Cate: オーディオ評論

ミソモクソモイッショにしたのは誰なのか、何なのか(先生という呼称・その1)

オーディオ評論家を「先生」と呼ぶ。
私も、先生とつけて呼んでいるし書いている。
ただし先生とつける人とそうでない人がいて、そうでない人のほうが圧倒的に多い。

私はそうだが、オーディオ評論家全員を先生と呼ぶ人もけっこう多い。
オーディオ業界の人たちだけでなく、オーディオマニアの中にもそういう人も多い。
評論家ごときに先生とつけるなんて、という人もいる。

いったい誰が、いつごろからオーディオ評論家を先生と呼ぶようになったのか。
ステレオサウンドからだ、という人もけっこういる。

ステレオサウンドはそういわれても仕方ない面ももつが、
ステレオサウンドが最初ではない。

あくまで私が目にした範囲でわかっているかぎりでは、
レコード芸術のほうがステレオサウンドよりも早くから、先生と呼んでいる。

レコード芸術1961年11月号に「オーディオ相談室の質問をめぐって」という記事がある。
若林駿介氏が司会で、江川三郎氏と瀬川先生が登場されている。

この記事に、瀬川先生、江川先生とすでにある。
ステレオサウンドが創刊される五年前から、「先生」が使われている。

丹念に探していけば、もっと古いのが見つかるかもしれない。
誰が、いつごろから、に正確な答はまだいえないけれど、
少なくともステレオサウンドが最初ではないことだけははっきりといえる。

Date: 9月 21st, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(その7)

オーディオに興味を持ち始めたころ、熊本に住んでいた。
東京でオーディオフェアが開催されていることを羨ましく思っていた。

中学、高校のころ、ずっとオーディオフェアに行きたい、と思っていた。
オーディオフェアでは満足な音は聴けないことは、当時から指摘されていたし、
そのことは知っていたけれど、それでも行きたいと思ったのは、
オーディオフェアが楽しそうに映ったからである。

インターナショナルオーディオショウの前身は輸入オーディオショウである。
輸入オーディオショウは、いわばオーディオフェアから独立したともいる。

オーディオフェアの大規模な会場よりも、
少しでも満足の行く音を聴いてもらうために、九段のホテルを会場として第一回が開催された。
そして、いまは国際フォーラムを会場として、
音を出す場としては、オーディオフェアよりも、九段のホテル時代よりも良くなっている。
このことは、けっこうなことであるが、
このことが、いまのインターナショナルオーディオショウの雰囲気につながっているようにも感じる。

オーディオフェアは楽しかった。疲れもするけれど。
輸入オーディオショウの第一回のときは、ステレオサウンドにいた。
前日搬入の夕方に九段のホテルに取材に行っている。
輸入商社の人たちが、みな楽しそうだったことを憶えている。

このころからすれば、若い人のオーディオ離れがいわれるようになってきている。
これらの雰囲気の違いを知る者からすれば、当然だととも思う。

若い人のオーディオ離れの原因はひとつではないはずだが、
そのひとつはインターナショナルオーディオショウからは、
オーディオフェア、輸入オーディオショウにあった楽しそうな雰囲気があまり感じられない。

音を出す条件として良くなっていったことが、来場者を変えてしまった、ともいえないだろうか。
音を判断しすぎていないだろうか。

Date: 9月 20th, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(その6)

私も、そんなふうに斜に構えていた時期はあった。
オーディオショウでいい音なんて聴けっこない、と、
自ら楽しむことを放棄するような態度だったことがある。

でも徹底的に楽しんでみよう、と思った。
十年以上の前のことだ。
ちょうど三日間とも行けるようにスケジュールが調整がついた。
だから三日間とも朝十時から最後まで会場にいて、すべてのブースを何度も廻ったことがある。

朝一から会場にいると気づくことがいくつもある。
どんなことだったのかは具体的には書かない(書けない)が、
朝一だからこそ見れることがある。

それから各出展社の音も、出展社によっては変ってくる。
初日よりも二日目の方が良くなっているところもあった。

三日間、最初から最後までいると気づくことは多い。
何も気づくことなどない、という人は、どこに行っても同じではなかろうか。

三日目の朝、たまたまエレベーターで菅野先生と一緒になった。
「三日間とも来ているのか」ときかれた。
「はい」と答えた。
「楽しいだろう」と菅野先生が笑顔でいわれた。
「楽しいです」と答えた。正直な気持での「楽しいです」だった。

いまは三日間、朝から行くことは厳しい。
今年もどの日に行けるのかはまだ決っていない。

二時間程度であっても、行けるのであれば行くようにしたい。
行けば楽しい。
楽しむ気持をもっていれば、インターナショナルオーディオショウは楽しめる。

Date: 9月 20th, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(その5)

あと10日ほどでインターナショナルオーディオショウが始まる。
楽しみにしている人がいる一方で、
オーディオショウではまともな音は聴けないから特に興味はないという人もいる。

インターナショナルオーディオショウでは、前日搬入のはずである。
おそらく出展社ごとに搬入の時間帯が決められている、と思われる。
すべての出展社が一度に同じ時間に搬入を開始してしまったら、
エレベーターの奪い合いになるだろうし、時間のロスは増える。
あらかじめ順番と時間帯が決められていれば、搬入作業はスムーズにいく。

搬入が終れば開墾作業、設置作業。
それから結線して音を出してチェックしていく。
そういう流れであろう。

細かなチューニングはその後から始まるはずだ。
実際にチューニングにさける時間はどのくらいなのだろうか。
そう長くはないと思う。

そんなふうに出される音を聴いても、つまらないだけだろう……、
と言ってしまうのは、簡単なことだ。
誰にだってできることだ。

インターナショナルオーディオショウが現在の会場で開催されるようになって十年以上は経っている。
各出展社のブースもいくつかは変更になっているが、多くは以前からのブースのそのままである。

これだけ長いことやっていれば、そのブースでの音出し、チューニングのノウハウは、
それなりに積み重ねられている、とみていい(そうでないところもあるようだか……)。

ケチをつけようと思えば、どれだけでもケチはつけられる。
でもそんなことをして何も楽しくはない。

楽しむために行くところのはずだ。

Date: 9月 20th, 2016
Cate: ロングラン(ロングライフ)

自分で直すために必要なのは……(その2)

修理対象のアンプについているコンデンサーと同規格であることを優先的に探すのであれば、
容量と耐圧によって違ってくるが、秋葉原よりもインターネットの方がすぐに見つかる可能性が高い。

Digi-KeyRSコンポーネンツがある。
こここでなら、おそらく同容量で同耐圧のコンデンサーが見つかる、と思う。

修理されようとしているアンプは、そうとうに古いアンプのようだった。
その時代は、高音質パーツ、オーディオ用パーツなどは使われていなかった。
しかも、その人はコンデンサーのメーカーにはこだわりはなかったようで、
とにかく同容量・同耐圧のコンデンサーであることが重要だった。

このことを含めてわかってきたのは、その人はどうもインターネットをやられていない。
だから秋葉原のパーツ店を廻っていたようだ。

おそらくメーカーにも電話で問い合せられたのだろう。
電話だったから、修理担当の人は、相手がどういうレベルの人なのか、
おおよその見当がついたからこそ、あえて同容量・同耐圧といったのだ、と推測できた。

ここに書いていることは、私の推測がけっこう入っている。
実際は違っているところもあるだろう。
でも、その人は、同容量で耐圧の高いものであれば大丈夫、といわれたであろう。

修理担当者はそう言ったはずだ。
その人は、どのくらい耐圧の大きいものであればいいのか、とさらに訊ねたのではないだろうか。
何Vだったらいいのか、何Vだったらダメなのか。

メーカーの修理担当者から、ことこまかな指定を欲しがっていたのではないだろうか。
電話で話しているうちに、その人のレベルと性格のある部分が修理担当者にはわかってきたはずだ。

私が店先で聞こえてくる話を五分ほど聞いていただけで、
ある程度はその人のレベルがわかってきた。

修理担当者は、だからその人に合う答を返したのであろう。
私が思っているとおりであれば、このメーカーの担当者はきちんと仕事をしている、といえる。

そのメーカーがどこなのかはわかっているけれど書かない。
型番は不明だが、ゲルマニウムトランジスターが使われている、といっていたから、
相当に古いアンプである。

となると同容量・同耐圧のコンデンサーをその人は見つけたとして、
実際に自分でパーツ交換する段になって、また心配になるのではないだろうか。

ゲルマニウムトランジスターということは50年ほど前である。
そのころのコンデンサーといまのコンデンサーは、
同容量・同耐圧ならばサイズがびっくりするほど小さくなっている。

元のコンデンサーはこれだけの大きさがあるのに、
いまのコンデンサーはこんなに小さい。これで大丈夫なのだろうか……と。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: ロマン

オーディオのロマン(Car SOS)

イギリスのテレビ番組に”Car SOS”がある。
日本では「カー・SOS 蘇れ! 思い出の名車」というタイトルになっている。
車、オーディオの修理のことを書いていて、この番組について書きたくなった。

番組の存在は知っていたけど、私が見始めたのはシーズン4からである。
見事な修理がなされる。
文字通り、ボロボロだった車が新車かと思うほどに仕上がって、オーナーの元に帰ってくる。
いい番組だと思う。

シーズン4からしか見ていないので、
すでにそういう内容の回が放送されていたかもしれない。
私が、この番組で、ぜひとも見たい、と思うのは、
その後である。

番組自体も、「その後」である。購入後といえる。
なんらかの事情で、愛車が傷んでいくばかりの状態に置かれている。

これが新車同様になって戻ってくるわけだが、
私が知りたいのは、新車同様に戻ってきた車の「その後」である。

シーズン1の初回は2013年2月とある。
番組に登場して三年以上が経っている車もあるわけだ。
三年では、ちょっと短い気もする。
個人的には、もう少し経ってから、修理されて五年、十年後を見たい、と思うのだ、
ロマンについて考えるうえでも。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: ロングラン(ロングライフ)

自分で直すために必要なのは……(その1)

古いオーディオ機器だと、メーカーが修理を受け付けてくれなくなる。
愛着のあるオーディオ機器が修理を必要とするようになったとき、
メーカーが修理してくれなくなったらどうするか。

修理をあきらめるか、修理専門の業者に依頼するか、自分で修理するかのどれかになる。
若いころと違って、50をすぎると、音が出なくなったオーディオ機器は、
修理可能なモノであっても、そのまま手元に置く、という選択もありだ、と思うようになってきた。

人にも動物にもモノにも寿命があるわけだから、
その寿命をまっとうしたモノは、腐っていくわけでもないし、
スペースがゆるせばそのままにしておくのもいい、とも思う。

新品同様に修理するのもいい。
そのまま手元に置いておくのもいい。
どちらもいい、と思うようになってきたのは、歳のせいなのだろうか。

数ヵ月前、秋葉原にパーツを買いに行った。
目的の店には先客がいた。
店の人にあれこれ訊ねていた。

けっこうな声の大きさだったので、話が聞こえてくる。
国内メーカーの古いアンプを自分で修理しよう、としている様子だった。

ただ話していることからすると、電気的な知識はあまりない人で、
おそらく初めてのアンプの修理に挑戦するように思われた。

その人は秋葉原にコンデンサーを探しに来ていた。
なんでもメーカーに問い合せたところ、すでに修理に受けつけていない機種でことわられた。
でも、修理担当の人は、自分で修理するときはどうすればいいのか、アドバイスをしたようだ。

その人は、この容量で、この耐圧のコンデンサーはありませんか、と聞いていた。
その店に来る前にも、秋葉原にあるいくつかのパーツを扱っている店に寄ったけれど、
どこにもなかったそうだ。

その規格(容量と耐圧)のコンデンサーは、いまでは一般的とはいえない。
知識のきちんとした人であれば、代替できる規格のコンデンサーを選択する。

店の人も、容量はそのままで耐圧だけは高いものにすれば、といっていたけれど、
その人は、メーカーから必ず同規格のコンデンサーにしてください、と何度もいわれたから、
同じ規格コンデンサーでなければ困る……、そんな会話がなされていた。

人によっては、不親切なメーカーの修理担当者だと思うであろう。
でも私は、その場にいて、話が耳に入ってきていたから、
その修理担当者が、そのように答えたのもわかるような気がする。

店の人も、私と同じだったのか、
メーカーの方がそういわれたらそうされた方がいいですね、と返事されていた。

店の人も、最初は容量だけ同じにして、耐圧は高いものを、とすすめていた。
けれど相手をしているうちに、考えを少し変えたように感じられた。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: デザイン

TDK MA-Rというデザイン(その9)

TDKのMA-Rには、亜鉛ダイキャストのハーフが使われている。
当時、MA-Rが最初に金属ダイキャストのハーフを採用したカセットテープだと思っていた。

けれどMA-Rの一年前に、テクニクスがダイキャストのハーフを採用している。
テクニクスの広告には材質にはふれていないが、
テープのハーフに磁性体を使うわけはないから、アルミか亜鉛のはずだ。

テクニクスが金属ダイキャストのハーフを採用したのは、三種のテストテープにおいてである。
RT048CFが周波数特性/角度補正用のクロームテープで、25,000円(桁は間違っていない)。
RT048Wがテープ速度/ワウ・フラッター試験用で、17,000円。
RT048NFが周波数特性/角度補正用のノーマルテープで、25,000円。

テストテープということもあって、プラスチック製の一般的なカセットケースではなく、
厚手のハードカバーの書籍を思わせるケースとなっている。

テクニクスのRT048シリーズはあくまでもテストテープであるから、
いわゆる生テープと呼ばれる録音可能なテープとは違うから、
生テープで最初に金属ダイキャストのハーフを採用したのはTDKのMA-Rであり、
RT048シリーズのことを知っている人もいまでは少ない、と思う。

RT048の実物は見たことがない。
カラー写真で見たきりだ。
ダイキャストのハーフの写真がなければ、
RT048の写真を見ただけで、ダイキャストのハーフであることに気づく人は少ないはずだ。

よく見れば、質感が通常とは違うことは気づいて、金属ダイキャストであるとは思わない。
RT048とMA-Rの違いを、写真でもいいからじっくりと比較してほしい。

MA-Rというデザインが、はっきりとしてくるからだ。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(その4)

今年のインターナショナルオーディオショウにはテクニクスが出展することは、
その1)でも書いているが、書きながら、どのブースを使うのだろうか、と思っていた。

ハーマンインターナショナルが出展しなくなって開いたブースも埋まっている。
これまで出展してきたところが、今回は出展しないわけでもないからだ。
テクニクスのブースは、D棟1階のホールになっている。

某社の試聴会でも使われたところのはずだ。
G棟のブースよりも広いはずである。
けっこう人は来るであろうし、それだけの人が入る空間でもある。

テクニクスは、当然テクニクスのスピーカーシステムを鳴らす。
あの空間で鳴らすのか、と思ってしまう。

一昨年、昨年の音展での音出しのままでは、D棟1階のホールでは通用しないであろうことは、
テクニクスのスタッフの人たちは、わかっているはずだ。
わかったうえで、D棟1階のホールに出展するのであろう。

テクニクスの本気の音が聴けるのは、
ヤマハのNS5000の音とともに、今回のインターナショナルオーディオショウでの楽しみとなっている。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: ロマン

オーディオのロマン(その12)

オーディオよりも自動車の世界の規模ははるかに大きい。
雑誌の数だけをみても、オーディオ雑誌と自動車雑誌とでは、後者の数が圧倒的に多い。

きく所によると、自動車雑誌ではリセールバリューについての特集が組まれることがあるそうだ。
私が20代前半のころに会った人、
オーディオ機器購入の際、手放すときのことを考えて、という人は車好きの人だった。

車が好きで、それこそ数年ごとに新しい車に乗り換えたい──、
そう考えて、それを楽しみにしている人にとっては、
購入時に、手放すときの価格について考慮するのは重要なことなのだろうし、
自然なことなのでもあろう。

頭では、そう理解できる。
理解できても共感はできない。

別項「価値か意味か」をここでも考える。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その6)

コルグにメールアドレスを登録している人には、
メールが届いていているであろう、Nutubeが、やっと発売になる。
9月23日から個人向けの発売が行われる。

個人向けの販売が始まる前に、
無線と実験、ラジオ技術に製作記事が載るのであろう、と思っていた。
製作記事が広告にもなるからだ。

でも無線と実験にもラジオ技術にもNutubeを使ったアンプの製作記事は載らなかった。
なので市販はもっと先になるのか、と思っていたところに、今回の報せである。

それからデータシートも更新され、より詳細な情報が得られる。
これも嬉しい。あれこれ想像できるようになるからだ。

少なくとも年内発行の無線と実験、ラジオ技術には製作記事が載るであろう。

Date: 9月 18th, 2016
Cate: ロマン

オーディオのロマン(その11)

私が買ったオレンジ色のデ・ローザは、すでに組まれた状態だった。
もしフレーム単体で見て一目惚れして購入したのであれば、
パーツ類は、デ・ローザと同じイタリアのカンパニョーロにした、と思う。

でも完成車での一目惚れであった。
メインパーツはカンパニョーロではなく、日本のシマノのデュラエースで組まれていた。
シートピラー、ステム、ハンドルも日本製。
リムはフランスのマビックだった。

いまでこそデ・ローザもシマノで組まれることが増えてきたけれど、
いまから20年前はそうではなかった。
デ・ローザはカンパニョーロで組むべきモノという空気が、非常に濃かった。

それでも目の前にある自転車はシマノで組まれ、それに一目惚れしたのだし、
パーツをカンパニョーロに交換してもらえば、予算をさらにオーバーすることになる──、
そんなことは実は考えなかった。

もうこれがいい、という感じで決めてしまった。

私が買ったロードバイクを買い取ってもらうとすれば、
それほどの高値はつかないと思う。
パーツのほとんどが日本製であるからだ。
むしろフレームとパーツを、バラバラにして売った方がいいであろう。

でも買うときは、そんなことはまったく考えない。
目前にあるモノが欲しい! と思ったから買ったわけだ。

だがこれも人によって違う。
買うときに、常に手放すことを考えて買う、という人がいるのを知っている。
何もひとりではない。

オーディオ機器であっても、他の趣味に関するモノであって、
買取り、下取りで値が崩れないモノ、できれば高くなる可能性のあるモノを選ぶ人がいる。

20代前半のときに、はじめてそういう人に会った。
その人の口から直接聞いた。
さもあたりまえのように話していた。

年齢は彼の方がずっと上である。
それが大人の考えなのか──、とは思わなかった。
他に、こういう人がいるとも思わなかったが、その後、何人かいた。

ということはもっといるということである。

Date: 9月 17th, 2016
Cate: 五味康祐

五味康祐氏とワグナー(名盤・その2)

数ヵ月前、程度のいいと思えるマランツのModel 7の値段が150万円を軽く超えていて、
ここまで来たのか、と思っていたら、その上があった。
350万円の値が付いているModel 7があった。

私の感覚では高すぎる、ということになるが、
買う人がいるから、売る側もこれだけの値段をつけているのだろう。

マランツのModel 7は名器といわれている。
でも、この場合の名器も名盤と、結局は同じである。

名器とされるモノでしかない。
名盤と同じで、名器も「聴き込んでみずからつくるもの」である。

聴き込まなければ、つまり自分の心に近いモノとしなければ、
どんなに程度がよくて350万円の値が付いているModel 7であっても、
それは名器でもなんでもない、ということだ。

なぜ売り手側にとって都合のいい(よすぎる)ことに振りまわされるのか。
市場で高い値が付けられるのが名盤、名器ではない。

そのことがまったくわかっていない人がいる。
そういう人たちが、オリジナル盤、オリジナル盤とさわぎ、
オーディオ機器に関しても、オリジナル、オリジナルとさわぐ。

いつまで続くのか、こんなことが。